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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133323
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】椅子の部材
(51)【国際特許分類】
   A47C 31/02 20060101AFI20240920BHJP
   A47C 7/40 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A47C31/02 C
A47C7/40
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024115646
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2019195419の分割
【原出願日】2019-10-28
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隼士
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】横山 剛士
(57)【要約】
【課題】メッシュタイプの背もたれにおいて、シート材がピンと張られた状態に取り付けることを容易に実現する。
【解決手段】背もたれ4は、背フレーム17にシート材18(メッシュ材)を張った構造であり、背フレーム17のサイドメンバー19は、シート材18は、サイドメンバー19の後ろに巻き込まれて内周面28に至っている。サイドメンバー19の内周面28に、シート材18を仮止めするフック63が形成されている。シート材18には、フック63に嵌まる穴63aが空いている。シート材18は、フック63によって仮止めされた状態で、多数箇所が内周面28に溶着される。従って、シート材18が背フレーム17にピンと張られた状態に保持して溶着できる。その結果、シート材18かピンと張られた背もたれ4を容易に実現できると共に、溶着工程の自動化も容易に実現できる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した人の身体が当たる可撓性のシート材と、前記シート材が取り付けられる支持体とを備えており、前記シート材は、その外周縁に沿った多数箇所が前記支持体に固定されている構成であって、
前記シート材と支持体とに、前記シート材を支持体に固定する前に張った状態に保持する仮止め部が形成されている、
椅子の部材。
【請求項2】
前記シート材は、溶着又は打ち込み式ファスナによって前記支持体に固定されている、請求項1に記載した椅子の部材。
【請求項3】
前記支持体は、前後に開口した背フレーム又は上下に開口した座フレームその他のフレーム材であって、前記シート材の縁部は、着座者の荷重が掛かる方向から見て前記フレーム材の後ろ側に巻き込まれており、当該後ろ側に前記仮止め部が設けられている、
請求項2に記載した椅子の部材。
【請求項4】
前記フレーム材は、着座者の荷重が掛かる方向と対向した前面と、前記前面から後ろ側に向いた外周面と、前記外周面かち内向きに向いた内周面とを有しており、
前記背フレームの内周面は、前記シート材が固定されている第1面と、前記外周面と前記第1面との間に位置すると共に平面視において前記外周面とは鋭角を成して交叉し前記第1面とは鈍角を成して交叉した第2面とを有しており、前記第1面の垂線は、平面視で後方に向かって内向きに傾斜した方向に向いている、
請求項3に記載した椅子の部材。
【請求項5】
前記支持体の仮止め部はフックになって、前記シート材の仮止め部は前記フックに嵌まり込む穴になっており、これら仮止め部と固定部と含むシート材の縁部がカバーで覆われている、
請求項1~4のうちのいずれかに記載した椅子の部材。
【請求項6】
前記フックは、前記カバーの装着方向から見て中空状になっている一方、
前記カバーには、前記フックの中空部に入り込む係合爪が突設されており、前記支持体のうち前記各フックに近接した部位に、前記係合爪が弾性変形して係合する係合段部を形成している、
請求項5に記載した椅子の部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、メッシュタイプの背もたれのように、可撓性のシートを支持体に張った構造の椅子用部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子において、背もたれを前後開口の背フレームにメッシュ材が張られた構造(メッシュタイプ)にすることは広く行われている。座も同様であり、上下に開口した座フレームにメッシュ材を張った構造のものは広く知られている。メッシュタイプの背もたれや座は、通気性やクッション性という機能面において優れていると共に、見た目がスッキリしていてデザイン的な評価も高い。
【0003】
メッシュタイプの椅子は優れた利点を有しているが、問題となるのが、メッシュ材を背フレームにピンと張った状態で強固かつ美麗に取り付ける方法である。この点について、特許文献1には、背もたれについて、メッシュ材(張り材)の外周縁にテープ状の縁材を固定する一方、背フレームの外周面に凹溝を形成して、縁材を凹溝に嵌め込むことが開示されている。
【0004】
他方、特許文献2には、背フレームや座フレームを合成樹脂製として場合において、メッシュ材を金型に固定した状態で背フレームを成型することが開示されている。すなわち、特許文献2は、メッシュ材をインサート成型法によってフレームに固定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-255076号公報
【特許文献2】特開2002-240817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2のように、メッシュ材の取り付け方法としてインサート成型法を利用すると、メッシュ材の取り付けの手間はなくなるが、メッシュ材にテンションを掛けた状態で金型に保持することが必ずしも容易ではないため、メッシュ材をピンと張った状態の背もたれを得ることが容易とは言い難い。また、特許文献2では、メッシュ材の張り替えができないという問題もある。
【0007】
他方、特許文献1の場合、メッシュ材をピンと張った状態に保持できるが、メッシュ材を背フレームの左右サイドメンバーに取り付けるに当たっては、一方の縁材を一方のサイドメンバーの凹溝に嵌め入れてから、メッシュ材を強く引っ張った状態で他方の縁材を他方のサイドメンバーの凹溝に嵌め入れなければならないため、メッシュ材の取り付け作業が厄介であった。
【0008】
