(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133542
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】炭化炉
(51)【国際特許分類】
C10B 49/06 20060101AFI20240925BHJP
C10B 53/02 20060101ALI20240925BHJP
C10B 53/00 20060101ALI20240925BHJP
C10B 53/07 20060101ALI20240925BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20240925BHJP
B09B 3/45 20220101ALI20240925BHJP
B09B 3/70 20220101ALI20240925BHJP
B09B 101/85 20220101ALN20240925BHJP
B09B 101/70 20220101ALN20240925BHJP
【FI】
C10B49/06 ZAB
C10B53/02
C10B53/00 A
C10B53/07
B09B3/40
B09B3/45
B09B3/70
C10B49/06
B09B101:85
B09B101:70
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105502
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2021551247の分割
【原出願日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2019183273
(32)【優先日】2019-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】592068783
【氏名又は名称】株式会社ストリートデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】坂本 佳次郎
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炭化速度を制御可能で効率的な縦型炭化炉を提供する。
【解決手段】有機物を投入することにより投入された有機物から炭化物を生成する炭化炉20であって、内部に堆積した有機物の上部に酸素を供給して、前記有機物の一部を燃焼させて前記炭化炉の温度を高温に維持する有機物燃焼領域A1と、前記有機物燃焼領域の下方に設けられて、前記有機物を炭化する炭化領域A2と、高温の水蒸気を、前記有機物燃焼領域の外周を通過させて及び/又は水蒸気供給管により前記有機物燃焼領域の上部から前記有機物燃焼領域まで通過させて、前記有機物燃焼領域の熱エネルギーによりさらに加熱して有機物の高温炭素化促進効果を奏する温度以上の高温の過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気を前記有機物燃焼領域の前記有機物に供給する水蒸気供給部と、を備えることを特徴とする炭化炉である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を投入することにより炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉で生成した炭化物とガス化剤を投入する円筒形状の反応炉と該反応炉を加熱する加熱部とを有しており投入した前記炭化物をガス化するガス化炉とを備えた有機物のガス化システムであって、
前記炭化炉は、
堆積した有機物の上部で、該有機物の一部を燃焼させて前記炭化炉の温度を高温に維持する有機物燃焼領域と、
前記有機物燃料領域の下方に設けられて、前記有機物を炭素化する炭化領域と、
前記有機物燃焼領域において、前記有機物に高温炭素化促進効果を奏する温度以上の高温の過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
を備え、
前記ガス化炉は、円筒形状の前記反応炉の内部を長手方向に貫通する管状の前記加熱部を備えており、該管状の加熱部の内部に、前記炭化炉から排出される高温の排ガスを通過させることにより前記反応炉を加熱する、
ことを特徴とする有機物のガス化システム。
【請求項2】
前記炭化炉は、
該炭化炉の外枠体の一部を構成する前記有機物燃焼領域の外側を囲む少なくとも1つの貫通穴を有する第1枠体部と、該第1枠体部の外周を少し隙間を開けて取り囲む第1の外周壁とにより、前記第1枠体部の外周と接する加熱空間を形成し、該加熱空間に空気を供給して、前記貫通穴から前記有機物燃焼領域に燃焼用空気を供給する第1の空気供給機構を備えており、
前記第1枠体部は、耐熱性及び熱伝導性を有する材料により形成されており、前記加熱空間に投入された燃焼用空気を加熱して前記貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に高温の燃焼用空気として供給し、
前記水蒸気供給部は、水蒸気を前記第1の空気供給機構の前記加熱空間に投入してさらに加熱し、該加熱した高温の過熱水蒸気を前記燃焼用空気とともに前記貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に投入することにより前記高温の過熱水蒸気を前記有機物に供給することを特徴とする請求項1に記載の有機物のガス化システム。
【請求項3】
前記水蒸気供給部は、前記加熱空間内に配置された熱伝導性の良い管状体を備え、供給された水蒸気が該管状体の内部を通過する際に加熱されて、前記加熱空間内に投入されることを特徴とする請求項2に記載の有機物のガス化システム。
【請求項4】
前記炭化炉は、さらに、前記有機物燃焼領域より上部に設けられ、前記有機物燃焼領域において発生した可燃性のガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、該排ガス燃焼領域に燃焼用の空気を供給する第2の空気供給機構と、前記排ガス燃焼領域において前記可燃性ガスを燃焼させた後の高温の排ガスを排出する排ガス排出部とを備えており、
前記ガス化炉は、前記管状の加熱部の内部を、前記炭化炉の前記排ガス排出部から排出される高温の排ガスを通過させることにより前記反応炉を加熱する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の有機物のガス化システム。
【請求項5】
前記排ガス燃焼領域の温度が所定の第1の温度よりも低いときには、前記第2の空気供給機構により前記燃焼用空気の供給を増やし、前記排ガス燃焼領域の温度が所定の第2の温度よりも高いときには、前記第2の空気供給機構による前記燃焼用空気の供給を減少させるよう供給空気量を制御することを特徴とする請求項4に記載の有機物のガス化システム。
【請求項6】
前記炭化炉は、さらに、
前記有機物燃焼領域の上部に設けられて、前記有機物燃焼領域において発生した可燃性のガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、
該排ガス燃焼領域に燃焼用の空気を供給する第2の空気供給機構と、
前記排ガス燃焼領域において前記可燃性ガスを燃焼させた後の高温の排ガスを排出する排ガス排出部と、
前記排ガス燃焼領域の上部に設けられて水蒸気を生成する蒸気室と、該蒸気室の水蒸気を前記排ガス燃焼領域を経由して前記有機物燃焼領域まで加熱しながら移送する水蒸気供給管とを有する前記水蒸気供給部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の有機物のガス化システム。
【請求項7】
800℃以上の前記高温の過熱水蒸気を前記有機物に供給して反応させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の有機物のガス化システム。
【請求項8】
前記ガス化炉の前記加熱部は、該加熱部の外壁及び/または内壁の表面に前記反応部との接触面積を増加させる複数の凹凸を備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の有機物のガス化システム。
【請求項9】
有機物を投入することにより炭素化した炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉で生成した炭化物とガス化剤を投入する円筒形状の反応炉と該反応炉を加熱する加熱部とを有しており投入した前記炭化物をガス化するガス化炉とを備えた有機物のガス化システムに使用する前記炭化炉であって、
堆積した有機物の上部で、該前記有機物の一部を燃焼させて前記炭化炉の温度を高温に維持する有機物燃焼領域と、
前記有機物燃料領域の下方に設けられて、前記有機物を炭素化する炭化領域と、
前記有機物燃焼領域において、前記有機物に高温炭素化促進効果を奏する温度以上の高温の過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
を備えることを特徴とする炭化炉。
【請求項10】
炭化炉の外枠体の一部を構成する前記有機物燃焼領域の外側を囲む少なくとも1つの貫通穴を有する第1枠体部と、該第1枠体部の外周を少し隙間を開けて取り囲む第1の外周壁とにより、前記第1枠体部の外周と接する加熱空間を形成し、該加熱空間に空気を供給して、前記貫通穴から前記有機物燃焼領域に燃焼用空気を供給する第1の空気供給機構を備えており、
前記第1枠体部は、耐熱性及び熱伝導性を有する材料により形成されており、前記加熱空間に投入された燃焼用空気を加熱して前記貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に高温の燃焼用空気として供給し、
前記水蒸気供給部は、水蒸気を前記第1の空気供給機構の前記加熱空間に投入してさらに加熱し、該加熱した高温の過熱水蒸気を前記貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に投入することにより前記高温の過熱水蒸気を前記有機物に供給することを特徴とする請求項9に記載の炭化炉。
【請求項11】
前記水蒸気供給部は、前記加熱空間内に配置された熱伝導性の良い管状体を備え、供給された水蒸気が該管状体の内部を通過する際に加熱されて、前記加熱空間内に投入されることを特徴とする請求項10に記載の炭化炉。
【請求項12】
