(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133082
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】レンズ部、積層体、表示体、表示体の製造方法および表示方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240920BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240920BHJP
H10K 50/858 20230101ALI20240920BHJP
H10K 50/86 20230101ALI20240920BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240920BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240920BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240920BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20240920BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240920BHJP
【FI】
G02B5/30
H10K59/10
H10K50/858
H10K50/86
G02F1/1335 510
G02F1/13363
G02F1/13 505
G02B27/02 Z
B32B7/023
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107182
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2022077679の分割
【原出願日】2022-05-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(72)【発明者】
【氏名】喜多川 丈治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
(57)【要約】
【課題】VRゴーグルの軽量化、高精細化を実現し得、さらに、残像を抑制し得るレンズ部を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学部材セットは、偏光部材、第1のλ/4部材、第2のλ/4部材、反射型偏光部材および吸収型偏光部材を含む。これらの光学部材は、表示素子から前方に向けて出射された光が、偏光部材および第1のλ/4部材を通過し、反射型偏光部材で反射し、さらに第2のλ/4部材を通過した後に前方側に反射して反射型偏光部材および吸収型偏光部材を通過するように配置される。第2のλ/4部材は、表示素子と反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と一体化され、かつ、反射型偏光部材および吸収型偏光部材は、吸収型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と一体化される形態で用いられる。第2のλ/4部材と反射型偏光部材とは離隔して配置され、かつ、第一レンズ部および第2のλ/4部材は表示素子側からこの順に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光部材、第1のλ/4部材、第2のλ/4部材、反射型偏光部材および吸収型偏光部材を含む光学部材セットであって、
前記光学部材セットに含まれる各部材は、表示素子から前方に向けて出射された光が、前記偏光部材および前記第1のλ/4部材を通過し、前記反射型偏光部材で反射し、さらに前記第2のλ/4部材を通過した後に前方側に反射して前記反射型偏光部材および前記吸収型偏光部材を通過するように配置され、
前記第2のλ/4部材が、前記表示素子と前記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と一体化され、かつ、前記反射型偏光部材および前記吸収型偏光部材が、前記吸収型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と一体化される形態で用いられ、
前記第2のλ/4部材と前記反射型偏光部材とが離隔して配置され、かつ、前記第一レンズ部および前記第2のλ/4部材が前記表示素子側からこの順に配置される、
光学部材セット。
【請求項2】
前記反射型偏光部材の反射軸と前記吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに平行に配置される、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項3】
前記偏光部材、前記第1のλ/4部材および前記第2のλ/4部材は、前記偏光部材の吸収軸と前記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が40°~50°となり、かつ、前記偏光部材の吸収軸と前記第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が40°~50°となるよう配置される、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項4】
