(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133495
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】組み合わせでのWnt阻害剤および抗PD-1抗体分子の投与スケジュール
(51)【国際特許分類】
A61K 31/497 20060101AFI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
A61K31/497
A61P35/00 ZNA
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61P35/00
A61K31/497 ZNA
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024095809
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2022139650の分割
【原出願日】2018-02-12
(31)【優先権主張番号】62/458,640
(32)【優先日】2017-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/616,682
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149010
【弁理士】
【氏名又は名称】星川 亮
(72)【発明者】
【氏名】ドブソン,ジェイソン ラッセル
(72)【発明者】
【氏名】ムーディー,スーザン
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン,マーガレット エリス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】がんの処置で使用するためのWnt阻害剤およびPD-1阻害剤の組み合わせ、この組み合わせを投与することを含むがんの処置方法、ならびにがんの処置用の医薬品の製造のためのこの組み合わせの使用を提供する。
【解決手段】(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩と、(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組み合わせであって、(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~15日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与する、医薬組み合わせである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの処置で使用するための、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリ
ジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトア
ミドまたはその薬学的に許容される塩と、(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的
に許容される塩とを含む医薬組み合わせであって、(i)を最大4回のサイクルにわたり
各サイクルの1~15日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1
回投与する、医薬組み合わせ。
【請求項2】
(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~8日目の間に投与する、請求項
1に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項3】
(i)を最初のサイクルの間にのみ投与する、請求項1または2に記載のがんの処置で
使用するための医薬組み合わせ。
【請求項4】
(i)を4回のサイクルの間にのみ投与する、請求項1または2に記載のがんの処置で
使用するための医薬組み合わせ。
【請求項5】
各サイクルは28日間である、請求項1~4のいずれか一項に記載のがんの処置で使用
するための医薬組み合わせ。
【請求項6】
(i)を1日2回投与する、請求項1~5のいずれか一項に記載のがんの処置で使用す
るための医薬組み合わせ。
【請求項7】
(i)を12時間間隔で投与する、請求項6に記載のがんの処置で使用するための医薬
組み合わせ。
【請求項8】
(i)の1日用量は2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、2
0mg/日、40mg/日、80mg/日、120mg/日または180mg/日である
、請求項1~7のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項9】
(i)の1日用量は2.5mg/日、5mg/日または10mg/日である、請求項8
に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項10】
(i)の1日用量は10mg/日である、請求項8または9のいずれか一項に記載のが
んの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項11】
(ii)をサイクルにおいて2週間毎にまたは4週間毎に投与する、請求項1~10の
いずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項12】
(ii)を4週間毎に投与する、請求項11に記載のがんの処置で使用するための医薬
組み合わせ。
【請求項13】
(ii)は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、PDR-001または
それらの薬学的な塩から選択される、請求項11または12に記載のがんの処置で使用す
るための医薬組み合わせ。
【請求項14】
(ii)はPDR-001またはその薬学的な塩である、請求項13に記載のがんの処
置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項15】
(ii)を300~400mg/日の単回用量で静脈内投与する、請求項13に記載の
がんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項16】
前記単回用量は400mg/日である、請求項15に記載のがんの処置で使用するため
の医薬組み合わせ。
【請求項17】
最大4回のサイクルにわたり、2.5mg/日の(i)を1~8日目に投与し、400
mg/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、請求項1、2、5~9または11~16
のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項18】
最大4回のサイクルにわたり、2.5mg/日の(i)を1~15日目に投与し、40
0mg/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、請求項1、5~9または11~16の
いずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項19】
2.5mg/日の(i)をサイクル1の間にのみ投与し、400mg/日の(ii)を
4週間毎に投与する、請求項3~9または11~18のいずれか一項に記載のがんの処置
で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項20】
最大4回のサイクルにわたり、5mg/日の(i)を1~8日目に投与し、400mg
/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、請求項1、2、5~9または11~16のい
ずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項21】
最大4回のサイクルにわたり、5mg/日の(i)を1~15日目に投与し、400m
g/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、請求項1、5~9または11~16のいず
れか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項22】
5mg/日の(i)をサイクル1の間にのみ投与し、400mg/日の(ii)を4週
間毎に投与する、請求項3~9、11~16、20または21のいずれか一項に記載のが
んの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項23】
最大4回のサイクルにわたり、10mg/日の(i)を1~8日目に毎日投与し、40
0mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、請求項1、2、5~16のいずれか一項に
記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項24】
最大4回のサイクルにわたり、10mg/日の(i)を1~15日目に投与し、400
mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、請求項1または5~16のいずれか一項に記
載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項25】
10mg/日の(i)をサイクル1の間にのみ投与し、400mg/日の(ii)を4
週間毎に投与する、請求項1、3~16、23または24のいずれか一項に記載のがんの
処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項26】
(ii)を4週間毎に連続的に投与する、請求項1~25のいずれか一項に記載のがん
の処置で使用するための医薬組み合わせ。
【請求項27】
がんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-
ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)ア
セトアミドまたはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子または薬学的に許容さ
れる塩との組み合わせでの使用であって、(i)および(ii)を請求項1~26のいず
れか一項で定義されたように投与し、好ましくは、(i)を最大4回のサイクルにわたり
各サイクルの1~16日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1
回投与する、使用。
【請求項28】
(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~16日目に投与する、各サイク
ルの1~8日目に投与する、または最初のサイクルの間にのみ投与する、請求項27に記
載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’
-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)
アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその
薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
【請求項29】
(i)の1日用量は2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、2
0mg/日、40mg/日、80mg/日、120mg/日または180mg/日である
、請求項27または28に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’
,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-
イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗
PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
【請求項30】
(i)の1日用量は10mg/日である、請求項27~29のいずれか一項に記載のが
んの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピ
リジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセト
アミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的
に許容される塩との組み合わせでの使用。
【請求項31】
(ii)を300~400mg/日の単回用量で投与する、請求項27~30のいずれ
か一項に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-
[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-
2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子
またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
【請求項32】
(ii)を400mg/日の単回用量で投与する、請求項27~30のいずれか一項に
記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4
’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル
)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはそ
の薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
【請求項33】
(i)および(ii)を請求項17~25のいずれか一項で定義されたように投与する
、請求項27に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメ
チル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリ
ジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗
体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
【請求項34】
がんの処置方法であって、必要とする患者に有効量の(i)および(ii)を投与する
ことを含み、(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~15日目の間に毎日
投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与する、方法。
【請求項35】
有効量の(i)および(ii)を請求項1~26のいずれか一項で定義されたように投
与することを含む、請求項34に記載のがんの処置方法。
【請求項36】
前記がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、頭頸部扁平上皮癌、膵がん、胃
腸がん、直腸結腸がん、肺の扁平上皮がん、食道の扁平上皮がん、子宮頸部の扁平上皮が
ん、または黒色腫である、請求項1~26に記載のがんの処置で使用するための医薬組み
合わせ、請求項27~33に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピ
リジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセト
アミドもしくはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子もしくはその薬
学的に許容される塩との組み合わせでの使用、または請求項34~36に記載のがんの処
置方法。
【請求項37】
前記がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、膵がん、または黒色腫である、
請求項1~26もしくは36に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、請求
項27~33もしくは36に記載の2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン
]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミド
もしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的な塩との組
み合わせでの使用、または請求項34~36に記載のがんの処置方法。
【請求項38】
(i)および(ii)は骨吸収低下において相乗的に活性である、請求項1~26、3
6もしくは37に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、請求項27~33
、36もしくは37に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン
]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミド
もしくはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的に
許容される塩との組み合わせでの使用、または請求項34~37に記載のがんの処置方法
。
【請求項39】
(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5
-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容さ
れる塩を経口でまたは静脈内に投与し、最も好ましくは経口で投与する、請求項1~26
もしくは36~38に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、請求項27~
33もしくは36~38に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリ
ジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトア
ミドもしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的な塩と
の組み合わせでの使用、または請求項34~38に記載のがんの処置方法。
【請求項40】
抗PD-1抗体分子(ii)は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、P
DR-001またはそれらの薬学的な塩から選択される、請求項1~26もしくは36~
39に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、請求項27~33もしくは3
6~39に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イ
ル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはそ
の薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子との組み合わせでの使用、または請求項3
4~39に記載のがんの処置方法。
【請求項41】
前記抗PD-1抗体分子(ii)はPDR-001またはその薬学的な塩である、請求
項1~26もしくは36~40に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、請
求項27~33もしくは36~40に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4
’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル
)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子との組み合わせ
での使用、または請求項34~40に記載のがんの処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は薬学の分野に関し、具体的には、がんの処置で使用するためのWnt阻害剤お
よび抗PD-1抗体分子に関する。具体的には、本開示は、がんの処置で使用するための
、Wnt阻害剤またはその薬学的に許容される塩と抗PD-1抗体分子またはその薬学的
に許容される塩とを含む医薬組み合わせ、この組み合わせを投与することを含むがんの処
置方法、およびがんの処置用の医薬品の製造のためのこの組み合わせの使用に関する。
【0002】
開示の背景
Wnt(Wingless)ファミリーは、胚形成中の細胞間相互作用を調節しかつ発
癌、加齢および線維化に関与する、高度に保存された分泌タンパク質の一群である。Wn
t遺伝子は30年前にマウス乳房腫瘍中で発がん遺伝子と同定されており、多くの研究に
おいて重要な発がん経路であることが確認されている。Wnt遺伝子ファミリーは、In
t1/Wnt1がん原遺伝子とDrosophila Wnt1相同体であるDroso
phila wingless(「Wg」)とに関連する分泌タンパク質の大きなクラス
をコードする(Cadigan et al. Genes & Development 1997, 11, 3286)。
【0003】
プログラム死1(PD-1)タンパク質は、T細胞調節因子の拡張CD28/CTLA
4ファミリーの阻害メンバーである(Okazaki et al. Curr. Opin. Immunol. 2002, 14,
391779; Bennett et al. J. Immunol. 2003, 170, 711)。CD28受容体のリガンドは
関連するB7分子の一群を含み、「B7スーパーファミリー」としても既知である(Coyl
e et al. Nature Immunol. 2001, 2(3), 203; Sharpe et al. Nature Rev. Immunol. 200
2, 2, 116; Collins et al. Genome Biol. 2005, 6, 223.1; Korman et al. Adv. Immuno
l. 2007, 90, 297)。このB7スーパーファミリーのいくつかのメンバーが知られており
、B7.1(CD80)、B7.2(CD86)、誘導性共刺激因子リガンド(ICOS
-L)、プログラム死-1リガンド(PD-L1;B7-H1)、プログラム死-2リガ
ンド(PD-L2;B7-DC)、B7-H3、B7-H4およびB7-H6が挙げられ
る(Collins et al. Genome Biol. 2005, 6, 223.1)。CD28ファミリーの他のメンバ
ーとして、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAが挙げられる。PD-1は
単量体として存在すると示唆されており、他のCD28ファミリーのメンバーに特徴的な
不対システイン残基を欠いている。PD-1は、活性化されたB細胞、T細胞および単球
で発現される。
【0004】
PD-L1は様々なヒトがんに大量に含まれている(Dong et al. Nat. Med. 2002, 8,
787)。PD-1は、TCRシグナルを負に調節する免疫阻害タンパク質として知られて
いる(Ishida et al. EMBO J. 1992, 11, 3887; Blank et al. Immunol. Immunother. 20
06, 56(5), 739)。PD-1とPD-L1との間の相互作用は免疫チェックポイントとし
て働くことができ、そのため、例えば腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体に媒介され
る増殖の減少および/またはがん細胞による免疫回避が引き起こされ得る(Dong et al.
