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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133406
(43)【公開日】2024-10-01
(54)【発明の名称】眼科デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
A61F9/007 130E
A61F9/007 170
A61F9/007 130D
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024118639
(22)【出願日】2024-07-24
(62)【分割の表示】P 2021522515の分割
【原出願日】2019-10-16
(31)【優先権主張番号】62/750,151
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518224358
【氏名又は名称】ニュー ワールド メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリク、ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポーティアス、エリック
(72)【発明者】
【氏名】メンドーサ、カルロス、エイ.
(57)【要約】
【課題】緑内障又は他の眼の症状の治療で使用されるように構成された眼科デバイス。
【解決手段】カニューレ遠位端、ルーメン、及びルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、流体を送達するように構成されている、カニューレと、カニューレの周囲に配設されておりスリーブ遠位端を有するスリーブと、ハンドル遠位端においてスリーブ及びカニューレに連結されているハンドルであって、アクチュエータを有する、ハンドルと、アクチュエータに連結されており流体を圧送するように構成されている内部機構であって、入口ポート、駆動部材、プランジャ、後方シール、ボア・チューブ、及び、前方シールを有する、内部機構と、を備える、眼科デバイス。
【選択図】図12A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科デバイスであって、
カニューレ遠位端、ルーメン、及び前記ルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、流体を送達するように構成されている、カニューレと、
前記カニューレの周囲に配設されておりスリーブ遠位端を有するスリーブと、
ハンドル遠位端において前記スリーブ及び前記カニューレに連結されているハンドルであって、アクチュエータを有する、ハンドルと、
前記アクチュエータに連結されており前記流体を圧送するように構成されている内部機構であって、
ハンドル近位端上に配設されている入口ポート、
前記アクチュエータに連結されている駆動部材であって、複数の駆動歯を有する、駆動部材、
前記駆動部材に連結されているプランジャであって、複数のプランジャ歯を備え、前記駆動部材の回転が、前記アクチュエータが押されていない位置から押された位置へと移動するとき、前記プランジャを前記ハンドルの長手軸線に沿って遠位方向に移動させる力を提供するように構成されており、前記プランジャの移動によって、前記流体が前記ハンドル及び前記カニューレの中で遠位方向に移動され、前記流体の一部が前記1つ又は複数のオリフィスから放出される、プランジャ、
前記プランジャの近位端に結合され、前記入口ポート内に配設された後方シールであって、前記デバイスのプライミング中に前記プランジャから前記流体が漏れないように構成された後方シール、
前記プランジャの遠位端に摺動可能に結合されたボア・チューブ、及び、
前記プランジャの前記遠位端に結合され、前記ボア・チューブ内に完全に配設された前方シールであって、前記前方シールは、前記ボア・チューブを通る近位方向への前記流体の逆流を連続的に防止するように構成された、前方シールを有する、内部機構と、を備える、
眼科デバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記ハンドル上に位置付けられており使用者の力が加わると前記押されていない位置から前記押された位置へと移動可能な、押しボタンを含み、
前記押されていない位置から前記押された位置へと前記押しボタンが移動するとき、前記押しボタンは、前記駆動部材の駆動回転方向への回転を付勢するように構成されている、
請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項3】
前記アクチュエータに連結されているリセットばねを更に備え、前記リセットばねは前記押しボタンを前記押された位置から前記押されていない位置へと戻るよう付勢するように構成されている、請求項2に記載の眼科デバイス。
【請求項4】
前記駆動部材は、前記プランジャの一部に連結されており、前記駆動部材の前記駆動回転方向への回転によって前記プランジャが前記遠位方向へと前進される、請求項2に記載の眼科デバイス。
【請求項5】
前記内部機構は駆動軸を介して前記駆動部材に連結されているトリガ・ギアを更に備え、
前記トリガ・ギアは複数のトリガ歯を備え、
前記アクチュエータは複数のアクチュエータ歯を備え、
前記押しボタンの前記押された位置への移動は、前記押しボタンをアクチュエータ軸を中心として回転させて、これにより前記アクチュエータ歯を前記トリガ歯に沿って移動させ、前記トリガ・ギアを前記駆動回転方向へと移動させることを含み、前記トリガ・ギアの前記移動により前記駆動軸を介して前記駆動部材も前記駆動回転方向に移動される、
請求項2に記載の眼科デバイス。
【請求項6】
前記スリーブは前記アクチュエータに動作可能に連結されており、
前記押しボタンの前記アクチュエータ軸を中心とした前記回転により前記スリーブが前記カニューレ遠位端から引き戻され、この結果、前記スリーブが引き戻された近位位置にある間に前記流体が前記カニューレ遠位端に送達される、
請求項5に記載の眼科デバイス。
【請求項7】
前記内部機構は、前記トリガ・ギアに連結されており、前記トリガ・ギアと前記駆動軸との一定送りする構成(indexing configuration)での係合を提供するように構成されている、一方向クラッチを更に備え、前記押しボタンが前記押されていない位置へと戻る移動の間、前記一方向クラッチは、前記駆動軸及び前記駆動部材を更に移動させることなく前記トリガ・ギアが前記駆動回転方向とは反対の方向に回転できるようにするべく、前記トリガ・ギアを前記駆動軸から係脱するように構成されている、請求項5に記載の眼科デバイス。
【請求項8】
前記内部機構は前記プランジャの遠位端に連結されている一方向弁を更に備え、前記一方向弁は、プライミング動作中に前記遠位方向への流体流れを可能にするように、及び、前記プランジャの前記遠位端を越える前記流体の前記近位方向への逆流を防止するように構成されている、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項9】
前記内部機構は、前記入口ポートに連結されているシリンダを更に備え、前記シリンダは前記プランジャの前記近位端を摺動式に受け入れるように構成されている、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項10】
前記プランジャの前記近位端は、前記アクチュエータを押すごとに、その間前記シリンダ内で前記遠位方向に摺動するように構成されており、
前記後方シールはアクチュエータを設定された回数だけ押した後で前記シリンダとの封止係合部から係脱するように構成されており、これにより前記眼科デバイスが再びプライミング可能になることが防止される、
請求項9に記載の眼科デバイス。
【請求項11】
前記眼科デバイスは、前記シリンダからの前記後方シールの係脱後に流体の体積を維持するように構成されており、前記維持されている流体の体積は残りの設定された回数だけアクチュエータを押した後で分注される、請求項10に記載の眼科デバイス。
【請求項12】
前記後方シールは、前記眼科デバイスの所定回数の作動後に前記注入ポートから外れ、前記注入ポートを通して追加された前記流体が前記ボア・チューブ内に保持されることを防止するように構成される、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項13】
前記内部機構は、前記プランジャの遠位端に結合された一方向弁をさらに備え、前記一方向弁は、プライミング動作の間、前記遠位方向への前記流体の流れを可能にし、前記プランジャの前記遠位端を越える前記流体の前記近位方向への逆流を防止するように構成されており、前記一方向弁は、前記後方シールが前記入口ポートから外れた後、前記プランジャを封止し、前記眼科デバイスのさらなる作動を提供するように構成されている、請求項12に記載の眼科デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に医療デバイス及び医療手技に関し、より詳細には眼科デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は眼内圧(IOP:intraocular eye pressure)の上昇の結果生じる疾患である。IOPは、眼の自然な排水(例えば、眼の体液の排水)が妨げられる、低下する、又はそれ以外で閉塞されるときに上昇する可能性がある。眼の水晶体の前方(例えば直上)の腔は、房水と呼ばれる粘性流体で満たされている。眼の中の房水の連続的な流れによって、眼の血管のない部分(例えば、角膜及び水晶体)に栄養が供給される。この房水の流れはまた、これらの組織から不要物(例えば、異物の破片)を除去する。健康な眼では、毛様体の上皮細胞から新しい房水が分泌されるときに、房水の液流が前眼房から線維柱帯網を通ってシュレム管内へと排出される。排出された房水はシュレム管から静脈流に進入し、眼から出て行く静脈血と一緒に運ばれる。眼の自然の排水機構(例えば、シュレム管及び/又は線維柱帯網)が適切に機能しなくなると、IOPが上昇し出す。
【0003】
本明細書に組み込まれその一部を構成している添付の図面は、本開示の例示の態様を図示しており、本説明とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】眼科デバイスの実例を示す斜視図である。
図2A】スリーブによって包囲されている内部カニューレを有する眼科デバイスの実例の遠位端を示す斜視図であり、スリーブによって覆われている内部カニューレを示す。
図2B】スリーブによって包囲されている内部カニューレを有する眼科デバイスの実例の遠位端を示す斜視図であり、スリーブから突出している内部カニューレを示す。
図3A】眼組織と相互作用する引き戻し可能なスリーブを示す長手断面図であり、遠位位置にあるスリーブを示す。
図3B】眼組織と相互作用する引き戻し可能なスリーブを示す長手断面図であり、引き戻された近位位置にあるスリーブを示す。
図4A】眼組織と相互作用するスリーブの実例を示す側面図であり、シュレム管を覆う線維柱帯網及びシュレム管の近傍のより剛性の高い解剖学的構造に対して当接するようなサイズとされたスリーブの実例を示す。
図4B】眼組織と相互作用するスリーブの実例を示す側面図であり、線維柱帯網をシュレム管内へと押し潰すようなサイズとされたスリーブの実例を示す。
図5A】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの斜視図である。
図5B】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの上面図である。
図5C】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの側面図である。
図6A】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの斜視図である。
図6B】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの上面図である。
