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特開2024-133297医療機器洗浄用過酢酸組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133297
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】医療機器洗浄用過酢酸組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/48 20060101AFI20240920BHJP
   C11D 7/38 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 7/18 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 1/72 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 3/39 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20240920BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20240920BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C11D3/48
C11D7/38
C11D7/26
C11D7/18
C11D1/72
C11D3/39
C11D3/20
C11D3/36
C11D3/33
A61M1/16 185
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114802
(22)【出願日】2024-07-18
(62)【分割の表示】P 2021527438の分割
【原出願日】2020-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019118563
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和志
(72)【発明者】
【氏名】君塚 健一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守悟
(57)【要約】
【課題】過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たし、かつタンパク除去力が向上した、医療機器殺菌及び洗浄用組成物。
【解決手段】過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項2】
前記添加剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上である、
請求項1に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項3】
前記添加剤がポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩である、請求項1又は2に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項4】
前記添加剤がリン系安定剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項5】
前記添加剤がカルボン酸系安定剤である、請求項1~4のいずれか一項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項6】
前記添加剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、及びカルボン酸系安定剤である、請求項1又は2に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項7】
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含む、請求項6に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項8】
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含む、請求項6に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項9】
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であって、
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、請求項6に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項10】
前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩を0.001~5質量%含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項11】
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項12】
前記組成物のpH値が、5.0~9.0である請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
【請求項14】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
【請求項15】
前記添加剤、酢酸及びアルカリを混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項17】
過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0である、請求項16に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項18】
請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物又は請求項16若しくは17に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
【請求項19】
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、封入法から選択される、請求項18に記載の殺菌及び洗浄方法。
【請求項20】
前記医療用器具が、透析用器具である、請求項18又は19に記載の殺菌及び洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の殺菌・洗浄に適する殺菌及び洗浄用過酢酸組成物並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機器の殺菌・洗浄には、酸性やアルカリ性の薬品が使用されており、過酸水溶液もその1つである。しかしながら、酸性やアルカリ性の薬品が使用されるために、その廃液が下水排除基準を満たさないまま排水されて、コンクリート製の下水道管が損傷している例が後を絶たない。下水道管の損傷は、下水への排水ができなくなると共に、道路陥没を引き起こす可能性もあり、早急な対応が必要である。このような背景のもと、東京都下水道局は、2019年1月に、透析排水と下水道管についての注意喚起を発表した。東京都下水道局では、排水についての下水排除基準を水素イオン濃度(pH)が5を超え9未満の範囲内に収めることを求めている。
【0003】
医療機器の殺菌・洗浄に用いる殺菌及び洗浄用過酢酸組成物としては、酸性の過酢酸水溶液(特許文献1)、アルミニウム腐食抑制性の酸性酸化剤含有組成物(特許文献2)、アルカリ性の殺菌洗浄用製剤(特許文献3)などが知られている。しかしながら、これらの組成物は、必ずしも排水についての下水排除基準を満たすものとは言えない。よって、依然として、配水管を傷めない洗浄剤が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-184868号公報
【特許文献2】WO2010/095231号公報
【特許文献3】特表2016-532634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、添加剤を添加することにより、過酸化物の安定性が高く、排水が下水排除基準を満たし、かつタンパク除去力が向上した、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の実施形態を含む。
