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特開2024-133447患者における標的抜去対象物の仮想抜去処置において使用されるモデルを生成する方法およびシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133447
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】患者における標的抜去対象物の仮想抜去処置において使用されるモデルを生成する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/36 20060101AFI20240925BHJP
   A61C 9/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61C13/36
A61C9/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024039377
(22)【出願日】2024-03-13
(31)【優先権主張番号】10 2023 106 238.7
(32)【優先日】2023-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】509115339
【氏名又は名称】インスティチュート ストローマン アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100139930
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮司
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【弁理士】
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100202142
【弁理士】
【氏名又は名称】北 倫子
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】シュナファウフ,アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ジェーン,ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ペロ,セオ ウィマナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを自動的に生成するための、コンピュータで実行される方法を提供する。
【解決手段】方法は、患者の口腔の解剖学的領域の表面スキャンおよび前記解剖学的領域の体積密度スキャンの各々に基づいており、ステップと、共通の3次元座標系において、前記第1データセットから得られるラベル付き表面スキャンセグメントを、前記第2データセットから得られるラベル付き体積密度スキャンセグメントにクロスマウントするステップと、前記標的抜去対象物の識別子を受信するステップと、3D体積密度モデルおよび3D表面モデルを識別するステップと、窩の3Dモデル、歯クラウンの部分の3Dモデル、標的抜去歯の部分の3Dモデル、および/または、前記抜歯輪郭の3Dモデルを含む第3データセットを生成するステップと、を含む方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的抜去対象物の仮想抜去(602b、603a)において使用される3次元モデル(10D)を1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって自動的に生成するための、コンピュータで実行される方法(100)であって、前記標的抜去対象物は患者の解剖学的構造における対象物を含み、前記方法は患者の口腔の解剖学的領域の表面スキャン(1b)および前記解剖学的領域の体積密度スキャン(1a)の各々に基づいており、前記解剖学的領域は少なくとも前記標的抜去対象物を含み、前記方法は、
ラベル付けされた表面スキャンセグメントの第1データセットを受信するステップであって、各表面スキャンセグメントは前記表面スキャンの表面スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の3次元(3D)表面モデル(10b)を含み、各表面スキャンセグメントは前記表面スキャンセグメントを識別する関連するラベルを有する、ステップと、
ラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの第2データセットを受信するステップであって、各体積密度スキャンセグメントは前記体積密度スキャンの体積密度スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の境界面の3次元(3D)体積密度モデル(10a)を含み、各体積密度スキャンセグメントは前記体積密度スキャンセグメントを識別する関連するラベルを有する、ステップと、
共通の3次元座標系において、前記第1データセットから得られるラベル付き表面スキャンセグメント(10b)を、前記第2データセットから得られるラベル付き体積密度スキャンセグメント(10a)にクロスマウントするステップと、
前記標的抜去対象物(16)の識別子(identification)を受信するステップと、
識別された前記標的抜去対象物に対応する前記体積密度スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D体積密度モデル(16a)を識別するステップと、
識別された前記標的抜去対象物に対応する表面スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D表面モデル(16b)を識別するステップと、
a)識別された前記3D体積密度モデル(16a)から、識別された前記3D表面モデル(16b)に共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の部分を除いたものと等価である窩(16s)の3Dモデル、
b)識別された前記3D表面モデル(16b)に共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の少なくとも一部、および/または、識別された前記3D体積密度モデル(16a)に共通して表現された識別された前記3D表面モデル(16b)の少なくとも一部、
c)識別された前記3D体積密度モデル(16a)の少なくとも一部から、識別された前記3D表面モデル(16b)において共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の部分を除いた部分、および/または、
d)前記第1データセット(10b)の少なくともサブセットから、識別された前記3D体積密度モデル(16a)に共通して表現された識別された前記3D表面モデル(16b)の部分を除いたもの、
を含むモデルを含む第3データセットを生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記生成するステップは、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)のうち識別された前記3D表面モデル(16b)に共通して表現されていない部分を決定するステップと、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)の決定された前記部分を、前記窩の3Dモデル(16s)として、コンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記生成するステップは、
識別された前記3D表面モデル(16b)において共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の部分を決定するステップと、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)から、決定された共通して表現された前記部分を除去することによって、決定された共通して表現された前記部分と識別された前記3D体積密度モデル(16a)との差を決定するステップと、
決定された前記差を前記窩の3Dモデル(16s)としてコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記生成するステップは、
前記第1データセット(10b)の少なくともサブセットのコピーから、識別された前記3D体積密度モデル(16a)において共通して表現された識別された前記3D表面モデル(16b)の部分を除去することによって第4データセットを生成するステップと、
前記第4データセットをコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップと、
を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第1データセットから得られるラベル付けされた表面スキャンセグメントは、前記第2データセットから得られる対応するラベル付けされた体積密度スキャンセグメントにクロスマウントされる、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項6】
前記ラベル付けされた表面スキャンセグメント(10b)の第1データセットを前記ラベル付けされた体積密度スキャンセグメント(10a)の第2データセットにクロスマウントするステップは、ラベル付けされたセグメントの第5データセットを生成するステップであって、各セグメントが解剖学的対象物を表す結合3次元(3D)モデルを含むステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項7】
識別された前記3D表面モデル(16b)の境界を決定し、前記境界からカットライン(16bgl)を生成するステップと、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)上に前記カットラインを投影するステップと、
を含む、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)
【請求項8】
識別された前記3D表面モデル(16b)において共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の実質的にすべての部分を含む前記カットライン(16bgl)の側に、識別された前記3D表面モデル(16b)および/または識別された前記3D体積密度モデル(16a)を含む第6データセットを生成するステップを含む、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記第1、第2、第3、第4、第5および/または第6データセット、または識別された前記3D表面モデルおよび/または識別された前記3D体積密度モデルから第7データセットを生成するステップであって、前記データセットまたはモデルによってそれぞれ定義される表面における空隙が、生成される表面情報で前記空隙を埋めることによって増強されるステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項10】
前記空隙の前記境界の補間によって、および/または、標準的な解剖学的モデル化に基づいて、前記生成される表面情報を生成するステップを含む、請求項9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記標的抜去対象物が歯であり、前記窩モデル(16s)が前記標的抜去対象物(16)を載置する患者の歯窩の3次元モデルを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項12】
各表面スキャンセグメントおよび/または各体積密度スキャンセグメントの関連付けられた前記ラベルが、それぞれ、前記表面スキャンセグメントまたは前記体積密度スキャンセグメントを、歯、歯の一部、人口歯、歯周組織の一部、骨の一部、インプラント、または、患者の口腔および/または解剖学的領域に存在する他の対象物または構造に対応するものとして識別する、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項13】
前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンまたはクロスマウントバージョンのいずれかをコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップを含む、前記請求項のいずれかに記載の方法(100)。
【請求項14】
患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを自動的に生成するシステム(200)であって、実行された時に、請求項1から13のいずれかに記載の方法(100)を実施するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニット(201)を構成するコンピュータ可読命令をロードおよび実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータ処理ユニット(201)を備える、システム。
【請求項15】
1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットによって実行された時に、請求項1から13のいずれかに記載の方法を実施するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成するコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットによって実行された時に、請求項1から13に記載の方法を実施するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成するコンピュータ可読命令を具現化するコンピュータプログラム。
【請求項17】
患者の標的抜去対象の仮想抜去処置における、請求項1から13に記載の前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンまたはクロスマウントバージョンの使用。
【請求項18】
標的抜去対象物の実際の抜去処置が患者に対して行われる前、最中および/または1回の来院中において行われる、患者の標的抜去対象物を解剖学的に表す補綴物設計を生成するための、補綴物設計CAD/CAMソフトウェアツールにおける、請求項1から13に記載の前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンの使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
解剖学的治療計画および/または補綴修復物設計のためのデジタルソフトウェアツールは、骨、組織、神経管、臓器、その他の解剖学的構造/対象物/特徴などの隣接する解剖学的構造と共に得られる対象となる解剖学的対象物、ならびに、外科用インプラント、アバットメント、その他の固定システム、自然構造物の人工アナログ、その他の自然および人工的に配置された解剖学的構造などの人工構造の正確なスキャンデータに依存する。
【0002】
デジタル歯科技術の分野において、解剖学的構造のスキャンデータは、一般に光学的または放射線学的に決定される。口腔内表面構造から直接、または口腔表面構造の口腔外印象から3次元計測を行うための光学スキャナが普及しており経済的である。通常、表面データは三角形要素からなる表面メッシュで表され、STLまたは同様の表面定義フォーマットで、システム間で日常的に保存および交換される。
【0003】
デジタルボリューム断層撮影装置(DVT)やコンピュータ断層撮影装置(CT)などの放射線スキャナは、X線を使用して解剖学的構造のボリュームデータセットを生成する。これらのデータセットから、個々のスキャン要素(ボクセル)の強度値(ハウンスフィールド単位で測定)を分析し、ある閾値を超えるか下回るかを判定する閾値法を適用することによって、表面表現を決定することもできる。歯のような放射線学的に高密度な構造(以下、「体積密度」構造または対象物)は、このようにして識別することができ、識別された体積密度スキャン構造の境界面は、三角分割された表面データ(例えば、三角形表面メッシュ)としてモデル化することができ、これもSTLまたは類似の表面定義フォーマットで、システム間で保存および交換することができる。
【0004】
MRスキャンデータによる計算はより複雑であり、隣接するスキャン要素の勾配に基づいて機能する輪郭解析法を適用するのが望ましい。しかし、そのような場合にも、歯肉、歯齦、およびその他の組織(主に軟組織)のような体積構造または対象物を識別し、その境界面を三角分割された表面データとしてモデル化して、さらなる処理を行うことができる。
【発明の概要】
【0005】
