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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013354
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】吊元側軸受け具及び折戸装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/26 20060101AFI20240125BHJP
   E06B 3/48 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
E05D15/26
E06B3/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115386
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000145895
【氏名又は名称】株式会社小林製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000169329
【氏名又は名称】アトムリビンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田村 佳大
(72)【発明者】
【氏名】半井 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 和江
【テーマコード(参考)】
2E015
2E034
【Fターム(参考)】
2E015AA01
2E015AA02
2E015BA01
2E015BA07
2E015BA09
2E015CA24
2E015CB02
2E015GA01
2E034JA01
2E034JB01
2E034KA00
(57)【要約】
【課題】吊元側回転軸の軸支位置を左右方向に調整する場合に、この調整作業の作業性を改善することができる吊元側軸受け具、及び折戸装置を提供する。
【解決手段】戸板の吊元側に突設された吊元側回転軸が挿入される吊元側軸受け具2において、ガイドレールに取り付けられる取付筐体5と、軸受孔6aを有するとともに取付筐体5に対してスライド可能に取り付けられる可動軸受け部6と、取付筐体5に軸支され、一端部に従動傘歯車73が設けられ、他端部に可動軸受け部6に螺合されるねじ部71が設けられた送りねじ部7と、一端部に回転操作される操作部81が設けられ、他端部に従動傘歯車73に歯合する駆動傘歯車82が設けられる操作軸部8とを備える。操作軸部8は、操作部81が戸板側に指向した状態で、軸心が上下方向に対して前後方向に傾斜することにより軸心の延長線が閉塞状態の戸板から離間するように、取付筐体5に対して軸支されている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸板の吊元側に突設された回転軸が挿入される吊元側軸受け具において、
戸枠の横枠に取り付けられる取付本体と、
前記回転軸が挿入される軸受孔を有するとともに、前記軸受孔を露出した状態で、前記取付本体に対して左右方向にスライド可能に取り付けられる可動軸受け部と、
前記取付本体に軸支され、一端部に従動傘歯車が設けられるとともに、前記可動軸受け部に螺合されるねじ部が他端部に設けられた送りねじ部と、
一端部に回転操作される操作部が設けられるとともに他端部に前記従動傘歯車に歯合する駆動傘歯車が設けられる操作軸部と、を備え、
前記操作軸部は、前記操作部が前記戸板側に指向した状態で、軸心が上下方向に対して前後方向に傾斜することにより前記軸心の延長線が閉塞状態の前記戸板から離間するように、前記取付本体に対して軸支されている、吊元側軸受け具。
【請求項2】
一端部に回転操作される第2操作部が設けられるとともに他端部に前記従動傘歯車に歯合する第2駆動傘歯車が設けられる第2操作軸部をさらに備え、
前記第2操作軸部は、前後方向について、前記操作軸部と逆方向に傾斜する、請求項1記載の吊元側軸受け具。
【請求項3】
前記第2操作軸部は、前記左右方向に直交する断面において、前記操作軸部に対して線対称位置に配置されている、請求項2記載の吊元側軸受け具。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の吊元側軸受け具と、
前記吊元側軸受け具が取り付けられる上部ガイドレールを含む前記横枠と、
幅方向にヒンジ連結された複数の前記戸板、及びこれらの戸板のうち吊元側戸板の上部に突設されるとともに前記吊元側軸受け具に軸支される上側回転軸を含む折戸とを備える、折戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物や家具などの構造物の開口部を開閉する折戸装置や開き戸装置等において、戸板の吊元側に設けられるピボットなどの回転軸を回動可能に支持する吊元側軸受け具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物などにおける開口部において、戸板の開閉操作に伴うデッドスペースを減少させるため、開放時に戸板が重ね合わされる折戸装置を設けることがある。このような折戸装置は、例えば特許文献1に記載されているように、吊元側及び戸先側に上下一対の回転軸がそれぞれ設けられている折戸と、前記吊元側回転軸を回転可能に支持するための上下一対の吊元側軸受け具と、前記各吊元側軸受け具が固定されるとともに前記各戸先側回転軸をスライド自在に案内するための上下一対のガイドレールとを備えたものが知られている。
【0003】
ところで、このような折戸装置において、施工時の各種誤差(例えば、各部材の寸法誤差や取付誤差など)や経年に基づき、戸枠の縦枠に対して、折戸、詳しくは吊元側の戸板が戸幅方向(左右方向)に傾くことにより、この縦枠と吊元側戸板とが干渉したり、或いは縦枠と吊元側戸板との隙間が上下方向に沿って不均一になって見栄えが低下したりするなどの不都合を生じることがある。このため、上下一対の吊元側軸受け具のうち少なくとも一方に、吊元側回転軸の軸支位置を左右方向に沿って調整するための位置調整機構が設けられることがある。
【0004】
