IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特開2024-133091正極スクラップを用いた活物質の再使用方法
<>
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図1
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図2
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図3
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図4
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図5
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図6
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図7
  • 特開-正極スクラップを用いた活物質の再使用方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133091
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】正極スクラップを用いた活物質の再使用方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20240920BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20240920BHJP
   H01M 10/54 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B1/00 101
H01M10/54
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109468
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2022566240の分割
【原出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134325
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ミン-ソ・キム
(72)【発明者】
【氏名】セ-ホ・パク
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ-キョン・ヤン
(57)【要約】
【課題】正極スクラップから活物質を回収して再使用する方法を提供する。
【解決手段】本発明の正極活物質の再使用方法は、(a-1)集電体上のリチウム複合遷移金属酸化物からなる正極活物質層を含む正極スクラップを乾式粉砕して活物質層を粉末形態で脱離して集電体と分離する段階と、(a-2)粉末形態で脱離した活物質層を空気中で熱処理して活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することで活物質を回収する段階と、(b)回収された活物質を水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄して乾燥する段階と、(c)洗浄された活物質にリチウム前駆体を添加してアニーリングして再使用可能な活物質を得る段階と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)集電体上のリチウム複合遷移金属酸化物からなる正極活物質層を含む正極スクラップを乾式粉砕して前記活物質層を粉末形態で脱離して前記集電体と分離する段階と、
(a-2)粉末形態で脱離した前記活物質層を空気中で熱処理して前記活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することで活物質を回収する段階と、
(b)回収された活物質を水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄して乾燥する段階と、
(c)洗浄された活物質にリチウム前駆体を添加してアニーリングして再使用可能な活物質を得る段階と、を含む、正極活物質の再使用方法。
【請求項2】
(d)アニーリングされた活物質に表面コーティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項3】
前記乾式粉砕は、ピンミル、ディスクミル、カッティングミル及びハンマーミルのいずれか一つを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項4】
前記乾式粉砕する前、前記正極スクラップをシュレッディングまたはカッティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項5】
前記熱処理は、300~1,000℃で行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項6】
前記リチウム化合物水溶液は、0%超15%以下のリチウム前駆体を含むように製造され、前記洗浄は1時間以内に行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項7】
前記洗浄は、前記回収された活物質を前記リチウム化合物水溶液に含浸すると共に攪拌して行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項8】
前記リチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項9】
前記リチウム前駆体を、前記活物質層に使用された原材料活物質中のリチウムと他の金属との割合に対し、損失されたリチウムの割合分を補い得る量で添加することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項10】
前記リチウム前駆体を、リチウム添加量が0.001~0.4モル比となる量で添加することを特徴とする、請求項9に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項11】
前記リチウム前駆体は、リチウムと他の金属とのモル比を1:1基準にして、リチウムを0.0001~0.1モル比となる量でさらに添加することを特徴とする、請求項9に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項12】
前記アニーリングを400~1,000℃の空気中で行うことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項13】
前記アニーリングの段階の温度は、前記リチウム前駆体の融点を超える温度であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項14】
前記表面コーティングの段階は、金属、有機金属及び炭素成分のいずれか一種以上を固相または液相方式で表面にコーティングした後、100~1,200℃で熱処理することを特徴とする、請求項2に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項15】
前記再使用可能な活物質は、下記の化学式1で表され、
LiNiMnCo2+δ (化学式1)
前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群より選択される一種以上を含み、1<a≦1.1、0≦x<0.95、0≦y<0.8、0≦z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池の製造時、資源をリサイクルする方法に関する。本発明は、特に、リチウム二次電池の製造工程で発生する正極スクラップまたは使用後に廃棄されるリチウム二次電池の正極活物質を回収して再使用する方法に関する。本出願は、2020年10月16日出願の韓国特許出願第10-2020-0134325号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