さらに、前記有機物燃焼領域より上部に設けられ、前記有機物燃焼領域において発生した可燃性のガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、該排ガス燃焼領域に燃焼用の空気を供給する第2の空気供給機構と、前記排ガス燃焼領域において前記可燃性ガスを燃焼させた後の高温の排ガスを排出する排ガス排出部とを備えており、前記ガス化炉の前記加熱部に前記高温の排ガスを供給することを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の炭化炉。
【請求項13】
前記排ガス燃焼領域の温度が所定の第1の温度よりも低いときには、前記第2の空気供給機構により前記燃焼用空気の供給を増やし、前記排ガス燃焼領域の温度が所定の第2の温度よりも高いときには、前記第2の空気供給機構による前記燃焼用空気の供給を減少させるよう供給空気量を制御することを特徴とする請求項12に記載の炭化炉。
【請求項14】
前記有機物燃焼領域の上部に設けられて、前記有機物燃焼領域において発生した可燃性のガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、
該排ガス燃焼領域に燃焼用の空気を供給する第2の空気供給機構と、
前記排ガス燃焼領域において前記可燃性ガスを燃焼させた後の高温の排ガスを排出する排ガス排出部と、
前記排ガス燃焼領域の上部に設けられて水蒸気を生成する蒸気室と、該蒸気室の水蒸気を、前記排ガス燃焼領域を経由して前記有機物燃焼領域まで加熱しながら移送する水蒸気供給管とを有する前記水蒸気供給部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の炭化炉。
【請求項15】
800℃以上の前記高温の過熱水蒸気を前記有機物に供給して反応させることを特徴とする請求項9から14のいずれか1項に記載の炭化炉。
【請求項16】
投入した有機物の一部を有機物燃焼領域で燃焼させて炉内の温度を高温に維持することにより投入した有機物により炭素化した炭化物を生成するとともに発生した 可燃性ガスを燃焼させて高温の排ガスを排出する炭化炉と、前記炭化炉で生成した炭化物とガス化剤を投入することにより投入した前記炭化物をガス化するガス化炉とを備えた有機物のガス化システムに使用する前記ガス化炉であって、
前記炭化物及び前記ガス化剤を投入する投入口を備える円筒形状の反応炉と円筒形状の前記反応炉の内部を長手方向に貫通する管状部を備えており、該管状部の内部を前記炭化炉から排出された高温の排ガスを通過させることにより、前記反応炉を加熱する加熱部と
を備えることを特徴とするガス化炉。
【請求項17】
前記投入口よりガス化剤として800℃以上の高温の過熱水蒸気を投入することを特徴とする請求項16に記載のガス化炉。
【請求項18】
前記加熱部は、該加熱部の外壁及び/または内壁の表面に前記反応部との接触面積を増加させる複数の凹凸を備えていることを特徴とする請求項16または17に記載のガス化炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスやプラスチック等の有機物(特に有機廃棄物)を炭化して炭化物を生成する炭化炉、炭化物から効率的に水素その他の各種ガスを生成するガス化炉、及びこれらの炭化炉及びガス化炉を用いてバイオマス等の有機物をガス化して発電または水素ガスやエタノール等のエネルギーを生成する有機物のガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自然環境を守り限りある自然を維持していくために、自然界における動物及び植物等の有機廃棄物、石油等を原料とする有機廃棄物等の有用資源の再利用が各方面で進められている。例えばバイオマスを炭化し、その炭化物から各種ガスを取り出すシステムや、そのようにして取り出した水性ガスを用いて発電するバイオマス発電システム等がその一例である。また、原油から生成されるプラスチック、化学繊維やフィルム等の有機廃棄物も各種環境汚染の原因となっており、これらのプラスチック等の有機廃棄物を有効利用できるシステムも望まれている。
【0003】
バイオマスやプラスチック等の有機物は、ガス化することによりエネルギーとして利用可能な水素ガスやエタノール等の有用物質に変換することができる。また、ガス化した生成ガスを燃料にして発電を行う等の有効利用が可能となる。従ってこのような有機廃棄物から有用物質を取り出して、ガス、電気エネルギー等に変換するシステムは、従来廃棄処理していた有機廃棄物を有効利用するものであり、循環型社会の構築に大きく寄与するものである。このようなシステムとして、有機物を炭化して水性ガスを生成し、その水性ガスを用いて発電するためバイオマス炭化システム(特許文献1)や、バイオマス発電システム(特許文献2)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2016/04371号公報
【特許文献2】特開2017-132676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2に開示されている技術は、炭化炉とガス化炉を分離して、炭化炉により木質系等の有機物(バイオマス)を炭化し、ガス化炉において炭化炉で生成した炭化物から水性ガスを生成するものである。
炭化炉内には円筒状の蓄熱槽が設けられ、原料となるバイオマスは炭化炉の上部から投入される。炭化炉内部を高温にするために、燃焼領域において投入されたバイオマスの一部が燃焼される。燃焼領域の下側は炭化領域となっており、酸素が供給されずに、高温で酸素が足りない状態(以下、「酸欠状態」と称する)に維持される。炭化領域において残りのバイオマスが炭化される。
【0006】
特許文献1及び2に示すようなバイオマスの炭化炉においては、投入されたバイオマスの一部を燃焼することにより炭化炉内の温度を高温に維持し、バイオマスを800℃程度の高温かつ酸素が欠乏した状態に曝すことによりバイオマスから炭化物を生成している。そのため燃料として消費されるバイオマスを少なくして投入する有機物に対して生成される炭化物の割合(以下、炭化効率と称する)を向上させること、炭化物の品質向上、及び炭化速度を上げることが望まれている。
【0007】
また、炭化物から水性ガス等の有用ガスを生成するガス化炉では、ガス化反応に高い熱エネルギーを必要とする。そのため、ガス化反応を促進するためには熱エネルギーをガス化炉内部の反応炉に効率的に供給することが求められる。特許文献1又は2の炭化物の熱分解炉(ガス化炉に相当する)では、反応管(反応炉)全体を外側から取り囲む筒状管路に高温排ガスを流して内部の反応管を外側から加熱する構造であるために、筒状管路の外側部分を流れる高温排ガスの熱エネルギーが内部の反応管に効率的に伝わらず、投入した高温排ガスの熱エネルギーをガス化反応に有効に利用することができていなかった。
【0008】
本発明は、投入した有機物の炭化効率を向上させるとともに高温の排ガスを排出することができる炭化炉、熱エネルギーの利用効率を高めてガス化効率を向上させたガス化炉、及びこれらの炭化炉及びガス化炉を用いた高効率かつ低コストで有機物をガス化し、又は生成したガスを利用することにより有機物をエネルギーに変換する有機物のガス化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る有機物のガス化システムは、有機物を投入することにより炭化物を生成する炭化炉と、前記炭化炉で生成した炭化物とガス化剤とを投入する反応炉と該反応炉を加熱する加熱部を備え、投入した前記炭化物をガス化するガス化炉とを備えた有機物のガス化システムであって、
前記炭化炉は、前記有機物の一部を燃焼させて前記炭化炉の温度を高温に維持する有機物燃焼領域と、前記有機物を炭化する炭化領域を備えており、前記燃焼領域において、前記有機物に高温の水蒸気を放射することを特徴とする。
【0010】
高温の水蒸気は800℃以上の過熱水蒸気が好ましいが、これに限定されない。高温の水蒸気を供給することにより、高温の水蒸気により有機物を直接炭化させることができ、炭化効率が向上する。
【0011】
本発明の他の態様に係る有機物のガス化システムは、前記炭化炉が、さらに、前記有機物燃焼領域及び前記炭化領域において発生した可燃性ガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、前記可燃性ガスの燃焼により生成される高温の排ガスを排出する排ガス排出部とを備えており、前記炭化炉内から排出した高温の排ガスを前記ガス化炉の前記加熱部に供給することを特徴とする。
有機物燃焼領域において、有機物の燃焼及び高温水蒸気と有機物の熱伝導率の向上による短時間での反応により、タール分を含む燃焼排ガスや一酸化炭素などの可燃性ガスが発生する。これらの可燃性ガスを排ガス燃焼領域において燃焼して、有機物燃焼領域の温度よりも高温にすることにより上記可燃性ガス及びタール分が燃焼し高温排ガスが生成される。この高温の排ガスは排ガス排出部からガス化炉の加熱部に送られる。
【0012】
本発明の第1の態様に係る炭化炉は、投入する有機物の一部を炭化炉内の有機物燃焼領域で燃焼することにより炭化炉の温度を高温に維持して、前記有機物を炭化させる炭化炉であって、前記有機物燃焼領域において、前記有機物に対して高温の水蒸気を放射する水蒸気供給部を備えることを特徴とする。水蒸気供給部によって加熱された水蒸気を燃焼領域に放射されることにより、炭化物を直接炭化または炭素化して有機物の炭化効率を高め、さらに可燃性ガスを増やすことが可能となる。
【0013】
本発明の他の態様にかかる炭化炉は、上記炭化炉が、前記有機物燃焼領域に燃焼用空気を供給する第1の空気供給機構を備えており、前記第1の空気供給機構は、前記炭化炉の前記有機物燃焼領域の少なくとも一部を外側から取り囲む第1の外周壁により形成された加熱空間を有し、該加熱空間の前記有機物燃焼領域側の炭化炉内壁を構成する第1枠体部は、少なくとも1つの貫通穴を備えており、前記加熱空間に燃焼用空気を供給して該貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に供給することを特徴とする。第1枠体部は耐熱性及び熱伝導性を有することが好ましい。第1枠体部はさらに蓄熱性を有することが好ましい。
【0014】
この構成により、加熱空間において燃焼用空気を加熱して、高温の燃焼用空気を有機物燃焼領域に供給できるので、温度の低い燃焼用空気を投入することにより、有機物燃焼領域の温度を低下させることを防止できる。
【0015】
