IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社京三製作所の特許一覧

<>
  • 特開-車上装置 図1
  • 特開-車上装置 図2
  • 特開-車上装置 図3
  • 特開-車上装置 図4
  • 特開-車上装置 図5
  • 特開-車上装置 図6
  • 特開-車上装置 図7
  • 特開-車上装置 図8
  • 特開-車上装置 図9
  • 特開-車上装置 図10
  • 特開-車上装置 図11
  • 特開-車上装置 図12
  • 特開-車上装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133196
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】車上装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 3/12 20060101AFI20240920BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B61L3/12 Z
G01C21/28
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111658
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2021002789の分割
【原出願日】2021-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】南部 修二
(72)【発明者】
【氏名】中山 雄一郎
(57)【要約】
【課題】鉄道車両の走行位置を車上において精度良く算出するための地上の専用設備に係るコストをできるかぎり抑制することを可能とする技術の提供。
【解決手段】鉄道車両3に搭載される車上装置1は、走行位置を随時算出する走行位置算出部と、走行中の沿線画像を取得する画像取得部と、走行位置が所定の補正位置を含む所定の補正区間に進入した場合に、画像取得部により取得される画像と、当該補正位置における沿線画像として予め設定された参照画像と、の比較を開始して所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定する判定部と、判定部により肯定判定されたタイミングにおける走行位置が補正位置となるように走行位置算出部の算出位置を補正する第1の補正部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両に搭載される車上装置であって、
前記鉄道車両が走行する線路には、車上で算出される走行位置を補正するために予め定められた設置位置に金属マーカが設置された所定区間と、前記金属マーカが設置されていない区間とがあり、どちらの区間も前記鉄道車両が走行可能であり、
走行位置を随時算出する走行位置算出部と、
前記設置位置を通過する際に前記金属マーカを検出可能な電磁誘導センサと、
前記電磁誘導センサによる検出タイミングにおける前記走行位置が前記設置位置となるように前記走行位置算出部の算出位置を補正する補正部と、
を備える車上装置。
【請求項2】
前記金属マーカには、材質、大きさ、及び形態のうちの何れかが異なる複数種類があり、
前記所定区間には、異なる種類の前記金属マーカが予め定められた異なる設置位置に分散配置されており、
前記補正部は、前記電磁誘導センサによる前記金属マーカの検出波形に基づいて当該金属マーカの種類を判別することで、検出された前記金属マーカの設置位置を判定し、当該判定した設置位置に基づいて前記走行位置算出部の算出位置を補正する、
請求項1に記載の車上装置。
【請求項3】
前記走行位置算出部は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から受信した受信信号を用いて所与の算定起点位置からの走行距離を積算することで走行位置を随時算出する、
請求項1又は2に記載の車上装置。
【請求項4】
走行中の沿線画像を取得する画像取得部と、
前記走行位置が所定の補正位置を含む所定の補正区間に進入した場合に、前記画像取得部により取得される画像と、当該補正位置における沿線画像として予め設定された参照画像と、の比較を開始して所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定する判定部と、
前記判定部により肯定判定されたタイミングにおける前記走行位置が前記補正位置となるように前記走行位置算出部の算出位置を補正する画像基準補正部と、
を更に備える請求項1~3の何れか一項に記載の車上装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記画像取得部により取得される画像と前記参照画像との類似度を判定する画像マッチング処理を行い、前記類似度が所定のピーク条件を満たすことを前記画像適合条件として前記タイミングを判定する、
請求項4に記載の車上装置。
【請求項6】
前記補正位置は、前記画像取得部により取得される沿線画像の所定部に、線路を横断する踏切道の道路中央が写る位置である、
請求項4又は5に記載の車上装置。
【請求項7】
前記画像取得部は、前記沿線画像として撮影画像又は距離画像を取得する、