説明した解析方法により、例えば可視表面などの所望の表面、または例えばスキャンデータ内の解剖学的対象物および/または構造間の対象物間表面または他の不可視表面などの境界表面の三角分割された表面データを、全てのモダリティ(撮像装置)について得ることができる。本発明の文脈において、体積密度スキャンデータは、例えば、どのように取得されたかを問わず、上述した全てのタイプのデータを包含し得るだけでなく、前処置ライン、セグメントライン、解剖学的目標物等の他のアルゴリズム的および/または対話的に決定された構造、ならびに、仮想抜去処置、仮想歯修復処置、仮想補綴物設計および配置処置等において使用されるための所望の接触点をも包含し得る。
【0006】
光学的表面スキャンデータは、典型的に、患者に高線量の放射線を照射することなく高い精度を達成することができるため、仮想歯修復物の評価または計算において好ましい。
【0007】
本開示の文脈において、歯修復部品という用語は、歯科審美性および/または欠陥の治療のために作製され得るあらゆる種類の対象物を包含する。例えば、インレー、オンレー、部分クラウン、クラウン、テレスコピッククラウン、ブリッジ、ベニア、インプラントアバットメント、部分補綴物および補綴物である。また、本開示の文脈において、簡略化のために、歯置換部品も、歯修復部品という用語に包含される。仮想歯修復物(以下では、より簡潔に歯修復物と称する)という用語は、歯修復物の適切な電子的表現、すなわち、十分な精度を有する歯修復部品のデジタル3次元表現、好ましくは表面表現を含むものとする。例えば、歯修復部品を製造するために、対応する仮想歯修復物のCAD/CAMデータセットを製造機械に転送することができる。
【0008】
歯欠損を治療する場合、通常、歯の前処置、すなわち、う蝕、古い充填材または欠損した歯の部分の除去が行われる。各歯に残るのは、残った歯質であり、その表面は、前処置された部分(空洞)と前処置されていない部分に分けられる。前処置されていない歯表面と前処置された歯表面の境界線は、前処置ラインと呼ばれる。前処置された歯の場合にのみ存在する前処置ラインに加えて、各歯は、歯肉および/または骨および/または隣接歯のような歯外構造物から歯を分離する少なくとも1つのセグメントラインも有する。これらの定義から分かるように、セグメントラインおよび/または前処置ラインは、前処置されていない歯表面の境界となる。本開示の文脈において、これらの境界線は、グラフィカルユーザインターフェースを使用することによって、主に対話的に、スキャンデータ内に配置され得るが、スキャンデータの表面曲率の分析に基づくアルゴリズム支援が、通常、その決定において使用される。
【0009】
スキャンデータの構造が複雑であり、また、複数の機能審美的基準(顎の動きを考慮した対合歯列への調整、接触点を考慮した隣接歯への調整、最適なマージンフィットを得るための前処置ラインへの調整、十分な機械的安定性を得るための最低材料強度の遵守、前歯領域における所望の歯形状の考慮など)を満たす必要があるため、カスタム歯修復物を設計するプロセスは、対話型コンピュータ支援設計ツールの支援を受けたとしても、歯科修復物設計の知識と経験を有し、そのようなツールを使用するための訓練を受けた人間を必要とする。
【0010】
顧客補綴物設計の複雑さに加えて、補綴物は既存の口腔状態から取り除かれた解剖学的対象物を置き換えるように設計されることが多い。例えば、設計者は、抜去された対象物の窩内に埋入されるインプラントに装着されるアバットメント上に配置される仮のまたは永久的な補綴物を設計することを任されることがある。設計者は、抜去した対象物が載置されていた残置窩内の患者の実際の解剖学的輪郭に基づいて補綴物を設計することで、より高い精度を達成することができる。そのため、解剖学的対象物を抜去した後、表面モデルを設計者に送る前に、その部位を光学的に再スキャンしなければならないことがしばしばあった。
【0011】
歯科治療においては、より即時性が求められるようになってきている。特に、1回の来院または従来不可能であった少ない来院回数で完了できる処置について、歯科治療の事前計画を短縮する新しい方法が模索されている。
【0012】
ある解剖学的対象物が抜去の対象とされている状況において、患者の口腔内で抜去される解剖学的対象物の代わりに直ちに所定の位置に載置できるように補綴物の設計を事前に計画するための方法論が模索されている。例えば、抜歯直後に(すなわち、来院中に)、インプラントを埋入し、カスタム仮アバットメントを載置することができるように、インプラントの埋入を事前に計画し、かつ、仮アバットメントの設計を事前計画することが望ましい場合がある。また、可能な限り即時性の状況に対応するために、アディティブまたはサブトラクティブ製造(例えば、それぞれ3Dプリンティングまたはミリング)によってアバットメントを設計および製造し、その来院中に患者の口腔内に載置することもまた望ましい場合がある。
【0013】
理想的には、補綴物は、解剖学的対象物の抜去時に形成される窩の輪郭にフィットし適合するように設計されるべきである。しかし、CAD/CAMシステムのような近年の補綴物設計ツールは、表面データ(3D三角形メッシュとして表現され、典型的にはSTL形式である)のみを受け取るため、骨や他の内部の構造および輪郭のような隠れた構造の情報を見逃してしまう。従って、補綴物設計ツールには、抜去された解剖学的対象物の窩プロファイルに関する情報はないが、設計者は、典型的に、その場所にフィットするように補綴物を設計する際に、抜去された解剖学的対象物の窩プロファイルを推定する。
【0014】
このため、このように設計された補綴物を患者の口腔内に配置する際に、適合不良や位置ずれが生じ、ひいては、患者の不快感やその他の治療関連トラブルにつながる可能性がある。本発明の目的は、公知の歯科修復物または補綴物設計および配置処置の欠点の少なくとも一部を緩和することである。特に、本発明の目的は、CAD/CAMツールを用いた歯科修復または補綴処置の事前計画の改善に役立つ方法およびシステムを提供することである。
【0015】
この目的は、独立請求項1に記載の、患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを自動的に生成するための、コンピュータで実行される方法、および、独立請求項14に記載の、患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを自動的に生成するシステムによって解決される。
【0016】
従属請求項2~13は、本発明の実施形態を表す。
【0017】
本発明によれば、コンピュータで実行される方法は、患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって自動的に生成する。前記標的抜去対象物は、患者の解剖学的構造における対象物を含む。前記方法は、患者の口腔の解剖学的領域の表面スキャン、および、同一または類似の解剖学的領域の体積密度スキャンに基づく。前記解剖学的領域は、少なくとも前記標的抜去対象物を含む。前記方法は、
ラベル付けされた表面スキャンセグメントの第1データセットを受信するステップであって、各表面スキャンセグメントは前記表面スキャンの表面スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の3次元(3D)表面モデルを含み、各表面スキャンセグメントは前記表面スキャンセグメントを識別する関連するラベルを有する、ステップと、
ラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの第2データセットを受信するステップであって、各体積密度スキャンセグメントは前記体積密度スキャンの体積密度スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の境界面の3次元(3D)体積密度モデルを含み、各体積密度スキャンセグメントは前記体積密度スキャンセグメントを識別する関連するラベルを有する、ステップと、を含む。
【0018】
表面スキャンの表面スキャンデータおよび/または体積密度スキャンの体積密度スキャンデータにおける対象物の認識およびセグメント化(セグメンテーション)は、例えば、表面スキャンデータおよび/または体積密度スキャンデータにおける解剖学的対象物および構造を互いに区別することができる適切に訓練されたニューラルネットワークによる分析などの自動データ分析に基づくか、または、支援され得る。
【0019】
ある実施形態において、各表面スキャンセグメントおよび/または各体積密度スキャンセグメントの前記関連するラベルが、それぞれ、前記各表面スキャンセグメントまたは前記各体積密度スキャンセグメントを、歯、歯の一部、人口歯、歯周組織の一部、骨の一部、インプラント、または、患者の口腔および/または解剖学的領域に存在する他の対象物または構造に対応するものとして識別する。
【0020】
本発明において、第1データセットからのラベル付けされた表面スキャンセグメントは、第2データセットから得られるラベル付けされた体積密度スキャンセグメントと共通の3D座標系でクロスマウントされる。ある実施形態において、クロスマウントは、対応付けてラベル付けされた表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントを使用することによって実施することができる。代替的に、またはそれに加えて、形状および体積が類似する表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントを決定することによって、クロスマウントを実施することもできる。
【0021】
ある実施形態において、クロスマウントは、共通の3D座標系における表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントの最良のレジストレーションを達成するために、表面スキャンセグメントおよび/または体積密度スキャンセグメントに適用されるスケーリング、並進変換および回転変換を含み得る。ある実施形態において、最大3つの空間次元に対するスケーリング係数、並進変換パラメータおよび/または回転変換パラメータなどのクロスマウントパラメータを記憶しておき、以下の処理において必要に応じて、別々に維持されたラベル付けされた表面スキャンセグメントおよびラベル付けされた体積密度スキャンセグメントまたはその一部を「重畳」するために使用することができる。
【0022】
ある実施形態において、クロスマウントは、ラベル付けされたセグメントの第5データセットを生成するステップであって、各セグメントは解剖学的対象物を表す結合3次元(3D)モデルを含み、結合3次元(3D)モデルはラベル付けされた表面スキャンセグメントおよびラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの両方のラベル付けされたセグメントを含む、ステップを含む。用途によっては、ラベル付けされた表面スキャンセグメントおよび/またはラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの一部を、解剖学的対象物を表す結合3次元(3D)モデルから除去してもよい。
【0023】
以下の開示の目的において、識別された3D体積密度モデルおよび識別された3D表面モデルにおいて共通して表現される部分が決定される場合、この決定は、第1データセットから得られるラベル付けされた表面スキャンセグメントおよび第2データセットから得られるラベル付けされた体積密度スキャンセグメントをクロスマウントする操作に基づいて行ってもよく、これにより、第1データセットから得られるラベル付けされた表面スキャンセグメントおよび第2データセットから得られるラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの関連付けが確立され、その関連情報が一時的または非一時的記憶コンポーネントに記憶される。あるいは、識別された3D体積密度モデルおよび識別された3D表面モデルにおいて共通して表現される部分を決定することは、第1データセットから得られる対応するラベル付けされた表面スキャンセグメントおよび第2データセットから得られる体積密度スキャンセグメントの関連付けを確立し、任意で、関連情報を一時的または非一時的記憶コンポーネントに記憶する、別の操作で決定してもよい。
【0024】
本発明において、1つまたは複数のコンピュータプロセッサは標的抜去対象を受信する。これには、手動で選択され得る標的抜去対象物の選択を受信すること、または、例えば、表面スキャンデータおよび/または体積密度スキャンデータにおいて、損傷または修正された対象物、対象物の解剖学的位置または向き、または、不健康な対象物などの抜去の対象となる可能性の高い対象物を識別することができる適切に訓練されたニューラルネットワークによって支援された選択を受信することが含まれる。
【0025】
ある実施形態において、標的抜去対象は、歯、または、例えば歯根などの歯の一部である。
【0026】
本発明では、体積密度スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D体積密度モデルと、識別された標的抜去対象物に対応する表面スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D表面モデルの両方が識別される。
【0027】
本発明の方法は、識別された3D体積密度モデルから、識別された3D表面モデルに共通して表現されている識別された3D体積密度モデルの部分を除いたものと等価である窩の3Dモデルを含むモデルを含む第3データセットを生成するステップを含んでいてもよい。
【0028】
本開示の目的において、窩の3Dモデルは識別された3D体積密度モデルの一部に実質的に対応するものと仮定する。
【0029】
ある実施形態において、窩の3Dモデルは、識別された3D体積密度モデルのうち識別された3D表面モデルに共通して表現されていない部分を決定することによって生成される。つまり、標的抜去対象物が歯である場合、窩モデルは、識別された3D体積密度モデルのうち、識別された3D表面モデルに共通して表現されていない部分(一般的に、歯根の少なくとも一部を含む)を決定することによって導出される。
【0030】
別の実施形態において、窩の3Dモデルは、識別された3D表面モデルにおいて共通して表現された識別された3D体積密度モデルの部分を決定することと、3D体積密度モデルから、決定された共通して表現された部分を除去することにより、決定された共通して表現された部分と3D体積密度モデルとの差を決定することとによって生成される。
【0031】
ある実施形態において、識別された3D体積密度モデルの決定された部分は、ネットワーク記憶コンポーネントを含む一時的または非一時的記憶コンポーネントであり得るコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに保存される。
【0032】
本発明の方法は、識別された3D表面モデルに共通して表現された識別された3D体積密度モデルの少なくとも一部、および/または、識別された3D体積密度モデルに共通して表現された識別された3D表面モデルの少なくとも一部を含むモデルを含む第3データセットを生成することをさらに含んでもよい。したがって、第3データセットは、例えば、歯のクラウンまたは補綴物などの、標的抜去対象物の可視部分の少なくとも一部の表現を含む。
【0033】
本発明の方法は、識別された3D体積密度モデルの少なくとも一部から、識別された3D表面モデルに共通して表現された識別された3D体積密度モデルの部分を除いたモデルを含む第3データセットを生成することをさらに含んでもよい。したがって、第3データセットは、例えば、歯根、インプラント、および/または、アバットメントのような標的抜去対象物の見えない部分の少なくとも一部の表現を含む。
【0034】
本発明の方法は、第1データセットの少なくともサブセットから、識別された3D体積密度モデルに共通して表現された識別された3D表面モデルの部分を除いたモデルを含む第3データセットを生成することをさらに含んでもよい。
【0035】
ある実施形態において、方法は、第1データセットの少なくともサブセットのコピーから、識別された3D体積密度モデルに共通して表現された識別された3D表面モデルの部分を除いた第4データセットを生成することを含んでもよい。したがって、第3データセットは、識別された3D表面モデルによって定義される標的抜去対象物の可視部分を除く、患者の口腔の少なくとも一部の可視部分の表現を含む。
【0036】