本発明の他の態様にかかる炭化炉は、前記水蒸気供給部が、前記第1の空気供給機構の前記加熱空間に前記高温の水蒸気を供給し、前記貫通穴を介して前記高温の水蒸気を前記有機物燃焼領域に放射することを特徴とする。前記水蒸気供給部は、熱伝導性の良い管状体が前記加熱空間内に設置されており、外部から供給された水蒸気が該管状体の内部を通過する際に過熱されて、該管状体の先端から過熱された水蒸気を前記加熱空間に放射する構成とすることが好ましい。
これにより、第1の空気供給機構は水蒸気供給部としての機能も有することになる。
【0016】
本発明の他の態様にかかる炭化炉は、さらに、前記有機物燃焼領域における前記有機物の燃焼と炭化により、及び前記高温の水蒸気を有機物に放射することにより発生した可燃性のガスを、排ガス燃焼領域において燃焼させるための第2の空気供給機構と、前記排ガス燃焼領域における可燃性ガスを高温の排ガスとして排出する排ガス排出部とを備えることを特徴とする。この第2の空気供給機構は、燃焼用空気の供給に関する第1の空気供給機構と同様の構成することができる。
【0017】
前記第2の空気供給機構は、前記炭化炉の前記有機物燃焼領域の少なくとも一部を外側から取り囲む第2の外周壁により形成された加熱空間を有し、該加熱空間の前記排ガス燃焼領域側の炭化炉内壁を構成する第2枠体部は、少なくとも1つの貫通穴を備えており、前記加熱空間に燃焼用空気を供給して該貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に供給するよう構成することができる。
【0018】
この構造により、燃焼領域で発生する各種可燃性ガスを排ガス燃焼領域により燃焼させて、排ガスのタール分を燃焼分解できるだけでなく、高温の排ガスを排出することができ、この高温の排ガスを、ガス化炉や燃焼領域に放射する水蒸気の温度を高温に加熱するなどのより効果的な熱源として利用可能となる。
【0019】
さらに、本発明の他の態様に係る炭化炉では、前記水蒸気供給部が、前記排ガス燃焼領域の上部に設けられて高温の水蒸気を生成する蒸気室と、前記蒸気室から排ガス燃焼領域を経て有機物燃焼領域まで配管され、蒸気室の高温の蒸気をさらに加熱しながら移送して有機物燃焼領域に放射する水蒸気供給管部と、を備えることを特徴とする。これにより、より高温の水蒸気を有機物燃焼領域に向かい放射することができる。また、排ガス燃焼領域近傍に温度センサを設けて、温度センサの温度が所定の温度以下になったら燃焼用空気の量を増やして排ガス燃焼領域の温度が前記所定の温度以上を維持するよう構成することもできる。
【0020】
本発明の第1の態様に係るガス化炉は、投入された炭化物をガス化するガス化炉であって、内部空間を備える筒状本体部と、熱伝導率及び/又は蓄熱性の高い材料で形成され、前記筒状本体部の前記内部空間の中心部を長さ方向に貫通しており、高温のガスを通過させる流路を備える加熱部と、前記加熱部の取り囲む前記内部空間により形成され、前記加熱部により加熱されて、投入された前記有機物をガス化させる反応部と、前記反応部の上流に設けられ、該反応部に前記有機物及びガス化剤を投入する原料供給部と、前記反応部の下流側に設けられ、前記反応部により生成された各種有用ガスを取り出すガス取出口と、を備えることを特徴とする。
【0021】
本態様では、加熱部を熱伝導性及び/又は蓄熱性の高い材料反応炉となる筒状本体部の中心若しくは中心近傍を貫通するように設けたことにより、高温のガスの熱エネルギーをより効率的に反応炉に伝達することができ、反応炉の加熱効率を向上させることができる。
【0022】
また、前記原料供給部は、炭化炉から供給された炭化物を粉砕部により微細に粉砕された所定量の炭化物を供給する炭化物供給部と、粉砕された炭化物とガス化剤とを混合して前記反応部内に噴射して投入する噴射投入部とを備える構成とすることにより、反応炉におけるガス化効率を向上させることができる。ガス化剤として高温の水蒸気を、例えば800℃以上の過熱水蒸気を供給することが好ましい。さらに、ガス化炉の反応部には、前記原料投入部から前記ガス取出し口に向かって負圧が付与されていることが望ましい。
これにより、原料を反応炉内の上流から下流に移動させて反応を促進し、生成された有用ガスを下流側において取り出すことができる。また、前記加熱部の外壁または内壁の表面に前記反応部との接触面積を増加させる複数の凹凸を設けて、反応炉への熱伝達効率をより向上させることができる。
【0023】
上記各態様の炭化炉のいずれか一つと、上記各態様にかかるガス化炉のいずれか一つを組み合わせて、有機物から有用ガスを生成する有機物のガス化システムを構成することができる。また、これらの有機物のガス化システムで生成にした各種有用ガスを燃料とするバイオマス発電システム、エタノール化、水素ガス分離等のエネルギー変換システムを構築することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる炭化炉と及びガス化炉を用いた有機物のガス化システムによれば、有機物を効率的に炭化することができ、かつ炭化物を効率的にガス化することが可能となるので、効率的かつ、安価な有機物のガス化システムを提供することができる。
特に本発明に係る炭化炉によれば、有機物燃焼領域に高温の水蒸気を放射することにより、単に有機物の一部を燃焼させるだけで炭化させる場合に比べて炭化率を大幅に向上することができ、かつ炭化速度を上げることが可能となる。また、従来に比べて乾燥度の低い有機物を投入することも可能となる。さらに、燃焼及び炭化等により発生した可燃性のガスを排ガス燃焼領域において燃やす構成を設けることにより、高温の排ガスを提供することができる。また、排ガスのタール分を安定して燃焼分解することが可能となる。
【0025】
また、本発明のガス化炉によれば、反応炉の中心に加熱部を貫通させ、高温のガスを過熱部の内部に供給して通過させることにより、熱効率の高いガス化炉を提供することができる。さらに、炭化物を微細化して投入し、ガス化剤を高温に加熱して投入することにより、反応の効率化をより促進することができる。
【0026】
さらに上記のような本発明の各実施態様に係る各種炭化炉及びガス化炉を組合せた有機物のガス化システムにより、それぞれの炭化炉及びガス化炉の持つ効果を共有することができる有機物の「ガス化システム」を提供すること、及びバイオマスエネルギー変換システムを提供することが可能となる。
【0027】
このように、本発明に係るガス化炉では加熱部の熱源である高温ガスの熱交換効率を飛躍的に向上することができ、ガス化炉の小型及び効率的なガス化反応が可能となる。このような本発明に係る効率的で小型化が可能な炭化炉及びガス化炉を用いることにより、炭化効率及びガス化効率が大幅に向上し、また設備の大きさも有機物の発生量に応じて柔軟に構築できるので費用対効果が大幅に向上し、実用に耐える地産地消の小規模のバイオマス発電システム等の構築が従来よりも容易に実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る有機物のガス化システムの概略構成を示す図。
【
図2】
図1の炭化炉部分に付しているD-D線方向からみた断面を模式的に示す第1の空気供給機構部分の横断面図。
【
図3】
図2に付したE-E線方向から見た第1の空気供給機構の断面を模式的に示す縦断面図。
【
図4】
図1の炭化炉分部に付しているF-F線方向から見た第2の空気供給機構の断面を模式的に示す横断面図。
【
図5】高温の水蒸気を有機物燃焼領域に投入する他の実施形態を模式的に示す縦方向部分断面図。
【
図6】過熱水蒸気を有機物燃焼領域に投入するさらに他の実施形態を模式的に示す縦方向部分断面図。
【
図7】本発明に係る有機物のガス化システム(バイオマス発電システムへの利用例)の制御の一例を示す機能ブロック図。
【
図8】本発明に係る炭化炉の排ガスの温度制御の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る炭化炉、ガス化炉、及び有機物のガス化システム及び有機物の炭化方法、及びガス化方法について説明する。有機物のガス化システムは、バイオマスから炭化物を生成する炭化炉、炭化物から各種の有用ガスを生成するガス化炉から構成される。このシステムにより生成された有用ガスを発電機またはエタノール生成装置に供給することにより、バイオマス発電システム、その他の有機物をエネルギーとして有効に利用するシステムを構築することができる。
【0030】
図1に本発明の一実施形態にかかる有機物のガス化システムの概略構成を示す機能ブロック図を示す。有機物のガス化システム10は、有機物を燃焼する有機物燃焼領域に対して高温の水蒸気を放射することにより、バイオマス等の有機物から炭化物を効率的に生成することのできる炭化炉20と、該炭化炉に接続されており、反応炉の中央部分を貫通するように設けられた加熱部を通過するように炭化炉で生成された高温の排気ガスを供給することにより、排ガスの熱エネルギーを効率的にガス化反応に利用することができるガス化炉50とを備えている。
【0031】
なお、
図1に示す有機物のガス化システム10では炭化炉20を備える構成を例示しているが、本発明の有機物のガス化システムは、炭化炉20を通さずに、炭化物またはプラスチックなどの有機物を直接ガス化炉50に供給する構成とすることもできる。その場合ガス化炉の熱源を別途用意する必要がある。
ガス化炉50から出力される生成ガスGSを利用する例として、
図1ではガスを収容するガスタンク65及び発電機67が接続されている例(全体としてバイオマス発電システムを構成する例)を示している(ブロック図を破線で示している)。しかし、本発明の有機物のガス化システムはこのような発電システムに限定されない。例えば、バイオマス等の有機物から炭化物を生成し、生成した炭化物をガス化炉に投入して生成したガスをエタノール生成装置に投入してエタノールを生成する等、有機廃棄物から各種物質を生成する各種システムに利用することができる。
【0032】
図1に示す本発明の一実施形態に係る炭化炉20は、有機物燃焼領域A1において有機物に対して高温の水蒸気を放射する構成を有している。また、
図1では、有機物燃焼領域A1および炭化領域A2の滞留時間をより正確に制御して炭化炉20におけるバイオマスの炭化プロセスをより精密に制御できるスクリュー型の突起部32を有する回転可能な蓄熱体30を備えている炭化炉20の例を示している。
【0033】
