(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133395
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電源切替装置
(51)【国際特許分類】
H02J 1/00 20060101AFI20240920BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
H02J1/00 304E
H02J7/34 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024118351
(22)【出願日】2024-07-24
(62)【分割の表示】P 2021052500の分割
【原出願日】2021-03-26
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋向 亮太
(72)【発明者】
【氏名】古都 正彦
(72)【発明者】
【氏名】岩田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洸
(57)【要約】
【課題】電源部及び蓄電部から電力を供給し得る電源システムにおいて電源の切り替えを行うことができ、蓄電部からの電力供給を監視する上で有利な技術を提供する。
【解決手段】第1切替部70は、第1導電路51よりも第2導電路52のほうが電圧が大きい所定の第1状態のときに第1導電路51から第1出力路61に電力を供給し、所定の第2状態のときに第2導電路52から第1出力路61に電力を供給する。第2切替部80は、第4導電路54よりも第3導電路53のほうが電圧が大きい所定の第3状態のときに第4導電路51から第2出力路62に電力を供給し、所定の第4状態のときに第3導電路53から第2出力路62に電力を供給する。導通許容部84は、蓄電部12に基づく電力を第2導電路52に供給し且つ蓄電部12に基づく電力の第3導電路53への供給を停止している状態において、第2導電路52と第3導電路53との導通を許容する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と、蓄電部と、前記電源部からの電力の供給経路である電力路とを備えた電源システムにおいて電源の切り替えに用いられる電源切替装置であって、
前記電力路から電力の供給を受ける経路である第1導電路と、
前記蓄電部に基づく電力を供給する経路である第2導電路と、
前記蓄電部に基づく電力を供給する経路であり、前記第2導電路とは異なる経路である第3導電路と、
前記電力路から電力の供給を受ける経路である第4導電路と、
第1負荷に電力を供給する経路である第1出力路と、
第2負荷に電力を供給する経路である第2出力路と、
前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも大きい所定の第1状態のときに前記第1導電路からの電力を前記第1出力路に供給し、前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも小さい所定の第2状態のときに前記第2導電路からの電力を前記第1出力路に供給するように切り替える第1切替部と、
前記第4導電路の電圧が前記第3導電路の電圧よりも大きい所定の第3状態のときに前記第4導電路からの電力を前記第2出力路に供給し、前記第4導電路の電圧が前記第3導電路の電圧よりも小さい所定の第4状態のときに前記第3導電路からの電力を前記第2出力路に供給するように切り替える第2切替部と、
前記蓄電部に基づく電力を前記第2導電路に供給し且つ前記蓄電部に基づく電力の前記第3導電路への供給を停止している状態において、前記第2導電路と前記第3導電路との導通を許容する導通許容部と、
を有する電源切替装置。
【請求項2】
前記第1切替部は、スイッチ部と、駆動部と、ダイオードを具備する遮断部と、を備え、
前記スイッチ部は、前記第1導電路と前記第1出力路との間に設けられ、オン状態のときに前記第1導電路と前記第1出力路の間の導通を許容し、オフ状態のときに前記第1導電路と前記第1出力路の間の導通を遮断し、
前記駆動部は、前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも大きい場合又は前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも第1所定値以上大きい場合に前記スイッチ部をオン状態とし、前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも小さい場合又は前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも第2所定値以上小さい場合に前記スイッチ部をオフ状態とし、
前記遮断部のダイオードのアノードに前記第2導電路が電気的に接続され、前記遮断部のダイオードのカソードに前記第1出力路が電気的に接続されている
請求項1に記載の電源切替装置。
【請求項3】
前記第2切替部は、第2ダイオードと第3ダイオードとを備え、
前記第2ダイオードのアノードが前記第4導電路に電気的に接続され、前記第2ダイオードのカソードが前記第2出力路に電気的に接続されており、
前記第3ダイオードのアノードが前記第3導電路に電気的に接続され、前記第3ダイオードのカソードが前記第2出力路に電気的に接続されている
請求項2に記載の電源切替装置。
【請求項4】
前記蓄電部からの電力供給を制御する電力制御装置を有し、
前記電力制御装置は、第1切替動作と第2切替動作と検出動作とを行い、
前記第1切替動作は、前記蓄電部に基づく電力を前記第2導電路に供給する第1供給動作と、前記蓄電部から前記第2導電路への電力供給を停止する第1停止動作とを切り替える動作であり、
前記第2切替動作は、前記蓄電部に基づく電力を前記第3導電路に供給する第2供給動作と、前記蓄電部から前記第3導電路への電力供給を停止する第2停止動作とを切り替える動作であり、
