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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133099
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20240920BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240920BHJP
   H10K 50/115 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240920BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240920BHJP
【FI】
G09F9/00 350Z
G09F9/30 308Z
H10K50/115
H10K59/10
H10K77/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109841
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2021508346の分割
【原出願日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019058794
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019072577
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】楠本 直人
(72)【発明者】
【氏名】吉住 健輔
(57)【要約】
【課題】携帯性の優れた折り畳み式の表示装置を提供する。
【解決手段】可撓性を有する表示パネルを有し、小さく折り畳むことが可能な表示装置である。当該表示装置は、三つ折りの機構を有し、表示装置の第1の面が向かい合うように折り畳まれる領域と、第1の面とは逆の第2の面が向かい合うように折り畳まれる領域を形成することができる。したがって、アスペクト比が比較的大きい表示パネルでも、折り目を短軸方向に設けることで小さく折り畳むことができ、携帯性を向上させることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する表示パネルと、第1乃至第3の筐体と、電池と、を有する表示装置であって、
前記表示パネルは、第1乃至第3の領域と、を有し、
前記第1の領域の少なくとも一部は、前記第1の筐体に固定され、
前記第2の領域の少なくとも一部は、前記第2の筐体に固定され、
前記第3の領域の少なくとも一部は、前記第3の筐体に固定され、
前記表示パネルを平坦に展開したとき、前記第2の領域は、前記第1の領域と前記第3の領域との間に設けられ、
前記第1の筐体は、第1の厚さを有する第1の部分と、前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さを有し、且つ前記電池が内蔵される第2の部分と、を有し、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第1の領域から前記第2の領域に亘って、表示面側を凸とする第1の曲面が形成され、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第2の領域から前記第3の領域に亘って、前記表示面側を凹とする第2の曲面が形成され、
前記表示パネルを平坦に展開したとき、全体の重心は前記第2の部分に位置する、表示装置。
【請求項2】
可撓性を有する表示パネルと、第1乃至第3の筐体と、電池と、を有する表示装置であって、
前記表示パネルは、第1乃至第3の領域と、を有し、
前記第1の領域の少なくとも一部は、前記第1の筐体に固定され、
前記第2の領域の少なくとも一部は、前記第2の筐体に固定され、
前記第3の領域の少なくとも一部は、前記第3の筐体に固定され、
前記表示パネルを平坦に展開したとき、前記第2の領域は、前記第1の領域と前記第3の領域との間に設けられ、
前記第1の筐体は、第1の厚さを有する第1の部分と、前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さを有し、且つ前記電池が内蔵される第2の部分と、を有し、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第1の領域から前記第2の領域に亘って、表示面側を凸とする第1の曲面が形成され、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第2の領域から前記第3の領域に亘って、前記表示面側を凹とする第2の曲面が形成され、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第2の曲面が前記第2の部分に面する領域を有する、表示装置。
【請求項3】
可撓性を有する表示パネルと、第1乃至第3の筐体と、電池と、を有する表示装置であって、
前記表示パネルは、第1乃至第3の領域と、を有し、
前記第1の領域の少なくとも一部は、前記第1の筐体に固定され、
前記第2の領域の少なくとも一部は、前記第2の筐体に固定され、
前記第3の領域の少なくとも一部は、前記第3の筐体に固定され、
前記表示パネルを平坦に展開したとき、前記第2の領域は、前記第1の領域と前記第3の領域との間に設けられ、
前記第1の筐体は、第1の厚さを有する第1の部分と、前記第1の厚さよりも大きい第2の厚さを有し、且つ前記電池が内蔵される第2の部分と、を有し、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第1の領域から前記第2の領域に亘って、表示面側を凸とする第1の曲面が形成され、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第2の領域から前記第3の領域に亘って、前記表示面側を凹とする第2の曲面が形成され、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第1の曲面の曲率半径R1は、前記第2の曲面の曲率半径R2よりも大きく、
前記表示パネルを折り畳んだとき、前記第2の曲面が前記第2の部分に面する領域を有する、表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記表示パネルが折り畳まれて視認できない領域は表示されない、表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記表示パネルを平坦に展開したとき、前記表示パネルの傾きに応じて画像の向きを変化させる、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特に、本発明の一態様は、半導体装置、発光装置、表示装置、電子機器、照明装置、それらの駆動方法、またはそれらの作製方法に関する。特に、表示面が可撓性を有する表示装置、その動作方法または作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路、演算装置、記憶装置等は半導体装置の一態様である。また、発光装置、表示装置、照明装置および電子機器は半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0003】
携帯電話、スマートフォン、タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータなどの電子機器は、その機能、使いやすさ、および携帯性に応じて適切なサイズに作られている。一方で、複数の電子機器を携帯することは不便である。そのため、複数の電子機器の機能を統合できる形態が望まれている。例えば、特許文献1には、三つ折り型の発光パネルが開示されている。当該発光パネルを用いることにより、複数の電子機器の機能を統合し、サイズが可変である電子機器を作製することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-130320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様では、携帯性の優れた折り畳み式の表示装置を提供することを目的の一つとする。または、表示の視認性の優れた折り畳み式の表示装置を提供することを目的の一つとする。または、省電力機能を有する折り畳み式の表示装置を提供することを目的の一つとする。または、持ちやすさの優れた折り畳み式の表示装置を提供することを目的の一つとする。または、新規な表示装置を提供することを目的の一つとする。または、新規な表示装置の動作方法を提供することを目的の一つとする。
【0006】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。また、上記以外の課題は、明細書等の記載から自ずと明らかになるものであり、明細書等の記載から上記以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、携帯性の優れた三つ折り型の折り畳み式の表示装置に関する。
【0008】
本発明の一態様は、可撓性を有する表示パネルを有し、表示パネルは、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域と、を有し、平坦に展開したとき、第1の領域、第2の領域および第3の領域は、それぞれ平行に位置して面を成し、第2の領域は、第1の領域と第3の領域との間に設けられ、第1の領域から第2の領域に亘って、表示面側を凸とする第1の曲面を形成する機能と、第2の領域から第3の領域に亘って、表示面側を凹とする第2の曲面を形成する機能と、を有し、折り畳んだとき、第1の曲面の曲率半径R1は、第2の曲面の曲率半径R2よりも大きくなる表示装置である。
【0009】
本発明の他の一態様は、可撓性を有する表示パネルを有し、表示パネルは、第1の領域と、第2の領域と、第3の領域と、を有し、平坦に展開したとき、第1の領域、第2の領域および第3の領域は、それぞれ平行に位置して面を成し、第2の領域は、第1の領域と第3の領域との間に設けられ、第1の領域から第2の領域に亘って、表示面側を凸とする第1の曲面、平面、表示面側を凸とする第3の曲面を当該順序で連続して形成する機能と、第2の領域から第3の領域に亘って、表示面側を凹とする第2の曲面を形成する機能と、を有し、折り畳んだとき、第1の曲面の曲率半径R1は、第2の曲面の曲率半径R2よりも大きく、第3の曲面の曲率半径R3は、曲率半径R2よりも大きく、曲率半径R1は、曲率半径R3と略等しい表示装置である。
【0010】
上記二つの態様においては、さらに、第1の筐体と、第2の筐体と、第3の筐体と、第1のヒンジと、第2のヒンジと、を有し、第1の領域の少なくとも一部は、第1の筐体に固定され、第2の領域の少なくとも一部は、第2の筐体に固定され、第3の領域の少なくとも一部は、第3の筐体に固定され、第1の筐体と第2の筐体との間には、第1のヒンジが設けられ、第2の筐体と、第3の筐体との間には、第2のヒンジが設けられ、第1のヒンジは、第1の曲面を形成する機能を有し、第2のヒンジは、第2の曲面を形成する機能を有し、平坦に展開したとき、全体の重心は第1の筐体内または第3の筐体内にある構成とすることができる。
【0011】
第1の筐体内または第3の筐体内にはバッテリが設けられていてもよい。
【0012】
第3の筐体内にはワイヤレス充電用の受電コイルが設けられていてもよい。
【0013】
表示パネルは、発光デバイスを有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、折り畳んだとき、一部の領域のみで表示を行う表示装置の動作方法である。さらに、表示パネルを平坦に展開したとき、表示パネルの傾きに応じて画像の向きを変化させる動作を行ってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様を用いることで、携帯性の優れた折り畳み式の表示装置を提供することができる。または、表示の視認性の優れた折り畳み式の表示装置を提供することができる。または、省電力機能を有する折り畳み式の表示装置を提供することができる。または、持ちやすさの優れた折り畳み式の表示装置を提供することができる。または、新規な表示装置を提供することができる。または、新規な表示装置の動作方法を提供することができる。
【0016】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1A図1Bは、表示装置を説明する図である。
図2図2A乃至図2Cは、表示装置を説明する図である。
図3図3A図3Bは、表示装置を説明する図である。
図4図4A乃至図4Cは、ヒンジを説明する図である。
図5図5A乃至図5Cは、ヒンジを説明する図である。
図6図6A乃至図6Cは、ヒンジを説明する図である。
図7図7A乃至図7Cは、ヒンジを説明する図である。
図8図8A乃至図8Dは、表示装置を説明する図である。
図9図9A図9Bは、表示装置の動作を説明する図である。
図10図10は、表示装置の動作を説明するフローチャートである。
図11図11Aは、保護回路の回路図である。図11Bは、保護回路の接続形態を説明するブロック図である。
図12図12Aは、表示装置を説明する図である。図12Bは、表示装置のワイヤレス充電を説明する図である。
図13図13A乃至図13Cは、表示装置の動作を説明する図である。
図14図14A乃至図14Cは、表示装置の動作を説明する図である。
図15図15A乃至図15Cは、表示装置の動作を説明する図である。
図16図16A図16Bは、表示装置の応用例を説明する図である。
図17図17A乃至図17Dは、表示装置の応用例を説明する図である。
図18図18A図18Bは、表示装置の応用例を説明する図である。
図19図19は、テレビジョン装置の一例を説明するブロック図である。
図20図20は、表示パネルの構成例を説明する図である。
図21図21は、表示パネルの構成例を説明する図である。
図22図22は、表示パネルの構成例を説明する図である。
図23図23Aは、表示パネルのブロック図である。図23B図23Cは、画素の回路図である。
図24図24A図24C図24Dは、画素の回路図である。図24Bは、画素の動作を説明するタイミングチャートである。
図25図25A乃至図25Eは、画素の構成例を説明する図である。
図26図26Aは、IGZOの結晶構造の分類を説明する図である。図26Bは、石英ガラスのXRDスペクトルを説明する図である。図26Cは、結晶性IGZOのXRDスペクトルを説明する図である。図26Dは、結晶性IGZOの極微電子線回折パターンを説明する図である。
図27図27A乃至図27Dは、発光デバイスの断面図である。
図28図28A乃至図28Cは、発光デバイスの発光モデルを説明する概念図である。図28Dは、発光デバイスの時間経過に伴う規格化輝度を説明する図である。
図29図29A乃至図29Dは、電子輸送層における有機金属錯体の濃度を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略することがある。なお、図を構成する同じ要素のハッチングは、異なる図面間で適宜省略または変更する場合もある。
【0019】
また、回路図上では単一の要素として図示されている場合であっても、機能的に不都合がなければ、当該要素が複数で構成されてもよい。例えば、スイッチとして動作するトランジスタは、複数が直列または並列に接続されてもよい場合がある。また、キャパシタを分割して複数の位置に配置する場合もある。
【0020】
また、一つの導電体が、配線、電極および端子などの複数の機能を併せ持っている場合があり、本明細書においては、同一の要素に対して複数の呼称を用いる場合がある。また、回路図上で要素間が直接接続されているように図示されている場合であっても、実際には当該要素間が一つまたは複数の導電体を介して接続されている場合があり、本明細書ではこのような構成でも直接接続の範疇に含める。
【0021】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について、図面を参照して説明する。なお、本明細書において表示装置とは、表示を行う機能を有する機器全般を指す。すなわち、表示部を有する電子機器は、表示装置に含まれる。例えば、携帯電話、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット型コンピュータ、テレビジョン装置などの表示部を有する電子機器は、表示装置に含まれる。
【0022】
本発明の一態様は、可撓性を有する表示パネルを有し、小さく折り畳むことが可能な表示装置である。当該表示装置は、三つ折りの機構を有し、表示装置の第1の面同士が向かい合うように折り畳まれる領域と、第1の面と対向する第2の面同士が向かい合うように折り畳まれる領域を形成することができる。したがって、例えば16:9、18:9、21:9などのアスペクト比が比較的大きい表示パネルでも、折り目を短軸方向に設けることで小さく折り畳むことができ、携帯性を向上させることができる。また、小さく折り畳んだときに、視認できない表示領域を非表示とすることで、消費電力を大きく低減することができる。
【0023】
<表示装置>
図1Aは、本発明の一態様の表示装置100Aを最小サイズに折り畳んだ状態を示す図である。表示装置100Aは、図2A乃至図2Cに示すように変形することができる。初期が折り畳んだ状態(図2A参照)であるとき、変形状態(図2B参照)を経て、平坦に展開した状態(図2C参照)にすることができる。逆の順序で変形させれば、折り畳むことができる。なお、表示装置100Aの変形は、手動で行うことができるが、電気的な動力、またはバネなどの機械的な動力を用いてもよい。
【0024】
表示装置100Aは、可撓性を有する表示パネル101と、筐体102aと、筐体102bと、筐体102cと、ヒンジ103aと、ヒンジ103bを有する。なお、本実施の形態では、説明の明瞭化のため、表示パネル101を領域101a、領域101b、領域101cの三領域に分ける(図2C参照)。領域101a、領域101b、領域101cは、表示パネル101を平坦に展開したときに、水平方向(表示パネル101の面が延在する方向)に平行に位置して面を成す領域であって、ヒンジが設けられる位置またはその近傍を境とした領域である。なお、実際には、領域101a乃至101cのそれぞれ、およびそれらの境に構造的な違いはない。表示パネル101には、継ぎ目のない一枚の可撓性を有する表示パネルを用いることができる。
【0025】
図1Bは、図1Aに示すA1-A2の断面に相当する図である。筐体102aは、ヒンジ103aを介して筐体102bと接続される。筐体102bは、ヒンジ103bを介して筐体102cと接続される。
【0026】
表示パネル101は、筐体102a乃至102cの第1の面側に設けられる。領域101aの少なくとも一部は、筐体102aに固定することができる。領域101bの少なくとも一部は、筐体102bに固定することができる。領域101cの少なくとも一部は、筐体102cに固定することができる。
【0027】
表示パネル101の筐体に固定される面を非表示面、表示パネル101の筐体に固定される面と対向する面を表示面とすると、図1A図1Bに示すように、折り畳んだときには、領域101aと領域101bのそれぞれの非表示面が向かい合い、領域101aから領域101bに亘って表示面を凸とする曲面104aが形成される。曲面104aは、領域101aの一部および領域101bの一部で形成される領域とする。また、領域101bと領域101cのそれぞれ表示面が向かい合い、領域101bから領域101cに亘って表示面を凹とする曲面104bが形成される。曲面104bは、領域101bの一部および領域101cの一部で形成される領域とする。
【0028】
上記曲面の表面(表示面)を基準として曲率中心までの距離を曲率半径と定義し、表示パネル101を最小サイズに折り畳んだときの曲面104aの曲率半径をR1、曲面104bの曲率半径をR2とする。このとき、R1>R2とすることが好ましい。
【0029】
R1は、表示面を外曲げにしたときの曲率半径であり、筐体102a、102aの厚さを適切な範囲で薄く形成したとしても、比較的大きな値となり、表示パネル101の曲面104aを成す部分に与えるストレスは小さい。一方で、R2は、表示面を内曲げにしたときの曲率半径であり、筐体102b、102cの厚さにかかわらず、比較的小さな値となり、表示パネル101の曲面104bを成す部分に与えるストレスは大きくなりやすい。
【0030】
そのため、R2をR1と同じ、またはそれ以上とすることで曲面104b部に与えるストレスを軽減することができ、信頼性を向上させることができる。一方で、R2を大きくすると、折り畳んだときの全体の厚みが増すため、携帯性が劣ってしまう。
【0031】
本発明の一態様では、曲げストレスに強い表示パネルを用いるため、信頼性を損なうことなく、R1>R2を実現することができる。曲げストレスに強い表示パネルは、チャネル形成領域に金属酸化物(酸化物半導体)を有するトランジスタ(以下、OSトランジスタ)を画素回路に用いることで実現することができる。
【0032】
金属酸化物はスパッタ法などの成膜法で形成することができ、比較的低温のプロセスで作成することができる。したがって、トランジスタなどのデバイスおよび保護膜などの周辺部材に残留ストレスが少なく、後から加わる曲げストレスに対して強い耐性をもつ。
【0033】