炭化炉20に投入する炭化物の原料としては、バイオマスに限らず有機物であればよい。特に、間伐木材その他の木材、稲作等により排出される藁やもみ殻、野菜等の植物、野菜くずや食べ残し等の家庭ごみ、養鶏又は牧場等からの有機廃棄物を有効に原料として利用することが望まれる。また、本発明のガス化炉50はプラスチックその他の有機物を原料として可燃性ガスを生成することもできる。本明細書では、木材(木質バイオマス)を原料とするバイオマスから炭化物を生成する例を用いて説明するが、上述の通り、炭化物の原料がこれに限定されることを意図するものではない。山林地区において間伐材等廃棄される木材を利用したバイオマス発電システムは、山林に隣接する小規模地域における地産地消の電気エネルギー源となる小規模発電システムとして、早急な実用化が特に期待されているため、これを例示して説明する。
【0034】
有機物を炭化し、炭化物からガス化反応により各種ガスを生成すること、及び生成した炭化物をガス化炉に投入して水性ガス等の有用ガスを生成するという基本構成要素は、従来のバイオマス発電システム等で開示されているシステム構成と同じである。しかし、本発明は有機物のガス化システムでは、その構成要素である炭化炉及びガス化炉のそれぞれに特徴があり、これらの炭化炉及びガス化炉を用いることにより、より効率的な有機物のガス化システムを提供することができる。なお、
図1においては、炭化炉20、ガス化炉50の構成をわかり易く説明するために、主要構成要素のみをシンプルに示しており、電気エネルギーを供給する電力供給ライン、各種センサから情報を取得する信号ライン、各種駆動部を制御する制御信号ライン、各種駆動機構、制御バルブ、及びフィルタ等は省略している。
【0035】
図1に示すように、本発明の1実施形態に係る有機物のガス化システム10は、有機物C1を乾燥する乾燥室11と、乾燥した有機物C1を炭化炉20に投入する投入装置12を備えており有機物C1から炭化物を生成する炭化炉20と、炭化物C2から水素ガスその他のガス(以下「生成ガス」と称する)を生成するガス化炉50とを備えている。有機物のガス化システム10により生成された生成ガスGSは、本発明の有機物ガス化システムをバイオマス発電システムに利用する場合には、ガス化炉50により生成される生成ガス(水素ガス等)を蓄えるガスタンク65に蓄えられて、発電機67に供給されて発電され、電気エネルギーELCとして消費者に供給される。
【0036】
図1に示す炭化炉20では、炭化炉の上側から原料となる有機物(木質バイオマス)が連続的に投入されて、炭化炉20の下側から連続で炭化物が取り出される構成となっている。炭化炉20は、千数百度以上の高熱に耐え得る耐火物から構成される外枠体21と、炭化炉の内部に回転可能に設けられた蓄熱体30を備えている。外枠体21は、千数百度の高温に耐える耐熱性の高い耐火煉瓦等と断熱材の2重の構造で形成されるのが一般的である。
【0037】
木質バイオマス等の有機物C1は小さく切断された後、乾燥室11において乾燥される。炭化炉20の上部に、乾燥された有機物C1を投入する有機物投入口22が設けられている。この有機物投入口22から、投入装置12により適量の乾燥後の有機物C1が、適宜、炭化炉20内に投入される(投入装置12及び有機物投入口22が「有機物投入部」を構成する)。炭化炉20の下側には、炭化炉20から炭化物C2を取り出して次工程に送る炭化物取出部23が設けられている。また、炭化炉20の有機物投入口22よりも高い位置に、有機物C1の燃焼と炭化及び高温の水蒸気の投入により発生した可燃性ガスを燃焼させ、高温の排ガスHEGとして排出するガス排出部24が設けられている。
【0038】
炭化炉20の内部空間には、有機物投入口22よりも下方の位置に、蓄熱体30が回転可能に設けられており、炭化炉20の下部に設けられたモータ33により回転駆動される。蓄熱体30の外周部分(外表面)31には外枠体21の内壁21aに向って突出する突出部32が螺旋状(スクリュー状)に設けられている。この蓄熱体30が回転駆動されることにより、炭化炉20の内壁21aと蓄熱体30の外周部分31の間に堆積されているバイオマス及び炭化物を下方にゆっくり移動させる。蓄熱体30は突出部32を含めて耐熱性及び蓄熱性を有する材量で製造されており、有機物C1を炭化するのに適した速度、例えば20分~1時間に1回転する程度の緩やかな速度で回転するように制御される。この蓄熱体30の回転速度を制御することにより、有機物C1の炭化炉20内での縦方向の移動速度を制御することが可能となる。
【0039】
また、蓄熱体30の上部領域の一部と、蓄熱体30の上部と外枠体の内壁21aとに挟まれた内部空間領域は、有機物燃焼領域A1となる。炭化炉20を800℃以上の高温に維持するために、有機物C1の一部がこの有機物燃焼領域A1で部分燃焼される。すなわち、炭化炉20内の有機物燃焼領域A1の温度は、この有機物C1の部分燃焼により800℃以上の高温に維持される。炭化炉20の有機物燃焼領域A1より下側の内部空間は炭化領域A2となる。
【0040】
外枠体21の有機物燃焼領域A1の位置に対応する部分(第1枠体部21b:
図2、3参照)には、有機物C1の燃焼を制御するための第1の空気供給機構13が設けられている。
図2に第1の空気供給機構13の中央横方向(
図1に示すD-D方向)の部分断面図を示し、
図3に
図2のE-E線方向の第1の空気調整機構13部分の断面図を示す。なお、
図2,3においては、蓄熱体30の突起部32、及び炭化炉底部の構成は省略している。
【0041】
第1の空気供給機構13は、外枠体21の有機物燃領域A1の位置に相当する部分である第1枠体部21bの外周を、第1の外周壁13aにより取り巻くことにより形成される加熱空間13bを有する。この加熱空間13bに第1の空気供給部25aから燃焼用空気が供給される。第1枠体部21bには、炭化炉内部の有機物燃焼領域A1まで貫通する1または複数の貫通穴25cを有している。なお、
図2及び
図3においては、第1の空気供給機構13が有機物燃焼領域A1全体を囲んでいる形態を例示している。第1の空気供給機構13は、このように有機物燃焼領域A1全体を覆うのが好ましいが、その一部だけを部分的に囲む構成としても良い。この点は、以下に述べる第2の空気供給機構も同様であり、必ずしも排ガス燃焼領域B1全体を覆う必要はない。
【0042】
第1の空気供給機構13の外周壁13aは耐熱性及び断熱性を有する材料で形成されており、加熱空間13bの内側を構成する第1枠体部21bは熱伝導性と蓄熱性をバランス良く備えた材料により形成するのが好ましい。炭化炉20内の有機物燃焼領域A1は800℃以上の高温であるので、第1枠体部21bを介して加熱空間13bも高温となり、加熱空間13b内に供給された燃焼用空気が加熱される。ブロアー等により第1の空気供給部25aから供給された燃焼用空気は加熱空間13b内で加熱されて、高温の燃焼用空気が貫通穴25cから有機物燃焼領域A1に供給される。この燃焼用空気(酸素)の供給量を調整することにより有機物燃焼領域A1における有機物C1の燃焼が制御される。その際、燃焼用空気を高温にして供給することにより、燃焼用空気により炭化炉内の有機物燃焼領域A1の温度が急激に低下することを抑制することができ、安定した燃焼管理と温度管理が可能となる。
【0043】
さらに、加熱空間13bには、水蒸気を供給する水蒸気供給管36a、36b(水蒸気供給部に相当する)が設けられている。すなわち、水蒸気供給管36a、36bを通じて第1の空気供給機構13の加熱空間の内部に高温の水蒸気Wvが供給される。水蒸気供給管36a、36bは第1の空気供給機構13内において螺旋状に巻回されており、先端の水蒸気吹出口37a、37bから水蒸気を放出する。水蒸気供給管36a、36bには後述するボイラー45その他の加熱装置により160℃又はそれ以上に加熱した高温の水蒸気Wvが供給されることが望ましい。
【0044】
第1の空気供給機構13内で巻回されている水蒸気供給管36a、36bは、熱伝導性の高い材料で構成されており熱交換パイプとなっており、供給された水蒸気は高温の加熱空間13b内においてさらに加熱され、水蒸気供給管36a、36b内の水蒸気はさらに高温の水蒸気となる。加熱空間13b内に放出された高温の水蒸気は、貫通穴25cを通して、高温の燃焼用空気とともに有機物燃焼領域A1に供給され有機物C1に放射される。水蒸気供給管36a、36bに供給する水蒸気は、例えば高温の排ガスHEG等を利用して加熱することもできる。これにより、加熱空間13b内でより高温の過熱水蒸気にすることが可能となる。第1の空気供給機構13には、有機物燃焼領域A1の温度を計測する第1の温度センサTS1が設けることが好ましい。
【0045】
第1の空気供給機構13から炭化炉20内に空気が供給される燃焼用空気が増えると、有機物の燃焼量が増えて有機物燃焼領域A1の温度が上がる。有機物燃焼領域A1はできるだけ高い温度に維持することが望ましいが、燃焼用空気を増やして温度を上げると燃焼する有機物の量が増えるので、投入した有機物に対して生成される炭化物の量が減少し、炭化率が低下する。そのため、炭化率等を考慮して、有機物燃焼領域A1の温度を800℃前後に保つように燃焼用空気の供給量や、蓄熱体30の回転速度を適切に制御するのが好ましい。ただし、システムの運用目的は運用状況に応じて、より高温に維持するように制御しても良い。燃焼用空気の供給量は図示しないブロアー等の風量を調整することにより制御することができる。
【0046】
また、高温の水蒸気を有機物燃焼領域A1に放射すると、炭化していない有機物C1に高温の過熱水蒸気が直接接触することにより、高温の過熱水蒸気による熱伝達効率が飛躍的に上がり、有機物C1の炭化を促進し炭素化時間及び炭素化効率を大幅に短縮するという効果(高温炭素化促進効果)を得ることができる。この高温炭素化促進効果により、有機物燃焼領域A1の有機物C1をより効率的に炭素化することが可能となり、バイオマスの炭素化率を従来よりも10~20%程度向上させることが可能となった。
【0047】
またバイオマスC1の燃焼により発生する従来の可燃性ガスに加えて、過熱蒸気(H2O)と炭化物の反応ガスである水素ガス(H2)と炭化物(C)と酸素(O)が反応することにより、一酸化炭素ガス(CO)が生成される。この一酸化炭素ガス(CO)及び水素ガス(H2)が、後述する炭化炉20の排ガス燃焼領域B1における可燃性の排ガスの燃焼に寄与し、排ガス燃焼領域B1をさらに高温にすることができる。これにより、排ガスをより高温にして排ガスの大きな熱エネルギーをガス化炉に供給することができるだけでなく、炭化炉に投入する水蒸気を事前により高温に加熱することができる等、余剰熱エネルギーの炭化炉への効率的なフィードバックも可能となる。
【0048】
