(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133377
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】端子用樹脂フィルム及びそれを用いた蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20240920BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/186 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/198 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240920BHJP
H01M 50/195 20210101ALI20240920BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/562
H01M50/197
H01M50/193
H01M50/186
H01M50/198
H01M50/178
H01M50/105
H01M50/195
B32B27/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024117794
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2020079387の分割
【原出願日】2020-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】今元 惇哉
(57)【要約】
【課題】室温環境下での外装材及び金属端子との密着性に優れるとともに、高温環境に晒されても外装材との密着性を充分維持できる端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスを提供すること。
【解決手段】蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される、3以上の層を備える端子用樹脂フィルムであって、一方の表面に配置された第一の接着層と、前記第一の接着層とは反対側の表面に配置された第二の接着層と、前記第一の接着層と前記第二の接着層との間に配置された絶縁層と、を備え、前記第一の接着層が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンとを含む層である、端子用樹脂フィルム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される、3以上の層を備える端子用樹脂フィルムであって、
一方の表面に配置された第一の接着層と、前記第一の接着層とは反対側の表面に配置された第二の接着層と、前記第一の接着層と前記第二の接着層との間に配置された絶縁層と、を備え、
前記第一の接着層が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンとを含む層である、端子用樹脂フィルム。
【請求項2】
前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレンの含有量が、前記第一の接着層の全量を基準として1~50質量%である、請求項1に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項3】
前記長鎖分岐構造を有するポリプロピレンが、メタロセン触媒を用いて合成されたものである、請求項1又は2に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項4】
前記第一の接着層の厚さに対する前記第二の接着層の厚さの比率が0.2~4.5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項5】
前記第一の接着層の融点と前記第二の接着層の融点との絶対差が0~15℃である、請求項1~4のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項6】
前記第一の接着層及び/又は前記絶縁層がフィラーを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項7】
前記第二の接着層が極性基を有する樹脂を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルム。
【請求項8】
蓄電デバイス本体と、
前記蓄電デバイス本体と電気的に接続された金属端子と、
前記金属端子を挟持し且つ前記蓄電デバイス本体を収容する外装材と、
前記金属端子の一部の外周面を覆って、前記金属端子と前記外装材と間に配置された、請求項1~7のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルムと、を備え、
前記第一の接着層が前記外装材と接し、前記第二の接着層が前記金属端子と接する、蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子用樹脂フィルム及びそれを用いた蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯機器の小型化や自然発電エネルギーの有効活用の要求が増しており、より高い電圧が得られ、エネルギー密度が高いリチウムイオン二次電池(蓄電デバイスの一種)の研究開発が行われている。
【0003】
上記リチウムイオン二次電池に用いられる包装材として、従来は金属製の缶が多く用いられてきたが、適用する製品の薄型化や多様化等の要求に対し、製造コストが低いという理由から、金属層(例えば、アルミニウム箔)と樹脂フィルムとを積層した積層体を袋状にした包装材が多く用いられるようになってきている。
【0004】
上記包装材の内部に電池本体を収容して密封したラミネート型リチウムイオン二次電池には、タブと呼ばれる電流取り出し端子が備えられている。タブは、電池本体の負極または正極に接続され、包装材(外装材)の外側に延在する金属端子(「タブリード」と呼ばれることもある)と、金属端子の一部の外周面をそれぞれ覆う端子用樹脂フィルム(「タブシーラント」と呼ばれることもある)と、を有する(例えば、特許文献1~3参照)。通常、端子用樹脂フィルムは金属端子に融着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-4316号公報
【特許文献2】特開2010-218766号公報
