(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133389
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】高さ調節機構付き支持脚及び角度調節機構付き構造物脚部
(51)【国際特許分類】
E04F 15/00 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
E04F15/00 L
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024118281
(22)【出願日】2024-07-23
(62)【分割の表示】P 2020110644の分割
【原出願日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2020108200
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019120605
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302033458
【氏名又は名称】石原 聡
(72)【発明者】
【氏名】石原 聡
(57)【要約】
【課題】角度と高さ調節機構付き支持脚と構造物支持構造を提供する。
【解決手段】円筒の摺動と噛合による高さ調節支持脚による省力化。円筒による高さ調節機構とし円筒内に固化材を充填する高耐力支持脚または高耐力構造物支持構造、および球面による角度調節機構を付装する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体下面と下部構造体上面の対向面間に挟設する間隔調節装置で、
一方は外周面が摺動部と歯部とで形成した円筒または円柱で端部にベースプレートを突接した内筒部であり、
他方は内周面が摺動部と歯部とで形成した円筒で開口縁にベースプレートを突接した筒状の外筒部であり、
該外筒部と該内筒部の該歯部円周長さの合計が該外筒部内面の円周長以下であり、
該外筒部と該内筒部は摺接であり、該外筒部と該内筒部の一方を摺動し該上部構造体下面と該下部構造体上面の対向面間の距離を調節し、該外筒部と該内筒部の一方を回転し双方の該歯部を噛合することで該上部構造体を載設する間隔調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の上部構造体下面と下部構造体上面の対向面間に挟設する間隔調節装置で、
該間隔調節装置の下方は内周面に雌ネジを形成した円筒で該円筒下方開口縁にベースプレートを突接した雌ネジ部であり、
該間隔調節装置の上方は外周面に雄ネジを形成した円筒で該円筒上方開口縁にベースプレートを突接し、固化材充填孔を穿設した雄ネジ部であり、
該雌ネジ部と該雄ネジ部は螺接し、該雄ネジ部と該雌ネジ部の一方を回転し該対向面間の距離を調節し、該雄ネジ部の固化材充填孔より固化材を該雌ネジ部と該雄ネジ部とで形成される囲繞空間に充填し該雌ネジ部と該雄ネジ部とを固結する間隔調節装置。
【請求項3】
請求項1に記載の支持脚または請求項2に記載の固化材充填構造物支持構造に載設する構造物の角度調節機能であって、該支持脚または構造物支持構造の内筒部の上方開口縁に凸球面または凹球面に形成したベースプレートを突接した内筒部であり、
該内筒部に載設する構造物下面は該内筒部ベースプレートに密接する凸球面または凹球面に形成したベースプレートを突接する構造物脚部であって、
該内筒部ベースプレートと該構造物脚部ベースプレートとを密接させ、構造物の接合角度を調節し、該内筒部と構造物脚部とを螺合する建入れ構造物支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物などの支持脚及び脚部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材を連結するためのボルトなどの鋼材が、経時収縮や気候値変動による木材の含水率変動によって生じる木材の放射方向の寸法変動によって、ナットが緩むなどの対策として、スプリングワッシャ―によってナットの緩みを防止する仕組みが一般に実施されている。
【0003】
一般に在来工法と呼ばれる木造建築物は、戦後より筋交いと柱、横架材で構成される木造の建築物で、現在広く実施されている。しかしながら、一旦造った建築物を次の世代に活用することができずに一世代で解体され処分されている。
木造建築は森林の樹木を50年ほど育てたのちに伐採した木材を主原料としている。
森林資源を枯渇させることなく利用するためには50年以上の年月が必要であることは自明である。
戦前までは、木造建築は数十年で解体されることはなく、たとえ解体されても木材は再建築時に利用されるため、木材の建材としての寿命は数百年であった。
国内において森林が健全に見られるのは、自給率による要因がある。
大量の木材を消費する木造住宅を含む木質構造において、サステナブルを実現するためには100年を超える木造建築の持続性を実現が望まれる。
【0004】
木造住宅の床下やオフィスの二重床の支持脚の高さ調節機構はネジ式またはターンバックル式で実施されている。支持脚はかなりの数となり、全ての支持脚を高さ調節する作業が実施されている。
また、構造物支持構造では高さ調節機構を用いずに、湿式のレベリングモルタルを用いて高さ調節を行う方法が一般的である。木造住宅のレベリングモルタルの実施では、10mを超える距離間を誤差2ミリ程度に補正できるほどの都合良いものではなく、うまく行くときもあればうまく行かないときもある、ばらつきの生じる施工である。そのため施工後の測定と許容差を超えた部分を削り取る補正を行うのが一般的である。また湿式工法であるため、レベリングモルタルの強度の保持のための技能も必要である。部位が構造物の長期間の全荷重の支持部分となるため失敗した際の代償は大きい。
【0005】
鉄骨造建築の支持構造部のうち、基礎コンクリートから柱が露出するタイプでは、柱の下に高さと水平の調整用のグラウト材(隙間埋め材)を注入する方法が一般的である。
グラウト材は一般に無収縮モルタルと呼ばれるセメント系の水和剤が用いられる。このグラウト材に建物の全荷重が長期間掛かるため、施工品質については万全の注意が必要となる。
鉄骨造建築の支持構造部の調節機構については水平方向のボルト位置ズレも生じる。ボルトの位置ズレについては、限度を越えないように細心の注意の元で工事を行うものであるが、実際に起きてしまった場合にはボルトを曲げたりする方策が取られる。
