(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133346
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】薬剤放散装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20240920BHJP
F24F 8/24 20210101ALI20240920BHJP
A61L 9/12 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
A01M1/20 E
F24F8/24
A61L9/12
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116821
(22)【出願日】2024-07-22
(62)【分割の表示】P 2020161950の分割
【原出願日】2020-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 茂
(72)【発明者】
【氏名】定森 耕平
(72)【発明者】
【氏名】熊野 尊之
(72)【発明者】
【氏名】若槻 健
(57)【要約】
【課題】ファン式薬剤放散装置の薬剤による効力を向上させる。
【解決手段】薬剤放散装置は、遠心式ファンの回転軸方向両側にそれぞれ配置される第1空気吸い込み口及び第2空気吸い込み口を有するファンケーシング13と、第1空気吸い込み口に接続される第1薬剤カートリッジ20と、第2空気吸い込み口に接続される第2薬剤カートリッジ30とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動されるファンと、
前記ファンによって形成された気流が通過するとともに、揮発性の薬剤を有する薬剤カートリッジとを備えた薬剤放散装置において、
前記ファンは、遠心式ファンであり、
前記ファンの回転軸方向一側及び他側にそれぞれ配置される第1空気吸い込み口及び第2空気吸い込み口と、当該第1空気吸い込み口から吸い込まれた空気及び第2空気吸い込み口から吸い込まれた空気を混合せしめたうえで吐出する吐出口とを有するファンケーシングと、
前記第1空気吸い込み口に接続される第1薬剤カートリッジと、
前記第2空気吸い込み口に接続される第2薬剤カートリッジとを備えることを特徴とする薬剤放散装置。
【請求項2】
前記第1薬剤カートリッジの薬剤と前記第2薬剤カートリッジの薬剤とが異なることを特徴とする請求項1に記載の薬剤放散装置。
【請求項3】
前記ファンの回転軸方向一側の羽根部と他側の羽根部とが異なることを特徴とする請求項1に記載の薬剤放散装置。
【請求項4】
前記第1空気吸い込み口の形状と前記第2空気吸い込み口の形状とが異なることを特徴とする請求項1に記載の薬剤放散装置。
【請求項5】
前記ファンの回転軸方向一側の羽根部は、当該回転軸方向に延びる形状とされるとともに、当該回転軸周りに間隔をあけて複数配置され、
前記ファンの回転軸方向他側の羽根部は、当該回転軸方向に延びる形状とされるとともに、当該回転軸周りに間隔をあけて複数配置され、
前記ファンを駆動するモータが前記ファンの内部に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の薬剤放散装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば害虫駆除剤等を空気中に放散する薬剤放散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1、2に開示されているように、モータによって駆動されるファンを使用した薬剤放散装置が知られている。特許文献1の薬剤放散装置は、揮発性を有する薬剤を含浸させた含浸体が空気流れ方向上流側と下流側とにそれぞれ配置されている。ファンを回転させることによって形成された気流は、上流側の含浸体を通過して薬剤を含んだ後、下流側の含浸体を通過する際に更に薬剤を含む。その後、外部に流出することによって薬剤を放散することができる。
【0003】
また、特許文献2の薬剤放散装置は遠心式ファンを備えている。遠心式ファンの吸い込み側には、薬剤が収容された筒状の薬剤容器が接続されており、遠心式ファンの作用によって薬剤容器の外部から吸い込まれた空気が該薬剤容器内で薬剤を含み、外部に流出することによって薬剤を放散することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-70654号公報
【特許文献2】特開2004-229852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では、各含浸体を構成する部材がプリーツ状不織布である。この含浸体のプリーツのピッチや、上流側に配置される含浸体と下流側に配置される含浸体との離間距離を特定の値にすることで薬剤の効力を向上させ得るようにしている。
【0006】
しかしながら、含浸体を空気流れ方向に並べて複数配置すると、気流が複数の含浸体を順に通過する際の圧力損失が大きくなり、その結果、単位時間当たりに含浸体を通過する空気量が減少する場合がある。つまり、含浸体を2つ配置したからといって薬剤の放散量を増やすことができるとは限らず、上記プリーツのピッチや含浸体の離間距離の設定がシビアになるとともに、2つの含浸体を有効に活用できない場合が想定され得る。
