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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013319
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】製氷装置
(51)【国際特許分類】
   F25C 1/10 20060101AFI20240125BHJP
   F25D 29/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F25C1/10 301A
F25D29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115315
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】ニデックインスツルメンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002158
【氏名又は名称】弁理士法人上野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 勇太
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA05
3L045AA07
3L045CA04
3L045PA01
3L045PA02
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】製氷装置の構造を改善し、その組立性を向上させる。
【解決手段】製氷皿と、前記製氷皿に接続され、該製氷皿を回動させる出力部と、前記出力部の駆動源であるモータと、備え、交流を直流に変換する変換器を有する第1基板と、直流で動作する部品が接続される第2基板と、を有し、前記第2基板は、本装置の動作を制御する制御部を有し、前記第1基板と前記第2基板とは基板間コネクタにより接続されている製氷装置によりこれを解決する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製氷皿と、
前記製氷皿に接続され、該製氷皿を回動させる出力部と、
前記出力部の駆動源であるモータと、備え、
交流を直流に変換する変換器を有する第1基板と、
直流で動作する部品が接続される第2基板と、を有し、
前記第2基板は、本装置の動作を制御する制御部を有し、
前記第1基板と前記第2基板とは基板間コネクタにより接続されている、
製氷装置。
【請求項2】
前記基板間コネクタは、前記第1基板と前記第2基板とを互いに垂直に接続する、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項3】
前記第1基板と前記第2基板との接続にはリード線が用いられていない、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項4】
前記モータは直流モータであり、
前記第2基板は前記モータの駆動回路を有する、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項5】
前記製氷皿から排出された氷が蓄えられる貯氷部の中に降下し、該貯氷部内の氷量を検査する検氷部材を備え、
前記第2基板には、前記検氷部材の降下量を検知するスイッチ又はセンサが接続されている、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項6】
前記製氷皿に蓄えられた水の温度を検知する温度センサを備え、
前記温度センサは前記第2基板に接続されている、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項7】
前記第1基板は、前記製氷皿に水を供給する給水バルブを開閉するリレーを有する、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項8】
前記第1基板はバリスタを有する、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項9】
前記第1基板および前記第2基板を収容するケース体を備え、
前記ケース体は、その内部に、
前記第1基板が収容される空間である第1空間と、
前記第2基板が収容される空間である第2空間と、を有し、
前記第1空間と前記第2空間とは隔壁によって仕切られており、
前記隔壁には、前記基板間コネクタを接続するための開口部が設けられている、
請求項1に記載の製氷装置。
【請求項10】
前記ケース体は、
前記製氷皿を回動可能に支持する枠部と、
