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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133190
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】自己位置推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20240920BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240920BHJP
【FI】
G01C21/28
G01S17/89
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111579
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2023072166の分割
【原出願日】2019-03-20
(31)【優先権主張番号】P 2018063570
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107331
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡延
(72)【発明者】
【氏名】加藤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】小山 和紀
(57)【要約】
【課題】周辺構造物が少ない、あるいは同じような構造物が連続しているようなエリアであっても、高精度で自己位置を推定することを可能とする。
【解決手段】自己位置推定装置は、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する。第1点群特徴データは第1点群の反射強度が反映されたデータある。また、自己位置推定装置は、3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する。第2点群特徴データは、第2点群の反射強度が反映されたデータである。そして、自己位置推定装置は、3次元仮想領域毎の第1点群特徴データと第2点群特徴データとに基づいて、移動体の自己位置を推定する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置であって、
所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得手段と、
前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成手段と、
前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定手段と、
を備え、
前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである自己位置推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点群の照合(マッチング)技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザスキャナなどの計測装置を用いて計測した周辺物体の形状データを、予め周辺物体の形状が記憶された地図情報とマッチングすることで、車両の自己位置を推定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、空間を所定の規則で分割したボクセル中における検出物が静止物か移動物かを判定し、静止物が存在するボクセルを対象として地図情報と計測データとのマッチングを行う自律移動システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO2013/076829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の手法では、道路周辺に存在する構造物が多く、かつ、変化に富んでいると、地図情報と計測データとが一致する場合と一致しない場合との違いが大きくなるためにマッチングしやすくなり、位置推定精度が高くなる。一方、周辺構造物が少なかったり、同じような構造物が連続していたりすると、地図情報と計測データとが一致する場合と一致しない場合との違いが小さくなるためマッチングしにくくなり、位置推定精度が低下しやすい。なお、マッチングしにくいとは、具体的には、マッチングに多くの時間がかかってしまったり、位置推定結果が不正確になってしまうことを意味する。
【0005】
本発明の解決しようとする課題としては、上記のものが一例として挙げられる。本発明は、周辺構造物が少ない、あるいは同じような構造物が連続しているようなエリアであっても、高精度で自己位置を推定することが可能な自己位置推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置であって、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得手段と、前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成手段と、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定手段と、を備え、前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである。
