(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133551
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】CD47遮断療法およびCD38抗体の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240925BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20240925BHJP
C07K 16/00 20060101ALN20240925BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240925BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240925BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240925BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
A61K38/16 ZNA
A61K39/395 N
A61P35/02
A61P35/00
A61K38/16
C07K16/28
C07K14/705
C07K16/00
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/12
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106564
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2020547336の分割
【原出願日】2019-03-08
(31)【優先権主張番号】62/642,131
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593141953
【氏名又は名称】ファイザー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100133927
【弁理士】
【氏名又は名称】四本 能尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174447
【弁理士】
【氏名又は名称】龍田 美幸
(74)【代理人】
【識別番号】100185960
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 理愛
(72)【発明者】
【氏名】リン,グロリア ホイ イン
(72)【発明者】
【氏名】ヴィリアー,ナターシャ ニールセン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,マーク マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウィンストン,ジェフリー トッド
(72)【発明者】
【氏名】ユーガー,ロバート アダム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】組み合わせて、癌治療を改善するために有用である方法および使用を提供する。
【解決手段】SIRPαFcの抗癌効果は、ダラツムマブの存在下で向上する。特定の組み合わせは、IgG1またはIgG4アイソタイプのいずれかであるFcを含むSIRPαFc形態を含む。これらの組み合わせは、リンパ腫、白血病、および骨髄腫を含む血液癌を治療するために特に有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疾患細胞を呈する対象を治療するためのSIRPαFcタンパク質およびCD38抗体の組み合わせの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、CD47/SIRPα相互作用を遮断する薬物の方法および使用に関する。より具体的には、本開示は、組み合わせて、癌治療を改善するために有用である方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞は、癌細胞抗原に結合する抗体による破壊のための、およびその抗体のFc部分へのFc受容体の結合によるマクロファージの動員および活性化による破壊のための標的である。癌細胞のCD47とマクロファージのSIRPαの間の結合は、多くの腫瘍細胞がマクロファージによる破壊を回避できるようにする「don’t eat me」シグナルを送信する。CD47/SIRPα相互作用の阻害(CD47遮断)はマクロファージが標的CD47+癌細胞を「確認」し破壊することを可能にすることが示されている。CD47遮断により癌を治療するためのSIRPαの使用は、国際公開第2010/130053号に記載されている。
【0003】
Trillium Therapeuticsの国際公開第2014/094122号は、CD47とSIRPαの間の相互作用を阻害するかまたは拮抗するタンパク質薬物を記載する。このCD47遮断剤は、IgGベースのFc領域の特に有用な形態と連結される、細胞外ドメインの特定の領域を組み込んだヒトSIRPαの形態である。この形態では、SIRPαFc薬物は、CD47+表現型を示す癌細胞の生存率に劇的な効果を示す。この効果は特に、急性骨髄性白血病(AML)細胞および他の多くの種類の癌においてみられる。顕著に変えられた一次構造および強力なCD47結合親和性を有するSIRPの可溶形態は、国際公開第2013/109752号に記載されている。
【0004】
他のCD47遮断剤が記載されており、これらは様々なCD47抗体を含み(例えば、Stanfordの米国特許第8562997号およびInhibRxの国際公開第2014/123580号を参照されたい)、各々が異なる抗原結合部位を含むが、共通して、CD47への結合について内因性SIRPαと競合し、マクロファージと相互作用し、最終的にはCD47+疾患細胞の枯渇を増大させる能力を有する。これらのCD47抗体は、SIRPα構造を組み込んだ薬物に固有の活性とはかなり異なるin vivoでの活性を有する。後者は、例えば、赤血球へのごくわずかな結合を呈するが、CD47抗体および高親和性SIRPαバリアントにおける反対の特性は、投与後の薬物「シンク」に対応する戦略を必要とする。