前記第2のλ/4部材と前記第一レンズ部とは接着層を介して一体化される形態で用いられ、かつ、前記反射型偏光部材と前記吸収型偏光部材と前記第二レンズ部とは接着層を介して一体化される形態で用いられる、請求項1に記載の光学部材セット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光学部材セットに用いられる積層体であって、
前記反射型偏光部材と前記吸収型偏光部材とを有し、
前記第二レンズ部と一体化される形態で用いられる、
光学部材セット用積層体。
【請求項6】
前記反射型偏光部材の反射軸と前記吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに平行に配置される、請求項5に記載の光学部材セット用積層体。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の光学部材セットに用いられる、前記第2のλ/4部材であって、
前記第一レンズ部と一体化される形態で用いられる、
光学部材セット用λ/4部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ部、積層体、表示体、表示体の製造方法および表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置においては、画像表示を実現し、画像表示の性能を高めるために、一般的に、偏光部材、位相差部材等の光学部材が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、画像表示装置の新たな用途が開発されている。例えば、Virtual Reality(VR)を実現するためのディスプレイ付きゴーグル(VRゴーグル)が製品化され始めている。VRゴーグルは様々な場面での利用が検討されていることから、その軽量化、高精細化等が望まれている。軽量化は、例えば、VRゴーグルに用いられるレンズを薄型化することで達成され得る。一方で、薄型レンズを用いた表示システムに適した光学部材の開発も望まれている。さらに、VR表示システムにおいては、円偏光と直線偏光との変換、反射等が利用されるところ、本来反射されるべき光が透過してしまい、残像(ゴースト)として視認されるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑み、本発明はVRゴーグルの軽量化、高精細化を実現し得、さらに、残像を抑制し得るレンズ部の提供を主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の実施形態による光学部材セットは、偏光部材、第1のλ/4部材、第2のλ/4部材、反射型偏光部材および吸収型偏光部材を含む。該光学部材セットに含まれる各部材は、表示素子から前方に向けて出射された光が、上記偏光部材および上記第1のλ/4部材を通過し、上記反射型偏光部材で反射し、さらに上記第2のλ/4部材を通過した後に前方側に反射して上記反射型偏光部材および上記吸収型偏光部材を通過するように配置される。上記第2のλ/4部材は、上記表示素子と上記反射型偏光部材との間の光路上に配置される第一レンズ部と一体化され、かつ、上記反射型偏光部材および上記吸収型偏光部材は、上記吸収型偏光部材の前方に配置される第二レンズ部と一体化される形態で用いられる。上記第2のλ/4部材と上記反射型偏光部材とは離隔して配置され、かつ、上記第一レンズ部および上記第2のλ/4部材は上記表示素子側からこの順に配置される。
[2]上記[1]において、上記反射型偏光部材の反射軸と上記吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに平行に配置される。
[3]上記[1]または[2]において、上記偏光部材、上記第1のλ/4部材および上記第2のλ/4部材は、上記偏光部材の吸収軸と上記第1のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が40°~50°となり、かつ、上記偏光部材の吸収軸と上記第2のλ/4部材の遅相軸とのなす角度が40°~50°となるよう配置される。
[4]上記[1]から[3]のいずれかにおいて、上記第2のλ/4部材と上記第一レンズ部とは接着層を介して一体化される形態で用いられ、かつ、上記反射型偏光部材と上記吸収型偏光部材と上記第二レンズ部とは接着層を介して一体化される形態で用いられる。
[5]本発明の別の局面によれば、光学部材セット用積層体が提供される。該積層体は、上記[1]から[4]のいずれかの光学部材セットに用いられる。該積層体は、上記反射型偏光部材と上記吸収型偏光部材とを有し、上記第二レンズ部と一体化される形態で用いられる。
[6]上記[5]において、上記反射型偏光部材の反射軸と上記吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに平行に配置される。
[7]本発明のさらに別の局面によれば、光学部材セット用λ/4部材が提供される。該λ/4部材は、上記[1]から[4]のいずれかの光学部材セットに用いられる上記第2のλ/4部材である。該λ/4部材は、上記第一レンズ部と一体化される形態で用いられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によるレンズ部によれば、VRゴーグルの軽量化、高精細化を実現し得、さらに、残像を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
【