請求項4~6の何れか一項に記載の車上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の走行位置を算出する車上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道車両の走行位置を車上で算出する手法としては、速度発電機(TG:Tacho-Generator)やパルスジェネレータ(PG:Pulse Generator)等による回転検知信号を利用した手法が一般的に行われていた。近年では、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からの受信信号を利用する手法の構築が進められている。このような手法により算出される走行位置には誤差が生じ得るため、安全性の観点から、何らかの手法により補正する必要がある。例えば、特許文献1に開示されるように、地上に設置した地上子等の地上マーカを検出し、検出した地上マーカの設置位置で走行位置を補正する手法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-267220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の走行位置の補正手法では、鉄道車両が走行する線路は長大であることから、走行位置の補正のための地上マーカといった専用設備を多数設置する必要があり、その専用設備の設置や保守(メンテナンス)に要するコストが大きいという問題があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鉄道車両の走行位置を車上において精度良く算出するための地上の専用設備に係るコストをできるかぎり抑制することを可能とする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、
鉄道車両に搭載される車上装置であって、
走行位置を随時算出する走行位置算出部と、
走行中の沿線画像を取得する画像取得部と、
前記走行位置が所定の補正位置を含む所定の補正区間に進入した場合に、前記画像取得部により取得される画像と、当該補正位置における沿線画像として予め設定された参照画像と、の比較を開始して所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定する判定部と、
前記判定部により肯定判定されたタイミングにおける前記走行位置が前記補正位置となるように前記走行位置算出部の算出位置を補正する第1の補正部と、
を備える車上装置である。
【0007】
第1の発明によれば、地上の専用設備を利用せずに、鉄道車両の走行位置を車上において精度良く算出することが可能となる。つまり、車上装置は、鉄道車両の走行位置を随時算出するとともに、走行中の沿線画像と、補正位置における沿線画像として予め設定された参照画像とを比較して、所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定し、肯定判定したタイミングにおける走行位置が補正位置となるように走行位置を補正する。画像適合条件を満たすタイミングとは、鉄道車両の位置が補正位置となったタイミングであるから、そのタイミングにおける走行位置が補正位置なるように走行位置を補正することで、鉄道車両の走行位置を精度良く算出することが可能となる。また、沿線画像と参照画像との比較を、所定の補正区間に進入した場合に開始するので、画像適合条件を満たすタイミングの判定を精度良く行うことが可能である。このことにより、走行位置を補正するための地上の専用設備を利用せずに、車上において、鉄道車両の走行位置を精度良く算出することが可能となる。従って、地上の専用設備に係るコストを省くことが可能となる。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、
前記走行位置算出部は、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から受信した受信信号を用いて所与の算定起点位置からの走行距離を積算することで走行位置を随時算出し、
前記第1の補正部は、前記算定起点位置を前記補正位置で更新する、
車上装置である。
【0009】
第2の発明によれば、GNSS衛星から受信した受信信号を用いて所与の算定起点位置からの走行距離を積算することで走行位置を随時算出する場合、走行距離の積算に伴って走行位置の誤差が増大するが、算定起点位置を補正位置で更新することでその誤差が解消されるので、走行位置を精度良く算出することが可能となる。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記判定部は、前記画像取得部により取得される画像と前記参照画像との類似度を判定する画像マッチング処理を行い、前記類似度が所定のピーク条件を満たすことを前記画像適合条件として前記タイミングを判定する、
車上装置である。
【0011】
第3の発明によれば、取得される走行中の沿線画像は鉄道車両の走行位置に応じて徐々に変化する。つまり、沿線画像と所定の参照画像との画像マッチング処理により判定される類似度は、鉄道車両の走行に伴って変化し、鉄道車両の走行位置が補正位置となったタイミングでピーク(最大)となるはずである。このことから、類似度がピーク条件を満たすタイミングを判定することで、鉄道車両の走行位置が補正位置となったタイミングを精度よく判定することが可能である。
【0012】
第4の発明は、第1~第3の何れかの発明において、
前記補正位置は、前記画像取得部により取得される沿線画像の所定部に、線路を横断する踏切道の道路中央が写る位置である、
車上装置である。
【0013】