また従来技術によると、炭化炉20に投入する有機物C1の含水率が高いと有機物C1の燃焼や炭化に時間がかかるために、含水率が20%以下になるまで原料となる有機物C1を乾燥させてから炭化炉に投入していた。これに対し、本願発明の炭化炉では、有機物燃焼領域A1において有機物C1に対して高温の水蒸気を直接放射する構成とすることにより、燃焼及び炭化を促進することが可能となり、有機物C1の含水率が40%~50%程度であっても炭化炉に投入可能となった。これより乾燥時間が短くすることができ有機物C1のトータル炭化速度を向上させ、乾燥のための熱エネルギーを抑制することもできるためトータルコストの低減化をはかることが可能となる。
【0049】
有機物燃焼領域A1においては、有機物C1の一部が燃焼され、残りの一部が高温の水蒸気により炭化される。有機物燃焼領域A1において燃焼または炭化されなかった有機物C1、炭化した炭化物C2及び燃焼灰分は、蓄熱体30の回転に伴いスクリュー状突起部32により、有機物燃焼領域A1から下方の炭化領域A2に移送される。燃焼していない有機物C1は、酸素欠乏環境下において蓄熱体30による高温環境及び酸素欠乏環境にさらされることにより炭化されて、炭化物C2として炭化物取出部23から取り出される。
【0050】
上述したように、有機物C1に高温の水蒸気を放射することによって、有機物の炭化率、炭化速度、炭化品質をそれぞれ向上させることができる。さらに水蒸気を照射することにより発生した燃焼ガスを、排ガス燃焼領域B1で燃焼させることにより高温の排ガスを排出でき、この燃焼により排ガスのタール分のより完全な燃焼も可能となる。したがって、高品質低コストの炭化炉を提供することが可能となり、後述する後工程におけるガス化炉での排ガスの効率的な熱エネルギーの利用との相乗効果によって、高品質かつ低コストで有機物をガス化することのできる有機物のガス化システムを提供することが可能となる。
【0051】
有機物燃焼領域A1及び炭化領域A2において有機物が燃焼し炭化する際に、タール分を含む高温の可燃性排ガスが発生する。また、有機物燃焼領域A1において高温の水蒸気を放射することにより、過熱蒸気(H2O)の分解ガスである水素ガス(H2)と炭化物(C)と酸素(O)が反応することにより燃焼性の一酸化炭素ガス(CO)が発生する。本発明では、これらの可燃性排ガスを燃焼させてさらに高温(好ましくは1000℃を超える高温)の排ガスにした上で、ガス化炉に供給して高温の排ガスの熱エネルギーを再利用する構成としている。そのために、可燃性排ガスを炭化炉20の上部の排ガス燃焼領域B1において燃焼させて、タール分を燃焼して分解させるとともに、排ガスをより高温の排ガスHEGとしてガス排出部24から排出している。
【0052】
排出された高温の排ガスHEGは、配管17aを介してガス化炉50に配送されて、反応炉の熱源として利用される。高温の排ガスHEGは1000℃を超える高温となるため、排ガスHEGを供給する配管17aも耐熱構造となっている。配管17aには負圧がかかっており、高温の排ガスHEGは炭化炉20からガス化炉50に送られる。配管17aのガス排出部24の近傍その他の場所に1以上のバルブ(図示せず)を設けて、これらのバルブの駆動を制御して排ガスの流れをコントロールするように構成してもよい。
【0053】
図1に示す炭化炉20においては、可燃性排ガスの燃焼を制御するために、排ガス燃焼領域B1の外側領域に第1の空気供給機構13と同様の構造を有する第2の空気供給機構14が設けられている。
図4に
図1のF-F線方向の断面図を示す。この図でも蓄熱体30のスクリュー状の突起部32及び炭化炉内の底部形状は省略している。
図4からわかるように、第2の空気供給機構14は、水蒸気を供給する機構が無い点を除き、第1の空気供給機構13の構造とほぼ同様の構成である。すなわち、第2の空気供給機構14は、第2の外周壁14aにより排ガス燃焼領域B1の位置に相当する部分の外枠体21cの外周を第2の外周壁14aが取り囲んでおり、加熱空間14bが形成されている。この加熱空間14bに空気供給口25bから燃焼用空気が供給される。第2の外周壁14aに取り囲まれた第2枠体部21cに炭化炉内部の排ガス燃焼領域B1に貫通する1または複数の貫通穴25dを有している。
【0054】
なお、特許文献1においても燃焼用空気を投入することにより、炭化炉上部で排ガスを燃焼してタール分を熱分解させる構成が開示されている。しかし特許文献1の技術と本願発明では、まったく逆の排ガスの燃焼の制御を行っている。まず、特許文献1では、排ガス燃焼領域の温度(排ガスの温度)が一定温度以下に下がったときには、燃焼用空気の投入を停止して、温度の低い燃焼用空気により排ガス燃焼領域の温度が下がることを防止している。すなわち、温度が上昇するまで可燃性ガスの燃焼を一時停止して、待機している。従って、燃焼用空気の供給を停止し燃焼を停止している期間は、排ガス中のタール分を完全に燃焼させることはできず、排ガス中のタール分が残った状態で排出されることとなる。
【0055】
これに対して
図1に示す本願発明の炭化炉では、排ガス燃焼領域B1の温度が一定温度以下(第1の温度以下)に下がった場合は、特許文献1とは逆に、燃焼用空気の投入量を増やして燃焼を促進させることにより温度を上げるよう制御している。すなわち本願発明では、排ガス燃焼領域B1の温度が下がった場合であっても、第2の空気供給機構14によって加熱された燃焼用空気を供給して可燃性ガスの燃焼を促進させて、燃焼により温度を上げるように制御している。したがって、可燃性排ガスのタール分が残った状態で排ガスが排出されることはない。このように本願発明では、燃焼用空気を供給することによって一時的に排ガス燃焼領域B1の温度が下がることがあるとしても、燃焼用空気を供給し続けて燃焼を促進させることにより、排ガス等の温度を上げるという制御を行っている。
【0056】
図1、2に例示する本発明の第2の空気供給機構14の実施形態では、供給された燃焼用空気が外枠体21により高温に加熱されてから複数の貫通穴25cを介して排ガス燃焼領域B1に供給されるので、燃焼用空気を排ガス燃焼領域B1に供給しても排ガスの温度は下がり難い。
なお、
図1から4に示す炭化炉では、第1及び第2の空気供給部25a、25bを第1及び第2の空気供給機構13、14に接続して、加熱空間13b、14bに燃焼用空気を送り込んでいる。しかし、加熱空間13b、14bを設けずに、1個または複数の第1及び第2の空気供給部25a、25bを、有機物燃焼領域A1及び排ガス燃焼領域B1部分の外枠体21に直接接続して、有機物燃焼領域A1及び排ガス燃焼領域B1に燃焼用空気を送り込むよう構成しても良い。その場合、排ガスHEGの配管17aに、後述するガス化炉50で使用するような加熱器43と同様の熱交換器を設けて、この熱交換器により燃焼用空気を高温にしてから、排ガス燃焼領域B1に供給するよう構成しても良い。
また、燃焼用空気を加熱して高温の燃焼用空気を供給することが望ましいが、予め燃焼用空気を加熱しないで直接燃焼領域A1、B1に燃焼用空気を供給する構成としても良い。
<炭化炉の動作>
【0057】
上述したように、本明細書においては原料として木質バイオマスを使用して炭化物を生成する例を示しており、原料となる木質バイオマスC1は乾燥室11に収容されて乾燥される。炭化炉20に投入されるバイオマスC1は、乾燥効率の向上、炭化効率の向上、炭化炉20における炭化の程度や炭化速度の安定的に制御する等の観点から、切削装置等によって比較的小さいサイズ、例えば10cm以下、好ましくは5cm以下に切削された木材チップC1の状態で乾燥室11へ供給することが好ましい。
【0058】
木材チップ等のバイオマスC1は炭化炉20に投入される前に乾燥室11において乾燥される。好ましくは水分40%以下に乾燥させる。従来の炭化炉では水分20%程度の木材チップの乾燥が必要とされていたが、前述した通り、高温の水蒸気を放射することにより、本発明の炭化炉では、水分40%程度の乾燥度の有機物C1でも投入可能となった。
乾燥手段としては、例えば、高温の排ガスHEGをガス化炉等の熱源として使用した後に乾燥室11に送り込む等により、有機物を効率的に乾燥させることができる。乾燥されたバイオマスC1は、投入装置12を用いて炭化炉20に投入される。
【0059】
炭化炉20の稼働開始時においては、まず所定量の有機物C1が投入されて有機物燃焼領域A1の有機物C1に着火される。有機物燃焼領域A1の温度及び蓄熱体30の温度が800℃程度になるまでは、有機物C1を完全燃焼させて有機物燃焼領域A1の温度を上げるため、大量の空気と完全燃焼させるのに適量の有機物C1が順次供給される。炭化炉の有機物燃焼領域A1及び蓄熱体30の温度が所望の温度(800℃前後が好ましい)になり安定すると、有機物C1の一部が部分燃焼されて炭化炉の有機物燃焼領域A1が所望の温度に安定維持するように空気の供給量が制御される。同時に、水蒸気が第1の空気供給機構13の加熱空間13bに供給される。これにより有機物燃焼領域A1において有機物C1の一部が部分燃焼し、有機物燃焼領域A1で燃焼していない残りの有機物C1及び炭化物は炭化領域A2に移送されてここで炭化される。
【0060】
炭化炉の有機物投入口22から投下された有機物C1は、蓄熱体30の上部及び蓄熱体30の突出部32の上に落下して堆積する。スクリュー状の突出部32の上に堆積した有機物C1は、蓄熱体30の回転により蓄熱体30の外周部分31と外枠体21の内壁21aの間を炭化炉20の下方側に移送される。すなわち、蓄熱体30を回転させることによりスクリュー状の突出部32により、有機物C1を有機物燃焼領域A1から下方の炭化領域A2の方に徐々に移動させることができ、蓄熱体30の回転速度を制御することにより、有機物燃焼領域A1及び炭化領域A2における有機物C1の滞留時間を蓄熱体30の回転速度で制御することができる。
【0061】
突起部の無い蓄熱体の従来の炭化炉では、炭化炉内に堆積した有機物C1の燃焼状態と炭化物の取出しに伴う自然落下による有機物C1の移動状態に応じて、有機物燃焼領域A1の温度、及び有機物C1の投入量を制御することにより、燃焼・炭化工程を制御していたため、有機物C1の滞留時間を正確に制御することができず、不安点な制御を強いられた。これに対して本発明では、上記のような構成とすることにより、炭化炉内における有機物C1の縦方向(高さ方向)の移動速度を正確に制御することができるようになった。これにより、有機物燃焼領域A1の滞留時間と空気量の双方を調整することが可能となり、炭化炉の温度や有機物C1の炭化速度、炭化品質等の正確な制御が可能となる。
【0062】
このようにして、炭化または炭素化された炭化物C2及び燃焼灰分等は、炭化炉20の炭化領域A2の下側に設けられた炭化物取出部23から取り出される。炭化物取出部23から取り出された炭化物C2は、搬送路15aを介してガス化炉50に移送される。
【0063】