一方で、OSトランジスタと同等レベルの電気特性を有するトランジスタとしては、シリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)をチャネル形成領域に有するトランジスタ(以下、Siトランジスタ)が挙げられる。低温ポリシリコントランジスタの作製工程には、シリコン膜のレーザ結晶化工程が用いられる。シリコン膜は、レーザ結晶化工程で短時間ではあるが高温(少なくともシリコンの融点)まで温度が上がり、急速に冷やされる。したがって、シリコン膜および周辺部材に残留ストレスが多く、後から曲げストレスがさらに加わると電気特性などが悪化し、信頼性を低下させてしまう。
【0034】
したがって、本発明の一態様の表示装置では、R1>R2とすることが容易であり、信頼性を損なわずに小さく折り畳むことができる。なお、曲げ耐性は、曲率半径、曲げ回数などによって異なるため、状況に応じて、Siトラジスタを画素回路に用いてもよい。
【0035】
OSトランジスタに用いる半導体材料としては、エネルギーギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上、より好ましくは3eV以上である金属酸化物を用いることができる。代表的には、インジウムを含む酸化物半導体などであり、例えば、後述するCAAC-OSまたはCAC-OSなどを用いることができる。CAAC-OSは結晶を構成する原子が安定であり、信頼性を重視するトランジスタなどに適する。また、CAC-OSは、高移動度特性を示すため、高速駆動を行うトランジスタなどに適する。
【0036】
OSトランジスタは半導体層のエネルギーギャップが大きいため、数yA/μm(チャネル幅1μmあたりの電流値)という極めて低いオフ電流特性を示すことができる。また、OSトランジスタは、インパクトイオン化、アバランシェ降伏、および短チャネル効果などが生じないなどSiトランジスタとは異なる特徴を有し、信頼性の高い回路を形成することができる。また、Siトランジスタでは問題となる結晶性の不均一性に起因する電気特性のばらつきもOSトランジスタでは生じにくい。
【0037】
OSトランジスタが有する半導体層は、例えばインジウム、亜鉛およびM(アルミニウム、チタン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、スズ、ネオジムまたはハフニウム等の金属)を含むIn-M-Zn系酸化物で表記される膜とすることができる。また、OSトランジスタが有する半導体層は、上記In-M-Zn酸化物以外に、In酸化物、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いても良い。なお、インジウムの比率が高い組成の半導体層とすることで、OSトランジスタのオン電流、または電界効果移動度などを高めることができる。In-M-Zn系酸化物は、例えば、スパッタリング法、ALD(Atomic layer deposition)法、またはMOCVD(Metal organic chemical vapor deposition)法などを用いて形成することができる。
【0038】
In-M-Zn酸化物をスパッタリング法で成膜する場合、スパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧M、Zn≧Mを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1、In:M:Zn=1:1:1.2、In:M:Zn=3:1:2、In:M:Zn=4:2:3、In:M:Zn=4:2:4.1、In:M:Zn=5:1:3、In:M:Zn=5:1:6、In:M:Zn=5:1:7、In:M:Zn=5:1:8、In:M:Zn=10:1:3等が好ましい。また、半導体層を構成する酸化物半導体がIn-Zn酸化物の場合、In-Zn酸化物を成膜するために用いるスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比は、In≧Znを満たすことが好ましい。このようなスパッタリングターゲットの金属元素の原子数比として、In:Zn=1:1、In:Zn=2:1、In:Zn=5:1、In:Zn=5:3、In:Zn=10:1、In:Zn=10:3等が好ましい。
【0039】
半導体層としては、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いる。例えば、半導体層は、キャリア濃度が1×1017/cm以下、好ましくは1×1015/cm以下、さらに好ましくは1×1013/cm以下、より好ましくは1×1011/cm以下、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上のキャリア濃度の酸化物半導体を用いることができる。そのような酸化物半導体を、高純度真性または実質的に高純度真性な酸化物半導体と呼ぶ。当該酸化物半導体は、欠陥準位密度が低く、安定な特性を有する酸化物半導体であるといえる。
【0040】
なお、これらに限られず、必要とするトランジスタの半導体特性および電気特性(電界効果移動度、しきい値電圧等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とするトランジスタの半導体特性を得るために、半導体層のキャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0041】
なお、ヒンジ103a、103bは抽象化して図示しており、その形態は問わない。ヒンジ103a、103bの具体例は後述するが、ゴムなどの弾性体、連結した柱状体、または歯車などを用いることができる。なお、図1A図1Bでは、筐体とヒンジを異なる要素として示してあるが、境が明確でなく、筐体とヒンジが一体化している場合もある。また、表示パネル101は、ヒンジと接していない場合もある。
【0042】
<表示装置の変形例1>
また、本発明の一態様は、図3Aに示す構成であってもよい。図3Aに示す表示装置100Bは、表示装置100Aが有するヒンジ103aをヒンジ103cに入れ替えた構成である。
【0043】
表示装置100Bが有するヒンジ103cは、折り曲げたときに、領域101aから領域101bに亘って、表示面を凸とする曲面105a、平面105、表示面を凸とする曲面105bを順に形成する機能を有する。なお、曲面105aは領域101aの一部で形成される領域とし、平面105は、領域101aの一部および領域101bの一部で形成される領域とし、曲面105bは、領域101cの一部で形成される領域とする。
【0044】
図3Bの断面図に示すように、最小サイズに折り畳んだときの曲面105aの曲率半径をR3、曲面105bの曲率半径をR4としたとき、R3>R2、かつR4>R2とすることが好ましい。R3>R2かつR4>R2とすることで、表示装置100Aと同様に全体の厚みを薄くすることができる。また、R3とR4は等しくする、または略等しくすることが好ましい。R3およびR4を等しくすることで対称性良く折り畳むことができ、ヒンジ機構の信頼性を向上させることができる。R3とR4が大きく異なると、折り畳み時または展開時に、曲面105aが形成される領域または曲面105bが形成される領域の一方が他方より曲がりやすくなり、信頼性を損なうことがある。
【0045】
図3A図3Bに示す表示装置100Bでは、折り曲げたときにヒンジ103cによって、平面105が形成される。したがって、折り曲げ部における平面の割合が多くなり、画像の視認性を高めることができる。
【0046】
<ヒンジ>
図4A乃至図4Cは、図1Aに示す表示装置100Aに用いることのできるヒンジ103aの一例を説明する図である。
【0047】
ヒンジ103aは、短軸方向の断面を台形または略台形とした柱状体111を複数有する。それぞれの柱状体111は、底面(台形の下底に相当)が連続するように接続される。また、ヒンジ103aの一方の端部にある柱状体111の底面は、筐体102aの第1の面と連続するように接続される。また、ヒンジ103aの他方の端部にある柱状体111の底面は、筐体102bの第1の面と連続するように接続される。なお、それぞれの柱状体111の上面(台形の上底に相当)の形状は、他の柱状体および筐体に干渉がない範囲で任意である。
【0048】
図4Aに示すように、隣り合う柱状体111の側面(台形の脚に相当)同士が接するように変形させることで、折り畳んだ状態とすることができる。このとき、複数の柱状体111の底面が一定の角度を成して連なるため、全体として断面が略円弧状となる領域が形成される。したがって、可撓性を有する表示パネルは、当該領域と重なる部分で曲面を形成することができる。
【0049】
図4Aの状態から変形動作(展開動作)を行うと、図4Bに示すように、それぞれの柱状体111の側面が離れる方向に動き、上記略円弧の曲率半径が大きくなるように変化する。このとき、表示パネルでも曲面部分の曲率半径が大きくなるように変化する。
【0050】
図4Bの状態からさらに変形動作を行うと、図4Cに示すように、筐体102aの第1の面、それぞれの柱状体111の底面および筐体102bの第1の面が平坦になるように連なる。このとき、表示パネルでも曲面であった部分は平坦に変化し、全体として平坦に展開された状態となる。上記と逆の順序で変形動作を行えば、折り畳むことができる。
【0051】
なお、上記では、柱状体111の断面を台形状としたが、三角形状であってもよい。また、各柱状体および筐体を接続するための構成は限定されない。また、意図した方向と逆の曲げを生じさせないためのストッパを設けてもよい。また、折り畳み時に筐体間のギャップを維持するためのスペーサを設けてもよい。また、筐体またはヒンジは、表示パネルの設置に適した形状に適宜変更してもよい。これらは、次に説明するヒンジ103cにも適用することができる。
【0052】
図5A乃至図5Cは、図3Aに示す表示装置100Bに用いることのできるヒンジ103cの一例を説明する図である。
【0053】
ヒンジ103cは、ヒンジ103aと概略同等の要素を有するユニット113a、113bを有する。なお、ユニット113a、113bは、ヒンジ103aとは、柱状体の数が異なっていてもよい。また、ユニット113aとユニット113bの間には、底面が平坦であって、底面に垂直な側面を有する柱状体114を有する。柱状体114の上面形状は、他の柱状体および筐体に干渉がない範囲で任意である。
【0054】
図5Aに示すように、ユニット113aが有する柱状体の側面、ならびに柱状体114および113bが有する柱状体の側面がそれぞれ接するように変形させることで、折り畳んだ状態とすることができる。このとき、ユニット113aが有する柱状体の底面が一定の角度を成して連なるため、断面が略円弧状となる領域が形成される。ユニット113bも同様である。したがって、可撓性を有する表示パネルは、当該領域と重なる部分で曲面、平面、曲面を形成することができる。
【0055】
ユニット113aが有する柱状体、ならびに柱状体114およびユニット113bが有する柱状体は、底面が連続するように接続される。また、ユニット113aの一方の端部にある柱状体の底面は、筐体102aの第1の面と連続するように接続される。また、ユニット113bの一方の端部にある柱状体の底面は、筐体102bの第1の面と連続するように接続される。
【0056】
図5Aの状態から変形動作(展開動作)を行うと、図5Bに示すように、ユニット113a、113bが有するそれぞれの柱状体の側面が離れる方向に動き、上記略円弧の曲率半径が大きくなるように変化する。このとき、表示パネルでも曲面部分の曲率半径が大きくなるように変化する。
【0057】
図5Bの状態からさらに変形動作を行うと、図5Cに示すように、筐体102aの第1の面、ユニット113aが有する柱状体の底面、柱状体114の底面、ユニット113bが有する柱状体の底面および筐体102bの第1の面が平坦になるように連なる。このとき、表示パネルでも曲面であった部分は平坦に変化し、全体として平坦に展開された状態となる。上記と逆の順序で変形動作を行えば、折り畳むことができる。
【0058】
図6A乃至図6Cは、図1Aに示す表示装置100Aまたは図3Aに示す表示装置100Bに用いることのできるヒンジ103bの一例を説明する図である。
【0059】
ヒンジ103bは、短軸方向の断面を矩形とした柱状体115を複数有する。それぞれの柱状体115は、底面が連続するように接続される。また、ヒンジ103bの一方の端部にある柱状体115の底面は、筐体102aの第1の面と連続するように接続される。また、ヒンジ103bの他方の端部にある柱状体115の底面は、筐体102cの第1の面と連続するように接続される。なお、それぞれの柱状体115の上面の形状は、他の柱状体および筐体に干渉がない範囲で任意である。
【0060】
図6Aに示すように、隣り合う柱状体115のそれぞれの側面が離れる方向に変形させることで、折り畳んだ状態とすることができる。このとき、複数の柱状体115の底面が一定の角度を成して連なるため、全体として断面が略円弧状となる領域が形成される。したがって、可撓性を有する表示パネルは、当該領域と重なる部分で曲面を形成することができる。
【0061】
図6Aの状態から変形動作(展開動作)を行うと、図6Bに示すように、それぞれの柱状体115の側面が近づく方向に動き、上記略円弧の曲率半径が大きくなるように変化する。このとき、表示パネルでも曲面部分の曲率半径が大きくなるように変化する。
【0062】
図6Bの状態からさらに変形動作を行うと、図6Cに示すように、筐体102bの第1の面、それぞれの柱状体115の底面および筐体102cの第1の面が平坦になるように連なる。このとき、表示パネルでも曲面部分は平坦に変化し、全体として平坦に展開された状態となる。上記と逆の順序で変形動作を行えば、折り畳むことができる。
【0063】
なお、柱状体115の断面を矩形としているため、平坦に展開したときに柱状体115の側面同士が接することになる。したがって、ヒンジ103bは、表示パネルに逆方向の曲げを生じさせることがなく、ストッパを不要とすることができる。なお、折り畳み時に筐体間のギャップを維持するためのスペーサを設けてもよい。また、筐体またはヒンジは、表示パネルの設置に適した形状に適宜変形してもよい。
【0064】
図7A乃至図7Cは、ヒンジ103bの別の例を説明する図である。
【0065】
ヒンジ103bは、歯車116aと歯車116bを有する。歯車116aは、筐体102aに固定される。歯車116bは、筐体102bに固定される。歯車116aの中心軸は、筐体102aの第1の面と重なることが好ましい。また、歯車116bの中心軸は、筐体102bの第1の面と重なることが好ましい。
【0066】
図7Aに示すように、折り畳まれた状態のときに特定の位置で歯車116aおよび歯車116bが噛み合わされた状態とする。このとき、二つの歯車の中心軸は、筐体の第1の面にあるため、筐体間(表示パネルの向かい合う表示面間)にギャップが生じる。したがって、可撓性を有する表示パネルは、当該ギャップの約1/2を曲率半径とする曲面を形成することができる。
【0067】
図7Aの状態から変形動作(展開動作)を行うと、筐体102bおよび筐体102cは、歯車116aおよび歯車116bの噛み合いに応じて同期し、ヒンジ103bを支点として開くように移動する(図7B参照)。このとき、表示パネルでも曲面部分の曲率半径が大きくなるように変化する。
【0068】
図7Bの状態からさらに変形動作を行うと、図7Cに示すように、筐体102bの第1の面および筐体102cの第1の面が平坦になるように連なる。このとき、表示パネルでも曲面であった部分は平坦に変化し、全体として平坦に展開された状態となる。上記と逆の順序で変形動作を行えば、折り畳むことができる。
【0069】
なお、歯車116aおよび歯車116bの噛み合わせを保持する機構を設けてもよい。また、平坦に展開したときに筐体102cの側面と筐体102cの側面が接することになる。したがって、ヒンジ103bは、表示パネルに逆方向の曲げを生じさせることがなく、ストッパを不要とすることができる。なお、折り畳み時に筐体間のギャップを維持するためのスペーサを設けてもよい。または、ギャップを維持するための機構を歯車116aおよび歯車116bに設けてもよい。また、筐体またはヒンジは、表示パネルの設置に適した形状に適宜変形してもよい。
【0070】
<表示装置の変形例2>
図8Aは、表示装置100Aの変形例である表示装置100Cを説明する図である。表示装置100Cは、筐体102cの形状が表示装置100Aと異なる。
【0071】
表示装置100Cが有する筐体102cは、筐体102aおよび筐体102bよりも厚く形成されている。図8Bに示すように、筐体102cを厚く形成することにより、比較的サイズの大きいバッテリ117を内在させることができ、表示装置の動作を長時間行うことができる。また、筐体102cに比較的重量のあるバッテリ117を内在させることで、図8Aの状態だけでなく図8Bの状態においても、表示装置100Cの重心位置を筐体102cの内部にすることができる。筐体102cが厚いこと、および筐体102c内部に重心があることによって、平坦に展開させたときに表示装置の持ちやすさを向上させることができる。
【0072】
また、表示装置100Cは、利き手にかかわらず操作しやすい構成でもある。図9Aは、左手で表示装置100Cの筐体102c側を持ち、右手で画面タッチ操作を行う場合を示している図である。また、図9Bは、右手で表示装置100Cの筐体102c側を持ち、左手で画面タッチ操作を行う場合を示している図である。いずれの場合も使用者が視認しやすい向きになるように画像を表示することができる。
【0073】
当該動作は、表示装置100Cが有するセンサ120(加速度センサ、ジャイロセンサなど)で表示装置100Cの傾きを検出し、その傾きから画像の表示の向きを決定することにより行われる。また、センサ120では、傾きの変化から表示装置100Cの揺れを検知することができる。揺れには個人差があるため、揺れの情報を人工知能(AI)で学習させることで使用者を判断させることができる。当該機能を利用して、個人認証を行うこともできる。なお、センサ120は、本実施の形態に示す他の表示装置にも設けることができる。
【0074】
図10は、センサ120を利用した表示画像の向きの確定動作および個人認証を行うためのフローチャートである。
【0075】
S1からS2を経る経路は、センサによる傾きの検知結果を利用して画像の表示の向きを確定する動作である。なお、傾きには、複数の方向があり、傾きA、傾きB、傾きCには、複数の方向の傾きの条件が含まれている。ここでは、傾きAを図9Aに示す表示装置100Cの傾きを含む範囲、傾きCを図9Bに示す表示装置100Cの傾きを含む範囲、傾きBを表示装置100Cの長軸方向を上下方向にしたときの傾きを含む範囲とする。なお、傾きBは、上下が逆になる2通りがあるため、実際には4つの傾きの範囲に対して判断を行ってもよい。
【0076】
傾きAと判断された場合は、A表示が行われる。A表示とは図9Aに示した向きに画像を表示するモードである。傾きCと判断された場合は、C表示が行われる。C表示とは図9Bに示した向きに画像を表示するモードである。傾きBと判断された場合は、B表示が行われる。B表示とは、例えば、図9Aに示した表示装置100Cの画像を略90度回転させて表示するモードである。このように、センサ120を利用して、視認しやすいように画像の向きを変化させて表示を行うことができる。
【0077】
S1、S3、S4の経路は、センサ120が検知した揺れのデータを蓄積し、当該データおよび個人を登録する動作である。ここで登録されたデータは、個人を判別するためのデータとなる。なお、当該データは、表示装置を利用する度に更新することができる。
【0078】
S1、S5、S6を経る経路は、上記データと、リアルタイムにセンサ120から出力される揺れに関するデータを照合し、個人を認証する動作である。照合には、揺れに関する個人の蓄積データを深層学習させた人工知能(AI)を用いることができる。なお、当該動作は、上記データベースに個人の情報が格納された後に行うことができる。このように、センサ120を利用して、個人認証を行うことができる。
【0079】
なお、個人が特定できれば、個人が好んで利用する表示装置100Cの向きなどがわかるため、デフォルトの表示の向きを予め設定することができる。センサ120単体で表示装置100Cの角度を判断する場合は、表示装置100Cの微妙な揺れなどによってセンサ120が過敏に反応してしまうことがある。当該状況では、頻繁に画像が回転してしまうなど、画像を正常に視認できるまでに時間を要する場合がある。また、無駄な電力を消費することにもなる。デフォルトで表示の向きを設定しておくことで、視認に要する時間の短縮、および消費電力を低減させることができる。
【0080】
例えば、ある個人が図9Aに示すように表示装置100Cを持つことが多い場合、A表示をデフォルトとすることができる。逆に、図9Bに示すように表示装置100Cを持つことが多い場合、C表示をデフォルトとすることができる。なお、当該機能を利用せず、センサ120を用いた動作のみを行ってもよい。
【0081】
また、図8C図8Dは、筐体102aにバッテリを内在させた表示装置100Dを説明する図である。表示装置100Dは、筐体102aの端部に握りやすいグリップ部106を有し、グリップ部106にバッテリ117を内在することができる。表示装置100Dの重心が、重量のあるバッテリ117を内在するグリップ部106に位置するため、持ちやすさを向上させることができる。また、図8Dに示すように、平坦に展開させたときには、グリップ部が脚となって机上でも安定した形態で利用することができる。また、表示面が斜めとなるため、視認性を向上させることもできる。
