(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133334
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】感度切替回路
(51)【国際特許分類】
B25J 19/02 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
B25J19/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116226
(22)【出願日】2024-07-19
(62)【分割の表示】P 2021061187の分割
【原出願日】2021-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 隆介
(72)【発明者】
【氏名】吉池 孝英
(57)【要約】
【課題】扱う物体に応じた力の分解能が得られ低負荷と高負荷の両方に対応可能な感度切替回路を提供することを目的とする。
【解決手段】感度切替回路は、ロボットのハンド部に取り付けられる触覚センサが出力する電圧値と、基準電圧値とを比較し増幅する比較増幅回路と、前記比較増幅回路のゲインを、前記触覚センサの感度モードの切り替え指示に応じて可変するゲイン可変抵抗と、前記触覚センサが出力する電圧値を、前記触覚センサの感度モードの切り替え指示応じて可変する基準電圧可変抵抗と、前記比較増幅回路が出力するアナログ値をデジタル値に変換するアナログ-デジタル変換器と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットのハンド部に取り付けられる触覚センサが出力する電圧値と、基準電圧値とを比較し増幅する比較増幅回路と、
前記比較増幅回路のゲインを、前記触覚センサの感度モードの切り替え指示に応じて可変するゲイン可変抵抗と、
前記触覚センサが出力する電圧値を、前記触覚センサの感度モードの切り替え指示応じて可変する基準電圧可変抵抗と、
前記比較増幅回路が出力するアナログ値をデジタル値に変換するアナログ-デジタル変換器と、
を備える感度切替回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度切替回路に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、操作者が遠隔操作でロボットを操作する場合、ロボットが操作した感覚を操作者に感じさせる技術が開発されている。このような場合、ロボットが有するロボットハンドには触覚センサが取り付けられ、触覚センサが検出した触覚情報が操作者にフィードバックされる(例えば特許文献1参照)。ロボットハンドにおいて、器用さと把持力強さを実現するため、ハンドに搭載される触覚センサは、高感度および広いダイナミックレンジの両立が求められる。
【0003】
このようなシステムでは、抵抗式触覚センサのアナログデータをADコンバータ(アナログ-デジタル変換手段)にてデジタル化してデータ処理する。
図16は、従来技術の触覚センサシステムの回路構成例を示す図である。
図16のように、センサ901の出力は、増幅回路902に入力される。なお、センサ901は、加わる力に応じて抵抗値が変化する抵抗式である。増幅回路902は、センサ901の出力を増幅してCPU(中央演算装置)903に出力する。CPU903は、ADC(ADコンバータ)904を有している。ADC904は、増幅回路902が出力したアナログデータをデジタル化してデータ処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図17は、従来技術による力とADCへの入力電圧値の関係例を示す図である。縦軸は電圧値であり、横軸は力である。
図16で説明したADC904の解像度が例えば10bitであったとする。従来技術では、センサ901が抵抗式の場合、
図X2のように、力が小さく(低負荷)電圧値が低い領域では解像度を高くできるが、力が大きく(高負荷)電圧値が高い領域では解像度が荒くなる。
【0006】