反復的な充電と放電の可能なリチウム二次電池が化石エネルギーの代替手段として脚光を浴びている。リチウム二次電池は、携帯電話、ビデオカメラ、電動工具のような伝統的なハンドヘルドデバイスに主に使用されていた。しかし、最近には、電気で駆動される自動車(EV、HEV、PHEV)、大容量の電力貯蔵装置(ESS)、無停電電源装置(UPS)などにその適用分野が次第に増加しつつある。
【0003】
リチウム二次電池は、活物質が集電体にコーティングされた正極板と負極板が分離膜を挟んで配置された構造を有する単位セルが集合した電極組立体と、この電極組立体を電解液と共に密封して収納する外装材、即ち、電池ケースを備える。リチウム二次電池の正極活物質は、主にリチウム系酸化物を使用し、負極活物質は炭素材を使用する。リチウム系酸化物には、コバルト、ニッケルまたはマンガンのような金属が含有されている。特に、コバルト、ニッケル、マンガンは、非常に高価である有価金属であり、その中でもコバルトは戦略的金属に属するものであって、世界各国は需給に格別の関心を持っており、コバルト生産国の数が限定されていることから、世界的にその需給が不安定な金属と知られている。戦略的金属の原資材の需給不均衡が招来されると、原資材価格の上昇可能性が大きい。
【0004】
既存には、使用後に寿命が完了して廃棄されるリチウム二次電池(廃電池)からこのような有価金属を回収してリサイクルする研究が主に進んできた。廃電池の外にも、正極板の打ち抜き後に捨てられる廃棄物または工程中に不良が発生した正極から資源が回収可能であれば、より望ましい。
【0005】
現在、リチウム二次電池の製造時には、図1のようにアルミニウム(Al)ホイルのような長いシート状の正極集電体10に、正極活物質、導電材、バインダー、溶媒などを混合した正極スラリーをコーティングして正極活物質層20を形成することで正極シート30を製造した後、一定のサイズで正極板40を打ち抜いている。打ち抜いた後に残った部分は、正極スクラップ(scrap)50として廃棄される。正極スクラップ50から正極活物質を回収して再使用可能になれば、産業経済面及び環境面で非常に望ましいであろう。
【0006】
既存の正極活物質を回収する方法は、正極を、塩酸、硫酸、硝酸などで溶解した後、コバルト、ニッケル、マンガンなどの活物質元素を抽出し、再び正極活物質の合成のための原料として使用する場合がほとんどである。しかし、酸を用いた活物質元素の抽出法は、純粋な原料を回収するための工程が環境に優しくないだけでなく、中和工程と廃水処理工程が必要になり、工程費用が上昇するという短所がある。また、正極活物質元素のうち主元素の一つであるリチウムを回収できないという短所がある。このような短所を解消するには、正極活物質を溶解せず、活物質を元素形態で抽出することなく直接再使用可能な方法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、正極スクラップから活物質を回収して再使用する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の正極活物質の再使用方法は、(a-1)集電体上のリチウム複合遷移金属酸化物からなる正極活物質層を含む正極スクラップを乾式粉砕して活物質層を粉末形態で脱離して集電体と分離する段階と、(a-2)粉末形態で脱離した活物質層を空気中で熱処理して活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することで活物質を回収する段階と、(b)回収された活物質を水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄して乾燥する段階と、(c)洗浄された活物質にリチウム前駆体を添加してアニーリングして再使用可能な活物質を得る段階と、を含む。
【0009】
本発明において、(d)アニーリングされた活物質に表面コーティングする段階をさらに含み得る。
【0010】
乾式粉砕は、ピンミル(Pin-mill)、ディスクミル(disc-mill)、カッティングミル(cutting-mill)及びハンマーミル(hammer-mill)のいずれか一つを用い得る。
【0011】
乾式粉砕する前、正極スクラップをシュレッディング(shredding)またはカッティング(cutting)する段階をさらに含み得る。
【0012】
熱処理は、300~1,000℃で行い得る。
【0013】
熱処理は、常温速度5℃/分で、550℃で30分間行い得る。
【0014】
リチウム化合物水溶液は、0%超15%以下のリチウム前駆体を含むように製造され、望ましくはLiOHを使用する。洗浄は1時間以内に行い得る。
【0015】
洗浄を、回収された活物質をリチウム化合物水溶液に含浸すると共に攪拌することで行い得る。
【0016】
リチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか一つ以上であり得る。
【0017】
リチウム前駆体を、活物質層に使用された原材料活物質中のリチウムと他の金属との割合に対し、損失されたリチウムの割合分を補い得る量で添加し得る。
【0018】
例えば、リチウム前駆体を、リチウム添加量が0.001~0.4モル比となる量で添加し得る。
【0019】
さらに、リチウム前駆体は、リチウムと他の金属とのモル比を1:1基準にして、リチウムを0.0001~0.1モル比となる量でさらに添加することが望ましい。
【0020】
アニーリングを400~1,000℃の空気中で行い得る。
【0021】
アニーリング段階の温度は、リチウム前駆体の融点を超える温度であり得る。
【0022】
活物質層中の活物質は粉末形態で回収され、バインダーや導電材の炭化によって生じる炭素成分が表面に残っていない。
【0023】
表面コーティングの段階は、金属、有機金属及び炭素成分のいずれか一種以上を固相または液相方式で表面にコーティングした後、100~1,200℃で熱処理する段階であり得る。
【0024】
再使用可能な活物質は、下記の化学式1で表され得る。
【0025】
LiNiMnCo2+δ (化学式1)
【0026】
化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群より選択される一種以上を含み、1<a≦1.1、0≦x<0.95、0≦y<0.8、0≦z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。
【0027】
再使用可能な活物質は、フッ素(F)の含量が100ppm以下であり得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、リチウム二次電池の製造工程で発生する正極スクラップのような廃正極活物質を、酸を用いることなく再使用可能であるため、環境に優しい。本発明による方法は、中和工程や廃水処理工程が不要であるので、環境への負担を緩和して工程費用を節減することができる。
【0029】
本発明によると、回収できない金属元素なく正極活物質を回収することができる。集電体を溶解しないため、集電体も回収することができる。活物質元素を抽出してさらに正極活物質の合成のための原料として使用せず、粉末形態で回収した活物質を直接再使用できる方法であるので、経済的である。
【0030】
本発明によると、NMP、DMC、アセトン、メタノールのような有毒及び爆発危険のある溶媒を使用しないため安全であり、熱処理と洗浄、アニーリングなどの簡単な工程を用いることから、工程管理が容易であり、大量生産に適している。
【0031】
本発明によると、回収した活物質の電気化学的性能が低下せず、優秀な抵抗特性及び容量特性を具現することができる。