第4の発明によれば、沿線画像を鉄道車両の進行方向前方の画像とした場合、沿線画像には、踏切道が左右に横断するように直線状に写る。そして、鉄道車両が踏切道に接近するにつれて、沿線画像中の踏切道の位置が上方から下方に徐々に移動するとともに、その大きさが徐々に大きくなる。このため、沿線画像の所定部(例えば中央部)に線路を横断する踏切道の道路中央が写る位置を補正位置とすることで、沿線画像と参照画像との画像適合条件を満たすタイミングを精度よく判定し、その結果、走行位置を精度良く補正することが可能となる。
【0014】
第5の発明は、第1~第4の何れかの発明において、
前記画像取得部は、前記沿線画像として撮影画像又は距離画像を取得する、
車上装置である。
【0015】
第5の発明によれば、沿線画像として、撮影画像又は距離画像を取得することができる。
【0016】
第6の発明は、第1~第5の何れかの発明において、
前記鉄道車両は、予め定められた設置位置に金属マーカが設置された線路上を走行し、
前記設置位置を通過する際に前記金属マーカを検出可能な電磁誘導センサと、
前記電磁誘導センサによる検出タイミングにおける前記走行位置が前記設置位置となるように前記走行位置算出部の算出位置を補正する第2の補正部と、
を更に備える車上装置である。
【0017】
第6の発明によれば、金属マーカが設置された線路上を鉄道車両が走行する際に、電磁誘導センサによる金属マーカの検出タイミングにおける走行位置がその金属マーカの設置位置となるように、走行位置が補正される。これにより、走行位置を更に精度良く補正することが可能となる。また、電磁誘導センサで検出可能な金属マーカは、地上子のような電気回路を有する設備ではないために設置や保守に要するコストが小さく、例えば地上子を地上マーカとして設置する従来の手法に比較して大幅に低減できる。
【0018】
第7の発明は、第6の発明において、
前記金属マーカには、材質、大きさ、及び形態のうちの何れかが異なる複数種類があり、
前記鉄道車両が走行する線路には、異なる種類の前記金属マーカが予め定められた異なる設置位置に分散配置された所定区間があり、
前記第2の補正部は、前記電磁誘導センサによる前記金属マーカの検出波形に基づいて当該金属マーカの種類を判別することで、検出された前記金属マーカの設置位置を判定し、当該判定した設置位置に基づいて前記走行位置算出部の算出位置を補正する、
車上装置である。
【0019】
第7の発明によれば、鉄道車両が走行する線路に異なる種類の金属マーカを予め異なる設置位置に分散配置しておくことにより、電磁誘導センサによる金属マーカの検出波形に基づいて金属マーカの種類を判別することでその設置位置を判定し、判定した設置位置に基づいて走行位置を補正することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車上装置の適用例。
図2】沿線画像による走行位置の補正の説明図。
図3】補正区間の設定の説明図。
図4】電磁誘導センサの検出波形による走行位置の補正の説明図。
図5】電磁誘導センサの構成図。
図6】電磁誘導センサによる金属マーカの検出波形の説明図。
図7】種類が異なる金属マーカの検出波形の一例。
図8】制御装置の機能構成図。
図9】補正区間データの一例。
図10】参照画像データの一例。
図11】GNSS受信不可能区間データの一例。
図12】金属マーカデータの一例。
図13】走行位置算出処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一要素には同一符号を付す。
【0022】
[全体構成]
図1は、本実施形態の車上装置の適用例を概略的に示す図である。図1に示すように、本実施形態の車上装置1は、鉄道車両3に搭載され、制御装置10と、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)受信機20と、カメラ30と、電磁誘導センサ40とを備える。
【0023】
GNSS受信機20は、GNSS衛星からの衛星信号を受信する。GNSSは、GPS(Global Positioning System)、EGNOS(European Geostationary Navigation Overlay Service)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、GALILEO、BeiDou(BeiDou Navigation Satellite System)等である。
【0024】
カメラ30は、鉄道車両3の運転台或いはその付近に設置され、鉄道車両3の進行方向前方の沿線画像を撮影する。この撮影は動画撮影とするが、連続的な静止画の撮影としてもよい。また、カメラ30は、可視光および赤外線等の波長域差異によるカメラ方式種別の利用、異なるカメラ方式種別の併用でも良い。電磁誘導センサ40は、鉄道車両3の底部であって、線路5に設置された金属マーカの設置位置を通過する際に当該金属マーカを検出可能な位置に設置される。
【0025】
制御装置10は、GNSS受信機20で受信された受信信号を用いて、鉄道車両3の走行位置を随時算出する。また、任意のタイミングで、カメラ30により撮影された沿線画像を用いて、或いは、電磁誘導センサ40による検出波形を用いて、走行位置を補正する。具体的には、走行位置の算出は、GNSS衛星からの受信信号に基づき算出される鉄道車両3の速度情報に基づき、所定の算定起点位置からの走行距離を積算することで行う。そして、走行位置の補正は、この算定起点位置を更新することで行う。
【0026】
[沿線画像による走行位置の補正]
図2は、沿線画像による走行位置の補正を説明する図である。分かり易くするために踏切道7を矩形として表している。図2の上側に示すように、鉄道車両3が走行する線路5には、補正位置、及び、この補正位置を含む補正区間が予め定められている。