なお、燃焼により又は炭化物取出部23から炭化物C2が取出されることにより、有機物燃焼領域A1に有機物C1が少なくなると、有機物投入口22から、乾燥した有機物C1が順次投入されて補充される。乾燥した有機物C1の投入量は、投入装置12により投入量を制御することができ、運転状況に応じて自動制御、または目視情報に基づく手動による制御が可能である。
【0064】
また、上述したように、燃焼等により生成された可燃性ガスは、排ガス燃焼領域B1において燃焼されて、高温(好ましくは1000℃を超える高温)の排ガスHEGとしてガス排出部24から排出される。
【0065】
本発明では、貫通穴25cの近くに第2の温度センサTS2が設けられており、第2の温度センサTS2の検知温度が所望の一定の温度以下に下がると、第2の空気供給部25bから供給する空気の量を増やして、貫通穴25cから排ガス燃焼領域B1に投入される空気量を増やしている。これにより排ガス燃焼領域B1における可燃性排ガスの燃焼を促進して、タール分を燃焼させるとともに炭化炉から排出する排ガスの温度を上げるように制御する。これにより、可燃性ガスに含まれるタール分は、排ガス燃焼領域B1において高い温度で完全に熱分解されて、タール分を含まない高温の排ガスHEGとして排出される。排ガスHEGは1000℃以上の高温とすることが好ましい。ガス排出部24から排出された高温の排ガスHEGは、配管17aを介してガス化炉50に配送される。高温の排ガスHEGは1000℃を超える高温となるため、排ガスHEGを供給する配管17aも耐熱構造となっている。
【0066】
炭化炉20の炭化物取出部23から取り出された炭化物C2は、搬送路15aにより、ガス化炉50に送られる。なお、
図1においては、第1及び第2の空気供給機構13、14にそれぞれ第1及び第2の空気供給部25a、25b、第1及び第2の温度センサTS1、TS2をそれぞれ1個ずつ示しているが、
図2に示すようにそれぞれ複数個備えるようにしても良い。
【0067】
<ガス化炉>
図1に戻り、ガス化炉50について説明する。炭化炉20から取り出された炭化物C2は、ガス化炉50にガス化剤とともに投入されて、水素その他のガス(以下生成ガスと称する)が生成される。
【0068】
図1では、ガス化炉50が2つの筒状のガス化ユニット51a、51bを備える例を示している。ガス化ユニットが1個の場合には、単体のガス化ユニットがそのままガス化炉となる。ガス化炉を構成するガス化ユニットの数は1個でも2個でも良く、3個以上としても良い。各ガス化ユニット51a,51bは、それぞれ筒状の内部空間55a,55bを備える筒状本体部52a,52bを有しており、筒状の内部空間55a、55bの内部を長さ方向に貫通する加熱部56a、56bを備えている。ガス化ユニット51a、51bの加熱部56a、56bを取り囲む内部空間55a、55bが反応炉又は反応部となる(以下、適宜「内部空間55a、55b」または「反応部55a、55b」と称する)。
【0069】
加熱部56a、56bは内部に気体が通過可能な流路57a、57bを備えており、この流路57a、57bに高温の排ガスHEGを流すことにより輻射熱及び接触熱により反応部55a、55bを加熱する。
図1に示す例では、加熱部56a,56bの流路57a、57bに配管17aを介して送られた高温の排ガスHEGを供給しているが、加熱部56a,56bに供給する高温ガスは、高温の排ガスHEGに限定されず、他の方法で生成された高温のガスや水蒸気を用いることも可能である。
【0070】
加熱部56a、56bは、ガス化ユニット51a、51bの筒状本体部52a,52bの内部を貫通しているので、加熱部56a、56bは筒状の反応部55a、55bに取り囲まれている。ガス化ユニット51a、51bは上流側(
図1においては上側)に原料となる炭化物とガス化剤を投入する原料供給部40を備えている。
図1に示す例では、原料供給部40は、炭化物供給部41と、粉砕部42と、噴射投入部とから構成される。炭化物供給部41は、炭化物C2を収容し、制御部(
図6参照)の制御に基づいて、ガス化反応に必要な滴量の炭化物C2を粉砕部42に供給する。
【0071】
粉砕部42は炭化物供給部41から炭化物C2が供給されると、ガス化反応を促進させるために、炭化物C2を300μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下に粉砕して微細化する。粉砕部42で粉砕され微細化された炭化物C3は、ガス化剤として用いる高温の水蒸気Hva、Hvbとともに、各ガス化ユニット51a、51bの噴射投入部53a、53bから各反応部55a、55b内に噴射することにより投入される。
【0072】
ガス化剤として使用する高温の水蒸気Hva,Hvbは、反応炉の温度をできるだけ低下させないようにするために、高温に加熱して過熱水蒸気の状態で微細化した炭化物C3混合することが好ましい。水蒸気Hva,Hvbは、後述するボイラー45で生成される160℃程度の水蒸気Wvを、高温の排ガスHEGの配管17aの途中に設けられた加熱器43により加熱することにより、高温の過熱水蒸気Hva,Hvbとすることが可能となる。この高温の過熱水蒸気Hva,Hvbが、それぞれ別のガス化ユニット51a、51bの反応部55a、55bに、ガス化剤として炭化物C3と一緒に投入される。高温の過熱水蒸気Hva,Hvbは、反応部の温度の低下を防ぐため、できるだけ高い温度、例えば900℃~1300℃の範囲の高温に近づけるのが好ましい。
【0073】
微細化された炭化物C3とガス化剤である過熱水蒸気Hva、Hvbは、噴射投入部53a、53bから各反応部55a、55bに噴射することにより投入される。その際、炭化物C3と高温のガス化剤は、反応部55a、55b内において加熱部56a,56bの周りを回転しながら反応炉内を下流方向にゆっくりと移動するように、噴射投入部53a、53bから噴射して投入することが好ましい。
【0074】
なお、
図1では各ガス化ユニット51a、51bに対して噴射投入部53a、53bを1個ずつ設けている例を示しているが、各ガス化ユニットのそれぞれに複数の噴射投入部53a、53bを設ける構成としても良い。これにより各反応部55a、55bに対して複数の位置から原料を投入できるので、加熱部に対して多数の角度から炭化物C3とガス化剤を噴射することができ、加熱部の熱をより均一にガス化反応に利用することが可能となり、効率的なガス化反応が可能となる。
【0075】
なお、
図1の例では、原料としてバイオマスを例示して説明しているので、原料供給部40として上述の構成例を示しているが、廃プラスチックなどの有機物の場合には、プラスチックを高温により気化させて、気化した高温のプラスチックを原料供給部40から反応部55a、55b内に噴射して投入する構成とすることもできる。プラスチック等の気化させるための熱エネルギーとして、炭化炉の高温の排ガスHEGを利用することができる。
【0076】
ガス化ユニット51a, 51bを2以上備える場合には、ガス化ユニットの下流側である原料供給部40の反対側(
図1においては下側)の位置に設けられた結合部58が設けられ、この結合部58により各ガス化ユニット51a、51bの反応部55a、55bが互いに接続されている。結合部58は上方に伸びる生成ガス取出管60が設けられ、その上部に設けられたガス取出口61から生成ガスが取り出される。結合部58の下方には残渣Dを排出するための排出口が設けられている。
【0077】
このような生成ガス取出管60を設けることにより、重い灰分等の残差は生成ガス取出管60を上昇できずに下方に落ちるので、上側から配分等を除いた生成ガスGSを取り出すことができる。ガス化ユニットが一つだけの場合でも、
図1と同様に、一つのガス化ユニットの反応部の下流側から上方に伸びる生成ガス取出管60を設けて、生成ガス取出管60の上部にガス取出口61を設けて生成ガス取出管60の上方から生成ガスを取り出すように構成することが好ましい。しかし、このような生成ガス管は必須ではなく、生成ガス取出管60を設けずに、反応部55a,55bの下流である結合部58から生成ガスを取り出すように構成しても良い。
【0078】
生成ガス取出管60にはガス取出口61の方から負圧がかかっており、生成ガスGSは反応部55a,55b内から生成ガス取出管60を介してガス取出口61の方に吸引されて移動する。不純物や灰分は重いため反応炉及び結合部58の下方に落下して、残渣Dとして結合部58の下方から排出される。生成ガスGSはガス取出口61から取り出されて、各種フィルタや冷却装置等を経てガスタンク65に貯蔵される。
【0079】
ガス化炉50の各ガス化ユニット51a、51bの加熱部56a、56bには、熱源として、炭化炉20から取り出された高温の排ガスHEGが、耐熱性の配管17aを介して供給される。加熱部56a、56bは反応部55a,55bを貫通しているので、反応部55a、55bに対して加熱部56a、56bからの輻射熱が全方位に向けて放射される。
【0080】
図1では、ガス化炉50の各加熱部56a、56bはそれぞれ一つの配管で構成されている例を示しているが、各加熱部56a、56bのそれぞれを、各反応部55a、55b内を貫通する複数の配管として構成することも可能である。これにより、より効率的に高温の排ガスHEGの熱エネルギーを反応部55a、55bの原料(微細化した炭化物C3及び過熱水蒸気)に伝えることが可能となる。また、
図1では2つのガス化ユニット51a、51bに対して1組の炭化物供給部41及び粉砕部42を有する構成を示しているが、各ガス化ユニット51a、51b毎にそれぞれ1組ずつ(
図1では合計2組、ガス化ユニットが3個の場合には3組)設けても良い。
【0081】
ガス化炉50の加熱部56a、56bを通過した排ガスHEGはその後ボイラー45に送られてボイラーの熱源として使用され、160℃程度の飽和水蒸気Wvを生成する。ボイラー45により生成された飽和水蒸気Wvは、
図3~
図5に示す第2~第4の実施形態に係る炭化炉においては、水蒸気供給管35a~35b又は蒸気室35にも送られる。飽和水蒸気Wvは、第1の空気供給機構13または蒸気室35及び水蒸気供給管36c~36fを介して炭化炉の排ガス燃焼領域B1を通過する際にさらに高温に加熱されて、高温の過熱水蒸気となり、有機物燃焼領域A1においてバイオマス(有機物)C1に噴射される。
【0082】
<ガス化炉の動作>
炭化炉20の炭化物取出部23から取り出された炭化物C2は、搬送路15aを介して炭化物供給部41に送られる。炭化物供給部41に収容されている炭化物は、適宜ガス化に必要な量が粉砕部42に供給されて微細化された炭化物C3となる。微細化された炭化物C3とガス化剤である高温の過熱水蒸気Hva,Hvbが、噴射投入部53a、53bにより、各ガス化ユニット51a、51bの反応部55a、55bに噴射して投入される。