【0008】
<1>
過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
<2>
前記添加剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上である、
<1>に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<3>
前記添加剤がポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩である、<1>又は<2>に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<4>
前記添加剤がリン系安定剤である、<1>~<3>のいずれかに記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<5>
前記添加剤がカルボン酸系安定剤である、<1>~<4>のいずれかに記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<6>
前記添加剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、及びカルボン酸系安定剤である、<1>又は<2>に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<7>
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含む、<6>に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<8>
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含む、<6>に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<9>
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であって、
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、<6>に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<10>
前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩を0.001~5質量%含む、<6>~<9>のいずれかに記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<11>
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、<6>~<9>のいずれかに記載の殺菌及び洗浄用組成物。
<12>
前記組成物のpH値が、5.0~9.0である<1>~<11>のいずれかに記載の組成物。
<13>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<1>~<12>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
<14>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<1>~<12>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
<15>
前記添加剤、酢酸及びアルカリを混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する、<14>に記載の製造方法。
<16>
<1>~<12>のいずれかに記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
<17>
過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0である、<16>に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
<18>
<1>~<12>のいずれかに記載の組成物又は<16>若しくは<17>に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
<19>
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、封入法から選択される、<20>に記載の殺菌及び洗浄方法。
<20>
前記医療用器具が、透析用器具である、<18>又は<19>に記載の殺菌及び洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、添加剤を添加することにより、過酸化物の安定性が高く、排水が下水排除基準を満たし、かつタンパク除去力が向上した、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができる。本発明の組成物は、pH値が下水排除基準を満たすため、使用後の廃液を中和処理する必要なく排水することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.殺菌及び洗浄用組成物
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水、ならびに添加剤を含む。
【0011】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、そのpH値が4.0~10.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、例えば、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0,8.5、9.0,9.5、10.0などであってよいが、これらの値に限定されない。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、例えば、4.0~10.0、4.0~9.5、4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、4.0~7.5、4.0~7.0、4.0~6.5、4.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、4.5~10.0、4.5~9.5、4.5~9.0、4.5~8.5、4.5~8.0、4.5~7.5、4.5~7.0、4.5~6.5、4.5~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0~10.0、5.0~9.5、5.0~9.0、5.0~8.5、5.0~8.0、5.0~7.5、5.0~7.0、5.0~6.5、5.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.1~10.0、5.1~9.5、5.1~9.0、5.1~8.5、5.1~8.0、5.1~7.5、5.1~7.0、5.1~6.5、5.1~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.2~10.0、5.2~9.5、5.2~9.0、5.2~8.5、5.2~8.0、5.2~7.5、5.2~7.0、5.2~6.5、5.2~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.3~10.0、5.3~9.5、5.3~9.0、5.3~8.5、5.3~8.0、5.3~7.5、5.3~7.0、5.3~6.5、5.3~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.4~10.0、5.4~9.5、5.4~9.0、5.4~8.5、5.4~8.0、5.4~7.5、5.4~7.0、5.4~6.5、5.4~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.5~10.0、5.5~9.5、5.5~9.0、5.5~8.5、5.5~8.0、5.5~7.5、5.5~7.0、5.5~6.5、5.5~6.0であってよい。本発明の好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0~9.0である。本発明のより好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0超である。本発明のより好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5超10以下である。本発明のより好ましい別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5超9以下である。