【0007】
また、特許文献2では、空気の吸い込み方向に長い筒状の薬剤容器を使用しているが、このような形状の薬剤容器を使用する場合であっても、薬剤による更なる効力の向上を図りたいという要求があった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ファン式薬剤放散装置の薬剤による効力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1の発明は、モータによって駆動されるファンと、前記ファンによって形成された気流が通過するとともに、揮発性の薬剤を有する薬剤カートリッジとを備えた薬剤放散装置において、前記ファンは、遠心式ファンであり、前記ファンの回転軸方向両側にそれぞれ配置される第1空気吸い込み口及び第2空気吸い込み口と、当該第1空気吸い込み口及び第2空気吸い込み口から吸い込まれた空気を吐出する吐出口とを有するファンケーシングと、前記第1空気吸い込み口に接続される第1接続口と、外部から空気を取り込む第1空気取込口とを有し、前記薬剤を保持する第1薬剤保持体が収容された第1薬剤カートリッジと、前記第2空気吸い込み口に接続される第2接続口と、外部から空気を取り込む第2空気取込口とを有し、前記薬剤を保持する第2薬剤保持体が収容された第2薬剤カートリッジとを備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、第1薬剤カートリッジ及び第2薬剤カートリッジがファンの回転軸方向両側にそれぞれ配置されることになる。そして、ファンが回転すると、外部の空気が第1薬剤カートリッジの第1空気取込口から取り入れられるので、第1薬剤保持体に保持されている薬剤を含んだ空気が得られる。薬剤を含んだ空気はファンケーシングの第1空気吸い込み口から当該ファンケーシング内に吸い込まれる。また、ファンが回転すると、外部の空気が第2薬剤カートリッジの第2空気取込口からも取り入れられるので、第2薬剤保持体に保持されている薬剤を含んだ空気が得られる。薬剤を含んだ空気はファンケーシングの第2空気吸い込み口から当該ファンケーシング内に吸い込まれる。
【0011】
第1薬剤カートリッジからファンケーシング内に吸い込まれた薬剤を含む空気と、第2薬剤カートリッジからファンケーシング内に吸い込まれた薬剤を含む空気とは、共にファンケーシングの吐出口から外部へ吐出される。これにより、薬剤が広範囲に放散される。
【0012】
この構成では、第1薬剤カートリッジ及び第2薬剤カートリッジが空気流れ方向に直列に並んでおらず、それぞれファンケーシングの第1空気吸い込み口及び第2空気吸い込み口に接続されているので、それぞれの薬剤カートリッジを流れる空気が互いに影響を受けない。この結果、直列に並べる場合の悪影響(例えば圧力損失等)が低減され、ファンケーシングの吐出口から吐出される単位時間当たりの空気量が増加する。
【0013】
第2の発明では、前記第1薬剤保持体及び前記第2薬剤保持体は、筒状に形成されており、前記第1薬剤保持体及び前記第2薬剤保持体の軸線は前記ファンの回転軸の延長線上に配置されていることを特徴とする。
【0014】
すなわち、薬剤の保持量を増やす方法として、筒状の薬剤保持体を軸線方向に長くすることが考えられるが、その一端部から空気を吸い込む構成では、他端部がファンから遠くなり、特に他端部に保持されている薬剤の揮散量が少なくなり、その結果、薬剤の効力がさほど向上しないことがある。
【0015】
これに対し、本構成によれば、第1薬剤カートリッジ及び第2薬剤カートリッジをファンの回転軸の延長線上で回転軸方向両側に配置できるので、1つの薬剤カートリッジの軸線方向の寸法を2倍にする場合に比べて各薬剤保持体の薬剤の揮散量が多くなり、その結果、薬剤の効力を向上させることができる。
【0016】
第3の発明は、前記ファンの回転軸は水平方向に延びており、前記第1薬剤カートリッジ、前記ファン及び前記第2薬剤カートリッジが水平方向に並んでいることを特徴とする。
【0017】
すなわち、ファンの回転軸方向両側に第1薬剤カートリッジ及び第2薬剤カートリッジを配置すると、薬剤放散装置の回転軸方向の寸法が拡大することになり、仮に回転軸方向が上下方向に延びる姿勢で設置すると、薬剤放散装置が不安定になるおそれがある。本構成によれば、第1薬剤カートリッジ、ファン及び第2薬剤カートリッジが水平方向に並んでいるので、薬剤放散装置を設置した状態で安定させることができる。
【0018】
第4の発明は、前記ファンは、前記第1薬剤カートリッジ側に配置される複数の第1羽根部と、前記第2薬剤カートリッジ側に配置される複数の第2羽根部とを有しており、前記第1羽根部における前記第2薬剤カートリッジ側と、前記第2羽根部における前記第1薬剤カートリッジ側とが接続されて一体化されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、第1羽根部と第2羽根部とを一体化することで、共通のモータによって駆動することができ、駆動構造をシンプルにすることができる。
【0020】