加熱部56a、56bの流路57a、57bには1000℃~1300℃の高温の排ガスHEGが流れており、加熱部56a、56bは反応部55a、55bの中を貫通しているので、加熱部の56a56bの輻射熱、接触により多くの熱エネルギーが反応炉に供給される。これにより、排ガスHEGの熱エネルギーを効率的に反応炉に取り込むことができる。
【0083】
バイオマス発電システムでは、通常、水素ガス、一酸化炭素ガスを主とし生成して燃料として提供する。そのためガス化剤として高温の水蒸気を用いる例を示しているが、使用するガス化剤は、生成するガスの種類に応じて適宜選択することができる。
【0084】
前述した通り、微細化した炭化物C3と高温の水蒸気Hva、Hvbとを混合した雰囲気の各反応部55a、55bに投入は、各ガス化ユニット51a、51bの噴射投入部53a、53bに噴射ノズルを設けて加熱管54a、54bの周囲に回り込み反応管内をできるだけゆっくりと下流側に移動するように噴射することが望ましい。
【0085】
ガス化炉50により炭化物C3からガス化反応により生成された生成ガスGSは、ガス回収路15bを通り複数のフィルタや冷却装置を通して(いずれも図示せず)冷却され不純物が除去されて、ガスタンク65に貯蔵される。生成ガスの温度を下げるための熱回収装置や冷却装置及びフィルタは、公知のものを利用することができる。
ガスタンク65に貯蔵された生成ガス(水性ガス等)GSは、例えば発電機67を駆動するためのエネルギーとして使用される他、エタノール生成装置に供給されてエタノールを生成、水素ガス分離、燃料電池での発電等エネルギー化することができる。
【0086】
ガス化炉50の加熱部56a、56bの流路57a、57bを通過した高温の排ガスHEGは、ボイラー45や熱交換器(図示せず)により熱エネルギーの回収が行われて比較的低温となった排ガスLEGとなる。これらの排ガスLEGの一部は配管18を介して乾燥室11に送られ、バイオマスの乾燥のために使用される。残りの排ガスLEGは、複数のフィルタ及び冷却装置46等を通過させて温度及び不純物の量が所定の排出基準を満たすように処理した後、外部に放出される。
【0087】
<炭化炉の第2の実施形態>
図5に本発明の炭化炉の第2の実施形態を示す。第2の実施形態に係る炭化炉20aは、炭化炉20aの上部から下方に伸びる水蒸気供給管36c、36dにより、過熱水蒸気を燃焼領域A1のバイオマスC1に対して放射する構造となっている点で、
図1から4に示す炭化炉とは異なっている。第2の実施形態にかかる炭化炉20aでは、排ガス燃焼領域B1の上部設けられた蒸気室35において高温の過熱水蒸気が生成される。排ガス燃焼領域B1は高温の排ガスHEGの熱源であるので、
図1~4の実施形態よりもより高温の過熱水蒸気を生成することが可能となる。また、水蒸気供給管36c、36dを介して有機物燃焼領域A1まで移送される際に、さらに加熱されて、ほぼ1000℃近い過熱水蒸気となって有機物燃焼領域A1で有機物C1に放射される。
【0088】
なお蒸気室35には、上述したように炭化炉20aの排ガス燃焼領域B1の温度低下を抑える観点から、ボイラー45(
図1)から温度160℃前後の飽和水蒸気Wvを蒸気室35へ供給し、この飽和水蒸気Wvを蒸気室35でさらに加熱することにより過熱水蒸気を生成することが好ましい。しかし、蒸気室35へ直接水を供給して水蒸気を生成することも可能である。なお、蒸気室35の底面は熱伝導率の高い材料に形成されることが好ましい。高温の過熱蒸気は、有機物燃焼領域A1において有機物C1に放射させる。このように有機物C1に対して1000℃前後の高温の過熱水蒸気が直接照射されることにより、高温炭素化促進効果を得ることができ、炭化効率を高めることが可能となる。
【0089】
<炭化炉の第3の実施形態>
図6に炭化炉の第3の実施形態を示す。
図6に示す本発明の第3の実施形態にかかる炭化炉20cと
図5に示す第2の実施形態にかかる炭化炉20bの異なる点は、第3の実施形態に係る炭化炉20cにおいては、蒸気室35から有機物燃焼領域A1に高温の過熱水蒸気を供給する水蒸気供給管36e、36fが、炭化炉内の内壁21aに沿って螺旋状に配管されている点である。このように排ガス燃焼領域B1を通過する距離が長くなるよう構成することにより、水蒸気供給管を通過する水蒸気の加熱効率が高くなり、より高い温度の過熱水蒸気を生成することができる。この構成により、蒸気室35での加熱時間を短縮すること及び、有機物燃焼領域A1において解放される過熱水蒸気をさらに高温に加熱することが可能となり、さらに高温炭素化促進効果を高めることができる。
【0090】
図7は、
図1~
図6に示す炭化炉20、20a、20b、ガス化炉50、有機物のガス化システム10(バイオマス発電システム)の制御系の基本構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6を参照して、各部の制御の概略について簡単に説明する。71~77で指定されている各部は、
図1~
図5に示す炭化炉又はガス化炉等に設けられるセンサ等のパッシブデバイス(受動装置)またはバルブ等アクティブなデバイス(能動装置)群を例示している。例えば、それぞれ複数設けられている温度センサ、圧力センサが受動装置にあたり、バルブ、各種モータ、操作部、搬送路などが能動装置に該当する。制御部80は、これらの装置及び稼動部群71~77のうちセンサや操作部等から各種情報や制御データを取得して、炭化炉、ガス化炉、搬送路等の動きを制御する。
【0091】
図7では、制御情報を取得するデバイス及び制御対象となるデバイスとして、表示/操作部71、各種センサ類72、炭化炉稼動部73、ガス化炉稼動部74、移送関連稼動部75、発電関連稼動部76、その他の稼働部77等を例示している。
表示/操作部71は、炭化炉の動作状況、ガス化炉の動作状況、ガスタンク、発電機等の状態を監視する表示部、及びマニュアルで操作する操作部などである。各種センサ類72としては、例えば温度センサ、圧力センサ等であり、炭化炉稼動部73は、有機物投入部、蓄熱体の回転駆動するモータ、第1及び第2の空気を供給するブロアー、炭化物の取出しのための炭化物取出部等である。ガス化炉稼動部74は微細化した炭化物やガス化剤等を噴射するノズル等であり、移送関連稼動部75はバイオマス、炭化物や残差等を搬送するスクリューコンベア等である。発電関連稼動部76は、エンジン、発電機、電力制御装置などであり、その他の稼働部77は排ガス、生成ガス、空気、水蒸気等の通過や圧力の調整を行うバルブやボイラー等である。
【0092】
制御部80はCPU、メモリ、記録媒体、及び基本制御ソフトウェア等により構成されており、既存のサーバまたはコンピュータを用いることができる。バイオマス発電システムの基本構成要素である炭化炉、ガス化炉、発電機、搬送路等を制御する各モジュール毎の制御ソフトウェアである炭化炉制御部81、ガス化炉制御部82、搬送制御部83、発電制御部84、その他の制御部85を備えており、各種センサから取得した情報や操作部からの指示に基づいて、担当するモジュールの各駆動部を制御する。
【0093】
表示/操作部71からの指示データ及び各種センサ類72からのデータは制御データとして、インターフェース78を介して制御部80に送信される。制御部80は取得したデータを対応する各制御部81~85に渡し、各制御部81~85は受信した制御データに基づいて各稼働部の制御の必要性を判断する。制御動作が必要であれば、制御部80及びインターフェース78を介して、対応する表示/操作部71、稼働部73~77に対して制御信号を送信し、各部の動作を制御する。対応する表示/操作部71、稼働部73~77においては受信した制御信号に基づいて所定の動作が実行される。
【0094】
図7に示しているソフトウェアモジュールや個別動作プログラムは例示であり、ここに例示されているソフトウェアやプログラムに限定されない。炭化炉制御部81は、炭化炉の各部を制御する制御プログラムであり、例えば、バイオマス供給管理86、温度管理87、蓄熱体回転駆動制御88、炭化物・排ガス管理89等の個別の動作プログラムに基づいて、炭化炉の動作を制御する。ガス化炉制御部82はガス化炉の各部を制御する制御プログラムであり、原料供給管理90、温度管理91、生成ガス管理92等の個別プログラムに基づいて、ガス化炉の動作を制御する。また、
図7のブロック97として示すように、高温の水蒸気(好ましくは過熱水蒸気)の供給を管理する制御するプログラム97も設けられ、有機物燃焼領域A1において高い効率で炭化を促進できるように、高温の水蒸気の供給が制御される。
【0095】
搬送制御部83は、バイオマス発電システム内の原料、生成物、廃棄物の供給、移動、取り出し等を制御する。例えば、モータ・バルブ管理94等のプログラムに基づいて、各搬送用のモータやバルブの動作を制御し、温度管理93等のプログラムに基づいて、炭化物、排ガス、ガス化剤(高温水蒸気等)、生成ガス、廃棄物の移動、各種水蒸気等の温度管理などを行う。発電制御部84は、電力管理95のプログラムに基づいて、発電のためのガスの供給や出力電力の管理及び制御を行い、その他の制御部85は、異常状態の警告その他の必要な管理や制御等を行う。
【0096】
炭化炉20もガス化炉50も発電機67も、稼働開始時の制御と安定運用状態の制御では大きく異なる。運転開始時には、乾燥炉で乾燥された有機物C1が炭化炉20に投入されて第1の温度センサTS1が所定の温度に達するまで、有機物燃焼領域A1で有機物C1が燃焼される。有機物C1が投入され温度が上昇して所定の温度に達して温度が安定すると、正常に稼働可能な状況になると炭化物取出部23から、初動運転時の炭化物や燃焼残差等を取り出して、通常運転の制御に移行する。
【0097】
通常運転では、まず、運転目標に基づいて操作部等により設定された炭化物の生成量に応じて、単位時間あたりの有機物C1の投入量と蓄熱体の回転速度、第1及び第2の空気供給機構13,14から供給する燃焼用空気の供給量、及び第1の空気供給機構13から供給する高温の水蒸気の投入量についての各種基本データが設定される。これらの基本データに基づいて、原料となる有機物C1が投入され、蓄熱体が所定の回転速度で回転され、有機物燃焼領域A1と排ガス燃焼領域B1に所定量の燃焼用空気が供給され、また有機物燃焼領域A1に所定の温度の所定量の水蒸気が供給されて、通常運転が開始される。
【0098】