【0012】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。
【0013】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物に含まれる添加剤は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上であることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩を含むものであってよい。
【0015】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、リン系安定剤を含むものであってよい。
【0016】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、カルボン酸系安定剤を含むものであってよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、すず酸塩を含むものであってよい。
【0018】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、リン系安定剤及びカルボン酸系安定剤を含むものであってよい。この実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、すず酸塩をさらに含み得る。
【0019】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、及びカルボン酸系安定剤を含むものであってよい。この実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、すず酸塩をさらに含み得る。
【0020】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、及びリン系安定剤を含むものであってよい。この実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、すず酸塩をさらに含み得る。
【0021】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、及びカルボン酸系安定剤を含むものであってよい。この実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、すず酸塩をさらに含み得る。
【0022】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、及びすず酸塩を含むものであってよい。
【0023】
本発明の一実施形態において、上記の殺菌及び洗浄用組成物は、すず酸塩を0.0001~5質量%の濃度で含むものであってよい。
【0024】
本発明の別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸塩を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。
【0025】
本発明の一実施形態において、上記の殺菌及び洗浄用組成物は、リン系安定剤及びカルボン酸系安定剤をさらに含み得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、前記リン系安定剤の濃度は0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよく、前記カルボン酸系安定剤の濃度は0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよい。
【0026】
以下、各成分について説明する。
【0027】
(1)添加剤
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水を含み、添加剤をさらに含み得る。これらの添加剤を添加することにより、過酸化水素の安定性が向上するとともに、殺菌及び洗浄用組成物のpH値を4.0~10.0に調整することができる。さらに、本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、pH値を上記の範囲に調整することができることにより、優れたタンパク除去力も達成することができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上を含むものであってよい。
【0028】
<ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩を含み得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩を単独で含んでもよく、リン系安定剤、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上と組み合わせて含んでもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられ得るポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/は、下記の一般式で表される。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩などであってよいが、これらに限定されない。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩は、好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸である。
-(O-R)n-O-R-COOH
(式中、Rはラウリル基であり、Rはエチレン基であり、Rはメチレン基であり、nは1~30の数を表す。)
【0029】
好ましい実施形態において、nは、2~20であってよい。好ましい実施形態において、nは例えば、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15であってよいが、これらに限定されない。より好ましい実施形態において、nは4.5又は10である。
【0030】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩の分子量は、300~1200であってよい。好ましい実施形態において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩の分子量は、400~1000である。
【0031】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩の濃度は、0.001~5質量%であってよい。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩の濃度は、好ましくは0.01~2質量%であってよく、より好ましくは0.01~1質量%であってよい。
【0032】
<リン系安定剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてリン系安定剤を含み得る。リン系安定剤としては、過酸化水素を安定化し、かつ殺菌及び洗浄用組成物のpH値を上記の範囲に調整することができるものであればいずれも使用できる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてリン系安定剤を単独で含んでもよく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上と組み合わせて含んでもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるリン系安定剤としては、例えばピロリン酸又はその塩、リン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩、ニトリロトリスメチレンホスホン酸又はその塩、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、リン系安定剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であってよい。本発明の別の実施形態において、リン系安定剤は、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩であってよい。本発明のさらに別の実施形態において、リン系安定剤は、ピロリン酸又はその塩であってよい。本発明の好ましい実施形態において、リン系安定剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であってよい。