【0006】
特開平10―183775号公報は、木材が高温高圧下では放射方向寸法が小さくなり、常温に戻ると放射方向寸法が元に戻るスポンジ状の復元力を利用した木材の固定方法の提案である。
特開2008―202271号公報は、あらかじめ熱処理して生成した高強度な高密度木材を低密度木材に貫入し、高密度木材をフレ―ム材に渡架することで、自然な周期的温湿度変化の生じる環境下でも嵌合性が低下をしないことを特徴とした木造軸組の提案である。この提案は、熱処理の手法によって、木材にプレストレスを加えて、自然環境下での復元力によって、木材の嵌合性を維持する提案である。
実登3101257号は、根太受け金物であって、コ字状の根太受け部の側面で根太材を釘で固定し、根太受け部底面にバネを配設したことを特徴とした根太受け金物の提案である。根太材の収縮や反りによって生じる変形を根太材の底面と当接する根太受け金物底面のバネ力により根太材を上方に持ち上げ床鳴りを症状の発生を低減する提案である。
特開2004―308772号公報は円筒の摺動と回転により寸法を調節するスリーブの提案である。
特開2003―227173号公報は構造物の柱脚支持構造の球面状の突起により摺動可能な支持方法とすることで垂直度を調整する提案である。
特開2006―328804号公報は床面に立設する支柱の球面状の取り付けベース板と支柱脚部とで垂直度を調整し固定する提案である。
特開2011―132782号公報は、底板付きの外筒にコンクリートを充填して粗く高さ調整した基部とし、内筒に連結する位置および高さ調整ボルトを該コンクリートに載設し浮床高さと水平位置を調節し、内筒にグラウトを隙間なく充填することで調整ボルトを固結し、強度を高める支持脚の提案である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10―183775号公報
【特許文献2】特開2008―202271号公報
【特許文献3】実登3101257号
【特許文献4】特開2004―308772号公報
【特許文献5】特開2003―227173号公報
【特許文献6】特開2006―328804号公報
【特許文献7】特開2011―132782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、木質構造物で長期間安定した強度を発揮させ、支持脚と構造物支持構造とに安定性と優れた施工性を実現せんとするものである。
木材は組み立てるときには正確にカットされて規格どおりの工業製品と同一の美しい形に成形することができるが、木材は経時収縮および気候値により膨潤と収縮を繰り返す特徴があるため、正確さは長く維持できない。
一般に木材の経時収縮は、特に繊維方向垂直面となる放射方向の縮小が顕著である。また気候値の変化に伴って放射方向寸法が変化する。そのため木材同士を密着しても時間とともに隙間が生じて組み立て時の密着した安定した強度を維持することは難しい課題となっている。
【0009】
国内で使用される木材の、建設から数年を経て水分量が安定した後の平衡含水率は15%程度で、年間の増減は約7%程度となる報告がされている。
代表的な桧柾目材の中心方向への収縮率は0.12であるため、
7%X0.12=0.84%
の寸法変化となり、100ミリの桧柾目材では
100X0.84%=0.84ミリ
の寸法変化を気候値の変化に応じて繰り返している。接線方向の収縮率は中心方向の約1/2。長さ方向の収縮率は中心方向の収縮率の1/10程度が目安である。
0.84%の収縮率では住宅などの構造物の横架材は高さが180から360ミリ程度なので、1.5から3ミリ程度の寸法変化が1年のスパンで生じていることになる。それに加えて初期の乾燥収縮が含水率で4から8%程度加算される。
【0010】
断面積の大きい横架材の寸法変化は決して見過ごすことのできない現象である。横架材に取り付けられる外装材の変形と、それに伴う防水機能の不具合は木造建築の品質を低下させる。木造建築の構造用の面材耐力壁材料では、横架材の変形についての施工指針が示されており、上層と下層との間は10mmの隙間を確保する内容となっている。変形を伴うことは木造建物の品質を損なうものである。横架材の寸法250ミリで2ミリの変化が1年のスパンで生じ、経時収縮が同程度想定されれば、250ミリの長さで4ミリの寸法変化が横架材部分に集中的に生じるのである。通常の外装材や防水材料で対応するのは難しい寸法変化である。
横架材の放射方向の寸法変化に追従させることで木造建物の精度と品質を向上させられる。
近年は柱や横架材に集成材を利用することが多くなっている。しかしながら集成材であったとしても断面寸法の増減量は使用する木材の向きで決まるので、集成材でも増減量は変わらない。
一般材では含水率を下げるための乾燥に掛かる費用にも課題がある。
【0011】
在来工法で使われる引き寄せボルトでは、経時収縮によってナットが緩んでしまうことが知られている。その対策として引き寄せボルトをスプリング付き座金で押し続ける方法が一般的である。
スプリング付き座金はナットをボルトのネジ山にバネ力で押し付けて摩擦力を生じさせて緩みを防止する単純な装置である。木材が収縮してナットと木材に隙間の生じた状態となることでは、スプリング付き座金のスプリングが伸びてバネ力が維持されるとしても、隙間を埋め合わせられない。
隙間がある状態で応力が生じたときには、バネが伸び縮みするだけで構造物にガタや遊びのある状態になっているのである。気候値の変動によるものでは、膨潤も生じるのでめり込みを生じることも考えられる。経時収縮では元には戻らないので、スプリングが伸びた状態が固定状態となってしまう。
【0012】
スプリングワッシャ―は、金属製品では古くからナットの緩み止めとして利用されている。しかしながら木材は放射方向の寸法が常時変化するためスプリングが稼働する際、放射方向寸法の変化に伴ってネジの押し付け力の変化が生じる。そのためスプリングが伸びた状態では、ボルト接合部分にがたつきや遊びが生じる。
放射方向寸法が減少してスプリングが伸びた時にナットの緩みやすい状態で振動が発生した時に果たしてスプリング方式で安定したナットの締め付け力は維持されるであろうか。緩みやすい状況で微小でもナットが緩んでしまったら人の手で締めなおさない限り元に戻ることはない。締め直し作業は完成した建物での実施は撤去復旧を伴う大掛かりな作業である。
その対策としては、緩み止め機能付きナットの併用によって固定することができる。
【0013】