【0027】
図2の例では、線路5における踏切道7の手前に補正位置及び補正区間が定められている。従って、補正区間においてカメラ30により撮影される沿線画像は、踏切道7が写った画像となる。沿線画像は鉄道車両3の進行方向前方の画像であるから、沿線画像には、踏切道7が左右に横断するように直線状に写る。また、沿線画像中の踏切道7の位置は、補正区間への進入直後は、踏切道7が遠方であることから上方であるが、走行による踏切道7への接近に伴って、上方から下方へ徐々に移動するとともに、その大きさが徐々に大きくなる。
【0028】
制御装置10は、走行位置をもとに補正区間へ到達(進入)したことを判断すると、カメラ30により撮影された沿線画像と、予め用意される参照画像との比較を開始して所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定する。具体的には、沿線画像と参照画像との類似度を判定する画像マッチング処理を行い、類似度が所定のピーク条件を満たすことを画像適合条件として、画像適合条件を満たすタイミングを判定する。参照画像は、補正位置における沿線画像として予め設定された画像であり、鉄道車両3の走行位置が補正位置に一致したときにカメラ30が撮影した画像を、参照画像として用意しておくことができる。例えば、沿線画像の所定部(例えば中央部)に線路を横断する踏切道7の道路中央が写る位置を補正位置とすることができる。踏切道7を車上から撮影した場合、路端が分かり易い左右直線状に写る等の特徴的な撮影画像となる。そのため、本実施形態では、踏切道7を画像適合条件の判定に利用することとする。しかも、その特徴的な画像が撮影画像中のどこに写されているか、どの大きさで写っているか、についても類似度に大きく関わる。撮影画像全体が画像マッチング処理の対象となるからである。
【0029】
なお、補正位置は、沿線画像に踏切道が含むような位置に限らない。撮影画像全体の画像マッチング処理において、ある走行タイミングで類似度が高く判定され得る特徴的な物体・建物・景観が沿線画像に写る位置であれば、その他の位置でもよい。例えば、線路の分岐点やカーブ部分、沿線周囲のビル等の特徴的な建築物、山岳等の沿線の地理的特徴、等が沿線画像に写る位置を補正位置として設定することとしてもよい。
【0030】
また、トンネルなどで暗く特徴画像が無い箇所や霧などで視認性が悪い条件下の利用を想定して、補正位置に反射率の良い再帰反射材を設置しておき、カメラ30で撮影した再帰反射材を含む画像を沿線画像として取得するようにしてもよい。この場合、再帰反射材が主な特徴部分となって、画像マッチング処理における類似度が判定されることになる。
【0031】
制御装置10は、カメラ30により動画撮影されたフレーム毎の沿線画像について、参照画像とのマッチング処理を行って類似度を算出する。補正区間内の走行位置と、その走行位置で撮影された沿線画像についての類似度との関係は、図2の下側に示すグラフのようになる。参照画像は補正位置での撮影画像であるから、沿線画像と参照画像との類似度は、補正区間への進入直後は小さく、補正位置への接近に伴って上昇し、補正位置で最大となり、補正位置の通過後は、補正位置から離れるに伴って減少してゆく。制御装置10は、撮影画像と参照画像との類似度が最大となることをピーク条件とし、ピーク条件を満たす沿線画像を撮影したタイミングにおける走行位置が補正位置となるように、走行位置を補正する。このピーク条件を満たす走行位置は、補正位置を通過した後に判定可能となる。このため、制御装置10は、例えば、補正区間の通過後に、当該補正区間において参照画像との類似度がピーク条件を満たした(類似度が最大となった)沿線画像の撮影時刻を判断し、その撮影時刻における走行位置が補正位置となるように算定起点位置を更新する。算定起点位置を補正位置とするならば、その撮影時刻における走行位置を補正位置とし、算定起点位置を補正位置で更新する。補正位置の正確な位置データは、予め記憶・設定されている。そして、更新後の算定起点位置からの走行距離を更新することで、走行位置を更新する。
【0032】
図3は、補正区間の設定を説明する図である。補正区間は、GNSS受信機による受信信号精度に基づいて定められる。例えば、図3の上側に示すように、補正位置にGNSS受信機を設置しておき、このGNSS受信機によって繰り返し測位される測位位置を一定期間収集する。そして、収集した測位位置の分布を、補正位置を平均値μとした正規分布(ガウス分布)とみなしたときの、μ±6σ、又は、μ±3σの範囲を、当該補正位置についての補正区間として設定する。
【0033】
或いは、GNSS受信機を搭載した鉄道車両が補正位置までの走行を複数回行い、各走行において算出した補正位置での走行位置を収集する。走行位置は、GNSS受信機による受信信号を用いて所定の起点位置から補正位置までの走行距離を算出することで車上で算出される。そして、収集した走行位置について、同様に、補正位置を平均値μとした正規分布(ガウス分布)とみなしたときの、μ±6σ、又は、μ±3σの範囲を、当該補正位置についての補正区間として設定する。
【0034】
或いは、μ±6σ、又は、μ±3σの範囲ではなく、安全性に関する所定の規格(SIL規格やASIL規格等)で定められる故障率に基づいて補正区間を設定するとしてもよい。例えば、SIL規格で定められる安全水準に対応する故障率(誤差率)を満たす範囲を、補正区間として設定しても良い。
【0035】
また、補正区間の設定の際に使用するGNSS受信機は、鉄道車両3に搭載予定の機器そのものとしてもよいし、型番が同じ他の機器としてもよい。
