(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133496
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】神経炎症におけるマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングするための陽電子放射断層撮影(PET)放射性トレーサー
(51)【国際特許分類】
A61K 51/04 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A61K51/04 200
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024096077
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2020571842の分割
【原出願日】2019-06-26
(31)【優先権主張番号】62/689,958
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501335771
【氏名又は名称】ザ・ジョンズ・ホプキンス・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジー ホルティ
(72)【発明者】
【氏名】ラヴィ ナイク
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エフ ダンナルズ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジー ポンパー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】神経炎症性もしくは神経変性の疾患または病気に罹患しているかその疑いがある被検者におけるマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングするためのイメージング剤を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物を含むイメージング剤を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の神経炎症性もしくは神経変性の疾患または病気に罹患しているかその疑いが
ある被検者においてマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングする
ためのイメージング剤であって、該イメージング剤は式(I)の化合物を含み:
【化1】
式中、X、YおよびZは、-N-および-CR
5-からなる群よりそれぞれ独立して選択され、R
5
は、H、置換もしくは非置換のC
1 -C
8アルキルまたはR*からなる群より選択され、R*は、
陽電子放射断層撮影法(PET)イメージングに適した放射性同位体を含む部分、または放射
性同位体自体であり;
R
1は、置換または非置換のヘテロアルキル、置換もしくは非置換のヘテロアリール、C
1
-C
8アルコキシル、C
1 -C
8アルキルアミノ、C
1 -C
8ジアルキルアミノ、-N(C
1 -C
8アルキ
ル)(SO
2)(C
1-C
8アルキル)からなる群より選択され、R
1は任意にR*で置換され得、またはR
1はPETイメージングに適した放射性同位体であり得;
R
2は置換または非置換のヘテロアルキルであり、R
2は任意にR*で置換され得;
R
3は置換または非置換のヘテロアリールであり、R
3は任意にR*で置換され得;
R
4は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、C
1 -C
8アルコキシル、シクロアル
キル、シクロヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され;
または、
その薬理的に許容される塩であり;
R
1, R
2, R
3またはR
5の少なくとも1つはR*で置換されるか、またはPETイメージングに適
した放射性同位体である、イメージング剤。
【請求項2】
R1が、置換または非置換のピペラジニル、置換または非置換のモルホリニル、1,1-ジオ
キシド-チオモルホリニル、置換または非置換のピラゾリル、置換または非置換のイミダ
ゾリル、C1 -C8アルコキシル、C1 -C8アルキルアミノ、C1 -C8ジアルキルアミノ、-N(C1
-C8アルキル)(SO2)(C1-C8アルキル)からなる群より選択され、R1は任意にR*で置換され得
、またはR1はPETイメージングに適した放射性同位体であり得る、請求項1に記載のイメー
ジング剤。
【請求項3】
R2が、置換または非置換のピペリジニル、および置換または非置換のモルホリニルから
なる群より選択され、R2は任意にR*で置換され得る、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項4】
R3が、置換または非置換のピロリル、および置換または非置換のフラニルからなる群よ
り選択され、R3は任意にR*で置換され得る、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項5】
R
1が、
【化2】
; およびR*
からなる群より選択され、
式中、pは、0および1から選択される整数であり;
qは、0、1、2、3、4および5からなる群より選択される整数であり;
rは、0、1、2、3および4からなる群より選択される整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシルおよび-CF
3からなる群より選択され;
R
12は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、カルボキシル、-(SO
2)-(C
1-C
8アルキ
ル)およびR*からなる群より選択される、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項6】
R
2が、
【化3】
からなる群より選択され、
式中、pは、0および1から選択される整数であり;
qは、0、1、2、3、4および5からなる群より選択される整数であり;
rは、0、1、2、3および4からなる群より選択される整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシルおよび-CF
3からなる群より選択される、請求項1
に記載のイメージング剤。
【請求項7】
R
3が、
【化4】
からなる群より選択され、
pは、0および1からなる群より選択される整数であり;;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシルおよび-CF
3からなる群より選択され;
R
12は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、カルボキシル、-(SO
2)-( C
1-C
8アルキ
ル)およびR*からなる群より選択される、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項8】
(a)X, Y, Z はそれぞれ-CR5-であり;
(b)XおよびZはそれぞれ-N-であり、Yは-CR5-であり;
(c)Xは-N-であり、YおよびZはそれぞれ-CR5であり;
(d)XおよびYはNであり、Zは-CR5 -であり;
(e)XおよびYはそれぞれ-CR5-であり、ZはNであり;
R5は少なくとも一度、任意にR*で置換され得る、請求項1に記載のイメージング剤。
ここで、
【請求項9】
式(I)の化合物が式(Ia)の化合物であり、
【化5】
(Ia);
式中、R
6は、H、C
1 -C
8アルキル、-C(=O)-O-R
9および-(CH
2)
n -R
10からなる群より選択
され、nは0、1、2、3、4、5、6、7および8から選択される整数であり、R
9およびR
10はそ
れぞれ、C
1 -C
8直鎖または分岐アルキルであり、R
6は任意にR*で置換され得、またはR
6は
R*であり得;
R
7はHまたはC
1 -C
8アルキルからなる群より選択され、R
7は任意にR*で置換され得、ま
たはR
7はR*であり得;
R
8は、置換もしくは非置換のピロリル、フラニル、およびピリジニルであり、R
8は任意
にR*で置換され得;または、
その薬学的に許容される塩であり;
R
6, R
7もしくはR
8の少なくとも1つはR*で置換されるか、またはR*である、請求項1に記
載のイメージング剤。
【請求項10】
R
6は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、se
c-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-
ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、および-C(=O)-O-(C
1 -C
8アルキル)
3
からなる群より選択され;
R
7は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、se
c-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-
ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、およびn-オクチルからなる群より選択され;
R
8は、
【化6】
からなる群より選択され;
pは、0および1からなる群より選択される整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシル、および-CF
3からなる群より選択され;
R
12は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、カルボキシル、-(SO
2)-(C
1-C
8アルキ
ル)およびR*からなる群より選択され;
R
6, R
7、およびR
8は、それぞれ、任意にR*で置換され得る、請求項9に記載のイメージ
ング剤。
【請求項11】
前記イメージング剤が、
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1a);
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニ
ル)フラン-2-カルボキサミド(1c);
4-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニ
ル)-1H-ピロール-2-カルボキサミド(1e);
4-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1g);
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-3-カルボキサミド(1h);
6-フルオロ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピコ
リンアミド(1i);
6-ブロモ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピコリ
ンアミド(1i);
tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(ピペリジン-1-イル)フェニ
ル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7a);
tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル
)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7b);
tert-ブチル4-(4-(4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-
1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩 (7c);
5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カル
ボキサミド(1b);
5-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1d);
4-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)-1H-ピ
ロール-2-カルボキサミド(1f);
5-シアノ-N-(4-(4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フ
ェニル)フラン-2-カルボキサミド(1k);
4-シアノ-N-(4-(4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-
イル)フェニル)-1H-ピロール-2-カルボキサミド(1l);
N-(4-(4-(2-ブロモエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)-5-シ
アノフラン-2-カルボキサミド(1m);
4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸{2-シクロヘックス-1-エニル-4-[1-(2-ジメチ
ルアミノ-アセチル)-ピペリジン-4-イル]-フェニル}-アミド(1g);および
4-シアノ-N-(5-(1-(メチルグリシル)ピペリジン-4-イル)-2',3',4',5'-テトラヒドロ-[
1,1'-ビフェニル]-2-イル)-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド(1h)
からなる群より選択される、請求項9に記載のイメージング剤。
【請求項12】
R*が、11 C、18 F、および-(CH2)m -R13からなる群より選択され、R13が、C1 -C8直鎖
または分岐アルキルであり、PETイメージングに適した放射性同位体で任意に置換され得
る、請求項1から11のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項13】
前記PETイメージングに適した放射性同位体が、11Cおよび18 Fからなる群より選択され
る、請求項1から12のいずれか1項に記載のイメージング剤。
【請求項14】
式(I)の化合物が、
【化7】
である、請求項1に記載のイメージング剤。
【請求項15】
1つ以上の神経炎症性または神経変性の疾患または病気に罹患しているかその疑いがあ
る被検者においてマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングする方
法であって、有効量の請求項1から14のいずれか1項に記載のイメージング剤、またはそ
の薬学的に許容される塩を被検者に投与する工程、およびPET画像を撮影する工程を含む
方法。
【請求項16】
神経炎症性または神経変性の疾患または病気が、アルツハイマー病(AD)、多発性硬化症
(MS)、外傷性脳損傷、脳腫瘍、HIV関連認知障害、および1つ以上の脱髄性疾患からなる群
より選択される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載)
本発明は、国立衛生研究所により授与されたAG054802の下、米国政府の支援によってな
された。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放射断層撮影法(PET)は、内因性リガンドまたは薬物によって脳受容体およびそ
の占有をin vivoで定量する最先端の方法である。推定神経炎症状態のPETイメージング(M
asgrau R, et al. (2017))は、反応性グリア細胞について報告するトランスロケータタン
パク質(TSPO)を標的とする放射性リガンドを使用して試みられてきた。細胞型特異性およ
び遺伝子型に対する感受性の欠如などの、TSPOを標的とするPETの限界のため、研究者は
、神経炎症の他の態様を標的とするPET放射性トレーサー(P2X7、COX-2、CB2、ROS、A2AR
、MMP)を開発した[Tronel C、ら(2017); Janssen Bら(2018)を参照のこと]。しかし、P2X
7受容体などの、より新しいイメージング標的は、同様に、細胞特異的発現の欠如を含む
制限がある(
図7)。脳内の細胞の最大10%を占める反応性ミクログリアのみを標的とする薬
剤(Aguzzi A, et al. (2013))は、CNS内の損傷および修復のこの細胞メディエーターをイ
メージングすることにより、神経炎症状態のより具体的であいまいさの少ない読み出しを
提供する可能性がある。
【0003】
脳内において、マクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)(c-FMS、CD-115、また
はM-CSFRとしても知られる)は、主にミクログリアによって発現され、一方で、ニューロ
ンを含む他の細胞におけるその発現は低い(Akiyama H, et al. (1994); Zhang Y, et al.
(2014)) (
図7)。CSF1Rは、2つのホモ二量体リガンド、CSF1およびIL-34によって活性化
されるチロシンキナーゼ受容体のサブファミリーにおける細胞表面タンパク質である(Pey
raud F, et al. (2017))。CSF1Rは、造血前駆細胞の生存、増殖、分化、および機能の主
要な調節因子である(Chitu V, et al. (2016))。CSF1Rは、ミクログリアの発達、生存、
および維持を直接制御し、神経炎症において極めて重要な役割を果たす(Ginhoux F, et a
l. (2010); Elmore MR, et al. (2014); Walker DG, et al. (2017); Smith AM, et al.
(2013); Palle P, et al. (2017))。CSF1Rの阻害は、種々の炎症性および神経炎症性障害
を治療する方法として追求されてきた(El-Gamal MI, et al. (2018))。健康な哺乳類の脳
におけるCSF1Rの局所分布については詳しく研究されていないが、マウスでの発現解析に
より、CSF1Rのレベルは上皮質領域で高く、脳の他の領域では低いことが実証された(Lue
LF, et al. (2001))。
【0004】
アルツハイマー病(AD)の死後の脳におけるCSF1RおよびCSF1のアップレギュレーション
を示す報告もある(Akiyama H, et al. (1994),Walker DG, et al. (2017),Lue LF, et
al. (2001))。マウスによる研究では、ADのトランスジェニックマウスモデルにおいて、
対照脳ではCSF1Rの中程度の発現を示し、アミロイドベータ(Aβ)沈着物の近くに位置する
ミクログリアでは高い発現を示した(Murphy GM Jr, et al. (2000); Yan SD, et al. (19
97); Boissonneault V, et al. (2009))。CSF1R, CSF1の同族リガンドをコードする遺伝
子は、第2段階疾患関連ミクログリア(DAM)においてアップレギュレートされており、これ
は、確認においてADを維持する際に有益な役割を果たし得る(Deczkowska A, et al(2018)
; Keren-Shaul H, et al(2017))。げっ歯類の外傷性脳損傷は、損傷領域におけるCSF1Rレ
ベルの高い特異的増加をもたらした(Raivich G, et al. (1998))。CSF1Rは、多発性硬化
症による病変で変化する(Prieto-Morin C, et al. (2016))。アップレギュレートされたC
SF1Rは、脳腫瘍で実証された(Alterman RLおよびStanley ER (1994))。HIV関連認知障害
は、CSF1Rのレベルと相関した(Lentz MR, et al. (2010))。CSF1Rの臨床PETのイメージン
グは、CNS障害における神経炎症に関連するCSF1R経路の理解を促し、新しい抗炎症CSF1R
療法の開発の指針となる可能性がある。
【0005】
CSF1Rのイメージングに適したPET放射性トレーサーは入手できない。公開されている唯
一の放射性標識CSF1R阻害剤は2014年に合成されたが(Bernard-Gauthier V, Schirrmacher
R (2014))、この放射性トレーサーを用いたイメージングの研究は報告されていない。
【発明の概要】
【0006】
本開示の主題は、1つ以上の神経炎症性もしくは神経変性の疾患または病気に罹患して
いるかその疑いがある被検者におけるマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を
イメージングするためのイメージング剤を提供することである。
【0007】
いくつかの態様において、本開示の主題は、1つ以上の神経炎症性もしくは神経変性の
疾患または病気に罹患しているかその疑いがある被検者においてマクロファージコロニー
刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングするためのイメージング剤を提供することであり
、該イメージング剤は、式(I)の化合物を含み:
【化1】
式中、X、Y、およびZは、-N-および-CR
5-からなら群からそれぞれ独立して選択され、R
5は、H、置換もしくは非置換のC
1-C
8アルキルまたはR*からなる群より選択され、R*は、
陽電子放射断層撮影法(PET)イメージングに適した放射性同位体を含む部分、または放射
性同位体自体であり;
R
1は、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、C
1-C
8アルコキシル、C
1-C
8アルキルアミノ、C
1 -C
8ジアルキルアミノ、および-N(C
1 -C
8 アル
キル)(SO
2)(C
1 -C
8 アルキル)からなる群より選択され、R
1は任意にR*で置換され得、ま
たはR
1はPETイメージングに適した放射性同位体であり得;
R
2は、置換または非置換のヘテロアルキルであり、R
2は任意にR*で置換され得;
R
3は、置換または非置換のヘテロアリールであり、R
3は任意にR*で置換され得;
R
4は、H、置換または非置換のC
1-C
8アルキル、C
1-C
8アルコキシル、シクロアルキル、
シクロヘテロアルキル、アリールおよびヘテロアリールからなる群より選択され;または
、
その薬理的に許容される塩であり;
R
1, R
2, R
3またはR
5の少なくとも1つはR*で置換されるか、またはPETイメージングに適
した放射性同位体である。
【0008】
他の態様において、本開示の主題は、1つ以上の神経炎症性もしくは神経変性の疾患ま
たは病気に罹患しているかその疑いがある被検者においてマクロファージコロニー刺激因
子1受容体(CSF1R)をイメージングする方法を提供することであり、該方法は、式(I)の有
効量のイメージング剤、またはその薬学的に許容される塩を被検者に投与する工程、およ
びPET画像を撮影する工程を含む。
【0009】
本開示の主題により全面的または部分的に取り組んだ本開示の主題の特定の態様につい
てこれまで述べてきたが、後に詳しく説明する、不随する実施例および図面と併せて説明
がすすむにつれて、他の態様も明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含んでいる
。カラー図面が付された本特許または特許出願公開の写しは、請求および所要の手数料の
納付により、特許庁によって提供される。
【0011】
ここまで本開示の主題を大まかに説明してきたが、ここで添付の図面を参照する。これ
らの図面は必ずしも縮尺通りではない。
【0012】
【
図1】AおよびBは、shamおよびLPSにおける[
11 C]CPPCの脳への取り込み: 右前脳注射マウス、ベースライン、および遮断の比較を示す。2つの独立した実験(AおよびB)を行った。タイムポイントは、放射性トレーサー注射の45分後だった;LPS(0.5μL中5μg)または生理食塩水(0.5μL)を、放射性トレーサー研究の2~3日前に右前脳(同側前部象限)に注射した。放射性トレーサーの5分前に遮断薬(CPPC)を腹腔内注射した。(A)対象領域(ROI)は、小脳(CB)、同側半球(IH)、および対側半球(CH)である。データは平均%SUV ± SD (n = 3)である。(B)ROIは小脳(CB)、対側半球(CH)、同側尾側象限(ICQ)、同側前部象限(IFQ)である。データは平均%SUV ± SD (n = 4)である。統計解析:LPS-ベースラインとshamまたはLPS-遮断との比較。*P<0.05;星印なしはP>0.05(ANOVA)を示す。
【
図2】A、B、およびCは、対照(Ctrl)マウス、LPS (i.p.)投与マウス(LPSベース)、およびLPS (i.p.)投与マウスにおけるCSF1R放射性トレーサー[
11 C]CPPCの脳への取り込みに加え、3つの独立した実験におけるCSF1R阻害剤による遮断(LPS遮断)を示す。タイムポイントは放射性トレーサー注射[LPS (10mg/kg)]後45分であった。(A) データは、平均%SUV ± SD (n = 5)である。CB:小脳。(B)データは、平均SUVR ± SD (n = 5)である。遮断剤(CPPC、1mg/kg、腹腔内)をLPS投与マウスに注射した。(C)データは、平均SUVR ± SD (n =3~6)である。遮断剤(化合物8、2mg/kg、腹腔内)をLPS投与マウスに注射した。統計解析:LPSベースラインと対照またはLPS遮断との比較。*P < 0.01; ** P = 0.03; 星印なしはP > 0.05(ANOVA)を示す;
【
図3】トランスジェニックAD (n = 6)および対照(n = 5)マウスにおける[
11 C]CPPCの脳への取り込みの比較を示す。タイムポイントは、放射性トレーサー注射の45分後。データ:平均%SUV ± SD。*P = 0.04、** P<0.005(ANOVA)。[
11 C]CPPCの取り込みは、ADマウスの脳領域において有意に大きかった。CB:小脳、Ctx:皮質、Hipp:海馬。
【
図4】AおよびBは、マウスEAEにおける[
11 C]CPPC PET/CTイメージングを示す。(A) MIP (上)、冠状切片(中)、および矢状切片(下)は、示されたマウスにおける、1投影あたり45~60分の放射性トレーサーの取り込みを示す。カラースケール範囲は%ID/g組織を示す。(B)対照動物への取り込みによって正規化された局所的な脳への取り込みとEAE重症度を示す。BS:脳幹、FCTX:前頭皮質。
【
図5】A、B、C、およびDは、ベースライン、LPS、およびLPS+遮断実験における同じヒヒにおける[
11 C]CPPCのPETイメージングを示す。放射性トレーサー注射の4時間前におけるLPS投与量は、0.05mg/kg (i.v.)であった。(A)パラメトリック(VT)画像。(B)ベースライン局所脳におけるSUVと時間による、[
11 C]CPPCの取り込み曲線。(C)全脳におけるSUVと時間による、[
11 C]CPPCの取り込み曲線:ベースライン(緑)、LPS投与後(赤)、LPS投与後の遮断(黒)。(D)代謝補正血漿におけるSUVと時間による、[
11 C]CPPCの取り込み曲線:ベースライン(緑)、LPS投与後(赤)、LPS+遮断(黒)。DのInsetは、スキャンの最初の120秒を示す。
【
図6】死後のヒトにおけるオートラジオグラフィー/[
11C]CPPC画像(ベースラインおよび遮断)を、下頭頂葉灰白質切片で示したものである。アルツハイマー症の被検者3例(1-AD、2-AD、3-AD)および対照(4-対照)被検者。
図20および表5、6も参照のこと。
【
図7】CNS細胞において、CSF1R遺伝子は主にミクログリアで発現されるが、TSPOおよびP2RX7遺伝子は多細胞発現を呈することを示したものである。略語: OPC = オリゴデンドロサイト前駆細胞; FPKM =100万のマッピングされた読取りあたりの転写物のキロベースあたりの断片。図はhttp://web.stanford.edu/group/barres_lab/brain_rnaseq.htmlからのものである。
【
図10】
図10は、[
11 C]CPPCおよび遮断薬CPPCを用いた遮断研究を示す。この研究では、トレーサー投与後45分のタイムポイントにおいて、低投与量(0.6~3mg/kg)の非標識CPPCでは有意ではない遮断が、投与量を増やした(10~20mg/kg)場合は取り込みの有意ではない漸増が示された。データ: %SUV ± SD (n - 5)。
【
図11】AおよびBは、同じ実験において、血中補正を行わない場合(A)および行った場合(B)の、ベースラインとCD1マウスの大脳皮質への [
11 C]CPPCの取り込みを遮断した場合との比較を示す。A:平均%SUV ± SD (n = 3)。ベースラインと2投与量(0.6および3mg/kg)の非標識CPPCによる遮断との間に有意な差は認められなかった(P >0.05)。B:データ:平均皮質SUVR ± SD (n = 3)。CPPC遮断薬を2回注射したマウスでは、血液補正SUVR値はベースライン(ANOVA)よりも有意に低かった(P = 0.05)。この実験は、[
11 C]CPPCがCD1マウス脳皮質中のCSF-1Rを特異的に放射性標識することを実証している。
【
図12】AおよびBは、放射性トレーサー注射の45分後の、対照対ミクログリア枯渇(A)および対照対CSF1Rノックアウト(B)マウスにおける、[
11 C]CPPCの全脳への取り込みの比較を示す。A:データは平均%SUV ± SD (n = 5)である。B:データは血液に対する平均%SUV±SD (n = 5)である。統計解析-ANOVA。
【
図13】閾値なしのEAEマウスにおける[
11 C]CPPC PET/CT画像の矢状切片を示す。全ての画像は、
図4に示されるものと同じ最大値にスケールされる。S=唾液腺; H =ハーダー腺。
【
図14】A、B、およびCは、マウス脳におけるCSF1Rの発現の上昇を誘導するLPS投与を示す。A:定量的リアルタイムPCR(n=5)によって測定されたCsf1r mRNAの相対レベル。B:対照およびLPS投与マウス脳からの全マウス脳抽出物のウェスタンブロット分析。各レーンはマウスを表す。C:CSF1Rのバンド強度を算出し、
図BからのGAPDHのもの(n=5)で正規化した。
【
図15】ヒヒ研究において、ベースライン(緑)、LPS投与(赤)およびLPS+遮断薬(黄)における [
11 C]CPPCの局所的VT値を示す。略語: Th =視床; Hp =海馬; CC =脳梁; WM =白質; Oc =後頭皮質; CB =小脳; Amyg =扁桃体; WB =全脳。
【
図16】ヒヒ血清中の炎症性サイトカインIL-6のレベルを示す図である。IL‐6レベルはLPS注射後に増加し、LPS+阻害薬の研究において低下した。IL-6はELISAキットで測定した。簡単に説明すると、3つの異なるタイムポイント(注射後15、45、および90分)において、2mLのヒヒ末梢血をBD Vacutainer (BD Biosciences, cat# 367983, La Jolla, CA)に回収し、2000×gで10分間、室温で遠心分離した。血清を滅菌チューブに回収し、将来の免疫測定のために-80℃で保存した。血清試料を氷上で解凍し、IL-6 Monkey Instant ELISA(登録商標) (Thermo Fisher Scientific, cat# BMS641INST, Halethorpe, MD)を用いてIL-6レベルを製造業者の手順に従って測定した。
【
図17】AおよびBは、ヒヒ血漿中の[
11 C]CPPC ([
11 C]JHU11744)放射性代謝物のHPLC解析を示す。Aは、異なる時間間隔で回収した[
11 C]CPPCおよび血漿試料の放射性HPLCクロマトグラム、Bは、対照およびLPSまたはLPSと遮断剤を投与したヒヒにおける[
11 C]CPPCの相対割合の時間による低下を示す。
【
図18】A、B、C、およびDは、[
11 C]CPPC動態分析の代表的プロットを示す。(A)はコンパートメント・モデリング、(B)はローガン分析であり、これらはどちらも好適な方法であることが示される(代表的な領域:被殻、緑色マーカー: PET研究データポイント、実線:適合データ。(C)代表的なベースライン研究における、コンパートメント・モデリングおよびローガン分析によるVT結果の比較、これらは高度に同等/相関していることが示される(R
2 =0.9657)。(D)局所的VT推定値(領域:被殻)の代表的な時間一貫性プロットであり、注射後60分を使用して安定した結果(<2.5%の変化)が得られたことを示す。
【
図19】ヒヒ研究におけるベースライン(緑)、LPS投与(赤)およびLPS+遮断薬(黄)の [
11 C]CPPCの局所的K1を示す。略語: Th = 視床; Hp = 海馬; CC = 脳梁; WM = 白質; Oc = 後頭皮質; CB = 小脳; Amyg = 扁桃体; WB = 全脳。
【
図20】AD死後ヒト脳切片における、[
11 C]CPPCを用いたオートラジオグラフィー実験における、種々の遮断薬(PLX3397; BLZ945および化合物8)によるベースライン/遮断率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ここで、本開示の主題を、添付の図面を参照して以下により詳細に説明するが、ここで