【特許文献3】特開2009-259739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年電池製造における化成処理温度の上昇や、急速充電による熱暴走等により電池パックが高温環境下に晒される機会が増えている。電池パックが高温環境に晒されると、外装材とタブシーラントとの密着性が低下する問題がある。
【0007】
本開示は、室温環境下での外装材及び金属端子との密着性に優れるとともに、高温環境に晒されても外装材との密着性を充分維持できる端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、蓄電デバイスを構成する蓄電デバイス本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面を覆うように配置される、3以上の層を備える端子用樹脂フィルムであって、一方の表面に配置された第一の接着層と、上記第一の接着層とは反対側の表面に配置された第二の接着層と、上記第一の接着層と上記第二の接着層との間に配置された絶縁層と、を備え、上記第一の接着層が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンとを含む層である、端子用樹脂フィルムを提供する。
【0009】
本発明者が鋭意検討を重ねた結果、高温環境に晒された際に外装材とタブシーラントとの密着性が低下するのは、高温環境において電解液が発泡し、外装材とタブシーラントとの間に空隙が生じることが原因であることを見出した。また、この電解液の発泡は、特に外装材側のタブシーラントで多発していることが判明した。本発明者が更に検討を重ねた結果、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンとを含む層を外装材と接するように配置することによって、タブシーラントを起点とした発泡を抑制することが可能であることを見出した。
【0010】
上記端子用樹脂フィルムにおいて、上記長鎖分岐構造を有するポリプロピレンの含有量は、上記第一の接着層の全量を基準として1~50質量%であってよい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンの含有量が、第一の接着層の全量を基準として1~50質量%であることで、端子用樹脂フィルムと外装材との密着性がより優れ、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制できる。
【0011】
上記端子用樹脂フィルムにおいて、上記長鎖分岐構造を有するポリプロピレンは、メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンであってよい。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンが、メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンであることで、端子用樹脂フィルムと外装材との密着性がより優れ、高温環境に晒されても端子用樹脂フィルムと外装材との密着性をより維持できる。
【0012】
上記端子用樹脂フィルムにおいて、上記第一の接着層の厚さに対する上記第二の接着層の厚さの比率(第二の接着層/第一の接着層)は0.2~4.5であってよい。第一の接着層の厚さに対する第二の接着層の厚さの比率が0.2~4.5であることで、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制できる。
【0013】
上記端子用樹脂フィルムにおいて、上記第一の接着層の融点と上記第二の接着層の融点との絶対差は0~15℃であってよい。第一の接着層の融点と第二の接着層の融点との絶対差が0~15℃であることで、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制できる。
【0014】
上記端子用樹脂フィルムにおいて、上記第一の接着層及び/又は上記絶縁層はフィラーを含んでもよい。第一の接着層及び/又は絶縁層がフィラーを含むことで、高温環境に晒されても端子用樹脂フィルムと外装材との密着性をより維持できる。
【0015】
上記端子用樹脂フィルムにおいて、上記第二の接着層は極性基を有する樹脂を含んでもよい。第二の接着層が極性基を有する樹脂を含むことで、端子用樹脂フィルムと金属端子との密着性がより優れる。
【0016】
本開示はまた、蓄電デバイス本体と、上記蓄電デバイス本体と電気的に接続された金属端子と、上記金属端子を挟持し且つ上記蓄電デバイス本体を収容する外装材と、上記金属端子の一部の外周面を覆って、上記金属端子と上記外装材と間に配置された、上記本開示の端子用樹脂フィルムと、を備え、上記第一の接着層が上記外装材と接し、上記第二の接着層が上記金属端子と接する、蓄電デバイスを提供することができる。かかる蓄電デバイスは、室温環境下での外装材及び金属端子との密着性に優れるとともに、高温環境に晒されても端子用樹脂フィルムと外装材との密着性を充分維持できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、室温環境下での外装材及び金属端子との密着性に優れるとともに、高温環境に晒されても外装材との密着性を充分維持できる端子用樹脂フィルム、及びそれを用いた蓄電デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の実施の形態に係る蓄電デバイスの概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す外装材の切断面の一例を示す断面図である。
【
図3】
図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のA-A線方向の断面図である。
【
図4】実施例におけるヒートシール強度測定用サンプルの作製方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1は、本開示の実施の形態に係る蓄電デバイスの概略構成を示す斜視図である。
図1では、蓄電デバイス10の一例として、リチウムイオン二次電池を例に挙げて図示し、以下の説明を行う。なお、
図1に示す構成とされたリチウムイオン二次電池は、電池パック、或いは電池セルと呼ばれることがある。
【0021】
図1に示した蓄電デバイス10は、リチウムイオン二次電池であり、蓄電デバイス本体11と、外装材13と、一対の金属端子14(タブリード)と、端子用樹脂フィルム16(タブシーラント)と、を有する。
【0022】
蓄電デバイス本体11は、充放電を行う電池本体である。外装材13は、蓄電デバイス本体11の表面を覆うと共に、端子用樹脂フィルム16の一部と接触するように配置されている。
【0023】
図2は、