具体的には、特許文献1記載の吊元側軸受け具のうち下側に配置された吊元側軸受け具は、雌ねじ孔を有する天板を含むとともに下側ガイドレールに取り付けられる取付本体と、前記雌ねじ孔に対し上下方向に重なる長円形孔、及び下側の吊元側回転軸が挿入される軸受孔を有するとともに前記天板に左右方向に沿ってスライド可能に外嵌される可動軸受け部と、上下方向に延びる軸心を有し前記長円形孔を通じて前記雌ねじ孔に螺合されることにより前記取付本体に対する前記可動軸受部の相対位置を固定する固定ボルトとを備える。この下側の吊元側軸受け具では、前記固定ボルトを緩めた上で、可動軸受け部の長円形孔の範囲内において、取付本体に対する可動軸受け部の相対位置を左右スライド調整し、最後に固定ボルトを再び締めることにより、吊元側回転軸における軸支位置(軸受孔の位置)の調整作業を行っている。
【0005】
例えば、折戸装置の施工時における前記調整作業を行う場合には、折戸を戸枠に取り付けてから、当該折戸を開放した上で、上方から吊元側軸受け具の前記固定ボルトにアクセスして当該固定ボルトを緩め、折戸を通じて前記可動軸受け部を操作することにより前記軸支位置を調整してから再びボルトを締めることにより調整する。或いは、折戸を閉めた状態では、戸枠の横枠と折戸との間の僅かな隙間に工具を差し込んで、固定ボルトを緩め、同様に、折戸を操作してから再び固定ボルトを締めることにより調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-89303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の吊元側軸受け具によって、前記調整作業を行う場合、折戸を操作することにより左右方向の位置調整を行うため、微調整が難しく、しかも場合によっては、位置決めしてから固定ボルトを締め直す間に、位置ずれしてしまうことがあり、作業性が悪いという問題がある。
【0008】
加えて、前記調整作業は、折戸を閉めた状態で、縦枠と折戸の隙間を確認しながら行うのが容易であるところ、従来の吊元側軸受け具では、僅かな隙間に、厚みの薄い工具を抜き差して固定ボルトの操作を行わなければならないため、さらに作業性が低下する。
【0009】
このような作業性の問題は、折戸だけでなく、開き戸などの揺動扉においても、前記吊元側軸受け具を用いる場合には、同様に起こり得る。
【0010】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、折戸装置や開き戸装置などの吊元側回転軸の軸支位置を左右方向に調整する場合に、この調整作業の作業性を改善することができる吊元側軸受け具、及び折戸装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、この発明に係る吊元側軸受け具は、戸板の吊元側に突設された回転軸が挿入される吊元側軸受け具において、戸枠の横枠に取り付けられる取付本体と、前記回転軸が挿入される軸受孔を有するとともに、前記軸受孔を露出した状態で、前記取付本体に対して左右方向にスライド可能に取り付けられる可動軸受け部と、前記取付本体に軸支され、一端部に従動傘歯車が設けられるとともに、前記可動軸受け部に螺合されるねじ部が他端部に設けられた送りねじ部と、一端部に回転操作される操作部が設けられるとともに他端部に前記従動傘歯車に歯合する駆動傘歯車が設けられる操作軸部と、を備え、前記操作軸部は、前記操作部が前記戸板側に指向した状態で、軸心が上下方向に対して前後方向に傾斜することにより前記軸心の延長線が閉塞状態の前記戸板から離間するように、前記取付本体に対して軸支されているものである。なお、「横枠」を含めた「戸枠」には、いわゆる上枠、縦枠や沓摺などの枠体そのものだけでなく、これらの枠体、或いは開口部を形成する壁、天井、または床面などに取り付けられた上下ガイドレールも含み、またこの開口部を形成する壁、天井、床面などの構造物そのものも含む概念である。また、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」は、厳密なものであっても良いが、実質的なものも含まれる概念である。
【0012】
この発明によれば、前記取付本体と前記可動軸受け部と前記送りねじ部と前記操作軸部とを備えるので、操作部を通じて操作軸部を回転操作することにより、送りねじ部を回転させ、この送りねじ部によって取付本体に対する可動軸受け部の相対位置を左右方向にスライド調整することができる。このため、この吊元側軸受け具では、戸板の操作を通じて位置調整する必要がなく、操作部の回転操作という簡単な操作によって、戸板の回転軸の位置、ひいては戸板の傾きを微調整することができる。また、操作部の回転が駆動及び従動傘歯車の歯合によって伝達されることから、操作軸部の軸心を、送りねじ部の軸心に対して交差する方向に配置することができる。しかも、この操作軸部は、前記操作部が前記戸板側に指向した状態で、軸心が上下方向に対して前後方向に傾斜することにより前記軸心の延長線が閉塞状態の前記戸板から離間するように、前記取付本体に対して軸支されているので、閉塞状態の戸板に干渉することなく、操作軸部の操作部に対して上下方向の斜めから操作することができる。これにより、この吊元側軸受け具では、戸板を閉塞した状態でも、戸枠と戸板の狭い隙間に工具を差し込む必要がなく、上下方向に対して前後斜めから操作部に容易にアクセスすることができるため、閉塞状態の縦枠と戸板または戸板と戸板との隙間を確認しながら、位置調整作業を容易に行うことができる。
【0013】
すなわち、本発明によれば、折戸装置や開き戸装置などにおいて、吊元側回転軸の左右方向の位置を微調整することができるとともに、操作軸部の操作部に容易にアクセスすることができるため、この位置調整における作業性を効果的に改善することができる。
【0014】
この発明において、操作軸部は単一であってもよいが、複数設けられているものであっても良い。すなわち、本発明において、一端部に回転操作される第2操作部が設けられるとともに他端部に前記従動傘歯車に歯合する第2駆動傘歯車が設けられる第2操作軸部をさらに備え、前記第2操作軸部は、前後方向について、前記操作軸部と逆方向に傾斜するのが好ましい。
【0015】
このように構成すれば、閉塞状態の戸板に対して前後いずれの側からも、操作軸部または第2操作軸部を通じて送りねじ部を回転させることができ、これにより位置調整の作業性をより向上させることができる。
【0016】
この場合、前記第2操作軸部は、前記左右方向に直交する断面において、前記操作軸部に対して線対称位置に配置されているのが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、第2操作軸部の傾斜角度も、操作軸部の傾斜角度と同一(略同一を含む)になり、閉塞状態における戸板の前後いずれの側からも、同様の作業により操作軸部または第2操作軸部を操作することができる。