【0082】
また、図8B図8Dに示すように、バッテリ117には保護回路118を設けることが好ましい。バッテリ117としては容量を大きくできるリチウムイオン電池を用いることが好ましいが、稀にバッテリ内部の異常(マイクロショートなど)によって発火事故が起こることがある。
【0083】
保護回路118は、図11Aに示すように、コンパレータ121、トランジスタ122およびキャパシタ123を有する構成とすることができる。コンパレータ121は、バッテリ117の電圧(Vbat)と、例えば正常値の下限となる参照電位(Vref)を比較し、VbatがVrefを下回ったときに出力端子(OUT)から出力する論理値を反転する。Vrefは、トランジスタ122、キャパシタ123およびコンパレータ121の入力端子の一方が接続するノードNに書き込まれて保持することができる。
【0084】
なお、トランジスタ122と、キャパシタ123と、を用いてノードNに書き込まれた電位を保持することができるため、トランジスタ122と、キャパシタ123と、を組み合わせた回路をメモリ回路、またはDOSRAM(Dynamic Oxide Semiconductor Random Access Memory)と呼ぶことができる。DOSRAMは、1つのトランジスタと、1つの容量で構成することができるため、メモリの高密度化を実現できる。また、OSトランジスタを用いることで、データの保持期間を大きくすることができる。
【0085】
refは、バッテリ117の充放電に伴う電圧の変化に応じて一定期間ごとに書き換えを行う。保護回路118では、トランジスタ122にOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が低く、ノードNに書き込まれた電位を実質的に変動がない状態で長時間保持することができる。
【0086】
また、トランジスタ122にOSトランジスタを用いた場合、上記メモリ回路を含む保護回路118を、BTOS(Battery operating system、またはBattery oxide semiconductor)と呼称する場合がある。
【0087】
図11Bに示すように、バッテリ117は保護回路118と電気的に接続され、保護回路118の出力は制御回路119に接続される。保護回路118は、バッテリ117の急激な電圧降下などを検知したとき、制御回路119に出力する信号の論理値を反転する。このとき、制御回路119は、バッテリ117に対して充放電を遮断する制御を行い、使用者の安全を確保する。
【0088】
また、図8B図8Dに示すように、筐体102a内には、アンテナ125およびアンテナ126を設けることが好ましい。アンテナ125は第4世代移動通信システム(4G)通信用アンテナであり、アンテナ126は第5世代移動通信システム(5G)通信用アンテナである。5G通信は4G通信の10乃至20倍の高速通信を行うことができる。
【0089】
なお、図8B図8Dにおいては、アンテナ125およびアンテナ126の双方を設ける構成について例示したが、これに限定されない。例えば、筐体102a内には、アンテナ125のみを設ける構成や、アンテナ126のみを設ける構成としても良い。また、図8B図8Dにおいては、アンテナ125およびアンテナ126をそれぞれ1つずつ設ける構成について例示したがこれに限定されない。例えば、アンテナ125を複数設ける構成、またはアンテナ126を複数設ける構成としても良い。
【0090】
アンテナ125およびアンテナ126ともに、筐体102aに設けることで、良好な通信が行いやすくなる。使用者は、折り畳んだ時でも表示が見やすいような使い方(置き方、持ち方など)をすることが多いため、筐体102aを電波が進行してくる方向(上側、外側)に向ける機会が多く、電波が受信しやすくなる。
【0091】
なお、図8A図8Bでは、筐体102cの形状を他の筐体よりも厚くしてバッテリ等を内在させる例を示したが、図12Aに示す表示装置100Eのように、筐体102aの形状を他の筐体よりも厚くしてもよい。この場合は、外曲げに対応するヒンジ103aを適度に折り曲げることで、机上などにバランスよく設置することができる。
【0092】
また、ヒンジ103aを境に表示面の平面部を二つに分けることができるため、複数の画像を表示させる場合などに、それぞれの平面部に適切な画像を割り当てることができ、視認性を向上させることができる。また、平面部の一方を非表示にして、省電力化動作を行うこともできる。
【0093】
また、表示装置100Cの筐体102cには、図12Bに示すように、さらに受電コイル107および受電回路108などが設けられていてもよい。受電コイル107と充電器109が有する送電コイルを重ねることにより、ワイヤレス充電を行うことができる。
【0094】
充電器109が有する送電コイルに電流を流すと磁束が発生し、電磁誘導により受電コイル107には電流が発生する。当該電流は受電回路108で整流され、受電回路108と接続されたバッテリの充電に用いられる。
【0095】
表示装置100Cでは、充電器109上に重心のある筐体102cを接触させて設置することができる。したがって、図12Bに示すように、畳まない状態でも安定して充電器109上に置くことがきる。また、充電中であっても視認性を損なうことなく利用することができる。なお、受電コイル107は、筐体102a、102b、102cのすべて、いずれか2つ、またはいずれか1つに設けることができる。
【0096】
<表示動作例1>
図13A乃至図13Cは、本発明の一態様の表示装置100A乃至100Eに共通した動作例を説明する図である。なお、図13A乃至図13Cでは、代表的に表示装置100Aを用いた場合を示している。図13Aは、折り畳まれた状態において、領域101aの平面部が表示状態であるとき、曲面104aを非表示状態にしている動作である。このとき、図13Bに示すB1-B2の断面図で示されるように、折り畳まれて視認できない領域(曲面104bを含む領域101bおよび領域101c)も非表示状態とすることが好ましい。
【0097】
または、図13Cに示すように、領域101aの平面部が非表示状態であるとき、曲面104aを表示状態としてもよい。上記同様に、折り畳まれて視認できない領域も非表示状態とすることが好ましい。このように、折り畳んだ状態では、一部の領域のみを表示状態とすることで、省電力動作を行うことができる。
【0098】
<表示動作例2>
図14A乃至図14Cは、本発明の一態様の表示装置100A乃至100Dの表示部を3面に分けて利用する場合の一例を示す図である。
【0099】
図14Aは、筐体102cと筐体102bが成す角度を鈍角、筐体102bと筐体102aが成す角度を鋭角とすることで、机上にバランスよく設置する例を示す図である。筐体102aを脚とすることで、ラップトップコンピュータのように利用することができる。例えば、領域101cにキーボード131、曲面104bにアイコン132、領域101bにアプリケーションソフトの画像130を表示させ、画面をタッチすることで操作を行うことができる。
【0100】
このとき、図14Bに示すように、領域101aにも領域101bと同じ画像130を表示するモードにしておけば、対面にいる人も視認性よく同じ画像を見ることができる。または、図14Cに示すように、領域101aを非表示状態として省電力モードで動作させてもよい。
【0101】
<表示動作例3>
図15A乃至図15Cは、本発明の一態様の表示装置100A乃至100Eの表示部を2面に分けて利用する場合の一例を示す図である。
【0102】
図15Aは、筐体102aと筐体102bが成す角度を概略60°以上180°未満(例えば、約90°など)とし、筐体102bと筐体102cが成す角度を概略180°とすることで、机上にバランスよく設置する例を示す図である。領域101bおよび領域101cを連続した平面として大画面化すること、および筐体102aを脚として表示面(領域101bおよび領域101c)を傾斜させることで視認性を高めることができる。
【0103】
このとき、図15Bに示すように、領域101aを非表示状態として省電力モードで動作させてもよい。
【0104】
図15Cは、筐体102cと筐体102bが成す角度を概略180°より小さく90°以上(例えば、約135°など)とし、筐体102bと筐体102aが成す角度を概略180°とすることで、机上にバランスよく設置する例を示す図である。筐体102aおよび筐体102bを机上などの平面に平行に置くことで、スタイラス150などを用いた入力を容易とすることができる。また、領域101cを傾斜させることで、視認性を高めることができる。
【0105】
<応用例1>
図16A図16Bは、本実施の形態に示した表示装置をスマートフォンなどの情報端末として応用する例を示した図である。なお、前述した表示装置と共通する要素には、同一の符号を付してある。表示装置200は、音声の入出力ユニット135a、135b、カメラ136a、136b、センサ137、センサ120を有する。
【0106】
音声の入出力ユニット135a、135bは、一方がマイクとして機能するとき、他方はスピーカとして機能させることができる。したがって、電話機能を利用するときなど、どちらの向きで把持しても不都合なく会話を行うことができる。マイク機能とスピーカ機能は、傾きを検知するセンサ120により切り替えることができる。また、カメラ136a、136bも同様にセンサ120によりいずれかを優先して機能させることができる。
【0107】
入出力ユニット135a、135bは、マイクとして機能するデバイスおよびスピーカとして機能するデバイスの両方を有していてもよいし、両者の機能を有する一つのデバイスを有していてもよい。
【0108】
また、入出力ユニット135a、135bの両方をマイクとして機能させ、ステレオ音響を録音することもできる。また、入出力ユニット135a、135bの両方をスピーカとして機能させ、ステレオ音響を再生することもできる。
【0109】
また、カメラ136a、136bの両方を機能させ、3D画像を撮像することもできる。センサ137は光センサであり、周囲の照度に合わせて視認しやすいように表示の輝度を調整することができる。
【0110】
また、図16Bに示すように、表示装置200の表示パネル101が設けられた前面とは逆側の後面に表示パネル138が設けられていてもよい。表示パネル138は、表示パネル101と同じ画像を表示できるほか、簡単な情報、絵、模様、写真などを表示するサブディスプレイ、または照明などとして利用することもできる。表示パネル138には発光デバイスまたは液晶デバイスを用いた表示パネルを用いることができるほか、低消費電力の電子ペーパーなどを用いてもよい。表示パネル138には、硬質基板を支持体とした表示パネルも用いることができる。
【0111】
なお、表示パネル138は、図17Aに示すように、筐体102a乃至102cのそれぞれに設けられていてもよい。または、図17Bに示すように、表示装置200の後面に可撓性を有する表示パネル139を設けてもよい。この場合、表示パネル139は曲げることができるため、前面に設けられた表示パネル101と同様に筐体102a乃至102cに亘って設けることができる。
【0112】
また、図17Cに示すように、表示装置200の後面に太陽電池140を設けてもよい。太陽電池140で発電した電力は、表示装置200内のバッテリに充電することができるほか、外部インターフェイス145を介して外部への電力供給をすることができる。
【0113】
なお、図17Cでは、硬質の支持体を有する太陽電池の例を示している。当該太陽電池としては、例えば、結晶シリコンを光電変換層としたシリコン太陽電池、またはシリコン太陽電池とペロブスカイト型太陽電池をタンデム構造とした太陽電池などを用いることができる。
【0114】
または、図17Dに示すように、可撓性基板を支持体とする太陽電池であってもよい。当該太陽電池としては、例えば、非晶質シリコン太陽電池、CIGS(Cu-In-Ga-Se)型太陽電池、有機太陽電池、またはペロブスカイト型太陽電池などの薄膜太陽電池141などを用いることができる。可撓性基板を支持体とする太陽電池は、表示パネル139と同様に、筐体102a乃至102cに亘って設けることができる。
【0115】
<応用例2>
図18A図18Bは、本発明の一態様の表示装置100A乃至100Dの表示部を用途に応じて使い分ける場合の一例を示す図である。
【0116】
図18A図18Bは、本実施の形態に示した表示装置を飲食店などのオーダー端末として応用する例を示した図である。なお、前述した表示装置と共通する要素には、同一の符号を付してある。表示装置210は、送受信ユニット146、スピーカ147、カメラ148、マイク149などを有する。なお、表示装置210は、本発明の一態様の機能のほか、一般的なタブレット型コンピュータの機能を有していてもよい。
【0117】
通常時は、図18Aに示すように折り畳んだ状態とすることができ、店員の呼び出し機能やインターホン機能を利用することができる。展開するとメニューが表示され、注文を行うことができる。注文内容は、送受信ユニット146を介して送信することができる。また、注文の合計額の表示やカメラ148で撮像したバーコードで決済を行うことができる。
【0118】
図19は、本実施の形態に示した表示装置をテレビジョン装置として応用する例を示したブロック図である。
【0119】
なお、図19では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックを図示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0120】
テレビジョン装置600は、制御部601、記憶部602、通信制御部603、画像処理回路604、デコーダ回路605、映像信号受信部606、タイミングコントローラ607、ソースドライバ608、ゲートドライバ609、表示パネル620等を有する。
【0121】
表示パネル620は実施の形態1に示した表示パネル101に相当し、その他の要素は、筐体102a乃至筐体102cのいずれかに内在することができる。なお、ソースドライバ608、ゲートドライバ609などのいくつかの要素は、表示パネル101の要素であってもよい。
【0122】
制御部601は、例えば中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)として機能することができる。例えば制御部601は、システムバス630を介して記憶部602、通信制御部603、画像処理回路604、デコーダ回路605、および映像信号受信部606等のコンポーネントを制御する機能を有する。
【0123】
制御部601と各コンポーネントとは、システムバス630を介して信号の伝達が行われる。また制御部601は、システムバス630を介して接続された各コンポーネントから入力される信号を処理する機能、各コンポーネントへ出力する信号を生成する機能等を有し、これによりシステムバス630に接続された各コンポーネントを統括的に制御することができる。
【0124】
記憶部602は、制御部601および画像処理回路604がアクセス可能なレジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリ、二次メモリなどとして機能する。
【0125】
二次メモリとして用いることのできる記憶装置としては、例えば書き換え可能な不揮発性メモリが適用された記憶装置を用いることができる。例えば、フラッシュメモリ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAM)、FeRAM(Ferroelectric RAM)などを用いることができる。
【0126】
また、レジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリなどの一時メモリとして用いることのできる記憶装置としては、DRAM(Dynamic RAM)や、SRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いてもよい。
【0127】
例えば、メインメモリに設けられるRAMとしては、例えばDRAMが用いられ、制御部601の作業空間として仮想的にメモリ空間が割り当てられ利用される。記憶部602に格納されたオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータ等は、実行のためにRAMにロードされる。RAMにロードされたこれらのデータやプログラム、プログラムモジュールは、制御部601に直接アクセスされ、操作される。
【0128】
一方、ROMには書き換えを必要としないBIOS(Basic Input/Output System)やファームウェア等を格納することができる。ROMとしては、マスクROMや、OTPROM(One Time Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等を用いることができる。EPROMとしては、紫外線照射により記憶データの消去を可能とするUV-EPROM(Ultra-Violet Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリなどが挙げられる。
【0129】
また、記憶部602の他に、取り外し可能な記憶装置を接続可能な構成としてもよい。例えばストレージデバイスとして機能するハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)などの記録メディアドライブ、フラッシュメモリ、ブルーレイディスク、DVDなどの記録媒体と接続する端子を有することが好ましい。これにより、映像を記録することができる。
【0130】
通信制御部603は、コンピュータネットワークを介して行われる通信を制御する機能を有する。つまり、テレビジョン装置600には、IoT(Internet of Things)の技術が適用されている。
【0131】
通信制御部603は、例えば、制御部601からの命令に応じてコンピュータネットワークに接続するための制御信号を制御し、当該信号をコンピュータネットワークに発信する。これによって、World Wide Web(WWW)の基盤であるインターネット、イントラネット、エクストラネット、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)等のコンピュータネットワークに接続し、通信を行うことができる。
【0132】
また、通信制御部603は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の通信規格を用いてコンピュータネットワークまたは他の電子機器と通信する機能を有していてもよい。
【0133】
通信制御部603は、無線により通信する機能を有していてもよい。例えばアンテナと高周波回路(RF回路)を設け、RF信号の送受信を行えばよい。高周波回路は、各国法制により定められた周波数帯域の電磁信号と電気信号とを相互に変換し、当該電磁信号を用いて無線で他の通信機器との間で通信を行うための回路である。実用的な周波数帯域として数10kHz乃至数10GHzが一般に用いられている。アンテナと接続される高周波回路には、複数の周波数帯域に対応した高周波回路部を有し、高周波回路部は、増幅器(アンプ)、ミキサ、フィルタ、DSP、RFトランシーバ等を有する構成とすることができる。
【0134】
映像信号受信部606は、例えばアンテナ、復調回路、およびA-D変換回路(アナログ-デジタル変換回路)等を有する。復調回路は、アンテナから入力した信号を復調する機能を有する。またA-D変換回路は、復調されたアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。映像信号受信部606で処理された信号は、デコーダ回路605に送られる。
【0135】
デコーダ回路605は、映像信号受信部606から入力されるデジタル信号に含まれる映像データを、送信される放送規格の仕様に従ってデコードし、画像処理回路に送信する信号を生成する機能を有する。例えば8K放送における放送規格としては、H.265 | MPEG-H High Efficiency Video Coding(略称:HEVC)などがある。
【0136】
映像信号受信部606が有するアンテナにより受信できる放送電波としては、地上波、または衛星から送信される電波などが挙げられる。またアンテナにより受信できる放送電波として、アナログ放送、デジタル放送などがあり、また映像および音声、または音声のみの放送などがある。例えばUHF帯(約300MHz乃至3GHz)またはVHF帯(30MHz乃至300MHz)のうちの特定の周波数帯域で送信される放送電波を受信することができる。また例えば、複数の周波数帯域で受信した複数のデータを用いることで、転送レートを高くすることができ、より多くの情報を得ることができる。これによりフルハイビジョンを超える解像度を有する映像を、表示パネル620に表示させることができる。例えば、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。
【0137】
また、映像信号受信部606およびデコーダ回路605は、コンピュータネットワークを介したデータ伝送技術により送信された放送のデータを用いて、画像処理回路604に送信する信号を生成する構成としてもよい。このとき、受信する信号がデジタル信号の場合には、映像信号受信部606は復調回路およびA-D変換回路等を有していなくてもよい。
【0138】
画像処理回路604は、デコーダ回路605から入力される映像信号に基づいて、タイミングコントローラ607に出力する映像信号を生成する機能を有する。