また、特許文献1では、縁材が必要になるため、それだけコスト(製造コストと取り付けコスト)が嵩むことになる。更に、特許文献1では、メッシュ材の取り付けは手作業で行うしかなく、自動装置を使用して取り付けることはできないため、背もたれや座の製造コストが嵩むという問題もある。
【0009】
従って、椅子においては、メッシュタイプの背もたれや座などのメッシュ仕様部材につ
いて、簡単な構造でメッシュ材を強固に固定できると共に取り付け工程の自動化も可能な技術が要請されているといえる。そして、本願発明はこのような要請に応えようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は様々に展開することが可能であり、典型的な構成を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、椅子を構成する部材に関し、
「着座した人の身体が当たる可撓性のシート材と、前記シート材が取り付けられる支持体とを備えており、前記シート材は、その外周縁に沿った多数箇所が前記支持体に固定されている構成であって、
前記シート材と支持体とに、前記シート材を支持体に固定する前に張った状態に保持する仮止め部が形成されている」
という構成になっている。
【0011】
ここに、対象になる部材としては、背もたれや座が含まれることは当然として、ヘッドレストやショルダーレスト、肘当てなども対象になり得る。また、椅子は人が腰掛ける機能を備えてものを広く含んでおり、事務用等に多用されている回転椅子を始めとした可搬式椅子が含まれることはもとより、固定式の椅子や車両用座席なども包含される。また、請求項1では、シート材には、クッション材を覆う表皮材も含まれている。
【0012】
請求項2の発明は請求項1を具体化したものであり、
「前記シート材は、溶着又は打ち込み式ファスナによって前記支持体に固定されている」
という構成になっている。
【0013】
請求項3の発明は請求項2を具体化したもので、
「前記支持体は、前後に開口した背フレーム又は上下に開口した座フレームその他のフレーム材であって、前記シート材の縁部は、着座者の荷重が掛かる方向から見て前記フレーム材の後ろ側に巻き込まれており、当該後ろ側に前記仮止め部が設けられている」
という構成になっている。
【0014】
請求項4の発明は請求項3を具体化したもので、
「前記フレーム材は、着座者の荷重が掛かる方向と対向した前面と、前記前面から後ろ側に向いた外周面と、前記外周面かち内向きに向いた内周面とを有しており、
前記背フレームの内周面は、前記シート材が固定されている第1面と、前記外周面と前記第1面との間に位置すると共に平面視において前記外周面とは鋭角を成して交叉し前記第1面とは鈍角を成して交叉した第2面とを有しており、前記第1面の垂線は、平面視で後方に向かって内向きに傾斜した方向に向いている」
という構成になっている。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1~4のうちのいずれかにおいて、
「前記支持体の仮止め部はフックになって、前記シート材の仮止め部は前記フックに嵌まり込む穴になっており、これら仮止め部と固定部と含むシート材の縁部がカバーで覆われている」
という構成になっている。
【0016】
請求項6の発明は請求項5を好適に具体化したもので、
「前記フックは、前記カバーの装着方向から見て中空状になっている一方、
前記カバーには、前記フックの中空部に入り込む係合爪が突設されており、前記支持体のうち前記各フックに近接した部位に、前記係合爪が弾性変形して係合する係合段部を形
成している」
という構成になっている。
【発明の効果】
【0017】
本願発明では、シート材は支持体に固定される前に支持体に仮保持されるため、シート材は、ピンと張った状態に容易に固定することができる。従って、作業能率を向上できると共に、取り付け工程の自動化にも容易に対応できる。その結果、部材のコストを抑制できる共に品質も安定化できる。
【0018】
シート材の固定には様々な構造を採用できるが、請求項2のように溶着又はファスナ止めを採用すると、特許文献1のような縁材は不要であるため、コスト抑制の効果を更に助長できる。逆に述べると、溶着又はファスナ止めは工具を使用して能率良く固定できる利点があるが、シート材が張った状態で支持体に仮止めされていることにより、溶着又はファスナ止めの簡易な固定方法が採用可能になっている。
【0019】
さて、メッシュタイプの背もたれや座の場合、シート材(メッシュ材)には着座者の荷重が強く作用するため、シート材は、荷重で外れないように固定されている必要がある。そのためには、固定部に外力ができるだけ掛からないように配慮する必要がある。
【0020】
この点、請求項3のようにシート材の縁部をフレーム材の後ろ側に巻き込むと、テンションがシート材をフレーム材に密着させるように使用するため、シート材の固定部に作用する外力を著しく低減できる。その結果、溶着やタッカー止めのような簡易な固定構造であっても、高い支持強度を確保できる。
【0021】
溶着やタッカー止めには工具が使用されるが、自動装置を使用して固定を行う場合、自動装置は、部材を固定する受け台(アンビル、治具)と、ホーンのような工具を進退動させる駆動部とを備えており、駆動部はかなりのスペースを要する。このため、駆動部がフレーム材と干渉しないように配慮する必要かある。
【0022】
この点、請求項4の構成を採用すると、ホーン等の工具は、フレーム材に当たらない状態で進退動させることができるため、固定作業の自動化を容易に実現できる。これにより、固定作業の能率向上によるコスト抑制と品質安定化とを確実化できる。また、請求項4のように、外周面と第2面とを鋭角に交叉させると、シート材は、外周面と第2面との連接部で大きく折り返された状態になるため、シート材に作用したテンションに対して強い抵抗を発揮する。従って、シート材の固定部にテンションが作用することを更に抑制して、シート材の支持強度向上に大きく貢献できる。
【0023】
仮止め部としては様々な構造を採用できるが、請求項5のようにフックと穴との組み合わせを採用すると、簡単な構造で、熟練を要することなく容易に仮止めできる。そして、シート材の縁部や固定部が人目に触れると美観が損なわれるが、請求項5のようにカバーを使用することによって、美観を維持できる。
【0024】
カバーは何らかの方法で支持体に取り付ける必要があるが、弾性変形する係合爪を使用すると、ワンタッチ的に取り付けできるため好適である。そして、請求項6の構成を採用すると、仮止め用のフックを利用して係合爪を位置決めできるため、構造の複雑化を招来することなくカバーを安定的に保持できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態を示す図で、(A)は正面図、(B)は前方から見た斜視図、(C)は後ろから見た斜視図である。