前記検出動作は、前記第1供給動作及び前記第2停止動作を行っている状態で前記第3導電路の電圧を検出する動作である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電源切替装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源切替装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車載電源装置の一例が開示される。特許文献1の車載電源装置は、車両に搭載された二次電池から車載機器へ電源を供給する車載電源装置である。この車載電源装置において電圧補償手段は、車載機器へ供給される電圧が第1設定値以下になった場合に、車載機器へ供給される電源電圧の低下を抑制して補償する。無停電電源手段は、車載機器へ供給される電圧が第1設定値よりも小さい第2設定値以下になった場合に、二次電池とは別の他の二次電池の電力を、車載機器のうちの一部に対して供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、主電源からの電力供給が途絶えた場合に、別電源からの電力に基づいて複数の負荷に電力を供給し得る構成であるが、別電源からの電力供給の経路を監視することを想定していない。
【0005】
本開示は、電源部及び蓄電部から電力を供給し得る電源システムにおいて電源の切り替えを行うことができ、且つ、蓄電部からの電力供給を監視する上で有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一つである電源切替装置は、
電源部と、蓄電部と、前記電源部からの電力の供給経路である電力路とを備えた電源システムにおいて電源の切り替えに用いられる電源切替装置であって、
前記電力路から電力の供給を受ける経路である第1導電路と、
前記蓄電部に基づく電力を供給する経路である第2導電路と、
前記蓄電部に基づく電力を供給する経路であり、前記第2導電路とは異なる経路である第3導電路と、
前記電力路から電力の供給を受ける経路である第4導電路と、
第1負荷に電力を供給する経路である第1出力路と、
第2負荷に電力を供給する経路である第2出力路と、
前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも大きい場合に前記第1導電路からの電力を前記第1出力路に供給し、前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも小さい場合に前記第2導電路からの電力を前記第1出力路に供給するように切り替える第1切替部と、
前記第4導電路の電圧が前記第3導電路の電圧よりも大きい場合に前記第4導電路からの電力を前記第2出力路に供給し、前記第4導電路の電圧が前記第3導電路の電圧よりも小さい場合に前記第3導電路からの電力を前記第2出力路に供給するように切り替える第2切替部と、
前記蓄電部に基づく電力を前記第2導電路に供給し且つ前記蓄電部に基づく電力の前記第3導電路への供給を停止している状態において、前記第2導電路と前記第3導電路との導通を許容する導通許容部と、
を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る技術は、電源部及び蓄電部から電力を供給し得る電源システムにおいて電源の切り替えを行うことができ、且つ、蓄電部からの電力供給を監視する上で有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態の電源切替装置を含む車載システムの一例を概略的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1の車載システムにおいて、蓄電部12に基づく電力供給が停止した状態での電力の供給状態を説明する説明図である。
【
図3】
図3は、
図1の車載システムにおいて、電源切替装置が第1供給動作及び第2供給動作を行っている状態での電力の供給状態を説明する説明図である。
【
図4】
図4は、
図1の車載システムにおいて、電源失陥(電力路での地絡発生)が生じた場合の電力の供給状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
以下では、本開示に係る実施形態が列記されて例示される。なお、以下で例示される〔1〕~〔4〕の特徴は、矛盾しない組み合わせでどのように組み合わされてもよい。
【0010】
〔1〕電源部と、蓄電部と、前記電源部からの電力の供給経路である電力路とを備えた電源システムにおいて電源の切り替えに用いられる電源切替装置であって、
前記電力路から電力の供給を受ける経路である第1導電路と、
前記蓄電部に基づく電力を供給する経路である第2導電路と、
前記蓄電部に基づく電力を供給する経路であり、前記第2導電路とは異なる経路である第3導電路と、
前記電力路から電力の供給を受ける経路である第4導電路と、
第1負荷に電力を供給する経路である第1出力路と、
第2負荷に電力を供給する経路である第2出力路と、
前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも大きい所定の第1状態のときに前記第1導電路からの電力を前記第1出力路に供給し、前記第1導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも小さい所定の第2状態のときに前記第2導電路からの電力を前記第1出力路に供給するように切り替える第1切替部と、
前記第4導電路の電圧が前記第3導電路の電圧よりも大きい所定の第3状態のときに前記第4導電路からの電力を前記第2出力路に供給し、前記第4導電路の電圧が前記第3導電路の電圧よりも小さい所定の第4状態のときに前記第3導電路からの電力を前記第2出力路に供給するように切り替える第2切替部と、
前記第3導電路の電圧が前記第2導電路の電圧よりも低い所定状態である場合に前記第2導電路から前記第3導電路へ電流が流れることを許容し、前記所定状態でない場合に前記第2導電路から前記第3導電路へ電流が流れることを遮断する素子部と、
を有する電源切替装置。
【0011】