図2】反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re(λ)=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth(λ)=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、当該角度は基準方向に対して時計回りおよび反時計回りの両方を包含する。したがって、例えば「45°」は±45°を意味する。
【0011】
図1は本発明の1つの実施形態に係る表示システムの概略の構成を示す模式図である。
図1では、表示システム2の各構成要素の配置および形状等を模式的に図示している。表示システム2は、表示素子12と、反射型偏光部材32と、吸収型偏光部材34と、第一レンズ部16と、ハーフミラー18と、第一位相差部材20と、第二位相差部材22と、第二レンズ部24とを備えている。反射型偏光部材32は、表示素子12の表示面12a側である前方に配置され、表示素子12から出射された光を反射し得る。第一レンズ部16は表示素子12と反射型偏光部材32との間の光路上に配置され、ハーフミラー18は表示素子12と第一レンズ部16との間に配置されている。第一位相差部材20は表示素子12とハーフミラー18との間の光路上に配置され、第二位相差部材22はハーフミラー18と反射型偏光部材32との間の光路上に配置されている。吸収型偏光部材34は、反射型偏光部材32の前方に配置され得る。反射型偏光部材の反射軸と吸収型偏光部材の吸収軸とは互いに略平行に配置され得、反射型偏光部材の透過軸と吸収型偏光部材の透過軸とは互いに略平行に配置され得る。なお、反射型偏光部材32と吸収型偏光部材34とをまとめて反射部と称する場合がある。第二レンズ部24は、吸収型偏光部材34の前方に配置されている。
【0012】
本発明の実施形態においては、図示例のように、第二位相差部材22(以下、第二位相差部材を第2のλ/4部材と称する場合がある)と第一レンズ部16とは一体化されており、ならびに、反射型偏光部材32と吸収型偏光部材34と第二レンズ部24とは一体化されている。第2のλ/4部材22と第一レンズ部16、ならびに、反射型偏光部材32と吸収型偏光部材34と第二レンズ部24とは、例えば接着層(図示せず)を介して一体化(代表的には、積層)されている。言い換えれば、第2のλ/4部材22と吸収型偏光部材34とは、離隔して(別体として)構成されている。このような構成であれば、各部材の光学軸(遅相軸、反射軸および吸収軸)の軸配置のズレによる透過率の増大を防止することができる。より詳細には、以下のとおりである。本発明者らは、第2のλ/4部材と吸収型偏光部材34と(必然的に、反射型偏光部材32と)が一体化されている場合、吸収型偏光部材を構成する吸収型偏光フィルムの加温等による高温環境下における変形(代表的には収縮)により、第2のλ/4部材に変形および/または遅相軸方向のずれが生じる場合があることを見出した。さらに、このような変形および/または遅相軸方向のずれにより、本来反射型偏光部材で反射されるべき光が反射せずに反射型偏光部材を透過し、このような透過光により残像(ゴースト)が発生することを見出した。これに対し、上記のような構成であれば、本来反射されるべき光の透過を抑制することができ、残像(ゴースト)を良好に抑制することができる。なお、必要に応じて、反射型偏光部材32の吸収型偏光部材34が配置されていない側の表面、および/または、第2のλ/4部材22の第一レンズ部16が配置されていない側の表面に、任意の適切な低反射フィルムがさらに設けられていてもよい(さらに一体化されていてもよい)。接着層は、接着剤で形成されてもよいし、粘着剤で形成されてもよい。接着層の厚みは、例えば0.05μm~30μmであり、好ましくは3μm~20μmであり、さらに好ましくは5μm~15μmである。
【0013】
ハーフミラーから前方に配置される構成要素(図示例では、ハーフミラー18、第一レンズ部16、第二位相差部材22、反射型偏光部材32、吸収型偏光部材34および第二レンズ部24)をまとめてレンズ部(レンズ部4)と称する場合がある。
【0014】
表示素子12は、例えば、液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイであり、画像を表示するための表示面12aを有している。表示面12aから出射される光は、例えば、表示素子12に含まれ得る偏光部材(代表的には、偏光フィルム)を通過して出射され、第1の直線偏光とされている。
【0015】
第一位相差部材20は、第一位相差部材20に入射した第1の直線偏光を第1の円偏光に変換し得るλ/4部材である(以下、第一位相差部材を第1のλ/4部材と称する場合がある)。なお、第一位相差部材20は、表示素子12に一体に設けられてもよい。
【0016】
ハーフミラー18は、表示素子12から出射された光を透過させ、反射型偏光部材32で反射された光を反射型偏光部材32に向けて反射させる。ハーフミラー18は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0017】
第二位相差部材22は、反射型偏光部材32およびハーフミラー18で反射させた光を、反射型偏光部材32を透過させ得るλ/4部材である。第二位相差部材22は、第一レンズ部16に一体に設けられている。
【0018】