図2】(A)は背面図、(B)は側面図、(C)はアッパーカバーとサイドカバーとの分離斜視図、(D)はアッパーカバーとサイドカバーとが当接した状態での分離斜視図である。
図3】部材の分離斜視図である。
図4】分離背面図である。
図5】(A)は背フレームと補助プレートとの分離斜視図、(B)は背フレームと傾動フレームとの分離斜視図である。
図6】(A)は背フレームの下部の正面図、(B)は傾動フレームは前向きで背フレームは後ろ向きにした状態での分離図である。
図7】背フレームと傾動フレームとの接続状態を示す分離斜視図であり、(A)は後ろから見た図、(B)は互いの姿勢を変えて前から見た図である。
図8】(A)は傾動フレームとバックカバーとの分離斜視図、(B)はバックカバーの斜視図、(C)は傾動フレームを前から見た部分斜視図である。
図9】(A)は傾動フレームと肘掛けとを前から見た分離斜視図、(B)は傾動フレームと肘掛けとを横から見た分離斜視図である。
図10】(A)は背フレームの一部破断正面図、(B)は背フレームの一部破断背面図である。
図11】(A)は背フレームとサイドカバーとの分離斜視図、(B)はサイドカバーの下部の斜視図、(C)は傾動フレームを前から見た部分斜視図である。
図12】(A)は背フレームを後ろから見た部分斜視図、(B)は図4の XIIB-XIIB視断面図である。
図13図4のXIII-XIII視断面図であり、(A)はサイドカバーを省略した状態の図、(B)はサイドカバーを取り付けた状態の図である。
図14図4のXIV-XIV視断面図であり、(A)はアッパーカバーを省略した状態の図、(B)はアッパーカバーを取り付けた状態の図である。
図15】背フレームの中央部の縦断側面図で、図6(B)のXV-XV視断面図である。
図16】(A)は図6(B)のXVIA-XVIA 視断面図、(B)は図6(B)のXVIB-XVIB視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明では方向を特定するため「前後」「左右」の文言を使用するが、この前後左右の文言は着座した人を基準にしている。正面視方向は着座した人と対峙した方向であり、従って、正面視での左右と着座した人から見た左右とは逆になる。
【0027】
(1).椅子の概略
まず、主として図1図4を参照して椅子の概要を説明する。本実施形態は事務用等に多用されている回転椅子の背もたれに適用しており、椅子は、ガスシリンダより成る脚支柱を有する脚装置1と、脚支柱の上端に固定したベース2と、ベース2の上に配置した座3と、着座した人がもたれ掛かり得る背もたれ4とを備えている。
【0028】
例えば図3に明示するように、ベース2には、左右のアーム5aを備えた傾動フレーム5が後傾動自在に連結されている。また、図2(B)に示すように、ベース2には、座3が固定された座受け体6が後退動自在に連結されており、座受け体6は、傾動フレーム5のアーム5aに相対回動可能に連結されている。従って、座3は、背もたれ4と連動して後退しつつ少し後傾する。
【0029】
なお、座3は、樹脂製の座インナーシェルの上面にクッションを配置してこれを表皮材で覆った構造になっており、座インナーシェルが、直接に又は座アウターシェルを介して
座受け体6に固定されている。
【0030】
図1から理解できるように、傾動フレーム5は、弓形に湾曲して上向きに延びる左右の背支柱部7を備えており、背支柱部7と基部8とは、正面視(及び背面視)で上向きに反るように滑らかに連続している。また、傾動フレーム5は、内向き稜線9と外向き稜線10と後ろ向き稜線11とを有して、大まかには三角形の断面形状を成している。従って、傾動フレーム5は、図3に現れている前面12と、図1(C)に現れている傾斜状外周面13及び傾斜状内周面13とを有しており、傾斜状外周面14及び傾斜状内周面13とは山形に交叉して後ろ向き稜線11に至っている。
【0031】
また、傾動フレーム5のうち基部8と背支柱部7とから成る部分は、左右両端に向かって細くなっている。このため、傾斜状外周面14及び傾斜状内周面13は、左右中間部が最も幅広で、左右両端に向かって幅が狭くなっている。図2(A)や図4に示すように、背支柱部7の外面には、オプション品としての肘掛け15を取り付けることが可能であり、肘掛け15を取り付けない場合は、背支柱部7の外面はバックカバー16で覆われている。
【0032】
例えば図3に示すように、背もたれ4は、前後に開口した背フレーム17とその前面に張られたシート材(メッシュ材)18とを備えている。また、図3に明示するように、背フレーム17は、上下長手の左右サイドメンバー19と、左右長手のアッパーメンバー20と、傾動フレーム5の基部8及び背支柱部7の前面に重なるロアメンバー21とで構成されている。ロアメンバー21は、傾動フレーム5の形状に合わせて上向きに反った弓形に湾曲している。
【0033】
背フレーム17は、請求項に記載した支持体の一例である。なお、各メンバー19,20,21は合成樹脂製である。傾動フレーム5はアルミダイキャスト品を採用しているが、合成樹脂製とすることも可能である。
【0034】
背フレーム17のサイドメンバー19は、左右方向の内向きに突出した内向き稜線23と、左右方向の外向きに突出した外向き稜線24と、内向き稜線23及び外向き稜線24の間において後ろ向きに突出した後ろ向き稜線25とを備えている。従って、内向き稜線23及び外向き稜線24の間の部位は前面26になって、外向き稜線24と後ろ向き稜線25との間の部分は外周面(外側面)27になって、後ろ向き稜線25と内向き稜線23との間の部分は内周面(内側面)28になっている。
【0035】
図1から理解できるように、サイドメンバー19の各稜線23,24,25と各面26,27,28は、アッパーメンバー20まで連続している。すなわち、サイドメンバー19の前面26はアッパーメンバー20の前面26aと連続し、サイドメンバー19の外周面27はアッパーメンバー20の外周面27aと連続し、サイドメンバー19の内周面28はアッパーメンバー20の内周面(下面)28′と連続している。
【0036】
他方、ロアメンバー21については、サイドメンバー19の各稜線23,24,25は傾動フレーム5の各稜線9,10,11と連続しているため、図3に示すように、ロアメンバー21の内向き稜線23bはサイドメンバー19の内向き稜線23から段落ちし、また、ロアメンバー21には後ろ向き稜線は存在しない。ロアメンバー21の外向き稜線24bはサイドメンバー19の外向き稜線24bと連続している。但し、ロアメンバー21の下部は切除部21aになっており、この切除部21aに補助プレート29が連結されている。従って、ロアメンバー21の外向き稜線24bは連続していない。