木造建物では羽子板ボルトや引き寄せボルトなどが多数使われる。上下階の柱をつなぐ引き寄せボルトの場合、間にある横架材のサイズが300ミリの場合、1年間の変形量αは2.5ミリメ―トルになるため、2.5ミリメ―トルの遊びがボルトとナットに生じるのである。
現在広く実施されている木造建築物は、上述の不安定要素を抱えたまま実施されている。現状の木質工法とはそういった緩さを内在した不安定さを許容せざるを得ないのが実情なのである。
反りは年輪や節の配置によって、生じる変形である。
年輪による変形は、木材は原木をカットする際に年輪が偏ってしまうために、樹木の内側に巻き込むように変形する現象である。
節による変形は、節の配置によって様々に変形する。木材を捻るような変形をすることが多いのが特徴である。
反りと節は集成材の利用によって現象を抑えられる。
【0014】
近年様々に提案されている木質ラ―メン工法では、高い強度の軸組の接合支点を必要とする。そのため接合支点では金具と木材に隙間のない密着状態を解体時まで維持しなければならない。
特にボルトと鋼板を用いたピン工法や、筋交いを用いない木造ラ―メン工法を実現する上では木材と鋼板が密着することで高い強度を長期間実現出来るので、木材の変形への対策は避けては通れない課題である。木造ラ―メン工法を実現するためには木材の放射方向寸法が変化しても鋼材と木材との間に隙間を生じることのない方法の提案が必要なのである。
【0015】
床束では、コンクリ―トの基礎と床面の間の距離を正確に保つことが求められるが、大引の乾燥状態にばらつきがあり、経時収縮と気候値変動によって床が下がることがあり床鳴りの原因の一つとなっている。そのため床鳴り対策用の金物が実登3101257号などで提案されている。
床束原因の床鳴りは、一旦顧客のクレ―ムになると作業員が床下に進入してタ―ンバックルの調節という負担の大きい作業を必要とするため事業者にとって解決したい課題の一つとなっている。
基礎コンクリートの天端を水平状態にするのは困難なため、コンクリート打設後レベリングモルタルによって水平状態を成し、その上に基礎パッキン材を介して木製土台を載設するのが標準的な工法となっている。
レベリングモルタルの精度にはばらつきが生じるため、施工後に精度確認が必要で部分的に削り取る作業が必要となる。レベリングモルタルの施工不良によって割れてしまうこともある。
床大引きを支える床束は、ターンバックルによって寸法調整を行えるが、大荷重のかかる木製土台では寸法調整方法がなく、レベリングモルタルの施工精度の確認および補正を実施する必要がある。
そのため木製土台についても床束同様に高さ調節可能な金具が求められる。
【0016】
オフィスの二重床の支持脚や木造住宅の床束では、支持脚の高さ調節を摺動で調節でき留め具で固定するといった工具不要でできる作業性の良い提案が求められる。
鉄骨造の柱脚支持構造では、高さと角度の調節に無収縮モルタルを用いるため構造物の全荷重が無収縮モルタルに掛かることになるため無収縮モルタルの品質には細心の注意が必要である。そのため構造物の荷重が鉄骨の柱などから直接基礎コンクリートに伝えられる提案が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、前記実情に鑑み提案されたもので、木質構造物を長期間に渡って緩みや隙間の生じない強固な構造体にする仕組みと、角度と高さ調節機能を付装する支持脚または構造物支持構造の提案をすることを目的としている。
【0018】
含水率差は、平衡含水率と用いる木材の含水率との含水率の差である。木材は伐採されてから時間とともに平衡含水率まで木材中の水分が蒸発することで減少する。木材の体積も経過時間に比例して小さくなる現象は経時収縮である。用いる木材の含水率と平衡含水率の差が木材の断面積の縮小の量に比例する。
温度と湿度などの値とは気候値である。気候値の変動によって木材の平衡含水率も変化するため、木材の膨潤または収縮の現象が生じる。
木材の水分は、細胞壁内にある結合水と、細胞内腔にある自由水に分けられる。
伐採した木材は、自由水が蒸発後、結合水が蒸発する。
自由水が消失した木材の含水率は約30%であり、この状態が「繊維飽和点」である。さらに蒸発がつづき、一定の温度、湿度の条件下に存在した最終的に安定する含水率が平衡含水率である。
【0019】
フレームは、柱と横架材とで構成される構造物の一辺を構成する部分などである。例えば鋼板を木材で狭設して成すフレームや木材の両端に金具を取り付けて成すフレームなどである。
フレーム木材は該フレームを構成する木材である。
ネジは木ビス、ボルト、ドリフトピンなどである。
貫通長穴は、ネジや釘が鋼板を貫通する孔が長くなった形状で、ネジが遊動できる。
【0020】
断面方向木材とは、樹木を四角形に製材した際に、繊維方向に対して垂直に応力が掛かる使い方をする木材である。
繊維方向木材は、繊維方向に対して平行に応力が掛かる使い方をする木材である。例えば、横架材は荷重を受ける向きが繊維方向に垂直なので、断面方向木材となり、立設される柱は荷重を受ける向きが繊維方向に平行なので繊維方向木材となる。
請求項1記載の下部構造体は基礎コンクリートや床コンクリートなどである。平坦性にバラツキがあり高さ調整が必要な構造体などである。
請求項1記載の上部構造体は、二重床のフロア材や木造構造体や鉄骨構造体などである。
【0021】
木材を用いて固定する接合面間の寸法変化を生じない手段について
図1により説明する。
図1は、木材1をサスペンション木材2に添設した第一接合金具3と第二接合金具4とで固定するものである。
第一接合具3は、木材1の固定面bに添設するサスペンション木材2を画設するコ字形断面の鋼板で、サスペンション木材の一方の面aと木材1の固定面bとに固定する。
第二接合金具4は木材1の固定面bに添設するサスペンション木材2に添設し、サスペンション木材2の固定面cに画設するコ字形の鋼板にネジを螺刻したシャフトを具備し、該シャフトは木材1を貫通し、固定面dにナットで固定する。
該木材1は該一方の固定面dを原点にして寸法変化する。
該木材1の接合面の他方の固定面bに、第一接合具3を固定する。
第一接合金具3の連結した固定面aに、前記木材1と変動量が同じサスペンション木材2を固定する。
該変形量が同じサスペンション木材2が固定された第一接合金具3の固定面aの他方の面cにシャフト4を固定する。
【0022】
該シャフトは、連結した固定面aの他方の面cと前記固定面dとを固定する金具であって、前記木材1とは遊動する。
