(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133195
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】アイオノマー、樹脂シート及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
C08F 8/44 20060101AFI20240920BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240920BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08F8/44
C08J5/18 CES
C03C27/12 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111651
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2021522323の分割
【原出願日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2019102380
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】中原 淳裕
(72)【発明者】
【氏名】新村 卓郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 智香
(72)【発明者】
【氏名】淺沼 芳聡
(72)【発明者】
【氏名】塚原 隆博
(57)【要約】
【課題】透明性に優れ、高温で高い弾性率を維持し、着色が少なく、成型加工時の臭気が低減されたアイオノマーを提供すること。
【解決手段】樹脂を構成する全単量体単位を基準にして0.05~1.0mol%の(メタ)アクリル酸エステル単位、4.5~9.0mol%のカルボン酸単位、0.65~3.0mol%のカルボン酸中和物単位、及びエチレン単位を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステル単位、カルボン酸単位およびカルボン酸中和物単位の合計含有量が7.0~10mol%である、アイオノマー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を構成する全単量体単位を基準にして0.05~1.0mol%の(メタ)アクリル酸エステル単位、4.5~9.0mol%のカルボン酸単位、0.65~3.0mol%のカルボン酸中和物単位、及びエチレン単位を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステル単位、カルボン酸単位およびカルボン酸中和物単位の合計含有量が7.0~10mol%である、アイオノマー。
【請求項2】
測定温度190℃及び荷重2.16Kgfの条件で測定された、0.7g/10min以上のMFRを有する請求項1に記載のアイオノマー。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル単位が(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸イソブチルから成る群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載のアイオノマー。
【請求項4】
6.5~10mol%の(メタ)アクリル酸エステル単位を含み、
測定温度190℃及び荷重2.16Kgfの条件で測定された、90~400g/10minのMFRを有する
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体を原料として使用する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のアイオノマー。
【請求項5】
測定温度50℃、周波数1Hzの条件で、厚さ0.8mmの樹脂シート状試験片を使用して測定された、30MPa以上の貯蔵弾性率、
厚さ0.8mmの樹脂シート状試験片を使用して測定された、2.0以下のイエロインデックス(YI)、及び
厚さ0.8mmの樹脂シート状試験片を2つのガラス板の間に配置し、140℃まで加熱したのち、0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した合わせガラスを使用して測定された、5.0%以下のヘイズ、
を有する請求項1~4のいずれか一項に記載のアイオノマー。
【請求項6】
93質量%以上の量で請求項1~5のいずれか一項に記載のアイオノマーを含有する、樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のアイオノマー、又は請求項6に記載の樹脂組成物から実質的になる樹脂シート。
【請求項8】
2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された中間膜として請求項7に記載の樹脂シートとを有する、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイオノマーに関し、詳しくは、優れた物理的特性及び光学的特性を有するアイオノマー、そのアイオノマーを用いた樹脂シート及びその樹脂シートを中間膜として用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の中和物であるアイオノマーは、透明性、ガラスとの接着性に優れるため、合わせガラスの中間膜に使用されている(例えば、特許文献1)。近年、合わせガラスに対する要求性能が高くなり、アイオノマーに対しても、合わせガラスの製作条件によらず高い透明性を保持すること、高温においても高い弾性率を維持し、合わせガラスの強度を低下させないこと、さらには、より着色が少なく外観が優れること等が求められるようになってきた。
【0003】
例えば、特許文献2には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体に、第3成分として、α,β―不飽和カルボン酸誘導体を5~15質量%導入したアイオノマーが記載されている。このアイオノマーは向上した光学特性を示すものである。
【0004】
しかしながら、特許文献2のアイオノマーは、合わせガラスの中間膜用アイオノマーに要求される、透明性、高弾性率及び低着色がバランス良く優れている特性が、未だ不十分である。また、特許文献2のアイオノマーでは、成形加工時に第3成分由来の強い臭気が発生し、作業者が被る負荷が高いことが新たな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6432522号明細書
【特許文献2】特表2017-519083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、透明性に優れ、高温で高い弾性率を維持し、着色が少なく、成形加工時の臭気が低減されたアイオノマーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、樹脂を構成する全単量体単位を基準にして0.05~1.0mol%の(メタ)アクリル酸エステル単位、4.5~9.0mol%のカルボン酸単位、0.65~3.0mol%のカルボン酸中和物単位、及びエチレン単位を含み、かつ(メタ)アクリル酸エステル単位、カルボン酸単位およびカルボン酸中和物単位の合計含有量が7.0~10mol%である、アイオノマーを提供する。
【0008】
ある一形態においては、上記アイオノマーは、測定温度190℃及び荷重2.16Kgfの条件で測定された、0.7g/10min以上のMFRを有する。
【0009】
ある一形態においては、前記(メタ)アクリル酸エステル単位が(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル及び(メタ)アクリル酸イソブチルから成る群から選択される少なくとも一種である。