J. Mol. Med. 2003, 81, 281; Blank et al. Cancer Immunol. Immunother. 2005, 54, 3
07; Konishi et al. Clin. Cancer Res. 2004, 10, 5094)。免疫抑制はPD-1とPD
-L1またはPD-L2との局所的相互作用を阻害することにより回復され得、この効果
は、PD-1とPD-L2との相互作用が同様にブロックされる場合に加算される(Iwai
et al. Proc. Nat. Acad. Sci. USA 2002, 99:12293-7; Brown et al. J. Immunol. 200
3, 170, 1257)。
【0005】
Wnt経路シグナル伝達が様々ながんで重要であり得ることを、いくつかの系統の証拠
が示唆する。古典的Wnt経路の成分(例えばAPCおよびβ-カテニン)の変異は、い
くつかの悪性腫瘍の発病において重要な役割を果たす可能性がある。ヒト転移性黒色腫サ
ンプルの近年の分子解析から、WNT/b-カテニンシグナル伝達経路の活性化とT細胞
遺伝子発現シグネチャの非存在との間の相互関係が明らかになった(Spranger et al. Na
ture 2015, 523, 231)。
【0006】
開示の概要
がん治療における免疫応答の調節での免疫チェックポイント経路の重要性を考えると、
免疫系を活性化するまたは免疫療法に対する抵抗性を克服する新規の併用療法を開発する
必要性が存在する。
【0007】
本発明は、本明細書で定義された医薬組み合わせを提供することにより、この必要性に
対処する。
【0008】
本開示の第1の態様は、がんの処置で使用するための、以下の式(i):
【0009】
【化1】
のWnt阻害剤(2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-
N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミド[式(I)の化合
物]またはその薬学的に許容される塩)と、(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学
的に許容される塩とを含む医薬組み合わせであって、(i)を最大4回のサイクルにわた
り各サイクルの1~15日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも
1回投与する、医薬組み合わせである。
【0010】
本開示の別の態様は、がんの処置用の医薬品の製造のための、式(i)のwnt阻害剤
(2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピ
ラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩
)の抗PD-1抗体分子(ii)または薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用で
あって、(i)および(ii)を本明細書で定義されたように投与し、好ましくは、(i
)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~15日目に毎日投与し、(ii)を1
回のサイクル当たり少なくとも1回投与する、使用を提供する。
【0011】
本開示の更に別の態様は、がんの処置方法であって、必要とする患者に有効量の(i)
および(ii)を投与することを含み、(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクル
の1~15日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与する
、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】15日間の曝露後の腫瘍生検から単離したRNAサンプルのNanoStringで測定した遺伝子発現を示す図である。
【
図2】本分析での9対の対象に関するスクリーニング来診およびサマリー来診(summary visit)でのCD3発現を示すグラフである。
【
図3】本試験のために選択したT細胞シグネチャのうちの1つを示す図である。
【
図4】処置後のWnt経路の調節を示すグラフである。
【
図5】CD103+樹状細胞の動員と関連するケモカインシグネチャを示すグラフである。
【
図6】CD8+T細胞の動員と関連するケモカインシグネチャを示すグラフである。
【
図7A】
図7Aおよび
図7B:様々なタイプのがん細胞に関するCancer Genome Atlast(TCGA)でのT細胞とWntシグネチャとの間の相関性を示す図である。
【0013】
開示の詳細な記述
近年では、古典的Wntシグナル伝達の重要な活性化因子として分泌型糖タンパク質R
-スポンジン1~4(RSPO1~4)が現れている。RSPOは、ロイシンリッチ反復
含有Gタンパク質共役型受容体(LGR4~6)ならびに膜貫通E3ユビキチンリガーゼ
RINGフィンガー43/亜鉛およびRINGフィンガー3(RNF43/ZNRF3)
に結合し、三元複合体を形成する(Chen et al. Genes Dev; 2013, 27, 1345)。RNF
43/ZNRF3は、FzおよびLRP6の代謝回転を促進することによりWntシグナ
ル伝達に拮抗する(Hao et al. Nature 2012, 485 (7397), 195-200; Koo et al. Nature
, 2012, 488 (7413), 665)。RSPOの結合によりRNF43/ZNRF3のエンドサ
イトーシスが誘導され、それにより、膜結合FzおよびLRP6のレベルが上昇し、Wn
tリガンドに媒介されるシグナル伝達が増強される。標的細胞内でのシグナル伝達を活性
化するためには、Wntタンパク質が適宜分泌されて、細胞外空間を横切って運搬されな
ければならない。ポーキュパイン(porcupine)は、Wntタンパク質にパルミトイル基
を付加する膜結合型O-アシルトランスフェラーゼ(MBOAT)である(Takada et al
. Dev. Cell 2006, 11, 791)。古典的Wnt経路の成分(例えばAPCおよびβ-カテ
ニン)の変異はいくつかの悪性腫瘍の発病で重要な役割を果たし、この遺伝的損傷は上流
のWnt経路の調節に影響を及ぼす。Wnt経路シグナル伝達の阻害は近年、副作用およ
び用量制限毒性等のいくつかの欠点を伴った。そのような欠点は、Wnt阻害剤の抗腫瘍
効力を制限していた。これとは別に、Wnt経路の活性化は免疫療法に対する抵抗性に関
係しており、腫瘍が免疫検出を回避してチェックポイント阻害剤への臨床的利益が減少し
得る機序を提供する(Spranger et al. Nature 2015, 523, 231)。例えば、本開示のW
nt阻害剤、即ち2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-
N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドを試験し、pLR
P6およびAXIN2qPCRのレベルを皮膚および腫瘍の生検で分析した。処置後の皮
膚サンプルの生検では、2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イ
ル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその
薬学的に許容される塩によりpLRP6およびAXIN2のレベルが阻害されており、こ
のことはWnt経路の阻害を示す。残念ながら、他の研究では、2-(2’,3-ジメチ
ル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジ
ン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩は、単剤として単独では細
胞毒性遺伝子シグネチャの増加および腫瘍効力の欠如を示した。加えて、動物研究では、
ラット研究において小柱の減少が示され、ラットモデルおよびイヌモデルにおいて消化(
GI)管、骨および歯で毒性が示され、かつラットでは骨髄におよびイヌでは腎臓に影響
を及ぼす副次的効果が示された。
【0014】
Wnt阻害剤(i)単独による患者の処置により腫瘍中での免疫シグネチャの変化がも
たらされたこと、およびこの変化をもたらすには単剤Wnt阻害剤(i)による8~15
日間の処置で十分であったことを発見している。この発見により、Wnt阻害剤(i)と
抗PD-1抗体分子(ii)またはその薬学的に許容される塩との断続的投与によって樹
状細胞およびT細胞を増感させ得、そのためPD-1阻害の効果を増強させるのに十分で
あり得、同時に慢性のWnt投与の特に骨への毒性の一部が軽減されるとの結論を下すに
至った。
【0015】
Wntシグナル伝達経路は骨芽細胞(骨形成に関与する)の発生および生存に必要であ
り、破骨細胞(骨吸収に関与する)を負に調節する。これに関連して、Wnt阻害剤は骨
吸収を引き起こすことおよび骨をもろくすることが分かった。Wnt阻害剤の臨床試験で
は一部の患者が骨折を経験しており、このことは骨芽細胞および破骨細胞へのWnt経路
阻害の効果に関係している可能性がある。従って、より短い期間(例えば、最大4回の治
療サイクルの1~15日目のみの毎日)にわたるWnt阻害剤(i)(例えば2-(2’
,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-
イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩)の投与によ
り、Wnt阻害剤が骨への臨床的に関連する変化を引き起こすリスクを低減することがで
きる。加えて、このWnt阻害剤の短い断続的投与は、活性樹状細胞シグネチャの上方調
節をもたらすのに十分であった。このことは関連性があり、なぜならば、このサブタイプ
の樹状細胞は、抗腫瘍応答のためにT細胞を動員するのにおよび活性化させるのに重要だ
からである。がん処置でのWntシグナル伝達の阻害により、樹状細胞およびT細胞の活
性化の阻害の放出を介してPD-1阻害に対する応答速度が改善される。全体として、W
nt阻害剤(i)と抗PD-1抗体分子との組み合わせ(Wnt阻害剤を処置サイクルの
初期(例えば8または15日)でのみ投与する)は、両方の化合物の相互に協調した効果
を示すことができ、かつ例えばWnt阻害剤(i)単独の使用と比較して良好な効力およ
び大幅に低下した安全プロファイルを提供することができる。
【0016】
本開示によれば、Wnt阻害剤は、細胞中でのWntシグナル伝達の活性を標的とする
、低減するまたは阻害する化合物である。例えば、このWnt阻害剤はポーキュパイン阻
害剤でもあり得る。このWnt阻害剤(i)は、国際公開第2010/101849号パ
ンフレットで開示された化合物である。抗PD-1抗体分子またはその薬学的な塩と組み
合わせるWnt阻害剤は、国際公開第2010/101849号パンフレット(化合物8
6、実施例10)で開示された以下の式(I):
【0017】
【化2】
の2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピ
ラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩
である。
【0018】
従って、本開示は、がんの処置で使用するための、(i)2-(2’,3-ジメチル-
[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-
2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩と、(ii)抗PD-1抗体分
子またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組み合わせであって、式(i)の化合物
(即ち、2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5
-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミド)またはその薬学的に許容
される塩を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~15日目に毎日投与し、本明細
書で説明した抗PD-1抗体分子(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与す
る、医薬組み合わせを提供する。このWnt阻害剤を4回のサイクルにわたり投与するこ
とができる。
【0019】
本開示では、用語「医薬組み合わせ」は、固定されていない組み合わせを指す。用語「
固定されていない組み合わせ」は、活性成分、例えば、式(i)の化合物(即ち、2-(
2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-
2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミド)またはその薬学的に許容される塩および
抗PD-1抗体分子または薬学的に許容される塩形態を両方とも、同時にまたは具体的な
時間制限なしに逐次的に別々の実体として患者に投与し、そのような投与により、患者の
体内でこれら2種の化合物の治療上有効なレベルが提供されることを意味する。
【0020】
用語「組み合わせ」または「との組み合わせ」は、治療または治療薬が同時に投与され
なければならないことおよび/または一緒に送達されるように製剤化されなければならな
い(ただし、この送達方法は本明細書で説明された範囲内である)ことを意味することを
意図するものではない。この組み合わせ中の治療薬を、1種または複数種の他の追加の治
療または治療薬と同時に、前にまたは後に投与することができる。治療薬または治療プロ
トコルを任意の順序で投与することができる。一般に、各薬剤を、その薬剤に関して決定
した用量および/またはタイムスケジュールで投与する。この組み合わせで用いられる追
加の治療薬を異なる組成物と一緒にまたは別々に投与することができることが更に認識さ
れるだろう。一般に、組み合わせで用いられる追加の治療薬は、それらが個々に用いられ
るレベルを超えないレベルで用いられることが予想される。一部の実施形態では、組み合
わせで用いられるレベルは、個々に用いられる場合と比べて低い。
【0021】
本開示のWnt阻害剤と組み合わせて使用され得る抗PD-1抗体分子またはその薬学
的に許容される塩は、本明細書で開示されたいずれかの抗PD-1抗体である。例えば、
この抗PD-1抗体分子は、本明細書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clo
ne-BもしくはBAP049-Clone-Eのいずれかから選択される抗体)由来の
少なくとも1つの抗原結合領域(例えば、可変領域またはその抗原結合断片)を含み得る
;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードされる少なく
とも1つの抗原結合領域(例えば、可変領域またはその抗原結合断片)を含み得る;また
は上述した配列のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%