は、本開示の主題の一部の(ただし、全てではない)実施形態を示す。全体を通して同じ参
照符号は同じ要素を指す。本開示の主題は、多くの異なる形態で具現化することができ、
本明細書に記載する実施形態に限定されるものであると解釈されるべきではなく、むしろ
、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要求を満たすように提供される。実際、
本開示の主題に関わる技術分野の当事者であれば、上述の説明および関連する図に提示さ
れている教示の利益を有する、本開示の主題の多くの改変および他の実施形態を思いつく
であろう。従って、本開示の主題は、開示された具体的な実施形態に限定されるものでは
なく、修正および他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれると理解されたい。
【0014】
I. 神経炎症におけるマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージン
グするためのPET放射性トレーサー
マクロファージコロニー刺激因子‐1(CSF1)は、種々の炎症性疾患の原因となる最も
一般的な炎症誘発性サイトカインの1つである。CSF1はその受容体であるCSF1Rと相互作用
し、単球/マクロファージ系細胞の分化と増殖をもたらす。CSF1R発現レベルの増加は、ア
ルツハイマー症(AD)、脳腫瘍、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷などを含むが、これらに
限定されない種々の神経炎症性障害と関連している。Walker et al, 2017を参照のこと。
【0015】
CNSでは、CSF-1Rは主にミクログリアによって発現されるが(Akiyama, et al., 1994; R
aivich et al., 1998)、ニューロンを含む他の細胞での発現は低い(Chitu et al., 2016)
。潜在的に、CSF1Rは神経炎症におけるミクログリア活性化のイメージングのための選択
的結合部位を表している。反対に、神経炎症の最も一般的に使用されるバイオマーカー、
TSPOおよびP2RX7は、どちらも多細胞発現を示し(Raivich et al., 1998)、よって、ミク
ログリア活性化の選択的結合部位とみなすことはできない。
図10参照。
【0016】
強力で選択的なCSF1R阻害剤である5‐シアノ‐N‐(4‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル
)‐2‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニル)フラン‐2‐カルボキサミド(1)は、製薬業界によ
り、潜在的な抗炎症剤として開発された(Illig et al., 2008)。
【化2】
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1)
【0017】
本開示の主題は、部分的に、[
11 C]1([
11C]CMPPF;[
11 C]JHU11744; 5-シアノ-N-(4-(4-
[
11 C]メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサ
ミド)の放射線合成、および神経炎症におけるCSF1RのPETイメージングのためのその評価
を提供する。
【化3】
【0018】
より一般的には、本開示の主題は、マクロファージコロニー刺激因子-1受容体(CSF1R)
をイメージングするための一連のPET放射性トレーサーを提供する。CSF1Rでの放射性トレ
ーサーの結合を、神経炎症の動物モデル、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)マウス(多発性
硬化症モデル)、および死後のアルツハイマー症脳組織において実験した。動物モデルで
は、特定の化合物が容易に脳に入った。さらに特定の化合物は、神経炎症の動物モデルに
おいてCSF1Rに特異的に結合した(および標識した)。ある態様において、本開示による化
合物は、対照モデルよりも、神経炎症の動物モデルにおいて有意により多くの取り込みを
示した。さらなる実施形態において、選択された化合物は、ヒトのアルツハイマー脳組織
中のCSF1Rを特異的に標識する。従って、本開示による化合物は、神経炎症および神経変
性におけるCSF1Rの研究に使用することができる。
【0019】
A. 式(I)のイメージング剤
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、1つ以上の神経炎症性または神経変性
の疾患または病気に罹患しているかその疑いがある被検者において、マクロファージコロ
ニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングするためのイメージング剤を提供し、このイ
メージング剤は、式(I)の化合物を含む:
【化4】
式中、X, Y、およびZは、-N-および-CR
5-から成る群からそれぞれ独立して選択され、R
5は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、またはR*から成る群より選択され、R*は、
陽電子放射断層(PET)イメージングまたは放射性同位体自体に適した放射性同位体を含む
部分であり;
R
1は、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のヘテロアリール、C
1 -
C
8アルコキシル、C
1 -C
8アルキルアミノ、C
1 -C
8ジアルキルアミノ、-N(C
1 -C
8アルキル)
(SO
2)(C
1-C
8アルキル)からなる群より選択され、R
1は任意にR*で置換され得、またはR
1は
PETイメージングに適した放射性同位体であり得;
R
2は置換または非置換のヘテロアルキルであり、R
2は任意にR*で置換することができ;
R
3は置換または非置換のヘテロアリールであり、R
3は任意にR*で置換することができ
、
R
4は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、C
1 -C
8アルコキシル、シクロアル
キル、シクロヘテロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群より選択され
る、または、その薬理的に許容可能な塩であり;
R
1, R
2, R
3またはR
5の少なくとも1つはR*で置換されるか、またはPETイメージングに適
した放射性同位体である。
【0020】
いくつかの実施形態において、R1は、置換または非置換のピペラジニル、置換または非
置換のモルホリニル、1,1-ジオキシド-チオモルホリニル、置換または非置換のピラゾリ
ル、置換または非置換のイミダゾリル、C1 -C8アルコキシル、C1 -C8アルキルアミノ、C1
-C8ジアルキルアミノ、-N(C1 -C8アルキル)(SO2)(C1-C8アルキル)からなる群より選択さ
れ、R1は任意にR*で置換され得るか、またはR1はPETイメージングに適した放射性同位体
であり得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、R2は、置換または非置換のピペリジニルおよび置換また
は非置換のモルホリニルからなる群より選択され、R2は任意にR*で置換され得る。
【0022】
いくつかの実施形態において、R3は、置換または非置換のピロリル、および置換または
非置換のフラニルからなる群より選択され、R3は任意にR*で置換され得る。
【0023】
特定の実施形態において、R
1は、以下、すなわち、
【化5】
からなる群より選択され、
pは0と1から選択された整数であり;
qは、0、1、2、3、4および5 からなる群から選択された整数であり;
rは、0、1、2、3および4からなる群から選択された整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシル、および-CF
3からなる群より選択され;
R
12は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、カルボキシル、-(SO
2)-(アルキル)、お
よびR*からなる群より選択される。
【0024】
特定の実施形態において、R
2は、
【化6】
からなる群より選択され、
pは0と1から選択された整数であり;
qは、0、1、2、3、4、および5 からなる群から選択された整数であり;
rは、0、1、2、3、および4からなる群から選択された整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシル、および-CF
3からなる群より選択される。
【0025】
特定の実施形態において、R
3は、
【化7】
からなる群より選択され、
pは、0と1からなる群から選択された整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシル、および-CF
3からなる群より選択され;
R
12は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、カルボキシル、-(SO
2)-(アルキル)、
およびR*からなる群より選択される。
【0026】
特定の実施形態において、
(a)X, Y, Z はそれぞれ-CR5-であり;
(b)XおよびZはそれぞれ-N-で、Yは-CR5-であり;
(c)Xは-N- で、YとZはそれぞれ-CR5であり;
(d)XおよびYはNで、Zは-CR5 -であり;
(e)XおよびYはそれぞれ-CR5-で、ZはNであり;
R5は任意に少なくとも1回R*で置換され得る。
【0027】
特定の実施形態において、式(I)の化合物は、式(Ia)の化合物である:
【化8】
式中、
R
6は、H、C
1-C
8アルキル、-C(=O)-O-Rおよび-(CH
2)
n-R
10からなる群から選択され;nは0
、1、2、3、4、5、6、7、および8から選択された整数であり;R
9およびR
10はそれぞれC
1 -
C
8直鎖または分岐アルキルであり、R
6は任意にR*で置換することができ、またR
6はR*であ
り得;
R
7は、HまたはC
1 -C
8アルキルからなる群より選択され、R
7は任意にR*で置換すること
ができ、またはR
7はR*であり得;
R
8は、置換または非置換のピロリル、フラニル、およびピリジニルであり、R
8は任意に
R*で置換され得;または、その薬学的に許容可能な塩であり;
R
6, R
7、またはR
8の少なくとも1つはR*で置換されるか、またはR*である。
【0028】
より特定の実施形態において、R
6は、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピ
ル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イ
ソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、およ
び-C(=O)-O-(C
1 -C
8アルキル)
3からなる群より選択され; R
7は、水素、メチル、エチル、
n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペン
チル、sec-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプ
チル、n-オクチルからなる群より選択され; R
8は、
【化9】
からなる群より選択され;
pは、0と1からなる群より選択された整数であり;
R
11は、C
1 -C
8置換または非置換のアルキル、C
1 -C
8アルコキシル、ヒドロキシル、ア
ミノ、シアノ、ハロゲン、カルボキシル、および-CF
3からなる群より選択され;
R
12は、H、置換または非置換のC
1 -C
8アルキル、カルボキシル、-(SO
2)-(C
1-C
8アルキ
ル)、およびR*からなる群より選択され;R
6, R
7およびR
8はそれぞれ任意にR*で置換され得
る。
【0029】
さらにより特定の実施形態において、イメージング剤は、以下、すなわち、
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1a);
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニ
ル)フラン-2-カルボキサミド(1c);
4-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニ
ル)-1H-ピロール-2-カルボキサミド(1e);
4-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1g);
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-3-カルボキサミド(1h);
6-フルオロ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピコ
リンアミド(1i);
6-ブロモ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピコリ
ンアミド(1i);
tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(ピペリジン-1-イル)フェニ
ル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7a);
tert-ブチル4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)フ
ェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7b);
tert-ブチル4-(4-(4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-
1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7c);
5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カル
ボキサミド(1b);
5-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1d);
4-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)-1H-ピ
ロール-2-カルボキサミド(1f);
5-シアノ-N-(4-(4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フ
ェニル)フラン-2-カルボキサミド(1k);
4-シアノ-N-(4-(4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-
イル)フェニル)-1H-ピロール-2-カルボキサミド(1l);
N-(4-(4-(2-ブロモエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)-5-シ
アノフラン-2-カルボキサミド(1m);
4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸{2-シクロヘックス-1-エニル-4-[1-(2-ジメチ
ルアミノ-アセチル)-ピペリジン-4-イル]-フェニル}-アミド(1g);および
4-シアノ-N-(5-(1-(メチルグリシル)ピペリジン-4-イル)-2',3',4',5'-テトラヒドロ-[1,
1'-ビフェニル]-2-イル)-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド(1h)
からなる群より選択される:
【0030】
いくつかの実施形態において、R*は、11 C、18 F、および-(CH2)m -R13からなる群より
選択され、R13は、PETイメージングに適した放射性同位体で任意に置き換えることができ
る、C1 -C8直鎖または分岐のアルキルである。
【0031】
特定の実施形態において、PETイメージングに適した放射性同位元素は、11 Cおよび18
Fからなる群より選択される。
【0032】
さらにより特定の実施形態において、式(I)の化合物は以下の通りである。
【化10】
【0033】
B. イメージングの方法
いくつかの実施形態において、本開示の主題は、1以上の神経炎症性または神経変性の
疾患または病気に罹患しているかその疑いがある被検者においてマクロファージコロニー
刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングする方法を提供し、この方法は、有効量の式(I)
のイメージング剤、またはその薬学的に許容される塩を被検者に投与するステップと、PE
T画像を撮影するステップとを含む。
【0034】
特定の実施形態において、神経炎症性または神経変性疾患または病気は、アルツハイマ
ー症(AD)、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷、脳腫瘍、HIV関連認知障害、および1以上の
脱髄性疾患からなる群より選択される。
【0035】
脱髄性疾患の例としては、MS、デビック病、および他の炎症性脱髄性疾患;中枢神経ニ
ューロパチー、橋中心髄鞘崩壊症、脊髄癆(梅毒性脊髄症)、および進行性多巣性白質脳症
を含む白質ジストロフィー性疾患;ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発ニュー
ロパチー、シャルコー・マリー・トゥース病、圧力麻痺に罹りやすい遺伝性ニューロパチ
ー;ならびに末梢神経障害、脊髄症、および視神経障害を含む末梢神経系の脱髄性疾患が
挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
一般に、活性剤の「有効量」は、所望の生物学的応答を誘発するのに必要な量を指す。
当業者によって理解されるように、薬剤またはデバイスの有効量は、所望の生物学的終点
、送達される薬剤、医薬組成物の構成、標的組織などのような因子によって変化し得る。
【0037】
「接触する」とは、本開示の主題の少なくとも1つの化合物が、少なくとも1つのCSF1R
発現腫瘍または細胞と物理的に接触することになる任意の作用を意味する。「接触する」
には、細胞または腫瘍を化合物に、少なくとも1つの化合物を少なくとも1つの細胞または
腫瘍に接触させるのに十分な量で曝露することが含まれ得る。本方法は、化合物および細
胞または腫瘍を、培養皿または培養実験管などの制御された環境に導入、好ましくは混合
することによって、in vitroまたはex vivoで実施することができる。本方法は、in vivo
で実施することができ、この場合、接触するとは、任意の好適な経路を介して化合物を被
検者に投与するなど、被検者の少なくとも1つの細胞または腫瘍を本開示の主題の少なく
とも1つの化合物に曝露することを意味する。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「治療する」という用語は、そのような用語が適用され
る疾患、障害、もしくは病気、またはそのような疾患、障害もしくは病気の1つもしくは
複数の条件もしくは発現の進行を逆転させる、軽減させる、阻害する、予防する、または
その可能性を低減させることを含み得る。「予防する」とは、疾患、障害、病気、または
その症状もしくは顕在化、またはその重症度の悪化が起こらないようにすることをいう。
従って、本開示による化合物は、疾患、障害、または病気の発生または再発を予防または
低減するため、予防的に投与することができる。
【0039】
「組合せ」という用語は、その最も広い意味で使用され、被検者に、少なくとも2つの
薬剤、より具体的には、本開示による化合物および少なくとも1つの他の活性薬剤が投与
されることを意味する。より具体的には、「組合せて」という用語は、例えば、単一の病
状の治療のために2つ(または2つ以上)の活性薬剤を同時に投与することを意味する。本
明細書中で使用される場合、活性薬剤は単一の剤形に組み合わせて投与してもよく、同時
に別々の剤形として投与してもよく、または別々の剤形として同日または別々の日に交互
にまたは連続して投与してもよい。本開示の主題の一実施形態において、活性薬剤は、単
一の剤形に組み合わされ投与される。別の実施形態において、活性薬剤は、別々の剤形で
投与される(例えば、片方の量を変え、もう片方は変えないことが望ましい)。単一投与形
態は、疾患状態の治療のために活性薬剤を追加することが含まれ得る。
【0040】
本開示による方法によって治療される被検者は、多くの実施形態において、ヒト被検者
であることが望ましいが、本明細書に記載する方法は、「被検者」という語に含まれるこ
とが意図される全ての脊椎動物種に関して有効であると理解されたい。従って、「被検者
」は、既存の病気もしくは疾患の治療、または病気もしくは疾患の発症を予防するための
予防的治療などの医療を目的とするヒト被検者、または医学、獣医学、もしくは成長目的
のための動物(非ヒト)を含むことができる。好適な被検動物としては、限定されないが、
例えば、ヒト、サル、エイプなどの霊長類;例えば、畜牛、雄牛などのウシ属;ヒツジ;ヤ
ギ;ブタ;ウマ、ロバ、シマウマなどのウマ科;野生および飼いネコを含むネコ;イヌ;ウサ
ギ、野ウサギを含むウサギ目の動物;およびマウス、ラットなどを含むげっ歯類を含む哺
乳動物が挙げられる。動物はトランスジェニック動物であってもよい。いくつかの実施形
態において、被検者は、胎児、新生児、乳児、幼児、および成人を含むが、これらに限定
されないヒトである。また、「被検者」は、病気または疾患に罹患しているかその疑いが
ある患者を含むことができ、従って、「被検者」および「患者」という用語は、本明細書
中で互換的に使用される。
【0041】
C.キット
さらに他の実施形態において、本開示の主題は、本開示による化合物を含むキットを提
供する。
【0042】
特定の実施形態において、キットは、薬学的に許容可能な担体および本発明の化合物を
含む包装された医薬組成物を提供する。特定の実施形態において、包装された医薬組成物
は、放射性標識された前駆体と組み合わせる際に本発明の化合物を生成するのに必要な反
応前駆体を含む。本発明によって提供される他の包装された医薬組成物は、以下のものの
うちの少なくとも1つを含む証拠(indicia)をさらに含む:供給された前駆体から本発明に
よる化合物を調製するための説明書、CSF1を発現する細胞または組織をイメージングする
ために組成物を使用するための説明書、またはストレス関連障害を患う患者においてグル
タミン酸作動性神経伝達をイメージングするために組成物を使用するための説明書、また
は前立腺癌をイメージングするために組成物を使用するための説明書。
【0043】
D.医薬組成物および投与
別の態様において、本開示は、本開示による化合物を単独で、または薬学的に許容され
た賦形剤と混合した1つ以上の追加の治療薬と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
当業者であれば、医薬組成物が上記の化合物の薬学的に許容される塩を含むことを認識す
るであろう。薬学的に許容される塩は、当業者に一般的に公知されているものであり、本
明細書に記載される化合物に見出される特定の置換基部分に依存して、比較的非毒性の酸
または塩基で調製される活性化合物の塩を含む。本開示の化合物が比較的酸性の機能性を
含む場合、塩基付加塩は、このような化合物の中性形態を、純粋な、もしくは適切な不活
性溶媒中の十分な量の所望の塩基と接触させることにより、またはイオン性錯体中の1つ
の塩基対イオン(塩基)が別のものに置換されるイオン交換により、得ることができる。薬
学的に許容される塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム
塩、アンモニウム塩、有機アミノ塩、あるいはマグネシウム塩、または同様の塩が挙げら
れる。
【0044】
本開示の化合物が比較的塩基性の機能性を含む場合、酸付加塩は、このような化合物の
中性形態を、純粋な、もしくは適切な不活性溶媒中の十分な量の所望の酸と接触させるこ
とにより、またはイオン性錯体中の1つの酸性対イオン(塩)が別のものに置換されるイオ
ン交換により、得ることができる。薬学的に許容される酸付加塩の例には、塩酸、臭化水
素酸、硝酸、炭酸、一水素酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸
、水素酸、または亜リン酸などの無機酸に由来する塩、および酢酸、プロピオン酸、イソ
酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マン
デル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メ
タンスルホン酸などの比較的非毒性の有機酸から得られる塩が含まれる。また、アルギン
酸塩などのアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツノリン酸などの有機酸の塩
も含まれる(例えば、Berge et al., "Pharmaceutical Salts", Journal of Pharmaceutic
al Science, 1977, 66, 1-19を参照)。本開示の特定の化合物は、化合物が塩基または酸
付加塩のいずれかに変換されることを可能にする塩基性および酸性機能の両方を含む。
【0045】
従って、本開示の主題との使用に適した薬学的に許容される塩酸塩には、限定されるも
のではないが、酢酸塩、ベンゼン硫酸塩、安息香酸エステル塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩
、臭化物、エデト酸カルシウム、カルンシル酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、エ
ジシル酸塩、エストレート、エシル酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、
グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、
臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフト酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラ
クトビオン酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ムチン塩酸、ナプシル酸塩
、硝酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラ
クツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、亜酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニ
ン酸塩、酒石酸塩またはテオクル酸塩がある。他の薬学的に許容される塩は、例えば、Re
mington: The Science and Practice of Pharmacy (20 thed.) Lippincott, Williams &
Wilkins (2000)に見出すことができる。
【0046】
治療および/または診断の用途において、本開示の化合物は、全身的および局所的投与を
含む種々の投与様式のために製剤化することができる。技術および製剤は、一般に、Remi
ngton: The Science and Practice of Pharmacy (20 thed.) Lippincott, Williams & Wi
lkins (2000)に見出すことができる。
【0047】
投与される特定の状態に応じて、このような薬剤は、液体または固体の投薬形態に製剤
化され、全身的または局所的に投与され得る。薬剤は、当業者に公知であるように、例え
ば、時限的または持続的な徐放形態で送達され得る。製剤および投与の技術は、Remingto
n: The Science and Practice of Pharmacy (20 thed.) Lippincott, Williams & Wilkin
s (2000)に見出すことができる。適切な経路には、経口、口腔、スプレーによる吸入、舌
下、直腸、経皮、膣、経粘膜、経鼻または腸管投与;筋肉内、皮下、髄内注射を含む非経
口送達、ならびにクモ膜内、直接脳室内、静脈内、関節内、胸骨内、滑膜内、肝臓内、病
巣内、頭蓋内、腹腔内、鼻腔内、または眼内への注射、または他の送達態様が含まれ得る
。
【0048】
注射のために、本開示の薬剤は、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理食塩水緩衝
液などの生理学的に適合性のある緩衝液中などの水溶液中で製剤および希釈することがで
きる。このような経粘膜投与において、浸透させる障壁に適した浸透剤が製剤に使用され
る。このような浸透剤は、一般に当技術分野において公知のものである。
【0049】
本開示の実施のために本明細書で開示されている化合物を全身投与に適した投与量に製
剤化するための薬学的に許容される不活性担体の使用は、本開示の範囲内である。担体の
適切な選択および適切な製造の実施により、本開示による組成物、特に溶液として製剤化
されたものは、静脈注射などによって非経口的に投与することができる。化合物は、当技
術分野で周知の薬学的に許容可能な担体を用いて、経口投与に適した用量に容易に製剤化
することができる。このような担体は、本開示の化合物を、投与対象(例えば、患者)によ
る経口摂取のために、錠剤、丸剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤
、懸濁剤などとして製剤化することを可能にする。
【0050】
鼻または吸入送達のために、本開示の薬剤はまた、当業者に公知の方法によって製剤化
され得、例えば、限定されないが、ブラインなどの物質;ベンジルアルコールなどの防腐
剤;吸収促進剤;およびフルオロカーボンの可溶化、希釈化、または分散化がある。
【0051】
本開示においての使用に適切な医薬組成物は、活性成分がその意図される目的を達成す
るために有効量で含有された組成物を含む。有効量は、特に本明細書に提供される詳細な
開示に照らして、当業者の能力の範囲内で十分に決定されるものである。一般に、本開示
による化合物は、広い投与量の範囲にわたって有効である。例えば、成人ヒトへの投与に
おいて、1日当たりの投与量の例として、0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mg、および5
~40mgが挙げられる。非限定的な投与量は、1日当たり10~30mgである。正確な投与量は
、投与経路、化合物が投与される形態、投与される被検者、投与される被検者の体重、化
合物のバイオアベイラビリティ、化合物の吸収、分布、代謝、および排泄(ADME)毒性、な
らびに主治医の嗜好および経験に依存する。
【0052】
活性成分に加えて、これらの医薬組成物は、活性化合物の薬学的に使用され得る製剤へ
の調合を容易にする賦形剤および助剤を含む適切な薬学的に許容可能な担体を含み得る。
経口投与のために処方される製剤は、錠剤、糖衣錠、カプセル、または溶液の形態であっ
てもよい。
【0053】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組み合わせ、必要に応じて得
られた混合物を粉砕し、必要に応じて適当な助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して
、錠剤または糖衣錠コアを得ることによって行うことができる。適切な賦形剤の具体例と
して、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトールなどの糖類などの充填剤;
セルロース製剤、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、じゃがい
もデンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセ
ルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリビニルピロリドン(PVP:ポ
ビドン)がある。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはそ
の塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を添加してもよい。
【0054】
糖衣錠コアは適切なコーティングを備える。この目的のために、濃縮糖溶液を使用する
ことができ、これは、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カル
ボポルゲル、ポリエチレングリコール(PEG)、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液
、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。識別のために、または活性化
合物用量の異なる組合せを特徴付けるために、染料または顔料を、錠剤または糖衣錠被膜
に加えることができる。