【0018】
また、この発明に係る折戸装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の吊元側軸受け具と、前記吊元側軸受け具が取り付けられる上部ガイドレールを含む前記横枠と、幅方向にヒンジ連結された複数の前記戸板、及びこれらの戸板のうち吊元側戸板の上部に突設されるとともに前記吊元側軸受け具に軸支される上側回転軸を含む折戸とを備えるものである。
【0019】
この発明によれば、前記吊元側軸受け具における説明と同様に、前記位置調整作業の作業性を効果的に改善することができる。特に、本発明のように、この吊元側軸受け具を上部ガイドレールに取り付けた場合には、下側ガイドレールに取り付ける場合に比べて、見栄えを良くすることができ、また戸板の重量による影響を受け難いので、操作軸部の回転操作を比較的容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る吊元側軸受け具及び折戸装置によれば、吊元側回転軸の左右方向の位置を微調整することができるとともに、操作軸部の操作部に容易にアクセスすることができるから、この位置調整の作業性を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態の吊元側軸受け具が適用される折戸装置の概略を示す斜視図である。
図2】同折戸装置を一部省略した状態で示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態の吊元側軸受け具を示す斜視図である。
図4】同軸受け具を分解して示す斜視図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6図5のVI-VI線断面図である。
図7図5のVII-VII線断面図である。
図8図5のVIII-VIII線断面図である。
図9】一実施形態の取付筐体を分解した状態で示す底面図である。
図10】本発明の一実施形態の吊元側軸受け具の取付状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態の折戸装置1は、折戸10の吊元側を固定する吊元固定式の折戸装置1であって、折戸10の戸先側を上部ガイドレールに吊す上吊り式のものについて説明するが、折戸の戸先側を下側ガイドレールによって支持する下荷重式のものであっても良い。また、折戸装置の用途は、建物内の間仕切り用や収納用のドア等、建物の開口部に用いられるものであっても良いし、家具のドア等であっても良い。
【0023】
図1は本実施形態の吊元側軸受け具が適用される折戸装置の概略を示す斜視図であり、図2は同折戸装置を一部省略した状態で示す断面図である。なお、以下、各図における+X方向を右方向、+Y方向を前方向、+Z方向を上方向として説明するが、X,Y,Zの各方向は、閉塞状態の戸板のそれぞれ、幅方向、厚み方向、高さ方向を示すものである。
【0024】
この折戸装置1は、図1及び図2に示すように、吊元側及び戸先側に上下一対の回転軸11~14がそれぞれ設けられている折戸10と、吊元側回転軸11,12を回転可能に支持するための上下一対の吊元側軸受け具2,3と、各吊元側軸受け具2,3が固定されるとともに各戸先側回転軸13,14をスライド自在に案内するための上下一対のガイドレール15,16が含まれる横枠と、上下一対のガイドレール15,16の両端部の間に延びる左右一対の縦枠17とを備え、折戸10が開閉することにより構造物の開口部を開閉する。なお、下側の戸先側回転軸14及び下部ガイドレール16は適宜省略することができる。
【0025】
折戸10は、左右方向に並設された複数枚(図1では2枚)の戸板18と、これらの戸板18の突合せ縁部に沿って両戸板18に取り付けられた複数個のヒンジ19と、吊元側の戸板18の吊元側に上下に向かって突設された上下一対の吊元側回転軸11,12と、戸先側の戸板18の戸先側に上下に向かって突設された上下一対の戸先側回転軸13,14とを備える。この折戸10は、前記開口部を戸板18によって閉塞した状態から、戸先側回転軸13,14を中心に戸先側の戸板18を回動操作することにより、戸先側回転軸13,14が上下一対のガイドレール15,16に沿って吊元側回転軸11,12側に向かってスライドし、これに伴い、吊元側の戸板18が戸先側戸板18に対して折れ曲がるように、吊元側回転軸11,12を中心に回動し、これにより開口部が開放される。
【0026】
上側の吊元側回転軸11は、公知の上部ピボット軸であり、軸方向に沿って弾性収縮可能に構成されている。下側の吊元側回転軸12も、公知の下部ピボット軸であり、軸長が変わらないものであっても良いが、本実施形態では、軸心を中心に正逆回動させることにより、軸方向に沿って伸縮可能に構成され、戸板18の高さ方向の位置を調整することができるようになっている。戸先側回転軸13,14も、公知の戸先側回転軸を用いることができ、本実施形態では、軸本体13A、14Aと、軸本体13A,14Aを回転可能に支持するとともに、それぞれ上下一対のガイドレール15,16に沿って左右方向にスライドする上部ランナ13Bまたは下部スライダ14Bと、を含む。
【0027】
上下一対の吊元側軸受け具2,3のうち、上側の吊元側軸受け具2については、吊元側回転軸11(回転軸に対応)が挿入される。この上側の吊元側軸受け具2は、本発明の吊元側軸受け具の一例であり、後ほど詳細に説明する。下側の吊元側軸受け具3は、下側の吊元側回転軸12が挿入される。この下側の吊元側軸受け具3は、公知の吊元側軸受け具であり、本実施形態では、特許文献1に記載の下側の吊元側軸受け具のように、軸受孔(明示せず)を左右スライド調整可能なものが採用されている。
【0028】
上部ガイドレール15は、上枠15Aとともに横枠に含まれるものである。この上部ガイドレール15は、図2に示すように、上枠15Aの下面に左右方向に沿って取り付けられる。上部ガイドレール15は、下方に開口するC字状に形成され、戸先側回転軸13の上部ランナ13Bを左右スライド可能に支持する。具体的には、上部ガイドレール15は、図7を参照して、左右方向に延びる天壁部151と、この天壁部151の前後両端縁から下方に延びる前後両側壁部152と、これらの前後各側壁部152の下端から前後方向内側に延びる前後フランジ部153とを備え、前後フランジ部153の先端同士が離隔配置されることにより下方に開口した状態となっている。下部ガイドレール16は、開口部の周縁部における床面16Aとともに横枠に含まれるものである。この下部ガイドレール16は、上方に開口するC字状に形成され、戸先側回転軸14の下部スライダ14Bを左右スライド可能に係合する。下部ガイドレール16は、上面が前記床面と面一になるように埋設されている。