、92%、95%、97%、98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含み得る。
この抗PD1抗体分子は好ましくは、ニボルマブ(Opdivo)、ペンブロリズマブ(
Keytruda)、ピディリズマブ、PDR-001またはそれらの薬学的な塩から選
択される。最も好ましくは、この抗PD-1抗体分子はPDR-001またはその薬学的
な塩である。PDR-001と指定された抗PD-1抗体分子はPCT/CN2016/
099494で説明された。より具体的には、PDR-001阻害剤またはその薬学的に
許容される塩は、表1で説明されたBAP049-Clone-EのHCDR1アミノ酸
配列、HCDR2アミノ酸配列およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH
)と、表1で説明されたBAP049-Clone-EのLCDR1アミノ酸配列、LC
DR2アミノ酸配列およびLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む
。
【0022】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細書で
説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clo
ne-Eのいずれかから選択される抗体)由来の少なくとも1種、2種、3種もしくは4
種の可変領域を含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列により
コードされる少なくとも1種、2種、3種もしくは4種の可変領域を含む;または上述し
た配列のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%
、95%、97%、98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含む。
【0023】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細書で
説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clo
ne-Eのいずれかから選択される抗体)由来の少なくとも1種もしくは2種の重鎖可変
領域を含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードさ
れる少なくとも1種もしくは2種の重鎖可変領域を含む;または上述した配列のいずれか
と実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%
、98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含む。
【0024】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細書で
説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clo
ne-Eのいずれかから選択される抗体)由来の少なくとも1種もしくは2種の軽鎖可変
領域を含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードさ
れる少なくとも1種もしくは2種の軽鎖可変領域を含む;または上述した配列のいずれか
と実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%
、98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含む。
【0025】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えばIgG4(例
えばヒトIgG4)の重鎖定常領域を含む。このヒトIgG4は、EUナンバリングによ
る228位で置換(例えば、SerからProへの置換)を含む。この抗PD-1抗体分
子は、IgG1(例えばヒトIgG1)の重鎖定常領域を含む。このヒトIgG1は、E
Uナンバリングによる297位で置換(例えば、AsnからAlaへの置換)を含む。こ
のヒトIgG1はまた、EUナンバリングによる265位での置換、EUナンバリングに
よる329位での置換、または両方(例えば、265位でのAspからAlaへの置換お
よび/または329位でのProからAlaへの置換)も含むことができる。このヒトI
gG1はまた、EUナンバリングによる234位での置換、EUナンバリングによる23
5位での置換、または両方(例えば、234位でのLeuからAlaへの置換および/ま
たは235位でのLeuからAlaへの置換)も含む。この重鎖定常領域は、表3に記載
のアミノ配列またはこれと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、
92%、95%、97%、98%、99%または更に高く同一)の配列を含む。
【0026】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えばカッパ軽
鎖定常領域(例えばヒトカッパ軽鎖定常領域)を含む。この軽鎖定常領域は、表3に記載
のアミノ配列またはこれと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、
92%、95%、97%、98%、99%または更に高く同一)の配列を含む。
【0027】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩はまた、例えば、I
gG4(例えばヒトIgG4)の重鎖定常領域およびカッパ軽鎖定常領域(例えばヒトカ
ッパ軽鎖定常領域)も含み、例えば、表3に記載のアミノ配列またはこれと実質的に同一
(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99
%または更に高く同一)の配列を含む重鎖定常領域および軽鎖定常領域も含む。このヒト
IgG4は、EUナンバリングによる228位で置換(例えばSerからProへの置換
)を含む。このPD-1抗体分子は、IgG1(例えばヒトIgG1)の重鎖定常領域お
よびカッパ軽鎖定常領域(例えばヒトカッパ軽鎖定常領域)を含み、例えば、表3に記載
のアミノ配列またはこれと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、
92%、95%、97%、98%、99%または更に高く同一)の配列を含む重鎖定常領
域および軽鎖定常領域を含む。このヒトIgG1はまた、EUナンバリングによる297
位で置換(例えばAsnからAlaへの置換)も含むことができる。このヒトIgG1は
、EUナンバリングによる265位での置換、EUナンバリングによる329位での置換
、または両方(例えば、265位でのAspからAlaへの置換および/または329位
でのProからAlaへの置換)を含む。このヒトIgG1は、EUナンバリングによる
234位での置換、EUナンバリングによる235位での置換、または両方(例えば、2
34位でのLeuからAlaへの置換および/または235位でのLeuからAlaへの
置換)を含む。
【0028】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩はまた、例えば、BAP
049-Clone-BもしくはBAP049-Clone-Eのアミノ酸配列を含む;
または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸
配列を含む;または上述した配列のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも80%
、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくは更に高く同一)の
配列を含む、重鎖可変ドメインおよび定常ドメイン、軽鎖可変ドメインおよび定常領域、
または両方も含む。この抗PD-1抗体分子は、表4に示す重鎖、軽鎖もしくは両方に由
来のリーダー配列またはこれと実質的に同一の配列を任意選択で含む。
【0029】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、本明細書で説明
された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clone
-Eのいずれかから選択される抗体)の重鎖可変領域に由来する少なくとも1種、2種も
しくは3種の相補性決定領域(CDR)を含む;または表1で説明されたもしくは表1中
のヌクレオチド配列によりコードされる少なくとも1種、2種もしくは3種の相補性決定
領域(CDR)を含む;または上述した配列のいずれかと実質的に同一(例えば、少なく
とも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくは更に高
く同一)の配列を含む。
【0030】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、表1に
示すまたは表1に示すヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域
に由来する少なくとも1種、2種もしくは3種のCDR(または合わせて全てのCDR)
を含む。これらのCDRのうちの1つもしくは複数(または合わせて全てのCDR)は、
表1に示すまたは表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と比較し
て、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは更に多い変化(例えば、アミノ酸の置換
または欠失)を有する。
【0031】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の軽鎖可変領域に由来する少なくとも1種
、2種もしくは3種のCDRを含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオ
チド配列によりコードされる少なくとも1種、2種もしくは3種のCDRを含む;または
上述した配列のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、
92%、95%、97%、98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含む。
【0032】
本抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、表1に示すまたは
表1に示すヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域に由来する
少なくとも1種、2種もしくは3種のCDR(または合わせて全てのCDR)を含む。こ
れらのCDRのうちの1つもしくは複数(または合わせて全てのCDR)は、表1に示す
または表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、
2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは更に多い変化(例えば、アミノ酸の置換または欠失
)を有する。
【0033】
本抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細書で説明さ
れた抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clone-
Eのいずれかから選択される抗体)の軽鎖可変領域に由来する少なくとも1種、2種もし
くは3種のCDRを含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列に
よりコードされる少なくとも1種、2種もしくは3種のCDRを含む;または上述した配
列のいずれかと実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、9
5%、97%、98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含む。
【0034】
本抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、表1に示すまたは
表1に示すヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域に由来する
少なくとも1種、2種もしくは3種のCDR(または合わせて全てのCDR)を含む。こ
れらのCDRのうちの1つもしくは複数(または合わせて全てのCDR)は、表1に示す
または表1に示すヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、
2つ、3つ、4つ、5つ、6つまたは更に多い変化(例えば、アミノ酸の置換または欠失
)を有する。ある特定の実施形態では、この抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容
される塩は軽鎖CDR中に置換を含み、例えば、軽鎖のCDR1中に、CDR2中におよ
び/またはCDR3中に1つまたは複数の置換を含む。この抗PD-1抗体分子またはそ
の薬学的に許容される塩は、軽可変領域の102位で軽鎖CDR3中に置換を含み、例え
ば、表1に係る軽可変領域(例えば、改変配列の配列番号54または70)の102位で
システインからチロシンへの置換またはシステインからセリン残基への置換を含む。
【0035】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、表1に
示すまたは表1に示すヌクレオチド配列にコードされるアミノ酸配列を含む重鎖および軽
鎖の可変領域に由来する少なくとも1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種のCDR
(または合わせて全てのCDR)を含む。一実施形態では、これらのCDRのうちの1つ
もしくは複数(または合わせて全てのCDR)は、表1に示すまたは表1に示すヌクレオ
チド配列によりコードされるアミノ酸配列と比較して、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、
6つまたは更に多い変化(例えば、アミノ酸の置換または欠失)を有する。
【0036】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細書で
説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clo
ne-Eのいずれかから選択される抗体)に由来する6種全てのCDRを含む;または表
1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードされる6種全てのCDR
または密接に関係するCDR(例えば、同一であるCDR、または少なくとも1つのアミ
ノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つまたは4つの改変(例えば、置換、欠失もしくは
