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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133107
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】防錆性フィルム
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/40 20060101AFI20240920BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B27/18 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109965
(22)【出願日】2024-07-09
(62)【分割の表示】P 2020064216の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】常田 洋貴
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直也
(72)【発明者】
【氏名】前田 世蓮
(57)【要約】
【課題】本発明は、製造適正に優れ、簡易な層構成でありながら、輸送中及び長期間の保管中に、内容物に錆が発生することを抑制できる防錆性フィルム、及び該防錆性フィルムを用いて作製した防錆性包装材料、防錆性包装体を提供することを課題とする。
【解決手段】少なくとも、防錆剤と、バインダー樹脂とを含有する、単層または多層の、防錆性フィルムであって、該防錆剤は脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有する、防錆性フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、防錆剤と、バインダー樹脂とを含有する、単層の防錆性フィルムであって、
該防錆剤は、少なくとも、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、防錆性フィルム。
【請求項2】
少なくとも、防錆層を有する、多層の防錆性フィルムであって、
該防錆層は、防錆剤とバインダー樹脂とを含有し、
該防錆剤は、少なくとも、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有し、
該防錆層の片面または両面には、熱可塑性樹脂を含有する層が積層されていることを特徴とする、防錆性フィルム。
【請求項3】
前記防錆性フィルムが共押フィルムであることを特徴とする、請求項2に記載の防錆性フィルム。
【請求項4】
前記防錆性フィルムが、中間層をさらに有する、請求項2または3に記載の、防錆性フィルム。
【請求項5】
前記の脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルの、脂肪酸部分の炭素数は、6以上、20以下であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の防錆性フィルム。
【請求項6】
前記防錆剤が、酸化防止剤と、アルカリ性を呈し酸性物質を中和するためのアルカリ剤とを、さらに含有することを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の防錆性フィルム。
【請求項7】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を含有することを特徴とする、請求項6に記載の防錆性フィルム。
【請求項8】
前記アルカリ剤が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項6または7に記載の、防錆性フィルム。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の防錆性フィルムからなることを特徴とする、防錆性包装材料。
【請求項10】
請求項9に記載の防錆性包装材料からなることを特徴とする、防錆性包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装された内容物に錆が発生することを抑制する防錆性フィルム、及び該防錆性フィルムを用いて作製した包装材料、包装体に関する。
本発明による防錆性フィルムは、様々な分野の製品に適用することができ、特に、車載用のネジ、シャフト、金属板、等の金属製品、及び電気部品等を収容する為の包装材料として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
金属材料や金属を用いた部品等からなる金属製品の輸送や長期保管を目的とした包装材料が開発されつつあり、内容物である金属製品の機能や性質を維持できるように、より高く安定した防錆性を有し、且つ簡素な層構成で簡略な製造工程によって製造し得る包装材料が求められている。
金属製品内容物への防錆を目的として、常温で揮発して防錆効果を発揮する気化性の高い防錆剤を樹脂に含有させた包装用積層体が、特許文献1~3に記載されているが、外装による密閉が必要であったり、気化した防錆剤が内容物に付着した場合に、内容物が劣化したり機能的障害を生じたり等、防錆効果以外の影響が懸念され、付着した防錆剤を除去するにも手間が煩雑であるために用途が限定されており、揮発性の防錆剤を用いない防錆性フィルムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-254350号公報
【特許文献2】特開2007-308726号公報
【特許文献3】特開2010-052751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題を解決し、製造適正に優れ、簡易な層構成でありながら、輸送中及び長期間の保管中に、内容物に錆が発生することを抑制できる防錆性フィルム、及び該防錆性フィルムを用いて作製した防錆性包装材料、防錆性包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、少なくとも、本願発明が規定する防錆剤と、バインダー樹脂とを含有する防錆性フィルムが、上記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも、防錆剤と、バインダー樹脂とを含有する、単層の防錆性フィルムであって、