【0007】
請求項に記載の発明は、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置により実行される自己位置推定方法であって、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得工程と、前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成工程と、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定工程と、を備え、前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである。
【0008】
請求項に記載の発明は、コンピュータを備え、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置により実行されるプログラムであって、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得手段、前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成手段、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定手段、として前記コンピュータを機能させ、前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】運転支援システムの概略構成である。
図2】車載機及びサーバ装置のブロック構成を示す。
図3】ボクセルデータのデータ構造の例を示す。
図4】基本的なボクセルデータ及びスキャンデータの例を示す。
図5】ボクセルデータの2次元正規分布とスキャンデータの平均値の例を示す。
図6】第1実施例におけるボクセルデータ及びスキャンデータの例を示す。
図7】反射強度平均値を用いたマッチングの例を示す。
図8】自車位置推定処理のフローチャートである。
図9】第2実施例によるボクセルデータの2次元正規分布の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の1つの好適な実施形態では、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置は、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得手段と、前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成手段と、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定手段と、を備え、前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである。
【0011】
上記の自己位置推定装置は、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する。第1点群特徴データは第1点群の反射強度が反映されたデータある。また、自己位置推定装置は、3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する。第2点群特徴データは、第2点群の反射強度が反映されたデータである。そして、自己位置推定装置は、3次元仮想領域毎の第1点群特徴データと第2点群特徴データとに基づいて、移動体の自己位置を推定する。この自己位置推定装置は、点群の反射強度を利用して自己位置を推定するので、周辺構造物が少ない、あるいは同じような構造物が連続しているようなエリアであっても、高精度で自己位置を推定することができる。
【0012】
上記の自己位置推定装置の一態様では、前記第1点群特徴データは、前記第1点群の平均位置、前記1点群の分散、及び、前記第1点群の平均反射強度を含み、前記第2点群特徴データは、前記第2点群の平均位置、及び、前記第2点群の平均反射強度を含む。
【0013】
上記の自己位置推定装置の他の一態様では、前記推定手段は、前記第1点群の平均反射強度及び前記第2点群の平均反射強度を重み付け値として用いた評価式により、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとのマッチング結果を求める。
【0014】
上記の自己位置推定装置の他の一態様では、前記第1点群特徴データは、前記第1点群の各点の反射強度を用いて算出した前記第1点群の平均位置及び分散を含み、前記第2点群特徴データは、前記第2点群の各点の反射強度を用いて算出した前記第1点群の平均位置を含む。
【0015】
