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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133354
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】農用資材供給装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/12 20060101AFI20240920BHJP
   A01C 11/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
A01C15/12
A01C11/00 302
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024116984
(22)【出願日】2024-07-22
(62)【分割の表示】P 2021062831の分割
【原出願日】2021-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宮西 吉秀
(57)【要約】
【課題】農用資材をタンクから繰出し、繰出した農用資材を圃場に供給する繰出し部を有する農用資材供給部が備えられた作業車に対して使用する農用資材供給装置であって、タンクに農用資材を楽に供給できるようにする。
【解決手段】農用資材を積み込む供給部材30を、積込み位置Nと、農用資材をタンク21に投入する資材投入位置Sとの間にて搬送する搬送装置40が備えられている。供給部材30が積込み位置Nに位置するとき、および、供給部材30が積込み位置Nから資材投入位置Sに搬送されるとき、農用資材を保持する保持姿勢に供給部材30を姿勢調整し、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、農用資材をタンク21に投入する資材投入姿勢に供給部材30を姿勢調整する姿勢調整機構60が備えられている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農用資材を貯留するタンクと、前記タンクから農用資材を繰出し、繰出した農用資材を圃場に供給する繰出し部と、を有する農用資材供給部が備えられた作業車に対して、前記タンクに農用資材を供給する際に使用する農用資材供給装置であって、
農用資材を積み込む供給部材と、
前記供給部材に対する農用資材の積み込みを行う積込み位置と前記タンクに対する農用資材の投入が行われる資材投入位置との間にて前記供給部材を搬送する搬送装置と、
前記供給部材の姿勢調整を行う姿勢調整機構と、が備えられ、
前記姿勢調整機構は、前記供給部材が前記積込み位置に位置するとき、および、前記供給部材が前記積込み位置から前記資材投入位置に搬送されるとき、農用資材を保持する保持姿勢に前記供給部材を姿勢調整し、前記供給部材が前記資材投入位置に位置するとき、農用資材を前記タンクに投入する資材投入姿勢に前記供給部材を姿勢調整するように構成されている農用資材供給装置。
【請求項2】
前記姿勢調整機構は、前記供給部材が前記資材投入位置から前記積込み位置に搬送されるとき、前記供給部材を前記保持姿勢に姿勢調整するように構成されている請求項1に記載の農用資材供給装置。
【請求項3】
前記供給部材は、農用資材を資材袋に入れた状態で積み込むように構成されている請求項1又は2に記載の農用資材供給装置。
【請求項4】
前記供給部材、前記搬送装置および前記姿勢調整機構は、前記作業車に備えられている請求項1に記載の農用資材供給装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農用資材をタンクから繰り出して圃場に供給する農用資材供給部が備えられた作業車に対して、タンクに農用資材を供給する際に使用する農用資材供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
農用資材をタンクから繰り出して圃場に供給する農用資材供給部が備えられた作業車として、従来から例えば特許文献1に示される乗用型田植機がある。乗用型田植機では、車体後部に施肥装置(農用資材供給部に相当)が備えられている。施肥装置には、農用資材としての肥料を貯留するホッパー(タンクに相当)、及び、ホッパーの下部に接続された供給部(繰出し部に相当)が備えられている。供給部は、肥料をホッパーから繰り出してホースを介して作溝器に供給することによって圃場に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-112877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の作業車においては、従来、車体に備えられたステップの上での人為作業によって資材袋などの容器からタンクに農用資材を供給せねばならず、多大な労力が必要になっている。殊に、資材袋から供給する場合、重い資材袋を持ち運びする必要がある。
【0005】
本発明は、タンクに農用資材を楽に供給できる農用資材供給装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
農用資材を貯留するタンクと、前記タンクから農用資材を繰出し、繰出した農用資材を圃場に供給する繰出し部と、を有する農用資材供給部が備えられた作業車に対して、前記タンクに農用資材を供給する際に使用する農用資材供給装置であって、
農用資材を積み込む供給部材と、前記供給部材に対する農用資材の積み込みを行う積込み位置と前記タンクに対する農用資材の投入が行われる資材投入位置との間にて前記供給部材を搬送する搬送装置と、前記供給部材の姿勢調整を行う姿勢調整機構と、が備えられ、前記姿勢調整機構は、前記供給部材が前記積込み位置に位置するとき、および、前記供給部材が前記積込み位置から前記資材投入位置に搬送されるとき、農用資材を保持する保持姿勢に前記供給部材を姿勢調整し、前記供給部材が前記資材投入位置に位置するとき、農用資材を前記タンクに投入する資材投入姿勢に前記供給部材を姿勢調整するように構成されている。
本発明においては、
前記姿勢調整機構は、前記供給部材が前記資材投入位置から前記積込み位置に搬送されるとき、前記供給部材を前記保持姿勢に姿勢調整するように構成されていると好適である。
本発明においては、
前記供給部材は、農用資材を資材袋に入れた状態で積み込むように構成されていると好適である。