第5の発明は、薬剤放散装置において、前記ファンケーシングの前記吐出口は、当該装置の設置面から離れる方に向けて開口しており、前記第1薬剤カートリッジ、前記ファン及び前記第2薬剤カートリッジを収容する筐体を備え、前記筐体には、前記吐出口と対向する部分に開口する第1開口部と、当該第1開口部よりも前記設置面に近い部分に開口する第2開口部とが形成されていることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、ファンケーシングの吐出口から吐出された薬剤を含む空気が筐体の第1開口部を経て設置面から離れる方へ向けて吹き出すので、薬剤を広範囲に効率よく放散できる。一方、第1開口部よりも設置面に近い部分にある第2開口部から空気を吸い込んで第1薬剤カートリッジの第1空気取込口及び第2薬剤カートリッジの第2空気取込口に供給することができるので、吐出側と取込側とで空気の流れを分けることができ、空気の流れがスムーズになる。
【0022】
第6の発明は、前記筐体には、前記モータに電力を供給するための電池が収容される電池収容部が設けられ、前記第1薬剤カートリッジ、前記ファン及び前記第2薬剤カートリッジの並び方向は前記筐体の幅方向とされ、前記ファンと前記電池収容部とは前記筐体の奥行方向に並んでいることを特徴とする。
【0023】
すなわち、第1薬剤カートリッジ、ファン及び第2薬剤カートリッジが筐体の幅方向に並んでいることで、筐体の幅が広くなるので、仮に電池収容部も筐体の幅方向に並べてしまうと、薬剤放散装置の幅が広くなり過ぎ、設置時の自由度が低下するおそれがある。これに対し、本構成によれば、電池収容部とファンを筐体の奥行方向に並べているので、薬剤放散装置の幅の拡大を抑制して設置時の自由度を高めることができる。
【0024】
第7の発明は、前記第1薬剤カートリッジは、前記第1薬剤保持体を収容する筒状の本体部を備え、前記本体部の軸線は前記ファンの回転軸の延長線上に配置され、前記第1接続口は、前記本体部の軸線方向一方の端面に形成され、前記本体部の周壁部には、複数の前記第1空気取込口が周方向に互いに間隔をあけて設けられていることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、第1薬剤カートリッジの本体部の周壁部の広い範囲から空気を取り込むことができ、取り込んだ空気を本体部の軸線方向一方に向けて流す過程で空気に薬剤を含ませることができる。そして、薬剤を含んだ空気は第1接続口からファンケーシング内に流入して吐出口から吐出される。尚、第2薬剤カートリッジも同様に構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、遠心式ファンの回転軸方向両側にそれぞれ第1薬剤カートリッジ及び第2薬剤カートリッジを配置し、各薬剤カートリッジ内の薬剤を含む空気を別々にファンケーシングに取り込んでから外部に吐出するようにしたので、吐出口から吐出される単位時間当たりの空気量および薬剤の揮散量を増加させて薬剤の効力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る薬剤放散装置を上方から見た斜視図である。
【
図2】薬剤放散装置のカバーを取り外した状態を上方から見た斜視図である。
【
図3】薬剤放散装置のカバーを取り外した状態の平面図である。
【
図4】ファンケーシングの右側板及び右側薬剤カートリッジを取り外した状態を示す
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る薬剤放散装置1の斜視図である。薬剤放散装置1は、揮発性の薬剤を空気中に放散して当該薬剤による効力を得るための装置である。薬剤放散装置1の使用場所としては、特に限定されないが、例えば各種店舗、事務所、工場、家庭等で使用することができ、屋外で使用してもよい。薬剤としては、例えば害虫駆除剤、害虫忌避剤、殺虫剤、芳香剤、消臭剤、除菌剤等を挙げることができるが、これら以外でも常温(例えば20℃)で揮発性を有する各種薬剤であってもよい。
【0030】
図2及び
図3に示すように、薬剤放散装置1は、送風ユニット10と、右側薬剤カートリッジ(第1薬剤カートリッジ)20と、左側薬剤カートリッジ(第2薬剤カートリッジ)30と、これらを収容する筐体40(
図1に示す)とを備えている。筐体40の内部に、電池収容ケース部(電池収容部)50が設けられている。各図において、薬剤放散装置1の左右方向及び奥行方向を定義するが、これは説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用状態や製造時の姿勢等を限定するものではない。尚、本明細書では、手前側を単に「前」といい、奥側と単に「後」ということもある。
【0031】
図1に示すように、薬剤放散装置1は、全体として左右方向に長い形状とされている。すなわち、薬剤放散装置1の左右方向の寸法は、奥行方向の寸法よりも長く設定されているとともに、高さ方向の寸法よりも長く設定されている。また、薬剤放散装置1の幅方向が左右方向である。尚、薬剤放散装置1は、図示しないが上下方向に長い形状であってもよい。この場合、下側薬剤カートリッジ、送風ユニット、上側薬剤カートリッジの順で上下方向に並ぶことになる。
【0032】
筐体40は、当該筐体40の下側部分を構成する下側部材41と、当該筐体40の上側部分を構成するカバー42とを備えている。