【0010】
ある一形態においては、上記アイオノマーは、6.5~10mol%の(メタ)アクリル酸エステル単位を含み、
測定温度190℃及び荷重2.16Kgfの条件で測定された、90~400g/10minのMFRを有する
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体を原料として使用するものである。
【0011】
ある一形態においては、上記アイオノマーは、
測定温度50℃、周波数1Hzの条件で、厚さ0.8mmの樹脂シート状試験片を使用して測定された、30MPa以上の貯蔵弾性率、
厚さ0.8mmの樹脂シート状試験片を使用して測定された、2.0以下のイエロインデックス(YI)、及び
厚さ0.8mmの樹脂シート状試験片を2つのガラス板の間に配置し、140℃まで加熱したのち、0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した合わせガラスを使用して測定された、5.0%以下のヘイズ、
を有するものである。
【0012】
また、本発明は、93質量%以上の量で上記いずれかのアイオノマーを含有する、樹脂組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、上記いずれかのアイオノマー、又は上記樹脂組成物から実質的になる樹脂シートを提供する。
【0014】
また、本発明は、2つのガラス板と、該2つのガラス板の間に配置された中間膜として上記樹脂シートとを有する、合わせガラスを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、透明性、高弾性率及び低着色がバランス良く優れており、加えて成形加工時の臭気が低減されたアイオノマーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<構成>
本発明のアイオノマーは、エチレン単位、(メタ)アクリル酸エステル単位(A)、カルボン酸単位(B)及びカルボン酸中和物単位(C)を含む樹脂である。ある一形態においては、本発明のアイオノマーは構成単位(A)、(B)及び(C)およびエチレン単位から成る樹脂である。
【0017】
(メタ)アクリル酸エステル単位(A)を構成する単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらのうち、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルがより好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルがさらに好ましく、(メタ)アクリル酸メチルが最も好ましい。メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルでは、メタクリル酸エステルの方が、耐熱分解、低着色性に優れるため好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
(メタ)アクリル酸エステル単位(A)のアイオノマー中の含有量としては、0.05mol%以上、1.0mol%以下である。(A)の含有量がこの範囲にあることで、透明性が高くなり、成形加工時の臭気が低減される。上記含有量の好ましい下限としては、0.07mol%以上が好ましく、0.08mol%以上がより好ましく、0.09mol%以上がさらに好ましい。上記含有量の好ましい上限としては、0.9mol%以下が好ましく、0.8mol%以下がより好ましく、0.6mol%以下がさらに好ましい。
【0019】
カルボン酸単位(B)を構成する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル等が挙げられる。これらの中で、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチルがより好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がさらに好ましく、メタクリル酸が最も好ましい。これらカルボン酸単位は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
カルボン酸単位(B)のアイオノマー中の含有量としては、4.5mol%以上、9.0mol%以下である。(B)の含有量がこの範囲にあることで、ガラスへの接着性と透明性の両立が可能である。上記含有量が低すぎる場合は、透明性が低下し、ガラスとの接着性も低下してしまう。上記含有量が高すぎる場合は、成形加工性が低下し、着色する傾向にある。上記含有量の好ましい下限としては、5.0mol%以上が好ましく、5.5mol%以上がより好ましく、5.8mol%以上がさらに好ましい。上記含有量の好ましい上限としては、8.5mol%以下が好ましく、8.0mol%以下がより好ましく、7.5mol%以下がさらに好ましい。
【0021】
カルボン酸中和物単位(C)としては、カルボン酸単位(B)の中和物単位が好ましい。カルボン酸中和物は、カルボン酸の水素イオンを金属イオンで置き換えたものである。金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムのような1価金属、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、チタンなどの多価金属のイオンを例示することができる。このような金属イオンは1種類である必要はなく、2種以上併用することができる。例えば、1価金属イオンの1種以上と2価金属イオンの1種以上の組み合わせであってもよい。
【0022】
カルボン酸中和物単位(C)のアイオノマー中の含有量としては、0.65mol%以上、3.0mol%以下である。(C)の含有量がこの範囲にあることで、透明性および成形加工性を両立することができる。上記含有量が多すぎる場合は、成形加工時の溶融粘度が高くなり、また着色する傾向にある。上記含有量が低すぎる場合は、透明性が低く、また50℃での弾性率が低くなってしまう。上記含有量の好ましい下限としては、1.0mol%以上が好ましく、1.5mol%以上がより好ましく、1.7mol%以上がさらに好ましい。上記含有量の好ましい上限としては、2.7mol%以下が好ましく、2.6mol%以下がより好ましく、2.5mol%以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明のアイオノマーは、(メタ)アクリル酸エステル単位(A)、カルボン酸単位(B)及びカルボン酸中和物単位(C)の合計量が7.0mol%以上、10mol%以下である。(A)、(B)及び(C)の合計量がこの範囲にあることで、アイオノマーの高い透明性と、50℃での高い弾性率が両立できる。上記含有量の下限は、7.5mol%以上がより好ましく、8.0mol%以上がさらに好ましく、8.5mol%以上が最も好ましい。上記含有量の上限は、9.9mol%以下がより好ましく、9.5mol%以下がさらに好ましい。
【0024】
<製造方法>
本発明のアイオノマーの製造方法としては、エチレンおよび(メタ)アクリル酸エステルを高温・高圧にて共重合してエチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)を得た後、その(メタ)アクリル酸エステル単位の一部を(メタ)アクリル酸単位ならびに(メタ)アクリル酸中和物単位に変換する方法が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単位の一部を(メタ)アクリル酸単位ならびに(メタ)アクリル酸中和物単位に変換する方法としては、例えば水酸化ナトリウムを用いてけん化反応を行い、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル―(メタ)アクリル酸中和物共重合体を合成した後、(メタ)アクリル酸中和物単位の一部を酸により(メタ)アクリル酸に変換する方法が挙げられる。
【0025】
