(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133553
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】液体噴射ヘッド及び液体噴射システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240925BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B41J2/14 607
B41J2/18
B41J2/14 501
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024106629
(22)【出願日】2024-07-02
(62)【分割の表示】P 2019125071の分割
【原出願日】2019-07-04
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】谷内 章紀
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
(72)【発明者】
【氏名】村山 寿郎
(72)【発明者】
【氏名】玉井 捷太郎
(57)【要約】
【課題】ノズル近傍の液体をより効率よく置換できる液体噴射ヘッド及び液体噴射システムを提供する。
【解決手段】供給口と排出口との間で第1軸方向Yに延伸する第1流路201と、前記第1流路201から分岐して設けられるノズル21であって、前記第1軸方向Yに直交する第2軸方向Zに沿って液体を吐出するノズル21と、を備え、前記ノズル21は、液体を吐出する第1開口211が形成された第1ノズル部21aと、前記第1流路201との接続口である第2開口212が形成された第2ノズル部21bと、を具備し、前記第2開口212における前記第1軸方向Yの径r2は、前記第1開口211の前記第1軸方向Yの径r1よりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口と排出口との間で第1軸方向に延伸する第1流路と、
前記第1流路から分岐して設けられるノズルであって、前記第1軸方向に直交する第2軸方向に沿って液体を吐出するノズルと、を備え、
前記ノズルは、
液体を吐出する第1開口が形成された第1ノズル部と、
前記第1流路との接続口である第2開口が形成された第2ノズル部と、
を具備し、
前記第2開口における前記第1軸方向の径r2は、前記第1開口の前記第1軸方向の径r1よりも大きいことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、2以上であることを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、2.5以上であることを特徴とする請求項2記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、5以下であることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、3.5以下であることを特徴とする請求項4記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第2開口の径r2と前記第2ノズル部における前記第2軸方向の深さd2との比であるr2/d2は、1.5以上であることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第2開口の径r2と前記第2ノズル部における前記第2軸方向の深さd2との比であるr2/d2は、3以上であることを特徴とする請求項6記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1ノズル部のイナータンスM1と前記第2ノズル部のイナータンスM2との比であるM2/M1は、0.28以上、0.9以下であることを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第2開口が前記第1軸方向に長軸を持つ楕円であることを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、前記供給口に液体を供給すると共に前記排出口から液体を回収して液体を循環させる機構と、を備えることを特徴とする液体噴射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッド及び液体噴射システムに関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド及びインクジェット式記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体を噴射する液体噴射ヘッドでは、例えば、液体に含まれる気泡を排出するため、液体の増粘を抑制するため、及び、液体に含まれる成分が沈降するのを抑制するために、液体噴射ヘッド内の液体を循環するようにした液体噴射システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の液体噴射ヘッドでは、ノズル近傍に設けた分岐流路を通じて液体噴射ヘッド内の液体を循環させることで、ノズルから噴射されない液体の乾燥による増粘を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ノズル近傍の液体をより効率よく置換できる液体噴射ヘッドが求められている。
【0006】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在する。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑み、ノズル近傍の液体をより効率よく置換できる液体噴射ヘッド及び液体噴射システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の態様は、供給口と排出口との間で第1軸方向に延伸する第1流路と、前記第1流路から分岐して設けられるノズルであって、前記第1軸方向に直交する第2軸方向に沿って液体を吐出するノズルと、を備え、前記ノズルは、液体を吐出する第1開口が形成された第1ノズル部と、前記第1流路との接続口である第2開口が形成された第2ノズル部と、を具備し、前記第2開口における前記第1軸方向の径r2は、前記第1開口の前記第1軸方向の径r1よりも大きいことを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
【0009】
また、他の態様は、上記の液体噴射ヘッドと、前記供給口に液体を供給すると共に前記排出口から液体を回収して液体を循環させる機構と、を備えることを特徴とする液体噴射システムにある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る記録ヘッドの平面図である。
【