上記〔1〕に記載の電源切替装置は、電源部から電力路を介して供給されるべき電力が途絶えた場合に、蓄電部からの電力を利用して第1負荷及び第2負荷に電力を供給することができる。しかも、上記〔1〕の電源切替装置は、第3導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも低い所定状態である場合に第2導電路から第3導電路へ電流が流れることを許容し、上記所定状態でない場合には第2導電路から第3導電路へ電流が流れることを遮断する。つまり、上記電源切替装置は、上記所定状態であるか否かが第3導電路に反映されるため、第3導電路が監視対象とされれば、蓄電部からの電力供給を監視する上で有利である。所定の第1状態は、第1導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも大きい状態であってもよく、第1導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも第1所定値以上大きい状態であってもよい。所定の第2状態は、第1導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも小さい状態であってもよく、第1導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも第2所定値以上小さい状態であってもよい。所定の第3状態は、第4導電路の電圧が第3導電路の電圧よりも大きい状態であってもよく、第4導電路の電圧が第3導電路の電圧よりも第3所定値以上大きい状態であってもよい。所定の第4状態は、第4導電路の電圧が第3導電路の電圧よりも小さい状態であってもよく、第4導電路の電圧が第3導電路の電圧よりも第4所定値以上小さい状態であってもよい。第1所定値及び第2所定値を採用する場合、第1所定値は、第2所定値と同一であってもよく、異なってもよい。第3所定値及び第4所定値を採用する場合、第3所定値は、第4所定値と同一であってもよく、異なってもよい。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載の電源切替装置において、以下の特徴を有する。上記第1切替部は、スイッチ部と、駆動部と、ダイオードを具備する遮断部と、を備える。上記スイッチ部は、上記第1導電路と上記第1出力路との間に設けられ、オン状態のときに上記第1導電路と上記第1出力路の間の導通を許容し、オフ状態のときに上記第1導電路と上記第1出力路の間の導通を遮断する。上記駆動部は、上記第1導電路の電圧が上記第2導電路の電圧よりも大きい場合又は上記第1導電路の電圧が上記第2導電路の電圧よりも第1所定値以上大きい場合に上記スイッチ部をオン状態とし、上記第1導電路の電圧が上記第2導電路の電圧よりも小さい場合又は上記第1導電路の電圧が上記第2導電路の電圧よりも第2所定値以上小さい場合に上記スイッチ部をオフ状態とする。上記遮断部のダイオードのアノードに上記第2導電路が電気的に接続され、上記遮断部のダイオードのカソードに上記第1出力路が電気的に接続されている。
【0013】
上記〔2〕に記載の電源切替装置は、第1導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも相対的に大きい状態ではスイッチ部をオン状態とすることで、電源部に基づく電力を、損失を抑えて第1出力路に供給することができる。一方で、〔2〕の電源切替装置は、第1導電路の電圧が第2導電路の電圧よりも相対的に小さい状態では、蓄電部に基づく電力を、ダイオードを介して第1出力路に即座に供給することができる。
【0014】
〔3〕上記〔2〕に記載の電源切替装置において、以下の特徴を有する。上記第2切替部は、第2ダイオードと第3ダイオードとを備える。上記第2ダイオードのアノードが上記第4導電路に電気的に接続され、上記第2ダイオードのカソードが上記第2出力路に電気的に接続されている。上記第3ダイオードのアノードが上記第3導電路に電気的に接続され、上記第3ダイオードのカソードが上記第2出力路に電気的に接続されている。
【0015】
上記〔3〕に記載の電源切替装置は、電源部に基づく電源電圧が相対的に高い場合に電源部に基づいて第2出力路に電力供給を行い、失陥等によって電源電圧が相対的に低下した場合に蓄電部に基づいて即座に第2出力路に電力供給を行い得る構成を、より簡易に実現することができる。
【0016】
〔4〕上記〔1〕から上記〔3〕のいずれか一つに記載の電源切替装置において、以下の特徴を有する。上記蓄電部からの電力供給を制御する電力制御装置を有する。上記電力制御装置は、第1切替動作と第2切替動作と検出動作とを行う。上記第1切替動作は、上記蓄電部に基づく電力を上記第2導電路に供給する第1供給動作と、上記蓄電部から上記第2導電路への電力供給を停止する第1停止動作とを切り替える動作である。上記第2切替動作は、上記蓄電部に基づく電力を上記第3導電路に供給する第2供給動作と、上記蓄電部から上記第3導電路への電力供給を停止する第2停止動作とを切り替える動作である。上記検出動作は、上記第1供給動作及び上記第2停止動作を行っている状態で上記第3導電路の電圧を検出する動作である。
【0017】
上記〔4〕に記載の電源切替装置は、蓄電部に基づく電力を別々の経路(第2導電路及び第3導電路の各々)に出力することができ、各経路への出力を個別に切り替えることができる。しかも、この電源切替装置は、一方の経路(第3導電路)を出力と監視に兼用して、他方の経路(第2導電路)からの出力が適正になされているかを確認することができるため、蓄電部からの電力供給が適切になされているか否かの監視を、より簡易な構成で実現することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
【0018】
<第1実施形態>
1.車載システムの概要
図1には、車載システム2が示される。
図1の車載システム2は、主に、車載用電源システム3と第1負荷101と第2負荷102とを備える。車載用電源システム3は、以下の説明において電源システム3とも称される。車載システム2は、電源システム3によって複数の負荷に電力を供給し、複数の負荷を動作させるシステムである。
図1では、複数の負荷として、第1負荷101及び第2負荷102が例示されるが、車載システム2にはこれら以外の負荷が設けられていてもよい。
【0019】
第1負荷101は、車両に搭載される電気部品である。第1負荷101は、第1出力路61を介して供給される電力を受けて動作する。第1負荷101の種類は限定されない。第1負荷101としては、公知の様々な車載部品が採用され得る。第1負荷101は、複数の電気部品を有していてもよく、単一の電気部品であってもよい。
【0020】
第2負荷102は、車両に搭載される電気部品である。第2負荷102は、第2出力路62を介して供給される電力を受けて動作する。第2負荷102としては、公知の様々な車載部品が採用され得る。第2負荷102は、複数の電気部品を有していてもよく、単一の電気部品であってもよい。第1負荷101と第2負荷102は、同種の負荷であってもよく、異なる種類の負荷であってもよい。