図4に示すように、下側部材41は、底壁部41aと、底壁部41aの周縁部から上方へ延びる周壁部41bとを備えており、上方に開放されている。底壁部41aの右側には、複数の右側下部開口部(第2開口部)41cが形成されている。底壁部41aの左側には、右側下部開口部41cと同様に複数の左側下部開口部(第2開口部)が形成されている(図示は省略)。右側下部開口部41c及び左側下部開口部は、スリット状に形成されている。
【0033】
尚、
図1においては、床面を設置面としている。すなわち、薬剤放散装置1を床に置いてカバー42が上を向くように設置した状態を示している。これに限らず、天井面を設置面として、カバー42が下を向くようにして(上下逆にして)天井に固定してもよい。同様に、壁面を設置面として、カバー42を水平方向に向けて突出させるように壁に固定して使用することもできる。従って、本明細書で「上」「下」等というのは説明の便宜を図るためだけであり、実際の使用状態や製造時の姿勢等を限定するものではない。薬剤放散装置1をどのような姿勢で設置するとしても、下側部材41はカバー42よりも設置面に近いと言える。
【0034】
周壁部41bの手前側部分の右側には、複数の右側側部開口部(第2開口部)41eが形成されている。周壁部41bの左側には、複数の左側側部開口部(第2開口部)41fが形成されている。右側側部開口部41e及び左側側部開口部41fは、上下方向に延びるスリット状に形成されており、左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。
【0035】
図1に示すように、カバー42は、下側部材41の開放された部分を上方から覆うように形成された部材である。カバー42の下端部が下側部材41の上端に嵌合または係合するようになっている。カバー42は、薬剤カートリッジ20、30や後述する電池51の交換時に下側部材41から取り外すことができる。
【0036】
カバー42の形状は特に限定されるものではないが、例えば、奥行方向の中央部が最も上に位置するように上方へ膨出した形状をなしている。これは、薬剤カートリッジ20、30の外形状に対応させるためである。また、カバー42の右端部及び左端部は、共に上下方向に延びており、下側部材41の周壁部41bの右側及び左側の真上に位置している。カバー42の前端部(手前側の端部)及び後端部(奥側の端部)も共に上下方向に延びており、下側部材41の周壁部41bの前側及び後側の真上に位置している。
【0037】
カバー42の手前側の上部には、操作パネル42aが設けられている。操作パネル42aには、電源スイッチ42bが設けられている。さらに、操作パネル42aには、送風ユニット10の作動中に点灯する一方、送風ユニット10の非作動中に消灯する運転表示灯42cが設けられている。
【0038】
カバー42の手前側には、複数の手前側開口部(第1開口部)42dが設けられている。手前側開口部42dは、上下方向に長いスリット状をなしており、左右方向に互いに間隔をあけて配置されている。手前側開口部42dは、カバー42の左右方向中央部にのみ設けられており、右側側部開口部41eと左側側部開口部41fとの間に対応するように配置されている。
【0039】
図3に示すように、送風ユニット10は、筐体40の内部において左右方向中央部に配設されており、手前側に偏位している。
図4に示すように、送風ユニット10は、モータ11と、モータ11によって駆動される遠心式ファン12と、モータ11及びファン12を収容するファンケーシング13とを有している。尚、
図3では、ファンケーシング13の上部を省略してファン12が見えるようにしている。
【0040】
ファン12は、回転軸が水平方向(左右方向)に延びる姿勢でファンケーシング13の内部に配設されており、例えばシロッコファン等で構成することができる。ファン12の回転軸が左右方向に延びているので、ファン12が回転すると、ファン12の右側方及び左側方からそれぞれ空気を吸い込む。ファン12は、吸い込んだ空気を径方向外方へ流出させる。
【0041】
ファンケーシング13は、ファン12を囲むように延びるスクロール状壁部13aと、スクロール状壁部13aの右端部に設けられる右側板13bと、スクロール状壁部13aの左端部に設けられる左側板13cとを有している。右側板13b及び左側板13cは、スクロール状壁部13aに対して着脱自在に構成されているが、スクロール状壁部13aと一体成形されていてもよい。
【0042】
スクロール状壁部13a、右側板13b及び左側板13cにより、ファンケーシング13の内部には、ファン12から径方向へ流出した空気が集合する空気通路13dが形成されている。
図5に示すように、空気通路13dの始点は、ノーズ部13e近傍であり、この実施形態では、ファン12の前方においてファン12の上部よりも下かつ下部よりも上に位置している。空気通路13dは、ノーズ部13e近傍からファン12の上方、後方、下方を順に経るように形成されており、下流側が前方へ向かって斜め上に延びている。空気通路13dの下流端は、ファンケーシング13内に吸い込んだ空気を吐出する吐出口13fとされている。すなわち、ファンケーシング13の手前側に吐出口13fが形成されていて、その吐出口13fは上方(すなわち、設置面から離れる方)へ向けて開口している。
図1に示す筐体40の手前側開口部42dは、吐出口13fと対向する部分に開口しており、吐出口13fから吐出された空気は筐体40の手前側開口部42dから外部へ吐出される。吐出口13fは複数形成されていてもよい。
【0043】