【0055】
経口的に使用することができる医薬製剤には、ゼラチン製の押し込み型カプセル、ゼラ
チン製の柔らかく密封されたカプセル、およびグリセリンまたはソルビトールのような可
塑剤が含まれる。押し込み型カプセルは、ラクトース等の充填剤、澱粉等の結合剤、およ
び/またはタルク、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、ならびに任意に安定剤と混合
した活性成分を含み得る。ソフトカプセルにおいて、活性化合物は、脂肪油、流動パラフ
ィン、または液体ポリエチレングリコール(PEG)などの適切な液体に溶解または懸濁され
得る。また、安定剤を添加してもよい。
【0056】
II.一般的な定義
本明細書では特定の用語を用いているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ用い
ており、限定するためではない。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技
術用語および化学用語は、本開示の主題が属する技術分野の当業者によって一般的に理解
されるものと同じ意味を有する。
【0057】
本開示による化合物に関する以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えら
れるが、本開示の主題の説明を容易にするために、以下の定義を定める。これらの定義は
、本開示をレビューする際、当業者に明らかになる定義を排除するものではなく、補足、
説明することを意図している。
【0058】
本明細書で使用する「置換」という用語は、「任意に」という用語が先行するしないに
かかわらず、全ての原子価が維持される限り、当業者であればわかるように、ある官能基
を分子上の別の官能基に変化できる能力を指す。任意の構造中の2つ以上の位置が特定の
群より選択される2つ以上の置換基で置換することができる場合、置換基は全ての位置に
おいて同じであってもよいし、異なっていてもよい。置換基はまた、さらに置換されても
よい(例えば、アリール基の置換基は、1つ以上の位置でさらに置換される別のアリール
基などの、それから離れた別の置換基を有してもよい)。
【0059】
置換基または連結基を、左から右に書かれた従来の化学式によって特定する場合、それ
らは、右から左に構造を書いた場合に生じる化学的に同一の置換基を同様に包含する。例
えば、-CH2Oは-OCH2-と同等であり; -C(=O)Oは-OC(=O)-と同等で; -OC(=O)NRisは-NRC(=O
)O-と同等である。
【0060】
「独立して選択された」という用語が使用される場合、言及される置換基(例えば、基R
1, R2などのR基、または「m」および「n」などの変数)は、同じであってもよいし、異な
っていてもよい。例えば、R1とR2のどちらも置換アルキルであってもよいし、R1が水素で
R2が置換アルキルなどであってもよい。
【0061】
「a」、「an」、または「a(n)」という用語は、本明細書中の置換基の群に関して使用
される場合、少なくとも1つを意味する。例えば、ある化合物を「an(ある)」アルキルま
たはアリールで置換する場合、この化合物は任意選択的に少なくとも1つのアルキルおよ
び/または少なくとも1つのアリールで任意選択的に置換される。さらに、ある部分がR置
換基で置換される場合、その基は、「R-置換された」と言うことができる。ある部分がR-
置換される場合、その部分は少なくとも1つのR置換基で置換され、各R置換基は任意に異
なる。
【0062】
別段の定めがない限り、名前の付いた「R」または基は、概して、その名前を有する基
に対応するものとして当技術分野で認識されている構造を有する。説明のため、上述する
特定の代表的な「R」基を以下に定義する。
【0063】
本開示の化合物の説明は、当業者に公知の化学結合の原則によって制限される。従って
、ある基を多数の置換基のうちの1つ以上で置換し得る場合、そのような置換は、化学結
合の原則に従い、かつ本質的に不安定でない、ならびに/または水性、中性、およびいく
つかの既知の生理学的条件などの環境条件下で不安定になりやすいと当業者に知られてい
る化合物が得られるように選択される。例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリ
ールを、当業者に公知の化学結合の原理に従って、環ヘテロ原子を介して分子の残りに結
合させることで、本質的に不安定な化合物を回避する。
【0064】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される「置換基」は、本明細書で定義されてい
る以下の部分の1つ以上から選択される官能基を含む。
【0065】
本明細書で使用される「炭化水素」という用語は、水素および炭素を含む任意の化学基
を指す。炭化水素は、置換または非置換であり得る。当業者であればわかるように、全て
の原子価は、任意の置換を行う際に満たされなければならない。炭化水素は、不飽和、飽
和、分岐、非分岐、環状、多環式、または複素環式であり得る。例示される炭化水素につ
いては以下に詳しく定義するが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、
シクロプロピル、アリル、ビニル、n-ブチル、tert-ブチル、エチニル、シクロヘキシル
等が含まれる。
【0066】
「アルキル」という用語は、それ自体または別の置換基の一部として、別段の定義がな
い限り、直鎖もしくは分岐鎖、非環状もしくは環状炭化水素基またはこれらの組み合わせ
を意味し、完全に飽和、一価もしくは多価不飽和になり得、二価および多価の基を含み得
、指定された数の炭素原子を有する(すなわち、C1 -C10は、1、2、3、4、5、6、7、8、9
、10を含む1~10個の炭素を意味する)。特定の実施形態において、「アルキル」という用
語は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、16、17、18、19、および20個の炭
素を含む、直鎖、分岐鎖、環状、飽和、または少なくとも一部が不飽和、もしくは1個の
水素原子の除去によって1~20の間の炭素原子を含む炭化水素部分から誘導された完全に
不飽和の(すなわちアルケニルおよびアルキニルの)C1-20である。
【0067】
代表的な飽和炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブ
チル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソペンチ
ル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-
ウンデシル、ドデシル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチ
ル、およびそれらの同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
「分岐」とは、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が線状アルキル鎖
に結合しているアルキル基のことである。「低級アルキル」とは、1~約8個の炭素原子(
すなわち、C1-8アルキル)、例えば、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子を有す
るアルキル基のことである。「高級アルキル」とは、約10~約20個の炭素原子、例えば、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の炭素原子を有するアルキル基の
ことである。特定の実施形態において、「アルキル」とは、特に、C1-8の直鎖アルキルの
ことであり、他の実施形態において、「アルキル」とは、特に、C1-8の分岐鎖アルキルの
ことである。
【0069】
アルキル基は、任意に、同一または異なる1つ以上のアルキル基置換基で置換し得る(
「置換アルキル」)。「アルキル基置換基」という用語は、アルキル、置換アルキル、ハ
ロ、アリールアミノ、アシル、水酸基、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ
、アリールチオ、アラルキルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカル
ボニル、オキソ、およびシクロアルキルを含むが、これらに限定されない。アルキル鎖に
沿って、1つ以上の酸素、硫黄または置換もしくは非置換窒素原子を任意に挿入してもよ
く、窒素置換基は、水素、低級アルキル(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも
称する)、またはアリールである。
【0070】
従って、本明細書において、「置換アルキル」という用語には、本明細書で定めたよう
なアルキル基が含まれ、アルキル基の1つ以上の原子または官能基は、例えば、アルキル
、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、水酸基、ニトロ、
アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、硫酸塩、およびメルカプトを含む、別の原
子または官能基で置換される。
【0071】
「ヘテロアルキル」という用語は、それ自体で、または別の用語と組み合わせて、別段
の定めがない限り、少なくとも1個の炭素原子と、O、N、P、SiおよびSからなる群より選
択される少なくとも1個のヘテロ原子とからなる、安定した直鎖もしくは分枝鎖、または
環状の炭化水素基あるいはそれらの組み合わせを意味し、窒素、リン、および硫黄原子は
任意に酸化され得、窒素ヘテロ原子は任意に四級化され得る。ヘテロ原子O、N、P、Sおよ
びSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置されてもよいし、アルキル基が分子の
残りの部分に結合されている位置に配置されてもよい。例として、-CH2 -CH2 -O-CH3, -C
H2-CH2 -NH-CH3, -CH2 -CH2 -N(CH3)-CH3, -CH2 -S-CH2 -CH3, -CH2 -CH25-S(O)-CH3, -C
H2 -CH2 -S(O)2 -CH3, -CH=CH-OOOE、-Si(CH3)3, -CH2 -CH=N-OCH3, -CH=CH-N(CH3)CH3,
O-CH3, -O-CH2 -CH3、および-CNが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、-CH2
-NH-OCH3および-CH2 -O-Si(CH3)3のように、最大で2つまたは3つのヘテロ原子が連続して
いてもよい。
【0072】
上述のように、本明細書のヘテロアルキルグループには、-C(O)NR'、-NR'R"、-OR'、-S
R、-S(O)R、および/または-S(O2)R'などの、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合
される基が含まれる。「ヘテロアルキル」と記載され、-NR'Rなどの特定のヘテロアルキ
ル基が続く場合、ヘテロアルキルという用語および-NR'R"は、冗長でもなければ相互排他
的でもないことがわかる。むしろ、具体的なヘテロアルキル基を記載することで明瞭にな
る。従って、本明細書中において、「ヘテロアルキル」という用語は、-NR'R"などの特定
のヘテロアルキル基を排除するものと解釈されるべきではない。
【0073】
「環状」および「シクロアルキル」とは、約3~約10個の炭素原子、例えば、3、4、5、
6、7、8、9、または10個の炭素原子の非芳香族単環または多環系のことである。シクロア
ルキル基は、任意に、部分的に不飽和になり得る。シクロアルキル基はまた、本明細書に
定義されるアルキル基置換基、オキソ、および/またはアルキレンで任意に置換され得る
。環状アルキル鎖に沿って、1つ以上の酸素、硫黄または置換もしくは非置換窒素原子を
任意に挿入することができ、窒素置換基は、水素、非置換アルキル、置換アルキル、アリ
ール、または置換アリールであるため、複素環基が得られる。代表的な単環式シクロアル
キル環としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる
。多環式シクロアルキル環としては、アダマンチル、オクタヒドロナフチル、デカリン、
カンファー、カンファンおよびノルアダマンチル、ならびにジヒドロ-およびテトラヒド
ロナフタレンなどの縮合環系が挙げられる。
【0074】
「シクロアルキルアルキル」という用語は、本明細書中で使用される場合、本明細書中
で上記に定義されるシクロアルキル基を指し、これはまた、上記に定義されるアルキル基
を介して親分子部分に結合される。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロ
ピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
【0075】
「シクロヘテロアルキル」または「ヘテロシクロアルキル」という用語は、非芳香族環
系、不飽和または部分的不飽和環系、例えば3~10員置換または非置換シクロアルキル環
系を指し、同一または異なる1つ以上のヘテロ原子を含み、窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)
、リン(P)、およびケイ素(Si)からなる群より選択され、任意に1つ以上の二重結合を含
むことができる。
【0076】
シクロヘテロアルキル環は任意に他のシクロヘテロアルキル環および/または非芳香族
炭化水素環に縮合するか、または結合し得る。複素環は、酸素、硫黄および窒素から独立
して選択された1~3個のヘテロ原子を有するものを含み、窒素および硫黄のヘテロ原子は
任意に酸化され、窒素のヘテロ原子は任意に四級化され得る。特定の実施形態において、
「複素環」という用語は、少なくとも1つの環原子がO、S、およびNから選択されるヘテロ
原子である、非芳香族5-、6-、もしくは7-員環または多環式基を指し(この場合、窒素お
よび硫黄ヘテロ原子は、任意に酸化され得る)、以下に限定するものではないが、二環ま
たは三環式の基が含まれ、酸素、硫黄および窒素から独立して選択される1~3個のヘテロ
原子を有する縮合六員環を含み、(i)各5員環は、0~2個の二重結合を有し、各6員環は、0
~2個の二重結合を有し、各7員環は、0~3個の二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテ
ロ原子は、任意に酸化され得、(iii)窒素ヘテロ原子は任意に四級化され得、(iv)上記の
複素環のいずれも、アリールまたはヘテロアリール環に縮合し得る。代表的なシクロヘテ
ロアルキル環系としては、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニ
ル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、キヌク
リジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアジアジナニル、テトラヒドロフラニル
などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
「シクロアルキル」および「ヘテロシクロアルキル」という用語は、それ自身でまたは
他の用語と組合せて、別段の定めがない限り、それぞれ「アルキル」および「ヘテロアル
キル」の環状版を表す。さらに、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は、複素環が
分子の残りの部分に結合する位置を占め得る。シクロアルキルの例としては、シクロペン
チル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなど
が挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロシクロアルキルの例としては、1-(1,2,5
,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4モル
ホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、
テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジ
ニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「シクロアルキレン」および「ヘテロ
シクロアルキレン」という用語は、それぞれシクロアルキルおよびヘテロシクロアルキル
の二価誘導体を指す。
【0078】
不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和
アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブ
タジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(l,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-および3-プ
ロピニル、3-ブチニルならびに高級同族体および異性体が挙げられるが、これらに限定さ
れない。炭化水素基に限定されるアルキル基は、「ホモアルキル」と称される。
【0079】
より詳細には、本明細書中で使用される「アルケニル」という用語は、単一の水素分子
の除去によって少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するC1-20を含む直鎖または分岐
炭化水素部分から誘導される一価の基を指す。アルケニル基としては、例えば、エテニル
(すなわち、ビニル)、プロペニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル、ペンテニル、
ヘキセニル、オクテニル、アレニル、およびブタジエニルが挙げられる。
【0080】
本明細書中において使用される「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの
炭素-炭素二重結合を有する環状炭化水素を指す。シクロアルケニル基の例としては、シ
クロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエン、シクロヘキ
セニル、1,3-シクロヘキサジエン、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニルおよびシ
クロオクテニルが挙げられる。
【0081】
本明細書中において使用される「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの炭素-炭
素三重結合を有する指定された数の炭素原子の直鎖または分枝C1-20炭化水素から誘導さ
れる一価の基を指し、「アルキニル」としては、例えば、エチニル、2-プロピニル(プロ
パルギル)、1-プロピニル、ペンチニル、ヘキシニル、およびヘプチニル基などが挙げら
れる。
【0082】
「アルキレン」という用語は、それ自身でまたは別の置換基の一部として、1~約20個
の炭素原子、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、1
8、19または20個の炭素原子を有するアルキル基から誘導される直鎖または分枝の二価脂
肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は、直鎖、分枝または環状であり得る。アルキレン
基はまた、任意に不飽和になり得、および/または1つ以上の「アルキル基置換基」で置
換され得る。アルキレン基に沿って1つ以上の酸素、硫黄または置換もしくは非置換窒素
原子を任意に挿入することができ(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも称する)
、窒素置換基は前述のアルキルである。例示的なアルキレン基としては、メチレン(-CH2-
);エチレン(-CH2 -CH2-);プロピレン(-(CH2)3-);シクロヘキシレン(-C6 H10-);-CH=CH-CH
-CH-;-CH=CH-CH2-; -CH2 CH2 CH2 CH2 -; -CH2CH=CHCH2 -, -CH2CsCCH2 -, -CH2CH2CH(CH
2CH2CH3)CH2-, -(CH2)q-N(R)-(CH2)r―があり、qおよびrは各々独立して、0~約20の整数
、例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19ま
たは20であり、Rは水素または低級アルキル;メチレンジオキシル(-O-CH2-O-);およびエチ
レンジオキシル(-O-(CH2)2 -O-)である。アルキレン基は約2~約3個の炭素原子を有する
ことができ、6~20個の炭素をさらに有することができる。典型的には、アルキル(または
アルキレン)基は、1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基は本開示の
いくつかの実施形態である。「低級アルキル」または「低級アルキレン」は、より短い鎖
アルキルまたはアルキレン基であり、一般に8個以下の炭素原子を有する。
【0083】
「ヘテロアルキレン」という用語は、それ自身で、または別の置換基の一部として、-C
H2 -CH2-S-CH2 -CH2-および-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-として例示されるが、これらに限定
されない、ヘテロアルキルから誘導される2価の基を意味する。ヘテロアルキレン基に関
しては、ヘテロ原子は鎖末端の片方または両方を占有することができる(例えば、アルキ
レンオキソ、アルキレンジオキソ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)。さら
に、アルキレンおよびヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の向きは、その連結基の式
が書かれる方向で示されない。例えば、式-C(O)OR'は、-C(O)OR'-および-R'OC(O)-の両方
を表す。
【0084】
「アリール」という用語は、別段の定めがない限り、単環または縮合または共有結合さ
れる多環(1~3環など)になり得る芳香族炭化水素置換基を意味する。「ヘテロアリール」
という用語は、N、O、およびSから選択される1~4個のヘテロ原子(多環の場合はそれぞれ
別々の環)を含む、アリール基(または環)を意味し、窒素原子および硫黄原子は任意に酸
化され、窒素原子は任意に四級化される。ヘテロアリール基は、炭素またはヘテロ原子を
介して分子の残りの部分に結合させることができる。アリールおよびヘテロアリール基の
非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル
、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニ
ル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-
イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾ
リル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピ
リジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、
2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリ
ニル、5-キノキサリニル、3--キノリルおよび6-キノリルが含まれる。上記のアリールお
よびヘテロアリール環系の各々についての置換基は、以下に記載する許容される置換基の
群より選択される。「アリーレン」および「ヘテロアリーレン」という用語は、それぞれ
、アリールおよびヘテロアリールの二価の形態を指す。
【0085】
簡潔にするために、「アリール」という用語は、他の用語と組み合わせて使用する場合
(例えば、アリールオキシ、アリールチオキシ、アリールアルキル)、上記に定義したよう
なアリールおよびヘテロアリール環の両方が含まれる。従って、「アリールアルキル」お
よび「ヘテロアリールアルキル」という用語は、アリールまたはヘテロアリール基が、ア
ルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル、フリルメチルなど)に結合し
た基を含み、これには、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子によって置換さ
れたもの(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(l-ナフチルオキシ)
プロピルなど)が含まれる。しかしながら、本明細書で使用される「ハロアリール」とい
う用語は、1つ以上のハロゲンで置換されたアリールのみをカバーするものとする。
【0086】
ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロアリールが特定の数の員(例えば
、「3~7員」)を含む場合、「員」という用語は、炭素またはヘテロ原子を指す。
【0087】
また、本明細書において下記の式、
【化11】
で表される構造は、環構造、例えば、3-炭素、4-炭素、5-炭素、6-炭素、7-炭素などの脂
肪族および/または芳香族環状化合物を指し、これには、置換基であるR基を含む飽和環構
造、部分飽和環構造および不飽和環構造が含まれ、R基は存在または不在であることがで
き、存在する場合、1つ以上のR基はそれぞれ、環構造の1つ以上の利用可能な炭素原子
上で置換され得る。R基の存在または不在およびR基の数は、変数「n」の値によって決定
され、nは概して0~環上の置換可能な炭素原子の数の値を有する整数である。各R基は、2
つ以上であれば、別のR基ではなく、環構造上の利用可能な炭素上で置換される。例えば
、nが0~2である上記の構造は、以下を含むがこれらに限定されない化合物基を含む。
【化12】
【0088】
環構造中の結合を表す破線は、結合が環中に存在または不在となり得ることを示す。す
なわち、環構造中の結合を表す破線は、環構造が飽和環構造、部分飽和環構造および不飽
和環構造からなる群より選択されることを示す。
【0089】
【0090】
芳香環または複素芳香環の名前の付いた原子が「不在」であると定義される場合、この
名前の付いた原子は直接結合によって置き換えられる。
【0091】
上記の用語(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル」、「ヘ
テロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「ホスホネート」および「
スルホネート」ならびにそれらの二価誘導体)の各々は、示された基の置換および非置換
の形態をどちらも含むことを意味する。各タイプの基に対する任意の置換基を以下に示す
。
【0092】
アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、一価および二価
誘導体基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル
、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニルおよびヘテロシクロアルケ
ニルとしばしば称される基を含む)の置換基は、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、
-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R’”、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O)NR’R”、-O
C(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)OR’、-NR-C(NR’R”)=NR
’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CNおよび-NO2から選択される
、0~(2m’+l)の数の種々の基の1つ以上になり得、m’はそのような基の炭素原子
の総数である。R’、R"、R’”およびR’”’は、それぞれ独立して、水素、置換または
非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のシクロアルキル、置換または非置換のヘテ
ロシクロアルキル、置換または非置換のアリール(例えば、1~3個のハロゲンで置換した
アリール)、置換または非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、あるい
はアリールアルキル基を指し得る。本明細書中において、「アルコキシ」基は、2価酸素
を介して分子の残りの部分に結合したアルキルである。本開示の化合物が例えば2つ以上
のR基を含む場合、例えば、各R基は、これらの基が2つ以上存在する場合、各R’、R"、R
’”およびR’”’であるように独立して選択される。R’およびR"が同じ窒素原子に結合
する場合、これらは窒素原子と結合して、4-、5-、6-、または7員環を形成し得る。例え
ば、-NR' R"は、1ピロリジニルおよび4-モルホリニルを含むことを意味するが、これらに
限定されない。置換基の上記の論考から、当業者であれば、「アルキル」という用語が、
水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基、例えばハロアルキル(例えば、-CF3および-
CH2 CF3)およびアシル(例えば、 -C(O)CH3, -C(O)CF3, -C(O)CH2OCH3,など)を含むことを
理解するであろう。
【0093】
アルキル基について説明した上述の置換基と同様に、アリール基およびヘテロアリール
基(ならびにこれらの2価誘導体)についての例示的な置換基は様々であり、例えば、ハロ
ゲン、-OR’、-NR’R”、-SR’、-SiR’R”R’”、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O
)NR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)OR’、-NR-C
(NR’R”R’”)=NR””、-NR-C(NR’R”)=NR’”-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、
-NRSO2R’、-CNおよび-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキソならびに
フルオロ(C1-C4)アルキルから、ゼロ~芳香環系の開放原子価(open valence)の総数の数
で選択され、R’、R”、R’”およびR””は独立して水素、置換または非置換アルキル、
置換または非置換ヘテロアルキル、置換または非置換シクロアルキル、置換または非置換
ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよび置換または非置換ヘテロアリー
ルから選択され得る。本開示の化合物が例えば2つ以上のR基を含む場合、各R基は、これ
らの基の2つ以上が存在する場合、それぞれ独立して、R'、R"、R’”およびR""基として
選択される。
【0094】
アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上にある置換基のうちの2つは、任意
に、式-T-C(O)-(CRR')q-U-の環を形成し得、TおよびUは独立して-NR-、 -O-、 -CRR'-ま
たは一重結合であり、qは0~3の整数である。あるいは、アリールまたはヘテロアリール
環の隣接する原子上の置換基の2つは、任意に、式-A-(CH 2)r-B-の置換基で置き換えても
よく、AおよびBは独立して-CRR'-、 -O-、 -NR-、 -S-、 -S(O)-、 -S(O)2 -、 -S(O)2 N
R'-または一重結合であり、rは1~4の整数である。
【0095】
このようにして新たに形成された環の一重結合の1つは、任意に二重結合で置き換えら
れ得る。あるいは、アリールまたはヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうちの
2つは、任意に、式-(CRR')s -X'(C"R'")d-の置換基で置換し得、sおよびdは独立して0~3
の整数であり、X'は-O-、-NR'-、-S-, -S(O)-、-S(O)2 -または-S(O)2 NR'-であり、置換
基R、R'、R"およびR'"は独立して水素、置換または非置換アルキル、置換または非置換シ
クロアルキル、置換または非置換ヘテロシクロアルキル、置換または非置換アリールおよ
び置換または非置換ヘテロアリールから選択することができる。
【0096】
本明細書において、「アシル」という用語は、カルボキシル基の-OHが別の置換基で置
換され、かつ一般式RC(=O)-を有する有機酸基を指し、Rは本明細書中で定義したようなア
ルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環、複素環または芳香族複素環基であ