図2】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図3】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図4】実施形態1に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図5】実施形態1に係る記録ヘッドの流線を説明する断面図である。
【
図6】他の実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図7】他の実施形態に係る記録ヘッドの断面図である。
【
図8】一実施形態に係る記録装置の概略構成を示す図である。
【
図9】一実施形態に係る液体噴射システムを説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の一態様を示すものであって、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図において同じ符号を付したものは、同一の部材を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図においてX、Y、Zは、互いに直交する3つの空間軸を表している。本明細書では、これらの軸に沿った方向をX方向、Y方向、及びZ方向とする。各図の矢印が向かう方向を正(+)方向、矢印の反対方向を負(-)方向として説明する。また、Z方向は、鉛直方向を示し、+Z方向は鉛直下向き、-Z方向は鉛直上向きを示す。
【0012】
(実施形態1)
本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドについて
図1~
図6を参照して説明する。なお、
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドのノズル面側から見た平面図である。
図2は、
図1のA-A′線断面図である。
図3は、
図2の要部を拡大した図である。
図4は、
図3のB-B′線断面図である。
図5は、
図3の流路内の流線を説明する図である。
図6は、比較例の流路内の流線を説明する図である。
【0013】
図示するように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1(以下、単に記録ヘッド1とも言う)は、流路基板として流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、保護基板30、ケース部材40及びコンプライアンス基板49等の複数の部材を備える。
【0014】
流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなり、その一方の面には振動板50が形成されている。振動板50は、二酸化シリコン層や酸化ジルコニウム層から選択される単一層又は積層であってもよい。
【0015】
流路形成基板10には、個別流路200を構成する圧力室12が、複数の隔壁によって区画されて複数設けられている。複数の圧力室12は、インクを吐出する複数のノズル21が並設されるX方向に沿って所定のピッチで並設されている。また、圧力室12がX方向に並設された列が、本実施形態では1列設けられている。また、流路形成基板10は面内方向がX方向及びY方向を含む方向となるように配置されている。なお、本実施形態では、流路形成基板10のX方向に並設された圧力室12の間の部分を隔壁と称する。この隔壁は、Y方向に沿って形成されている。すなわち、隔壁は、流路形成基板10のY方向における圧力室12に重なる部分のことをいう。
【0016】
なお、本実施形態では、流路形成基板10に圧力室12のみを設けるようにしたが、圧力室12に供給されるインクに流路抵抗を付与するように圧力室12よりも流路を横断する断面積を絞った流路抵抗付与部を設けるようにしてもよい。
【0017】
このような流路形成基板10の-Z方向の一方面側には、振動板50が形成され、この振動板50上には、第1電極60と圧電体層70と第2電極80とが成膜及びリソグラフィー法によって積層されて圧電アクチュエーター300を構成している。本実施形態では、圧電アクチュエーター300が、圧力室12内のインクに圧力変化を生じさせるエネルギー発生素子となっている。ここで、圧電アクチュエーター300は、圧電素子とも言い、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分を言う。一般的には、圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力室12毎にパターニングして構成する。本実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター300の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、振動板50、第1電極60が、振動板として作用するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、振動板50を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。
【0018】
また、このような各圧電アクチュエーター300の第2電極80には、リード電極90がそれぞれ接続され、このリード電極90を介して各圧電アクチュエーター300に選択的に電圧が印加されるようになっている。
また、流路形成基板10の-Z方向の面には、保護基板30が接合されている。
【0019】
保護基板30の圧電アクチュエーター300に対向する領域には、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有する圧電アクチュエーター保持部31が設けられている。圧電アクチュエーター保持部31は、圧電アクチュエーター300の運動を阻害しない程度の空間を有していればよく、当該空間は密封されていても、密封されていなくてもよい。また、圧電アクチュエーター保持部31は、X方向に並設された複数の圧電アクチュエーター300の列を一体的に覆う大きさで形成されている。もちろん、圧電アクチュエーター保持部31は、特にこれに限定されず、圧電アクチュエーター300を個別に覆うものであってもよく、X方向で並設された2以上の圧電アクチュエーター300で構成される群毎に覆うものであってもよい。
【0020】
このような保護基板30としては、流路形成基板10の熱膨張率と略同一の材料、例えば、ガラス、セラミック材料等を用いることが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0021】
また、保護基板30には、保護基板30をZ方向に貫通する貫通孔32が設けられている。そして、各圧電アクチュエーター300から引き出されたリード電極90の端部近傍は、貫通孔32内に露出するよう延設されており、貫通孔32内でフレキシブルケーブル120と電気的に接続されている。フレキシブルケーブル120は、可撓性を有する配線基板であって、本実施形態では、半導体素子である駆動回路121が実装されている。なお、フレキシブルケーブル120を介さずに、リード電極90と駆動回路121とを電気的に接続してもよい。また、保護基板30に流路を設けてもよい。