本発明の他の好適な実施形態では、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置により実行される自己位置推定方法は、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得工程と、前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成工程と、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定工程と、を備え、前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである。この自己位置推定方法は、点群の反射強度を利用して自己位置を推定するので、周辺構造物が少ない、あるいは同じような構造物が連続しているようなエリアであっても、高精度で自己位置を推定することができる。
【0016】
本発明の他の好適な実施形態では、コンピュータを備え、移動体の自己位置を推定する自己位置推定装置により実行されるプログラムは、所定サイズの3次元仮想領域単位で構成され、前記3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光に対応する第1点群の特徴を示す第1点群特徴データを含む地図データを取得する地図データ取得手段、前記3次元仮想領域毎に、当該3次元仮想領域内に存在する物体に対して照射した光の反射光を受光する計測部により計測して得た第2点群の特徴を示す第2点群特徴データを含む計測データを生成する計測データ生成手段、前記3次元仮想領域毎の前記第1点群特徴データと前記第2点群特徴データとに基づいて、前記自己位置を推定する推定手段、として前記コンピュータを機能させ、前記第1点群特徴データは前記第1点群の反射強度が反映されたデータであり、前記第2点群特徴データは前記第2点群の反射強度が反映されたデータである。このプログラムをコンピュータで実行することにより、上記の自己位置推定装置を実現することができる。このプログラムは、記憶媒体に記憶して取り扱うことができる。
【実施例0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。
【0018】
[運転支援システムの概要]
図1は、実施例に係る運転支援システムの概略構成を示す。運転支援システムは、車両と共に移動する車載機1と、地図情報の配信を行うサーバ装置2と、を備える。なお、図1では、サーバ装置2と通信を行う車載機1及び車両が1組のみ表示されているが、実際には、異なる位置に複数の車載機1及び車両の組が存在する。
【0019】
車載機1は、ライダ(Lidar:Light Detection and Ranging、または、Laser Illuminated Detection And Ranging)などの外界センサ、ジャイロセンサや車速センサなどの内界センサと電気的に接続し、これらの出力に基づき、車載機1が搭載される車両の位置(「自車位置」とも呼ぶ。)の推定を行う。そして、車載機1は、自車位置の推定結果に基づき、設定された目的地への経路に沿って走行するように、車両の自動運転制御などを行う。
【0020】
車載機1は、ボクセルデータを含む地図データベース(DB:DataBase)10を記憶する。ボクセルデータは、3次元空間を複数の領域に分割した場合の各領域(「ボクセル」とも呼ぶ。)ごとに静止構造物の位置情報等を記録したデータである。ボクセルデータは、各ボクセル内の静止構造物の計測された点群データを正規分布により表したデータを含み、後述するように、NDT(Normal Distributions Transform)を用いたスキャンマッチングに用いられる。車載機1は、ライダが計測した点群データと、当該点群データが属するボクセルに対応するボクセルデータとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチングを行う。そして、車載機1は、マッチング結果に基づいて自車位置の推定結果を修正しつつ、自動運転制御などを行う。なお、以下の説明では、NDTスキャンマッチングに用いられる地図を「ND地図」とも呼ぶ。また、ND地図のボクセルデータを作成するために使用された点群データを「地図作成用点群データ」と呼び、スキャンマッチングの際にライダ30が計測した点群データを「スキャンデータ」と呼んで両者を区別する。
【0021】
サーバ装置2は、複数の車両の車載機1とデータ通信を行う。サーバ装置2は、複数の車両の車載機1に配信するための地図情報を記憶した配信地図DB20を記憶し、その地図情報には各ボクセルに対応するボクセルデータが含まれている。
【0022】
[車載機の構成]
図2(A)は、車載機1の機能的構成を表すブロック図を示す。図2(A)に示すように、車載機1は、主に、通信部11と、記憶部12と、センサ部13と、入力部14と、制御部15と、出力部16とを有する。通信部11、記憶部12、センサ部13、入力部14、制御部15及び出力部16は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0023】