第1のλ/4部材20から出射された第1の円偏光は、ハーフミラー18および第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第2の直線偏光に変換される。第2のλ/4部材22から出射された第2の直線偏光は、反射型偏光部材32を透過せずにハーフミラー18に向けて反射される。このとき、反射型偏光部材32に入射した第2の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材の反射軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材に入射した第2の直線偏光は、反射型偏光部材で反射される。
【0019】
反射型偏光部材32で反射された第2の直線偏光は第2のλ/4部材22により第2の円偏光に変換され、第2のλ/4部材22から出射された第2の円偏光は第一レンズ部16を通過してハーフミラー18で反射される。ハーフミラー18で反射された第2の円偏光は、第一レンズ部16を通過し、第2のλ/4部材22により第3の直線偏光に変換される。第3の直線偏光は、反射型偏光部材32を透過する。このとき、反射型偏光部材32に入射した第3の直線偏光の偏光方向は、反射型偏光部材の透過軸と同方向である。そのため、反射型偏光部材32に入射した第3の直線偏光は、反射型偏光部材を透過する。
【0020】
反射型偏光部材32を透過した光は、吸収型偏光部材34および第二レンズ部24を通過して、ユーザの目26に入射する。なお、反射型偏光部材32を透過した第3の直線偏光の偏光方向は、吸収型偏光部材の透過軸と同方向である。
【0021】
例えば、表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と反射型偏光部材32の反射軸とは、互いに略平行に配置されてもよいし、略直交に配置されてもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第一位相差部材20の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。表示素子12に含まれる偏光部材の吸収軸と第二位相差部材22の遅相軸とのなす角度は、例えば40°~50°であり、42°~48°であってもよく、約45°であってもよい。第一位相差部材20の遅相軸と第二位相差部材22の遅相軸とは、例えば、互いに略平行に配置され得る。
【0022】
第一位相差部材20の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。
【0023】
第一位相差部材20は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第一位相差部材20のRe(450)/Re(550)は、例えば1未満であり、0.95以下であってよく、さらには0.90未満、さらには0.85以下であってもよい。第一位相差部材20のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上である。
【0024】
1つの実施形態において、第一位相差部材20は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす。第一位相差部材20は、0.65<Re(400)/Re(550)<0.80(好ましくは、0.7<Re(400)/Re(550)<0.75)、1.0<Re(650)/Re(550)<1.25(好ましくは、1.05<Re(650)/Re(550)<1.20)、および1.05<Re(750)/Re(550)<1.40(好ましくは、1.08<Re(750)/Re(550)<1.36)から選択される少なくとも1つを満たすことが好ましく、より好ましくは少なくとも2つを満たし、さらに好ましくは全てを満たす。
【0025】
第一位相差部材20は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第一位相差部材20のNz係数は、好ましくは0.9~3、より好ましくは0.9~2.5、さらに好ましくは0.9~1.5、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0026】
第一位相差部材20は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第一位相差部材20は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。
【0027】
上記樹脂フィルムに含まれる樹脂としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステルカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、環状オレフィン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく、組み合わせて(例えば、ブレンド、共重合)用いてもよい。第一位相差部材20が逆分散波長特性を示す場合、ポリカーボネート系樹脂またはポリエステルカーボネート系樹脂(以下、単にポリカーボネート系樹脂と称する場合がある)を含む樹脂フィルムが好適に用いられ得る。
【0028】