【0139】
タイミングコントローラ607は、画像処理回路604が処理を施した映像信号等に含まれる同期信号を基に、ゲートドライバ609およびソースドライバ608に出力する信号(クロック信号、スタートパルス信号などの信号)を生成する機能を有する。また、タイミングコントローラ607は、上記信号に加え、ソースドライバ608に出力するビデオ信号を生成する機能を有する。
【0140】
表示パネル620は、複数の画素621を有する。各画素621は、ゲートドライバ609およびソースドライバ608から供給される信号により駆動される。ここでは、画素数が7680×4320である、8K4K規格に応じた解像度を有する表示パネルの例を示している。なお、表示パネル620の解像度はこれに限られず、フルハイビジョン(画素数1920×1080)または4K2K(画素数3840×2160)等の規格に応じた解像度であってもよい。
【0141】
図19に示す制御部601や画像処理回路604としては、例えばプロセッサを有する構成とすることができる。例えば、制御部601は、CPUとして機能するプロセッサを用いることができる。また、画像処理回路604として、例えばDSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の他のプロセッサを用いることができる。また制御部601や画像処理回路604に、上記プロセッサをFPGA(Field Programmable Gate Array)やFPAA(Field Programmable Analog Array)といったPLD(Programmable Logic Device)によって実現した構成としてもよい。
【0142】
プロセッサは、種々のプログラムからの命令を解釈し実行することで、各種のデータ処理やプログラム制御を行う。プロセッサにより実行しうるプログラムは、プロセッサが有するメモリ領域に格納されていてもよいし、別途設けられる記憶装置に格納されていてもよい。
【0143】
また、制御部601、記憶部602、通信制御部603、画像処理回路604、デコーダ回路605、および映像信号受信部606、およびタイミングコントローラ607のそれぞれが有する機能のうち、2つ以上の機能を1つのICチップに集約させ、システムLSIを構成してもよい。例えば、プロセッサ、デコーダ回路、チューナ回路、A-D変換回路、DRAM、およびSRAM等を有するシステムLSIとしてもよい。
【0144】
なお、制御部601や、他のコンポーネントが有するIC等に、チャネル形成領域に酸化物半導体を用い、極めて低いオフ電流が実現されたトランジスタを利用することもできる。当該トランジスタは、オフ電流が極めて低いため、当該トランジスタをメモリとして機能する容量に流入した電荷(データ)を保持するためのスイッチとして用いることで、データの保持期間を長期にわたり確保することができる。この特性を制御部601等のレジスタやキャッシュメモリに用いることで、必要なときだけ制御部601を動作させ、他の場合には直前の処理の情報を当該メモリに待避させることにより、ノーマリーオフコンピューティングが可能となる。これにより、テレビジョン装置600の低消費電力化を図ることができる。
【0145】
なお、図19のテレビジョン装置600の構成は一例であり、全ての構成要素を含む必要はない。テレビジョン装置600は、図19に示す構成要素のうち必要な構成要素を有していればよい。また、テレビジョン装置600は、図19に示す構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
【0146】
例えば、テレビジョン装置600は、図19に示す構成のほか、外部インターフェイス、音声出力部、タッチパネルユニット、センサユニット、カメラユニットなどを有していてもよい。例えば外部インターフェイスとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)端子、LAN(Local Area Network)接続用端子、電源受給用端子、音声出力用端子、音声入力用端子、映像出力用端子、映像入力用端子などの外部接続端子、赤外線、可視光、紫外線などを用いた光通信用の送受信機、筐体に設けられた物理ボタンなどがある。また、例えば音声入出力部としては、サウンドコントローラ、マイクロフォン、スピーカなどがある。
【0147】
以下では、画像処理回路604についてより詳細な説明を行う。
【0148】
画像処理回路604は、デコーダ回路605から入力される映像信号に基づいて、画像処理を実行する機能を有することが好ましい。
【0149】
画像処理としては、例えばノイズ除去処理、階調変換処理、色調補正処理、輝度補正処理などが挙げられる。色調補正処理や輝度補正処理としては、例えばガンマ補正などがある。
【0150】
また、画像処理回路604は、解像度のアップコンバートに伴う画素間補間処理や、フレーム周波数のアップコンバートに伴うフレーム間補間処理などの処理を実行する機能を有していることが好ましい。
【0151】
例えば、ノイズ除去処理としては、文字などの輪郭の周辺に生じるモスキートノイズ、高速の動画で生じるブロックノイズ、ちらつきを生じるランダムノイズ、解像度のアップコンバートにより生じるドットノイズなどのさまざまなノイズを除去する。
【0152】
階調変換処理は、画像の階調を表示パネル620の出力特性に対応した階調へ変換する処理である。例えば階調数を大きくする場合、小さい階調数で入力された画像に対して、各画素に対応する階調値を補間して割り当てることで、ヒストグラムを平滑化する処理を行うことができる。また、ダイナミックレンジを広げる、ハイダイナミックレンジ(HDR)処理も、階調変換処理に含まれる。
【0153】
また、画素間補間処理は、解像度をアップコンバートした際に、本来存在しないデータを補間する。例えば、目的の画素の周囲の画素を参照し、それらの中間色を表示するようにデータを補間する。
【0154】
また、色調補正処理は、画像の色調を補正する処理である。また輝度補正処理は、画像の明るさ(輝度コントラスト)を補正する処理である。例えば、テレビジョン装置600が設けられる空間の照明の種類や輝度、または色純度などを検知し、それに応じて表示パネル620に表示する画像の輝度や色調が最適となるように補正する。または、表示する画像と、あらかじめ保存してある画像リスト内の様々な場面の画像と、を照合し、最も近い場面の画像に適した輝度や色調に表示する画像を補正する機能を有していてもよい。
【0155】
フレーム間補間は、表示する映像のフレーム周波数を増大させる場合に、本来存在しないフレーム(補間フレーム)の画像を生成する。例えば、ある2枚の画像の差分から2枚の画像の間に挿入する補間フレームの画像を生成する。または2枚の画像の間に複数枚の補間フレームの画像を生成することもできる。例えばデコーダ回路605から入力される映像信号のフレーム周波数が60Hzであったとき、複数枚の補間フレームを生成することで、タイミングコントローラ607に出力する映像信号のフレーム周波数を、2倍の120Hz、または4倍の240Hz、または8倍の480Hzなどに増大させることができる。
【0156】
本実施の形態で例示した構成例、およびそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0157】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0158】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置に適用可能な表示パネルの構成例について説明する。
【0159】
<構成例>
図20に、表示パネル700の上面図を示す。表示パネル700は、可撓性を有する支持基板745が適用され、フレキシブルディスプレイとして用いることができる表示パネルである。また表示パネル700は、可撓性を有する支持基板745上に設けられた画素部702を有する。また支持基板745上にはソースドライバ回路部704、一対のゲートドライバ回路部706、配線710等が設けられる。また画素部702には、複数の表示デバイスが設けられる。
【0160】
また、支持基板745の一部に、FPC716(FPC:Flexible printed circuit)が接続されるFPC端子部708が設けられている。FPC716によって、FPC端子部708および配線710を介して、画素部702、ソースドライバ回路部704、およびゲートドライバ回路部706のそれぞれに各種信号等が供給される。
【0161】
一対のゲートドライバ回路部706は、画素部702を挟んで両側に設けられている。なお、ゲートドライバ回路部706およびソースドライバ回路部704は、それぞれ半導体基板等に別途形成され、パッケージされたICチップの形態であってもよい。当該ICチップは、支持基板745上にCOF(Chip On Film)技術等により実装することができる。
【0162】
画素部702、ソースドライバ回路部704、およびゲートドライバ回路部706が有するトランジスタに、OSトランジスタを適用することが好ましい。
【0163】
画素部702に設けられる表示デバイスには、発光デバイス等を用いることができる。発光デバイスとしては、LED(Light Emitting Diode)、OLED(Organic LED)、QLED(Quantum-dot LED)、半導体レーザなどの、自発光性の発光デバイスが挙げられる。また、表示デバイスとして、透過型の液晶デバイス、反射型の液晶デバイス、半透過型の液晶デバイスなどの液晶デバイスを用いることもできる。また、シャッター方式または光干渉方式のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスや、マイクロカプセル方式、電気泳動方式、エレクトロウェッティング方式、または電子粉流体(登録商標)方式等を適用した表示デバイスなどを用いることもできる。
【0164】
また、図20では、支持基板745の、FPC端子部708が設けられる部分が突出した形状を有する例を示している。支持基板745のFPC端子部708を含む一部は、図20中の領域P1で、裏側に折り返すことができる。支持基板745の一部を折り返すことで、FPC716を画素部702の裏側に重ねて配置した状態で、表示パネル700を電子機器等に実装することができ、電子機器等の省スペース化、小型化を図ることができる。
【0165】
また、表示パネル700に接続されるFPC716には、IC717が実装されている。IC717は、例えばソースドライバ回路としての機能を有する。このとき、表示パネル700におけるソースドライバ回路部704は、保護回路、バッファ回路、デマルチプレクサ回路等の少なくとも一を含む構成とすることができる。
【0166】
<断面構成例>
以下では、表示デバイスとして有機ELを用いる構成について、図21および図22を用いて説明する。図21および図22は、それぞれ図20で示した表示パネル700の、一点鎖線S-Tにおける断面概略図である。
【0167】
まず、図21および図22に示す表示パネルの共通する部分について説明する。
【0168】
図21および図22には、画素部702と、ゲートドライバ回路部706と、FPC端子部708と、を含む断面を示している。画素部702は、トランジスタ750およびキャパシタ790を有する。ゲートドライバ回路部706は、トランジスタ752を有する。
【0169】
トランジスタ750およびトランジスタ752は、チャネルが形成される半導体層に、酸化物半導体を適用したトランジスタである。なお、これに限られず、半導体層に、シリコン(非晶質シリコン、多結晶シリコン、または単結晶シリコン)や、有機半導体を用いたトランジスタを適用することもできる。
【0170】
本実施の形態で用いるトランジスタは、高純度化し、酸素欠損の形成を抑制した酸化物半導体膜を有する。該トランジスタは、オフ電流を著しく低くできる。そのため、このようなトランジスタが適用された画素は、画像信号等の電気信号の保持時間を長くでき、画像信号等の書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくできるため、消費電力を低減することができる。
【0171】
また、本実施の形態で用いるトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを表示パネルに用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバトランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、シリコンウェハ等により形成された駆動回路を適用しない構成も可能であり、表示装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0172】
キャパシタ790は、トランジスタ750が有する第1のゲート電極と同一の膜を加工して形成される下部電極と、半導体層と同一の金属酸化物膜を加工して形成される上部電極と、を有する。上部電極は、トランジスタ750のソース領域およびドレイン領域と同様に低抵抗化されている。また、下部電極と上部電極との間には、トランジスタ750の第1のゲート絶縁層として機能する絶縁膜の一部が設けられる。すなわち、キャパシタ790は、一対の電極間に誘電体膜として機能する絶縁膜が挟持された積層型の構造を有する。また、上部電極には、トランジスタ750のソース電極およびドレイン電極と同一の膜を加工して得られる配線が接続されている。
【0173】
また、トランジスタ750、トランジスタ752、およびキャパシタ790上には、平坦化膜として機能する絶縁層770が設けられている。
【0174】
画素部702が有するトランジスタ750と、ゲートドライバ回路部706が有するトランジスタ752とは、異なる構造のトランジスタを用いてもよい。例えば、いずれか一方にトップゲート型のトランジスタを適用し、他方にボトムゲート型のトランジスタを適用した構成としてもよい。なお、上記ソースドライバ回路部704についても、ゲートドライバ回路部706と同様である。
【0175】
FPC端子部708は、一部が接続電極として機能する配線760、異方性導電膜780、およびFPC716を有する。配線760は、異方性導電膜780を介してFPC716が有する端子と電気的に接続される。ここでは、配線760は、トランジスタ750等のソース電極およびドレイン電極と同じ導電膜で形成されている。
【0176】
続いて、図21に示す表示パネル700について説明する。
【0177】
図21に示す表示パネル700は、支持基板745と、支持基板740とを有する。支持基板745および支持基板740としては、例えばガラス基板、またはプラスチック基板等の可撓性を有する基板を用いることができる。
【0178】
トランジスタ750、トランジスタ752、キャパシタ790等は、絶縁層744上に設けられる。支持基板745と絶縁層744とは、接着層742によって貼り合されている。
【0179】
また表示パネル700は、発光デバイス782、着色層736、遮光層738等を有する。
【0180】
発光デバイス782は、導電層772、EL層786、および導電層788を有する。導電層772は、トランジスタ750が有するソース電極またはドレイン電極と電気的に接続される。導電層772は、絶縁層770上に設けられ、画素電極として機能する。また導電層772の端部を覆って絶縁層730が設けられ、絶縁層730および導電層772上にEL層786と導電層788が積層して設けられている。
【0181】
導電層772には、可視光に対して反射性を有する材料を用いることができる。例えば、アルミニウム、銀等を含む材料を用いることができる。また、導電層788には、可視光に対して透光性を有する材料を用いることができる。例えば、インジウム、亜鉛、スズ等を含む酸化物材料を用いるとよい。そのため、発光デバイス782は、被形成面とは反対側(支持基板740側)に光を射出する、トップエミッション型の発光デバイスである。
【0182】
EL層786は、有機化合物、または量子ドットなどの無機化合物を有する。EL層786は、電流が流れた際に青色の光を呈する発光材料を含む。
【0183】
発光材料としては、蛍光材料、燐光材料、熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料、無機化合物(量子ドット材料など)などを用いることができる。量子ドットに用いることのできる材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料、などが挙げられる。
【0184】
遮光層738と、着色層736は、絶縁層746の一方の面に設けられている。着色層736は、発光デバイス782と重なる位置に設けられている。また、遮光層738は、画素部702において、発光デバイス782と重ならない領域に設けられている。また遮光層738は、ゲートドライバ回路部706等にも重ねて設けられていてもよい。
【0185】
支持基板740は、絶縁層746の他方の面に、接着層747によって貼り合されている。また、支持基板740と支持基板745とは、封止層732によって貼り合されている。
【0186】
ここでは、発光デバイス782が有するEL層786として、白色の発光を呈する発光材料が適用されている。発光デバイス782が発する白色の発光は、着色層736により着色されて外部に射出される。EL層786は、異なる色を呈する画素に亘って設けられる。画素部には、赤色(R)、緑色(G)、または青色(B)のいずれかを透過する着色層736が設けられた画素をマトリクス状に配置することで、表示パネル700は、フルカラーの表示を行うことができる。
【0187】
また、導電層788として、半透過性、半反射性を有する導電膜を用いてもよい。このとき、導電層772と導電層788との間で微小共振器(マイクロキャビティ)構造を実現し、特定の波長の光を強めて射出する構成とすることができる。またこのとき、導電層772と導電層788との間に光学距離を調整するための光学調整層を配置し、当該光学調整層の厚さを異なる色の画素間で異ならせることで、それぞれの画素から射出される光の色純度を高める構成としてもよい。
【0188】
なお、EL層786を画素毎に島状または画素列毎に縞状に形成する、すなわち塗り分けにより形成する場合においては、着色層736や、上述した光学調整層を設けない構成としてもよい。
【0189】
ここで、絶縁層744と絶縁層746とは、それぞれ透湿性の低いバリア膜として機能する無機絶縁膜を用いることが好ましい。このような絶縁層744と絶縁層746との間に、発光デバイス782やトランジスタ750等が挟持された構成とすることで、これらの劣化が抑制され、信頼性の高い表示パネルを実現できる。
【0190】
図22に示す表示パネル700Aは、図21で示した接着層742と絶縁層744との間に、樹脂層743が設けられている。また、支持基板740に換えて、保護層749を有する。
【0191】
樹脂層743は、ポリイミドやアクリルなどの有機樹脂を含む層である。絶縁層744は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化シリコン等の無機絶縁膜を含む。樹脂層743と支持基板745とは、接着層742によって貼りあわされている。樹脂層743は、支持基板745よりも薄いことが好ましい。
【0192】
保護層749は、封止層732と貼りあわされている。保護層749としては、ガラス基板や樹脂フィルムなどを用いることができる。また、保護層749として、偏光板(円偏光板を含む)、散乱板などの光学部材や、タッチセンサパネルなどの入力装置、またはこれらを2つ以上積層した構成を適用してもよい。
【0193】
また、発光デバイス782が有するEL層786は、絶縁層730および導電層772上に島状に設けられている。EL層786を、副画素毎に発光色が異なるように作り分けることで、着色層736を用いずにカラー表示を実現することができる。
【0194】
また、発光デバイス782を覆って、保護層741が設けられている。保護層741は発光デバイス782に水などの不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。保護層741は、導電層788側から絶縁層741a、絶縁層741b、および絶縁層741cがこの順で積層された積層構造を有している。このとき、絶縁層741aと絶縁層741cには、水などの不純物に対してバリア性の高い無機絶縁膜を、絶縁層741bには平坦化膜として機能する有機絶縁膜を、それぞれ用いることが好ましい。また、保護層741は、ゲートドライバ回路部706にも延在して設けられていることが好ましい。
【0195】
また、封止層732よりも内側において、トランジスタ750やトランジスタ752等を覆う有機絶縁膜が島状に形成されることが好ましい。言い換えると、当該有機絶縁膜の端部が、封止層732の内側、または封止層732の端部と重なる領域に位置することが好ましい。図22では、絶縁層770、絶縁層730、および絶縁層741bが、島状に加工されている例を示している。例えば封止層732と重なる部分では、絶縁層741cおよび絶縁層741aが接して設けられている。このように、トランジスタ750やトランジスタ752を覆う有機絶縁膜の表面が、封止層732よりも外側に露出しない構成とすることで、外部から当該有機絶縁膜を介してトランジスタ750やトランジスタ752に水や水素が拡散することを好適に防ぐことができる。これにより、トランジスタの電気特性の変動が抑えられ、極めて信頼性の高い表示装置を実現できる。