図6C】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの側面図である。
図7A】眼科デバイスに含めることのできるカニューレの実例の様々な図であり、カニューレの斜視図である。
図7B】眼科デバイスに含めることのできるカニューレの実例の様々な図であり、図7Aで実施されているカニューレの上面図である。
図7C】眼科デバイスに含めることのできるカニューレの実例の様々な図であり、図7Aで実施されているカニューレの側面図である。
図8】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す長手断面図である。
図9A】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面図であり、開始位置にある機構を示す。
図9B】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面図であり、中間位置にある機構を示す。
図9C】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面図であり、解放位置にある機構を示す。
図10】眼科デバイスの実例を示す長手断面図である。
図11A】流体を注入するように構成されている機構の実例を示す切断図であり、リンク機構が取り外された状態の機構のナット及びポンプを示す。
図11B】流体を注入するように構成されている機構の実例を示す切断図であり、初期位置にあるリンク機構を示す。
図11C】流体を注入するように構成されている機構の実例を示す切断図であり、作動された位置にあるリンク機構を示す。
図12A】眼科デバイスの実例の斜視図である。
図12B図12Aの眼科デバイスの内部構成要素の斜視図である。
図12C図12Aの眼科デバイスの内部構成要素の断面図である。
図12D】構成要素の作用を示す図12Aの眼科デバイスの内部構成要素の様々な部分図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図12E】構成要素の作用を示す図12Aの眼科デバイスの内部構成要素の様々な部分図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図12F】構成要素の作用を示す図12Aの眼科デバイスの内部構成要素の様々な部分図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図13A】眼科デバイスの実例を示す長手断面図である。
図13B図13Aの眼科デバイスの内部構成要素の斜視図である。
図13C図13Aの眼科デバイスの内部構成要素の断面図である。
図13D】構成要素の作用を示す図13Aの眼科デバイスの内部構成要素の部分断面図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図13E】構成要素の作用を示す図13Aの眼科デバイスの内部構成要素の部分断面図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図13F】構成要素の作用を示す図13Aの眼科デバイスの内部構成要素の部分断面図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図13G】構成要素の作用を示す図13Aの眼科デバイスの内部構成要素の部分断面図であり、作動中の構成要素の動作を示す。
図14A】眼科デバイスとプライミング用シリンジの組立体の実例の斜視図である。
図14B図14Aの内部構成要素の部分図であり、プライミング中の構成要素の動作を示す。
図14C図14Aの内部構成要素の部分図であり、プライミング中の構成要素の動作を示す。
図15A】眼科デバイスを用いて行うことのできる眼科手技の実例を示す切断図であり、前眼房に進入する眼科デバイスを示す。
図15B】眼科デバイスを用いて行うことのできる眼科手技の実例を示す切断図であり、シュレム管に流体を注入する眼科デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明は例示の説明的なものに過ぎず、特許請求するような特徴を制約するものではない。本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、又はこれらの他の変形は、非排他的な包含を含むことを意図しており、この場合、列挙された要素を備えるプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素を含むだけでなく、明示的に列挙されていないか又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に内在している、他の要素を含み得る。更に、用語「例示の(exemplary)」は本明細書では「理想的な(ideal)」ではなく「実例(example)」の意味で使用されている。本明細書で使用される場合、用語「約」、「実質的に」、及び「ほぼ」は、述べられている値の+/-5%以内の値の範囲を示す。用語「遠位の」は、デバイスを対象者の体内に導入するときに使用者から最も遠くにある部分を指す。対照的に、用語「近位の」は、デバイスを対象者の体内に設置するときに使用者の最も近くにある部分を指す。
【0006】
以下で検討する実施例は、緑内障又は他の眼の症状の治療で使用されるように構成された眼科デバイスなどの医療デバイス、及び関連する使用方法に関する。いくつかの実施例によれば、眼科デバイスはカニューレを含む遠位端を有し得る。カニューレは、内側ルーメンと、シュレム管などの患者の標的部位内に粘弾性流体又は他の物質を送達するように構成されている、1つ又は複数の流出オリフィスと、を含み得る。
【0007】
いくつかの実施例によれば、カニューレの先端部は、カニューレの外面の周囲に配設されているカラーを含み得る。カラーは、カニューレの位置決めを容易にする又は眼に関する流体輸送を容易にするべく、患者の眼の房水流出経路内の眼内組織と相互作用するように構成され得る。例えば、カラーは、カニューレのオリフィスをシュレム管の中又は近くに位置決めするのを容易にする構造を提供するための、固定されている又はオリフィスよりも近位にある位置まで移動可能な、半径方向に突出したリップを含み得る。
【0008】
いくつかの実施例によれば、カラーは、引き戻し可能なスリーブの一部として実装され得る。スリーブはカニューレの周囲に配設することができ、カニューレに対して後退することで、吸引効果によって患者組織を引っ張るように構成することができる。例えば、ボタン又はデバイスのハンドル上に配設された他のアクチュエータ構成要素の操作は、スリーブを引き戻すことによって、カニューレの周囲に沿って線維柱帯網を引っ張りカニューレで線維柱帯網を貫通させるとともに、シュレム管を開いてその中での流体送達を容易にするように、構成され得る。
【0009】
いくつかの実施例によれば、機構は、比較的素早く鋭いスナップ動作で、スリーブを引き戻す、又はそれ以外で眼科デバイスの構成要素を移動させるように、構成され得る。そのような動作は例えば、カニューレによる患者の組織の吸引及びその貫通を容易にし得る。追加として又は別法として、機構は、スリーブの引き戻しと協調してカニューレを通して流体又は物質を注入するように、ポンプを動作させることができる。
【0010】
これらの及び他の実施例が、図1図9Bに示す特定の実例と関連させて以下で検討されている。しかしながら、当業者は様々な修正及び代替の用途を認識するであろう。したがって、これらの図及び上で提供した説明に関して提供される詳細な説明は限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ本開示と関連付けられる様々な概念を説明する役割を果たす。
【0011】
図1は医療デバイスの実例を示し、より詳細には、眼科デバイス10の実例を示す。示されている実例では、眼科デバイス10は、シュレム管又は患者の眼の他の眼内部位内への物質の注入を容易にするべく眼組織と相互作用するように構成されている、医療器具又は最低侵襲性の外科用器具として構成されている。ただし、眼科の器具及び手技に言及して本明細書の実例が記載されているが、眼科デバイス10の教示が様々な他の医療及び非医療用途のいずれにも容易に適用又は適合され得ることが、諒解されるであろう。それらには、例えば、患者の眼以外の患者組織との相互作用を含む他の医療手技、及び流体の注入又は輸送を含む他の非医療用途を含めることができる。
【0012】
図1を参照すると、眼科デバイス10は、接眼構成要素(ocular component)21に連結されているハンドル12を含み得る。接眼構成要素21は一般に、眼組織と相互作用する、及び/又は眼内の腔内、例えば患者の眼の前眼房に挿入されるように、構成されている。接眼構成要素21は、流体送達、組織操作、及び/又は患者の眼との他の相互作用を容易にするように構成され得る。
【0013】
図1の実例に示すように、接眼構成要素21は、ハンドル12の遠位端から突出しており長手中心軸線Cを定める、長尺の管状部材を含み得る。接眼構成要素21は、作動長さL、及び、角膜切開部又は患者の眼の表面の他の切開部を通した前眼房内への挿入を可能にする直径を有し得る。本明細書に記載する作動長さLは、ハンドル12の遠位端から接眼構成要素21の遠位端まで延びる、ハンドル12から突き出ている接眼構成要素21の露出された長さ又は距離と定義できる。作動長さLは例えば、約16ミリメートル(mm)から40mmの間の範囲、又はより特定的には約18mmであり得るが、様々な実装形態においてこれらの実例から外れる他の寸法が好適であり得ることが企図される。直径は作動長さLに沿って変化しても又は作動長さL全体にわたって不変であってもよく、例えば、約100マイクロメートル(μm)から1000μmの範囲、又はより特定的には約700μmとすることができるが、様々な実装形態においてこれらの実例から外れる他の寸法が好適であり得ることが企図される。図1の実例に示すように、接眼構成要素21は、(直線状の中心軸線Cを定める)直線状の幾何形状で実装され得るか、又は、接眼構成要素21は、湾曲した及び/若しくは屈曲した幾何形状で実装され得る。
【0014】
図1を引き続き参照すると、ハンドル12は、眼科デバイス10の本体として実装することができ、使用者又は他の操作者の手によって操作されるように構成され得る。例えば図1に示すように、ハンドル12は、遠位端及び遠位端の反対側の近位端を有する、長尺の管状部材として実装され得る。このことにより、例えば、外科医が鉛筆のように握ることでハンドル12の把持又は操作が容易になり得るが、ピストル形状の構成及び/又はフィンガーループなどの他の形状及び構成を有してハンドル12が実装され得ることが企図される。ハンドル12の外面は、使用者がハンドル12を容易に掴めるように起伏のある形状及び/又はテクスチャを有する表面(例えば、ぎざぎざの、リブ状の、又は他の表面テクスチャ)を有する、握り13を含み得る。ハンドル12の外面が起伏のない真っ直ぐな形状及び/又は平滑な外面を有する実装形態も企図される。
【0015】
ハンドル12はアクチュエータ38を含み得るか、又はこれに連結され得る。デバイスを使用する眼科手技の実施を容易にする1つ又は複数の動作機能を提供するために、アクチュエータ38を、眼科デバイス10の1つ又は複数の移動する部品に連結することができる。例えば、アクチュエータ38は、接眼構成要素21の1つ若しくは複数の部品をハンドル12から独立して移動させる、及び/又は、接眼構成要素21の2つ以上の移動する部品を互いから独立して移動させるように構成され得る。追加として又は別法として、アクチュエータ38は、接眼構成要素21を通して流体を輸送するための、ポンプ、プランジャ、及び/又は圧縮機構を作動させるように構成され得る。アクチュエータ38は例えば、そのような部品を直接、又はハンドル12内に配設されている内部機構を介して移動させるように構成され得る。
【0016】