前記第1基板および前記第2基板を収容する箱部と、を有し、
前記箱部は、その内部に、無蓋のケース半体である内ケースを有し、
前記内ケースは、その開口を前記箱部の内面に向けて該内面に固定されており、
前記隔壁は前記内ケースである、
請求項9に記載の製氷装置。
【請求項11】
前記箱部は着脱可能な蓋部を有し、
前記第2基板には、本装置を始動させるスイッチであるメインスイッチが接続されており、
前記内ケース及び前記蓋部には、それぞれ、該蓋部の外から前記メインスイッチへのアクセスを可能にする穴が設けられている、
請求項10に記載の製氷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は製氷装置に関し、より具体的には、制御部を備える自動製氷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、AC/DCコンバータを有する第1回路基板、制御用の第2回路基板、及びモータ基板を備える自動製氷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-45043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
狭小なケース内に配置された複数の基板同士を、リード線や端子のはんだ付けにより接続する場合、そのはんだ付けの難しさが、組立作業の作業性や、基板間の接続精度を低下させるおそれがある。また、これらの接続にリード線を使う場合、リード線を適度に遊ばせるための余分なスペースが必要となり、装置の小型化の妨げとなる。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、製氷装置の構造を改善し、その組立性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の製氷装置は、製氷皿と、前記製氷皿に接続され、該製氷皿を回動させる出力部と、前記出力部の駆動源であるモータと、備え、交流を直流に変換する変換器を有する第1基板と、直流で動作する部品が接続される第2基板と、を有し、前記第2基板は、本装置の動作を制御する制御部を有し、前記第1基板と前記第2基板とは基板間コネクタにより接続されていることを要旨とする。
【0007】
複数の基板を基板間コネクタによって嵌合接続(構造的に接続)することにより、基板の接続作業が容易化されるとともに、その接続精度も均一化される。また、基板を、そこに実装される部品の入力電流の種類や機能等に基づいて複数枚に分割することで、それぞれの基板を最適な位置に柔軟に配置することが可能となり、製氷装置の構造が合理化される。
【0008】
このとき、前記基板間コネクタは、前記第1基板と前記第2基板とを互いに垂直に接続することが好ましい。第1基板と第2基板とを垂直に接続することで、その接続後の3次元方向における最大寸法を、これらを同一面上で接続したときの最大寸法よりも小さくすることができる。これにより、基板が小型化のボトルネックになることを避けることができる。
【0009】
また、このとき、前記第1基板と前記第2基板との接続にはリード線が用いられていないことが好ましい。これによりリード線の配置スペースを省くことができ、製氷装置をさらに小型化することができる。
【0010】
また、本発明の製氷装置は、前記モータが直流モータであり、前記第2基板は前記モータの駆動回路を有することが好ましい。駆動源に直流モータを採用することにより、モータの駆動制御、つまり製氷装置の動作の制御が容易となり、製氷装置の動作が安定する。
【0011】
また、本発明の製氷装置は、前記製氷皿から排出された氷が蓄えられる貯氷部の中に降下し、該貯氷部内の氷量を検査する検氷部材を備え、前記第2基板に、前記検氷部材の降下量を検知するスイッチ又はセンサが接続されていてもよい。同様に、本発明の製氷装置は、前記製氷皿に蓄えられた水の温度を検知する温度センサを備え、前記温度センサが前記第2基板に接続されていてもよい。製氷装置の動作に関わる部品を第2基板に集約することにより、第1基板と第2基板とをより合理的に分割することができる。
【0012】
また、本発明の製氷装置は、前記第1基板が、前記製氷皿に水を供給する給水バルブを開閉するリレーを有していてもよい。一般に機械的接点を有するリレーを第1基板に実装することにより、ノイズやスパークなどの課題を第1基板に集約することができる。また、第2基板は、第1基板から直流の供給を受けて電気・電子部品を制御するというその役割上、第1基板よりも装置の奥まった部分に配置されることが見込まれる。そのため、装置外の機械要素(本発明では給水バルブ)に接続されるリレーを、第2基板ではなく第1基板に配置することにより、リレーと給水バルブとのアクセスを容易にすることができる。