この仕組みにより、木材が固定面dを原点に寸法変化すると、変動量が同じサスペンション木材2は、第一接合金具3の変動量が同じサスペンション木材2が固定された面aを原点に寸法変化するので、変動量が同じサスペンション木材2が前記木材1と逆向きに遊動する。
そのため、固定面dと固定面aの他方の面cの間の距離は変化しない仕組みとなる。
【0023】
木材と木材とを当接させて固定する時に当接接合面に木材の収縮によって生じる隙間を発生させない手段について、
図2により説明する。
組み立て前の木材は双方の木材の中心を原点にして放射方向の寸法が変動するため収縮した場合は当接させると木材の当接面に隙間が生じる。
最初に、木材1と木材1とを当接する。
木材1の当接接合面の垂直面にサスペンション木材2を添設する。
添設したサスペンション木材2は双方の木材1に固定する。
木材1とサスペンション木材2は滑動し添設する。
サスペンション木材2がサスペンション木材2の中心を原点に収縮と膨潤により放射方向の寸法が変動を起こす。サスペンション木材2の原点が双方の木材1の当接接合面と同位置とすることで、当接する木材1と木材1の当接接合面を中心に収縮と膨潤をするので、当接接合面が密接する。
【0024】
遊挿固定金具について
図4により説明する。
図3に記載のフレームの鋼板15に穿設したネジまたは釘が貫通する穴がフレーム木材10の変動の原点を基準として、木材の膨潤と収縮による放射方向の変動量に応じた大きさに穿設したものである。
図4に記載の
Aは、ネジまたは釘の直径
γは、木材の収縮率
rは、木材の中心から穴の中心までの長さ
で、穿設する放射方向の穴の長さLを
L=A+(γxr)
とすることで、木材と鋼板を貫通するネジまたは釘が木材の膨潤と収縮による位置の移動によって木材に応力が生じないための手段である。
【0025】
含水率差圧縮法および含水率差圧縮サスペンションフレームについて
図3により説明する。
図3に記載のフレームは、フレーム木材10とフレーム木材10と、フレーム木材10とフレーム木材10で狭設する鋼板15とで構成されるフレームに、サスペンション木材2をフレーム木材10と鋼板15とフレーム木材10の当接接合面の垂直方向に添設した構成のサスペンションフレームである。
フレームは2つの材のフレーム木材であるか、一つの木材であって接合部となる端部に鋼板を差し込むものなどである。
使用する木材の組み立て時の経時収縮による変動量は、組み立て時の木材の含水率と該木材の平衡含水率との含水率差に比例する。収縮には木材の収縮力を伴う。
含水率差圧縮法は、該含水率差をフレーム木材10よりもサスペンション木材2を大きくすることで、フレーム木材10と鋼板15との当接接合面に圧縮応力を生じさせる提案である。
含水率差によって得られる圧縮応力を含水率差圧縮力とする。含水率差圧縮力は
図3にあってはフレーム木材10と鋼板15との接合面に摩擦力を発生させられる。該摩擦力を含水率差摩擦力とする。
該含水率差摩擦力はフレームに組み立てた後、数週間で発揮され数年で安定する。
気候値によって膨潤するが膨潤量はサスペンション木材2とフレームは同量となるため、収縮量差は変わらない。
【0026】
木材フレーム圧縮ユニットについて
図4と
図5により説明する。
「0025」の含水率差圧縮サスペンションフレームでは、サスペンション木材によってフレームのフレーム木材と鋼板に摩擦力を発生させる提案であるが、木材フレーム圧縮ユニットは、同様にフレーム木材と鋼板に摩擦力を発生させるためにバネの復元力を利用する提案である。
該フレームの該フレーム木材10の両外面に圧縮プレート41を添設する。該圧縮プレート41とフレーム木材10と鋼板15とフレーム木材10と圧縮プレート41とを貫通するボルト42が挿通され、該ボルト42に圧縮バネ43を内蔵するスプリングユニットを挿通しナット42で螺合することで、該圧縮バネ43の復元力によって該フレーム木材10と鋼板15との当接面を圧縮し摩擦力を生じさせる。
【0027】
スプリングユニットは圧縮バネ43と外ケース44と内ケース45とで構成されており、円筒状または角筒状である。外ケース44と内ケース45は摺動し、外ケース44と内ケース45の囲繞空間に圧縮バネ43が配設される。
内ケース45には屈曲片が形成され該屈曲片は外ケース44に系止するユニットに構成である。
該ボルトをフレームとスプリングユニットと圧縮プレートとを挿通し螺合する。スプリングユニットの外ケース開口縁は屈曲させ圧縮プレートに系止する。スプリングユニットと圧縮プレートは一体に形成しても良い。ネジ締めによって圧縮バネ43が押圧されることで復元力が生じ、スプリングユニットと圧縮プレート41を介してフレームを両外面より押圧し、木材フレーム10と鋼板15との当接面に摩擦力を発生させる。フレーム木材は放射方向の寸法変化を生じるため、圧縮バネ43はその変化量を上回るストロークとし、想定される寸法変化量に応じた復元力を発揮するバネを用いれば良い。
また木材の安らぎあるデザインを損なわないために、スプリングユニットは木材を切削して固定した。ボルトの先端もデザインを損なうので圧縮プレートと一体化するなどで、美しい接合部を提供できる。
【0028】
内通し柱について、
図7と
図8により説明する。
繊維方向木材に添設する断面方向木材とは、繊維方向木材が柱で、断面方向木材19が梁となる木造建築物の標準的な軸組構造体が該当する。
木造構造物の軸組構造体にあっては「0011」から「0013」に記載の木材の収縮と膨潤の課題がある。
本提案は、柱に横架材を戴設する際に、横架材が経時収縮と気候値変化による放射方向寸法の増減によって、横架材天端の高さが変化してしまう課題を解決する提案である。
断面方向木材19に介挿穴8を穿設する。該介挿穴8は、断面方向木材19の上端に近いところまで穿設する。上層にも繊維方向木材18がある場合は介挿穴8を貫通させる。断面方向木材19の下層と上層とに配設する繊維方向木材18には断面方向木材19の介挿穴8に介挿するホゾ7を加工する。下層の繊維方向木材18のホゾ7は上層の繊維方向木材18のホゾ7よりも大きくする。断面方向木材19の介挿穴8は段差を設けることとなる。断面方向木材19の介挿穴8に繊維方向木材18のホゾ7を介挿し固定する。断面方向木材19と下層の繊維方向木材18とは介挿穴8の底で当接し、下層の繊維方向木材18のホゾ7の上面と上層の繊維方向木材18のホゾ7の下面とが当接する。
【0029】
介挿穴8とホゾ7とは摺接しており木材が気候値変化による変形により断面方向木材19の放射方向寸法が変動しても、断面方向木材19の天端の位置の変動を低減できる。