通信部11は、制御部15の制御に基づき、サーバ装置2から配信される地図情報を受信する。また、通信部11は、サーバ装置2から要求があった場合に、センサ部13による計測データをサーバ装置2へ送信する。また、通信部11は、車両を制御するための信号をサーバ装置2から受信したり、車両の状態に関する信号をサーバ装置2へ送信したりする。
【0024】
記憶部12は、制御部15が実行するプログラムや、制御部15が所定の処理を実行する為に必要な情報を記憶する。また、記憶部12は、ND地図のボクセルデータを記憶する地図DB10を有する。記憶部12に記憶されるND地図のボクセルデータは、サーバ装置2の配信地図DBからダウンロードされたものである。
【0025】
センサ部13は、ライダ30と、カメラ31と、GPS受信機32と、ジャイロセンサ33と、速度センサ34とを含む。ライダ30は、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲に対してパルスレーザを出射することで、外界に存在する物体までの距離を離散的に測定し、当該物体の位置を示す3次元の点群データであるスキャンデータを生成する。この場合、ライダ30は、照射方向を変えながらレーザ光を照射する照射部と、照射したレーザ光の反射光(散乱光)を受光する受光部と、受光部が出力する受光信号に基づくスキャンデータを出力する出力部とを有する。スキャンデータは、受光部が受光したレーザ光に対応する照射方向と、上述の受光信号に基づき特定される当該レーザ光のその照射方向での物体までの距離とに基づき生成される。
【0026】
入力部14は、ユーザが操作するためのボタン、タッチパネル、リモートコントローラ、音声入力装置等であり、経路探索のための目的地を指定する入力、自動運転のオン及びオフを指定する入力などを受け付け、生成した入力信号を制御部15へ供給する。出力部16は、例えば、制御部15の制御に基づき出力を行うディスプレイやスピーカ等である。
【0027】
制御部15は、プログラムを実行するCPUなどを含み、車載機1の全体を制御する。例えば、制御部15は、ライダ30から出力されるスキャンデータと、当該スキャンデータデータが属するボクセルに対応するND地図のボクセルデータとに基づき、NDTに基づくスキャンマッチングを行うことで自車位置の推定を行う。また、制御部15は、必要に応じて、サーバ装置2からND地図のボクセルデータをダウンロードする。さらに、制御部15は、サーバ装置2から要求があった場合には、センサ部30による計測データ、例えばライダ30によるスキャンデータなどをサーバ装置2へ送信する。
【0028】
上記の構成において、車載機1は本発明の自己位置推定装置の一例であり、制御部15は本発明の地図データ取得手段及び計測データ生成手段の一例であり、ライダ30は本発明の計測部の一例である。
【0029】
[サーバ装置の構成]
図2(B)は、サーバ装置2の概略構成を示す。図2(B)に示すように、サーバ装置2は、通信部21と、記憶部22と、制御部25とを有する。通信部21、記憶部22、及び制御部25は、バスラインを介して相互に接続されている。
【0030】
通信部21は、制御部25の制御に基づき、車載機1と各種データの通信を行う。記憶部22は、サーバ装置2の動作を制御するためのプログラムを保存したり、サーバ装置2の動作に必要な情報を保持したりする。また、記憶部22は、ND地図のボクセルデータを含む配信地図DB20を記憶している。
【0031】
制御部25は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備え、サーバ装置2内の各構成要素に対して種々の制御を行う。例えば、制御部25は、車載機1からの要求に応じて、配信地図20に含まれるボクセルデータを車載機1へ送信する。
【0032】
[基本スキャンマッチング]
次に、本実施例におけるNDTに基づくスキャンマッチングについて説明する。
(1)ボクセルデータ
まず、NDTに基づくスキャンマッチングに用いるボクセルデータについて説明する。図3(A)は、ND地図のボクセルデータのデータ構造の例を示す。
【0033】
ボクセルデータは、地図作成用点群データから生成され、ボクセル内の点群を正規分布で表現する場合のパラメータの情報を含む。本実施例では、ボクセルデータは、図3(A)に示すように、「ボクセルID」と、「ボクセル座標」と、「平均ベクトル」と、「共分散行列」と、「点群数情報」とを含む。なお、ボクセルは本発明の3次元仮想領域の一例であり、ボクセルデータは本発明の第1点群特徴データの一例である。
【0034】
「ボクセル座標」は、各ボクセルの中心位置などの基準となる位置の絶対的な3次元座標を示す。なお、各ボクセルは、空間を格子状に分割した立方体であり、予め形状及び大きさが定められているため、ボクセル座標により各ボクセルの空間を特定することが可能である。ボクセル座標は、ボクセルIDとして用いられてもよい。
【0035】
「平均ベクトル」及び「共分散行列」は、対象のボクセル内での点群を正規分布で表現する場合のパラメータに相当する平均ベクトル及び共分散行列を示す。任意のボクセル内の任意の点「i」の座標をX(i)とし、ボクセル内での点群数を「M」とすると、ボクセル内データX(i)における平均ベクトル「μ」及び共分散行列「V」は以下の式(1)~(3)により表される。
