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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133288
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】車両用シート及びばね組立体
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240920BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20240920BHJP
   B60N 2/70 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/68
B60N2/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114711
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2022154105の分割
【原出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 均
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利春
(57)【要約】
【課題】クッションパッドをシート下方側から支持するカバーがクッションスプリングと一緒に変形することを防止する。
【解決手段】車両用シート10は、クッションフレーム14のフロントパネル18とリヤフレーム20との間に架け渡され、クッションパッドをシート下方側から弾性的に支持した複数のSばね30と、サイドフレーム16に係止され、シート前後方向を長手とする長尺状をなし、クッションパッドをシート下方側から支持した左右のインナカバー50と、を備え、Sばね30は、シート左右方向に開口する複数のU字状の曲げ部を有し、複数の曲げ部のうち最もシート前方側の曲げ部におけるシート前後方向の位置と、インナカバー50の前端部におけるシート前後方向の位置とが揃っている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のサイドフレームと、
前記左右のサイドフレームの前部をシート左右方向に連結したフロントフレームと、
前記左右のサイドフレームの後部をシート左右方向に連結したリヤフレームと、
前記左右のサイドフレーム、前記フロントフレーム及び前記リヤフレームに対してシート上方側から取り付けられたクッションパッドと、
前記フロントフレームと前記リヤフレームとの間に架け渡された複数のSばねと、
前記サイドフレームに係止され、シート前後方向を長手とする長尺状をなし、前記クッションパッドをシート下方側から支持したカバーと、
を備え、
前記Sばねは、シート左右方向に開口する複数のU字状の曲げ部を有し、
前記複数の曲げ部のうち最もシート前方側の曲げ部におけるシート前後方向の位置と、前記カバーの前端部におけるシート前後方向の位置とが揃っている車両用シート。
【請求項2】
前記カバーの前部は、シート上下方向に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記傾斜部は、シート左右方向の内側へ向かうほど下方側へ向かうように傾斜し、
前記傾斜部の傾斜方向の寸法は、シート後方側へ向かうほど長くなっている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記カバーは、前記傾斜部の前部に対してシート左右方向の外側に配置された平面部を有し、
前記平面部は、シート前後方向から見て平面状をなし、前記クッションパッドの一部をシート下方側から支持している請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記傾斜部の下面には、前記傾斜部の傾斜方向に沿って延在し、シート前後方向に並んだ複数のリブが形成されている請求項2又は請求項3に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート及びばね組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示された車両用シートでは、シートクッションの骨格を構成するクッションフレームにクッションパッドが取り付けられている。クッションフレームは、左右のサイドフレームと、左右のサイドフレームの前部をシート左右方向に連結したフロントフレームと、左右のサイドフレームの後部をシート左右方向に連結したリヤフレームとを有している。フロントフレームとリヤフレームとの間には、複数のSばねが架け渡されており、複数のSばねによってクッションパッドがシート下方側から弾性的に支持されている。左右のサイドフレームと複数のSばねとの間には、左右の第2支持部材(カバー)が配置されている。左右のカバーは、シート左右方向外側の端部が左右のサイドフレームに連結されており、シート左右方向内側の端部がSばねに連結されている。