【0032】
特に本発明によると、乾式粉砕を用いて活物質と集電体を先に分離する。乾式粉砕によって集電体と活物質を完全に分離して95%以上の正極活物質の回収率を確保することができる。乾式粉砕は、時間当りの処理率が高いため、高い生産性で正極活物質の再使用処理が可能である。
【0033】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】正極シートにおいて正極板の打抜け後に廃棄される正極スクラップを示す図である。
図2】本発明による活物質の再使用方法のフローチャートである。
図3】本発明の実験例による各段階別の結果物の写真である。
図4】本発明による活物質の再使用方法のうち乾式粉砕後の活物質層のSEM写真である。
図5図4の活物質層を空気中で熱処理した後のSEM写真である。
図6】本発明による活物質の再使用方法のうち洗浄を行ってLiFを除去した後に乾燥した活物質のSEM写真である。
図7】比較例の活物質を使用してセル評価を行った結果である。
図8】実施例及び比較例の活物質を使用してセル評価を行った結果である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0036】
後述する説明において、本願の一部を形成する添付図面を参照する。詳細な説明に記述された具現例、図面及び請求項は、制限しようとする意図がない。ここに開示された主題物の精神と範囲から外れることなく他の実施例を活用することができ、他の変更も可能である。ここに一般的に記述され、図面によって説明されたような本発明の様相は、多様な他の構成で配列、代替、組合せ、分離及びデザインされ得、その全てがここで確かに考慮されたということを理解することができるであろう。
【0037】
他の方式で定義されない限り、本明細書において使用されたあらゆる技術的・科学的用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者(以下、「当業者」とする。)に共通して理解されるものと同じ意味を有する。
【0038】
本発明は、本願に説明された特定の実施例によって限定されない。当業者に明白であるように、本発明の精神と範囲から外れることなく多様な変更と修正が可能である。ここに列挙したものに加え、本願の範囲内で機能的に均等な方法が前述した説明から当業者に明白になるであろう。そのような変更と修正は、添付の特許請求の範囲内にある。このような請求項が資格を付与する均等物の全体範囲と共に、本発明は、請求項のみによって限定される。本発明が、勿論、変化され得る特定の方法に限定されることではないという点を理解しなければならない。ここに使用された専門用語は、特定の実施例を説明するための目的としてのみ使用されているだけで、制限しようとする意図ではない。
【0039】
従来の活物質リサイクル工程の場合、使用後、性能が退化したリチウム二次電池活物質内に有価金属(ニッケル、コバルト、マンガンなど)を元素として抽出して活物質を再合成することが主なことであったとしたら、本発明は、リチウム二次電池の製造工程中に発生する正極スクラップから活物質を回収するという点で差別性がある。
【0040】
また、既存に知られた活物質リサイクル工程の場合、酸/塩基溶解または還元/添加剤を用いた溶融を用いて有価金属を抽出し、これを金属(直接還元法)または再合成した活物質に製造するなどの化学的方法が加えられ、工程の複雑性及び費用がさらに発生する。しかし、本発明は、正極活物質を溶解することなく直接再使用する方法に関する。
【0041】
正極活物質を直接再使用するには、正極から集電体を除去しなければならない。正極から集電体を除去する方法には、高温の熱処理によってバインダーを除去すること、溶媒を用いてバインダーを溶かすこと、集電体そのものを溶かすこと、乾式粉砕とふるい分離によって活物質を選別することなどが挙げられる。
【0042】
溶媒を用いてバインダーを溶かすには、溶媒の安定性が重要である。NMPが最も効率的な溶媒であるが、毒性及び高い価格という短所がある。そして、廃溶媒を再処理するなどの溶媒回収工程が必要となる短所もある。集電体を溶かすことは、溶媒を用いることよりは工程費用が安い。しかし、再使用活物質の表面の異物除去が難しく、集電体の除去過程で水素ガスが発生するため、爆発の危険がある。乾式粉砕とふるい分離によっては、集電体と活物質とを完璧に分離しにくい。粉砕過程で活物質の粒度分布が変わり、バインダー除去が難しいため、これを再使用した電池特性が退化するという短所がある。
【0043】
本発明では、乾式粉砕を用いて活物質と集電体を先に分離する。乾式粉砕によって集電体と活物質を完全に分離して95%以上の正極活物質の回収率を確保できる。それから、熱処理によってバインダーと導電材を除去する。このような熱処理は空気中で行うため、格別の装置構成が求められず、加熱さえすればよい比較的に簡単な工程であるため、大量生産及び商業化に有利である。一方、再使用活物質の表面に異物が残留してはいけない。本発明においては、再使用活物質の表面の異物除去の段階までも提案する。
【0044】
以下、図2を参照して本発明の一実施例による活物質の再使用方法を説明する。図2は、本発明による活物質の再使用方法のフローチャートである。
【0045】
図2を参照すると、先ず、捨てられる正極スクラップを準備する(段階S10)。
【0046】
正極スクラップは、図1を参照して説明したように、集電体上に、正極活物質層を含む正極シートを製造し、打ち抜いた後に残った部分であり得る。しかのみならず、工程中に不良が発生した正極を集めて正極スクラップを用意し得る。また、使用後に廃棄されたリチウム二次電池から正極を分離して正極スクラップを用意してもよい。
【0047】
例えば、LiCoO(LCO)のようなリチウムコバルト酸化物である活物質、またはニッケル、コバルト及びマンガンを含むNCM活物質、導電材として炭素系であるカーボンブラック、及びバインダーであるポリビニリデンフルオライド(polyvinylidene fluoride, PVdF)に、NMP(N-methyl pyrrolidone)を添加して混合して製造したスラリーをアルミニウムホイルからなるシート状集電体の上にコーティングした後、約120℃の真空オーブンで乾燥して正極シートを製造した後、一定の大きさの正極板を打ち抜いてから残った正極スクラップを準備する場合であり得る。
【0048】
リチウム二次電池の正極活物質としては、リチウム複合遷移金属酸化物が用いられ、このうちLiCoOのリチウムコバルト酸化物、リチウムマンガン酸化物(LiMnOまたはLiMnなど)、リチウムリン酸鉄化合物(LiFePOなど)またはリチウムニッケル酸化物(LiNiOなど)などが主に使用されている。また、LiNiOの優秀な可逆容量は維持しながらも低い熱安定性を改善するための方法として、ニッケル(Ni)の一部を熱安定性に優れたマンガン(Mn)で置き換えたニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物及びマンガン(Mn)とコバルト(Co)で置き換えたNCMリチウム複合遷移金属酸化物が使用されている。本発明では、特にLCOやNCM活物質の再使用に適する。
【0049】
このように正極スクラップは、アルミニウムホイルのような金属箔の集電体上に活物質層を有している。活物質層は、活物質、導電材、バインダー、溶媒などを混合したスラリーをコーティングして形成したものであることから、溶媒の揮発後、活物質と導電材とをバインダーが連結する構造となっている。したがて、バインダーを除去すると、集電体から活物質が分離され得る。
【0050】
次に、このような正極スクラップを適切な大きさで破砕する(段階S20)。破砕は、正極スクラップが適当に取扱いが容易な大きさに切り刻む(shredding;シュレッディング)することを示す。シュレッディングの後に正極スクラップは10cm×10cm程度の大きさを有する。これをより細く切るカッティング(cutting)をさらに行い得る。カッティング時、正極スクラップは、例えば1cm×1cmの大きさに細かく切られ得る。
