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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013353
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】遊星歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/18 20060101AFI20240125BHJP
   F16H 1/46 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
F16H55/18
F16H1/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115384
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 全弘
(72)【発明者】
【氏名】古川 武志
【テーマコード(参考)】
3J027
3J030
【Fターム(参考)】
3J027FA02
3J027FA36
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC23
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE08
3J027GE14
3J027GE21
3J030AB08
3J030BA01
3J030BB06
(57)【要約】
【課題】 小型サイズでもバックラッシを抑制可能な遊星歯車装置を提供する。
【解決手段】 テーパ状の太陽歯車と、太陽歯車に噛み合うテーパ状の遊星歯車と、遊星歯車に噛み合う内歯車と、遊星歯車を回転自在に支持するキャリアピンを含むキャリアを備える。そしてキャリアピンは可撓性材で形成したもので遊星歯車装置を構成する。この構成によって、予圧機構を別に設けることなく、キャリアピンによる予圧で太陽歯車の歯面と遊星歯車の歯面とが接触している状態を維持できる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーパ状の太陽歯車と、
前記太陽歯車に噛み合うテーパ状の遊星歯車と、
前記遊星歯車に噛み合う内歯車と、
前記遊星歯車を回転自在に支持するキャリアピンを含むキャリアを備え、
前記キャリアピンは可撓性材で形成されている遊星歯車装置。
【請求項2】
前記太陽歯車のテーパは、前記太陽歯車の軸方向の一方に向かって広がっており、
前記遊星歯車は、前記遊星歯車のテーパが、前記太陽歯車のテーパとは略反対方向に向かって広がるように配置されている請求項1記載の遊星歯車装置。
【請求項3】
前記太陽歯車、前記遊星歯車及び前記内歯車は、モジュールの値が0.04~0.3である請求項1記載の遊星歯車装置。
【請求項4】
前記太陽歯車と、前記遊星歯車と、前記内歯車と、前記キャリアピンを含む前記キャリアとで構成される第一遊星歯車機構と、
出力側にある前記第一遊星歯車機構に対して同軸上で入力側に配置される第二遊星歯車機構と、を備え、
前記第二遊星歯車機構は、第二太陽歯車と、第二遊星歯車と、第二内歯車と、第二キャリアピンを含む第二キャリアとで構成され、
1つの前記第二内歯車に対して、前記第二太陽歯車と前記第二遊星歯車と前記第二キャリアとは複数あって、
前記第二キャリアの数による複数段で構成されている請求項1~3いずれか1項記載の遊星歯車装置。
【請求項5】
前記第一遊星歯車機構と前記第二遊星歯車機構とは、連結部材によって接続されており、
前記連結部材によって、前記第一遊星歯車機構の前記太陽歯車の軸方向の位置を定めている請求項4記載の遊星歯車装置。
【請求項6】
前記第一遊星歯車機構と前記第二遊星歯車機構とは、前記連結部材によって同軸上に接続されており、