したがって、本発明によって生成される第3データセットは、標的抜去対象物の表現を含むかまたは含まない、患者の解剖学的領域の少なくとも一部の表現を含む。これは、補綴物の設計者が使用するようなCAD/CAMツールを用いた歯科修復または補綴処置の事前計画を改善するのに役立ち、患者の口腔内での補綴物の適合および位置合わせを改善する結果となり得る。さらに、第3データセットに提供される情報は補綴物の設計を改善するのに適しており、それにより、1回の同じ診察中にインプラントの埋入、カスタム仮アバットメントまたは永久アバットメントの設置、および、補綴物の装着を行うことができる可能性があり、これにより、患者の口腔内の抜去された解剖学的対象物の代わりに直ちに所定の位置に補綴物を設置できる得る。ある実施形態において、方法は、識別された3D表面モデルの境界を決定すること、および決定された境界からカットラインを生成することを含む。これは、識別された3D表面モデル境界の平滑化、直線化または平均化を含み得る。識別された3D表面モデルの表面定義と3D体積密度モデルの境界面との間の交差曲線を決定することも含み得る。その後、このように定義されたカットラインは、識別された3D体積密度モデルに投影され、識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルを含む第6データセットを、識別された3D表面モデルに共通して表現される識別された3D体積密度モデルの実質的に全ての部分を含むカットラインの一方側で生成するために使用され得る。従って、第6データセットは、患者における標的抜去対象物の可視部分と不可視部分との間の分画線を実質的に表す改善された境界を有する標的抜去対象物の可視部分の少なくとも一部の表現を含み得る。
【0037】
ある実施形態において、方法は、それぞれデータセットまたはモデルによって定義される表面に空隙がある場合に、第1、第2、第3、第4、第5および/または第6データセット、または、識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルのいずれか1つを増強し、これにより、生成された表面情報でそのような空隙を埋めることをさらに含む。生成された表面情報は、空隙の境界を補間することによって、および/または、解剖学的対象物および構造の対応する断面を生成することができる適切に訓練されたニューラルネットワークによって決定され得る標準的な解剖学的モデル化に少なくとも部分的に基づいて、生成され得る。したがって、生成された表面情報は、それぞれデータセットまたはモデルの既存の表面情報の着実な連続的進行を提供することができ、最良の場合には、データセットまたはモデルが不完全である位置における患者の解剖学的対象物または構造の表面または境界面の真正な表現を表す。
【0038】
ある実施形態において、方法は、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットのいずれか、および/または、それらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンを、ネットワーク化された記憶コンポーネントを含む一時的または非一時的記憶コンポーネントであり得るコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶することを含む。情報は、補綴物を設計するプロセスにおいてCAD/CAMシステムにインポートして使用するために、データ交換フォーマットまたはSTLのような表面定義フォーマットで保存してもよい。
【0039】
本発明は、患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを自動的に生成するシステムであって、実行された時に、1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成して、本発明の方法および前述の実施形態を実装するコンピュータ可読命令をロードおよび実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを備えるシステムにも関する。
【0040】
本発明のシステムのある実施形態において、システムは、第1、第2、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンまたは識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルの少なくともいずれか1つ以上のグラフィック表現を、閲覧および修正のためにユーザに表示するための、画像処理アプリケーションおよび電子ディスプレイ装置を含む。
【0041】
画像処理アプリケーションは、電子ディスプレイ装置と連動して、第1、第2、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンまたは識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルのグラフィック表現の表示を、これらのデータセットおよび/またはモデルが更新され、情報が追加または削除されるたびに、自動的に更新するように構成される。
【0042】
第1、第2、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンまたは識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルのグラフィック表現の表示に加えて、画像処理アプリケーションは、第1、第2、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンまたは識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルのグラフィック表現の表示を修正するためのユーザ入力に応答するディスプレイコントロールも提供し、これにより、例えば、表示される情報の視野角、回転またはピッチの修正を可能にする。
【0043】
これらのディスプレイコントロールに加えて、画像処理アプリケーションは、アクティブにされた時にディスプレイ上にグラフィック表現された対象物の少なくとも1つをユーザが選択できるようにする選択コントロールも提供する。画像処理アプリケーションは、画像処理アプリケーションのユーザによる選択コントロールを用いた選択操作を受信した後、電子ディスプレイ装置上のユーザの選択に応じて、第1、第2、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンまたは識別された3D表面モデルおよび/または識別された3D体積密度モデルのグラフィック表現において、ラベル付けされた表面スキャン画像セグメントおよび/または体積密度スキャン画像セグメントを強調表示することができる。
【0044】
画像処理アプリケーションは仮想抜去コントロールをさらに提供し、この仮想抜去コントロールは、アクティブにされた時に、選択コントロールを使用してユーザによって選択されたグラフィック表現された各対象物に対して、電子ディスプレイ装置に表示されたグラフィック表現から標的抜去対象物のグラフィック表現を削除して、窩モデルのグラフィック表現によってそれを補完することを可能にする。
【0045】
本発明は、1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットによって実行された時に、患者の標的抜去対象物の仮想抜去に使用する3次元モデルを自動的に生成するシステムの少なくとも一構成要素を実装するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成するコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読媒体にも関する。
【0046】
本発明は、1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットによって実行された時に、患者の標的抜去対象の仮想抜去に使用する3次元モデルを自動的に生成するシステムの少なくとも一構成要素を実装するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成するコンピュータ可読命令を具現化するコンピュータプログラムにも関する。
【0047】
本発明は、患者の標的抜去対象物の仮想抜去処置における、第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンまたはクロスマウントバージョンの使用にも関する。
【0048】
本発明は、患者の標的抜去対象物を解剖学的に表す補綴物設計を生成するための、補綴物設計CAD/CAMソフトウェアツールにおける、前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンの使用にも関する。この使用は、標的抜去対象物の実際の抜去処置が行われる患者の来院の前および/または最中(好ましくは1回の来院中)において行われ得る。
【0049】
このような使用により、抜去処置の正確な事前計画、ならびに、解剖学的に正しい補綴物、および、場合によってはアバットメントの設計および製造を、処置前または処置中に行うことを可能にすることによって、患者の来院回数を、多数回からたった1回という少ない回数にまで減らし得る。患者の解剖学的構造から標的抜去対象物を抜去する際、アバットメント/補綴物の装着は、その場で、標的抜去対象物の抜去直後に行うことができる。
【0050】
本開示は、哺乳動物(ヒトなど。以下「患者」という)の口腔内に対象物(歯またはインプラントなど)をぴったりと載置するように構成された解剖学的腔または窩(以下「窩」という)の解剖学的に正確な仮想3Dモデルを生成、表示、エクスポート/保存および使用するための装置、システム、グラフィカルユーザインターフェース、コンピュータ実装ツール、方法およびプロセスを提供する。
【0051】
本開示の文脈において、仮想3Dモデルは、物理的対象物(または窩)の3次元デジタル表現である。仮想3Dモデルは、コンピュータグラフィックス分野で一般的に知られ使用されているように、点群または三角形(または他の多角形)のメッシュとして表現されることが多い。説明した実施形態に従って実装される窩の仮想3Dモデル(または単に「窩モデル」)は、関連対象物を載置する患者の実際の窩の解剖学的構造を十分に正確に表現する仮想3Dモデルであり、患者の解剖学的領域(口腔など)の表面スキャンおよび解剖学的領域の体積密度スキャンのそれぞれに基づいて決定および生成される。
【0052】
表面スキャンおよび体積密度スキャンの両方において、スキャンされる解剖学的領域は、実際の窩に載置された対象物を少なくとも含む。一部の使用例では、窩モデルを生成する背景にある目的は、患者の実際の窩に載置される実際の対象物を抜去の対象(ここでは「標的抜去対象物」)とすることである。例えば、対象物は、抜去対象の歯(ここでは「標的抜去対歯」)または抜去対象のインプラント(ここでは「標的抜去インプラント」)を含み得る。
【0053】
患者の状況に特化した仮想窩モデルにアクセスし、そこから対応する洞察を得られることで、患者治療計画、特に患者の解剖学的構造に関連する診断および治療計画を改善することができる。例えば、抜歯、インプラント、アバットメントおよび/または人工クラウンなどの補綴物の装着を伴う治療計画を含む歯科治療計画を改善することができる。さらに、例えば、仮の治癒用アバットメントまたは永久アバットメントなどの解剖学的に正確な補綴物を設計するために必要なステップ数および患者の来院回数を低減することにより治療ワークフローを改善することができる。
【0054】
本明細書で説明するように生成された各窩モデルは、患者の解剖学的構造において載置される実際の対象物の外表面の輪郭に実質的に適合する。例えば、本発明の実施形態に従った歯窩モデルは、患者の実際の歯根の輪郭に適合するように、解剖学的対象領域(対象歯を含む)の体積密度スキャンデータ(例えばCBCTスキャンによる)に基づいて生成される。
【0055】
本発明は、図面と併せて、以下の詳細な説明によってさらに説明される。以下の詳細な説明において、特記する場合を除いて、同様の参照符号は同様の構成要素を示す。
【0056】
なお、以下の詳細な説明では本発明の特定の実施形態をより詳細に説明するが、1つの実施形態のみの文脈で説明されている特徴は、詳細な説明に記載されているか否かにかかわらず、本発明の他の実施形態の文脈でも、または他の実施形態と組み合わせても利用可能であることが意図されている(そのような特徴の組み合わせが意味のない結果をもたらす場合を除く)。以下の詳細な説明は、決して、本発明を特定の実施形態およびその特徴の組み合わせに限定することを意図するものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によって排他的に限定および定義される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本開示の実施形態による方法の第1の態様の概要を示すフロー図を表す。
図2】本開示の実施形態によるシステムのアーキテクチャ図を表す。
図3A】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3B】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3C】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3D】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3E】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3F】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3G】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3H】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3I】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3J】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3K】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3L】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3M】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図3N】本発明による窩モデルを生成する方法の本開示による例示的な実施形態を示す。
図4】本開示の実施形態による方法の第2の態様の概要を示すフロー図である。
図5A】本開示の様々な態様の第1の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図5B】本開示の様々な態様の第1の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図5C】本開示の様々な態様の第1の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図5D】本開示の様々な態様の第1の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図6】本開示の実施形態による方法の第3の態様の概要を示すフロー図を表す。
図7A】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7B】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7C】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7D】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7E】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7F】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7G】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7H】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7I】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図7J】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図8】本開示の実施形態による方法の第4の態様の概要を示すフロー図を表す。