これら左右のカバーによってクッションパッドが下方側から支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-183493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の先行技術では、左右のカバーがSばねに連結されているため、車両の運転環境によっては左右のカバーがSばねに追従して変形してしまい、クッションパッドに対するシート左右方向の拘束力が低下する虞がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、クッションパッドをシート下方側から支持するカバーがクッションスプリングと一緒に変形することを防止可能な車両用シート及びばね組立体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、左右のサイドフレームの前部がフロントフレームによってシート左右方向に連結され、前記左右のサイドフレームの後部がリヤフレームによってシート左右方向に連結されたクッションフレームと、前記クッションフレームに対してシート上方側から取り付けられたクッションパッドと、前記フロントフレームと前記リヤフレームとの間に架け渡され、前記クッションパッドをシート下方側から弾性的に支持したクッションスプリングと、前記左右のサイドフレームの少なくとも一方と前記クッションスプリングとの間に配置され、前記フロントフレームと前記リヤフレームとの間に架け渡された少なくとも一つの支持部材と、前記少なくとも一方のサイドフレームと前記少なくとも一つの支持部材との間に架け渡され、前記クッションパッドをシート下方側から支持した少なくとも一つのカバーと、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートでは、クッションフレームに対してシート上方側から取り付けられたクッションパッドが、クッションフレームのフロントフレームとリヤフレームとの間に架け渡されたクッションスプリングによって、シート下方側から弾性的に支持されている。左右のサイドフレームの少なくとも一方とクッションスプリングとの間には、少なくとも一つの支持部材が配置されている。少なくとも一つの支持部材は、フロントフレームとリヤフレームとの間に架け渡されている。そして、少なくとも一方のサイドフレームと少なくとも一つの支持部材との間には、少なくとも一つのカバーが架け渡されており、当該カバーによってクッションパッドがシート下方側から支持されている。この態様では、カバーがクッションスプリングに連結された構成ではないため、カバーがクッションスプリングに追従して変形することを防止できる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様において、前記支持部材は、ワイヤによって構成されている。
【0009】
第2の態様の車両用シートでは、クッションフレームのフロントフレームとリヤフレームとの間に架け渡された支持部材が、ワイヤによって構成されているため、支持部材の構成を簡素化することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第1の態様又は第2の態様において、前記クッションスプリングは、互いにシート左右方向に並び且つ各々がシート前後方向に延在する複数のSばねであり、前記複数のSばね及び前記少なくとも一つの支持部材におけるシート前方側の端部をシート左右方向に連結した第一連結部と、前記複数のSばね及び前記少なくとも一つの支持部材におけるシート後方側の端部をシート左右方向に連結した第二連結部と、を備えている。
【0011】
第3の態様の車両用シートでは、クッションスプリングを構成する複数のSばねと、少なくとも一つの支持部材とにおけるシート前後方向の両端部が、第一連結部及び第二連結部によってシート左右方向に連結されている。これにより、複数のSばねと少なくとも一つの支持部材を一つのばね組立体として取り扱うことができるので、シートクッションの製造等が容易になる。
【0012】
第4の態様のばね組立体は、互いに並列方向に並び且つ各々が前記並列方向と直交する延在方向に延在し、シートクッションのクッションスプリングを構成する複数のSばねと、前記複数のSばねに対して前記並列方向の少なくとも一方側に配置され、前記Sばねよりも撓み難く構成された少なくとも一つの支持部材と、前記複数のSばね及び前記少なくとも一つの支持部材における前記延在方向の一端部を前記並列方向に連結した第一連結部と、前記複数のSばね及び前記少なくとも一つの支持部材における前記延在方向の他端部を前記並列方向に連結した第二連結部と、を備えている。
【0013】
第4の態様のばね組立体によれば、シートクッションのクッションスプリングを構成する複数のSばねは、互いに並列方向に並び且つ各々が前記並列方向と直交する延在方向に延在する。複数のSばねに対して上記並列方向の少なくとも一方側には、Sばねよりも撓み難く構成された少なくとも一つの支持部材が配置されている。複数のSばね及び少なくとも一つの支持部材における上記延在方向の両端部は、第一連結部及び第二連結部によって上記記並列方向に連結されている。このばね組立体は、第3の態様における複数のSばね、支持部材、第一連結部及び第二連結部を備えているので、第3の態様と同様に構成することで、前述した効果が得られる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る車両用シート及びばね組立体では、クッションパッドをシート下方側から支持するカバーがクッションスプリングと一緒に変形することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る車両用シートのシートクッションの一部を示す斜視図である。