【0036】
[電磁誘導センサの検出波形による走行位置の補正]
図4は、電磁誘導センサ40の検出波形による走行位置の補正を説明する図である。鉄道車両3が走行する線路5のうち、少なくとも、GNSS受信機20によるGNSS信号の受信ができず、且つ、カメラ30による鮮明な沿線画像の撮影が困難な区間において、異なる種類の金属マーカ9が、予め定められた異なる設置位置に分散配置されている。金属マーカ9は、金属製の板状体であり、材質、大きさ、及び形態の何れかが異なる複数種類がある。
【0037】
このような区間はトンネル区間が典型的である。GNSS信号の受信ができない区間では、上空が開けておらず、沿線画像の撮影も困難であることが多い。このため、GNSS信号の受信ができない区間(GNSS受信不可能区間)を、電磁誘導センサ40の検出波形による走行位置の補正を行う区間とする。図4に示すように、金属マーカ9は、GNSS受信不可能区間内に分散配置されているとともに、GNSS受信不可能区間の両端部付近(GNSS受信可能区間内)にも配置されている(図4の設置位置(a),(d)が該当)。制御装置10は、電磁誘導センサ40による金属マーカ9の検出波形に基づいて、金属マーカ9の種類を判別することで、検出された金属マーカ9の設置位置を判定し、当該判定した設置位置に基づいて走行位置を補正する。
【0038】
図5は、電磁誘導センサ40の構成を示す図である。図5に示すように、電磁誘導センサ40は、センサ部42と、送受信アンプ部44とを有する。センサ部42は、送信コイルTX1と、受信コイルRX1,RX2とを備える。送信コイルTX1と、受信コイルRX1,RX2それぞれとのコイル間距離は、若干異なった距離に設置される。
【0039】
送受信アンプ部44は、パワーアンプ44aと、発振器44bとを備える。発振器44bは、周波数f0の交流電流を供給する。パワーアンプ44aは、発振器44bから供給される周波数f0の交流電流を増幅して送信コイルTX1に印加する。発振器44bが供給する周波数f0の交流電流が、送信信号として制御装置10が有する信号処理部212に出力されるとともに、受信コイルRX1,RX2の差動出力信号が、受信信号として信号処理部212に出力される。送信コイルTX1と受信コイルRX1,RX2それぞれとを若干異なった距離に設置させておくことにより、金属マーカ9を検出していない状態であっても受信コイルRX1,RX2の差動出力信号レベルが出力される。差動出力信号レベルを常時監視することでコイル断線等の異常を判定することができ、電磁誘導センサ40の信頼性の向上が図れる。
【0040】
信号処理部212は、ロックインアンプであり、受信信号の振幅R及び位相θを、送信信号を参照信号として比較することにより測定する。そして、極座標系での振幅R及び位相θを、XY座標系における座標値(X,Y)として出力する。
【0041】
図6は、鉄道車両3が金属マーカ9を通過する際の電磁誘導センサ40による検出波形の変化の一例を示す図である。図6の例では、左下に示すように、鉄道車両3において、電磁誘導センサ40は、進行方向に対して前方側に受信コイルRX1、中央に送信コイルTX1、後方側に受信コイルRX2が位置するように設置されている。図6には、鉄道車両3が金属マーカ9を通過する際の、金属マーカ9と電磁誘導センサ40の各コイルとの相対的な位置関係が異なる4つの状態(1)~(4)それぞれについて、送信信号及び受信信号の波形と、信号処理部212から出力される極座標系での振幅R及び位相θを、XY座標においてプロットした座標値(X,Y)の軌跡(以下、「検出波形」という)と、を示している。
【0042】
先ず、電磁誘導センサ40が金属マーカ9から離れており、金属マーカ9を検出していない(非検出の)状態(1)では、送信コイルTX1に周波数f0の送信電流が供給されていることから、送信コイルTX1から交番磁界が放出される。受信コイルRX1,RX2を若干異なった距離に設置させておくことにより、受信信号の振幅はR0、送信信号に対する位相はθ0の波形が出力され、XY座標系において、座標値(X0,Y0)にプロットされる。本例では、位相θ0を45[deg]とする。
【0043】
次いで、前方側の受信コイルRX1が金属マーカ9を検出した状態(2)では、金属マーカ9の磁界によって送信コイルTX1の放出磁界が、前方側に引き寄せられて変化することで、前方側の受信コイルRX1を貫く磁界が受信コイルRX1及び送信コイルTX1と鎖交するとともに、渦電流の反磁界作用も伴うことで、受信コイルRX1を貫く磁界が減少する。また、反磁界作用は、受信信号の位相変化も伴う。このため、受信信号の振幅Rは、一旦減少した後に増加してR1となり、送信信号に対する位相θは、増加して、θ1=90°、となる。従って、状態(1)から状態(2)に遷移する間にプロットされる点は、状態(1)における座標値(X0,Y0)から座標値(X1,Y1)まで、円弧を描くように変化する。
【0044】
続いて、後方側の受信コイルRX2が金属マーカ9を検出した状態(3)では、金属マーカ9の磁界によって送信コイルTX1の放出磁界が引き寄せられる方向が前方側から後方側に変化することで、受信コイルRX1を貫く磁束が増加して状態(1)に戻るとともに、後方側の受信コイルRX2を貫く磁束が減少する。このため、受信信号の振幅Rは、R2となり、送信信号に対する位相θは、減少して、θ2=0°、となる。従って、状態(2)から状態(3)に遷移する間にプロットされる点は、状態(2)における座標値(X1,Y1)から座標値(X2,Y2)まで、円弧を描くように変化する。