図1に示す実例では、アクチュエータ38は、ハンドル12上に配設されている、押されていない位置と押された位置の間で移動可能な機械的な押しボタンとして実装されるか、さもなければこれを含む。押しボタンはハンドル12の側面上に配設されて示されているが、このことにより例えば、外科医又は他の使用者の手が手技中にハンドル12を掴むときに、その使用者が自身の親指及び/又は人差し指を用いて作動を行うことが容易になり得る。追加として又は別法として、押しボタンが例えばハンドルの近位端などの他の場所に配設されている実装形態が企図される。押しボタンの代わりに又はそれに加えて、アクチュエータ38は、スライダ、ローラホイール、スクイーズバルブ、及び/又は眼科デバイス10の移動する部品を作動させるために使用者若しくは他の操作者が操作可能な任意の他の好適な機構を含む実装形態も企図される。
【0017】
図2A及び図2Bは、眼科デバイス10に含めることのできる接眼構成要素21の実例を示す拡大図である。図2A及び図2Bは、図1に示すような接眼構成要素21の遠位部分27を示す。
【0018】
図2A及び図2Bに示す実例では、接眼構成要素21は、カニューレ14と、スリーブ260(本明細書では「シース」と呼ぶ場合もある)とを含む。スリーブ260はカニューレ14の周囲に配設されており、カニューレ14はスリーブ260内に配設されている。カニューレ14及びスリーブ260は例えば、実質的に管状の構成要素として各々実装することができ、この場合、カニューレ14はスリーブ260と同軸に配設され、カニューレ14及びスリーブ260はいずれも中心軸線Cを中心として配設される。カニューレ14及び/又はスリーブ260は例えば、接眼構成要素21の作動長さLと等しい作動長さを各々有し得る。
【0019】
カニューレ14及びスリーブ260は、互いに対して相対移動するように構成され得る。例えば図2A及び図2Bに示すように、カニューレ14及びスリーブ260は、カニューレ14の遠位端がスリーブ260によって実質的に覆われているか又は包囲されている第1の構成(図2Aに示す)と、カニューレ14の遠位端がスリーブ260の遠位端から遠位方向に突出している第2の構成(図2Bに示す)との間で、互いに対して移動可能であり得る。相対移動は例えば、カニューレ14及びハンドル12から独立した、スリーブ260の近位方向への引き戻しによって、並びに/又は、スリーブ260及びハンドル12から独立した、カニューレ14の遠位方向への配備によって、達成され得る。アクチュエータ38は、カニューレ14及び/又はスリーブ260をハンドル12の固定された構成要素に対して移動させるように、カニューレ14及び/又はスリーブ260に動作的に連結され得る。
【0020】
カニューレ14は、流体又は他の物質を輸送するように構成され得る。例えば、カニューレ14は、ヒアルロン酸ナトリウム又はコンドロイチン硫酸などの、粘弾性流体を注入するように構成され得る。粘弾性流体は、組織構造を拡張させて互いから分離させることで房水の流路を再び開くか又は拡張することにより、適切な排出及び眼圧緩和のための十分な空間を提供するのに役立つ、非常に柔軟なゲル状の物質である。粘弾性流体はまた、出血している構造を拡張させて互いから分離させることによって視野の妨害を解消して、可視化を改善することができる。幹細胞、薬剤、気体(例えば、SF6又はC3F8)、及び/又は染料(例えば、トリパンブルー染料)を送達するためにカニューレ14を利用できることもまた企図される。注入される幹細胞は例えば、眼内の健康な組織の成長を開始させる(例えば、それにより健康な線維柱帯網を発達させて、そこを通る房水の排出を向上させる)ことができる。注入される染料は例えば、線維柱帯網を通って流れて、線維柱帯網に閉塞されたままの、押し潰されたままの、又はそれ以外で房水の流れを妨げるエリアが存在する場合に、それがどのエリアであるかを判定できるように、房水の流体流の可視化を向上させることができる。更に、物質の注入に関しての実例が記載されているが、カニューレ14は追加として又は別法として、物質を引き出す、例えば組織、血液、房水、又は他の物質をシュレム管又は眼の他の部分から引き出すために利用できることが企図される。
【0021】
図2Bに示すように、カニューレ14は、その遠位端に丸められた、鋭くしていない、又はそれ以外の外傷をもたらさない先端部を有する、先鋭でないマイクロカニューレとして実装され得る。カニューレ14がその遠位端に鋭い針又は外傷をもたらすような先端部を有して実装される実装形態も企図されるが、先鋭でないカニューレは、周囲の組織の望まれない外傷のリスクを低減しながら、線維柱帯網などの多孔性の患者組織の貫通を容易にすることができる。
【0022】
カニューレ14は、カニューレ14の遠位部分上に配設されている、例えばカニューレ遠位端上又は近くに配設されている、1つ又は複数のオリフィス32を含み得る。1つ又は複数のオリフィス32は、流体又は他の物質を輸送するように構成されている1つ又は複数の流体輸送ポートを提供し得る。例えば、1つ又は複数のオリフィス32は、粘弾性物質を患者の眼のシュレム管に送達するための流出ポートを提供するように構成され得る。図2Bの実例に示すように、1つ又は複数のオリフィス32はカニューレ14の側面上に配設することができ、このオリフィス32は、カニューレ14の側壁を中心軸線Cを横切る方向に貫通する、1つ又は複数の流体チャネルを提供し得る。別法として、オリフィスが中心軸線Cに沿って、並びに/又は、意図する標的部位から及び/又は意図する標的部位へと流体を輸送するのに適した任意の他の1つ若しくは複数の位置に配設されている、他の実装形態が企図される。オリフィスは各々、30μmから70μmの間、又は例えば約50μm若しくは約60μmの直径を有し得るが、様々な実装形態においてこれらの範囲から外れる他のオリフィス直径を好適に使用できることが企図される。カニューレ14は、カニューレ14の遠位部分上に配設されている1つ又は複数の溝34を含み得る。
【0023】
例えば図2A及び図2Bに示すように、スリーブ260とカニューレ14の間の相対移動は、スリーブ260でオリフィス32のうちの1つ又は複数を選択的に覆う及び曝露させるように構成され得る。例えば、図2Aに示す第1の構成にあるとき、スリーブ260の遠位端を、オリフィス32を覆うか又は取り囲むように、オリフィス32よりも遠位の第1の軸方向位置に配設することができ、図2Bに示す第2の構成にあるとき、スリーブ260の遠位端を、スリーブ260の遠位端の外側でオリフィス32を露出させるように、オリフィス32よりも近位の第2の軸方向位置に配設することができる。
【0024】
眼科デバイス10は、カニューレ遠位端に又はその近くに、カニューレ14の先端部の周囲に沿って配設されているカラー299を更に含み得る。例えば図2A及び図2Bに示すように、カラー299はスリーブ260の一体の部分であってもよいか、さもなければスリーブ遠位端においてスリーブ260に固定的に連結されていてもよく、この場合、カラー299及びカニューレ14が互いに対して移動可能となるように、カラー299はスリーブ260と一緒に移動し得る。カラー299は、カニューレ14の設置を容易にするよう患者組織と相互作用するように構成されている、カニューレ14の周囲に沿って(例えば、カニューレ14の外径上に又は外径に沿って)配設された構造を提供し得る。例えば、カラーの遠位端にあるカラー299の面451は、線維柱帯網を操作する、並びに/又は、線維柱帯網及び/若しくはシュレム管の近傍の他の組織に当接する誘導制約部を提供するように構成され得る。この誘導用制約部によって、例えば、シュレム管内の所望の貫通深さへのオリフィス32の設置が容易になり得る。
【0025】
図2A及び図2Bに示す実例では、カラー299は、スリーブ260の遠位部分の一部として含まれている。スリーブ260及びカニューレ14が図2Bに示す第2の構成となっているとき、カラー299の面451は、半径方向外向きにカニューレ14の外径から離れる方へと突出しているリップを提供する。リップは、デバイスが第2の構成にあるときに、カニューレ14の貫通深さがカニューレ14の遠位端とリップ(又は面451又はカラー299の遠位端)の間の所定の距離によって制約又は誘導されるように、線維柱帯網又はシュレム管の近傍の他の組織に当接し得る。
【0026】
図3A及び図3Bは、眼組織と相互作用する接眼構成要素21の実例の遠位部分27を示す長手断面図である。図3Aは遠位位置にあるスリーブ260を示し、図3Bは、スリーブ260が矢印で示すような近位方向99に引き戻されている、引き戻された位置にあるスリーブ260を示す。
【0027】
図3A及び図3Bに示すように、スリーブ260の遠位端にあるカラー299は、患者組織に接触するように構成することができ、スリーブ260は、カニューレ14に沿って患者組織が引っ張られるよう、近位方向に後退するように構成することができる。例えば、スリーブ260は、スリーブ260及び/又はカラー299が線維柱帯網86に押し付けられたときに、スナップ動作(すなわち鋭く素早い動作)を用いて近位方向99に後退させて、患者の眼の線維柱帯網86に対する吸引微小環境を生み出すように構成され得る。スリーブ260はそのスナップ動作を介して線維柱帯網86を近位方向に引っ張り拡張することができるが、このことはまた、線維柱帯網86がシュレム管の前壁から跳ね上がるときに、シュレム管80を拡張する役割も果たし得る。線維柱帯網86を引っ張っているときに、カニューレ14の遠位端は所定位置に残ったままであり、この結果、線維柱帯網86はカニューレ14に沿って移行し、カニューレ14は線維柱帯網86を穿孔又は貫通し、オリフィス32はシュレム管80の内部の所定位置に残される。線維柱帯網86が引っ張られシュレム管80内にオリフィス32が位置付けられるとき、眼科デバイス10は、オリフィス32に流体連結しているカニューレ14内のルーメン95を介して、シュレム管80内に物質を送達するように構成され得る。スリーブ260の近位方向への引き戻しは、シュレム管80を拡張する、並びに/又は、それ以外でカニューレ14による貫通を介した流体送達及び/若しくは治療を容易にするように、有利に機能し得る。物質の注入がいくつかの実装形態では、スリーブ260が所定位置に留まっている間にカニューレ14を遠位方向に配備することによって、カニューレ14をスリーブ260とともに近位方向に若しくは遠位方向に移動させることによって、及び/又は他の技法によって行われ得ることもまた、企図される。
【0028】
図4A及び図4Bは、眼組織と相互作用するスリーブ260の実例を示す長手側面図である。図4Aは、スリーブ260の遠位端に実装され得るサイズ設定の第1の実例を示し、図4Bは、スリーブ260の遠位端において実装され得るサイズ設定の第2の実例を示す。図4A及び4Bは、線維柱帯網86及びシュレム管80、並びに他の近傍の眼の解剖学的構造、例えば強膜岬71、毛様筋69、及びシュワルベ線67を示す。
【0029】
図4A及び図4Bの両方に示すように、スリーブ260の遠位端のサイズ(又は面451若しくはカラー299の遠位端のサイズ)は、遠位端が眼内法(ab interno approach)(前眼房内からのアプローチ)を用いて虹彩角膜角に挿入され線維柱帯網86に対して当接し接触することが可能になるように、十分に小さくすることができる。図4Aに示す実例では、スリーブ260の遠位端のサイズは、線維柱帯網86を押すように遠位端を前進させるときに、線維柱帯網86がシュレム管80内で押し潰されることを実質的に防止するように、遠位端が線維柱帯網86及び強膜岬71などの線維柱帯網86よりも剛性の高い近傍の解剖学的構造の両方に対して当接するよう構成されるように、十分大きくなっている。図4Bに示す実例では、スリーブ260の遠位端のサイズは、例えば強膜岬71とシュワルベ線67の間の領域において、遠位端が線維柱帯網86に押し付けられるときに、遠位端がシュレム管80内で線維柱帯網86を押し潰すよう構成されるように、十分小さくなっている。いずれの実例においても、線維柱帯網86に対して当接するとき、遠位端は、線維柱帯網86及び/又は他の眼組織、並びに周囲の流体、例えば房水及び/又は粘弾性物質(例えば、眼科用粘弾性物質(OVD:ophthalmic viscoelastic device))に対する、完全な又は部分的なシールを形成するように構成され得る。眼科デバイス10はその場合、図3A及び図3Bに関して上記したように、線維柱帯網86を引き寄せるためにスリーブ260を引き戻すように構成され得る。更に、遠位端が、長辺が図4Aに示すもののようなサイズになっており、短辺が図4Bに示すもののようなサイズとなっている、細長い断面形状を有し得ることが企図される。長辺は、線維柱帯網86が眼の水晶体の周囲に延在する方向を横切るように長辺が配向されているとき、線維柱帯網86を押すように前進させると剛性の高い解剖学的構造に接触するように構成することができ、短辺は、長辺が線維柱帯網86が延在する方向と整列されているときに、シュレム管80内で線維柱帯網86を押し潰すように構成することができる。