【0033】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、リン系安定剤の濃度は、0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよく、好ましくは0.0001~0.30質量%であってよく、より好ましくは0.0001~0.20質量%であり、さらにより好ましくは0.0001~0.10質量%であってよい。
【0034】
<カルボン酸系安定剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてカルボン酸系安定剤を含み得る。カルボン酸系安定剤としては、過酸化水素を安定化し、かつ殺菌及び洗浄用組成物のpH値を上記の範囲に調整することができるものであればいずれも使用できる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてカルボン酸系安定剤を単独で含んでもよく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上と組み合わせて含んでもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるカルボン酸系安定剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩、ピコリン酸又はその塩、ジピコリン酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N”-三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N”’,N”’-六酢酸又はその塩、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸又はその塩、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン又はその塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸、及び(S,S)-エチレンジアミン-N,N’-二コハク酸又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、カルボン酸系安定剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩であってよい。本発明の別の実施形態において、カルボン酸系安定剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩であってよい。本発明の好ましい実施形態において、カルボン酸系安定剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩であってよい。
【0035】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、カルボン酸系安定剤の濃度は、0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよく、好ましくは0.0001~0.30質量%であってよく、より好ましくは0.0001~0.20質量%であり、さらにより好ましくは0.0001~0.10質量%であってよい。
【0036】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、
前記リン系安定剤として、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含み、
前記カルボン酸系安定剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含み得る。
【0037】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、
前記リン系安定剤として、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩を含み、
前記カルボン酸系安定剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩を含み得る。
【0038】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含むものであってよい。
【0039】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001~0.30質量%、及び前記及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001~0.30質量%含むものであってよい。
【0040】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001~0.20質量%、及び前記及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001~0.20質量%含むものであってよい。
【0041】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001~0.10質量%、及び前記及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001~0.10質量%含むものであってよい。
【0042】
<すず酸塩>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水を含み、添加剤としてすず酸塩を含み得る。すず酸塩を添加することにより、過酸化水素の安定性が向上するとともに、殺菌及び洗浄用組成物のpH値を4.0~10.0に調整することができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてすず酸塩を単独で含んでもよく、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、及びカルボン酸系安定剤からなる群より選択される1種以上の添加剤と組み合わせて含んでもよい。本発明において、すず酸塩は、例えば、すず酸ナトリウム、すず酸カリウム、すず酸ストロンチウムなどであってよいが、これらに限定されない。本発明の好ましい実施形態において、すず酸塩はすず酸ナトリウムであってよい。
【0043】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、前記すず酸塩の濃度は、0.0001~5質量%であってよく、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.0001~0.5質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.2質量%であってよい。
【0044】
(2)その他の成分
<過酸化水素>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素が含まれる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素は、それ自体、殺菌・洗浄能力を有するため、組成物全体の殺菌・洗浄効果を高めるのに寄与するだけでなく、酢酸との平衡反応により十分な量の過酢酸の生成及び維持(水溶液中における安定性)に寄与している。よって、酢酸と過酸化水素との組み合わせにより、さらに本発明の組成物の殺菌・洗浄効果を高めることができる。
【0045】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酸化水素の濃度は、0.001~25質量%であってよく、好ましくは0.005~20質量%、より好ましくは0.01~15質量%、さらにより好ましくは0.02~10質量%であってよい。過酸化水素の濃度が低すぎると酢酸との平衡反応により生成する過酢酸の量が十分でなく、本発明の殺菌・洗浄効果が十分に発揮されない場合がある。一方、過酸化水素の濃度が高すぎても前記効果は高まらず、かえって安全性に問題が生じる場合がある。