図3に示すように、ファン12は、右側薬剤カートリッジ20側に配置される複数の右側羽根部(第1羽根部)12aと、左側薬剤カートリッジ30側に配置される複数の左側羽根部(第2羽根部)12bとを有している。複数の右側羽根部12aは、回転軸方向に延びる形状とされるとともに、回転軸周りに間隔をあけて配置されている。複数の左側羽根部12bも、回転軸方向に延びる形状とされるとともに、回転軸周りに間隔をあけて配置されている。
図3~
図5中の右側羽根部12aと左側羽根部12bとは同じ形状、及び同じ枚数であるが、これに限らず、左右で羽根の形状や枚数が異なっていてもよい。
【0044】
右側羽根部12aにおける左側薬剤カートリッジ30側(左側)と、左側羽根部12bにおける右側薬剤カートリッジ20側(右側)とが接続されて一体化されている。具体的には、右側羽根部12aと左側羽根部12bとは、例えば樹脂により一体成形することができる。これにより、共通のモータ11で右側羽根部12aと左側羽根部12bを回転軸周りに回転させることができるので、駆動構造をシンプルにすることができる。尚、右側羽根部12aと左側羽根部12bを別部材で構成し、一体化してもよい。
【0045】
モータ11は、ファン12の内部に配置されている。
図4に示すように、モータ11は、そのモータケーシング部分が右側板13bの左側に固定されていて、右側板13bから左側へ突出した状態でファンケーシング13に固定されている。モータ11の出力軸(図示せず)は水平方向(左右方向)に延びており、この出力軸にファン12の回転中心部が固定されている。したがって、ファン12は、モータ11を介して右側板13bに対して回転可能に支持されることなる。尚、モータ11は、左側板13cに固定されていてもよい。
【0046】
図4に示すように、右側板13bの中央近傍には、右側吸い込み口(第1空気吸い込み口)13gが形成されている。また、
図5に示すように、左側板13cの中央近傍には、左側吸い込み口(第2空気吸い込み口)13hが形成されている。右側吸い込み口13g及び左側吸い込み口13hは、同一軸線上に配置されるとともに、ファン12の回転軸方向両側(右側及び左側)にそれぞれ配置されている。ファン12が回転すると、右側羽根部12aによって形成された気流により、ファンケーシング13外の空気が右側吸い込み口13gからファンケーシング13内に流入し、また、左側羽根部12bによって形成された気流により、ファンケーシング13外の空気が左側吸い込み口13hからファンケーシング13内に流入する。
【0047】
尚、この実施形態においては、右側吸い込み口13gと左側吸い込み口13hの開口形状を、若干異ならせている。これは、本実施形態ではモータ11が右側板13bに固定されているためにファンケーシング13内が左右非対称となっているので、その非対称性による左右の気流の偏りを是正するためである。もっとも、このような事情に限らず、右側吸い込み口13g及び左側吸い込み口13hが同一形状であってもよい。
【0048】
右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30は、ファン12によって形成された気流が通過するとともに、揮発性の薬剤を有している。
図2及び
図3に示すように、右側薬剤カートリッジ20は送風ユニット10の右側に配置され、左側薬剤カートリッジ30は送風ユニット10の左側に配置されている。右側薬剤カートリッジ20、送風ユニット10(ファン12)及び左側薬剤カートリッジ30は、水平方向(左右方向)に並んでいる。
【0049】
右側薬剤カートリッジ20は、薬剤を保持する右側薬剤保持体(第1薬剤保持体)21と、右側薬剤保持体21を収容する筒状の本体部22とを備えており、筐体40における送風ユニット10よりも右側のカートリッジ収容空間に収容される。
図6に示すように、右側薬剤保持体21は、円筒状に形成されている。例えば、不織布等のような薬剤を含浸可能な含浸体をプリーツ状に成形した後、円筒状をなすように巻くことで、円筒状の右側薬剤保持体21を得ることができる。また、通気性を有する発泡材に薬剤を含浸させることによって保持させ、この発泡材を円筒状に成形してもよい。また、樹脂製の網状部材に薬剤を含浸または塗布することによって保持させ、この網状部材を円筒状に成形してもよい。薬剤保持体は、薬剤含浸体と呼ぶこともできる。
【0050】
本体部22は、右側薬剤保持体21を挿入可能な円筒状部22aと、円筒状部22aの右端面を閉塞する閉塞板部22bと、円筒状部22aの左端部に設けられた左端板部22c(
図3に示す)とを有している。円筒状部22aには、外部から空気を取り込むための複数の右側空気取入口(第1空気取込口)22dが形成されている。複数の右側空気取入口22dは、軸線方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、周方向にも互いに間隔をあけて配置されており、円筒状部22aの右端部近傍から左端部近傍まで広い範囲に形成されている。これにより、空気の取り入れ可能な面積を拡大させることができる。
【0051】
閉塞板部22bには開口部が形成されていないが、開口部を形成してもよい。また、
図4に破線で示すように、左端板部22cには、ファンケーシング13の右側吸い込み口13gに接続される右側接続口(第1接続口)22eが形成されている。