る。そのため、「アシル」という用語は、具体的には、アリールアシル基、例えば2-(フ
ラン-2-イル)アセチル)-および2-フェニルアセチル基を含む。アシル基の具体例としては
、アセチルおよびベンゾイルが挙げられる。アシル基はまた、アミド、-RC(=O)NR'、エス
テル、-RC(=O)OR'、ケトン、-RC(=O)R'、およびアルデヒド、-RC(=O)Hを含み得る。
【0097】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、本明細書において入れ替え可能
に使用され、酸素原子を介して親分子部分に結合した飽和(すなわち、アルケニル-O-)ま
たは不飽和(すなわち、アルケニル-O-およびアルキニル-O-)基をいい、ここで、「アルキ
ル」、「アルケニル」、および「アルキニル」という用語は前述の通りであり、C1-20を
含み、直鎖状、分岐状または環状の、飽和または不飽和のオキソ-炭化水素鎖を含み得、
例えば、メトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、n-ブトキシル、se
c-ブトキシル、tert-ブトキシルおよびn-ペントキシル、ネオペントキシル、n-ヘキソキ
シルなどが含まれる。
【0098】
「アルコキシアルキル」という用語は、本明細書中において、アルキル-O-アルキルエ
ーテル、例えば、メトキシエチルまたはエトキシメチル基を指す。
【0099】
「アリールオキシル」はアリール-O基を指し、アリール基は先に記載した通りであり、
置換アリールを含む。本明細書において「アリールオキシル」という用語は、フェニルオ
キシルまたはヘキシルオキシル、およびアルキル、置換アルキル、ハロ、またはアルコキ
シル置換フェニルオキシルもしくはヘキシルオキシルを指し得る。
【0100】
「アラルキル」はアリール-アルキル-基を指し、アリールおよびアルキルは前述の通り
であり、置換アリールおよび置換されたアルキルを含む。例示的なアラルキル基としては
、ベンジル、フェニルエチル、およびナフチルメチルが挙げられる。
【0101】
「アラルキルオキシル」は、アラルキル-O-基を指し、ここで、アラルキル基は上述の
とおりである。例示的なアラルキロキシル基として、ベンジロキシル、即ち、C6 H5 -CH2
-O-がある。アラルキルオキシル基は、任意に置換され得る。
【0102】
「アルコキシカルボニル」とは、アルキル-O-C(=O)-基のことである。例示的なアルコ
キシカルボニル基としては、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブチルオキシカ
ルボニルおよびtert-ブチルオキシカルボニルが挙げられる。
【0103】
「アリールオキシカルボニル」とは、アリール-O-C(=O)-基のことである。例示的なア
リールオキシカルボニル基としては、フェノキシ-およびナフトキシ-カルボニルが挙げら
れる。
【0104】
「アラルコキシカルボニル」とは、アラルキル-O-C(=O)-基のことである。例示的なア
ラルコキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
【0105】
「カルバモイル」とは、式-C(=O)NH2のアミド基のことであり、「アルキルカルバモイ
ル」とは、R'RN-C(=O)基のことであり、RおよびR'の片方は水素であり、RおよびR'のもう
片方は前述のアルキルおよび/または置換アルキルである。「ジアルキルカルバモイル」
はR'RN-C(-O)-基であり、RおよびR'の各々は独立して前述のようなアルキルおよび/また
は置換アルキルである。
【0106】
本明細書におけるカルボニルジオキシルという用語は、式-O-C(=O)-ORのカーボネート
基を指す。
【0107】
「アシルオキシル」とは、アシル-O基であり、アシルは前述の通りである。
【0108】
「アミノ」という用語は、-NH2基を指し、また、有機ラジカルによる1つ以上の水素ラ
ジカルの置換によってアンモニアから誘導される、当技術分野で公知の窒素含有基も指し
、例えば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」という用語は、それぞれアシルお
よびアルキル置換基を有する特定のN-置換有機ラジカルを指す。
【0109】
本明細書中において「アミノアルキル」とは、アルキレンリンカーに共有結合したアミ
ノ基を指す。より詳細には、本明細書において、アルキルアミノ、ジアルキルアミノおよ
びトリアルキルアミノという用語は、上述のように、親分子部分に窒素原子を介して結合
した、それぞれ1、2、または3個のアルキル基を指す。「アルキルアミノ」という用語は
、上述のように、R'がアルキル基である-NHR'構造を有する基を指す。一方、ジアルキル
アミノという用語は、NR'R''の構造を有する基であり、R'およびR'はそれぞれ独立してア
ルキル基からなる群から選択される。トリアルキルアミノという用語は、-NR'R''R'''の
構造を有する基であり、R'、R''およびR'''はそれぞれ独立してアルキル基からなる群か
ら選択される。さらに、R'、R''および/またはR''はまとめて任意に-(CH2)kとすることが
でき、ここで、kは2~6の整数である。例として、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチ
ルアミノ、ジエチルアミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノ、イソプロ
ピルアミノ、ピペリジノ、トリメチルアミノおよびプロピルアミノが挙げられるが、これ
らに限定されない。
【0110】
アミノ基は-NR'R"であり、R'およびR"は典型的に水素、置換もしくは非置換アルキル、
置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは
非置換ヘテロシクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、または置換もしくは非置換
ヘテロアリールから選択される。
【0111】
アルキルチオエーテルおよびチオアルコキシルという用語は、硫黄原子を介して親分子
部分に結合した飽和(すなわち、アルキル-S-)または不飽和(すなわち、アルケニル-S-お
よびアルキニル-S-)基を指す。チオアルコキシル部分の例としては、メチルチオ、エチル
チオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオなどが挙げられるが、これらに限
定されない。
【0112】
「アシルアミノ」とはアシル-NH-基のことであり、アシルは前述の通りである。「アロ
イルアミノ」とはアロイル-NH-基のことであり、アロイルは、前述の通りである。
【0113】
「カルボニル」という用語は-C(=O)-基を指し、一般式R-C(=O)Hで表されるアルデヒド
基を含み得る。
【0114】
「カルボキシル」という用語は-COOH基を指し、このような基はまた本明細書において
「カルボン酸」部分とも称される。
【0115】
本明細書における「ハロ」、「ハロゲン化物」、または「ハロゲン」という用語は、フ
ルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード基を指す。さらに、「ハロアルキル」などの用語は
、モノハロアルキルおよびポリハロアルキルを含むことを意味し、例えば、「ハロ(C1 -C
4)アルキル」という用語は、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロ
ブチル、3-ブロモプロピルなどを含むが、これらに限定されない。
【0116】
「水酸基」という用語は、-OH基のことを指す。
【0117】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、-OH基で置換されたアルキル基を指す。
【0118】
「メルカプト」という用語は、-SH基のことである。
【0119】
本明細書中における「オキソ」という用語は、炭素原子または別の元素に二重結合して
いる酸素原子のことである。
【0120】
「ニトロ」という用語は、-NO2基のことである。
【0121】
「チオ」という用語は、炭素または酸素原子が硫黄原子で置換された前述の化合物を指
す。
【0122】
「硫酸塩」という用語は-SO4基を指す。
【0123】
本明細書においてチオヒドロキシルまたはチオールという用語は、-SH基を指す。
【0124】
より詳細には、「硫化物」という用語は、-SR基を有する化合物を指す。
【0125】
「スルホン」とは、スルホニル基-S(O2)Rを有する化合物を指す。
【0126】
「スルホキシド」という用語は、スルフィニル基-S(O)Rを有する化合物を指す。
【0127】
「ウレイド」という用語は、-NH-CO-NH2の尿素基を指す。
【0128】
本明細書において、「保護基」という用語は、分子中の再生された官能基または他の官
能基を攻撃しない、容易に入手可能な試薬によって選択的に除去され得る化学置換基を指
す。適切な保護基は当技術分野で公知であり、開発され続けている。適切な保護基は、例
えば、Wutz et al.(「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis, Fourth Edit
ion」, Wiley-Interscience, 2007)で見つけることができる。Wutzら(533~643頁)によっ
て記載されているような、カルボキシル基を保護するための保護基を特定の実施形態にお
いて使用する。いくつかの実施形態において、保護基は酸処理によって除去可能である。
保護基の代表的な例としては、ベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、第三級ブチル(t-Bu
)、メトキシメチル(MOM)、メトキシエトキシメチル(MEM)、メチルチオメチル(MTM)、テト
ラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラニル(THF)、ベンジルオキシメチル(BOM)、ト
リメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)および
トリフェニルメチル(トリチル、Tr)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であ
れば、保護基が必要とされる適切な状況を認識し、また特定の環境での使用に適した保護
基を選択することができるだろう。
【0129】
本明細書および特許請求の範囲において、所定の化学式または名称は、全ての互変異性
体、同族体、光学異性体および立体異性体、ならびにそのような異性体および混合物が存
在するラセミ混合物を包含するものとする。
【0130】
本開示の特定の化合物は、不斉炭素原子(光学またはキラル中心)または二重結合を有し
、エナンチオマー、ラセミ体、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体、立体異性体
を有し、これは、絶対立体化学の観点から、(R)-もしくは(S)-として、またはアミノ酸の
場合は(D)-もしくは(L)-として定義され得、個々の異性体は、本開示の範囲に含まれる。
本開示の化合物には、合成および/または分離するのに不安定すぎることが当技術分野で
知られているものは含まれない。本開示は、ラセミ、スカレミックおよび光学的に純粋な
形態の化合物を含むものとする。光学活性(R)-および(S)-、またはD-およびL-異性体は、
キラルシントンまたはキラル試薬を使用して調製することができ、あるいは従来の技術を
使用して分割することができる。本明細書に記載される化合物がオレフェン結合または幾
何学的不斉の他の中心を含む場合、別段の定めがない限り、化合物はEおよびZの両方の幾
何異性体を含むものとする。
【0131】
別段の定めのない限り、本明細書に示される構造はまた、構造の全ての立体化学形態、
すなわち、各不斉中心に関するRおよびSの構成を含むものとする。従って、本開示の化合
物の単一の立体化学異性体だけでなく、エナンチオマーおよびジアステレオマーを混合し
たものも、本開示の範囲に含まれる。
【0132】
本開示の特定の化合物が互変異性体で存在する可能性があり、そのような化合物の全て
の互変異性形成が本開示の範囲内にあることは、当業者には明らかであろう。本明細書に
おける「互変異性体」は、平衡状態で存在し、かつ一方の異性体形態からもう一方の異性
体形態へと速やかに変換される2つ以上の構造異性体のうちの1つを指す。
【0133】
別段の定めがない限り、本明細書中に記載する構造は、1つ以上の同位体濃縮原子の存
在下でのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、重水素または三重水素による水
素の置換、または13C-またはI4 C-富化炭素による炭素の置換を伴う本構造を有する化合
物は、本開示の範囲内である。
【0134】
本開示の化合物はまた、そのような化合物を構成する1つ以上の原子において、不自然
な割合の原子同位体を含有し得る。例えば、化合物をトリチウム(3 H)、ヨウ素-125(125
I)または炭素-14(14 C)などの放射性同位体で放射標識してもよい。放射性であるか否か
にかかわらず、本開示の化合物の全ての同位体変異は、本開示の範囲内に包含される。
【0135】
本開示の化合物は、塩として存在し得る。本開示は、そのような塩を含む。適用可能な
塩形態の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、メタンスルホン酸塩、硝酸塩、マ
レイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-
酒石酸塩、またはラセミ混合物を含むそれらの混合物、コハク酸塩、安息香酸塩、および
グルタミン酸などのアミノ酸を含む塩が挙げられる。これらの塩は、当業者に公知の方法
によって調製することができる。ナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有
機アミノもしくはマグネシウム塩または同様の塩などの塩基付加塩も含まれる。本開示の
化合物が相対的に塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態
を、純粋なまたは適切な不活性溶媒中で十分な量の所望の酸と接触させることによって、
またはイオン交換によって得ることができる。許容可能な酸付加塩としては、塩酸、臭化
水素酸、硝酸、炭酸、一水素、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸
、ヨウ化水素酸、リン酸などの無機酸に由来する塩が挙げられ、また、酢酸、プロピオン
酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳
酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石
酸、メタンスルホン酸などのような有機酸に由来する塩が挙げられる。アルギネートなど
のアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツノリン酸などの有機酸の塩も含まれ
る。本開示の特定の化合物は、塩基性および酸性の両方の官能基を含み、化合物を塩基ま
たは酸の付加塩のいずれかに変換することができる。
【0136】
化合物の中性形態は、従来の方法で塩を塩基または酸と接触させ、親化合物を分離する
ことによって再生することができる。化合物の親形態は、極性溶媒への溶解度などの特定
の物理的特性において、種々の塩形態とは異なる。
【0137】
本開示の特定の化合物は、水和形態を含む非溶媒和形態および溶媒和形態で存在し得る
。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であり、本開示の範囲内に包含される。本
開示の特定の化合物は、複数の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。一般に、全ての
物理的形態は、本開示によって企図される使用に対して等価であり、本開示の範囲内にあ
ることが意図される。
【0138】
塩形態に加えて、本開示は、プロドラッグ形態である化合物を提供する。本明細書に記
載される化合物のプロドラッグは、本開示の化合物を提供するために、生理学的条件下で
化学変化を容易に起こす化合物である。さらに、プロドラッグは、ex vivo環境における
化学的または生化学的な方法によって、本開示の化合物に変換され得る。例えば、プロド
ラッグは、適切な酵素または化学試薬を用いて経皮パッチリザーバに入れると、本開示の
化合物にゆっくりと変換され得る。
【0139】
長年にわたる特許法の慣例に従い、「a」、「an」および「the」という用語は、本願お
よび特許請求の範囲において使用される場合、「1つ以上」を示す。従って、例えば、「
ある被検者」という場合は、文脈からそうでないことが明らかな場合を除き(例えば、複
数の被検者)複数の被検者が含まれる。
【0140】
本明細書およびクレームを通じて、「含む(備える)(comprise)」という用語は、文脈か
らそうでないことが明らかな場合を除き、非排他的な意味で使用され、同様に、「含む(i
nclude)」という用語およびその文法的な変化形は非限定的であることを意図しており、
リスト内の項目を述べることにより、リストの項目に置き換えられる、または追加される
他の同様の項目を除外するものではない。
【0141】
本明細書および添付の請求項については、別段の定めがない限り、本明細書および特許
請求の範囲において使用されている量、寸法、比率、形状、配合、パラメータ、パーセン
テージ、数量、特性、その他の数値を表す全ての数字は、「約(about)」という用語がそ
の値、量、または範囲とともに明示的に示されていなくても、全ての場合において「約」
という用語によって修正されていると理解されたい。従って、反対のことが示されていな
い限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載されている数値パラメータは正
確でなく、また正確である必要もないが、本開示の主題によって得られようとする所望の
特性に応じて、交差、換算係数、四捨五入、測定誤差など、当業者に周知の他の要素を反
映して、近似値であったり、必要に応じて大きくしたり小さくしたりする場合がある。例
えば、「約(about)」という用語は、値を示す場合、実施形態によって、±100%、±20%、
±10%、±5%、±1%、±0.5%、または±0.1%の差異を特定の値に対して含むことができる
。そのような差異は、開示された方法の実行や、開示された組成物の採用に適している。
【0142】
さらに、1つ以上の数値または数値範囲に関連して使用する「約」という用語は、範囲
内の全ての数字を含み、記載された数値の上下に境界を拡張することによってその範囲を
修正すると理解されたい。終点によって数値範囲を記載することで、全ての数、例えば、
その範囲に含まれる整数(その分数を含む)(例えば、1~5と列挙した場合、1、2、3、4、5
、およびその分数、例えば、1.5、2.25、3.75、4.1などが含まれる)と、その範囲内の任
意の範囲とが含まれる。
【実施例0143】
本開示の主題の代表的な実施形態を実施するにあたって当業者への手引きとなるように
、以下の実施例を記載する。本開示および当該分野における一般的な技術レベルを踏まえ
ると、当業者であれば、以下の実施例が例示を目的としたものにすぎず、本開示の主題の
範囲から逸脱することなく、多数の変更、改変および修正を加え得ることがわかるであろ
う。以下の合成に関する説明および具体例は説明の便宜上のものにすぎず、他の方法によ
って本開示の化合物を生成するにあたっていかなるやり方においても限定的であると解釈
されるものではない。
【0144】
(実施例1)
マクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)を標的としたミクログリアのPETイメ
ージング
【0145】
1.1概要
5‐シアノ‐N‐(4‐(4‐[11C]メチルピペラジン‐1‐イル)‐2‐(ピペリジン‐1‐イル
)フェニル)フラン‐2‐カルボキサミド([11 C]CPPC)は、ミクログリア特異的マーカーで
あるCSF1Rに特異的なPET放射性トレーサーである。この化合物は、反応性ミクログリア、
疾患関連ミクログリアおよびそれらの神経炎症への寄与をin vivoでイメージングするた
めの非侵襲的ツールとして使用することができる。神経炎症は、種々の神経精神疾患の基
礎的な病原性の特徴であると考えられている。[11 C]CPPCはまた、中枢神経系の悪性腫瘍
の免疫環境を特異的に研究するため、および抹消悪性腫瘍に対する免疫療法の潜在的な神
経炎症の悪影響を監視するためにも使用することができる。このPET剤は、患者に非侵襲
的で再現性のある読出しを提供するだけでなく、薬物標的の関与を測定できるという点で
も、神経炎症、特にCSF1Rを標的とする新しい治療薬の開発において価値があると考えら
れている。
【0146】
神経炎症は発展途上の概念であり、関与する細胞およびその機能が明らかになる一方で
、ミクログリアは脳の損傷および修復の重要な細胞メディエーターであると理解されてい
る。ミクログリアの活動を特異的かつ非侵襲的に測定できるようになれば、外傷性脳損傷
、脱髄疾患、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病など多岐にわたる精神神経疾患に関
与する神経炎症の研究に恩恵をもたらすことができるだろう。
【0147】
[11 C]CPPCPCは、その発現が本質的に脳内のミクログリアに限定される、マクロファー
ジコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)に特異的な陽電子放出高親和性リガンドである。[11
C]CPPCは、神経炎症のマウスおよび非ヒト霊長類のリポポリサッカライドモデルにおいて
、高い特異的な脳内取り込みを示す。それはまた、ADのマウスモデル、実験的アレルギー
性脳脊髄炎の脱髄モデル、およびAD患者の死後の脳組織において、特異的に高い取り込み
を示す。マウスでの放射線量測定により、[11 C]CPPCは、将来のヒトでの研究において安
全であることが示された。[11 C]CPPCは、十分な放射化学的収率、純度、および比放射能
で合成することができ、CSF1RのヒトPETイメージングおよび神経炎症のミクログリア成分
の可能性を示す関連モデルにおいて結合特異性を有する。
【0148】
1.2 ワークの範囲
強力かつ選択的なCSF1R阻害剤である5‐シアノ‐N‐(4‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イ
ル)‐2‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニル)フラン‐2‐カルボキサミドは、製薬産業(Illi
g CR, et al. (2008))によって開発された。ここでは、その同位体である5‐シアノ‐N‐
(4‐[11 C]メチルピペラジン‐1‐イル)‐2‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニル)フラン‐2
‐カルボキサミド([11 C]CPPC)の放射性合成について説明し、神経炎症におけるCSF1RのP
ETイメージングに対する[11 C]CPPCの可能性について評価する。
【0149】
1.3 材料および方法
【0150】
1.3.1. 化学
CSF1R阻害剤BLZ945(Krauser JA, et al. (2015))およびペキシダルチニブ(PLX3397) (D
eNardo DG, et al. (2011))を商業的に入手し、化合物8は前述のように社内で調製した(I
llig CR, et al. (2008))。CPPC [5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペ
リジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドの合成は、前述のように行い(Illig C
R, et. Al.(2008))、[
11 C]CPPC、5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1
-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミド(Pre-CPPC)の放射性標識のためのノル-メチル
前駆体を同様に調製した(
図8)。[
11 C]CH
3 IとPre-CPPCとの反応によって[
11 C]CPPCを調
製した(
図9)。
【0151】
1.3.2 動物における[11 C]CPPCによる生体内分布およびPETイメージングの研究
動物プロトコルはジョンズホプキンス大学医療機関の動物実験委員会の承認を受けた。
【0152】
1.3.3 動物
Charles River LaboratoriesのC57BL/6Jマウス(22~27g)またはCD-1マウス(25~27g)を
対照とした。ミクログリアを枯渇させたマウスは、前述のようにして入手した(Elmore MR
, et al. (2014))。CSF1R KO (B6.Cg-Csf1rtm1.2Jwp/J)マウスは、ジャクソン・ラボラト
リーズから購入した。スウェーデンおよびインディアナの変異を有する、アミロイド前駆
体蛋白質を過剰発現させたAD関連アミロイドーシスのマウスモデルを社内で作成した(Mel
nikova T, et al. (2013))。雄のCD-1マウスに、神経炎症の頭蓋内LPSモデル(i.c.-LPS)
として、LPS (5μg;右前脳)を頭蓋内に注射した(Dobos N, et al. (2012))。神経炎症のi
.p.モデル(i.p.-LPS)は、前述の様に、LPS (10mg/kg; 0.2mL; i.p.)を雄のCD-1マウスに
接種することによって作製した(Qin L, et al. (2007))。実験的自己免疫脳炎(EAE)マウ
スモデルに関して、雌のC57BL/6Jマウスに、前述のように、MOG35-55ペプチドを摂取した
(Jones MV, et al. (2008))。MOGを接種した症候性マウスと未接種の健康なマウスとを、
初回接種の14日後にスキャンした。
【0153】
1.3.4 マウスにおける[11 C]CPPCの脳内局所分布
マウス実験の結果は、標準化取り込み値の割合(%SUV)、または血中の放射能濃度で補正
した%SUVとして算出した:
(SUVR):SUVR=%SUV組織/%SUV血液SUVR=%SUV組織/%SUV血液
【0154】
1.3.5 ベースライン
対照マウスは、0.2mLの生理食塩水中の5.6MBq (0.15 mCi)[11C]CPPCを側部尾静脈に注
射した後、種々のタイムポイントにおいて頸部脱臼によって犠牲にした。脳を取り出し、
氷上で解剖した。脳の各部位の重量を測定し、その放射能量をγカウンターで測定した。
他の全てのマウスの生体内分布研究も同様に行った。
【0155】
1.3.6 遮断
マウス(雄のCD1またはC57BL/6J)を、[11 C]CPPCの静脈注射の45分後に頸部脱臼によっ
て犠牲にした。遮断剤であるCPPC (0.3、0.6、1.2、3.0、10、20mg/kg)、またはCSF1R阻
害剤である化合物8(Illig CRら(2008)) (2mg/kg)を、[11 C]CPPC の5分前にi.p.で投与し
、ベースライン動物には賦形剤を投与した。脳を取り出し、氷上で解剖し、血液を心臓か
ら採取した。ベースラインでの[11 C]CPPCの局所的脳内取り込みを遮断時と比較した。
【0156】
1.3.7神経炎症モデルマウス(LPS投与、AD)における生体内分布研究
これらの研究は、対照マウスにおけるベースラインおよび遮断実験と同様に行った。
【0157】
1.3.8 対照マウスおよびLPS投与マウスの脳内CSF1Rレベルの測定
Csf1r mRNAおよびCSF1Rタンパク質のレベルを、それぞれqRT-PCRおよびウェスタンブロ
ット分析によって測定した(
図14)。
【0158】
1.3.9 EAEマウスにおけるPET/CTイメージング
各マウス(3匹のEAEおよび1匹の対照)に[11 C]CPPCを静脈注射し、続いてPET/CTスキャ
ナーでイメージングした。PETおよびCTデータは、製造業者のソフトウェアを使用して再
構築し、医療イメージングデータ分析(AMIDE)ソフトウェア(amide.sourceforge.net/)を
使用して表示した。ダイナミックレンジを確保するために、Harderianおよび唾液腺PET信
号を部分的にマスクした。
【0159】
1.3.10 マウスにおける全身放射線量測定
ベースライン研究のため、雄のCD-1マウスに、上記のように[11 C]CPPCを注射し、投与
後10、30、45、60、および90分に安楽死させた。各器官を速やかに取り出し、器官当たり
の注入量(%ID)を測定した。[11 C]CPPCのヒト放射線量測定は、SAAM II (シミュレーショ
ン解析およびモデリングII)およびOLINDA/EXMソフトウェアを使用して、マウス生体内分
布データから推定した。データを商業的に分析した(RADAR, Inc.)。
【0160】
1.3.11 [
11C]CPPCを用いたヒヒPET研究
高解像度リサーチトモグラフ(CPS Innovations, Inc.)を用いて、雄のヒヒ(Papio Anub
is; 25kg)に90分間のダイナミックPETスキャンを3回実施した(1回目:ベースライン;2回目
: LPS投与後のベースライン;3回目: LPS投与+遮断)。簡単に説明すると、全てのPETスキ
ャンは、444~703MBq (12~19 mCi)の[
11 C]CPPC [比放射能:1096~1184GBq/μmol (29.6
~32.0 Ci/μmol)]の静脈注射で行った。LPSスキャンでは、放射性トレーサーの4時間前
に0.05mg/kgのLPSをヒヒに静脈注射した。LPS+遮断スキャンでは、選択的CSF1R阻害剤で
あるCPPC(1mg/kg)を放射性トレーサーの1.5時間前に皮下投与した。サイトカインIL-6の
血清レベルの変化をELISAでモニターした(
図14)。ヒヒの動脈血のPETデータ解析および放
射性代謝物の解析を以下に詳述する。
【0161】
1.3.12 死後ヒト脳のオートラジオグラフィー
ヒト組織の使用は、ジョンズホプキンス大学医療機関の治験審査委員会の承認を得てい
る。スライドガラスに載せた、AD罹患したヒトの被検者3名と健常対照1名(人口統計学に
ついては表5を参照)の下頭頂皮質の切片(20μm)をin vitroオートラジオグラフィーに使
用した。ベースラインスライドを[11 C]CPPCでプローブし、一方で遮断スライドを[11 C]
CPPC+遮断剤(CPPC、BLZ945、ペキシダルチニブまたは化合物8)でプローブして、CSF1R結
合の特異性を調べた。スライドをX線フィルムに曝露し、結果を湿組織のpmol/mm3±SDと
して表した。
【0162】
【0163】
1.4結果
【0164】
1.4.1 化学
放射性標識のための前駆体であるPre-CPPCを4つの工程で調製し、全体の収率はマルチ
ミリグラム量で54%(
図7)だった。放射性トレーサーである[
11 C]CPPCは、非崩壊補正放射
化学収率21±8% (n = 17)、放射化学純度95%以上、合成終了時の比放射能977±451GBq/μ
mol (26.4±12.2 Ci/μmol)で調製した(
図9)。
【0165】
1.4.2 対照マウスにおける局所脳生体内分布研究
放射性トレーサー注入後、種々のタイムポイントにおける[11 C]CPPCの局所的脳内取り
込みを表1および2に示す。放射性トレーサー注入後5~15分で、150%SUVのピーク取り込み
値が前頭葉皮質に見られた。以下に述べるいくつかの研究における45分タイムポイントを
含む30~60分の間、%SUVの変化は安定していた。
【0166】
1.4.3 対照マウスにおける[11 C]CPPCの特異的結合性の評価
【0167】
1.4.3.1 遮断研究
[
11 C]CPPC取り込みの遮断は、先ず、非放射性標識CPPC(0.6~20mg/kg) の投与量を段
階的に増やして行った。本研究は、低投与量での放射性トレーサー%SUV取り込みの減少は
みられず、高投与量では徐々に増加する傾向が見られた(
図10)。しかしながら、脳への取
り込みをSUVRとして血液入力関数について補正した場合、放射能が20%減少するという有
意な遮断効果が見られた(
図11)。
【0168】
1.4.3.2正常な対照マウスとミクログリアを枯渇させたマウスの比較
この研究は、ミクログリアを除去したマウス脳において、放射性トレーサーの取り込み
がわずかに(14%)であるが、有意に減少したことが示された(
図12A)。
【0169】
1.4.3.3正常な対照マウスとCSF1R KOマウスの比較
この研究では、KOマウス脳における[
11 C]CPPCの脳への取り込み(%SUV)が対照マウスと
比較して同等であることが示された(
図12B)。
【0170】
1.4.4 神経燃焼のLPS誘導マウスモデルにおける[
11 C]CPPCの生体内分布
これらの研究は、頭蓋内LPS(i.c.-LPS)(Dobos N, et al. (2012))およびi.p. LPS(i.p.