該防錆剤は、少なくとも、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、防錆性フィルム。
2.少なくとも、防錆層を有する、多層の防錆性フィルムであって、
該防錆層は、防錆剤とバインダー樹脂とを含有し、
該防錆剤は、少なくとも、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を含有し、
該防錆層の片面または両面には、熱可塑性樹脂を含有する層が積層されていることを特徴とする、防錆性フィルム。
3.前記防錆性フィルムが共押フィルムであることを特徴とする、上記2に記載の防錆性
フィルム。
4.前記防錆性フィルムが、中間層をさらに有する、上記2または3に記載の、防錆性フィルム。
5.前記の脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルの、脂肪酸部分の炭素数は、6以上、20以下であることを特徴とする、上記1~4の何れかに記載の防錆性フィルム。
6.前記防錆剤が、酸化防止剤と、アルカリ性を呈し酸性物質を中和するためのアルカリ剤とを、さらに含有することを特徴とする、上記1~5の何れかに記載の防錆性フィルム。
7.前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤および/またはリン系酸化防止剤を含有することを特徴とする、上記6に記載の防錆性フィルム。
8.前記アルカリ剤が、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記6または7に記載の、防錆性フィルム。
9.上記1~8の何れかに記載の防錆性フィルムからなることを特徴とする、防錆性包装材料。
10.上記9に記載の防錆性包装材料からなることを特徴とする、防錆性包装体。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防錆性フィルム及び該防錆性フィルムを用いて作製した防錆性包装材料、防錆性包装体は、上述の問題を解決し、製造適正に優れ、簡易な層構成でありながら、輸送中及び長期間の保管中に、内容物に錆が発生することを抑制できる防錆性フィルム、及び該防錆性フィルムを用いて作製した防錆性包装材料、防錆性包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の防錆性フィルムの層構成の一例を示す概略的断面図である。
図2】本発明の防錆性フィルムの層構成の別態様の一例を示す概略的断面図である。
【0008】
各図においては、解り易くする為に、部材の大きさや比率を変更または誇張して記載することがある。また、見易さの為に説明上不要な部分や繰り返しとなる符号は省略することがある。
また、各図においては省略されているが、各層の間に接着剤層を設けることもできる。
さらに、必要に応じて、各層間の接着強度(密着強度)を強固にするために、各層の積層面に、コロナ放電処理、オゾン処理、プラズマ処理、グロー放電処理、サンドブラスト処理等のなどの物理的な表面処理や、化学薬品を用いた酸化処理などの化学的な表面処理を予め施しておくこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の防錆性フィルム、防錆性包装材料、防錆性包装体について、以下に更に詳しく説明する。具体例を示しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、本発明においては、フィルムとシートとは、同義として扱う。
【0010】
≪防錆性フィルム≫
本発明の防錆性フィルムは、少なくとも、防錆剤と、バインダー樹脂とを含有し、ヒートシール性を有する、樹脂フィルムである。
また、本発明の防錆性フィルムは、単層のフィルムであってもよく、多層のフィルムであってもよい。
本発明の防錆性フィルムに用いられる防錆剤には、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる2種以上を含有していること好ましく、さらに、「アルカリ性
を呈し酸性物質を中和するためのアルカリ剤」、「酸化防止剤」、「酸性ガスを吸着するための酸性ガス吸着剤」等からなる群から選ばれる2種以上を含有していることが好ましい。2種以上の防錆剤を併用することによって、効率的に防錆効果を発揮することができる。以下、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルの総称として、脂肪酸類とも記載する。
錆の発生を抑制する為には、外部から侵入してくる酸性ガスまたは包装された内部空間に存在する酸性ガスを防錆性フィルムに吸着したり、内容物の表面に防錆剤を付着またはコーティングすることによって、内容物表面に撥水性を付与したり、内容物表面の酸化を防止したり、内容物表面に触れる酸性ガスを中和したりすることが効果的であり、上記の防錆剤を併用することによって、これらの手法を併用して、効率的に防錆効果を発揮することができる。
【0011】
防錆性フィルムの厚みに特に制限は無いが、25μm以上、200μm以下が好ましい。上記範囲よりも薄いと剛性が低すぎたり、破れやすかったり、充分な支持性や防錆効果やヒートシール性のバランスを発揮し難くなり易く、上記範囲よりも厚いと剛性が強すぎて、包装材料材としての使い勝手が悪くなり易い。
【0012】
防錆性フィルムは、用途に応じて、透明度を高くすることができる。
透明度の高い防錆性フィルムの全光線透過率は、50%以上であることが好ましい。
透明度の高い防錆性フィルムからなる防錆性包装材料の透明度も高く、透明度の高い防錆性包装材料から作製された防錆性包装体は、内容物、内容物に添付されたラベル、内容物に刻印された文字や印章等を容易に視認することができる。
【0013】
防錆性フィルムは、例えば、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を含有することができる。その含有量としては、極微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に含有することができる。
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、アンチブロッキング剤、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、改質用樹脂等を含有することができる。