図9A】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9B】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9C】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9D】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9E】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9F】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9G】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9H】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9I】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9J】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9K】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9L】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9M】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9N】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9O】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9P】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9Q】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9R】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9S】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
図9T】本開示の様々な態様の第2の例示的なグラフィカルユーザインターフェースの実装例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本発明の一態様は、患者の口腔内にある解剖学的領域内に対象物を載置する解剖学的窩を十分に正確にモデル化する仮想3次元窩モデルの生成である。実施形態は、このような窩モデルを生成する方法を含んでいる。
【0059】
図1は、図2のシステム200のようなコンピュータ実装装置において実行される、歯などの関連対象物を載置する患者の解剖学的領域の実際の窩の解剖学的構造を正確に表す3D窩モデルを生成する方法100のフローチャートである。方法100は、患者の口腔の解剖学的領域の表面スキャンおよび体積密度スキャン(共にシステム200のスキャンデータ220に格納されている)を受信するステップ101を含む(但し、スキャンされた解剖学的領域は、この例では、患者の実際の窩に載置されている実際の対象物の少なくとも一部の形態である、少なくとも対象対象物を含む)。
【0060】
方法100はさらに、対象解剖学的領域の表面スキャンおよび体積密度スキャンにおける画像認識およびセグメント化処理によって認識された対象物および/または特徴に対応する個々のセグメントを含むラベル付けされた表面スキャンセグメントの第1データセットおよびラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの第2データセット(共にセグメントデータ222に格納されている)を受信するステップ102を含む。ステップ101および102は、例えば遠隔サービス212によって、アプリケーション215aの実行外で起こり得る。
【0061】
例えば、表面スキャンデータ220は、遠隔表面スキャンサービス240によって生成することができる。表面スキャンサービス240は、以下のいずれか、または、その任意の組み合わせを行い得る:(光学スキャナまたはカメラなどの)表面スキャナから収集された表面スキャンデータを収集すること、表面スキャンデータをシステム200のプロセッサ201によってアクセスおよび読み取り可能な3次元モデルへ変換すること、電子ディスプレイ209上で表示する準備として必要に応じて別のフォーマットに操作または変換すること、システム200によって受信できるコンピュータ可読ファイルに保存し、スキャンデータ用に予約されたローカルメモリ220に保存すること。
【0062】
遠隔サービスの別の例として、体積密度スキャンデータ220は、遠隔体積密度スキャンサービス240によって生成され得る。体積密度スキャンサービス240は、以下のいずれか、または、その任意の組み合わせを行い得る:体積密度スキャナ(コーンビームコンピュータ断層撮影(CBCT)スキャナなどの体積密度スキャン装置を使用)から収集された体積密度スキャンデータを収集すること、システム200のプロセッサ201がアクセスおよび読み取り可能な3次元モデルへ変換すること、電子ディスプレイ209上で表示する準備として必要に応じて別のフォーマットに操作または変換すること、システム200によって受信できるコンピュータ可読ファイルに保存し、スキャンデータ用に予約されたローカルメモリ220に保存すること。
【0063】
別の遠隔サービス212は、セグメント化サービス244を含み得る。セグメント化サービスは、スキャンデータ(表面(IOS)または体積密度(CBCTまたはCT)スキャンデータ)を受信し、画像処理、抜去および分類を使用して、解剖学的対象領域を含む受信スキャン画像を様々な識別された対象物にセグメント化し、セグメントのそれぞれに分類タグを関連付ける。セグメント化サービス244は、セグメントを個々の仮想3Dセグメントモデルの形態で提供することができるが、個々の仮想3Dセグメントモデル(本明細書では単に「セグメントモデル」ともいう)は、患者の解剖学的な実際の部分または特徴のデジタル3D表現である。ある実施形態において、セグメント化サービス244は、各セグメントを、好ましくは(これに限定されないが)三角メッシュまたは点群としてSTL形式で、個々のデジタル3Dモデルとして提供する。
【0064】
遠隔サービス212の各々は、ネットワークアダプタを介してシステム200にデータを返し、そのデータは適切なバルクメモリ206(スキャンデータ200またはセグメントデータ222)に格納される。
【0065】
ステップ101および102のいずれかまたは両方は、アプリケーション215aの実行外で、例えば、ローカルメモリ204に格納され、システム200のローカルプロセッサ201によって実行される別のプロセスまたはアプリケーションによって実行され得る。他の実施形態において、ステップ101および102のいずれか一方または両方は、代替的または追加的に、アプリケーション215a内の一体的実行プロセスとして実行され得る。
【0066】
受信した表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントは、一般に、異なるモダリティ(よって、異なる(通常は独立した)スキャン機械/装置)を使用して得られるため、各スキャンモダリティによって生成されたスキャンデータは、そのデータを収集した特定のスキャン機械/装置に固有の3D座標系に従って収集、保存される。このような状況では、各スキャナから得られたスキャンデータを共通の3D座標系に整列させて、各スキャンから得られた類似対象物が照合され、同じ空間を占めるものとして表示される(それぞれが同じ対象物を表しているため、同じ空間を占めているはずである)ようにすることが重要となる。
【0067】
(ラベル付けされた)表面スキャンセグメントおよび(ラベル付けされた)体積密度スキャンセグメントが共通の3D座標系にクロスマウントされる(ステップ103)。共通の3D座標系へのクロスマウントの結果、スキャンされた解剖学的対象領域の同一患者対象物に対応する表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントの各対について、共通の3D座標系の3D空間内において「一致する」(すなわち、セグメント対の各セグメントの点が実質的にまたは正確に一致する)1つまたは複数の各点が存在するはずである。これらの一致点は、患者の実際の解剖学的対象物/特徴上の対応点に対応する。一致点は、特定のスキャンモダリティによって撮影することができた患者の解剖学的領域についてのみ存在する。
【0068】
従って、表面スキャンデータ220は表面可視画像データのみを含み、体積スキャンデータ220は表面および表面下の両方の画像データを含むので、点照合は、スキャンされた対象物の表面可視点に対応する体積密度スキャンセグメントの点についてのみ起こり得る(表面スキャンセグメントは表面下データ点を含まないので)。なお、表面スキャンセグメントと関連する体積密度スキャンセグメントのそれぞれの対応する(あるいは共通して表現される)対の点は、理想的には、共通の3D座標系で正確に一致すべきであるが、スキャンモダリティ間の精度の違いや、各スキャンモダリティ用に生成された3Dスキャンセグメントモデルの解像度および生成精度の違いにより、これらの点は「実質的に一致する」のみ、すなわち、誤差の範囲内で一致する場合がある。
【0069】
それでも、クロスマウントの結果、スキャンされた対象物に対応する(または対象物の中核をなす)表面スキャンセグメントは、対応する体積密度スキャンセグメントによって表される関連する対象物の類似領域と、3D座標系においてほぼ同一空間を占めるはずである。
【0070】
ステップ104において、1つまたは複数の標的抜去対象物を示す選択が受信される。
【0071】
この方法は、各標的抜去対象物について、患者の実際の窩内に載置される標的抜去対象物の一部の外表面境界に適合する窩の3Dモデルを生成するステップ106をさらに含む。これは、識別された標的抜去対象物に対応する体積密度スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D体積密度モデルを識別し、識別された標的抜去対象物に対応する表面スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D表面モデルを識別し、その後、(それぞれ各標的抜去対象物について)対応する(あるいは共通して表現される)識別された表面スキャンセグメントモデルおよび識別された体積密度スキャンセグメントモデルに基づいて窩の3Dモデルを生成することで行われる。
【0072】
ある実施形態において、ステップ106は、識別された表面モデルと実質的に同じ3D空間を占めない識別された体積密度モデルの共通して表現された部分を決定するステップ106aと、ステップ106aで決定された部分を窩の3Dモデルとして設定するステップ106bによって実施される。ステップ107において、生成された窩モデルをファイルに保存、および/または、後の使用または配布のために保存ファイルにエクスポートする。
【0073】
図2を参照すると、方法100は、コンピュータ実装システム200で実行され、コンピュータプロセッサ201によって実行された時に、この方法のステップを実行するコンピュータ可読メモリ202に格納されたコンピュータ可読命令を含む。実施形態において、この方法は、システム200のメモリ202に格納されたコンピュータ実行可能命令として、コンピュータ実装アプリケーション215a(または「ツール」)内に実装されるか、または、システム200のデバイス実装ネットワークアダプタ211を介して、遠隔サービスを介してアクセス可能である。
【0074】
アプリケーション215aは、ローカルまたは遠隔のコンピュータプロセッサ(図示されていないが、サービス112を実行する)によって実行された時、方法100のステップを実行するコンピュータ可読命令を含む。アプリケーション215aは、電子ディスプレイ209に関連して動作し得る。ある実施形態において、アプリケーション215aは、電子ディスプレイ209に表示および提示されるグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を含む。
【0075】
GUIは、患者の解剖学的対象領域の3次元モデルを表示するための3Dモデルビューペインを含むことができる。ビューペインに表示されるモデルは、患者の対象領域の表面スキャンおよび体積密度スキャンに基づいている。GUIは、限定はされないが、以下のような様々な操作を実行するようにユーザがアプリケーションに指示することを可能にする様々なユーザコントロールを含む:患者のスキャン記録を選択してロードすること、表示ビューを選択および操作すること、GUIに表示する内容を選択すること、患者のスキャンデータに含まれ得る対象対象物および/または対象対象物の識別子を選択すること、患者の歯科治療計画に関連して、インプラント、補綴物、材料などの識別子、説明および画像を選択および表示すること。
【0076】
このようなコントロールの1つまたは複数は、ユーザが患者スキャンデータ内に存在する対象物を標的抜去対象物として選択することを可能にする対象物選択ツールを含む。このようなコントロールの1つまたは複数は、標的抜去対象物が載置される窩の独立3Dモデルを生成する窩モデル生成ツールを含む。代替的にまたはそれに加えて、このようなコントロールの1つ以上は、ユーザによってアクティブにされた時に対象領域から選択された対象物を抜去するように動作する、仮想抜歯ツールを含む。
【0077】
代替的にまたはそれに加えて、このようなコントロールの1つまたは複数は、識別された3D表面モデルに共通して表現された識別された3D体積密度モデルの少なくとも一部、および/または、識別された3D体積密度モデルに共通して表現された識別された3D表面モデルの少なくとも一部に基づいて、露出した対象物(歯のクラウンなど)の少なくとも一部のモデルを含むデータセットを生成する抜去ツールを含む。
【0078】
代替的にまたはそれに加えて、このようなコントロールの1つ以上は、識別された3D体積密度モデルの少なくとも一部から識別された3D表面モデルに共通して表現された識別された3D体積密度モデルの部分を除いた部分に基づいて、隠蔽対象物(歯根など)の少なくとも一部のモデルを含むデータセットを生成する別の抜去ツールを含む。
【0079】
代替的にまたはそれに加えて、このようなコントロールの1つ以上は、表面スキャンの少なくともサブセットから、識別された3D体積密度モデルに共通して表現された識別された3D表面モデルの部分を除いたモデルを含むデータセットを生成するツールを含む。
【0080】
図3Aから図3Nは、対象物に関連する3次元表面スキャンセグメント(表面スキャンの表面スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の3次元表面モデル)および体積密度スキャンセグメント(体積密度スキャンの体積密度スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の境界面の3次元体積密度モデル)から3次元窩モデルを生成する、本発明の態様の例示的な実施形態を示す。図示の実施形態において、対象物は歯であり、生成された窩モデルは、歯茎の境目より下にある歯の部分の外形の一部(すなわち歯根)に相当する歯窩である。
【0081】
図3Aは、体積密度スキャンに基づいて生成された3D表面境界モデル1aの一例を示す。モデル1aの個々の構造は、患者の口腔状況の実際の構造に対応する。図示されるように、3D表面境界モデル1aは、他の個々の歯(ラベル付けされていない)の中でも、患者の実際の歯周組織2、骨3、および歯(Federation Dentair Internationale(FDI)表記法(歯科業界で一般的に使用される歯の番号付けシステム)に従って11、12、13、14、15、16および17とラベル付けされて示される)の解剖学的構造表現を具現化する。ある実施形態において、表面境界モデル1aは、体積密度スキャンで表された3D体積構造から生成され、X線写真スタック内の個々のスキャン要素の強度値(ハウンスフィールド単位で測定)を閾値処理するなどの画像認識およびセグメント化技術によって抽出される。ある実施形態において、表面境界モデル1aは、点群、三角形または他の多角形メッシュ、または他の3Dデジタルモデルを含む。
【0082】
図3Bは、図3Aと同じ解剖学的領域の表面スキャンに基づいて生成された3D表面モデル1bの例を示す。モデル1bの個々の構造は、患者の口腔状況の実際の構造に対応する。図示されるように、3D表面モデル1bは、患者の実際の歯茎組織2、および歯(FDI表記法に従って11、12、13、14、15、16および17としてラベル付けされて示される)の解剖学的構造表現を具現化する。患者の口腔内の骨は、歯肉および歯の表面の下にあるので、典型的には、骨情報は、表面スキャンモデル1bには存在しない。
【0083】
表面スキャンおよび体積密度スキャンは、同じ口腔内の対象領域をスキャンして得られるので、モデル1aおよび1bの両方は、患者の特定の同じ解剖学的構造(例えば、歯11、12、13、14、15、16および17、ならびに、歯肉2)を表すそれぞれのモデル解剖学的構造を含む。モデル1bは、表面スキャンで表された3D表面構造から生成された、点群、三角形または他の多角形メッシュ、または他の3Dデジタルモデルを含む。
【0084】