-LPS)(Qin L, et al. (2007); Catorce MN and Gevorkian G(2016))の2つのマウスLPS誘
導神経炎症モデルで実施した。先ず、i.p.-LPSマウスの脳におけるCSF1R発現の誘導を調
べたところ、qRT-PCRおよびウエスタンブロット解析により、Csf1r mRNAが2倍に、そして
蛋白質が6倍に増加していることが認められた(
図14)。
【0171】
1.4.4.1 i.c.-LPSマウス
2つの独立した実験を行った(
図1)。いずれの実験でも、shamマウスに対するLPSマウス
の%SUVの増加は有意であり、対側半球よりも同側半球で高かった。最大の増加は、LPSを
注入した同側前頭四分円(53%)において観察された(
図1B)。非放射性標識CPPCPCによる[
11
C]CPPCの遮断は投与量に依存していた。低投与量の遮断剤(0.3mg/kg)(
図1A)を使用した
場合、最初の実験における取り込みの減少は有意ではなかった。高投与量の遮断剤(0.6ま
たは1.2mg/kg)は、LPS投与動物における[
11 C]CPPCの取り込みを有意に減少させた(
図1B)
。
【0172】
1.4.4.2 i.p.-LPSマウス
3つの独立した実験を行った。i.p.-LPSマウスにおける最初の実験では、[
11 C]CPPCは
対照動物と比較して%SUV脳取り込みの増加(55%)を示したが、非放射性標識CPPCによる遮
断は、LPS動物の%SUV放射能の有意な減少は見られなかった(
図2A)。第2および第3の実験
において、%SUV取り込みは、SUVRとして血中放射能について補正された(
図2Bおよび
図2C)
。SUVR取り込みは、対照マウスよりもi.p.‐LPSマウスで有意に大きかった。2つの異なる
CSF1R阻害剤、CPPC (
図2B)および化合物8(
図2C)による遮断により、取り込み量が対照レ
ベルまで有意に減少した。血中放射能濃度は、i.p.-LPSベースライン(14%減少)およびi.p
.-LPS遮断実験(39%増加)では、対照と比較して変化した。
【0173】
1.4.5 ADのトランスジェニックマウスモデルにおける[
11C]CPPCの脳内局所分布
[
11 C]CPPCPC取り込みは、ADマウスの全ての脳領域において有意に高く、大脳皮質にお
いて最大の増加(31%)を示した(
図3)。
【0174】
1.4.6 マウスにおける全身放射線量測定
ほとんどの器官は、0.002~0.006mSv/MBq[0.007~0.011線量当量(レム:Rem)/mCi]を受
けた。小腸は最も高い線量である0.047mSv/MBq(0.17 Rem/mCi)を受けた。実効線量は0.00
48mSv/MBq(0.018 Rem/mCi)だった(表3)。
【0175】
1.4.7 多発性硬化症のマウスEAEモデルにおける[
11 C]CPPC PET/CT
EAEの重症度のスペクトル(EAEスコア0.5、2.5、および4.5)を表す3匹のマウスと、抗原
またはアジュバントを投与していない1匹の健常マウスに[
11 C]CPPCを注射し、PET/CTを
用いて動的にスキャンした(
図4)。各マウスの最大強度投影(MIP)画像および矢状断面図(
図4A)は、脳幹における最大の増加(99%)を示し、疾患の重症度と相関する放射性トレーサ
ーの取り込み強度を示しているが(
図4B)、筋肉取り込みはマウス間で同等であった。ハー
デリアン腺および唾液腺の閾値処理のなされていない生の画像を
図13に示す。
【0176】
1.4.8 ヒヒのPET
同じヒヒにおけるベースライン、LPS、およびLPS+遮断の実験におけるPET[
11 C]CPPC
のダイナミックスキャンを比較すると、LPS処理後にパラメトリック分布容積(V
T)が増加
し、LPS+遮断処理後にV
Tがベースラインレベルまで減少したことが示された(
図5および
図15)。IL-6の血中濃度は、LPSの投与後に強く上昇したことから、急性炎症の誘導に成功
したことを示唆している(
図16)。
【0177】
ヒヒにおける動的[
11 C]CPPC PETベースラインイメージングは、脳内への放射能の蓄積
を示し、注入後20分でSUVは2.5~4.0のピークに達し、その後徐々に減少した(
図5B)。部
分的なV
Tは中等度に不均一であり、後頭葉、尾状葉、視床、および島で最も高く、前頭皮
質で中位であり、小脳、視床下部、および後頭皮質で最も低かった(
図5Aおよび
図15)。
【0178】
ベースライン、LPSおよびLPS+遮断におけるヒヒのPETの比較においては、脳内のSUVに
わずかな差が認められた。しかしながら、ベースラインスキャンにおけるウォッシュアウ
ト速度は、LPSスキャンにおけるものよりも早かった(
図5C)。
【0179】
ヒヒの血液サンプルの放射性代謝物を分析したところ、[
11C]CPPCは注射後90分で2つの
放射性代謝物(全放射性代謝物71~76%)に代謝されることが示された(
図17)。これらの親
水性放射性代謝物は、マウス実験でも示されているように、脳内への侵入は最小限だった
。HPLCによる解析では、マウスの脳内の放射能の少なくとも95%が親の[
11 C]CPPCである
ことが示された(表4)。
【0180】
ヒヒの血漿中の代謝補正[
11 C]CPPC放射能は、LPS投与とベースラインを比較すると、
大幅に減少(-50%)し、LPS+遮断実験ではベースラインレベルまで回復した(
図5D)。コン
パートメント解析およびローガン解析を用いた数学的モデリング(
図18)により、LPSを投
与したヒヒのパラメトリックV
T値(V
T=35-52)がベースライン(V
T=15-25)と比較して劇的に
増加(90-120%)し、LPS+遮断実験(
図5および
図15)ではベースラインレベルに戻ったこと
が示されたことに対し、K
1値はわずかに変化しただけであった(
図19)。LPSを投与したヒ
ヒの脳における放射性トレーサー結合の増加は、遮断スキャンで示されたように、CSF1R
に特異的だった。
【0181】
1.4.9 ヒト脳における[
11 C]CPPCの死後オートラジオグラフィー
AD脳切片と対照脳切片(
図6および表6)における[
11 C]CPPCベースラインオートラジオグ
ラフィーを比較したところ、AD脳における放射性トレーサー結合が増加(75~99%)してい
た。結合の特異性は、ベースライン結合と、4つの異なるCSF1R阻害剤を使用した遮断実験
における結合とを比較することによってテストした。AD脳におけるベースライン/遮断比
は1.7~2.7(遮断剤: CPPC)であったのに対し、対照脳において比は1.4であった(
図6およ
び表6)。他のCSF1R遮断剤(化合物8、BLZ945、PLX3397)を同じAD脳で使用した場合、ベー
スライン/遮断比はそれぞれ2.0±0.23、1.79±0.88および1.25±0.25であった(
図20)。
【0182】
【0183】
1.5 考察
本開示の主題は、ヒトの脳組織においてin vitroで、また神経炎症の非ヒト霊長類およ
びマウスモデルにおいてin vivoで、CSF1Rに特異的なPET放射性トレーサーを提供する。
研究者ら[Tronel C, et al. (2017); Janssen B, et al. (2018)を参照]は、神経炎症の
ためのPETバイオマーカーの開発および実施に取り組んできたが、[11 C]CPPCまで、脳の
常在免疫細胞であるミクログリアに対する選択性を証明したものはなかった。
【0184】
[
11 C]CPPCの開発のためのリードCSF1R阻害剤は、文献から選択した(Illig CRら(2008)
)。オリジナルの放射性標識されていないCPPCは、高いCSF1R阻害能力[IC
50 = 0.8 nM (Il
lig CRら(2008))]と、脳のPETに適した物理特性を示し、これには、血液脳関門透過性を
示す算出された分配係数(clogD
7.4)1.6および分子量393Daの最適な親油性が含まれる。[
1
1 C]CPPCを、高純度および比放射能を有する好適な放射化学収率に調製した(
図9)。
【0185】
1.5.1 対照マウスにおける[11 C]CPPCの生体内分布および特異的結合の研究
対照マウスにおける[11 C]CPPCの脳への取り込みはロバストであり、前頭葉皮質で150%
SUVまたは6.4%ID/g組織のピークを示し、その後減少した(表2)。局所脳分布は中等度に不
均一であり、前頭皮質における放射能の蓄積が最も多く、正常なマウスの脳におけるCSF1
R式の発現の分析と一致した(Nandi S, et al. (2012))。今回研究した脳領域の中で、脳
幹および小脳は[11 C]CPPCの蓄積が最も少なかった。
【0186】
正常なマウス脳における[
11 C]CPPCのCSF1R結合特異性を、ベースライン対照と、(i)遮
断マウス、(ii)ミクログリアの枯渇したマウス、および(iii)CSF1R KOマウスとの比較に
よって評価した。正常なマウスの脳における初期の投与量増大遮断実験では、%SUVの有意
な減少は見られなかった(
図9および
図10A)。しかしながら、%SUVをSUVRとして血中放射能
について補正した場合、中程度ではあるが有意な減少(20%)がみられ(
図10B)、[
11 C]CPPC
が正常なマウス脳内でCSF1Rを特異的に標識することが実証された。 [
11 C]CPPCの血中濃
度が遮断研究では高かったことも注目すべき点である。
【0187】
CSF1R阻害剤であるPLX3397(ペキシダルチニブ)をマウスに慢性的に投与すると、効果的
にミクログリアを枯渇させ(90%)、動物の脳内のCSF1Rを減少させる (Elmore MR, et al.
(2014))。ミクログリアを枯渇させたマウスにおける[
11C]CPPCの脳への取り込みは、対照
マウスよりも低かった(14%)(
図12A)。この取り込みの減少は、2つの効果、すなわちミク
ログリアの枯渇およびPLX3397自体の遮断効果の組合せによるものであり得る。最後に、
対照マウスおよびCSF1R KOマウスにおける[
11 C]CPPC取り込みの比較において、対照マウ
スおよびKOマウスへの放射性トレーサーの取り込みは同等だった(
図12B)。CSF1Rの標的が
枯渇(PLX3397)または消失(KO)した場合、CSF1Rに特異的なイメージング剤の脳への取り込
みはほとんどないか全くないはずであるが、健常なげっ歯類の脳にはCSF1Rの発現がわず
かであり(Nandi S, et al. (2012); Michaelson MD, et al. (1996); およびLee SC, et
al. (1993))、CSF1Rがより多く存在すると考えられる関連動物モデルに注目する必要があ
る。
【0188】
1.6.2 LPS誘発性神経炎症のマウスモデルにおける[
11 C]CPPCの評価
LPS刺激は、神経炎症の一般的なモデルである(Qin L, et al. (2007); Catorce MNおよ
びGevorkian G (2016))。LPS誘発性神経炎症は、げっ歯類、非ヒト霊長類、さらにはヒト
被検者における種々のPET放射性トレーサーを実験するために使用された[Tronel C, et a
l. (2017)参照のこと]。LPS神経炎症モデルにおけるCSF1Rの発現に関する報告はない。i.
p.-LPSマウスと対照マウスの脳内のCSF1R量をqRT-PCR法およびウエスタンブロットを用い
て比較したところ、Csf1r mRNAおよびCSF1Rタンパク質の発現が高くなることがわかった(
図14)。本研究では、LPS誘発性神経炎症の2つのマウスモデル、i.c.-LPS (Dobos N, et a
l. (2012); Aid S, et al. (2010)およびi.p.-LPS (Qin L, et al. (2007)、Catorce MN
およびGevorkian G (2016))を使用した。定位手術はi.c-LPS動物の血液脳関門を損傷する
可能性があるにもかかわらず、局所的な神経炎症を生じさせるこのモデルは、当初、拡散
した神経炎症を起こすi.p-LPSモデルよりも魅力的に思えた。しかしながら、[
11 C]CPPC
を用いたさらなる研究は、両方のモデルを用いて同等の結果を示した。
【0189】
[
11 C]CPPC結合実験は、i.c.-LPSマウスにおける取り込みの有意な上昇(53%以下)を示
した(
図1)。上昇した結合は、投与量上昇遮断実験(
図1)で示されたように、sham動物に対
して-50%であり、CSF1Rを介して行われた。i.p.-LPSマウスでは、[
11 C]CPPC結合も対照
動物に対して有意に高かった(55~59%)(
図2)。i.p.-LPSマウスにおける全ての脳の[
11 C]
CPPC結合は、2つの異なるCSF1R阻害剤、CPPC (
図2B)および化合物8(
図2C)を使用する遮断
実験において実証されているように、特異的に50%を超え、CSF1Rを介して行われた。i.p.
-LPS動物では、血中放射能濃度は劇的に変化し、%SUVをSUVRとして血液入力関数について
補正する必要があった(
図2Bおよび
図2C)。血中放射能の変化は、i.p.‐LPSマウスにおけ
るCSF1Rレベルの避けられない全身的変化によって説明できる可能性がある。頭蓋内およ
びi.p.マウスLPSモデルにおける[
11 C]CPPC実験では同等の結果が得られ、両モデルにお
いて放射性トレーサーがCSF1Rを特異的に標識することが示された。LPSマウスにおける[
1
1 C]CPPCのex vivo結合能(BP
ex
vivo = 0.53~0.62)を、LPS取り込み‐sham取り込み/sha
m取り込みLPS取り込み‐sham取り込み/sham取り込みとして推定した。TSPO放射性トレー
サー[
11 C]PK11195によるLPS投与ラットにおける以前の研究では、同等のBP値0.47が得ら
れた(Dickens AMら(2014))。
【0190】
1.5.3 EAEマウスの[
11 C]CPPCイメージング
C57BL/6 MOG
35-55 EAEモデルにおけるPET/CTイメージングは、PET信号強度が疾患スコ
アに比例し(
図4)、EAEモデルにおける脱髄の局所分布と一致して、脳幹、小脳および頸椎
に大部分が集中していることを示した。[
11 C]CPPCの脳幹への取り込みは、対照マウスと
比べてEAEマウスは最大で2倍であった。
【0191】
1.5.4 マウスにおける全身放射線量測定
[11C]CPPCをヒトへ将来応用するために、線量測定を行った。このマウス研究は、ヒト
被検者に投与される提案された740MBq (20 mCi)[11 C]CPPCの投与量が、現行の食品医薬
品局の上限(5 レム; (5. Federal Register §361.1 (2018))を下回る放射線負荷となる
ことを実証したが、この推定値を確認するためには、ヒト被検者における実際の研究が必
要である。
【0192】
1.5.5 ヒヒにおけるPETイメージング
ヒヒにLPSを全身投与すると、ミクログリアの活性化が起こる(Hannestad J, et al. (2
012))。本報告では、対照ヒヒおよび低投与量のLPS(0.05mg/kg, i.v.)を注射した同じヒ
ヒで、[
11 C]CPPCの結合特性をテストした。分布容積(V
T)の2倍以上の増加がLPS投与動物
の全脳領域において見られた(
図5および
図15)。LPS-ヒヒにおけるパラメトリックV
Tの増
加は、非放射性標識CPPCPの注射によって完全に遮断された(
図5Aおよび
図15)。LPSおよび
遮断剤の注射は、おそらく末梢におけるCSF1Rの変化に起因すると思われる血液入力関数
の変化を引き起こすので(
図5D)、これらの画像のパラメトリックモデリングは不可欠であ
る。HPLC解析では、動物脳内で親の[
11 C]CPPCPCはほとんど変化を示さなかった(>95%)の
で、パラメトリックモデリングは脳放射性代謝物の含有を必要としなかった。
【0193】
[11 C]CPPC PETスキャンは、LPS投与のヒヒ脳における放射性トレーサー結合は特異的
であり、CSF1Rによって媒介されたことを示し、この薬剤が非ヒト霊長類における神経炎
症のイメージングに適していると考えられる。LPS (0.05mg/kg)を投与したヒヒにおける[
11 C]CPPC VT(85-120%)の増加は、以前の報告(Hannestad J, et al. (2012))に示されて
いるように、より大量の投与量(0.1mg/kg)の場合のTSPO放射性トレーサー[11C]PBR28(35.
6~100.7%)と、少なくとも同じかそれ以上であった。従って、[11C]CPPCは、神経炎症に
おける活性化したミクログリアの定量的なイメージングのための高感度かつ革新的なツー
ルとなり得る。
【0194】
1.5.6 AD脳における[
11 C]CPPC結合
ADには、特に自然免疫系が関与する免疫成分が存在し、これは、多発性硬化症や上記の
いくつかのモデルのような「典型的な」神経炎症性疾患とは異なる(Heppner FL, et al.
(2015))。これまでの研究では、ADに罹患しているヒト被検者の脳におけるCSF1Rのアップ
レギュレーションの証拠が示された(Akiyama Hら(1994); Walker DGら(2017); Lue LFら(
2001))、また、ADのトランスジェニックマウスモデルにおけるCSF1Rのアップレギュレー
ションの証拠が示された(Murphy GM Jrら(2000); Yan SDら(1997);およびBoissonneault
Vら(2009)。[
11 C]CPPCの結合を、トランスジェニックADマウス脳および死後のADヒト脳
組織において実験した。以前のデータ(Murphy GM Jr, et al., (2000); Yan SD, et al.
(1997);およびBoissonneault V, et al. (2009))と一致して、トランスジェニックADマウ
スにおける[
11 C]CPPCのex vivoでの脳への取り込みは、対照動物におけるものよりも有
意に高かった(最大31%)(
図3)。
【0195】
死後のヒトのin vitroオートラジオグラフィーでは、[
11 C]CPPCがAD脳においてCSF1R
を特異的に標識することが示された(ベースライン/自己遮断比率は最大2.7)(
図6および表
6)。別の実験では、CPPCとは構造的に異なるCSF1R阻害剤 [化合物8、IC
50 = 0.8 nM (Ill
ig CRら(2008)); BLZ945、IC
50 = 1.2 nM (Krauser JAら(2015));およびPLX3397、IC
50 =
20 nM (DeNardo DGら(2011))]は、同じAD組織において[
11 C]CPPCPC結合を遮断し(
図20)
、結合がCSF1R特異的であることを確認した(
図6、
図20、および表6)。より強力なCSF1R阻
害剤、すなわち化合物8およびBLZ945のベースライン/遮断比率は、弱いPLXの比率よりも
最大で2倍大きかった。これらの知見は、DAMが関与する、筋萎縮性側索硬化症、老化、パ
ーキンソン病などの、他の神経変性疾患や自然免疫成分を持つ疾患のイメージングにも拡
張され得る(Deczkowska A, et al. (2018))。[
11 C]CPPCはまた、in vivoでイメージング
されたことのないTREM2信号の間接的なイメージングの読み出しを行い得る(Deczkowska A
ら(2018); Hickman SEおよびEl Khoury J(2014))。
【0196】
1.6 発明の概要
本開示の主題は、一部には、神経炎症におけるCSF1RをイメージングするためのPET放射
性トレーサーである[11 C]CPPCを提供する。放射性トレーサーの特異的結合は、LPSによ
る神経炎症モデルのマウス(最大59%)およびヒヒ(最大120%)、ADのマウスモデル(31%)およ
び多発性硬化症のマウスモデル(最大100%)、ならびに死後のADのヒト脳組織(ベース/遮断
比2.7)で増加した。マウスでの放射線量測定研究は、[11 C]CPPCがヒト研究においても安
全であることを実証した。[11 C]CPPC放射性代謝物は動物の脳内への侵入が少なく、画像
解析にそれらを含める必要がないことを示している。[11 C]CPPCは、種々の臨床シナリオ
でCSF1Rを研究するための臨床応用が期待されている。
【0197】
1.7 補足材料および方法
【0198】
1.7.1 CSF1R阻害剤
BLZ945(Krauser JA, et. Al.(2015))はAstaTech (Bristol、PA)から、ペキシダルチニ
ブ(PLX3397) (DeNardo DG、ら(2011))はeNovation Chemicals (Bridgewater、NJ)から購
入し、化合物8は前述の通り社内で調製した(Illig CR, et. al. (2008))。
【0199】
1.7.2 化学
1 H NMRスペクトルは、Bruker-500 NMR分光計を用いて、CDCl 3、CD3 ODまたはDMSO-d
6(δ0ppmでの内部Me4 Siを参照)中で500MHzの公称共振周波数で記録した。高分解能マス
スペクトルは、ノートルダム大学の質量分析施設において、エレクトロスプレーイオン化
(ESI)を使って商業的に記録した。
【0200】
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2カルボキサミド(CPPC)の合成は、別の文献に記載のように行った(Illig CR, et al. (2
008))。
【0201】
1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)ピペリジン:15mLのEtOH中の1.0g(10.0 mmol)の4-クロ
ロ-2-フルオロニトロベンゼンの冷却(0℃)溶液に、1.7mL (30.0 mmol)のピペリジンを5分
かけて滴下した。溶液を0℃で10分間、次いで23℃で30分間撹拌した。混合物を水(225mL)
に注ぎ、EtOAc (2×30mL)で抽出した。合わせた抽出物を、飽和NaHCO3水溶液およびブラ
イン(各30mL)で洗浄し、次いで、Na2 SO4上で乾燥させ、蒸発させて、粗化合物を得た。
得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc = 9.5:0.5)で精製し
、1-(5-クロロ-2ニトロフェニル)ピペリジンを黄色い固体として得た(1.32g、収率96%)。
1 H NMR(500MHz, CDCl3)δ 7.77(d, J = 5.0Hz,1H),7.13(s,1H),6.93(d, J = 10.0Hz,1H)
,3.30‐3.27(m,2H),2.91‐2.86(m,2H),1.90‐1.86(m,1H),1.75‐1.73(m,2H),1.49‐1.42(
m,1H)。
【0202】
1-メチル-4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン:1-(5-クロロ-2ニ
トロフェニル)ピペリジン(1.0g、4.15mmol)および1-メチルピペラジン(1.38 mL、12.46 m
mol)の混合物を、N2下、138℃で12時間攪拌しながら加熱した。室温に冷却した後、混合
物を水に注ぎ、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた抽出物を水およびブラインで
洗浄し、次いでNa2 SO4上で乾燥させ、蒸発させて粗化合物を得た。得られた残渣をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2:メタノール = 9:1)で精製し、1-メチル-4-(4-
ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジンを黄色い固体として得た(1.2g、収率
96%)。1 H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.62 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.80 (s, 1H), 6.43 (
d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.84 (t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.71 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.60 (t
, J = 5.0 Hz, 4H), 3.50 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 3.80 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 1.55-1.5
1 (m, 3H).
【0203】
4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)アニリン:THF/MeOH/H2 O(10:5
:3)(20mL)中の1-メチル-4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン(1.2g
、3.9 4 mmol)、およびNH4 Cl (2.10g、39.4 mmol)の混合物に、90℃でZnダスト(2.57g
、39.4 mmol)を添加し、次いで混合物を1時間還流した。反応終了後、反応混合物をセラ
イトで濾過し、EtOAcとブラインで分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、
濾過し、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 C
l2 : メタノール = 9:1)で精製し、褐色固体として4-(4メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピ
ペリジン-1-イル)アニリンを得た(0.98g、収率90.7%)
【0204】
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(CPPC): DMF (10mL)中の4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジ
ン-1-イル)アニリン(0.5g、1.82 mmol)、5-シアノフラン-2-カルボン酸(0.3g、2.1 8 mmo
l)、HATU(0.83g、2.18 mmol)の混合物に、DIPEA(0.63mL、3.64 mmol)を加えた。反応混合
物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインで分配した。有機層を分離し、無水MgSO4
上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー(CH2 Cl2 : メタノール = 9:1)で精製し、5-シアノ-N-(4-(4メチルピペラジン-1
-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを黄色の固体として得
た(0.6g、収率84.5%)。1 H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.53 (s, 1H), 8.31 (d, J = 8.7
Hz, 1H), 7.23 (d, J = 16.6 Hz, 2H), 6.80 (s, 1H), 6.72 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.20
(s, 4H), 2.85 (s, 4H), 2.59 (s, 4H), 2.36 (s, 3H), 1.80 (s, 4H), 1.65 (s, 2H)。
C22 H28 N5O2([M + H)] 394.223752 に対するHRMS を算出したところ、394.223065だった
。
【0205】
5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2カルボ
キサミド(Pre-CPPC)の合成
【0206】
ここで
図8(5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラ
ン-2カルボキサミド(Pre-CPPC)の合成を参照する。
【0207】
ステップa.tert-ブチル4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-
カルボン酸塩: DMSO (10mL)中の1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)ピペリジン(1.0g、4.15m
mol)およびtert-ブチルピペラジン-1カルボキシル酸塩(1.55g、8.30mmol)の混合物に、K2
CO3(1.72g、12.45mmol)を添加した。反応混合物を110℃で12時間撹拌し、次いでEtOAcと
ブラインで分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮
した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc = 3:7)により
精製し、tert-ブチル4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボ
ン酸塩を白色固体として得た(1.40g、収率86.4%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ 7.99 (d
, J = 10.0 Hz, 1H), 6.38 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 6.31 (s, 1H), 3.58 (t, J = 5.0 Hz
, 4H), 3.34 (t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.28 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.78 (d, J = 10.0 Hz,
2H), 1.70 (d, J = 5.0 Hz, 2H), 1.55-1.51 (m, 3H), 1.47 (s, 9H)。
【0208】
ステップb.tert-ブチル4-(4-アミノ3‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニル)ピペラジン-1
-カルボン酸塩: THF/MeOH/H2 O(10:5:3)(20mL)内のtert-ブチル4-(4-ニトロ-3-(ピペリジ
ン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(1.20g、3.07mmol)およびNH4 Cl (1.64g
、30.7mmol)の混合物に、90℃でZnダスト(2.0g、30.7mmol)を添加し、次いでその混合物
を1時間還流した。反応終了後、反応混合物をセライトで濾過し、EtOAcとブラインで分配
した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた
残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : メタノール = 9:1)によって
精製し、 tert-ブチル4‐(4‐アミノ3‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニル)ピペラジン-1-
カルボン酸塩を茶色固体として得た(1.0g、収量90.3%)。
【0209】
ステップc.tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(ピペリジン1-イ
ル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩:DMF (10mL)中のtert-ブチル4-(4-アミノ-3-(
ピペリジン-1イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(0.5g、1.38 mmol)、5-シアノフ
ラン-2-カルボン酸(0.23g、1.66 mmol)、HATU (0.63g、1.66 mmol)の混合物に、DIPEA (0
.48mL、2.76mmol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブライン
で分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得
られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : メタノール = 9:1)によ
り精製し、黄色い固形(0.60g、収量90.9%)として、tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-
カルボキサミド)-3-(ピペリジン1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩を得た。1H
NMR (500 MHz, CDCl3) δ 9.59 (s, 1H), 8.31 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25 (d, J = 5.