【0022】
また、保護基板30上には、複数の圧力室12に連通する供給流路を保護基板30と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、保護基板30の流路形成基板10とは反対面側が接合されると共に、後述する連通板15にも接合して設けられている。
【0023】
このようなケース部材40には、第1共通液室101の一部を構成する第1液室部41と、第2共通液室102の一部を構成する第2液室部42とが設けられている。第1液室部41と第2液室部42とは、Y方向において、1列の圧力室12を挟んだ両側にそれぞれ設けられている。
【0024】
第1液室部41及び第2液室部42のそれぞれは、ケース部材40の-Z側の面に開口する凹形状を有し、X方向に並設された複数の圧力室12に亘って連続して設けられている。
【0025】
また、ケース部材40には、第1液室部41に連通して第1液室部41にインクを供給する供給口43と、第2液室部42に連通して第2液室部42からのインクを排出する排出口44とが設けられている。
【0026】
さらに、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して、フレキシブルケーブル120が挿通される接続口45が設けられている。
【0027】
一方、流路形成基板10の保護基板30とは反対面側である+Z側には、連通板15とノズルプレート20とコンプライアンス基板49とが設けられている。
【0028】
ノズルプレート20には、第2軸方向であるZ方向のうち+Z方向に向かってインクを噴射するノズル21が複数形成されている。本実施形態では、
図1に示すように、複数のノズル21はX方向に沿った直線上に配置されることで、1列のノズル列22が形成されている。また、ノズルプレート20のノズル21が開口する+Z側の面をノズル面20aと称する。ノズル21については詳しくは後述する。
【0029】
連通板15は、本実施形態では、第1連通板151と第2連通板152とを有する。第1連通板151と第2連通板152とは、-Z側が第1連通板151、+Z側が第2連通板152となるようにZ方向に積層されている。
【0030】
このような連通板15を構成する第1連通板151及び第2連通板152は、ステンレス鋼等の金属、ガラス、セラミック材料等によって製造することができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と熱膨張率が略同一の材料を用いるのが好ましく、本実施形態では、流路形成基板10と同一材料のシリコン単結晶基板を用いて形成した。
【0031】
連通板15には、ケース部材40の第1液室部41と連通して第1共通液室101の一部を構成する第1連通部16と、ケース部材40の第2液室部42と連通して第2共通液室102の一部を構成する第2連通部17及び第3連通部18とが設けられている。また、連通板15には、詳しくは後述するが、第1共通液室101と圧力室12とを連通する流路と、圧力室12とノズル21とを連通する流路と、ノズル21と第2共通液室102とを連通する流路と、が設けられている。連通板15に設けられたこれらの流路は、個別流路200の一部を構成する。
【0032】
第1連通部16は、Z方向において、ケース部材40の第1液室部41に重なる位置に設けられており、連通板15の+Z側の面及び-Z側の面の両方に開口するように、連通板15をZ方向に貫通して設けられている。第1連通部16は、-Z側において第1液室部41と連通することで第1共通液室101を構成する。すなわち、第1共通液室101は、ケース部材40の第1液室部41と連通板15の第1連通部16とによって構成されている。また、第1連通部16は、+Z側において圧力室12にZ方向で重なる位置まで-Y方向に延設されている。なお、連通板15に第1連通部16を設けずに、第1共通液室101をケース部材40の第1液室部41によって構成してもよい。
【0033】
第2連通部17は、Z方向において、ケース部材40の第2液室部42に重なる位置に設けられており、第1連通板151の-Z側の面に開口して設けられている。また、第2連通部17は、+Z側において+Y方向のノズル21に向かって拡幅されて設けられている。
【0034】
第3連通部18は、一端が、第2連通部17の+Y方向に向かって拡幅された部分に連通するように、第2連通板152をZ方向に貫通して設けられている。第3連通部18の+Z側の開口は、ノズルプレート20によって蓋をされている。すなわち、第2連通部17を第1連通板151に設けることで、第3連通部18の+Z側の開口のみをノズルプレート20で蓋をすることができるため、ノズルプレート20を比較的狭い面積で設けることができ、コストを低減することができる。
【0035】
このような連通板15に設けられた第2連通部17及び第3連通部18とケース部材40に設けられた第2液室部42とによって第2共通液室102が構成されている。なお、連通板15に第2連通部17及び第3連通部18を設けずに、第2共通液室102をケース部材40の第2液室部42によって構成してもよい。
【0036】
連通板15の第1連通部16が開口する+Z側の面には、コンプライアンス部494を有するコンプライアンス基板49が設けられている。このコンプライアンス基板49が、第1共通液室101のノズル面20a側の開口を封止している。
【0037】
このようなコンプライアンス基板49は、本実施形態では、可撓性を有する薄膜からなる封止膜491と、金属等の硬質の材料からなる固定基板492と、を具備する。固定基板492の第1共通液室101に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された開口部493となっているため、第1共通液室101の壁面の一部は可撓性を有する封止膜491のみで封止された可撓部であるコンプライアンス部494となっている。このように第1共通液室101の壁面の一部にコンプライアンス部494を設けることで、第1共通液室101内のインクの圧力変動をコンプライアンス部494が変形することによって吸収することができる。
【0038】
また、流路基板を構成する流路形成基板10、連通板15、ノズルプレート20、コンプライアンス基板49等には、第1共通液室101と第2共通液室102とに連通して、第1共通液室101のインクを第2共通液室102に送る複数の個別流路200が設けられている。ここで、本実施形態の各個別流路200は、第1共通液室101と第2共通液室102とに連通して、ノズル21毎に設けられたものであり、ノズル21を含むものである。このような複数の個別流路200は、ノズル21の並設方向であるX方向に沿って複数並設されている。そして、ノズル21の並設方向であるX方向において隣接する2つの個別流路200は、それぞれ第1共通液室101及び第2共通液室102に連通して設けられている。すなわち、ノズル21毎に設けられた複数の個別流路200は、それぞれ第1共通液室101及び第2共通液室102のみで連通して設けられており、複数の個別流路200は、第1共通液室101及び第2共通液室102以外で互いに連通することがない。つまり、本実施形態では、1つのノズル21及び1つの圧力室12が設けられた流路を個別流路200と称し、各個別流路200同士は、第1共通液室101及び第2共通液室102のみで連通するように設けられている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、個別流路200は、ノズル21と圧力室12と第1流路201と第2流路202と供給路203とを具備する。