【0013】
また、本発明の製氷装置は、前記第1基板がバリスタを有することが好ましい。第1基板にサージ電流の迂回機能をもたせることにより、製氷装置の電源機能が第1基板に集約される。これにより第2基板の安全性が担保され、第2基板の構成を簡潔にすることができる。
【0014】
また、本発明の製氷装置は、前記第1基板および前記第2基板を収容するケース体を備え、前記ケース体は、その内部に、前記第1基板が収容される空間である第1空間と、前記第2基板が収容される空間である第2空間と、を有し、前記第1空間と前記第2空間とは隔壁によって仕切られており、前記隔壁には、前記基板間コネクタを接続するための開口部が設けられていることが好ましい。第1基板が配置される空間と、第2基板が配置される空間とを隔壁で仕切ることにより、例えば、絶縁性や防爆性などの安全規格上の合否を左右する部品を第1基板に集約し、第1空間の構造を工夫することで、製氷装置を様々な規格に柔軟に適合させることが可能となる。
【0015】
このとき、前記ケース体は、前記製氷皿を回動可能に支持する枠部と、前記第1基板および前記第2基板を収容する箱部と、を有し、前記箱部は、その内部に、無蓋のケース半体である内ケースを有し、前記内ケースは、その開口を前記箱部の内面に向けて該内面に固定されており、前記隔壁は前記内ケースであることが好ましい。箱部が別部材からなる内ケースを備えることにより、内ケースに歯車等の機械部品を予め組み付けて、これを一括で箱部に収容・固定することができ、製氷装置の組立性が向上する。また、内ケースが隔壁を兼ねることにより、製氷装置の構造効率も向上する。
【0016】
また、このとき、前記箱部は着脱可能な蓋部を有し、前記第2基板には、本装置を始動させるスイッチであるメインスイッチが接続されており、前記内ケース及び前記蓋部には、それぞれ、該蓋部の外から前記メインスイッチへのアクセスを可能にする穴が設けられていることが好ましい。制御部を有する第2基板にメインスイッチを設け、これを外部からアクセス可能とすることにより、一般的なスイッチ部品を用いて防爆性も担保することができる。つまり、電力線をスイッチで直接継断する構成に比べ、安全性や部品の調達リスクを改善することができる。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明の製氷装置によれば、製氷装置の構造が改善され、その組立性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る製氷装置の外観を示す斜視図である。
図2】製氷装置が行う離氷動作の流れを示す模式図である。
図3】駆動ユニットの動力伝達経路を示す背面図である。
図4】製氷装置のケース体の構造を示す斜視図である。
図5】駆動ユニットが備える基板の配置を示す平面透視図である。
図6】基板の機能構成を示すブロック図である。
図7】カムギヤの構造を示す斜視図である。
図8】従動軸の構造を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。
図9】スイッチレバーの構造を示す平面図(a)及び斜視図(b)である。
図10】製氷皿が製氷位置にあるときの駆動機構の様子を示す背面図である。
図11】検氷動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。
図12】離氷動作の続行時/中断時の各部の動作を示すタイミングチャートである。
図13】排出動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。
図14】氷排出後の駆動機構の様子を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明にかかる製氷装置の実施形態について図面を用いて説明する。以下に説明する製氷装置90は、図示しない冷蔵庫の冷凍室に設置され、冷蔵庫から水の供給を受けて自動的に氷を製造する装置である。
【0020】
以下の説明における「上下」とは、図1に描かれた座標軸のZ軸に平行な方向を意味しており、Z1側を「上」、Z2側を「下」とする。「前後」及び「表裏」とは、同座標軸のX軸に平行な方向であり、X1側を「前」「表」、X2側を「後ろ」「裏」とする。同様に、「左右」とは、同座標軸のY軸に平行な方向であり、Y1側を「右」、Y2側を「左」とする。
【0021】
(全体構成)