従来技術では、ADコンバータの分解能はデバイス依存であり、低負荷から高負荷まで広いダイナミックレンジを計測するために電圧のゲインを設定すると、力の分解能が粗く、低負荷領域(高感度側)で細かい力制御が困難である。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、扱う物体に応じた力の分解能が得られ低負荷と高負荷の両方に対応可能な感度切替回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る感度切替回路は、ロボットのハンド部に取り付けられる触覚センサが出力する電圧値と、基準電圧値とを比較し増幅する比較増幅回路と、前記比較増幅回路のゲインを、前記触覚センサの感度モードの切り替え指示に応じて可変するゲイン可変抵抗と、前記触覚センサが出力する電圧値を、前記触覚センサの感度モードの切り替え指示応じて可変する基準電圧可変抵抗と、前記比較増幅回路が出力するアナログ値をデジタル値に変換するアナログ-デジタル変換器と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば視覚情報および触覚情報のうち少なくとも1つに基づいて感度モードを切り替えるようにしたので、扱う物体に応じた力の分解能が得られ低負荷と高負荷の両方に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1実施形態に係るロボットハンドの構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る触覚センサを備えるロボットの構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係る関節制御部の構成例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る感度テーブルの例を示す図である。
【
図6】第1実施形態に係るロボットの処理手順例のフローチャートである。
【
図7】第1実施形態に係る高感度モードと広域モードの例を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る高感度モードのゲイン切り替え手順例を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る広域モードのゲイン切り替え手順例を示す図である。
【
図10】ゲイン切り替え時の動作例を示す図である。
【
図11】変形例におけるゲイン切り替えのレンジの例を示す図である。
【
図12】第1実施形態に係る切り替えモードと負荷域と分解能と対象と把持物体と動作の対応例を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る負荷域と力範囲例の関係を示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る触覚センサを備えるロボットの構成例を示す図である。
【
図15】第2実施形態に係るロボットの処理手順例のフローチャートである。
【
図16】従来技術の触覚センサシステムの回路構成例を示す図である。
【
図17】従来技術による力とADCへの入力電圧値の関係例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0012】
[概要]
まず、実施形態の概要を説明する。
図1は、実施形態の概要を示す図である。本実施形態は、視覚情報(対象物体情報)に基づいて物体を認識し、認識した結果に基づいて触覚センサの感度を切り替える。または、本実施形態は、視覚情報(対象物体情報)に基づいて物体を認識し、認識した結果に基づいて触覚センサの感度を切り替えた後、触覚情報(対象物体情報)に基づいて感度を修正する。あるいは、本実施形態は、物体との距離情報や温度情報等も用いて、触覚センサの感度を切り替える(または修正する)。
【0013】
物体は、鎖線で囲んだ領域g1のように、例えば、軽い物体、柔らかい物体、小さな物体、堅い物体、重い物体、子供や赤ちゃん等である。
触覚センサの感度は、例えば、高感度モードと広域感度モードである。ロボットハンドが行う作業は、鎖線で囲んだ領域g2のように、例えば、子供の頭を優しくなでる、物体を持ち替える、軽い物体を持つ、重い物体を持つ、瓶の蓋を開ける等である。高感度モードを適用する例は、例えば、子供の頭を優しくなでる、物体を持ち替える、軽い物体を持つ等である。広域モードを適用する例は、例えば、重い物体を持つ等である。なお、インハンドマニピュレ-ション(In-hand manipulation)とは、例えば把持した状態で、持ち替えたりする作業である。
【0014】
<第1実施形態>
本実施形態では、視覚情報に基づいて触覚センサの感度を切り替える。
【0015】
[ロボットハンドの構成例]
図2は、本実施形態に係るロボットハンドの構成例を示す図である。