前記第二遊星歯車機構の前記複数段ある前記第二キャリアの内、出力側最終段にある前記第二キャリアに前記第一遊星歯車機構の前記太陽歯車が一体に固定されている請求項5記載の遊星歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車にバネなどによって予圧をかけることで、バックラッシの低減を図った構造の遊星歯車装置が知られている。例えば特許文献1には、互いにかみ合う太陽歯車と遊星歯車と内歯車とをテーパ形状にして、遊星歯車にバネで軸線方向に予圧をかけることでバックラッシを除去するようにした遊星歯車装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-39824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、外径φ20mm以下の小型の遊星歯車装置になると、特許文献1に開示されているような予圧機構を適用することは困難である。
このような小型サイズの遊星歯車装置に、バクラッシを低減するための予圧機構を組み込むためには工夫が必要となる。
そこで本発明は、小型サイズであってもバックラッシの低減を可能にした遊星歯車装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための一手段は、遊星歯車装置を、テーパ状の太陽歯車と、太陽歯車に噛み合うテーパ状の遊星歯車と、遊星歯車に噛み合う内歯車と、遊星歯車を回転自在に支持するキャリアピンを含むキャリアを備え、キャリアピンを可撓性材で形成した構成としたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小型サイズでもバックラッシを抑制可能な遊星歯車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明に係る遊星歯車装置の一例を示す縦断面図である。
図2図1の(A)-(A)線断面図である。
図3】同遊星歯車装置の構造を示す斜視図である。
図4】同遊星歯車装置において各歯車を噛み合わせる前の状態を説明する模式図である。
図5】同遊星歯車装置において各歯車が噛み合っているときの状態を説明する模式図である。
図6】本発明に係る遊星歯車装置の他例を示す縦断面図である。
図7図6の(B)-(B)線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態の特徴の一つは、遊星歯車装置を、テーパ状の太陽歯車と、太陽歯車に噛み合うテーパ状の遊星歯車と、遊星歯車に噛み合う内歯車と、遊星歯車を回転自在に支持するキャリアピンを含むキャリアを備え、キャリアピンを可撓性材で形成した構成としたことにある。
この構成によれば、予圧機構を別に設けることなく、キャリアピン自体が予圧機構の主要部位となるので太陽歯車の歯面と遊星歯車の歯面とが接触している状態を維持できる。したがって、バックラッシを低減することが困難であったほどの小型サイズの遊星歯車装置においてもバックラッシを抑制することができる。
【0009】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、太陽歯車のテーパは、軸方向の一方に向かって広がっているのに対して、遊星歯車のテーパが太陽歯車のテーパとは略反対方向に向かって広がるように、遊星歯車を配置したことにある。
この構成によれば、太陽歯車を軸方向の所定の位置に配置する際に、太陽歯車と遊星歯車の歯面を合わせながら太陽歯車を軸方向に動かすことができるので、その位置調整が容易になる。
【0010】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、より具体的な態様として、太陽歯車、遊星歯車及び内歯車のモジュールの値を0.04~0.3としたことにある。本実施の形態の遊星歯車装置によれば、バクラッシを低減するための予圧機構を組み込むことが困難であった外径φ20mm以下の小型サイズの遊星歯車装置にも適用することができる。この適用可能なサイズの範囲を各歯車のモジュールで示した場合に、概ね0.04~0.3の範囲が相当する。
この構成によれば、超小型サイズでありながら遊星歯車装置がバクラッシを抑制できるので、バクラッシを抑制とするユニット装置全体の小型化を図ることが可能となる。