上記製造方法の原料である(メタ)アクリル酸エステルとしては、前述の(メタ)アクリル酸エステルを用いることができる。中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルがより好ましい。メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルとを比較すると、得られるアイオノマーの耐熱分解、低着色性に優れるため、メタクリル酸エステルの方が好ましい。これら(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の具体例としては、エチレン―アクリル酸メチル共重合体、エチレン―メタクリル酸メチル共重合体、エチレン―アクリル酸エチル共重合体、エチレン―メタクリル酸エチル共重合体、エチレン―アクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン―メタクリル酸n-プロピル共重合体、エチレン―アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン―メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン―アクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン―メタクリル酸n-ブチル共重合体、エチレン―アクリル酸sec-ブチル共重合体、エチレン―メタクリル酸sec-ブチル共重合体等を例示することができる。これらの共重合体は、市販のものを用いてもよいし、US2013/0274424や特開2006-233059や特開2007-84743を参考に合成してもよい。
【0027】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量としては、6.5mol%以上、10mol%以下が好ましく、7.0mol%以上、9.5mol%以下がより好ましく、7.5mol%以上、9.2mol%以下が最も好ましい。このような範囲にすることで、得られるアイオノマーの(メタ)アクリル酸エステル単位、カルボン酸単位、カルボン酸中和物単位の含量を適切な範囲にすることができる。
【0028】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の190℃、2.16Kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)としては、90g/10min以上、400g/10min以下が好ましく、100g/10min以上、350g/10min以下がより好ましく、150g/10min以上、330g/10min以下が最も好ましい。エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)のMFRをこのような範囲にすることで、得られるアイオノマーの成形加工性と強度を両立することができる。エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)のMFRは、重合度と(メタ)アクリル酸エステル単位の割合で調整することができる。
【0029】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)をカラム温度140℃、1,2,4-トリクロロベンゼン溶媒、カラム(TSKgel GMHHR-H(20)HTの3本直列)で測定したポリスチレン換算の分子量は、得られるアイオノマーの成形加工性と強度を両立する観点から、重量平均分子量の下限が1.5万g/mol以上が好ましく、2.0万g/mol以上がより好ましく、2.5万g/mol以上がさらに好ましく、3.0万g/mol以上が特に好ましい。重量平均分子量の上限は20万g/mol以下が好ましく、10万g/mol以下がより好ましく、5万g/mol以下がさらに好ましい。数平均分子量の下限が0.3万g/mol以上が好ましく、0.5万g/mol以上がより好ましく、0.8万g/mol以上がさらに好ましく、1.0万g/mol以上がよりさらに好ましく、1.5万g/mol以上が特に好ましい。数平均分子量の上限は10万g/mol以下が好ましく、5万g/mol以下がより好ましく、3万g/mol以下がさらに好ましい。
【0030】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の炭素1000個当たりの分岐度は、特に制限はないが、5~30が好ましく、6~20がより好ましい。炭素1000個当たりの分岐度の分析は、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体を重水素化オルトジクロロベンゼンに溶解させ、13C-NMRのインバースゲートデカップリング法を用いて行うことができる。
【0031】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部を(メタ)アクリル酸単位ならびに(メタ)アクリル酸中和物単位に変換する方法としては、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部をアルカリにてけん化反応を行い、(メタ)アクリル酸中和物単位に変換した後、(メタ)アクリル酸中和物単位の一部を酸にて脱金属して(メタ)アクリル酸単位に変換することで、エチレン単位・(メタ)アクリル酸エステル単位・カルボン酸単位・カルボン酸中和物単位を有するアイオノマーを製造することができる。
【0032】
また別の方法としては、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部をアルカリにてけん化反応を行い、(メタ)アクリル酸中和物単位に変換した後、(メタ)アクリル酸中和物単位のすべてを酸にて脱金属し(メタ)アクリル酸単位に変換した後、さらにその一部をアルカリ金属またはアルカリ土類金属にて中和することでエチレン単位・(メタ)アクリル酸エステル単位・カルボン酸単位・カルボン酸中和物単位を有するアイオノマーを製造することができる。
【0033】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部をアルカリにてけん化反応を行う際の溶媒としては、テトラヒドロフランやジオキサンなどのエーテル溶媒、クロロホルム、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化物、メチルブチルケトン等の炭素数が6以上のケトン、n-ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素化合物、炭化水素化合物とメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール等のアルコールの混合溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族化合物、芳香族化合物とアルコールの混合溶媒などが挙げられる。本発明に好適なエチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)は、特定の割合で(メタ)アクリル酸エステル単位を含むことが好ましいため、本発明のアイオノマーを製造するためには、適切な溶媒や反応条件の選択が重要である。
【0034】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部をアルカリにてけん化反応を行う際の温度としては、反応性およびエチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の溶解性の観点から50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、80℃以上が最も好ましい。上限は特に制限されないが、エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)が分解しない温度が好ましく、例えば300℃以下である。