【0030】
図5A図5Cは、カラー299を含むスリーブ260の実例の遠位部分の様々な図である。図5Aはスリーブ260の斜視図であり、図5B図5Aで実施されているスリーブ260の上面図であり、図5C図5Aで実施されているスリーブ260の側面図である。
【0031】
例えば図5A図5Cに示すように、カラー299(例えば、面451)及びスリーブ260の遠位端は、細長い断面形状(例えば、卵形、楕円形、角を丸めた矩形、又は他の細長い形状)を有し得る。細長い形状は、1対の対向する長辺93及び1対の対向する短辺96を有する。長辺93は細長い断面の長軸85を定め、細長い断面は長軸85に沿って長い外径DLONGを有する。短辺96は細長い断面の短軸89を定め、細長い断面は短軸89に沿って、長い外径DLONGよりも小さい短い外径DSHORTを有する。例えば図5Bに示すように、カラー299及びスリーブ260の遠位端は、スリーブ260の両側に、スリーブ260の遠位端の対向する短辺に向かって拡開する(又は半径方向外向きに裾広がりになっている)、1対の拡開する外面79を含み得る。例えば図5Cに示すように、カラー299及びスリーブ260の遠位端はまた、スリーブ260の両側に、スリーブ260の遠位端の対向する長辺に向かって収束する(又は半径方向内向きにテーパしている)、1対の収束する外面75を含み得る。この結果、長い外径DLONGは近位部分スリーブ260の外径DPROXよりも大きくなり得、一方、短い外径DSHORTは近位部分の外径DPROXよりも小さくなり得る。スリーブ260の遠位端は、遠位先端部を眼の線維柱帯網及び/又は強膜岬に接触させる又は押し付けることができるように、虹彩角膜角(虹彩と角膜の間に形成される角度)内にフィットするようなサイズとすることができ、長軸85に沿った裾広がりの構成に関する上記した向きは例えば、線維柱帯網及び/又はシュレム管の過圧縮が回避されるように外科医が先端部を適切に設置するための、スリーブ先端部の優先的な向きを示すために有用であり得る。
【0032】
カラー299及び/又はスリーブ260は更に、眼の中に設置したときの可視化を向上させるための光導体として構成され得る。例えば、1つ又は複数の発光ダイオード(LED:light emitting diode)などの光源を、ハンドル12内に配設すること、又はそれ以外で眼科デバイス10上のスリーブ260の遠位端よりも近位に位置付けることができる。光源は、可視光をスリーブ260の側壁中へと結合し、その光を内部全反射(TIR:total internal reflection)によってスリーブ260の側壁を通して、スリーブ260の遠位端又は遠位部分から外へ(例えば面451の外へ)伝播させるように構成され得る。追加として又は別法として、スリーブ260及び/又はカニューレ14の可視化を容易にするために、スリーブ260を透明にすること、又は、1つ若しくは複数の透明な窓を含むことができるが、他の実装形態では、スリーブ260を可視光に対して完全に不透過性にすることが企図される。
【0033】
図6A図6Cは、カラー299を含むスリーブ260の実例の遠位部分の様々な図である。図6Aはスリーブ260の斜視図であり、図6B図6Aで実施されているスリーブ260の上面図であり、図6C図6Aで実施されているスリーブ260の側面図である。例えば図6A図6Cに示すように、カラー299の外面及びスリーブ260の遠位部分の外面は、溝101を更に含み得る。溝101は、OVD又は眼の前眼房内に配設され得る他の周囲流体などの流体に接触する外面の表面積を大きくすることによって、スリーブ260及びカラー299が近位方向に引き戻されるときの吸引効果を向上させることができる。溝101は図6A図6Cでは、スリーブ260の外周に沿って延在し且つスリーブ260の遠位部分にあるカラー299の収束する領域内に配設されている、複数の周方向の溝として示されているが、溝101を他のタイプの表面積増大テクスチャとして実装すること、及び/又は、スリーブの軸方向長さに沿った他の場所に位置付けることが可能であることが企図される。
【0034】
例えば図7A図7Cに示すように、カラー299をカニューレ14に固定的に連結できることもまた企図されている。図7Aはカニューレ14の斜視図であり、図7B図7Aで実施されているカニューレ14の上面図であり、図7C図7Aで実施されているカニューレ14の側面図である。
【0035】
この実例では、眼科デバイス10から、独立的に移動可能なスリーブを省略してもよい。例えば、カラー299をカニューレ14の外側部分の一部として一体に形成してもよく、又は、カラー299がカニューレ14と一緒に移動するように、カラー299をカニューレ14に溶接するか若しくはそれ以外で固定的に取り付けてもよい。固定的に連結されているカラー299は、細長い断面形状、又はスリーブ上で実装されるときのカラー299に関して上記した他の特徴のうちのいずれかを有し得る。例えば図7A及び図7Bに示すように、カラー299の面によってリップを提供することができ、このリップはカニューレ14の遠位部分から半径方向外側に突出し得る。リップはしたがって、上記したように組織と相互作用するための構造を提供し得る。例えば図7Bに示すように、リップの半径方向長さLをカニューレ14の突出部分の軸方向長さLとほぼ等しくすることができるが、他の寸法が好適に使用され得ることが企図される。この実例では、リップ長さLは、リップの半径方向最も外側の表面と、リップが延在する起点となる、カニューレ14の軸方向に突出している区域の半径方向最も外側の表面と、の間の距離によって定められる。カニューレ先端部長さLは、リップから(又は面451若しくはカラー299の遠位端から)カニューレ14の遠位端までの軸方向長さによって定められる。カニューレ14は、カラー299よりも近位の部分の直径が、カラー299よりも遠位の部分におけるよりも大きくなっていてもよい。このことにより、シュレム管又は患者の別の好適な標的部位に挿入できるようにカニューレ14の遠位端の直径を十分に小さくしながら、カニューレ14のその作動長さに沿った剛性又は構造的完全性を有利に高めることができる。図7A図7Cに示す固定されたカラーに関して記載したこれらの寸法又は幾何的特徴はいずれも、カラーがスリーブ260の一部であるか又はそれ以外でカニューレ14に対して移動可能であり且つ図2Bに示すもののような第2の構成で配設されている実装形態において、好適に使用され得ることもまた、企図される。
【0036】
図8は、眼科デバイス10に含めることのできる接眼構成要素21の実例の遠位部分を示す長手断面図である。図8に示す実例では、カニューレ14は、スリーブ260に対して突出した位置で(例えば、図2Bに示すもののような第2の構成で)示されている。カニューレ14は、先端部セグメント151と近位シャフト・セグメント153とを含む、複数のセグメントから構成されている。先端部セグメント151を、例えばレーザ溶接又は任意の他の好適な固着機構によって、近位シャフト・セグメント153に取り付けることができる。先端部セグメント151は内径DSMALLを有し、近位シャフト153は、先端部セグメント151の内径DSMALLよりも大きい内径DLARGEを有する。したがって、カニューレ14を通って延在するルーメン95は、遠位部分161よりも直径の大きい近位部分163を有するようにセグメント化される。このことにより例えば、デバイス内の背圧を下げることができるが、カニューレ14が単一片若しくは一体構造から成る、及び/又は、ルーメン96がカニューレ14にわたって実質的に一定の直径を有する実装形態もまた企図される。
【0037】
図8はまた、図5A図5Cの実例に示すように構成されているカラー299も示しており、ここでは、カラー299はスリーブ260の遠位端に実装されており、スリーブ260の遠位先端部は、スリーブ260の両側に裾広がりになった拡開する外面79を有する、細長い断面を有している。図8の実例に示すように、1つ又は複数のオリフィス32は、カニューレ14の両側に(例えば、カニューレ14の周囲に沿って互いからほぼ180度離れて配向された)1対のオリフィスを含み得る。1対の対向するオリフィスは、オリフィス32がスリーブ遠位端の短辺96に面し且つ拡開する外面79に面するように、遠位先端部の長軸85に沿って整列(カラー299の細長い断面の長軸に沿って整列)され得る。このことにより例えば、裾広がりの又は拡開する表面が、カニューレ14のオリフィスを、注入される流体をシュレム管が延在する方向へと差し向ける向きでシュレム管内に入れるための、インジケータの役割を果たすことが可能になる。移動可能なスリーブ260にカラー299が固定的に連結されている実装形態で示されているが、オリフィス32のこの配向を、カラー299が図7A図7Cの実例におけるようなカニューレ14に固定される実装形態に適用できることもまた、企図される。
【0038】
図9A図9Cは、眼科デバイス10内に含めてスリーブ260を引き戻すために利用することのできる、内部機構301の実例を示す側面図である。内部機構301を例えば、ハンドル12の内部容積内に配設し、アクチュエータ38に連結することができる。
【0039】
図9Aは初期装填状態の内部機構301を示し、図9Bは中間状態の内部機構301を示し、図9Cはスリーブ260の引き戻し中又は引き戻し後の解放状態の内部機構301を示す。図9A図9Cに示す内部機構301は、スリーブ260をカニューレ14に対して及びハンドル12に対して近位方向99に引き戻すために、カムとフォロワのシステムを利用する(スリーブ260、カニューレ14、及びハンドル12は、図9A図9Cでは見えていない)。より詳細には、内部機構301は、捕捉部321に連結されているカム311と、ばね付勢されたフォロワ331と、を含む。フォロワ331は、スリーブ260がフォロワ331と一緒に移動するように、スリーブ260に固定的に連結され得る。捕捉部321はフォロワ331を遠位位置に保持するように構成されており、カム311は、捕捉部321を移動させて、フォロワ331を近位方向99へと解放するように構成されている。カム311を(図1に示すもののような)押しボタンに連結して、この押しボタンによってカム311を移動又は作動できるようにすることができる。
【0040】
図9Aでは、内部機構301は初期状態で示されている。この状態では、フォロワ331(及びスリーブ260)は遠位位置にある。捕捉部321は第1の位置にあり、この位置では捕捉部321は、例えばフォロワ331の近位表面に当接してフォロワ331の近位方向への移動を防止又は制限することによって、フォロワを遠位位置に保持する。捕捉部が第1の位置にありフォロワが遠位位置にある間、ばね335がフォロワ331に近位方向99へのばね力を加える。ばね335は図9A図9Cでは軸方向圧縮ばねとして示されているが、様々な他のばねが好適に使用され得ることが諒解されるであろう。押しボタン(図9Aでは見えていない)はカム311に連結することができ、内部機構301が初期状態にあるときに押されていない位置(例えば、上側の位置)にある。押しボタンに使用者が力を加えることによって、カム311の、枢動点343を中心とした第1のカム回転方向355への回転移動を付勢することができる。カム311が第1のカム回転方向355に回転するとき、カム311は捕捉部321に対抗して回転して、例えば捕捉部の第1の位置から離れて捕捉部の第2の位置に向かう方向373へと屈曲するように、捕捉部321の移動を付勢する。
【0041】