【0051】
シュレッディングとカッティングを含む破砕は、正極スクラップの取扱いと以後の工程で用いる装備のうち、求められる特性を考慮して行い得る。例えば、正極スクラップのローディングとアンローディングにおいて連続的な処理が必要な装備を用いる場合なら、正極スクラップの流動性がよくなければならないため、大きすぎる正極スクラップを破砕すべきである。
【0052】
次に、破砕された正極スクラップを乾式粉砕して活物質層を粉末形態で脱離して集電体と分離する(段階S25)。乾式粉砕は、ピンミル(Pin-mill)、ディスクミル(disc-mill)、カッティングミル(cutting-mill)及びハンマーミル(hammer-mill)のいずれか一つを用い得る。望ましくは、ピンミルを用いる。このようにピンミルによって5mm以下の粉末形態で95%以上の正極活物質の回収率を確保できる。ピンミル装備は、時間当りの処理量が500kg以上可能である。これによって、一日に10時間の工程を行うと、5tに達する電極分離効果を奏する。
【0053】
ピンミルは、回転盤(Rotor)に取り付けられた回転ピンと、固定盤(Stator)に取り付けられたピンとが互いにかみ合っている構造となっており、粉砕機を中心部に原料が投入されると、回転によって発生する空気の流れと共に分散されて回転盤と固定盤との衝撃によって原料の脆性を用いて粉碎する器機である。粉砕物は、リング状で備えられるスクリーンに形成された穴を抜け出し得るもののみを取り出すようになっている。
【0054】
このようなピンミルを用いると、ピンの形態、数量、漉されるスクリーンのサイズ範囲などを調節して、所望する程度及び粒度に粉碎可能である。破砕された正極スクラップをピンミルで粉碎すると、集電体片はより細かく切られ、脆性の大きい活物質層は集電体片から離れる。軟性の大きい集電体片は、丸い形態に巻かれてスクリーンの内部に残留し、スクリーンを通過して出る微細な粉末形態の活物質層のみを分離して得ることができる。活物質層は、事実上層と呼び得た連続性を失って切れ切れ壊れてはいるが、依然として活物質、バインダー、導電材が固まっていて粉末形態を有する。このように活物質層と集電体の脆性、軟性の差を用いて乾式粉砕のみでも両者間の分離が可能である。
【0055】
次に、粉末形態で脱離した活物質層を空気中で熱処理する(段階S30)。
【0056】
本発明において、熱処理は、活物質層中のバインダーと導電材を熱分解するために行う。熱処理は300~1,000℃で行い得ることから、高温熱処理とも呼ぶ。300℃未満の温度ではバインダーを除去しにくいことがある。乾式粉砕を行うことなく集電体が存在する状態で正極スクラップを熱処理するようになる場合、集電体の融点以下で熱処理をしなければならないという条件が付くが、本発明では、集電体が既に分離された状態の脱離した活物質層に対する熱処理を行うため、熱処理温度において集電体による制約はない。
【0057】
熱処理時間は、バインダーが充分に熱分解される程度に維持する。例えば、30分間前後にする。望ましくは、30分間以上にする。熱処理時間が長くなるほどバインダーの熱分解が起こる時間が長くなるが、一定時間以上になれば、熱分解効果に差がなくなる。望ましくは、熱処理時間は、30分間以上5時間以下にする。
【0058】
熱処理装備は、多様な形態のファーネス(furnace)であり得る。例えば、ボックス型のファーネスであってもよく、生産性を考慮すると、連続的な処理が可能なロータリキルン(rotary kiln)であり得る。
【0059】
熱処理後には大気中で徐冷または急冷し得る。
【0060】
例えば、熱処理は、温度上昇速度5℃/min、550℃で30分間行い得る。温度上昇速度は、例えば、ボックス型のファーネスで無理なく具現可能でありながら、粉末形態の活物質に熱衝撃などを発生させることなく加熱可能な程度であり得る。550℃は、バインダーの熱分解を容易にする。この温度では、10分間未満に熱処理をすると、熱分解が十分でないので、10分間以上に熱処理をしなくてはならず、30分間以上熱処理することが望ましい。
【0061】
空気中における熱処理によって活物質層中のバインダーと導電材が熱分解されながらCOとHOになって除去される。バインダーが除去されるため、回収しようとする活物質は固まった活物質が分解されて粉末形態で選別され得る。
【0062】
段階S30の熱処理は、空気中で行うことが重要である。還元気体または非活性気体雰囲気で熱処理を行うと、バインダーと導電材が熱分解されず、炭化される。炭化されると、炭素成分が活物質の表面に残留するようになり、再使用活物質の性能を低下させるようになる。空気中で熱処理を行うと、バインダーや導電材中の炭素物質は、酸素と反応してCO、COガスに燃焼して除去されるため、バインダーと導電材の残留なくほとんど除去される。
【0063】
そのため、本発明によると、活物質は粉末形態で回収され、バインダーや導電材の炭化によって生ずる炭素成分が表面に残留しない。
【0064】
次に、回収された活物質を洗浄して乾燥する(段階S40)。洗浄に際し、水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄することが重要である。このようなリチウム化合物水溶液は、0%超15%以下のリチウム化合物を含むように製造され、望ましくは、LiOHを使用する。LiOHの量は、15%以下にすることが望ましい。過量のLiOHの使用は、洗浄後にも活物質の表面にLiOHが残留することがあり、以後のアニーリング工程に影響を及ぼし得る。最大限にアニーリングの前段階における活物質の表面をきれいにするために、過量のLiOH添加は工程上よくないので、15%以下に制限する。
【0065】
洗浄は、このようなリチウム化合物水溶液に回収された活物質を浸漬しておくことで行い得る。浸漬後一週間、望ましくは一日間、より望ましくは1時間以内で洗浄を行い得る。一週間以上洗浄する場合、リチウムの過多溶出によって容量低下が発生する恐れがある。したがって、1時間以内で行うことが望ましい。洗浄は、水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液に活物質を浸漬しておくこと、浸漬した状態で攪拌することなどを含む。なるべく攪拌を並行した方がよい。リチウム化合物水溶液で攪拌せず浸漬のみを行うと、洗浄工程が遅くなり、リチウム溶出の原因になり得る。攪拌を並行すると、工程時間を最小化することができるため、攪拌はリチウム化合物水溶液の含浸と共に行うことが望ましい。乾燥は、濾過後にオーブン(convection type)で空気中で行い得る。
【0066】
水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄すると、回収された活物質の表面に存在するLiFと金属フッ化物(metal fluoride)を除去して表面を改質できる。段階S30の熱処理の間には、活物質層中のバインダーと導電材がCOとHOになりながら気化して除去され、この過程でCOとHOが活物質表面のリチウムと反応してLiCO、LiOHを形成するか、またはPVdFのようなバインダーに存在していたFが正極活物質中のリチウムや他の金属、そして添加したリチウム前駆体中のリチウムと反応してLiFまたは金属フッ化物が形成される。このようなLiFまたは金属フッ化物が残留すると、活物質の再使用時に電池特性が劣化する。本発明においては、段階S40のように洗浄段階を追加して、熱処理段階S30で再使用活物質の表面に生成された反応物を除去することで、再使用活物質の表面に異物が残留しないようにする。
【0067】
