IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社半導体エネルギー研究所の特許一覧

特開2024-133568表示装置、表示モジュール、電子機器およびテレビジョン装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133568
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】表示装置、表示モジュール、電子機器およびテレビジョン装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/16 20230101AFI20240925BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240925BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240925BHJP
   H10K 50/165 20230101ALI20240925BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240925BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240925BHJP
   H10K 59/35 20230101ALI20240925BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240925BHJP
   H10K 101/40 20230101ALN20240925BHJP
   H10K 101/30 20230101ALN20240925BHJP
   H10K 101/10 20230101ALN20240925BHJP
【FI】
H10K50/16
H10K50/17
H10K85/60
H10K50/165
H10K50/12
H10K50/15
H10K59/35
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 349Z
H10K101:40
H10K101:30
H10K101:10
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107208
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2021501135の分割
【原出願日】2020-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2019033191
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019080050
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019123874
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 晴恵
(57)【要約】
【課題】長寿命の表示装置を提供する。大型の表示装置を提供する。
【解決手段】第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有する表示装置である。第1の発光デバイスは、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有する。第2の発光デバイスは、第2の発光層を有する。正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有する。第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有する。第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有する。電子輸送層は、第5の化合物を有する。第1の化合物は、第2の化合物に対する電子受容性を有する。第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下である。第5の化合物は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有し、
前記第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有し、
前記第2の発光デバイスは、第2の電極及び前記共通電極を有し、
前記第1の発光デバイスは、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有し、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、第2の発光層を有し、
前記正孔注入層は、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極に接し、
前記正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有し、
前記第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有し、
前記第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有し、
前記電子輸送層は、第5の化合物を有し、
前記第1の化合物は、前記第2の化合物に対する電子受容性を有し、
前記第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下であり、
前記第5の化合物のHOMO準位は、-6.0eV以上である、表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、前記第1の発光デバイスと共通の層を有する、表示装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2の発光デバイスは、前記正孔注入層及び前記電子輸送層を有する、表示装置。
【請求項4】
第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有し、
前記第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有し、
前記第2の発光デバイスは、第2の電極及び前記共通電極を有し、
前記第1の発光デバイスは、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の正孔輸送層、第1の発光層、及び電子輸送層を有し、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、第2の発光層を有し、
前記正孔注入層は、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極に接し、
前記正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有し、
前記第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有し、