図1は製氷装置90の外観を示す斜視図である。製氷装置90は製氷皿20をひねって氷を排出するいわゆるひねり式の製氷装置である。製氷装置90は、複数のセル(貯水室)を有する樹脂製の製氷皿20と、製氷皿20を回動させるモータユニットである駆動ユニット91を有している。駆動ユニット91及び製氷皿20は、冷凍庫内に据え付けられるケース体10に収容・支持されている。また、駆動ユニット91は、後述する貯氷部92内の氷の量を検査する検氷部材である検氷レバー31を備えている。
【0022】
(離氷動作概要)
図2は、製氷装置90が行う離氷動作(製氷皿20から氷を排出する動作)の流れを示す模式図である。
【0023】
図2(a)は、製氷皿20が液体の水を保持する配置角度である「製氷位置」にある状態を示す図である。製氷装置90は、製氷皿20の温度をその下面に取り付けられた温度センサであるサーミスタ24で監視しており、製氷皿20の温度が規定値に至ったことを検知すると離氷動作を開始する。図2(b)及び図2(c)は製氷装置90による離氷動作を示す図である。
【0024】
図2(b)は、離氷動作の一部である「検氷動作」を示す図である。「検氷動作」とは、氷が貯えられる容器である貯氷部92内の氷の嵩高を測り、離氷動作を継続するか、それとも中断(キャンセル)するかを決定する動作である。離氷動作が開始され、製氷皿20が図示CCW方向への回転を開始すると、これに連動して検氷レバー31のアーム部312が貯氷部92内に降下する。ここで、検氷レバー31が予め定められた基準面よりも下まで降下すれば、氷の量が不足しているものと判断され、離氷動作が続行される。一方、検氷レバー31が基準面に至る前に、堆積した氷によってその降下が妨げられると、貯氷部92はすでに氷で一杯と判断され、離氷動作がキャンセルされる。
【0025】
図2(c)は、離氷動作の一部である「排出動作」を示す図である。貯氷部92の氷の量が不足している場合、製氷装置90は離氷動作を続行する。製氷皿20の前端には、ケース体10の軸穴に支持される軸部23がその中央に形成されており、軸部23の左右には、前方に突き出した凸部である第1凸部21及び第2凸部22が形成されている。ケース体10には、第1凸部21及び第2凸部22の回転軌道上に、その回転を妨げる第1接触部111及び第2接触部112が設けられている。製氷皿20が図示CCW方向への回転を継続すると、製氷皿20の第1凸部21及び第2凸部22は、ケース体10の第1接触部111及び第2接触部112に接触する。駆動ユニット91はその状態からさらに製氷皿20をCCW方向へ数十度回転させ、製氷皿20をひねる。これにより製氷皿20の氷が貯氷部92内に排出される。
【0026】
(駆動機構概要)
図3は、駆動ユニット91の動力伝達経路を示す背面図である。製氷装置90は、これが設置された冷蔵庫から電力の供給を受け、種々の規定動作を行う。
【0027】
駆動ユニット91は、駆動源である直流モータ81(以下、単に「モータ81」という。)と、製氷皿20を回動させる出力部であるカムギヤ40と、カムギヤ40の動作に連動して検氷レバー31を昇降させる従動軸50と、を有している。
【0028】
カムギヤ40は、円形に広がったフランジ状の円板部であるギヤ部41を有している。ギヤ部41の裏面41bは平面カム機構の原動節を構成している。従動軸50はギヤ部41の従動節を構成する軸体である。ギヤ部41はその外周面に歯部が形成されており、平歯車として機能する。モータ81の回転は減速歯車列によって減速され、カムギヤ40のギヤ部41に伝達される。本形態の減速歯車列は、モータ81の出力軸に装着されたウォームギヤ811、第1歯車82、第2歯車83、及び第3歯車84により構成されている。第1~3歯車は、それぞれ、大径歯車と小径歯車とが軸線方向に重ねられ、一体化された複合歯車である。第1歯車82の大径歯車はウォームギヤ811と対になるウォームホイールとなっている。
【0029】
また、ギヤ部41の裏面41bには、他の従動節であるスイッチレバー72も接している。スイッチレバー72は、カムギヤ40の配置角度と従動軸50の配置角度(つまり検氷レバー31の降下角度)とに応じて、機械的なスイッチである検氷スイッチ71のON/OFFを切り替える。製氷装置90は、検氷スイッチ71の出力を監視し、冷凍庫内の氷量が十分(満氷)であるときは駆動ユニット91による離氷動作をキャンセルし、氷量が不足しているときは離氷動作を続行する。
【0030】
(ケース体の構造)
図4は、製氷装置90のケース体10の構造を示す斜視図である。ケース体10は全体として略直方体形状の筐体である。ケース体10は、製氷皿20を回動可能に支持し、駆動ユニット91をその内部に収容する。
【0031】