【0035】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部をアルカリにてけん化反応を行い、(メタ)アクリル酸中和物単位に変換した後、(メタ)アクリル酸中和物単位の一部を酸にて脱金属して(メタ)アクリル酸単位に変換する際の酸の種類としては、酢酸、塩酸、硝酸、硫酸など公知の有機酸を用いることができる。酸にて脱金属する際の溶媒としては、けん化反応を行う際と同様の溶媒を選択することができる。
【0036】
エチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)の(メタ)アクリル酸エステル単位の一部をアルカリにてけん化反応を行い、(メタ)アクリル酸中和物単位に変換した後、(メタ)アクリル酸中和物単位のすべてを酸にて脱金属し(メタ)アクリル酸単位に変換した後、さらにその一部をアルカリ金属またはアルカリ土類金属にて中和する際の中和剤としては、前述の金属イオンを含有するイオン性の化合物であれば特に限定はない。金属イオンとしては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属イオンや、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属イオンや、亜鉛、ニッケル、鉄、チタンなどの遷移金属イオン、アルミニウムイオンなどが挙げられる。例えば、金属イオンがナトリウムカチオンの場合の中和剤としては、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。また、カルボン酸ナトリウム単位を含有するアイオノマー等の重合体も中和剤として用いることができる。
【0037】
本発明のアイオノマー中の(メタ)アクリル酸エステル単位、カルボン酸単位、 カルボン酸中和物単位の含有量は、以下の手順で分析することが可能である。まず、アイオノマー中の構成単位を熱分解ガスクロマトグラフィーで同定した後、核磁気共鳴分光法(NMR)と元素分析を用いてそれぞれの含有量を評価することができる。また、IRやラマン分析を組合せることもできる。これらの分析の前にアイオノマー以外の成分を、再沈澱法やソックスレー抽出法にて除去しておくことが好ましい。
【0038】
本発明のアイオノマーの融点としては、50℃以上、200℃以下が好ましく、60℃以上、180℃以下がより好ましく、80℃以上、150℃以下がさらに好ましい。融点は、JIS K7121:2012に記載の方法を参考に、示差走査熱量測定 (DSC)を用いて、冷却速度-10℃/分、昇温速度10℃/分、2回目の昇温の融解ピークのピックトップ温度から求めることができる。
【0039】
本発明のアイオノマーの融解熱としては、0J/g以上、25J/g以下が好ましい。JIS K7122:2012に記載の方法を参考に、示差走査熱量測定 (DSC)を用いて、冷却速度-10℃/分、昇温速度10℃/分、2回目の昇温時の融解ピークの面積から算出することができる。
【0040】
本発明のアイオノマーの190℃、2.16Kgfの条件で測定したメルトフローレート(MFR)としては、0.3g/10min以上が好ましく、0.7g/10min以上がより好ましく、1.0g/10min以上がさらに好ましく、1.5g/10min以上がよりさらに好ましく、2.0g/10min以上が特に好ましい。上限としては、特に限定しないが、50g/10min以下が好ましく、30g/10min以下がより好ましく、10g/10min以下がさらに好ましく、5g/10min以下が特に好ましい。アイオノマーのMFRがこのような範囲にあることで、熱による劣化を抑えた成形加工が可能になる。アイオノマーのMFRは、分子量ならびに(メタ)アクリル酸エステル単位(A)、カルボン酸単位(B)及びカルボン酸中和物単位(C)の量で調整することができる。
【0041】
分子量の測定方法としては、酢酸/トルエンの混合溶媒にアイオノマーを加熱溶解させ、カルボン酸中和物単位をカルボン酸単位に変換する。さらにカルボン酸単位をトリメチルシリルジアゾメタンにてカルボン酸メチルにエステル化させる。得られた共重合体をオルトジクロロベンゼンに溶解させた後、高温SECを用いて分子量を測定することができる。標準物質としてはポリスチレンを用いた検量線を作成し、ポリスチレン換算の分子量を算出する。
【0042】
本発明のアイオノマーの炭素1000個当たりの分岐度は、特に制限はないが、5~30が好ましく、6~20がより好ましい。炭素1000個当たりの分岐度の分析は、固体NMRを用いてDDMAS法にて行うことができる。
【0043】
本発明のアイオノマーの動的粘弾性測定で測定される50℃での貯蔵弾性率(E’)としては、20MPa以上が好ましく、30MPa以上がより好ましく、40MPa以上がさらに好ましく、50MPa以上が最も好ましい。貯蔵弾性率(E’)上限は特に制限されないが、1000MPa以下が好ましい。本発明において、貯蔵弾性率(E’)は実施例に記載した方法により測定する。
【0044】
<樹脂組成物>
本発明のアイオノマーは、必要に応じて老化防止剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤を含んでいてもよい。このような各種の添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜に決定することができるものであり、その合計量は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0045】
樹脂組成物には、本発明のアイオノマーが93質量%以上含有することが好ましく、95質量%以上含有することがより好ましく、96質量%以上含有することがさらに好ましい。
【0046】
各種の添加剤は、アイオノマーを製造する際の重合もしくは高分子反応系に添加してもよいし、樹脂を分離する工程で添加してもよいし、分離した後に添加してもよい。また、フィルム等の成形体の製造時に添加してもよい。
【0047】
老化防止剤としては、公知の材料を使用することができる。具体的には、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,5-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ(t-ブチル)-4-メチルフェノール、モノ(又はジ、又はトリ)(α-メチルベンジル)フェノール等のフェノール系化合物;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のビスフェノール系化合物;2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトメチルベンズイミダゾール等のベンズイミダゾール系化合物;6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、ジフェニルアミンとアセトンの反応物、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体等のアミン-ケトン系化合物;N-フェニル-1-ナフチルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、p-(p-トルエンスルホニルアミド)ジフェニルアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン等の芳香族二級アミン系化合物;1,3-ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-チオ尿素、トリブチルチオ尿素等のチオウレア系化合物などが使用できる。
【0048】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。中でも、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