前記第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有し、
前記電子輸送層は、第5の化合物を有し、
前記第1の正孔輸送層は、第6の化合物を有し、
前記第1の化合物は、前記第2の化合物に対する電子受容性を有し、
前記第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下であり、
前記第5の化合物のHOMO準位は、-6.0eV以上であり、
前記第6の化合物のHOMO準位は、前記第2の化合物のHOMO準位以下の値であり、
前記第6の化合物のHOMO準位と前記第2の化合物のHOMO準位との差は、0.2eV以内である、表示装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記第2の化合物及び前記第6の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有する、表示装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記第1の発光デバイスは、さらに、第2の正孔輸送層を有し、
前記第2の正孔輸送層は、第7の化合物を有し、
前記第7の化合物のHOMO準位は、前記第6の化合物のHOMO準位よりも低い、表示装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記第2の化合物、前記第6の化合物、及び前記第7の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有する、表示装置。
【請求項8】
第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有し、
前記第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有し、
前記第2の発光デバイスは、第2の電極及び前記共通電極を有し、
前記第1の発光デバイスは、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有し、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、第2の発光層を有し、
前記正孔注入層は、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極に接し、
前記正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有し、
前記第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有し、
前記第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有し、
前記電子輸送層は、第5の化合物及び第8の化合物を有し、
前記第1の化合物は、前記第2の化合物に対する電子受容性を有し、
前記第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下であり、
前記第5の化合物のHOMO準位は、-6.0eV以上であり、
前記第8の化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する有機錯体である、表示装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記電子輸送層における、前記第5の化合物と前記第8の化合物の存在比は、前記第1の発光層側と前記共通電極側とで異なる、表示装置。
【請求項10】
請求項8において、
前記電子輸送層は、前記第1の発光層側の第1の領域と、前記共通電極側の第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域よりも、前記第8の化合物の存在量が少ない、表示装置。
【請求項11】
請求項8乃至請求項10のいずれか一において、
前記第1の発光デバイスは、さらに、第1の正孔輸送層を有し、
前記第1の正孔輸送層は、第6の化合物を有し、
前記第6の化合物のHOMO準位は、前記第2の化合物のHOMO準位以下の値であり、
前記第6の化合物のHOMO準位と前記第2の化合物のHOMO準位との差は、0.2eV以内である、表示装置。
【請求項12】
請求項11において、
前記第2の化合物及び前記第6の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有する、表示装置。
【請求項13】
請求項11において、
前記第1の発光デバイスは、さらに、第2の正孔輸送層を有し、
前記第2の正孔輸送層は、第7の化合物を有し、
前記第7の化合物のHOMO準位は、前記第6の化合物のHOMO準位よりも低い、表示装置。
【請求項14】
請求項13において、
前記第2の化合物、前記第6の化合物、及び前記第7の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有する、表示装置。
【請求項15】
請求項1乃至請求項14のいずれか一において、
前記第3の化合物及び前記第4の化合物は、それぞれ、蛍光発光物質である、表示装置。
【請求項16】
請求項1乃至請求項15のいずれか一において、
前記第1の色は、青色である、表示装置。
【請求項17】
請求項1乃至請求項16のいずれか一において、
前記第1の発光デバイスに一定の電流を流した際に得られる発光の輝度変化で表される劣化曲線が極大値を有する、表示装置。
【請求項18】
第1の発光デバイス、第2の発光デバイス、及び第3の発光デバイスを有し、
前記第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有し、
前記第2の発光デバイスは、第2の電極及び前記共通電極を有し、
前記第3の発光デバイスは、第3の電極及び前記共通電極を有し、
前記第1の発光デバイスは、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有し、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、第2の発光層を有し、
前記第3の発光デバイスは、前記第3の電極と前記共通電極との間に、第3の発光層を有し、
前記正孔注入層は、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極に接し、
前記正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有し、
前記電子輸送層は、第3の化合物を有し、
前記第1の化合物は、前記第2の化合物に対する電子受容性を有し、
前記第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下であり、
前記第3の化合物のHOMO準位は、-6.0eV以上であり、
前記第1の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、前記第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短く、