段階S40では、水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄するのが重要である。水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液ではなく、硫酸や塩酸水溶液を使用すると、活物質表面のFを洗浄することはできるが、活物質に存在する遷移金属(Co,Mg)などを溶出させて再使用正極活物質の性能を低下させる。本発明において使用する水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液は、段階S30の熱分解後にも微量でも残留しているかもしれないバインダーを除去可能であるだけでなく、活物質に存在する遷移金属などを溶出させず、洗浄過程で溶出され得るリチウムの量を補う役割も果たすため、非常に望ましい。
【0068】
なお、LiF残存時、抵抗層として作用し得る。段階S40を通じて、本発明によると、回収された活物質の表面にLiF含量を500ppm未満に調節可能であり、これによって容量改善の効果が得られる。望ましくは、Fの含量を100ppm以下にし得る。より望ましくは、Fの含量を30ppm以下にし得る。
【0069】
次に、洗浄された活物質にリチウム前駆体を添加してアニーリングする(段階S50)。
【0070】
前段階であるS30、S40を経る間、活物質中のリチウム損失が発生し得る。段階S50では、このようなリチウム損失量を補う。
【0071】
しかのみならず、段階S50では、アニーリングによって活物質の結晶構造を回復して再使用活物質の特性を一度も使用しなかったフレッシュな活物質水準に回復または改善する。
【0072】
前段階であるS30、S40を経る間、活物質の表面に変形構造が現われ得る。例えば、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物である活物質は、段階S40でNiが水分によって岩塩(rock salt)化[NiCO・2Ni(OH))H0]し、スピンネル構造が形成され得る。この状態で電池を製造すると、容量減少などの電池特性が悪くなり得る。本発明においては、段階S50によって結晶構造を回復させる。例えば、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物である活物質をさらに六方晶構造に回復させる。これによって、フレッシュな活物質と類似の水準に初期特性を回復または改善できる。
【0073】
段階S50のリチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか一つ以上であり得る。
【0074】
リチウム前駆体は、活物質層に使用された原材料活物質(即ち、フレッシュな活物質)中のリチウムと他の金属との割合に対し、損失されたリチウムの割合分を補い得る量で添加される。例えば、フレッシュな活物質中のリチウムと他の金属との割合が1である場合、リチウム添加量が0.001~0.4モル比となる量でリチウム前駆体を添加し得る。望ましくは、0.01~0.2モル比になるように添加することが望ましい。洗浄などによって損失されたリチウム量以外の過量のリチウム前駆体の添加は、未反応リチウム前駆体を再使用活物質に残留させるようになり、これは活物質の再使用過程で抵抗を増加させる要因になるので、適切な量のリチウム前駆体の添加が求められる。
【0075】
また、リチウム前駆体は、リチウムと他の金属とのモル比を1:1基準にしてリチウムを0.0001~0.1モル比となる量でさらに添加することが望ましい。このように過量のリチウムを添加する理由は、活物質に表面コーティングによる表面保護層を形成するためであり、これについては下記に詳しく説明する。このような活物質から二次電池を製造する場合、電解液による副反応を抑制しながらも寿命特性を維持することができる。
【0076】
アニーリングは、400~1,000℃、空気中で行い得る。また、アニーリング温度は600~900℃であり得る。アニーリング温度は、リチウム前駆体の種類によっては制限された範囲内で変化し得る。アニーリング時間は1時間以上にすることが望ましい。より望ましくは、5時間前後である。アニーリング時間が長い場合、結晶構造回復が充分に行われるが、長時間行うとしても性能に大きい影響を与えない。アニーリング時間は、例えば、15時間以内にする。アニーリング装備は、熱処理段階S30と同一または類似の装備を用い得る。
【0077】
例えば、リチウム前駆体としてLiCOを使用する場合、アニーリング温度は700~900℃が望ましく、より望ましくは、710~780℃である。これは、LiCOの融点が723℃であるためである。さらに望ましくは750℃で行う。リチウム前駆体としてLiOHを使用する場合、アニーリング温度は400~600℃が望ましく、より望ましくは450~480℃である。これは、LiOHの融点が462℃であるためである。
【0078】
アニーリング温度は、リチウム前駆体の融点を超える温度であることが望ましい。但し、1,000℃を超える温度では、正極活物質の熱分解が発生して活物質の性能低下が発生するため、1,000℃を超えないようにする。
【0079】
このような段階S50によって再使用可能な活物質が得られる。
【0080】
本発明では、段階S25で乾式粉砕によって正極スクラップから粉末形態で活物質を集電体から分離することに特徴がある。物理的分離によるため、集電体や活物質の化学的物性の変化がない。
【0081】
勿論、乾式粉砕なく集電体がそのまま存在する状態で熱処理をして正極活物質層を分離することも可能である。しかし、乾式粉砕なく熱処理のみで集電体を分離する場合、集電体及び電極の体積が大きく、酸素接触による混合工程が重要であるため、単位体積当たりの処理量が本発明で提案する乾式粉砕方式より低い。本発明が提案するように、乾式粉砕方式で集電体と分離された活物質粉末は、熱処理工程によって多量の処理が可能である。ピンミル装備を用いる場合、95%以上の正極活物質の回収率が確保可能であるだけでなく、時間当りの電極分離処理量が最小500kg以上になり、連続工程が可能であるという長所から生産性を極大化することができる。
【0082】
また、乾式粉砕なく集電体がそのまま残留している正極スクラップを熱処理する場合、アルミニウム集電体の酸化の問題があるため、熱処理を550℃以下のみにしなければならないという制限がある。しかし、本発明によると、熱処理の前に集電体が分離されているから、熱処理温度は集電体の融点550℃を超え得る。即ち、集電体の先分離によって、バインダー及び導電材の除去のための熱処理時において、熱処理温度の制限なく高い温度で加熱可能であるという長所がある。
【0083】
次に、選択的な段階として、段階S60をさらに行ってもよい。段階S60では、段階S50でアニーリングされた活物質に表面コーティングを行う。
【0084】
表面コーティングの段階は、金属、有機金属及び炭素成分のうち一種以上を固相または液相方式で表面にコーティングした後、100~1,200℃で熱処理することであり得る。1,200℃を超える温度で熱処理する場合、正極活物質の熱分解によって性能低下が発生する恐れがある。表面コーティングに際し、固相または液相方式としては、混合(mixing)、ミリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)、グラインディング(grinding)などの方法を用い得る。
【0085】
NCM活物質の場合、B、B-W、Wなどをコーティングし、LCO活物質の場合、Al、Mg、Tiなどをコーティングし得る。もし、コーティングに必要な熱処理温度を高くしなければならない場合であれば、段階S50を行う前に段階S60を先に行ってもよい。即ち、先に表面コーティングをした後にリチウム前駆体を添加してアニーリングするのである。
【0086】
表面コーティングによって異種金属による表面保護層が形成される。リチウムと正極活物質中の他の金属とのモル比が1:1になるようにした場合、活物質中のリチウムが表面コーティング物質と反応してリチウムと正極活物質中の他の金属とのモル比が1:1未満に減少するようになると、容量が100%発現できない。そのため、前段階であるS30でリチウム前駆体の添加を通じてリチウムをさらに添加して、リチウムと正極活物質中の他の金属とのモル比が1:1になるようにすると共に、正極活物質中の他の金属に対してリチウムが0.0001~0.1モル比さらに含まれるように過量を添加するのである。これによって、表面コーティング時、リチウムと正極活物質中の他の金属とのモル比が1:1になりながらも表面保護層が形成可能になる。