【0005】
CD47/SIRPα軸の遮断で使用するために、さらに他の剤が提唱されている。これらの剤としては、Viral Logicの国際公開第2010/083253号に記載されているCD47Fcタンパク質、およびUniversity Health Networkの国際公開第2013/056352号、Eberhardの米国特許第6913894号などに記載されているSIRPα抗体が挙げられる。
【0006】
抗癌薬物の開発におけるCD47遮断アプローチは、大きな臨床的見込みを示している。これらの薬物の効果を改善するための、および特にSIRPαのCD47結合形態を組み込むCD47遮断剤の効果を改善するための方法および手段を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
抗腫瘍抗体の効果は、CD47遮断剤と組み合わせたときに向上する。この開示は、SIRPαFcの抗癌効果が、特に、CD38抗体と組み合わせて投与された場合に向上することを明らかにする。実施形態では、SIRPαFcは、ヒトSIRPαのIgVドメインを含むIgG4アイソタイプを有し、CD38抗体はダラツムマブである。SIRPαFcによって引き起こされるダラツムマブ活性の向上は、治療されたCD47+癌細胞の枯渇の増加として、患者の生存率の改善として、および/または腫瘍のサイズまたは分布、例えば全体的な腫瘍負荷の減少として現れる。
【0008】
一態様では、CD47+疾患細胞を呈する対象を治療する方法であって、SIRPαFcのIgG4アイソタイプ(SIRPαG4と示す)およびダラツムマブまたはその市販形態(ダラザレックス(登録商標))などのCD38抗体を含む医薬の組み合わせを対象に投与することを含む、方法が提供される。好適には、標的疾患細胞は、表現型がCD38+およびCD47+である。
【0009】
関連態様では、癌細胞などのCD47+疾患細胞、特にCD47+/CD38+表現型を有する癌細胞を呈する対象の治療のための、CD38抗体と組み合わせたSIRPαG4の使用が提供される。
【0010】
別の態様では、CD47+/CD38+疾患細胞の治療で使用するための、SIRPαG4およびCD38抗体を含む医薬の組み合わせが提供される。
【0011】
別の態様では、疾患細胞の治療におけるそれらの使用を教示する説明書と共に、SIRPαG4およびCD38抗体を含む医薬の組み合わせを含むキットも提供される。
【0012】
特定の実施形態では、CD47遮断剤とCD38抗体の組み合わせは、骨髄腫、リンパ腫または白血病などの血液癌の治療で使用するためである。
【0013】
代替的実施形態では、CD38抗体と組み合わせて使用されるSIRPαFcは、SIRPαG1である。他の代替的実施形態では、CD38抗体は、ダラツムマブもしくはその活性型、そのCD38結合断片もしくはその活性型、またはダラツムマブのCD38結合バリアント、二重特異性形態または二機能性形態である。
【0014】
本開示の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本開示の好ましい実施形態を示しているが、発明を実施するための形態から本開示の趣旨および範囲内の様々な変更および修正が当業者に明らかになるため、例示としてのみ与えられることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】MM.1S(ヒト多発性骨髄腫細胞株)担腫瘍マウスをCD38抗体ダラツムマブ(10mg/kg、2回/週)およびSIRPαG4(10mg/kg、5回/週)の組み合わせにより、腫瘍接種後11日目から治療したときの結果を示す図である。CD38抗体ダラツムマブ(10mg/kg、2回/週)単剤療法またはSIRPαG4(10mg/kg、5回/週)単剤療法と比較して、増加された腫瘍成長阻害(AおよびC)ならびに改善された生存率(B)が観察された。
【
図2】ダウディ(ヒトバーキットリンパ腫細胞株)担腫瘍マウスをCD38抗体ダラツムマブ(10mg/kg、2回/週)およびSIRPαG4(10mg/kg、5回/週)の組み合わせにより、腫瘍播種後3日目から治療したときの結果を示す図である。CD38抗体ダラツムマブ(10mg/kg、2回/週)単剤療法またはSIRPαG4(10mg/kg、5回/週)単剤療法と比較して、増加された腫瘍成長阻害(AおよびC)ならびに改善された生存率(B)が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、CD47+表現型を有する疾患細胞を呈する対象を治療するために有用な方法、使用、組み合わせおよびキットを提供する。この方法では、CD47+癌対象は、ダラツムマブなどのCD38抗体と、好ましくはヒトSIRPαのFc融合形態、すなわちSIRPαFcであるCD47遮断剤の組み合わせを受け、ここでFcは、IgG4アイソタイプまたはそのFc受容体結合バリアントである(SIRPαG4と呼ばれる)。CD38抗体の効果は、CD47結合SIRPαG4により大幅に向上する。治療効果は、CD47+疾患細胞がCD47+癌細胞および、ダラツムマブにも結合しかつ従ってCD38+表現型を有する腫瘍である場合、顕著である。
【0017】
「CD47+」という用語は、本発明のCD47遮断剤により結合の標的とされる細胞の表現型に関して使用される。CD47+である細胞は、CD47抗体をアフィニティーリガンドとして使用するフローサイトメトリーによって同定可能である。適切に標識されたCD47抗体は、この使用のために市販されている(例えば、クローンB6H12の抗体製品が、BD Biosciencesから入手可能である)。CD47表現型について検査される細胞としては、特に内因性CD47+癌細胞を有する疑いのある対象から採取された血液サンプルを含む、標準的な腫瘍生検サンプルを挙げることができる。本発明の薬物の組み合わせによる治療の標的として特に興味深いCD47疾患細胞は、CD47を「過剰発現」するものである。これらのCD47+細胞は典型的には、疾患細胞であり、特定の型の細胞の通常のCD47密度を超える表面上の密度でCD47を提示する。CD47の過剰発現は、細胞の型によって異なるが、本明細書では、例えばフローサイトメトリー、または免疫染色、または遺伝子発現分析などにより、その細胞型にとって正常であるCD47表現型を有する対応する細胞で測定可能なレベルよりも高いと決定されるあらゆるCD47レベルを指すことを意味する。