ケース体10は、製氷皿20を保持する枠部11と、駆動ユニット91を保持する箱部12とを有している。枠部11に上面および底面はなく、製氷皿20はその全体が外部に露出している。駆動ユニット91は、製氷皿20との接続部を除き、そのほぼ全体が箱部12に覆われている。箱部12はフック122により着脱可能な蓋部121を有している。フック122は箱部12の底面にも設けられており、フック122を外して蓋部121を開けることで箱部12の内部にアクセスすることができる。ケース体10の背面(X2側端面)、つまり蓋部121には、製氷装置90を始動させるボタンであるメインスイッチ655と、メーカーやサービスエンジニアが製氷装置90の動作を確認するためのテストスイッチ656が配置されている。
【0032】
箱部12の中には、無蓋のケース半体である内ケース13がねじ133で固定されている。内ケース13はその上面と下面に凸状のフック132を有しており、これらを箱部12の対応する位置に設けられた穴部123に係合させることで、箱部12内における内ケース13の位置が仮固定される。内ケース13はその開口を箱部12の前方(X1側)の内面に向けて固定されている。内ケース13には、駆動ユニット91を構成する歯車等の機械部品や、後述する基板61等が組み付けられている。本形態の製氷装置90は、箱部12が別部材からなる内ケース13を備えていることにより、駆動ユニット91を構成する部品を予め内ケース13に組み付けて、これを一括で箱部12に収容・固定することができる。これにより製氷装置90の組立性が高められている。
【0033】
(基板構成)
図5は、駆動ユニット91が備える基板の配置を示す平面透視図である。図6は、同基板の機能構成を示すブロック図である。以下、図5及び図6を参照して製氷装置90の基板構成について説明する。
【0034】
本形態の製氷装置90は、上位装置である冷蔵庫から電力の供給を受けて、給水、製氷、排氷、そして貯氷量の管理までを自律的に行う全自動製氷装置である。そして製氷装置90は、電力の変換や、各種動作を制御するための基板を有している。
【0035】
製氷装置90の基板は、2枚のリジッド基板である第1基板61及び第2基板65により構成されている。第1基板61は、冷蔵庫から入力された交流電力を直流に変換する変換器であるAC/DCコンバータ611を備える基板である。第2基板65には第1基板61から直流電力が供給される。第2基板65には直流で動作する電気・電子部品が接続される。また、第2基板は、製氷装置90の動作を制御する制御部である制御装置651を備えている。制御部の具体構成は特に限定されない。本発明の制御部は、センサやスイッチ類、プログラムからの入力を受けて出力信号を任意に切替可能であればよく、例えばマイクロコントローラや、FPGA、CPLD、その他の制御回路などが考えられる。
【0036】
これら第1基板61及び第2基板65は、基板間コネクタ619,659によって電気的に接続されている。本形態では、2枚の基板を基板間コネクタ619,659で嵌合接続することにより、基板の接続作業が容易化されており、またその接続精度も均一化されている。そして、本形態では、基板が、そこに実装される部品の入力電流の種類や機能等に基づいておおまかに分割されていることで、それぞれの基板を最適な位置に柔軟に配置することが可能となっている。さらに、製氷装置90では、第1基板61及び第2基板65の接続にリード線が用いられておらず、リード線を遊ばせるためのスペースが不要である。このことによっても製氷装置90の構造効率が高められている。
【0037】
また、図5に示されるように、本形態の第1基板61及び第2基板65は、基板間コネクタ619,659により垂直(互いの面方向が90°の角度で交わるように)に接続されている。第1基板61と第2基板65とが垂直に接続されていることにより、その接続後の3次元方向における最大寸法が、これらを同一面上で接続したときの最大寸法よりも小さくなっている。これにより、基板が小型化のボトルネックになることが防止されている。
【0038】
図6に示されるように、第1基板61には、上述のAC/DCコンバータ611に加え、製氷皿20に水を供給する給水バルブを開閉するメカニカルリレー613(以下、単に「リレー613」という。)が実装されている。機械的接点を有するリレー613を第1基板61に配置することにより、ノイズやスパークなどの課題が第1基板61に集約されている。また、リレー613の動作は第2基板65の制御装置651によって制御されるが、第2基板65は、第1基板61から直流の供給を受けて電気・電子部品を制御するというその役割上、第1基板61よりも装置の奥まった部分に配置される。そのため、本形態では、装置外の給水バルブに接続されるリレー613を、第2基板65ではなく第1基板61に配置することにより、リレー613と給水バルブとのアクセスを容易にしている。これに加え、第1基板61にはバリスタ612も実装されている。サージ電流の迂回機能を第1基板61にもたせることにより、製氷装置90の電源機能が第1基板61に集約されている。またこれにより第2基板65の安全性が担保され、第2基板65の構成が簡潔になっている。