【0087】
具体的には、B、W、B-Wなどの金属酸化物を活物質にコーティングした後、熱処理すると、活物質の表面にリチウムボロンオキシド層が形成でき、これは、表面保護層の役割を果たす。段階S50で0.0001~0.1モル比でさらに添加したリチウムが、段階S60で、B、W、B-Wなどの金属酸化物と反応し、リチウムと正極活物質中の他の金属とのモル比が1:1未満に減少しないため、容量低下が起こらない。
【0088】
以上で説明した方法によって得られる再使用可能な活物質は、下記の化学式1で表されるものであり得る。
【0089】
LiNiMnCo2+δ (化学式1)
【0090】
化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群より選択される一種以上を含み、1<a≦1.1、0≦x<0.95、0≦y<0.8、0≦z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。
【0091】
再使用可能な活物質は、Fの含量が100ppm以下であり得る。本発明によると、Fの含量が減少した活物質を回収できるようになるため、これを活物質として再使用すると、優秀な抵抗特性及び容量特性を具現することができる。
【0092】
このように本発明によると、LiFまたは金属フッ化物は洗浄段階S40で除去される。水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液を使用した洗浄及び乾燥段階は、安全かつ安価であり、他の元素の損失なくLiFまたは金属フッ化物を除去することができ、遷移金属などの溶出を防止でき、工程中に発生するリチウム損失を補うことができる長所がある。アニーリング段階も、安全かつ安価であり、結晶構造の回復、即ち、結晶性を改善して再使用活物質の電池特性が回復可能な長所がある。
【0093】
本発明によって得られる再使用可能な活物質は、フレッシュな活物質と類似の粒度分布を有するため、粒度分布調節のための別の処理をしなくてもよい。バインダーや導電材の炭化によって生ずる炭素成分が表面に残留していないため、このような炭素成分を除去するための段階などが不要である。したがって、以上の図2の方法によって得られた活物質は、別の処理なくそのまま再使用して正極の製造に用いることができる。
【0094】
再使用活物質を組成の調節なく100%そのまま使用するか、フレッシュな活物質に混合して、導電材やバインダー、溶媒に混合してスラリーに製造して使用し得る。
【0095】
以下、本発明の実験例について詳しく説明する。
【0096】
<実験例1>
図3は、本発明の実験例による各段階別の結果物の写真である。
【0097】
図3の(a)は、シュレッディングした正極スクラップの写真である。廃正極スクラップを集めて10cm×10cm程度の大きさにシュレッディングした。
【0098】
図3の(b)は、カッティングした正極スクラップの写真である。シュレッディングした正極スクラップをさらに細く切って1cm×1cmの大きさにした。
【0099】
図3の(c)は、カッティングした正極スクラップをピンミル粉碎した後の集電体片の写真であり、図3の(d)は、ピンミル粉碎した後に集電体片から脱離した粉末形態の活物質層の写真である。ピンミルのような乾式粉砕によって活物質層が集電体とほぼ完全に分離されることが確認できる。
【0100】
図4は、図3の(d)に示した活物質層のSEM写真であり、図5は、図4の活物質層を空気中で熱処理した後のSEM写真である。SEM写真は、実験室で使用する通常のSEM装置で撮影した。例えば、HITACHI社のs-4200を用いて撮影し得る。しかし、測定装置や方法による偏差はない。
【0101】
図4では、熱処理前であることから活物質層中にバインダーが存在して活物質層が固まった粒子の形態を有していることに対し、図5では、熱処理によってバインダーが除去された結果、固まりが分解されたことが分かる。これによって、本発明が提案するように空気中における熱処理のみでもバインダーや導電材が除去され、活物質の表面にバインダーや導電材がほとんど残留していないことが分かる。
【0102】
図6は、本発明による活物質の再使用方法のうち洗浄を行ってLiFを除去した後、乾燥した活物質のSEM写真である。このような活物質にリチウム前駆体を添加してアニーリングすると、フレッシュな活物質とほぼ同じ形状の再使用活物質が得られるようになる。
【0103】
<実験例2>
正極スクラップとしてNCMリチウム複合遷移金属酸化物からなる正極活物質を用いたものと、LCO活物質を用いたものを準備した。本発明による活物質の再使用方法のうち乾式粉砕段階を行って粉末形態の活物質を分離した後、熱処理を550℃の空気中で30分間行った。その後、一部に対しては本発明による活物質の再使用方法のうちの洗浄を行うためにLiOH水溶液に10分間浸漬し、他の一部は洗浄しなかった。活物質中のLi/金属モル比及び残存LiFの含量を調べるためにF残存量の分析を行い、その結果を表1に示した。
【0104】
サンプル1は、フレッシュなLCO活物質である。サンプル2は、LCO正極スクラップに対して上記熱処理までは行い、洗浄はしていないものである。サンプル3は、LCO正極スクラップに対して上記熱処理をした後、洗浄までを行ったものである。
【0105】
サンプル4は、フレッシュなNCM活物質である。サンプル5は、NCM正極スクラップに対して上記熱処理までは行い、洗浄はしていないものである。サンプル6は、NCM正極スクラップに対して上記熱処理をした後、洗浄までを行ったものである。
【0106】
【表1】
【0107】
NDは、30ppm以下に測定されたことを意味する。サンプル1とサンプル4は、フレッシュな活物質であることから、Fがほとんど検出されなかった。
【0108】
洗浄をしていないサンプル2とサンプル5では、残存F量が1900mg/kg、1450mg/kgで測定された。しかし、洗浄までを行ったサンプル3とサンプル6は、LiFが洗浄液に完全に溶けて検出されないほどに除去されたことを確認することができる。これによって、LCO及びNCM正極スクラップはいずれも、熱処理する場合LiFが生成されるが、本発明で提案するように洗浄段階を行うと、完全に除去されることが分かる。
【0109】
一方、サンプル2とサンプル5では、Li/金属モル比がフレッシュな活物質であるサンプル1及びサンプル4に対して約0.2~0.5程度減少し、サンプル3とサンプル6は、サンプル2とサンプル5に対してLi/金属モル比が約0.2~0.5程度さらに減少することが分かる。特に、NCM活物質の場合、LCOに対して粒子の比表面積が大きく、スピネル構造への変化によってLi/金属モル比の減少幅が大きいことに思われる。即ち、バインダー及び導電材を除去する熱処理段階においてもリチウムが消失し、洗浄による表面改質段階においてもリチウムが消失する結果を確認することができる。そこで、本発明による活物質の再使用方法では、アニーリング時にリチウム前駆体を添加することで足りないリチウムを補充するようにする段階を含むことも提案する。
【0110】
<実験例3>
正極スクラップとしてNCMリチウム複合遷移金属酸化物:導電材であるカーボンブラック:バインダーであるPVdF=96.25:1.5:2.25の組成を有する正極スクラップを準備した。
【0111】
比較例1は、フレッシュな活物質である。
【0112】
比較例2と比較例3は、正極スクラップを乾式粉砕せず、集電体上に正極活物質層が存在する正極スクラップ状態のまま空気中で熱処理した場合である。熱処理は550℃で30分間行った。熱処理によって集電体が分離されて活物質が粉末形態で回収された。比較例2では、回収された活物質に洗浄を行わなかった。比較例3では洗浄を行った。