【0014】
本発明の防錆性フィルムは、単層の防錆性フィルムの場合には、1層中に、少なくとも、防錆剤と、バインダー樹脂とを含有する。
バインダー樹脂がヒートシール性を有する場合には、単層の防錆性フィルムの片面または両面の表面が、ヒートシール性を有することができる。
防錆剤は1層中に均一に分散していてもよく、濃度勾配を有して分散していてもよい。例えば、一方の片面の表面近傍に防錆剤が多く存在し、他方片面の表面近傍に防錆剤が少なく存在するように濃度勾配を設けた場合には、防錆剤が多い側の片面の表面は効率的に防錆性を発揮し易く、防錆剤が少ない側の片面の表面はヒートシール性が高くなる。
防錆剤の濃度を全体的に低くしたり、層の中央部の防錆剤濃度を高くしたりすることによって、防錆性フィルムの両面のヒートシール性を高めることもできる。
防錆性フィルム中の防錆剤の含有量は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きいと、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる。
【0015】
本発明の防錆性フィルムは、多層の防錆性フィルムの場合には、少なくとも、防錆剤およびバインダー樹脂を含有する防錆層を有する。
バインダー樹脂は熱可塑性樹脂であって、バインダー樹脂がヒートシール性を有する場合には、防錆層の片面または両面が、ヒートシール性を有することができる。
また、防錆層の片面または両面には、熱可塑性樹脂を含有する層が積層されていることが好ましい。
多層の防錆性フィルムは、例えば、用途に応じて様々な機能を奏する、中間層や外面層を有することができる。この場合、防錆性フィルムは、防錆層、中間層、外面層の順に積層されていることが好ましい。
そして、各層間は、接着剤層を介して積層されていてもよい。
防錆性フィルムは、防錆層を有することによって内容物の錆発生を抑制する。
例えば、外面層が含有する熱可塑性樹脂がヒートシール性樹脂であれば、多層の防錆性フィルムはヒートシール性を有することができる。
防錆剤は防錆層中に均一に分散していてもよく、濃度勾配を有して分散していてもよい。例えば、一方の片面の表面近傍に防錆剤が多く存在し、他方片面の表面近傍に防錆剤が少なく存在するように濃度勾配を設けた場合には、防錆剤が多い側の片面の表面は効率的に防錆性を発揮し易く、防錆剤が少ない側の片面の表面はヒートシール性が高くなる。
防錆剤の濃度を全体的に低くしたり、防錆層の中央部の防錆剤濃度を高くしたりすることによって、防錆層の両界面の接着性を高めることができる。
防錆層中の防錆剤の含有量は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましく、上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きいと、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる。
【0016】
多層の防錆性フィルムは、片面または両面の表面が、防錆層であることが好ましい。防錆層が表面にあることによって、防錆性を内容物表面に付着またはコーティングさせ易くなる。
なお、表面が防錆層である場合とは、防錆層の全部または一部が表面に露出していることを指す。
【0017】
<防錆剤>
防錆剤は、本発明の防錆性フィルムによって包装される内容物に錆が発生することを抑制する化合物である。
本発明における防錆剤は、本発明の防錆性フィルムの内部に留まって酸性ガスを吸着したり、本発明の防錆性フィルムから包装された内容物の表面へと、気化・飛散や、接触転写によって付着して、内容物表面において、酸性物質を中和したり、撥水して水分の付着を抑制したり、酸化を抑制したりすることによって、錆の発生を抑制することができる。
【0018】
本発明において、防錆剤は、「アルカリ性を呈し酸性物質を中和するためのアルカリ剤」、「酸化防止剤」、「脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上」、「酸性ガスを吸着するための酸性ガス吸着剤」からなる群から選ばれる2種以上を含有することが好ましい。
2種以上を併用した場合には、酸性ガス吸着、酸性物質中和、撥水、酸化抑止等の異なる効果が相乗的に寄与して、防錆性は相乗的に向上する。
含有される防錆剤の組み合わせは、例えば、酸化防止剤とアルカリ剤、酸化防止剤と脂肪酸類、酸化防止剤とアルカリ剤と脂肪酸類、アルカリ剤と脂肪酸類、アルカリ剤と酸性ガス吸着剤、脂肪酸類と酸性ガス吸着剤等が好ましい。
【0019】
本発明の防錆性フィルムに含有される各種類の防錆剤の詳細は、下記のとおりである。
【0020】
[アルカリ剤]
本発明におけるアルカリ剤は、自身はアルカリ性を呈する化合物であり、包装される内容物の表面に付着して、錆発生の原因となる酸性物質を中和して、錆の発生を抑制できる。
アルカリ剤の組成としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アルミニウム化合物が挙げられる。
なお本発明におけるアルカリ金属とは広義のアルカリ金属であって、第1族の金属元素
である、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを指し、これらの中でもLi、Na、Kが好ましい。
また、アルカリ土類金属とは、広義のアルカリ土類金属であって、第2族の金属元素であるBe、Mg、Ca、SrBa、Raを指す。
【0021】
アルカリ金属化合物としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属塩化物、アルカリ金属水酸化物、等が挙げられ、具体的なアルカリ金属化合物としては、LiO、NaO、KO、LiCl、LiOH等が挙げられる。これらの中でも、NaO、KOが好ましい。
【0022】
アルカリ土類金属化合物としては、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ土類金属塩化物、アルカリ土類金属水酸化物、等が挙げられ、具体的なアルカリ土類金属化合物としては、BeO、MgO、CaO、SrO、BaO、RaO、MgCl、CaCl、Mg(OH)、Ca(OH)等が挙げられる。これらの中でも、MgO、CaO、Mg(OH)、Ca(OH)等が好ましい。