図9Bでは、内部機構301は、上記の力が加わっているときの中間状態で示されている。図9Bに示すように、カム311が第1の回転方向355へと回転すると、カム311とフォロワ331の間に間隙381が形成され得る。例えば、カム311が捕捉部321に対抗して回転するとき、捕捉部321は、カム311がフォロワ331から離れるように第1のカム回転方向に355へと回転する間、引き続きフォロワ331を遠位位置に保持することができる。間隙381はフォロワ331がスリーブ260と一緒に自由に移動するためのクリアランスを提供することができ、この結果、捕捉部321がフォロワ331を解放すると、ばね335が保持している潜在エネルギーによって、素早く鋭いスナップ動作が引き起こされ得る。
【0042】
図9Cでは、内部機構301は、捕捉部321がフォロワ331を解放している、引き戻された又は引き戻し中の状態で示されている。図9Cに示すように、カム311が捕捉部321に対抗して十分に回転すると、カム311は例えば、例えば捕捉部321の遠位表面をフォロワ331の近位表面に対して当接させている制限部を取り除くことで、捕捉部321を捕捉部321がフォロワ331を解放する第2の位置へと移動させることによって、フォロワ331を解放することができる。フォロワが解放されると、ばね335に蓄えられた潜在エネルギーが解放されて、フォロワ331(及びしたがってスリーブ260)の近位方向99への近位動作が付勢される。フォロワ331は、制限部によって停止されるまで、間隙381を通って近位位置へと自由に移動し得る。例えば、フォロワ331の近位動作は、フォロワ331がカム311に当接したとき、ハンドル12のハウジング内に含まれている停止部(図9Cでは見えていない)に当接したとき、及び/又は捕捉部321上に含まれている停止部に当接したとき、終了し得る。フォロワ331のための停止部を提供する表面は、例えば、比較的高い剛性を有し得るか、又は、衝突を和らげデバイスを通って衝撃が外科医の手に伝わるのを防止するための、クッション若しくはエネルギー吸収部材を含み得る。
【0043】
図9Cでは、捕捉部321は第2の位置(解放位置)で示されている。例えば使用者によって押しボタンが解放されると、捕捉部321を第1の位置(図9Aに示す当接位置)へと付勢することができ、この結果、内部機構301を初期状態へとリセットすることが可能になる。例えば、フォロワ331の引き戻し後に押しボタンが解放されると、第1の位置に向けた捕捉部321の付勢によって捕捉部321を上向きに移動させて、カム311の第1のカム回転方向355とは反対の第2のカム回転方向への回転移動を付勢することができる。捕捉部321がカム311の反対方向への回転を付勢するとき、遠位方向へとカム311がフォロワ331を付勢し(又はカム311を介して捕捉部321がフォロワを付勢し)、これによりフォロワ331をフォロワ近位位置からフォロワ遠位位置へと移動させて、ばね335に再び荷重を加える。捕捉部321がカム311の回転を付勢しフォロワ331をこのように移動させるとき、捕捉部321もまた、これがフォロワ331に当接してフォロワ331を遠位位置に保持する、第1の位置に戻ることができる。内部機構301はその後、スリーブの1回又は複数回の繰り返しの引き戻しについて、同様の様式で再び動作し得る。
【0044】
機構は、内部機構301が(例えば、図3A図3Bの実例に関して上記したもののように、線維柱帯網をスナップ動作を介して引っ張るために)スリーブ260を引き戻すために利用される実装形態に関して記載されているが、この機構が他の動作のモードに好適に使用され得ることが諒解されるであろう。例えば、機構が生み出すスナップ動作を利用して、カニューレ14及び/又はスリーブ260を近位方向に及び/又は遠位方向にスナップさせて、(例えば、停止部に対するフォロワ331の衝突時に)振動を生じさせることができ、この振動により、吸引効果を必要とすることなく線維柱帯網の貫通が容易になる。この場合、フォロワ331は、カニューレ14又は動作が望まれる任意の他の好適な構成要素に固定的に連結され得る。機構がスリーブ260、カニューレ14、又は任意の他の構成要素の遠位方向への動きのために採用される場合、機構の様々な部品及び動作を反対にできることもまた諒解されるであろう。スリーブ260を引き戻すために、他の機構、例えば磁気アクチュエータ又は他のタイプのばね付勢されたアクチュエータを採用できることが、更に企図される。
【0045】
図10は、眼科デバイス10の実例を示す長手断面図である。図10は、ハンドル12及びハンドル12内に含めることのできる接眼構成要素21を通した物質の送達を容易にするための流体送達機構に関する構造の実例を示す。
【0046】
図10に示すように、ハンドル12は、内部容積517を囲い込み画定するハウジング513を含み得る。ハンドル12内にルーメン525(本明細書では「ハンドル・ルーメン」と呼ぶ場合もある)を配設することができ、これはハンドル12の遠位端から突出しているルーメン95(本明細書では「カニューレ・ルーメン」と呼ぶ場合もある)に流体連結され得る。ハンドル・ルーメン525は例えば内部容積517を通って延在することができ、内部容積内に配設されているか又はハンドルの外側に連結されている流体リザーバなどの流体源から、流体をカニューレ・ルーメン95に送達するように構成され得る。
【0047】
例えば図10に示すように、ハンドル12は、流体源に連結するように及び流入流体を受け入れるように構成されている、入口ポート531を含み得る。入口ポート531としては例えば、ルアー・ロック・コネクタ、又は、粘弾性物質用のシリンジ若しくは任意の他の好適な流体リザーバに接続するように構成されている、任意の他の好適なコネクタを挙げることができる。入口ポート531は図10ではハンドル12の近位端に配設されて示されており、ハンドル・ハウジング513の近位端にある開口部を通って延在する入口チャネルを提供するようになっている。追加として又は別法として、入口ポート531は、ハンドル12の表面の別の場所上に、例えばハンドル12の横方向の側壁上に配設され得る。図10に示す実例では、ハンドル12は、入口ポート531を介して流体又は他の物質の最初の体積を充填され得る、リザーバ599を保持している。
【0048】
図10に示すハンドル12は、ハンドル・ルーメン525を通して及び/又はカニューレ・ルーメン95を通して流体を移動させるように構成され得る、ポンプ611を更に含む。例えば図10に示すように、ポンプ611は、ハンドル12の内部容積517内に配設されており軸方向近位側及び/又は遠位側に並進するように構成されている、ピストン598を含み得るか、又はこれに連結され得る。ピストン・ポンプは、入口ポート531から流体を引き込むために、並びに/又は、流体をカニューレ・ルーメン95の遠位端を通して外へと及びオリフィス32を通して外へと付勢する若しくは押すために、近位ポンプ位置から遠位ポンプ位置へと遠位方向に移動するように構成され得る。この場合、ポンプ611は、流体の正及び/又は負の容積移送を行うように構成され得る。ピストン598はまた、例えば、ハウジング内で反復運動することができ、遠位ポンプ位置から近位ポンプ位置へと近位方向に移動して次の流体の用量を送達するためにリセットされるように構成され得る。別法として、ピストン598を遠位方向に漸増的に移動するように構成することができ、この場合、遠位方向への動きの各増分は流体又は他の物質の用量に対応している。
【0049】
ポンプ611は、ハンドル・ルーメン525の流体経路内に配設できる弁639を含み得るか又はこれに連結することができ、ポンプ611と一緒に移動するようにポンプ611に固定的に連結され得る。弁639は例えば、そこを遠位方向に通過する流体の動きを可能にし、そこを近位方向に通過する流体の動きを制限して、入口ポート531からの吸引力を生み出すとともに、弁639がハンドル12と一緒に遠位方向に動くときに流体をオリフィスから押し出す、一方向弁(又は「チェック弁」)として実装され得るか、さもなければこれを含むことができる。追加として又は別法として、様々な他のタイプのポンプ及び/又は流体輸送機構を、眼科デバイス10を通して流体を移動させるように構成できることが、諒解されるであろう。
【0050】
ポンプ611は更に、アクチュエータ38の作動時に流体の用量又は量の送達のためのポンプの作動を可能にするように、アクチュエータ38に更に連結され得る。ポンプ611は例えば、スリーブ260若しくは接眼構成要素21の他の部分を移動させる同じアクチュエータに連結され得るか、又はポンプ611は、接眼構成要素21を移動させるのに使用されるものとは異なる別個のアクチュエータに連結され得る。図10に示す実例では、アクチュエータ38は、ポンプ611に連結されており、使用者が押しボタンを押下したときに個別の用量での流体の送達をトリガするように構成されている、押しボタンを含む。
【0051】
図11A図11Cは、アクチュエータ38が遠位の接眼構成要素及びポンプ611の動作を互いに協調させて作動させるように構成されている、接眼構成要素10のハンドル12の切断図である。図11Aは、明確になるようにリンク機構及びカムが取り外されている、内部機構を示す切断図である。図11B及び図11Cは、ボタンを押す前の初期位置で及びボタンを押した後の作動された位置でそれぞれ示されている、リンク機構723及びカム311を有する内部機構を示す切断図である。
【0052】
図11A図11Cに示す機構を、アクチュエータ38のボタンを押すことがその都度、(例えば、図3A図3Bに示すようにカニューレ14に沿って線維柱帯網86を引っ張るための)スリーブ260の引き戻しと、スリーブ260が引き戻されている間の(例えば、図3A図3Bに示すように線維柱帯網86がカニューレ14に沿って引っ張られておりオリフィス32がシュレム管80内に位置付けられている間の)カニューレ14を通した流体の用量の送達と、の両方を引き起こすトリガとなるように使用することができる。例えば図11Aに示すように、機構は、ポンプ611内に含まれているか又はこれに固定的に連結されているねじ切りされた部分781に連結されている、ナット779を含み得る。ナット779をねじ切りされた部分781と嵌合させることで、ナット779の回転によってポンプ611の軸方向の動作(例えば、遠位方向への並進)を駆動し、その結果ポンプ611にハンドル12の中で流体を移動させるようにすることができる。
【0053】
図11B及び図11Cに示すように、アクチュエータ38は、リンク機構723を介してナット779に連結されている押しボタンとして実装され得る。図11B及び図11Cに示すように、ナット779を駆動する同じ押しボタンを、直接又はリンク機構723を介して、カム311にも連結することができる。使用者の力によって図11Bに示す押されていない位置から図11Cに示す押された位置へとボタンが押下されると、この押しボタンは、(例えばスリーブ260を引き戻すための)カムの第1の回転方向355への回転を駆動すること、及び、リンク機構723を介したナット779の回転を駆動して、容積移送によって流体にハンドル12の中を移動させるべく、ピストン598を前方の遠位方向へと漸増的に移動させることができる。同時に、カム311の回転がスリーブ260の引き戻しを引き起こし、この結果、物質はスリーブ260が引き戻された近位位置にある間にポンプ611によって送達される。
【0054】
図12A図12Fは、アクチュエータが遠位の接眼構成要素及びポンプの動作を互いに協調させて作動させるように構成されている、眼科デバイス110を示す。図12Aは眼科デバイス110の斜視図を示す。図12B及び図12Cは、眼科デバイス110の内部構成要素の斜視図及び断面図を示す。図12D図12Fは、眼科デバイス110の作動中の内部構成要素の部分の様々な図を示す。
【0055】
図12Aを参照すると、眼科デバイス110は多くの構成要素が眼科デバイス10と同じであり、それらには一貫するように同じ番号が採られている。眼科デバイス110は、接眼構成要素21に連結されているハンドル112を含み得る。ハンドル112は、医療従事者(例えば、眼科外科医)が容易に把持でき、医療従事者の手にかかる応力が最小限となるようなサイズ及び形状であり得る。ハンドル112の外面は、使用者がハンドル112を容易に掴めるように起伏のある形状及びリブ状の表面を有する、握り113を含む。アクチュエータ38は、ハンドル112上に配設されている、押されていない位置と押された位置の間で移動可能な機械的な押しボタンである。ハンドル112は視認用ポート114(例えば、分注体積インジケータ)を含んでもよく、又は、ハンドル112は視認用ポートを有さず本質的に不透明であってもよい。ハンドル112は、流体源に連結するように及び流入流体を受け入れるように構成されている、入口ポート831を含み得る。入口ポート831は、入口ポート531の構成及び/又は特徴のうちの任意のものを含み得る。