繊維方向木材18と断面方向木材19とを固定する柱頭金物40は、繊維方向木材側のネジ固定穴を貫通長穴9とする。断面方向木材19の放射方向変動による寸法変化によって固定ネジが貫通長穴9内を遊動するため遊挿固定する。
介挿穴8の穿設による横架材の断面減少の弊害を減らすため、鋼板とボルトやドリフトピンを利用しても良い。
【0030】
凸型ベースプレート支持脚について
図14と
図15により説明する。
請求項
1に記載の下部構造体とは、木造住宅であれば基礎コンクリートが該当し、その上部構造体は住宅の床や土台などの木質構造物が該当する。
主に床下に設置される断面方向木材を載設する床束などの支持脚である。
断面方向木材は経時収縮および気候値の変動によって放射方向寸法が変化するため、床鳴りなどの障害を起こすことがある。その対策として寸法基準面となる床高さの変動を減らす提案である。
断面方向木材の下面に該断面方向木材の上面に近い方までの深さのある介挿穴を穿設する。支持脚ベースプレートが断面方向木材と基礎コンクリートとに当接し、断面方向木材と当接するベースプレートは、該介挿穴に摺動可能に摺接する凸型状に鋼板を成形した凸状部とする。鋼板を凸型状にする以外に、木材や樹脂素材によって凸状を形成することもできる。また凸状でなくとも角パイプや角材でも良い。
【0031】
支持脚の凸状部上面と断面方向木材の介挿穴の底面とを当接させる。介挿穴底面が寸法基準面により近ければ木材の寸法変動による寸法基準面高さの変動を小さくできる。
該介挿穴と凸状部とを嵌合させることで支持脚と断面方向木材とが位置固定される。引き抜き固定するため介挿穴の一部を鈎状に加工した屈曲片を形成する。屈曲片は凸状部挿入前では凸状部外面より引き抜き方向に突出しており、引き抜き方向の応力に対しては突出片の復元力によるめり込みを生じさせることで引き抜き抵抗を生じさせ鈎合する。
【0032】
請求項1に記載の支持脚は、上部構造体下面と下部構造体上面に挟設する間隔調節装置で、該間隔調節装置は内筒と該内筒開口縁に突接されるベースプレートとで形成される内筒部と、外筒と該外筒開口縁に突接されるベースプレートとで形成される外筒部とで構成される。
該内筒部は筒状または無垢の内筒で外周面に摺動部と歯部とが形成されており、開口縁にベースプレートが突接され上部構造体に当接する。
該外筒部は筒状の外筒で内周面に摺動部と歯部とが形成されており、固定用の留め具を具備しており、外筒の開口縁にベースプレートが突接され下部構造体に当接する。
摺動部は歯部を削り取った平滑なものであって、内筒部と外筒部の摺動部と歯部の位置を合わせた状態であれば自在に摺動できる。
作業用の目盛を刻印または印刷しておくと良い。
該外筒部と内筒部を自在に摺動させるために、該外筒部と内筒部の歯部円周長さの合計は外筒部内面の円周長さ以下にする。
外筒部と内筒部の歯部は噛合する形状とする。
【0033】
留め具は、ピン式の簡易なものの他に、歯部を一方向に押し付けて圧嵌する形状のものとしても良い。例えば歯部を少し変形させて回転に摩擦がかかるようにするなどの方法がある。
支持脚設置の作業方法は、該外筒部と内筒部の一方の摺動部に他方の歯部の位置を合わせ摺動させて上部構造体と下部構造体の対向面間の距離に調節し、外筒部と内筒部の一方を回転させることで双方の歯部が噛合し、外筒部の留め具が掛かる事で噛合が完了したことを確認し作業が完了する。工具は不要である。
二重床や木造住宅の床束では、支持脚に掛かる荷重が小さいため前記作業で必要な耐力を得られる。
支持脚は一般的にネジによる螺合で寸法調節するのが一般的である。ネジ式は無段階調節だが本提案は段階調節となる。本提案を段階調節としたのは、高さ調節する際のレベル測定器の精度が段階調節でも十分なためである。
【0034】
一般的なレベル測定器は水平面を振り子(ジンバル)で測定しレーザー光によって表示する。該レーザー光の太さが約1ミリ以上であり、レーザー受光器によっても反応精度は1ミリである。
段階調節とした本提案はレーザー測定器を使う不陸調整の最小単位が1ミリであるため、1ミリ単位の段階調節とすることに工学的支障はない。なお、一般事務室の平坦性検査は目視判断で2m当たり3ミリが許容差とされている。
オフィスの二重床や木造住宅の床束であれば一度に調節する支持脚数が多いので作業員の集中力ということでも、本提案によって作業を簡略化し安易なミスを防げられることとなり商品の高品質化と省力化ができる。
【0035】
高さ調節方法は、支持脚の内筒部の摺動部に目盛ラインを付けておき、全支持脚の高さをあらかじめ同じにする。作業開始前の支持脚の高さが全て同じであることを目視確認する。支持脚を下部構造体に配置し、高さ調節必要な支持脚は調節量を決めたら歯部を数えるか目盛で読み取り調節する。摺動部と留め具があるため、高さを同じに揃えられることが利点である。
【0036】
固化材充填支持脚は、建物の荷重のような大荷重に対応可能な提案である。
固化材充填支持脚は、請求項1記載の支持脚の上側が筒状の内筒部で、該内筒部に固化材充填孔を穿設したものである。下側は請求項1に記載の外筒部である。該外筒部と内筒部の一方を摺動し該上部構造体下面と下部構造体上面の対向面間の距離に調節し、該外筒部と内筒部の一方を回転し留め具の作動によって双方の歯部を噛合する。該固化材充填孔より無収縮モルタルなどの固化材で囲繞空間を充填し、固化材が固結し上部構造体を載設する。
該固化材充填孔は内筒の側面に穿設しても良い。
内筒部の下方開口縁が圧縮強度の高い固化材を介して外筒部ベースプレートに当接するため長期大荷重に対して安全な耐力を得る事となる。
内筒下方開口縁には、リングプレート37を突接する事で軸方向耐力を高められる。
【0037】
請求項2に記載の固化剤充填構造物支持構造は、前記固化材充填支持脚は摺動と噛合による接合方法であるが、接合方法をネジ式としたものである。
固化剤充填構造物支持構造は、構造物下面と基礎コンクリート上面の対向面間に挟設する間隔調節装置であって、下側は内周面に雌ネジを形成した円筒で該円筒下方開口縁にベースプレートを突接した雌ネジ部であり、上方は外周面に雄ネジを形成した円筒で該円筒上方開口縁にベースプレートを突接し、固化材充填孔を穿設した雄ネジ部である。該雌ネジ部と雄ネジ部は螺接し、該雄ネジ部と雌ネジ部の一方を回転し該対向面間の距離に調節し、該雄ネジ部の固化材充填孔より固化剤で囲繞空間を充填し固結する固化材充填構造物支持構造である。
主に大型の構造物で、柱脚の重さが大きい場合にはネジ式の方が作業性に優れる。