【0021】
電源システム3は、車載システム2に含まれる複数の負荷に電力を供給するシステムである。電源システム3は、電源部91又は蓄電部12を電力供給源として第1負荷101及び第2負荷102に電力を供給するシステムとして構成されている。電源システム3は、電源部91から第1負荷101及び第2負荷102に電力を供給することができ、故障などによって電源部91からの電力供給が途絶えた場合に、蓄電部12から第1負荷101及び第2負荷102に電力を供給することができるシステムである。
【0022】
2.電源システムの概要
電源システム3は、電源部91と、蓄電部12と、電源部91からの電力の供給経路である電力路94と、電源切替装置5とを備える。
【0023】
電源部91は、第1負荷101及び第2負荷102へ電力を供給し得る車載用電源である。電源部91は、例えば、鉛バッテリ等の公知の車載バッテリとして構成されている。電源部91は、鉛バッテリ以外のバッテリによって構成されていてもよく、バッテリに代えて又はバッテリに加えてバッテリ以外の電源手段を有していてもよい。電源部91は、正極が電力路94に電気的に接続され、負極がグラウンドに電気的に接続される。電源部91は、電力路94に一定値の直流電圧を印加する。電源部91が電力路94に印加する電圧は、上記一定値から多少変動してもよい。
【0024】
蓄電部12は、少なくとも電源部91からの電力供給が途絶えたときに電力供給源となる電源である。蓄電部12は、例えば、電気二重層キャパシタ(EDLC)等の公知の蓄電手段によって構成されている。蓄電部12は、電気二重層キャパシタ以外のキャパシタによって構成されていてもよく、キャパシタに代えて又はキャパシタに加えて他の蓄電手段(バッテリなど)を備えていてもよい。蓄電部12は、正極が導電路45に電気的に接続され、負極がグラウンドに電気的に接続される。蓄電部12の出力電圧(蓄電部12によって導電路45に印加される電圧)は、電源部91の出力電圧(電源部91によって電力路94に印加される電圧)よりも大きくてもよく、小さくてもよい。
【0025】
本明細書において、電圧とは、特に限定が無い限り、グラウンド電位(例えば0V)に対する電圧であり、グラウンド電位との電位差である。例えば、電力路94に印加される電圧とは、電力路94の電位とグラウンド電位との電位差である。
【0026】
電力路94は、電源部91に基づく電力が伝送される経路である。
図1の例では、電力路94は、電源部91の出力電圧が印加される経路である。電力路94は、第1導電路51、第4導電路54に電気的に接続されている。電力路94には、リレーやスイッチが設けられていてもよく、リレーやスイッチによって電力路94の導通が遮断可能とされていてもよい。
【0027】
3.電源切替装置の構成
電源切替装置5は、電源システム3において電源の切り替えに用いられる装置である。電源切替装置5は、主に、第1装置10と第2装置50とを備える。
【0028】
第1装置10は、蓄電部12に基づく電力を出力し得るバックアップ装置である。第1装置10は、蓄電部12と、スイッチ20,22,24と、電力制御装置11と、導電路41,42,43,44,45とを備える。第1装置10は、蓄電部12に基づく電力を、第2導電路52及び第3導電路53にそれぞれ出力し得る。
【0029】
電力制御装置11は、蓄電部12からの電力供給を制御する装置である。電力制御装置11は、電圧変換回路14、制御部16、放電回路18、ダイオード26,28、導電路46,47,48、電圧検出部30などを備える。
【0030】
電圧変換回路14は、例えばDCDCコンバータなどによって構成されている。電圧変換回路14は、導電路42に印加される直流電圧を降圧又は昇圧して導電路45に出力電圧を印加する第1変換動作を行い得る。例えば、スイッチ22がオン状態になっているときに電圧変換回路14が第1変換動作を行うことで蓄電部12に対して電源部91からの電力に基づく充電電流が供給される。電圧変換回路14は、導電路45に印加される直流電圧を降圧又は昇圧して導電路42,47に出力電圧を印加する第2変換動作を行い得る。例えば、スイッチ22がオフ状態であり且つスイッチ24がオン状態であるときに、電圧変換回路14が第2変換動作を行うことで、蓄電部12からの電力に基づく直流電圧が導電路42,43及び第2導電路52に印加される。電圧変換回路14の動作は、制御部16によって制御される。
【0031】
放電回路18は、導電路48と導電路44との間に設けられ、導電路48に印加された電圧に基づいて導電路44に放電電流を供給する放電動作と、この放電動作を停止させる停止動作とを行い得る。放電回路18は、導電路48と導電路44との間を導通状態と非導通状態とに切り替えるスイッチによって構成されていてもよく、DCDCコンバータによって構成されていてもよい。スイッチ20がオン状態となっている場合、又は電圧変換回路14が導電路47に出力電圧を印加している場合に放電回路18が放電動作を行うことで、蓄電部12からの電力に基づく直流電圧が導電路44及び第3導電路53に印加される。
【0032】
導電路45は、蓄電部12の正極に電気的に接続された導電路である。例えば、導電路45は、自身の電位が蓄電部12の正極の電位と同電位となるように短絡している。スイッチ20は、導電路45と導電路46の間を導通状態(短絡状態)と非導通状態(遮断状態)とに切り替える素子である。導電路46は、スイッチ20の一端とダイオード26のアノードとを短絡する導電路である。ダイオード26は、自身のアノードが導電路46に電気的に接続され、自身のカソードが導電路48に電気的に接続された素子である。スイッチ20は、導電路45と導電路46との間を導通状態と非導通状態とに切り替える素子である。スイッチ20がオン状態のときには、ダイオード26のアノードに蓄電部12の出力電圧が印加され、ダイオード26のアノードと蓄電部12の正極とが同電位となる。スイッチ20がオフ状態のときには、導電路45と導電路46とが電気的に切り離され、導電路45と導電路46の間の導通が遮断される。
【0033】
導電路47は、電圧変換回路14からの出力経路として機能し得る導電路である。ダイオード28は、自身のアノードが導電路47に電気的に接続され、自身のカソードが導電路48に電気的に接続された素子である。導電路48は、放電回路18の一端に電気的に接続された導電路である。
【0034】