図2のように、ロボットハンド31は、把持部33を備える。把持部33は、例えば、5つの指部331(親指331a、人差し指331b、中指331c)を備える。各指部331は、複数の関節と指節を備える。また、指の指節それぞれには、センサ21(取得手段)(センサ21-11(取得手段)、センサ21-12(取得手段)、センサ21-21(取得手段)、センサ21-22(取得手段)、センサ21-31(取得手段)、センサ21-32(取得手段)、センサ21-41(取得手段)、センサ21-42(取得手段)、センサ21-51(取得手段)、センサ21-52(取得手段))が例えば取り付けられている。
【0016】
なお、
図2の構成は一例であり、ロボットハンド31の構成は、これに限らない。例えば、指部331の本数は5本に限らず、2本以上であればよい。また、センサ21は、第1指節(指先の腹)のみに取り付けられていてもよい。
【0017】
[ロボットの構成例]
図3は、本実施形態に係る触覚センサを備えるロボットの構成例を示す図である。
図3のように、ロボット1は、撮影装置11(取得手段)、物体認識部13(取得手段)、および触覚センサ3を備える。
触覚センサ3は、例えば、ロボット制御部15(制御装置、取得手段)、第1センサ制御部17-1、第2センサ制御部17-2、…、第nセンサ制御部17-n、関節制御部19-11、関節制御部19-12、関節制御部19-21、関節制御部19-22、…、関節制御部19-n1、関節制御部19-n2、センサ21-11、センサ21-12、センサ21-21、センサ21-22、…、センサ21-n1、センサ21-n2、および通信部23を備える。
【0018】
なお、ロボット1は、各部に電力を供給する電源部(不図示)を備えている。なお、以下の説明では、第1センサ制御部17-1、第2センサ制御部17-2、…、第nセンサ制御部17-nのうちの1つを特定しない場合は、「センサ制御部17」という。また、関節制御部19-11、関節制御部19-12、関節制御部19-21、関節制御部19-22、…、関節制御部19-n1、関節制御部19-n2のうちの1つを特定しない場合は、「関節制御部19」という。
【0019】
撮影装置11は、例えば、RGBカメラと深度センサとを備える。
【0020】
物体認識部13は、撮影した画像とセンサによって検出された検出結果に基づいて、撮影された画像における対象物体の三次元位置と大きさ形状等の物体情報を周知の手法で検出する。物体認識部13は、自部が記憶するパターンマッチングのモデル等を参照して、撮影した画像に対して画像処理(エッジ検出、二値化処理、特徴量抽出、画像強調処理、画像抽出、パターンマッチング処理等)を行って物体名を推定する。なお、物体認識部13は、撮影された画像から複数の物体が検出された場合、物体毎に物体情報を検出する。
【0021】
ロボット制御部15は、物体認識部13が認識した視覚情報と自部が記憶する感度テーブルに基づいて、センサ21の感度を切り替えるか否かを判別する。なお、感度テーブルについては、後述する。ロボット制御部15は、判別結果に基づいて感度調整コマンドを生成し、生成した感度調整コマンドを第1センサ制御部17-1に出力する。なお、感度調整コマンドには、制御対象であるセンサ21を識別する対象の情報が含まれていてもよい。
【0022】
センサ制御部17は、感度調整コマンドを取得する。センサ制御部17は、関節制御部がデジタルデータに変換されたセンサが検出した検出データを取得する。センサ制御部17は、検出データをロボット制御部15に出力する。
【0023】
第1センサ制御部17-1は、ロボット制御部15が出力する感度調整コマンドを、関節制御部19-11と関節制御部19-12と第2センサ制御部17-2に出力する。第1センサ制御部17-1は、関節制御部19-11と関節制御部19-12それぞれが出力する検出データを取得し、取得した検出データを第2センサ制御部17-2に出力する。
【0024】
第2センサ制御部17-2は、第1センサ制御部17-1が出力する感度調整コマンドを、関節制御部19-21と関節制御部19-22と第3センサ制御部17-3(不図示)に出力する。第2センサ制御部17-2は、関節制御部19-21と関節制御部19-22それぞれが出力する検出データと、第1センサ制御部17-1が出力する検出データを取得し、取得した検出データを第3センサ制御部17-3に出力する。
【0025】
第nセンサ制御部17-nは、第1センサ制御部17-(n-1)(不図示)が出力する感度調整コマンドを、関節制御部19-n1と関節制御部19-n2に出力する。第nセンサ制御部17-nは、関節制御部19-n1と関節制御部19-n2それぞれが出力する検出データと、第2センサ制御部17-2が出力する検出データを取得し、取得した検出データをロボット制御部15に出力する。
【0026】
関節制御部19は、感度調整コマンドに応じて、センサ21の感度を切り替える。なお、関節制御部19の構成例、動作については、後述する。