【0196】
また、図22において、折り曲げ可能な領域P1では、支持基板745、接着層742の他、絶縁層744等の無機絶縁膜が設けられていない部分を有する。また領域P1において、配線760が露出することを防ぐために、有機材料を含む絶縁層770が配線760を覆う構成を有している。折り曲げ可能な領域P1に、無機絶縁膜をできるだけ設けず、且つ、金属または合金を含む導電層と、有機材料を含む層のみを積層した構成とすることで、曲げた際にクラックが生じることを防ぐことができる。また領域P1に支持基板745を設けないことで、極めて小さい曲率半径で、表示パネル700Aの一部を曲げることができる。
【0197】
また、図22において、保護層741上には導電層761が設けられている。導電層761は、配線や電極として用いることができる。
【0198】
また、導電層761は、表示パネル700Aに重ねてタッチセンサが設けられる場合に、画素を駆動する際の電気的なノイズが、当該タッチセンサに伝わることを防ぐための静電遮蔽膜として機能させることができる。このとき、導電層761には所定の定電位が与えられる構成とすればよい。
【0199】
または、導電層761は、例えばタッチセンサの電極として用いることができる。これにより、表示パネル700Aをタッチパネルとして機能させることができる。例えば、導電層761は、静電容量方式のタッチセンサの電極または配線として用いることができる。このとき、導電層761は、検知回路が接続される配線または電極や、センサ信号が入力される配線または電極として用いることができる。このように、発光デバイス782上にタッチセンサを作りこむことで、部品点数を削減でき、電子機器等の製造コストを削減することができる。
【0200】
導電層761は、発光デバイス782と重ならない部分に設けられることが好ましい。例えば導電層761は、絶縁層730と重なる位置に設けることができる。これにより、導電層761として、比較的導電性の低い透明導電膜を用いる必要がなく、導電性の高い金属や合金などを用いることができるため、センサの感度を高めることができる。
【0201】
なお、導電層761を用いて構成することのできるタッチセンサの方式としては、静電容量方式に限られず、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、光学方式、感圧方式など様々な方式を用いることができる。または、これら2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0202】
<構成要素>
以下では、表示装置に適用可能なトランジスタ等の構成要素について説明する。
【0203】
〔トランジスタ〕
トランジスタは、ゲート電極として機能する導電層と、半導体層と、ソース電極として機能する導電層と、ドレイン電極として機能する導電層と、ゲート絶縁層として機能する絶縁層と、を有する。
【0204】
なお、本発明の一態様の表示装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよいし、逆スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型またはボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルの上下にゲート電極が設けられていてもよい。
【0205】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0206】
<導電層>
トランジスタのゲート、ソースおよびドレインのほか、表示装置を構成する各種配線および電極などの導電層に用いることのできる材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの金属、またはこれを主成分とする合金などが挙げられる。またこれらの材料を含む膜を単層で、または積層構造として用いることができる。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、その上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛等の酸化物を用いてもよい。また、マンガンを含む銅を用いると、エッチングによる形状の制御性が高まるため好ましい。
【0207】
<絶縁層>
各絶縁層に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル、エポキシなどの樹脂、シロキサン結合を有する樹脂の他、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料を用いることもできる。
【0208】
また、発光デバイスは、一対の透水性の低い絶縁膜の間に設けられていることが好ましい。これにより、発光デバイスに水等の不純物が侵入することを抑制でき、装置の信頼性の低下を抑制できる。
【0209】
透水性の低い絶縁膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の窒素と珪素を含む膜や、窒化アルミニウム膜等の窒素とアルミニウムを含む膜等が挙げられる。また、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜等を用いてもよい。
【0210】
例えば、透水性の低い絶縁膜の水蒸気透過量は、1×10-5[g/(m・day)]以下、好ましくは1×10-6[g/(m・day)]以下、より好ましくは1×10-7[g/(m・day)]以下、さらに好ましくは1×10-8[g/(m・day)]以下とする。
【0211】
以上が、構成要素についての説明である。
【0212】
本実施の形態で例示した構成例、およびそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0213】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0214】
(実施の形態3)
本実施の形態では、表示装置の構成例について、図23A図23B図23Cを用いて説明を行う。
【0215】
図23Aに示す表示装置は、画素部502と、駆動回路部504と、保護回路506と、端子部507と、を有する。なお、保護回路506は、設けない構成としてもよい。
【0216】
画素部502は、X行Y列(X、Yはそれぞれ独立に2以上の自然数)に配置された複数の表示デバイスを駆動する複数の画素回路501を有する。
【0217】
駆動回路部504は、ゲート線GL_1乃至GL_Xに走査信号を出力するゲートドライバ504a、データ線DL_1乃至DL_Yにデータ信号を供給するソースドライバ504bなどの駆動回路を有する。ゲートドライバ504aは、少なくともシフトレジスタを有する構成とすればよい。またソースドライバ504bは、例えば複数のアナログスイッチなどを用いて構成される。また、シフトレジスタなどを用いてソースドライバ504bを構成してもよい。
【0218】
端子部507は、外部の回路から表示装置に電源、制御信号、および画像信号等を入力するための端子が設けられた部分をいう。
【0219】
保護回路506は、自身が接続する配線に一定の範囲外の電位が与えられたときに、該配線と別の配線とを導通状態にする回路である。図23Aに示す保護回路506は、例えば、ゲートドライバ504aと画素回路501の間の配線であるゲート線GL、またはソースドライバ504bと画素回路501の間の配線であるデータ線DL等の各種配線に接続される。
【0220】
また、ゲートドライバ504aとソースドライバ504bは、それぞれ画素部502と同じ基板上に設けられていてもよいし、ゲートドライバ回路またはソースドライバ回路が別途形成された基板(例えば、単結晶半導体膜または多結晶半導体膜で形成された駆動回路基板)をCOF、TCP(Tape Carrier Package)、COG(Chip On Glass)などによって基板に実装する構成としてもよい。
【0221】
また、図23Aに示す複数の画素回路501は、例えば、図23B図23Cに示す構成とすることができる。
【0222】
図23Bに示す画素回路501は、液晶デバイス570と、トランジスタ550と、キャパシタ560と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、ゲート線GL_m、電位供給線VL等が接続されている。
【0223】
液晶デバイス570の一対の電極の一方の電位は、画素回路501の仕様に応じて適宜設定される。液晶デバイス570は、書き込まれるデータにより配向状態が設定される。なお、複数の画素回路501のそれぞれが有する液晶デバイス570の一対の電極の一方に共通の電位(コモン電位)を与えてもよい。また、各行の画素回路501の液晶デバイス570の一対の電極の一方に異なる電位を与えてもよい。
【0224】
また、図23Cに示す画素回路501は、トランジスタ552、554と、キャパシタ562と、発光デバイス572と、を有する。また画素回路501には、データ線DL_n、ゲート線GL_m、電位供給線VL_a、電位供給線VL_b等が接続されている。
【0225】
なお、電位供給線VL_aおよび電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。トランジスタ554のゲートに与えられる電位に応じて、発光デバイス572に流れる電流が制御されることにより、発光デバイス572からの発光輝度が制御される。
【0226】
本実施の形態で例示した構成例、およびそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせて実施することができる。
【0227】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0228】
(実施の形態4)
以下では、画素に表示される階調を補正するためのメモリを備える画素回路と、これを有する表示装置について説明する。
【0229】
<回路構成>
図24Aに、画素回路400の回路図を示す。画素回路400は、トランジスタM1、トランジスタM2、容量C1、および回路401を有する。また画素回路400には、配線S1、配線S2、配線G1、および配線G2が接続される。
【0230】
トランジスタM1は、ゲートが配線G1と、ソースおよびドレインの一方が配線S1と、他方が容量C1の一方の電極と、それぞれ接続する。トランジスタM2は、ゲートが配線G2と、ソースおよびドレインの一方が配線S2と、他方が容量C1の他方の電極、および回路401と、それぞれ接続する。
【0231】
回路401は、少なくとも一の表示デバイスを含む回路である。表示デバイスとしては様々なデバイスを用いることができるが、代表的には有機ELデバイスやLEDデバイスなどの発光デバイス、液晶デバイス、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイス等を適用することができる。
【0232】
トランジスタM1と容量C1とを接続するノードをノードN1、トランジスタM2と回路401とを接続するノードをノードN2とする。
【0233】
画素回路400は、トランジスタM1をオフ状態とすることで、ノードN1の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とすることで、ノードN2の電位を保持することができる。また、トランジスタM2をオフ状態とした状態で、トランジスタM1を介してノードN1に所定の電位を書き込むことで、容量C1を介した容量結合により、ノードN1の電位の変位に応じてノードN2の電位を変化させることができる。
【0234】
ここで、トランジスタM1、トランジスタM2のうちの一方または両方に、実施の形態1で例示した、酸化物半導体が適用されたトランジスタを適用することができる。そのため極めて低いオフ電流により、ノードN1およびノードN2の電位を長期間に亘って保持することができる。なお、各ノードの電位を保持する期間が短い場合(具体的には、フレーム周波数が30Hz以上である場合等)には、シリコン等の半導体を適用したトランジスタを用いてもよい。
【0235】
<駆動方法例>
続いて、図24Bを用いて、画素回路400の動作方法の一例を説明する。図24Bは、画素回路400の動作に係るタイミングチャートである。なおここでは説明を容易にするため、配線抵抗などの各種抵抗や、トランジスタや配線などの寄生容量、およびトランジスタのしきい値電圧などの影響は考慮しない。
【0236】
図24Bに示す動作では、1フレーム期間を期間T1と期間T2とに分ける。期間T1はノードN2に電位を書き込む期間であり、期間T2はノードN1に電位を書き込む期間である。
【0237】
期間T1では、配線G1と配線G2の両方に、トランジスタをオン状態にする電位を与える。また、配線S1には固定電位である電位Vrefを供給し、配線S2には第1データ電位Vを供給する。
【0238】
ノードN1には、トランジスタM1を介して配線S1から電位Vrefが与えられる。また、ノードN2には、トランジスタM2を介して配線S2から第1データ電位Vが与えられる。したがって、容量C1には電位差V-Vrefが保持された状態となる。
【0239】
続いて期間T2では、配線G1にはトランジスタM1をオン状態とする電位を与え、配線G2にはトランジスタM2をオフ状態とする電位を与える。また、配線S1には第2データ電位Vdataを供給する。配線S2には所定の定電位を与える、またはフローティングとしてもよい。
【0240】
ノードN1には、トランジスタM1を介して配線S1から第2データ電位Vdataが与えられる。このとき、容量C1による容量結合により、第2データ電位Vdataに応じてノードN2の電位が電位dVだけ変化する。すなわち、回路401には、第1データ電位Vwと電位dVを足した電位が入力されることとなる。なお、図24Bでは電位dVが正の値であるように示しているが、負の値であってもよい。すなわち、第2データ電位Vdataが電位Vrefより低くてもよい。
【0241】
ここで、電位dVは、容量C1の容量値と、回路401の容量値によって概ね決定される。容量C1の容量値が回路401の容量値よりも十分に大きい場合、電位dVは第2データ電位Vdataに近い電位となる。
【0242】
このように、画素回路400は、2種類のデータ信号を組み合わせて表示デバイスを含む回路401に供給する電位を生成することができるため、画素回路400内で階調の補正を行うことが可能となる。
【0243】
また画素回路400は、配線S1および配線S2に供給可能な最大電位を超える電位を生成することも可能となる。例えば発光デバイスを用いた場合では、ハイダイナミックレンジ(HDR)表示等を行うことができる。また、液晶デバイスを用いた場合では、オーバードライブ駆動等を実現できる。
【0244】
<適用例>
〔液晶デバイスを用いた例〕
図24Cに示す画素回路400LCは、回路401LCを有する。回路401LCは、液晶デバイスLCと、容量C2とを有する。
【0245】
液晶デバイスLCは、一方の電極がノードN2および容量C2の一方の電極と、他方の電極が電位Vcom2が与えられる配線と接続する。容量C2は、他方の電極が電位Vcom1が与えられる配線と接続する。
【0246】
容量C2は保持容量として機能する。なお、容量C2は不要であれば省略することができる。
【0247】
画素回路400LCは、液晶デバイスLCに高い電圧を供給することができるため、例えばオーバードライブ駆動により高速な表示を実現すること、駆動電圧の高い液晶材料を適用することなどができる。また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、使用温度や液晶デバイスLCの劣化状態等に応じて階調を補正することもできる。
【0248】
〔発光デバイスを用いた例〕
図24Dに示す画素回路400ELは、回路401ELを有する。回路401ELは、発光デバイスEL、トランジスタM3、および容量C2を有する。
【0249】
トランジスタM3は、ゲートがノードN2および容量C2の一方の電極と、ソースおよびドレインの一方が電位Vが与えられる配線と、他方が発光デバイスELの一方の電極と、それぞれ接続される。容量C2は、他方の電極が電位Vcomが与えられる配線と接続する。発光デバイスELは、他方の電極が電位Vが与えられる配線と接続する。
【0250】
トランジスタM3は、発光デバイスELに供給する電流を制御する機能を有する。容量C2は保持容量として機能する。容量C2は不要であれば省略することができる。
【0251】
なお、ここでは発光デバイスELのアノード側がトランジスタM3と接続する構成を示しているが、カソード側にトランジスタM3を接続してもよい。そのとき、電位Vと電位Vの値を適宜変更することができる。
【0252】
画素回路400ELは、トランジスタM3のゲートに高い電位を与えることで、発光デバイスELに大きな電流を流すことができるため、例えばHDR表示などを実現することができる。また、配線S1または配線S2に補正信号を供給することで、トランジスタM3や発光デバイスELの電気特性のばらつきの補正を行うこともできる。
【0253】
なお、図24C図24Dで例示した回路に限られず、別途トランジスタや容量などを追加した構成としてもよい。
【0254】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0255】
(実施の形態5)
以下では、本発明の一態様の表示パネルの画素の構成例について説明する。
【0256】
図25A乃至図25Eに、画素300の構成例を示す。
【0257】
画素300は、複数の画素301を有する。複数の画素301は、それぞれ、副画素として機能する。それぞれ異なる色を呈する複数の画素301によって1つの画素300が構成されることで、表示部では、フルカラーの表示を行うことができる。
【0258】
図25A図25Bに示す画素300は、それぞれ、3つの副画素を有する。図25Aに示す画素300が有する画素301が呈する色の組み合わせは、赤(R)、緑(G)、および青(B)である。図25Bに示す画素300が有する画素301が呈する色の組み合わせは、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)である。
【0259】
図25C乃至図25Eに示す画素300は、それぞれ、4つの副画素を有する。図25Cに示す画素300が有する画素301が呈する色の組み合わせは、赤(R)、緑(G)、青(B)、白(W)である。白色を呈する副画素を用いることで、表示部の輝度を高めることができる。図25Dに示す画素300が有する画素301が呈する色の組み合わせは、赤(R)、緑(G)、青(B)、黄(Y)である。図25Eに示す画素300が有する画素301が呈する色の組み合わせは、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄色(Y)、白(W)である。
【0260】
1つの画素として機能させる副画素の数を増やし、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、および黄などの色を呈する副画素を適宜組み合わせることにより、中間調の再現性を高めることができる。よって、表示品位を高めることができる。
【0261】
また、本発明の一態様の表示装置は、さまざまな規格の色域を再現することができる。例えば、テレビ放送で使われるPAL(Phase Alternating Line)規格およびNTSC(National Television System Committee)規格、パーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、プリンタなどの電子機器に用いる表示装置で広く使われているsRGB(standard RGB)規格およびAdobe RGB規格、HDTV(High Definition Television、ハイビジョンともいう)で使われるITU-R BT.709(International Telecommunication Union Radiocommunication Sector Broadcasting Service(Television) 709)規格、デジタルシネマ映写で使われるDCI-P3(Digital Cinema Initiatives P3)規格、UHDTV(Ultra High Definition Television、スーパーハイビジョンともいう)で使われるITU-R BT.2020(REC.2020(Recommendation 2020))規格などの色域を再現することができる。
【0262】
また、画素300を1920×1080のマトリクス状に配置すると、いわゆるフルハイビジョン(「2K解像度」、「2K1K」、または「2K」などともいう)の解像度でフルカラー表示可能な表示装置を実現することができる。また、例えば、画素300を3840×2160のマトリクス状に配置すると、いわゆるウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、または「4K」などともいう)の解像度でフルカラー表示可能な表示装置を実現することができる。また、例えば、画素300を7680×4320のマトリクス状に配置すると、いわゆるスーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、または「8K」などともいう)の解像度でフルカラー表示可能な表示装置を実現することができる。画素300を増やすことで、16Kや32Kの解像度でフルカラー表示可能な表示装置を実現することも可能である。