導電路41は、電力路94に電気的に接続された導電路である。導電路41の電位は、電力路94の電位と同電位とされる。導電路43は、第2導電路52に電気的に接続された導電路である。導電路43の電位は、第2導電路52の電位と同電位とされる。導電路42は、導電路41と導電路43との間に介在する導電路である。導電路42は、スイッチ22がオン状態であるときに導電路41と同電位又はほぼ同電位となる。導電路42は、スイッチ24がオン状態であるときに導電路43と同電位又はほぼ同電位となる。導電路42は、電圧変換回路14の一端に電気的に接続され、第1変換動作のときには入力側の導電路とされ、第2変換動作のときには出力側の導電路とされる。
【0035】
なお、スイッチ20,22,24は、FET等の半導体スイッチであってもよく、機械式リレーであってもよい。
【0036】
制御部16は、情報処理機能、演算機能、制御機能などを有する情報処理装置である。制御部16は、演算処理部としても機能する。制御部16は、電圧変換回路14に上記第1変換動作を行わせる第1制御と、電圧変換回路14に上記第2変換動作を行わせる第2制御とを行う。制御部16は、放電回路18に上記放電動作を行わせる第3制御と、放電回路18に上記停止動作を行わせる第4制御とを行う。
【0037】
電圧検出部30は、第3導電路53に印加された電圧の値を特定し得る値であるアナログ電圧値を出力する回路である。電圧検出部30は、第3導電路53に印加された電圧の値と同一の電圧値を制御部16に入力する回路であってもよく、第3導電路53に印加された電圧の値に比例した値を制御部16に入力する回路であってもよい。
図1の例では、電圧検出部30が抵抗31,32による分圧回路とされており、第3導電路53に印加された電圧の値を分圧回路によって分圧した値が検出値として制御部16に入力される。
【0038】
第2装置50は、第1負荷101に供給する電力を、電源部91に基づく電力とするか、蓄電部12に基づく電力とするかを切り替える装置である。第2装置50は、第2負荷102に供給する電力を、電源部91に基づく電力とするか、蓄電部12に基づく電力とするかを切り替える装置でもある。
【0039】
第2装置50は、第1導電路51と、第2導電路52と、第3導電路53と、第4導電路54と、第1出力路61と、第2出力路62と、第1切替部70と、第2切替部80と、第4ダイオード84とを備える。
【0040】
第1導電路51は、電力路94から電力の供給を受ける経路である。第1導電路51は、電力路94に電気的に接続される。第1導電路51の電位は、電力路94の電位と同電位とされる。
【0041】
第2導電路52は、蓄電部12に基づく電力を供給する経路である。第2導電路52は、導電路43に電気的に接続される。第2導電路52の電位は、導電路43の電位と同電位とされる。スイッチ24がオン状態のときには、第2導電路52の電位は、導電路42の電位と同電位又はほぼ同電位とされる。
【0042】
第3導電路53は、蓄電部12に基づく電力を供給する経路であり、第2導電路52とは異なる経路である。第3導電路53は、導電路44に電気的に接続される。第3導電路53の電位は、導電路44の電位と同電位とされる。
【0043】
第1出力路61は、第1負荷101に電力を供給する経路である。第1出力路61は、第1負荷101に電気的に接続される。例えば、第1出力路61に印加された電圧が、第1負荷101の一端に印加される。
【0044】
第2出力路62は、第2負荷102に電力を供給する経路である。第2出力路62は、第2負荷102に電気的に接続される。例えば、第2出力路62に印加された電圧が、第2負荷102の一端に印加される。
【0045】
第4ダイオード84は、素子部の一例に相当する。第4ダイオード84は、自身のアノードが第2導電路52に電気的に接続され、自身のカソードが第3導電路53に電気的に接続される。第4ダイオード84のアノードの電位は、第2導電路52の電位と同電位とされる。第4ダイオード84のカソードの電位は、第3導電路53の電位と同電位とされる。第4ダイオード84は、第3導電路53の電圧が第2導電路52の電圧よりも低い所定状態である場合に第2導電路52から第3導電路53へ電流が流れることを許容し、上記所定状態でない場合に第2導電路52から第3導電路53へ電流が流れることを遮断する。具体的には、第2導電路52の電位が第3導電路53の電位に対して第4ダイオード84の順方向電圧Vfを超える程度に大きい場合に第2導電路52から第3導電路53へ電流が流れ、そうでない場合には、第2導電路52から第3導電路53へは電流が流れない。
【0046】
第1切替部70は、第1出力路61に電力を供給するための電源を切り替える回路である。第1切替部70は、スイッチ部74と、駆動部の一例に相当する比較回路72と、遮断部の一例に相当する第1ダイオード71とを備える。
【0047】
比較回路72(駆動部)は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい場合又は第1所定値以上大きい場合にスイッチ部74をオン状態とし、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さい場合又は第2所定値以上小さい場合にスイッチ部74をオフ状態とする回路である。比較回路72は、例えば公知のヒステリシスコンパレータとして構成される。第1所定値及び第2所定値を採用する場合、第1所定値と第2所定値は同一であってもよく、異なっていてもよい。第1所定値及び第2所定値は、0であってもよく、正の値であってもよい。比較回路72は、例えば、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも第1所定値以上大きい場合にLレベルの電圧信号を出力する。比較回路72は、Lレベルの電圧信号を出力している状態で、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さい状態に切り替わった場合にHレベルの電圧信号を出力する状態に切り替わる。この場合、第1所定値は、0よりも大きく第1導電路51の電圧及び第2導電路52の電圧よりも小さい正の値である。比較回路72は、Hレベルの電圧信号を出力している状態で、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも第1所定値以上大きい状態に切り替わった場合にLレベルの電圧信号を出力する状態に切り替わる。上記Lレベルの電圧信号は、スイッチ部74のオン動作を指示する信号である。上記Hレベルの電圧信号は、スイッチ部74のオフ動作を指示する信号である。