0 Hz, 1H), 7.21 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 6.72 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.5
8 (t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.10 (t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.72
(t, J = 10.0 Hz, 2H), 1.83 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.55-1.51 (m, 3H), 1.49 (s, 9H)
。
【0210】
ステップd.5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フ
ラン-2-カルボキサミド(Pre-CPPC):塩化メチレン(5mL)中のtert-ブチル4-(4-(5-シアノフ
ラン-2-カルボキサミド)-3-(ピペリジン-1イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(0.
5g、1.04mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.39mL、5.21mmol)を0℃で滴下し、次いで、
混合物を室温で12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた
残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製するこ
とにより、淡黄色固体として5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル
)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを得た(0.3g、収率76.0%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3
) δ 9.60 (s, 1H), 8.31 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.21 (d,
J = 5.0 Hz, 1H), 6.79 (s, 1H), 6.72 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.15 (t, J = 5.0 Hz, 4H
), 3.08 (t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.73 (t, J = 10.0 Hz, 2H)
, 1.84 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.57 (s, 1H), 1.55-1.51 (m, 3H); C21 H26 N5 O2([M +
H)] 380.208102に対するHRMSを算出したところ、380.207980だった。
【0211】
ここで[
11 C]CPPCの放射合成を示す
図9を参照する:
【0212】
1mLのVバイアル内の0.2mLの無水DMFに、Pre-CPPC (1mg)を添加した。ヘリウム流によっ
て運ばれた[11 C]ヨウ化メチルを、上記の液中に捕捉した。反応物を80℃で3.5分間加熱
し、次いで0.2mLの水でクエンチした。粗反応生成物を、12mL/分の流速で逆相高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)によって精製した。前駆体から完全に分離された放射性標識生成
物(tR = 6.5~7.2分)を、50mLの水と1mLの8.4% aq. NaHCO3との混合物に溶かした0.3gの
アスコルビン酸ナトリウムの溶液中に遠隔操作で回収した(tR = 2.5分)。この水溶液を活
性化したWaters Oasis Sep-Pakライトカートリッジ(Milford, MA)に移した。カートリッ
ジを10mLの生理食塩水で洗浄した後、生成物を1mLのエタノールで0.2μM滅菌フィルタを
通して溶出し、パイロジェンフリーの滅菌バイアルに入れ、10mLの0.9%生理食塩水を同じ
フィルタを通して添加した。最終生成物である[11 C]CPPCを分析HPLCで分析し、放射化学
的純度および比放射能を測定した。
【0213】
1.7.3 HPLC条件
調製: カラム、XBridge C18、10x250mm (Waters、Milford、MA)。移動相:45%:55%アセ
トニトリル:トリエチルアミン-リン酸緩衝液、pH 7.2。流量: 12mL/分、保持時間7分。分
析:カラム、Luna C18、10ミクロン、4.6x250mm (Phenomenex、Torrance、CA)。移動相:60
%:40%アセトニトリル:0.1M aq.ギ酸アンモニウム。流量: 3mL/分、保持時間3.5分。
【0214】
1.8.4マウスにおける [11 C]CPPCを用いた生体内分布およびPETイメージング研究
【0215】
【0216】
1.7.5 正常対照マウス、ベースラインにおける[11 C]CPPCの脳内局所分布、
Charles River Laboratories (Wilmington, MA)の、4~8週齢、22~24gの雄のC57BL/6J
マウスを使用した。5.6MBq (0.15 mCi)の[11 C]CPPC [比放射能=462GBq/μmol (12.5 Ci/
μmol)]を0.2mLの生理食塩水に溶かして外側尾静脈に注射した後、5、15、30および60分
後、これらの動物を頸椎脱臼によって犠牲にした(タイムポイント当たり3匹のマウス)。
脳を取り出し、氷上で解剖した。脳領域(小脳、嗅球、海馬、前頭皮質、脳幹および残り
の脳)の重量を測定し、それらの放射能含有量をγカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGamm
a CS (Bridgeport、CT)で測定した。標準化取り込み値(%SUV)の割合を算出した(表2)。
【0217】
【0218】
1.7.6 対照マウスにおける[11 C]CPPCの特異的結合の評価
【0219】
1.7.6.1 正常対照マウスにおける[
11 C]CPPCの脳内局所分布、非標識CPPCを用いた投与
量漸増遮断研究(
図10)。
Charles River Laboratoriesからの雄のCD-1マウス(26~28g、6~7週齢)を使用した。C
PPC溶液(0.3、0.6、1.2、3.0、10、および20mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、
ベースライン動物には賦形剤を投与した(投与量当たりn=5)。5.1MBq (0.14 mCi)[
11 C]CP
PC [比放射能=511GBq/μmol (13.8 Ci/μmol)]を0.2mLの生理食塩水に溶かしたものを外
側尾静脈に注射した後、45分後に動物を頸椎脱臼によって犠牲にした。脳全体を取り出し
、重さを測定し、その放射能含有量をγカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGamma CS (Bri
dgeport, CT)で測定した。標準化取り込み値(%SUV)の割合を算出した。
【0220】
1.7.7 同じ実験で血液補正をした場合としない場合のベースラインおよび[
11C]CPPCの
取り込み遮断を比較した(
図11)
Charles River Laboratoriesからの雄のCD-1マウス(25~27g、6~7週齢)を使用した。C
PPC溶液(0.6または3.0mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、ベースライン動物には
賦形剤(1投与量当たりn = 3)を投与した。5.0MBq (0.135 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=390
GBq/μmol (10.5 Ci/μmol)]を0.2mLの生理食塩水に溶かしたものを外側尾静脈に注射し
た後、45分後に動物を頸椎脱臼によって犠牲にした。脳を取り出し、皮質を氷上で速やか
に解剖し、血液サンプル(0.2~0.5cc)を心臓から採取した。皮質および血液サンプルを測
定し、それらの放射能含有量をγカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGamma CS (Bridgepor
t, CT)中で測定した。皮質の結果変数は、血液補正なしの場合は%SUVとして(
図11A)、血
液補正ありの場合はSUVRとして(
図11B)提示されている。
【0221】
1.7.7.1 ミクログリアを枯渇させたマウスおよび対照マウスにおける[
11C]CPPCの脳内
取り込み(
図12A)
Charles River Laboratoriesから雄C57BL/6Jマウス(22~24g)を購入した。ミクログリ
アを枯渇させたマウスは、前述のようにペキシダルチニブ(PLX3397)配合マウス飼料(chow
)(290mg/kg)をC57BL/6マウス(5匹)に3週間給餌することによって得た(Elmore MR, et al.
(2014))。対照C57BL/6Jマウス(5匹)には標準マウス飼料を3週間与えた。投与の最終日に
、0.2mLの生理食塩水に溶かした5.0MBq (0.135 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=475GBq/μmol
(12.8 Ci/μmol)]を外側尾静脈に注射した後、45分で全ての動物を頸部脱臼によって犠
牲にした。脳を取り出し、重さを測定し、それらの放射能含有量をγカウンターLKB/Wall
ac 1283 CompuGamma CS (Bridgeport, CT)で測定した。結果変数を%SUVとして算出した。
【0222】
1.7.7.2 CSF1Rノックアウトマウスおよび対照マウスにおける[
11C]CPPCの脳内取り込み
(
図12B)。方法:
B6.Cg-Csf1rtm1.2Jwp/J (CSF1Rノックアウト、KO)マウス(21~23g;4~8週齢; Jackson
Laboratories, Bar Harbor, ME) (5匹)および年齢を一致させたC57BL/6J対照マウス(23~
27g) (5匹)を使用した。3.7MBq (0.1 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=306GBq/μmol (8.3 Ci/
μmol)]を静脈注射し、放射性トレーサー注射の45分後に頸部脱臼によって犠牲にした。
全ての脳を取り出し、血液サンプル(0.2~0.5cc)を心臓から採取した。全脳および血液サ
ンプルの重さを測定し、それらの放射能含有量をγカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGam
ma CSで測定した。結果変数は%SUVとして算出した。
【0223】
1.7.7.3 [
11 C] 対照およびLPS投与(頭蓋内)マウスにおけるCPPCの脳への取り込み(
図1
)
実験1、
図1A.Charles River Laboratoriesからの雄のCD-1マウス9匹(25~27g、6~7週
齢)を3つのコホート:1)sham投与マウス(n = 3); 2)リポポリサッカライド(LPS-頭蓋内)投
与マウス(n = 3)、ベースライン;および3)リポポリサッカライド(LPS-頭蓋内)投与マウス
(n = 3)、遮断に分けた。CD1マウスをアバチン(250mg/kg, IP)で麻酔した。術中の鎮痛に
はフィナジン(2.5mg/kg, SC)を用いた。右前脳実質内注射の座標はAP -0.5mm' DV -2.5mm
;正中線の右ML 1.0であった。穴は、先に露出した頭蓋骨に垂直に穿穴した。滅菌リン酸
緩衝生理食塩水(PBS) (0.5μL)または5μgのリポポリサッカライド(LPS, O11:B4, Calbio
chem, San Diego, CA)を0.5μLのPBSに入れたものを、1μLのHamiltonシリンジを用いて
脳実質に注射した。注射後、針を脳内にさらに3分間保持し、ゆっくりと取り出した。切
開部は歯科用セメントで塞いだ。放射性トレーサー研究はLPS投与後3日目に実施した。CP
PC溶液(0.3mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、ベースライン動物には賦形剤を投
与した。LPS動物および対照動物には3.7MBq (0.1 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=274GBq/μm
ol (7.4 Ci/μmol)]を静脈注射し、放射性トレーサー注射の45分後に頸部脱臼によって犠
牲にした。脳全体を取り出し、氷上で解剖した。小脳、同側脳半球および対側脳半球なら
びに血液サンプルの重さを測定し、それらの放射能含有量をγカウンターLKB/Wallac 128
3 CompuGamma CSで測定した。結果変数を%SUVとして算出した。
【0224】
実験2、
図1B.Charles River Laboratoriesの16匹の雄のCD‐1マウス(25~27g、6~7週
齢)を4つのコホート:1)sham投与マウス(n = 4);2)リポポリサッカライド(LPS‐頭蓋内)投
与マウス(n = 4)、ベースライン;3)リポポリサッカライド(LPS-頭蓋内)投与マウス(n = 4
)、遮断0.6mg/kg CPPC; 4)リポポリサッカライド(LP-頭蓋内)投与マウス(n = 4)、遮断1.
2 mg/kg CPPCに分けた。マウスをアバチン(250mg/kg, IP)で麻酔した。術中の鎮痛にはフ
ィナジン(2.5mg/kg, SC)を用いた。右前脳の実質内注射の座標はAP -0.5mm' DV -2.5mm;
正中線の右ML 1.0であった。穴は、先に露出した頭蓋骨に垂直に穿穴した。滅菌リン酸緩
衝生理食塩水(PBS)(0.5μL)または5μgのリポポリサッカライド(LPS, O11:B4, Calbioche
m, San Diego, CA)を0.5μLのPBSに入れたものを、1μLのHamiltonシリンジを用いて脳実
質に注射した。注射後、針を脳内にさらに3分間保持し、ゆっくりと取り出した。切開部
は歯科用セメントで塞いだ。放射性トレーサー研究はLPS投与後3日目に実施した。CPPC溶
液(0.3mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、ベースライン動物には賦形剤を投与し
た。LPS動物および対照動物には3.7MBq(0.1 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=366GBq/μmol(9.
9 Ci/μmol)]を静脈注射し、放射性トレーサー注射の45分後に頸部脱臼によって犠牲にし
た。脳全体を取り出し、氷上で解剖した。小脳、さらに前頭部と尾部の2つの象限に切り
分けられた同側脳半球、対側脳半球、および血液サンプルの重さを測定し、それらの放射
能含有量をγカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGamma CSで測定した。結果変数は%SUVと
して算出した。
【0225】
1.7.7.4対照マウスおよびLPS(腹腔内)投与マウスにおける[
11 C] CPPCの脳への取り込
み(
図2)
実験1、
図2A.Charles River Laboratoriesの雄のCD-1マウス15匹(25~27g、6~7週齢)
を3つのコホート:1)対照マウス(n = 5);2)リポポリサッカライド(LPS)- IP投与(n = 5)マ
ウス、ベースライン;および3)リポポリサッカライド(LPS)- IP投与(n = 5)マウス、CPPC
遮断、に分けた。滅菌生理食塩水(10mg/kg、0.2mL)中のLPS (O111:B4、Calbiochem、San
Diego、CA)溶液を腹腔内投与し、LPS投与後5日目に放射性トレーサー研究を行った。CPPC
液(1mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、ベースライン動物には賦形剤を投与した
。LPS動物および対照動物には3.7MBq (0.1 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=444GBq/μmol(12.
0 Ci/μmol)]を静脈注射し、放射性トレーサー注射の45分後に頸部脱臼によって犠牲にし
た。脳全体を取り出し、氷上で解剖した。小脳および脳の残りの部分の重さを測定し、そ
れらの放射能含有量をγカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGamma CSで測定した。結果変
数は%SUVとして算出した。
【0226】
実験2、
図2B.Charles River Laboratoriesからの雄のCD-1マウス15匹(25~27g、6~7
週齢)を3つのコホート:1)対照マウス(n = 5);2)リポポリサッカライド(LPS)- IP投与(n =
5)マウス、ベースライン;および3)リポポリサッカライド(LPS)- IP投与(n = 5)マウス、
CPPC遮断に分けた。滅菌生理食塩水(10mg/kg、0.2mL)中のLPS (O111:B4、Calbiochem、Sa
n Diego、CA)溶液を腹腔内投与し、LPS投与後3日目に放射性トレーサー研究を行った。CP
PC液(1mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、ベースライン動物には賦形剤を投与し
た。LPS動物および対照動物には3.7MBq(0.1 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=374GBq/μmol(10
.1 Ci/μmol)]を静脈注射し、放射性トレーサー注射の45分後に頸部脱臼によって犠牲に
した。脳全体を取り出し、氷上で解剖し、血液サンプル(0.2~0.5cc)を心臓から採取した
。全脳および血液サンプルの重さを測定し、それらの放射能含量をγカウンターLKB/Wall
ac 1283 CompuGamma CSで測定した。結果変数はSUVRとして算出した。
【0227】
実験3、
図2C.Charles River Laboratoriesからの雄のCD-1マウス15匹(25~27g、6~7
週齢)を3つのコホート:1)対照マウス(n = 3);2)リポポリサッカライド(LPS)- IP投与(n =
6)マウス、ベースライン;および3)リポポリサッカライド(LPS)- IP投与(n = 6)マウス、
化合物8遮断に分けた。滅菌生理食塩水(10mg/kg、0.2mL)中のLPS (O111:B4、Calbiochem
、San Diego、CA)溶液を腹腔内投与し、LPS投与後3日目に放射性トレーサー研究を行った
。化合物8液(2mg/kg)をIV[
11 C]CPPCの5分前にIP投与し、ベースライン動物には賦形剤を
投与した。LPS動物および対照動物に3.0MBq (0.08 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=148GBq/μ
mol (4.0 Ci/μmol)]を静脈注射し、放射性トレーサー注射の45分後に頸部脱臼によって
犠牲にした。全脳を取り出し、氷上で解剖し、血液サンプル(0.2~0.5cc)を心臓から採取
した。全脳および血液サンプルの重さを測定し、それらの放射能含量をγカウンターLKB/
Wallac 1283 CompuGamma CSで測定した。結果変数は、血液に対するSUVRとして算出した
。
【0228】
1.7.7.5 アルツハイマーマウスモデルおよび対照マウスにおける[
11C]CPPCの脳内取り
込み(
図3)
スウェーデン変異およびインディアナ変異を有するアミロイド前駆体蛋白質(APP)を過
剰発現させたアルツハイマー病関連アミロイドーシスのマウスモデルを使用した。トラン
スジェニックAPPは、CaMKIIプロモーターによって駆動されるtTaの過剰発現によって活性
化された、テトラサイクリントランスアクチベーター(tTa)感受性促進剤(5)を有していた
。このような導入遺伝子の組み合わせにより、トランスジェニックAPPの過剰発現は前脳
の主なニューロンでのみ観察された。いずれの導入遺伝子も発現しなかったマウスを対照
とした。アルツハイマーの雄のマウス(AD)とその性別を一致させた対照の同腹の子は、研
究開始時に月齢16か月だった。この年齢では、ADマウスは皮質と海馬を含む前脳に有意な
Aβアミロイドプラークの沈着がある(Melnikova T, et al. (2013))。6匹のADマウスと年
齢をマッチさせた6匹の対照マウスとを本研究に用いた。5.6MBq (0.15 mCi)[
11 C]CPPC [
比放射能=340GBq/μmol (9.2 Ci/μmol)]をこの動物に静脈注射し、放射性トレーサーの
注射から45分後に頸部脱臼で犠牲にした。脳全体を取り出し、氷上で速やかに解剖した。
小脳と残りの脳の重さを測定し、γカウンターLKB/Wallac 1283 CompuGamma CSで放射能
含有量を測定した。結果変数は%SUVとして算出した。
【0229】
1.7.8 マウスにおける[11 C]CPPC全身放射線量測定方法
[11 C]CPPCの放射線量測定を、15匹の雄のCD-1マウス(23~27g)を用いて、著者らによ
る公表手順(Stabin MGら(2005))に従って行った。[11 C]CPPCを0.2mlの生理食塩水に溶か
した溶液(7.4MBqまたは0.2 mCi)を外側尾静脈にボーラスとして注射し、放射性トレーサ
ー注射の10、30、45、60、および90分後にマウス群(n = 3)を安楽死させた。肺、心臓、
腎臓、肝臓、脾臓、腸、胃、脳雄素早く摘出して氷上に置いた。大腿骨1本および大腿骨
筋肉、骨髄ならびに血液サンプルも採取した。器官の重さを測定し、組織放射能を自動ガ
ンマカウンター(LKB Wallac 1282 CompuGamma CS Universal Gamma Counter)で測定した
。器官あたりの注入率(%ID/器官)を、初回投与量の標準的希釈サンプルと比較することに
よって算出した。全ての測定値を減衰に関して補正した。SAAM IIソフトウェア(Foster D
M (1998))を用いて%ID/器官の結果を適合させた。活動の時間積分値(Stabin MGおよびSie
gel JA (2003))を、成人男性モデルを使用して、OLINDA/EXMソフトウェア(Stabin MGら(2
005))に入力した。活性は小腸(約35%)で観察された。体内の残りの部分における崩壊数は
、11 Cの全崩壊に統合された投与活性の100%から他の体の器官における崩壊を差し引いた
ものに等しいと仮定した。
【0230】
1.7.8.1 結果
適合した代謝モデル、ソース器官における崩壊数、および器官線量を以下にまとめる:
適合した代謝モデルは以下のとおりである:
【0231】
ソース器官における崩壊数(MBq-hr/MBq投与)は以下のとおりである:
【0232】
【0233】
1.7.8.2 放射線量測定研究のまとめ
データはすべて2つの指数関数によく適合した。ほとんどの器官は、約0.002~0.006mSv
/MBq(0.007~0.011rem/mCi)を受けるようである。小腸はおよそ0.047mSv/MBq(0.17rem/mC
i)の最も高い線量を受けるようである。有効線量は約0.0048mSv/MBq(0.018rem/mCi)であ
る。
【0234】
1.7.9 実験的自己免疫性脳炎マウスにおけるPET/CTイメージング(
図4、
図13)
成体雌C57BL/6Jマウス、13週齢(Jackson Laboratories, Bar Harbor ME)にMOG35-55ペ
プチドを接種し、前述のように行動のスコアをつけた(Jones MV, et al. (2008)):簡単に
説明すると、8mg/mlの加熱殺菌した結核菌H37 RA (Difco)を含む不完全フロイントアジュ
バント(Pierce)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で希釈した2mg/mlのMOG35-55(Johns Hopk
ins Biosynthesis & Sequencing Facility): NH
2-MEVGWYRSPFSRVVHLYRNGK-COOHの溶液と1
:1で混合した。安定したエマルジョンを形成した後、得られた合計100μlの混合物を、尾
の付け根における2つの皮下注射部位(すなわち、マウス当たりM. tuberculosisを400μg
、MOG35-55を100μg)で分けた。免疫日(免疫後0日:0p.i.)およびその2日後に、PBSで希釈
した250ngの百日咳毒素(EMD/Calbiochem、USA)を静脈注射した。症候性MOG接種マウスと
未接種の健常なマウスを、初回接種の14日後にスキャンした。スコアリングは(Beeton C,
et al. (2007))に従って決定される。簡単に説明すると、マウスを0~5にスコア化した
。0のスコアは臨床的に観察される特徴を示さず、5のスコアは失禁を伴う完全な後肢麻痺
を示す。スコア3は時折つまずく程度の中等度の麻痺を示す。本研究では、0.5(尾の遠位
側の弛緩)、2.5(つまずきを伴う軽度/中等度の不全対麻痺)および4.5(完成な後肢麻痺)の
スコアだった。Sedecal SuperArgus PET/CTスキャナー(スペイン、マドリッド)を用いて
、各マウスに8.14MBq [220μCi、SA >370GBq/μmol (>10 Ci/μmol)]の静脈注射を行った
。解剖学的コレジストレーションのためのCTスキャンを、60 kVpで512切片にわたって行
った。PETおよびCTデータを、製造業者のソフトウェアを使用して再構築し、AMIDEソフト
ウェア(http://amide.sourceforge.net/)を使用して表示した。動的範囲を保存するため
に、ハーダー腺および唾液腺のPET信号を、閾値法(
図4)を用いて部分的にマスクし、
図13
にはマスクしていない画像を示す。関心領域を、3つの切片を通してPET可視病変上に描き
、示された領域で定量化した。
【0235】
1.7.10 マウスの血漿および脳内放射性代謝物の分析
Charles River Laboratoriesの6匹の雄のCD-1マウス(25~27g、6~7週齢)を使用した。
これらの動物に37MBq (1 mCi)[
11 C]CPPC [比放射能=673GBq/μmol (18.2 Ci/μmol)]を
静脈注射し、放射性トレーサー注射の10分後(3匹)および30分後(3匹)に頸部脱臼によって
犠牲にした。全脳を取り出し、氷上で解剖し、血液サンプル(0.5cc)を心臓から採取した
。マウスの血漿および脳内の[
11 C]CPPCの放射性代謝物を、ヒヒについて上記した一般的
なHPLC法を用いて分析した。HPLC分析の前に、マウス脳を、50%アセトニトリル:50%リン
酸緩衝液(Et3N、H
3PO
4、pH 7.2)の2mLの混合液中で均質化した。均質化したものを遠心分
離(1400g、5分間)し、上澄みを0.2マイクロンのフィルタでろ過し、ろ液をradio-HPLCで
、phenomenex Gemini C18, 10 μ, 4.6 x 250 mm、2 mL/minの定組成溶離、移動相として
、50%アセトニトリル- 50%トリエチルアミン水溶液、c = 0.06 M、pH=7.2を用いて分析し
た。本研究は、マウスの血漿中で、放射性トレーサー[
11C]CPPCがヒヒ血漿中と同じ2つの
放射性代謝物を形成することを示した(
図17)。放射性代謝物は血液脳関門をほとんど透過
せず、脳内での存在は低かった(表4)。
【0236】
【0237】
1.7.11 対照およびLPS投与CD1マウスの全脳の定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)および
ウェスタンブロット解析
雄のCD-1マウス6匹(25~27g、Charles River)にLPS (O111:B4、Calbiochem、San Diego
、CA、10mg/kg、0.2mL)を腹腔内投与し、LPS投与後4日目にマウスを安楽死させ、全脳を
取り出した。脳の半分を液体窒素中でスナップ凍結させ、ウェスタンブロット分析のため
に-80℃で保存した。脳の残りの半分を、4℃で1mLのRNAlater(登録商標)(Millipore Sigm
a, St. Luis, MO)中に直ちに保存した。24時間後、RNAlater(登録商標)溶液を試料から取
り出し、全RNA分離のため、脳を-80℃で凍結した。
【0238】
ウェスタンブロット:ウェスタンブロットのために、脳試料をT-PER組織タンパク質抽出
試薬(Thermo Fisher Scientific, Halethorpe, MD)で30秒、合計6回均一化し、12000rpm
で5分間遠心分離した。上澄みを回収し、10μgのタンパク質をSDS-PAGEによって分離し、
NC膜上に移した。以下の抗体をウェスタンブロット分析に使用した: α-mCSF1R Ab (Cell
Signaling Technology, Danver, MA)、αmGAPDH Ab (Santa Cruz Biotechnology, Inc.,
Dallas, TX)。ブロットはClarity Western ECL Substrate (Bio-Rad, Hercules, CA)お
よびGel Doc(登録商標)XR+システム (Bio-Rad)によって可視化した。バンド強度は、Im
age Lab(商標)ソフトウェア (Bio-Rad)によって測定および算出した。
【0239】
qRT-PCR:qRT-PCRのために、Quick-RNA(商標)Miniprep Kit(Zymo Research, Irvine, CA
)を使用して脳から全RNAを分離し、高容量cDNA逆転写キット(Thermo Fisher Scientific)
を使用して分離されたRNAからcDNAを合成した。以下のTaqman(登録商標)アッセイを用
いてqPCR反応を行った: Csf1r: Mm01266652_m1, Pgk1: Mm00435617_m1, Gapdh: Mm999999
15_g1)。内部対象としてPgkg1およびGapdhを用いて相対量を算出した。
【0240】
1.7.12 ヒヒの放射性代謝物の分析
ヒヒのPET研究を
図15および
図16に示す。
【0241】
放射性トレーサー投与の5、10、20、30、60、および90分後に採取した血液サンプルに
ついて、高速液体クロマトグラフィー(HLPC)を用いて血漿中の[11 C]CPPCの相対割合を測
定した。改良したカラムスイッチングHPLC法を使用した(Coughlin, NeuroImage 165, 201
8, page 120)。1260 infinityクォータナリポンプ、1260 infinity カラムコンパートメ
ントモジュール、1260 infinity UVおよびRaytest GABI Star放射検出部からなるHPLCシ
ステムを、OpenLab CDS EZChrom (A.01.04)ソフトウェアで操作した。2mLのRheodyneイン
ジェクターループに装填した0.4-1.5mLの血漿試料を、最初に、1%アセトニトリルおよび9
9%水移動相を使い、2mL/分で捕捉カラム(Phenomenex Strata-X 33μmポリマー逆相吸着剤
を充填)および両方の検出部に向けた。1分間のアイソクラティック溶出の後、アセトニト
リル65%、トリエチルアミン水溶液35%、c=0.06MおよびpH=7.2(リン酸で調整)からなる分
析移動層を適用して、捕捉カラムにトラップされた非極性化合物を分析カラム(Gemini C1
8(2)10μm 4.62×50mm)および検出部に2mL/分で向けた。HPLCシステムは、濃度1mg/mLのC