【0037】
また、ロアメンバー21の前面26bはサイドメンバー19の前面26と連続している
が、ロアメンバー21には、サイドメンバー19の外周面27と内周面28とに対応した面はなく、サイドメンバー19の外周面27と内周面28から段落ちした状態の後面28c(図6(C)参照)が存在している。
【0038】
シート材18は、サイドメンバー19及びアッパーメンバー20並びにロアメンバー21の上部に対して超音波溶着によって直接固定されているが、ロアメンバー21の箇所では、シート材18は補助プレート29に固定されており、補助プレート29を介してロアメンバー21に取り付けられている。
【0039】
なお、図1図2(A)、図3では、シート材18は点線の平行斜線で表示しており、背フレーム17の前面の態様はそのまま表示しているが、実際には、背フレーム17の前面の態様はシート材18で隠れて見えない(シート材18の種類によっては、少し透けて見えることもある。)。
【0040】
(2).背フレームと傾動フレームとの連結構造
次に、背フレーム17と傾動フレーム5との連結構造を説明する。図面は、主として図5~9を参照する。
【0041】
例えば図5に示すように、傾動フレーム5における基部8の前面12には、前向きに開口したメイン凹部31が形成されており、メイン凹部31の内部に、縦横に延びる多数の補強リブ32を形成している。また、基部8の左右中間部(メイン凹部31の左右中間部)には、ロッキング用ガスシリンダ33a(図2(A)(B)に僅かに現れている)の後端部を取り付けるためのセンター凹部33が形成されている。センター凹部33は、リブで囲われた状態になっている。
【0042】
同じく図5に示すように、背フレーム17のロアメンバー21に、左右一対の位置決め突起34を後ろ向きに突設している一方、傾動フレーム5の基部8には、位置決めボス34が手前から嵌入する位置決め穴35(図16(A)も参照)を形成している。位置決め穴35は補強リブ32で囲われた構造になっている。位置決め突起34はかなり大きな突出寸法であり、これが殆どクリアランスのない状態で位置決め穴35に嵌合していることにより、背フレーム17は、後ろ向きの荷重をしっかりと支える状態で傾動フレーム5に取り付けられる。位置決め突起34は、背支柱部7の軸線方向O3(図2(B)参照)と同じ方向に傾斜している。
【0043】
更に、例えば図7に明示するように、傾動フレーム5における背支柱部7の上端部に、手前と上方とに開口したサイド凹部36を形成している一方、背フレーム17におけるロアメンバー21の左右上端部に、サイド凹部36にきっちり嵌合するサイド突起37を形成して、サイド突起37とサイド凹部36とが、ボルト38及びナット39で締結されて部いる。
【0044】
サイド凹部36及びサイド突起37は切頭角錐状の形態を成しており、サイド突起37に、ナット39が回転不能に保持される横向きのポケット穴40を形成している一方、サイド凹部36の底板には、ボルト挿通穴41が空いている。
【0045】
図5から理解できるように、傾動フレーム5における背支柱部7のうちサイド凹部36の下方部は後ろ向きに開口したバック凹部42になっており、ボルト38は、バック凹部42に連続した補助凹部42aからサイド凹部36の底板に挿通されている。
【0046】
背フレーム17は、位置決め突起34と位置決め穴35との嵌まり合いによって位置決めされているため、左右2本のボルト38のみによる締結であっても、傾動フレーム5に
対して強固に固定されている。また、サイド突起37とサイド凹部36とは切頭四角錐状になっているため、ボルト38を締め込むと、サイド突起37がサイド凹部36に対してしっかりと密着する。その結果、背フレーム17は、ガタ付きがない状態で傾動フレーム5に強固に固定される。
【0047】
(3).肘掛け及びバックカバーの取り付け構造
傾動フレーム5には、前向きに開口したサイド凹部36と後ろ向きに開口したバック凹部42とが形成されているため、傾動フレーム5の基部8と背支柱部7とを全体として見ると、前向きに開口したサイド凹部36とメイン凹部31との間に、後ろ向きに開口したバック凹部42が存在している。
【0048】
図8(A)や図9(B)から理解できるように、バック凹部42は、概ね四角形であって底部に向けて断面積が縮小するテーパ形状になっており、開口縁には若干の幅の段部43が形成されている。段部43は、バック凹部42の下方まで広がっている。
【0049】
図1,2では、肘掛け15は、固定式肘掛け15aと可動式肘掛け15bとを重ねて表示している。実際には、いずれか一方が取り付けられる。図9では固定式肘掛け15aを表示しており、固定式肘掛け15aの基部に、傾動フレーム5のバック凹部42に嵌合する切頭四角錐状の位置決めボス45が形成されており、肘ベース15aは、位置決めボス45に外側から挿通されたボルト46によって傾動フレーム5に締結されている。従って、傾動フレーム5におけるバック凹部42の底部には、ボルト46が螺合するタップ穴47を形成している。
【0050】
図9(B)に示すように、固定式肘掛け15aの基部には、ボルト46の頭が隠れる座繰り穴48を形成している。また、固定式肘掛け15aには、背支柱部7の外周面である段部43に重なるフランジ板49が一体に形成されている。可動式肘掛け15bは、背支柱部7に固定されるベース体と、ベース体に上下回動自在及び水平旋回自在に取り付けられた中間アームと、中間アームの先端に水平旋回可能に取り付けられた肘当てとを有しており、ベース体の基部は固定式肘掛け15aの基部と同様に構造になっていて、固定式肘掛け15aと同じボルト46で背支柱部7に固定される。
【0051】
既述のとおり、傾動フレーム5に肘掛け15を取り付けない場合は、バック凹部42はバックカバー16で覆われる。バックカバー16は傾動フレーム5の段部43に嵌合するようになっており、上向きの第1係合爪50と、背支柱部7のバック凹部42に入り込む一対の第2係合爪51と、バック凹部42よりも下方において前向きに突出した2本の第3係合爪52とにより、傾動フレーム5に取り付けられている。
【0052】
従って、背支柱部7の上端部には、第1係合爪50が嵌まり込んで係合する一対の第1係合穴53が形成されて、背支柱部7のうちバック凹部42の内部には、第2係合爪51が弾性変形してから係合する第2係合穴54が形成されて、バック凹部42よりも下方の部位には、第3係合爪42が弾性変形してから係合する一対の第3係合穴55が形成されている。第3係合穴55は、段部43に形成されている。
【0053】