前記第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、前記第3の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短く、
上面視において、前記第2の発光デバイスの発光領域の面積は、前記第3の発光デバイスの発光領域の面積よりも大きく、
上面視において、前記第1の発光デバイスの発光領域の面積は、前記第3の発光デバイスの発光領域の面積以上、かつ、前記第2の発光デバイスの発光領域の面積以下である、表示装置。
【請求項19】
第1の発光デバイス、第2の発光デバイス、及び第3の発光デバイスを有し、
前記第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有し、
前記第2の発光デバイスは、第2の電極及び前記共通電極を有し、
前記第3の発光デバイスは、第3の電極及び前記共通電極を有し、
前記第1の発光デバイスは、前記第1の電極及び前記共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、第1の発光層及び電子輸送層を有し、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、第2の発光層を有し、
前記第3の発光デバイスは、前記第3の電極と前記共通電極との間に、第3の発光層を有し、
前記電子輸送層は、電子輸送性材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体と、を有し、
前記電子輸送性材料のHOMO準位は、-6.0eV以上であり、
前記電子輸送層は、第1の領域と、前記第1の領域よりも前記共通電極側に位置する第2の領域と、を有し、
前記第1の領域と前記第2の領域とは、前記電子輸送性材料の濃度が互いに異なり、
前記第1の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、前記第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短く、
前記第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、前記第3の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短く、
上面視において、前記第2の発光デバイスの発光領域の面積は、前記第3の発光デバイスの発光領域の面積よりも大きく、
上面視において、前記第1の発光デバイスの発光領域の面積は、前記第3の発光デバイスの発光領域の面積以上、かつ、前記第2の発光デバイスの発光領域の面積以下である、表示装置。
【請求項20】
請求項19において、
前記第2の領域は、前記第1の領域に比べて、前記電子輸送性材料の濃度が低い、表示装置。
【請求項21】
請求項18乃至請求項20のいずれか一において、
前記第1の発光デバイスは、蛍光を発し、
前記第2の発光デバイス及び前記第3の発光デバイスは、それぞれ、燐光を発する、表示装置。
【請求項22】
請求項18乃至請求項21のいずれか一において、
前記第2の発光デバイスは、前記第2の電極と前記共通電極との間に、前記第1の発光デバイスと共通の層を有する、表示装置。
【請求項23】
請求項1乃至請求項22のいずれか一に記載の表示装置と、コネクタまたは集積回路と、を有する、表示モジュール。
【請求項24】
請求項23に記載の表示モジュールと、
アンテナ、バッテリ、筐体、カメラ、スピーカ、マイク、及び操作ボタンのうち、少なくとも一つと、を有する、電子機器。
【請求項25】
請求項23に記載の表示モジュールと、通信制御部と、を有し、
前記通信制御部を用いて、コンピュータネットワークに接続することができる、テレビジョン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、表示装置、表示モジュール、電子機器、及びテレビジョン装置に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、電子機器、照明装置、入力装置(例えば、タッチセンサなど)、入出力装置(例えば、タッチパネルなど)、それらの駆動方法、又はそれらの製造方法を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0003】
近年、表示装置は様々な用途への応用が期待されている。例えば、大型の表示装置の用途としては、家庭用のテレビジョン装置(テレビまたはテレビジョン受信機ともいう)、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、PID(Public Information Display)等が挙げられる。また、携帯情報端末として、タッチパネルを備えるスマートフォンやタブレット端末の開発が進められている。
【0004】
表示装置としては、例えば、発光デバイス(発光素子ともいう)を有する発光装置が開発されている。エレクトロルミネッセンス(Electroluminescence、以下ELと記す)現象を利用した発光デバイス(ELデバイス、EL素子ともいう)は、薄型軽量化が容易である、入力信号に対し高速に応答可能である、直流低電圧電源を用いて駆動可能である等の特徴を有し、表示装置への応用が検討されている。例えば、特許文献1に、有機ELデバイス(有機EL素子ともいう)が適用された、可撓性を有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-197522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、長寿命の表示装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、信頼性の高い表示装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、大型の表示装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、解像度の高い表示装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、生産性の高い表示装置を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、表示品位の高い表示装置を提供することを課題の一とする。
【0007】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有する表示装置である。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極及び共通電極を有する。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極と共通電極との間に、第2の発光層を有する。正孔注入層は、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極に接する。正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有する。第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有する。第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有する。電子輸送層は、第5の化合物を有する。第1の化合物は、第2の化合物に対する電子受容性を有する。第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下である。第5の化合物は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下である。