図1に示す外装材の切断面の一例を示す断面図である。
図2において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0024】
ここで、
図2を参照して、外装材13の構成の一例について説明する。外装材13は、蓄電デバイス本体11に接触する内側から、内層21と、内層側接着剤層22と、腐食防止処理層23-1と、金属層であるバリア層24と、腐食防止処理層23-2と、外層側接着剤層25と、外層26と、が順次積層された7層構造とされている。
【0025】
内層21は、外装材13に対し、ヒートシールによる封止性を付与するシーラント層であり、蓄電デバイス10の組み立て時に内側に配置されてヒートシール(熱融着)される層である。内層(シーラント層)21の母材としては、例えば、ポリオレフィン樹脂またはポリオレフィン樹脂に、無水マレイン酸等をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることができる。上記ポリオレフィン樹脂としては、例えば、低密度、中密度、高密度のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック、またはランダムポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体等を用いることができる。これらの中でも上記ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレンを含むことが好ましい。これらポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
また、内層21は、必要とされる機能に応じて、単層フィルムや、複数の層を積層させた多層フィルムを用いて構成してもよい。具体的には、例えば、防湿性を付与するために、エチレン-環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムを用いてもよい。さらに、内層21は、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。
【0027】
内層21の厚さは、例えば、10~150μmの範囲内で設定することが好ましいが、30~80μmがより好ましい。内層21の厚さが10μmよりも薄いと、外装材13同士のヒートシール密着性、端子用樹脂フィルム16との密着性が低下する恐れがある。また、内層21の厚さが150μmよりも厚いと、外装材13のコスト増加の要因となるため、好ましくない。
【0028】
内層側接着剤層22としては、例えば、一般的なドライラミネーション用接着剤や、酸変性された熱融着性樹脂等、公知の接着剤を適宜選択して用いることができる。
【0029】
図2に示すように、腐食防止処理層23-1,23-2は、バリア層24の両面に形成することが性能上好ましいが、コスト面を考慮して、内層側接着剤層22側に位置するバリア層24の面のみに腐食防止処理層23-1を配置してもよい。
【0030】
バリア層24は、例えば、導電性を有する金属層である。バリア層24の材料としては、例えば、アルミニウムやステンレス鋼等を例示することができるが、コストや質量(密度)等の観点から、アルミニウムが好適である。
【0031】
外層側接着剤層25としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等を主剤としたポリウレタン系の一般的な接着剤を用いることができる。
【0032】
外層26としては、例えば、ナイロンやポリエチレンテレフタレート(PET)等の単層膜、或いは多層膜を用いることができる。外層26は、内層21と同様に、例えば、各種添加剤(例えば、難燃剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等)を含んでもよい。また、外層26は、例えば、液漏れ時の対策として電解液に不溶な樹脂をラミネートしたり、電解液に不溶な樹脂成分をコーティングしたりすることで形成される保護層を有してもよい。
【0033】
図3は、
図1に示す端子用樹脂フィルム及び金属端子のA-A線方向の断面図である。
図3において、
図1に示す構造体と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0034】
図1及び
図3に示すように、一対(
図1の場合、2つ)の金属端子14は、金属端子本体14-1と、腐食防止層14-2と、を有する。一対の金属端子本体14-1のうち、一方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の正極と電気的に接続されており、他方の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11の負極と電気的に接続されている。一対の金属端子本体14-1は、蓄電デバイス本体11から離間する方向に延在しており、その一部が外装材13から露出されている。一対の金属端子本体14-1の形状は、例えば、平板形状とすることができる。
【0035】
金属端子本体14-1の材料としては、金属を用いることができる。金属端子本体14-1の材料となる金属は、蓄電デバイス本体11の構造や蓄電デバイス本体11の各構成要素の材料等を考慮して決めることが好ましい。
【0036】
例えば、蓄電デバイス10がリチウムイオン二次電池の場合、正極用集電体としてアルミニウムが用いられ、負極用集電体として銅が用いられる。この場合、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14-1の材料としては、アルミニウムを用いることが好ましい。また、電解液への耐食性を考慮すると、蓄電デバイス本体11の正極と接続される金属端子本体14-1の材料としては、例えば、1N30等の純度97%以上のアルミニウム素材を用いることが好適である。さらに、金属端子本体14-1を屈曲させる場合には、柔軟性を付加する目的で十分な焼鈍により調質したO材を用いることが好ましい。蓄電デバイス本体11の負極と接続される金属端子本体14-1の材料としては、表面にニッケルめっき層が形成された銅、もしくはニッケルを用いることが好ましい。
【0037】
金属端子本体14-1の厚さは、リチウムイオン二次電池のサイズや容量に依存する。リチウムイオン二次電池が小型の場合、金属端子本体14-1の厚さは、例えば、50μm以上にするとよい。また、蓄電・車載用途等の大型のリチウムイオン二次電池の場合、金属端子本体14-1の厚さは、例えば、100~500μmの範囲内で適宜設定することができる。
【0038】