第1係合穴53は後ろ向きのみに開口した袋状になっており、第1係合爪50は、上向きにスライドさせることによって第1係合穴53に係合する。従って、バックカバー16の上端は、上向きずれ不能及び後ろ向き起こし不能に保持される。他方、第2係合穴54及び第3係合穴55は前後に開口している。一対の第2係合爪51は、鉤部の姿勢が相違しており、弾性変形して倒れる方向が相違している。従って、抜け防止効果が高い。一対の第3係合爪52の鉤部は同じ向きになっている。
【0054】
また、第3係合爪52の下方に、第3係合穴55に嵌入する補助突起56を前向きに突設している。従って、バックカバー16は、第1係合爪50によって上向き移動不能に保持された状態で、補助突起56によって下向き移動不能に保持されている。従って、バックカバー16は、ガタ付きのない状態にしっかりと取り付けられる。また、バックカバー16は傾動フレーム5の段部43に嵌まっていて、バックカバー16の表面と傾動フレーム5の傾斜状外周面14とは同一面を成す状態になっているため、美観が優れていると共に、引き起こし難くなっている。
【0055】
本実施形態では、肘掛け15を取り付けるためのバック凹部42を利用して、背フレーム17を傾動フレーム5にボルト38で締結している。すなわち、肘掛け15を取り付けるためのバック凹部42を、背フレーム17を固定するためのボルト38の配置空間として利用している。従って、ボルト38の頭が露出することはなくて、美観に優れている。
【0056】
(4).背フレーム及びシート材
次に、背フレーム17の構造やシート材18の取り付け構造などを説明する。図は、主として図10~16を参照する。
【0057】
既述のとおり、背フレーム17におけるサイドメンバー19とアッパーメンバー20とは、互いに連続した3本の稜線23~25と3つの面26~28を有しており、従って、図12~14に示すように、サイドメンバー19とアッパーメンバー20とは概ね三角形状の断面形状になっているが、両メンバーとも、軽量化のため前面26,26aに多数の凹所59を形成している(前面26,26aに長溝を形成して、長溝にリブを配置しているという見方もできる。いずれにしても、前面26,26aは平坦面ではない。)。
【0058】
図12,13のとおり、サイドメンバー19の外周面27は緩く湾曲して外向きに膨れている。また、サイドメンバー19の前面26のうち外向き稜線24に近接した縁部にはV形の縦溝60を形成して、縦溝60に緩衝エッジ60aを配置している。
【0059】
図12(B)や図13に示すように、サイドメンバー19の内周面28は、平面視において外周面27と丸みを帯びつつ略V字状に交叉した(鋭角を成して交叉した)第2面28aと、第1面28aとく字状に交叉した(鈍角を成して交叉した)第1面28bとを有しており、第1面28bにシート材18が溶着によって固定されている(溶着部を符号65で示している。)。図12(B)に明示するように、内周面28における第1面28bの垂線O1は、平面視において、後ろ向きでかつ背フレーム17の内側に倒れるように斜め内向きに傾斜している。
【0060】
図12(B),図13に示すように、内周面28の内周縁には突条62が略全長にわたって形成されている。従って、サイドメンバー19の内周面28には後ろ向きに凹んだ凹溝が形成されており、シート材18の縁部やヘック63などは凹部の底面に形成されている。
【0061】
フック63は側面視で中空の門型を成している。また、図13に明瞭に現れているが、フック63の内側には、フック63を成型するためにスライド型を使用したことに起因して、逃がし溝63aが形成されている。突条62は、逃がし溝63aの箇所ではブリッジ部62aになっている。
【0062】
シート材18は、サイドメンバー19の箇所では、前面26から後ろに巻き込まれており、先端縁は突条62の近くまで至っている。そして、シート材18は、フック63の上下両側の部位において、第1面28bに超音波溶着によって固定されている。
【0063】
さて、本実施形態では、シート材18は背フレーム17に自動機(自動溶着装置)によって溶着される。自動機は、図12(B)に示すホーン66を往復動させる駆動部と、背フレーム17を固定保持する受け台(治具、アンビル)とを備えており、例えば、受け台を水平移動・水平旋回等させつつホーン66を前進・後退させることにより、各溶着部65を順番に形成していく。
【0064】
この場合は、ホーン66を取り付けている駆動部はある程度の大きさがあるため、凹溝61の底面の垂線O1が背もたれ4の前面と平行であると、一方のサイドメンバー19への溶着工程において、駆動部が他方のサイドメンバー19に当たる現象が生じて、溶着を行えなくなるおそれがある。
【0065】
これに対して、本実施形態のように、第1面28bの垂線O1が後ろ向きでかつ斜め内向きに傾斜していると、駆動部が大きくても、駆動部が背フレーム17に当たることを防止しつつ、サイドメンバー19にシート材18を溶着することができる。また、シート材18は、外周面27と第2面28aとの連接部において大きく折り返されるため、シート材18に作用したテンションが溶着部65に伝わることが大幅に緩和される。従って、シート材18の支持強度を格段に向上できる。
【0066】
アッパーメンバー20においても同様であり、図12(A)や図14に示すように、アッパーメンバー20の内周面28′に多数のフック63を形成して、隣り合ったフック63の間においてシート材18をアッパーメンバー20に溶着しているが、溶着面である第1面28bb′の垂線をO2とすると、垂線O2は、側面視において後ろ向きでかつ斜め内向きに傾斜しているため、自動機の駆動部がロアメンバー21に当たることを防止しつつ、アッパーメンバー20への溶着を行える。
【0067】
また、アッパーメンバー20においても、内周面28′は,番各を成してく字状に交叉した第1面2ba′と第2面28a′とを有しており、第2面28a′は、外周面27aと丸みを帯びた略V字状に鋭角を成して交叉している。従って、シート材18に作用したテンションが溶着部65に作用することを大幅に抑制できる。
【0068】
(5).サイドカバー・アッパーカバー
サイドメンバー19の内周面28は上下長手のサイドカバー70で覆われて、アッパーメンバー20の内周面28′はアッパーカバー71によって下方から覆われている。従って、シート材18の縁部や溶着部65もカバー70,71によって覆われる。
【0069】
また、図2(D)に明示するように、サイドカバー70とアッパーカバー71とは一連に連続している一方、例えば図1(C)に示すように、サイドカバー70と傾動フレーム5の傾斜状内周面13とは一連に連続している。従って、傾動フレーム5の傾斜状内周面13と左右サイドカバー70とアッパーカバー71との4つの面が、継ぎ目はあるものの、全体として同一面を成すループ面になっている。このため、背もたれ全体としてデザイン的に統一性がとれて優れた美的効果を発揮している。
【0070】