図2に示すように、右側薬剤カートリッジ20を所定位置に設置すると、右側接続口22eがファンケーシング13の右側吸い込み口13gに接続される。これにより、右側薬剤カートリッジ20内に流入した空気が右側接続口22e及び右側吸い込み口13gを介してファンケーシング13内に流入可能な状態になる。
【0052】
また、左側薬剤カートリッジ30は、右側薬剤カートリッジ20と左右対称構造である。例えば、左側薬剤カートリッジ30を左右反転させて右側薬剤カートリッジ20として使用することもできるし、右側薬剤カートリッジ20を左右反転させて左側薬剤カートリッジ30として使用することもできる。つまり、同じ薬剤カートリッジを、左側薬剤カートリッジ30及び右側薬剤カートリッジ20として使用できる。
【0053】
左側薬剤カートリッジ30は、薬剤を保持する左側薬剤保持体(第2薬剤保持体)31と、左側薬剤保持体31を収容する筒状の本体部32とを備えており、筐体40における送風ユニット10よりも左側のカートリッジ収容空間に収容される。図示しないが、左側薬剤保持体31は、円筒状に形成されている。
【0054】
本体部32は、左側薬剤保持体31を挿入可能な円筒状部32aと、円筒状部32aの左端面を閉塞する閉塞板部32bと、円筒状部32aの右端部に設けられた右端板部32c(
図2に示す)とを有している。円筒状部32aには、外部から空気を取り込むための複数の左側空気取入口(第2空気取込口)32dが形成されている。複数の左側空気取入口32dは、軸線方向に互いに間隔をあけて配置されるとともに、周方向にも互いに間隔をあけて配置されており、円筒状部32aの左端部近傍から右端部近傍まで広い範囲に形成されている。これにより、空気の取り入れ可能な面積を拡大させることができる。
【0055】
閉塞板部32bには開口部が形成されていないが、開口部を形成してもよい。また、
図4に一部のみ示すように、右端板部32cには、ファンケーシング13の左側吸い込み口13hに接続される左側接続口(第2接続口)32eが形成されている。
図2に示すように、左側薬剤カートリッジ30を所定位置に設置すると、左側接続口32eがファンケーシング13の左側吸い込み口13hに接続される。これにより、左側薬剤カートリッジ30内に流入した空気が左側接続口32e及び左側吸い込み口13hを介してファンケーシング13内に流入可能な状態になる。
【0056】
尚、この実施形態では右側薬剤カートリッジ20と左側薬剤カートリッジ30を同一形状、同一構造としているが、必ずしもこれに限定されない。必要に応じて、右側薬剤カートリッジ20と左側薬剤カートリッジ30のサイズを異ならせたり、異なる種類の薬剤保持体を採用したりすることができる。また、右側薬剤カートリッジ20と左側薬剤カートリッジ30で薬剤を異ならせてもよい。このように左右の薬剤カートリッジ20、30を異ならせた場合、左右で最適な気流が異なる場合も考えられるが、このような場合は、ファン12の右側羽根部12aと左側羽根部12bとで、羽根の形状や枚数等を互いに異ならせることができる。また同様に、右側吸い込み口13gと左側吸い込み口13hとで、開口面積や開口形状を互いに異ならせてもよい。このように、ファン12の羽根や、吸い込み口の形状等を左右で異ならせることにより、1つのファン12によって左右で異なる気流を実現できるので、左右の薬剤カートリッジが異なる場合であっても薬剤の最適な放散を実現できる。更に、左右の薬剤が異なる場合などは、ファン12を駆動することにより左右の薬剤を混合・混相流化せしめたうえで吐出口13fから吐出することが可能となり、新たな効果の創出も期待できる。
【0057】
右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30をそれぞれ筐体40内のカートリッジ収容空間に収容すると、右側薬剤保持体21及び左側薬剤保持体31の軸線はファン12の回転軸の延長線上に配置されるようになっている。これにより、右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30内の空気がファンケーシング13に流入し易くなる。
【0058】
図3や
図5に示すように、筐体40の奥側には、モータ11に電力を供給するための複数の電池51が収容される電池収容ケース部50が設けられている。電池収容ケース部50の手前側にファン12が配置されており、したがって、ファン12と電池収容ケース部50とは筐体40の奥行方向に並ぶことになる。
【0059】
複数の電池51は、筐体40の左右方向に並んでいる。この電池51の並びに対応して電池収容ケース部50が左右方向に長い形状となっている。また、各電池51の長手方向は電池収容ケース部50内で上下方向となっている。
【0060】
(薬剤放散装置1の動作)
電源スイッチ42bが押されると、電池51からモータ11に電力が供給されてモータ11が回転するとともに、運転表示灯42cにも電力が供給されて運転表示灯42cが点灯する。モータ11によってファン12が駆動されると、ファンケーシング13内に気流が形成され、この気流によって右側吸い込み口13g及び左側吸い込み口13h近傍に負圧が発生する。すると、右側薬剤カートリッジ20が右側接続口22eを介してファンケーシング13の右側吸い込み口13gに接続されているので、右側薬剤カートリッジ20内にも負圧が作用する。これにより、右側薬剤カートリッジ20の右側空気取入口22dから右側薬剤カートリッジ20内に空気が取り入れられる。この空気は、主に筐体40の右側下部開口部41c及び右側側部開口部41eから筐体40内に流入した空気である。