腐食防止層14-2は、金属端子本体14-1の表面を覆うように配置されている。リチウムイオン二次電池の場合、電解液にLiPF6等の腐食成分が含まれる。腐食防止層14-2は、電解液に含まれるLiPF6等の腐食成分から金属端子本体14-1が腐食されることを抑制するための層である。
【0039】
図3に示すように、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の一部の外周面を覆うように配置されている。本実施形態において、端子用樹脂フィルム16は、金属端子14の外周側面と接触する第二の接着層(以下、最内層ともいう。)31と、外装材13と接触する第一の接着層(以下、最外層ともいう。)32と、最内層31と最外層32との間に配置された絶縁層(中間層ともいう)33と、が積層された構成とされている。なお、端子用樹脂フィルム16は、最内層、最外層、及び中間層以外の層を備えてもよい。
【0040】
最内層31は、金属端子14の外周面を覆うように配置されることで、金属端子14の周方向を封止すると共に、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを密着させる機能を有する。また、最外層32は、外装材13と融着されることで、外装材13内部を密封する機能を有する。
【0041】
[最内層]
本実施形態において、最内層31は、金属端子と融着される層である。最内層31は、金属端子との密着性がより優れる観点から、極性基を有する樹脂(以下、「極性樹脂」ともいう。)を含有することが好ましい。極性基としては、例えば、ヒドロキシル基、グリシジル基、アミド基、イミノ基、オキザゾリン基、酸無水物基、カルボキシル基、エステル基が挙げられる。反応性の観点から、極性基としては酸無水物基(特に無水マレイン酸に由来する基)が好ましい。極性樹脂としては、極性基を有する変性ポリオレフィン、ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー、エチレン/アクリル酸/グリシジルメタクリレートコポリマー等が挙げられる。極性樹脂としては、反応性の観点から、無水マレイン酸等の酸無水物により酸変性したポリオレフィン等が好ましい。ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等が挙げられる。
【0042】
ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、低規則性ポリプロピレン等を用いることができる。これらの中でも、金属端子との密着性、高温環境下での開封性及び耐衝撃性の観点から、ランダムポリプロピレン、低規則性ポリプロピレンが好ましい。変性ポリプロピレンは、上記で挙げた極性基を有するポリプロピレンであり、酸変性ポリプロピレンが好ましく、酸変性ランダムポリプロピレンがより好ましい。
【0043】
極性樹脂の具体的な製品例としては、ヒドロキシ基を有する極性樹脂として株式会社クラレ製の「ポバール」、東ソー株式会社製の「メルセンH」等が挙げられ、グリシジル基を有する極性樹脂として日油株式会社製「モディパー」、アルケマ株式会社製の「LOTADER」、「BONDINE」等が挙げられ、アミド基を有する極性樹脂としてアルケマ株式会社製の「APOLHYA」等が挙げられ、イミノ基を有する三井化学株式会社製の「アドマーIP」等が挙げられ、オキザゾリン基を有する極性樹脂として日本触媒株式会社製の「エポクロス」等が挙げられる。変性樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
極性樹脂の融点は、埋込性及び耐熱性の観点から、80~160℃が好ましく、100~150℃がより好ましく、110~145℃が更に好ましい。
【0045】
本明細書において、樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)にて測定し、溶解熱量の一番大きいピークをメインピークとして、そのピークトップの温度を読み取ることで求めることができる。
【0046】
最内層31において、極性樹脂の含有量は、金属端子との密着性がより優れる観点から、最内層31全量を基準として、40質量%以上であることが好ましい。極性樹脂の含有量の上限は、特に制限されないが、99質量%以下であってよく、95質量%以下であってよい。
【0047】
最内層31は、極性樹脂以外の樹脂を含有してもよい。極性樹脂以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等のポリオレフィンが挙げられる。
【0048】
最内層31において、極性樹脂以外の樹脂の含有量は、最内層31全量を基準として、1~20質量%であってよい。極性樹脂以外の樹脂の含有量は、1質量%以上であることで、金属端子との密着性がより優れる傾向がある。極性樹脂以外の樹脂の含有量は、20質量%以下であることで、凝集力の低下を抑え、金属端子との充分な密着性を維持できる。
【0049】
最内層31は、上記の成分以外の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤光安定剤、脱水剤、着色顔料、粘着付与剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。着色顔料としては、カーボンブラック、キナクリドン系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。
【0050】
最内層31の厚さは、10~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましい。最内層31の厚さが10μm以上であることで、金属端子14との密着性がより優れる。また、最内層31の厚さが100μm以下であることで、端子用樹脂フィルム16のコスト増加を抑えることができる。
【0051】
[最外層]
本実施形態において、最外層32は、外装材と融着される層である。最外層32は、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンと、を含有する。最外層が長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンと、を含有することで、室温環境下での外装材との密着性が優れるとともに、高温環境に晒されても外装材との密着性を充分維持できる。
【0052】
長鎖分岐構造を有するポリプロピレン(以下、長鎖分岐PPともいう。)とは、主鎖炭素数が数十以上、平均分子量が数百以上である分子鎖による分岐構造を有するポリプロピレンを意味する。長鎖分岐構造を有するポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってよく、共重合体であってもよい。プロピレン共重合体である場合、コモノマーは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィンであり、長鎖分岐PP中のコモノマーの含有量は、3質量%以下であることが好ましい。長鎖分岐PPは、プロピレン単独重合体である方が、耐熱性や剛性が高く好ましい。