【0027】
センサ21は、触覚センサであり、物体に対する力(指による圧力)を検出する。なお、センサ21は、関節制御部19が備えていてもよい。
【0028】
[関節制御部19の構成例]
次に、関節制御部19の構成例を説明する。
図4は、本実施形態に係る関節制御部の構成例を示す図である。
図4のように、関節制御部19は、例えば、可変抵抗R1(基準電圧可変抵抗)、抵抗R2、抵抗R3、可変抵抗R4(第1ゲイン抵抗、ゲイン可変抵抗)、可変抵抗R5(第2ゲイン抵抗、ゲイン可変抵抗)、DAC(デジタル-アナログ変換器)191、比較増幅回路192、およびADC193を備える。なお、
図4に示した関節制御部19の構成例は一例であり、これに限らない。
【0029】
センサ21は、一端が電圧Vddに接続され、他端が可変抵抗R1の一端と抵抗R3の一端とに接続される。
可変抵抗R1は、他端が接地され、感度調整コマンドに基づく調整量を示す調整データによって抵抗値rrefが可変される。
DAC191は、入力端子に調整データが入力され、出力端子がR2の一端に接続される。
抵抗R2は、他端が比較増幅回路192の負入力端子と可変抵抗R4の一端とに接続される。
抵抗R3は、他端が比較増幅回路192の正入力端子と可変抵抗R5の一端とに接続される。
可変抵抗R4は、他端が比較増幅回路192の出力端子とADCの入力端子とに接続され、調整データによって抵抗値rg2_1が可変される。
可変抵抗R5は、他端が接地され、調整データによって抵抗値rg2_2が可変される。
【0030】
可変抵抗R1、可変抵抗R4、および可変抵抗R5は、例えばデジタルポテンショメータである。また、調整データは、関節制御部19が、例えばシリアル通信(I2C)によって、各部に送信される。
【0031】
ここで、センサ21の抵抗値をrs、可変抵抗R1の抵抗値をrref、抵抗R2の抵抗値をRg1、抵抗R3の抵抗値をRg1、可変抵抗R4の抵抗値をrg2_1(=rg2)、可変抵抗R5の抵抗値をrg2_2(=rg2)とする。また、DAC191の出力電圧をVrefとする。
センサ21の出力電圧Voutは、次式(1)で表される。
【0032】
【0033】
また、ADC193への入力電圧Vadcは、次式(1)で表される。
【0034】
【0035】
[感度テーブルの例]
次に、感度テーブルの例を説明する。
図5は、本実施形態に係る感度テーブルの例を示す図である。
図5のように、感度テーブルには、例えば、物体名に、感度モードと、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値とが関連付けられている。
なお、
図5に示した感度テーブルは一例であり、これに限らない。
【0036】
[処理手順例]
次に、ロボット1の処理手順例を説明する。
図6は、本実施形態に係るロボットの処理手順例のフローチャートである。
【0037】
(ステップS1)物体認識部13は、撮影装置11が撮影した画像に対して周知の手法で画像処置を行って、物体の位置、物体の大きさ、物体名等、物体を認識する。
【0038】
(ステップS2)ロボット制御部15は、物体認識部13が認識した結果に基づいて、感度モードを選択する。
【0039】
(ステップS3)ロボット制御部15は、選択した感度モードが初期モードと異なるか否かを判別する。~は、選択した感度モードが初期モードと異なると判別した場合(ステップS3;YES)、ステップS4の処理に進める。~は、選択した感度モードが初期モードと異なっていないと判別した場合(ステップS3;NO)、ステップS5の処理に進める。
【0040】
(ステップS4)ロボット制御部15は、選択した感度モードに切り替える。
【0041】
(ステップS5)ロボット制御部15は、ロボットハンド31を物体に近づけていくように制御する(物体アプローチ)。
【0042】
(ステップS6)ロボット制御部15は、ロボットハンド31を制御して物体をピックアップする。
【0043】
(ステップS7)ロボット制御部15は、ロボットハンド31を制御して、所定の作業(例えばインハンドマニピュレ-ション)を行う。
【0044】
(ステップS8)ロボット制御部15は、ロボットハンド31を制御して、物体をプレース(離す、置く)する。
【0045】
(ステップS9)ロボット制御部15は、感度モードを切り替えたか否かを判別する。~は、感度モードを切り替えたと判別した場合(ステップS9;YES)、ステップS10の処理に進める。~は、感度モードを切り替えていないと判別した場合(ステップS9;NO)、処理を終了する。
【0046】