【0018】
「CD47+疾患細胞」という用語は、疾患に関連し、CD47+表現型を有する細胞を意味する。一実施形態では、CD47+疾患細胞は、癌細胞である。
【0019】
実施形態では、CD47遮断剤は、ヒトSIRPαFcのIgG4型であり、それはCD47がSIRPαと相互作用する場合に生じるシグナル伝達に干渉し、それを抑制するかまたは遮断する。Trillium Therapeuticsの国際公開第2014/094122号(その全体の内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、好ましいSIRPαG4は、CD47と相互作用し抗癌活性を有することが示されているヒトSIRPαの任意の領域のFc融合形態である。本明細書で使用されるとき、「ヒトSIRPα」という用語は、ヒトSIRPαの野生型、内因性、成熟型を指す。ヒトでは、SIRPαタンパク質は、2つの主要な形態で見出される。1つの形態、バリアント1またはV1形態は、NCBI RefSeq NP_542970.1として設定されたアミノ酸配列を有する(残基27~504は、成熟形態を構成する)。別の形態、バリアント2またはV2形態は、13アミノ酸が異なり、GenBankにおいてCAA71403.1として設定されたアミノ酸配列を有する(残基30~504は、成熟形態を構成する)。これらの2つの形態のSIRPαは、ヒトに存在するSIRPαの形態の約80%を構成し、両方とも本明細書では「ヒトSIRPα」という用語に含まれる。本開示は、最も具体的には、ヒトSIRPバリアント2形態、またはV2を含む薬物の組み合わせに関する。
【0020】
本発明の薬物の組み合わせにおいて、SIRPαFc融合タンパク質は、現在の命名法に従いV2形態のIgVドメインを構成し定義する、ヒトSIRPα(106-mer)の少なくとも残基32~137を含むSIRPα成分を有する。以下に示すこのSIRPα配列を、本明細書では配列番号1と称する。
EELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGA[配列番号1]
【0021】
好ましい実施形態では、SIRPαFc融合タンパク質は、配列番号1によって定義されるIgVドメイン、およびSIRPα配列内で隣接している追加の隣接残基を組み込む。ヒトSIRPαのV2形態の残基31~148によって表されるこのIgVドメインの好ましい型は、以下に示す配列を有する118-merである:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPS[配列番号2]。
【0022】
SIRPαFcタンパク質は、エフェクター機能を有するFc領域を組み込む。Fcは「結晶化可能断片」を指し、重鎖定常領域およびヒンジ領域内の構成要素から主に構成される抗体の定常領域を表す。実施形態では、Fc領域は、より低いヒンジ-CH2-CH3ドメインを含む。より好ましくは、Fc領域はCH1-CH2-CH3ドメインを含む。
【0023】
「エフェクター機能を有する」Fc成分は、抗体依存性細胞毒性への少なくともある程度の寄与または補体を固定するある程度の能力などの、少なくともいくらかの天然のまたは操作された機能を有するFc成分である。また、Fcは、少なくともFc受容体に結合する。
【0024】
実施形態では、Fc領域は、野生型ヒトIgG4定常領域の配列を有する。代替的実施形態では、融合タンパク質に組み込まれるFc領域は、存在するが、当然のことながら、IgG1 Fc領域よりも有意に強力ではないエフェクター活性を有する定常領域を有する任意のIgG4抗体に由来する。こうしたFc領域の配列は、例えば、UniProtKB/Swiss-ProtからのP01861(残基99~327)およびGenBankからのCAC20457.1(残基99~327)のIgG4配列のいずれかのFc領域に対応し得る。1つの特定の好ましい実施形態では、G4 Fc領域は、228位(EUナンバリング)に改変を組み込み、この位置のセリンがプロリン(S228P)で置換され、それによりFc二量体内のジスルフィド連結を安定化する。
【0025】
特定の実施形態では、Fc領域は、UniProtKB/Swiss-ProtにおいてP01861として設定されたヒトIgG4のアミノ酸配列、残基99~327に基づき、以下に示され、本明細書で配列番号6として参照されるアミノ酸配列を有する。
ESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列番号3]
【0026】
代替的実施形態では、SIRPαFcは、UniProtKB/Swiss-ProtにおいてP01857として提示されたヒトIgG1のアミノ酸配列に基づくFc領域、残基104~330を有し、以下に示すアミノ酸配列を有する:
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK*[配列番号4]
【0027】
特定の実施形態では、Fc成分がIgG4 Fcである場合、Fcは、少なくともS228P変異を組み込み、以下に示され、本明細書で以下のように参照されるアミノ酸配列を有する:
ESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列番号5]
【0028】
特定の好ましい実施形態では、SIRPαFc融合タンパク質は以下に示すアミノ酸配列番号6を有する:この実施形態では、融合タンパク質のFc成分はIgG4に基づき、S228P変異を組み込む:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSESKYGPPCPPCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK[配列番号6]