【0023】
具体的なアルミニウム化合物としては、Al、Al(OH)等が挙げられる。これらの中でも、Alが好ましい。
【0024】
上記の具体的なアルカリ剤の中でも、MgO、CaO、Mg(OH)、Ca(OH)、Alからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
【0025】
アルカリ剤は粉体で用いられるが、粉体の個数基準の平均粒子径は、0.1μm以上、20μm以下が好ましい。該平均粒子径が上記範囲よりも小さいとアルカリ剤が凝集し易くなり、上記範囲よりも大きいと、表面積が小さくなることから防錆性が劣る虞がある。
単層の防錆性フィルムまたは多層の防錆性フィルムの防錆層に含有されるアルカリ剤の含有量は、15質量%以上、50質量%以下が好ましく、上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きいと、製膜性やヒートシール性が劣り易い。
【0026】
[酸化防止剤]
本発明における酸化防止剤は、包装される内容物の表面に付着して、内容物表面の酸化による錆発生を抑制することができる。
酸化防止剤としては、包装材料に用いられる公知公用の酸化防止剤を用いることができるが、フェノール系酸化防止剤や、リン系酸化防止剤が好ましく、これらの中でも、親水基と疎水基とを有するものがより好ましい。
【0027】
具体的なフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジターシャリーブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が好ましい。
具体的なリン系酸化防止剤としては、トリス(2,4-ジターシャリーブチルフェニル)ホスファイト、2,4,8,10-テトラターシャリーブチル-6-(3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-ターシャリーブチルフェニル)プロポキシ)ジベンゾ(d,f)(1,3,2)ジオクサホスフェピンが好ましい。
【0028】
単層の防錆性フィルム、または多層の防錆性フィルムの防錆層に含有される酸化防止剤の含有量は、0.1質量%以上、15質量%以下が好ましく、上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きくても防錆効果はさほど向上せず、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる為、好ましくない。
【0029】
[脂肪酸類]
本発明における脂肪酸類は、包装される内容物の表面に付着して、撥水作用を呈して、錆発生の原因となる水分が内容物表面に付着することを抑制して、錆の発生を抑制できる。
具体的な脂肪酸類としては、脂肪酸、金属脂肪酸、脂肪酸エステルが挙げられる。
脂肪酸類は、脂肪族鎖部が疎水基、親水基をカルボン酸部が親水基として機能して、内容物表面に親水基が付着して、疎水基部分が外側に向いて付着していることによって、撥水性を発現するものと考えられる。
脂肪酸類の組成としては、脂肪酸部分の炭素数が6以上、20以下のものが好ましい。該炭素数が上記範囲未満だと沸点が製膜温度に近すぎて気泡を生じたり製膜ができなくなったりする虞があり、上記範囲よりも多いと、防錆性フィルムから包装された内容物の表面への、気化・飛散や、接触転写による付着が生じ難くなる虞がある。
具体的な脂肪酸としては、カプロン酸、ヘプタン酸、ノナン酸、オクタン酸、デカン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸等が挙げられる。
【0030】
具体的な金属脂肪酸としては、上記の脂肪酸等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩が挙げられ、Ca塩が好ましい。
具体的な脂肪酸エステルとしては、上記の脂肪酸等のアルコールエステルやグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられ、グリセリン脂肪酸エステルは、グリセリントリ脂肪酸エステルが好ましく、グリセリン脂肪酸エステルが好ましく、グリセリントリカプリル酸エステルがより好ましい。
上記の脂肪酸類の中でも、ヘプタン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ステアリン酸カルシウム、グリセリントリカプリル酸エステルからなる群から選ばれる1種または2種以上を用いることが好ましい。
単層の防錆性フィルムまたは多層の防錆性フィルムの防錆層に含有される脂肪酸類の含有量は、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましく、上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きくても防錆効果はさほど向上せず、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる為、好ましくない。
【0031】
[酸性ガス吸着剤]
本発明における酸性ガス吸着剤は、SO、NO、炭酸ガス等の酸性ガスを吸着して、包装される内容物の表面がこれらの酸性ガスによって錆を発生させることを抑制することができる。
防錆性フィルムは、酸性ガス吸着剤を含有することによって、これらの酸性ガスが包装体外部から防錆性フィルムを透過して侵入することを抑制したり、包装体内部の内容物収容部に存在するこれらの酸性ガスを吸着して濃度を下げたりすることができる。
酸性ガス吸着剤は、疎水性ゼオライト、金属担持ゼオライト、アミノ基担持多孔体からなる群から選ばれる1種または2種以上を含有することが好ましい。
酸性ガス吸着剤は、球状、棒状、楕円状等の任意の外形形状であってよく、粉体状、塊状、粒状等いかなる形態であってもよいが、樹脂中に分散させた際の、均一な分散性や混練特性、製膜性等の観点から、粉体状が好ましい。
【0032】
酸性ガス吸着剤は粉体で用いられるが、粉体の個数基準の平均粒子径は、0.1μm以上、20μm以下が好ましい。ここで、平均粒子径は、動的光散乱法により測定された値である。該平均粒子径が上記範囲よりも小さいと、酸性ガス吸着剤が凝集し易くなり、上記範囲よりも大きいと、表面積が小さくなることから防錆性が劣る虞がある。