カバー70,71の取り付け手段として、基本的には、図11(A)や図13(B)、図14(B)に示すように、前向きに突出した係合爪72をサイドメンバー19及びアッパーメンバー20に形成した係合段部73に係合させる(引っ掛ける)ことによって行っている。
【0071】
この場合、フック63を中空の門型に形成して、係合段部73はフック63の箇所に形成しており、従って、係合爪72はフック63の内部に挿入している。このため、係合爪72がフック63によって位置決めされる利点がある。更に、係合爪72は、シート材1
8に形成された仮止め穴64を挿通して係合段部73に係合している。従って、係合爪72を逃がすための穴をシート材18に加工する必要はない。
【0072】
また、既述のとおり、金型を使用した射出成型に際しては、フック63はスライド型を使用して形成されるが、係合段部73もスライド型によって形成される。従って、シート材18の仮止め手段とカバー70,71の取り付け手段とを容易に形成できる。
【0073】
例えば図11(A)や図12(B),図14(B)に示すように、サイドカバー70及びアッパーカバー71には、各係合爪72の箇所に位置した前向き傾斜リブ74を設けることにより、サイドメンバー19及びアッパーメンバー20における突条のブリッジ部62aを挟むV形係合部75を形成している。従って、人がカバー70,71の内側縁に指先を当てて後ろに引いても、カバー70,71が捲れることはない。
【0074】
また、図11(B)(C)に示すように、サイドカバー70の下端の内面に下向き片76を設けて、この下向き片76を、背支柱部7の上端と背フレーム17との間に形成された隙間77に上から嵌め込んでいる(図11(B)(C)の矢印76a参照。)。従って、サイドカバー70の下端は、内向き離反不能に保持されている。
【0075】
また、図2(C)(D)や図4に明示するように、サイドカバー70の上端に内向き部70aが形成されており、内向き部70aの先端に設けた段落ち部78が、アッパーカバー71の左右両端に形成した段上がり部79に下から重なっている。従って、サイドカバー70とアッパーカバー71との一体性が高まっていると共に、アッパーカバー71は下向き離反不能に保持されている。
【0076】
また、段上がり部79と段落ち部78とが重なることにより、サイドカバー70の上端は内向きにずれないように保持されている。従って、サイドカバー70は、前後・左右・上下のいずれの方向にも離反しないように保持されており、その結果、アッパーカバー71も、前後・左右・上下のいずれの方向にも離反しないように保持されている。
【0077】
(6).補助プレート
次に、補助プレート29を説明しておく。図面は、主として図5,6,15,16を参照する。
【0078】
図5に示すように、補助プレート29は、左右中間部が幅狭で左右両側に向けて幅広になっており、上面は湾曲形状で凹んでいる。そして、ロアメンバー21のうち位置決め突起34よりも左右方向外側の位置に、水平姿勢の支軸80がブラケット片を介して形成されている一方、補助プレート29には、支軸80に手前から弾性に抗して嵌合するキャッチ81が形成されている。従って、補助プレート29は、支軸80の軸心周りに回動可能である。
【0079】
また、傾動フレーム5の下端部のうち位置決め突起34で挟まれた部位に、左右一対の係合穴82を下向きに開口した状態に形成している一方、補助プレート29に、係合穴82にずれ不能に嵌入する係合爪83を上向きに突設している。係合爪83は、平面視でコ字形になっている。
【0080】
補助プレート29は、概ね水平状の姿勢にして、図5(A)に矢印84で示すようにキャッチ81を下方から支軸80に嵌め込むことができる。次いで、図5(B)に矢印85で示すように下向きに回動させると、図5(A)に矢印86で示すように、係合爪83が弾性変形して係合穴82に手前から嵌入する。これにより、補助プレート29の姿勢保持が行われる。
【0081】
更に、本実施形態では、図16(B)に示すように、補助プレート29に左右一対のストッパー突起87を後ろ向きに突設して、このストッパー突起87を、傾動フレーム5の基部8にリブによって形成された前向きのストッパー穴88に手前から嵌め入れている。
【0082】
シート材18の下部は、予め補助プレート29の後面に溶着又はタッカーで固定されている。そして、シート材18の溶着工程では、補助プレート29を支軸80に連結して手前に回動させた状態で、シート材18の周縁部をフック63の群に係止していき、フック63への仮止めが終わったら、補助プレート29を後ろに回動させて係合爪83を係合穴82に嵌入させる。これにより、シート材18は背フレーム17にピンと張った状態に保持される。従って、シート材18は、ピンと張った状態で背フレーム17に溶着される。
【0083】
(7).まとめ
既に述べたように、本実施形態では、シート材18をピンと張った状態で背フレーム材17に取り付けることができる。従って、自動溶着装置を使用して、シート材18を背フレーム17に能率良くしかも正確に固定できる。溶着工程を手作業で行うことも可能であるが、この場合も、作業者は両手が自由になるため、作業を能率よく行える。
【0084】
また、シート材18は、サイドメンバー19及びアッパーメンバー20に対して後ろに大きく巻き込まれているため、着座した人の荷重によってシート材18にテンションが掛かっても、そのテンションが溶着部65に直接作用することはなくて、溶着部65に作用する引っ張り力は大幅に緩和される。従って、溶着という簡易な固定方法でありながら、高い支持強度を確保てきる。
【0085】
実施形態のように回動式の補助パレート29を併用すると、シート材18は強いテンションが掛かった状態で背フレーム17に取り付けられるため、品質向上の点で特に有益である。また、タッカーのようなファスナによる固定であっても、同じ効果を享受できる。
【0086】
本願発明は、上記の他にも様々に具体化できる。例えば、シート材18の仮止め手段としては、シート材18の外周縁にフックを取り付けて、背フレーム17に、フックが引っ掛かる係合部を形成するといったことも可能である。
【0087】
また、既に述べたとおり、本願発明は、座やヘッドレスト、ショルダーレスト、肘当てなどにも適用できる。ヘッドレストやショルダーレストは、基本的には背もたれと同様であり、前後に開口したフレーム材に手前からシート材を重ねた構成であるので、シート材の外周縁をフレームの後ろ側に巻き込んで、フックと穴から成る仮保持部によって仮止めしたらよい。シート材の外周縁やフックなどはカバーで覆ったらよい。
【0088】
肘当ての場合は、クッション材を覆う表皮材の取り付けに適用できる。すなわち、クッション材が載っている板材の下面にフックの群を形成しておく一方、表皮材に、フックに嵌合する穴を多数空けておくことにより、表皮材を板材に仮保持して溶着等の固定作業を行える。