【0046】
<酢酸及び/又はその塩>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。酢酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である酢酸塩であれば特に限定されず、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0047】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における酢酸及び/又はその塩の濃度は、0.01~70質量%であってよく、好ましくは0.05~60質量%であってよく、より好ましくは0.1~55質量%であり、さらにより好ましくは0.2~50質量%であってよい。
【0048】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、酢酸及び/又はその塩の濃度は、過酢酸の濃度の3.5~250倍であってよい。本発明の一実施形態において、酢酸及び/又はその塩の濃度は、過酢酸の濃度の3.5~250倍、3.5~150倍、3.5~100倍、5~250倍、5~150倍、5~100倍、10~250倍、10~150倍、10~100倍、などであってよい。本発明の好ましい実施形態において、酢酸及び/又はその塩の濃度は、過酢酸の濃度の10~250倍、10~150倍、10~100倍であってよい。酢酸及び/又はその塩の濃度が上記の濃度であれば、殺菌及び洗浄対象物に付着した炭酸カルシウム等のカルシウムスケールを十分に除去することができる。
【0049】
<過酢酸>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる過酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0050】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、0.001~15質量%であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、例えば、0.001質量%、0.005質量%、0.01質量%、0.1質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、1.0質量%、3.0質量%、4.0質量%、5.0質量%、10質量%、15質量%であってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、例えば、0.001~15質量%、0.001~10質量%、0.001~5質量%、0.001~3質量%、0.005~15質量%、0.005~10質量%、0.005~5質量%、0.005~3質量%、0.01~15質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.1~15質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~3質量%、0.3~15質量%、0.3~10質量%、0.3~5質量%、0.3~3質量%、0.4~15質量%、0.4~10質量%、0.4~5質量%、0.4~3質量%、0.5~15質量%、0.5~10質量%、0.5~5質量%、0.5~3質量%、0.6~15質量%、0.6~10質量%、0.6~5質量%、0.6~3質量%、1.0~15質量%、1.0~10質量%、1.0~5質量%、1.0~3質量%、などであってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、好ましくは0.001~10質量%であってよく、より好ましくは0.005~5質量%であり、さらにより好ましくは0.01~3質量%であってよい。
【0051】
<その他の成分>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物には、さらに必要に応じて、一般的な殺菌及び洗浄用薬剤等に使用される添加剤など、例えば界面活性剤、増粘剤、香料、着色剤、加水分解酵素等が適宜配合されていてもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、過酢酸、及び必要に応じて添加する安定剤その他の添加剤以外の残分は、主として水である。
【0052】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して殺菌及び洗浄用希釈組成物とすることができる。希釈剤としては通常、水が用いられる。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0053】
3.殺菌及び洗浄用希釈組成物
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸、酢酸及び/又はその塩、過酸化水素、及び水、並びに添加剤を含み、さらに希釈剤として追加の水を含む。各成分については、上述した通りである。
【0054】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、上記の殺菌及び洗浄用組成物と、追加の水とを含む。
【0055】
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、上記の殺菌及び洗浄用組成物を水で希釈することにより作製され得る。上述のように、希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0056】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸の濃度が、0.001~1.5質量%であってよく、好ましくは0.001~1.0質量%、より好ましくは0.005~0.5質量%、さらにより好ましくは0.005~0.3質量%であってよい。
【0057】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、酢酸及び/又はその塩の濃度が、0.01~7質量%であってよく、好ましくは0.05~6質量%、より好ましくは0.1~5.5質量%、さらにより好ましくは0.2~5質量%であってよい。
【0058】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酸化水素の濃度が、0.001~2.5質量%であってよく、好ましくは0.005~2質量%、より好ましくは0.01~1.5質量%、さらにより好ましくは0.02~1.0質量%であってよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であるものであってよい。
【0060】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、添加剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩、リン系安定剤、カルボン酸系安定剤、及びすず酸塩からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0061】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物に含まれ得るポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸及び/又はその塩の濃度は、0.00001~0.1質量%であってよく、好ましくは0.00005~0.05質量%であってよく、より好ましくは0.0001~0.03質量%であってよく、さらにより好ましくは0.0001~0.01質量%であってよい。
【0062】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物に含まれ得るリン系安定剤の濃度は、0.0001~0.05質量%であってよく、好ましくは0.0001~0.03質量%、より好ましくは0.0001~0.02質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.01質量%であってよい。
【0063】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物に含まれ得るカルボン酸系安定剤の濃度は、0.0001~0.05質量%であってよく、好ましくは0.0001~0.03質量%、より好ましくは0.0001~0.02質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.01質量%であってよい。