【0056】
図12B及び図12Cに示す内部構成要素を、アクチュエータ38のボタンを押すことがその都度、(例えば、図3A図3Bに示すようにカニューレ14に沿って線維柱帯網86を引っ張るための)スリーブ260の引き戻しと、スリーブ260が引き戻されている間の(例えば、図3A図3Bに示すように線維柱帯網86がカニューレ14に沿って引っ張られておりオリフィス32がシュレム管80内に位置付けられている間の)カニューレ14を通した流体の用量の送達と、の両方を引き起こすトリガとなるように使用することができる。例えば図12B及び図12Cに示されているように、内部構成要素は、プランジャ811(例えば、ポンプ)内に含まれているか又はこれに固定的に連結されている、ねじ切りされた部分881に連結されている駆動ナット879を含み得る。駆動ナット879をねじ切りされた部分881と嵌合させることで、駆動ナット879の回転によってプランジャ811の軸方向の動作(例えば、遠位方向への並進)を駆動し、その結果プランジャ811にハンドル112の中で流体を移動させるようにすることができる。
【0057】
図12B図12Fに示すように、アクチュエータ38は、リンク機構アーム823を介して駆動ナット879に連結されている押しボタンとして実装され得る。駆動ナット879は複数の歯875を有してもよく、各歯875は平坦部分876と傾斜部分877とを有する。リンク機構アーム823は、歯875の平坦部分876を上から把握するようなサイズ及び形状とされている、係合部分827を有し得る。駆動ナット879を駆動する同じ押しボタン38を、突出部824を介してカム311にも連結することができる。使用者の力850によってボタン38が図12Dに示す押されていない位置から押下されると、ボタン38はアクチュエータ軸39を中心として回転することができ、これにより突出部824がカム311上に押し下げられ、リンク機構アーム823がリンク機構アーム823が係合されている駆動ナット879の歯875上まで引き上げられる。したがって、ボタン38は、(例えば、スリーブ260を引き戻すために)突出部824を介してカム311の第1の回転方向355への回転を付勢すること、及び、リンク機構アーム823を介して駆動ナット879の駆動回転方向855への(例えば、反時計回りの)回転を駆動して、容積移送によって流体にハンドル112の中を移動させるべく、プランジャ・チューブ898を前方へと(例えば、遠位方向に)漸増的にストローク長さ870だけ移動させることができる。プランジャ・チューブ898は、物質の逆流を防止するためのプランジャ・シール899(例えば、波形シール)を有し得る。駆動ナット879の回転と同時に、カム311の回転がスリーブ260の引き戻しを引き起こし、この結果、物質はスリーブ260が引き戻された近位位置にある間にプランジャ811によって送達される。
【0058】
図12Fに示すように、側面パネル・シム890が駆動ナット879の歯875とラチェット過程で係合し得る。例えば、駆動ナット879が駆動回転方向855に回転するとき、側面パネル・シム890の係合部分891は歯875の傾斜部分877に乗り上がり、次いで歯875の後縁の平坦部分876に沿って落下することができ、このようにして、駆動ナット879が、駆動回転方向855に殆ど又は全く抵抗なく回転することが可能になる。ただし、側面パネル・シム890の係合部分891が歯875の平坦部分876と係合されているとき、側面パネル・シム890は、駆動ナット879の反対の回転方向への(例えば、時計回りの)回転には抵抗する。
【0059】
図13A図13Gは、アクチュエータが遠位の接眼構成要素及びポンプの動作を互いに協調させて作動させるように構成されている、眼科デバイス210を示す。図13Aは眼科デバイス210の斜視図を示す。図13B及び図13Cは、眼科デバイス210の内部構成要素の斜視図及び断面図を示す。図13D図13Gは、眼科デバイス210の作動中の内部構成要素の部分の図を示す。
【0060】
図13Aを参照すると、眼科デバイス210は多くの構成要素が眼科デバイス10と同じであり、それらには一貫するように同じ番号が採られている。眼科デバイス210は、接眼構成要素21に連結されているハンドル212を含み得る。ハンドル212は、医療従事者(例えば、眼科外科医)が容易に把持でき、医療従事者の手にかかる応力が最小限となるようなサイズ及び形状であり得る。ハンドル212の外面は、使用者がハンドル212を容易に掴めるように起伏のある形状及びリブ状の表面を有する、握り213を含み得る。アクチュエータ38は、ハンドル212上に配設されている、押されていない位置と押された位置の間で移動可能な機械的な押しボタンである。ハンドル212は視認用ポート(図示せず)を含んでもよく、又は、ハンドル212は視認用ポートを有さず本質的に不透明であってもよい。ハンドル212は、流体源に連結するように及び流入流体を受け入れるように構成されている、入口ポート931を含み得る。入口ポート931は、入口ポート531の構成及び/又は特徴のうちの任意のものを含み得る。
【0061】
図13B及び図13Cに示す内部構成要素を、アクチュエータ38のボタンを押すことがその都度、(例えば、図3A図3Bに示すようにカニューレ14に沿って線維柱帯網86を引っ張るための)スリーブ260の引き戻しと、スリーブ260が引き戻されている間の(例えば、図3A図3Bに示すように線維柱帯網86がカニューレ14に沿って引っ張られておりオリフィス32がシュレム管80内に位置付けられている間の)カニューレ14を通した流体の用量の送達と、の両方を引き起こすトリガとなるように使用することができる。例えば図13B及び図13Cに示されているように、内部構成要素は、プランジャ911(例えば、ポンプ)内に含まれているか又はこれに固定的に連結されている、ラック部分981に連結されている駆動ギア979を含み得る。駆動ギア歯977をラック部分歯983と係合させることで、駆動ギア979の回転によってプランジャ911の軸方向の動作(例えば、遠位方向への並進)を駆動し、その結果プランジャ911にハンドル212の中で流体を移動させるようにすることができる。
【0062】
図13B図13Gに示すように、アクチュエータ38は、トリガ・ギア969に連結されている押しボタンとして実装され得る。トリガ・ギア歯967をアクチュエータ歯37と係合させることができ、アクチュエータ38を押し下げることによってトリガ・ギア969を回転させることができる。トリガ・ギア969は駆動軸923を介して駆動ギア979に連結され得る。トリガ・ギア969はまた、カム部分31を介してスリーブ・フォロワ971にも連結され得る。使用者の力850によってボタン38が図13Dに示す押されていない位置から押下されると、ボタン38は、カム部分31にスリーブ・フォロワ971を回転させることができ、スリーブ・フォロワ971の丘状部分972はスリーブ・フォロワ971の谷状部分973へと回転して、スリーブ260を後方に(例えば、近位方向に)スナップさせてスリーブ260を引き戻す。図13Dに示す押されていない位置からボタン38を押下することによって、トリガ・ギア969に駆動軸923を回転させることもでき、これにより更に駆動ギア979が回転される。したがって、ボタン38は、駆動軸923を介して駆動ギア979の駆動回転方向955への回転を駆動して、ラック部分981の移動を駆動し、これにより、容積移送によって流体にハンドル212の中を移動させるべく、プランジャ911を前方へと(例えば、遠位方向に)漸増的にストローク長さ970だけ移動させることができる。プランジャ911は、後方シール999(例えば、Oリング・シール)を有し得る。駆動ギア979の回転と同時に、カム部分31の移動によって、スリーブ260の引き戻しが生じる。物質はプランジャ911によって送達されるが、これはアクチュエータ38の作動によって開始され、近位位置におけるスリーブ260の引き戻しを介して行われる。
【0063】
図13Fに示すように、一方向クラッチ990は、駆動ギア979の駆動ギア歯977がラック部分981のラック部分歯983にラチェット・プロセス及び/又は一定送り(index)プロセスで係合することを実現し得る。例えば、駆動ギア979が駆動回転方向955に回転してラック部分をストローク長さ970だけ移動させた後では、駆動ギア979又は駆動軸923を更にいずれかの方向に回転させることなく、一方向クラッチ990によってトリガ・ギア969を反対方向に回転させることが可能になり、この結果、ラック部分981は所定位置に維持され、一方でボタン38はリセットされる(例えば、ボタン38が図13Dに示す押されていない位置へと戻るよう移動するとき)。このように、一方向クラッチ990は駆動ギア979の回転を駆動回転方向955にのみ可能にし、これにより、ボタン38がリセットされるとき、駆動ギア979及び更にラック部分981は同じ位置に留まる。使用者の力850が取り除かれると(例えば、使用者がボタン38を押し下げるのをやめると)、ばね984(例えば、ねじりばね)を介して押されていない位置へと戻るようにボタン38が移動され得るが、この場合、付勢力960がボタン38を初期の押されていない位置又はリセット位置へと押し戻す。ボタン38がリセットされると、ボタン38を再び押してプロセスを再び開始することができる。
【0064】
ボタン38をトリガするごとに、ボタン38をある距離だけ(例えば、20度)揺動させてもよく、ラック部分981を設定された数のラック部分歯983(例えば、2つの歯)の分だけ、前方に移動させてもよい。この場合、ラック部分981の移動距離は、ラック部分歯983を包含するラック部分981の1つの歯のストローク長さ970であってもよく、このことにより、眼科デバイス210の使用が10回の作動(例えば、10回の圧送)に限定される。例えば、図13Cに示すように、プランジャ911の後端(例えば、入口ポート931に最も近い端部)の後方シール999は、設定された回数の作動(例えば、3回の作動)後に飛び出して自由になるように構成され得る。このことにより、入口ポート931を通して加えられる追加の物質が眼科デバイス210のボア・チューブ913(例えば、物質リザーバ)内に維持されるのを防止することができる。更に、プランジャ911の前端(例えば、先端部セグメント151に最も近い端部)は、一方向弁915(例えば、ダック弁)と、弁保持具917と、前方シール919(例えば、Oリング・シール)と、を含み得る。一方向弁915は眼科デバイス210のプライミングを実現できるとともに、プライミング及び圧送のプロセス中の物質の逆流を防止できる。この場合、一方向弁915はプランジャ911を封止し、最初の3回の作動後に後方シール999が飛び出した後で更なる作動(例えば、7回以上)を実現することができ、これにより眼科デバイス210が使用できる最大回数の作動が実現される。これに応じて、健康及び安全の理由で並びに構成要素の損耗を最小限にすることでデバイスの健全性を最適化する目的で、10回の作動(例えば、圧送動作)後に眼科デバイス210を使用不可能にしてもよい。例えば、設定された回数だけ使用した後で廃棄可能となるように眼科デバイス210を構成することによって、デバイスを洗浄/殺菌する必要がなくなり、シール919、999のいずれかが乾燥し切って不具合を生じるという問題が回避される。
【0065】
図14A~14Cは、適切な体積の物質(例えば、粘弾性流体)を充填するための、及び眼科デバイス10、110、210の流体経路から空気を除去するための、眼科デバイス10、110、210のプライミング過程を示す。図14Aに示すように、所望の物質を収容しているシリンジ1000(例えば、標準的なルアー・ポートのシリンジ)を入口ポート531、831、931に連結することができ、次いでその物質を、物質が先端部セグメント151から出て来るまで、眼科デバイス10、110、210の流体経路全体にわたって押すことができる。一方向弁915によって、一方向弁915を通って戻る物質のどのような逆流も防止しながら、物質が先端部セグメント151に向かって流れていくことが可能になる。プライミングが終わると、カニューレ14及びボア・チューブ913を、例えば10回の圧送動作に十分な体積などの、所望の体積の物質で満たすことができる。