【0053】
長鎖分岐PPは、電子架橋による方法や、メタロセン触媒を用いて合成することにより製造できる。ゲルの発生を抑制し、充分な強度が得られる観点から、長鎖分岐PPはメタロセン触媒を用いて合成されたものであることが好ましい。長鎖分岐PPがメタロセン触媒を用いて合成されていることは、赤外分光法(IR)、NMR分光法、質量分析法(MS)、X線分析、ラマン分光法等の分析手法により触媒残渣を分析することで確認できる。
【0054】
長鎖分岐PPの融点は、埋込性及び耐熱性の観点から、100~170℃が好ましく、130~160℃がより好ましい。
【0055】
最外層32において、長鎖分岐PPの含有量は、最外層32全量を基準として、1~50質量%が好ましく、3~30質量%がより好ましく5~20質量%が更に好ましい。長鎖分岐PPの含有量は、1質量%以上であることで、最外層における発泡をより抑制することができる。長鎖分岐PPの含有量は、50質量%以下であることで、より埋込性が優れ、外装材との充分な密着性を維持できるとともに、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制できる。
【0056】
融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンとは、上記の長鎖分岐構造を有するポリプロピレンに該当せず、融点が80~155℃であるポリプロピレンを意味する。融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンとしては、融点が80~155℃であるホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、低規則性ポリプロピレン等であってよい。融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンは、変性されていてもよい。
【0057】
融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンの融点は、外装材との密着性や耐熱性の観点から、100~150℃がより好ましく、105~145℃が更に好ましい。
【0058】
最外層32は、最外層における発泡をより抑制する観点から、フィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、珪酸ジルコニウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化銅、酸化コバルト、酸化チタン、酸化スズ、酸化鉄、酸化アンチモン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素等の無機フィラーが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーの平均粒径は0.1~25μmであることが好ましい。フィラーの含有量は、最外層32全量を基準として0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。フィラーの含有量が、0.05質量%以上であることで、発泡による密着性の低下を更に抑制できる。フィラーの含有量が、10質量%以下であることで、外装材との充分な密着性を維持できる。
【0059】
最外層32は、上述した成分以外の樹脂及び添加剤を添加してもよい。添加剤としては、酸化防止剤、スリップ剤、難燃剤、光安定剤、脱水剤、着色顔料、粘着付与剤等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。着色顔料としては、カーボンブラック、キナクリドン系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。
【0060】
最外層32の厚さは、10~100μmであることが好ましく、15~50μmであることがより好ましい。最外層32の厚さが10μm以上であることで、外装材13との密着性がより優れる。また、最外層32の厚さが100μm以下であることで、端子用樹脂フィルム16のコスト増加を抑えることができる。
【0061】
最内層31及び最外層32の融点は、DSCにて測定される溶解熱量の一番大きいピークをメインピークとして、そのピークトップの温度を読み取ることで、各層の融点とすることができる。最内層31の融点と最外層32の融点との絶対差(絶対値の差)は、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制する観点から、0~15℃であることが好ましく、0~10℃であることがより好ましく、0~5℃であることが更に好ましい。
【0062】
[中間層]
中間層33は、最内層31と最外層32との間に配置されている。中間層33は、一方の面が最内層31で覆われていてもよく、他方の面が最外層32で覆われていてもよい。
【0063】
中間層33は、絶縁層を有する。絶縁層は、ヒートシール時にシーラント(外装材のシーラント層及び端子用樹脂フィルムの最内層及び最外層)が流れ出し、露出した外装材の金属層と金属端子とが接触することで絶縁低下が発生することを防ぐための層である。そのため、絶縁層は、ヒートシール時に流れ出さない高い融点又はガラス転移温度を有する樹脂を用いて形成されていることが好ましい。
【0064】
絶縁層を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンスルファイド、ポリメチルペンテン、ポリアセタール、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリプロピレンを用いることができる。これらの中でも、製膜性や層間密着性、耐衝撃性等の観点から、ポリプロピレンを用いることが好ましく、特にブロックポリプロピレンを用いることがより好ましい。また、これらの樹脂は最内層31及び最外層32で用いられている樹脂よりも融点又はガラス転移温度(Tg)が高いことが好ましい。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