前記固化剤充填支持脚と請求項2の固化材充填構造物支持構造とでは、作業性の良い方を選択すれば良い。
【0038】
凸型ベースプレート間隔調節支持脚は、請求項1に記載の支持脚または固化材充填支持脚または固化材充填構造物支持構造の、上側の内筒部のベースプレートに凸型ベースプレートを付装したものである。
該凸型ベースプレートは、該凸状部が断面方向木材の介挿穴に摺接する。
該内筒部のベースプレートを該凸型ベースプレートとしたものが凸型ベースプレート内筒部である。
該凸型ベースプレート内筒部と外筒部とを接合した凸型ベースプレート間隔調節支持脚または凸型ベースプレート間隔調節構造物支持構造であるため、まとめて凸型ベースプレート間隔調節支持脚とする。
断面方向木材の経時および気候値による放射方向寸法変動によって生じる断面方向木材の放射方向の寸法変化に応動し、該断面方向木材と下部構造体との対向面間の距離に調節し該断面方向木材を載設する凸型ベースプレート間隔調節支持脚である。
【0039】
請求項3に記載の建入れ構造物構造は、請求項1に記載の支持脚または請求項2に記載の固化材充填構造物支持構造または一般に鉄骨造柱脚では基礎コンクリートに柱を立設する際に、建て入れ起こし作業を実施する。ベースプレートの水平を正確に測定するのには柱を立設した時の方が測定しやすく、柱の固定作業と同時に行うことで確実な施工とすることができる。
該建入れ構造物脚部の内筒部の上方開口縁に凸球面または凹球面に形成したベースプレートを突接する。該内筒部に載設する構造物脚部は該内筒部ベースプレートに密接する凸球面または凹球面に形成したベースプレートを突接した構造物脚部であって、該内筒部ベースプレート上面と該構造物脚部ベースプレート下面とを密接させ構造物脚部の接合角度を調節する。該内筒部と構造物脚部とをネジで固定する。該接合角度調節機能を請求項1に記載の支持脚または構造物脚部に付装した建入れ構造物脚部である。
【0040】
該密接面を球面とするのではなく曲面としても良い。曲面の場合は角度調節方向が1方向に限定されるので曲面を調節する方向数付装すれば良い。また角度調節方向が1方向のみであれば曲面の方が良い。
構造物支持構造と構造物脚部との間で接合角度調節機能を付装する提案であるが、基礎コンクリートと構造物支持構造との間で接合角度調節機能を付装することもできる。
例えば木造建築の構造物脚部が横架材の土台である場合には、一つの土台に複数の構造物支持構造が架設するため、接合角度調節機能は基礎コンクリートとの間に設ける方が適する。尚土台であれば接合角度調節機能は1方向になるため曲面の密接面で良い。
【0041】
寸法調節機構については水平方向のボルト位置ズレも生じる。
鉄骨造の構造用アンカーボルトの限界許容差は5ミリである。本提案では柱脚のベースプレートと構造物支持構造とがネジによって固定されるため、限界許容差を超えた際に、設計者の確認により本提案の構造物脚部支持構造を作り直すことで限界許容差を変更可能な場合もあると想定できる。構造物脚部支持構造だけの再製作であれば費用も時間も節約できる。
【発明の効果】
【0042】
この発明は前記した手段を用いることで、以下に説明するような効果を奏することができる。
【0043】
現在一般に木造建築物で施工される際に使用される様々な金物類に木材の経時変化と環境変化による放射方向寸法の変化に追従するサスペンション機構付き木材接合金具を提供する。
サスペンション機構付き木材接合金具が木材の放射方向寸法の変化に追従可能なため、金物のナットの緩みの障害を防止できる。
【0044】
鋼板を木材で挟合してなる木質構造では、サスペンションフレームおよび圧縮サスペンションフレームを用いることで、木材と鋼板を常時密着できる。
木材と金物類には施工時にネジの締め付け力により強い圧縮応力を生じさせることができるのであるから、サスペンションフレームは当該仕組みの中に圧縮応力を生じさせるものではないが、施工時にネジの締め込みトルクによって圧縮応力を生じさせ、その圧縮応力を維持することができる。
含水率差圧縮法によって木材と金具とを木材の収縮力によって強い摩擦力を生じさせられる。そのため、固定に用いるネジなどが剪断破壊や繰り返し応力の金属疲労による破断のリスクを低減可能となる。
木造建築は長期間大きな負荷に耐え、人命に直結する安全性が求められる。従来の木質構造は金属ボルトの剪断力に頼るものであるため金属ボルトの剪断と疲労の破断はリスクである。
木材と金具の当接面に摩擦力を得られることで金属ボルトの剪断と疲労による破断要素の低減によって木造技術を発展させられる。
【0045】
含水率差圧縮サスペンションフレームおよび含水率差圧縮法および遊挿固定金具による、木材の放射方向の寸法変化に追従し密着させる仕組みの自然環境下での提案である。木材を圧縮収縮させた圧密状態よりの復元力によって密着させる仕組みはあるものの自然環境下での提案ではない。
木材フレーム圧縮ユニットも含水率差圧縮サスペンションフレームと同様の効果を期待できる。数値化した圧縮応力とするにはバネを利用する方法も有効である。木材を切削してサスペンションユニットを目立たなくすればデザイン性を損なうことがない。
木質構造物が木造住宅から中大規模構造物へ用途が広がる中、高精度、耐久性を獲得するため、木材の寸法変化に追従する仕組みを取り入れた木質構造を提供する。
【0046】
内通し柱は、木造住宅の横架材が放射方向の寸法変化が生じても建物の高さの変化を生じさせないための提案であって、この提案によって在来工法による木造建築物を高精度にするものである。また外壁材と外壁の防水など横架材にまたがる部位に生じる不具合を低減させることができる。
【0047】
凸型ベースプレート支持脚と凸型ベースプレート間隔調節支持脚は、断面方向木材の放射方向寸法変化によって生じる障害を低減させる提案で、木製土台や木製大引に活用して木造住宅の床鳴りによる障害を低減する床支持脚を提供する。また挿入作業によって鈎合できる簡易な作業であって工具を使わない作業の提案であるため釘などのファスニング材を使わない省力化施工を提供する。また大引にあらかじめ介挿穴を穿設するため工場で介挿穴を穿設した大引を使うこととすれば、床支持脚位置を設計指示しやくすくなり、現場ではあらかじめ穿設された介挿穴に金具を嵌めるだけになるので、作業も簡略化できる。
【0048】
上部構造体を載設する支持脚は、高さ調節機機能を具備する二重床や木造住宅の床支持脚の提案であって、施工の省力化となる支持脚を提供する。
【0049】