【0048】
なお、比較回路72は、別の構成のヒステリシスコンパレータとして構成されてもよい。例えば、比較回路72は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい場合にスイッチ部74をオン状態とし、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも第2所定値以上小さい場合にスイッチ部74をオフ状態とするように動作してもよい。例えば、比較回路72は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい場合にLレベルの電圧信号を出力し、Lレベルの電圧信号を出力している状態で、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも第2所定値以上小さい状態に切り替わった場合にHレベルの電圧信号を出力する状態に切り替わり、Hレベルの電圧信号を出力している状態で、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい状態に切り替わった場合にLレベルの電圧信号を出力する状態に切り替わってもよい。或いは、比較回路72は、一般的なコンパレータとして構成されてもよく、この場合、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい場合にLレベルの電圧信号を出力してスイッチ部74をオン状態とし、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さい場合にHレベルの電圧信号を出力してスイッチ部74をオフ状態とすることができる。
【0049】
スイッチ部74は、第1導電路51と第1出力路61との間に設けられ、オン状態のときに第1導電路51と第1出力路61の間の導通を許容し、オフ状態のときに第1導電路51と第1出力路61の間の導通を遮断する。スイッチ部74は、互いに逆向きに配置され且つ直列に接続された一対のFET74A,74Bを有する。FET74A,74Bは、例えば、Pチャネル型のFET(Field effect transistor)として構成されている。スイッチ部74は、比較回路72からHレベルの電圧信号が出力されている場合にFET74A,74Bがいずれもオフ状態となり、第1導電路51と第1出力路61との間の通電を双方向に遮断する。スイッチ部74は、比較回路72からLレベルの電圧信号が出力されている場合にFET74A,74Bがいずれもオン状態となり、第1導電路51と第1出力路61との間の通電を双方向に許容する。
【0050】
第1ダイオード71(遮断部)のアノードには第2導電路52が電気的に接続され、第1ダイオード71のカソードには第1出力路61が電気的に接続されている。第1ダイオード71のアノードの電位は、第2導電路52の電位と同電位とされる。第1ダイオード71のカソードの電位は、第1出力路61の電位と同電位とされる。第1ダイオード71は、第2導電路52の電位が第1出力路61の電位に対して第1ダイオード71の順方向電圧Vfを超える程度に大きい場合に第2導電路52から第1出力路61へ電流を流し、そうでない場合には、第2導電路52から第1出力路61へは電流を流さない。
【0051】
このように構成された第1切替部70は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも相対的に大きい所定の第1状態のとき(具体的には、少なくとも第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも第1所定値以上大きい場合)にスイッチ部74をオン状態とし、第1導電路51からの電力を第1出力路61に供給する。スイッチ部74がオン状態のときには、第1導電路51と同等の電圧(第2導電路52よりも大きい電圧)が第1出力路61に印加されるため、第2導電路52から第1出力路61へは電流が流れない。一方、第1切替部70は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも相対的に小さい所定の第2状態のとき(具体的には、少なくとも第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さい場合)には、スイッチ部74をオフ状態とし、第2導電路52からの電力を第1出力路61に供給する。スイッチ部74がオフ状態のときには、第1導電路51から第1出力路61への電力供給が遮断されるため、第1出力路61の電圧は第2導電路52の電圧より低下し、第2導電路52から第1ダイオード71を介して第1出力路61に電流が流れる。
【0052】
第2切替部80は、第2ダイオード82と第3ダイオード83とを備える。第2ダイオード82のアノードには第4導電路54が電気的に接続されるとともに電源部91に基づく電圧が印加されている。第2ダイオード82のカソードは、第2出力路62に電気的に接続されている。第2ダイオード82のアノードの電位は、電力路94及び第4導電路54の電位と同電位とされる。第2ダイオード82のカソードの電位は、第2出力路62の電位と同電位とされる。第3ダイオード83のアノードは、第3導電路53に電気的に接続されている。第3ダイオードのカソードは、第2出力路62に電気的に接続されている。第3ダイオード83のアノードの電位は、第3導電路53の電位と同電位とされる。第3ダイオード83のカソードの電位は、第2出力路62の電位と同電位とされる。第2切替部80は、第4導電路54の電圧が第3導電路53の電圧よりも大きい場合を「所定の第3状態」とし、この第3状態のときに第4導電路54からの電力を第2出力路62に供給する。第2切替部80は、第4導電路54の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さい場合を「所定の第4状態」とし、この第4状態のときに第2導電路52からの電力を第2出力路62に供給するように切り替える。具体的には、第4導電路54の電圧が第3導電路53の電圧よりも大きい場合には、電力路94及び第4導電路54から第2ダイオード82を介して第2出力路62に電流が流れ、第3導電路53から第2出力路62へは電流は流れない。第3導電路53の電圧が第4導電路54の電圧よりも大きい場合には、第3導電路53から第3ダイオード83を介して第2出力路62に電流が流れ、第4導電路54から第2出力路62へは電流は流れない。