【0029】
このSIRPαFc融合タンパク質は、SIRPαG4と呼ばれる。
【0030】
代替的実施形態では、SIRPαFc融合タンパク質は、以下に示すアミノ酸配列を有する:この実施形態では、融合タンパク質のFc成分は、IgG1に基づく:
EEELQVIQPDKSVSVAAGESAILHCTVTSLIPVGPIQWFRGAGPARELIYNQKEGHFPRVTTVSESTKRENMDFSISISNITPADAGTYYCVKFRKGSPDTEFKSGAGTELSVRAKPSDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK[配列番号7]
【0031】
このSIRPαFc融合タンパク質は、SIRPαG1と呼ばれる。
【0032】
好ましい実施形態では、SIRPαFcタンパク質は、分泌されたホモ二量体融合形態で提供され、かつ使用され、融合タンパク質の2つのコピーは、別々のSIRPαFc単一ポリペプチド鎖、例えば、配列番号6を有するSIRPαG4鎖、に存在するシステイン間の共有結合を介して結合される。
【0033】
本発明の薬物の組み合わせは、前述のSIRPαG4またはSIRPαG1、および環状ADPリボースヒドロラーゼとしても公知である、分化38のクラスター、すなわちヒトCD38(hCD38)を結合する抗体を含む。これは、CD4+、CD8+、Bリンパ球、およびナチュラルキラー細胞を含む、多くの免疫細胞の表面に見られる糖タンパク質である。CD38は、細胞接着、シグナル伝達、およびカルシウムシグナリングにおいても機能する。これは、NAD+からADP-リボースへの環状ADP-リボース(cADPR)の合成および加水分解を触媒する多機能エクト酵素である。これらの反応生成物は、細胞内Ca2+の調節に不可欠である。
【0034】
本明細書で使用されるとき、「hCD38」という用語は、UniProtKB/Swiss-Prot P28907と呼ばれる、発現され処理されたタンパク質を含むタンパク質を指す。CD38という用語は、本明細書で総称的に使用され、野生型タンパク質およびその天然に存在するバリアントを指す。「wtCD38」という用語は、野生型形態のヒトCD38のみを参照してより具体的に使用される。「CD38+」という用語は、CD38抗体に結合し、ダラツムマブによる治療に応答するはずである疾患細胞の表現型の特徴を明らかにするために使用される。本明細書で「CD38+」と呼ばれる標的疾患細胞は、CD38を過剰発現する、すなわちCD38にとって正常であるか、またはそれを有しない細胞よりも高い表面CD38密度で存在する癌細胞を含む、ダラツムマブを結合する癌細胞を含む。
【0035】
したがって、CD47+/CD38+表現型を有する疾患細胞は、CD47遮断剤およびCD38抗体と結合し、かつこれらによる治療に応答できるものである。
【0036】
本発明の組み合わせは、より具体的には、および一実施形態では、現在、ダラザレックス(登録商標)の商品名で市販されている、ダラツムマブとして公知であるhCD38抗体に基づく。ダラツムマブは、疾患の病期に関係なく多発性骨髄腫細胞の表面に高度に発現されるシグナル伝達分子であるCD38に結合する、CD38に向けられたモノクローナル抗体である。CD38に向けることで、ダラツムマブは、患者自身の免疫系をトリガーして癌細胞を攻撃し、その結果、アポトーシスを介する直接的な腫瘍細胞死(プログラムされた細胞死)に加えて、複数の免疫媒介作用機序および免疫調節効果を介して急速な腫瘍細胞死をもたらす。
【0037】
ダラツムマブは、CD38抗原に対する免疫グロブリンG1カッパ(IgG1κ)ヒトモノクローナル抗体であり、哺乳動物細胞株(チャイニーズハムスター卵巣)で産生される。ダラツムマブの分子量は、約148kDaである。本発明の実施形態では、ダラツムマブの活性断片が、全長抗体の代わりに、本発明の組み合わせにおいて使用される。有用な断片は特に、Fab断片を含む。
【0038】
アミノ酸配列に関して、ダラツムマブは、以下に報告するその重鎖配列および軽鎖配列によって定義され得る。
http://www.genome.jp/dbget-bin/www_bget?dr:D10777
【0039】
重鎖
EVQLLESGGG LVQPGGSLRL SCAVSGFTFN SFAMSWVRQA PGKGLEWVSA ISGSGGGTYY
ADSVKGRFTI SRDNSKNTLY LQMNSLRAED TAVYFCAKDK ILWFGEPVFD YWGQGTLVTV
SSASTKGPSV FPLAPSSKST SGGTAALGCL VKDYFPEPVT VSWNSGALTS GVHTFPAVLQ
SSGLYSLSSV VTVPSSSLGT QTYICNVNHK PSNTKVDKRV EPKSCDKTHT CPPCPAPELL
GGPSVFLFPP KPKDTLMISR TPEVTCVVVD VSHEDPEVKF NWYVDGVEVH NAKTKPREEQ
YNSTYRVVSV LTVLHQDWLN GKEYKCKVSN KALPAPIEKT ISKAKGQPRE PQVYTLPPSR
EEMTKNQVSL TCLVKGFYPS DIAVEWESNG QPENNYKTTP PVLDSDGSFF LYSKLTVDKS
RWQQGNVFSC SVMHEALHNH YTQKSLSLSP GK;[配列番号8]および
【0040】
軽鎖
EIVLTQSPAT LSLSPGERAT LSCRASQSVS SYLAWYQQKP GQAPRLLIYD ASNRATGIPA
RFSGSGSGTD FTLTISSLEP EDFAVYYCQQ RSNWPPTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP
SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT
LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC[配列番号9]
【0041】
ダラザレックス(登録商標)は、単回投与バイアルで点滴静注用の無色から淡黄色の防腐剤非含有溶液として提供される。pHは、5.5である。ダラザレックスは、0.9%塩化ナトリウム注射液(USP)で希釈される。各ダラザレックス(登録商標)単回投与20mLバイアルは、400mgのダラツムマブ、氷酢酸(3.7mg)、マンニトール(510mg)、ポリソルベート20(8mg)、酢酸ナトリウム三水和物(59.3mg)、塩化ナトリウム(70.1mg)および注射用水を含む。
【0042】
各ダラザレックス(登録商標)単回投与5mLバイアルは、100mgのダラツムマブ、氷酢酸(0.9mg)、マンニトール(127.5mg)、ポリソルベート20(2mg)、酢酸ナトリウム三水和物(14.8mg)、塩化ナトリウム(17.5mg)および注射用水を含む。
【0043】
一実施形態では、SIRPαG4は、配合されたダラツムマブ、または既に配合されたダラザレックス(登録商標)のいずれかと組み合わせて使用される。
【0044】
本発明の医薬の組み合わせに含まれる各薬物は、組み合わせて使用するために別々に配合され得る。これらの薬物は、両方の薬物のレシピエントにおいて、ダラツムマブの効果がSRIPαG4の効果を向上させるか、または少なくとも影響を与える場合に「組み合わせて」使用されると言われる。薬物は、それらが組み合わせた投与のために物理的に混合される場合、およびそれらが、本発明の組み合わせ療法を可能にするキット内に別々に配置される場合にも、組み合わせである。
【0045】
組み合わせにおける2つの薬物は、その組み合わせの効果がいずれかの剤の単独の場合と比較して、向上されるように協働する。好ましい実施形態では、2つの薬物を組み合わせて使用して、CD47+/CD38+である表現型を有する癌を治療する。この利点は、所与のパラメータである標的細胞の適合性(fitness)または活力(vitality)の統計的に有意な改善として現れる。例えば、CD47+癌細胞における、特にCD47+/CD38+癌細胞における利点は、CD47遮断剤とCD38抗体との組み合わせに晒される場合、治療していない場合と比較して、生存癌細胞の数における統計的に有意な減少(したがって、枯渇)か、または癌細胞もしくは腫瘍の数もしくはサイズにおける減少、または任意の特定の腫瘍型の内因性の場所もしくは分布での改善であり得る。利点はまた、治療された対象の全生存率の観点でも確認され得る。実施形態では、薬物の組み合わせによる治療の結果生じる改善は、SIRPαG4のみまたはダラツムマブのみが使用された場合に得られる結果と比較して、少なくとも相加的であり、望ましくは相乗的である効果として現れ得る。また、進行期の多発性骨髄腫患者またはCD38レベルが低い患者でなどのダラツムマブ耐性疾患に対するダラツムマブの有効性での改善もあり得る。
【0046】
使用において、組み合わせにおける各薬物は、投薬量サイズおよび形態およびレジメンに関して、単剤療法の場合と同様に配合され得る。これに関して、それらの組み合わせた使用による改善は、適切な臨床試験で明らかであるように、若干減少された投薬量サイズまたは頻度での使用を可能にし得る。
【0047】
このアプローチでは、各薬物は、薬学的に許容される担体を含む剤形で、および治療有効量で提供される。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される担体」は、生理学的適合性があり、タンパク質/抗体配合の分野で有用な、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを意味する。薬学的に許容される担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなど、ならびにそれらの組み合わせの1つ以上が挙げられる。多くの場合、等張剤、例えば、砂糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。薬学的に許容される担体は、湿潤剤または乳化剤、防腐剤または緩衝剤などの少量の補助物質をさらに含み得、これらは、薬理学的剤の貯蔵寿命を延長するか、または有効性を向上させる。SIRPαG4融合タンパク質およびCD38抗体はそれぞれ、治療配合の分野で標準的な慣行を使用して配合される。注射または注入などによる静脈内投与に好適である溶液は、特に有用である。
【0048】
滅菌溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて上記の成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒に組み込み、続いて滅菌精密濾過することにより調製できる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒体および上に列挙したものからの他の必要な成分を含む滅菌ビヒクルに組み込むことにより調製される。調製のための滅菌粉末の場合、真空乾燥および凍結乾燥(freeze-drying)(凍結乾燥(lyophilization))であり、これは、活性成分の粉末と、事前に滅菌濾過されたそれらの溶液からの任意の追加の所望の成分を生じる。
【0049】
本明細書で使用されるとき、「有効量」は、所望の治療結果を達成するために、必要な投薬量および特定の期間において有効な量を指す。組み合わせにおける各薬物の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに薬物がレシピエントにおいて所望の応答を引き出す能力などの要因によって異なり得る。治療有効量はまた、治療上有益な効果が、薬理学的剤のあらゆる毒性または有害な効果に勝る量である。当然のことながら、CD38抗体は、ヒトでのその使用を承認している規制当局によって許可されるように、患者の投与に好適である量で配合される。使用において、組み合わせにおける各薬物は、投薬量サイズおよび形態およびレジメンに関して、単剤療法の場合と同様に配合される。これに関して、適切に管理された臨床試験で明らかにされるように、それらの組み合わせた使用に起因する協働/利点は、若干減少された投薬量サイズまたは頻度での使用を可能にし得る。