【0049】
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、リン系酸化防止剤の使用量:ヒンダードフェノール系酸化防止剤の使用量は、質量比で、(1:5)~(2:1)が好ましく、(1:2)~(1:1)がより好ましい。
【0050】
リン系酸化防止剤としては、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブHP-10)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサー3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン((株)ADEKA製;商品名:アデカスタブPEP-36)などが好ましい。
【0051】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)などが好ましい。
【0052】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
【0053】
該熱劣化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3’-t-ブチル-5’-メチル-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学(株)製;商品名スミライザーGM)、2,4-ジ-t-アミル-6-(3’,5’-ジ-t-アミル-2’-ヒドロキシ-α-メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学(株)製;商品名スミライザーGS)などが好ましい。
【0054】
本発明においては、必要に応じてアイオノマーに、上記した老化防止剤、酸化防止剤、熱劣化防止剤以外にも紫外線吸収剤、光安定剤、膠着防止剤、滑剤、離型剤、高分子加工助剤、帯電防止剤、難燃剤、染顔料、有機色素、艶消し剤、蛍光体などの各種の添加剤を加えても良い。このような各種の添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜に決定することができるものであり、その合計量は、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下である。
【0055】
各種の添加剤は、アイオノマーを製造する際の重合もしくは高分子反応系に添加してもよいし、樹脂を分離する工程で添加してもよいし、分離した後に添加してもよい。また、フィルム等の成形体の製造時に添加してもよい。
【0056】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物であり、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる。
【0057】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ベンゾトリアゾール類は紫外線被照による着色などの光学特性低下を抑制する効果が高いので、紫外線吸収剤として好ましい。ベンゾトリアゾール類としては、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN329)、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール(BASF社製;商品名TINUVIN234)、2,2’ -メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-t-オクチルフェノール]((株)ADEKA製;LA-31)、2-(5-オクチルチオ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどが好ましい。
【0059】
また、トリアジン類の紫外線吸収剤としては、2,4,6-トリス(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシ-3-メチルフェニル)-1,3,5-トリアジン((株)ADEKA製;LA-F70)や、その類縁体であるヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤(BASF社製;TINUVIN477やTINUVIN460)、2,4-ジフェニル-6-(2-ヒドロキシ-4-ヘキシルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンなどを挙げることができる。
【0060】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0061】
膠着防止剤としては、脂肪酸の塩もしくはエステル、多価アルコールのエステル、無機塩、無機酸化物、粒子状の樹脂が好ましい。具体例としては、ステアリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素(エボニック社製;商品名アエロジル)、粒子状のアクリル樹脂などが挙げられる。
【0062】
滑剤としては、例えば、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアロアミド酸、メチレンビスステアロアミド、ヒドロキシステアリン酸トリグリセリド、パラフィンワックス、ケトンワックス、オクチルアルコール、硬化油などが挙げられる。
【0063】
離型剤としては、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類;ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライドなどのグリセリン高級脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0064】
高分子加工助剤としては、通常、乳化重合法によって製造できる、0.05~0.5μmの粒子径を有する重合体粒子を用いる。該重合体粒子は、単一組成比及び単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比又は極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。高分子加工助剤は、極限粘度が3~6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い傾向がある。極限粘度が大きすぎると共重合体の成形加工性の低下を招く傾向がある。
【0065】
有機色素としては、紫外線を可視光線に変換する機能を有する化合物が好ましく用いられる。
【0066】
蛍光体としては、蛍光顔料、蛍光染料、蛍光白色染料、蛍光増白剤、蛍光漂白剤などが挙げられる。
【0067】
本発明のアイオノマーおよび本発明のアイオノマーを含有する樹脂組成物は、保存、運搬、または成形時の利便性を高めるために、ペレットなどの形態にすることができる。ペレットに成形する場合は、溶融押出法にて得られるストランドをカットすることで得ることが可能である。溶融押出時の樹脂温度は150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。また、押出し時の樹脂温度は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。この際、臭気が少ない本発明の樹脂を用いることで、作業者の健康を確保することができる。本発明のアイオノマーおよび本発明のアイオノマーを含有する樹脂組成物は、合わせガラス用中間膜として有用である。
【0068】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、上記アイオノマー又はその樹脂組成物を含む層(x)のみから構成されていてもよく、層(x)を少なくとも1層含む多層膜であってもよい。前記多層膜としては、特に限定されないが、例えば、層(x)とその他の層が積層した2層膜や、2つの層(x)の間にその他の層が配置されている膜などが挙げられる。