【0029】
次に、上側の吊元側軸受け具2について説明する。図3は上側の吊元側軸受け具2の下方視点の斜視図であり、図4は吊元側軸受け具2の分解斜視図である。
【0030】
この上側の吊元側軸受け具2は、上部ガイドレール15に取り付けられる取付筐体5(取付本体に対応)と、上側の吊元側回転軸11が挿入される軸受孔6aを有するとともに、この軸受孔6aを露出した状態で、取付筐体5の内部に左右方向にスライド可能に収納される可動軸受け部6と、取付筐体5に軸支され、可動軸受け部6を左右方向にスライドさせる送りねじ部7と、取付筐体5に軸支され、送りねじ部7に回転駆動力を伝達する前後一対の操作軸部8(操作軸部及び第2操作軸部に対応)とを備える。この吊元側軸受け具2は、操作軸部8を回転操作することにより送りねじ部7を回転させ、これにより可動軸受け部6を取付筐体5に対して左右方向にスライド移動させる。
【0031】
以下、取付筐体5~操作軸部8を具体的に説明する。図5図3のV-V線断面図であり、図6図8はそれぞれ図5のVI-VI線、VII-VII線、VIII-VIII断面図である。図9は、取付筐体5を分解した状態で示す底面図である。
【0032】
取付筐体5は、上部ガイドレール15に取り付けられるケースであり、本実施形態では上部ガイドレール15のエンドキャップとしての機能を有する。このため、この取付筐体5は、上部ガイドレール15の一端部(図2では左端部)に、一部が内側に嵌合された状態で、当該上部ガイドレール15に取り付けられている。また、本実施形態では、取付筐体5は、図4に明示するように、左右方向に延びる中心軸を含む縦断面で前後に半割された前後半割体5A、5B、及びこれらの半割体5A,5Bによって挟持される後述する左側外壁525を含んで構成されている。このように、取付筐体5が前後半割体5A,5Bを含んで構成されることにより、可動軸受け部6、送りねじ部7及び前後一対の操作軸部8を緊密状態に効率的に収納することができ、これにより取付筐体5をコンパクトに形成することができる。これらの前後半割体5A,5Bの各々は、両者を位置決めして組み合わせるために、互いの突合せ周縁部に、複数の位置決め突出部5C及びこれらの位置決め突出部5Cが嵌合される位置決め孔5Dのいずれか一方が形成されている点で異なるのみであり、この点を除いて前後対称構造を有する。この前後半割体5A,5Bは、位置決め突出部5C及び位置決め孔5Dが緊密状態に嵌合されることにより、左側外壁525を挟持した状態で接合される。以下、この取付筐体5を、前後半割体5A,5B及び左側外壁525を組み付けた状態で、具体的に説明する。
【0033】
取付筐体5は、図5に明示するように、左右方向の一端部に上部ガイドレール15内に嵌合される嵌合部51と、この嵌合部51に連続し上部ガイドレール15から露出する露出部52とを有する。取付筐体5は、この嵌合部51と露出部52との境界において、前記中心軸に直交する断面における露出部52の外形が嵌合部51の外形に対して拡大することにより段差部5Eを有し、この段差部5Eに上部ガイドレール15の先端面が当接して上部ガイドレール15に対して位置決めされる。また、取付筐体5は、内部に、可動軸受け部6を左右方向にスライド可能に収納するとともに、送りねじ部7及び前後一対の操作軸部8を回転可能に収納する。
【0034】
嵌合部51は、上下方向に偏平に形成されるとともに左右方向に沿って延びる基台部53と、基台部53の一端部(図3では左端部)の下面から下方に延びる前後一対の突出脚部54とを備える。この嵌合部51は、基台部53が上部ガイドレール15内に挿入されることにより、上部ガイドレール15内に嵌合する。
【0035】
基台部53は、偏平な角筒状に形成された中空部55と、この中空部55の他端開口部を閉塞するテーパ部56とを有する。
【0036】
中空部55は、図7に明示するように、前後方向幅について上部ガイドレール15の前後幅と略同等に形成され、上下及び前後側壁部55a~55dによって、内部に可動軸受け部6の後述する軸受け板部61が左右方向にスライド移動可能に配置されるスライド空間53aが形成されている。
【0037】
下側壁部55bにおける下面の前後幅方向中央部には、左右方向に延びるガイド溝57が上方に凹んだ状態で設けられている。このガイド溝57は、上側の吊元側回転軸11を調整孔58に案内するためのものである。本実施形態では、ガイド溝57は、上部ガイドレール15の前後フランジ部153間の隙間幅よりも大きく設定される。調整孔58は、可動軸受け部6の軸受孔6aを露出させるためのものであり、一方がガイド溝57に開口し、他方がスライド空間53aに連通する。調整孔58は、可動軸受け部6のスライド移動に伴って左右スライドする軸受孔6aを露出させるために、ガイド溝57の一端側に、左右方向に細長く形成されている。従って、調整孔58の左右長さ寸法は、軸受孔6aのスライド範囲に応じて設定されている。調整孔58の前後幅は、軸受孔6aの直径と同等ないしは大きく設定されている。
【0038】
本実施形態では、調整孔58は、図7及び図9に明示するように、前後幅が軸受孔6aの直径よりも僅かに大きく形成され、左右方向に細長い長円形孔として構成されている。また、調整孔58は、中空部55の下側壁部55bだけでなく、上側壁部55aも貫通して設けられている。このため、吊元側回転軸11の先端は、調整孔58及び軸受孔6aを通じて、上部ガイドレール15の天壁部151に当接する。
【0039】
なお、前後側壁部55c,55dの各外側面には、上下方向に延びる圧接リブ535が左右方向に複数本並設され、嵌合部51が前後幅方向において上部ガイドレール15に緊密状態に嵌合されるようになされている。
【0040】
次に、テーパ部56は、一端が中空部55に連設され、他端に向かうに従って上方に傾斜する上下傾斜ガイド面56aを有する。この上下傾斜ガイド面56aは、ガイド溝57に連続して設けられ、これにより上側の吊元側回転軸11をガイド溝57内に案内する。
【0041】