PPC5μLの入った血漿試料を分析する前に、非放射性および[11C]CPPCを使用して標準化し
た。全血漿時間活性曲線は、PerkinElmer Wizard 2480自動ガンマカウンターで0.3mLの血
漿試料を分析することによって得た。[11 C]CPPCの血漿遊離率(fp)は、遠心分離式の限外
濾過装置を用いて測定した。
【0242】
放射性代謝物の分析は、カラムスイッチングHPLCを用いて実施し、これにより、タンパ
ク質の沈殿および抽出に時間を費やすことなく、血漿をHPLCシステムに直接注入すること
が可能になる。先ず、試料は、親トレーサーおよびその非極性放射性代謝物を固相抽出す
るため、捕捉カラムに導かれる。血漿成分や親放射性トレーサーの極性放射代謝物の大部
分は、捕捉カラムに保持されず、検出部中に溶出される。次いで、分析移動体を適用して
、捕捉カラムに捕捉された化合物を分析カラムに溶出し、そこで化合物を分離し、さらに
検出部に向ける。このようにして、試料中に存在する全ての放射性化合物を検出すること
ができ、親トレーサーとその放射性代謝物の相対的な割合の正確な定量が可能になる。図
17Aに示すように、注入された[
11 C]CPPCの100%は、使用される捕捉カラム上に効果的に
捕捉され得、分析移動相でそれは7.35分で溶出する。異なる時間間隔で得られた血漿試料
の代表的なHPLCクロマトグラムを
図17Aに示し、非投与の対照およびLPSまたはLPS +遮断
剤を投与したヒヒにおける[
11 C]CPPCの時間依存の血漿相対割合を
図17Bに示す。LPSまた
はLPS+遮断剤の投与は、[
11C]CPPCの代謝パターンおよび速度に影響を与えなかった。親
トレーサーの脂溶性の低い放射性代謝物に関連する2つのピークが0.97分および4.82分の
溶出時間で検出された。[
11 C]CPPCPCPの相対割合は、放射性トレーサー注入後5、10、20
、30、60、および90分で、84.87±2.01、75.57±1.76、62.5±4.47、51.73±6.14、34.8
±1.31、および25.6±2.77だった。
【0243】
限外濾過装置を用いて測定した[11 C]CPPCの血漿遊離率は、LPSまたはLPS+遮断投与の
影響を受けず、5.48±0.98%であった。
【0244】
1.7.13 ヒヒPETイメージング法
2.4mmの軸方向分解能(FWHM)および2.4~2.8mmの面分解能を有するCPS/CTI高分解能研究
トモグラフ(HRRT)を用いてPET画像を取得した。動物を麻酔し、前述のように取り扱った(
Horti AG, et al. (2016))。90分のPETデータを、4つの15秒、4つの30秒、3つの1分、2つ
の2分、5つの4分、および12の5分フレームの30フレームにビンニングした:。画像は、放
射性崩壊、デッドタイム、減衰、散乱およびランダム補正の反復秩序化サブセット期待値
最大化(OS-EM)アルゴリズム(6反復および16サブセットによる)を用いて再構成した(Rahmi
m A, et al. (2005))。再構成された画像空間は、各1.22 mm3の立方体ボクセルからなり
、その大きさは31cm×31cm (横方向)および25cm (縦方向)にわたる。
【0245】
血液サンプルは、90分間のスキャン中、連続的に長期にわたる間隔で動脈カテーテルを
介して得た(最初の90秒間は可能な限り急速に、その後徐々に長い間隔で試料を得た)。サ
ンプルを1200×gで遠心分離し、血漿中の放射能を断面較正されたガンマカウンターで測
定した。選択した血漿試料(5、10、20、30、60、および90分)を高速液体クロマトグラフ
ィー(HPLC)で分析し、上述のように血漿中の放射性代謝物を調べた。
【0246】
1.7.14 ヒヒPETデータ解析
ソフトウェアPMOD (v3.7, PMOD Technologies Ltd, Zurich, Switzerland)を用いて、
画像解析および動力学的モデリングを行った。動的PET画像は、まずMRI画像と共登録した
。次いで、代表的なヒヒの13の脳構造を含む、局所的に開発された関心体積(VOI)テンプ
レートを、動物のMRI画像に転送した。VOIには前頭葉・側頭葉、視床、海馬、尾状体、被
殻、扁桃体、淡蒼球、島皮質、視床下部、小脳、脳梁、白質が含まれた。PETフレームにV
OIを適用することにより、各VOIの時間活性曲線(TAC)を得た。
【0247】
次に、TACおよび代謝補正された動脈血漿入力関数に基づいて、動力学モデリングを行
い、脳内の[
11 C]CMPFF結合を定量的に特徴付けた。脳への取り込みに関して、主要な評
価基準は、平衡状態での血液濃度に対する局所組織中の放射性トレーサーの濃度と定義さ
れる[
11 C]CPPCの局所脳分布容積(VT)である。局所的なVTは、定義されたVOIにおける受
容体密度に比例する。[
11 C]CPPCの特異的な取り込みのない脳領域は予想されていないの
で、別の一般的な評価指標である、すなわち、非遊離性受容体結合能(BPND)は、確実に得
られない可能性がある。各VOIについて、VTはコンパートメント・モデリングとローガン
グラフ法の両方を用いて算出した。Logan J, et al. (1990)。時間的整合性の分析も行っ
た。代表的な結果を
図18に示す。
【0248】
まとめると、[
11 C]CPPC PETデータの解析には、コンパートメント・モデリングとロー
ガンの両方が適しており(
図18のaおよびbに例を示す)、非常によく似た局所的VT結果を得
ることができた(
図18-c)。全ての脳領域は、60分以上のスキャン時間で安定したVT推定値
が得られた(
図18-d)。VTパラメトリック画像(
図5および
図13)を容易に得るようにするた
め、本明細書中の全てのVT値を提示するためにローガン方法を選択した。
【0249】
(実施例2)
アリルアミドの合成
一般に、合成経路は、2-フルオロ-4-クロロニトロベンゼン2と、ピペリジンまたは4-メ
チルピペリジンとをエタノール中でSNAr反応させて開始し、N-アルキル化化合物4a~bを
非常に高い収率で得ることができる。N-メチルピペラジンと4a-bとを140℃でニート反応
させると、化合物5a-bが得られる。一方、N‐Bocピペラジンは、DMSOを溶媒として無機塩
基K2 CO3の存在下で4a‐bと反応して化合物5c‐5dを生成する。ニトロ基をアニリンに還
元した後、続いて5-シアノフラン-2-カルボン酸または4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボン
酸を用いて標準的なアミド結合形成を行い、所望の生成物1a、1c、1eおよび7a~cを得た
。放射合成に関しては、塩化メチレン中TFAを用いたN‐Boc脱保護により、前駆体1b,1dお
よび1fを、7a‐cから得た。
【0250】
合成はまた、アニリノボロン酸エステル8(本明細書中で言及される「化合物8」とは区
別される)とN-Boc-保護ピペリジノン9のエノールトリフラートエステル誘導体との間のSu
zuki-Miyauraカップリング(MiyauraおよびSuzuki, 1995を参照のこと)を含んでいた。Wus
trow and Wise, 1991を参照。オレフィン10を水素化した後、得られたアニリン11をN-ブ
ロモスクシンイミド(NBS)で臭素化して12を得た。その後、1-シクロヘキセンボロン酸と
化合物12とのSuzuki-Miyauraカップリングにより、アミン化合物13を得た。トリメチルシ
リルエトキシメチル(SEM)保護イミダゾール‐2‐カルボン酸塩のカリウム塩を、報告され
た手順に従って調製した。Wall et al., 2008を参照のこと。化合物13を、DMF中のHATUお
よびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を使用して14にカップリングすると、アミ
ド15が良好な収率で得られる。Boc基およびSEM基の両方をトリフルオロ酢酸(TFA)で同時
に除去して中間体16を得、これを1gおよび17の調製に使用した。Boc除去により前駆体化
合物1hを得た。
【0251】
アリールアミド7a~dおよび8a~bの合成。
試薬および条件: (a)エタノール、0℃~rt、0.5時間、96%;(b)140℃、5a~bに対して12
時間、K2 CO3、DMSO、110℃、5c~dに対して12時間、80%~95%;(c)Zn、NH4 Cl、THF/MeOH
/H2 O、還流、1時間、90%;(d)1a、1cおよび7a~bに対して、HATU、DIPEA、DMF、rt、5-シ
アノフラン-2-カルボン酸、1e、7cに対して4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボン酸、12時間
、75~82%;(e)TFA、MC、rt、12時間、90%。
【0252】
アリールアミド1a~lの合成は以下のとおりである:
【化13】
【0253】
試薬および条件: (a)エタノール、0℃~rt、0.5時間、96%; (b)140℃、12時間:5a~b、
K2 CO3、DMSO、110℃、12時間:5c~d、80%~95%; (c) Zn、NH4 Cl、THF/MeOH/H2 O、還流
、1時間、90%; (d)カルボン酸、HATU、DIPEA、DMF、12時間、75~82%; (e) TFA、MC、rt
、12時間、90%;(f)フルオロエチルトシレート、Et3 N、ACN、90℃、12時間、60~70%:1k-
lおよび1,2-ジブロモエタン、Et3 N、ACN、90℃、12時間、1m、65%。
【0254】
アリールアミド1gおよび1hの合成は以下のとおりである:
【化14】
【0255】
試薬および条件: (a) Pd(PPh 3)4、LiCl、2 M Na2 CO3、ジオキサン、1000 °C、2時間
h。(b) H2、10% Pd/C、MeOH、20psi、1時間。(c) NBS、CH2 Cl2、室温、10時間。(d) Pd(
dppf)Cl2 .DCM、2 M Na2 CO3、1,4-Dioxane、100 °C、15時間。(e) HATU、DIPEA、DMF、
10時間。(f) TFA、CH2 Cl2、室温、20時間、g) HATU、DIPEA、DMF、ジメチルグリシン1g
およびN-(tert-ブトキシカルボニル)-N-メチルグリシン17、12時間。h) TFA、CH2 Cl2、
室温、20時間。
【0256】
1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)ピペリジン(4a):15mLのEtOH中の1.0g(10.0mmol)の4-ク
ロロ-2-フルオロニトロベンゼンの冷却(0 0 C)溶液に、1.7mL(30.0mmol)のピペリジンを5
分かけて滴下した。この溶液を0℃で10分間、次いで23 ℃で30分間撹拌した。混合物を水
(225mL)に注ぎ、EtOAc (2×30mL)で抽出した。合わせた抽出物を飽和NaHCOOB水溶液およ
びブライン(各30mL)で洗浄し、次いでNa2 SO4上で乾燥させ、蒸発させて粗化合物を得た
。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc = 9.5:0.5)で精製
し、1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)ピペリジンを黄色固体として得た(1.32g、収率96%)
。1H NMR(500MHz、CDCl3)δ 7.77(d, J = 5.0Hz,1H),7.13(s,1H),6.93(d, J = 10.0Hz,1H
),3.30‐3.27(m,2H),2.91‐2.86(m,2H),1.90‐1.86(m,1H),1.75‐1.73(m,2H),1.49‐1.42
(m,1H)。
【0257】
1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-メチルピペリジン(4b):15mLのEtOHに1.0g(10.0mmol
)の4-クロロ-2-フルオロニトロベンゼンの冷却(0 0 C)溶液を入れたものに、1.01mL (30.
0mmol)の4-メチルピペリジンを5分かけて滴下した。この溶液を0℃で10分間、次いで23
℃で30分間撹拌した。混合物を水(225mL)に注ぎ、EtOAc (2×30mL)で抽出した。合わせた
抽出物を、飽和NaHCO3水溶液およびブライン(各30mL)で洗浄し、次いでNa2 SO4上で乾燥
させ、蒸発させて、粗化合物を得た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ー(Hexane:EtOAc = 9.5:0.5)により精製し、黄色固体として1-(5-クロロ-2-ニトロフェニ
ル)-4-メチルピペリジン(1.4g、収率96%)を得た。1H NMR(500MHz, CDCl3)δ 7.77(d, J =
5.0Hz,1H),7.13(s,1H),6.93(d, J = 10.0Hz,1H),3.30‐3.27(m,2H),2.91‐2.86(m,2H),1
.90‐1.86(m,1H),1.75‐1.73(m,2H),1.49‐1.42(m,1H),1.02(d, J = 5.0Hz,3H)。
【0258】
1-メチル-4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン(5a):1-(5-クロロ-
2-ニトロフェニル)ピペリジン(1.0g、4.15mmol)と1-メチルピペラジン(1.38mL、12.46mmo
l)の混合物を、N2下、138℃で12時間攪拌しながら加熱した。室温に冷却した後、混合物
を水に注ぎ、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた抽出物を水およびブラインで洗
浄し、次いでNa2 SO4上で乾燥させ、蒸発させて粗化合物を得た。得られた残渣をシリカ
ゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : メタノール = 9:1)で精製し、1-メチル-4-(4-
ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジンを黄色固体として得た(1.2g、収率96
%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3) δ 7.62(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.80(s, 1H), 6.43(d, J =
10.0 Hz, 1H), 3.84(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.71 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.60(t, J = 5.0
Hz, 4H), 3.50(d, J = 10.0 Hz, 2H), 3.80(d, J = 5.0 Hz, 2H), 1.55-1.51(m, 3H)。
【0259】
1-メチル-4-(3-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-ニトロフェニル)ピペラジン(5b):1-(5
-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-メチルピペリジン(1.0g、3.92mmol)と1-メチルピペラジン
(1.30mL、11.77mmol)の混合物を、N2下、138℃で12時間攪拌しながら加熱した。それを室
温に冷却した後、混合物を水に注ぎ、酢酸エチル(2×100mL)で抽出した。合わせた抽出物
を水およびブラインで洗浄し、次いでNa2 SO4上で乾燥させ、蒸発させて粗化合物を得た
。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : メタノール = 9:1)で
精製し、1-メチル-4-(3-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-ニトロフェニル)ピペラジンを
黄色固体として得た(1.2g、収率96%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 7.62(d, J = 5.0 Hz,
1H), 6.80(s, 1H), 6.43(d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.84(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.71(t, J =
5.0 Hz, 2H), 3.60(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.50(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.80 (d, J = 5.
0 Hz, 2H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.03(d, J = 5.0 Hz, 3H)。
【0260】
tert-ブチル4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩
(5c):DMSO(10mL)中の1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)ピペリジン(1.0g、4.15mmol)とtert
-ブチルピペラジン-1-カルボン酸塩(1.55g、8.30mmol)の混合物に、K2 CO3(1.72g、12.45
mmol)を加えた。反応混合物を110℃で12時間撹拌し、次いでEtOAcとブラインで分配した
。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣
をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Hexane:EtOAc = 3:7)により精製し、tert-ブチ
ル4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩を白色固体
として得た(1.40g、収率86.4%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ 7.99(d, J = 10.0 Hz, 1H)
, 6.38(d, J = 10.0 Hz, 1H), 6.31(s, 1H), 3.58(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.34(t, J = 5.
0 Hz, 4H), 2.28(t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.78(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.70(d, J = 5.0 Hz
, 2H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.47(s, 9H)。
【0261】
tert-ブチル4-(3-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-カル
ボン酸塩(5d): DMSO (10mL)中の1-(5-クロロ-2-ニトロフェニル)-4-メチルピペリジン(1.
0g、3.92mmol)とtert-ブチルピペラジン-1-カルボン酸塩(1.46g、7.85mmol)の混合物に、
K2 CO3(1.62g、11.77mmol)を加えた。反応混合物を110℃で12時間撹拌し、次いでEtOAcと
ブラインで分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮
した。得られた残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc = 3:7)
によって浄化し、tert-ブチル4-(3-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-ニトロフェニル)ピ
ペラジン-1-カルボン酸塩を白色固体(1.42g、89.8%の収量)として得た。1H NMR(500 MHz,
CDCl3)δ 7.99 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 6.38(d, J = 10.0 Hz, 1H), 6.31(s, 1H), 3.58
(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.34(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.28(t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.78(d, J
= 10.0 Hz, 2H), 1.70(d, J = 5.0 Hz, 2H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.47(s, 9H), 1.00(d,
J = 5.0 Hz, 3H)。
【0262】
4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)アニリン(6a):THF/MeOH/H2 O(
10:5:3)(20mL)中の1-メチル-4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン(1
.2g、3.94mmol)とNH4 Cl (2.10g、39.4mmol)の混合物に、Znダスト(2.57g、39.4mmol)を9
0℃で加え、次いで混合物を1時間還流した。反応終了後、反応混合物をセライトで濾過し
、EtOAcとブラインで分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空
中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : MeOH =
9:1)で精製し、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)アニリンを褐色
固体として得た(0.98g、収率90.7%)。
【0263】
4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)アニリン(6b):THF/Me
OH/H2 O(10:5:3)(20mL)中の1-メチル-4-(3-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-ニトロフェ
ニル)ピペラジン(1.2g、3.76mmol)とNH4 Cl (2.01g、37.6mmol)の混合物に、Znダスト(2.
46g、37.6mmol)を90℃で加え、次いでこの混合物を1時間還流した。反応終了後、反応混
合物をセライトで濾過し、EtOAcとブラインで分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で
乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製し、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチ
ルピペリジン-1-イル)アニリンを褐色固体として得た(1.0g、収率92.0%)。
【0264】
tert-ブチル4-(4-アミノ-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩
(6c):THF/MeOH/H2 O(10:5:3)(20mL)中のtert-ブチル4-(4-ニトロ-3-(ピペリジン-1-イル)
フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(1.20g、3.07mmol)とNH4 Cl (1.64g、30.7mmol)の
混合物に、Znダスト(2.0g、30.7mmol)を90℃で加え、次いでこの混合物を1時間還流した
。反応終了後、反応混合物をセライトで濾過し、EtOAcとブラインで分配した。有機層を
分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた残留物を、シリ
カゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)によって浄化し、tert-ブ
チル4‐(4‐アミノ3‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩を茶
色固体(1.0g、収量90.3%)として得た。
【0265】
tert-ブチル4-(4-アミノ-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カル
ボン酸塩(6d):THF/MeOH/H2 O(10:5:3)(20mL)中のtert-ブチル4-(3-(4-メチルピペリジン-
1-イル)-4-ニトロフェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(1.2g、2.96mmol)とNH4 Cl(1.58g
、29.6mmol)の混合物に、Znダスト(1.93g、29.6mmol)を90℃で加え、次いでこの混合物を
1時間還流した。反応終了後、反応混合物をセライトで濾過し、EtOAcとブラインで分配し
た。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。得られた残
留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)によって浄
化し、tert-ブチル4‐(4‐アミノ-3‐(ピペリジン‐1‐イリル)フェニル)ピペラジン-1-
カルボン酸塩を茶色固形(1.0g、収率90.0%)として得た。
【0266】
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1a)(JHU11744): DMF(10mL)中の4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(
ピペリジン-1-イル)アニリン(0.5g、1.82mmol)、5-シアノフラン-2-カルボン酸(0.3g、2.
18mmol)、HATU (0.83g、2.18mmol)の混合物に、DIPEA (0.63mL、3.64 mmol)を加えた。反
応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインで分配した。有機層を分離し、無
水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製して、5-シアノ-N-(4-(4-メチルピ
ペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを黄色固体
として得た(0.6g、収率84.5%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 9.53 (s, 1H), 8.31(d, J =
8.7 Hz, 1H), 7.23(d, J = 16.6 Hz, 2H), 6.80(s, 1H), 6.72(d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.2
0(s, 4H), 2.85(s, 4H), 2.59(s, 4H), 2.36(s, 3H), 1.80(s, 4H), 1.65(s, 2H).
【0267】
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニ
ル)フラン-2-カルボキサミド(1c)(JHU11734): DMF (10mL)中の4-(4-メチルピペラジン-1-
イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)アニリン(0.5g、1.73mmol)、5-シアノフラン-2-カ
ルボン酸(0.28g、2.08mmol)、HATU (0.79g、2.08mmol)の混合物に、DIPEA(0.60mL、3.46
mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分配した。有
機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : メタノール = 9:1)で精製して、5-シアノ
-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2
-カルボキサミドを黄色固体として得た(0.62g、収率87.8%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3) δ
9.60(s, 1H), 8.30(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.21(d, J = 5.0
Hz, 1H), 6.79(s, 1H), 6.72(d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.19(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t,
J = 5.0 Hz, 2H), 2.73(t, J = 10.0 Hz, 2H), 2.59(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.36(s, 3H),
1.84(d, J = 10.0 Hz, 2H),1.52-1.47(m, 3H), 1.07(d, J = 5.0Hz, 3H)。
【0268】
4‐シアノ‐N‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐2‐(4‐メチルピペリジン‐1‐イル
)‐1‐フェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド(1e)(JHU11761): DMF(10 mL)中の4
‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐2‐(4‐メチルピペリジン‐1‐イル)アニリン(0.5g
、1.73 mmol)、5‐シアノフラン‐2‐カルボン酸(0.28g、2.08 mmol)、HATU (0.79g、2.0
8 mmol)の混合物にDIPEA(0.60mL、3.46 mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し
、次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し
、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :
メタノール = 9:1)により精製し、4-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(4-メ
チルピペリジン-1-イル)フェニル)-1H-ピロール-2-カルボキサミドを褐色固体として得た
(0.62g、収率87.8%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 10.58(s, 1H), 9.0(s, 1H), 8.25(d, J
= 5.0 Hz, 1H), 7.45(s, 1H), 6.82(d, J = 10.0 Hz, 2H), 6.72(d, J = 5.0 Hz, 1H),
3.19(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.73(t, J = 10.0 Hz, 2H), 2.60
(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.37(s, 3H), 1.84(d, J = 10.0 Hz, 3H), 1.52-1.47(m, 2H), 1.