【0009】
第2の発光デバイスは、第2の電極と共通電極との間に、第1の発光デバイスと共通の層を有することが好ましい。
【0010】
第2の発光デバイスは、正孔注入層及び電子輸送層を有することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様は、第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有する表示装置である。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極及び共通電極を有する。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の正孔輸送層、第1の発光層、及び電子輸送層を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極と共通電極との間に、第2の発光層を有する。正孔注入層は、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極に接する。正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有する。第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有する。第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有する。電子輸送層は、第5の化合物を有する。第1の正孔輸送層は、第6の化合物を有する。第1の化合物は、第2の化合物に対する電子受容性を有する。第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下である。第5の化合物は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下である。第6の化合物のHOMO準位は、第2の化合物のHOMO準位以下の値である。第6の化合物のHOMO準位と第2の化合物のHOMO準位との差は、0.2eV以内である。
【0012】
第2の化合物及び第6の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。
【0013】
第1の発光デバイスは、さらに、第2の正孔輸送層を有することが好ましい。第2の正孔輸送層は、第7の化合物を有することが好ましい。第7の化合物のHOMO準位は、第6の化合物のHOMO準位よりも低いことが好ましい。第2の化合物、第6の化合物、及び第7の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様は、第1の発光デバイス及び第2の発光デバイスを有する表示装置である。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極及び共通電極を有する。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極と共通電極との間に、第2の発光層を有する。正孔注入層は、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極に接する。正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有する。第1の発光層は、第1の色の光を発する第3の化合物を有する。第2の発光層は、第2の色の光を発する第4の化合物を有する。電子輸送層は、第5の化合物及び第8の化合物を有する。第1の化合物は、第2の化合物に対する電子受容性を有する。第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下である。第5の化合物は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下である。第8の化合物は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を有する有機錯体である。
【0015】
電子輸送層における、第5の化合物と第8の化合物の存在比は、第1の発光層側と共通電極側とで異なることが好ましい。
【0016】
電子輸送層は、第1の発光層側の第1の領域と、共通電極側の第2の領域と、を有することが好ましい。第2の領域は、第1の領域よりも、第8の化合物の存在量が少ないことが好ましい。
【0017】
第1の発光デバイスは、さらに、第1の正孔輸送層を有することが好ましい。第1の正孔輸送層は、第6の化合物を有することが好ましい。第6の化合物のHOMO準位は、第2の化合物のHOMO準位以下の値であることが好ましい。第6の化合物のHOMO準位と第2の化合物のHOMO準位との差は、0.2eV以内であることが好ましい。第2の化合物及び第6の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。
【0018】
第1の発光デバイスは、さらに、第2の正孔輸送層を有することが好ましい。第2の正孔輸送層は、第7の化合物を有することが好ましい。第7の化合物のHOMO準位は、第6の化合物のHOMO準位よりも低いことが好ましい。第2の化合物、第6の化合物、及び第7の化合物は、それぞれ、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。
【0019】
第3の化合物及び第4の化合物は、それぞれ、蛍光発光物質であることが好ましい。
【0020】
第1の色は、青色であることが好ましい。
【0021】
第1の発光デバイスに一定の電流を流した際に得られる発光の輝度変化で表される劣化曲線が極大値を有することが好ましい。
【0022】