【0069】
前記その他の層としては、公知の樹脂を含む層が挙げられる。該樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエステルのうちポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルファイド、ポリテトラフロロエチレン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリイミド、熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。また、その他の層も、必要に応じて、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、顔料、染料、遮熱材料(例えば、赤外線吸収能を有する、無機遮熱性微粒子又は有機遮熱性材料)、機能性無機化合物などの添加剤を含有してよい。
【0070】
本発明の樹脂シートの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、本発明のアイオノマー又は本発明のアイオノマーを含有する樹脂組成物を均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、溶液キャスト法、溶融キャスト法、インフレーション法等の公知の製膜方法により層(x)にすることにより得られる。層(x)は単独で樹脂シートとして使用してもよい。必要に応じて、層(x)をその他の層とプレス成形等で積層させて積層樹脂シートにしてもよいし、層(x)とその他の層とを共押出法により成形して積層樹脂シートとしてもよい。
【0071】
公知の製膜方法の中でも、特に押出機を用いて樹脂シートを製造する方法が好適に用いられる。押出時の樹脂温度は150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましい。また、押出し時の樹脂温度は250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎると、用いる樹脂が分解し、樹脂の劣化が懸念される。逆に温度が低すぎると、押出機からの吐出が安定せず、機械的トラブルの要因になる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から減圧により、揮発性物質を除去することが好ましい。揮発性物質を効率的に除去した場合においても、Tダイ等で臭気を発生し、作業環境を著しく悪化させる可能性がある。本発明のアイオノマーを用いることで、製膜時の作業環境を悪化させることなく、製膜可能となる。
【0072】
また、本発明の樹脂シートは表面にメルトフラクチャーやエンボスなど、従来公知の方法で凹凸構造を形成することが好ましい。メルトフラクチャー及びエンボスの形状は、従来公知のものを採用することができる。本発明の樹脂シートの表面に凹凸構造を形成すると、樹脂シートとガラス等の基材とを熱圧着する際の泡抜け性に優れるため好ましい。
【0073】
本発明の樹脂シートの厚さの下限は、好ましい順に(一番目の下限が好ましく、最後の下限が最も好ましい)、0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、及び0.75mmである。またその上限は、好ましい順に(一番目の上限が好ましく、最後の上限が最も好ましい)、5mm、4mm、2mm、1.6mm、1.2mm、1.1mm、1mm、及び0.79mmである。樹脂シートの厚さは従来公知の方法、例えば接触式又は非接触式の厚み計などを用いて測定される。樹脂シートはロール状に巻き取った状態でも良いし、1枚1枚の枚葉の状態でも良い。
【0074】
本発明の樹脂シートは、本発明の樹脂組成物の溶融混練物に関して記載したモルフォロジー、貯蔵弾性率(E’)、及びヘイズを有する。
【0075】
本発明の樹脂シートは着色が少なく、可能な限り、無色であることが好ましい。膜厚が0.8mmの場合のYIが2.0以下であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.0以下が最も好ましい。下限は0である。
【0076】
本発明の樹脂シートは、含水量が少ない方が好ましい。例えば、含水量として、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.02質量%以下がさらに好ましく、0.01質量%以下が最も好ましい。
【0077】
<合わせガラス>
本発明の樹脂シートは、好ましくは、合わせガラス用中間膜として使用される。その場合、本発明の樹脂シートである中間膜と積層させるガラスは、例えば、フロート板ガラス、強化ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、熱線吸収板ガラスなどの無機ガラスのほか、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネートなどの従来公知の有機ガラス等を制限なく使用できる。これらは無色又は有色のいずれであってもよい。これらは1種 を使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ガラスの厚さは、100mm以下であることが好ましい。
【0078】
本発明の樹脂シートを2枚のガラスに挟んでなる合わせガラスは、従来公知の方法で製造できる。例えば真空ラミネーター装置を用いる方法、真空バッグを用いる方法、真空リングを用いる方法、ニップロールを用いる方法等が挙げられる。また上記方法により仮圧着した後に、オートクレーブに投入して本接着する方法も挙げられる。
【0079】
真空ラミネーター装置を用いる場合、例えば1×10-6~3×10-2MPaの減圧下、60~200℃、特に80~160℃で無機ガラス板、中間膜、接着性樹脂層、有機ガラス板がラミネートされる。真空バッグ又は真空リングを用いる方法は例えば欧州特許第1235683号明細書に記載されており、約2×10-2MPaの圧力下、100~160℃でラミネートされる。
【0080】
ニップロールを用いる製造方法としては、中間膜の流動開始温度以下の温度でロールにより脱気した後、さらに流動開始温度に近い温度で圧着を行う方法が挙げられる。具体的には、例えば赤外線ヒーターなどで30~70℃に加熱した後、ロールで脱気し、さらに50~120℃に加熱した後ロールで圧着させる方法が挙げられる。
【0081】
上述の方法を用いて圧着させた後にオートクレーブに投入してさらに圧着を行う場合、オートクレーブ工程の運転条件は合わせガラスの厚さや構成により適宜選択されるが、例えば0.5~1.5MPaの圧力下、100~160℃にて0.5~3時間処理することが好ましい。
【0082】
本発明の合わせガラスは透明性に優れる。例えば、中間膜の膜厚が0.8mmの場合の合わせガラスのヘイズは1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。下限は特に規定されないが、0.01%である。なお本発明においてヘイズは、ヘイズメーターHZ-1(スガ試験機(株)製)を用いてJIS K7136:2000に準拠して測定する。
【0083】
本発明の合わせガラスは、140℃まで加熱した後、140℃から0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した後においても透明性に優れるものが、特に好ましい。例えば、中間膜の膜厚が0.8mmの場合の合わせガラスの、徐冷した後のヘイズとしては、5.0%以下が好ましく、4.5%以下がより好ましく、4.0%以下がさらに好ましく、3.0%以下が最も好ましい。下限は特に規定されないが、0.01%である。
【0084】
本発明の合わせガラスは着色が少なく、可能な限り、無色であることが好ましい。例えば、中間膜の膜厚が0.8mmの合わせガラスは、YIが2.0以下であることが好ましく、1.8以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましく、1.0以下が最も好ましい。下限は0である。