【0066】
図14Bに示すように、プランジャ911の後端は、入口ポート531、831、931内で後方シール999を介して封止的に係合されている。図14Bでは、プランジャ911の後端は、(例えば、プライミングの前又は後だが、いかなる作動よりも前の)開始位置950に示されている。眼科デバイス10、110、210の各作動(例えば、圧送動作)の間、プランジャ911が圧送サイクルごとにストローク長さ970だけ前方に移動されるにつれ、プランジャ911は入口ポート531、831、931から離れる方へと前進する。設定された回数だけ作動(例えば、3回作動)した後では、プランジャ911の後端は図14Cに示すように、眼科デバイス10、110、210のシリンダ995から分離又は係脱するのに十分なところまで、前方に前進されている。例えば、後方シール999はシリンダ995の内部との封止係合部から飛び出すことができ、このことにより、眼科デバイス10、110、210が再びプライミング可能になることが防止される。この時点において、物質流路は、所望の作動の残りの分(例えば、7回の圧送動作)に対してちょうど十分な物質を包含し得る。この場合、許容可能な圧送サイクルの合計回数(例えば、合計10回の圧送サイクル)超えて、眼科デバイス10、110、210を再びプライミング、再充填、又は使用することはできない。
【0067】
図15A及び図15Bは、眼科デバイス10を使用して眼科手技を行う例示の方法を示す。この方法を使用して、物質(例えば、流体又は気体)を、例えばシュレム管80又は患者の眼の何らかの他の好適な部分内へと送達することができる。
【0068】
上で指摘したように、健康な眼においては、房水82の液流は、眼の前眼房84を出て、線維柱帯網86を通り、その後シュレム管80及び遠位のコレクタ・チャネル内へと排出される。次いで房水82は、シュレム管80を通ってコレクタ・チャネル及び遠位静脈系内へと出る。房水82のこの流路が(例えば、線維柱帯網86及び/又はシュレム管80内の病変又は損傷した組織に起因して)中断されると、眼のIOPが上昇し、結果的に様々な医学的問題(例えば、緑内障、視覚の喪失、視神経損傷、等)を生じさせる可能性がある。
【0069】
房水82の流路を改善するために、医療専門家は、前眼房84に設けた切開部88を通して接眼構成要素21を挿入し、接眼構成要素21のスリーブ260の遠位端を、線維柱帯網86に対して当接又は接触するように線維柱帯網86まで前進させることができる。次いでスリーブ260(図15Bでは見えていない)を、図15Bに示し且つ本明細書に記載する機構又は構成要素のいずれかを使用して更に上記したように、オリフィス32を含むカニューレ14の遠位端がシュレム管80に進入するように引き戻すことができる。
【0070】
図15Bを参照すると、カニューレ14の遠位端がシュレム管80に挿入されて1つ又は複数のオリフィス32の各々がシュレム管80内に完全に収容されると、医療専門家は上記したような作動を介して、所定の用量又は量の流体又は他の物質を注入することができる。オリフィス32を介した所定の用量又は量の流体又は他の物質の注入後、このプロセスを、カニューレ14を同じ位置に保持して、並びに/又は、異なる場所で及び/若しくは異なる角度から流体を注入するために1つ若しくは複数の異なる位置にカニューレ14を移動させて、任意の適切な回数だけ繰り返してもよい。任意選択的に、シュレム管80内の特定の場所での1回又は複数回の所定の用量の流体又は他の物質の注入後、カニューレ14の遠位端を引き戻し、眼内で配置し直してもよい。いくつかの構成では、そのような配置のし直しは、切開部88(例えば、第1の切開部)からのカニューレ14の引き出し、及び第1の切開部から離間させた追加の切開部を通した再挿入を介して行われ得る。追加として又は別法として、そのような配置のし直しは、遠位端30をシュレム管80及び/又は線維柱帯網86から引き戻すこと、及びその後で第1の切開部88からカニューレ14を取り外すことなくシュレム管80の新しい部分内へと位置決めし直すことを含み得る。いくつかの実装形態では、流体をシュレム管80及び線維柱帯網86内に同時に送達することができ、これによりシュレム管80が開き、流体が線維柱帯網86の様々な層内へと送達される。
【0071】
上記の説明はオリフィス32を通して流体又は他の物質を注入するためのデバイス及び方法について記載しているが、本明細書に記載する眼科デバイス10は、眼から流体又は他の物質を精確な制御で吸引し引き離すように構成され得ることを理解されたい。例えば、眼からの流体又は他の物質の除去を達成するために、眼科デバイス10を上記したものと逆の様式で作動させてもよい。
【0072】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、カニューレ遠位端、ルーメン、及びルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、流体を送達するように構成されている、カニューレと、カニューレの周囲に配設されておりスリーブ遠位端を有するスリーブと、スリーブ及びカニューレに連結されているハンドルであって、アクチュエータを有する、ハンドルと、アクチュエータに連結されておりスリーブをカニューレに対して引き戻すように構成されている内部機構と、を含む、眼科デバイス、を含み得る。内部機構は、スリーブに固定的に連結されており遠位位置と近位位置の間で移動可能なフォロワと、作動位置と解放位置の間で移動可能な解放部材であって、アクチュエータに連結されており、解放部材が作動位置から解放位置へと移動するときに、フォロワを遠位位置から近位位置へと付勢する力を解放するように構成されている、解放部材と、を含み得る。
【0073】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:アクチュエータは、ハンドルの側面に位置付けられており使用者の力が加わると押されていない位置から押された位置へと移動可能な押しボタンを含み、押されていない位置から押された位置へと押しボタンが移動するとき、押しボタンは、解放部材の第1の回転方向への回転を付勢するように構成されている。
【0074】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、アクチュエータに連結されているリセットばねであって、押された位置から押されていない位置へと戻るように押しボタンを付勢して、解放部材の第1の回転方向とは反対の第2の回転方向への回転を付勢するように構成されている、リセットばね、を含み得る。
【0075】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カニューレは、近位シャフト・セグメントと、近位シャフト・セグメントに取り付けられた先端部セグメントと、を備え、1つ又は複数のオリフィスは先端部セグメント上に配設されている。
【0076】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときにフォロワを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、第1の位置と第2の位置の間で移動可能な捕捉部であって、捕捉部が第1の位置にあるときにフォロワを遠位位置に保持するように、及び捕捉部が第2の位置にあるときにフォロワを解放するように構成されている、捕捉部と、捕捉部に連結されているカムであって、捕捉部に対抗して第1の回転方向に回転して、捕捉部を第1の位置から第2の位置へと付勢するように構成されている、カムを備える、開放部材を備え得る。
【0077】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カムはフォロワに更に連結されており、捕捉部は第2の位置に向かって付勢されており、使用者の力が解放されると、捕捉部は、フォロワに対抗してカムを第1の回転方向とは反対の第2の回転方向へと付勢してフォロワを近位位置から遠位位置へと付勢するように構成されている。
【0078】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、1つ又は複数の第1の磁石及び1つ又は複数の第2の磁石を有する摺動可能なハウジングを含んでもよく、解放部材は1つ又は複数の第3の磁石を有する回転可能なハウジングを備え、摺動可能なハウジングは、1つ又は複数の第3の磁石が1つ又は複数の第1の磁石と整列されているときにフォロワを遠位位置に保持するように、及び1つ又は複数の第3の磁石が1つ又は複数の第2の磁石と整列されているときにフォロワを近位位置へと付勢するように構成されている。
【0079】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:2つの第1の磁石は、摺動可能なハウジング内で、摺動可能なハウジングの中心軸線を二分する第1の平面上に180度離れて配設されており、2つの第2の磁石は、摺動可能なハウジング内で、摺動可能なハウジングの中心軸線を二分する第2の平面上に180度離れて配設されており、2つの第3の磁石は、回転可能なハウジング内で、回転可能なハウジングの中心軸線を二分する第3の平面上に180度離れて配設されている。
【0080】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:回転可能なハウジングは、解放部材が作動位置にあるときに1つ又は複数の第3の磁石を1つ又は複数の第1の磁石と整列させるように構成されており、回転可能なハウジングは、解放部材が解放位置にあるときに1つ又は複数の第3の磁石を1つ又は複数の第2の磁石と整列させるように構成されている。
【0081】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときにフォロワを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、第1の位置と第2の位置の間で移動可能なだぼピンであって、だぼピンが第1の位置にあるときにフォロワを遠位位置に保持するように、及びだぼピンが第2の位置にあるときにフォロワを解放するように構成されている、だぼピンと、だぼピンに連結されているアームであって、だぼピンを第1の位置から第2の位置へと付勢するようだぼピンを回転させるように構成されている、アームを備える、解放部材を備え得る。
【0082】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:だぼピンは2つの曲線的部分と2つの平坦部分とを備え、曲線的部分の一方は第1の位置においてフォロワの近位表面に当接するように構成されており、平坦部分の一方は第2の位置においてフォロワの近位表面に当接するように構成されている。
【0083】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:だぼピンはカニューレを受け入れるように構成されている開口部を備え、開口部は、だぼピンの回転中にだぼピンがカニューレに接触するのを防止するように構成されている。
【0084】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、第1の隆起部分及び第1の陥入部分を備える近位表面を有する摺動可能なハウジングを更に有する内部機構を含んでもよく、解放部材は、第2の隆起部分及び第2の陥入部分を備える遠位表面を有する、回転可能なハウジングを備え、摺動可能なハウジングは、第1の隆起部分が第2の隆起部分と係合しているときに、フォロワが遠位位置に配設されること、並びに、第1の隆起部分が第1の陥入部分と係合し第2の隆起部分が第2の陥入部分と係合しているときに、フォロワを近位位置へと付勢することを可能にするように構成されている。