【0011】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、遊星歯車装置を次のように構成したことにある。それはまず、上述の太陽歯車と遊星歯車と内歯車とキャリアピンを含むキャリアとで構成される第一遊星歯車機構と、出力側にある第一遊星歯車機構に対して同軸上で入力側に配置される第二遊星歯車機構とを備える。そして、第二遊星歯車機構は、第二太陽歯車と、第二遊星歯車と、第二内歯車と、第二キャリアピンを含む第二キャリアとで構成する。そして、1つの第二内歯車に対して、第二太陽歯車と第二遊星歯車と第二キャリアとは複数あって、第二キャリアの数による複数段で構成したものである。
この構成によれば、出力側の第一遊星歯車機構でバックラッシを抑制する一方、第二遊星歯車機構で入力回転を大きく減速させる2分割構造としているので、バックラッシの抑制のために生じるスラスト荷重が入力側に伝達されて機構効率の低下を招くことを防止し易くなる。
【0012】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、第一遊星歯車機構と第二遊星歯車機構を連結部材によって接続し、この連結部材によって第一遊星歯車機構の太陽歯車の軸方向の位置を定めるようにしたことにある。
この構成によれば、第一遊星歯車機構における太陽歯車と遊星歯車とのバックラッシが“ゼロ”となる位置で太陽歯車の軸方向の位置を固定し、その状態を維持することができる。
【0013】
他の特徴としては、上記の特徴に加え、第二遊星歯車機構の複数段ある第二キャリアの内、出力側最終段にある第二キャリアに第一遊星歯車機構の太陽歯車を一体に固定し、更に第一遊星歯車機構と第二遊星歯車機構とを連結部材によって同軸上に接続したことにある。
この構成によれば、部品点数の増加を抑えながら小型且つ細身でバックラッシを抑制できる遊星歯車装置とすることができる。
【0014】
以下、上記形態の特に好ましい実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の説明の中で、「軸方向」は、遊星歯車装置における出力軸、キャリア等が回転する際に回転運動の中心線となる方向(例えば、図1では上下方向)のことを示している。
【実施例0015】
まず、図1~3を用いて本実施例における遊星歯車装置1の基本構造を説明する。
図1~3は、本実施例における遊星歯車装置1の内部構造を示している。
図1は、遊星歯車装置1の縦断面図である。
図2は、図1 の(A)-(A)線断面図である。
図3は、遊星歯車装置1の斜視図であって、内部構造を説明するために部分的に断面にするとともに、複数ある部品の一部を省略して表した図である。
【0016】
遊星歯車装置1の外観は、ギアハウジング30、フランジ50、出力軸42aなどが表れている。そして、ギアハウジング30の内側に、太陽歯車10、遊星歯車20、内歯車31、キャリア40などによって構成される遊星歯車機構100を備えている。
【0017】
太陽歯車10は、遊星歯車装置1に対する入力装置3の回転軸3aに取り付けられている。また、太陽歯車10の歯部10aは、軸方向に向かって傾斜するテーパ状をしている。尚、入力装置3は、例えば電動モータ等が適用できる。
【0018】
遊星歯車20は、5個あって太陽歯車10を均等間隔で囲むように配置されている(図2参照)。遊星歯車20の歯部20aは、軸方向に向かって太陽歯車10とは逆向きに傾斜するテーパ状をしている。すなわち、遊星歯車20は、太陽歯車10のテーパによる広がりとは略反対方向に向かって広がる向きに配置されている。そして、各遊星歯車20と太陽歯車10とは噛み合っている。
【0019】
内歯車31は、円筒状のギアハウジング30の内側に一体に形成されている。内歯車31の内側では、5個の遊星歯車20が均等間隔で位置している(図2参照)。そして、各遊星歯車20と内歯車31とが噛み合っている。
【0020】
キャリア40は、キャリアピン41と出力キャリア42とを一体に備える。出力キャリア42は、出力軸42aと円板部42cが形成されている。円板部42cには複数の固定穴42hがある。この固定穴42hにキャリアピン41が挿通され固定されている。円板部42cを挟むかたちでキャリアピン41と出力軸部42aとが互いに軸方向で反対に突出している状態となっている。
【0021】