本発明においては、
前記供給部材、前記搬送装置および前記姿勢調整機構は、前記作業車に備えられていると好適である。
本発明は、
農用資材を貯留するタンクと、前記タンクから農用資材を繰出し、繰出した農用資材を圃場に供給する繰出し部と、を有する農用資材供給部が備えられた作業車に対して、前記タンクに農用資材を供給する際に使用する農用資材供給装置であって、
農用資材を積み込む供給部材と、前記供給部材に農用資材を積み込む積込み位置と、農用資材を前記タンクに投入する資材投入位置とに亘って前記供給部材を昇降操作する昇降装置と、前記供給部材の姿勢調整を行う姿勢調整機構と、が備えられ、前記姿勢調整機構は、前記供給部材が前記積込み位置に位置するとき、および、前記供給部材が前記積込み位置と前記資材投入位置との間において上昇するとき、農用資材を保持するように上向きになった保持姿勢に前記供給部材を姿勢調整し、前記供給部材が前記資材投入位置に位置するとき、農用資材を前記タンクに投入するように倒れた資材投入姿勢に前記供給部材を姿勢調整するように構成されている。
【0007】
本構成によると、農用資材を積み込んだ供給部材が姿勢調節機構によって保持姿勢に姿勢調節されつつ昇降装置によって資材投入位置に上昇操作されて農用資材が資材投入位置に上昇搬送され、資材投入位置に位置した供給部材が姿勢調節機構によって資材投入姿勢に姿勢調節されて農用資材が供給部材からタンクに投入されるので、積込み位置に位置する供給部材に農用資材を積み込むだけで楽にタンクに農用資材を供給できる。
【0008】
本発明においては、
前記供給部材は、農用資材を資材袋に入った状態で積み込むように構成され、前記昇降装置は、前記積込み位置と前記資材投入位置とに亘って前記供給部材を上昇操作し、前記資材投入位置と前記供給部材から前記資材袋を降ろす袋降し位置とに亘って前記供給部材を下降操作するように構成され、前記供給部材が前記積込み位置に位置するとき、前記供給部材が前記積込み位置と前記資材投入位置との間において上昇するとき、前記供給部材が前記資材投入位置と前記袋降し位置との間において下降するとき、前記供給部材が前記袋降し位置に位置するとき、前記供給部材は、前記資材袋を上向き姿勢で支持し、前記供給部材が前記資材投入位置に位置するとき、前記供給部材は、前記資材袋を倒れ姿勢で支持して農用資材を前記タンクに投入するように構成されていると好適である。
【0009】
本構成によると、農用資材が入っている資材袋を積み込んだ供給部材が姿勢調節機構によって姿勢調節されつつ昇降装置によって資材投入位置に上昇操作されて資材袋が上向き姿勢に支持されつつ資材投入位置に上昇搬送され、資材投入位置に位置した供給部材が姿勢調節機構によって資材投入姿勢に姿勢調節されて資材袋が倒されて資材袋からタンクに農用資材が投入されるので、農用資材を資材袋に入ったままで供給部材に積み込めば済み、農用資材を資材袋から取り出す手間を掛けずに楽にタンクに農用資材を供給できる。タンクに農用資材を供給した後の資材袋を保持する供給部材が姿勢調節機構によって姿勢調節されつつ昇降装置によって袋取出し位置に下降操作されて資材袋が上向き姿勢に支持されつつ袋取出し位置に下降搬送されるので、タンクに農用資材を供給した後の資材袋を回収し易い。資材袋に入っていた農用資材をタンクに供給し切れなくて農用資材が資材袋に残っても、残った農用資材を資材袋からこぼれないようにしつつ回収し易い。
【0010】
本発明においては、
前記資材袋を挟持して前記供給部材に固定する挟持状態と、前記資材袋の挟持を解除して前記資材袋の前記供給部材に対する固定を解除する挟持解除状態と、に切換え可能な挟持機構が備えられ、前記挟持機構は、前記供給部材が前記積込み位置および前記袋降し位置に位置するとき、前記挟持解除状態に切り換え操作され、前記供給部材が前記積込み位置と前記資材投入位置との間において上昇するとき、前記供給部材が前記資材投入位置に位置するとき、および、前記供給部材が前記資材投入位置と前記袋降し位置との間において下降するとき、前記挟持状態に切り換え操作されるように構成されていると好適である。
【0011】
本構成によると、資材袋が積込み位置から資材投入位置に上昇搬送されるとき、挟持機構による挟持によって供給部材に上向き姿勢でしっかり固定される。また、資材袋が資材投入位置で倒れてタンクに農用資材を供給するとき、資材袋が挟持機構による挟持によって供給部材に倒れ姿勢でしっかり固定されるので、農用資材が資材袋からこぼれ出て無駄になることをしっかり防止できる。
【0012】
タンクに農用資材を供給した後の資材袋が資材投入位置から袋降し位置に下降搬送されるとき、挟持機構による挟持によって供給部材にしっかり固定されるので、資材袋が供給部材から落ちなくて資材袋を回収し易い。また、農用資材が資材袋に残っていてもこぼれなくて回収し易い。
【0013】
本発明においては、
前記挟持機構は、前記供給部材が前記積込み位置と前記資材投入位置との間の中間上昇位置を越えて前記資材投入位置に上昇するとき、および、前記供給部材が前記資材投入位置に位置するときに前記資材袋を挟持する挟持力を、前記供給部材が前記積込み位置から前記中間上昇位置に上昇するときに前記資材袋を挟持する挟持力よりも強くするように構成されていると好適である。
【0014】
本構成によると、積込み位置において供給部材に積み込まれた資材袋が不安定な積み込み姿勢になっていると、供給部材が積み込み位置から上昇し始めたとき、供給部材が中間上昇位置に上昇されるまでの挟持機構による挟持力に抗して資材袋が静止慣性によって動いて、資材袋の積み込み姿勢が安定化することを可能にしても、資材袋が中間上昇位置を越えて資材投入位置に上昇搬送されるとき、および、資材袋が資材投入位置に位置したとき、資材袋が強い挟持力によって供給部材にしっかり固定されるので、資材袋を供給部材に不安定な積み込み姿勢で積み込んでしまっても、資材袋が自ずと安定した積み込み姿勢になると共に安定した積み込み姿勢で供給部材にしっかり固定された状態で資材投入位置に上昇搬送され、農用資材が資材袋からこぼれ出て無駄になることを防止できる。
【0015】
本発明においては、