単層の防錆性フィルムまたは多層の防錆性フィルムの防錆層に含有される酸性ガス吸着剤の含有量は、0.1質量%以上、30質量%以下が好ましく、上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きくても防錆効果はさほど向上せず、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる為、好ましくない。
【0033】
(疎水性ゼオライト)
疎水性ゼオライトは、多孔体であり、構成成分であるSiO/Alモル比が高い程、疎水性が高くなり、SiO/Alモル比が30/1~10000/1の疎水性ゼオライトが好ましい。
疎水性が高いことによって、極性の高い水蒸気を吸着せずに、極性の低い酸性ガスを吸着する性能が高くなる。
本発明においては、吸湿性能と入手し易さのバランスから、上記範囲のモル比の親水性ゼオライトが好ましく用いられる。
【0034】
(金属担持ゼオライト)
金属担持ゼオライトは、Si、Alとは異なる金属を担持したゼオライトである。担持される金属は、実際には金属酸化物の形または金属原子そのままの形でゼオライトに担持していると考えられる。本発明では、金属酸化物担持ゼオライトと金属原子担持ゼオライトの両種の総称として、金属担持ゼオライトと表記する。
錆を発生させるガス成分が金属担持ゼオライトに触れると、該ガス成分はイオン化、結合、分解。酸化、還元等の何れかの反応を生じて、錆を発生する能力を喪失すると考えられる。
担持される金属種としては、水分と反応し難いもの、鉄よりもイオン化傾向が小さいものが好ましく、具体的には、銅、亜鉛、銀、白金等からなる群から選ばれる1種または2種以上が好ましく、銅、亜鉛、銀なる群から選ばれる1種または2種以上がより好ましい。
また。担持されるゼオライトは、親水性ゼオライト、疎水性ゼオライトのどちらでもよい。
【0035】
(アミノ基担持多孔体)
アミノ基担持多孔体は、アミノ基を有する化学吸着剤を多孔体に担持させたものである。
担持方法としては、公知または慣用の担持方法を適用することができ、例えば、化学吸着剤を含有する溶液を多孔体に含浸させて、乾燥することにより、担持させることができる。
アミノ基担持多孔体は、アミノ基部分がアルデヒド化合物等と選択的に反応して吸着するが、また多孔体の孔部分に対する物理吸着特性も期待できる。
アミノ基を担持させる多孔体としては、その表面に多数の細孔を有する任意の化合物を用いることができ、無機多孔体が好ましく、例えば、ゼオライト、二酸化ケイ素、ケイ酸塩、活性炭、チタニア、燐酸カルシウム等の無機燐酸塩、アルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、及びこれらの混合物が挙げられる。
特に、吸着対象物質の分子サイズやクラスターサイズに対して有効な孔サイズの多孔状態を有することや安全面の観点から、水酸化アルミニウム、ゼオライト、ケイ酸塩を用いることが好ましい。
【0036】
[防錆剤の分散方法]
防錆剤は、防錆剤を熱可塑性樹脂とメルトブレンドしたマスターバッチを経て含有されることが好ましい。
具体的には、防錆剤を熱可塑性樹脂に相対的に高濃度でメルトブレンドしてマスターバッチを調整し、次いで、防錆剤濃度になるように、マスターバッチとバインダー樹脂等の成分とをドライブレンドして用いることが好ましい。
メルトブレンドされる防錆剤や熱可塑性樹脂のそれぞれは、1種であっても2種以上であってもよく、ひとつのマスターバッチに防錆剤が1種または2種以上含有されていてもよい。
マスターバッチ中の防錆剤の含有量は、3質量%以上、95質量%以下が好ましく、20質量%以上、90質量%以下がより好ましく、30質量%以上、70質量%以下が更に好ましい。上記の範囲であれば、必要かつ十分な量の防錆剤を分散した状態で含有させることが容易である。
上記の熱可塑性樹脂は、防錆層で含有されるバインダー樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
<バインダー樹脂>
防錆剤を含有する層に含有されるバインダー樹脂は、防錆剤の分散に適した親和性を有し、製膜性に優れた樹脂が好ましく、ヒートシール性を有する樹脂がより好ましい。
【0038】
具体的なバインダー樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、その他等の樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらの樹脂の中でも、製膜性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸変性樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等を用いることが好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、種類の異なる樹脂を含有する多層で用いてもよい。これらの共重合する不飽和カルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、製膜性の観点からは、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0040】
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸変性樹脂、等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等を用いることが好ましい。
上記のポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましく、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)が更に好ましい。これらのポリエチレン系樹脂は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
<防錆層>
防錆層は、多層の防錆性フィルムにおける、防錆剤とバインダー樹脂とを含有する層である。
防錆層に含有されるバインダー樹脂は熱可塑性樹脂からなり、ヒートシール性を有していてもよく、有していなくてもよい。ヒートシール性を有する場合には、ヒートシール性樹脂を含有することが好ましく、あるいは、バインダー樹脂がヒートシール性樹脂を含有していてもよい。