上記ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切なポリカーボネート系樹脂を用いることができる。例えば、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジオール、脂環式ジメタノール、ジ、トリまたはポリエチレングリコール、ならびに、アルキレングリコールまたはスピログリコールからなる群から選択される少なくとも1つのジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、を含む。好ましくは、ポリカーボネート系樹脂は、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂環式ジメタノールに由来する構造単位ならびに/あるいはジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含み;さらに好ましくは、フルオレン系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、イソソルビド系ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、ジ、トリまたはポリエチレングリコールに由来する構造単位と、を含む。ポリカーボネート系樹脂は、必要に応じてその他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含んでいてもよい。なお、第一位相差部材に好適に用いられ得るポリカーボネート系樹脂および第一位相差部材の形成方法の詳細は、例えば、特開2014-10291号公報、特開2014-26266号公報、特開2015-212816号公報、特開2015-212817号公報、特開2015-212818号公報に記載されており、これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0029】
樹脂フィルムの延伸フィルムで構成される第一位相差部材20の厚みは、例えば10μm~100μmであり、好ましくは10μm~70μm、より好ましくは10μm~40μm、さらに好ましくは20μm~30μmである。
【0030】
上記液晶化合物の配向固化層は、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層である。なお、「配向固化層」は、後述のように液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。第一位相差部材においては、代表的には、棒状の液晶化合物が第一位相差部材の遅相軸方向に並んだ状態で配向している(ホモジニアス配向)。棒状の液晶化合物として、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。
【0031】
上記液晶化合物の配向固化層(液晶配向固化層)は、所定の基材の表面に配向処理を施し、当該表面に液晶化合物を含む塗工液を塗工して当該液晶化合物を上記配向処理に対応する方向に配向させ、当該配向状態を固定することにより形成され得る。配向処理としては、任意の適切な配向処理が採用され得る。具体的には、機械的な配向処理、物理的な配向処理、化学的な配向処理が挙げられる。機械的な配向処理の具体例としては、ラビング処理、延伸処理が挙げられる。物理的な配向処理の具体例としては、磁場配向処理、電場配向処理が挙げられる。化学的な配向処理の具体例としては、斜方蒸着法、光配向処理が挙げられる。各種配向処理の処理条件は、目的に応じて任意の適切な条件が採用され得る。
【0032】
液晶化合物の配向は、液晶化合物の種類に応じて液晶相を示す温度で処理することにより行われる。このような温度処理を行うことにより、液晶化合物が液晶状態をとり、基材表面の配向処理方向に応じて当該液晶化合物が配向する。
【0033】
配向状態の固定は、1つの実施形態においては、上記のように配向した液晶化合物を冷却することにより行われる。液晶化合物が重合性または架橋性である場合には、配向状態の固定は、上記のように配向した液晶化合物に重合処理または架橋処理を施すことにより行われる。
【0034】
上記液晶化合物としては、任意の適切な液晶ポリマーおよび/または液晶モノマーが用いられる。液晶ポリマーおよび液晶モノマーは、それぞれ単独で用いてもよく、組み合わせてもよい。液晶化合物の具体例および液晶配向固化層の作製方法は、例えば、特開2006-163343号公報、特開2006-178389号公報、国際公開第2018/123551号公報に記載されている。これらの公報の記載は本明細書に参考として援用される。
【0035】
液晶配向固化層で構成される第一位相差部材20の厚みは、例えば1μm~10μmであり、好ましくは1μm~8μm、より好ましくは1μm~6μm、さらに好ましくは1μm~4μmである。
【0036】
第二位相差部材22の面内位相差Re(550)は、例えば100nm~190nmであり、110nm~180nmであってもよく、130nm~160nmであってもよく、135nm~155nmであってもよい。
【0037】
第二位相差部材22は、好ましくは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示す。第二位相差部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば1未満であり、0.95以下であってよく、さらには0.90未満、さらには0.85以下であってもよい。第二位相差部材22のRe(450)/Re(550)は、例えば0.75以上である。
【0038】
1つの実施形態において、第二位相差部材22は、Re(400)/Re(550)<0.85、Re(650)/Re(550)>1.03、およびRe(750)/Re(550)>1.05を全て満たす。第二位相差部材22は、0.65<Re(400)/Re(550)<0.80(好ましくは、0.7<Re(400)/Re(550)<0.75)、1.0<Re(650)/Re(550)<1.25(好ましくは、1.05<Re(650)/Re(550)<1.20)、および1.05<Re(750)/Re(550)<1.40(好ましくは、1.08<Re(750)/Re(550)<1.36)から選択される少なくとも1つを満たすことが好ましく、より好ましくは少なくとも2つを満たし、さらに好ましくは全てを満たす。