図2図1に示される構成から左右のインナカバーの図示を省略した斜視図である。
図3図1に示される構成を図1とは異なる方向から見た状態で示す斜視図である。
図4】実施形態に係るばね組立体を示す斜視図である。
図5】実施形態に係るばね組立体を示す平面図である。
図6】実施形態に係る車両用シートのシートクッションを含む周辺部材の構成を示す縦断面図である。
図7】実施形態に係る車両用シートのシートクッションが備えるインナカバーを示す斜視図である。
図8】実施形態に係る車両用シートのシートクッションが備えるインナカバーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1図8を参照して本発明の一実施形態に係る車両用シート10及びばね組立体30について説明する。なお、各図中においては、図面を見易くする関係から一部の符号を省略している場合がある。また、各図中に適宜記載された矢印FR、LH及びUPは、車両用シート10の前方、左方及び上方をそれぞれ示している。以下、単に前後、左右、上下の方向を用いて説明する場合、車両用シート10に対する方向を示すものとする。前後方向は、本発明における「延在方向」に相当し、左右方向は、本発明における「並列方向」に相当する。
【0017】
図6に示されるように、本実施形態に係る車両用シート10は、シートクッション12の骨格を構成するクッションフレーム14と、クッションフレーム14の下方に設けられた左右二つのスライドレール24と、クッションフレーム14と左右のスライドレール24を連結したリフタ機構26と、クッションフレーム14に取り付けられたばね組立体30と、クッションフレーム14とばね組立体30との間に設けられた左右二つのインナカバー50と、クッションフレーム14に対して左右両側に設けられた左右二つのアウタカバー60と、クッションフレーム14に対して上方側から取り付けられたクッションパッド70(図6参照)と、を備えている。左右のインナカバー50はそれぞれ、本発明における「カバー」に相当する。
【0018】
図1図3に示されるように、クッションフレーム14は、左右方向に離間して配置された左右二つのサイドフレーム16と、左右のサイドフレーム16の前部を左右方向に連結したフロントパネル18と、左右のサイドフレーム16の後端部を左右方向に連結したリヤパイプ20とを備えている。フロントパネル18は、本発明における「フロントフレーム」に相当し、リヤパイプ20は、本発明における「リヤフレーム」に相当する。
【0019】
サイドフレーム16及びフロントパネル18は、例えばプレス成形された金属製の板材によって構成されており、リヤパイプ20は、例えば金属製のパイプ材によって構成されている。サイドフレーム16は、前後方向を長手とし且つ左右方向を主要部の板厚方向とする長尺板状をなしている。フロントパネル18は、左右方向を長手とし且つ上下方向を主要部の板厚方向とする長尺板状をなしている。リヤパイプ20は、左右方向を軸方向とする円筒状をなしている。リヤパイプ20の上方側で左右のサイドフレーム16の後端部には、車両用シート10が備える図示しないシートバックのフレームの下端部が、図示しないリクライニング機構を介して連結されている。
【0020】
クッションフレーム14の下方には、左右のスライドレール24とリフタ機構26とが配置されている。左右のスライドレールは、車体床部に対する車両用シート10の前後位置を調節するためのシートスライド機構を構成している。リフタ機構26は、車体床部に対するシートクッション12の上下位置を調節するための機構であり、左右のサイドフレーム16と左右のスライドレール24とを連結した複数のリンク部材(図示省略)を備えている。
【0021】
図1図6に示されるように、クッションフレーム14に取り付けられたばね組立体30は、クッションスプリングを構成する複数(ここでは4つ)のSばね32と、複数のSばね32に対して左右方向両側に配置された左右二つの支持部材34と、複数のSばね32及び左右の支持部材34を連結した前後二つの連結部36、38と、隣り合うSばね32を連結した複数(ここでは5つ)のばね連結部40と、を備えている。前側の連結部36は、本発明における「第一連結部」に相当し、後側の連結部38は、本発明における「第2連結部」に相当する。
【0022】
Sばね32は、例えば金属のばね材からなるワイヤが角波状に曲げ加工されたものである。複数のSばね32は、クッションフレーム14の左右のサイドフレーム16の間において、互いに左右方向に並び且つ各々が前後方向に延在している。各Sばね32の前端部は、左右方向の一方側又は他方側へ曲げられており、クッションフレーム14のフロントパネル18の後端部に形成された切起し部18A(図1図3参照)に引っ掛けられて係止されている。各Sばね32の後端部は、左右方向から見て下方側が開放された略逆U字状に曲げられており、クッションフレーム14のリヤパイプ20に対して上方側から引っ掛けられて係止されている。これにより、各Sばね32がフロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡されている。
【0023】