前記挟持機構は、前記供給部材に揺動可能に支持され、前記資材袋を挟持する挟持姿勢と前記資材袋の挟持を解除する挟持解除姿勢とに揺動によって姿勢変化する挟持アームと、前記挟持アームを前記挟持姿勢に揺動付勢するスプリングと、前記挟持アームと一体揺動可能な状態で前記供給部材に揺動可能に支持され、前記挟持アームを揺動操作する操作アームと、固定部に設けられ、前記操作アームを押し操作して前記挟持アームを前記スプリングに抗して前記挟持解除姿勢に切り換え操作し、前記操作アームに対する押し操作を解除して前記挟持アームを前記スプリングによって前記挟持姿勢に切り換える挟持切換え部と、を備えていると好適である。
【0016】
本構成によると、挟持アームの姿勢切り換えを行う操作構造を得るのに、挟持アームをシリンダ等のアクチュエータによって操作する構成に比べ、挟持アームの揺動を可能にすると共にスプリング、操作アームおよび挟持切換え部を設けるだけの簡素な構造で済ませられる。
【0017】
本発明においては、
前記供給部材が前記袋降し位置に下降されたとき、前記供給部材から前記資材袋を排出する排出機構が備えられていると好適である。
【0018】
本構成によると、袋降し位置に下降搬送された資材袋が排出機構によって供給部材から排出されるので、資材袋を供給部材から取出す手間を省ける。
【0019】
本発明においては、
前記排出機構は、前記供給部材に揺動可能に支持され、前記資材袋を前記供給部材から押出し排出する作用姿勢と前記供給部材に対する前記資材袋の搭載を許容する作用解除姿勢とに揺動によって姿勢変化する排出アームと、前記排出アームと一体揺動可能な状態で前記供給部材に揺動可能に支持され、前記排出アームを揺動操作する操作アームと、固定部に設けられ、前記操作アームに押圧操作して前記排出アームを前記作用姿勢に揺動操作し、前記操作アームに対する押圧操作を解除して前記排出アームの前記作用解除姿勢への切り換わりを許容する排出切換え部を備えていると好適である。
【0020】
本構成によると、排出アームの姿勢切り換えを行う操作構造を得るのに、排出アームをシリンダ等のアクチュエータによって操作する構成に比べ、排出アームの揺動を可能にすると共にスプリング、操作アームおよび排出切換え部を設けるだけの簡素な構造で済ませられる。
【0021】
本発明においては、
前記昇降装置は、昇降ガイドレールと、前記供給部材を前記保持姿勢と前記資材投入姿勢とにわたって揺動可能に支持する状態で前記昇降ガイドレールに昇降可能に支持されるリフト部材と、前記リフト部材を昇降操作する駆動機構と、を備えていると好適である。
【0022】
本構成によると、リフト部材に対する供給部材の揺動調節によって供給部材を保持姿勢および資材投入姿勢に姿勢調整できるので、供給部材の姿勢調節を行い易い。
【0023】
本発明においては、
前記姿勢調整機構は、前記供給部材をスライド移動可能に支持する状態で設けられ、前記供給部材を前記リフト部材に対して揺動調節することによって前記供給部材を前記保持姿勢および前記資材投入姿勢に姿勢調整する姿勢調整ガイドを備えていると好適である。
【0024】
本構成によると、姿勢調整機構を得るのに、供給部材をシリンダ等のアクチュエータによって揺動調節する構成に比べ、姿勢調整ガイドを備えるだけの簡素な構造で済ませられる。
【0025】
本発明においては、
前記供給部材、前記昇降装置および前記姿勢調整機構は、前記作業車に備えられていると好適である。
【0026】
本構成によると、供給部材、昇降装置および姿勢調整機構を作業機に持ってくる手間を掛けずに楽にタンクに農用資材を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】乗用型田植機の全体を示す左側面図である。
図2】乗用型田植機の全体を示す平面図である。
図3】農用資材供給装置を示す正面図である。
図4】農用資材供給装置を示す左側面図である。
図5】農用資材供給装置の分解状態での斜視図である。
図6】供給部材が積込み位置に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図7】供給部材が中間上昇位置に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図8】供給部材が中間上昇位置と資材投入位置との間に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図9】供給部材が中間上昇位置と資材投入位置との間に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図10】供給部材が中間上昇位置と資材投入位置との間に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図11】供給部材が資材投入位置に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図12】供給部材が袋降し位置に位置する状態での農用資材供給装置を示す左側面図である。
図13】制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
農用資材供給装置Aは、農用資材供給部20が備えられた乗用型田植機(「作業車」の一例)に対して、農用資材供給部20が有するタンク21に肥料(「農用資材」の一例)を供給する際に使用するものである。
【0029】
以下の説明では、乗用型田植機の走行機体に関し、図1,2に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0030】
〔乗用型田植機の構成について〕
図1,2に示されるように、乗用型田植機は、駆動および操向可能な左右一対の前車輪1、および、駆動可能な左右一対の後車輪2によって支持される走行機体3を備えている。走行機体3の前部に、エンジン4を備える原動部5が形成されている。走行機体3の後部に、運転座席6、前車輪1を操向操作するステアリングホィール7を備える運転部8が形成されている。走行機体3の後部に、苗植付装置9が連結されている。苗植付装置9に、苗植付装置9による苗植付けが行われた後において圃場に薬剤を散布する薬剤散布装置10が備えられている。走行機体3のうちの運転座席6よりも後側の部位に、機体左右方向に並ぶ2つの農用資材供給部20が備えられている。
【0031】
〔苗植付装置の構成について〕
図1に示されるように、苗植付装置9の走行機体3に対する連結は、走行機体3の機体フレーム3aから後向きに上下揺動可能に延びるリンク機構11の後部に苗植付装置9を支持することによって行われている。苗植付装置9は、リンク機構11が昇降シリンダ12の伸縮作動によって機体フレーム3aに対して揺動操作されることによって接地フロート13が圃場面に接地した下降作業状態と、接地フロート13が圃場面に対して上方に離間した上昇非作業状態とにわたって昇降操作される。