【0039】
第二位相差部材22は、好ましくは屈折率特性がnx>ny≧nzの関係を示す。ここで「ny=nz」はnyとnzが完全に等しい場合だけではなく、実質的に等しい場合を包含する。したがって、本発明の効果を損なわない範囲で、ny<nzとなる場合があり得る。第二位相差部材22のNz係数は、好ましくは0.9~3、より好ましくは0.9~2.5、さらに好ましくは0.9~1.5、特に好ましくは0.9~1.3である。
【0040】
第二位相差部材22は、上記特性を満足し得る任意の適切な材料で形成される。第二位相差部材22は、例えば、樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層であり得る。樹脂フィルムの延伸フィルムまたは液晶化合物の配向固化層で構成される第二位相差部材22については、第一位相差部材20と同様の説明を適用することができる。第一位相差部材20と第二位相差部材22とは、同じ構成(形成材料、厚み、光学特性等)の部材であってもよく、異なる構成の部材であってもよい。
【0041】
上記反射型偏光部材は、その透過軸に平行な偏光(代表的には、直線偏光)をその偏光状態を維持したまま透過させ、それ以外の偏光状態の光を反射し得る。反射型偏光部材としては、代表的には、多層構造を有するフィルム(反射型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。この場合、反射型偏光部材の厚みは、例えば10μm~150μmであり、好ましくは20μm~100μmであり、さらに好ましくは30μm~60μmである。
【0042】
図2は、反射型偏光フィルムに含まれる多層構造の一例を示す模式的な斜視図である。多層構造32aは、複屈折性を有する層Aと複屈折性を実質的に有さない層Bとを交互に有する。多層構造を構成する層の総数は、50~1000であってもよい。例えば、A層のx軸方向の屈折率nxはy軸方向の屈折率nyより大きく、B層のx軸方向の屈折率nxとy軸方向の屈折率nyとは実質的に同一であり、A層とB層との屈折率差は、x軸方向において大きく、y軸方向においては実質的にゼロである。その結果、x軸方向が反射軸となり、y軸方向が透過軸となり得る。A層とB層とのx軸方向における屈折率差は、好ましくは0.2~0.3である。
【0043】
上記A層は、代表的には、延伸により複屈折性を発現する材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸ポリエステル(例えば、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート)が挙げられる。上記B層は、代表的には、延伸しても複屈折性を実質的に発現しない材料で構成される。このような材料としては、例えば、ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とのコポリエステルが挙げられる。上記多層構造は、共押出と延伸とを組み合わせて形成され得る。例えば、A層を構成する材料とB層を構成する材料とを押し出した後、多層化する(例えば、マルチプライヤーを用いて)。次いで、得られた多層積層体を延伸する。図示例のx軸方向は、延伸方向に対応し得る。
【0044】
反射型偏光フィルムの市販品として、例えば、3M社製の商品名「DBEF」、「APF」、日東電工社製の商品名「APCF」が挙げられる。
【0045】
反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の直交透過率(Tc)は、例えば0.01%~3%であり得る。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の単体透過率(Ts)は、例えば43%~49%であり得、好ましくは45~47%であり得る。反射型偏光部材(反射型偏光フィルム)の偏光度(P)は、例えば92%~99.99%であり得る。
【0046】
上記吸収型偏光部材としては、代表的には、二色性物質を含む樹脂フィルム(吸収型偏光フィルムと称する場合がある)で構成される。この場合、吸収型偏光部材の厚みは、例えば1μm以上20μm以下であり、2μm以上15μm以下であってもよく、12μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。
【0047】
上記吸収型偏光フィルムは、単層の樹脂フィルムから作製してもよく、二層以上の積層体を用いて作製してもよい。
【0048】
単層の樹脂フィルムから作製する場合、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理等を施すことにより吸収型偏光フィルムを得ることができる。中でも、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られる吸収型偏光フィルムが好ましい。
【0049】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。
【0050】