左右の支持部材34は、例えば金属のばね材からなるワイヤが角波状に曲げ加工されたものである。左側の支持部材34は、複数のSばね32と左側のサイドフレーム16との間において前後方向に延在している。右側の支持部材34は、複数のSばね32と右側のサイドフレーム16との間において前後方向に延在している。各支持部材34の前端部は、左右方向から見て下方側が開放された略逆U字状に曲げられており、クッションフレーム14のフロントパネル18の後端部に形成された貫通孔18B(図1図3参照)に挿入されて係止されている。各支持部材34の後端部は、左右方向から見て下方側が開放された略逆U字状に曲げられており、クッションフレーム14のリヤパイプ20に対して上方側から引っ掛けられて係止されている。これにより、各支持部材34がフロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡されている。各支持部材34の前後方向中間部は、前後方向に沿った直線状に形成されている。各支持部材34は、各Sばね32よりも撓み難く構成されている。
【0024】
前後の連結部36、38及び複数のばね連結部40は、例えばインサート成形によって複数のSばね32及び左右の支持部材34と一体化されたものであり、樹脂によって構成されている。前側の連結部36は、複数のSばね32及び左右の支持部材34の前端部を左右方向に連結している。複数のSばね32及び左右の支持部材34の前端部は、前側の連結部36すなわち樹脂を介してフロントパネル18と接触している。後側の連結部38は、複数のSばね32及び左右の支持部材34の後端部を左右方向に連結している。複数のSばね32及び左右の支持部材34の後端部は、後側の連結部38すなわち樹脂を介してリヤパイプ20と接触している。複数のばね連結部40は、隣り合うSばね32同士を左右方向に連結している。このように、前後の連結部36、38及び複数のばね連結部40によって複数のSばね32及び左右の支持部材34が連結され、ばね組立体30としてアセンブリ化されている。
【0025】
図1図3及び図6に示されるように、左右のインナカバー50は、左右の支持部材34と左右のサイドフレーム16との間に設けられている。左右のインナカバー50は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。左右のインナカバー50は、クッションフレーム14よりも前後方向の長さが短く設定されており、左右のサイドフレーム16の後部側に配置されている。図7及び図8には、右側のインナカバー50が図示されている。右側のインナカバー50と左側のインナカバー50とは、左右対称に形成されている。
【0026】
左右のインナカバー50の上端部は、左右のサイドフレーム16の上端部に対して上方側から係合しており、爪嵌合等の手段で左右のサイドフレーム16に係止されている。左右のインナカバー50の前部は、上下方向に対して傾斜した傾斜部50Aとされており、左右のインナカバー50の後部は、上下方向に沿って延びる垂直部50Bとされている。各インナカバー50の垂直部50Bは、各サイドフレーム16の後端部を左右方向の内側から覆っている。各インナカバー50の垂直部50Bには、リヤフレーム20が下方側から嵌った半円状の切欠部52(図7及び図8以外では符号省略)が形成されている。
【0027】
各インナカバー50の傾斜部50Aは、左右方向の内側へ向かうほど下方側へ向かうように傾斜している。各インナカバー50の傾斜部50Aの幅寸法(傾斜方向の寸法)は、後方側へ向かうほど長くなっており、後方側へ向かうほど傾斜部50Aが傾斜方向に拡大している。傾斜部52Aの下端部には、複数(ここでは3つ)の係止部50Cが形成されている。複数の係止部50Cは、前後方向に並んで配置されている。各係止部50Cには、前後方向から見て下方側が開放された切込部51(図6図8参照)が形成されている。各係止部50Cの切込部51には、支持部材34が下方側から嵌合している。支持部材34は、各係止部50Cの下端部に形成された抜止爪(符号省略)によって各係止部50Cに抜止されている。各係止部50Cの切込部51に支持部材34が嵌合する際には、各係止部50Cが弾性変形した後に弾性復帰する。
【0028】
図6に示される左右のアウタカバー60は、左右のサイドフレーム16に対して左右方向外側に配置されている。左右のインナカバー50は、例えば樹脂の射出成形によって製造されたものであり、前後方向を長手とする長尺状をなしている。右側(ここでは車両幅方向外側)のアウタカバー60は、前後方向の長さがクッションフレーム14と同等に設定されており、クッションフレーム14を右側から覆っている。左側のアウタカバー60は、クッションフレーム14よりも前後方向の長さが短く設定されており、左側のサイドフレーム16の後部側に配置されている。
【0029】
図6に示されるクッションパッド70は、例えばウレタンフォーム等の発泡体からなり、シートクッション12のクッション材を構成している。クッションパッド70は、クッションフレーム14に対して上方側から被せられている。クッションパッド70の前部は、フロントパネル18によって下方側から支持されている。クッションパッド70の中央部は、複数のSばね32によって下方側から弾性的に支持されている。クッションパッド70の後端部は、リヤパイプ20及び後側の連結部38によって下方側から支持されている。クッションパッド70の後部の左右両側部は、左右のインナカバー50の傾斜部50Aによって下方側から支持されている。
【0030】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