【0032】
苗植付装置9は、図1,2に示されるように、苗植付装置9の後部に走行機体3の左右方向に沿う方向に間隔を空けて並ぶ状態で設けられた8つの苗植付機構14、および、8つの苗植付機構14よりも前側に設けられた苗載台15を備えている。苗載台15は、8つの苗植付機構14に供給するマット状苗を左右方向に並べて載置され、苗植付機構14の苗植え運動に連動させて左右に往復移送されて載置されたマット状苗を8つの苗植付機構14に供給するように構成されている。苗植付装置9は、8条の植え付け条に対する苗植え付けが可能に構成されている。
【0033】
〔農用資材供給部の構成〕
2つの農用資材供給部20のうちの左の農用資材供給部20は、8つの苗植付機構14のうちの左端から4番目までの4つの苗植付機構14による植え付け苗に肥料を供給する施肥作業を行うものである。2つの農用資材供給部20のうちの右の農用資材供給部20は、8つの苗植付機構14のうち、右端から4番目までの4つの苗植付機構14による植え付け苗に肥料を供給する施肥作業を行うものである。
【0034】
具体的には、左右の農用資材供給部20は、肥料を貯留するタンク21、および、タンク21の下部に接続され、タンク21から肥料を繰り出し、繰り出した肥料を苗植付機構14による植付苗の横側方において圃場に供給する繰出し部22を備えている。
【0035】
詳述すると、左右の農用資材供給部20における繰出し部22にブロワ23が接続されている。ブロワ23は、原動部5に向けて延ばされた吸気ダクト24を有し、原動部5においてエンジン4の放熱によって温度上昇した空気を吸引して搬送風を発生させ、発生した搬送風を左右の繰出し部22に供給する。左右の繰出し部22から4つの施肥ホース25が苗植付装置9に向けて延ばされている。左の繰出し部22から延ばされた4つの施肥ホース25は、左の4つの苗植付機構14の横側方に各別に設けられた4つの作溝施肥器26に振り分けて接続され、右の繰出し部22から延ばされた4つの施肥ホース25は、右の4つの苗植付機構14の横側方に各別に設けられた4つの作溝施肥器26に振り分けて接続されている。
【0036】
繰出し部22は、タンク21から繰り出した肥料をブロワ23からの搬送風によって施肥ホース25に供給する。作溝施肥器26は、植付苗の横側方において圃場に溝を形成し、形成した溝に施肥ホース25からの肥料を供給する。
【0037】
〔農用資材供給装置の構成について〕
図1,2に示されるように、走行機体3の左後部および右後部に農用資材供給装置Aが備えられている。左の農用資材供給装置Aは、左の農用資材供給部20におけるタンク21に肥料を供給する際に使用するものであり、右の農用資材供給装置Aは、右の農用資材供給部20におけるタンク21に肥料を供給する際に使用するものである。
【0038】
左右の農用資材供給装置Aは、図3,4に示されるように、肥料が入った肥料袋Hを載置することによって肥料の積み込みを行う供給部材30、供給部材30を昇降操作する昇降装置40、供給部材30の姿勢調整を行う姿勢調整機構60、肥料袋Hを供給部材30に固定する挟持機構70、および、供給部材30から肥料袋Hを排出する排出機構80を備えている。
【0039】
〔供給部材の構成について〕
供給部材30は、図3,4,5に示されるように、肥料袋Hの底部を載置する底搭載部31と、底搭載部31から上向きに延び、肥料袋Hの底部よりも上側の部分を載置する上搭載部32と、を備えている。上搭載部32は、底搭載部31の両横側部から上向きに延びる上下向き支持杆33と、左右の上下向き支持杆33の中間部を連結している横向き支持杆34と、を備えている。
【0040】
〔昇降装置の構成について〕
図6,11,12に示されるように、タンク21の前下方箇所に、供給部材30に肥料袋Hを載置することによって肥料を積み込む積込み位置Nが設定され、タンク21の前上方箇所に、肥料袋Hからタンク21に肥料を投入する資材投入位置Sが設定され、積込み位置Nよりも低い位置に供給部材30から肥料袋Hを降ろす袋降し位置Oが設定されている。積込み位置Nは、走行機体3が有する作業ステップ3bに近い箇所に設定されている。
【0041】
昇降装置40は、供給部材30を積込み位置Nから資材投入位置Sに上昇操作し、供給部材30を資材投入位置Sから袋降し位置Oに下降操作し、供給部材30を袋降し位置Oから積込み位置Nに上昇操作するように構成されている。昇降装置40は、供給部材30を資材投入位置Sから袋降し位置Oに下降操作し、袋降し位置Oから積込み位置Nに上昇操作することにより、供給部材30を資材投入位置Sから積込み位置Nに下降操作する。
【0042】
具体的には、図3,4に示されるように、昇降装置40は、走行機体3の横幅方向に沿う方向に並ぶ左右一対の昇降ガイドレール41、左右の昇降ガイドレール41に昇降可能に支持される状態で供給部材30を支持しているリフト部材42、リフト部材42に支持され、リフト部材42を左右の昇降ガイドレール41に沿わせて昇降操作する駆動機構としての電動モータ43、を備えている。
【0043】
左右の昇降ガイドレール41は、図3,4,5に示されるように、昇降ガイドレール41の下端部を支持する第1支持フレーム44と、昇降ガイドレール41の中間部を支持する第2支持フレーム45とに支持されている。第1支持フレーム44は、左右の昇降ガイドレール41の下部を連結する状態で作業ステップ3bに固定されている。第2支持フレーム45は、図1に示されるように、機体フレーム3aから上向きに立設されている。昇降ガイドレール41の第2支持フレーム45への支持は、図4に示されるように、昇降ガイドレール41から後向きに延びる連結アーム46と、第2支持フレーム45から前向きに延びる支持アーム47とを連結することによって行われている。
【0044】
リフト部材42は、図3,5に示されるように、左右の係合部48、および、左右の係合部48を連結している連結部材49を備えている。リフト部材42は、左の係合部48が左の昇降ガイドレール41に昇降可能に係合し、右の係合部48が右の昇降ガイドレール41に昇降可能に係合していることにより、左右の昇降ガイドレール41に昇降可能に支持されている。左右の係合部48の昇降ガイドレール41に対する昇降可能な係合は、図3,4,5に示されるように、昇降ガイドレール41を左右から挟む左右のガイドローラ48a、および、昇降ガイドレール41を前後から挟む前後のガイドローラ48bを係合部48に回転可能に備えることによって行われている。ガイドローラ48aは、係合部48の上下2箇所に備えられている。