キャリアピン41は、遊星歯車20と同数ある。そして、各キャリアピン41は、スリーブ43を介して各遊星歯車20を回転自在に支持している。キャリアピン41における遊星歯車20の軸方向の位置は、スリーブ43のツバ部43aにより決まっている。また、キャリアピン41は、可撓性材で形成されている。ここで可撓性は弾性、超弾性を含み、その特性を持つ各種合金を適用することができる。尚、キャリアピン41を段付きの形状にするなどして、スリーブ43を省略することもできる。
【0022】
フランジ50は、ギアハウジング30と一体に固定されている。また、フランジ50は、ベアリング51とベアリング52を保持している。そして、ベアリング51とベアリング52とによって出力軸42aを回転可能に支持している。
【0023】
以上説明した構造によって、入力装置3より回転入力があると、回転が太陽歯車10を介して各遊星歯車20に伝達される。そして、遊星歯車20は太陽歯車10と内歯車31に噛み合いながら自転公転する。最終的に遊星歯車20の公転がキャリア40を介して出力軸42aの回転となる。
【0024】
次に、図1~3に加えて、図4図5を用いて本実施例における太陽歯車10と遊星歯車20と内歯車31の噛み合いの状態を詳細に説明する。
図4は、各歯車を噛み合わせる前の状態を説明する模式図である。
図5は、各歯車が噛み合っているときの状態を説明する模式図である。
【0025】
図4は、太陽歯車10が軸方向の所定の位置に配置されていない状態を示している。すなわち、遊星歯車装置1に対して入力装置3を接続していない状態にある。このとき、太陽歯車10と遊星歯車20が噛み合っていないのはもちろん、遊星歯車20と内歯車31も歯車として噛み合っていない。
【0026】
テーパ状の遊星歯車20のテーパ部の勾配角度をαとすると、同じくテーパ状の太陽歯車10のテーパ部の勾配角度は倍の2αとなっている。また、軸方向に沿って外側に広がる又は内側に狭まるテーパの向きは太陽歯車10と遊星歯車20とでは逆向きになっている。
一方、内歯車31はテーパ状にはなっていない。そのため、図4に示す互いに噛み合っていない状態における内歯車31の軸方向の歯と遊星歯車20のテーパ部の勾配との角度はαとなっている。
【0027】
図5は、太陽歯車10が軸方向の所定の位置に配置されている状態を示している。すなわち、遊星歯車装置1に対して入力装置3を接続している状態にある。このとき、太陽歯車10と遊星歯車20、遊星歯車20と内歯車31とが歯車として噛み合っている。
【0028】
太陽歯車10が軸方向の所定の位置に配置された状態では、遊星歯車20を支持しているキャリアピン41が可撓性材で形成されていることによって、遊星歯車20の勾配は内歯車31に向かって、角度αたおれた状態となる。したがって、図5に示すように、太陽歯車10が所定の位置にあって、各歯車が互いに噛み合っている状態における内歯車31の軸方向の歯と遊星歯車20のテーパ部の勾配との角度は0°となっている。
【0029】
また、この所定の位置で各歯車が互いに噛み合っている状態では、キャリアピン41が可撓性であることにより太陽歯車10と遊星歯車20に予圧をかけることができる。その結果として、太陽歯車10と遊星歯車20のバックラッシを“ゼロ”の状態に維持できる。
【0030】
可撓性のキャリアピン41の材質は、高許容トルク、低バックラッシの観点から、高強度、低ヤング率のものが適している。具体例としては、引張強度:1,000MPa以上、ヤング率:80GPa以下のTi-Ni(チタンニッケル)合金、ゴムメタル(登録商標)などが挙げられる。
【0031】
太陽歯車10の配置は、遊星歯車20と内歯車31の噛み合いピッチ円直径が一致する位置に調整されている。尚、遊星歯車20は自身が寸法公差を個別に有している為、複数の遊星歯車20と内歯車31の噛み合いピッチ円直径が全て一致する事は無い。依って、ここでの遊星歯車20と内歯車31の噛み合いピッチ円直径の一致は、最低1個以上の遊星歯車20と一致するという条件となる。
【0032】
遊星歯車機構100では、従来のようにバックラッシ抑制のために別の予圧機構を設ける必要が無い。部品点数を増やすことなく、キャリアピン41による予圧で太陽歯車10と遊星歯車20とのバックラッシを抑制できる。したがって、従来、バクラッシを低減するための予圧機構を組み込むことが出来なかったサイズの遊星歯車装置にも適用することができる。具体的には、従来は、遊星歯車装置の外径でφ20mm程度になると、バックラッシを抑制するのは困難であった。しかし、本実施例の遊星歯車装置1は、例えば外径φ2mmの超小型サイズであっても適用できる。尚、外径φ2mm~φ20mmの遊星歯車装置を、対応する各歯車のモジュールで示した場合に、概ね0.04~0.3の範囲が相当する。