【0061】
右側薬剤カートリッジ20内に取り入れられた空気は右側薬剤保持体21を通過する。空気が右側薬剤保持体21を通過する際に薬剤が空気に含まれる。薬剤を含んだ空気は、右側接続口22e及びファンケーシング13の右側吸い込み口13gを通過してファンケーシング13内の空気通路13dを通り、吐出口13fから吐出される。
【0062】
また、左側薬剤カートリッジ30が左側接続口32eを介してファンケーシング13の左側吸い込み口13hに接続されているので、左側薬剤カートリッジ30内にも負圧が作用する。これにより、左側薬剤カートリッジ30の左側空気取入口32dから左側薬剤カートリッジ30内に空気が取り入れられる。この空気は、主に筐体40の左側下部開口部(前記41cの左右対称位置:図示は省略)及び左側側部開口部41fから筐体40内に流入した空気である。
【0063】
左側薬剤カートリッジ30内に取り入れられた空気は左側薬剤保持体31を通過する。空気が左側薬剤保持体31を通過する際に薬剤が空気に含まれる。薬剤を含んだ空気は、左側接続口32e及びファンケーシング13の左側吸い込み口13hを通過してファンケーシング13内の空気通路13dを通り、吐出口13fから吐出される。
【0064】
上記吐出口13fと対向するように筐体40の手前側開口部42dが位置しているので、薬剤を含んだ空気は手前側開口部42dから外部へ流出して広い範囲に拡散する。このとき、吐出側と取込側とで空気の流れを分けることができ、空気の流れがスムーズになる。
【0065】
(左右の各薬剤カートリッジを流れる気流について)
以上のように、この実施形態によれば、遠心式ファン12の回転軸方向両側に吸い込み口13g,13hを設けたので、1つのファン13に対して2つの薬剤カートリッジ20,30を配置することができる。そして、ファン12を駆動することにより両側の薬剤カートリッジ20,30にそれぞれ空気が流入して薬剤が揮散するが、このとき、右側薬剤カートリッジ20を通過する空気は左側薬剤カートリッジ30を通過せず、左側薬剤カートリッジ30を通過する空気は右側薬剤カートリッジ20を通過しないから、両薬剤カートリッジ20,30を流れる気流は互いの影響を受けない。この点、特許文献1のように、1つのファンに対して複数の含浸体を空気流れ方向に重ねて配置する従来技術では、1つの含浸体を通過した空気が別の含浸体も通過するので、圧力損失の増大などにより揮散量への悪影響があったが、本実施形態ではこのような悪影響が無い。
【0066】
このような効果は薬剤カートリッジの形体や含浸体の種類を問わず得られるので、本実施形態のような円筒状の薬剤保持体を有する薬剤カートリッジ20,30に限らず、例えば特許文献1のような含浸体を有する薬剤カートリッジなど、様々な種類の薬剤カートリッジを遠心ファン12の両側に配置することによって効力を向上させることができる。
【0067】
(円筒状の薬剤カートリッジでの効果について)
次に、本実施形態のように円筒状型の薬剤保持体を有する薬剤カートリッジ20,30をファン12の両側に配置する効果について、試験結果に基づいて具体的に説明する。
【0068】
まず、筒型の薬剤カートリッジの軸方向での薬剤揮散量の違いを確認するため、右側薬剤カートリッジ20内に収容されている薬剤保持体21を左右方向中央部で2分割し、右側薬剤カートリッジ20内の左側に位置する薬剤保持体と、右側薬剤カートリッジ20内の右側に位置する薬剤保持体にする。左側薬剤カートリッジ30も同様に、内部に収容されている薬剤保持体31を左右方向中央部で2分割し、左側薬剤カートリッジ30内の右側に位置する薬剤保持体と、左側薬剤カートリッジ30内の左側に位置する薬剤保持体にする。これで合計4つの薬剤保持体ができることになり、これら各薬剤保持体にそれぞれ揮散性薬剤としてのメトフルトリン3g(初期量)を塗布して含浸させる。
【0069】
その後、右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30を筐体40の所定位置に装着してファン12を回転させて薬剤を一定時間揮散させる。ファン12の回転数は約100rpmである。一定時間経過後、4つの薬剤保持体のメトフルトリンの残量を測定し、初期量から残量を差し引くことで、揮散量を算出する。環境温度は25℃±2℃、上記一定時間は約110時間とする。薬剤保持体のメトフルトリンの残量測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば薬剤保持体をアセトンに浸してメトフルトリンを抽出し、ガスクロマトグラフィにて抽出液を分析し、メトフルトリンの残量を定量する方法がある。
【0070】
以上の方法で測定した結果、右側薬剤カートリッジ20内の左側(ファン12に近い側)の揮散量は5.49mg/hrであったのに対し、右側薬剤カートリッジ20内の右側(ファン12から遠い側)の揮散量は0.52mg/hrであった。また、左側薬剤カートリッジ30内の右側(ファン12に近い側)の揮散量は2.86mg/hrであったのに対し、左側薬剤カートリッジ30内の左側(ファン12から遠い側)の揮散量は0.81mg/hrであった。この値は3回の平均値である。
【0071】