通常運転においては、炭化炉制御部81及び炭化炉制御部は、炭化炉20,20a,20bが設定された速度で炭化物を生成できるように、第1の温度センサTS1に基づいて第1の空気供給機構13から供給する燃焼用空気の量、及び水蒸気の量を調整して有機物燃焼領域A1の温度及び炭化環境を制御するとともに、投入する有機物C1の量、及び蓄熱体30の回転速度を制御する。また排ガスHEGの温度が所定の温度以上のとなるように、第2の空気供給機構14から送り込む燃焼用空気量を調整して、可燃性ガスの燃焼を制御して、排ガスHEGの温度を制御する。
【0099】
図8に、本発明の排ガスの温度を制御する手順の一例を示すフローチャートを示す。制御部80及び炭化炉制御部81は、排ガス燃焼領域B1に設けられた第2の温度センサTS2の情報を定期的に取得して、排ガスの温度を監視する(ステップS1)。次に、第2の温度センサTS2の検出温度が第1の排ガス温度以下かどうかが確認される(ステップS2)。第1の排ガス温度は例えば800℃、又は1000℃等の温度に任意に設定可能であるが、ガス化炉50に提供する高温の排ガスHEGの温度としての最低限の温度として設定する。
【0100】
第2の温度センサTS2の検出温度が予め設定されている第1の排ガス温度よりも低い場合には(ステップS2;Yes)、第2の空気供給部から供給する空気の量を増加させる(ステップS3)。これにより、排ガスの燃焼が促進されて、排ガスの温度が上昇する。
【0101】
第2の温度センサTS2の検出温度が予め設定されている第1の排ガス温度よりも高い場合には(ステップS2;No)、第2の温度センサTS2の検出温度が予め設定されている第2の排ガス温度よりも高いかどうかが確認される(ステップS4)。第2の排ガス温度よりも低い場合には(ステップS4:No)、供給する空気量は特に変更せずに、第2の温度センサによる温度チェックが繰り返される。検出温度が第2の排ガス温度よりも高い場合には(ステップS4:Yes)、第2の空気供給機構14からの空気の供給を減少させる(ステップS5)。これにより、可燃性排ガスの燃焼が抑えられ、排ガスHEGの温度が少し低下する。
【0102】
なお、ガス化ユニット51a、51bに温度センサを設けて、ガス化ユニットの反応部55a、55bの内部の温度に基づいて、炭化炉の排ガス燃焼領域B1の燃焼を調整して炭化炉から排出する排ガスHEGの温度を制御するように構成しても良い。ガス化炉への微細化した炭化物C3及びガス化剤(過熱水蒸気)の投入量及び投入タイミング等のガス化炉の制御は、ガス化炉制御部82によって行われ、設定された生成ガスの生産量に応じて炭化物の提供等が制御される。
【0103】
なお、廃プラスチックその他の工業製品またはこれらの製造工程に由来して発生する有機物については、本発明の炭化炉等から排出される高温排ガスHEGの高熱を利用して、これらの有機物を気化させて、ガス化ユニットに噴射して投入する。ガス化ユニットへの投入口は、微細化した炭化物C3の噴射投入部53a、53bとは別に設けることが望ましい。これにより、廃プラスチック等を効率的にガス化することが可能となる。
【0104】
以上の説明から明らかなように、本発明の炭化炉によれば、炭化炉内の蓄熱体に設けた突出部により、炭化炉内における有機物(バイオマスC1等)の移動を制御することにより、炭化物を安定的に生産することが可能となった。また、排ガスの温度が一時的に下がったとしても燃焼用空気を供給することにより、可燃性排ガスの燃焼を促進させるように制御することにより、排ガスのタール分を炭化炉内で900℃以上の温度で燃焼させ再結合しないガス成分とし、熱エネルギーとして利用することが可能となった。さらに排ガス燃焼用の空気を加熱して供給することで、炭化炉から排出する排ガスの温度をより安定的に高い温度で出力することが可能となる。
【0105】
さらに、ガス化ユニットの内部を貫通するガス流路を加熱部とし、加熱部を取り囲むように反応部を設けることにより、高温の排ガスの熱エネルギーを効率的に利用してガス化反応をより効率的に行うことが可能となった。このようなガス化効率の高い小型のガス化ユニットを複数組み合わせることにより、バイオマスの発生量に応じた規模のガス化炉を種々提供することができる。
【0106】
このような炭化効率が高く炭化速度を正確に制御できる炭化炉と、希望の出力に合わせて柔軟な組み合わせができる小型のガス化炉とにより、地域特性に応じた効率的な有機物のガス化システムの構築が可能となる。これにより、有機物から生成した水素ガス、一酸化炭素ガスを主体として可燃性ガスまたはエタノール等のエネルギー燃料に変換が可能になり、効率的な発電できるバイオマス発電システム等の構築も可能となる。
【0107】
図1,4,5の炭化炉においては、蓄熱体30の外周面から突出する突出部としてスクリュー状の突出部32を例示した。しかし突出部の形状はこれに限定されない。また、耐熱性を高めるために、突出部32は耐熱性材料を用いて構成し、さらにセラミック等をプラズマ溶着する等、さらに耐熱性・蓄熱性を向上させる加工を施すことが望ましい。
【0108】
なお、明細書及び図面に開示した実施形態は例示であって、本発明の本旨に沿って適宜変更可能である。たとえば、蓄熱体の突出部の形状、大きさ等、ガス化炉の加熱部や反応部の形状及び位置関係は、開示した実施形態に限定されることなく、本発明の技術思想に沿って適宜変更して実施することが可能であり、そのような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
10 有機物のガス化システム
11 乾燥室
12 投入装置
13 第1の空気供給機構
13a 第1の外周壁
13b、14b 加熱空間
14 第2の空気供給機構
14a 第2の外周壁
20,20b、20c 炭化炉
21 外枠体(本体部)
21b 第1枠体部
21c 第2枠体部
22 有機物投入口
23 炭化物取出口
24 ガス排出部
25a、第1の空気供給口
25b、第2の空気供給口
25c、25d 空気噴出穴
30 蓄熱体
32 突出部
36a~36f 水蒸気供給
37a~37f 水蒸気吹出口
40 炭化物等供給部
41 炭化物収容部
42 粉砕機
43 加熱器
45 ボイラー
50 ガス化炉
51a,51b ガス化ユニット
52a,52b 筒状本体部
53a,53b 噴射投入部
55a,55b 反応部
56a,56b 加熱部
57a,57b 流路
60 生成ガス取出管
61 ガス取出口
65 ガスタンク
67 発電機
A1 有機物燃焼領域
A2 炭化領域
B1 排ガス燃焼領域
C1 バイオマス
C2 炭化物
C3 微細化された炭化物
HEG 高温排ガス
Wv 飽和水蒸気
Hva,Hvb 過熱水蒸気
ELC 電気
【手続補正書】
【提出日】2024-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を投入することにより投入された有機物から炭化物を生成する炭化炉であって、
内部に堆積した有機物の上部に酸素を供給して、前記有機物の一部を燃焼させて前記炭化炉の温度を高温に維持する有機物燃焼領域と、
前記有機物燃焼領域の下方に設けられて、前記有機物を炭化する炭化領域と、
高温の水蒸気を、前記有機物燃焼領域の外周を通過させて及び/又は水蒸気供給管により前記有機物燃焼領域の上部から前記有機物燃焼領域まで通過させて、前記有機物燃焼領域の熱エネルギーによりさらに加熱して有機物の高温炭素化促進効果を奏する温度以上の高温の過熱水蒸気とし、該過熱水蒸気を前記有機物燃焼領域の前記有機物に供給する水蒸気供給部と、
を備えることを特徴とする炭化炉。
【請求項2】
前記炭化炉は、
該炭化炉の外枠体の一部を構成する前記有機物燃焼領域の外側を囲む少なくとも1つの貫通穴を有する第1枠体部と、該第1枠体部の外周を少し隙間を開けて取り囲む第1の外周壁とにより、前記第1枠体部の外周と接する加熱空間を形成し、該加熱空間に空気を供給して、前記貫通穴から前記有機物燃焼領域に燃焼用空気を供給する第1の空気供給機構を備えており、
前記第1枠体部は、耐熱性及び熱伝導性を有する材料により形成されており、前記加熱空間に投入された燃焼用空気を加熱して前記貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に高温の燃焼用空気として供給し、
前記水蒸気供給部は、水蒸気を前記第1の空気供給機構の前記加熱空間に投入してさらに加熱し、該加熱した高温の過熱水蒸気を前記燃焼用空気とともに前記貫通穴を介して前記有機物燃焼領域に投入することにより前記高温の過熱水蒸気を前記有機物に供給することを特徴とする請求項1に記載の炭化炉。
【請求項3】
前記水蒸気供給部は、前記加熱空間内に配置された熱伝導性の良い管状体を備え、供給された水蒸気が該管状体の内部を通過する際に加熱されて、前記加熱空間内に投入されることを特徴とする請求項2に記載の炭化炉。
【請求項4】
前記炭化炉は、
さらに、前記有機物燃焼領域より上部に設けられ、前記有機物燃焼領域において発生した可燃性のガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、該排ガス燃焼領域に燃焼用の空気を供給する第2の空気供給機構と、前記排ガス燃焼領域において前記可燃性ガスを燃焼させた後の高温の排ガスを排出する排ガス排出部とを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の炭化炉。
【請求項5】
さらに制御部を備えており、該制御部は、
前記排ガス燃焼領域の温度が所定の第1の温度よりも低いときには、前記第2の空気供給機構により前記燃焼用空気の供給を増やし、前記排ガス燃焼領域の温度が所定の第2の温度よりも高いときには、前記第2の空気供給機構による前記燃焼用空気の供給を減少させるよう供給空気量を制御することを特徴とする請求項4に記載の炭化炉。
【請求項6】
前記炭化炉は、さらに、
前記有機物燃焼領域の上部に設けられて、前記有機物燃焼領域において発生した可燃性のガスを燃焼させる排ガス燃焼領域と、
該排ガス燃焼領域に燃焼用の空気を供給する第2の空気供給機構と、
前記排ガス燃焼領域において前記可燃性ガスを燃焼させた後の高温の排ガスを排出する排ガス排出部と、
前記排ガス燃焼領域の上部に設けられて水蒸気を生成する蒸気室と、該蒸気室の水蒸気を前記排ガス燃焼領域を経由して前記有機物燃焼領域まで加熱しながら移送する前記水蒸気供給管とを有する前記水蒸気供給部と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の炭化炉。
【請求項7】
800℃以上の前記高温の過熱水蒸気を前記有機物に供給して反応させることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化炉。