図3Aおよび図3Bで述べたように、体積密度スキャンモデル1aおよび表面スキャンモデル1bの両方は、(概ね同じ)解剖学的領域の表面モデルである。3D表面モデル1aおよび1bは、内部解剖学構造の表現を含まない。つまり、どちらのモデルも、モデル内の対象物の可視外表面の下にある窩または他の構造に関する情報を含まない。対象物が歯である図示の例において、これは、3D体積密度スキャンモデル(図3A)または3D表面スキャンモデル(図3B)のいずれにおいても窩が見えないため、歯を載置する歯窩の解剖学構造を確認することができないことを意味する。
【0085】
図3Aのモデル1aおよび図3Bのモデル1bの両方において、歯のクラウン部分のみがモデル化されており、どちらのスキャンモデルも、歯を載置する歯根または窩の解剖学構造を含んでいない。表面詳細は、患者の歯科治療を計画するときには有用であるが、外科治療を計画する場合、および、患者のための補綴物を設計する場合には、患者の口腔の可視表面の下の患者の解剖学構造に関連するモデル1a、1bで利用可能な表面下情報の欠如は、正確な計画および設計を妨げる可能性がある。
【0086】
正確な3D窩モデルの生成を容易にするために、ある実施形態において、それぞれの3D表面モデル1a、1bが生成されるそれぞれの体積密度スキャンデータおよび表面スキャンデータは、セグメント化アプリケーションに提出される。セグメント化アプリケーションは、遠隔サービス244であってもよいし、または、(ローカルメモリ204に格納され、1つまたは複数のプロセッサ201によって実行される)ローカルアプリケーションであってもよい。セグメント化プロセッサは、受信した表面スキャンデータおよび体積密度スキャンデータの各々を処理して、(画像認識機能を介して)個々の認識された対象物を自動的に認識し、(セグメント化機能を介して)ラベル付けされたカテゴリまたはクラスに抽出および分類する。
【0087】
例えば、対象物が患者の口腔内の歯である実施形態において、セグメント化プロセッサは、口腔内表面スキャンデータおよびCBCTまたは他の体積密度スキャンデータの各々を受信し、スキャンデータセットの各々を処理して、認識された対象物を、受信したスキャンデータにおいて認識された、個々に識別された歯、歯肉、骨、もしくは、詰め物、インプラントなどの他の対象物として認識およびラベル付けをする。セグメント化プロセッサは、認識された対象物に、認識された対象物の対象物タイプ(または分類)に関連する対応対象物タイプラベルを付ける。
【0088】
例えば、セグメント化プロセッサは、歯型16に対応する3Dモデルまたはスキャンデータ内の対象物を認識し、認識された対象物に対象物タイプラベル「16」(または、認識された対象物をその患者の実際の歯16に対応する固有の対象物タイプとして分類する任意の固有ラベル)を割り当ててもよい。セグメント化プロセッサは、スキャンデータ内の認識されたデータセグメントを、複数の個々のセグメントに、かつ、様々な認識された対象物タイプに対応するように、認識および分類(すなわち、「ラベル付け」)する。
【0089】
好ましくは、個々のセグメントは、実際のスキャン対象物(例えば、スキャンされた歯、歯肉の一部、骨、インプラントなど)を表す3D表面モデルを含む。ある実施形態において、各セグメントは、患者の口腔内の個々の対象物に対応し、関連するラベルを用いてそのようにラベル付けされる。各セグメントは、3次元の三角形(または他の多角形)メッシュとして表される自立3Dモデルを含む。
【0090】
図3Cを参照すると、セグメント化プロセッサは、患者の体積密度スキャンにおける個々の歯11、12、13、14、15、16および17の表現を認識し、歯11、12、13、14、15、16および17、歯肉2、および、骨3のいずれかの認識された各表現を、対応する独立したセグメント11a、12a、13a、14a、15a、16a、17a、2aおよび3aにセグメント化し、全体として、セグメント化された体積密度スキャン表面モデル10aを形成する。各セグメントは独立した表面メッシュ、例えば、3D三角形メッシュに変換され、各セグメントは独立して選択することができる(例えば、後述するようにグラフィカルユーザインターフェース(GUI)でセグメント化されたモデルを提示する場合など)。
【0091】
なお、セグメント11a~17a、2a、3aは、体積スキャンデータから抽出されたものであるため、各セグメントは、体積密度スキャンから得られる利用可能な全情報を含む。このことは、患者の口腔内外の可視表面の下にあるために表面スキャンでは撮像できない対象物(神経管など)および対象物の一部(歯根など)であっても、体積密度スキャンセグメントでモデル化されることを意味する。各体積密度スキャンセグメントは、患者のスキャンされた解剖学的領域の表面の下であっても、(体積スキャンデータにおいて撮像されたものに基づく)完全な対象物情報を含む。従って、歯11a~17aの各々は、セグメント化されたモデルにおいて明瞭に見える歯根情報を含む。
【0092】
同様に、図3Dを参照すると、セグメント化プロセッサは、患者の表面スキャンにおいて個々の歯11、12、13、14、15、16および17の表現を認識して、歯11、12、13、14、15、16および17のいずれかならびに歯肉2の認識された各表現を、対応する独立選択可能なセグメント11b、12b、13b、14b、15b、16bおよび17bおよび2bにセグメント化して、これにより、全体として、セグメント化された表面スキャン表面モデル10bを形成し得る。各セグメントは、独立した表面メッシュ、例えば、3D三角形メッシュに変換される。
【0093】
セグメント化されたモデル10aは、患者のスキャンされた解剖学的領域のすべてのセグメントを含むが、各セグメントは、対応するスキャンされた対象物の独立選択可能な3Dモデルである。したがって、各セグメント11b~17bおよび2bは、例えば図3H(患者の歯16に対応する歯セグメント16bを単独で示す)に示すように、単独で見ることができる。歯セグメント16bは、表面スキャンに存在する歯16の部分のみを含む。したがって、クラウン(歯肉境界より上にある歯16の部分)のみが表面スキャン中に見えるので、歯セグメント16bは歯16のクラウンのみを表す。
【0094】
図3Eは、セグメント化された体積密度スキャン表面モデル10aおよびセグメント化された表面スキャン表面モデル10bを共通の3次元座標系にクロスマウントして示す。表面スキャンデータおよび体積密度スキャンデータのそれぞれを取り込むために、通常、独立した撮像システムが使用される。例えば、口腔内スキャナ(IOS)が、患者の口腔内対象領域の表面スキャンを取り込むために使用され、CBCTスキャナが、患者の体積密度スキャンを取り込むために使用され得る。重要な情報を提供する上で、これら両スキャンが重要であり、互いに補完し合って、患者の実際の口腔状況のより完全な画像を提供する。表面スキャナ(光学スキャナなど)は、患者の歯列の視覚的トポグラフィの非常に高解像度の詳細を撮影することができるが、表面の詳細のみを撮影することができ、内部の詳細を撮影することはできない。
【0095】
対照的に、体積密度スキャン(CTスキャンまたはCBCTスキャンなど)は、顎、完全歯(歯根を含む)、および、神経経路の寸法および密度など、患者の歯列の内部体積および密度の詳細をキャプチャすることができる。表面スキャンおよび体積密度スキャンを合わせて、歯科治療計画および補綴物製造プロセスの基礎を形成することができる。
【0096】
独立した撮像システムは、スキャンを取り込む撮像システムの特定の3D座標系に対して画像データを取り込むため、独自の3D座標系を持つ単一のビューペイン内にスキャンをクロスマウントするには、両スキャンを互いに整合させる必要がある。このプロセスは、しばしばスキャンマッチングまたはレジストレーションと呼ばれる。3Dメッシュを単一の3D座標系に整合させる方法が存在する。
【0097】
ある実施形態において、表面スキャンデータおよび体積密度スキャンデータの各々は、個々の歯および顎に対応する3D三角メッシュセグメントにセグメント化され、その後、各歯の表面スキャンおよび体積密度スキャンの各々から対応する歯セグメントのキーポイントを決定し、その後、共通の3D座標系にキーポイントを整合させる。このプロセスは、例えば、Dental Wings社(Straumann Groupの会社)が提供するCoDiagnostix(商標)歯科インプラント計画ソフトウェアを使用して実行することができる。
【0098】
なお、図3Eにおいて、それぞれのセグメント化されたモデル10aおよび10bのそれぞれのセグメント(11a、12a、13a、14a、15a、16a、17a、2a、および、11b、12b、13b、14b、15b、16bおよび17bおよび2b)の位置は、患者の口内のそれぞれ同じ実際の解剖学的構造(11、12、13、14、15、16、17および2)に対応している。そこから分かるように、各スキャンタイプ(例えば、内部または表面)から得られる同じ実際の解剖学的構造の部分に対応するセグメントが、同じ3次元座標系に置かれることが非常に重要である。それらが適切にクロスマウントされると、同じ実際の解剖学的構造を表すセグメントは、図示したように、実質的に一致する。
【0099】
ある実施形態において、セグメント化プロセッサがスキャンデータを処理して、解剖学的構造タイプのそれぞれの複数のインスタンスを含むラベル付けされたトレーニングデータのセットに基づいて、スキャンデータの一部を識別し、解剖学的構造タイプに分類された個々のセグメントに分類する。ある実施形態において、セグメント化プロセッサは、異なる歯、歯肉、骨、および、他の天然および人工の解剖学的構造(例えば、インプラント、補綴物など)を含むかまたはそれらが欠損している、異なる解剖学的構造の状況を有する多数の異なる人々から得られたスキャン画像の大規模なデータセットで訓練された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)である。
【0100】
図3Fは、歯のスキャンセグメント16b(図3D参照)が表面スキャンから除去された場合に遭遇する問題を示す。図示したように、クラウンセグメント16bが除去されると、モデル10bのクラウン16bが元あった場所に、穴16cが生じる。セグメント化された表面スキャン3Dモデル10bが表面スキャンデータのみに基づいて生成され、骨または歯根情報のような他の表面下の情報を含まないため、これは予想されることである。したがって、セグメント化された表面スキャンモデル10b(図3D参照)から歯セグメント16bが選択され、除去されるとき、利用可能な窩情報はなく、表面スキャンモデル10bは、除去される前に歯セグメント16bがあった場所である穴16cのみを有する。
【0101】
図3Gは、歯セグメント16bが除去された後のセグメント化された表面スキャン3Dモデル、および、セグメント化された体積密度スキャン3Dモデル(図3C)から得られる歯セグメント16aが同じ3D座標系に共マウントされている状態を示す。図3Hは、体積密度スキャンモデル10bの他のセグメントから分離および離間した歯セグメント16aを示す。歯セグメント16aは、クラウン部分16aおよび歯根部16aを含む。なお、歯16の歯根部分16aは、幹16atおよび3つの個々の歯根(舌側歯根16ar_l、中頬側歯根16ar_mbs図3Hでは見えない)、および、遠位頬側歯根16ar_dbr)を含む。歯16は、3つの歯根を有することができるが、他の歯は、1つの歯根のみを有するか、または2つの歯根または追加の歯根を有し得る。簡略化のため、本明細書において、任意の歯の幹および個々の歯根を総称して「歯根」と呼ぶ場合がある。クラウン16aのみが、表面スキャンにおいて歯肉縁の上に見える。歯根部16aは、歯肉ラインの上方において、肉眼または口腔内スキャナのカメラでは見えない。
【0102】
図3Iは、(図3Gのセグメント化された表面スキャン3Dモデル10bから得られる)個々の歯セグメント16bを示す。前述のように、歯のクラウンのみが表面スキャンのカメラには見えるので(クラウンは歯肉ラインより上にあり、肉眼およびカメラのレンズの両方で見ることができるので)、歯セグメント16Bは歯16のクラウンのみを表している。
【0103】
なお、表面スキャンおよび体積密度スキャンの両方が同じ対象領域を撮像するため、両方のスキャンが同じ実際の対応する解剖学的構造に関連する表面情報を含む(各スキャンが同じ領域をスキャンしたと仮定して)。これは、歯のクラウンのような目に見える表面については、表面スキャンおよび体積密度スキャンの両方がそれぞれ、歯のクラウンに関連する表面情報または表面境界情報を含むことを意味する。
【0104】
光学センサーを使用した表面スキャンは、より高解像度の画像を生成する傾向があり、その結果、詳細度の高い表面3Dモデルが得られる。体積密度スキャンは、通常、光学スキャンと同程度の精度が得られないか、または光学スキャンと同程度の精度を得るには医学的に安全でないモダリティを用いる。例えば、CTまたはCBCTモダリティを含むX線技術を使用して生成された体積密度スキャンは、X線放射に基づいており、高線量のX線を使用して高精度の画像を得ることができるが、それは患者にとって医学的に安全ではない。従って、患者に使用されるCTおよびCBCTモダリティは、人体にとってより安全であるように、X線放射量を非常に低く設定することが要求されている。その代償として、画像の精度は低くなる。従って、表面スキャンから得たクラウン表面データは、一般に、体積密度スキャンから得られるクラウン表面データよりも詳細な情報を含むことになる。
【0105】
抜歯後の患者の口腔状況の3Dモデルを生成するために、アプリケーションは、体積密度スキャン歯セグメント16aの歯根部16aを保持し、クラウン部分16aを除去する。これを行うために、アプリケーションは、表面スキャン歯セグメント16bの下縁に沿った点に基づいて、体積密度スキャン歯セグメント16bの周囲の歯肉ラインを決定する。
【0106】
図3Jは、表面スキャン歯セグメント16aおよび体積密度スキャン歯セグメント16bをクロスマウントした状態を示している(共に同じ3D座標系内に表示されている)。図示したように、歯肉ライン16bglは、表面スキャン歯セグメント16bの下縁に対応する点の集合である。
【0107】
アプリケーションは、歯肉ライン16bglの位置を知っているので、アプリケーションの特定の3D座標系内で表面スキャン歯セグメント16bが位置する歯肉ライン(カットラインとも呼ばれる)の同じ側のすべての点としてクラウン部分16aを計算する。
【0108】
簡単に言えば、アプリケーションは、3D座標系領域における表面スキャン歯セグメント16b(すなわち、クラウン)と同じ体積に一致または同じ体積内に実質的に収まる体積密度スキャン歯セグメント16aの全ての点を除去する、すなわち、体積密度スキャン歯セグメントおよび表面スキャン歯セグメントの対応する部分は共通して表現される。より簡単に言えば、歯根部16aは、16aから16bを減算する(および、必要に応じてあらゆる異常値点を除去する)ことによって得られる。図3Kは、体積密度スキャン歯セグメント16aからクラウン部分16aを除去した後の歯根16aを示す。これは表面モデルであるため、セグメントの外側点のみが3Dモデルに存在し、よって、クラウン部分16aがセグメント16aから除去されると、内部16ar_interiorは空になる。歯根部16aの形状および形態は、体積密度スキャンから得られた個々のセグメントの表面モデルから定義されるように、歯根16aの外面上の点によってのみ定義される。
【0109】
したがって、歯根の内側の輪郭は、歯根自体の外面の輪郭に沿う。よって、残りの歯根16a図3Fの(クラウンセグメント16aが除去された)表面モデル10aと共に表示し、歯16が抜去された患者の口腔状況を表す表面3Dモデル10dを生成してもよい。これを図3L図3Mおよび図3Nに示す。図3Lは、穴16cおよび窩輪郭16s(16bから抜去された16brによって表される)を示すために舌側を見た、実質的に水平面に沿った3Dモデル10dを示す。図3Mは、図3Lと同じ水平面に沿ってモデル10dを別の方向から示し、モデルの後側から見た図である。この視点からは、窩の輪郭が見えやすい。図3Nは、歯16が仮想的に抜去された窩を覗き込んだモデル10dのさらに別の図を示す。窩16sの輪郭が見えており、歯16の仮想抜去前に3つの個々の根尖のうちの2つが載置されていた場所を示している。
【0110】
窩10Sは、幹16Bt、および、個々の歯根のそれぞれが仮想抜歯前に載置されていた輪郭を含む。図示したように、窩16Sは、幹窩部分16atと、舌側根16ar_l、中頬側根16ar_mbsおよび遠位頬側根16ar_dbrにそれぞれ対応する舌側根窩16sr_l、中頬側根窩16sr_mbsおよび遠位頬側根窩16sr_dbrを含む3つの個別根窩とを含む、抜去された歯の根の輪郭に沿う。
【0111】