(ステップS10)ロボット制御部15は、感度モードに切り替えて初期モードに戻す。
【0047】
[感度切り替え時の処理例]
次に、感度切り替えの例を説明する。
図7は、本実施形態に係る高感度モードと広域モードの例を示す図である。グラフg101は、高感度モードの場合の力とADC193への入力電圧との関係を表す。グラフg102は、広域モードの場合の力とADC193への入力電圧との関係を表す。グラフg101、g102において、横軸は力であり、縦軸は電圧値である。なお、ADC193の解像度は、10bitであるとする。
【0048】
グラフg101のように、高感度モードでは、例えば力が所定値未満の場合に使用される。そして、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値とを調整することで、例えば閾値電圧Vth~V1に10bitを適用する。あるいは、高感度モードでは、例えば電圧値Vth~V2に10bitを適用する。なお、閾値電圧Vthは可変可能である。このように、高感度モードであっても、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値との組み合わせが複数あってもよい。
【0049】
グラフg102のように、広域モードでは、例えば力が所定値以上の場合に使用される。そして、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値とを調整することで、例えば閾値電圧Vth~V11に10bitを適用する。あるいは、広域モードでは、例えば電圧値Vth~V13に10bitを適用する。なお、閾値電圧Vthは可変可能である。このように、広域モードであっても、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値との組み合わせが複数あってもよい。
【0050】
グラフg101とg102のように、高感度モードは、ADC193への入力電圧の範囲が広域モードより広く、力の範囲f
1が広域モードより狭い。
グラフg101とg102のように、広域モードは、力の範囲f
11が高感度モードより広く、ADC193への入力電圧の範囲が高感度モードより狭い。
なお、
図7に示した各電圧、閾値電圧、力の範囲は一例であり、これに限らない。
【0051】
次に、高感度モードのゲイン切り替え手順例を説明する。
図8は、本実施形態に係る高感度モードのゲイン切り替え手順例を示す図である。グラフg151、g152において、横軸は力であり、縦軸は電圧値である。
グラフg151は、モード切り替え前のグラフである。電圧Vと力fとの関係は、V=g(f)であるとし、閾値電圧Vthが0(V)であるとする。ここで、センサ21によって検出に必要な検出帯域がf
1であるとする。
【0052】
グラフg152は、モード切り替え後のグラフである。
高感度モードでは、ゲインが例えば2倍の場合の電圧Vと力fとの関係は、V=gain×(g(f)-Vth)=2×g(f)となる。
【0053】
次に、広域モードのゲイン切り替え手順例を説明する。
図9は、本実施形態に係る広域モードのゲイン切り替え手順例を示す図である。グラフg171、g172、g173において、横軸は力であり、縦軸は電圧値である。
グラフg171は、モード切り替え前のグラフである。電圧Vと力fとの関係は、V=g(f)であるとする。ここで、センサ21によって検出に必要な検出帯域がf
1~f
2であるとする。
【0054】
グラフg172は、モード切り替え後のグラフである。
広域モードでは、ゲインが例えば5倍の場合の電圧Vと力fとの関係は、V=gain×(g(f)-Vth)=5×(g(f)-Vth)となる。
【0055】
ここで、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値とに対する調整データは、例えばシリアルデータで入力される。このため、第1ゲイン抵抗の抵抗値と、第2ゲイン抵抗の抵抗値と、基準電圧可変抵抗の抵抗値が変化するタイミングに時間差が発生する場合がある。また、アナログ回路による電流変化や、切り替え手段のスイッチ動作のチャタリング等によって、ゲイン切り替え前後において同じ力f1が印加されていても出力である電圧Vの値が異なる場合がある。この結果、アナログ回路切り替え時には、電圧が瞬間的に不安定になる可能性がある。そのことで、物体の把持制御(力制御)が誤動作する可能性がある。
【0056】
図10は、ゲイン切り替え時の動作例を示す図である。