固化剤充填支持脚および固化材充填構造物支持構造は、高さ調節機機能を具備する荷重の大きい構造体を載設可能な支持脚または構造物支持構造を提供する。
【0050】
建入れ構造物支持構造は、接合角度調節機能を支持脚および構造物支持構造に付装する提案であって、高さと角度調節機能を併せ持つ支持脚および構造物支持構造を提供する。
二重床の支持脚や木造住宅の床束、そのほか構造物の支持構造の高さと角度の調節機構を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】対向する固定面を木材で固定するサスペンション機構の完成図
【
図2】当接する木材にサスペンション木材を渡架するサスペンションフレームの概観図
【
図3】鋼板を木材で挟合する含水率差圧縮サスペンションフレームの概観図
【
図14】凸型ベースプレート間隔調節支持脚の分解斜視図
【
図15】凸型ベースプレート間隔調節支持脚の概観図
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、一実施の形態を示す図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0053】
図1は、寸法変化しない対向する一方の固定面cと他方の固定面dを収縮または膨潤をする木材1に固定するため、木材1が当接する他方の固定面dに木材1と同じ変化量のサスペンション木材2の一方の固定面cを、第二接合金具4のシャフトを介して連結する。第二接合金具4のシャフトが木材1を貫通して、他方の固定面dにナットと座金5を介して固定する。
木材1が当接する他方の固定面dの木材の他方の面bとサスペンション木材2の一方の固定面cのサスペンション木材の一方の面aとを第一接合金具3で連結し、第一接合金具3とサスペンション木材2と、木材1と第二接合金具4とは滑動することで、一方の固定面cと他方の固定面dの距離が寸法変化しない機構である。
【0054】
図2は木材1と木材1とを当接させると、木材の放射方向に向かう木材1の経時収縮および気候値による放射方向寸法の変動により二つの木材1間に隙間が生じる。
該木材1に該木材1と同じ変形をするサスペンション木材2を添設し該サスペンション木材2と該木材1とは滑接14する。双方の木材1にサスペンション木材2を渡架することで、木材1の放射方向寸法が変動すると渡架するサスペンション木材2も同時かつ同率で変動する。渡架するサスペンション木材2は、渡架するサスペンション木材2の中心を原点にして放射方向の寸法が変化するので、当接する木材1と木材1の間に空隙を生じないサスペンションフレームとなる。
図中の矢印は木材の収縮時の変形する方向を示す。
【0055】
図3は、木造構造物のフレームや接合部に鋼板を利用するために、木材で鋼板を挟合する形態を図に表したものである。
フレーム木材10とフレーム木材10が別の木材である場合および、フレーム木材10とフレーム木材10は一つの木材で木材端部に鋼板を差し込む切り欠きを設ける場合の具体例である。
サスペンション木材2を、フレーム木材10と鋼板15の挟合面の垂直面に添設し固定する。またサスペンション木材2をフレーム木材10の上下面に添設する。
フレーム木材10とフレーム木材10とで鋼板15を挟合するとフレーム木材10の中心を原点とした収縮と膨潤により放射方向の寸法変動が生じる。そのためフレーム木材10と鋼板15の間に隙間が生じるが、サスペンション木材2もフレーム木材10と同時かつ同率でのサスペンション木材2の中心を原点とする放射方向の寸法変動が生じるため、フレーム木材10はサスペンション木材2の中心の変形に強制することとなり、フレーム木材10と鋼板15の間に隙間を生じさせない仕組みとしたものである。
【0056】
さらに、サスペンション木材2の収縮力により圧縮応力を発生させるため、組み立て時の含水率をフレーム木材10よりもサスペンション木材2を大きくしておく含水率差圧縮法によってサスペンション木材2の収縮力をもって圧縮応力を発生させられる。
サスペンション木材2をフレーム木材10と鋼板15とで構成するフレームと同幅を切削しサスペンション黙坐2がフレームを画設する形状に加工する。
サスペンション木材2の含水率はあらかじめフレームフレーム木材10の含水率より高くしておく。生じる含水率差によって収縮量が異なりフレームの収縮量よりもサスペンション木材2の収縮量が大きい。該収縮量差はサスペンション木材2の収縮力によるので、フレーム木材10で鋼板15を圧接力となり、フレーム木材10と鋼板15に摩擦力を生じさせられる。
【0057】
図4は、
図3の鋼板15の側面図で、穿設するネジまたは釘の貫通する穴の大きさが最上部のネジ穴の径がAであって、その下のネジ穴の上下方向の長さL1を
L1=A+(γxr1)
A ;ネジ穴の径
γ ;木材の寸法変動率
r1;最上部のネジ穴との距離
によって算出された大きさとすることで、フレーム木材10の放射方向の寸法変化によって、ネジまたは釘とフレーム木材10とに応力が生じることのない接合部とする提案であって、寸法基準面fに最も近い最上部を原点に変形させることで、フレーム木材10の寸法変化によって構造物に生じる寸法変化を低減させられる。
図5と
図6はフレーム木材10で鋼板15を狭設してなるフレームを両外面の圧縮プレート41で圧接ことでフレーム木材10と鋼板15が密着し、バネの復元力により摩擦力が生じる。
【0058】
図7と
図8は下層階の繊維方向木材18の上端を断面方向木材19の介挿穴8に嵌合するホゾ7に加工する。断面方向木材19に介挿穴を穿設し、該介挿穴8は貫通し、上層階の繊維方向木材18の介挿穴8の底面と下層階の繊維方向木材18の介挿穴8の上端面が当接する。該介挿穴8の形状は該介挿穴8の上層階の繊維方向木材18と下層階の繊維方向木材18が当接位置に段差を配設した形状とする。
該段差は介挿穴内の下層階の繊維方向木材18と断面方向木材19とが当接するため断面方向木材19と繊維方向木材18が当接し荷重が伝達される。
上層階の繊維方向木材18が伝達する上層階の荷重は、介挿穴8の中で上層階の繊維方向木材18のホゾ7の端部と下層階の繊維方向木材18のホゾ7の端部と当接することで、下層階の繊維方向木材18に伝達される。断面方向木材19上面の寸法基準面fは上層階の繊維方向木材18の下端に当接する。
下層階の繊維方向木材18は、介挿穴に差し込んだ部分の変形量は断面方向木材19の1/10程度となる。そのため断面方向木材19の変化量を低減できる。
【0059】
図9と
図10と
図11と
図12と
図13は高さ調節機構を備えた支持脚を図に表したものである。