本発明の一態様は、第1の発光デバイス、第2の発光デバイス、及び第3の発光デバイスを有する表示装置である。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極及び共通電極を有する。第3の発光デバイスは、第3の電極及び共通電極を有する。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、正孔注入層、第1の発光層、及び電子輸送層を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極と共通電極との間に、第2の発光層を有する。第3の発光デバイスは、第3の電極と共通電極との間に、第3の発光層を有する。正孔注入層は、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極に接する。正孔注入層は、第1の化合物及び第2の化合物を有する。電子輸送層は、第3の化合物を有する。第1の化合物は、第2の化合物に対する電子受容性を有する。第2の化合物のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下である。第3の化合物は、HOMO準位が-6.0eV以上であり、かつ電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下である。第1の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短い。第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、第3の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短い。上面視において、第2の発光デバイスの発光領域の面積は、第3の発光デバイスの発光領域の面積よりも大きい。上面視において、第1の発光デバイスの発光領域の面積は、第3の発光デバイスの発光領域の面積以上、かつ、第2の発光デバイスの発光領域の面積以下である。
【0023】
本発明の一態様は、第1の発光デバイス、第2の発光デバイス、及び第3の発光デバイスを有する表示装置である。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極及び共通電極を有する。第3の発光デバイスは、第3の電極及び共通電極を有する。第1の発光デバイスは、第1の電極及び共通電極のうち陽極として機能する電極側から順に、第1の発光層及び電子輸送層を有する。第2の発光デバイスは、第2の電極と共通電極との間に、第2の発光層を有する。第3の発光デバイスは、第3の電極と共通電極との間に、第3の発光層を有する。電子輸送層は、電子輸送性材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体と、を有する。電子輸送層は、第1の領域と、第1の領域よりも共通電極側に位置する第2の領域と、を有する。第1の領域と第2の領域とは、電子輸送性材料の濃度が互いに異なる。第1の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短い。第2の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長は、第3の発光デバイスの発光スペクトルの最大ピーク波長よりも短い。上面視において、第2の発光デバイスの発光領域の面積は、第3の発光デバイスの発光領域の面積よりも大きい。上面視において、第1の発光デバイスの発光領域の面積は、第3の発光デバイスの発光領域の面積以上、かつ、第2の発光デバイスの発光領域の面積以下である。第2の領域は、第1の領域に比べて、電子輸送性材料の濃度が低いことが好ましい。
【0024】
第1の発光デバイスは、蛍光を発することが好ましく、第2の発光デバイス及び第3の発光デバイスは、それぞれ、燐光を発することが好ましい。
【0025】
本発明の一態様は、上記いずれかの構成の表示装置を有し、フレキシブルプリント回路基板(Flexible printed circuit、以下、FPCと記す)もしくはTCP(Tape Carrier Package)等のコネクタが取り付けられた表示モジュール、またはCOG(Chip On Glass)方式もしくはCOF(Chip On Film)方式等により集積回路(IC)が実装された表示モジュール等の表示モジュールである。
【0026】
本発明の一態様は、上記の表示モジュールと、アンテナ、バッテリ、筐体、カメラ、スピーカ、マイク、及び操作ボタンのうち少なくとも一つと、を有する電子機器である。
【0027】
本発明の一態様は、上記の表示モジュールと、通信制御部と、を有し、通信制御部を用いて、コンピュータネットワークに接続することができる、テレビジョン装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一態様により、長寿命の表示装置を提供できる。本発明の一態様により、信頼性の高い表示装置を提供できる。本発明の一態様により、大型の表示装置を提供できる。本発明の一態様により、解像度の高い表示装置を提供できる。本発明の一態様により、生産性の高い表示装置を提供できる。本発明の一態様により、表示品位の高い表示装置を提供できる。
【0029】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1A及び図1Bは、表示装置の一例を示す断面図である。
図2図2A及び図2Bは、表示装置の一例を示す断面図である。
図3図3は、表示装置の一例を示す断面図である。
図4図4A図4Cは、発光デバイスの一例を示す断面図である。
図5図5A及び図5Bは、発光デバイスの発光領域を説明する図である。図5Cは、発光デバイスの時間経過に伴う規格化輝度を説明する図である。
図6図6A及び図6Bは、発光デバイスの発光領域を説明する図である。
図7図7A図7Dは、電子輸送層における有機金属錯体の濃度を説明する図である。
図8図8は、表示装置の一例を示す斜視図である。
図9図9A及び図9Bは、表示装置の一例を示す断面図である。
図10図10Aは、表示装置の一例を示す断面図である。図10Bは、トランジスタの一例を示す断面図である。
図11図11Aは、画素の一例を示すブロック図である。図11Bは、画素回路の一例を示す回路図である。
図12図12A図12Dは、EL層の作製方法を説明する断面図である。
図13図13は、液滴吐出装置を説明する概念図である。
図14図14A図14Dは、電子機器の一例を示す図である。
図15図15A図15Fは、電子機器の一例を示す図である。
図16図16は、テレビジョン装置の一例を示す図である。
図17図17Aは、電子オンリーデバイスの構造を示す図である。図17Bは、実施例の発光デバイスの構造を示す図である。
図18図18は、電子オンリーデバイスの電流密度-電圧特性を示す図である。
図19図19は、直流電源7.0VにおけるZADN:Liq(1:1)の算出されたキャパシタンスCの周波数特性を示す図である。
図20図20は、直流電圧7.0VにおけるZADN:Liq(1:1)の-ΔBの周波数特性を示す図である。
図21図21は、各有機化合物における電子移動度の電界強度依存特性を示す図である。
図22図22A図22Dは、画素のレイアウトの一例を示す上面図である。
図23図23は、輝度-電流密度特性を示す図である。
図24図24は、輝度-電圧特性を示す図である。
図25図25は、電流効率-輝度特性を示す図である。
図26図26は、電流密度-電圧特性を示す図である。
図27図27は、発光スペクトルを示す図である。
図28図28は、輝度-電流密度特性を示す図である。
図29図29は、輝度-電圧特性を示す図である。
図30図30は、電流効率-輝度特性を示す図である。
図31図31は、電流密度-電圧特性を示す図である。
図32図32は、発光スペクトルを示す図である。
図33図33は、輝度-電流密度特性を示す図である。
図34図34は、輝度-電圧特性を示す図である。
図35図35は、電流効率-輝度特性を示す図である。
図36図36は、電流密度-電圧特性を示す図である。
図37図37は、発光スペクトルを示す図である。
図38図38は、信頼性試験の結果を示す図である。
図39図39は、信頼性試験の結果を示す図である。