【0064】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物に含まれ得るすず酸塩の濃度は、0.0001~0.5質量%であってよく、好ましくは0.0001~0.1質量%、より好ましくは0.0001~0.05質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.02質量%であってよい。
【0065】
4.殺菌及び洗浄用組成物及び殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。この製造方法では、中和熱が発生せず、作業性が良い。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0066】
上記酢酸塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である酢酸塩であればよく、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸アンモニウムを用いることができるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、酢酸塩は、酢酸ナトリウムであってよい。本発明の別の実施形態において、酢酸塩は、酢酸カリウムであってよい。
【0067】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
を混合する混合工程を含むものであってよい。この製造方法では、中和熱が発生し平行移動速度が増加して反応が加速され得る。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0068】
上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化ルビジウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、アンモニアなどを用いることができるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、アルカリは、水酸化ナトリウムであってよい。本発明の別の実施形態において、アルカリは、水酸化カリウムであってよい。
【0069】
アルカリを使用する上記の製造方法は、添加剤、酢酸及びアルカリを混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する工程を含み得る。この製造方法では、中和熱が発生するため、添加剤、酢酸及びアルカリを混合することにより発生する中和熱を利用して、30~50℃で過酸化水素水を混合することができ、これにより平行移動速度が増加して反応を加速させることができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(A)及び(B):
工程(A) 少なくとも、(i)添加剤、(ii)過酸化水素水及び酢酸、および(iii)酢酸塩またはアルカリ
を混合する工程と;
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を1日以上静置する工程
とを含むものであってよい。工程(A)で得られた水溶液(a)を工程(B)において静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。酢酸塩を用いる実施形態において、工程(B)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(B)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。アルカリを用いる実施形態においては、上述のように、中和熱の発生により、反応を加速することができる。
【0071】
本発明のさらに別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(C)~(E):
工程(C) 少なくとも、(ii)過酸化水素水及び酢酸、および(i)添加剤を混合する工程と;
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を1日以上静置する工程と;
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、(iii)酢酸塩またはアルカリ、及び水を混合する工程
とを含むものであってよい。工程(C)で得られた水溶液(c)を静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。工程(D)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(D)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。その後、平衡状態に達した水溶液(d)に酢酸塩またはアルカリ、及び水を混合する。
【0072】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩又はアルカリ
を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含むものであってよい。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法において、前記希釈工程は、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含み得る。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。
【0073】
5.殺菌及び洗浄用組成物を用いた殺菌及び洗浄方法
本発明の上記殺菌及び洗浄用組成物又は上記殺菌及び洗浄用希釈組成物は、希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して、例えば、医療用器具、飲料食品容器、工業排水、空調設備の冷却水、衣類、調理器具、食器、浴室、台所、洗濯槽、風呂釜、家具、ペットの殺菌、洗浄等に用いることができる。
【0074】
本発明の一実施形態において、上記殺菌及び洗浄用組成物又は上記殺菌及び洗浄用希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法が提供される。本発明の殺菌及び洗浄方法において、前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、封入法から選択されてよい。本発明の医療用器具の殺菌及び洗浄方法において、用いる殺菌及び洗浄用組成物又は殺菌及び洗浄用希釈組成物の量や、殺菌及び洗浄する時間は、微生物の種類や量、洗浄用組成物又は殺菌及び洗浄用希釈組成物の濃度などに従って、適宜選択することができる。
【0075】
本発明の殺菌及び洗浄方法において、前記医療用器具としては、透析用器具、内視鏡用器具、外科手術器具、産科・泌尿器科用器具、麻酔装置類、人工呼吸装置類、歯科用器具、注射針などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の殺菌及び洗浄方法において、前記医療用器具は、好ましくは透析用器具である。
【実施例0076】
以下に、本発明の実施例を示す。しかしながら、これらの実施例は、本発明の実施形態を例示するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0077】
<殺菌及び洗浄用組成物中の過酸化水素濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の過酸化水素濃度は酸化還元滴定により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、1.8mol/L硫酸を10mL加えて検液とした。この検液にフェロイン試液を数滴加えて、0.1mol/L硫酸セリウム(IV)溶液で滴定し、過酸化水素濃度を算出した。
【0078】
<殺菌及び洗浄用組成物中の酢酸及び過酢酸濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の酢酸濃度及び過酢酸濃度は中和滴定により行った。具体的には殺菌及び洗浄用組成物の試料約0.1gを精密に量り、100mLビーカーに入れ、純水約50mLを加えて検液とした。この検液を0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、第一変曲点での添加量から酢酸濃度を算出し、第一変曲点から第二変曲点までの添加量から過酢酸濃度を算出した。