【0053】
4.電源切替装置の動作
電源切替装置5において、電力制御装置11は、第1切替動作と第2切替動作と検出動作とを行う。第1切替動作は、蓄電部12に基づく電力を第2導電路52に供給する第1供給動作と、蓄電部12から第2導電路52への電力供給を停止する第1停止動作とを切り替える動作である。
【0054】
制御部16は、第1供給動作を行う場合、スイッチ22をオフ状態とし、スイッチ24をオン状態とするようにスイッチ22,24を制御し、電圧変換回路14に対して第2変換動作を行わせる。第2変換動作を行うときの電圧変換回路14の出力電圧の目標値は、電源部91が電力路94に印加する電圧の値よりも少し小さい値であり、第1負荷101を動作させるために必要となる最低電圧よりも大きい値である。制御部16は、蓄電部12によって導電路45に印加される電圧(蓄電部12の出力電圧)よりも上記目標値が大きい場合には、電圧変換回路14に対して第2変換動作として昇圧動作を行わせ、導電路42に上記目標値の電圧を出力させるように制御する。制御部16は、蓄電部12によって導電路45に印加される電圧(蓄電部12の出力電圧)よりも上記目標値が小さい場合には、電圧変換回路14に対して第2変換動作として降圧動作を行わせ、導電路42に上記目標値の電圧を出力させるように制御する。なお、上記の第2変換動作によって導電路42に目標値の電圧が出力されていても、ダイオード71,84を介して電流が流れない限りは、蓄電部12からの電力の消費は抑えられる。
【0055】
制御部16は、上記の第1停止動作を行う場合、例えば電圧変換回路14の動作を停止させる。第1停止動作のときには、スイッチ22は、オフ状態としてもよく、オン状態としてもよい。第1停止動作のときには、スイッチ24は、オフ状態としてもよく、オン状態としてもよい。なお、第1停止動作は、電圧変換回路14を動作させつつ、スイッチ24をオフ状態とする動作であってもよい。
【0056】
第2切替動作は、蓄電部12に基づく電力を第3導電路53に供給する第2供給動作と、蓄電部12から放電回路18を介して第3導電路53へ電力を供給することを停止する第2停止動作とを切り替える動作である。
【0057】
制御部16は、第2供給動作を行う場合、スイッチ20をオン状態にする制御又は電圧変換回路14に対し導電路47に電圧を出力させる制御の少なくともいずれかを行いつつ、放電回路18に放電動作を行わせる。第2供給動作によって導電路44及び第3導電路53に印加される電圧は、電源部91が電力路94に印加する電圧の値よりも少し小さい値であり、第2負荷102を動作させるために必要となる最低電圧よりも大きい値である。
【0058】
次の説明は、電源システム3の動作に関する。
電源システム3は、車載システム2が搭載された車両が動作停止状態(イグニッションスイッチなどの始動スイッチがオフ状態となっている場合)でも、電源部91に基づく電圧(例えば、電源部91の出力電圧と同等の電圧)を電力路94、第1導電路51、第4導電路54に印加する。なお、電源システム3は、上記動作停止状態のときには、上述の第1供給動作や第2供給動作を行わず、蓄電部12から第2導電路52及び第3導電路53へ電力を供給しないように遮断する。この場合、電源部91に基づく適正電圧が第1導電路51及び第4導電路54に印加される正常状態であり、電力制御装置11が第1供給動作及び第2供給動作を行っていなければ、電源部91からの電力に基づき、第1出力路61及び第2出力路62に電力が供給される。
図2にはこの場合の電力供給状態が示されており、上記正常状態であり且つ電力制御装置11が第1供給動作及び第2供給動作を行っていない場合には、
図2に示される矢印のような経路で電力が供給される。
【0059】
電源システム3は、予め定められた所定の開始条件が成立した場合に、電力制御装置11が上記第1供給動作及び上記第2供給動作を開始する。所定の開始条件は、「車両が始動状態になる」という条件であってもよく、「車両が始動してから一定時間経過する」という条件であってもよく、「蓄電部12の出力電圧が所定値以上に達する」という条件であってもよく、その他の条件であってもよい。例えば、電力制御装置11は、車載システム2が搭載された車両が始動状態となった場合(イグニッションスイッチなどの始動スイッチがオン状態となった場合)に所定の開始条件の成立と判定し、第1供給動作及び第2供給動作を開始する。なお、以下の説明では、電力制御装置11が第1供給動作及び第2供給動作を行う期間が通常動作期間であり、電力制御装置11が後述の検出動作を行う期間が検出動作期間である。
【0060】
電力制御装置11が第1供給動作及び第2供給動作を行っている通常動作期間は、第2導電路52には第1供給動作に基づく所定の第1電圧(上記目標値の電圧)が印加され、第3導電路53には第2供給動作に基づく所定の第2電圧(放電回路18からの放電に基づく電圧)が印加される。上記第1電圧と上記第2電圧は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記通常動作期間では、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい場合に、
図3における矢印F1のような経路で電源部91に基づく電力が第1出力路61に供給され、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さい場合には、
図3における矢印F2のような経路で蓄電部12に基づく電力が第1出力路61に供給される。また、通常動作期間は、第4導電路54の電圧が第3導電路53の電圧よりも大きい場合には、
図3における矢印F3のような経路で電源部91に基づく電力が第2出力路62に供給され、第4導電路54の電圧が第3導電路53の電圧よりも小さい場合には、
図3における矢印F4のような経路で蓄電部12に基づく電力が第2出力路62に供給される。このような動作がなされるため、例えば、上記通常動作期間に
図4で示される位置P1において地絡が生じ、電源部91に基づく電圧が第1導電路51及び第4導電路54に印加されなくなったとしても、