【0263】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0264】
(実施の形態6)
本実施の形態では、他の実施の形態で説明したOSトランジスタに用いることができる金属酸化物であるCAC-OS(Cloud-Aligned Composite Oxide Semiconductor)、およびCAAC-OS(c-axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)について説明する。
【0265】
<金属酸化物の構成>
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0266】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、および絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0267】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0268】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、および高い電界効果移動度を得ることができる。
【0269】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0270】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0271】
また、酸化物半導体は、結晶構造に着目した場合、上記とは異なる分類となる場合がある。ここで、酸化物半導体における、結晶構造の分類について、図26Aを用いて説明を行う。図26Aは、酸化物半導体、代表的にはIGZO(Inと、Gaと、Znと、を含む金属酸化物)の結晶構造の分類を説明する図である。
【0272】
図26Aに示すように、IGZOは、大きく分けてAmorphous(無定形)と、Crystalline(結晶性)と、Crystal(結晶)と、に分類される。また、Amorphousの中には、completely amorphousが含まれる。また、Crystallineの中には、CAAC(c-axis aligned crystalline)、nc(nanocrystalline)、およびCAC(Cloud-Aligned Composite)が含まれる。なお、Crystallineの分類には、single crystal、poly crystal、およびcompletely amorphousは除かれる。また、Crystalの中には、single crystal、およびpoly crystalが含まれる。
【0273】
なお、図26Aに示す太枠内の構造は、Amorphous(無定形)と、Crystal(結晶)との間の中間状態であり、新しい境界領域(New crystalline phase)に属する構造である。当該構造は、Amorphousと、Crystalとの間の境界領域にある。すなわち、当該構造は、エネルギー的に不安定なAmorphous(無定形)や、Crystal(結晶)とは全く異なる構造と言い換えることができる。
【0274】
なお、膜または基板の結晶構造は、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)像を用いて評価することができる。ここで、石英ガラス、およびCrystallineに分類される結晶構造を有するIGZO(結晶性IGZOともいう。)のXRDスペクトルを図26B図26Cに示す。また、図26Bが石英ガラス、図26Cが結晶性IGZOのXRDスペクトルである。なお、図26Cに示す結晶性IGZOの組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]近傍である。また、図26Cに示す結晶性IGZOの厚さは、500nmである。
【0275】
図26Bの矢印に示すように、石英ガラスは、XRDスペクトルのピークの形状がほぼ左右対称である。一方で、図26Cの矢印に示すように、結晶性IGZOは、XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称である。XRDスペクトルのピークの形状が左右非対称であることは、結晶の存在を明示している。別言すると、XRDスペクトルのピークの形状で左右対称でないと、Amorphousであるとは言えない。なお、図26Cには、2θ=31°、またはその近傍に結晶相(IGZO crystal phase)を明記してある。XRDスペクトルのピークにおいて、形状が左右非対称となる由来は当該結晶相(微結晶)に起因すると推定される。
【0276】
具体的には、図26Cに示す、結晶性IGZOのXRDスペクトルにおいて、2θ=34°またはその近傍にピークを有する。また、微結晶は、2θ=31°またはその近傍にピークを有する。酸化物半導体膜をX線回折像を用いて評価する場合、図26Cに示すように、2θ=34°またはその近傍のピークよりも低角度側のスペクトルの幅が広くなる。これは、酸化物半導体膜中に、2θ=31°またはその近傍にピークを有する微結晶が内在することを示唆している。
【0277】
また、膜の結晶構造は、極微電子線回折法(NBED:Nano Beam Electron Diffraction)によって観察される回折パターン(極微電子線回折パターンともいう。)にて評価することができる。基板温度を室温として成膜したIGZO膜の回折パターンを図26Dに示す。なお、図26Dに示すIGZO膜は、In:Ga:Zn=1:1:1[原子数比]である酸化物ターゲットを用いて、スパッタリング法によって成膜される。また、極微電子線回折法では、プローブ径を1nmとして電子線回折が行われた。
【0278】
図26Dに示すように、室温成膜したIGZO膜の回折パターンでは、ハローではなく、スポット状のパターンが観察される。このため、室温成膜したIGZO膜は、結晶状態でもなく、非晶質状態でもない、中間状態であり、非晶質状態であると結論することはできないと推定される。
【0279】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0280】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0281】
なお、明確な結晶粒界(グレインバウンダリー)が確認される結晶構造は、いわゆる多結晶(polycrystal)と呼ばれる。結晶粒界は、再結合中心となり、キャリアが捕獲されトランジスタのオン電流の低下、または電界効果移動度の低下を引き起こす可能性が高い。よって、明確な結晶粒界が確認されないCAAC-OSは、トランジスタの半導体層に好適な結晶構造を有する結晶性の酸化物の一つである。なお、CAAC-OSを構成するには、Znを有する構成が好ましい。例えば、In-Zn酸化物、およびIn-Ga-Zn酸化物は、In酸化物よりも結晶粒界の発生を抑制できるため好適である。
【0282】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0283】
CAAC-OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。また、CAAC-OSは、製造工程における高い温度(所謂サーマルバジェット)に対しても安定である。したがって、OSトランジスタにCAAC-OSを用いると、製造工程の自由度を広げることが可能となる。
【0284】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0285】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0286】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0287】
<酸化物半導体を有するトランジスタ>
続いて、上記酸化物半導体をトランジスタに用いる場合について説明する。
【0288】
上記酸化物半導体をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0289】
また、トランジスタには、キャリア濃度の低い酸化物半導体を用いることが好ましい。酸化物半導体膜のキャリア濃度を低くする場合においては、酸化物半導体膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。
【0290】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0291】
また、酸化物半導体のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル形成領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0292】
したがって、トランジスタの電気特性を安定にするためには、酸化物半導体中の不純物濃度を低減することが有効である。また、酸化物半導体中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0293】
<不純物>
ここで、酸化物半導体中における各不純物の影響について説明する。
【0294】
酸化物半導体において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、酸化物半導体において欠陥準位が形成される。このため、酸化物半導体におけるシリコンや炭素の濃度と、酸化物半導体との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0295】
また、酸化物半導体にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる酸化物半導体中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0296】
また、酸化物半導体において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア濃度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている酸化物半導体を半導体に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、該酸化物半導体において、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、酸化物半導体中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0297】
また、酸化物半導体に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。したがって、水素が含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、酸化物半導体中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、酸化物半導体において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0298】
不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0299】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【0300】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置に適用可能な発光デバイス、および発光デバイスの発光モデルについて、説明を行う。
【0301】
図27A乃至図27Dは、発光デバイスの構成を説明する断面図である。なお、図27Aは、シングル構造の発光デバイスの断面図であり、図27B乃至図27Dは、タンデム構造の発光デバイスの断面図である。
【0302】
<シングル構造の発光デバイス>
まず、図27Aに示すシングル構造の発光デバイスについて、説明を行う。
【0303】
図27Aに示す発光デバイスは、第1の電極1101および第2の電極1102の間にEL層1103を有する。また、EL層1103は、正孔注入層1111と、正孔輸送層1112と、発光層1113と、電子輸送層1114と、電子注入層1115と、を有する。
【0304】
以下では、本発明の一態様の発光デバイスに用いることの出来る材料について説明を行う。
【0305】
<第1の電極、および第2の電極>
第1の電極1101は、陽極および陰極のいずれか一方の機能を有する。また、第2の電極1102は、陽極および陰極のいずれか一方の機能を有する。本実施の形態においては、第1の電極1101を陽極として、第2の電極1102を陰極として説明する。また、本実施の形態においては、第1の電極1101は可視光に対する反射性を有し、第2の電極1102は、可視光に対する透過性を有する。ただし、本発明の一態様はこれに限定されず、第2の電極1102は、可視光に対する反射性と、可視光に対する透過性と、を有していてもよい。例えば、マイクロキャビティ構造を有する発光デバイスを作製する場合は、可視光に対する反射性を有する電極と、可視光に対する反射性および透過性の双方を有する電極とを好適に用いることができる。
【0306】
第1の電極1101、および第2の電極1102としては、それぞれ、金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、およびこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属およびこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等を用いることができる。
【0307】
なお、第1の電極1101、および第2の電極1102は、スパッタリング法や真空蒸着法を用いて形成することができる。
【0308】
<正孔注入層>
正孔注入層1111は、第1の有機化合物と、第2の有機化合物と、を有することが好ましい。第1の有機化合物は、第2の有機化合物に対し、電子受容性を示す材料である。また、第2の有機化合物は、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO準位を有する材料である。第2の有機化合物が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層1112への正孔の注入が容易となる。
【0309】
第1の有機化合物は、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する有機化合物等を用いることができ、そのような材料の中から、上記第2の有機化合物に対して電子受容性を示す材料を適宜選択すればよい。このような有機化合物としては、例えば、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0310】
第2の有機化合物は、正孔輸送性を有する有機化合物であることが好ましく、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格の少なくともいずれか一つを有していることが好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであってもよい。
【0311】
なお、第2の有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する材料であると、寿命の良好な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0312】
<正孔輸送層>
正孔輸送層1112は、2層以上の積層構造であると好ましい。例えば、正孔輸送層1112は、第1の層と、第1の層上の第2の層とを有し、第1の層は、第3の有機化合物を有し、第2の層は、第4の有機化合物を有すると好ましい。
【0313】
第3の有機化合物、および第4の有機化合物は、それぞれ正孔輸送性を有する有機化合物であることが好ましい。第3の有機化合物、および第4の有機化合物は、上記第2の有機化合物として用いることが可能な有機化合物と同様の材料を用いることができる。
【0314】
第2の有機化合物のHOMO準位と第3の有機化合物のHOMO準位では、第3の有機化合物のHOMO準位の方が深く、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択することが好ましい。なお、第2の有機化合物と第3の有機化合物は同じ材料であることがさらに好ましい。
【0315】
また、第3の有機化合物のHOMO準位と、第4の有機化合物のHOMO準位では、第4の有機化合物のHOMO準位の方が深いことが好ましい。さらに、その差が0.2eV以下になるように各々材料を選択するとよい。第2の有機化合物乃至第4の有機化合物のHOMO準位が以上のような関係であることによって、各層にスムーズに正孔が注入され、駆動電圧の上昇や発光層における正孔の過少状態を防ぐことができる。
【0316】
なお、第2の有機化合物乃至第4の有機化合物は、各々正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、これら有機化合物のHOMO準位が浅くなりすぎないカルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格が好ましい。また、上記の正孔輸送性骨格が隣り合う層同士の材料(例えば第2の有機化合物と第3の有機化合物または第3の有機化合物と第4の有機化合物)で共通していると、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。特にこれらの正孔輸送性骨格としては、ジベンゾフラン骨格が好ましい。
【0317】
また、隣り合う層に含まれる材料(例えば第2の有機化合物と第3の有機化合物、または第3の有機化合物と第4の有機化合物)が同じ材料であるとより正孔の注入がスムーズとなるため好ましい構成である。特に第2の有機化合物と第3の有機化合物が同じ材料である構成が好ましい。
【0318】
<発光層>
発光層1113は、第5の有機化合物と、第6の有機化合物と、を有すると好ましい。第5の有機化合物は発光中心材料を有する材料(発光材料、またはゲスト材料ともいう)であり、第6の有機化合物は、第5の有機化合物を分散するためのホスト材料である。なお、第6の有機化合物を1種または複数種(例えば、ホスト材料、およびアシスト材料の2種類)の有機化合物によって構成してもよい。1種または複数種の有機化合物としては、本実施の形態で説明する正孔輸送性材料および電子輸送性材料の一方または双方を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性材料を用いてもよい。
【0319】
また、発光層1113は、単層構造、または2層以上の積層構造であってもよい。なお、2層以上の積層構造の場合、複数の層に異なる発光材料が含まれていてもよい。
【0320】
また、第5の有機化合物は、発光材料であり、当該発光材料の発光色としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などとすればよい。なお、本発明の一態様においては、発光層1113が蛍光発光材料を有する場合、特に、発光色を青色とすることが好適である。
【0321】
なお、発光層1113に用いることができる発光材料としては、特に限定は無く、一重項励起エネルギーを可視光領域もしくは近赤外光領域の発光に変える発光材料(蛍光発光材料)、または三重項励起エネルギーを可視光領域もしくは近赤外光領域の発光に変える発光材料(燐光発光材料または熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)を用いることができる。
【0322】
<蛍光発光材料>
一重項励起エネルギーを発光に変える発光材料としては、蛍光発光材料が挙げられ、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。特にピレン誘導体は発光量子収率が高いので好ましい。ピレン誘導体の具体例としては、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FrAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6ThAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-6-アミン](略称:1,6BnfAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-02)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)などが挙げられる。
【0323】
その他にも、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPBA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)等を用いることができる。
【0324】
三重項励起エネルギーを発光に変える発光材料としては、例えば、燐光発光材料や熱活性化遅延蛍光を示すTADF材料が挙げられる。TADF材料の詳細については、後述する。
【0325】