また、絶縁層は、最外層における発泡をより抑制する観点から、フィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、最外層で用いることができる上記の無機フィラーを同様に用いることができる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。フィラーの平均粒径は0.1~25μmであることが好ましい。フィラーの含有量は絶縁層(中間層33)全量を基準として0.1~30質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましい。フィラーの含有量が、0.1質量%以上であることで、発泡による密着性の低下を更に抑制できる。フィラーの含有量が、30質量%以下であることで、充分な埋込性を維持できる。
【0066】
また、絶縁層に着色顔料を添加することで、絶縁層を着色してもよい。絶縁層を着色することで、端子用樹脂フィルム16の視認性を向上させることが可能となる。これにより、端子用樹脂フィルム16の検査(具体的には、例えば、端子用樹脂フィルム16が金属端子14に付いているか否かの検査、金属端子14に対する端子用樹脂フィルム16の取り付け位置の検査等)の精度を向上させることができる。着色顔料としては、酸化銅、酸化コバルト、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、硫酸バリウム、キナクリドン系顔料、ポリアゾ系顔料、イソインドリノン系顔料等が挙げられる。
【0067】
また、中間層33は上述した絶縁層以外の構成を有する層を更に有してもよい。すなわち、中間層33は、絶縁層のみの単層構造であってよく、接着剤を介すなどして絶縁層以外に複数の樹脂層を有する多層構造であってもよい。中間層33は、例えば、架橋構造を有する樹脂を含む層(架橋層)、フィラー及び繊維からなる群より選択される少なくとも一種を含む層(強化層)を有してもよい。
【0068】
架橋層において、架橋構造を有する樹脂としては、架橋アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
強化層において、フィラーとしては、絶縁層と同様のフィラーを用いることができる。フィラーの含有量は強化層全量を基準として0.5~20質量%であることが好ましい。
【0070】
強化層において、繊維としては、セルロース樹脂や上記耐熱層に用いる融点が200℃以上の樹脂等からなる繊維が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。繊維の繊維幅は10nm~10μmであることが好ましく、繊維の含有量は強化層全量を基準として0.5~70質量%であることが好ましい。また、繊維は不織布を形成していてもよい。
【0071】
強化層は、上述したフィラー及び/又は繊維を、上述したポリオレフィン樹脂や融点が200℃以上の樹脂、架橋構造を有する樹脂等に分散させた層とすることができる。
【0072】
中間層33の厚さ(多層構造の場合はその全体の厚さ)は、例えば、10~200μmの範囲内で適宜設定することができ、20~100μmであることが好ましい。なお、中間層33の厚さは、金属端子14及び最内層31の厚さとのバランスが重要であり、最内層31や金属端子14の厚さが厚い場合には中間層33の厚さもそれに応じて厚くしてもよい。
【0073】
最内層31、最外層32及び中間層33の合計の厚み(端子用樹脂フィルム16の厚さ)は、ヒートシール性、金属端子の埋込性及び絶縁性の観点から、10~500μmであることが好ましく、15~300μmであることがより好ましく、30~200μmであることが更に好ましい。
【0074】
最内層31、中間層33、及び最外層32の厚さの比(最内層31:中間層33:最外層32)は、中間層33が絶縁層である場合、例えば、2:1:2、1:2:1、1:1:1などのように最内層31及び最外層32の厚さを揃えてもよい。また、最内層31、中間層33、及び最外層32の厚さの比(最内層31:中間層33:最外層32)は、3:1:1、2:2:1、5:3:2のように、金属端子の埋込性の観点から、金属端子と接する最内層31の厚さを最外層32の厚さよりも厚くしてもよく、1:1:3、1:2:2、2:3:5のように、外装材との密着性の観点から、外装材と接する最外層32の厚さを最内層31の厚さよりも厚くしてもよい。
【0075】
最内層31及び最外層32の厚さが同じである場合、それらの厚さと中間層33の厚さとの比(最内層31又は最外層32:中間層33)は、1:3~3:1であってよく、1:2~2:1であってよい。最内層31の厚さと最外層32の厚さが異なる場合、最内層31の厚さと中間層33の厚さとの比(最内層31:中間層33)は、4:1~1:1であってよく、3:1~1:1であってよく、最外層32の厚さと中間層33の厚さとの比(最外層32:中間層33)は、1:3~3:1であってよく、1:2~2:1であってよく、最内層31の厚さと最外層32の厚さとの比(最内層31:最外層32)は、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制できる観点から、1:5~9:2が好ましく、3:10~7:2がより好ましく、2:5~5:2が更に好ましい。すなわち、最外層の厚さに対する最内層の厚さの比率(最内層/最外層)は、端子用樹脂フィルムがカールすることをより抑制できる観点から、0.2~4.5が好ましく、0.3~3.5がより好ましく、0.4~2.5が更に好ましい。
【0076】
以上、本開示の好ましい実施の形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0077】
例えば、
図3では、3層構造とされた端子用樹脂フィルム16を例に挙げて説明したが、中間層33と最内層31との間、及び中間層33と最外層32との間に、それぞれ絶縁樹脂等からなる第2の中間層を配置してもよい。
【0078】
このように、中間層33と最内層31との間、及び中間層33と最外層32との間に、それぞれ第2の中間層を配置して4層以上の多層構造とすることで、中間層33と外装材13を構成するバリア層24(金属層)との間の絶縁性、及び中間層33と金属端子14との間の絶縁性を向上させることができる。なお、第2の中間層は、上述した架橋層又は強化層であってもよい。
【0079】
また、最内層31と最外層32とは、同じ構成を有していてもよく、異なる構成を有していてもよい。すなわち、本開示の端子用樹脂フィルムは、端子用樹脂フィルムの表面の層のうち少なくとも1つの層が最外層の要件を満たす層であればよく、もう一方の層が最外層の要件を満たしていなくてもよい。そのため、最内層31及び最外層32の一方が、長鎖分岐構造を有するポリプロピレンと、融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンと、を含有する層であり、他方が長鎖分岐構造を有するポリプロピレン、及び融点が80~155℃である長鎖分岐構造を有さないポリプロピレンの一方又は両方を含有しない層であってもよい。