【0040】
圧力室12は、上述のように流路形成基板10に設けられた凹部と連通板15との間に設けられたものであり、Y方向に延伸している。すなわち、圧力室12は、Y方向の一端部に供給路203が接続され、Y方向の他端部に第2流路202が接続されており、圧力室12内をインクがY方向に流れるように設けられている。つまり、圧力室12の延伸する方向とは、圧力室12内をインクが流れる方向のことである。
【0041】
なお、本実施形態では、流路形成基板10に圧力室12のみを形成するようにしたが、特にこれに限定されず、圧力室12の上流側の端部、すなわち、+Y方向の端部に流路抵抗を付与するように圧力室12よりも断面積を絞った流路抵抗付与部を設けるようにしてもよい。
【0042】
供給路203は、圧力室12と第1共通液室101とを接続するものであり、第1連通板151をZ方向に貫通して設けられている。供給路203は、+Z側の端部で第1共通液室101と連通し、-Z側の端部で圧力室12と連通する。つまり、供給路203は、Z方向に延伸している。ここで、供給路203が延伸する方向とは、供給路203内をインクが流れる方向のことである。
【0043】
第1流路201は、供給口43と排出口44との間でY方向に延伸して設けられている。なお、第1流路201が延伸する方向とは、第1流路201内をインクが流れる方向のことである。すなわち、第1流路201が延伸する第1軸方向は、本実施形態では、Y方向となっている。このような第1流路201は、+Y方向の端部で第2流路202と連通し、-Y方向の端部で第2共通液室102の第3連通部18と連通している。
【0044】
本実施形態の第1流路201は、第2連通板152とノズルプレート20との間に、設けられている。具体的には、第1流路201は、第2連通板152に凹部を設け、この凹部の開口をノズルプレート20で蓋をすることで形成されている。なお、第1流路201は特にこれに限定されず、ノズルプレート20に凹部を設け、ノズルプレート20の凹部を第2連通板152によって蓋をするようにしてもよく、第2連通板152とノズルプレート20との両方に凹部を設けて形成してもよい。
【0045】
第1流路201は、本実施形態では、流路を流れるインクを横断する断面積、すなわち、X方向及びZ方向を含む面方向の断面積がY方向に亘って同じ面積となるように設けられている。なお、第1流路201の流路を横断する断面積が、Y方向に亘って同じ面積で設けられているとは、詳しくは後述する凸部153を除く部分のことである。また、第1流路201は、横断する断面積がY方向で異なる面積となるように設けられていてもよい。ちなみに、第1流路201を横断する面積が異なるとは、Z方向の高さが異なる場合も、X方向の幅が異なる場合も、その両方が異なる場合も含むものである。
【0046】
また、第1流路201の流路を横断する断面形状、すなわち、X方向及びZ方向を含む面方向の断面形状は、矩形となっている。なお、第1流路201の流路を横断する断面形状は、特に限定されず、台形、半円形、半楕円等であってもよい。
【0047】
第2流路202は、圧力室12と第1流路201との間にZ方向に延伸して設けられている。なお、第2流路202が延伸する方向とは、第2流路202内をインクが流れる方向のことである。すなわち、第2流路202が延伸する方向は、本実施形態では、第2軸方向と同じZ方向となっている。このような第2流路202は、本実施形態では、連通板15をZ方向に貫通して設けられており、-Z方向の端部で圧力室12と連通し、+Z方向の端部で第1流路201と連通している。
【0048】
また、第2流路202は、連通板15に形成された部分を言う。すなわち、第2流路202は、圧力室12の+Z方向の底面からノズルプレート20で蓋をされている部分までである。
【0049】
ノズルプレート20には、複数のノズル21が設けられている。各ノズル21は、各第1流路201の途中に連通する位置に配置されている。すなわち、ノズル21は、Y方向に延伸する第1流路201から+Z方向に分岐して設けられている。これにより、ノズル21から第2軸方向であるZ方向のうち+Z方向に向かってインク滴を吐出する。つまり、ノズル21は、-Z方向の端部が第1流路201の途中に連通し、+Z方向の端部がノズルプレート20の+Z側の面であるノズル面20aに開口するようにノズルプレート20をZ方向に貫通して設けられている。このため、ノズル21がインク滴を噴射する第2軸方向とは、+Z方向である。
【0050】
ここで、ノズル21が第1流路201から分岐して設けられているとは、ノズル21が第1流路201の途中に連通していることを言う。そして、ノズル21が第1流路201の途中に連通しているとは、Z方向から平面視した際に、ノズル21が第1流路201と重なる位置に配置されていることを言う。ちなみに、Z方向から平面視した際に、ノズル21が第2流路202と重なる位置に配置されているものは、第1流路201の途中に連通するように設けられているとは言わない。つまり、本実施形態の第1流路201は、Z方向から平面視した際に第2流路202に重ならない部分である。
【0051】
なお、ノズル21が連通する第1流路201を流れるインクを横断する断面積は、第2流路202を流れるインクを横断する断面積よりも小さいことが好ましい。ここで言う第1流路201を横断する断面積とは、X方向及びZ方向を含む面方向の断面の面積である。また、第2流路202を横断する断面積とは、Y方向及びZ方向を含む面方向の断面の面積である。このように第1流路201の断面積を比較的小さくすることで、個別流路200をX方向に高密度に配置して、ノズル21をX方向に高密度に配置することができると共に、記録ヘッド1がZ方向に大型化するのを抑制することができる。また、第2流路202の断面積を比較的大きくすることで、圧力室12からノズル21までの流路抵抗が小さくなるのを抑制して、液体の吐出特性、特に吐出される液滴の重量が低下するのを抑制することができる。特に第2流路202をY方向に広げて、第2流路202の断面積を大きくすることで、第2流路202の流路抵抗を低減することができると共に個別流路200が低密度に配置されるのを抑制して、個別流路200を高密度に配置することができる。本実施形態では、第1流路201と第2流路202とは、X方向に同じ幅で設け、第2流路202のY方向の幅を第1流路201のZ方向の高さよりも広くすることで、第1流路201の断面積を第2流路202の断面積よりも小さくしている。これにより、第2流路202の断面積を大きくすると共に、第1流路201及び第2流路202をX方向に高密度に配置することができる。
【0052】
また、ノズル21とは、第1流路201が設けられた部材、本実施形態では、連通板15とは異なる部材、本実施形態では、ノズルプレート20に形成されたものを言う。