【0045】
供給部材30のリフト部材42に対する支持は、図3,4,5に示されるように、供給部材30の両横側部に備えられた連結部35のうちの左の連結部35と、リフト部材42の左の係合部48に備えられた支持部48cとを連結ピン50によって連結し、供給部材30の右の連結部35と、リフト部材42の右の係合部48に備えられた支持部48cとを連結ピン50によって連結することによって行われている。
【0046】
図3,4,5に示されるように、左右の昇降ガイドレール41に、昇降ガイドレール41に沿って延びるラックギヤ部41aが備えられている。左の昇降ガイドレール41のラックギヤ部41aに係合する左のピニオンギヤ51および右の昇降ガイドレール41のラックギヤ部41aに係合する右のピニオンギヤ51がリフト部材42に回転可能に支持されている。左右のピニオンギヤ51のリフト部材42への支持は、左右のピニオンギヤ51を支持する回転支軸52を左の係合部48から延びるアーム部48d、および、右の係合部48から延びるアーム部48dに回転可能に支持することによって行われている。回転支軸52に備えた受動ギヤ(図示せず)と、電動モータ43の出力部43aに備えられた出力ギヤ(図示せず)とを噛み合わせ、電動モータ43と回転支軸52とが連動連結されている。
【0047】
昇降装置40においては、電動モータ43の駆動力によって供給部材30を昇降操作する。すなわち、電動モータ43が駆動されると、回転支軸52が電動モータ43によって駆動されて左右のピニオンギヤ51が回転支軸52によって駆動され、ピニオンギヤ51の駆動力によってリフト部材42がラックギヤ部41aに沿わせて昇降操作され、供給部材30がリフト部材42によって昇降ガイドレール41に沿わせて昇降操作される。
【0048】
〔姿勢調整機構の構成について〕
姿勢調整機構60は、供給部材30が積込み位置Nに位置するとき、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間において上昇するとき、図6から10に示されるように、供給部材30を肥料袋Hが上向き姿勢で載って肥料を保持するように上向きになった保持姿勢に姿勢調整するように構成されている。姿勢調整機構60は、供給部材30が資材投入位置Sと袋降し位置Oとの間において下降するとき、供給部材30が袋降し位置Oい位置するとき、図6から10、12に示されるように、供給部材30を空になった、あるいは肥料が残っている肥料袋Hが上向き姿勢で載るように上向きになった上向き姿勢に姿勢調整するように構成されている。姿勢調整機構60は、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、図11に示されるように、供給部材30を肥料袋Hがタンク21に向けて倒れて姿肥料をタンク21に投入するように倒れた資材投入姿勢に姿勢調整するように構成されている。
【0049】
具体的には、左右の連結ピン50の軸芯Pが同一の軸芯上に位置し、供給部材30は、連結ピン50の軸芯Pを揺動支点にして上向き姿勢(保持姿勢)と資材投入姿勢とにわたって揺動可能な状態でリフト部材42に支持されている。
【0050】
図3,5に示されるように、姿勢調整機構60は、機体横幅方向に沿う方向に並ぶ左右の姿勢調整ガイド61、左右の姿勢調整ガイド61に各別に対応する状態で供給部材30の左右の側部に形成された第1姿勢設定部62および第2姿勢設定部63を備えている。
左右の姿勢調整ガイド61の上端部が連結杆64によって連結されている。左右の姿勢調整ガイド61は、左右の昇降ガイドレール41の間において、第1支持フレーム44および昇降ガイドレール41に支持されている。すなわち、図5に示されるように、姿勢調整ガイド61の下端部が第1支持フレーム44に連結され、姿勢調整ガイド61の中間部が連結部材65介して昇降ガイドレール41に連結されている。供給部材30の第1姿勢設定部62は、上下向き支持杆33に形成されている。供給部材30の第2姿勢設定部63は、図5,11に示されるように、上下向き支持杆33から延びるアーム部66に形成されている。
【0051】
左右の姿勢調整ガイド61は、図5,6に示されるように、姿勢調整ガイド61の下部に備えられた移送ガイド部61aと、移送ガイド部61aよりも上側に備えられた投入ガイド部61bと、を備えている。
【0052】
図6から9に示されるように、移送ガイド部61aは、側面視において昇降ガイドレール41に沿う状態で上下方向に延びている。供給部材30が積込み位置Nに位置するとき、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間において上昇するとき、供給部材30の第1姿勢設定部62および第2姿勢設定部63が移送ガイド部61aにスライド可能に当接し、移送ガイド部61aが第1姿勢設定部62および第2姿勢設定部63を支持して供給部材30を保持姿勢に姿勢調節する。図5,6,7などに示されるように、移送ガイド部61aは、移送ガイド部61aのうちの上部61auが移送ガイド部61aのうちの下部61adに対して後方に偏倚するように構成されている。図9に示されるように、供給部材30が積込み位置Nから資材投入位置Sに向かって上昇する途中において、第1姿勢設定部62が下部61adにスライド可能に当接する状態から上部61auにスライド可能に当接する状態に変って供給部材30が軸芯Pを揺動支点にして揺動し、上部61auが第1姿勢設定部62を支持して供給部材30を第2の保持姿勢に姿勢調整する。
供給部材30の第2の保持姿勢は、下部61adが姿勢調整しているときの供給部材30の第1の保持姿勢に対して供給部材30の上端側が後側に下がった傾斜状態の姿勢である。
【0053】
図5,11などに示されるように、投入ガイド部61bは、移送ガイド部61aから後向きに延びている。図10,11に示されるように、供給部材30が資材投入位置Sの手前から資材投入位置Sに上昇するに伴い、供給部材30の第2姿勢設定部63が投入ガイド部61bにスライド可能に当接して供給部材30が軸芯Pを揺動支点にして揺動し、供給部材30が資材投入位置Sに位置すると、投入ガイド部61bが第1姿勢設定部62および第2姿勢設定部63を支持して供給部材30を姿資材投入姿勢に姿勢調整する。