本実施形態に係る車両用シート10では、クッションフレーム14に対して上方側から取り付けられたクッションパッド70が、クッションフレーム14のフロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡された複数のSばね32によって下方側から弾性的に支持されている。左右のサイドフレーム16と複数のSばね32との間には、左右の支持部材34が配置されている。左右の支持部材34は、フロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡されている。そして、左右のサイドフレーム16と左右の支持部材34との間には、左右のインナカバー50が架け渡されており、これらのインナカバー50によってクッションパッド70が下方側から支持されている。
【0032】
本実施形態では、左右のインナカバー50がSばね32と連結されておらず、Sばね32とは独立してフロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡された支持部材34と連結されている。これにより、左右のインナカバー50がSばね32に追従して変形することを防止できる。その結果、左右のインナカバー50によるクッションパッド70の拘束力を維持することができる。しかも、左右のインナカバー50を設計する際に、複数のSばね32の集合体(すなわちクッションスプリング全体)の挙動を加味する必要がないため、左右のインナカバー50の設計が容易になる。
【0033】
また、左右の支持部材34は、フロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡されているため、例えば左右のサイドフレーム16に片持ち状態で固定された支持部材によって左右のインナカバー50が支持される場合と比較して、上方側から各インナカバー50に入力される荷重に対する強度及び剛性が高くなる。しかも、フロントパネル18とリヤパイプ20との間に支持部材34を架け渡せばよいので、溶接が不要となり、製造が容易になる。
【0034】
また、フロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡される左右の支持部材34は、撓み難く構成することができるので、左右のインナカバー50を介して乗員(着座者)を支えることも可能である。
【0035】
また例えば、左右のインナカバー50から左右のサイドフレーム16側へ向けてリブ等を突出させ、左右のインナカバー50を左右のサイドフレーム16に支持させる場合と比較して、左右のインナカバー50を凹凸の少ない形状にすることができる。その結果、乗員が車両降車時にシートクッション12から受ける異物感を少なくすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、左右のインナカバー50の傾斜部50Aの幅寸法が、後方側へ向かうほど長くなっており、後方側へ向かうほど傾斜部50Aが拡大している。このため、傾斜部50Aの後部側において、乗員の臀部を良好に支持することができ、かつ、臀部のぐらつきを抑えることができる。しかも、傾斜部50Aの前部側の幅寸法が小さくなっているため、乗員の車両乗降性を良くすることができ、上記の異物感を一層少なくすることができる。
【0037】
また、本実施形態では、クッションフレーム14のフロントパネル18とリヤパイプ20との間に架け渡された左右の支持部材34が、ワイヤによって構成されているため、支持部材34の構成を簡素化することができる。
【0038】
さらに、本実施形態では、クッションスプリングを構成する複数のSばね32及び左右の支持部材34の前後両端部が、前後の連結部36、38によって左右方向に連結されている。これにより、複数のSばね32と左右の支持部材34を一つのばね組立体30として取り扱うことができるので、シートクッション12の製造等が容易になる。
【0039】
なお、上記実施形態では、複数のSばね32がクッションスプリングである場合について説明したが、これに限るものではない。例えばクッションスプリングは、板金製や樹脂製でもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、左右二つのインナカバー50と左右二つの支持部材34とを備えた構成にしたが、これに限るものではない。例えば各インナカバー50がそれぞれ前後に複数個に分割された構成にしてもよいし、各インナカバー50がそれぞれ複数の支持部材34によって支持される構成にしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、左右二つの支持部材34を備えた構成にしたが、これに限らず、左右の支持部材34の何れか一方を備えない構成にしてもよい。また、左右の支持部材34は、ワイヤ製にかぎらず、例えば板金製でもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、クッションスプリングである複数のSばね32と、左右の支持部材34とが、前後の連結部36、38によって連結された構成にしたが、これに限らず、クッションスプリングと支持部材とを連結する連結部を備えない構成にしてもよい。
【0043】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
10 車両用シート
12 シートクッション
14 クッションフレーム
16 サイドフレーム
18 フロントパネル(フロントフレーム)
20 リヤパイプ(リヤフレーム)
50 インナカバー(カバー)
70 クッションパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8