【0045】
そして、電磁誘導センサ40が金属マーカ9から離れて金属マーカ9を検出しなくなった(非検出の)状態(4)では、状態(1)と同じ状態に戻る。従って、状態(3)から状態(4)に遷移する間にプロットされる点は、状態(3)における座標値(X2,Y2)から状態(1)における座標値(X0,Y0)まで、円弧を描くように変化する。
【0046】
このように、金属マーカ9の設置位置を通過する際の電磁誘導センサ40による金属マーカ9の検出波形は変化する。また、鉄道車両3の進行方向が逆方向の場合には、先ず、受信コイルRX2が金属マーカ9を検出した後に、受信コイルRX1が金属マーカ9を検出するので、検出波形の形状は同じであるが、軌跡の変化方向は逆となる。
【0047】
また、金属マーカ9の種類が異なると、金属マーカ9が接近する際の送信コイルTX1の放出磁界の引き寄せられ方が異なることから、検出波形が異なる。図7に、電磁誘導センサ40による検出波形の一例として、種類が異なる金属マーカ9についての検出波形の実験結果を示す。図7では、材質は“SPCC(Steel Plate Cold Commercial)材”、大きさは“縦及び/又は横方向の長さが100mm”と同じであるが、形態が異なる4種類の金属マーカ9について、外見を示す写真と、電磁誘導センサ40による検出波形、及び、X,Y座標値それぞれの時系列変化と、を示している。すなわち、左から順に、形態が四角形状である金属マーカ「四角形」、四角形状に多数の孔(パンチング)を設けた金属マーカ「パンチングメタル」、丸形状である金属マーカ「丸形」、三角形状である金属マーカ「三角形」、の4種類である。
【0048】
図7に示すように、金属マーカ9の種類に応じて検出波形が異なる。制御装置10は、電磁誘導センサ40による検出波形と、予め定められた金属マーカ9の種類毎の検出波形とを、例えばパターンマッチング処理により比較することで、検出した金属マーカ9の種類を判別することができる。また、同一の検出波形における軌跡の変化順序から、鉄道車両3の進行方向も判別することができる。
【0049】
[機能構成]
図8は、制御装置10の機能構成を示すブロック図である。図8によれば、制御装置10は、操作部102と、表示部104と、音出力部106と、通信部108と、処理部200と、記憶部300とを備え、一種のコンピュータとして構成することができる。
【0050】
操作部102は、例えばボタンスイッチやタッチパネル、キーボード等の入力装置で実現され、なされた操作に応じた操作信号を処理部200に出力する。表示部104は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)やタッチパネル等の表示装置で実現され、処理部200からの表示信号に応じた各種表示を行う。音出力部106は、例えばスピーカ等の音出力装置で実現され、処理部200からの音信号に応じた各種音出力を行う。通信部108は、例えば有線或いは無線による通信装置で実現され、通信ネットワークを介して外部装置との通信を行う。
【0051】
処理部200は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部300に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、制御装置10を構成する各部への指示やデータ転送を行い、制御装置10の全体制御を行う。また、処理部200は、記憶部300に記憶された走行位置算出プログラム302を実行することで、走行位置算出部202、画像取得部204、判定部206、第1の補正部208、第2の補正部210の各機能ブロックとして機能する。但し、これらの機能ブロックは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等によってそれぞれ独立した演算回路として構成することも可能である。
【0052】
走行位置算出部202は、鉄道車両3の走行位置を随時算出する。具体的には、GNSS受信機20がGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星から受信した受信信号を用いて走行速度を随時算出し、この走行速度から、所与の算定起点位置からの走行距離を積算することで走行位置を随時算出する。或いは、車軸に取り付けられた速度発電機(TG)やパルスジェネレータ(PG)等による回転検知信号を用いて、所与の算定起点位置からの走行距離を積算することで走行位置を随時算出するようにしてもよい。或いは、鉄道車両3に加速度センサが搭載される場合には、加速度センサの検出信号から得られる鉄道車両の進行方向の加速度を用いて、所与の算定起点位置からの走行距離を積算することで走行位置を随時算出するようにしてもよい。
【0053】
走行位置算出部202が算出した算出位置は、算出時刻と対応付けて、走行位置データ310として蓄積記憶される。また、現在の算定起点位置は、第1の補正部208又は第2の補正部210による更新時刻と対応付けて、算定起点位置データ312として記憶される。
【0054】
画像取得部204は、鉄道車両3の走行中の沿線画像として撮影画像又は距離画像を取得する。具体的には、カメラ30により撮影された鉄道車両3の進行方向前方の撮影画像を、沿線画像として取得する。或いは、鉄道車両3に、LiDAR等の光学センサ、超音波センサ等の距離センサを搭載する場合には、距離センサにより得られる距離画像を取得するようにしてもよい。画像取得部204が取得した沿線画像は、取得時刻等と対応付けて、沿線画像データ322として蓄積記憶される。
【0055】