一方、一対の突出脚部54は、図3に明示するように、それぞれの上端がガイド溝57の奥底面における前後縁部であって、調整孔58の前後側縁部に連設されている。これらの突出脚部54は、図7に示すように、互いの間隔が下方に向かって拡大するように設定され、側面視において略ハの字状に形成されている。この一対の突出脚部54は、下端部外面に所定間隔で目盛りが付され、吊元側回転軸11の左右方向の位置を目視できるようになされている。また、この突出脚部54は、図8に示すように、左右方向について、一端が露出部52に連設され、左右方向に延びている。この突出脚部54の左右長さ寸法は、調整孔58の左右長さ寸法と略同等に形成されている。これにより、基台部53の調整孔58が形成された範囲部分に応じて吊元側回転軸11の位置を確認できるようになされている。また、これらの突出脚部54の左右方向における他端面は、それぞれ他端側に向かうにしたがって前後方向に外側に傾斜する前後傾斜面54aとして構成されている。
【0042】
次に、露出部52について説明する。露出部52は、図3図6に示すように、側面視ハット状の中空ブロック状に形成されている。この露出部52は、可動軸受け部6の左右方向一端部が収納されるとともに、送りねじ部7及び前後一対の操作軸部8がそれぞれ収納されている。
【0043】
具体的には、露出部52は、前後、上下、左右の各外壁521~526を有し、内部に中空空間52aが形成されている。また、露出部52は、一端部(図4では右端部)における前後の各下側角部に、中空空間52aに連通する操作軸孔52bがそれぞれ設けられている。なお、左側外壁525は、上記したように、前後半割体5A,5Bによって移動規制された状態で挟持されている。
【0044】
中空空間52aは、嵌合部51のスライド空間53aに連通して可動軸受け部6の軸受け板部61の一部がスライド移動可能に構成されている。また、中空空間52aは、前後側縁が前後各外壁521,522の内面にそれぞれ連設される第1~第3仕切壁531~533によって、第1~第4収納空間52c~52fに仕切られている。
【0045】
第1仕切壁531は、図5に示すように、上側外壁523の内面に対向した状態で配置され、右側外壁526の内面から中空空間52aの左右方向中央部まで延びている。この第1仕切壁531と上側外壁523の離間距離は、可動軸受け部6の軸受け板部61の厚みに応じて設定され、本実施形態ではこの厚みと略同等に設定されている。第2仕切壁532は、第1仕切壁531の左右方向の中間部における左寄り部分から下方に垂下し、下側外壁524の内面に連設されている。この第2仕切壁532は、中央部に送りねじ部7を回転可能に支持する第1ねじ用軸受孔532aを有する。この第1ねじ用軸受孔532aは、送りねじ部7の中心軸を中心とする円形に形成されている。第3仕切壁533は、第2仕切壁532に対して左右方向に対向した状態で配置され、下側外壁524の内面から第1仕切壁531の先端部まで延びている。この第3仕切壁533にも、第2仕切壁532と同様に、中央部に送りねじ部7を回転可能に支持する第2ねじ用軸受孔533aを有する。この第2ねじ用軸受孔533aは、送りねじ部7の中心軸を中心とする円形に形成され、第1ねじ用軸受孔532aに左右方向に対向して配置されている。この第3仕切壁533と左側外壁525との離間距離は、可動軸受け部6のスライド距離に応じて設定され、具体的にはこのスライド距離に可動軸受け部6の厚みを加えた寸法に設定されている。
【0046】
中空空間52aのうち、第3仕切壁533と左側外壁525との間が第1収納空間52cを構成する。第2収納空間52dは、この第1収納空間52cの上部から、第1仕切壁531の上方を通じて嵌合部51のスライド空間53aに連通している。第2収納空間52dは、図8に示すように、右端部が前後拡幅して形成され、スライド空間53aと同幅に形成されている。第2収納空間52dの拡幅右端部とスライド空間53aの範囲内で、可動軸受け部6の軸受け板部61が左右スライド移動する。第3収納空間52eは、第2及び第3仕切壁532,533の間の空間であり、第2ねじ用軸受孔533aを通じて第1収納空間52cに連通する。第4収納空間52fは、第2仕切壁532と右側外壁526との間の空間であり、第1ねじ用軸受孔532aを通じて、第3収納空間52eに連通する。なお、本実施形態では、第1仕切壁531に小孔531aが設けられ、この小孔531aを通じて、第2及び第3収納空間52d、52eが連通している。
【0047】
そして、第1及び第2収納空間52c、52dに、可動軸受け部6の一部が左右スライド可能に収納されている。第1、第3及び第4収納空間52c、52e、52fに、送りねじ部7が回転可能に収納されている。第4収納空間52fに、前後一対の操作軸部8がそれぞれ回転可能に収納されている。この各収納空間52c~52fの収納態様については後述する。
【0048】
一方、各操作軸孔52bは、操作軸部8の軸受孔として機能するものであり、露出部52の外方から第4収納空間52fにまで前後方向斜め上方に延びている。操作軸孔52bの内側開口の周縁部は、法線が上下方向に対して前後方向に傾斜する平面として構成され、操作軸部8の座面534としての役割を果たす。言い換えれば、この座面534の法線の傾斜方向によって、操作軸部8の軸心8aの傾斜方向が設定される。本実施形態では、この座面534の法線は、左右方向に垂直な平面内において、上下方向に対して前後方向に傾斜するように設定されている。具体的には、操作軸部8の軸心8aの傾斜角度とともに後述する。また、本実施形態では、前後の各操作軸孔52bは、左右方向に直交する縦断面において、上下方向に延びる露出部52の中心線に対して線対称位置に配置されている。従って、一方の座面534の法線は、他方の座面534の法線に対して、前後方向について逆方向に傾斜している。
【0049】
次に、可動軸受け部6について説明する。可動軸受け部6は、図4及び図5に示すように、正面視略L字状に形成されている。具体的には、この可動軸受け部6は、軸受孔6aが上下に貫通して形成された軸受け板部61と、軸受け板部61の左端に連設された連結部62と、連結部62の右端部において下方に垂直に延びる立設部63とを備え、本実施形態では所定の厚みの板状体を屈曲してこれらが一体に形成されている。
【0050】