グラフg201は、ゲイン切り替え時の通信による時間差と不安定領域を示している、横軸が時刻、縦軸が電圧である。時刻t1のとき閾値電圧Vthが切り替えられ、時刻t1~t2の期間T2が動作不安定領域である。時刻t3のとき第1ゲイン抵抗の抵抗値が切り替えられ、時刻t3~t4の期間T3が動作不安定領域である。時刻t5のとき第2ゲイン抵抗の抵抗値が切り替えられ、時刻t4~t6の期間T4が動作不安定領域である。また、時刻t1~t7の期間T1は、通信による設定の時間差を示している。
グラフg201のように、このゲイン切り替えによって、本来は電圧値VbからVaに切り替えたいのに、段階的に変化し、かつ不安定期間も含む。
【0057】
グラフg202は、グラフ201のようなゲイン切り替えが行われた際に時間と力との関係を示している。横軸は時刻、縦軸は力である。グラフg202のように、利用値の力はf1一定であるが、ゲイン切り替え期間T1の力は一定とならない。このため、この期間T1のデータは、制御データに使用すると誤動作しかねないので、使用できない。なお、時刻t1~t7の期間の力換算式はf=g-1(V)で表され、時刻t7以降の力換算式はf=g-1(V/G+Vth)で表される。
【0058】
これに対して、本実施形態では、グラフg173のように、通信による設定の時間差の期間(切り替え期間)、切り替え開始前の力f1を保持する。グラフg173は、本実施形態のゲイン切り替え時の力と時刻の関係を表すグラフである。これにより、時刻t1までの力換算式はf=g-1(V)で表され、時刻t1~t7の期間の力換算式はf=f1で表され、時刻t7以降の力換算式はf=g-1(V/G+Vth)で表される。
【0059】
このような処理によって、本実施形態によれば、ゲイン切り替え時の通信による時間差の影響、スイッチングのチャタリングの影響、アナログ回路による電流変化の影響等を防ぐことができる。なお、ロボット制御部15は、ゲインの切り替え、閾値の切り替えを、ロボット1動作中に動的に通信によって変化させることができる。
【0060】
[変形例]
なお、上述した例では、ゲインモードが高感度モードと広域モードの2つの例を説明したが、ゲインモードは2つ以上であってもよい。この場合、
図11のように、力fに対して、いくつかのレンジを備えていてもよい。
【0061】
図11は、変形例におけるゲイン切り替えのレンジの例を示す図である。
図11において、横軸は力、縦軸はADCへの入力電圧である。モードIは、力f0~f6のレンジをカバーするモードである。モードIIとIIIは、力f0~f6のレンジを2つのモードでカバーするモードである。モードIV~VIIは、力f0~f6のレンジを4つのモードでカバーするモードである。モードVIIIは、力f0~f6のレンジの一部のf2~f5をカバーするモードである。モードIXは、力f0~f6のレンジの一部のf1~f4をカバーするモードである。
【0062】
ロボット制御部15は、
図11に示した複数のモードを、例えば
図12のように認識した物体に応じて切り替える。
図12は、本実施形態に係る切り替えモードと負荷域と分解能と対象と把持物体と動作の対応例を示す図である。なお、ロボット制御部15は、
図12の関係を記憶している。または、ロボット制御部15は、ネットワーク等を介して取得して記憶するようにしてもよい。
【0063】
図12のように、例えば、モードIは、負荷域が「低~高」であり、分解能が「低」であり、対象が「重量物。扱いは粗めでもよいもの。加重が大きく変化する場合」等であり、把持物体が「2Lペットボトル、米袋」等であり、動作が「瓶の蓋開け、2Lペットボトルの水を注ぐ」等である。
【0064】
また、例えば、モードVは、負荷域が「低中」であり、分解能が「高」であり、対象が「やや低加重で、繊細な扱いが必要なもの。精密機器」等であり、把持物体が「卵、スマートフォン、リモコン」等である。
【0065】
また、例えば、モードIXは、負荷域が「中」であり、分解能が「中」であり、対象が「中荷重の領域で、ある程度荷重が変化する場合」等であり、動作が「子供を優しくなでる」等である。
【0066】
図13は、本実施形態に係る負荷域と力範囲例の関係を示す図である。
図13のように、負荷域「低」の力範囲は、例えば「0.01~0.5(N)、1~50(g)」である。負荷域「低中」の力範囲は、例えば「0.5~0.2(N)、50~200(g)」である。負荷域「中高」の力範囲は、例えば「2~10(N)、200(g)~10(kg)」である。負荷域「高」の力範囲は、例えば「10(N)以上、10(kg)以上」である。
【0067】
なお、
図11、
図12に示した切り替えモードは一例であり、これに限らない。また、
図12に示した切り替えモードの負荷域、分解能、対象、把持物体、動作は一例であり、これに限らない。