【0079】
<殺菌及び洗浄用組成物の全過酸化物濃度(TPO)>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の全過酸化物濃度は、ヨウ素還元滴定法により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、1.8mol/L硫酸10mLを加えた後、10質量%のヨウ化カリウム溶液10mL、1質量%モリブデン酸アンモニウム溶液を数滴加えて検液とした。この検液に0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を滴下し、指示薬にでんぷんを使用して液の青紫色が消失し無色となったところを終点として、遊離したヨウ素を定量した。そのヨウ素量から、過酸化水素換算で全過酸化物濃度を算出した。
【0080】
<殺菌及び洗浄用組成物の安定度>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の安定度は仕込み時の全過酸化物濃度(TPO)を100とし、測定時の全過酸化物濃度の比率により算出した。
【0081】
<pH測定>
洗浄用組成物及び洗浄用組成物の希釈液のpHは、pHメーター(LAQUA、D-71S、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0082】
<芽胞懸濁液の調整>
セレウス菌標準菌株(Microbiologics社製、製品名:Bacillus cereus ATCC10876)をMYP寒天(AZONE株式会社製、製品名:サニスペック生培地)に塗布し、35℃で7日間培養した。この寒天培地に減菌蒸留水を加え、菌体をコンラージ棒で掻き取り採取し、遠心分離により減菌蒸留水で洗浄した。芽胞型のみを得るため80℃で10分間加熱し生残した菌を芽胞懸濁液とした。
【0083】
<殺菌試験>
洗浄用組成物を減菌蒸留水で適宜希釈し、試料液を調製した。各試料液4.5mLに1質量%アルブミン溶液を0.5mL,芽胞懸濁液50μLを加え、25℃で120分間作用させた。作用後、0.1mol/L減菌チオ硫酸ナトリウム溶液で10倍に希釈し、セレウス菌検出用培地(日水製薬株式会社製、製品名:コンパクトドライX-BC)を用いて35℃で48時間培養し生菌数を測定した。また、芽胞懸濁液の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。
【0084】
<タンパク除去試験>
洗浄用組成物を純水で適宜希釈し、試料液50gを調製した。各試料液に洗浄評価インジケータ(ネスコスIC W・I、株式会社サクラクレパス製)を60分間浸漬した後、純水10mLで洗浄し、常温で乾燥した。C光源、2度視野に設定したハンディ型分光色差計(NF555、日本電色工業株式会社製)を用いて洗浄評価インジケータの汚れの付着していない白色部からの色差(ΔEab)を測定した。タンパク除去率は未洗浄の洗浄評価インジケータの色差を100とし、洗浄後の色差の比率により算出した。
【0085】
<炭酸Ca溶解量試験>
洗浄用組成物を純水で適宜希釈し、試料液50gを調製した。各試料液に炭酸Ca(富士フイルム和光純薬株式会社製)を少量ずつ添加し、溶解した重量を炭酸Ca溶解量とした。
【0086】
<実施例1>
純水22.0gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.17g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MP Biomedicals,Inc.製)を0.11g、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)を18.0g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を45.6g、45質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、PE容器内で調合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。調合後、25℃で7日間熟成し、過酸化水素5.6質量%、酢酸17.1質量%、過酢酸1.1質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)0.1質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)0.1質量%、pH 5.1の透析装置洗浄用として使用される過酢酸組成物を得た。得られた過酢酸組成物については、調合してから25℃で14日後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表1に示した。
【0087】
<実施例2~14、比較例1~6>
添加剤として表1に記載されたものを用いた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表1に示した。表中に示されている、DTPP、すず酸Na・3HO、及びDTPAとしては、下記のものを用いた。
ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP、三菱ガス化学株式会社製、精製品)
すず酸ナトリウム三水和物(すず酸Na・3HO、富士フイルム和光純薬株式会社製)
ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA、株式会社同仁化学研究所製)
【0088】
<実施例15~20>
表2に記載されたとおりの配合とし、50℃で1日間熟成した以外は、実施例1と同様にして、表2に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから上記50℃で1日間の熟成、並びに25℃で20日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表2に示した。
【0089】
<実施例21~22、比較例7~12>
表3に記載されたとおりの配合とし、25℃で21日間熟成した以外は、実施例1と同様にして、表3に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから25℃で21日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表3に示した。表中に示されている、50%フィチン酸、及びNaOHとしては、下記のものを用いた。
50質量%フィチン酸溶液(50%フィチン酸、富士フイルム和光純薬株式会社製)
水酸化ナトリウム(NaOH、富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0090】
<実施例23~25、比較例13~14>
表4に記載されたとおりの配合とした以外は、実施例21と同様にして、表4に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから25℃で21日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表4に示した。表中に示されている、ピロリン酸としては、下記のものを用いた。
ピロリン酸(純正化学株式記会社製、製品名:二りん酸)
【0091】
<比較例15~21>
表5に記載されたとおりの配合とし、25℃で11日間熟成した以外は、実施例21と同様にして、表5に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから25℃で21日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表5に示した。表中に示されている、ジピコリン酸、及びEDTMPとしては、下記のものを用いた。
ジピコリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP、東京化成工業株式会社製)
【0092】
【表1】
【0093】
【表2-1】
【0094】
【表2-2】
【0095】
【表3-1】
【0096】
【表3-2】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
<実施例26~29>
下記に、本発明の殺菌及び洗浄用組成物の製造方法について検討した結果を例として示す。アルカリを用いた実施例26及び28では、酢酸塩を用いた実施例27及び29と比較して、中和熱による反応速度の増加が認められた。