【0053】
ここで、ノズル21は、ノズルプレート20の板厚方向であるZ方向に並んで配置された第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとを有する。
【0054】
第1ノズル部21aは、ノズルプレート20の外部側、すなわち、+Z側に配置され、インク滴が吐出される第1開口211が設けられている。すなわち、ノズルプレート20の第1ノズル部21aの+Z側の第1開口211から+Z方向に向かってインク滴が外部に吐出される。
【0055】
また、本実施形態では、第1ノズル部21aは、Z方向に亘って第1開口211と同じ形状で設けられている。ここで第1ノズル部21aがZ方向に亘って第1開口211と同じ形状で設けられているとは、第1ノズル部21aのX方向及びY方向を含む断面形状及び断面積が、Z方向に亘って同じであることを言う。なお、本実施形態では、第1開口211をZ方向から平面視した際の形状は、円形となるように設けられている。もちろん、第1開口211の形状は、特にこれに限定されず、楕円形、矩形、多角形、だるま形等であってもよい。
【0056】
第2ノズル部21bは、ノズルプレート20の-Z側に配置され、詳しくは後述するY方向に延伸する第1流路201との接続口である第2開口212が設けられている。すなわち、第1流路201の延伸方向である第1軸方向は、本実施形態では、Y方向となっている。そして、これら第1軸方向であるY方向と第2軸方向であるZ方向とは互いに直交する。
【0057】
また、第2ノズル部21bは、Z方向に亘って第2開口212と同じ形状で設けられている。ここで第2ノズル部21bがZ方向に亘って第2開口212と同じ形状で設けられているとは、第2ノズル部21bのX方向及びY方向を含む断面形状及び断面積が、Z方向に亘って同じであることを言う。もちろん、第2ノズル部21bは、Z方向に亘って同じ開口形状で形成されているものに限定されず、第1ノズル部21aに向かって開口面積が徐々に漸小するように設けられていてもよい。なお、本実施形態では、第2開口212をZ方向から平面視した際の形状は、円形となるように設けられている。もちろん、第2開口212の形状は、特にこれに限定されず、楕円形、矩形、多角形、だるま形等であってもよい。
【0058】
また、ノズル21を構成する第2ノズル部21bの第2開口212におけるY方向の径r2は、第1ノズル部21aの第1開口211のY方向の径r1よりも大きい。すなわち、r2>r1となっている。ここで、第1開口211のY方向の径r1とは、第1開口211のうち、Y方向に最も広い部分の幅の寸法のことである。また、第2開口212のY方向の径r2とは、第2開口212のうち、Y方向に最も広い部分の幅の寸法のことである。また、本実施形態では、第2ノズル部21bの第2開口212におけるX方向の径は、第1ノズル部21aの第1開口211のX方向の径よりも大きい。つまり、本実施形態の第1ノズル部21a及び第2ノズル部21bは、
図4に示すように、Z方向からの平面視において円形を有するため、第1ノズル部21aのY方向の径r1は、第1ノズル部21aの直径のことであり、第2ノズル部21bのY方向の径r2は、第2ノズル部21bの直径のことである。また、第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとは、Z方向から平面視した際に中心が同じ位置となるように、すなわち、第1開口211と第2開口212とは同心円となるように設けられている。
【0059】
このようにノズル21に第2ノズル部21bの径r2よりも小さな径r1の第1ノズル部21aを設けることで、第1ノズル部21a内を通るインクの流速を向上して、ノズル21から噴射されるインク滴の飛翔速度を向上することができる。また、ノズル21に第1ノズル部21aの径r1よりも大きな径r2の第2ノズル部21bを設けることで、詳しくは後述する第1共通液室101から第2共通液室102に向かって個別流路200内のインクを流す、所謂、循環を行った際に、ノズル21内で循環の流れの影響を受けない部分を減少させることができる。すなわち、
図5に示すように、循環時に第1流路201を流れるインクを第2ノズル部21b内に入り込ませて、第2ノズル部21b内でインクの流れを生じさせることができる。これにより、ノズル21内の速度勾配を大きくして、ノズル21内の乾燥により増粘したインクを上流から供給された新しいインクで置換することができる。したがって、ノズル21内のインクが増粘することによって、ノズル21から吐出されるインク滴の飛翔方向のずれによる被噴射媒体への着弾位置ずれや、ノズル21からインク滴が吐出されない吐出不良が発生するのを抑制することができる。
【0060】
ただし、第2ノズル部21bの径r2を第1ノズル部21aの径r1に比べて大きくし過ぎると、第2ノズル部21bと第1ノズル部21aとのイナータンスの比(M2/M1)が小さくなり、インク滴を連続して吐出させた際のノズル21内でのインクのメニスカスの位置が安定しない。すなわち、第2ノズル部21bと第1ノズル部21aとのイナータンスの比が小さくなると、インクのメニスカスが第1ノズル部21a内に留まらずに第2ノズル部21bに移動してしまい、安定したインク滴の吐出を連続して行うことができなくなってしまう。
【0061】
また、第2ノズル部21bの径r2を小さくしすぎると、循環時に第2ノズル部21b内にインクの流れが生じ難くなる。また、第2ノズル部21bの径r2を小さくし過ぎると、圧力室12からノズル21までの流路抵抗が大きくなり、圧力損失が大きくなるため、ノズル21から吐出するインク滴の重量が小さくなる。このため、圧電アクチュエーター300をより高い駆動電圧で駆動しなくてはならず、吐出効率が低下する。
【0062】
したがって、第2開口212の径r2と第1開口211の径r1との比であるr2/r1は、2以上が好ましく、さらに好ましくは2.5以上が好適である。すなわち、r2/r1≧2が好ましく、r2/r1≧2.5が好適である。
【0063】
また、第2開口212の径r2と第1開口211の径r1との比であるr2/r1は、5以下が好ましく、さらに好ましくは3.5以下が好適である。すなわち、r2/r1≦5が好ましく、r2/r1≦3.5が好適である。
【0064】
そして、第1ノズル部21aのイナータンスM1と、第2ノズル部21bのイナータンスM2との比であるM2/M1は、0.28以上、0.9以下が好ましい。すなわち、0.28≦M2/M1≦0.9が好ましい。
【0065】
ここで、一般的に流路のイナータンスMは、断面積S、長さl、インクの密度ρとした場合、下記式(1)で求めることができる。
【0066】
つまり、第1ノズル部21aのX方向及びY方向を含む面内方向の断面積S1、Z方向の長さ(深さ)d1、インクの密度ρとした場合、第1ノズル部21aのイナータンスM1は、ρd1/S1となる。
【0067】
また、第2ノズル部21bのX方向及びY方向を含む面内方向の断面積S2、Z方向の長さ(深さ)d2、インクの密度ρとした場合、第2ノズル部21bのイナータンスM2は、ρd2/S2となる。
【0068】