【0039】
第2基板65には、モータ81と、上述のメインスイッチ655及びテストスイッチ656、サーミスタ24、及び検氷スイッチ71が接続されている。また、第2基板65にはモータ81の駆動回路であるモータドライバ652が実装されている。
【0040】
製氷装置90は、その駆動源として直流モータ81を採用している。駆動源に直流モータを採用することにより、モータの駆動制御、つまり製氷装置90の動作の制御が容易となる。これにより、製氷装置90の広範で多岐にわたる機能・動作が簡潔な構成で実現されている。その他、第2基板65にはサーミスタ24と検氷スイッチ71も接続されており(これらの具体的な機能については後述する)、これにより製氷装置90の動作制御に関わる部品が第2基板65に集約されている。
【0041】
このように、本形態の製氷装置90は、電源に関する機能を第1基板61にほぼ集約し、製氷装置90の動作制御に関する機能を第2基板65にほぼ集約することで、合理的かつ柔軟に基板を分割している。
【0042】
図5に示すように、第1基板61及び第2基板65を収容する箱部12の内部空間は、内ケース13を隔壁として、内ケース13の外側の空間である第1空間12aと、内ケース13の内側の空間である第2空間12bとに仕切られている。第2空間12bは内ケース13と箱部12の内面とよって区画されている。内ケース13の内外は、基板間コネクタ619,659を接続するための開口部135でのみ連通している。
【0043】
第1基板61は内ケース13の背面に設けられた爪134に把持されており、つまり第
1空間12aに配置されており、第2基板65は、内ケース13の内部に収容されている、つまり第2空間12bに配置されている。第1基板61が配置される空間と、第2基板65が配置される空間とを隔壁で仕切ることにより、例えば、絶縁性や防爆性などの安全規格上の合否を左右する部品を第1基板61に集約し、第1空間12aの構造を工夫することで、製氷装置90を様々な規格に柔軟に適合させることが可能となっている。また、本形態では内ケース13が隔壁を兼ねており、これにより製氷装置90の構造効率が高められている。
【0044】
また、本形態の製氷装置90では、メインスイッチ655が第2基板65に接続されており、内ケース13及び蓋部121には、それぞれ、蓋部121の外からメインスイッチ655へのアクセスを可能にするボタン穴129,139が設けられている。制御装置651を有する第2基板65にメインスイッチ655を設け、これを外部からアクセス可能とすることにより、一般的なスイッチ部品を用いつつ防爆性が担保されている。つまり、電力線をスイッチで直接継断する構成に比べ、安全性や部品の調達リスクが改善されている。
【0045】
(駆動機構詳細)
以下、図7から図9を参照して、駆動ユニット91の駆動機構を構成する各部品の細部について説明する。
【0046】
図7はカムギヤ40の構造を示す斜視図である。図7(a)はカムギヤ40の表面側を示す正面斜視図、図7(b)はカムギヤ40の裏面側を示す背面斜視図である。図7(a)に示されるように、カムギヤ40はその表面側に、製氷皿20の後端部に接続される矩形状の軸部である製氷皿嵌合軸42と、ケース体10に設けられた図示しない軸受に支持される円形の軸部であるケース嵌合軸43と、を有している。
【0047】
図7(b)に示されるように、カムギヤ40の裏面側には、その中央に円筒形状の筒部44が設けられている。筒部44の外面には、後述する降下止めスリーブ49が装着される。ギヤ部41の裏面41bには、平面カム機構の原動節を構成するリブである第1カム45及び第2カム46が形成されている。第1カム45は略円環形状のリブである。従動軸50は、第1カム45の内周面の形状に沿って回動する。第1カム45には、その周方向における一部の範囲に、径方向外側に張り出したスロープである凹スロープ451が設けられている。第2カム46は、ギヤ部裏面41bの周縁に沿って形成されたリブである。スイッチレバー72は、第2カム46の内周面の形状に沿って回動する。第2カム46は、スイッチレバー72が乗上げるスロープである前半凸スロープ461及び後半凸スロープ462、これら凸スロープの間に設けられた下りスロープである中間凹スロープ463、そして後半凸スロープ462から図示時計回り方向に続く下りスロープである終端凹スロープ464を有している。
【0048】