【0050】
SIRPαFc融合タンパク質は、タンパク質送達のために確立された経路のいずれか、特に静脈内、皮内、腫瘍内および皮下注射または注入により、または経口もしくは経鼻投与により対象に投与されてよい。
【0051】
本発明の組み合わせの薬物は、順次または本質的に同時に、例えば、連続的または同時に投与できる。実施形態では、CD38抗体は、SIRPαFcの投与前に与えられる。あるいは、CD38抗体は、SIRPαFcの投与後または投与中に与えられ得る。したがって、実施形態では、治療を受けている対象は、CD38抗体などの組み合わせ薬物の1つにより、既に治療された対象であり、次に、SIRPαFc薬物などの他の組み合わせ薬物により治療される。最も望ましくは、2つの薬物の活性は、これらの薬物を組み合わせて使用したときに促進される活性の改善を得るのに十分な期間、患者内で重複する。
【0052】
投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)をもたらすように調整される。例えば、各薬物を単一ボーラス投与してよく、またはいくつかに細分化した用量を経時的に投与してよく、または治療状況によって適応されるように用量を比例的に減少または増加させてもよい。投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、単位剤形で非経口組成物を配合することが特に有利である。本明細書で使用されるとき「単位剤形」は、治療される対象に対する単位投薬量として適している物理的に別個の単位を指す。各単位は、必要とされる医薬担体に関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。
【0053】
これらの薬物は組み合わせて配合でき、それによりその組み合わせは、1回の投与、例えば、1回の注射または1回の注入バッグでレシピエントに導入できる。あるいは、これらの薬物は、単一のパッケージ中で一緒に提供される別個の単位として、および本発明の方法によるその使用のための説明書と組み合わせることができる。別の実施形態では、本明細書に記載されている障害の治療に有用な量のSIRPαFc薬物とCD38抗体との組み合わせを含む製造物品が提供される。製造物品は、本発明の抗体薬物の組み合わせの一方または両方の薬物、ならびに容器およびラベルを含む。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの、様々な材料から形成されてよい。容器は、状態の治療に有効な組成物を保持し、かつ滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器上のラベルまたは容器に付随するラベルは、組成物が本開示に従ってSIRPαFc薬物と組み合わせて使用され、それによりCD47+疾患細胞に対して向上した効果が引き出されることを示す。製造物品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液など、薬学的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、シリンジ、および使用説明書付きの添付文書を含む、商業的および使用の観点から望ましい他の物をさらに含んでもよい。
【0054】
投与のために、SIRPαFc薬物の用量は、宿主の体重の約0.0001~100mg/kg、より通常には0.01~10mg/kgの範囲内である。例えば、非経口SIRPαFc投薬量は、0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重、または10mg/kg体重、または0.1~100mg/kgの範囲内であり得る。CD47遮断剤が配列番号6または7のSIRPαFc融合タンパク質である場合、用量は、腫瘍内注射によって投与される用量あたり約1ug~10mgであり得る。
【0055】
ダラツムマブ投与は、多発性骨髄腫の治療のために確立されており、この同じアプローチは、他の適応症の治療のためのその使用も導くことができる。すなわち、ダラツムマブは、プロテアソーム阻害剤(PI)および免疫調節剤(IMiD)を含む、少なくとも3種類の治療を受けた患者、またはPIおよびIMiDに対して二重不応性である患者における多発性骨髄腫の単剤療法として適応される。1~8週目:週1回、16mg/kgのIV注入。9~24週目:2週間ごとに16mg/kgのIV注入。および25週目以降疾患が進行するまで:4週間ごとに16mg/kgのIV注入。
【0056】
ダラツムマブはまた、少なくとも1つの前治療を受けた多発性骨髄腫患者の治療のためにボルテゾミブおよびデキサメタゾンと組み合わせて適応される:1~9週目:週1回、16mg/kgのIV注入。10~24週目:3週間ごとに16mg/kgのIV注入。および25週目以降疾患が進行するまで:4週間ごとに16mg/kgのIV注入。
【0057】
ダラツムマブはまた、少なくとも1つの前治療を受けた多発性骨髄腫患者の治療のためにレナリドマイドおよびデキサメタゾンと組み合わせて適応される:1~8週目:週1回、16mg/kgのIV注入。9~24週目:2週間ごとに16mg/kgのIV注入。および25週目以降疾患が進行するまで:4週間ごとに16mg/kgのIV注入。
【0058】
同じように、ダラツムマブ治療は、レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤を含む、少なくとも2つの前治療を受けた多発性骨髄腫患者の治療のために、ポマリドマイドおよびデキサメタゾンと組み合わせて適応される:1~8週目:週1回、16mg/kgのIV注入。9~24週目:2週間ごとに16mg/kgのIV注入。および25週目以降疾患が進行するまで:4週間ごとに16mg/kgのIV注入。
【0059】