【0085】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、第1の隆起部分と第1の陥入部分の間に配設されている第1の傾斜部分を含んでもよく、第2の隆起部分は、回転可能なハウジングが作動位置から解放位置へと移動されるときに、第1の傾斜部に沿って第1の隆起部分から第1の陥入部分へと摺動するように構成されている。
【0086】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、第2の隆起部分と第2の陥入部分の間に配設されている第2の傾斜部分を含んでもよく、第1の隆起部分は、回転可能なハウジングが作動位置から解放位置へと移動されるときに、第2の傾斜部に沿って第2の隆起部分から第2の陥入部分へと摺動するように構成されている。
【0087】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワが遠位位置に配設されているときに、フォロワの遠位側に面する表面と摺動可能なハウジングの近位側に面する表面の間に配設される、間隙と、摺動可能なハウジングに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときに摺動可能なハウジングを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、を更に有し、ばね力は、フォロワの遠位側に面する表面を間隙の中で加速させ、摺動可能なハウジングの近位側に面する表面に衝突力を伴って接触させるように構成されている、内部機構、を備え得る。
【0088】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:ばね力はスリーブを0.762~1.27センチメートル/秒(0.3~0.5インチ/秒)の速度で後方に移動させるように構成されている。
【0089】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワよりも近位側に配設されているダンパーばねを含んでもよく、このダンパーばねは、フォロワが近位位置へと移動されるときにフォロワからの衝突力を減衰させ、フォロワが近位位置にあるときにフォロワを遠位位置に向けて付勢するように構成されている。
【0090】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:回転可能なハウジングは、回転可能なハウジングが作動位置から解放位置へと移動するときに、カニューレの長手中央軸線を中心として第1の回転方向に45度回転するように構成されている。
【0091】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、眼科デバイス用の内部機構であって、カニューレの周囲に配設されているスリーブに固定的に連結されるように構成されている摺動可能なフォロワであって、長手中心軸線に沿って遠位位置と近位位置の間で移動可能な、摺動可能なフォロワと、第1の隆起部分及び第1の陥入部分を備える近位表面を有する、摺動可能なハウジングと、第2の隆起部分及び第2の陥入部分を備える遠位表面を有する回転可能なハウジングであって、アクチュエータに連結されるように構成されており作動位置と解放位置の間で移動可能であり、第1の隆起部分は作動位置において第2の隆起部分と係合し、第2の隆起部分は解放位置において第1の陥入部分と係合する、回転可能なハウジングと、フォロワが遠位位置に配設されているときに、フォロワの遠位側に面する表面と摺動可能なハウジングの近位側に面する表面の間に配設される、間隙と、摺動可能なハウジングに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときに摺動可能なハウジングを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、含み、ばね力は、フォロワの遠位側に面する表面を間隙の中で加速させ、摺動可能なハウジングの近位側に面する表面に衝突力を伴って接触させるように構成されている、内部機構、を含み得る。
【0092】
本明細書には特定の用途に関する例示的な実施例を参照して本開示の原理が記載されるが、本開示はそれらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で提供する教示を利用できる当業者は、更なる修正、用途、実施例、及び等価物の置換が、全て本明細書に記載する実施例の範囲内にあることを認識するであろう。したがって、本発明は上記の説明によって限定されるものと見なされるべきではない。
【0093】
単数形の要素への言及は、明示的にそうであると述べられていない限りはただ1つを意味するように意図されておらず、むしろ1つ又は複数を意味するように意図されている。例えば、「1つの(a)」モジュールは、1つ又は複数のモジュールを指し得る。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、又は「前記(said)」によって開始される要素は、それ以上制約がなければ、追加の同じ要素の存在を排除しない。
【0094】
見出し及び副見出しが存在する場合、それらは便利のためだけに使用されており、本発明を限定しない。例示のという単語は、実例又は例示の役割を果たすことを意味するように使用される。含む(include)、有する(have)などの用語が使用される範囲において、そのような用語は、備える(comprise)という用語を請求項で移行句として用いるときに解釈される場合の備えると同様、包括的であることが意図されている。第1の(first)及び第2の(second)などの関係を示す用語は、ある実体又は動作を別の実体又は動作から、そのような実体同士又は動作同士の間の何らかの実際のそのような関係又は順序を必ずしも要求又は示唆することなく区別するために、使用される場合がある。
【0095】
1つの態様、その態様、別の態様、いくつかの態様、1つ又は複数の態様、1つの実装形態、その実装形態、別の実装形態、いくつかの実装形態、1つ又は複数の実装形態、1つの実施例、その実施例、別の実施例、いくつかの実施例、1つ又は複数の実施例、1つの構成、その構成、別の構成、いくつかの構成、1つ又は複数の構成、主題の技術、本開示(the disclosure)、本開示(the present disclosure)、これらの他の変形などの句は、便宜上のものであり、そのような句に関連する開示が主題の技術にとって本質的であること、又は、そのような開示が主題の技術の全ての構成に当てはまることを示唆するものではない。そのような句に関連する開示は、全ての構成に当てはまり得るか、又は1つ若しくは複数の構成に当てはまり得る。そのような句に関連する開示は、1つ又は複数の実例を提供し得る。1つの態様又はいくつかの態様などの句は1つ又は複数の態様を指す場合があり、この逆も成り立つが、このことは上記した他の句にも同様に当てはまる。
【0096】
一連のアイテムの前に付く句「~のうちの少なくとも1つ」は、用語「及び」又は「又は」によってそれらのアイテムは全て分けられるが、リストの各構成要素ではなく、全体としてのそのリストを修飾する。「のうちの少なくとも1つ」という句は少なくとも1つのアイテムを選択することを要求しない。むしろこの句では、アイテムのうちの任意の1つのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの任意の組合せのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの各々の少なくとも1つを含む意味が可能になる。例として、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、若しくはCのうちの少なくとも1つ」という句は各々、Aのみ、Bのみ、若しくはCのみ、A、B、及びCの任意の組合せ、及び/又はA、B、及びCの各々の少なくとも1つを指す。
【0097】
開示されるステップ、動作、又はプロセスの特定の順序又は階層性は、例示の手法を説明するものであることが理解される。そうではないと明示的に述べられていない限り、ステップ、動作、又はプロセスの特定の順序又は階層性は、異なる順序で実施され得ることが理解される。ステップ、動作、又はプロセスのうちのいくつかを同時に行ってもよい。存在している場合、添付の方法の請求項は、様々なステップ、動作、又はプロセスの要素を例としての順序で提示しており、この提示される特定の順序又は階層性に限定されることは意図されていない。これらは連続的に、直線的に、並列で、又は異なる順序で実行されてもよい。記載されている命令、動作、及びシステムは一般に、単一のソフトウェア/ハードウェア製品において1つに統合できるか、又は複数のソフトウェア/ハードウェア製品へとパッケージ化できることが、理解されるべきである。
【0098】
一態様では、連結されているという用語又は類似のものは、直接連結されていることを指し得る。別の態様では、連結されているという用語又は類似のものは、間接的に連結されていることを指し得る。
【0099】
頂部、底部、前方、後方、側方、水平な、垂直な、及び類似のものなどの用語は、重力に基づく一般的な基準系ではなく、恣意的な基準系に言及するものである。したがって、そのような用語は重力に基づく基準系では、上向きに、下向きに、対角線方向に、又は水平に延びている場合がある。
【0100】
本開示は、どのような当業者でも本明細書に記載する様々な態様を実施できるように提供される。いくつかの場合には、周知の構造及び構成要素が、主題の技術の概念が曖昧になるのを避けるために、ブロック図の形態で示される。本開示は主題の技術の様々な実例を提供し、主題の技術はこれらの実例に限定されない。これらの態様の様々な修正が当業者には容易に明らかになり、本明細書に記載する原理は他の態様に適用され得る。
【0101】
当業者に知られているか又は将来知られることになる、本開示の全体にわたって記載されている様々な態様の要素のあらゆる構造的及び機能的等価物が、本明細書に参照によって明示的に組み込まれており、それらは特許請求の範囲に包含されることが意図されている。更に、本明細書に開示されている内容は、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかに関わらず、決して公衆への開放を意図するものではない。どの請求項の要素も、その要素が「~のための手段(means for)」という句を使用して明示的に記述されていない、又は方法の請求項の場合にはその要素が「~のためのステップ(step for)」という句を使用して記述されていない限りは、米国特許法第112条(f)の規定の下で解釈されるべきではない。
【0102】
発明の名称、技術分野及び背景技術、図面の簡単な説明、要約書、並びに図面が本明細書において本開示に組み込まれているが、それらは制限的な記載としてではなく、本開示の例示的な実例として提供されている。本明細書は、それらが特許請求の範囲の範囲又は意味を限定するように使用されるものではないとの理解のもとで提示される。更に、詳細な説明において、その説明が例示的な実例を提供し、様々な特徴が本開示を合理化する目的で様々な実装形態において1つにまとめられていることを理解できる。開示の方法は、特許請求される主題が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているものとして解釈されるべきではない。むしろ、請求項に反映されているように、進歩性を備えた主題は、開示される単一の構成又は動作の全てに満たない特徴で成り立つ。請求項は本明細書において詳細な説明に組み込まれており、各請求項は個別に特許請求される主題としてそれ自体で成立している。
【0103】
特許請求の範囲は本明細書に記載する態様に限定されることは意図されておらず、請求項の言語と矛盾しない全範囲を認められるものであり、全ての法的な等価物を包含するものである。それでもなお、どの請求項も適用可能な特許法の要件を満たさない主題を包含することは意図されておらず、またどの請求項もそのように解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図13G
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B