【0033】
本実施例では、遊星歯車機構100のみをギアハウジング30の内側に構成した。しかし、ギアハウジング30の内側に他の機構を追加することも考えられる。例えば減速比をより大きくするために、ギアハウジング30の内側で、遊星歯車機構100に加えて、別の複数段で構成される遊星歯車減速機構(図示しない)を同軸上に組み込んでもよい。この場合、バックラッシを抑制する遊星歯車機構100は、出力軸側最終段に配置する。また、太陽歯車10は、別の遊星歯車減速機構の最終段キャリアと一体に取り付けられる。
【実施例0034】
次に、主に図6図7を用いて本発明における他の実施例である遊星歯車装置2について説明する。図6は、遊星歯車装置2の縦断面図である。図7は、図6 の(B)-(B)線断面図である。尚、上記実施例1の遊星歯車装置1と同一の構成部位については同一の符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0035】
遊星歯車装置2は、遊星歯車機構100と第二遊星歯車機構200を備えている。遊星歯車機構100と第二遊星歯車機構200とは、連結部材60によって同軸上に接続されている。
【0036】
遊星歯車機構100は、上記実施例1におけるものと同一の構成によるものである。キャリアピン41による予圧で太陽歯車10の歯面と遊星歯車20の歯面とが接触している状態を維持してバックラッシを抑制できる。
【0037】
第二遊星歯車機構200は、第二ギアハウジング70の内側に構成されている多段の遊星歯車減速機構である。本実施例では、3個の第二キャリア81,82,83を軸方向に連接した3段の構成としている。第二太陽歯車80S,81S,82S、複数の第二遊星歯車91,92,93、第二ギアハウジング70の内側で一体に形成されている第二内歯車71、第二キャリア81,82,83などによって構成される。
【0038】
3個の第二キャリアの内、入力側の初段にあたる第二キャリア81には第二太陽歯車81Sが一体に固定されている。中段にあたる第二キャリア82には第二太陽歯車82Sが一体に固定されている。第二遊星歯車機構200の中での出力側最終段にあたる第二キャリア83は、軸方向出力側に向かって回転軸部83aが突出している。回転軸部83aには、遊星歯車機構100の太陽歯車10が取り付けられている。
【0039】
各第二キャリア81,82,83には、各々の円板部81c,82c,83cに複数の固定穴81h,82h,83hが各々ある。この固定穴81h,82h,83hに第二キャリアピン81p,82p,83pが挿通され固定されている。第二キャリアピン81p,82p,83pは、軸方向入力側に向かって突出している状態となっている。
【0040】
第二キャリアピン81p,82p,83pの各々には、第二遊星歯車91,92,93が回転可能に支持されている。第二遊星歯車は、各第二キャリアに対して3個あって均等間隔で配置されている。例えば、図7に示すように、第二遊星歯車93は3個あって、第二キャリア83に3本ある第二キャリアピン83pの各々に回転可能に支持されて、第二太陽歯車82Sを均等間隔で囲むように配置されている。
【0041】
尚、第二太陽歯車80S,81S,82S、及び第二遊星歯車91,92,93はテーパの無い平歯車である。また、第二キャリアピンに81p,82p,83pに可撓性の材質は使用していない。すなわち、第二遊星歯車機構200は、積極的にバックラッシを抑制する機能を備えていない。
【0042】
第二ギアハウジング70の軸方向入力側には、エンドキャップ76が一体に固定されている。エンドキャップ76には、遊星歯車装置2に対する回転入力装置(図示しない)が取り付けられる。この回転入力装置の回転軸と一体に第二太陽歯車80Sが取り付けられることになる。
【0043】
連結部材60は略円筒形状をしている。連結部材60の円筒内周側でベアリング61とベアリング62を保持している。そして、ベアリング61とベアリング62とによって第二キャリア83の回転軸部83aを回転可能に支持している。