図13に示した負荷域の力範囲例も一例であり、これに限らない。また、各レンジは固定であっても、可変であってもよい。なお、レンジ幅を可変する場合は、例えば実際に検出されたセンサ21の検出値に基づいてレンジを反抗するようにしてもよい。
【0068】
なお、ロボット制御部15は、将来の状態や動作変化を予測してレンジを変更するようにしてもよい。ロボット制御部15は、例えば、コップを把持して、水をコップに入れたり出したりする場合などに、視覚情報に基づいて環境認識した結果に基づいて予測するようにしてもよい。
【0069】
以上のように、本実施形態では、視覚情報に基づいて認識された物体に応じて、センサ21の出力が入力されるADC193の感度を切り替えるようにした。また、本実施形態では、感度モードの切り替えを、ゲイン切り替えと、基準電圧の切り替えで行うようにした。また、本実施形態では、モード切替時の通信による切り替えタイミングの期間、力と一定に保持するようにした。
【0070】
これにより、本実施形態によれば、扱う物体に応じた力の分解能が得られ,器用な作業と力強い作業の両方を同一のシステムで実現可能になる。また、本実施形態によれば、切り替え時の通信等による切り替えタイミング等のばらつきによる誤動作を防ぐことができる。
【0071】
<第2実施形態>
本実施形態では、視覚情報と触覚情報に基づいて触覚センサの感度を切り替える。
【0072】
(ロボットの構成例)
図14は、本実施形態に係るセンサを備えるロボットの構成例を示す図である。
図14のように、ロボット1Aは、撮影装置11(取得手段)、物体認識部13(取得手段)、および触覚センサ3Aを備える。
触覚センサ3Aは、例えば、ロボット制御部15A(制御装置、取得手段)、第1センサ制御部17A-1、第2センサ制御部17A-2、…、第nセンサ制御部17A-n、関節制御部19A-11、関節制御部19A-12、関節制御部19A-21、関節制御部19A-22、…、関節制御部19A-n1、関節制御部19A-n2、センサ21-11、センサ21-12、センサ21-21、センサ21-22、…、センサ21-n1、センサ21-n2、および通信部23を備える。
【0073】
なお、ロボット1Aは、各部に電力を供給する電源部(不図示)を備えている。なお、以下の説明では、第1センサ制御部17A-1、第2センサ制御部17A-2、…、第nセンサ制御部17A-nのうちの1つを特定しない場合は、「センサ制御部17A」という。また、関節制御部19A-11、関節制御部19A-12、関節制御部19A-21、関節制御部19A-22、…、関節制御部19A-n1、関節制御部19A-n2のうちの1つを特定しない場合は、「関節制御部19A」という。
【0074】
関節制御部19Aは、物体を把持した際のセンサ21が検出した触覚情報を取得し、取得した触覚情報をセンサ制御部17Aに出力する。なお、関節制御部19Aの回路構成例は、例えば第1実施形態の
図4と同様である。
【0075】
センサ制御部17Aは、取得した触覚情報をロボット制御部15Aに出力する。
【0076】
ロボット制御部15Aは、まず、第1実施形態と同様に視覚情報に基づいて感度モードを切り替える。次に、ロボット制御部15Aは、実際に把持した際の触覚情報に基づいて感度を調整するか否かを判別し、判別結果に基づいて感度を調整する。
【0077】
[処理手順例]
次に、ロボット1Aの処理手順例を説明する。
図15は、本実施形態に係るロボットの処理手順例のフローチャートである。
【0078】
(ステップS1~S6)ロボット1Aは、ステップS1~S5の処理を行う。
【0079】
(ステップS101)ロボット制御部15Aは、実際に把持した際の触覚情報に基づいて把持された物体の重量を周知の手法によって検出する。
【0080】
(ステップS102)ロボット制御部15Aは、視覚情報に基づいて切り替えた感度モードの想定通りの重量(例えば
図13参照)であったか否かを判別する。ロボット制御部15Aは、想定通りの重量であったと判別した場合(ステップS102;YES)、ステップS7~S10の処理を行う。ロボット制御部15Aは、想定通りの重量ではなかったと判別した場合(ステップS102;NO)、ステップS103の処理に進める。
【0081】
(ステップS103)ロボット制御部15Aは、把持物体の重量が想定より軽いか否かを判別する。ロボット制御部15Aは、把持物体の重量が想定より軽いと判別した場合(ステップS103;YES)、ステップS104の処理に進める。ロボット制御部15Aは、把持物体の重量が想定より軽くない(重い)と判別した場合(ステップS103;NO)、ステップS105の処理に進める。
【0082】