軸受け板部61は、図8に示すように、左右方向に細長い矩形板状体であり、中央部に上下に貫通する軸受孔6aが形成されている。この軸受孔6aは、折戸10の吊元側回転軸11が挿入されるものであり、上側の吊元側回転軸11の直径よりも僅かに大きく設定されている。軸受け板部61の前後幅は、嵌合部51のスライド空間53aの前後幅よりも僅かに小さく形成されている。軸受け板部61の左右長さは、スライド空間53a及び第2収納空間52dの拡幅右端部を合わせた左右長さよりもスライド範囲の寸法分だけ短尺に形成されている。連結部62は、立設部63に入力された駆動力を軸受け板部61に伝達するためのものであり、本実施形態では軸受け板部61に対して前後方向に縮幅された板状体からなる。立設部63は、連結部62に連続する板状体であり、中央部に送りねじ部7が螺合される雌ねじ孔631が形成されている。これにより、送りねじ部7が正逆回転することにより、この雌ねじ孔631によって立設部63が左右方向にスライド移動し、これに伴い連結部62を通じて軸受け板部61も左右方向にスライド移動する。
【0051】
この可動軸受け部6は、軸受け板部61及び連結部62が嵌合部51のスライド空間53a及び露出部52の第2収納空間52dに前後の移動が規制された状態で左右スライド可能に収納されるとともに、立設部63が露出部52の第1収納空間52cに左右スライド可能に収納されている。
【0052】
一方、送りねじ部7は、図4に示すように、可動軸受け部6の雌ねじ孔631に螺合されるねじ部71と、ねじ部71の右端部に連設されたヘッド部72と、ヘッド部72の右端面に突設された従動傘歯車73とを備え、ステンレス鋼などの金属素材または樹脂素材などの硬質な素材から一体成形されている。ねじ部71は、外周縁部に雌ねじ孔631に螺合される雄ねじを有し、可動軸受け部6のスライド範囲長さよりも長尺に形成されている。本実施形態では、ねじ部71は、ねじ溝が全長に亘って形成されているが、ヘッド部72との間にねじ溝が形成されていない寸胴部が形成されているものであってもよい。ヘッド部72は、左端面が座面として平面として構成され、第2ねじ用軸受孔533aの外径よりも大きな外形を有する。従動傘歯車73は、操作軸部8の回転をねじ部71に伝達するためのものであり、ここでは普通直歯傘歯車が用いられているが、鈍角傘歯車や鋭角傘歯車、斜歯傘歯車、曲がり歯傘歯車など公知の傘歯車を利用することができる。この従動傘歯車73は、第1ねじ用軸受孔532aに挿入される円筒部731と、円筒部731の先端に設けられた歯車本体732とを有する。円筒部731は、外径がヘッド部72の外径よりも小さいとともに第2ねじ用軸受孔533aの外径と略同等に設定され、露出部52の第1ねじ用軸受孔532aに回転可能に嵌合されている。
【0053】
この送りねじ部7は、ねじ部71の右端部及び円筒部731がそれぞれ露出部52の第3仕切壁533及び第2仕切壁532に軸支された状態で露出部52内に収納されている。具体的には、ねじ部71は第1収納空間52c内に突出した状態で配置され、歯車本体732は第4収納空間52f内に突出した状態で配置されている。また、この状態では、ヘッド部72は、第3収納空間52eに回転可能に収納されている。
【0054】
次に、操作軸部8について説明する。操作軸部8は、先端部が拡径した全体視略円柱状体であり、図6に明示するように、軸心8aが上下方向に対して前後方向に傾斜する態様で、取付筐体5に軸支されている。具体的には、操作軸部8は、図4に示すように、露出部52の操作軸孔52bに挿入される円柱状の操作部81と、操作部81の先端に連設され操作部81の外径に対して拡径するとともに従動傘歯車73に歯合する駆動傘歯車82とを備え、ステンレス鋼などの金属素材または樹脂素材などの硬質な素材から一体成形されている。
【0055】
操作部81は、軸心8aを中心軸とする円柱状体であり、基端面に工具(本実施形態ではプラスドライバー)が差し込まれる工具挿入孔81aが刻設され、当該工具によって軸心8a回りに回転操作可能に構成されている。本実施形態では、操作軸部8が取付筐体5に軸支された状態で、操作部81の工具挿入孔81aが上部ガイドレール15の前後フランジ部153の高さ位置になるように、操作部81の長さが設定されている。このように操作部81の長さを短尺に形成することにより、操作部81の下方からのアクセスが容易となる。
【0056】
一方、駆動傘歯車82は、従動傘歯車73と同様に、公知の傘歯車を利用することができる。この駆動傘歯車82は、操作部81の外径に対して拡径し、この拡径による段差面821が軸心8aに対して直交する平面に形成されている。この段差面821は、露出部52の座面534に当接することにより、操作軸部8の軸心8aの傾斜角度を規定する。すなわち、各操作軸部8は、この段差面821が露出部52の座面534に当接することにより、操作部81が戸板18側に指向した状態で、軸心8aが下方に向かうにしたがって前後方向外側に傾斜する。なお、「操作部81が戸板18側に指向する」とは、単に上下方向について横枠側ではなく、戸板18側という意味である。
【0057】
各操作軸部8の軸心8aの垂線に対する傾斜角度θは、各座面534の法線の垂線に対する傾斜角度と一致している。操作軸部8の軸心8aの傾斜角θ度は、一般的な戸板18の厚み、及び吊元側回転軸11の戸板18に対する設置位置を考慮して、軸心8aの延長線が閉塞状態の戸板18から離間するように設定されている。また、各操作軸部8の軸心8aは、前後反対側に傾斜し、それぞれの傾斜角度θは、方向が異なるものの、本実施形態では絶対値で同一に設定されている。言い換えると、一方の操作軸部8は、吊元側軸受け具2における左右方向に直交する断面において、他方の操作軸部8に対してこの断面の中心線を基準に線対称位置に配置されている。この軸心8aの傾斜角度は、45°から75°の範囲内で設定するのが好ましい。軸心8aの傾斜角度が45°よりも小さい場合には、操作軸部8の軸心8aの延長線が戸板18と干渉するおそれがあり、75°よりも大きくなると操作軸部8への下方からのアクセスが難しくなるおそれがある。ただし、折戸装置の用途や各種寸法などに応じて、この範囲から逸脱するものであっても良い。本実施形態では、軸心8aの傾斜角度は、60°に設定されている。
【0058】
以上の構成を有する吊元側軸受け具2は、図4を参照して、例えば以下のように組み立てられる。
【0059】
まず、取付筐体5の前後半割体5A,5Bのそれぞれに各操作軸部8をセットする。具体的には、操作軸部8の操作部81を、前後半割体5A,5Bのそれぞれの内側から操作軸孔52bに挿入する。このとき、図6に示すように、操作軸部8の段差面821は露出部52の座面534に当接するとともに、駆動傘歯車82が第4収納空間52f内に収納される。
【0060】
この操作軸部8のセットと別個に、可動軸受け部6に送りねじ部7を組み付ける。具体的には、可動軸受け部6の雌ねじ孔631に送りねじ部7のねじ部71を螺入する。このとき、送りねじ部7のねじ部71のねじ込み量については特に限定するものではないが、ねじ部71の軸方向中間部辺りまでねじ込むのが良い。