【0080】
次に、本実施の形態の端子用樹脂フィルム16の製造方法について簡単に説明する。端子用樹脂フィルム16の製造方法には、特に制限はない。端子用樹脂フィルム16は、例えば、インフレーション成型法を用いる際に使用する丸ダイや、押しダイ法を用いる際に使用するTダイ等のダイスを有するフィルム押出製造装置等を用いて製造することができるが、製膜安定性の観点から、多層のインフレーション成型法が好適である。
【0081】
以下の説明では、端子用樹脂フィルム16の製造方法の一例として、インフレーション成型法(言い換えれば、インフレーション成型装置)を用いて端子用樹脂フィルム16を製造する場合について説明する。
【0082】
まず、最内層31、最外層32、及び中間層33の母材を準備する。次いで、上記最内層31、最外層32、及び中間層33の母材をインフレーション成型装置に供給する。次いで、インフレーション成型装置の押し出し部から3層構造(最内層31、最外層32、及び中間層33が積層された構造)となるように、上記3つの母材を押し出しながら、押し出された3層構造の積層体の内側からエア(空気)を供給する。
【0083】
そして、円筒形状にインフレートされた円筒状の端子用樹脂フィルム16を搬送しながら、ガイド部により扁平状に変形させた後、一対のピンチロールにより端子用樹脂フィルム16をシート状に折り畳む。織り込んだチューブの両端部をスリットし、1対(2条)のフィルムを巻き取りコアにロール状に巻き取ることで、ロール状とされた端子用樹脂フィルム16が製造される。
【0084】
端子用樹脂フィルム16を製造する際の押し出し温度は、例えば、130~300℃の範囲内が好ましく、130~250℃がより好ましい。押し出し温度が130℃未満の場合、各層を構成する樹脂の溶融が不十分となることで、溶融粘度がかなり大きくなるため、スクリューからの押し出しが不安定になる恐れがある。一方、押し出し温度が300℃を超える場合、各層を構成する樹脂の酸化や劣化が激しくなるため、端子用樹脂フィルム16の品質が低下してしまう。
【0085】
スクリューの回転数、ブロー比、及び引き取り速度等は、設定膜厚を考慮して適宜設定することができる。また、端子用樹脂フィルム16の各層の膜厚比は、各スクリューの回転数を変更する事で容易に調整することができる。
【0086】
なお、本実施の形態の端子用樹脂フィルム16は、接着剤を用いたドライラミネーションや、製膜した絶縁層(絶縁フィルム)同士をサンドウィッチラミネーションにより積層する方法を用いて製造してもよい。
【0087】
ここで、
図3を参照して、本実施の形態の端子用樹脂フィルム16と外装材13とを溶融接着する融着処理について説明する。融着処理では、加熱による最外層32の溶融と、加圧による最外層32と外装材13との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と外装材13とを熱融着させる。
【0088】
また、上記融着処理では、端子用樹脂フィルム16と外装材13との十分な密着性及び封止性を得るために、最外層32を構成する樹脂の融点以上の温度まで加熱を行う。
【0089】
具体的には、端子用樹脂フィルム16の加熱温度として、例えば、140~170℃を用いることができる。また、処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、剥離強度と生産性を考慮して決定する必要がある。処理時間は、例えば、1~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0090】
なお、端子用樹脂フィルム16の生産タクト(生産性)を優先する場合には、170℃を超える温度で加圧時間を短時間にして熱融着してもよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170~230℃を用いることができ、加圧時間としては、例えば、3~20秒を用いることができる。
【0091】
また、
図3を参照して、本実施の形態の端子用樹脂フィルム16と外装材13とを溶融接着する融着処理について説明する。融着処理では、加熱による最内層31の溶融と、加圧による最内層31と金属端子14との密着とを同時に行いながら、端子用樹脂フィルム16と金属端子14とを熱融着させる。
【0092】
また、上記融着処理では、端子用樹脂フィルム16と金属端子14との十分な密着性及び封止性を得るために、最内層31を構成する樹脂の融点以上の温度まで加熱を行う。
【0093】
具体的には、端子用樹脂フィルム16の加熱温度として、例えば、140~170℃を用いることができる。また、処理時間(加熱時間及び加圧時間の合計の時間)は、剥離強度と生産性を考慮して決定する必要がある。処理時間は、例えば、1~60秒の範囲内で適宜設定することができる。
【0094】
なお、端子用樹脂フィルム16の生産タクト(生産性)を優先する場合には、170℃を超える温度で加圧時間を短時間にして熱融着してもよい。この場合、加熱温度としては、例えば、170~230℃を用いることができ、加圧時間としては、例えば、3~20秒を用いることができる。
【実施例0095】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0096】
[使用材料]
実施例及び比較例で使用した材料を下記表1に示す。
【表1】
【0097】
[端子用樹脂フィルムの作製]
(実施例1~15及び比較例1~4)
表2に示した各成分を、同表に示す配合量(単位:質量%、表中では「%」と略記)で配合し、ドライブレンドして各層の母材を調製した。DSCにより各層の融解熱量を測定したところ、各樹脂成分の融点に相当するピークが検出された。最外層の融点と最内層の融点との絶対差を表2に示す。
【0098】
次いで、住友重機モダン社製のインフレーション式フィルム押出製造装置(Co-OI型)に、第一の接着層(最外層)の母材、絶縁層(中間層)の母材、及び第二の接着層(最内層)の母材をセットし、該フィルム押出製造装置により上記3つの母材を押し出すことで、最外層/中間層/最内層の3層構造の端子用樹脂フィルムを作製した(但し、比較例4は、中間層/最内層の2層構造の端子用樹脂フィルム)。各母材の溶融温度は210℃とした。各実施例の端子用樹脂フィルムにおける各層の厚さは、表2の「厚さ[μm]外/中/内」のとおりであった。なお、表2の「外/中/内」は、最外層(外)/中間層(中)/最内層(内)を意味する。
【0099】