このように、第1ノズル部21aのイナータンスM1と、第2ノズル部21bのイナータンスM2との比であるM2/M1を0.9以下とすることで、第2ノズル部21b内でインクの流れを生じさせて、ノズル21内の増粘したインクによる被噴射媒体への着弾位置ずれや吐出不良を抑制することができる。また、第1ノズル部21aのイナータンスM1と、第2ノズル部21bのイナータンスM2との比であるM2/M1を0.9以下とすることで、ノズル21から吐出するインク滴の重量が小さくなるのを抑制して、圧電アクチュエーター300を比較的低い駆動電圧で駆動することができ、吐出効率を向上することができる。
【0069】
また、第1ノズル部21aのイナータンスM1と、第2ノズル部21bのイナータンスM2との比であるM2/M1を0.28以上とすることで、メニスカスの安定性を向上して、インク滴を連続して吐出させた際にインク滴の吐出安定性が低下するのを抑制することができる。
【0070】
さらに、第2ノズル部21bにおける第2軸方向であるZ方向の深さをd2としたとき、第2開口212の径r2と第2ノズル部21bの深さd2との比であるr2/d2は1.5以上が好ましく、さらに好ましくは3以上が好適である。すなわち、r2/d2≧1.5が好ましく、r2/d2≧3が好適である。
【0071】
つまり、第2ノズル部21bは、
図3に示すZ方向及びY方向を含む面方向の断面において、Y方向に長く、Z方向に短い形状とすることで、第1流路201をY方向に流れるインクを第2ノズル部21bの第1ノズル部21aに達する+Z側の端部まで入り込ませ易くして、第2ノズル部21b内にインクの流れを生じさせることができる。
【0072】
なお、ノズルプレート20は、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又は、シリコン等の平板材で形成することができる。また、ノズルプレート20の板厚は、60μm以上、100μm以下であることが好ましい。このような板厚のノズルプレート20を用いることで、ノズルプレート20のハンドリング性を向上して、記録ヘッド1の組み立て性を向上することができる。ちなみに、ノズル21のZ方向の長さを短くすることで、インクを循環させた際に、ノズル21内で循環の流れの影響を受けない部分を小さくすることができるが、ノズル21のZ方向の長さを短くするには、ノズルプレート20のZ方向の厚みを薄くする必要がある。このようにノズルプレート20の厚みを薄くすると、ノズルプレート20の剛性が低下し、ノズルプレート20の変形によってインク滴の吐出方向にばらつきが生じることや、ノズルプレート20のハンドリング性の低下による組み立て性の低下が生じ易い。つまり、上記のようにある程度の厚みのあるノズルプレート20を用いることで、ノズルプレート20の剛性の低下を抑制して、ノズルプレート20の変形による吐出方向にばらつきが生じることや、ハンドリング性の低下による組み立て性の低下を抑制することができる。
【0073】
以上説明したように、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1では、供給口43と排出口44との間で第1軸方向であるY方向に延伸する第1流路201と、第1流路201から分岐して設けられるノズル21であって、Y方向に直交する第2軸方向であるZ方向に沿ってインクを吐出するノズル21と、を備え、ノズル21は、インクを吐出する第1開口211が形成された第1ノズル部21aと、第1流路201との接続口である第2開口212が形成された第2ノズル部21bと、を具備し、第2開口212におけるY方向の径r2は、第1開口211のY方向の径r1よりも大きい。
【0074】
このようにY方向に延設された第1流路201の途中にノズル21を連通させることで、第2流路202とノズルプレート20との角部などのインクが滞留する部分からノズル21を離して配置することができ、滞留することで成分が沈降したインクや気泡がノズル21側に移動し難い。したがって、滞留して成分が沈降したインクや気泡によってノズル21の目詰まりや、ノズル21から吐出されるインク滴の成分のばらつきなどを抑制することができる。
【0075】
また、ノズル21をY方向に延伸する第1流路201の途中に連通させることで、ノズル21から侵入した気泡が、第1流路201を流れるインクによって下流側である第2共通液室102に向かって流すことができる。したがって、ノズル21から侵入した気泡が、圧力室12や第1共通液室101側に入り込むのを抑制して、圧力室12に侵入した気泡によって圧力室12内のインクの圧力変動が吸収されることによるインク滴の吐出不良を抑制することができる。ちなみに、ノズル21を第2流路202に連通する位置に設けた場合、ノズル21から侵入した気泡が、浮力によってインクの流れに逆らって圧力室12側に移動し易い。そして、ノズル21から圧力室12に気泡が侵入すると、圧力室12に侵入した気泡が、圧力室12内のインクの圧力変動を吸収し、インク滴の吐出不良が発生する虞がある。
【0076】
また、ノズル21に、第1ノズル部21aの径r1よりも大きな径r2を有する第2ノズル部21bを設けることで、第1流路201内をY方向に流れるインクを第2ノズル部21b内に入り込ませて、ノズル21内にインクの流れを生じさせることができる。このようにノズル21内にインクの流れを生じさせることで、ノズル21内の乾燥により増粘したインクを上流から供給された新しいインクで置換することができ、増粘したインクによるノズル21から吐出されるインク滴の飛翔方向のずれによる被噴射媒体への着弾位置ずれや、ノズル21の目詰まりが発生するのを抑制することができる。
【0077】
また、第2ノズル部21bの径r2よりも小さな径r1を有する第1ノズル部21aを設けることで、第1ノズル部21a内を通るインクの流速を向上して、ノズル21から噴射されるインク滴の飛翔速度を向上することができる。
【0078】
また、ノズル21を第1流路201に連通する位置に設けることで、ノズル21のY方向の配置の自由度を上げることができる。
【0079】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第2開口212の径r2と第1開口211の径r1との比であるr2/r1は、2以上であることが好ましく、2.5以上であることが好適である。このように、第2開口212の径r2と第1開口211の径r1との比であるr2/r1を2以上、さらに好ましくは2.5以上とすることで、第2ノズル部21b内にインクの流れを生じさせると共に、第1ノズル部21aによってインクの流速を向上してインク滴の飛翔速度を向上することができる。