歯の体積密度スキャンセグメントモデルは、歯対象物の外側(境界)表面のみを含むため、歯自体の内部に関する情報を含まない。つまり、セグメント化のために、セグメント化プロセッサは、歯の内部のモデル化を含むことなく、歯の外表面の3Dメッシュを生成する。歯のような閉じた対象物の場合、3Dメッシュモデルも閉じた三角形メッシュとなる(任意の頂点に関連付けられた辺および三角形状の面の数は等しい)。したがって、切断された根セグメント16a(すなわち、クラウン部分16aが除去されたセグメント16)の内部は空であるため、根セグメント16aの内側表面は、根セグメント16aの外側表面と同じ輪郭に沿う。すなわち、内側表面は、根セグメント16aの同じ外壁にすぎないが、壁の内側から見たものである。体積密度スキャンセグメント16aからクラウン部分16aを除去すると、オープンメッシュができる(すなわち、メッシュ内に少なくとも1つの頂点が存在し、その頂点に関連付けられる辺の数がその頂点に関連付けられる三角形状の面の数を超える)。本明細書において、辺面とは、(1つの辺を共有する)隣接面数が、その面の辺数と等しくない面である。体積密度スキャンセグメント16aのクラウン部分16aを除去する文脈において、体積密度スキャンセグメント16aの残りの部分、すなわち切断された根元セグメント16aは、マージンライン(クラウンが歯肉ラインに接する部分)に沿った1組の辺面を含み、オープンメッシュとなる。切断根セグメント16aの内部には情報がないため、オープンメッシュの内面は切断根セグメント16aの外面と同一である。
【0112】
本開示の第2の態様は、これまで(例えば、図3A図3Nに関連して)説明した3D窩モデル生成の方法論を組み込んだ仮想対象物抜去ツールに関連する。このような仮想対象物抜去ツールは、様々な解剖学的治療計画および設計ソフトウェアツールにおいて実装することができる。
【0113】
例えば、限定はされないが、様々な実施形態において、仮想対象物抜去ツールは、歯科治療計画ソフトウェアツール、インプラント計画ソフトウェアツール、および/または、歯科補綴物設計製造計画(CADCAM)ソフトウェアツールにおいて、仮想抜歯ツールのいずれかおよび全てに関連して決定および生成される。例えば、歯科抜歯処置において、本明細書に提示される新規な装置、システム、グラフィカルユーザインターフェース、コンピュータ実装ツール、方法およびプロセスは、患者からの実際の抜歯の前に、電子ディスプレイ上で患者の歯の仮想抜歯を仮想的に実行することを可能にする。
【0114】
仮想抜歯ツールにより、歯科専門家は、対象物を載置する実際の窩であって患者の口腔から対象物を抜去した後にも残留して露出する実際の窩の輪郭を正確に表す高精度のモデルを見ることができる。窩モデルは、標的抜去歯を仮想的に除去した後に(患者の口腔の周辺領域とともに)生成および表示され得る。窩モデルは、標的抜去歯を仮想的に除去した後に、(患者の口腔の周辺領域とともに)生成および表示され得る。窩の輪郭は正確に表現され、窩内部は、患者の実際の歯(歯根を含む)の外表面の歯肉ライン(すなわち、マージンライン)より下の外形に沿う。
【0115】
窩モデルを用いて仮想対象物抜去を行うことが可能であり、それにより、標的抜歯対象物(歯など)を解剖学的対象領域の3Dモデルから抜去し、仮想3D窩モデルをモデルに追加する(または、モデルとともに表示できるようにする)ことができる。対象物を抜去し、仮想窩を可視化した3Dモデルを表示することは、それ自体、患者の解剖学的構造から実際に対象物を抜去する際に役立つ。さらに、後述する歯科インプラント計画および補綴物設計計画のような、その後の治療計画において有用である。
【0116】
図4を参照すると、仮想対象物抜去方法400は、解剖学的対象領域の表面スキャンおよび体積密度スキャンを受信するステップ401と、解剖学的対象領域の表面スキャンおよび体積密度スキャンにおいて認識された対象物に対応する表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントを受信するステップ402とを含み得る。ステップ401および402は、図1の方法に関連するステップ101および102の議論と同様に、アプリケーションの実行外で行われてもよいし、または、アプリケーションと一体であってもよい。
【0117】
方法400は、表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントを共通の3D座標系にクロスマウントするステップ403をさらに含み得る。ステップ404において、方法は、少なくとも、標的抜去対象物に関連付けられたクロスマウントされたセグメントおよび隣接するクロスマウントされた対象セグメントを、電子ディスプレイに表示することを含む。ステップ405において、方法は、1つまたは複数の標的抜去対象物の選択を受信することを含む。ステップ406において、方法は、選択された対象となる対象物に関連付けられた表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントを識別することを含む。ステップ407において、方法は、選択された各標的抜去対象物について、選択された標的抜去対象物に対応する3D窩モデルを生成することを含む。
【0118】
方法400は、選択された標的抜去対象物に対応する識別された表面スキャンセグメントおよび体積密度スキャンセグメントのそれぞれをディスプレイから除去し、生成された3D窩モデルを電子ディスプレイに表示するステップ408をさらに含み得る。方法400は、生成された3D窩モデルおよび解剖学的対象領域の関連セグメントを含み、選択された標的抜去対象物に対応するセグメントは含まない抜去歯モデルを表す3D表面モデルを保存および/またはエクスポートするステップ409をさらに含み得る。
【0119】
ステップ401、401、403、405、406および407のいずれかの機能は、図1のそれぞれのステップ101、102、103、104、105および106に関連して説明したように実装することができ、または、図1の関連する方法ステップの機能を実行し、生成された3D窩モデルを方法400を実行するツールに返す3Dモデル生成ツール(図2の215a)を呼び出すことによって実装することができる。
【0120】
方法400は、図2に示すシステム200のようなシステムで実行されるコンピュータ実装仮想対象物抜去アプリケーション215bとして実装することができる。仮想対象物抜去アプリケーション215bの様々な態様は、システム200のローカルメモリ204に格納され且つプロセッサ(複数可)201によって実行された時に方法400の特徴および態様を実装し得るコンピュータ命令として実装され得る。
【0121】
コンピュータ命令は、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)を実装する命令を含んでいてもよく、このGUIは、ユーザに対峙する(「フロントエンド」)グラフィカルユーザインターフェース環境と、GUI環境制御を介して受信されるユーザ入力によって指示される処理を実現する機能を実行する潜在処理(または「バックエンド」)GUIとを含み得る。フロントエンドGUIは、ユーザ制御、入力およびデータを入力装置207を介して受信し、患者データを環境にロードし得る入力コントロールを含む。フロントエンドGUIは、ユーザコントロール要素およびビューペインなどの出力表示領域をさらに含み、ユーザ制御、スキャンデータおよびモデルの様々なビュー、および、他の情報が、GUIコントロール設定およびそのようなコントロールへのユーザ入力に基づいて、出力装置208、209を介して表示および出力される。
【0122】
図5A図5Dは、歯科治療計画ワークフローにおける様々なステップ中のグラフィカルユーザインターフェース(GUI)ディスプレイ環境500の例示的な実施形態を示す。GUIディスプレイ環境は、歯科治療計画アプリケーション215bを実装するシステム200の電子ディスプレイ209に表示され得る。GUIディスプレイ環境500はコントロール501(個別に図示せず)を含み、これにより、ユーザは、患者のスキャンデータ220を、選択して、システム200のバルクメモリ206またはシステム200を介してアクセス可能な外部メモリ装置(図示せず)またはネットワークアダプタ211を介して遠隔サービス212からアクセス可能な外部メモリ装置(図示せず)上にロードすることが可能になる。
【0123】
上述の本発明の態様の文脈において、スキャンデータ220は、患者の解剖学的対象領域の表面スキャンデータおよび体積密度スキャンデータを含む。ある実施形態において、表面スキャンおよび体積密度スキャンの両方は、歯科治療計画アプリケーションが起動される前に取得され、他の実施形態において、表面スキャンデータおよび体積密度スキャンデータの一方または両方は、アプリケーション215bの使用に関連して取得される。
【0124】
例えば、遠隔サービス212は、光学スキャナと通信する光学スキャナアプリケーションを含んでいてもよく、このアプリケーションは、患者の口腔状況における対象領域の口腔内スキャンの最中または完了後に、光学スキャンデータを歯科治療計画アプリケーションに通信する。同様に、遠隔サービス212は、体積密度スキャナと通信する体積密度スキャナアプリケーションを含んでいてもよく、このアプリケーションは、患者の口腔状況における対象領域の口腔内スキャンの最中または完了後に、体積密度スキャンデータをアプリケーション215bに通信する。
【0125】
アプリケーション215aは、GUIディスプレイ環境500におけるグラフィックコンテンツの表示を管理するが、これは、マウス、キーボード、ジョイスティック、音声認識などのユーザ入力装置を通して受信したグラフィカルコントロールに対するユーザ入力を監視することを含む。ユーザ入力は、アプリケーションの実質的な機能に固有の様々なアプリケーション機能、またはディスプレイに表示される機能のレイアウトまたは内容を変更するためのGUI機能を呼び出すなどの操作に対応していてもよい。より詳細には、フロントエンドGUIは、ユーザ入力コントロールを表示し、機能コントロールに関連付けられたユーザ入力を監視する。ユーザ入力コントロールに関連付けられたユーザ入力を受け取ると、GUIは、特定のユーザ入力コントロールおよびユーザ入力のタイプおよび内容に対応する適切な機能を呼び出す。GUIは、バックエンドGUIと通信するバックエンドプロセスにも応答し、バックエンドGUIは、フロントエンドGUIと通信し、電子ディスプレイ上に情報を表示したり、表示を削除したり、および/または、表示を変更する。
【0126】
このようなユーザ選択機能によって、限定はされないが、モデル、ビュー、セグメント、および/または、注釈の表示、表示の削除、および、表示の変更、ならびに、GUIディスプレイ環境500に表示される様々なユーザコントロールおよび情報の表示、表示の削除、および、外観の更新、ならびに、限定はされないが、実質的な治療評価、実質的な治療計画、治療または処置(抜歯、インプラント埋入、補綴物の設計および配置など)の仮想実行を含む、アプリケーション215bの実質的な機能的特徴を容易にするための情報の受信および返送を行い得る。
【0127】
図5Aを参照すると、GUIディスプレイ環境500は、ファイル管理、一般的なディスプレイコントロール、および、GUIディスプレイ環境において一般的な他のコントロールなどのグローバルコントロール501を含む。例えば、コントロール501は、ファイル選択コントロール、ファイル保存/エクスポートコントロール、ビューペインフォーマットコントロールなどを含んでいてもよい。GUIディスプレイ環境500は、アーチおよび個々の歯モデルコントロールなどの患者データに固有のコントロール502も含む。
【0128】
GUIディスプレイ環境500は、抜歯コントロール512を含む機能的コントロール503を含む。抜歯コントロール512は、概ね単一のコントロールとして示されているが、情報を表示したり、情報の要求を表示したり、ユーザ入力を受け取るためのポップアップディスプレイパネルのガイド付きダイアログまたは他の周知のGUI対話技法などの複数のコントロールを含み得る。GUI500はまた、患者のスキャンデータから得られ、コントロール502の選択コントロールを介して選択されるような、選択された患者の口腔状況の3D解剖学モデル(またはその選択された部分)を表示するための少なくとも1つのビューペイン503を含み、それを表示する。
【0129】
コントロール501は、選択された時にローカル、バルクまたは遠隔メモリからシステム200のバルクメモリ206への患者の表面および体積密度スキャンデータ220をユーザが選択することを可能にする1つまたは複数のコントロール(図示せず)を含む。ある実施形態において、患者スキャンデータ220が最初にロードされると、GUIディスプレイ環境500は、患者の口腔状況の視覚的概観をディスプレイ上に提示するために、1つまたは複数のビューペイン503(1つのみ図示)を表示してもよい。図5Aにおいて、ビューペイン503は、体積密度スキャンの3Dモデル10Aを表示している。環境500は、体積密度スキャンデータに基づく患者の口腔状況の様々な追加ビューを含んでいてもよい。例えば、環境500は、パノラマビューペイン、軸方向ビューペイン、断面ビューペイン、および、接線ビューペイン(図示せず)を含んでいてもよい。
【0130】
コントロール512を介してアクセス可能な仮想抜歯ツールの重要な目的は、抜去のために選択された1つまたは複数の歯または他の対象物の仮想抜去後の患者の口腔内の状況を仮想的に表現することである。例えば、歯科治療アプリケーション215bにおいて、歯が仮想的に抜去されてGUIディスプレイ環境500内に表示された時に結果的に表示される3Dモデルは、標的抜去歯の抜去時に肉眼で見えるようになる歯窩の表現を含むべきである。
【0131】
従来、歯科治療計画アプリケーションおよび歯科補綴物設計ソフトウェア(歯科CAD/CAMなど)ソフトウェアは、スキャンデータから生成された対象物表面モデルが表面下情報を含まないため、抜去歯の窩の正確な詳細を提供することができなかった。先行技術の歯科治療計画ツールおよび/または歯科補綴コンピュータ支援設計(CAD)ツールおよびコンピュータ支援製造(CAM)ツールとは対照的に、仮想抜歯ツールは、患者の歯列の表面スキャンおよび体積密度スキャンの両方から情報を抽出し、両方のスキャンタイプから同じ標的歯に対応する情報を利用して、歯の抜去時に残される窩の高度に正確な解剖学ベースの表現を自動的に決定し、提供する。アプリケーション215bは、抜去の対象となる選択された歯の窩の輪郭を自動的に決定し、表示、保存および/または抜去のために窩の仮想3Dモデルを生成する仮想抜歯ツール(コントロール512を介してアクティブにされる)を提供する。
【0132】
図5Aに示すように、ユーザは、マウス(図示せず)を介してグラフィカルカーソル520をコントロール512上に移動させ、コントロール512上でマウスクリックすることによって、抜歯コントロール512を選択して、仮想抜歯ツールをアクティブにすることができる。図5Bは、抜歯コントロール512がアクティブにされた時にGUI環境500に表示されるポップアップダイアログ513の実施形態を示す。図示したように、ダイアログは、アプリケーション215bのユーザが仮想抜歯のために1つまたは複数の個々の歯を選択することを可能にする歯選択マップを含んでいてもよい。
【0133】
ある実施形態において、ユーザは、チャート内で個々の歯をクリックすることによって、標的抜去歯としてそのような歯を選択し得る。ユーザは、それぞれの選択クリックボックスまたはラジオボタンまたは他のそのような選択機能を選択することによって、窩の生成時にツールによって生成された窩モデルを保存する指示、および/または、抜歯モデル(ビューペイン503内のモデルから標的抜去歯/歯を削除して、そのような標的抜去歯/歯のために生成された窩モデルを追加したものを含む)を抽出する指示を任意に選択することができる。ユーザは、標的抜去歯/歯および保存/抽出オプションの選択が終わると、選択ボタン517をクリックして抜歯ツールを起動することができる。
【0134】
図5Cは、3D抜歯モデル10Dの後面図(上顎アーチを患者の正面に向かって背面から見た図)を示しており、この3D抜歯モデル10Dは、歯16が抜去された窩に対応する3D窩モデル16Sをより簡便に示している。窩モデル16Sは、歯16が抜去された3D表面スキャンモデルと共に表示される。図5Dは、同モデル10Dを下方から見た図(上顎に向かって下から見上げた図)である。図示したように、歯16は欠損しているが、窩16Sの内部16cは視認可能であり、抜去された歯16の歯根の輪郭に沿っている。
【0135】
仮想抜歯は、歯科インプラントの埋入の前段階であることが多い。したがって、図6は、本開示の第3の態様の例示的な方法600のフローチャート、すなわち、仮想抜去歯の窩に埋入されたインプラントを有する抜歯モデルを有する表面モデルを生成するためのフローチャートである。方法600に従って、ステップ601において、図2のシステム200において実行されるアプリケーション215cなどの歯科インプラント計画アプリケーションが、患者の歯列の対象領域の体積密度スキャンおよび表面スキャンの両方に基づいて患者の歯列の仮想モデルを取得する。
【0136】