図4の矢印F5,F6のような経路で蓄電部12に基づく電力が第1負荷101及び第2負荷102に即座に供給されることになる。また、この場合には、FET74A,74Bがいずれもオフ状態に切り替えられるため、矢印F5の経路で供給される電力が地絡部分に回り込むようなことも抑えられる。
【0061】
更に、電力制御装置11は、所定の検出動作期間に検出動作を行うこともできる。検出動作期間は、予め定められた検出開始条件が成立してから、検出動作が終わるまでの期間である。検出開始条件は、「車両の始動スイッチがオフ状態からオン状態になる」という条件であってもよく、「前回の検出動作の終了から一定期間が経過する」という条件であってもよく、「車両の始動から一定期間が経過する」という条件であってもよく、その他の条件であってもよい。電力制御装置11は、上記の検出開始条件が成立した場合、検出動作を開始する。検出動作は、第1供給動作及び第2停止動作を行っている状態で第3導電路53の電圧を検出する動作である。具体的には、電力制御装置11は、第2導電路52に所定電圧(目標値の電圧)を印加するように第1供給動作を行いつつ、放電回路18から導電路44へ電流を流さないように放電動作の停止(第2停止動作)を継続した状態で、制御部16によって第3導電路53の電圧を検出する。制御部16は、上記検出動作で検出された第3導電路53の電圧が閾値よりも大きければ正常と判定し、上記検出動作で検出された第3導電路53の電圧が閾値よりも小さければ異常と判定する。この判定に用いる閾値は、0よりも大きく、上記目標値よりも小さい値である。電力制御装置11は、上記検出動作において異常と判定した場合、表示機能を有する装置や発音機能を有する装置に対して異常である旨の報知(例えば、車両に搭載された表示器での異常表示やブザーやアラームでの音声報知など)を行わせるように指示してもよい。
【0062】
5.効果の例
電源切替装置5は、電源部91から電力路94を介して供給されるべき電力が途絶えた場合に、蓄電部12からの電力を利用して第1負荷101及び第2負荷102に電力を供給することができる。しかも、電源切替装置5は、第3導電路53の電圧が第2導電路52の電圧よりも低い所定状態である場合に第2導電路52から第3導電路53へ電流が流れることを許容し、所定状態でない場合には第2導電路52から第3導電路53へ電流が流れることを遮断する。つまり、電源切替装置5は、所定状態であるか否かが第3導電路53に反映されるため、第3導電路53が監視対象とされれば、蓄電部12からの電力供給を監視する上で有利である。
【0063】
電源切替装置5は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも大きい場合にはスイッチ部74をオン状態とすることで、電源部91に基づく電力を、損失を抑えて第1出力路61に供給することができる。一方で、電源切替装置5は、第1導電路51の電圧が第2導電路52の電圧よりも小さくなった場合には、蓄電部12に基づく電力を、第1ダイオード71を介して第1出力路61に即座に供給することができる。
【0064】
電源切替装置5は、第2切替部80を有するため、電源部91に基づく電源電圧が相対的に高い場合(具体的には、第4導電路54の電圧が第3導電路53の電圧よりも大きい場合)には、電源部91に基づいて第2出力路62に電力を供給することができる。一方で、失陥等によって電源電圧が相対的に低下した場合(具体的には、第4導電路54の電圧が第3導電路53の電圧よりも小さい場合)には、蓄電部12に基づいて即座に第2出力路62に電力が供給される。電源切替装置5は、このような機能を、第2切替部80の存在によって簡易に実現することができる。
【0065】
電源切替装置5は、蓄電部12に基づく電力を別々の経路(第2導電路52及び第3導電路53の各々)に出力することができ、各経路への出力を個別に切り替えることができる。しかも、この電源切替装置5は、一方の経路(第3導電路53)を出力と監視に兼用して、他方の経路(第2導電路52)からの出力が適正になされているかを確認することができるため、蓄電部12からの電力供給が適切になされているか否かの監視を、より簡易な構成で実現することができる。
【0066】
<他の実施形態>
本開示は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態は、次のように変更されてもよい。
【0067】
上述された実施形態では、蓄電部12が電源切替装置5の一部であったが、蓄電部12が電源切替装置5の外部に設けられていてもよい。
【0068】
上述された実施形態では、第1装置10が電源切替装置5の一部であったが、第1装置10が電源切替装置5の外部に設けられていてもよい。
【0069】
上述された実施形態では、素子部として第1ダイオード71が例示されたが、素子部は、比較回路72からLレベルの電圧信号が出力されているときにオン動作して第2導電路52と第1出力路61との間を導通させ、Hレベルの電圧信号が出力されているときにオフ動作して第2導電路52と第1出力路61との間を遮断するスイッチであってもよい。
【0070】
上述された実施形態では、第2切替部の一例として第2切替部80が例示されたが、第2切替部が第1切替部70と同様に構成されていてもよい。上述された実施形態では、第1切替部の一例として第1切替部70が例示されたが、第1切替部が第2切替部80と同様に構成されていてもよい。
【0071】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
2 :車載システム
3 :車載用電源システム
5 :電源切替装置
10 :第1装置
11 :電力制御装置
12 :蓄電部
14 :電圧変換回路
16 :制御部
18 :放電回路
20 :スイッチ
22 :スイッチ
24 :スイッチ
26 :ダイオード
28 :ダイオード
30 :電圧検出部
31 :抵抗
41 :導電路
42 :導電路
43 :導電路
44 :導電路
45 :導電路
46 :導電路
47 :導電路
48 :導電路
50 :第2装置
51 :第1導電路
52 :第2導電路
53 :第3導電路
54 :第4導電路
61 :第1出力路
62 :第2出力路
70 :第1切替部
71 :第1ダイオード(ダイオード、素子部)
72 :比較回路
74 :スイッチ部
74A :FET
74B :FET
80 :第2切替部
82 :第2ダイオード
83 :第3ダイオード
84 :第4ダイオード(ダイオード、遮断部)
91 :電源部
94 :電力路
101 :第1負荷
102 :第2負荷