ダラツムマブ(JNJ-54767414)は、最初の3サイクルでは毎週、4~8サイクル(3週間ごと)の1日目、その後のサイクル(4週間ごと)の1日目に、16mg/kgの用量で静脈内(IV)注入として投与できる。最初の8サイクルは21日サイクルであり、サイクル9以降は28日サイクルである。
【0060】
上記のとおり、ダラツムマブは、ボルテゾミブとして知られているプロテアソーム阻害剤およびデキサメタゾンと組み合わせて使用できる。
【0061】
ボルテゾミブは、各21日サイクルの1日目、4日目、8日目、および11日目に1.3mg/m2で皮下(sc)投与できる。ボルテゾミブ治療8サイクルの投与を実施できる。
【0062】
デキサメタゾンは、最初のボルテゾミブ治療8サイクルの1日目、2日目、4日目、5日目、8日目、9日目、11日目、および12日目に20mgで経口投与できる(サイクル1~3を除く)。サイクル1~3では、参加者は1日目、2日目、4日目、5日目、8日目、9日目、11日目、12日目および15日目にデキサメタゾン20mgを受ける。参加者がダラツムマブの注入を受ける週の間、デキサメタゾンは、注入前の投薬として、ダラツムマブ注入の前に20mgのIV用量で投与される。
【0063】
薬物の組み合わせは、様々なCD47+疾患細胞の治療に有用である。一実施形態では、薬物の組み合わせを使用して、CD47+およびDC38+である細胞の成長または増殖を阻害できる。これらの癌としては、癌腫および肉腫などの固形癌、ならびに血液癌が挙げられる。本明細書で使用されるとき、「血液癌」は、血液の癌を指し、とりわけ、白血病、リンパ腫および骨髄腫を含む。「白血病」は、血液の癌を指し、そこでは感染との闘いに効果のない白血球が非常に多く作られ、このため、血小板および赤血球などの、血液を構成する他の部分を押し出す。白血病の症例が急性または慢性に分類されることは、理解されている。白血病の特定の形態は、例として、急性リンパ性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);慢性リンパ性白血病(CLL);慢性骨髄性白血病(CML);骨髄増殖性疾患/新生物(MPDS);および骨髄異形成症候群であり得る。「リンパ腫」は、特に、ホジキンリンパ腫、無痛性およびアグレッシブである両方の非ホジキンリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)バーキットリンパ腫、マントル細胞リンパ腫(MCL)ならびに濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)を指し得る。骨髄腫としては、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、軽鎖骨髄腫、およびベンスジョーンズ骨髄腫が挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態では、薬物の組み合わせにより治療される血液癌は、CD47+白血病であり、好ましくは急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、および骨髄異形成症候群から選択され、好ましくは、ヒト急性骨髄性白血病である。
【0065】
他の実施形態では、薬物の組み合わせにより治療される血液癌は、ホジキンリンパ腫、無痛性およびアグレッシブである両方の非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫、菌状息肉症などのT細胞リンパ腫、セザリー症候群、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫(小細胞および大細胞)、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、および軽鎖またはベンスジョーンズ骨髄腫、ならびに平滑筋肉腫から選択される、CD47+リンパ腫または骨髄腫である。
【0066】
特定の実施形態では、本発明の組み合わせにより治療される癌は、多発性骨髄腫である。別の特定の実施形態では、標的癌は、マントル細胞リンパ腫である。さらなる実施形態では、本発明の組み合わせにより治療される癌は、再発性または難治性のホジキンリンパ腫である。別の特定の実施形態では、CD47遮断剤は、SIRPαG4である。さらなる特定の実施形態では、CD38抗体は、ダラツムマブである。
【0067】
さらに他の実施形態では、ダラツムマブは、皮膚T細胞リンパ腫または多発性骨髄腫の治療などのために、配列番号6または配列番号7などのSIRPαFcと組み合わせて使用される。別の実施形態では、組み合わせは、菌状息肉症またはセザリー症候群などのT細胞リンパ腫を治療するために使用される。
【0068】
したがって、特定の実施形態では、特定のCD47+癌の治療のためのCD38抗体と組み合わせたCD47遮断剤の使用が提供され、ここで、
i)CD47遮断剤は、配列番号1のSIRPαG4であり、CD38抗体は、皮膚T細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫、または再発性もしくは難治性のホジキンリンパ腫である癌の治療などのためのダラツムマブである;
ii)CD47遮断剤は、配列番号2のSIRPαG1であり、CD38抗体は、皮膚T細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫、または再発性もしくは難治性のホジキンリンパ腫である癌の治療などのためのダラツムマブである;
iii)CD47遮断剤は、任意のSIRPαFcであり、CD38抗体は、皮膚T細胞リンパ腫または多発性骨髄腫などの癌の治療のためのダラツムマブである。
【0069】
SIRαG4とダラツムマブとの組み合わせにより治療できる他の癌としては、CD38+/CD47+表現型を有する癌が挙げられる。治療の標的となり得る癌としては、メルケル細胞癌などの固形腫瘍、単クローン性免疫グロブリン血症、くすぶり型多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病および慢性リンパ性白血病などの血液悪性腫瘍が挙げられる。
【0070】