図8は、従動軸50の構造を示す斜視図(a)及び側面図(b)である。従動軸50は、内ケース13を含む箱部12に支持される軸部である先端軸51及び中間軸58を有している。従動軸50はその円柱形状の胴部に複数の突起が設けられている。これら突起は、Y2側からY1側に向かって、順に、第1カム45に接触するカムフォロアーである摺動部52、後述する降下止めスリーブ49に当接することで従動軸50の図8(b)視CCW方向への回転を阻止する回転止め部53、コイルばね541(図3参照)により常に上方へ(つまり従動軸50を同CCW方向へ回転させるように)付勢されるばね受け部54、箱部12の図示しない凹部に嵌入され、従動軸50の回動範囲を制限する第1位置決め片55、スイッチレバー72に接触してスイッチレバー72の旋回角度を操作するスイッチレバー操作部56、箱部12の内面に接触して従動軸50のY1方向への移動を阻止する第2位置決め片57により構成されている。
【0049】
図9は、スイッチレバー72の構造を示す平面図(a)及び斜視図(b)である。スイッチレバー72は、その回転中心である軸部729と、軸部729を回転端とする複数の自由端とを有するアーム状部材である。スイッチレバー72はその自由端として、第2カム46に接触するカムフォロアーである摺動部721、コイルばね79によって常に検氷スイッチ71側に付勢されるスイッチ操作部722、及び、内ケースの凹部131に嵌入され、スイッチレバー72の回動範囲を制限する回動制限部723を有している。
【0050】
(離氷動作詳細)
以下図10から図14を参照して製氷装置90の離氷動作についてより詳細に説明する。
【0051】
図10は、製氷皿20が製氷位置にあるときの駆動機構の様子を示す背面図である。このとき、従動軸50の摺動部52は第1カム45の凹スロープ451の外にあり、これにより検氷レバー31は引き上げられている。スイッチレバー72の摺動部721はまだ前半凸スロープ461に乗り上げておらず、検氷スイッチ71はONの状態にある。
【0052】
図11は、検氷動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。図12は、離氷動作の続行時/キャンセル時の各部の動作を示すタイミングチャートである。離氷準備動作が完了すると、駆動ユニット91は、カムギヤ40を図示CW方向へ回転させる。これにより従動軸50の摺動部52は凹スロープ451に入り込み、検氷レバー31が降下する。検氷レバー31が降下を始めると同時に、スイッチレバー72の摺動部721が前半凸スロープ461に乗り上げ、検氷スイッチ71がOFFに切り替わる。
【0053】
検氷レバー31の降下が氷に妨げられず、そのアーム部312が30°以上回転し、昇降部313が貯氷部92内の基準面を超えて降下すると、つまり従動軸50の摺動部52が凹スロープ451の深部に至ると、従動軸50のスイッチレバー操作部56がスイッチレバー72のスイッチ操作部722に接触し、これを検氷スイッチ71から遠ざける方向へ押動する。従動軸50の摺動部52が凹スロープ451の深部にさしかかる位置までカムギヤ40が回転すると、スイッチレバー72の摺動部721は第2カム46の中間凹スロープ463の位置に至る。ここで、検氷レバー31が十分に降下しており、スイッチレバー72のスイッチ操作部722の復帰(検氷スイッチ71側への復帰)が従動軸50のスイッチ操作部722により制限されている場合、検氷スイッチ71はOFFのまま維持され、カムギヤ40はCW方向への回転を継続する。
【0054】
ここで、堆積した氷によって検氷レバー31の降下が妨げられ、従動軸50が十分に回転しなかった場合、従動軸50のスイッチ操作部722はスイッチレバー72のスイッチ操作部722に届かず、その結果、スイッチレバー72の摺動部721が中間凹スロープ463を下り、検氷スイッチ71がONに切り替えられる。冷蔵庫の制御装置は、検氷スイッチ71が所定の時間内にONに切り替わったことを検知すると、離氷動作をキャンセルし、氷を排出しないまま製氷皿20を製氷位置に復帰させる。
【0055】
図13は、氷の排出動作時の駆動機構の様子を示す背面図である。検氷スイッチ71がOFFのまま中間凹スロープ463を通り過ぎると、従動軸50の摺動部52は凹スロープ451の対岸側に上り、これにより検氷レバー31が引き上げられる。このとき、スイッチレバー72の摺動部721は後半凸スロープ462に乗り上げているため、従動軸50のスイッチレバー操作部56がスイッチレバー72のスイッチ操作部722を押さえなくても、検氷スイッチ71はOFFのまま維持される。製氷皿20が図示CW方向にひねりきられ、氷が排出されると、スイッチレバー72の摺動部721は終端凹スロープ464を下り、検氷スイッチ71がONに切り替えられる。冷蔵庫はこの検氷スイッチ71の切り替わりによって氷の排出完了を検知する。
【0056】