<燐光発光材料>
燐光発光材料としては、例えば、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、またはピリジン骨格を有する有機金属錯体(特にイリジウム錯体)、電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体(特にイリジウム錯体)、白金錯体、希土類金属錯体等が挙げられる。
【0326】
青色または緑色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が450nm以上570nm以下である燐光発光材料としては、以下のような材料が挙げられる。
【0327】
例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)])、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPr5btz)])、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のように電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体等が挙げられる。
【0328】
緑色または黄色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が495nm以上590nm以下である燐光発光材料としては、以下のような材料が挙げられる。
【0329】
例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(dmppm-dmp)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])、[2-(4-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)(4dppy)])、ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC][2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)(acac)])、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p-PF-ph)(acac)])、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)(acac)])などの有機金属錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0330】
黄色または赤色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が570nm以上750nm以下である燐光発光材料としては、以下のような材料が挙げられる。
【0331】
例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-P)(dibm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dmCP)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2-メチル-3-フェニルキノキサリナト-N,C2’]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3-ジフェニルキノキサリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(5-シアノ-2-メチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κ2O,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-m5CP)(dpm)])のようなピラジン骨格を有する有機金属錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、ビス[4,6-ジメチル-2-(2-キノリニル-κN)フェニル-κC](2,4-ペンタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属錯体、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:[PtOEP])のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0332】
発光層に用いる有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)としては、発光材料のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する材料を、一種もしくは複数種選択して用いることができる。
【0333】
蛍光発光材料と組み合わせて用いる有機化合物(ホスト材料)としては、一重項励起状態のエネルギー準位が大きく、三重項励起状態のエネルギー準位が小さい有機化合物を用いるのが好ましい。
【0334】
一部上記の具体例と重複するが、発光材料(蛍光発光材料、燐光発光材料)との好ましい組み合わせという観点から、以下に有機化合物の具体例を示す。
【0335】
蛍光発光材料と組み合わせて用いることができる有機化合物(ホスト材料)としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられる。
【0336】
蛍光発光材料と組み合わせて用いる有機化合物(ホスト材料)の具体例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、YGAPA、PCAPA、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)-ビフェニル-4’-イル}-アントラセン(略称:FLPPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)、5,12-ジフェニルテトラセン、5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセンなどが挙げられる。
【0337】
燐光発光材料と組み合わせて用いる有機化合物(ホスト材料)としては、発光材料の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい有機化合物を選択すればよい。
【0338】
励起錯体を形成させるべく複数の有機化合物(例えば、第1のホスト材料、および第2のホスト材料(またはアシスト材料)等)を発光材料と組み合わせて用いる場合は、これらの複数の有機化合物を燐光発光材料(特に有機金属錯体)と混合して用いることが好ましい。
【0339】
このような構成とすることにより、励起錯体から発光材料へのエネルギー移動であるExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)を用いた発光を効率よく得ることができる。なお、複数の有機化合物の組み合わせとしては、励起錯体が形成しやすいものがよく、正孔を受け取りやすい化合物(正孔輸送性材料)と、電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性材料)とを組み合わせることが特に好ましい。発光材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光を得ることができる。なお、正孔輸送性材料および電子輸送性材料の具体例については、本実施の形態で示す材料を用いることができる。この構成により、発光デバイスの高効率、低電圧、長寿命を同時に実現できる。
【0340】
励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性材料のHOMO準位が電子輸送性材料のHOMO準位以上の値であると好ましい。正孔輸送性材料のLUMO準位(最低空軌道準位)が電子輸送性材料のLUMO準位以上の値であると好ましい。材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0341】
励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性材料の発光スペクトル、電子輸送性材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(または長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。または、正孔輸送性材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性材料の過渡PL、およびこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、または遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL、およびこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0342】
燐光発光材料と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する化合物)、カルバゾール誘導体(カルバゾール骨格を有する化合物)、ジベンゾチオフェン誘導体(チオフェン誘導体)、ジベンゾフラン誘導体(フラン誘導体)、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体等が挙げられる。
【0343】
正孔輸送性の高い有機化合物である芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体の具体例としては、以下の材料が挙げられる。
【0344】
カルバゾール誘導体としては、ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)、カルバゾリル基を有する芳香族アミン等が挙げられる。
【0345】
ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)としては、具体的には、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-9’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)などが挙げられる。
【0346】
カルバゾリル基を有する芳香族アミンとしては、具体的には、PCBA1BP、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、PCBBiF、PCBBi1BP、PCBANB、PCBNBB、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、PCBASF、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられる。
【0347】
カルバゾール誘導体としては、上記に加えて、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、PCPN、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、CzPA等が挙げられる。
【0348】
チオフェン誘導体(チオフェン骨格を有する化合物)およびフラン誘導体(フラン骨格を有する化合物)としては、具体的には、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)等が挙げられる。
【0349】
芳香族アミンとしては、具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、BPAFLP、mBPAFLP、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、4,4’,4’’-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’-トリス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等が挙げられる。
【0350】
正孔輸送性の高い有機化合物としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
【0351】
電子輸送性の高い有機化合物である、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体の具体例としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。
【0352】
この他、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0353】
電子輸送性の高い有機化合物である、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体の具体例としては、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、および6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)などが挙げられる。
【0354】
電子輸送性の高い有機化合物である、ジアジン骨格を有する複素環化合物、トリアジン骨格を有する複素環化合物、ピリジン骨格を有する複素環化合物の具体例としては、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などが挙げられる。
【0355】
電子輸送性の高い有機化合物としては、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。
【0356】
<TADF材料>
TADF材料とは、S準位(一重項励起状態のエネルギー準位)とT準位(三重項励起状態のエネルギー準位)との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、S準位とT準位のエネルギー差が0eV以上0.2eV以下、好ましくは0eV以上0.1eV以下であることが挙げられる。また、TADF材料における遅延蛍光とは、通常の蛍光と同様のスペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10-6秒以上、好ましくは10-3秒以上である。
【0357】
2種類の材料で励起状態を形成する励起錯体は、S準位とT準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0358】
準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT準位とした際に、そのSとTの差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0359】
TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(略称:PtClOEP)等が挙げられる。
【0360】
その他にも、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、PCCzPTzn、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等のπ電子過剰型複素芳香環およびπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いることができる。
【0361】
該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環およびπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性および正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格は電子受容性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0362】
また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、およびピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一つを有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。
【0363】
なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した材料は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S準位とT準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いてもよい。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。
【0364】
このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格の少なくとも一方を用いることができる。
【0365】
なお、TADF材料を用いる場合、他の有機化合物と組み合わせて用いることもできる。特に、上述したホスト材料、正孔輸送性材料、電子輸送性材料と組み合わせることができる。TADF材料を用いる場合、ホスト材料のS準位はTADF材料のS準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT準位はTADF材料のT準位より高いことが好ましい。
【0366】
また、TADF材料をホスト材料に用い、蛍光発光材料をゲスト材料に用いてもよい。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光材料へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光材料がエネルギーアクセプターとして機能する。したがって、ホスト材料としてTADF材料を用いることは、ゲスト材料として蛍光発光材料を用いる場合に非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS準位は、蛍光発光材料のS準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT準位は、蛍光発光材料のS準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT準位は、蛍光発光材料のT準位より高いことが好ましい。
【0367】
また、蛍光発光材料の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光材料への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0368】
また、効率よく三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光材料の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光材料は、蛍光発光材料が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送やキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光材料の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光材料において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光材料は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0369】
なお、上記のTADF材料は、発光層のホスト材料として用いてもよい。
【0370】
<電子輸送層>
電子輸送層1114は、発光層1113に接して設けられる。また、電子輸送層1114は、電子輸送性を有し、且つそのHOMO準位が-6.0eV以上の第7の有機化合物を有すると好ましい。また、第7の有機化合物はアントラセン骨格を含むことが好ましい。また、電子輸送層1114は、第7の有機化合物に加え、さらに第8の有機化合物を有していてもよい。第8の有機化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機錯体を含むと好ましい。すなわち、電子輸送層1114の構成としては、第7の有機化合物のみで形成される構成、第7の有機化合物と、第8の有機化合物と、の複数の有機化合物で形成される構成などが挙げられる。
【0371】
なお、上記第7の有機化合物は、アントラセン骨格と複素環骨格とを含むことがさらに好ましい。上記複素環骨格としては、含窒素5員環骨格が好ましい。含窒素5員環骨格としては、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、またはチアゾール環のように2つの複素原子を環に有することが特に好ましい。
【0372】