挿入、例えば保存的置換)を有するCDR)を含む。この抗PD-1抗体分子またはその
薬学的に許容される塩はまた、本明細書で説明されたあらゆるCDRを含むこともできる
。この抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は軽鎖CDR中に置換を含み
、例えば、軽鎖のCDR1中に、CDR2中におよび/またはCDR3中に1つまたは複
数の置換を含む。本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、
軽可変領域の102位で軽鎖CDR3中に置換を含み、例えば、表1に係る軽可変領域の
102位でシステインからチロシンへの置換またはシステインからセリン残基への置換を
含む。
【0037】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、本明細書で説明され
た抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clone-E
のいずれかから選択される抗体)の重鎖可変領域に由来する、Kabat他に従う少なく
とも1種、2種もしくは3種のCDR(例えば、表1に記載したKabat定義に従う少
なくとも1種、2種もしくは3種のCDR)を含む;または表1で説明されたもしくは表
1中のヌクレオチド配列によりコードされる、Kabat他に従う少なくとも1種、2種
もしくは3種のCDR(例えば、表1に記載したKabat定義に従う少なくとも1種、
2種もしくは3種のCDR)を含む;または上述した配列のいずれかと実質的に同一(例
えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%も
しくは更に高く同一)の配列を含む;または表1に示すKabat他に従う1種、2種も
しくは3種のCDRに対して少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3
つもしくは4つの改変(例えば、置換、欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)を有する
配列を含む。
【0038】
本発明の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細書で
説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clo
ne-Eのいずれかから選択される抗体)の軽鎖可変領域に由来する、Kabat他に従
う少なくとも1種、2種もしくは3種のCDR(例えば、表1に記載したKabat定義
に従う少なくとも1種、2種もしくは3種のCDR)を含む;または表1で説明されたも
しくは表1中のヌクレオチド配列によりコードされる、Kabat他に従う少なくとも1
種、2種もしくは3種のCDR(例えば、表1に記載したKabat定義に従う少なくと
も1種、2種もしくは3種のCDR)を含む;または上述した配列のいずれかと実質的に
同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、
99%もしくは更に高く同一)の配列を含む;または表1に示すKabat他に従う1種
、2種もしくは3種のCDRに対して少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが最大でも
2つ、3つもしくは4つの改変(例えば、置換、欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)
を有する配列を含む。
【0039】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の重鎖および軽鎖の可変領域に由来する、
Kabat他に従う少なくとも1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種のCDR(例
えば、表1に記載したKabat定義に従う少なくとも1種、2種、3種、4種、5種も
しくは6種のCDR)を含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配
列によりコードされる、Kabat他に従う少なくとも1種、2種、3種、4種、5種も
しくは6種のCDR(例えば、表1に記載したKabat定義に従う少なくとも1種、2
種、3種、4種、5種もしくは6種のCDR)を含む;または上述した配列のいずれかと
実質的に同一(例えば、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、
98%、99%もしくは更に高く同一)の配列を含む;または表1に示すKabat他に
従う1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種のCDRに対して少なくとも1つのアミ
ノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つの改変(例えば、置換、欠失もしく
は挿入、例えば保存的置換)を有する配列を含む。
【0040】
本開示の抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、本明細書で説明され
た抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-Clone-E
のいずれかから選択される抗体)の重鎖および軽鎖の可変領域に由来する、Kabat他
に従う6種全てのCDR(例えば、表1に記載したKabat定義に従う6種全てのCD
R)を含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードさ
れる、Kabat他に従う6種全てのCDR(例えば、表1に記載したKabat定義に
従う6種全てのCDR)を含む;または上述した配列のいずれかと実質的に同一(例えば
、少なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしく
は更に高く同一)の配列を含む;または表1に示すKabat他に従う6種全てのCDR
に対して少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つの改
変(例えば、置換、欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)を有する配列を含む。本開示
に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、本明細書で説明された任
意のCDRを含むことができる。
【0041】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の重鎖可変領域に由来する少なくとも1種
、2種もしくは3種のChothia高頻度可変ループ(例えば、表1に記載したCho
thia定義に従う少なくとも1種、2種もしくは3種の高頻度可変ループ)を含む;ま
たは表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードされる少なくとも
1種、2種もしくは3種のChothia高頻度可変ループ(例えば、表1に記載したC
hothia定義に従う少なくとも1種、2種もしくは3種の高頻度可変ループ)を含む
;またはPD-1に接触するそれらの高頻度可変ループに由来するアミノ酸を少なくとも
含む;または表1に示すChothia他に従う1種、2種もしくは3種の高頻度可変ル
ープに対して少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つ
の改変(例えば、置換、欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)を有するアミノ酸を含む
。
【0042】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の軽鎖可変領域の少なくとも1種、2種も
しくは3種のChothia高頻度可変ループ(例えば、表1に記載したChothia
定義に従う少なくとも1種、2種もしくは3種の高頻度可変ループ)を含む;または表1
で説明されたもしくは表1中のヌクレオチド配列によりコードされる少なくとも1種、2
種もしくは3種のChothia高頻度可変ループ(例えば、表1に記載したChoth
ia定義に従う少なくとも1種、2種もしくは3種の高頻度可変ループ)を含む;または
PD-1に接触するそれらの高頻度可変ループに由来するアミノ酸を少なくとも含む;ま
たは表1に示すChothia他に従う1種、2種もしくは3種の高頻度可変ループに対
して少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つの改変(
例えば、置換、欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)を有するアミノ酸を含む。
【0043】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の重鎖および軽鎖の可変領域に由来する少
なくとも1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種の高頻度可変ループ(例えば、表1
に記載したChothia定義に従う少なくとも1種、2種、3種、4種、5種もしくは
6種の高頻度可変ループ)を含む;または表1で説明されたもしくは表1中のヌクレオチ
ド配列によりコードされる少なくとも1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種の高頻
度可変ループ(例えば、表1に記載したChothia定義に従う少なくとも1種、2種
、3種、4種、5種もしくは6種の高頻度可変ループ)を含む;またはPD-1に接触す
るそれらの高頻度可変ループに由来するアミノ酸を少なくとも含む;または表1に示すC
hothia他に従う1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種の高頻度可変ループに
対して少なくとも1つのアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つの改変
(例えば、置換、欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)を有するアミノ酸を含む。
【0044】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の6種全ての高頻度可変ループ(例えば、
表1に記載したChothia定義に従う6種全ての高頻度可変ループ)または密接に関
係する高頻度可変ループ(例えば、同一である高頻度可変ループ、または少なくとも1つ
のアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つまたは4つの改変(例えば、置換、欠失も
しくは挿入、例えば保存的置換)を有する高頻度可変ループを含む;または表1に示すC
hothia他に従う6種全ての高頻度可変ループに対して少なくとも1つのアミノ酸改
変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つの改変(例えば、置換、欠失もしくは挿入
、例えば保存的置換)を有する高頻度可変ループを含む。本開示に係る抗PD-1抗体分
子またはその薬学的に許容される塩は、本明細書で説明された任意の高頻度可変ループを
含むことができる。
【0045】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、本明細
書で説明された抗体(例えば、BAP049-Clone-BもしくはBAP049-C
lone-Eのいずれかから選択される抗体)の対応する高頻度可変ループと同一のカノ
ニカル構造を有する少なくとも1種、2種または3種の高頻度可変ループを含み、例えば
、本明細書で説明された抗体の重鎖および/または軽鎖の可変ドメインの少なくともルー
プ1および/またはループ2と同一のカノニカル構造を有する少なくとも1種、2種また
は3種の高頻度可変ループを含む。(例えば、高頻度可変ループのカノニカル構造の説明
に関してChothia et al. J. Mol. Biol. 1992, 227, 799; Tomlinson et al. J. Mol. Bi
ol. 1992, 227:776-798を参照されたい)。この構造を、これらの参考文献に記載されて
いる表の精査により決定することができる。
【0046】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、表1に
おいて本明細書で説明したKabat他およびChothia他に従って定義されるCD
Rまたは高頻度可変ループの組み合わせも含むことができる。
【0047】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、Kab
at定義およびChothia定義に従う、本明細書で説明された抗体(例えば、BAP
049-Clone-BもしくはBAP049-Clone-Eのいずれかから選択され
る抗体)の重鎖可変領域に由来する少なくとも1種、2種または3種のCDRまたは高頻
度可変ループ(例えば、表1に記載したKabat定義およびChothia定義に従う
少なくとも1種、2種または3種のCDRまたは高頻度可変ループ)を含む;または表1
中のヌクレオチド配列によりコードされる少なくとも1種、2種または3種のCDRまた
は高頻度可変ループを含む;または上述した配列のいずれかと実質的に同一(例えば、少
なくとも80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、99%もしくは更
に高く同一)の配列を含む;または表1に示すKabatおよび/またはChothia
に従う1種、2種または3種のCDRまたは高頻度可変ループに対して少なくとも1つの
アミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つもしくは4つの改変(例えば、置換、欠失も
しくは挿入、例えば保存的置換)を有する配列を含む。
【0048】
例えば、本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許与される塩は、例えば
表1に示すように、Kabat他に従うVH CDR1もしくはChothia他に従う
VH高頻度可変ループ1またはそれらの組み合わせを含むことができる。KabatとV
H CDR1のChothia CDRとの組み合わせは、アミノ酸配列GYTFTTY
WMH(配列番号224)またはこのアミノ酸配列と実質的に同一の(例えば、少なくと
も1つのアミノ酸改変を有するが最大でも2つ、3つまたは4つの改変(例えば、置換、
欠失もしくは挿入、例えば保存的置換)を有する)アミノ酸配列を含む。例えば、この抗
PD-1抗体分子は、例えば表1に示すように、Kabat他に従うVH CDR2~3
とKabat他に従うVL CDR1~3とを更に含むことができる。従って、フレーム
ワーク領域(FW)は、Kabat他に従って定義されるCDRとChothia他に従