【0061】
次に、組み合わせた可動軸受け部6及び送りねじ部7を、取付筐体5の前後半割体5A,5Bのいずれか一方にセットする。なお、前後半割体5A,5Bにおける取付筐体5の各部分は、厳密には前後いずれかの半分に対応するが、以下において、取付筐体5の各部分として説明する。
【0062】
具体的には、例えば取付筐体5の後側半割体5Bの第3収納空間52eに、送りねじ部7のヘッド部72を収納する。このとき、送りねじ部7において、ねじ部71は第2ねじ用軸受孔533aを通じて第1収納空間52cに配置され、従動傘歯車73は円筒部731が第1ねじ用軸受孔532aに配置されるとともに歯車本体732が第4収納空間52fに駆動傘歯車82に歯合した状態で収納される。一方、可動軸受け部6は、軸受け板部61が第2収納空間52d及びスライド空間53aに配置されるとともに連結部62が第2収納空間52dから第1収納空間52cに配置され、立設部63が第1収納空間52cに配置される。
【0063】
最後に、この取付筐体5の後側半割体5Bに前側半割体5Aを、左側外壁525を挟み込んだ状態で組み付ける。具体的には、後側半割体5Bの位置決め孔5Dに前側半割体5Aの位置決め突出部5Cを緊密状態に嵌合して両者を組み合わせる。これにより、送りねじ部7及び操作軸部8は、それぞれ従動傘歯車73と駆動傘歯車82とが歯合した状態で、取付筐体5に回転可能に支持される。特に、第4収納空間52fでは、従動傘歯車73と前後それぞれの操作軸部8の駆動傘歯車82との各歯合状態が解除されないように各操作軸部8が収納されている。
【0064】
このように組み立てられた吊元側軸受け具2を用いて、以下のように、折戸装置1を組み立てる。
【0065】
まず折戸10の吊元側の戸板18に、上下一対の吊元側回転軸11,12を取り付ける。本実施形態では、これらの回転軸11~14は、戸板18に対して、その厚み方向中央から後側に寄った位置に取り付けられている(図10参照)。続いて、上部ガイドレール15及び下部ガイドレール16に、戸先側回転軸13,14の上部ランナ13B及び下部スライダ14Bを支持させる。
【0066】
次に、吊元側軸受け具2を上部ガイドレール15に取り付ける。具体的には上部ガイドレール15の左端部に、この吊元側軸受け具2における取付筐体5の嵌合部51を、段差部5Eが上部ガイドレール15の左端面に当接するまで差し込む。これにより、上側の吊元側軸受け具2は、上部ガイドレール15に取り付けられる。一方、下側の吊元側軸受け具3を下部ガイドレール16に固定ねじなどで取り付ける。
【0067】
そして、上部ガイドレール15または下部ガイドレール16を、それぞれ上枠15Aの下面または床面16Aに取り付ける。上部ガイドレール15を上枠15Aに取り付ける場合には、取付筐体5の左端面が縦枠17に当接するように配置し、上側の吊元側軸受け具2の不測の脱落を防止するものとなされている。
【0068】
続いて、折戸10の各戸板18を互いに畳んだ状態で、折戸10を左右方向に傾け、下側の吊元側回転軸12を、まず下側の吊元側軸受け具3に軸支させ、折戸10を垂直に立てていきながら、吊元側回転軸11を可動軸受け部6の軸受孔6aに挿入させる。このとき、吊元側回転軸11は、上部ガイドレール15の天壁部151の内面に沿って軸線方向に弾性的に収縮し、取付筐体5の上下傾斜ガイド面56a及びガイド溝57によりまず調整孔58に案内され、さらに戸板18を垂直に立てることにより、可動軸受け部6の軸受孔6aに達して弾性回復し、これにより軸受孔6aに軸支される。
【0069】
最後に、戸先側回転軸13,14を戸先側の戸板18に取り付けることにより、折戸装置1が完成する。
【0070】
この状態では、図10に示すように、操作軸部8は、操作部81が戸板18側、具体的には斜め下方に指向した状態で、軸心8aが上下方向に対して前後方向に傾斜することにより、軸心8aの延長線が閉塞状態の戸板18から離間するように、取付筐体5に対して軸支されている。言い換えれば、操作軸部8の軸心8aの延長線は、閉塞状態の戸板18に干渉しないように設定されている。
【0071】
このように組み付けられた折戸装置1において、戸板18が左右方向に傾いて、縦枠17と戸板18との間の隙間が上下方向に不均一である場合がある。この場合には、吊元側軸受け具2等を調整することにより、この戸板18の傾きを調整することができる。なお、ここでは、上側の吊元側軸受け具2による戸板18の傾き調整のみを説明する。
【0072】
戸板18の左右方向の傾きを調整する場合には、折戸10を開放した状態で調整することができるものの、ここでは折戸10を閉塞した状態で調整する場合について説明する。このように折戸10を閉塞した状態で戸板18の左右方向の傾きを調整することにより、戸板18と縦枠17との間の隙間を容易に確認することができ、微調整などの作業を容易かつ正確に行うことができる。
【0073】
戸板18の左右方向の傾き調整を行う場合には、閉塞状態の折戸10の前側または後側から、前後一対の操作軸部8のいずれかの操作部81を操作する。この場合、前後一対の操作軸部8は、それぞれ、下端部に回転操作される操作部81が設けられるとともに上端部に従動傘歯車73に歯合する駆動傘歯車82が設けられ、左右方向に直交する断面の中心線に対して、互いに線対称位置に配置されているので、上記のように、閉塞状態の折戸10の前後いずれの側からも操作軸部8の操作部81を通じて送りねじ部7を正逆回転操作することができる。このため、この吊元側軸受け具2によれば、閉塞状態の折戸10の前後いずれの側からも戸板18の傾きを調整することができるため、前後いずれか一方の側からのみ戸板18の傾きを調整する場合に比べて、作業性において優れている。しかも、前後一対の操作軸部8は、左右方向に直交する断面の中心線に対して、互いに線対称位置に配置されているので、いずれの操作軸部8も上下方向に対する前後の傾斜角度が略等しいことから、折戸10の前後いずれの側からも、同様の作業姿勢や手順等で操作軸部8の操作部81を操作することができる。
【0074】