08(d, J = 5.0 Hz, 3H)。
【0269】
4-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1g)(JHU11765): DMF(10 mL)中の4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(
ピペリジン-1-イル)アニリン(0.5g、1.82 mmol)、4-シアノフラン-2-カルボン酸(0.3g、2
.18 mmol)、HATU(0.83g、2.18 mmol)の混合物に、DIPEA (0.63mL、3.64 mmol)を加え、反
応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し、無
水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムク
ロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製して、4-シアノ-N-(4-(4-メチルピ
ペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを淡黄色固
体として得た(0.62g、収率86.1%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 9.41(s, 1H), 8.31(d, J
= 8.7 Hz, 1H), 8.03(s, 1H), 7.33(s, 1H), 6.78(s, 1H), 6.72(d, J = 8.8 Hz, 1H), 3
.19(s, 4H), 2.83(s, 4H), 2.59(s, 4H), 2.36(s, 3H), 1.76(s, 4H), 1.63(s, 2H)。
【0270】
5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン
-3-カルボキサミド(1h)(JHU11766): DMF (10 mL)中の4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-
(ピペリジン-1-イル)アニリン(0.5g、1.82 mmol)、5-シアノフラン-3-カルボン酸(0.3g、
2.18 mmol)、HATU(0.83g、2.18 mmol)の混合物に、DIPEA(0.63 mL、3.64 mmol)を加え、
反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し、
無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラム
クロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製することにより、5-シアノ-N-(4
-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-3-カルボキサミ
ドを黄色固体として得た(0.6g、収率84.5%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 8.92(s, 1H), 8
.28(d, J = 8.3 Hz, 1H), 8.11 (s, 1H), 7.37(s, 1H), 6.79(s, 1H), 6.73(d, J = 8.7
Hz, 1H), 3.18(s, 4H), 2.82(s, 4H), 2.59 (s, 4H), 2.36(s, 3H), 1.74(s, 4H), 1.65(
s, 2H)。
【0271】
6‐フルオロ‐N‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)‐2‐(ピペリジン‐1‐イル)フェニ
ル)ピコリンアミド(1i)(JHU11767):DMF(10 mL)中の4‐(4‐メチルピペラジン‐1‐イル)
‐2‐(ピペリジン‐1‐イル)アニリン(0.5g、1.82 mmol)、6‐フルオロピコリン酸(0.308
g、2.18 mmol)、HATU (0.83g、2.18 mmol)の混合物にDIPEA(0.63 mL、3.64 mmol)を加え
、反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し
、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製して、5-シアノ-N-(4-(4-メチ
ルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを黄色
固体として得た(0.52g、収率72.2%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3) δ 10.66(s, 1H), 8.45(d
, J = 8.8 Hz, 1H), 8.17(d, J = 7.0 Hz, 1H), 7.10(d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.78 (s, 1H
), 6.72(d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.21(s, 4H), 2.87(s, 4H), 2.62(s, 4H), 2.38(s, 3H),
1.87 (s, 4H), 1.64(s, 2H)。
【0272】
6-ブロモ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピコリ
ンアミド(1i)(JHU11769):DMF(10 mL)中の4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン
-1-イル)アニリン(0.5g、1.82 mmol)、6-ブロモピコリン酸(0.441g、2.18 mmol)、HATU(0
.83g、2.18 mmol)の混合物に、DIPEA(0.63 mL、3.64)を加え、反応混合物を室温で一晩撹
拌し、次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾
過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2
: メタノール = 9:1)で精製して、5-シアノ-N-(4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-2-(ピ
ペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを黄色固体として得た(0.53g、収率
63.8%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 10.89(s, 1H), 8.45(d, J = 8.7 Hz, 1H), 8.23(d,
J = 7.0 Hz, 1H), 7.74(t, J = 7.6 Hz, 1H), 7.62(d, J = 7.3 Hz, 1H), 6.79(s, 1H),
6.73(d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.20(s, 4H), 2.87(s, 4H), 2.60(s, 4H), 2.36(s, 3H), 1.9
1(s, 4H), 1.64(s, 2H)。
【0273】
tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(ピペリジン-1-イル)フェニ
ル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7a): DMF 10 mL)中のtert-ブチル4-(4-アミノ-3-(ピペリ
ジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(0.5g、1.38 mmol)、5-シアノフラン-
2-カルボン酸(0.23g、1.66 mmol)、HATU(0.63g、1.66 mmol)の混合物に、DIPEA (0.48 mL
、2.76 mmol)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分配し
た。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残
留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)によって浄化
し、テルトブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(ピピリジン-1-イリル)フ
ェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩を黄固体(0.60g、90.9%収量)として得た。1HNMR(500
MHz, CDCl3)δ 9.59(s, 1H), 8.31(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.2
1(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.79(s, 1H), 6.72(d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.58(t, J = 5.0 Hz,
4H), 3.10(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.72(t, J = 10.0 Hz, 2H),
1.83(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.49(s, 9H)。
【0274】
tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル
)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7b):DMF(10 mL)中のtert-ブチル4-(4-アミノ-3-(
4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(0.5g、1.33 mmol)、5
-シアノフラン-2-カルボン酸(0.22g、1.60 mmol)、HATU (0.61g、1.60 mmol)の混合物に
、DIPEA(0.46mL、2.66 mmol)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブ
ラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し
た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)
で精製し、tert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジ
ン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩を黄色固体として得た(0.58g、収率88.0
%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 9.59(s, 1H), 8.31(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25(d, J = 5
.0 Hz, 1H), 7.21(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.79(s, 1H), 6.72 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.58
(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.10(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.72(t, J
= 10.0 Hz, 2H), 1.83(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.49(s, 9H), 1.07(d
, J = 5.0Hz, 3H)。
【0275】
tert-ブチル4-(4-(4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-
1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(7c): DMF(10 mL)中のtert-ブチル4-(4-ア
ミノ-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(0.5g、1.33
mmol)、4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボン酸(0.23g、1.60 mmol)、HATU(0.61g、1.60 mmo
l)の混合物に、DIPEA(0.4 6 mL、2.6 6 mmol)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌し、
次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、
真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタ
ノール = 9:1)により精製し、tert-ブチル4-(4-(4-シアノ-1H-ピロール-2-カルボキサミ
ド)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩を黄色固体と
して得た(0.58g、収率88.0%)。1H NMR (500 MHz, CDCl3)δ 10.40(s, 1H), 8.99(s, 1H),
8.26(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.45(s, 1H), 6.83 (d, J = 10.0 Hz, 2H), 6.73(d, J = 5.
0 Hz, 1H), 3.58(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.10(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t, J = 5.0 Hz,
2H), 2.72(t, J = 10.0 Hz, 2H), 1.83(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.49
(s, 9H), 1.07(d, J = 5.0 Hz, 3H)。
【0276】
5-シアノ-N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カル
ボキサミド(1b)(JHU11745): 塩化メチレン(5mL)中のtert-ブチル4-(4-(5-シアノフラン-2
-カルボキサミド)-3-(ピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カルボン酸塩(0.5g、1
.04 mmol)に、トリフルオロ酢酸(0.39 mL、5.21 mmol)を0℃で滴下し、次いで、混合物を
室温で12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製して、5-シアノ-
N-(4-(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミドを
淡黄色固体として得た(0.3g、収率76.0%)。1 H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 9.54(s, 1H), 8.
31(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.21(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.79(s,
1H), 6.73(d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.18(s, 4H), 3.11 (s, 4H), 2.85(s, 4H), 2.36(s, 1
H), 1.80(s, 4H), 1.66(s, 2H)。
【0277】
5-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)フラン
-2-カルボキサミド(1d)(JHU11735): 塩化メチレン(5 mL)中のtert-ブチル4-(4-(5-シアノ
フラン-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)ピペラジン-1-カル
ボン酸塩(0.5g、1.01 mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.37 mL、5.05 mmol)を0℃で滴
下し、次いで、混合物を室温で12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を減圧下で濃縮
した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1
)により精製し、5-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フ
ェニル)フラン-2-カルボキサミドを淡黄色固体として得た(0.32g、収率80.4%)。1H NMR(5
00 MHz, CDCl3)δ 9.60 (s, 1H), 8.31(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.25(d, J = 5.0 Hz, 1H),
7.21(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.79(s, 1H), 6.72(d, J = 5.0 Hz, 1H), 3.15(t, J = 5.0
Hz, 4H), 3.08(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t, J = 5.0 Hz, 2H), 2.73(t, J = 10.0 Hz,
2H), 1.84(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.57(s, 1H), 1.55-1.51(m, 3H), 1.07(d, J = 5.0Hz,
3H)。
【0278】
4-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペラジン-1-イル)フェニル)-1H-ピ
ロール-2-カルボキサミド(1f)(JHU11762): 塩化メチレン(5 mL)中のtert-ブチル4-(4-(4-
シアノ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-3-(4-メチルピペリジン-1-イル)フェニル)ピペ
ラジン-1-カルボン酸塩(0.5g、1.02 mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.37 mL、5.05 m
mol)を0℃で滴下し、次いで、混合物を室温で12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物
を減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 :メ
タノール = 9:1)によって精製し、4-シアノ-N-(2-(4-メチルピペリジン-1-イル)-4-(ピペ
ラジン-1-イル)フェニル)-1H-ピロール-2-カルボキサミドを淡白色固形物として得た(0.3
0g、収率78.4%)。1H NMR (500 MHz, MeOD)δ 10.45(s, 1H), 8.98(s, 1H), 8.24(d, J =
5.0 Hz, 1H), 7.45(d, J = 5.0 Hz, 1H), 6.83(d, J = 10.0 Hz, 2H), 6.72(d, J = 5.0
Hz, 1H), 3.15(t, J = 5.0 Hz, 4H), 3.08(t, J = 5.0 Hz, 4H), 2.99(t, J = 5.0 Hz, 2
H), 2.73(t, J = 10.0 Hz, 2H), 1.84(d, J = 10.0 Hz, 2H), 1.57(s, 1H), 1.55-1.51(m
, 3H), 1.07(d, J = 5.0Hz, 3H)。
【0279】
5-Cyano-N-(4-(4-(2-フルオロエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェ
ニル)フラン-2-カルボキサミド(1k)(JHU11763): アセトニトリル(1ml)中の5-シアノN-(4-
(ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミド(1b)(0.
1g、0.26mmol)の溶液に、2-フルオロエチルトシレート(0.07g、0.31mmol)およびトリエチ
アミン(0.053g、0.52mmol)を加えた。反応混合物を90℃で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブ
ラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し
た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=0
.5:9.5)で精製し、淡黄色固体として1kを得た(0.06g、収率53.57%)。1H NMR(500 MHz, CD
Cl3)δ 9.53(s, 1H), 8.31(d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.25(s, 1H), 7.21(s, 1H), 6.79(s, 1
H), 6.72(d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.67(s, 1H), 4.58(s, 1H), 3.21(s, 4H), 2.89 - 2.68(
m, 10H), 1.80(s, 4H), 1.65(s, 2H)。
【0280】
4‐シアノ‐N‐(4‐(4‐(2‐フルオロエチル)ピペラジン‐1‐イル)‐2‐(4‐メチルピ
ペリジン‐1‐イル)‐1‐フェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド(1l)(JHU11764):
アセトニトリル(1mL)中の4‐シアノ‐N‐(2‐(4‐メチルピペリジン‐1‐イル)‐4‐(ピ
ペラジン‐1‐イル)フェニル)‐1H‐ピロール‐2‐カルボキサミド(1f)(0.1g,0.25mmol)
の溶液に2‐フルオロエチルトシレート(0.066g, 0.305 mmol)およびトリエトヤミン(0.05
1g, 0.50 mmol)を加えた。反応混合物を90℃で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分
配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られ
た残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=0.5:9.5)で
精製し、淡黄色固体として1lを得た(0.057g、収率51.35%)。1H NMR(500 MHz, CDCl3)δ 1
0.83(s, 1H), 9.01(s, 1H), 8.26(d, J = 8.4 Hz, 1H), 7.45(s, 1H), 6.83(d, J = 15.7
Hz, 2H), 6.74(d, J = 8.6 Hz, 1H), 4.67(s, 1H), 4.58(s, 1H), 3.21(s, 4H), 2.98(d
, J = 11.2 Hz, 2H), 2.84 - 2.67(m, 8H), 1.85(d, J = 12.8 Hz, 2H), 1.43-1.26(m, 3
H), 1.08(d, J = 6.4 Hz, 3H)。
【0281】
N-(4-(4-(2-ブロモエチル)ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)-5-シ
アノフラン-2-カルボキサミド(1m)(JHU11768):アセトニトリル(1mL)中の5-シアノ-N-(4-(
ピペラジン-1-イル)-2-(ピペリジン-1-イル)フェニル)フラン-2-カルボキサミド(1b) (0.
01g、0.026 mmol)の溶液に、1,2-ジブロモエタン(0.039g、2.10 mmol)およびトリエチル
アミン(0.0053g、0.052 mmol)を加え、反応混合物を90℃で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブ
ラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮し
た。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(メタノール:ジクロロメタン=0
.5:9.5)で精製し、淡黄色固体として1mを得た(0.01g、収率83.33%)。1H NMR(500 MHz, CD
Cl3)δ 9.53(s, 1H), 8.31(d, J = 8.7 Hz, 1H), 7.23(d, J = 17.5 Hz, 2H), 6.80(s, 1
H), 6.72(d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.20(s, 4H), 2.84(s, 4H), 2.69(s, 4H), 2.64(s, 2H),
1.80(s, 4H), 1.65(s, 2H).
【0282】
4-(4-アミノ-フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル
(10):トルエン(160 mL)およびエタノール(80 mL)中の4-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]-
ジオキサボロラン-2-イル)-フェニルアミン(4.0g、18 mmol)、4-トリフルオロメタンスル
ホニルオキシ3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(7.4g、22 mm
ol)、および2MNa2 CO3水溶液(80 mL)の溶液をアルゴン下、80℃で3時間加熱した。混合物
を1M NaOH水溶液で洗浄し、有機層を除去し、乾燥(Na2 SO4)させ、真空中で濃縮した。残
渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、20% EtOAc/ヘキサンで溶出し、標記化合物
3.2g(63%)を黄色の泡状物として得た。1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.18-7.23(m, 2H, J
= 8.4 Hz), 6.64-6.69(m, 2H, J = 8.6 Hz), 5.90(br s, 1H), 4.02-4.08(m, 2H), 3.68
(s, 2H), 3.62(t, 2H, J = 5.6 Hz), 2.48(br s, 2H), 1.49(s, 9H)。
【0283】
4-(4-アミノ-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(11):メタノー
ル中の4-(4-アミノ-フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエス
テル(0.350g、1.28 mmol)の溶液を、10% Pd/C上で20 psiで1時間水素化した。この溶液を
珪藻土で濾過し、ろ液を濃縮して標記化合物0.35g(100%)を黄色固体として得た。1H NMR(
CDCl3, 500 MHz): δ 6.96-7.01(d, 2H, J = 8.4 Hz), 6.62-6.67(d, 2H, J = 8.4 Hz),
4.21(br s, 2H), 3.58(br s, 2H), 2.77(t, 2H, J = 12.6 Hz), 2.53(tt, 1H, J = 12.1,
3.5 Hz), 1.77(d, 2H, J = 12.3 Hz), 1.52-1.59, m, 2H), 1.48(s, 9H)。
【0284】
4-(4-アミノ-3-ブロモ-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(12):
CH2 Cl2(3mL)中の4-(4-アミノ-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステ
ル(0.20g、0.71mmol)の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(NBS)(0.13g、0.71mmol)を加え
、反応物を室温で10時間撹拌した。反応物をEtOAc (10mL)で希釈し、飽和水性NaHCO3(2×
10mL)およびブライン(10mL)で洗浄した。有機層を濃縮して、標記化合物0.26g(100%)を黄
色泡状物として得た。1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 7.27(d, 1H, J = 2.1 Hz), 6.96(dd,
1H, J = 8.1, 1.9 Hz), 6.73(d, 1H, J = 8.1 Hz), 4.24(br s, 2H), 4.01(br s, 2H),
2.78(t, 2H, J = 12.2 Hz), 2.53(tt, 1H, J = 12.2, 3.3 Hz), 1.79(d, 2H, J = 12.6 H
z), 1.52-1.59(m, 2H), 1.50(s, 9H)。
【0285】
4-(4-アミノ-3-シクロヘキサ-1-エニル-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチ
ルエステル(13): 1,4-ジオキサン中の4-(4-アミノ-3-ブロモ-フェニル)-ピペリジン-1-カ
ルボン酸tert-ブチルエステル(0.13g、0.42mmol)、シクロヘキサ-1-エニルボロン酸4(0.0
8g、0.63mmol)、Pd(dppf)Cl2. DCM(0.034g、0.042)水性2M Na2 CO3(1.5mL)を100℃で20時
間加熱した。反応物をEtOAc(10mL)で希釈し、飽和水性NaHCO3(2×10mL)およびブライン(1
0mL)で洗浄し、有機層をNa2 SO4上で乾燥させ、次いで濃縮した。残渣をシリカゲルクロ
マトグラフィー、30% EtOAc/ヘキサンで精製して、0.12g(85%)の標記化合物を黄色油状物
として得た。1 H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 6.90(dd, 1H, J = 8.1, 2.1 Hz), 6.85(d,
1H, J = 1.9 Hz), 6.67(d, 1H, J = 8.1 Hz), 5.76(dq, 1H, J = 3.5, 1.8 Hz), 4.23(br
s, 2H), 3.71(s, 2H), 2.79(t, 2H, J = 12.7 Hz), 2.54(tt, 1H, J = 12.3, 3.4 Hz),
2.22-2.29(m, 2H), 2.16-2.22(m, 2H), 1.62- 1.85(m, 8H), 1.50(s, 9H)。
【0286】
(4-{[4-シアノ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-イミダゾール-2-カルボ
ニル]-アミノ}-3-シクロヘキサ-1-エニル-フェニル)-ピペリジン-1カルボン酸tert-ブチ
ルエステル(15):20mLのDMF中の4-シアノ-1-(2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1H-
イミダゾール-2-カルボン酸カリウム塩(3.34g、10.9 mmol)の溶液に、DIPEA(3.80 mL、21
.8 mmol)およびHATU (11.02g、12.0 mmol)を加え、反応物を25℃で15分間撹拌した。10 m
LのDMF中の4-(4-アミノ-3シクロヘキサ-1-エニル-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸te
rt-ブチルエステル(3.92g、11.0 mmol)の溶液を加え、反応物を25℃で12時間撹拌した。
反応物をEtOAc(60mL)で希釈し、飽和水性NaHCO3(2×60mL)およびブライン(100mL)で洗浄
し、有機層をNa2 SO4上で乾燥させ、濃縮した。残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグ
ラフィー(シリカゲル、2% EtOAc/CH2Cl2)で精製し、標記化合物5.5g(85%)を黄色油状物
として得た。1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 9.68(s, 1H), 8.25(d, 1H, J = 8.4 Hz), 7.7
8(s, 1H), 7.12(dd, 1H, J = 8.6, 2.1 Hz), 7.02(d, 1H, J = 2.1 Hz), 5.96(s, 2H), 5
.83(dt, 1H, J = 3.6, 1.9 Hz), 4.25(br s, 2H), 3.63-3.69(m, 2H), 2.80(t, 2H, J =
11.7 Hz), 2.63(tt, 1H, J = 12.2, 3.5 Hz), 2.27-2.33(m, 2H), 2.20-2.27(m, 2H), 1.
77-1.87(m, 6H), 1.56-1 .68(m, 2H), 1.49(s, 9H), 0.95 - 1.00(m, 2H), 0.01(s, 9H)
。
【0287】
4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸(2-シクロヘキサ-1-エニル-4-ピペリジン-4-
イル-フェニル)-アミドトリフルオロ酢酸塩(16): 10mLのCH2Cl2中の4-(4-{[4-シアノ-1-(
2-トリメチルシラニル-エトキシメチル)-1ヒミダゾール2-カルボニル]-アミノ}-3-シクロ
ヘキサ-1-エニル-フェニル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル7(1.50g、2.4
8 mmol)の溶液に、3mLのTFAを加え、25℃で20時間撹拌した。反応物を5mLのエタノールで
希釈し、濃縮した。残渣をメタノールおよびエチルエーテルから結晶化させ、標記化合物
0.85g(70%)を白色固体として得た。1H NMR(CD3OD, 500 MHz): δ 8.18(d, 1H, J = 8.4 H
z), 8.04(s, 1H), 7.22(dd, 1H, J = 8.6, 2.1 Hz), 7.12(d, 1H, J = 2.3 Hz), 5.76(m,
1H), 3.54(m, 2H), 3.16(m, 2H), 2.92(m, 1H), 2.30(m, 4H), 2.10(m, 2H), 1.87(m, 6
H)。
【0288】
4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸{2-シクロヘキサ-1-エニル-4-[1-(2-ジメチル
アミノ-アセチル)-ピペリジン-4-イル]-フェニル}-アミド(1g)(JHU11759): DMF(15mL)中
の4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸(2-シクロヘキサ-1-エニル-4-ピペリジン-4-
イル-フェニル)-アミドトリフルオロ酢酸塩(0.655g、1.34 mmol)の懸濁液に、HATU(0.61g
、1.60mmol)およびDIPEA(0.932 mL、5.35mmol)を加え、15分間撹拌し、次いで、ジメチル
グリシン(0.15g、1.47 mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcと
ブラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮
した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2:メタノール= 9:1)
で精製し、標記化合物を白色固体として得た。1H NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 9.49(s, 1H)
, 8.24(d, 1H, J = 8.3 Hz), 7.70(s, 1H), 7.12(dd, 1H, J = 8.4, 2.1 Hz), 7.01(d, 1
H, J = 2.1 Hz), 5.82(m, 1H), 4.75(d, 1H, J = 13.4 Hz), 4.13(d, 1H, J = 13.4 Hz),
3.57(d, 1H, J = 14.2 Hz), 3.18(d, 1H, J = 14.2 Hz), 3.12(td, 1H, J = 13.3, 2.4
Hz), 2.73(dddd, 1H, J = 11.9, 11.9, 3.8, 3.8 Hz), 2.65(ddd, 1H, J = 13.3, 13.3,
2.4 Hz), 2.40(s, 6H), 2.18-2.32(m, 4H), 1.60-1.98(m, 9H)。
【0289】
tert-ブチル((4-(6-(4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-2',3',4',5'-テト
ラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-3-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)(メチル)カルバミン酸
塩(17):DMF(15mL)中の4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボン酸(2-シクロヘキサ-1-エニ
ル-4-イル-フェニル)-アミドトリフルオロ酢酸塩(0.15g、0.30 mmol)の懸濁液に、HATU(0
.14g、0.36mmol)およびDIPEA(0.212 mL、1.22 mmol)を加え、15分間撹拌した。次いで、N
-(tert-ブトキシカルボニル)-N-メチルグリシン(0.063g、0.33 mmol)を加えた。反応混合
物を室温で一晩撹拌し、次いでEtOAcとブラインに分配した。有機層を分離し、無水MgSO4
上で乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー(CH2 Cl2 :メタノール = 9:1)で精製し、標記化合物を白色固体として得た。1 H
NMR(CDCl3, 500 MHz): δ 12.57(s, 1H), 9.53(s, 1H), 8.27(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.7
5(s, 1H), 7.15-7.04(m, 2H), 5.86(s, 1H), 4.80(s, 1H), 4.24-3.95(m, 3H), 3.18(d,
J = 10.0 Hz, 1H), 2.95(s, 3H), 2.74-2.61(m, 2H), 2.32-2.25(m, 4H), 1.85-1.73(m,
6H), 1.49(s, 9H)。
【0290】
4-シアノ-N-(5-(1-(メチルグリシル)ピペリジン-4-イル)-2',3',4',5'-テトラヒドロ-[
1,1'-ビフェニル]-2-イル)-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド(1h)(JHU11760):塩化メチ
レン(5mL)中のtert-ブチル((4-(6-(4-シアノ-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-2',3'
,4',5'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-3-イル)ピペリジン-1-イル)メチル)(メチル)カ
ルバミン酸塩(0.1g、0.18 mmol)の溶液に、トリフルオロ酢酸(0.056 mL、0.73 mmol)を0
℃で滴下して加え、混合物を室温で12時間攪拌した。反応終了後、反応混合物を減圧下で
濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CH2 Cl2 : メタノール
= 9:1)により精製し、4-シアノ-N-(5-(1-(メチルグリシル)ピペリジン-4-イル)-2',3',4'
,5'-テトラヒドロ-[1,1'-ビフェニル]-2-イル)-1H-イミダゾール-2-カルボキサミドを淡
黄色固体として得た(0.04g、収率46.0%)。1H NMR (CDCl3, 500 MHz): δ 9.51(s, 1H), 8
.14(d, J = 5.0 Hz, 1H), 7.65(s, 1H), 6.97-6.85(m, 2H), 5.76(s, 1H), 4.73(d, J =
10.0, 1H), 4.00-3.66(m, 3H), 3.14(d, J = 10.0 Hz, 1H), 2.71-2.67(m, 6H), 2.24(d,
J = 5.0, 3H), 2.17-2.15(m, 1H), 1.87-1.74(s, 8H)。
【0291】
(実施例3)
CSF1R誘導体1a、1c、1e、1g-1lの結合親和性
【0292】
【0293】
【表7】
*CSF1RヒトRTKキナーゼ、酵素ラジオメトリックアッセイ、ユーロフィン、市販アッ
セイ; ** CSF1R競合結合アッセイ、KinomeScan、DiscoverX、市販アッセイ
【0294】
(参考文献)
本明細書で挙げた全ての出版物、特許出願、特許、および他の参考文献は、本開示の主
題が関わる技術分野の当業者のレベルを示す。本明細書で挙げた全ての出版物、特許出願
、特許および他の参考文献(例えば、WEBサイト、データベースなど)は、あたかも個々の
出版物、特許出願、特許および他の参考文献が参照により具体的かつ個別に示されて援用
されたかのごとく参照により同程度まで本明細書に援用される。本明細書では多数の特許
出願、特許および他の参考文献に言及したが、そのような言及は、これらの文書が当該技
術分野における一般的技術常識の一部を構成することを認めるものではないと理解された
い。明細書と援用された参考文献のいずれかとの間に矛盾がある場合は、本明細書(援用
された引用文献に基づくその補正を含む)が優先される。別段の断りのない限り、標準的
な技術に許容される用語の意味が本明細書において使用される。本明細書では、種々の用
語の標準的な略号を使用する。
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【0295】
理解を明確にするために、上述の主題を、例示および実施例を用いてある程度詳述して
きたが、特定の変更および修正が、添付の特許請求の範囲の範囲内で実施され得ることを
当業者であれば理解するだろう。
1つ以上の神経炎症性または神経変性の疾患または病気に罹患しているかその疑いがある被検者においてマクロファージコロニー刺激因子1受容体(CSF1R)をイメージングする方法であって、有効量の請求項1から14のいずれか1項に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を被検者に投与する工程、およびPET画像を撮影する工程を含む方法。
神経炎症性または神経変性の疾患または病気が、アルツハイマー病(AD)、多発性硬化症(MS)、外傷性脳損傷、脳腫瘍、HIV関連認知障害、および1つ以上の脱髄性疾患からなる群より選択される、請求項15に記載の方法。