【0100】
【表6】
【0101】
<実施例101>
純水28.2gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.02g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MP Biomedicals,Inc.製)を0.01g、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製、製品名:カオーアキポRLM-45)を0.01g、99質量%酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)を8.0g、45質量%の過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を49.6g、PE容器内で混合した。混合後、25℃で7日間熟成することで過酸化水素5.8質量%、酢酸7.6質量%、過酢酸0.4質量%、酢酸ナトリウム29.9質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.01質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01質量%、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸0.01質量%の洗浄用組成物を得た。得られた洗浄用組成物については、調合してから14日後に全過酸化物濃度を測定し、安定度を算出した。pH測定、殺菌試験、タンパク除去試験、炭酸Ca溶解量試験を実施し、120分後の菌数、タンパク除去率、炭酸Ca溶解量を算出した。その結果は表7及び表8に示した。表7に示す安定度については、下記のように評価した。
A:95%以上
B:80%以上
C:80%未満
【0102】
<実施例102、比較例101>
表7に記載されたとおりの配合とした以外は、実施例101と同様にして、表7に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。得られた洗浄用組成物については、調合してから14日後に全過酸化物濃度を測定し、安定度を算出した。pH測定、殺菌試験、タンパク除去試験、炭酸Ca溶解量試験を実施し、120分後の菌数、タンパク除去率、炭酸Ca溶解量を算出した。その結果は表7及び表8に示した。表7に示す安定度については、実施例101と同様に評価した。表中に示されているピロリン酸としては、下記のものを用いた。
ピロリン酸(純正化学株式会社製、製品名:二りん酸)
【0103】
【表7】
【0104】
【表8】
【0105】
上記の通り、本発明によれば、添加剤を添加することにより、過酸化物の安定性が高く、排水が下水排除基準を満たし、かつタンパク除去力が向上した、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができることが示された。
【手続補正書】
【提出日】2024-08-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酢酸を0.0130質量%、酢酸及び/又はその塩を60質量%、過酸化水素を0.130質量%、添加剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.01~5質量%、及び水を含む殺菌及び洗浄用組成物であって
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~7.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項2】
添加剤としてリン系安定剤を更に含む、請求項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項3】
添加剤としてカルボン酸系安定剤を更に含む、請求項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項4】
添加剤として、リン系安定剤、及びカルボン酸系安定剤を更に含む、請求項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項5】
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含む、請求項2又は4に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項6】
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含む、請求項3又は4に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項7】
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であって、
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、請求項に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項8】
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、請求項4又は7に記載の殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項9】
前記組成物のpH値が、5.0~7.0である請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、下記工程(A)及び(B)を含む、前記組成物の製造方法。
工程(A) 少なくとも、酢酸、過酸化水素水溶液、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合する工程
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を20~60℃で1日以上静置する工程
【請求項12】
前記工程(A)が、リン系安定剤及びカルボン酸系安定剤から選択される1以上を混合することをさらに含む、請求項11に記載の組成物の製造方法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、下記工程(C)~(E)を含む、前記組成物の製造方法。
工程(C) 少なくとも、酢酸、過酸化水素水溶液を混合する工程
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を20~60℃で1日以上静置する工程
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を混合する工程
【請求項14】
前記工程(E)において、さらにリン系安定剤及びカルボン酸系安定剤から選択される1以上を混合する、請求項13に記載の組成物の製造方法。
【請求項15】
請求項1~のいずれか1項に記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項16】
過酢酸を0.0050.1質量%、酢酸及び/又はその塩を0.050.5質量%、過酸化水素を0.01質量%、添加剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~0.1質量%、及び水を含み、
pH値が、4.0~7.0である、請求項16に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項17】
少なくとも下記成分を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含む、請求項15又は16に記載の希釈組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項18】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物又は請求項15若しくは16に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
【請求項19】
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法、通液法、循環法、封入法から選択される、請求項18に記載の殺菌及び洗浄方法。
【請求項20】
前記医療用器具が、透析用器具である、請求項18又は19に記載の殺菌及び洗浄方法。