その他、第7の有機化合物として用いることが可能な電子輸送性を有する材料としては、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性を有する材料、または上記蛍光発光材料のホスト材料として用いることが可能な材料を用いることができる。
【0373】
また、上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機錯体としては、リチウムの有機錯体が好ましく、特に、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)が好ましい。
【0374】
また、電子輸送層1114を構成する材料は、その電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であると好ましい。
【0375】
また、電子輸送層1114を構成する材料の電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が第6の有機化合物または発光層1113を構成する材料の電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度よりも小さいことが好ましい。電子輸送層における電子の輸送性を低くすることにより発光層への電子の注入量を制御することができ、発光層が電子過多の状態になることを防ぐことができる。
【0376】
<電子注入層>
電子注入層1115は、第2の電極1102からの電子の注入効率を高める層である。第2の電極1102の材料の仕事関数の値と、電子注入層1115に用いる材料のLUMO準位の値と、の差は、小さい(0.5eV以内)ことが好ましい。
【0377】
電子注入層1115には、リチウム、セシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-(キノリノラト)リチウム(略称:Liq)、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)、リチウム酸化物(LiO)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層にエレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した材料等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層を構成する材料を用いることもできる。
【0378】
また、電子注入層1115に、電子輸送性材料とドナー性材料(電子供与性材料)とを含む複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性および電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送性材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す材料であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0379】
なお、本発明の一態様の発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特にEL層に含まれる機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法等)などの方法により形成することができる。
【0380】
また、発光デバイスを構成する各機能層の材料は、それぞれ、上述の材料に限定されない。例えば、機能層の材料として、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いてもよい。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0381】
なお、本発明の一態様の発光デバイスにおいては、上記に記載の層以外の機能層を有していてもよい。機能層としては、例えば、キャリアブロック層、励起子ブロック層など、様々な層を適用することができる。
【0382】
<発光デバイスにおける発光モデルについて>
次に、本発明の一態様の発光デバイスにおける、発光モデルについて、図28A乃至図28Cを用いて説明を行う。
【0383】
図28A乃至図28Cは、発光デバイスにおける発光モデルを説明する模式図である。なお、図28A乃至図28Cにおいて、発光デバイスにおける発光領域を、発光領域1120として表す。
【0384】
図28Aは、発光層1113が電子過多の状態の発光領域1120を示す発光モデルである。図28B図28Cは、本発明の一態様の発光デバイスにおける発光領域1120を示す発光モデルである。
【0385】
図28Aに示すように、発光層1113が電子過多の状態になると、発光層1113内の局所的な領域に発光領域1120が形成される。別言すると、発光領域1120の幅が狭い。そのため、発光層1113の局所的な領域において、集中的に電子とホールとの再結合が行なわれるため、劣化が促進される。また、発光層1113において、再結合できない電子が発光層1113を通過することで、寿命、または発光効率が低下する場合がある。
【0386】
一方で、図28B図28Cに示すように、本発明の一態様の発光デバイスにおいては、電子輸送層1114における電子の輸送性を低下させることにより、発光層1113における、発光領域1120の幅を広げることができる。発光領域1120の幅を広げることによって、発光層1113における電子とホールとの再結合領域を分散させることができる。したがって、寿命が長く発光効率の良好な発光デバイスを提供することができる。
【0387】
また、本発明の一態様の発光デバイスでは、電流密度一定の条件における駆動試験によって得られた輝度の劣化曲線において、劣化曲線が極大値を有する場合がある。別言すると、本発明の一態様の発光デバイスは、時間の経過に伴って、輝度上昇する挙動を示す場合がある。当該挙動は、駆動初期の急激な劣化(いわゆる初期劣化)を相殺することが可能となる。したがって、初期劣化が小さく、且つ非常に良好な駆動寿命を有する発光デバイスを提供することができる。
【0388】
なお、極大値を有する劣化曲線の微分を取ると、その値が0となる部分が存在する。したがって、劣化曲線の微分に0となる部分が存在する発光デバイスを、本発明の一態様の発光デバイスと言い換えることができる。
【0389】
ここで、本発明の一態様の発光デバイスおよび比較用の発光デバイスにおける時間経過に伴う規格化輝度について、図28Dを用いて、説明する。
【0390】
図28Dにおいて、太い実線は本発明の一態様の発光デバイスの規格化輝度の劣化曲線であり、太い破線は比較用の発光デバイスの規格化輝度の劣化曲線である。
【0391】
図28Dに示すように、本発明の一態様の発光デバイスと、比較用の発光デバイスとは、規格化輝度の劣化曲線の傾きが互いに異なる。具体的には、本発明の一態様の発光デバイスの劣化曲線の傾きθ2は、比較用の発光デバイスの劣化曲線の傾きθ1よりも小さい。
【0392】
図28Dに示すように、本発明の一態様の発光デバイスは、電流密度一定の条件における駆動試験によって得られる輝度の劣化曲線において、極大値を有する形状を示す場合がある。すなわち、本発明の一態様の発光デバイスの劣化曲線は、時間の経過に従って輝度が上昇する部分を有する形状となる場合がある。このような劣化挙動を示す発光デバイスは、いわゆる初期劣化と呼ばれる駆動初期の急激な劣化を当該輝度上昇により相殺することが可能となり、初期劣化が小さく、且つ非常に長い駆動寿命を有する発光デバイスとすることが可能となる。
【0393】
また、本発明の一態様の発光デバイスは、図28Bに示すように、駆動初期において、発光層1113に形成される発光領域1120が電子輸送層1114側まで広がる場合がある。
【0394】
すなわち、本発明の一態様の発光デバイスでは、駆動初期では正孔の注入障壁が小さいこと、および電子輸送層1114の電子輸送性が比較的低いことにより、発光領域1120(すなわち再結合領域)が電子輸送層1114側に寄った状態で形成される。また、電子輸送層1114に含まれる第7の有機化合物のHOMO準位が-6.0eV以上と比較的高いことから、正孔の一部が電子輸送層1114まで達しており、電子輸送層1114でも再結合が起こり、非発光再結合領域が形成される。なお、この現象は、第6の有機化合物と第7の有機化合物のHOMO準位の差が0.2eV以内である場合にも起こる場合がある。
【0395】
また、本発明の一態様の発光デバイスでは、駆動時間が経過することによって、キャリアバランスが変化し、図28Cに示すように発光領域1120(再結合領域)が正孔輸送層1112側に移動し、発光層1113内に位置するようになる。
【0396】
上記、図28B図28Cに示すように、本発明の一態様の発光デバイスは、駆動時間の経過に伴い、発光層1113内に発光領域1120を移動させることで、再結合したキャリアのエネルギーを有効に発光に寄与させることが可能となり、駆動初期と比較して輝度上昇が起こりうる。この輝度上昇が発光デバイスの駆動初期に現れる急激な輝度低下、いわゆる初期劣化を相殺することで初期劣化が小さく、また駆動寿命の長い発光デバイスを提供できる。なお、本明細書等において、上記の発光デバイスをRecombination-Site Tailoring Injection構造(ReSTI構造)と呼称する場合がある。
【0397】
また、本発明の一態様の発光デバイスにおいて、電子輸送層1114は、厚さ方向において、電子輸送性材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体と、の混合比が異なる部分、またはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体の濃度が異なる部分を有すると好ましい。
【0398】
電子輸送層1114における、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体の濃度に関しては、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF-SIMS:Time-of-flight secondary ion mass spectrometry)で得られる原子や分子の検出量により推察できる。
【0399】
電子輸送層1114における有機金属錯体の含有量は、第1の電極1101側に比べて、第2の電極1102側の方が少ないことが好ましい。つまり、有機金属錯体の濃度が、第2の電極1102側から第1の電極1101側に向かって上昇するように、電子輸送層1114が形成されることが好ましい。すなわち、電子輸送層1114には、電子輸送性材料の存在量が多い部分よりも発光層1113側に電子輸送性材料の存在量が少ない部分を有することになる。換言すると、電子輸送層1114は、有機金属錯体の存在量が少ない部分よりも発光層1113側に有機金属錯体の存在量が多い部分を有する構造ということができる。
【0400】
電子輸送性材料の存在量が多い部分(有機金属錯体の存在量が少ない部分)における電子移動度は、電界強度[V/cm]の平方根が600において1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましい。
【0401】
例えば、電子輸送層1114における有機金属錯体の含有量、すなわち電子輸送層1114における有機金属錯体の濃度は、図29A乃至図29Dに示す構成とすることができる。なお、図29A図29Bは、電子輸送層1114内に明確な境界がない場合を表し、図29C図29Dは、電子輸送層1114内に明確な境界がある場合を表している。
【0402】
電子輸送層1114内に明確な境界が無い場合、電子輸送性材料と有機金属錯体との濃度は、図29A図29Bに示すように連続的に変化する。また、電子輸送層1114内に明確な境界がある場合、電子輸送性材料と有機金属錯体との濃度は、図29C図29Dに示すように階段状に変化する。なお、階段状に変化する場合においては、電子輸送層1114は、複数の層により積層されていると示唆される。例えば、図29Cは、電子輸送層1114が2層の積層構造である場合を表し、図29Dは、電子輸送層1114が3層の積層構造である場合を表す。なお、図29C図29Dにおいて、破線は、複数の層の境界の領域を表す。
【0403】
また、本発明の一態様の発光デバイスにおけるキャリアバランスの変化は、電子輸送層1114の電子移動度の変化によってもたらされると考えられる。本発明の一態様の発光デバイスは、電子輸送層1114内部に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体の濃度差が存在する。電子輸送層1114は、当該有機金属錯体の濃度が低い領域と発光層1113との間に、当該有機金属錯体の濃度が高い領域を有する。すなわち、有機金属錯体の濃度が低い領域が高い領域よりも第2の電極1102側に位置する構成を有する。
【0404】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、寿命が非常に長い。特に、初期輝度を100%とした場合、輝度が95%になるまでの時間(LT95ともいう)を極めて長くすることが可能である。
【0405】
<タンデム構造の発光デバイス>
次に、図27B乃至図27Dに示すタンデム構造の発光デバイスについて、説明を行う。
【0406】
図27B乃至図27Dに示す発光デバイスは、第1の電極1101および第2の電極1102の間に複数の発光ユニットを有する。図27B乃至図27Dに示すように、2つの発光ユニットの間には、電荷発生層1109を設けることが好ましい。
【0407】
なお、発光ユニット1123(1)および発光ユニット1123(2)は、それぞれ、図27Aに示す、正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、電子注入層1115、などを有する。
【0408】
<電荷発生層>
電荷発生層1109は、第1の電極1101と第2の電極1102に電圧を印加したときに、発光ユニット1123(1)および発光ユニット1123(2)のうち、一方に電子を注入し、他方に正孔(ホール)を注入する機能を有する。したがって、図27Bにおいて、第1の電極1101に第2の電極1102よりも電位が高くなるように電圧を印加すると、電荷発生層1109から発光ユニット1123(1)に電子が注入され、発光ユニット1123(2)に正孔が注入されることとなる。
【0409】
なお、電荷発生層1109は、光の取り出し効率の点から、可視光を透過する(具体的には、電荷発生層1109の可視光の透過率が、40%以上である)ことが好ましい。また、電荷発生層1109は、第1の電極1101や第2の電極1102よりも低い導電率であっても機能する。
【0410】
図27Cに示すEL層1103は、第1の発光ユニット1123(1)と第2の発光ユニット1123(2)との間に、電荷発生層1109を有し、第2の発光ユニット1123(2)と第3の発光ユニット1123(3)との間に、電荷発生層1109を有する。また、図27Dに示す発光素子は、m層の発光ユニット(mは2以上の自然数)と、n層の発光ユニット(nはm以上の自然数)と、を、有し、各発光ユニットの間には、電荷発生層1109を有する。また、第3の発光ユニット1123(3)、発光ユニット1123(m)、発光ユニット1123(n)は、それぞれ、図27Aに示す、正孔注入層1111、正孔輸送層1112、発光層1113、電子輸送層1114、電子注入層1115、などを有する。なお、各発光ユニットは同じ構成としてもよいし、それぞれ異なる構成としてもよい。
【0411】
ここで、発光ユニット1123(m)と発光ユニット1123(m+1)との間に設けられる電荷発生層1109における電子と正孔の挙動について説明する。第1の電極1101と第2の電極1102との間に、発光デバイスのしきい値電圧より高い電圧を印加すると、電荷発生層1109において正孔と電子が発生し、正孔は第2の電極1102側に設けられた発光ユニット1123(m+1)へ移動し、電子は第1の電極1101側に設けられた発光ユニット1123(m)へ移動する。発光ユニット1123(m+1)に注入された正孔は、第2の電極1102側から注入された電子と再結合し、発光ユニット1123(m+1)に含まれる発光材料が発光する。また、発光ユニット1123(m)に注入された電子は、第1の電極1101側から注入された正孔と再結合し、発光ユニット1123(m)に含まれる発光材料が発光する。よって、電荷発生層1109において発生した正孔と電子は、それぞれ異なる発光ユニットにおいて発光する。
【0412】
なお、発光ユニット同士を接して設けることで、両者の間に電荷発生層1109と同じ構成が形成される場合は、電荷発生層1109を介さずに発光ユニット同士を接して設けることができる。例えば、発光ユニットの一方の面に電荷発生領域が形成されている場合、その面に接して発光ユニットを設けることができる。
【0413】
タンデム構造の発光デバイスは、シングル構造の発光デバイスに比べて、電流効率が高く、同一の輝度で光らせる場合に必要な電流が少ない。そのため、発光デバイスの寿命、および信頼性を高めることができる。
【0414】
なお、複数の発光ユニットは、同じ発光材料を有していてもよく、異なる発光材料を有していてもよい。また、各発光ユニットの発光材料は、特に限定されない。信頼性を高めるため、蛍光発光の発光ユニットが複数積層されていることが好ましい。例えば、同じ発光材料を有する場合においては、青色の蛍光発光ユニットと、青色の蛍光発光ユニットと、を組み合わせることで信頼性の高い発光デバイスを提供することができる。また、蛍光発光の発光ユニットと、燐光発光の発光ユニットと、がそれぞれ1つ以上積層されていてもよい。例えば、青色の蛍光発光ユニットと、赤色の燐光発光ユニットと、緑色の発光ユニットと、を組み合わせることで、白色発光が可能な発光デバイスを提供することができる。または、信頼性が高い発光ユニットの組み合わせとして、青色、赤色、緑色のそれぞれを蛍光発光の発光ユニットとしてもよい。
【0415】
なお、上述の青色の蛍光発光ユニットと、青色の蛍光発光ユニットと、を組み合わせる構成の場合、発光ユニットから射出される青色の光を他の色に変換できる機能を有するデバイス(例えば、量子ドットデバイスなど)と組み合わせて用いると好適である。
【0416】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0417】
100A:表示装置、100B:表示装置、100C:表示装置、100D:表示装置、100E:表示装置、101:表示パネル、101a:領域、101b:領域、101c:領域、102a:筐体、102b:筐体、102c:筐体、103a:ヒンジ、103b:ヒンジ、103c:ヒンジ、104a:曲面、104b:曲面、105:平面、105a:曲面、105b:曲面、106:グリップ部、107:受電コイル、108:受電回路、109:充電器、111:柱状体、113a:ユニット、113b:ユニット、114:柱状体、115:柱状体、116a:歯車、116b:歯車、117:バッテリ、118:保護回路、119:制御回路、120:センサ、121:コンパレータ、122:トランジスタ、123:キャパシタ、125:アンテナ、126:アンテナ、130:画像、131:キーボード、132:アイコン、135a:入出力ユニット、135b:入出力ユニット、136a:カメラ、136b:カメラ、137:センサ、138:表示パネル、139:表示パネル、140:太陽電池、141:薄膜太陽電池、145:外部インターフェイス、146:送受信ユニット、147:スピーカ、148:カメラ、149:マイク、150:スタイラス、200:表示装置、210:表示装置、300:画素、301:画素、400:画素回路、400EL:画素回路、400LC:画素回路、401:回路、401EL:回路、401LC:回路、501:画素回路、502:画素部、504:駆動回路部、504a:ゲートドライバ、504b:ソースドライバ、506:保護回路、507:端子部、550:トランジスタ、552:トランジスタ、554:トランジスタ、560:キャパシタ、562:キャパシタ、570:液晶デバイス、572:発光デバイス、600:テレビジョン装置、601:制御部、602:記憶部、603:通信制御部、604:画像処理回路、605:デコーダ回路、606:映像信号受信部、607:タイミングコントローラ、608:ソースドライバ、609:ゲートドライバ、620:表示パネル、621:画素、630:システムバス、700:表示パネル、700A:表示パネル、702:画素部、704:ソースドライバ回路部、706:ゲートドライバ回路部、708:FPC端子部、710:配線、716:FPC、717:IC、730:絶縁層、732:封止層、736:着色層、738:遮光層、740:支持基板、741:保護層、741a:絶縁層、741b:絶縁層、741c:絶縁層、742:接着層、743:樹脂層、744:絶縁層、745:支持基板、746:絶縁層、747:接着層、749:保護層、750:トランジスタ、752:トランジスタ、760:配線、761:導電層、770:絶縁層、772:導電層、780:異方性導電膜、782:発光デバイス、786:EL層、788:導電層、790:キャパシタ、1101:電極、1102:電極、1103:EL層、1109:電荷発生層、1111:正孔注入層、1112:正孔輸送層、1113:発光層、1114:電子輸送層、1115:電子注入層、1120:発光領域、1123:発光ユニット
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