【0080】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第2開口212の径r2と第1開口211の径r1との比であるr2/r1は、5以下であることが好ましく、3.5以下であることが好適である。このように、第2開口212の径r2と第1開口211の径r1との比であるr2/r1を5以下、さらに好ましくは3.5以下とすることで、第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとのイナータンスの比(M2/M1)が小さくなり過ぎるのを抑制して、インク滴を連続吐出させた際のノズル21内のインクのメニスカスの位置を安定させることができる。したがって、インク滴を連続吐出させた際にインク滴の吐出特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第2開口212の径r2と第2ノズル部21bの第2軸方向であるZ方向の深さd2との比であるr2/d2は、1.5以上であることが好ましく、3以上であることが好適である。このように、第2ノズル部21bは、第1軸方向であるY方向に長く、第2軸方向であるZ方向に短い形状とすることで、第1流路201をY方向に流れるインクを第2ノズル部21b内に入り込ませ易くして、第2ノズル部21b内にインクの流れを生じさせることができる。
【0082】
また、本実施形態の記録ヘッド1では、第1ノズル部21aのイナータンスM1と第2ノズル部21bのイナータンスM2との比であるM2/M1は、0.28以上、0.9以下であることが好ましい。このように第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとのイナータンスの比を規定することで、ノズル21内にインクの流れを生じさせることができると共に、ノズル21内のインクのメニスカスの位置を安定させて、インク滴の連続吐出を安定して行うことができる。
【0083】
(他の実施形態)
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
【0084】
例えば、上述した実施形態1では、第2ノズル部21bの第2開口212をZ方向から平面視した際の形状を円形としたが、特にこれに限定されず、例えば、
図6に示すように、第2開口212は、Y方向に長軸を持つ楕円形であってもよい。ここで、第2開口212が楕円形とは、第2開口212をZ方向から平面視した際に、楕円形、長方形状を基本として長手方向の両端部を半円形状とした、所謂、角丸長方形、卵形などを含む。
【0085】
このように、Y方向に長軸を持つ楕円形の第2開口212とすることで、第1流路201をY方向に流れるインクを第2ノズル部21b内に入り込ませ易くして、第2ノズル部21b内にインクの流れを生じさせることができる。また、第2開口212をX方向に短軸となる楕円とすることで、第1流路201のX方向の幅を広げる必要がなく、第1流路201をX方向に高密度に配置することができる。さらに、第2開口212を楕円形状とすることで、第2ノズル部21bの流路抵抗及びイナータンスが著しく小さくなるのを抑制することができる。つまり、第2ノズル部21bの第2開口212を楕円形の長軸と同じ内径を持つ円形とすると、第2ノズル部21bの流路抵抗及びイナータンスが著しく低下してしまうからである。第2開口212をY方向を長軸とする楕円形とすることで、第2ノズル部21bの流路抵抗及びイナータンスが著しく低下するのを抑制して、第2ノズル部21b内にインクを入り込ませ易くして、第2ノズル部21b内にインクの流れを生じさせることができる。
【0086】
また、上述した実施形態1では、第1ノズル部21a及び第2ノズル部21bは、それぞれZ方向に亘って同じ開口形状となるように設けることで、第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとの間には段差が設けられるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、
図7に示すように、第2ノズル部21bの内面がZ方向に対して傾斜した傾斜面となるようにしてもよい。つまり、第2ノズル部21bのX方向及びY方向を含む面方向の開口面積が、第1ノズル部21aに向かって徐々に漸小するように設けられていてもよい。
これにより、第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとの間に段差が形成されておらず、連続した内面となっていてもよい。このように第1ノズル部21aと第2ノズル部21bとの内面が連続している場合には、第1ノズル部21aとは、開口形状がZ方向に亘って略同じ形状となっている部分を言う。
【0087】
また、例えば、上述した実施形態では、第1軸方向をY方向、第2軸方向をZ方向として、Y方向及びZ方向の両方に直交するX方向にノズル21が並設された構成を例示したが、特にこれに限定されず、例えば、ノズル21や圧力室12等は、ノズル面20aの面内方向においてX方向に対して傾斜した方向に並設されていてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、個別流路200の第1流路201と第2共通液室102とを直接、接続するようにしたが、特にこれに限定されず、第1流路201と第2共通液室102との間に第2軸方向であるZ方向に延伸する他の流路が設けられていてもよい。
【0089】
ここで、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の一例について
図8を参照して説明する。なお、
図8は、本発明のインクジェット式記録装置の概略構成を示す図である。
【0090】
図8に示すように、液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iでは、複数の記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されている。記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。本実施形態では、キャリッジ3の移動方向が第1軸方向であるY方向となっている。
【0091】
また、装置本体4には、液体としてインクが貯留された貯留手段であるタンク2が設けられている。タンク2は、チューブ等の供給管2aを介して記録ヘッド1と接続されており、タンク2からのインクは供給管2aを介して記録ヘッド1に供給される。また、記録ヘッド1とタンク2とはチューブ等の排出管2bを介して接続されており、記録ヘッド1から排出されたインクは排出管2bを介してタンク2に戻される、所謂、循環が行われる。なお、タンク2は、複数で構成されていてもよい。
【0092】
そして、駆動モーター7の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7aを介してキャリッジ3に伝達されることで、記録ヘッド1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の被噴射媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラー8に限られずベルトやドラム等であってもよい。本実施形態では、記録シートSの搬送方向がX方向となっている。
【0093】
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、記録ヘッド1がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド1が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0094】