防錆層は、2種以上の防錆剤を含有する1層であってもよく、異なる種類や含有率の防錆剤を含有する2層以上で構成されていてもよい。
防錆層は、多層構成の防錆性フィルムの表面に積層されていることが好ましい。表面に積層されていることによって、容易に防錆性を発揮することができる。
【0042】
防錆層中の防錆剤の含有量は、0.1質量%以上、50質量%以下が好ましい。上記範囲未満だと、十分な防錆効果が発現され難く、上記範囲よりも大きいと、製膜性やヒートシール性が劣り易くなる。
防錆層の厚さは、当業者が適宜に設定することができるが、5μm以上、150μm以下が好ましく、10μm以上、100μm以下がより好ましく、10μm以上、50μm以下が更に好ましい。上記範囲よりも薄いと、十分な防錆作用を発揮できない虞があり、上記班よりも厚くても防錆効果はさほど向上せず、防錆性フィルム全体の剛性が強くなり過ぎて使いづらくなる虞がある。
【0043】
<中間層>
中間層には、防錆性フィルムに、機械的、物理的、化学的な機能、例えば、支持性、剛性、柔軟性、耐ピンホール性等の種々の機能を付与できる多種の層を有することができる。
例えば、水蒸気バリア層を有することによって、包装体内の内容物収容部への水分の侵入を抑制したり、内容物収容部の水分を吸着したりして湿度を下げて、結露を抑制し、内容物に対して、優れた防錆性を付与することができる。水蒸気バリア層の具体例としては、無機蒸着層、金属箔層が挙げられる。
【0044】
また例えば、支持性を高める為の樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアラミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、フッ素系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、その他等の強靱な熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、種類の異なる樹脂を含有する多層で用いてもよい。
これらの樹脂の中でも、製膜性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸変性樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等を用いることが好ましい。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよく、種類の異なる樹脂を含有する多層で用いてもよい。これらの共重合する不飽和カルボン酸は、1種で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのポリオレフィン系樹脂の中でも、製膜性の観点からは、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0046】
ポリエチレン系樹脂の具体例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンポリオレフィン系樹脂の不飽和カルボン酸変性樹脂、等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸等を用いることが好ましい。
上記のポリエチレン系樹脂の中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましく、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)が更に好ましい。これらのポリエチレン系樹脂は、1種で用いてもよく
、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
中間層の厚さは、当業者が適宜に設定することができるが、積層体に適切な強度や腰を付与することが目的の場合には、5μm以上、100μm以下が好ましく、10μm以上、50μm以下がより好ましい。
【0048】
<外面層>
外面層は、熱可塑性樹脂を含有する層である。
外面層に用いられる熱可塑性樹脂には、フィルム全体のヒートシール性や製膜性に大きな悪影響を与えない範囲内で、多種類の樹脂を用いることができる。
該熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、汎用のポリエチレン、ポリプロピレン、メチルペンテンポリマー、酸変性ポリオレフィン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、及びこれらの樹脂の混合物等が挙げられるが、これらの樹脂に限定されず、目的に応じた熱可塑性樹脂の種類を選ぶことができる。
外面層は、多層構成の防錆性フィルムの表面に積層されていることが好ましい。
外面層の厚みに特に制限は無いが、10μm以上、100μm以下が好ましい。上記範囲内であれば、フィルム全体のヒートシール性や製膜性に大きな悪影響を与える虞が少ない。
【0049】
(ヒートシール性樹脂)
本発明の防錆フィルムにおいて用いることができるヒートシール性樹脂は、熱によって溶融して融着し得るものであれば、特に制限無く、公知のヒートシール性樹脂を用いることができる。
ヒートシール性樹脂の具体例としては、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、メタロセンポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸その他等の不飽和カルボン酸で変性したポリオレフィン系樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-不飽和カルボン酸の三元共重合体樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、環状オレフィンコポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)などが挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリオレフィン系樹脂の中でもポリエチレン系樹脂がより好ましく、ポリエチレン系樹脂の中でも低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)がさらに好ましく、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン(LLDPE)が特に好ましい。