【0054】
供給部材30が資材投入位置Sと袋降し位置Oとの間において下降するとき、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間において上昇するときと同様に、姿勢調整ガイド61の移送ガイド部61aが供給部材30を上向き姿勢に姿勢調整する。供給部材30が袋降し位置Oに位置するとき、供給部材30が積込み位置Nに位置するときと同様に、姿勢調整ガイド61の移送ガイド部61aが供給部材30を上向き姿勢に姿勢調整する。
【0055】
〔挟持機構の構成について〕
挟持機構70は、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間において上昇するとき、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、供給部材30が資材投入位置Sと袋降し位置Oとの間において下降するとき、肥料袋Hを挟持して供給部材30に固定し、供給部材30が積込み位置Nおよび袋降し位置Oに位置するとき、肥料袋Hの挟持を解除して供給部材30に対する肥料袋Hの固定を解除するように構成されている。
【0056】
挟持機構70は、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間の中間上昇位置Zを越えて資材投入位置Sに上昇するとき、および、供給部材30が資材投入位置Sに位置するときに肥料袋Hを挟持する挟持力を、供給部材30が積込み位置Nから中間上昇位置Zに上昇するときに肥料袋Hを挟持する挟持力よりも強くするように構成されている。
【0057】
具体的には、図3,5に示されるように、挟持機構70は、供給部材30に支持された前挟持アーム71および後挟持アーム72、および、固定部である第1支持フレーム44に設けられた挟持切換え部73を備えている。
【0058】
後挟持アーム72は、図5,6に示されるように、第1支持杆74から上向きに延びる状態で第1支持杆74に固定状態で支持されている。後挟持アーム72の延伸端部に、供給部材30に載置された肥料袋Hに挟持作用する袋押さえ部72aが底搭載部31よりも高い位置に位置する状態で備えられている。後挟持アーム72の第1支持杆74に対する支持は、第1支持杆74に備えられた支持部74aと後挟持アーム72とを溶接によって連結することによって行われている。第1支持杆74は、図3,5に示されるように、供給部材30の左右の連結部35に固定状態で支持されている。後挟持アーム72は、供給部材30に固定状態で支持されている。
【0059】
前挟持アーム71は、図3,5,6に示されるように、第2支持杆75から上向きに延びる状態で第2支持杆75に揺動可能に支持されている。前挟持アーム71の延伸端部に、供給部材30に載置された肥料袋Hに挟持作用する袋押さえ部71aが底搭載部31よりも高い位置に位置する状態で備えられている。前挟持アーム71の第2支持杆75に対する支持は、第2支持杆75に揺動可能に支持される支持部材76と前挟持アーム71とを溶接によって連結することによって行われている。第2支持杆75は、供給部材30の左右の連結部35に備えられたアーム部35aに支持されている。前挟持アーム71は、第2支持杆75の軸芯Xを揺動支点にして袋押さえ部71aが肥料袋Hに押圧する挟持姿勢(図7,8参照)と、袋押さえ部71aが肥料袋Hに対して前方に離れる挟持解除姿勢(図6,12参照)とにわたって揺動可能な状態で供給部材30に支持されている。前挟持アーム71は、前挟持アーム71および後挟持アーム72に連結されたスプリング77によって挟持姿勢に揺動付勢されている。
【0060】
図5,6に示されるように、前挟持アーム71を揺動操作する操作アーム78が供給部材30に揺動可能に支持されている。操作アーム78は、前挟持アーム71に対して一体揺動可能に連結されている。具体的には、操作アーム78は、支持部材76に一体形成されている。操作アーム78は、第2支持杆75の軸芯Xを揺動支点にして揺動可能な状態で供給部材30に支持されている。
【0061】
挟持機構70においては、図6に示されるように、供給部材30が積込み位置Nに位置すると、操作アーム78が挟持切換え部73に当接して挟持切換え部73によって押し操作され、前挟持アーム71が挟持切換え部73による操作アーム78の操作によってスプリング77に抗して挟持解除姿勢に揺動操作され、前挟持アーム71と後挟持アーム72とによる肥料袋Hの挟持が解除されるように挟持解除状態になる。
【0062】
挟持機構70においては、図7に示されるように、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間の中間上昇位置Zに位置するとき、操作アーム78が挟持切換え部73に当接していても、供給部材30が積込み位置Nに位置するときに比べ、操作アーム78の揺動支点である軸芯Xが挟持切換え部73に対して上昇しており、前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に操作されて肥料袋Hに押し付けられ、前挟持アーム71と後挟持アーム72とによる肥料袋Hの挟持が行われるように挟持状態になる。
【0063】
挟持機構70においては、図8から11に示されるように、供給部材30が中間上昇位置Zを越えて資材投入位置Sに上昇するとき、および、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、操作アーム78が挟持切換え部73から離れ、前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に揺動操作されて肥料袋Hに押し付けられ、前挟持アーム71と後挟持アーム72とによる肥料袋Hの挟持が行われるように挟持状態になる。
【0064】
図7に示されるように、供給部材30が中間上昇位置Zに位置するとき、操作アーム78が挟持切換え部73に当接して前挟持アーム71のスプリング77による揺動付勢が挟持切換え部73によって制限され、図8などに示されるように、供給部材30が中間上昇位置Zを越えて上昇するとき、操作アーム78が挟持切換え部73から外れて前挟持アーム71にスプリング77による揺動付勢が制限されない。挟持機構70においては、供給部材30が中間上昇位置Zを越えて資材投入位置Sに上昇するときにおける肥料袋Hの挟持力、および、供給部材30が資材投入位置Sに位置するときにおける肥料袋Hの挟持力を供給部材30が積込み位置Nから中間上昇位置Zに上昇するときにおける肥料袋Hの挟持力よりも強くされる。