具体的には、操作軸部8の操作部81の工具挿入孔81aに、操作軸部8の軸方向から工具(本実施形態ではプラスドライバー)を差し込み、この工具を通じて操作部81を正逆回転操作することにより、操作軸部8を回転させる。この操作軸部8が回転することにより、この操作軸部8の駆動傘歯車82も回転し、従動傘歯車73を通じて取付筐体5に軸支された送りねじ部7が正逆回転する。この送りねじ部7が回転することにより、ねじ部71が雌ねじ孔631に螺合された可動軸受け部6が取付筐体5に対して左右方向にスライド移動し、これに伴い軸受孔6aが調整孔58を通じて露出した状態で左右スライドする。この軸受孔6aが左右スライドすることによって、この軸受孔6aに回転可能に支持される吊元側回転軸11も左右にスライドして位置調整がなされる。この吊元側回転軸11の位置調整に伴って、戸板18の左右方向の傾きが調整され、これにより戸板18と縦枠17との間の隙間を上下方向に均一に調整することができる。なお、この操作軸部8の操作部81の回転操作にあたって、戸板18を軽く支持することにより、回転操作の抵抗を低減することができ、容易に操作部81を操作することができる。
【0075】
すなわち、この折戸装置1及びこの折戸装置1に含まれる吊元側軸受け具2によれば、上記のような、取付筐体5と、可動軸受け部6と、送りねじ部7と、操作軸部8とを備えるので、操作部81を通じて操作軸部8を回転操作することにより、送りねじ部7を回転させ、この送りねじ部7によって取付筐体5に対する可動軸受け部6の相対位置を左右方向にスライド調整することができる。このため、この吊元側軸受け具2では、戸板18の操作を通じて吊元側回転軸11の位置調整する必要がなく、操作部81の回転操作という簡単な操作によって、戸板18の吊元側回転軸11の位置、ひいては戸板18の左右方向の傾きを微調整することができる。また、操作部81の回転が駆動及び従動傘歯車82,73の歯合によって伝達されることから、左右方向に沿って配置された送りねじ部7の軸心に対して、操作軸部8の軸心を斜め下方に向かって配置することができ、操作部81を下方から操作し易くすることができる。
【0076】
しかも、操作軸部8は、操作部81が戸板18側、すなわち下方に指向した状態で、軸心8aが下方に向かうにしたがって前後方向に傾斜することにより、軸心8aの延長線が閉塞状態の戸板18から離間するように、取付筐体5に軸支されているので、閉塞状態の戸板18に干渉することなく、操作軸部8の操作部81に対して斜め下方から工具を差し込んでこの工具により回転操作することができる。このため、この吊元側軸受け具2では、上記したように、戸板18を閉塞した状態でも、上枠15Aと戸板18の狭い隙間に工具を差し込む必要がなく、操作部81を容易に操作することができ、閉塞状態の戸板18と縦枠17との隙間を確認しながら、吊元側回転軸11の位置調整作業、ひいては戸板18の左右方向の傾き調整作業を容易に行うことができる。
【0077】
すなわち、本実施形態の折戸装置1及び吊元側軸受け具2によれば、吊元側回転軸11の左右方向の位置を微調整することができるとともに、操作軸部8の操作部81に容易にアクセスすることができるため、この位置調整における作業性を効果的に改善することができる。
【0078】
特に、本実施形態の折戸装置1によれば、吊元側軸受け具2を上部ガイドレール15に取り付けられているので、下部ガイドレールに取り付ける場合に比べて、見栄えを良くすることができ、また戸板18の重量による影響を受け難いので、操作軸部8の回転操作を比較的容易に行うことができる。
【0079】
なお、以上に説明した折戸装置1及び吊元側軸受け具2は、本発明の折戸装置及び吊元側軸受け具の一実施形態であり、その具体的構成等についてはその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、本実施形態の変形例について説明する。
【0080】
(1)上記実施形態では、吊元側軸受け具2が上側の横枠(上部ガイドレール15を含む)のみに配置される場合について説明したが、本発明の吊元側軸受け具は、下側の横枠(下部ガイドレールを含む)に配置されるものであっても良く、また上下両側の横枠にそれぞれ配置されるものであっても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、上部ガイドレール15が上枠15Aの下面に取り付けられたものについて説明したが、いわゆるハイドアなど天井の高さまで延びる戸板の場合には、上部ガイドレールが天井に埋設されるものであっても良い。
【0082】
(2)上記実施形態では、本発明の一例の吊元側軸受け具2を折戸装置1に適用した場合について説明したが、この吊元側軸受け具2を開き戸装置に適用するものであっても良い。この場合にも、折戸装置1と同様に、戸板の左右方向の傾きを微調整することができ、またこの調整作業の作業負担を軽減することができる。
【0083】
(3)上記実施形態では、取付本体について、内部に可動軸受け部6を収納する取付筐体5が採用されているが、取付本体は、可動軸受け部を収納するものだけでなく、可動軸受け部が露出された状態で左右方向スライド可能に取り付けられるものであっても良い。
【0084】
(4)上記実施形態では、可動軸受け部6の軸受孔6aが上下方向に貫通したものが用いられているが、軸受孔について有底孔であっても良い。
【0085】
(5)上記実施形態では、送りねじ部7の従動傘歯車73、及び操作軸部8の駆動傘歯車82について、普通直歯傘歯車が用いられ、鈍角傘歯車や鋭角傘歯車、斜歯傘歯車、曲がり歯傘歯車など各種傘歯車を用いることができる。例えば、上側の吊元側軸受け具2について、普通直歯傘歯車に代えて、鋭角傘歯車を用いることにより、操作軸部を上下方向に対して前後方向に傾斜させるだけでなく、左右方向にも傾斜させることができ、縦枠から離れた位置から操作軸部にアクセスすることができ、作業性をさらに改善することができる。
【0086】
(6)上記実施形態では、操作軸部8は前後一対設けられているが、いずれか一方のみであっても良い。ただし、操作軸部8を前後一対設けることにより、上記のように閉塞状態の戸板18の前後いずれの側からも、各操作軸部8を回転操作して送りねじ部7を回転させることができるため、一方のみ設けられている場合に比べて作業性をより改善することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 :折戸装置
10 :折戸
11 :吊元側回転軸(上側)
15A :上枠
18 :戸板
2 :吊元側軸受け具
5 :取付筐体
58 :調整孔
6 :可動軸受け部
6a :軸受孔
7 :送りねじ部
71 :ねじ部
73 :従動傘歯車
8 :操作軸部
8a :軸心
81 :操作部
82 :駆動傘歯車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10