【0050】
<接着剤層>
接着剤層に用いられる接着剤に特に制限は無く、DL(ドライラミネート)用接着剤、EC(エクストルージョンコート)用接着剤、ノンソルベントラミネート用接着剤、任意のアンカーコート剤等を用いることができる。
また、接着剤は、熱硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等のいずれであってよく、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの形態でもよく、また、その性状は、フィルム/シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよく、更に、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
【0051】
このような接着剤層を形成する成分としては、ポリ酢酸ビニルや酢酸ビニル-エチレン共重合体等のポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸とポリスチレン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル等との共重合体からなるポリアクリル酸系接着剤、シアノアクリレート系
接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、LDPE等のポリオレフィン系接着剤、尿素樹脂又はメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴム等からなるエラストマー系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等が挙げられる。
【0052】
<防錆性フィルムの作製方法>
本発明の防錆性フィルムを製造する方法について説明する。下記に示した作製方法は1例であって、本発明を限定するものではない。
防錆性フィルムは、Tダイ押し出し法、押し出しインフレーション法、その他等の任意の方法で作製することができる。
防錆性フィルムが多層構成である場合には、各層の積層は、通常の包装材料を製造するときに使用するラミネートする方法、例えば、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、共押し出しラミネーション法、Tダイ共押し出し法、共押し出しインフレーション法、その他等の任意の方法で行うことができる。
多層の防錆性フィルムは、上記の中でも、共押し出しを含む方法で作製された共押フィルムであることが好ましい。
そして、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、オゾン処理等の前処理を各層の表面に施すことができる。また、例えば、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジェン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、あるいはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系、その他等のラミネート用接着剤等のアンカーコート剤等を任意に使用することができる。
【0053】
例えば、インフレーション法によって防錆性フィルムを作製する場合を説明する。
防錆性フィルムが単層である場合には、先ず、防錆性フィルムを形成する為の樹脂組成物を準備して、インフレーション製膜により、防錆性フィルムを作製する。
防錆性フィルムが多層である場合には、先ず、防錆層、中間層、外面層の各々を形成する為の樹脂組成物を準備する。そして、インフレーション製膜により、防錆層、中間層、外面層を共押出して積層し、多層の防錆性フィルムを作製する。そして、さらに、必要に応じてエージング処理を行ってもよい。
このようにして、液体内容物包装用の積層体または液体内容物用包装材料を作製することができる。
そして、得られた防錆性フィルムを、必要に応じて、一軸方向または二軸方向に延伸してもよい。
【0054】
防錆性フィルムには、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことができる。
二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、防錆性フィルムに、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施すこともできる。
【0055】
≪防錆性包装材料≫
本発明の防錆性包装材料は、本発明の防錆性フィルムから作製された包装材料であり、必要に応じて、種々の機能を有する層をさらに含んでいてもよい。
防錆性包装材料は、防錆性フィルムと同様な防錆性を有し、例えばストレッチフィルムとして用いることもできる。
【0056】
≪防錆性包装体≫
本発明の防錆性包装体は、本発明の防錆性包装材料から作製された包装体である。
本発明の防錆性包装体の形状・形態に特に制限は無く、防錆性包装材料を折り曲げたり、内容物を包むように重ねたり、ヒートシールしたりして、様々な形状・形態にすることができ、印刷装飾によって付加価値を付与することができる。
例えば、パウチ形状の防錆性包装体は、ボトル形状の防錆性包装体と比較して少ない防錆性包装材料で作製可能であり、省資源化に有効である。
【0057】
パウチ形状の防錆性包装体は、例えば、防錆性包装材料を二つ折にするか、又は防錆性包装材料を2枚用意し、そのヒートシール性を有する層の面を対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形状の防錆性包装体を作成することができる。
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0058】
防錆性包装体において、防錆性包装材料の防錆層は防錆性包装体の内側に、外面層は内側に位置するように包装されていることが好ましい。
このように包装されていることによって、防錆性包装体は、外部からの酸性ガスの浸透を抑制したり、内容物表面に防錆剤を付着させて、内容物に錆が発生することを抑制したりすることが、効率的にできる。