[対リード初期(室温)ヒートシール強度の測定]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を165℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(
図4を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。本評価において、
図4中の積層体100は、端子用樹脂フィルム/アルミニウム箔/端子用樹脂フィルムからなる積層体である。このサンプルのヒートシール部に対し、室温(25℃)環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、アルミニウム箔(リード)と端子用樹脂フィルムとの間のT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて対リード初期ヒートシール強度を評価した。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。結果を表2に示す。
A:ヒートシール強度が25N/15mm以上
B:ヒートシール強度が20N/15mm以上、25N/15mm未満
C:ヒートシール強度が15N/15mm以上、20N/15mm未満
D:ヒートシール強度が15N/15mm未満
【0100】
[対外装材初期(室温)ヒートシール強度の測定]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を165℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ナイロンフィルム(厚さ25μm)/接着剤/アルミニウム箔(厚さ40μm)/ポリプロピレンシーラント層(厚さ80μm)の積層構造を有する外装材のシーラント層が端子用樹脂フィルムに接するよう2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部(端子用樹脂フィルムとアルミニウム箔とをヒートシールした箇所と同じ箇所)を190℃/0.5MPa/5秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(
図4を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。本評価において、
図4中の積層体100は、外装材/端子用樹脂フィルム/アルミニウム箔/端子用樹脂フィルム/外装材からなる積層体である。このサンプルのヒートシール部に対し、室温(25℃)環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、外装材と端子用樹脂フィルムとの間のT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて対外装材初期ヒートシール強度を評価した。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。結果を表2に示す。
A:ヒートシール強度が100N/15mm以上
B:ヒートシール強度が90N/15mm以上、100N/15mm未満
C:ヒートシール強度が80N/15mm以上、90N/15mm未満
D:ヒートシール強度が80N/15mm未満
【0101】
[対外装材電解液ヒートシール強度]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを、50mm×50mmのサイズにカットした化成処理済みアルミニウム箔を挟み込むように2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部を165℃/0.6MPa/10秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、ナイロンフィルム(厚さ25μm)/接着剤/アルミニウム箔(厚さ40μm)/ポリプロピレンシーラント層(厚さ80μm)の積層構造を有する外装材のシーラント層が端子用樹脂フィルムに接するよう2つに折りたたみ、折りたたんだ部分とは反対側の端部(端子用樹脂フィルムとアルミニウム箔とをヒートシールした箇所と同じ箇所)を190℃/0.5MPa/5秒で幅10mmにわたってヒートシールした。その後、折りたたんだ部分以外の残りの2箇所の端部についても、折りたたんだ部分とは反対側の端部と同様にしてヒートシールした。まず、残りの2箇所の端部のうち1箇所のヒートシールを行い、その後、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の混合液にLiPF
6(6フッ化リン酸リチウム)を添加して、LiPF
6が1Mになるよう調整した電解液を1mL注入し、最後に残った1箇所のヒートシールを行い、パウチを作製した。作製したパウチを90℃で1週間保管した後、折りたたんだ部分とは反対側の端部のヒートシール部の長手方向中央部を15mm幅で切り出し(
図4を参照)、ヒートシール強度測定用サンプルを作製した。本評価において、
図4中の積層体100は、外装材/端子用樹脂フィルム/アルミニウム箔/端子用樹脂フィルム/外装材からなる積層体である。このサンプルのヒートシール部に対し、室温(25℃)環境下、引張速度50mm/minの条件にて、引張試験機(株式会社島津製作所社製)を用いて、外装材と端子用樹脂フィルムとの間のT字剥離試験を行った。得られた結果から、下記評価基準に基づいて対外装材電解液ヒートシール強度を評価した。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。評価及びシール強度の結果を表2に示す。
A:ヒートシール強度が70N/15mm以上
B:ヒートシール強度が60N/15mm以上、70N/15mm未満
C:ヒートシール強度が50N/15mm以上、60N/15mm未満
D:ヒートシール強度が50N/15mm未満
【0102】
[カール性評価]
端子用樹脂フィルムを50mm(TD)×100mm(MD)のサイズにカットしたサンプルを平滑な面上に置き、4箇所の頂点について平滑な面からの高さを測定した。4箇所の高さの平均値から下記評価基準に基づいてカール性を評価した。評価がA、B又はCの場合は合格、Dの場合は不合格である。結果を表2に示す。
A:カール高さが15mm未満
B:カール高さが15mm以上、20mm未満
C:カール高さが20mm以上、25mm未満
D:カール高さが25mm以上
【0103】
10…蓄電デバイス、11…蓄電デバイス本体、13…外装材、14…金属端子、14-1…金属端子本体、14-2…腐食防止層、16…端子用樹脂フィルム、21…内層、22…内層側接着剤層、23-1,23-2…腐食防止処理層、24…バリア層、25…外層側接着剤層、26…外層、31…最内層、32…最外層、33…中間層。