上記二層以上の積層体を用いて作製する場合の積層体としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる吸収型偏光フィルムは、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を吸収型偏光フィルムとすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる吸収型偏光フィルムの光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/吸収型偏光フィルムの積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を吸収型偏光フィルムの保護層としてもよく)、樹脂基材/吸収型偏光フィルムの積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような吸収型偏光フィルムの製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0051】
吸収型偏光部材(吸収型偏光フィルム)の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。吸収型偏光部材(吸収型偏光フィルム)の単体透過率(Ts)は、例えば41.0%~45.0%であり、好ましくは42.0%以上である。吸収型偏光部材(吸収型偏光フィルム)の偏光度(P)は、例えば99.0%~99.997%であり、好ましくは99.9%以上である。
【0052】
反射部の直交透過率(Tc)は、0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.05%以下である。このような直交透過率を満足することにより、ユーザの残像(ゴースト)の視認を抑制することができ、優れた表示特性を実現し得る。反射部の単体透過率(Ts)は、好ましくは40.0%~45.0%であり、より好ましくは41.0%以上である。反射部の偏光度(P)は、好ましくは99.0%~99.997%であり、より好ましくは99.9%以上である。
【0053】
上記反射部の光学特性は、反射型偏光部材の光学特性に相当してもよく、反射型偏光部材と吸収型偏光部材との積層体の光学特性に相当してもよい。上記光学特性は、反射型偏光部材に吸収型偏光部材を組み合わせることで、極めて良好に達成され得る。
【0054】
上記のとおり、第2のλ/4部材と第一レンズ部、ならびに、反射型偏光部材と吸収型偏光部材と第二レンズ部とは、それぞれ一体化されている。本発明の実施形態は、このような一体化物(積層体)のそれぞれも包含する。それぞれの積層体は、例えば、
図1の表示システム(代表的には、そのレンズ部)に用いられ得る。
【実施例0055】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、厚みは下記の測定方法により測定した値である。
<厚み>
10μm以下の厚みは、走査型電子顕微鏡(日本電子社製、製品名「JSM-7100F」)を用いて測定した。10μmを超える厚みは、デジタルマイクロメーター(アンリツ社製、製品名「KC-351C」)を用いて測定した。
【0056】
[製造例1:偏光板1の作製]
平均重合度2400、ケン化度99.9モル%、厚さ30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃ の温水中に浸漬し、膨潤させながらPVA系樹脂フィルムの長さが元長の2.0倍となるように一軸延伸を行った。次いで、0.3重量%(重量比:ヨウ素/ヨウ化カリウム=0.5/8)の30℃のヨウ素溶液中に浸漬し、PVA系樹脂フィルムの長さが元長の3.0倍となるように一軸延伸しながら染色した。その後、ホウ酸4重量%、ヨウ化カリウム5重量%の水溶液中で、PVA系樹脂フィルムの長さが元長の6倍となるように延伸した。さらに、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(ヨウ素含浸浴)でヨウ素イオン含浸処理を行った後、60℃のオーブンで4分間乾燥し、厚さ12μmの偏光膜を得た。
この偏光膜の両側に長尺状のHC-TACフィルムおよび内側保護層となる長尺状のアクリル系樹脂フィルム(厚み20μm)をそれぞれ、互いの長手方向を揃えるようにして貼り合わせて偏光板1を得た。なお、HC-TACフィルムは、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)にハードコート(HC)層(厚み7μm)が形成されたフィルムであり、TACフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。
【0057】
[製造例2:λ/4部材1の作製]
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置に、ビス[9-(2-フェノキシカルボニルエチル)フルオレン-9-イル]メタン29.60重量部(0.046mol)、イソソルビド(ISB)29.21重量部(0.200mol)、スピログリコール(SPG)42.28重量部(0.139mol)、ジフェニルカーボネート(DPC)63.77重量部(0.298mol)、および、触媒として酢酸カルシウム1水和物1.19×10-2重量部(6.78×10-5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネート系樹脂を水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリエステルカーボネート系樹脂(ペレット)を80℃で5時間真空乾燥をした後、単軸押出機(東芝機械社製、シリンダー設定温度:250℃)、Tダイ(幅200mm、設定温度:250℃)、チルロール(設定温度:120~130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、厚み130μmの長尺状の樹脂フィルムを作製した。得られた長尺状の樹脂フィルムを、幅方向に、延伸温度140℃、延伸倍率2.7倍で延伸した。これにより、厚みが47μmであり、Re(590)が143nmであり、Nz係数が1.2である位相差フィルム(λ/4部材1)を得た。