図14は、氷排出後の駆動機構の様子を示す背面図である。氷の排出が終わると、製氷装置90は製氷皿20を製氷位置に復帰させる。ここで、カムギヤ40の筒部44には、円筒形状の降下止めスリーブ49が装着されている。降下止めスリーブ49は、スリット492が形成された胴部と、胴部から外側に突き出した凸部493とを有している。降下止めスリーブ49は筒部44に固定されておらず、摩擦抵抗により筒部44に連れ回って回転する。凸部493の旋回範囲はケース体11によって制限されており、凸部493はカムギヤ40の回転方向に沿ってその可動範囲を往復する。氷の排出後にカムギヤ40が図示CCW方向に回転すると、従動軸50の摺動部52が再び凹スロープ451にさしかかるが、このとき、従動軸50は、その回転止め部53が降下止めスリーブ49の凸部493に当接し、回転が阻止される。そのため復帰動作中に検氷レバー31が降下することはない。
【0057】
尚、本技術は以下のような構成をとることが可能である。
(1)
製氷皿と、
前記製氷皿に接続され、該製氷皿を回動させる出力部と、
前記出力部の駆動源であるモータと、備え、
交流を直流に変換する変換器を有する第1基板と、
直流で動作する部品が接続される第2基板と、を有し、
前記第2基板は、本装置の動作を制御する制御部を有し、
前記第1基板と前記第2基板とは基板間コネクタにより接続されている、
製氷装置。
(2)
前記基板間コネクタは、前記第1基板と前記第2基板とを互いに垂直に接続する、
(1)に記載の製氷装置。
(3)
前記第1基板と前記第2基板との接続にはリード線が用いられていない、
(1)または(2)に記載の製氷装置。
(4)
前記モータは直流モータであり、
前記第2基板は前記モータの駆動回路を有する、
(1)から(3)のいずれかに記載の製氷装置。
(5)
前記製氷皿から排出された氷が蓄えられる貯氷部の中に降下し、該貯氷部内の氷量を検査する検氷部材を備え、
前記第2基板には、前記検氷部材の降下量を検知するスイッチ又はセンサが接続されている、
(1)から(4)のいずれかに記載の製氷装置。
(6)
前記製氷皿に蓄えられた水の温度を検知する温度センサを備え、
前記温度センサは前記第2基板に接続されている、
(1)から(5)のいずれかに記載の製氷装置。
(7)
前記第1基板は、前記製氷皿に水を供給する給水バルブを開閉するリレーを有する、
(1)から(6)のいずれかに記載の製氷装置。
(8)
前記第1基板はバリスタを有する、
(1)から(7)のいずれかに記載の製氷装置。
(9)
前記第1基板および前記第2基板を収容するケース体を備え、
前記ケース体は、その内部に、
前記第1基板が収容される空間である第1空間と、
前記第2基板が収容される空間である第2空間と、を有し、
前記第1空間と前記第2空間とは隔壁によって仕切られており、
前記隔壁には、前記基板間コネクタを接続するための開口部が設けられている、
(1)から(8)のいずれかに記載の製氷装置。
(10)
前記ケース体は、
前記製氷皿を回動可能に支持する枠部と、
前記第1基板および前記第2基板を収容する箱部と、を有し、
前記箱部は、その内部に、無蓋のケース半体である内ケースを有し、
前記内ケースは、その開口を前記箱部の内面に向けて該内面に固定されており、
前記隔壁は前記内ケースである、
(9)に記載の製氷装置。
(11)
前記箱部は着脱可能な蓋部を有し、
前記第2基板には、本装置を始動させるスイッチであるメインスイッチが接続されており、
前記内ケース及び前記蓋部には、それぞれ、該蓋部の外から前記メインスイッチへのアクセスを可能にする穴が設けられている、
(10)に記載の製氷装置。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0059】
10:ケース体,11:枠部,12:箱部,12a:第1空間,12b:第2空間,121:蓋部,122:フック,123:穴部,129:ボタン穴(穴),13:内ケース(隔壁),132:フック,133:ねじ,134:爪,135:開口部,139:ボタン穴(穴),20:製氷皿,24:サーミスタ(温度センサ),31:検氷レバー(検氷部材),40:カムギヤ(出力部),61:第1基板,611:AC/DCコンバータ(変換器),612:バリスタ,613:メカニカルリレー(リレー),619:基板間コネクタ,65:第2基板,651:制御装置(制御部),652:モータドライバ(駆動回路),655:メインスイッチ,656:テストスイッチ,659:基板間コネクタ,71:検氷スイッチ,81:DCモータ(モータ),90:製氷装置,91:駆動ユニット,92:貯氷部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14