つまり、ファン12から遠い側の薬剤揮散量は近い側に比べて圧倒的に少ない。このことから、薬剤保持体の軸方向の寸法を長くしても、ファン12から遠い部分(すなわち、揮散量が少ない部分)が増えるだけであり、薬剤の効力はさほど向上しないことが分かる。言い換えると、仮に、2つの薬剤カートリッジ20、30を軸方向に連結してファン12の片側に配置したとしても、薬剤カートリッジが1つのみの場合に比べて薬剤の効力の向上はほとんど期待できない。これに対し、本実施形態のように薬剤保持体の軸方向の寸法を一定寸法以下として、ファン12の左右両側にそれぞれ薬剤カートリッジ20、30を配置することにより、薬剤カートリッジが1つのみの場合に比べて薬剤による効力を確実に向上させることができる。
【0072】
なお、実際の薬剤カートリッジ20、30においては、ファン12から遠い側の薬剤は濃度勾配に従ってファン12に近い側と徐々に移動していき、そこで揮散していくと考えられる。従って、ファン12から遠い側の薬剤が無駄になるわけではない。ちなみに、上記試験では左右の薬剤カートリッジの揮散量に違いがあるが、これは薬剤放散装置1の構造上のわずかな左右非対称性に起因していると考えられる。
(薬剤放散試験)
次に、この実施形態の薬剤放散装置1による実際の揮散量試験について説明する。目付量40g/m2または60g/m2の不織布をプリーツ状に形成することにより薬剤保持体21,31を構成し、それぞれに揮散性薬剤としてのメトフルトリン12g(初期量)を塗布して含浸させる。そしてこの薬剤保持体21,31を円筒状に丸めて薬剤カートリッジ20,30にそれぞれ収容した。
【0073】
その後、右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30を筐体40の所定位置に装着してファン12を回転させて一定時間経過後、薬剤保持体のメトフルトリンの残量を測定し、初期量から残量を差し引くことで、揮散量を算出する。環境温度は25℃±2℃、上記一定時間は48時間とする。薬剤保持体のメトフルトリンの残量測定方法は、特に限定されるものではないが、例えば薬剤保持体をアセトンに浸してメトフルトリンを抽出し、ガスクロマトグラフィにて抽出液を分析し、メトフルトリンの残量を定量する方法がある。
【0074】
その結果、目付40g/m2の不織布を用いた場合は、2つの薬剤カートリッジ20、30合わせた揮散量は25.09mg/hrであった。また、目付60g/m2の不織布を用いた場合は、2つの薬剤カートリッジ20、30を合わせた揮散量は21.16mg/hrであった。この値は3回の平均値である。
【0075】
次に、比較例として薬剤カートリッジが1つのみの場合、すなわち、遠心式ファン12に対して右側薬剤カートリッジ20のみ設けた場合(左側吸い込み口13hは塞いだ状態)についても同様の試験を行った。その結果、目付40g/m2の不織布を用いた場合は、薬剤カートリッジ20の揮散量は10.56mg/hrであった。また、目付60g/m2の不織布を用いた場合は、薬剤カートリッジ20の揮散量は16.62mg/hrであった。この値は3回の平均値である。
【0076】
このように、遠心式ファン12の回転軸方向両側に薬剤カートリッジ20、30を配置することにより、薬剤カートリッジが1つのみの場合に比べて揮散量が向上することが確認された。
【0077】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、遠心式ファン12の回転軸方向両側にそれぞれ右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30を配置し、各薬剤カートリッジ20、30内の薬剤を含む空気を別々にファンケーシング13に取り込んでから外部に吐出するようにしたので、吐出口13fから吐出される単位時間当たりの空気量を増加させて薬剤の効力を高めることができる。
【0078】
また、右側薬剤カートリッジ20及び左側薬剤カートリッジ30をファン12の回転軸の延長線上で両側に配置しているので、1つの薬剤カートリッジの軸線方向の寸法を2倍にする場合に比べて各薬剤保持体21、31の薬剤の揮散量が多くなり、その結果、薬剤の効力を向上させることができる。
【0079】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明に係る薬剤放散装置は、例えば各種店舗、事務所、工場、家庭等で使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 薬剤放散装置
10 送風ユニット
11 モータ
12 ファン
12a 右側羽根部(第1羽根部)
12b 左側羽根部(第2羽根部)
13 ファンケーシング
13g 右側吸い込み口(第1空気吸い込み口)
13h 左側吸い込み口(第2空気吸い込み口)
13f 吐出口
20 右側薬剤カートリッジ(第1薬剤カートリッジ)
21 右側薬剤保持体(第1薬剤保持体)
22 本体部
22d 右側空気取入口(第1空気取込口)
22e 右側接続口(第1接続口)
30 左側薬剤カートリッジ(第2薬剤カートリッジ)
31 左側薬剤保持体(第2薬剤保持体)
32 本体部
32d 左側空気取入口(第2空気取込口)
32e 左側接続口(第2接続口)
40 筐体
41e 右側側部開口部(第2開口部)
41f 左側側部開口部(第2開口部)
42d 手前側開口部(第1開口部)
50 電池収容ケース部(電池収容部)
51 電池