って定義される高頻度可変ループとの組み合わせに基づいて定義される。例えば、抗PD
-1抗体分子は、例えば表1に示すように、Chothia他に従うVH高頻度可変ルー
プ1に基づいて定義されるVH FW1とKabat他に従うVH CDR1~2に基づ
いて定義されるVH FW2とを含むことができる。この抗PD-1抗体分子は、例えば
、Kabat他に従うVH CDR2~3に基づいて定義されるVH FW3~4とKa
bat他に従うVL CDR1~3に基づいて定義されるVL FW1~4とを更に含む
ことができる。
【0049】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、Kabat定義
およびChothia定義に従う、本明細書で説明された抗体(例えば、BAP049-
Clone-BまたはBAP049-Clone-Eのいずれかから選択される抗体)の
軽鎖可変領域に由来する少なくとも1種、2種または3種のCDR(例えば、表1に記載
したKabat定義およびChothia定義に従う少なくとも1種、2種または3種の
CDR)を含む。
【0050】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は以下を含む:
(a)配列番号4のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ酸配
列および配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに
配列番号13のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列お
よび配列番号33のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL);
(b)配列番号1から選択されるVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR
2アミノ酸配列および配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH、ならびに配列
番号10のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列および
配列番号32のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;
(c)配列番号224のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号5のVHCDR2アミノ
酸配列および配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH、ならびに配列番号13
のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列および配列番号
33のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL;または
(d)配列番号224のVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2のVHCDR2アミノ
酸配列および配列番号3のVHCDR3アミノ酸配列を含むVH、ならびに配列番号10
のVLCDR1アミノ酸配列、配列番号11のVLCDR2アミノ酸配列および配列番号
32のVLCDR3アミノ酸配列を含むVL。
【0051】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、配列番号1、配
列番号4または配列番号224から選択されるVHCDR1アミノ酸配列、配列番号2ま
たは配列番号5のVHCDR2アミノ酸配列および配列番号3のVHCDR3アミノ酸配
列を含む重鎖可変領域(VH)と、配列番号10または配列番号13のVLCDR1アミ
ノ酸配列、配列番号11または配列番号14のVLCDR2アミノ酸配列および配列番号
32または配列番号33のVLCDR3アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含
む。
【0052】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、配列番
号38のアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインと配列番号70のアミノ酸配列を含む軽鎖
可変ドメインとを含むことができる。
【0053】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、例えば、配列番
号91のアミノ酸配列を含む重鎖と配列番号72のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含むこと
ができる。
【0054】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、表1に記載した
BAP049-Clone-BまたはBAP049-Clone-EのHCDR1アミノ
酸配列、HCDR2アミノ酸配列およびHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(V
H)と、表1に記載したBAP049-Clone-BまたはBAP049-Clone
-EのLCDR1アミノ酸配列、LCDR2アミノ酸配列およびLCDR3アミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0055】
本開示に係る抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩は、表1に記載した
BAP049-Clone-EのHCDR1アミノ酸配列、HCDR2アミノ酸配列およ
びHCDR3アミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)と、表1に記載したBAP049
-Clone-EのLCDR1アミノ酸配列、LCDR2アミノ酸配列およびLCDR3
アミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)とを含む。
【0056】
抗PD-1抗体分子または本開示の抗PD-1抗体分子は、それらの機能への実質的な
影響を有しない追加の保存的なまたは非必須のアミノ酸置換を有し得ることが理解される
。
【0057】
用語「抗体分子」は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変ドメイン配列を含むタンパ
ク質(例えば免疫グロブリン鎖またはその断片)を指す。用語「抗体分子」は、例えば、
モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する完全長抗体を含む)を含む。抗体
分子は、完全長抗体、または完全長免疫グロブリン鎖、または完全長抗体もしくは完全長
免疫グロブリン鎖の抗原結合断片もしくは機能的断片を含む。抗体分子は多重特異的抗体
分子でもあり得、例えば、抗体分子は複数の免疫グロブリン可変ドメイン配列を含み、こ
の複数のうちの第1の免疫グロブリン可変ドメイン配列は第1のエピトープに対する結合
特異性を有し、この複数のうちの第2の免疫グロブリン可変ドメイン配列は第2のエピト
ープに対する結合特異性を有する。
【0058】
用語「薬学的に許容される塩」は、例えば酸付加塩として形成され得、好ましくは有機
酸または無機酸との酸付加塩として形成され得る。適切な無機酸は例えばハロゲン酸であ
り、例えば塩酸である。適切な有機酸は例えばカルボン酸またはスルホン酸であり、例え
ばフマル酸またはメタンスルホン酸である。単離または精製の目的のために、薬学的に許
容されない塩(例えば、ピクリン酸塩または過塩素酸塩)を使用することも可能である。
治療上での使用の場合には、薬学的に許容される塩または遊離化合物のみを用い(製剤の
形態で適用可能)、従ってこれらが好ましい。本明細書における遊離化合物へのあらゆる
言及は、適切におよび便宜上、対応する塩にも言及していると理解されるべきである。本
阻害剤の塩は、本明細書で説明されているように、好ましくは薬学的に許容される塩であ
り、薬学的に許容される塩を形成する適切な対イオンは当分野で既知である。
【0059】
用語「薬学的に許容される」は、合理的な利益/リスク比に見合った、過剰な毒性、刺
激、アレルギー反応もしくは他の問題または合併症なしのヒトおよび動物の組織と接触し
た使用に適している化合物、材料、組成物および/または剤形を指す。
【0060】
用語「阻害」または「阻害剤」は、所与の分子(例えば抗PD-1抗体分子等の免疫チ
ェックポイント阻害剤)のある特定のパラメータ(例えば活性)の減少を含む。例えば、
少なくとも5%、10%、20%、30%、40%または更に多い活性(例えばPD-1
活性またはPD-L1活性)の阻害は本用語に含まれる。そのため、阻害は100%であ
る必要はない。
【0061】
用語「がん」は、異常な細胞増殖の迅速で制御不能な増殖を特徴とする疾患を指す。が
ん細胞は局所的に広がり得る、または血流およびリンパ系を介して身体の他の部分へと広
がり得る。様々ながんの例は以下であるがこれらに限定されない:白血病、前立腺がん、
腎がん、肝がん、脳がん、リンパ腫、卵巣がん、肺がん、子宮頸がん、皮膚がん、乳がん
、頭頸部扁平上皮癌(NHSCC)、膵がん、消化器がん、大腸がん、トリプルネガティ
ブ乳がん(TNBC)、肺の扁平上皮がん、食道の扁平上皮がん、子宮頸部の扁平上皮が
ん、または黒色腫。本開示によれば、上述した組み合わせによる処置に特に適している疾
患条件は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、膵がん、肺の扁平上皮がん、食道の
扁平上皮がん、子宮頸部の扁平上皮がん、または黒色腫である。
【0062】
用語「腫瘍」および「がん」は本明細書では互換的に使用され、例えば、両方の用語と
も固形および液性(例えば、びまん性腫瘍または循環腫瘍)を包含する。一実施形態では
、用語「がん」または「腫瘍」は、悪性のがんおよび腫瘍ならびに進行性のがんおよび腫
瘍を含む。
【0063】
用語「処置」は、例えば、疾患を治癒させることまたは疾患の退行もしくは疾患の悪化
の遅延への効果を有することを目的とした、そのような処置を必要とする温血動物(具体
的にはヒト)への、本明細書で説明されたWnt阻害剤またはその薬学的に許容される塩
と抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせの治療的投与を含
む。任意の疾患または障害の用語「処置する(treat)」、「処置する(treating)」ま
たは「処置」は、疾患または障害の発病または発症または悪化の予防または遅延を目的と
した、この疾患または障害の改善(例えば、疾患またはその臨床症状のうちの少なくとも
1つの発症の遅延または停止または低減)を指す。
【0064】
Wnt阻害剤(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル
)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬
学的に許容される塩を、各サイクルの1~15日目または各サイクルの1~8日目に毎日
投与することができる。Wnt阻害剤(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビ
ピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセ
トアミドを最大4回のサイクルで投与することができる。Wnt阻害剤(i)を4回のサ
イクルの間に投与することができる。このWnt阻害剤(i)を最初のサイクルのみで投
与することもできる。好ましくは、Wnt阻害剤(i)を最大4回のサイクルにわたり各
サイクルの1~15日目の間に投与する。最も好ましくは、Wnt阻害剤(i)を最大4
回のサイクルにわたり各サイクルの1~8日目に毎日投与する。本発明はまた、(i)2
-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジ
ン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を最
初のサイクルの間にのみ投与することも提供する。本発明はまた、(i)2-(2’,3
-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル
)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を4回のサイクル
の間にのみ投与することも提供する。本明細書で開示されたWnt阻害剤を1日に1回投
与することができる、または2回の連続用量の間に12時間の間隔で1日に2回投与する
ことができる。組み合わせパートナー(ii)抗PD-1抗体分子を、臨床的に意義があ
る限り、より多くのサイクルにわたり投与し続けることができる。一実施形態では、(i
i)抗PD-1抗体分子を、最大4回のサイクルにわたりまたは4回のサイクルにわたり
投与する。
【0065】
本明細書で開示された組み合わせパートナーを、あるサイクルの同日または異なる日に
投与する。用語「サイクル」は、定期的に繰り返される、日数または月数で表される具体
的な期間を指す。本明細書で開示されたサイクルは、より好ましくは日数で表される。例
えば、サイクルは28日、30日、60日、90日であり得るがこれらに限定されない。
最も好ましくは、本開示で言及される「サイクル」は28日の長さである。そのようなサ
イクルを数回(例えば、2回、3回、4回、5回等)繰り返すことができ、各サイクルは
同じ長さであり、臨床的に意義がある(即ち、腫瘍増殖が少なくとも低減されもしくは制
御されまたは腫瘍が縮小しかつ有害事象が許容される)限り繰り返され得る。本組み合わ
せパートナーのうちの一方(例えばWnt阻害剤)を最大4回のサイクルにわたり投与し
、他方の組み合わせパートナーをより多くのサイクルにわたり投与し続けることができる
。本開示の(i)の投与による処置を、最も好ましくは、最大4回のサイクル(特に4回
のサイクル)にわたり繰り返す。本Wnt阻害剤を最大4回のサイクルにわたり投与し得
るが、本明細書では、一定の期間後に(例えば、この化合物が身体から完全に除去されて
おりかつ最大4回のサイクルにわたり投与されているWnt阻害剤があらゆるプラスの効
果をもたらしていない場合に)、単独で、または抗PD-1抗体分子により引き起こされ
る効果の強化を介して、Wnt阻害剤を最大4回のサイクルからなる別のならびにわたり
再び投与し得ることが企図されている。最大4回のサイクル(1回のみのサイクルまたは
4回のみのサイクルを含む)からなる最初の並びと、最大4回のサイクルからなる2番目
またはより後の並びとの間の期間は、Wnt経路の阻害によりもたらされる効果(例えば
骨密度の減少)の任意の蓄積を予防するのに十分な長さでなければならない。
【0066】
Wnt阻害剤(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル
)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬
学的に許容される塩を、2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、
20mg/日、40mg/日、80mg/日、120mg/日または180mg/日の1
日用量にて経口でまたは静脈内に(最も好ましくは経口で)投与することができる。好ま
しくは、この1日用量は2.5mg/日、5mg/日または10mg/日である。最も好
ましくは、この1日用量は10mg/日である。
【0067】
本開示によれば、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-
イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはそ
の薬学的に許容される塩を、例えば不活性の希釈剤または担体と共に医薬組成物で経口投
与することができる。
【0068】
本開示に従って、ニボルマブ(Opdivo)、ペンブロリズマブ(Keytruda
)、ピディリズマブ、PDR-001またはそれらの薬学的な塩から選択される抗PD-
1抗体分子(ii)またはその薬学的に許容される塩をがんの処置で使用し得、あるサイ
クルにおいて2週間毎にまたは4週間毎に投与する。最も好ましくは、本明細書で説明さ
れた抗PD-1抗体分子PDR-001(ii)またはその薬学的に許容される塩をがん
の処置で使用する。最も好ましくは、PDR-001(ii)を4週間毎に投与する。P
DR-001を、300~400mg/日の用量で注射(例えば皮下注射または静脈内注
射)により投与する。好ましくは、抗PD-1抗体分子PDR-001またはその薬学的
に許容される塩を、300~400mg/日の単回用量で静脈内投与する。最も好ましく
は、抗PD-1抗体分子PDR-001(ii)またはその薬学的に許容される塩を40
0mg/日の単回用量で投与する。最も好ましくは、抗PD-1抗体分子PDR-001
またはその薬学的に許容される塩を4週間毎に400mg/日の用量で投与する。この用
量を、単回ボーラスまたはいくつかの分割した用量で投与することができる。
【0069】
具体的には、投与スケジュールは、(最初のサイクルのみまたは4回のサイクルのみま
たは最大4回のサイクルにわたる各サイクルの1~15日目または1~8日目での)式(
i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(
ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される
塩のWnt阻害剤の2.5mg/日、5mg/日または10mg/日、ならびに2週間毎
または4週間毎の抗PD-1抗体分子(ii)またはその薬学的に許容される塩の300
mg/日~400mg/日など様々であり得る。例えば、本開示によれば、2.5mg/
日の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(
5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容
される塩を1~8日目または1~15日目に投与し、抗PD-1抗体分子(ii)または
その薬学的に許容される塩を400mg/日の用量で4回のサイクルまたは最大4回のサ
イクルにわたり4週間毎に1回投与する。別の例は、本開示によれば、5mg/日の(i
)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピ
ラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩
を1~8日または1~15日目に投与すること、および抗PD-1抗体分子(ii)また
はその薬学的に許容される塩を400mg/日の用量で4回のサイクルまたは最大4回の
サイクルにわたり4週間毎に1回投与することからなる。更に別の例は、本開示によれば
、10mg/日の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イ
ル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその
薬学的に許容される塩の1~8日または1~15日目の投与、および抗PD-1抗体分子
(ii)またはその薬学的に許容される塩を400mg/日の用量で4回のサイクルまた
は最大4回のサイクルにわたり4週間毎に1回投与することを提供する。
【0070】
別の例は、本開示によれば、2.5mg/日の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2
,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-
イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩のサイクル1の間のみの投与、およ
び抗PD-1抗体分子(ii)またはその薬学的に許容される塩の400mg/日の用量
での4週間毎の投与を提供する。別の例は、本開示によれば、5mg/日の(i)2-(
2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-
2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩をサイク
ル1の間のみに投与すること、および抗PD-1抗体分子(ii)またはその薬学的に許
容される塩を400mg/日の用量で4週間毎に投与することを提供する。更に別の例は
、本開示によれば、10mg/日の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピ
リジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセト
アミドまたはその薬学的に許容される塩のサイクル1の間のみの投与、および抗PD-1
抗体分子(ii)またはその薬学的に許容される塩の400mg/日の用量での4週間毎
の投与を提供する。
【0071】
本抗体分子を当分野で既知の様々な方法により投与し得るが、多くの治療用途の場合に
は、投与の好ましい経路/様式は静脈内への注射または注入である。例えば、この抗体分
子を20mg超/分(例えば20~40mg/分)の速度で静脈内注入により投与し得、
概して約300~400mg/日の用量に達するように40mg以上/分の速度で静脈内
注入により投与し得る。静脈内への注射または注入の場合、治療組成物は概して、無菌で
ありかつ製造および貯蔵の条件下にて安定でなければならない。この組成物を、溶液、マ
イクロエマルション、分散液、リポソーム、または高濃度の抗体に適した他の要求構造と
して製剤化することができる。無菌の注射用溶液を、必要な量の活性化合物(即ち抗体ま
たは抗体部分)を必要に応じて1種の成分または成分の組み合わせと共に適切な溶媒に組
み込んだ後にろ過滅菌することにより調製することができる。一般に、基礎の分散媒体と
必要な他の成分とを含む無菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことにより、分散液を調
製する。無菌注射用溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に無菌
ろ過された溶液からの活性成分と任意の追加の所望の成分との粉末が得られる真空乾燥お
よび凍結乾燥である。例えば、レシチン等のコーティングの使用により、分散液の場合に
は必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、溶液の適切な流動性を維持
することができる。注射用組成物に吸収を遅延させる薬剤(例えばモノステアリン酸塩お
よびゼラチン)を含ませることにより、この組成物の持続的吸収をもたらすことができる
。
【0072】
投与の経路および/または様式は所望される結果に応じて変わることが理解されるだろ
う。例えば、活性化合物を、移植片、経皮貼布およびマイクロカプセル化送達システム等
の制御放出製剤等の、この化合物を急速な放出から保護する担体と一緒に調製することが
できる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオル
トエステルおよびポリ乳酸等の生分解性で生体適合性のポリマーを使用することができる
。そのような製剤の多くの調製方法に特許が付与されている、または当業者に広く知られ
ている(例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Ro
binson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978)。
【0073】
同様に、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-
N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的
に許容される塩を、抗PD-1抗体分子(ii)または薬学的に許容される塩と組み合わ
せて、がんの処置用の医薬品の製造のために使用することができる。
【0074】
更に、本開示はまた、がんの処置方法であって、必要とする患者に有効量の組み合わせ
パートナー(例えば、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5
-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたは
その薬学的に許容される塩および抗PD-1抗体分子(ii)またはその薬学的に許容さ
れる塩)を投与することを含む方法も提供する。
【0075】
用語「患者」または「対象」は温血動物を指す。最も好ましい実施形態では、対象また
は患者はヒトである。対象または患者は、本明細書で開示されているように疾患または障
害と診断されているかつ疾患または障害の処置を必要とするヒトであることができる。
【0076】
がんの処置用の医薬品の製造に使用される場合、またはそれを必要とする患者のがんを
処置する方法で使用される場合、(i)および(ii)を、上記で説明した用量および投
与スケジュールで使用することができる。
【0077】
最も好ましくは、本組み合わせは、Wnt阻害剤(i)2-(2’,3-ジメチル-[
2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2
-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩と、抗PD-1抗体分子PDR-
001(ii)またはその薬学的に許容される塩とを含む。両方の組み合わせパートナー
(i)および(ii)を、本明細書で説明された投与スケジュールに従って投与すること
ができる。例えば、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-
イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはそ
の薬学的に許容される塩を、最大4回のサイクルにわたり(例えば4回のサイクルにわた
り)各サイクルのまたは最初のサイクルの間のみの1~15日目または1~8日目に毎日
投与することができる。PDR-001(ii)またはその薬学的に許容される塩を、1
回のサイクル当たり少なくとも1回投与する。例えば、(i)2-(2’,3-ジメチル
-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン
-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を、2.5mg/日、5mg
/日、7.5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日、80mg/日、1
20mg/日、180mg/日の用量にて、この特有の組み合わせで投与する。好ましく
は、この用量は2.5mg/日、5mg/日または10mg/日である。最も好ましくは
、この用量は10mg/日である。PDR-001阻害剤(ii)またはその薬学的に許
容される塩を300~400mg/日の単回用量で投与し、最も好ましくは400mg/
日の単回用量で投与する。
【0078】
更に、本開示はまた、がんの処置方法であって、必要とする患者に有効量の組み合わせ
パートナー(例えば、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5
-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたは
その薬学的に許容される塩および抗PD-1抗体分子(ii)またはその薬学的に許容さ
れる塩)を投与することを含む方法も提供する。
【0079】
組み合わせパートナー(i)および(ii)は、本明細書で説明されたように、Wnt
シグナル伝達経路の阻害によりもたらされる副作用(例えば骨密度の減少)を低下させつ
つ相乗的に活性であり得る。
【0080】
本開示の組み合わせパートナーの用語「有効量」または「治療上有効な量」は、所望の
治療結果を達成するのに必要な投与量でかつ期間にわたり有効な量を指す。この組み合わ
せパートナーの治療上有効な量は、個体の疾患状態、年齢、性別および体重等の因子に従
って変動し得る。治療上有効な量はまた、治療上有益な結果が本明細書で説明された組み
合わせのあらゆる毒性または有害な効果を上回る量でもある。好ましくは、「治療上有効
な投与量」は、測定可能なパラメータ(例えば腫瘍増殖速度)を、未処置の対象と比較し
て少なくとも約20%阻害し、より好ましくは少なくとも約40%阻害し、更により好ま
しくは少なくとも約60%阻害し、更により好ましくは少なくとも80%阻害する。
【実施例0081】
実施例1:
NanoStringは、最大約1000種の遺伝子からなる選択されたパネルに関し
て遺伝子発現を測定する。これを、標的RNA(リボ核酸)に直接ハイブリダイズする独
特のバーコード型プローブを使用して実行する。次いで、このRNAプローブハイブリッ
ドをゲル上で泳動させ、バーコードを線形化する。次いでこのバーコードを計数し、次い
で内部で開発したパイプラインを使用して正規化する。
【0082】
腫瘍生検を、スクリーニング時におよび式(I)2-(2’,3-ジメチル-[2,4
’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル
)アセトアミドのWnt阻害剤による処置の8日~28日目に実施した。腫瘍をホルマリ
ンで固定し、パラフィン(FFPE)に埋め込んだ、またはRNA Later中に直接
置いた。このサンプルを、薬力学(PD)マーカーAXIN2のリアルタイムqPCR分
析用にRNAが単離されているGenoptixに移した。残留RNAを、遺伝子発現が
(2016)NanoString pan-cancer免疫プロファイリングパネル
および免疫関連遺伝子のカスタム設計パネルを使用してプロファイルされるassay
research laboratory(ARL)に移した。サンプルを特定の適応症
内で正規化した(例えば、黒色腫サンプルまたは膵がんサンプルを別々に正規化した)以
外はNanoStringが推奨する方法を使用して遺伝子発現を正規化し、geNor
m安定性測定基準を使用してハウスキーピング遺伝子を選択した[PMID:12184