(ステップS104)ロボット制御部15Aは、切り替えた感度モードに対して感度をアップする。ロボット制御部15Aは、処理後、ステップS6の処理に戻す。
【0083】
(ステップS105)ロボット制御部15Aは、切り替えた感度モードに対して感度をダウンする。ロボット制御部15Aは、処理後、ステップS6の処理に戻す。
【0084】
なお、
図15に示した処理手順は一例であり、これに限らない。例えば、ステップS103において、ロボット制御部15Aは、想定より重いか否かを判別してもよい。この場合、ロボット制御部15Aは、想定より重い場合に感度をダウンさせ、想定より重くない場合に感度をアップさせるようにしてもよい。
また、ロボット制御部15Aは、感度モードを例えば
図11のモードIIからモードIVやVIに遷移させることで、感度アップまたは感度ダウンさせてもよい。あるいは、ロボット制御部15Aは、感度モードを例えば
図11のモードIIに対して微調整することで、感度アップまたは感度ダウンさせてもよい。
【0085】
なお、本実施形態においても、第1実施形態と同様に感度モードの切り替えを、ゲイン切り替えと、基準電圧の切り替えで行う。また、本実施形態でも、モード切替時の通信による切り替えタイミングの期間、力と一定に保持する。
【0086】
これにより、本実施形態によれば、視覚情報および触覚情報に基づいて接触対象に応じた感度モードを設定するようにしたので、更に精度良く扱う物体に応じた力の分解能が得られ,器用な作業と力強い作業の両方を同一のシステムで実現することが可能になる。
【0087】
なお、上述した各実施形態、変形例におけるロボットは、ロボットハンドを備えていればよく、二足歩行ロボット、作業ロボット、受付ロボット、介護ロボット等であってもよい。また、上述した各実施形態、変形例におけるロボットのロボットハンドは、少なくとも2つ以上の指部を備えていればよい。
【0088】
また、上述した各実施形態、変形例では、1つのロボットハンドの動作制御を例に説明したが、ロボットハンドは2つ以上であってもよい。この場合、ロボット制御部15(または15A)は、視覚情報に基づいてロボットハンドそれぞれの感度モードを切り替えるようにしてもよい。この場合、ロボット制御部15(または15A)は、例えば、第1のロボットハンドと第2のロボットハンドに対する感度モードを同じ感度モードに切り替えても良く、異なる感度モードに切り替えてもよい。
【0089】
さらに、ロボット制御部15Aは、実際に把持した触覚情報に基づいて、例えば、第1のロボットハンドと第2のロボットハンドに対する感度モードを同じように調整しても良く、異なるように調整するようにしてもよい。
【0090】
また、ロボット制御部15(または15A)は、触覚情報に基づいて感度モードを切り替えてもよい。そして、ロボット制御部15(または15A)は、触覚情報に基づいて切り替えた感度モードを視覚情報に基づいて調整するようにしてもよい。
【0091】
なお、本発明におけるロボット1(または1A)の機能の全てまたは一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによりロボット1(または1A)が行う処理の全てまたは一部を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ローカルネットワーク上で構築されたシステムやクラウド上で構築されたシステム等も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0092】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0093】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形および置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0094】
1,1A…ロボット、3,3A…触覚センサ、31…ロボットハンド、33…把持部、331…指部、331a…親指、331b…人差し指、331c…中指、21,21-11,21-12,21-21,21-22,21-31,21-32,21-41,21-42,21-51,21-52,・・・,21-n1,21-n2…センサ、11…撮影装置、13…物体認識部、15,15A…ロボット制御部、17…センサ制御部、17-1…第1センサ制御部、17-2…第2センサ制御部、・・・、17-n…第nセンサ制御部、19,19-11,19-12,19-21,19-22,・・・,19-n1,19-n2…関節制御部、23…通信部、192…比較増幅回路、193…ADC