【数1】
【0036】
「点群数情報」は、対応する平均ベクトル及び共分散行列の算出に用いた点群の数を示す情報である。点群数情報は、具体的な点群の数を示す情報であってもよく、点群数のレベル(例えば、大、中、小など)を示す情報であってもよい。
【0037】
図4(A)は、ボクセルデータの一例を示す。ボクセルデータは、ボクセルIDにより規定されるボクセル毎に、ボクセル座標、平均ベクトル、共分散行列を含む。ボクセル座標は、x方向、y方向、z方向における座標M、M、Mを含む。平均ベクトルは、x方向、y方向、z方向における平均ベクトルμ、μ、μを含む。共分散行列は、式(3)で示す行列を構成する各要素を含む。
【0038】
(2)スキャンデータ
図4(B)は、ライダ30によるスキャンデータの一例を示す。図4(B)は1つのボクセルに対応するスキャンデータを示している。スキャンデータは、ライダ30により計測された点群データであり、各点群データに割り当てられたスキャンデータ番号毎に、平均ベクトルLを有する。なお、スキャンデータは、本発明の第2点群特徴データの一例である。
【0039】
いま、ボクセル内での点群数を「N」とすると、各ボクセル内のスキャンデータX(j)の平均値Lは以下の式で与えられる。
【数2】
【0040】
(3)スキャンマッチング
次に、ND地図のボクセルデータを用いたNDTによるスキャンマッチングについて説明する。いま、推定パラメータとして、x方向移動ベクトルt、y方向移動ベクトルt、z方向移動ベクトルt、及び、方位方向(xy平面)の回転角(即ちヨー角)tΨを用いる。なお、ピッチ角及びロール角は道路勾配や振動により生じるもので、無視できる程度に小さいものとする。上記の推定パラメータを用いて、ライダ30により計測されたスキャンデータの任意の点の座標を座標変換すると、座標変換後の座標は以下の式(5)により得られる。
【数3】
【0041】
車載機1は、座標変換後の点群の座標と、ボクセルデータに含まれる平均ベクトルμ及び共分散行列Vとを用い、以下の式(6)により示されるインデックス番号kのボクセルの評価関数「E(k)」、及び、式(7)により示されるマッチングの対象となる全てのボクセルを対象とした総合的な評価関数「E」(以下、「総合評価関数」とも呼ぶ。)を算出する。
【数4】
【0042】
なお、ライダ30により得られる点群データの座標と、ボクセルデータの平均ベクトルの座標は、事前に設定した基準位置を原点とした座標系に統一する必要がある。よってマッチングに先立って、必要に応じて両者の座標変換を行う。
【0043】
そして、車載機1は、総合評価関数Eが最大となるときの推定パラメータ、即ち、移動ベクトルt、t、t及び回転角度tΨを用いて推定自車位置を修正する。
【0044】
図5は、ND地図のボクセルデータと、ライダ30により得られたスキャンデータとの関係を概念的に示す。なお、説明の便宜上、図5は2次元の表示としている。図5(A)は、4つのボクセルB1~B4のボクセルデータを示す。各ボクセルにおいて、丸印Dmは地図作成用の計測整備車両で走行したときにライダにより計測した地図作成用点群データである。これらの地図作成用点群データに基づき、式(1)と式(2)により作成した2次元正規分布がグラデーションにより示されている。図5(A)に示す正規分布の平均、分散は、ボクセルデータにおける平均ベクトル、共分散行列にそれぞれ対応する。
【0045】
図5(B)は、ライダにより計測したスキャンデータの点群Dsを図5(A)に重ねて表示したものである。また、図5(C)は、図5(B)に表示したスキャンデータの点群Dsから算出したスキャンデータの平均値Lを重ねて表示したものである。
【0046】
[反射強度を用いたスキャンマッチング]
次に、本実施例の特徴である反射強度を用いたスキャンマッチングについて説明する。上記した基本のスキャンマッチングは、周辺構造物が少なかったり、同じような構造物が連続していたりすると、地図情報と計測データとが一致する場合と一致しない場合との違いが小さくなるためマッチングしにくくなる。そこで、本実施例では、ライダにより計測した点群データの反射強度を利用してスキャンマッチングを行う。
【0047】
(第1実施例)
第1実施例は、ND地図のボクセルデータに反射強度の平均値を含め、その平均値とライダ30により計測したスキャンデータの反射強度の平均値とを用いてスキャンマッチングを行うものである。図3(B)は第1実施例に係るND地図のボクセルデータのデータ構造の例を示し、図6(A)は第1実施例に係るボクセルデータの例を示す。また、図6(B)は、第1実施例に係るスキャンデータの例を示す。図4(A)、4(B)と比較するとわかるように、ボクセルデータには、各ボクセル内に含まれる点群の反射強度の平均値Iが含まれている。また、ライダ30により計測されたスキャンデータ側においても、ボクセル内にあるスキャンデータの反射強度の平均値Iが算出される。
【0048】
車載機1は、スキャンマッチングの評価関数に、ボクセルデータの反射強度平均値Iとスキャンデータの反射強度平均値Iを重み付け値として用いる。具体的に、車載機1は、あるボクセルkの評価関数E(k)を式(8)とし、全てのボクセルの総合評価関数Eを式(9)により求める。
【数5】