判定部206は、走行位置が所定の補正位置を含む所定の補正区間に進入した場合に、画像取得部204により取得される画像と、当該補正位置における沿線画像として予め設定された参照画像と、の比較を開始して所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定する。具体的には、画像取得部204により取得される画像と参照画像との類似度を判定する画像マッチング処理を行い、類似度が所定のピーク条件を満たすことを画像適合条件として、画像適合条件を満たすタイミングを判定する(図2参照)。
【0056】
補正区間は、補正区間データ314として予め定められている。図9は、補正区間データ314の一例を示す図である。図9に示すように、補正区間データ314は、補正区間それぞれについて、識別番号である区間番号に対応付けて、当該補正区間の範囲と、当該補正区間内の補正位置と、当該補正位置に該当する参照画像の画像番号と、を対応付けて格納している。補正区間の範囲は、キロ程で表現される範囲である。補正位置は、キロ程で表現される位置である。参照画像は、参照画像データ318として予め定められている。
【0057】
図10は、参照画像データ318の一例を示す図である。図10に示すように、参照画像データ318は、参照画像それぞれについて、画像番号に対応付けて、参照画像と、当該参照画像に対応する補正位置と、上り・下りの進行方向とを対応付けて格納している。
【0058】
第1の補正部208は、判定部206により肯定判定されたタイミングにおける走行位置が補正位置となるように、算定起点位置を補正位置で更新することで、走行位置算出部202の算出位置を補正する。補正位置は、例えば、画像取得部204により取得される沿線画像の所定部(例えば、中央部)に、線路を横断する踏切道の道路中央が写る位置である。
【0059】
第2の補正部210は、線路5に設置された金属マーカ9の電磁誘導センサ40による検出タイミングにおける走行位置が設置位置となるように走行位置算出部202の算出位置を補正する。具体的には、電磁誘導センサ40による金属マーカ9の検出波形に基づいて当該金属マーカ9の種類を判別することで、検出された金属マーカ9の設置位置を判定し、当該判定した設置位置に基づいて走行位置算出部202の算出位置を補正する。金属マーカには、材質、大きさ、及び形態のうちの何れかが異なる複数種類があり、鉄道車両3が走行する線路5には、GNSS衛星からの信号を受信できず、異なる種類の金属マーカ9が予め定められた異なる設置位置に分散配置された所定区間がある。
【0060】
また、第2の補正部210は、信号処理部212(図5参照)を有する。信号処理部212は、ロックインアンプであり、電磁誘導センサ40から送信信号及び受信信号が入力され、受信信号の振幅R及び位相θを、送信信号を参照信号として比較することにより測定する。そして、極座標系での振幅R及び位相θを、XY座標系における座標値(X,Y)として出力する。第2の補正部210は、信号処理部212が出力する座標値(X,Y)の軌跡を、金属マーカ9の検出波形として、金属マーカの種類を判別する(図6参照)。
【0061】
本実施形態では、金属マーカ9は、GNSS衛星の信号が受信できないGNSS受信不可能区間に分散配置されている。GNSS受信不可能区間は、GNSS受信不可能区間データ316として予め定められている。図11は、GNSS受信不可能区間データ316の一例を示す図である。図11によれば、GNSS受信不可能区間データ316は、GNSS受信不可能区間それぞれの範囲の一覧を格納している。
【0062】
金属マーカ9に関しては、金属マーカデータ320として予め定められている。図12は、金属マーカデータ320の一例を示す図である。図12によれば、金属マーカデータ320は、複数種類の金属マーカそれぞれについて、金属マーカの種類と、当該種類の金属マーカの検出波形と、当該種類の金属マーカの設置位置とを対応付けて格納している。
【0063】
金属マーカの種類は、材質、大きさ、及び形態の組み合わせにより定められる。材質は、例えば、SPCC(Steel Plate Cold Commercial)材である。大きさは、板状体の大きさであるが、厚さを含むとしてもよい。形態は、丸形や楕円形状、多角形状等の形状や、平面、波状面、パンチング(穴あき)面等の表面の模様等である。
【0064】
また、1つの金属マーカの種類に複数の設置位置が対応付けられている。これは、線路5は長大であり、多数の金属マーカ9を設置する必要があるからである。例えば、同一種類の金属マーカについては所定距離以上をおいて設置する、線路に沿った方向に種類順に金属マーカ9を設置する、といったことで、第2の補正部210は、判別した種類の金属マーカに対応付けられている複数の設置位置のうち、走行位置算出部202が算出した現在の走行位置に近い設置位置を、今回検出した金属マーカ9の設置位置として判定する。
【0065】
記憶部300は、ハードディスクやROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の記憶装置で実現され、処理部200が制御装置10を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶しているとともに、処理部200の作業領域として用いられ、処理部200が各種プログラムに従って実行した演算結果や、操作部102や通信部108を介した入力データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部300には、走行位置算出プログラム302と、走行位置データ310と、算定起点位置データ312と、補正区間データ314と、GNSS受信不可能区間データ316と、参照画像データ318と、金属マーカデータ320と、沿線画像データ322とが記憶される。