【0089】
座については、シート材で荷重を支持するメッシュタイプと、実施形態のようなクッションタイプのいずれにも適用できる。メッシュタイプについては、座フレームの内周面にフックを形成して、このフックにシート材を係止したらよい。溶着やタッカー止めする場合、固定面を斜め下向きに傾斜させることにより、実施形態の背もたれと同様に,自動機を使用して固定を行える。表皮材の縁部は、カバーで下方から覆っても良いし、座インナーシェルを備えている場合は、座アウターシェルで隠すことができる。
クッション材が表皮材で覆われたクッションタイプの座に適用する場合は、座インナーシ
ョルの外周部の下面にフックの群を形成して、表皮材の外周縁をフックの群に係止して仮保持し,それから、表皮材の縁部を座インナーシェルの下面に溶着等で固定したらよい。クッションタイプの背もたれに適用する場合も同様である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本願発明は椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0091】
4 部材の一例としての背もたれ
5 傾動フレーム
17 背フレーム
18 シート材(メッシュ材)
19 サイドメンバー
20 アッパーメンバー
21 ロアメンバー
28,28′ 内周面
28a,28a′ 第2面
28b,28b′ 第1面
29 補助プレート
63 仮止め部であるフック
63a 仮止め部である穴
65 溶着部
66 ホーン
70 サイドカバー
O1 サイドメンバーにおける溶着面の垂線
O2 左右サイドメンバーを結ぶ前面
O2 アッパーメンバーにおける溶着面の垂線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-07-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座した人の身体が当たる可撓性のシート材と、前記シート材が取り付けられる支持体とを備えて、前記シート材は、その外周縁に沿った多数の固定部が前記支持体に固定されており、
前記シート材と支持体とに、前記シート材を前記支持体に固定する前に張った状態に保持する仮止め部が形成されている椅子の部材であって、
前記仮止め部は多数あって前記シート材の各固定部は隣り合った前記仮止め部の間の箇所に位置して、前記各固定部が溶着又は打ち込み式ファスナによって前記支持体に固定されており、前記仮止め部と固定部とが前記シート材の周方向に交互に並んでいる、
椅子の部材。
【請求項2】
前記支持体は、前後に開口した背フレーム又は上下に開口した座フレームであって、前記シート材の縁部は、着座者の荷重が掛かる方向から見て前記フレームの後ろ側に巻き込まれており、当該後ろ側に前記仮止め部が設けられている、
請求項1に記載した椅子の部材。
【請求項3】
前記フレーム材は、着座者の荷重が掛かる方向と対向した前面と、前記前面から後ろ側に向いた外周面と、前記外周面から内向きに向いた内周面とを有しており、
前記背フレームの内周面は、前記シート材が固定されている第1面と、前記外周面と前記第1面との間に位置すると共に平面視において前記外周面とは鋭角を成して交叉し前記第1面とは鈍角を成して交叉した第2面とを有しており、前記第1面の垂線は、平面視で後方に向かって内向きに傾斜した方向に向いている、
請求項2に記載した椅子の部材。
【請求項4】
前記支持体の仮止め部はフックになって、前記シート材の仮止め部は前記フックに嵌まり込む穴になっており、前記仮止め部と前記固定部と含むシート材の縁部がカバーで覆われている、
請求項1~3のうちのいずれかに記載した椅子の部材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本願発明は様々に展開することが可能であり、典型的な構成を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は、椅子を構成する部材に関し、
「着座した人の身体が当たる可撓性のシート材と、前記シート材が取り付けられる支持体とを備えて、前記シート材は、その外周縁に沿った多数の固定部が前記支持体に固定されており、
前記シート材と支持体とに、前記シート材を前記支持体に固定する前に張った状態に保持する仮止め部が形成されている」
という基本構成である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
ここに、対象になる部材としては、背もたれや座が含まれることは当然として、ヘッドレストやショルダーレスト、肘当てなども対象になり得る。また、椅子は人が腰掛ける機能を備えものを広く含んでおり、事務用等に多用されている回転椅子を初めとした可搬式椅子が含まれることはもとより、固定式の椅子や車両用座席なども包含される。また、請求項1では、シート材には、クッション材を覆う表皮材も含まれている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
そして、本願発明は、前記基本構成において、
前記仮止め部は多数あって前記シート材の各固定部は隣り合った前記仮止め部の間の箇所に位置して、前記各固定部が溶着又は打ち込み式ファスナによって前記支持体に固定されており、前記仮止め部と固定部とが前記シート材の周方向に交互に並んでいる」
という構成になっている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項の発明は請求項を具体化したもので、
「前記支持体は、前後に開口した背フレーム又は上下に開口した座フレームであって、前記シート材の縁部は、着座者の荷重が掛かる方向から見て前記フレームの後ろ側に巻き込まれており、当該後ろ側に前記仮止め部が設けられている」
という構成になっている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
請求項の発明は請求項を具体化したもので、
「前記フレーム材は、着座者の荷重が掛かる方向と対向した前面と、前記前面から後ろ側に向いた外周面と、前記外周面から内向きに向いた内周面とを有しており、
前記背フレームの内周面は、前記シート材が固定されている第1面と、前記外周面と前記第1面との間に位置すると共に平面視において前記外周面とは鋭角を成して交叉し前記第1面とは鈍角を成して交叉した第2面とを有しており、前記第1面の垂線は、平面視で後方に向かって内向きに傾斜した方向に向いている」
という構成になっている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
請求項の発明は、請求項1~3のうちのいずれかにおいて、