【0065】
挟持機構70においては、図6に示されるように、供給部材30が積込み位置Nに位置するとき、挟持切換え部73によって挟持解除状態に操作されて供給部材30に対する肥料袋Hの搭載を許容し、図7から11に示されるように、供給部材30が積込み位置Nから資材投入位置Sに上昇されるとき、および、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、挟持切換え部73およびスプリング77によって挟持状態に操作されて肥料袋Hを供給部材30に固定する。
【0066】
挟持機構70においては、供給部材30が中間上昇位置Zを越えて資材投入位置Sに上昇されるとき、および、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、供給部材30が積込み位置Nから中間上昇位置Zに上昇されるときにおける挟持力よりも強い挟持力によって肥料袋Hを供給部材30にしっかり固定する。
【0067】
挟持機構70においては、供給部材30が資材投入位置Sと袋降し位置Oとの間において下降されるとき、供給部材30が積込み位置Nと資材投入位置Sとの間において上昇されるときと同様に、前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に操作されて前挟持アーム71と後挟持アーム72とによる肥料袋Hの挟持が行われ、肥料袋Hを供給部材30に固定するように挟持状態になり、供給部材30が袋降し位置Oに位置するとき、供給部材30が積込み位置Nに位置するときと同様に、前挟持アーム71が挟持切換え部73によって挟持解除状態に操作されて前挟持アーム71と後挟持アーム72とによる肥料袋Hの挟持が解除され、肥料袋Hの供給部材30からの排出を可能にするように挟持解除状態になる。
【0068】
〔排出機構の構成について〕
排出機構80は、供給部材30が袋降し位置Oに下降されたとき、肥料袋Hを供給部材30から排出するように構成されている。
【0069】
具体的には、図3,5に示されるように、排出機構80は、供給部材30に支持される排出アーム81、固定部である第1支持フレーム44に設けられた排出切換え部82を備えている。
【0070】
排出アーム81は、図5,12に示されるように、第2支持杆75から上向きに延びる状態で第2支持杆75に揺動可能に支持されている。排出アーム81の第2支持杆75に対する支持は、第2支持杆75に揺動可能に支持された支持部材83と排出アーム81とを溶接によって連結することによって行われている。
【0071】
図5,12に示されるように、排出アーム81を揺動操作する操作アーム84が供給部材30に揺動可能に支持されている。操作アーム84は、排出アーム81に対して一体揺動可能に連結されている。具体的には、操作アーム84は、支持部材83に一体形成されている。操作アーム84は、第2支持杆75の軸芯Xを揺動支点にして揺動可能な状態で供給部材30に支持されている。
【0072】
図12に示されるように、排出機構80においては、供給部材30が袋降し位置Oに位置すると、操作アーム84が排出切換え部82に当接し、排出切換え部82による操作アーム84の押し操作によって排出アーム81が排出姿勢に揺動操作され、供給部材30に載置されている肥料袋Hを排出アーム81によって供給部材30から押し出し排出するように作用状態になる。
【0073】
図6から11に示されるように、排出機構80は、供給部材30が積込み位置Nに位置するとき、供給部材30が積込み位置Nから資材投入位置Sに上昇されるとき、および、供給部材30が資材投入位置Sに位置するとき、操作アーム84が排出切換え部82から外れ、排出アーム81が肥料袋Hの荷重によって供給部材30よりも後側に引退してストッパー85によって支持される作用解除姿勢に操作されることを許容する。
【0074】
図13に示されるように、電動モータ43に農用資材供給装置Aの制御を行う制御装置90が連係されている。制御装置90は、図13に示されるように、電動モータ43の駆動部91に連係された制御部92を備えている。制御部92には、上昇スイッチ93、下降スイッチ94、上昇検出機構95および下降検出機構96が連係されている。
【0075】
制御部92は、上昇スイッチ93がオン操作されると、上昇スイッチ93からの情報を基に電動モータ43を上昇側に駆動させるよう駆動部91を操作して供給部材30を上昇操作し、この後、上昇検出機構95が供給部材30の資材投入位置Sへの到達を検出すると、上昇検出機構95の検出情報を基に電動モータ43を停止させるように駆動部91を操作して供給部材30の上昇を停止させる。
【0076】
制御部92は、下降スイッチ94がオン操作されると、下降スイッチ94からの情報を基に電動モータ43を下降側に駆動させるよう駆動部91を操作して供給部材30を下降操作し、この後、下降検出機構96が供給部材30の袋降し位置Oへの到達を検出すると、下降検出機構96の検出情報を基に電動モータ43を停止させるように駆動部91を操作して供給部材30の下降を停止させる。供給部材30が資材投入位置Sに到達したことの上昇検出機構95による検出、および、供給部材30が袋降し位置Oに到達したことの下降検出機構96による検出は、昇降ガイドレール41におけるリフト部材42の位置を検出することによって行われる。
【0077】