防錆性包装体を作製する際には、包装体内の空気を吸引しながら、あるいは、内容物空間を低酸素率や低湿度の空気で置換しながら、密封してもよい。
【実施例0059】
以下の実施例および比較例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
実施例に用いた原料の詳細は下記の通りである。
【0060】
[脂肪酸類]
・脂肪酸1:富士フィルム和光純薬(株)社製ヘプタン酸。
・脂肪酸2:富士フィルム和光純薬(株)社製ステアリン酸。
・脂肪酸3:富士フィルム和光純薬(株)社製デカン酸、
・脂肪酸4:富士フィルム和光純薬(株)社製ラウリン酸
・脂肪酸5:富士フィルム和光純薬(株)社製ステアリン酸
・金属脂肪酸1:富士フィルム和光純薬(株)社製ステアリン酸カルシウム。
・脂肪酸エステル1:理研ビタミン(株)社製トリグリセライド、アクターM2。
【0061】
[酸化防止剤]
・酸化防止剤1:アデカ(株)社製フェノール系酸化防止剤、A060。
・酸化防止剤2:アデカ(株)社製リン系酸化防止剤2112。
・酸化防止剤3:アデカ(株)社製フェノール+リン系混合系酸化防止剤、A-612R
G。
【0062】
[アルカリ剤]
・アルカリ剤1:吉澤石灰工業(株)社製酸化カルシウム、HAL-J。平均粒子径1~2μm。
【0063】
[バインダー樹脂、熱可塑性樹脂]
・LLDPE1:プライムポリマー(株)社製LLDPE、エボリューSP2020。密度0.916g/cm、MFR=2.0g/10分。
・LDPE1:日本ポリエチレン(株)社製LDPE、ノバテックLC520。密度0.923g/cm、MFR3.6g/10分。
【0064】
<マスターバッチの調製>
マスターバッチを下記のように調製した。
[マスターバッチ1の調製]
LDPE1と、脂肪酸1とを下記割合でメルトブレンドし、マスターバッチ1(MB1)を得た。
LDPE1 95質量部
脂肪酸1 5質量部
【0065】
[マスターバッチ2~11の調整]
表1の配合に従って、マスターバッチ1と同様に、メルトブレンドし、マスターバッチ2~11(MB2~11)を得た。
【0066】
【表1】
【0067】
<実施例>
防錆剤を含有した防錆性フィルムを作製して、各種評価を実施した。
【0068】
[実施例1]
MB1とLLDPE1とを下記割合でドライブレンドして、防錆層樹脂組成物を得た。
MB1 20質量部
LLDPE1 80質量部
上記で得た防錆層樹脂組成物を160℃でインフレーション製膜によって製膜して、防錆層のみからなる防錆性フィルム(30μm厚)を得た。そして、各種評価を実施した。
【0069】
[実施例2]
MB1とMB8とMB11とLLDPE1とを下記割合でドライブレンドして、防錆層樹脂組成物を得た。
MB1 10質量部
MB8 10質量部
MB11 40質量部
LLDPE1 40質量部
上記で得た防錆層樹脂組成物を用いて、実施例1と同様に操作して、防錆層のみからなる防錆性フィルム(30μm厚)を得た。そして、実施例1と同様に各種評価を実施した。
【0070】
[実施例3]
MB1とLLDPE1とを下記割合でドライブレンドして、防錆層樹脂組成物を得た。
MB1 20質量部
LLDPE1 80質量部
上記で得た防錆層樹脂組成物とLLDPE1とを、160℃でインフレーション製膜によって製膜及び積層して、下記3層構成の防錆性フィルム(60μm厚)を得た。そして、実施例1と同様に各種評価を実施した。
層構成:防錆層/中間層(LLDPE1)/外面層(LLDPE1)=15μm厚/30μm厚/15μm厚
【0071】
[実施例4~28]
表2~7の記載に従ってマスターバッチを選択し、実施例3と同様に操作して、3層構成の防錆性フィルムを作製し、同様に評価した。
【0072】
[比較例1]
防錆層をLLDPE1のみで形成したこと以外は実施例3と同様に操作して、3層構成の防錆性フィルムを作製し、同様に評価した。
【0073】
[結果まとめ]
本発明の実施例1~28の防錆性フィルムは、良好な製膜性、ヒートシール性、防錆性を示した。
一方、防錆剤を含有しない比較例のフィルムは、劣った防錆性を示した。
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
【表7】
【0080】
<評価方法>
[製膜性]
防錆性フィルムの外観を肉眼で観察し、不良の有無を下記評価基準で評価した。
○:防錆性フィルムに皺、ぶつ、剥離等が無かった。
×:防錆性フィルムに皺、ぶつ、剥離等が有った。
【0081】
[ヒートシール性]
防錆性フィルムを100mm×100mmに切り分け、ヒートシール性の外面層がある場合には外面層同士を対向させて、重ね合せた後にヒートシールテスター(テスター産業社製:TP-701-A)を用いて、端部はヒートシールされずに二股に分かれている状態になるように1cm×10cmの領域をヒートシールし、さらに15mm幅で短冊状に切り分けて、ヒートシール強度測定用の試験片を作製した。
この試験片の二股に分かれている各端部を引張試験機に装着して、ヒートシール部を剥離するように引っ張って、ヒートシール強度(N/15mm幅)を測定して、下記合否基準で合否判定した。
(ヒートシール条件)
温度:160℃
圧力:1kgf/cm
時間:1秒
(引張強度試験条件)
試験速度:300mm/分
荷重レンジ:50N
(合否判定基準)
○:30N/15mm以上であり、合格。
×:30N/15mm未満であり、不合格。
【0082】
[防錆性]
防錆性フィルムを100mm×100mmに切り分け、ヒートシール性の外面層がある場合には外面層同士を対向させて、重ね合せた後に、インパルスシーラーを用いて積層体に4方シールを行い、100mm×100mmのパウチを作製した。
次いで、当該パウチに、下記金属片を充填し、60℃、90%RHに調整した恒温槽内に14日間保管して、外観の変化を下記評価基準にて評価した。
(金属片)
鉄板:冷間圧延鋼板(SPCC)、50mm×50mm×1mm、脱脂済み。
銅板:タフピッチ銅板(C1100P-1/4H)、50mm×50mm×1mm、脱脂済み。
(評価基準)
◎:錆および変色なし、または点錆およびわずかな変色のみ発生。
〇:試験片の面積に対して10%未満に錆発生。
△:試験片の面積に対して10%以上50%未満に錆発生。
×:試験片の面積に対して50%以上に錆発生。
【符号の説明】
【0083】
1 防錆性フィルム
2 防錆性包装材料
3 防錆層
3a 防錆剤
4 中間層
5 外面層
図1
図2