【0113】
比較例4と実施例1は、正極スクラップをピンミルで乾式粉砕して集電体と活物質層を先に分離してから、集電体から脱離した粉末形態の活物質層のみを空気中で熱処理した場合である。熱処理は、比較例2、3と同様に550℃で30分間行った。比較例4では、回収された活物質に洗浄を行わなかった。実施例1では比較例3と同様に洗浄を行った。
【0114】
活物質中のLi/金属モル比及び残存LiFの含量を調べるためにF残存量の分析を行い、その結果を表2に示した。
【0115】
【表2】
【0116】
実験結果、熱処理後の残存F量において若干の差があるが、洗浄後の残存F量には大きい差がない結果を示す。また、Li/金属モル比の測定結果も、比較例3と実施例1が類似の水準(誤差範囲±0.02)以内にあるため、初期電極を分離する工程が異なっても洗浄後の分析値が類似の水準であることが分かる。
【0117】
<実験例4>
下記の実施例及び比較例のような方法で各々正極活物質を準備し、電気化学性能を評価した。実施例及び比較例から各々回収するか、または準備した正極活物質を96.25wt%、導電材であるカーボンブラックは1.5wt%、バインダーであるPVdFは2.25wt%を秤量してNMPに混合してスラリーを作って正極を製造した後、セル(Coin Half Cell,CHC)を製造し、電気化学性能を評価した。電圧は3~4.3V条件にし、初期フォーメーション(formation)充放電は0.1C/0.1Cで行った。セルを構成する電解液は、カーボネート系であって、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7にし、添加剤が一部入っているものを使用した。放電条件は、0.5C/1Cと0.5C/2Cを用いた。
【0118】
比較例5は、実験例3の比較例3に、リチウム前駆体(LiCO)を0.1モル投入して750℃で5時間アニーリングした後、表面保護層としてボロンの含量が500ppmになるようにHBOを添加して300℃で5時間表面コーティングの熱処理をした。
【0119】
実施例2は、実験例3の実施例1に、比較例5と同様の方式でアニーリング及び表面コーティングまでを行ったものである。
【0120】
表3に実験結果を示した。
【0121】
【表3】
【0122】
電気的性能の評価結果、比較例5と実施例2は、初期容量(0.1C/0.1C)において同等の水準を示し、高いC-rateにおいても同等の水準を示す。即ち、初期の集電体分離工程を相違にしても、洗浄、リチウム前駆体添加アニーリング、表面コーティング過程を同一にすることで、同一のセル性能結果を得ることができる。
【0123】
<実験例5>
下記の実施例及び比較例のような方法で各々正極活物質を準備し、電気化学性能を評価した。
【0124】
実施例3
上述したような本発明の活物質の再使用方法によって再使用活物質を収去した。NCM系リチウム複合遷移金属酸化物である活物質を有する正極板を打ち抜けた後に捨てられる正極スクラップを準備し、段階S20、段階S25を共に行って粉末形態の活物質層を得た。段階30で熱処理を550℃の空気中で30分間行った。段階S40で、洗浄をLiOHを用いて10分間行った。段階S50では、原材料活物質中のリチウムと他の金属とのモル比(ICP分析)を基準にして、工程中にリチウムを0.09モル比でさらに添加できる量のリチウム前駆体(LiCO)を投入し、750℃で15時間アニーリングした。理論上、フラッシュな活物質の場合、リチウムと他の金属とのモル比が1:1であるが、これを確認する装備であるICP装備の平均誤差が±0.05、望ましくは、±0.02程度であるため、ICP測定による原材料活物質のリチウムと他の金属とのモル比が1±0.05:1になり得る。本実験においては、ICP分析からその分析割合を基準にしてリチウム前駆体を添加した。
【0125】
実施例4
実施例3に加え、段階S60の活物質の表面保護層の回復工程も行った。
【0126】
比較例6
再使用活物質ではなく、フレッシュなNCM系リチウム複合遷移金属酸化物を使用した。
【0127】
比較例7
上述したように本発明の活物質の再使用方法のうち段階S30の熱処理のみを行い、バインダー、導電材を除去した。本発明の活物質の再使用方法のうち段階S25を行わなかったため、段階S30を行う間にAl集電体が分離された。段階S30は、実施例3と同じ条件で行った。本発明の活物質の再使用方法のうち段階S40の表面改質と、段階S50の結晶構造回復及び段階S60の表面コーティング工程は行わなかった。
【0128】
比較例8
比較例7に加え、上述したような本発明の活物質再使用方法のうち、段階S40の表面改質までをさらに行って活物質を収去した。即ち、表面改質は行うが、本発明の活物質再使用方法のうち段階S50の結晶構造回復及び段階S60の表面コーティング工程は行わなかった。段階S40は、実施例3と同じ条件で行った。
【0129】
比較例9
比較例7に加え、上述したような本発明の活物質再使用方法のうち、段階S40の表面改質は行わず、段階S50の結晶構造回復までのみを行ってNCM系リチウム複合遷移金属酸化物である活物質を収去した。結晶構造回復のためのアニーリング時には、実施例3とは異なり、リチウム前駆体を添加せず行った。
【0130】
比較例10
実施例3と同様に、段階S30、S40及びS50までのみを行った。但し、段階S25は行わなかった。結晶構造回復のためのアニーリング時には、実施例3と異なり、リチウム前駆体を添加せず行った。
【0131】
実施例及び比較例で各々回収または準備した正極活物質に対してICP分析を行い、LiF残存量、活物質中のリチウムと他の金属との割合、及びBやWのような特定の元素の量も分析した。
【0132】
そして、実施例及び比較例で各々回収または準備した正極活物質を96.25wt%、導電材であるカーボンブラックは1.5wt%、バインダーであるPVdFは2.25wt%に秤量してNMPに混合してスラリーを作って正極を製造した後、セル(Coin Half Cell,CHC)を製造し、電気化学性能を評価した。
【0133】
比較例7と8で回収された活物質中のLiF残存量を確認するために、ICPでFを検出して分析した。その結果を下記の表4に示した。
【0134】
【表4】
【0135】
表4を参照すると、回収された正極活物質中のF含量が比較例7に比べて比較例8で大幅低下したことを確認することができる。即ち、洗浄によってLiFがリチウム化合物水溶液に完全に溶け、ICPによって検出されないぐらいに除去されたことを確認することができる。したがって、段階S40によってLiFの除去が卓越であるということが分かる。
【0136】
本発明の段階S30、S40を経る間、正極活物質中のリチウム成分の変化があるかを確認するために、ICPによって活物質中のリチウムと他の金属との割合を分析した。その結果を下記の表5に示した。
【0137】
【表5】
【0138】
表5を参照すると、S30の熱処理を経ながら比較例7は比較例6に比べて約0.2~0.5程度、S40の洗浄と乾燥を経ながら比較例8は比較例7に比べて約0.2~0.5程度でリチウムと他の金属との割合が減少することを確認することができる。NCM系リチウム複合遷移金属酸化物は、比較的に粒子の比表面積が大きくて、スピンネル構造への変化によって、他の金属に比べてリチウム割合の減少幅が大きい。したがって、足りなくなるリチウムを補う必要があることが分かる。
【0139】
表5は、ICP分析によって測定した値であり、前述したようにICP分析は±0.02程度の誤差値を有する。そのため、フラッシュな活物質である比較例6においてもリチウムと他の金属との割合が1よりも小さいことがある。したがって、損失したリチウムを補うために添加するリチウム前駆体の量は、活物質層に使用された原材料活物質(即ち、フラッシュな活物質)中のリチウムと他の金属との割合(ICP分析によるモル比)を基準にして減少分のリチウム含量を添加する。