【0049】
式(8)の評価関数には、ボクセルデータの反射強度平均値Iとスキャンデータの反射強度平均値Iの積「I・I」が重み付け値として含まれている。この評価関数を用いることにより、反射強度の高いオブジェクト(例えば道路標識や白線など)を含むボクセルの評価関数値と、反射強度の高いオブジェクトを含まないボクセルの評価関数値とに差異が生まれる。これについて、簡単な例を挙げて説明する。
【0050】
図7は、式(8)において用いられている「I・I」の値の算出例を示す図である。いま、車両が矢印の方向に走行し、車両の左側方に反射強度が比較的一様な壁などのオブジェクトがあるものとする。この壁の部分がボクセルBM1~BM6に対応し、それらのうちボクセルBM4の反射強度平均値Iが「1.0」であり、他のボクセルBM1~BM3、BM5~BM6の反射強度平均値Iは全て「0.1」であると仮定する。即ち、ボクセルBM4のみが他のボクセルBM1~BM3、BM5~BM6よりも高い反射強度を有している。
【0051】
さて、車両がこの壁の前を通過し、横方向からライダで壁をスキャンしてスキャンデータを生成し、図示のように複数のボクセル単位のスキャンデータBLa~BLeを得たものとする。得られたスキャンデータにおいては、ボクセルBLdの反射強度平均値Iが「1.0」であり、それ以外のボクセルBLa~BLc、BLeの反射強度Iは「0.1」であるとする。なお、説明の簡単のため、ボクセルデータとスキャンデータとは、車両の進行方向の移動のみによりマッチングできるものとする。
【0052】
この場合、図7からわかるように、スキャンデータのボクセルBLa~BLeが、それぞれボクセルデータのボクセルBM1~BM5に対応すると判断するのが正しい。これを、「I・I」の値を使用する式(8)の評価関数を用いて判断するとどうなるかを検討する。
【0053】
まず、仮にスキャンデータのボクセルBLa~BLeが、ボクセルデータのボクセルBM1~BM5にそれぞれ対応する(以下、「第1の対応関係」と呼ぶ。)ものとすると、そのときの「I・I」の値は、
・I=0.1×0.1+0.1×0.1+0.1×0.1
+1.0×1.0+0.1×0.1=1.04
となる。
【0054】
一方、仮にスキャンデータのボクセルBLa~BLeが、ボクセルデータのボクセルBM2~BM6にそれぞれ対応する(以下、「第2の対応関係」と呼ぶ。)ものとすると、そのときの「I・I」の値は、
・I=0.1×0.1+0.1×0.1+1.0×0.1
+0.1×1.0+0.1×0.1=0.23
となる。式(8)の評価関数値が大きくなるのは、「I・I」の値が大きい方、即ち、第1の対応関係の方であり、これは図7に示すように正しい対応関係であることがわかる。
【0055】
因みに、図7において、壁のボクセルBM4の部分の反射強度が周囲と同様であり、ボクセルデータのボクセルBM4の反射強度平均値Iが周囲と同様に「0.1」であった場合、ライダにより得られるスキャンデータのボクセルBLdの反射強度平均値Iも「0.1」となる。この場合、第1の対応関係と第2の対応関係のいずれにおいても、「I・I」の値は、
・I=0.1×0.1+0.1×0.1+0.1×0.1
+0.1×0.1+0.1×0.1=0.05
となって一致してしまい、第1の対応関係と第2の対応関係のいずれが正しいかを判別することは難しい。
【0056】
このように、第1実施例では、周辺構造物が少なかったり、同じような構造物が連続していたりしても、スキャンマッチングにおいてボクセルデータとスキャンデータの反射強度平均値を利用し、それらの積を重み付け値として評価関数に含めることにより、道路標識や白線などの反射強度の高いオブジェクトを含むボクセルのマッチング精度を向上させることができる。その結果、車両の自己位置推定精度を向上させることが可能となる。
【0057】
図8は、第1実施例による自車位置推定処理のフローチャートである。この処理は、車載機1の制御部15が予め用意されたプログラムを実行することにより実施される。なお、車載機1はこの処理を繰り返し実行する。
【0058】
まず、車載機1は、1時刻前の推定自車位置があるか否かを判定する(ステップS10)。1時刻前の推定自車位置がある場合(ステップS10:Yes)、車載機1はそれを自車位置の初期値に設定する(ステップS11)。一方、1時刻前の推定自車位置が無い場合(ステップS10:No)、車載機1は、GPS受信機32等の出力に基づき、自車位置の初期値を設定する(ステップS12)。次に、車載機1は、速度センサ34から車体速度を取得すると共に、ジャイロセンサ33からヨー方向の角速度を取得する(ステップS13)。そして、車載機1は、ステップS13の取得結果に基づき、車両の移動距離と車両の方位変化を計算する(ステップS14)。
【0059】
次に、車載機1は、自車位置の初期値に、ステップS14で計算した移動距離と方位変化を加算し、予測自車位置を算出する(ステップS15)。そして、車載機1は、ステップS15で算出した予測自車位置に基づき、地図DB10を参照して、自車位置周辺に存在するボクセルのボクセルデータを取得する(ステップS16)。このボクセルデータには、図6(A)に示すように反射強度平均値Iが含まれている。さらに、車載機1は、ステップS15で算出した予測自車位置に基づき、ライダ30から得られたスキャンデータをボクセルごとに分割する(ステップS17)。この際、図6(B)に示すように、ボクセル内のスキャンデータの反射強度平均値Iが算出される。