【0044】
回転軸部83aには、リング状のブッシュ84が一体に取り付けられる。第二キャリア83の円板部83cの一部とブッシュ84がベアリング61とベアリング62の内輪を軸方向で挟み込むことで、第二キャリア83を軸方向で保持している。
【0045】
連結部材60の円筒外周面とギアハウジング30の円筒内周面、第二ギアハウジング70の円筒内周面を嵌め合わせて、遊星歯車機構100と第二遊星歯車機構200を同軸上に接続している。
【0046】
連結部材60に対する第二ギアハウジング70の軸方向での接続位置は、連結部材60のツバ部60aによって定まっている。所定の位置で連結部材60と第二ギアハウジング70は互いに圧入固定されている。
【0047】
連結部材60に対するギアハウジング30の軸方向での接続位置は、太陽歯車10の配置により、太陽歯車10と遊星歯車20内歯車31とが確実に噛み合い、遊星歯車20と内歯車31の噛み合いピッチ円直径が一致する位置になるように合わせている。所定の位置になるように調整したギアハウジング30と連結部材60とはYAGレーザーなどによって溶着されている。
【0048】
以上説明した構造によって、第二遊星歯車機構200に対して回転入力があると、回転が第二太陽歯車80Sを介して各第二遊星歯車91に伝達される。そして、第二遊星歯車91は第二太陽歯車80Sと内歯車31に噛み合いながら自転公転する。そして、第二キャリア81と一体の第二太陽歯車81Sが回転することで、軸方向に連接された各キャリアと各歯車に入力回転を伝達する。このとき伝達される回転は第二遊星歯車機構200で大きく減速される。そして最終的に遊星歯車機構100の遊星歯車20の公転がキャリア40を介して出力軸42aの回転として出力される。
【0049】
本実施例の遊星歯車装置2は、遊星歯車機構100を出力軸側最終段に配置しているので、当然実施例1の遊星歯車装置1と同様にバックラッシを抑制することができる。また、連接した減速機としての遊星歯車機構200を備えることで、入力回転の減速比をより大きくして出力することができる。
【0050】
更に、本実施例の遊星歯車装置2は、次の作用効果を有する。
一般的にも、バックラッシを抑制するための予圧の影響などにより生じる軸方向のスラスト荷重が、下段の減速機部分や回転入力装置(電磁モータなど)に伝達される事は、機構効率の低下を招く。したがって、バックラッシ軽減機構(遊星歯車機構100)のみでスラスト荷重を完結させることが望ましい。このことに対して遊星歯車装置2では、連結部材60にあるベアリング61,62によって、太陽歯車10に掛かるスラスト荷重を負担することができる。
【0051】
また、連結部材60を介して遊星歯車機構100と第二遊星歯車機構200を接続することにより、ギアハウジング30の内部における太陽歯車10の軸方向の位置を合わせることを容易にしている。すなわち、バックラッシ軽減機構である遊星歯車機構100における遊星歯車20と内歯車31の噛み合いピッチ円直径が一致する位置に調整する上で有効な手段となっている。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施例に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1,2:遊星歯車装置
3:入力装置
3a:回転軸
10:太陽歯車
20:遊星歯車
30:ギアハウジング
31:内歯車
40:キャリア
41:キャリアピン
42:出力キャリア
42a:出力軸
42c:円板部
42h:固定穴
43:スリーブ
43a:ツバ部
50:フランジ
51,52:ベアリング
60:連結部材
60a:ツバ部
61,62:ベアリング
70:第二ギアハウジング
71:第二内歯車
76:エンドキャップ
80S,81S,82S:第二太陽歯車
81,82,83:第二キャリア
81c,82c,83c:円板部
81h,82h,83h:固定穴
81p,82p,83p:第二キャリアピン
83a:回転軸部
84:ブッシュ
91,92,93:第二遊星歯車
100:遊星歯車機構
200:第二遊星歯車機構


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7