【0140】
図7及び図8は、実施例及び比較例の活物質を使用してセル評価を行った結果である。相異なる電流において、サイクル反復回数による容量を評価し、レート性能(rate performance)を評価した。評価に使用した装備は、実験室で使用する通常の充放電実験装置を用いた。測定装置や方法による偏差はない。図7及び図8のグラフにおいて、横軸はサイクル(cycle)回数であり、縦軸は容量(capacity)である。
【0141】
電圧は3~4.3V条件にし、初期フォーメーション充放電は0.1C/0.1Cで行った。セルを構成する電解液は、カーボネート系であって、EC:EMC=3:7にし、添加剤が一部入っているものを使用した。
【0142】
先ず、図7を参照すると、バインダー及び導電材の除去のための一次熱処理(550℃/30分)を行った後、表面改質前の比較例7と表面改質後の比較例8を見ると、表面改質を行った比較例8で電極容量が急減する結果を示す。これは、前述したようにNCM系リチウム複合遷移金属酸化物中のNiが水分によって岩塩化して容量が減少したためである。
【0143】
しかし、表面改質を行わずアニーリング(750℃/15時間)する場合、これは比較例9に当たり、比較例7と比例すると、容量改善の効果がほとんどない。これは、表面改質を行わない場合、活物質の表面に残留しているLiFのためである。因みに、表4において、洗浄を行えばこそLiFが満足する程度に除去されるということを説明した。
【0144】
一次熱処理後、表面改質とアニーリングを共に行うと、比較例10から分かるように、容量が増加する。これは、表面改質の段階後には、比較例8のように容量が減少するが、表面改質によってLiFが除去された後、アニーリングによってNi岩塩が減少し、その構造が六方晶に回復するためである。
【0145】
次に、図8を参照すると、比較例10に比べて実施例3の容量改善が確認される。実施例3は、比較例10と比較すると、アニーリング時にリチウム前駆体を添加したことである。このように、リチウム前駆体を添加することで前段階で損失したリチウムを補うことによって、容量が改善されることが分かる。熱処理と洗浄を経ながらリチウムが損失されることは、表5を参照して説明した。
【0146】
リチウム化合物は、ICP分析(表5)結果に基づいて既存の正極活物質中のリチウム含量に対して損失した割合分を添加しており、その結果、0.09~0.1モル比を添加する場合、比較例6と同じ水準の容量改善の効果を奏することを追加実験によって確認した。
【0147】
このように本発明によると、正極スクラップから活物質を直接再使用可能な水準で回収することができる。NMP、DMC、アセトン、メタノールのような有毒及び爆発危険のある溶媒を使用しなくてもよいので安全であり、熱処理、洗浄及び乾燥、アニーリングなどの簡単かつ安全な方法を用いるので、大量生産にも適する。
【0148】
このように本発明によると、単純であり、環境に優しくて経済的な方法を用いて正極スクラップを再使用することができ、このように製造されたNCM系リチウム複合遷移金属酸化物からなる正極活物質をそのまま再使用してリチウム二次電池を製造するとしても電池の性能に問題がない。
【0149】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0150】
10 正極集電体
20 正極活物質層
30 正極シート
40 正極板
50 正極スクラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-07-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a-1)集電体上のリチウム複合遷移金属酸化物からなる正極活物質層を含む正極スクラップを乾式粉砕して前記活物質層を粉末形態で脱離して前記集電体と分離する段階と、
(a-2)粉末形態で脱離した前記活物質層を空気中で熱処理して前記活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することで活物質を回収する段階と、
(b)回収された活物質を水溶液状態で塩基性を示すリチウム化合物水溶液で洗浄して乾燥する段階と、
(c)洗浄された活物質にリチウム前駆体を添加してアニーリングして再使用可能な活物質を得る段階と、を含み、
前記リチウム化合物水溶液は、0%超15%以下のリチウム前駆体を含むように製造され、前記洗浄は1時間以内に行われることを特徴とする、正極活物質の再使用方法。
【請求項2】
(d)アニーリングされた活物質に表面コーティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項3】
前記乾式粉砕は、ピンミル、ディスクミル、カッティングミル及びハンマーミルのいずれか一つを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項4】
前記乾式粉砕する前、前記正極スクラップをシュレッディングまたはカッティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項5】
前記熱処理は、300~1,000℃で行われることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項6】
前記洗浄によって前記活物質の表面に存在するLiFと金属フッ化物を除去することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項7】
前記洗浄は、前記回収された活物質を前記リチウム化合物水溶液に含浸すると共に攪拌して行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項8】
前記リチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項9】
前記リチウム前駆体を、前記活物質層に使用された原材料活物質中のリチウムと他の金属との割合に対し、損失されたリチウムの割合分を補い得る量で添加することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項10】
前記リチウム前駆体を、リチウム添加量が0.001~0.4モル比となる量で添加することを特徴とする、請求項9に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項11】
前記リチウム前駆体は、リチウムと他の金属とのモル比を1:1基準にして、リチウムを0.0001~0.1モル比となる量でさらに添加することを特徴とする、請求項9に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項12】
前記アニーリングを400~1,000℃の空気中で行うことを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項13】
前記アニーリングの段階の温度は、前記リチウム前駆体の融点を超える温度であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項14】
前記表面コーティングの段階は、金属、有機金属及び炭素成分のいずれか一種以上を固相または液相方式で表面にコーティングした後、100~1,200℃で熱処理することを特徴とする、請求項2に記載の正極活物質の再使用方法。
【請求項15】
前記再使用可能な活物質は、下記の化学式1で表され、
LiNiMnCo2+δ (化学式1)
前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群より選択される一種以上を含み、1<a≦1.1、0≦x<0.95、0≦y<0.8、0≦z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の正極活物質の再使用方法。
【外国語明細書】