望ましい医薬の組み合わせは、癌細胞の応答において統計的に有意な改善を示す。これは、CD47遮断剤との組み合わせ、またはその逆によって引き起こされるCD38抗体活性における統計的に有意な改善として実証され得る。この場合、統計的有意性は以下の実施例に記載されているように示され、望ましくは、p値>0.05、より望ましくは>0.001などの>0.01をもたらす。
【0071】
CD47遮断およびCD38阻害を含む組み合わせ療法は、アジュバント療法でなどの手術、またはネオアジュバント療法でなどの追加の化学療法などの、標的適応症の治療で有用な任意の他の剤またはモダリティと共に活用することもできる。ダラツムマブは特に、多発性骨髄腫の患者の治療に承認された様態で、レナリドマイド、ボルテゾミブ、およびデキサメタゾンと共に使用できる。
【0072】
以下の非限定的な実施例は、本開示を例示する。
実施例
【0073】
腫瘍細胞は多くの場合、CD47の細胞表面発現を増加させることで、マクロファージ媒介破壊を回避する。ここでCD47は、マクロファージ上の阻害性シグナル調節タンパク質α(SIRPα)受容体を結合することにより、抗食作用(「do-not-eat」)シグナルを送達する。これまでの研究は、可溶性SIRPα-IgG1Fc融合タンパク質であるTTI-621を用いるCD47-SIRPα経路の遮断が、in vitroにおいて腫瘍細胞のマクロファージ食作用を誘発し、in vivoにおいて腫瘍成長を強力に阻害することを示している。現在の研究では、IgG4 Fcテールを含む可溶性SIRPα-Fcバリアントタンパク質であるSIRPαG4(配列番号6)のin vitroおよびin vivoでの有効性が、複数のモデルシステムで評価された。
【0074】
CD47遮断抗体とは異なり、SIRPαG4は、ヒト赤血球に最小限に結合し、in vitroでは、赤血球凝集を誘発しない。したがって、それは大きい循環抗原シンクを回避し、患者において貧血を引き起こす可能性は低い。さらに、SIRPαG4は、血液腫瘍および固形腫瘍の両方の患者に由来する広範な腫瘍細胞の食作用を強力に誘発する。ヒト血小板のin vitro食作用も観察されるが、SIRPαG4は、競合的食作用アッセイにおいて、血小板よりも腫瘍細胞の食作用を優先的に誘発する。
【0075】
SIRPαG4単剤療法および/または組み合わせ療法のin vivoでの有効性を、様々な腫瘍モデルで評価した。バーキットリンパ腫(ダウディ)および多発性骨髄腫(MM.1S)異種移植腫瘍モデルで、SIRPαG4とダラツムマブ(抗CD38抗体)とを組み合わせる可能性も検討した。両方のモデルにおいて、SIRPαG4単剤療法は、部分的な腫瘍成長の阻害を示した。しかし、治療有効性は、SIRPαG4をダラツムマブと組み合わせた場合にさらに向上した。
【0076】
まとめると、これらの結果は、SIRPαG4が一連の血液腫瘍および固形腫瘍において強力な腫瘍特異的マクロファージ食作用を誘発し、かつDLBCL異種移植腫瘍モデルにおいて単剤療法剤として有効であることを実証する。さらに、SIRPαG4は、血液の異種移植腫瘍モデルにおいてダラツムマブの有効性を増強する。これらのデータは、血液悪性腫瘍の癌患者における抗腫瘍抗体と組み合わせたSIRPαG4の使用を裏付ける。
【0077】
特に、
図1に示すように、マトリゲル中の5x10
6MM.1S細胞(デキサメタゾン感受性多発性骨髄腫)を、0日目にNOD SCIDの右側腹部(マウス9~10匹/群)に皮下移植した。マウスは、腫瘍サイズ中央値が約112~114mm
3であった11日目に無作為化され、SIRPαG4 10mg/kg、5回/週(黒い三角形)または/およびダラツママブ10mg/kg、2回/週(灰色の三角形)またはビヒクル対照5回/週(図示なし)の腹腔内(IP)注射を受けた。
図1Aは、各治療群の腫瘍体積中央値を標準平均偏差と共に示す。曲線は、1群あたり25%より多くの動物を屠殺したときに終了する。統計的有意性を、26日目の腫瘍体積に基づき、一元配置分散分析(Tukeyの多重比較検定)により計算した。
図1Bは、担腫瘍マウスの生存の向上に関する利点を明らかにする。生存曲線の統計的有意性を、Prism GraphPadソフトウェアを使用するログランク検定(多重比較用に調整)により計算した。
図1Cは、各治療群の個々の腫瘍成長スパイダープロットを提供する。投与スケジュールを、逆三角形で示す。
【0078】
また、
図2に示すように、マトリゲル中の1x10
7ダウディ細胞(16歳の男性由来のBリンパ芽球細胞株、EBNA陽性、EBVマーカー、補体受容体、表面結合免疫グロブリン、およびIgGのFc断片の表面マーカーを保持)を、NOD SCIDの右側腹部に皮下移植した。マウスを、3日目から開始するSIRPαG4 10mg/kg、5回/週(黒い三角形)または/および10日目から開始するダラツムマブ10mg/kg、2回/週(灰色の三角形)またはビヒクル対照5回/週(図示せず)の腹腔内(IP)注射により治療した。(
図2A)各治療群の腫瘍体積中央値を標準平均偏差と共に示す。曲線は、1群あたり25%より多くを屠殺したときに終了する。統計的有意性を、32日目の腫瘍体積に基づき、一元配置分散分析(Tukeyの多重比較検定)により計算した。
図2Bは、担腫瘍マウスの生存の向上を明らかにする。生存曲線の統計的有意性を、Prism GraphPadソフトウェアを使用するログランク検定(多重比較用に調整)により計算した。
図2Cは、各治療群の個々の腫瘍成長スパイダープロットを提供する。投与スケジュールを、逆三角形で示す。
【0079】
本開示は、現在好ましい実施例であると考えられるものを参照して記載しているが、本開示は、開示された実施例に限定されないことを理解されたい。逆に、本開示は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる様々な修正ならびに同等の配置を網羅することを意図している。
【0080】
すべての刊行物、特許、および特許出願は、個々の刊行物、特許、または特許出願のそれぞれが、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】