また、各実施形態では、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0095】
ここで、本実施形態の液体噴射システムの一例について
図9を参照して説明する。なお、
図9は、本発明の液体噴射装置であるインクジェット式記録装置の液体噴射システムを説明するブロック図である。
【0096】
図9に示すように、液体噴射システムは、上述した記録ヘッド1と、供給口43に液体としてインクを供給すると共に排出口44からインクを回収してインクを循環させる機構として、メインタンク500と、第1タンク501と、第2タンク502と、コンプレッサー503と、真空ポンプ504と、第1送液ポンプ505と、第2送液ポンプ506と、を具備する。
【0097】
第1タンク501には、記録ヘッド1及びコンプレッサー503が接続されており、コンプレッサー503によって第1タンク501のインクは所定の圧力で記録ヘッド1に供給される。
【0098】
第2タンク502は、第1送液ポンプ505を介して第1タンク501と接続されており、第1送液ポンプ505によって第2タンク502のインクが第1タンク501に送液される。
【0099】
また、第2タンク502には、記録ヘッド1と真空ポンプ504とが接続されており、真空ポンプ504によって記録ヘッド1のインクは所定の負圧で第2タンク502に排出される。
【0100】
すなわち、第1タンク501から記録ヘッド1にインクが供給され、記録ヘッド1から第2タンク502にインクが排出される。そして、第1送液ポンプ505によって第2タンク502から第1タンク501へインクが送液されることでインクが循環する。
【0101】
また、第2タンク502には、第2送液ポンプ506を介してメインタンク500が接続されており、記録ヘッド1によって消費された分のインクが、メインタンク500から第2タンク502に補充される。なお、メインタンク500から第2タンク502へのインクの補充は、例えば、第2タンク502内のインクの液面が所定の高さよりも低くなった場合などのタイミングで行えばよい。
【符号の説明】
【0102】
I…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、1…インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、2…タンク、2a…供給管、2b…排出管、3…キャリッジ、4…装置本体、5…キャリッジ軸、7…駆動モーター、7a…タイミングベルト、8…搬送ローラー、10…流路形成基板、12…圧力室、15…連通板、16…第1連通部、17…第2連通部、18…第3連通部、20…ノズルプレート、20a…ノズル面、21…ノズル、21a…第1ノズル部、21b…第2ノズル部、211…第1開口、212…第2開口、22…ノズル列、30…保護基板、31…圧電アクチュエーター保持部、32…貫通孔、40…ケース部材、41…第1液室部、42…第2液室部、43…供給口、44…排出口、45…接続口、49…コンプライアンス基板、50…振動板、60…第1電極、70…圧電体層、80…第2電極、90…リード電極、101…第1共通液室、102…第2共通液室、120…フレキシブルケーブル、121…駆動回路、151…第1連通板、152…第2連通板、200…個別流路、201…第1流路、202…第2流路、203…供給路、300…圧電アクチュエーター、491…封止膜、492…固定基板、493…開口部、494…コンプライアンス部、500…メインタンク、501…第1タンク、502…第2タンク、503…コンプレッサー、504…真空ポンプ、505…第1送液ポンプ、506…第2送液ポンプ、S…記録シート、r1…第1開口の径、r2…第2開口の径
【手続補正書】
【提出日】2024-07-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口と排出口との間で第1軸方向に延伸する第1流路と、
前記第1流路から分岐して設けられるノズルであって、前記第1軸方向に直交する第2
軸方向に沿って液体を吐出するノズルと、
前記供給口と前記第1流路との間に設けられ、前記第2軸方向に延伸する第2流路と、
を備え、
前記ノズルは、
液体を吐出する第1開口が形成された第1ノズル部と、
前記第1流路との接続口である第2開口が形成された第2ノズル部と、
を具備し、
前記第2開口における前記第1軸方向の径r2は、前記第1開口の前記第1軸方向の径
r1よりも大きいことを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項2】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、2以上であ
ることを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項3】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、2.5以上
であることを特徴とする請求項2に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項4】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、5以下であ
ることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項5】
前記第2開口の径r2と前記第1開口の径r1との比であるr2/r1は、3.5以下
であることを特徴とする請求項4に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項6】
前記第2開口の径r2と前記第2ノズル部における前記第2軸方向の深さd2との比で
あるr2/d2は、1.5以上であることを特徴とする請求項1~5の何れか一項に記載
の液体噴射ヘッド。
【請求項7】
前記第2開口の径r2と前記第2ノズル部における前記第2軸方向の深さd2との比で
あるr2/d2は、3以上であることを特徴とする請求項6に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項8】
前記第1ノズル部のイナータンスM1と前記第2ノズル部のイナータンスM2との比で
あるM2/M1は、0.28以上、0.9以下であることを特徴とする請求項1~7の何
れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項9】
前記第2開口が前記第1軸方向に長軸を持つ楕円であることを特徴とする請求項1~8
の何れか一項に記載の液体噴射ヘッド。
【請求項10】
前記供給口と前記第2流路との間に設けられる圧力室を備えることを特徴とする請求項
1~9の何れか一項に記載の液体噴射装ヘッド。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドと、前記供給口に液体を供給する
と共に前記排出口から液体を回収して液体を循環させる機構と、を備えることを特徴とす
る液体噴射システム。