農用資材供給装置Aによって肥料供給を行うには、図11に示されるように、タンク21の蓋21aを開けておく。図6に示されるように、供給部材30を積込み位置Nに位置させる。すると、挟持切換え部73による操作アーム78の操作によって前挟持アーム71が挟持解除姿勢に操作されて挟持機構70が挟持解除状態になっており、排出口29の開封をした肥料袋Hを供給部材30に載置して肥料を供給部材30に積み込む。排出アーム81が作用姿勢になっていても、操作アーム84が排出切換え部82に対して離間しており、肥料袋Hの荷重によって排出アーム81が作用解除姿勢になる。上昇スイッチ93をオン操作すると、上昇スイッチ93からの情報を基に制御部92が作動して電動モータ43が上昇側に駆動され、図7から11に示されるように、リフト部材42が電動モータ43の動力によって上昇操作されて供給部材30が上昇操作され、供給部材30は、姿勢調整機構60によって保持姿勢に姿勢調整されながら上昇操作され、肥料袋Hが上昇搬送される。図7に示されるように、供給部材30が中間上昇位置Zに上昇するまでは、操作アーム78が挟持切換え部73に当接しつつ前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に操作されて挟持機構70が挟持状態になり、図8から11に示されるように、供給部材30が中間上昇位置Zを越えてからは、操作アーム78が挟持切換え部73に対して離間して前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に操作されて挟持機構70が挟持状態になり、肥料袋Hは、挟持機構70による挟持によって供給部材30に固定されつつ上昇搬送される。供給部材30が中間上昇位置Zを越えてから上昇操作されるとき、肥料袋Hは、供給部材30が中間上昇位置Zまで上昇操作されるときよりも強い挟持機構70の挟持力によって供給部材30にしっかり固定されつつ上昇搬送される。供給部材30が資材投入位置Sに位置すると、上昇検出機構95による検出情報を基に作動する制御部92によって電動モータ43が停止されて供給部材30の上昇が停止され、供給部材30が姿勢調整機構60によって資材投入姿勢に姿勢調整されて肥料袋Hがタンク21に向けて倒れた姿勢にされ、肥料袋Hに入っていた肥料が排出されて肥料が供給部材30からタンク21に投入される。このとき、前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に操作されていて挟持機構70が挟持状態になっており、肥料袋Hは、タンク21に向けて倒れた状態になっても、挟持機構70によって供給部材30に固定されている。
【0078】
タンク21への肥料供給を終えると、下降スイッチ94をオン操作する。すると、下降スイッチ94からの情報を基に制御部92が作動して電動モータ43が下降側に駆動されてリフト部材42が電動モータ43の動力によって下降操作され、供給部材30が姿勢調整機構60によって資材投入姿勢から保持姿勢に姿勢調整され、かつ、姿勢調整機構60によって保持姿勢に姿勢調整されつつ下降操作され、肥料袋Hが上向き姿勢で下降搬送される。肥料袋Hが上昇搬送されるときと同様に、前挟持アーム71がスプリング77によって挟持姿勢に操作されて挟持機構70が挟持状態になっており、肥料袋Hは、挟持機構70によって供給部材30に固定されつつ下降搬送される。供給部材30が袋降し位置Oに位置すると、下降検出機構96による検出情報を基に作動する制御部92によって電動モータ43が停止されて供給部材30の下降操作が停止され、肥料袋Hの下降搬送が停止される。図12に示されるように、供給部材30が袋降し位置Oに位置すると、前挟持アーム71の操作アーム78が挟持切換え部73に当接し、挟持切換え部73による操作アーム78の押し操作によって前挟持アーム71が挟持解除姿勢に操作されて挟持機構70が挟持解除状態になり、そして、排出アーム81の操作アーム84が排出切換え部82に当接し、排出切換え部82による操作アーム84の押し操作によって排出アーム81が作用姿勢に操作され、肥料袋Hが排出アーム81によって供給部材30から押し出されて排出される。
【0079】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、肥料を肥料袋Hに入ったままで供給部材30に積み込み、資材投入位置Sにおいて、肥料を肥料袋Hからタンク21に投入するように構成した例を示したが、これに限らない。供給部材30を肥料の収容が可能な容器状に構成し、肥料を肥料袋Hから取り出して供給部材30に積み込み、資材投入位置Sにおいて肥料を供給部材30からタンク21に投入するように構成したものであってもよい。この場合、肥料袋Hを供給部材30に搭載するもののように、肥料袋Hを回収する必要がなく、また、排出機構80を設けなくてもよいので、昇降装置40としては、供給部材30を積込み位置Nと資材投入位置Sとにわたって昇降操作するだけのものであってもよい。
【0080】
(2)上記した実施形態では、農用資材供給装置Aを田植機用に構成した例を示したが、これに限らない、例えば直播機、施肥専用機など各種の作業車に使用するように構成したものであってもよい。また、作業車に備えず、作業車とは分離した状態で構成した農用資材供給装置Aであってもよい。
【0081】
(3)上記した実施形態では、挟持機構70を備えた例を示したが、これに限らない。挟持機構70に替えて、資材袋を供給部材30に固定するバンドなどを備えたものであってもよい。
【0082】
(4)上記した実施形態では、中間上昇位置Zを越えてからの挟持力が中間上昇位置Zを越えるまでよりも強くなる挟持機構70を採用した例を示したが、挟持力が変化しない挟持機構を採用したものであってもよい。
【0083】
(5)上記した実施形態では、排出機構80を備えた例を示したが、排出機構80を備えないものであってもよい。排出機構80を備えないものにあっては、供給部材30の積込み位置と袋降し位置とを同じ位置に設定してもよい。
【0084】
(6)上記した実施形態では、肥料供給を行う農用資材供給部20を採用した例を示したが、これに限らない、たとえば薬剤など、肥料以外の各種の農用資材を供給対象にする農用資材供給部を採用したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、農用資材を貯留するタンクと、タンクから農用資材を繰出し、繰出した農用資材を圃場に供給する繰出し部と、を有する農用資材供給部が備えられた作業車に対して、タンクに農用資材を供給する際に使用する農用資材供給装置に適用できる。
【符号の説明】
【0086】
20 農用資材供給部
21 タンク
22 繰出し部
30 供給部材
40 昇降装置(搬送装置)
41 昇降ガイドレール
42 リフト部材
43 駆動機構(電動モータ)
44 固定部(第1支持フレーム)
60 姿勢調整機構
61 姿勢調整ガイド
70 挟持機構
71 挟持アーム(前挟持アーム)
73 挟持切換え部
77 スプリング
78 操作アーム
80 排出機構
81 排出アーム
82 排出切換え部
84 操作アーム
H 資材袋(肥料袋)
N 積込み位置
O 袋降し位置
S 資材投入位置
Z 中間上昇位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13