【0060】
次に、車載機1は、評価関数を用いてNDTスキャンマッチングの計算を行う。具体的には、車載機1は、式(8)及び式(9)に基づき、評価関数E及び総合評価関数Eを算出し、総合評価関数Eが最大となる推定パラメータ、即ち、移動ベクトルt、t、tz及び回転角度tΨを算出する(ステップS18)。そして、車載機1は、得られた移動ベクトルt、t、t及び回転角度tΨに基づいて、推定自車位置を修正する(ステップS19)。こうして、自車位置推定処理は終了する。
【0061】
(第2実施例)
第2実施例では、第1実施例と同様にボクセルデータとスキャンデータの反射強度を利用するが、ボクセル内の点群の各点の反射強度を用いて平均ベクトルや共分散行列などのパラメータを算出する点で第1実施例と異なる。
【0062】
具体的には、まず、地図作成用点群データからND地図のボクセルデータを生成する際に、各点の反射強度I(i)を用いて、以下の式(10)により平均ベクトルを算出し、式(11)により共分散行列を算出する。
【数6】
なお、ND地図のボクセルデータは、図3(A)に示すデータ構造を有し、その内容は図4(A)に示すものとなる。
【0063】
また、ライダによるスキャンデータについても、各ボクセル内の各点の反射強度I(j)を用いて、以下の式(12)により平均値ベクトルLを算出する。
【数7】
そして、車載機1は、式(6)の評価関数E(k)及び式(7)の総合評価関数Eを用いてスキャンマッチングを行う。
【0064】
式(10)~(12)により得たND地図のボクセルデータ及びスキャンデータは、3次元的な位置情報に対して反射強度の特徴を加えた表現となる。例えば、ほぼ平らな道路面の場合は、点群の位置としてはxy平面上で一様であるため、x方向とy方向の平均や分散は一定である。しかし、白線や横断歩道など、反射強度の高い部分があると、それによりx方向とy方向の平均ベクトルや共分散行列に特徴が生まれる。
【0065】
図9は、あるND地図のボクセルデータの2次元正規分布を示す。図9(A)は、反射強度を利用せずに算出した2次元正規分布51を示す。複数の点Dmの反射強度は考慮されないため、各点Dmの位置に基づいて正規分布51が得られる。これに対し、図9(B)は、第2実施例により各点Dmの反射強度を用いて算出した2次元正規分布52を示す。この例では、複数の点Dmに反射強度の高い点Dmxが含まれていることにより、正規分布52は正規分布51よりも点Dmxの方向に偏った分布となり、反射強度の高い部分の特徴を反映したものとなる。
【0066】
このように、第2実施例では、ND地図のボクセルデータにおいて各点の反射強度を用いて平均ベクトルと共分散行列を算出するとともに、ライダ30によるスキャンデータについても各点の反射強度を用いて平均値ベクトルを算出する。よって、道路周辺が形状的に変化の乏しい環境であっても、反射強度に変化があれば、その反射強度により平均ベクトル、共分散行列などのパラメータに特徴を持たせることができ、スキャンマッチング時の一致と不一致の違いが大きくなる。従って、スキャンマッチングの精度が向上し、その結果、自車位置推定精度を向上させることができる。
【0067】
第2実施例における自車位置推定処理は、基本的に図8に示す第1実施例の場合と同様である。但し、ステップS16において地図DB10から取得するボクセルデータは、図4(A)に示すデータ構造及び内容を有するが、その平均ベクトルμ及び共分散行列Vはそれぞれ前述の式(10)、(11)により算出されたものとなっている。また、ステップS17においては、車載機1は、各ボクセル内の各点の反射強度I(j)を用いて平均値ベクトルLを算出する。そして、ステップS18では、式(6)、(7)の評価関数を用いてスキャンマッチングが行われる。
【0068】
(変形例)
上記の第1実施例と第2実施例を組み合わせて実施してもよい。その場合、ND地図のボクセルデータは、図6(A)に示すようにボクセル内の各点の反射強度の平均値である反射強度平均値Iを含む。また、図6(B)に示すように、ライダによるスキャンデータについても、各点の反射強度に基づいて反射強度平均値Iを算出する。これに加えて、ボクセルデータに含まれる平均ベクトルμ及び共分散行列Vは、それぞれ前述の式(10)、(11)で示すように各点の反射強度I(i)を用いて算出されたものとなっている。また、ライダによるスキャンデータの平均ベクトルLも、前述の式(12)に示すようにボクセル内の各点の反射強度I(j)を用いて算出される。そして、これらのボクセルデータとスキャンデータを用いて、式(8)、(9)により総合評価関数Eが最大となるようにスキャンマッチングを行う。
【符号の説明】
【0069】
1 車載機
2 サーバ装置
10 地図DB
20 配信地図DB
11、21 通信部
12、22 記憶部
15、25 制御部
13 センサ部
14 入力部
16 出力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9