【0085】
本発明の合わせガラスのガラスと中間膜の接着力は高い方が好ましい。例えば、WO1999―058334号公報に記載の圧縮せん断強度試験(Compression shear strength test)により評価した値が15MPa以上であることが好ましく、20MPa以上がより好ましく、25MPa以上が最も好ましい。上限は特に規定されないが100MPa以下である。
【0086】
上記したように、本発明のアイオノマー及び本発明のアイオノマーを含有する樹脂組成物を成形して得られる樹脂シートは、合わせガラス用中間膜として有用である。該合わせガラス用中間膜は、ガラス等の基材への接着性、透明性、自立性に優れる点から、特に、構造材料用合わせガラスの中間膜として好ましい。また、構造材料用合わせガラスの中間膜に限らず、自動車用フロントガラス、自動車用サイドガラス、自動車用サンルーフ、自動車用リアガラス、ヘッドアップディスプレイ用ガラス、その他自動車等の移動体、外壁および屋根のためのラミネート、パネル、ドア、窓、壁、屋根、サンルーフ、遮音壁、表示窓、バルコニー、手摺壁等の建築物、議室の仕切りガラス部材、太陽電池、などの各種用途における合わせガラス用中間膜としても好適であるが、これらの用途に限定されるものではない。
【実施例0087】
以下、実施例および比較例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0088】
[実施例・比較例で得られた樹脂の分析]
(メタ)アクリル酸エステル単位、カルボン酸単位、カルボン酸中和物単位の含量の分析は以下のようにして行った。
【0089】
後述する方法にて得られたアイオノマー又はアイオノマーを含有する樹脂組成物を脱水トルエン/脱水酢酸(75/25質量%)の混合溶媒に溶解、100℃にて2時間反応させた後、アセトン/水(80/20質量%)の混合溶媒に再沈殿させることでカルボン酸中和物をカルボン酸に変換した。得られた樹脂を十分水で洗浄した後、乾燥した。得られた樹脂を熱分解GC-MSにて重合単位の成分を分析した(1)。次に、得られた樹脂をJIS K0070-1992に準じて酸価を測定した(2)。また得られた樹脂を重水素化トルエンと重水素化メタノールの混合溶媒にて1H-NMR(400MHz、日本電子(株)製)測定を行った(3)。またアイオノマー又はアイオノマーを含有する樹脂組成物を硝酸によるマイクロ波分解前処理した後、ICP発光分析(Thermo Fisher Scientific iCAP6500Duo)にて、カルボン酸中和物の金属イオンの種類と量を同定した(4)。(1)から、(メタ)アクリル酸エステル単位およびカルボン酸単位の種類と構造を同定し、その情報を基に、(2)と(3)の情報から、エチレン/(メタ)アクリル酸エステル単位/(カルボン酸単位とカルボン酸中和物単位の合計)の比率を算出した。さらに(4)の情報からエチレン/(メタ)アクリル酸エステル単位/カルボン酸単位/カルボン酸中和物単位の比率を算出した。
【0090】
[メルトフローレート(MFR)]
JIS K7210に準拠して、シリンダ内で溶融した測定対象樹脂を、190℃、2.16kgf荷重条件の下で、シリンダ底部に設置された規定口径のダイスから10分間あたり押し出される樹脂量を測定した。
【0091】
[臭気]
後述する方法にて得られたアイオノマー又はアイオノマーを含有する樹脂組成物の50gをラボプラストミル(東洋精機製)にて、220℃、100rpmにて溶融混練を行った。ラボプラストミルの投入口を開放しておき、その直上50mm離れた場所から、臭気を比較した。臭気は、溶融混練開始から5分後から30秒間、ポータブル型ニオイセンサ(型式:XP-329m、新コスモス電機(株)製)を用いて臭気を測定し、30秒間の臭気値の最大値と最小値の平均値を比較した。臭気値が高いほど強い臭気であり、臭気値が700以上である場合を「B」、700未満の場合を「A」として評価した。
【0092】
[高温環境下自立性]
後述する方法にて得られたアイオノマー又はアイオノマーを含有する樹脂組成物の溶融混練物を210℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmの樹脂シートを得た。該シートから縦40mm×横5mmの試験片を切り出し、(株)UBM製動的粘弾性測定装置を用いて、測定温度50℃、周波数1Hzの条件で、貯蔵弾性率(E’)を測定し、その値を高温環境下における樹脂シートの自立性の指標とした。上記貯蔵弾性率が30MPa以上の場合を「A」、30MPa未満の場合を「B」として評価した。
【0093】
[着色性]
後述する方法にて得られたアイオノマー又はアイオノマーを含有する樹脂組成物の溶融混練物を210℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmの樹脂シートを得た。該シートを日本電色工業(株)製の測色色差計「ZE-2000」(商品名)を用い、JIS Z8722に準拠して測定した。得られた値を元にJIS K7373に準拠して算出した黄色度の値をイエロインデックス(YI)とした。測定されたYIが2.0以下の場合を「A」、2.0超3.0未満を「B」、3.0以上の場合を「C」として評価した。
【0094】
[透明性]
後述する方法にて得られたアイオノマー又はアイオノマーを含有する樹脂組成物の溶融混練物を210℃加熱下、50kgf/cm2の圧力にて5分間圧縮成形し、厚さ0.8mmの樹脂シートを得た。得られた樹脂シートを厚さ2.7mmのフロートガラス2枚に挟み、真空ラミネーター(日清紡メカトロニクス(株)製 1522N)を使用し100℃で真空ラミネーター内を1分減圧し、減圧度、温度を保持したまま30kPaで5分プレスして、仮接着体を得た。得られた仮接着体をオートクレーブに投入し140℃、1.2MPaで30分処理して、合わせガラスを得た。
【0095】
上述の方法にて得られた合わせガラスを140℃まで加熱したのち、0.1℃/分の速度で23℃まで徐冷した。徐冷操作後の合わせガラスのヘイズをヘイズメーターHZ-1(スガ試験機(株)製)を用いてJIS K7136:2000に準拠して測定した。測定されたヘイズが5.0%以下の場合を「A」、5.0%超10%未満を「B」、10%以上の場合を「C」として評価した。
【0096】
表1に、本実施例及び比較例のアイオノマーを製造する原料として使用するエチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)をまとめた。これらエチレン―(メタ)アクリル酸エステル共重合体(X)は、US2013/0274424、特開2006-233059又は特開2007-84743に記載の高温高圧ラジカル重合法にて合成することができる。例えば、EMMA1として住友化学(株)製「アクリフト」(登録商標)WD301F、EEA1として日本ポリエチレン(株)製「レクスパール」(登録商標)A4250を用いることができる。
【0097】
【0098】
[実施例1]
表1にあるEMMA4の100質量部にトルエンの233質量部を加えて、0.02MPa加圧下、60℃で溶解させた。得られた溶液に水酸化ナトリウムのメタノール溶液(20質量%)の96質量部を添加し、100℃、2時間にてメタクリル酸メチル単位をけん化反応し、メタクリル酸ナトリウム単位に変換した。
【0099】
この溶液に、濃塩酸(36質量%)44質量部を添加し、100℃、2時間にて、メタクリル酸ナトリウム単位の一部をメタクリル酸に変換した。得られた溶液をアセトン/水(80/20質量%)の混合溶媒に再沈殿させ、アイオノマー1を得た。次いで、得られたアイオノマー1を分析し、特性を評価した。アイオノマー1の分析結果を表2に示す。アイオノマー1のMFR測定結果及び臭気評価結果、樹脂シートの高温下自立性、及び合わせガラスの透明性及び着色性の評価結果を表3に示す。
【0100】
[実施例2]