【0066】
[処理の流れ]
図13は、制御装置10が行う走行位置算出処理の流れを説明するフローチャートである。この処理は、処理部200が走行位置算出プログラム302を実行することで実現される処理であり、例えば、始発駅からの出発に先立って開始される。
【0067】
先ず、処理部200は、走行位置を、初期値(算定起点位置)に設定する(ステップS1)。次いで、GNSS受信機20によるGNSS信号の受信(捕捉)に成功しているかを判断し、成功しているならば(ステップS3:YES)、走行位置算出部202が、受信したGNSS信号に基づき、算定起点位置からの走行距離を積算することで、走行位置の算出を随時行う(ステップS5)。
【0068】
続いて、判定部206が、補正区間データ314を参照して、走行位置が補正区間に進入したかを判断し、補正区間に進入したならば(ステップS7:YES)、参照画像データ318を参照し、画像取得部204により取得された沿線画像と、進入したと判断した補正区間に対応する参照画像との画像マッチング処理を行って、類似度がピーク条件を満たすタイミングを判定する(ステップS9)。そして、第1の補正部208が、判定部206による判定タイミングにおける走行位置が補正位置となるように、算定起点位置を、当該参照画像に対応する補正位置で更新する(ステップS11)。
【0069】
一方、GNSS信号の受信(捕捉)に失敗しているならば(ステップS3:NO)、処理部200は、GNSS受信不可能区間データ316を参照して、GNSS受信不可能区間内かを判断する。GNSS受信不可能区間内ならば(ステップS13:YES)、第2の補正部210が、電磁誘導センサ40による検出信号の変化有無をもとに金属マーカ9を検出したかを判断する。金属マーカ9を検出したならば(ステップS15:YES)、検出波形に基づき、金属マーカデータ320を参照して、検出した金属マーカ9の種類を判別し、その設置位置を判定する(ステップS17)。そして、検出タイミングにおける走行位置が判定した設置位置となるように、算定起点位置を設置位置で更新する(ステップS19)。
【0070】
その後、終着駅への到着といった終了条件を満たしたことにより本処理を終了するかを判断し、終了しないならば(ステップS21:NO)、ステップS3に戻り、同様の処理を繰り返す。終了するならば(ステップS21:YES)、本処理は終了となる。
【0071】
[作用効果]
本実施形態の車上装置1によれば、地上の専用設備を利用せずに、鉄道車両3の走行位置を車上において精度良く算出することが可能となる。つまり、車上装置1は、鉄道車両3の走行位置を随時算出するとともに、走行中の沿線画像と、補正位置における沿線画像として予め設定された参照画像とを比較して、所定の画像適合条件を満たすタイミングを判定し、肯定判定したタイミングにおける走行位置が補正位置となるように走行位置を補正する。画像適合条件を満たすタイミングとは、鉄道車両の位置が補正位置となったタイミングであるから、そのタイミングにおける走行位置が補正位置なるように走行位置を補正することで、鉄道車両3の走行位置を精度良く算出することが可能となる。また、沿線画像と参照画像との比較を、所定の補正区間に進入した場合に開始するので、画像適合条件を満たすタイミングの判定を精度良く行うことが可能である。このことにより、走行位置を補正するための地上の専用設備を利用せずに、車上において、鉄道車両の走行位置を精度良く算出することが可能となる。従って、地上の専用設備に係るコストを省くことが可能となる。
【0072】
また、金属マーカ9が設置された線路5上を鉄道車両3が走行する際に、電磁誘導センサ40による金属マーカ9の検出タイミングにおける走行位置がその金属マーカ9の設置位置となるように、走行位置が補正される。これにより、走行位置を精度良く補正することが可能となる。また、電磁誘導センサ40で検出可能な金属マーカ9は、地上子のような電気回路を有する設備ではないために設置や保守に要するコストが小さく、例えば地上子を地上マーカとして設置する従来の手法に比較して大幅に低減できる。
【0073】
なお、本発明の適用可能な実施形態は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能なのは勿論である。
【0074】
(A)金属マーカ9の設置位置
例えば、金属マーカ9は、トンネル区間等のGNSS受信機20によるGNSS信号の受信ができない区間に限らず、線路5における任意の設置位置に分散配置してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…車上装置
10…制御装置
200…処理部
202…走行位置算出部
204…画像取得部
206…判定部
208…第1の補正部
210…第2の補正部
212…信号処理部
300…記憶部
302…走行位置算出プログラム
310…走行位置データ
312…算定起点位置データ
314…補正区間データ
316…GNSS受信不可能区間データ
318…参照画像データ
320…金属マーカデータ
322…沿線画像データ
20…GNSS受信機
30…カメラ
40…電磁誘導センサ
42…センサ部
44…送受信アンプ部
3…鉄道車両
5…線路
7…踏切道
9…金属マーカ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13