支持脚は内筒部と外筒部とでなり、円筒開口縁にベースプレート25が突設される。内筒外周面と外筒内周面には摺動部28と歯部26とが形成されており、双方は摺接する。
図12に記載のように内筒部の摺動部と外周部の歯部の位置を合わせれば摺動でき、
図13に記載のように内筒部の歯部と外筒部の歯部の位置を合わせれば噛合できる。
摺動によって高さ調節を行い、噛合によって位置固定するものである。
外周部には留め具29が具備され、留め具29の作動によって噛合が固定される。
また、外周部の歯部の端部には歯部の山を高くした圧接部22を設け、該圧接部22は他方の歯部の底に圧接する。圧接部22の圧接作用によって、内周部と外周部がガタつくことを防ぐ。
また固化材充填孔30より固化材を充填できる。固化材には硬化性樹脂やセメント系固化材などが利用できる。鉛直方向の応力が大なる場合など強固な固定を必要とする場合には、流動性があり経時後硬化する特徴の固化材によって高い鉛直方向耐力を発揮する。
【0060】
図14と
図15は木造住宅の床下などで利用される凸型ベースプレート間隔調節支持脚を図に表したものである。
前記の内筒部と外筒部とでなる支持脚であって、外筒部のベースプレート25にシャフト20とシャフト基底部21が取り付く。
木造住宅の床と基礎コンクリートとの間に設置する凸型ベースプレート間隔調節支持脚では断面方向木材19を載設するため断面方向木材19の放射方向寸法の変化αに応動するため内筒部のベースプレート25は凸状部6を付装した形状にする。
凸状部6を断面方向木材19の介挿穴に挿入し、凸状部上面と介挿穴の底面とが当接することで、断面方向木材19の変動量αが寸法基準面fの高さの変動を低減できる。
なお、凸状部には該凸状部を木材に鈎合させるため屈曲片11を形成する。屈曲片11は金属の復元力によって木材に鈎合することで引き抜き方向に耐力を生じさせ、凸型ベースプレートと断面方向木材を鈎合する。屈曲片11が鈎合する木材の部分の放射方向寸法変動量分が、屈曲片11の木材へのめり込みによって不具合を生じさせることはないようにすれば良く、凸状部6が引き抜かれるほどの変形では屈曲片11によって凸状部6は引き抜かれない。
鈎合による固定は、作業の省力化を実現する。
寸法基準面fの変動量を低減することで床鳴り症状の発生を抑えられ、完成後の顧客からのクレームや心配への負担を減らすことができる。
【0061】
図16と
図17は、鉄骨造建築物の構造物支持構造を図に表したものである。
基礎コンクリート16に載設する鉄骨造柱の脚部であって、円筒内周面に雌ネジが形成された雌ネジ部38開口縁にベースプレート25が突接され、ベースプレート25は基礎コンクリート16に載設する。円筒外周面に雄ネジが形成された雄ネジ部38は開口縁に凸球状のベースプレート31が突接され、柱33の下方開口縁に該凸球状のベースプレート31に密着する凹球面ベースプレート32が突接される。
【0062】
雄ネジ部38と雌ネジ部39とはネジ接合する。雄ネジ部38と雌ネジ部39とをネジ接合させ基礎コンクリートにボルト35を介して仮固定する。ネジで高さ調節を行なった後、固化材充填孔30より固化材を注入し、固化材で雄ネジ部38と雌ネジ部39とで形成した囲繞空間を充填する。柱33下方開口縁に突接した凹球状ベースプレート32を雄ネジ部38に上方開口縁に突接した凸球状ベースプレート31に載設し、柱33の角度を調節してボルト35で固定する。
凸球状ベースプレート31には、30度回転する毎にボルトを取り付けられるようにボルト穴が開けることで、寸法調整単位を小さくしている。
固定板13は基礎コンクリート16表面の不陸によるガタツキを防ぐため、コンクリート打設時に設置する鋼板などの平滑な板である。構造物支持構造設置前に取り外しても良い。
【実施例0063】
サスペンション機構は在来工法に用いられる様々なナットの緩みについてスプリング座金よりも効果的に木材の変形に追従できる提案である。
スプリング座金は寸法変化のないボルトとナットの緩み防止の手段であって、木材の緩み防止の効果については解決済みと認めるのは難しいものであるが、本提案であれば木材の変形について変動時間と変動量に追従可能なナットの緩み防止手段とすることができる。
【0064】
含水率差圧縮サスペンションフレームは、主に木造建築物においてさまざまな活用方法がある。例えば金具を併用する木質ラ―メン工法にあっては、接合支点に集中して大荷重がかかるのであるが、含水率差圧縮サスペンションフレームであれば接合支点木材と金具とが強い摩擦力とともに密着することで、耐久性と安定性を高めることが出来る。
また木材フレーム圧縮ユニットによっても含水率差圧縮サスペンションフレームと同様の効果が得られる。すでに多く実施されているピン工法に利用されるドリフトピンと同様の効果があり、加えて鋼板を密着させられるので強固で安定した構造物の接合金物への利用が期待できる。バネの復元力を利用するので耐力を数値化できるメリットがある。
【0065】
建築業界を含むすべての社会システムはサステナブルを実現しなくてはならない。40年サイクルで伐採と処分を繰り返す現在の木造住宅は、森林の生産力を上回っている。その解決のためのサステナブルを実現するためには100年を超える木造建築の持続性を実現しなければならない。さすれば森を製材のための植林で覆い尽くすことなく原生林に戻すこともできよう。
木造建築のサステナブルの実現には、スケルトンインフィルの実現が必要である。つまり構造と間取りを分離したラ―メン工法による木造建築が普及する必要がある。含水率差圧縮サスペンションフレームや木材フレーム圧縮ユニットによれば、強固な接合支点を提供できるため木造ラーメンフレームが実現可能となる。
【0066】
内通し柱は、木造建築物の横架材の放射方向寸法の変動を低減する事で、木造建築物の高さの変動を減少させられるので木造建築物の精度を向上できる。また防水性能などの建物高さの変動によって生じる障害を減らすことができる。
凸型ベースプレート支持脚および凸型ベースプレート間隔調節支持脚は床と基礎コンクリートとの間の床束に利用することで、木材の変形によって生じる床鳴りの障害を減じることができる。
【0067】
支持脚は、二重床や床束金物に利用することで、設置作業を省力化できる。また固化材を充填することで高い鉛直方向耐力を発揮できるため、木造建築の土台金物に利用できる。
固化剤充填構造物支持構造は、高さと角度調節機能があり、内部に固化材を充填することで高い鉛直方向耐力を発揮するため、露出柱脚型の鉄骨構造物などに利用できる。