ある実施形態において、ステップ602aにおいて、歯科インプラント計画アプリケーション215cは、GUIコントロールを介して受信されたユーザ入力の制御下で、患者の歯列の仮想モデルに仮想インプラントを埋入する。ステップ603aにおいて、歯科インプラント計画アプリケーション215cは、抜歯コントロールをユーザがアクティブにした時に、インプラントによる置換の対象となる歯の仮想抜歯を行い、その結果、抜去歯窩モデルと、標的抜去歯が患者の歯列の仮想モデルから除去され、生成された抜去歯窩モデルと置換された抜歯モデルと、が生成される。仮想インプラントはすでに患者の歯列の仮想モデル内にあるため、抜歯モデルは、抜去歯窩モデルおよび仮想埋入インプラントモデルの両方を含む。
【0137】
代替実施形態において、ステップ602aおよび603aが逆になっている。この代替実施形態において、ステップ602bにおいて抜歯が最初に行われて、抜歯モデルが生成される。ステップ603bにおいて、仮想インプラントが抜歯モデルに埋入される。その後、仮想抜歯モデルをファイルに保存および/またはエクスポートすることができる(ステップ604)。任意で、表面スキャンクラウンセグメントが、エクスポートされた抜歯モデルと同じ3D座標系でエクスポートされる(ステップ605)。任意で、ステップ606において、エクスポートされた抜歯モデルおよびクラウンセグメントファイルは、インプラント補綴物のインポートおよび設計のために、補綴物設計ツールに送信されてもよい。
【0138】
インプラント埋入計画は、患者の歯列の仮想モデルにおけるインプラントの選択および仮想埋入を事前に計画することによって実行されることが多い。仮想インプラント計画および埋入は、既にいくつかが市場に存在する歯科インプラント計画ツールを使用して実行することができる。一例として、Dental Wings社(Straumann Groupの会社)が提供するCoDiagnostix(商標)歯科インプラント計画ソフトウェアがある。このような歯科インプラント計画ソフトウェアは、患者の内部および表面スキャンのインポートおよび表示、歯科インプラントの選択、および、インポートされたスキャンに基づいて生成された患者の歯列のモデルへの選択歯科インプラントの埋入を行うためのグラフィカルユーザインターフェースを含む、ソフトウェア実装ツールを含む。
【0139】
例えば、図7Aは、患者の表面および体積密度スキャンがインポートされてシステム200のメモリ206にロードされたアプリケーション(図2のアプリケーション215cなど)によって生成されたGUIディスプレイ環境700を示す。図7Aは、歯科専門家がインプラントを選択して仮想的に埋入した後の患者の歯科的状況を示す。患者の歯列の仮想モデル内にインプラントを仮想的に埋入する技術は、例えば、CoDiagnostix(商標)歯科インプラント計画ソフトウェアの使用に従って、当技術分野で既に知られている。図7Aにおいて、仮想インプラントポスト710が埋入され、グラフィカル環境700の対応するビューペインに様々なタイプのビューで示されている。図示の例において、インプラントポスト710は、断面図(ビューペイン703d)、軸方向図(ビューペイン703c)、パノラマ図(ビューペイン703b)、接線図(ビューペイン703e)、および、3Dビュー(ビューペイン703a)に仮想的に埋入されて示されている。
【0140】
ペイン703a~703eの様々なビューに示されるように、インプラントの埋入は、完全なインプラントのベース部分であるインプラントポストまたはスクリュー710の埋入によって表される。フルインプラントは、インプラントポスト710と、インプラントポスト710に取り付けるアバットメント(図示せず)と、クラウン、ブリッジまたは入歯であり得る補綴物または歯修復物(これも図示せず)のためのアバットメントと、を含む。
【0141】
最初の計画段階では、インプラントポスト710のみを仮想的に埋入すればよい。インプラント計画ソフトウェアアプリケーションは、仮想インプラント埋入ガイド711を提供するが、これは物理的な構成要素に対応するものではなく、歯科専門家が正しい角度でインプラントを埋入するのを支援する視覚的指標に過ぎない。図7Aにおいて、仮想ガイド711は、インプラントポスト710の中心軸と一致する中心軸を有し、インプラントポスト内のアバットメント取り付け窩の直径に対応する直径を有する長い円柱棒として3Dビューペイン703aに表示される。好ましくは、仮想インプラント埋入ガイド711の円柱は、中心軸に沿って歯の咬合面の上方に延び、円柱の長さが円柱の直径よりも大幅に長くなるようになっている。好ましくは、ガイド711は、アプリケーションユーザが各ビューペイン内のコンテンツに対するガイドを即座に見ることができるように、3Dモデルおよび他のビューペインで使用される色とは対照的な色で表示される。
【0142】
GUIディスプレイ環境700は、例示的な実施形態において、検討中のインプラントが埋入される患者の歯列の部分に対応するビューペインディスプレイコントロール702から1つのコントロールを選択することによってアクセスされる抜歯コントロール712を含む。図示の実施形態において、歯科専門家は、下アーチコントロールを選択し、それを右クリックしてコンテキストメニューを引き出し、コンテキストメニューから抜歯コントロール712を選択する。抜歯コントロールを選択して、(上述した原理を使用して)仮想抜歯を自動的に行うように歯科治療計画アプリケーションに指示することができる。自動仮想抜歯ツールを起動するコントロールを実装する方法は数多く存在するが、重要なことは、ユーザが抜歯ワークフローを起動できるようにする1つまたは複数のコントロールを提供することである。
【0143】
図7Bは、ユーザが抜歯コントロール712を選択したときにGUIディスプレイ環境700に表示されるポップアップウィンドウ713を示す。このポップアップウィンドウは、歯選択コントロール718、モードコントロール714を含む、仮想抜歯ツールによって必要とされる入力を得るためのいくつかのオプションおよびユーザ入力コントロールを提示する。図7Bに示す実施形態において、歯選択コントロール718は、図7Aにおいてユーザによって選択された患者の歯列の選択部分の歯に対応する一組の選択可能な歯のアイコンを表示する。ユーザ(すなわち、歯科専門家)は、仮想インプラントポスト710が埋入される歯に対応する歯を選択できる。この例では、ユーザは、仮想インプラントポスト710が埋入された下アーチ左側の歯に対応する歯35を選択する。モードについては、ユーザは「モード:歯槽骨の切り出し」715」をオプションドロップダウンメニュー714から選択し、チェックボックスコントロール716をチェックして、抜去された歯が将来の計画のために別個のファイルとして保存されるべきであることを示し、抜去コントロール717をクリックすることによって仮想抜歯ツールを起動する。
【0144】
図7Cは、ビューペイン703aにおける患者の歯列の3D表面モデルを示す。完了すると、仮想抜歯ツールは、GUIディスプレイ環境700のコントロール部702の利用可能なモデルスキャンおよび3Dモデルのリストに2つの3Dモデルファイルを追加する。ユーザは、これらのファイルを選択してペイン403aに表示することができる。1つのファイルは、抜去歯列モデルである(ファイルリストにおいて721で示される)。抜去歯モデルは、図1および図4に関連して説明した技術に従って仮想抜歯ツールによって作成され、抜去歯モデルは、選択された歯35がモデルから除去され、代わりに窩が生成されてモデルに含まれている、患者の歯列(以前に埋入されたインプラントポスト310を含む)の3D表面モデルである。
【0145】
第2のファイルは、ファイルリストにおける抜去歯モデル(722で示される)であり、歯根からクラウンが除去された歯35のモデルである。
【0146】
これらのファイルが作成されると、ユーザは、図7Dに示すように、GUIディスプレイ環境700の計画メニュー723をクリックして、仮想計画エクスポートコントロール724を選択できる。図7Eに示す次のステップにおいて、ユーザは、次に、ポップアップウィンドウ726のフォーマット選択コントロール727でエクスポートファイルのフォーマットを選択することができる。この例では、ユーザはSTLフォーマットオプション728を選択し、「次へ」729をクリックして次のメニューに移る。図7Fに示す次のステップにおいて、ユーザはボタンコントロール732を選択して、選択されたモデルスキャンまたはセグメント化をそれ以上の処理を行わずにエクスポートするオプションをアクティブにする。次へボタン733をクリックすると、図7Gにおいて、抜歯ファイル731が、エクスポートファイル選択ポップアップウィンドウ730から選択される。次へボタン732をクリックすると、図7Hに示すインプラント選択ポップアップウィンドウ735が現れ、スキャンボディ選択コントロール736が示される。スキャンボディ選択コントロール736は、1組の可能なスキャンボディタイプから適切なスキャンボディを表示し、選択できるようにするスキャン選択コントロール737を含む。ユーザは、スキャンボディのメニューからスキャンボディを選択して、選択されたスキャンボディをエクスポート用のモデルに追加することができる。次に、ユーザは、次へボタン738をクリックする。図7Iにおいて、ユーザは、モデルをエクスポートすべき3D座標系の選択、および、エクスポートされた対象物を座標系を共有する個々のファイルとしてエクスポートすべきかどうかの選択などの追加オプションを選択することができる。エクスポート計画ライン741をクリックすると、前の画面でユーザが選択したように、選択されたオプションおよびパラメータに基づいてエクスポート機能が起動される。エクスポートファイルは、コンピュータ可読メモリ内の既知の場所に保存される。
【0147】
図7Jにおいて、同じプロセスに従って、仮想抜去歯の表面スキャンクラウンセグメント(および任意で拮抗歯クラウンセグメント、すなわち、顎を閉じたときに咬合平面で標的抜去歯と対面する反対顎の歯からのクラウンセグメント)をエクスポートすることができる。表面スキャン歯セグメントは、エクスポートされた仮想抜歯モデルと同じ座標系でエクスポートされることを確認することが重要である。
【0148】
エクスポートされたファイルは、予定インプラントを埋入する歯の仮想抜歯を有する患者の歯列の3Dモデルを含む。抜去歯の代わりに、かつて仮想歯が載置されていた仮想窩がある。このモデルには、インプラント計画プロセスで歯科専門家が窩に埋入した仮想インプラントポストが含まれる。
【0149】
インプラント計画プロセスの次のステップは、クラウン、ブリッジまたはデンチャーを備えた仮または永久アバットメントなどの補綴物または歯修復物の設計である。図8は、解剖学的に正しい補綴物を設計するための例示的なプロセスを示すフローであり、インプラント埋入後、手術部位周囲の組織が治癒するまでの間、患者の口腔内に埋入するための仮アバットメントを設計する際に特に有用である。
【0150】
本開示の態様によれば、上記のような仮想抜去歯に基づく仮アバットメントの設計により、仮想抜歯から決定された患者の解剖学的構造に基づくカスタムアバットメント(または他の補綴物)の設計が可能になる。つまり、仮アバットメント(または他の補綴物)は、インプラント埋入手術の前であっても設計および製造することができ、インプラントポストの埋入時に直ちに(またはその後すぐに)埋入できるようにすることができる。仮想抜歯では、患者の抜去した歯の解剖学的構造に特化した解剖学的に正しい歯窩が生成されるため、窩表面プロファイルを得るために、実際に抜歯した後に患者の実際の窩をスキャンする必要はない。
【0151】
これは大幅な時間の節約になる。なぜなら、手術部位の出血があると窩の高精度な表面スキャンができないので、通常このようなスキャンは初期治癒がある程度進むまで延期しなければならないからである。
【0152】
図8に記載のプロセスは、患者の歯列の対象領域の体積密度スキャンおよび表面スキャンの両方に基づいて仮想抜歯モデルを取得すること(ステップ801)と、仮想抜去歯の表面スキャンクラウンセグメントを取得すること(ステップ802)とを含む。ある実施形態において、この仮想抜歯モデルは、上述の方法およびシステムに従って取得することができる。得られた表面スキャンクラウンセグメントは、モデルにインポートされ、補綴物クラウン(すなわち、歯肉ラインの上に見える補綴物の部分)として使用される。ある実施形態において、設計は、元のクラウンの仮想ワックスアップをクローンするクローン機能を提供するCAD/CAMツールで電子的に行われる。
【0153】
補綴物設計ツールのGUIにおいて、仮想インプラントが埋入された仮想抜歯モデルが表示され、これにより、ユーザがモデルを見ることができる(ステップ804)。GUIによりユーザコントロールが提供され、これにより、ユーザは、少なくともいくつかの部分について抜去窩の内側の輪郭に沿うように補綴物の底部を設計することができる(ステップ805)。
【0154】
最終的な設計は、表面スキャンクラウンセグメントに実質的に適合する上部分および仮想抜歯モデルから得られる抜歯窩の内面に実質的に適合する外面を持つ下部分を有する補綴物設計である。補綴物設計は、その後の製造に使用可能なフォーマットで1つまたは複数の電子ファイルにエクスポートされ得る(ステップ806)。その後、電子ファイルに基づいて物理的な補綴物が製造される(ステップ807)。ある実施形態において、電子ファイルは3Dプリンタで印刷するための3D印刷命令を含むか、あるいは、電子ファイルが3D印刷命令に変換される。別の実施形態において、電子ファイルはSTLファイルを含む。
【0155】
図9A図9Rは、コンピュータ支援設計(CAD)またはコンピュータ支援製造CAMツールなどの補綴物設計アプリケーションのためのGUIディスプレイ環境900を示す。ある実施形態において、補綴物設計ツールは、図2で先に説明した200のようなシステムで動作するアプリケーション215dである。
【0156】
図9Aは、電子ディスプレイ209に表示され、後述するようなユーザ入力コントロールおよび表示領域を有するGUIディスプレイ環境900である。補綴物を設計するために、ユーザは、コントロール901(図9A)をクリックして新しい症例を開始し、症例情報を(例えば、新しい症例に関連付けられるテキストボックス:症例ID、患者IDおよび歯科医IDに)入力し、患者のスキャンデータから生成された3Dモデルを選択し、アプリケーション215bで使用するためにメモリにロードする。この例では、クラウンが設計される。ユーザは、仮想抜歯ファイル(この場合、下歯モデル入力として)および抜去歯ファイル(下ワックスアップとして)のファイル名を入力し、ファイルをシステムにロードする(例えば、保存ボタン(図9B)をクリックすることによって)。アプリケーションは、選択された仮想抜歯ファイルから得られる3Dモデルをビューペイン903に表示する(図9C)。必要に応じて、アプリケーションは、スキャンをクリーニングするためのコントロール(例えば、スキャンデータが不完全な穴を埋める、スキャンラインを滑らかにする、ノイズを除去する等)を環境900に提供する。続いて、アプリケーションは、必要に応じて、咬合平面に対するモデルの向きを調整するツールを提供し得る(図9D)。
【0157】
設計を進める前に、ユーザは、表示されたモデル内の歯の位置にタグを付け、補綴物を設計する歯の位置、および、どの歯が補綴物を設計する歯に隣接するのかをアプリケーション215に示す(図9E参照)。次に、図9Fにおいて、ユーザは、プラットフォーム(インプラントメーカ、インプラントタイプおよび接続)およびスキャンボディを選択する。これらの選択は、歯科インプラント計画アプリケーションにおいて選択され、仮想抜歯ファイルそれに基づいて生成される、インプラントおよびスキャンボディと一致するべきである。
【0158】
セットアップが完了すると、ユーザは補綴物の設計に進むことができる。図6Jにおいて、3Dモデルから得られる表面スキャンクラウンセグメントは、仮想抜歯モデルとして一致する3D座標系で個々のセグメントとしてエクスポートされたものである。表面スキャンクラウンモデルは、患者の元の歯の光学スキャン(実歯を実際に抜去する前)から生成されたものであるため、表面スキャンクラウンセグメントは、患者の口腔を再度スキャンすることなく、デジタルワックスアップモデルとして使用することができる。表面スキャンクラウンセグメントは、仮想抜歯モデルと同じ3D座標系に一致する個々のセグメントとしてエクスポートされたものであるので、仮想抜去歯の表面スキャンクラウンセグメントは、仮想抜歯モデルと共にビューペインに取り付けることができ、補綴物クラウンの上部としてアプリケーション215dによって直接使用することができる。表面スキャンクラウンセグメントファイルをワックスアップファイルとしてインポートすることにより(図9B)、設計者は、クローンワックスアップコントロール(図9G)を選択して、補綴物設計アプリケーション215dにワックスアップモデルファイル内のワックスアップモデルを複製して補綴クラウン表面として使用するように指示することができる。クローンワックスアップツールがワックスアップモデルを補綴物としてクローンした後、ユーザは、GUIディスプレイ環境900で利用可能なフィッティング、シェーピングおよびスカルプティングコントロールを介して、補綴物形状の微調整を行うことができる。環境900は、ユーザがあらゆる角度から補綴物904を見ることができるように、ビューペイン903aに表示されたモデルのビューを回転および変更するためのコントロールも含む。例えば、図9Hにおいて、補綴物904を頬側から見ることができるように、モデル905を回転させている。これにより、設計者は、仮想抜歯モデル905内で、その場で、補綴物を見ながら補綴物の調整を行うことができる。