808]。ある特定の遺伝子が両方のパネルで重複し、本発明者らはこの遺伝子を使用し
て、変異性および他の品質管理パラメータを評価した。NanoString正規化手順
により課せられたQC測定基準ならびにヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色済
の隣接するコア生検の手動の審査により、コホートを11対のサンプルに絞り込んだ。更
に2つのサンプルを、これらは主成分分析において異常値であることが分かったことから
除去し、分析コホート用に9対のサンプルを残した。本明細書で説明された計数データを
、1つを除いてNanoStringが推奨する方法に従って正規化し、即ち、サンプル
を本明細書で説明された特定の適応症内で正規化し、約40種のハウスキーピング遺伝子
(これらの市販のがん免疫パネルに関してNanoStringウェブサイトで定義され
ている、2016年)を、複数のサンプルにわたる生物学的正規化に使用した。
【0083】
腫瘍-免疫微小環境中での表現型変化に関するデータを探るために、これまでは遺伝シ
グネチャを使用した。活性化されたWNTシグナル伝達を有する遺伝子操作マウスでは腫
瘍微小環境中で樹状細胞およびT細胞が阻害されることが既に分かっているが、この効果
は可逆的であるとは分かっていない。従って、本発明者らの目的は、Wnt阻害剤で処置
した患者からのサンプル中での遺伝子発現分析を使用して、腫瘍中でのWNTシグナル伝
達の近位の免疫細胞への阻害効果がWNT経路の薬理学的阻害により反転され得る程度を
決定することであった。
【0084】
式(I)の化合物が腫瘍免疫微小環境への影響を有するか否かを理解するために、本発
明者らは、免疫遺伝子発現とPDマーカーAXIN2との関係に注目した。このマーカー
を使用することにより、本発明者らは、所与の腫瘍中でWNT経路が阻害されている程度
を理解することができる。個々の遺伝子に注視する代わりに、本発明者らは、特定の経路
または細胞機能を説明する遺伝子のセット(遺伝子シグネチャ)の幾何平均発現を使用し
た。ある遺伝子シグネチャは、CD8+T-細胞の動員と関連するケモカインシグネチャ
であり[PMID:19293190]、他のシグネチャは、活性化されたCD103+
樹状細胞と関連する[PMID:25970248]。AXIN2発現で観測される倍数
変化から明らかなように、全ての対象がWNT経路の強い阻害を示すわけではなかった。
興味深いことに、AXIN2阻害とケモカインシグネチャおよび樹状細胞シグネチャの発
現の増加との関係は明白な直線関係であると思われる(以下を参照されたい)。本発明者
らは、WNT経路の薬理学系阻害により周囲の樹状細胞集団の随伴性の刺激がもたらされ
ることを観測した。これらの樹状細胞は、刺激された場合には腫瘍へとT細胞を動員する
ように機能する。重要なことに、このことはWnt阻害剤への曝露の15日後に観測し、
このことは、式(I)の化合物の断続的投与をチェックポイント阻害剤と組み合わせて、
これまでは免疫浸潤がなかった腫瘍と関連する抗腫瘍免疫応答を刺激することができるこ
とを支持した。
【0085】
遺伝子シグネチャにより、本発明者らは、たとえサンプルサイズが小さくても、所与の
適応症における多くのサンプルにわたる強い相関関係ならびに生物学的関連性を観測する
ことができた。Wnt阻害剤で処置された患者のサンプルではT細胞シグネチャが発現さ
れており、これは、複数の患者および処置条件(例えば様々な用量レベル)にわたる(図
2)。
図2は、この分析での9対の対象に関するスクリーニング来診でのCD3発現とサ
マリー来診で示されるT細胞レベルとの間の強い相関関係を示す。
【0086】
本発明者らの研究で使用した遺伝子シグネチャのうちの1つは、
図3に示すT細胞シグ
ネチャであった。
【0087】
式(i)のWnt阻害剤によるWnt経路の調節を、そのようなWnt阻害剤(即ち、
(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-
(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミド)が腫瘍-免疫微小環境に影
響を及ぼす方法と共に考慮した(
図4)。AXIN2発現の変化(全く同一のRNAサン
プルを使用して測定した)を、Wnt阻害剤(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4
’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル
)アセトアミドがWNT経路にどれくらい影響を及ぼすかの尺度として使用した。AXI
N2発現の変化を、線形モデルにより免疫シグネチャ変化に適合させた。
【0088】
図4の各グラフは以下の通りに示される:Y軸は、Wnt阻害剤(i)2-(2’,3
-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル
)ピリジン-2-イル)アセトアミドへの曝露後の所与の免疫シグネチャの変化を示し、
X軸はAXIN2の変化を示す。両方ともlog2スケールである。正の値は、所与のシ
グネチャまたはAXIN2での遺伝子の平均発現の増加を示す。第1に、I型インターフ
ェロンシグネチャとAXIN2阻害との間に弱い関係を観測した。第2に、インターフェ
ロンガンマ(即ち、II型インターフェロン)とAXIN2阻害との間に関係を観測した
。インターフェロンガンマは概して、CD8+T細胞により発現される。最後に、AXI
N2阻害と肥満細胞およびT調節(T-reg)のシグネチャとの間に中程度の逆相関を
観測した。これらの細胞タイプは両方とも、腫瘍-免疫微小環境中では免疫抑制であるこ
とを観測している。興味深いことに、AXIN2阻害とケモカインシグネチャ(
図6)お
よび樹状細胞シグネチャ(
図5)の発現の増加との間は明白な直線関係であると思われる
。このことは、WNT経路の薬理学系阻害により周囲の樹状細胞集団の随伴性の刺激がも
たらされるという第1の観測である。
【0089】
次いで、WNTシグナル伝達の増加に応じてCD103+樹状細胞中で調節されること
が確認された(Spranger et al,. Nature 2015, 523, 231)特定の遺伝子のうちのいくつ
かを使用して、一種の特定のシグネチャを作成し、これをAIXIN2阻害に対してモデ
ル化した(
図5)。
図5では、各点は1例の患者由来の一対のサンプルを表す。X軸上に
プロットされているのは、スクリーニングから処置時までの腫瘍中のAXIN2発現のl
og2倍数変化である。Y軸上でプロットされているのは、スクリーニングから処置時ま
での腫瘍中の樹状細胞シグネチャの発現のlog2倍数変化である。樹状シグネチャに含
まれる遺伝子は、BATF3、ITGAE、IRF8、CCR5、CCL3、CCL4、
CXCL1である。傾向線は、ロバスト線形モデルを使用してデータ点を回帰させること
により作成された線形推定値である。各点に隣接する数字は、処置の開始と処置時の生検
との間の日数を表す。Spranger他(Nature 2015, 523, 231)によれば、Wnt
応答性である遺伝子は、BATF3、ITGAE、IRF8、CCR5、CCL3、CC
L4、CXCL1である。ここで、他のシグネチャのうちのいくつかと同様に、AXIN
2阻害とCD103+樹状細胞の活性化に関連する遺伝子の発現の増加との間に正の関係
を観測した。このことは関連性があり、なぜならば、抗腫瘍応答のためのT細胞の認可お
よび活性化にはこの樹状細胞のサブタイプが重要だからである。
【0090】
これらのデータは、Wnt阻害剤(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピ
リジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセト
アミドまたはその薬学的に許容される塩が、免疫細胞浸潤を増加させかつCD103+樹
状細胞の阻害を緩和することにより腫瘍-免疫微小環境に影響を及ぼしていることを示唆
する。これらの細胞は、抗腫瘍免疫応答を駆動する細胞毒性T細胞の活性化および動員に
重要である。このことは、樹状細胞へのWnt阻害剤の効果と共同するために、T細胞の
阻害を緩和する抗PD-1抗体分子(PD-1阻害剤とも称される)を添加することを支
持する。
【0091】
腫瘍中へのCD8+T細胞の動員と強く相関することが発見されている別の遺伝子シグ
ネチャも調べた。この遺伝子シグネチャは主にケモカインからなり、上述したSpran
ger他(Nature 2015, 523, 231)の樹状細胞シグネチャと一部が重複する。これらの
ケモカインは、用量依存的にCD8+T細胞を動員することが分かっている。CD8+T
細胞動員と相関するケモカインは、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CXCL
9およびCXCL10である。本発明者らが、患者サンプル中でこのケモカインシグネチ
ャ中の遺伝子の平均発現を測定してAXIN2阻害と比較すると、本発明者らは、WNT
経路が阻害される程度と、この遺伝子シグネチャの発現との間に直線関係をまた観測した
(
図6)。
図6において、各点は、1例の患者由来の一対のサンプルを表す。X軸上にプ
ロットされているのは、スクリーニングから処置時までの腫瘍中のAXIN2発現のlo
g2倍数変化である。Y軸上でプロットされているのは、スクリーニングから処置時まで
の腫瘍中のケモカインシグネチャの発現のlog2倍数変化である。このケモカインシグ
ネチャに含まれる遺伝子は、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CXCL9およ
びCXCL10である。傾向線は、ロバスト線形モデルを使用してデータ点を回帰させる
ことにより作成された線形推定値である。各点に隣接する数字は、処置の開始と処置時の
生検との間の日数を表す。
図6に示すように、樹状細胞は、刺激された場合にはT細胞を
腫瘍へと動員するように機能する。重要なことに、これは、WNT阻害剤(i)2-(2
’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2
-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩への曝露の
約15日後に観測され、このことは、WNT阻害剤(i)の断続的投与をチェックポイン
ト阻害剤と組み合わせて、これまでは免疫浸潤がなかった腫瘍と関連する抗腫瘍免疫応答
を刺激することができることを示唆する。
【0092】
T細胞とCancer Genome Atlas(TCGA)でのWnt/CTNN
B1シグネチャとの間の逆相関は、がん細胞の起源の組織に関わりなく扁平上皮がん間で
一貫していることが分かった(Sanger et al., 2015)。この逆相関はまた、TNBCに
最も密接に関連する遺伝子発現ベースのサブタイプである基底様乳がんでも強かった(Be
rtucci et al., 2008)。
図7は、がん細胞のいくつかの様々なタイプでの相関を示す。
Wnt1シグネチャは、以下の6種のCTNNB1標的:EFNB3、APC2、HNF
1A、TCF12およびVEGFAからなる。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
実施例2:臨床試験の概要
以下の臨床試験を使用して、実施例の1の理論的根拠、発見および結論を確認する。実
施例1から予想される安全性および有効性も更に評価する。
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
実施例3:単独でのおよび免疫療法との組み合わせでの膵臓成長の抑制
以下の実験的研究を使用して、実施例1の論理的根拠、発見および結論を確認する。実
施例1から予想される有効性も更に評価する。
【0115】
本研究は、単独または抗PD-1分子との組み合わせのいずれかでの式(I)の化合物
の、PDX-CRE KRASG12DP53R172H/+マウスにおける膵臓腫瘍細
胞の増殖を抑制する能力を調べる。
【0116】
処置群:
A)ビヒクル
B)式(I)の化合物、5mg/kg BID、PO
C)式(I)の化合物、5mg/kg BID、POおよび抗PD1(1週間に2回
のip)
D)式(I)の化合物、5mg/kg BID、POおよびアイソタイプコントロー
ル(1週間に2回のip)
各処置群には約10~15匹のマウスが存在する。
【0117】
処置期間:マウスが触診可能な腫瘍量を有する場合に処置を開始する。マウスを、膵が
んの症状を示す場合に回収する(中央値120日)。処置動物およびコントロール動物の
コホートは、腫瘍免疫および炎症性浸潤の分析のための短期処置(7日未満)後のサンプ
ルである。
【0118】
超音波により腫瘍増殖をモニタリングする。膵がんの症状までの時間および転移拡散も
モニタリングする。分化、アポトーシス、増殖および老化のマーカーに関するHCも同様
にモニタリングする。
【0119】
読み取り:細胞核β-カテニン、BrdU取り込み、CD4+、CD8+、CD3+(
T-リンパ球)、F4/8-(マクロファージ)およびNIMP(好中球)に関するIH
C。コホート動物のために単離されたRNAの形態の物質およびdta、ならびに短期介
入後の免疫および炎症のシグネチャのためにGSEAと組み合わせたRNASeqによる
全トランスクリプトーム分析を決定する。
【0120】
実施例4:単独でのおよび免疫療法との組み合わせでの黒色腫増殖の抑制
以下の実験的研究を使用して、実施例1の論理的根拠、発見および結論を確認する。実
施例1から予想される有効性も更に評価する。
【0121】
本研究は、単独または抗PD-1分子との組み合わせのいずれかでの式(I)の化合物
の、TyrCreER BRafV600E/+Ptenfl/+およびTyrCreE
R BRafV600E/+Ptenfl/+Catnblox(ex3)/+マウスに
おける黒色腫腫瘍細胞の増殖を抑制する能力を調べる。
【0122】
処置群:
A)ビヒクル
B)式(I)の化合物、5mg/kg BID、PO
C)式(I)の化合物、5mg/kg BID、POおよび抗PD1(1週間に2回
のip)
D)式(I)の化合物、5mg/kg BID、POおよびアイソタイプコントロー
ル(1週間に2回のip)
各処置群には約10~15匹のマウスが存在する。
【0123】
処置期間:処置を、黒色腫(5mm直径)の確立時に開始し、腫瘍が終点(直径15m
m)に達するまで継続する。腫瘍増殖をノギス測定によりモニタリングする。
【0124】
読み取り:ノギス測定による腫瘍増殖、病理学的検査による腫瘍細胞型、β-カテニン
に関するIHC、およびWnt標的遺伝子のqPCR、IHCによる間質細胞/浸潤免疫
細胞マーカー。
【0125】
実施例5:単独でのおよび免疫療法との組み合わせでの黒色腫増殖の抑制
以下の実験的研究を使用して、実施例1の論理的根拠、発見および結論を確認する。実
施例1から予想される有効性も更に評価する。
【0126】
本研究は、単独または抗PD-1分子との組み合わせのいずれかでの式(I)の化合物
の、マウス由来黒色腫が移植されたCD-1ヌードマウスまたはC57BL/^マウス(
TyrCreER BRafV600E/+Ptenfl/+およびTyrCreER