【0058】
[製造例3:λ/4部材2の作製]
式(I)で示される化合物55重量部と、式(II)で示される化合物25重量部と、式(III)で示される化合物20重量部とを、シクロペンタノン(CPN)400重量部に加えた後、60℃に加温、撹拌して溶解させた。その後、上記した化合物の溶液を室温に戻し、上記した化合物の溶液に、イルガキュア907(BASFジャパン社製)3重量部と、メガファックF-554(DIC社製)0.2重量部と、p-メトキシフェノール(MEHQ)0.1重量部とを加えて、さらに撹拌した。撹拌後の溶液は、透明で均一であった。得られた溶液を0.20μmのメンブランフィルターでろ過し、重合性組成物を得た。
また、配向膜用ポリイミド溶液を厚さ0.7mmのガラス基材にスピンコート法を用いて塗布し、100℃で10分乾燥した後、200℃で60分焼成することにより塗膜を得た。得られた塗膜を、市販のラビング装置によってラビング処理し、配向膜を形成した。
次いで、基材(実質的には、配向膜)に、上記で得られた重合性組成物をスピンコート法で塗布し、100℃で2分乾燥した。得られた塗布膜を室温まで冷却した後、高圧水銀ランプを用いて、30mW/cm
2の強度で30秒間紫外線を照射した。これにより、厚みが1.5μmであり、Re(590)が143nmであり、Nz係数が1.0である液晶配向固化層(λ/4部材2)を得た。
【化1】
【化2】
【0059】
[実施例1]
反射型偏光フィルム(日東電工社製の「APCFG4」)に偏光板1を、反射型偏光フィルムの反射軸と偏光板1の偏光膜の吸収軸とが互いに平行に配置されるように、粘着剤を介して貼り合わせ、反射型偏光フィルム/偏光板1の積層体を得た。積層体を縦100mm、横100mmの大きさに切断した後に、偏光板1側をガラス(レンズ代替品)に粘着剤を介して貼り合わせ、反射型偏光フィルム/偏光板1/ガラスの構成を有する評価用サンプルE1-1を得た。ここでは、偏光板の偏光膜の吸収軸が横方向(0°)になるように切断を行った。一方、製造例2の位相差フィルム1(第2のλ/4部材)を縦100mm、横100mmの大きさに切断した後に、評価用サンプルE1-1と同様のガラスに、粘着剤を介して貼り合わせ、(λ/4)部材1/ガラスの構成を有する評価用サンプルE1-2を得た。ここでは、位相差フィルムの遅相軸が、横方向を0°としてガラス面を下にした状態で上から視認した際に、反時計回りに45°になるように切断を行った。
【0060】
[比較例1]
実施例1と同様にして、反射型偏光フィルム/偏光板1の積層体を得た。次に、反射型偏光フィルムの偏光板が設けられていない側の表面に、粘着剤を介して製造例2の位相差フィルム1(第2のλ/4部材)を貼り合わせた。ここで、位相差フィルム1は、その遅相軸が反射型偏光フィルムの反射軸および偏光板1の偏光膜の吸収軸に対して45°の角度をなすようにして貼り合わせた。このようにして、(λ/4)部材1/反射型偏光フィルム/偏光板1の構成を有する積層体1を得た。積層体1を縦100mm、横100mmの大きさに切断した後に、λ/4部材1側を実施例1と同様のガラスに粘着剤を介して貼り合わせ、ガラス/(λ/4)部材1/反射型偏光フィルム/偏光板1の構成を有する評価用サンプルC1を得た。ここでは、偏光板の吸収軸が横方向(0°)になり、位相差フィルムの遅相軸が、横方向を0°としてガラス面を下にした状態で上から視認した際に、反時計回りに45°になるように切断を行った。
【0061】
[比較例2]
比較例1と同様にして積層体1を得た。積層体1を縦100mm、横100mmの大きさに切断した後に、偏光板1側を実施例1と同様のガラスに粘着剤を介して貼り合わせ、(λ/4)部材1/反射型偏光フィルム/偏光板1/ガラスの構成を有する評価用サンプルC2を得た。ここでは、偏光板の吸収軸が横方向(0°)になり、位相差フィルムの遅相軸が、横方向を0°としてガラス面を下にした状態で上から視認した際に、反時計回りに135°になるように切断を行った。
【0062】
実施例および比較例で得られた評価用サンプルについて、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
<評価>
評価用サンプルを85℃のオーブンに120時間保管した際の縦方向及び横方向の寸法収縮率を測定した。次に、その寸法収縮率から遅相軸及び吸収軸の角度を算出し、更にそれぞれの遅相軸及び吸収軸の角度をもとに、45°からの軸ずれを算出した。結果を表1に示す。
【0063】
【0064】
表1から明らかなとおり、本発明の実施例によれば、比較例に比べて第2のλ/4部材の寸法変化率が小さく、その結果、第2のλ/4部材と反射型偏光フィルムとの軸ずれが小さくなっている。これは、第2のλ/4部材の軸ずれによる透過率の増大を防止できるので、残像(ゴースト)を良好に抑制できることを意味する。なお、製造例2のλ/4部材1の代わりに製造例3のλ/4部材2を用いても同様の結果が得られることが確認された。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態で示した構成と実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。