「前記支持体の仮止め部はフックになって、前記シート材の仮止め部は前記フックに嵌まり込む穴になっており、前記仮止め部と前記固定部と含むシート材の縁部がカバーで覆われている」
という構成になっている。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
そして、本願発明では、固定手段として溶着又はファスナ止めを採用しているため、特許文献1のような縁材は不要であって、コスト抑制の効果を更に助長できる。逆に述べると、溶着又はファスナ止めは工具を使用して能率良く固定できる利点があるが、シート材が張った状態で支持体に仮止めされていることにより、溶着又はファスナ止めの簡易な固定方法が採用可能になっている。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
この点、請求項のようにシート材の縁部をフレーム材の後ろ側に巻き込むと、テンションがシート材をフレーム材に密着させるように使用するため、シート材の固定部に作用する外力を著しく低減できる。その結果、溶着やタッカー止めのような簡易な固定構造であっても、高い支持強度を確保できる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
この点、請求項の構成を採用すると、ホーン等の工具は、フレーム材に当たらない状態で進退動させることができるため、固定作業の自動化を容易に実現できる。これにより、固定作業の能率向上によるコスト抑制と品質安定化とを確実化できる。また、請求項のように、外周面と第2面とを鋭角に交叉させると、シート材は、外周面と第2面との連接部で大きく折り返された状態になるため、シート材に作用したテンションに対して強い抵抗を発揮する。従って、シート材の固定部にテンションが作用することを更に抑制して、シート材の支持強度向上に大きく貢献できる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0023】
仮止め部としては様々な構造を採用できるが、請求項のようにフックと穴との組み合わせを採用すると、簡単な構造で、熟練を要することなく容易に仮止めできる。そして、シート材の縁部や固定部が人目に触れると美観が損なわれるが、請求項のようにカバーを使用することによって、美観を維持できる。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
カバーは何らかの方法で支持体に取り付ける必要があるが、弾性変形する係合爪を使用すると、ワンタッチ的に取り付けできるため好適である。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0049
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0049】
図1,2では、肘掛け15は、固定式肘掛け15aと可動式肘掛け15bとを重ねて表示している。実際には、いずれか一方が取り付けられる。図9では固定式肘掛け15aを表示しており、固定式肘掛け15aの基部に、傾動フレーム5のバック凹部42に嵌合する切頭四角錐状の位置決めボス45が形成されており、固定式肘掛け15aは、位置決めボス45に外側から挿通されたボルト46によって傾動フレーム5に締結されている。従って、傾動フレーム5におけるバック凹部42の底部には、ボルト46が螺合するタップ穴47を形成している。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
図12(B)や図13に示すように、サイドメンバー19の内周面28は、平面視において外周面27と丸みを帯びつつ略V字状に交叉した(鋭角を成して交叉した)第2面28aと、第1面28aとく字状に交叉した(鈍角を成して交叉した)第1面28bとを有しており、第1面28bにシート材18が溶着によって固定されている(従って、溶着部が請求項に記載した固定部になっており、溶着部を符号65で示している。)図12(B)に明示するように、内周面28における第1面28bの垂線O1は、平面視において、後ろ向きでかつ背フレーム17の内側に倒れるように斜め内向きに傾斜している。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
アッパーメンバー20においても同様であり、図12(A)や図14に示すように、アッパーメンバー20の内周面28′に多数のフック63を形成して、隣り合ったフック63(仮止め部)の間においてシート材18をアッパーメンバー20に溶着しているが、溶着面である第1面28b′の垂線をO2とすると、垂線O2は、側面視において後ろ向きでかつ斜め内向きに傾斜しているため、自動機の駆動部がロアメンバー21に当たることを防止しつつ、アッパーメンバー20への溶着を行える。シート材18は、隣り合ったフック63の間に位置しているので、固定部である溶着部65と仮止め部であるフック63とは周方向に交互に並んでいる。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
この場合、フック63を中空の門型に形成して、係合段部73はフック63の箇所に形成しており、従って、係合爪72フック63の内部に挿入している。このため、係合爪72がフック63によって位置決めされる利点がある。更に、係合爪72は、シート材18に形成された仮止め穴64を挿通して係合段部73に係合している。従って、係合爪72を逃がすための穴をシート材18に加工する必要はない。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
実施形態のように回動式の補助プレート29を併用すると、シート材18は強いテンションが掛かった状態で背フレーム17に取り付けられるため、品質向上の点で特に有益である。また、タッカーのようなファスナによる固定であっても、同じ効果を享受できる。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0091
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0091】
4 部材の一例としての背もたれ
5 傾動フレーム
17 背フレーム
18 シート材(メッシュ材)
19 サイドメンバー
20 アッパーメンバー
21 ロアメンバー
28,28′ 内周面
28a,28a′ 第2面
28b,28b′ 第1面
29 補助プレート
63 仮止め部であるフック
63a 仮止め部である穴
65 固定部である溶着部
66 ホーン
70 サイドカバー
O1 サイドメンバーにおける溶着面の垂線
O2 左右サイドメンバーを結ぶ前面
O2 アッパーメンバーにおける溶着面の垂線