BRafV600E/+Ptenfl/+Catnblox(ex3)/+マウス)にお
ける黒色腫腫瘍細胞の増殖を抑制する能力を調べる。
【0127】
処置群:
A)ビヒクル
B)式(I)の化合物、5mg/kg BID、PO
C)式(I)の化合物、5mg/kg BID、POおよび抗PD1(1週間に2回
のip)
D)式(I)の化合物、5mg/kg BID、POおよびアイソタイプコントロー
ル(1週間に2回のip)
各処置群には約10~15匹のマウスが存在する。
【0128】
処置期間:処置を、黒色腫(5mm直径)の確立時に開始し、腫瘍が終点(直径15m
m)に達するまで継続する。腫瘍増殖をノギス測定によりモニタリングする。
【0129】
読み取り:ノギス測定による腫瘍増殖、病理学的検査による腫瘍細胞型、β-カテニン
に関するIHC、およびWnt標的遺伝子のqPCR、IHCによる間質細胞/浸潤免疫
細胞マーカー。
読み取り:ノギス測定による腫瘍増殖、病理学的検査による腫瘍細胞型、β-カテニンに関するIHC、およびWnt標的遺伝子のqPCR、IHCによる間質細胞/浸潤免疫細胞マーカー。
以下の態様を包含し得る。
[1] がんの処置で使用するための、(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩と、(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩とを含む医薬組み合わせであって、(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~15日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与する、医薬組み合わせ。
[2] (i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~8日目の間に投与する、上記[1]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[3] (i)を最初のサイクルの間にのみ投与する、上記[1]または[2]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[4] (i)を4回のサイクルの間にのみ投与する、上記[1]または[2]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[5] 各サイクルは28日間である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[6] (i)を1日2回投与する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[7] (i)を12時間間隔で投与する、上記[6]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[8] (i)の1日用量は2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日、80mg/日、120mg/日または180mg/日である、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[9] (i)の1日用量は2.5mg/日、5mg/日または10mg/日である、上記[8]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[10] (i)の1日用量は10mg/日である、上記[8]または[9]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[11] (ii)をサイクルにおいて2週間毎にまたは4週間毎に投与する、上記[1~[10]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[12] (ii)を4週間毎に投与する、上記[11]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[13] (ii)は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、PDR-001またはそれらの薬学的な塩から選択される、上記[11]または[12]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[14] (ii)はPDR-001またはその薬学的な塩である、上記[13]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[15] (ii)を300~400mg/日の単回用量で静脈内投与する、上記[13]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[16] 前記単回用量は400mg/日である、上記[15]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[17] 最大4回のサイクルにわたり、2.5mg/日の(i)を1~8日目に投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、上記[1]、[2]、[5]~[9]または[11]~[16]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[18] 最大4回のサイクルにわたり、2.5mg/日の(i)を1~15日目に投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、上記[1]、[5]~[9]または[11]~[16]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[19] 2.5mg/日の(i)をサイクル1の間にのみ投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、上記[3]~[9]または[11]~[18]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[20] 最大4回のサイクルにわたり、5mg/日の(i)を1~8日目に投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、上記[1]、[2]、[5]~[9]または[11]~[16]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[21] 最大4回のサイクルにわたり、5mg/日の(i)を1~15日目に投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に1回投与する、上記[1]、[5]~[9]または[11]~[16]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[22] 5mg/日の(i)をサイクル1の間にのみ投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、上記[3]~[9]、[11]~[16]、[20]または[21]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[23] 最大4回のサイクルにわたり、10mg/日の(i)を1~8日目に毎日投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、上記[1]、[2]、[5]~[16]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[24] 最大4回のサイクルにわたり、10mg/日の(i)を1~15日目に投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、上記[1]または[5]~[16]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[25] 10mg/日の(i)をサイクル1の間にのみ投与し、400mg/日の(ii)を4週間毎に投与する、上記[1]、[3]~[16]、[23]または[24]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[26] (ii)を4週間毎に連続的に投与する、上記[1]~[25]のいずれか一項に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ。
[27] がんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子または薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用であって、(i)および(ii)を上記[1]~[26]のいずれか一項で定義されたように投与し、好ましくは、(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~16日目に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与する、使用。
[28] (i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~16日目に投与する、各サイクルの1~8日目に投与する、または最初のサイクルの間にのみ投与する、上記[27]に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
[29] (i)の1日用量は2.5mg/日、5mg/日、7.5mg/日、10mg/日、20mg/日、40mg/日、80mg/日、120mg/日または180mg/日である、上記[27]または[28]に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
[30] (i)の1日用量は10mg/日である、上記[27]~[29]のいずれか一項に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
[31] (ii)を300~400mg/日の単回用量で投与する、上記[27]~[30]のいずれか一項に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
[32] (ii)を400mg/日の単回用量で投与する、上記[27]~[30]のいずれか一項に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
[33] (i)および(ii)を上記[17]~[25]のいずれか一項で定義されたように投与する、上記[27]に記載のがんの処置用の医薬品の製造のための(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子またはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用。
[34] がんの処置方法であって、必要とする患者に有効量の(i)および(ii)を投与することを含み、(i)を最大4回のサイクルにわたり各サイクルの1~15日目の間に毎日投与し、(ii)を1回のサイクル当たり少なくとも1回投与する、方法。
[35] 有効量の(i)および(ii)を上記[1]~[26]のいずれか一項で定義されたように投与することを含む、上記[34]に記載のがんの処置方法。
[36] 前記がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、頭頸部扁平上皮癌、膵がん、胃腸がん、直腸結腸がん、肺の扁平上皮がん、食道の扁平上皮がん、子宮頸部の扁平上皮がん、または黒色腫である、上記[1]~[26]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、上記[27]~[33]に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用、または上記[34]~[36]に記載のがんの処置方法。
[37] 前記がんは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)、膵がん、または黒色腫である、上記[1]~[26]もしくは[36]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、上記[27]~[33]もしくは[36]に記載の2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的な塩との組み合わせでの使用、または上記[34]~[36]に記載のがんの処置方法。
[38] (i)および(ii)は骨吸収低下において相乗的に活性である、上記[1]~[26]、[36]もしくは[37]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、上記[27]~[33]、[36]もしくは[37]に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の(ii)抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的に許容される塩との組み合わせでの使用、または上記[34]~[37]に記載のがんの処置方法。
[39] (i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドまたはその薬学的に許容される塩を経口でまたは静脈内に投与し、最も好ましくは経口で投与する、上記[1]~[26]もしくは[36]~[38]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、上記[27]~[33]もしくは[36]~[38]に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子もしくはその薬学的な塩との組み合わせでの使用、または上記[34]~[38]に記載のがんの処置方法。
[40] 抗PD-1抗体分子(ii)は、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、ピディリズマブ、PDR-001またはそれらの薬学的な塩から選択される、上記[1]~[26]もしくは[36]~[39]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、上記[27]~[33]もしくは[36]~[39]に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子との組み合わせでの使用、または上記[34]~[39]に記載のがんの処置方法。
[41] 前記抗PD-1抗体分子(ii)はPDR-001またはその薬学的な塩である、上記[1]~[26]もしくは[36]~[40]に記載のがんの処置で使用するための医薬組み合わせ、上記[27]~[33]もしくは[36]~[40]に記載の(i)2-(2’,3-ジメチル-[2,4’-ビピリジン]-5-イル)-N-(5-(ピラジン-2-イル)ピリジン-2-イル)アセトアミドもしくはその薬学的に許容される塩の抗PD-1抗体分子との組み合わせでの使用、または上記[34]~[40]に記載のがんの処置方法。