表1にあるEMMA5を用い、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の100質量部、濃塩酸46質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー2を得た。得られたアイオノマー2の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0101】
[実施例3]
表1にあるEMMA5を用い、水酸化ナトリウムのメタノール溶液(16質量%)の95質量部を添加し、100℃、10時間にてメタクリル酸メチル単位をけん化反応し、濃塩酸33質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー3を得た。得られたアイオノマー3の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0102】
[実施例4]
表1にあるEMMA6を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の112質量部、濃塩酸51質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー4を得た。得られたアイオノマー4の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0103】
[実施例5]
表1にあるEEA2を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の100質量部、濃塩酸43質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー5を得た。得られたアイオノマー5の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0104】
[実施例6]
表1にあるEEA1を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の100質量部、濃塩酸46質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー6を得た。得られたアイオノマー6の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0105】
[実施例7]
表1にあるEMAを用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の112質量部、濃塩酸51質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー7を得た。得られたアイオノマー7の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0106】
[実施例8]
表1にあるEMMA7を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の100質量部、濃塩酸46質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー18を得た。得られたアイオノマー18の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0107】
[比較例1]
表1にあるEMMA1を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の40質量部、濃塩酸18質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー8を得た。得られたアイオノマー8の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0108】
[比較例2]
表1にあるEMMA2を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の72質量部、濃塩酸33質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー9を得た。得られたアイオノマー9の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0109】
[比較例3]
表1にあるEMMA3を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の80質量部、濃塩酸37質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー10を得た。得られたアイオノマー10の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0110】
[比較例4]
表1にあるEMMA4を用いて、濃塩酸は添加せず、酢酸78質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー11を得た。得られたアイオノマー11の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0111】
[比較例5]
表1にあるEMMA5を用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の100質量部を添加し、120℃、10時間にてメタクリル酸メチル単位をけん化反応し、濃塩酸46質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー12を得た。得られたアイオノマー12の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0112】
[比較例6]
表1にあるEMMA5を用いて、けん化反応の反応時間を3時間とし、濃塩酸39質量部を添加した以外は、実施例3と同様にして、アイオノマー13を得た。得られたアイオノマー13の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0113】
[比較例7]
表1にあるEMMA6を用いて、濃塩酸47質量部を添加した以外は、実施例4と同様にして、アイオノマー14を得た。得られたアイオノマー14の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0114】
[比較例8]
表1にあるEMAを用いて、水酸化ナトリウムのメタノール溶液の106質量部、けん化反応の反応時間を3時間とし、濃塩酸49質量部を添加した以外は、実施例1と同様にして、アイオノマー15を得た。得られたアイオノマー15の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0115】
[比較例9]
メタクリル酸単位の含有量が6.3mol%及びメタクリル酸ナトリウム単位の含有量が1.8mol%であり、MFRが2.7g/10分である、エチレン/メタクリル酸アイオノマーをアイオノマー16として用いた。アイオノマー16の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0116】
[比較例10]
メタクリル酸単位の含有量が6.0mol%、メタクリル酸ナトリウム単位の含有量が2.1mol%及びメタクリル酸n-ブチル単位の含有量が3.0mol%であり、MFRが3.5g/10分である、エチレン/メタクリル酸n-ブチル/メタクリル酸アイオノマーをアイオノマー17として用いた。アイオノマー17の分析結果及び評価結果を表2及び表3に示す。
【0117】
【0118】
【0119】
以上の結果から、本願発明の所定の構成要件を全て充足する実施例のアイオノマーは、透明性、高弾性率及び低着色がバランス良く優れており、加えて成形加工時の臭気が低減されていた。これに対し、いずれかの構成要件を充足しない比較例のアイオノマーは、透明性、高弾性率、低着色及び臭気のうちのいずれかの性能に劣っていた。