【0159】
抜歯プロセス中に得られた抜去表面スキャンクラウンセグメントに基づいてクラウンの可視表面を設計した後、ユーザは補綴物の底部を設計することができる。アプリケーションは、材料のタイプ、色のような修復物仕様(図9I参照)、ならびに、何を出力すべきか(例えば、STLファイルを出力するのか、発注書を出力するのか(これは、遠隔製造施設に直接通信することができる))を入力するためのコントロールを設計者に提供することができる。
【0160】
図9Jにおいて、仮想抜歯モデル905がビューペイン903aに表示される。図9A図9Tの症例は、インプラントの補綴物を設計する新規症例であり、仮想抜歯モデル905は、(例えば、図7A図7Jに関連して説明したプロセスを使用して)モデル内にインプラントが埋入された状態でエクスポートされたものであるので、仮想抜歯モデル905は仮想インプラントポストを含む。この例では、仮アバットメントが選択され、自動的にインプラントポストに仮想接続され、図示のように表示される。次に、ユーザは、セメントギャップの厚さを選択し(図9K)、材料の厚さを設定し(図9L)、窩輪郭(または「エマージェンスプロファイル」)を含むモデル905内に補綴物904を表示することができる(図9M)。その後、ユーザは、モデル905の表示をオフにして、補綴物のみを表示することもできる(図9N)。
【0161】
図9Oは、モデル905を再びオンにして表示し(図9Oにおける様々なモデルの表示オン/オフボタンを参照)、窩910の良好な側面外観図を得るように回転させた状態を示す。(窩910の内部のインプラントポストおよびアバットメントを見るために)解剖学的透明度を低く設定すると、窩輪郭を使用して、窩910の内部の輪郭に対して適合するように補綴物の下側クラウン部分の設計をガイドすることによって、患者の口腔解剖学的構造に適合する解剖学的に正しい補綴物904を設計できることが明らかである。この点に関して、補綴物設計アプリケーションは、クラウンの下側部分の形状および適合性を調整するためのコントロールを提供する。
【0162】
クラウン補綴物の下部が窩910の輪郭に適合するように成形された後、設計者は、補綴物のシェルの指定に移ることができる。アプリケーションは、補綴物表面と補綴物の両側の歯(補綴物が仮想インプラントポスト906に仮想的に取り付けられた場合)との間の近接距離情報を自動的に計算し(図9P)、(図9Qにおいて頬側から見た、図9Rにおいて咬合面を見下ろす)シェル表面を生成することができる。図9Sは、インプラントポスト906、アバットメントおよび補綴物クラウンを部分的に見るために、解剖学モデルを部分的に透明に設定した状態における上顎および下顎の両方を有するモデル内の最終補綴物設計を示す。ユーザは、モデルを目視することにより、補綴物の配置および形状を容易に確認することができる。図9Tは、解剖学的構造を完全に不透明にした状態の、図9Sと同じモデルおよび方向を示す。ワークフローは、クラウンを製作に送る前の通常のステップを経る。
【0163】
補綴物設計が完了した後、設計ファイルをエクスポートして、製造するために使用することができる。ある実施形態において、エクスポートされた設計ファイルは、製造施設または遠隔製造サービスに送信される。ある実施形態において、エクスポートされた補綴物設計ファイルを用いて、補綴物を3Dプリントする指示に応答する3Dプリンタに送るための3Dプリンタ指示を生成してもよい。
【0164】
上述の本発明の態様および実施形態は、仮想窩視覚化、解剖学的治療計画および解剖学的補綴物設計において複数の利点を提供する。1つの利点によれば、解剖学的治療専門家および補綴物設計者は、治療計画および補綴物設計の部位である窩であって、患者固有の窩解剖学的構造をモデル化した窩の正確な3次元モデルに基づいて、治療を計画し、解剖学的に正確な補綴物を設計することができる。
【0165】
このモデルは、患者から解剖学的対象物を抜去する前に生成することができ、これにより、患者から解剖学的対象物を実際に外科的に抜去する前、またはそれと同時(すなわち並行)に、正確な治療計画および補綴物の設計を行うことができる。つまり、患者が治療専門家のもとに来院する回数はたった1回であり得る。わずか1回または2回の診察の間に、抜去の対象となる解剖学的対象物を含む患者の解剖学的対象領域をスキャンすることができる。スキャンデータは、仮想窩モデル生成ツールおよび/または仮想対象物抜去ツールを含むデジタル治療計画ツールにインポートすることができ、各ツールは、患者の解剖学的対象領域(すなわち、標的抜去対象物および隣接する解剖学的対象物または特徴を含む領域)の仮想解剖学モデルの表示に含まれる仮想窩モデルを生成する。
【0166】
表示された仮想解剖学モデルに仮想窩モデルが含まれており、治療専門家は、インプラントまたは他の治療体を仮想窩モデルにより正確に仮想的に埋入し、3D印刷可能な外科治療ガイドを設計および印刷し、解剖学的に正確な補綴物を設計するための別の補綴物設計ソフトウェアツールで使用するために仮想解剖学モデルを仮想窩モデルにエクスポートすることができる。治療専門家がすぐに使える補綴物製作設備を持っていれば、患者が診察室にいる間に補綴物を製作することができる。そうでない場合は、補綴物をラボに送って製造してもらい、インプラント周囲の解剖学的領域が十分に治癒して補綴物をインプラントに装着できるようになった時点で、患者は診察室に再来することができる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図7I
図7J
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図9I
図9J
図9K
図9L
図9M
図9N
図9O
図9P
図9Q
図9R
図9S
図9T
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的抜去対象物の仮想抜去(602b、603a)において使用される3次元モデル(10D)を1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって自動的に生成するための、コンピュータで実行される方法(100)であって、前記標的抜去対象物は患者の解剖学的構造における対象物を含み、前記方法は患者の口腔の解剖学的領域の表面スキャン(1b)および前記解剖学的領域の体積密度スキャン(1a)の各々に基づいており、前記解剖学的領域は少なくとも前記標的抜去対象物を含み、前記方法は、
ラベル付けされた表面スキャンセグメントの第1データセットを受信するステップであって、各表面スキャンセグメントは前記表面スキャンの表面スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の3次元(3D)表面モデル(10b)を含み、各表面スキャンセグメントは前記表面スキャンセグメントを識別する関連するラベルを有する、ステップと、
ラベル付けされた体積密度スキャンセグメントの第2データセットを受信するステップであって、各体積密度スキャンセグメントは前記体積密度スキャンの体積密度スキャンデータから認識およびセグメント化された対応する対象物の境界面の3次元(3D)体積密度モデル(10a)を含み、各体積密度スキャンセグメントは前記体積密度スキャンセグメントを識別する関連するラベルを有する、ステップと、
共通の3次元座標系において、前記第1データセットから得られるラベル付き表面スキャンセグメント(10b)を、前記第2データセットから得られるラベル付き体積密度スキャンセグメント(10a)にクロスマウントするステップと、
前記標的抜去対象物(16)の識別子(identification)を受信するステップと、
識別された前記標的抜去対象物に対応する前記体積密度スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D体積密度モデル(16a)を識別するステップと、
識別された前記標的抜去対象物に対応する表面スキャンセグメントのラベルに関連付けられた3D表面モデル(16b)を識別するステップと、
a)識別された前記3D体積密度モデル(16a)から、識別された前記3D表面モデル(16b)に共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の部分を除いたものと等価である窩(16s)の3Dモデル、
b)識別された前記3D表面モデル(16b)に共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の少なくとも一部、および/または、識別された前記3D体積密度モデル(16a)に共通して表現された識別された前記3D表面モデル(16b)の少なくとも一部、
c)識別された前記3D体積密度モデル(16a)の少なくとも一部から、識別された前記3D表面モデル(16b)において共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の部分を除いた部分、および/または、
d)前記第1データセット(10b)の少なくともサブセットから、識別された前記3D体積密度モデル(16a)に共通して表現された識別された前記3D表面モデル(16b)の部分を除いたもの、
を含むモデルを含む第3データセットを生成するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記生成するステップは、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)のうち識別された前記3D表面モデル(16b)に共通して表現されていない部分を決定するステップと、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)の決定された前記部分を、前記窩の3Dモデル(16s)として、コンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記生成するステップは、
識別された前記3D表面モデル(16b)において共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の部分を決定するステップと、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)から、決定された共通して表現された前記部分を除去することによって、決定された共通して表現された前記部分と識別された前記3D体積密度モデル(16a)との差を決定するステップと、
決定された前記差を前記窩の3Dモデル(16s)としてコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記生成するステップは、
前記第1データセット(10b)の少なくともサブセットのコピーから、識別された前記3D体積密度モデル(16a)において共通して表現された識別された前記3D表面モデル(16b)の部分を除去することによって第4データセットを生成するステップと、
前記第4データセットをコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第1データセットから得られるラベル付けされた表面スキャンセグメントは、前記第2データセットから得られる対応するラベル付けされた体積密度スキャンセグメントにクロスマウントされる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記ラベル付けされた表面スキャンセグメント(10b)の第1データセットを前記ラベル付けされた体積密度スキャンセグメント(10a)の第2データセットにクロスマウントするステップは、ラベル付けされたセグメントの第5データセットを生成するステップであって、各セグメントが解剖学的対象物を表す結合3次元(3D)モデルを含むステップを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項7】
識別された前記3D表面モデル(16b)の境界を決定し、前記境界からカットライン(16bgl)を生成するステップと、
識別された前記3D体積密度モデル(16a)上に前記カットラインを投影するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法(100)
【請求項8】
識別された前記3D表面モデル(16b)において共通して表現された識別された前記3D体積密度モデル(16a)の実質的にすべての部分を含む前記カットライン(16bgl)の側に、識別された前記3D表面モデル(16b)および/または識別された前記3D体積密度モデル(16a)を含む第6データセットを生成するステップを含む、請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記第1、第2、第3、第4、第5および/または第6データセット、または識別された前記3D表面モデルおよび/または識別された前記3D体積密度モデルから第7データセットを生成するステップであって、前記データセットまたはモデルによってそれぞれ定義される表面における空隙が、生成される表面情報で前記空隙を埋めることによって増強されるステップを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記空隙の前記境界の補間によって、および/または、標準的な解剖学的モデル化に基づいて、前記生成される表面情報を生成するステップを含む、請求項9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記標的抜去対象物が歯であり、前記窩モデル(16s)が前記標的抜去対象物(16)を載置する患者の歯窩の3次元モデルを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項12】
各表面スキャンセグメントおよび/または各体積密度スキャンセグメントの関連付けられた前記ラベルが、それぞれ、前記表面スキャンセグメントまたは前記体積密度スキャンセグメントを、歯、歯の一部、人口歯、歯周組織の一部、骨の一部、インプラント、または、患者の口腔および/または解剖学的領域に存在する他の対象物または構造に対応するものとして識別する、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンまたはクロスマウントバージョンのいずれかをコンピュータ可読データ記憶コンポーネントに記憶するステップを含む、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項14】
患者の標的抜去対象物の仮想抜去において使用される3次元モデルを自動的に生成するシステム(200)であって、実行された時に、請求項1から13のいずれかに記載の方法(100)を実施するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニット(201)を構成するコンピュータ可読命令をロードおよび実行するように構成された1つまたは複数のコンピュータ処理ユニット(201)を備える、システム。
【請求項15】
1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットによって実行された時に、請求項1から13のいずれかに記載の方法を実施するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成するコンピュータ可読命令を含むコンピュータ可読媒体。
【請求項16】
1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットによって実行された時に、請求項1から13に記載の方法を実施するように1つまたは複数のコンピュータ処理ユニットを構成するコンピュータ可読命令を具現化するコンピュータプログラム。
【請求項17】
患者の標的抜去対象の仮想抜去処置における、請求項1から13に記載の前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンまたはクロスマウントバージョンの使用。
【請求項18】
標的抜去対象物の実際の抜去処置が患者に対して行われる前、最中および/または1回の来院中において行われる、患者の標的抜去対象物を解剖学的に表す補綴物設計を生成するための、補綴物設計CAD/CAMソフトウェアツールにおける、請求項1から13に記載の前記第3、第4、第5、第6および/または第7データセットおよび/またはそれらの合成バージョンもしくはクロスマウントバージョンの使用。
【外国語明細書】