図40図40は、信頼性試験の結果を示す図である。
図41図41は、輝度-電流密度特性を示す図である。
図42図42は、輝度-電圧特性を示す図である。
図43図43は、電流効率-輝度特性を示す図である。
図44図44は、電流密度-電圧特性を示す図である。
図45図45は、発光スペクトルを示す図である。
図46図46は、輝度-電流密度特性を示す図である。
図47図47は、輝度-電圧特性を示す図である。
図48図48は、電流効率-輝度特性を示す図である。
図49図49は、電流密度-電圧特性を示す図である。
図50図50は、発光スペクトルを示す図である。
図51図51は、輝度-電流密度特性を示す図である。
図52図52は、輝度-電圧特性を示す図である。
図53図53は、電流効率-輝度特性を示す図である。
図54図54は、電流密度-電圧特性を示す図である。
図55図55は、発光スペクトルを示す図である。
図56図56は、信頼性試験の結果を示す図である。
図57図57は、信頼性試験の結果を示す図である。
図58図58は、信頼性試験の結果を示す図である。
図59図59は、信頼性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0032】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0033】
また、図面において示す各構成の、位置、大きさ、範囲などは、理解の簡単のため、実際の位置、大きさ、範囲などを表していない場合がある。このため、開示する発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、範囲などに限定されない。
【0034】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、又は、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能である。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能である。
【0035】
なお、本明細書等において、特に説明のない限り、要素(発光デバイス、発光層など)を複数有する構成を説明する場合であっても、各々の要素に共通する事項を説明する場合には、アルファベットを省略して説明する。例えば、発光層193R及び発光層193G等に共通する事項を説明する場合に、発光層193と記す場合がある。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について図1図10を用いて説明する。
【0037】
本実施の形態の表示装置は、表示部に発光デバイスを有し、当該表示部で画像を表示することができる。
【0038】
発光デバイスとしては、OLED(Organic Light Emitting Diode)やQLED(Quantum-dot Light Emitting Diode)などのELデバイスを用いることが好ましい。ELデバイスが有する発光物質としては、蛍光を発する物質(蛍光発光物質)、燐光を発する物質(燐光発光物質)、無機化合物(量子ドット材料など)、熱活性化遅延蛍光を示す物質(熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料)などが挙げられる。
【0039】
本実施の形態の表示装置のカラー化方式には、色塗り分け方式が適用されている。小型の表示装置に色塗り分け方式を用いる場合、メタルマスクの合わせ精度を高めることができ、塗り分けの歩留まりを高められるため、好ましい。また、大型の表示装置は精細度を比較的低くすることができるため、塗り分け方式の発光デバイスを採用する点で有利である。
【0040】
各色の副画素が有する発光デバイスは、互いに異なる発光層を有する。各発光デバイスが有する発光層は、互いに分離していることが好ましい。なお、表示装置の精細度が高い場合、各発光デバイスが有する発光層は、互いに重なる部分を有することがある。
【0041】
本実施の形態の表示装置は、発光デバイスが形成されている基板とは反対方向に光を射出するトップエミッション型、発光デバイスが形成されている基板側に光を射出するボトムエミッション型、両面に光を射出するデュアルエミッション型のいずれであってもよい。
【0042】
発光デバイスには、微小光共振器(マイクロキャビティ)構造を採用することが好ましい。具体的には、一対の電極間の光学距離を調整するために、EL層において、発光層の他にもう1層(例えば、正孔輸送層)を各色の発光デバイスで塗り分けて、その他の層は、各色の発光デバイスで共通の層とすることが好ましい。これにより、工程を簡略化し、かつ、効率よく光を取り出すことができ、広色域の表示が可能な表示装置を実現できる。
【0043】
本実施の形態の表示装置は、発光層に正孔が注入されやすく、かつ、電子が注入されにくい構成の発光デバイスを有する。正孔注入層及び正孔輸送層から正孔が容易に注入され、かつ、電子輸送層から発光層への電子の注入量が抑制されることで、発光層が電子過多の状態になることを抑制できる。そして、時間の経過に従って発光層に電子が注入されていくことで輝度が上昇し、当該輝度上昇により初期劣化を相殺することができる。初期劣化が抑制され、駆動寿命が非常に長い発光デバイスを用いることで、表示装置の寿命を長くし、信頼性を高めることができる。当該発光デバイスの構成は、図4図7を用いて後述する。
【0044】
まず、図1図3に、表示装置の構成例を示す。図1図3に示す表示装置は、少なくとも一つの発光デバイスに、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されている。
【0045】
[表示装置10A]
図1Aに表示装置10Aの断面図を示す。
【0046】
表示装置10Aは、赤色の光21Rを呈する発光デバイス190R、緑色の光21Gを呈する発光デバイス190G、及び青色の光21Bを呈する発光デバイス190Bを有する。
【0047】
発光デバイス190Rは、画素電極191、光学調整層199R、バッファ層192R、発光層193R、バッファ層194R、及び共通電極115を有する。発光層193Rは、赤色の光を発する有機化合物を有する。
【0048】
発光デバイス190Gは、画素電極191、光学調整層199G、バッファ層192G、発光層193G、バッファ層194G、及び共通電極115を有する。発光層193Gは、緑色の光を発する有機化合物を有する。
【0049】
発光デバイス190Bは、画素電極191、光学調整層199B、バッファ層192B、発光層193B、バッファ層194B、及び共通電極115を有する。発光層193Bは、青色の光を発する有機化合物を有する。
【0050】
発光デバイス190R、発光デバイス190G、及び発光デバイス190Bのうち、少なくとも一つには、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されている。
【0051】
本実施の形態では、画素電極191が陽極として機能し、共通電極115が陰極として機能する場合を例に挙げて説明する。
【0052】
画素電極191、光学調整層199R、光学調整層199G、光学調整層199B、バッファ層192R、バッファ層192G、バッファ層192B、発光層193R、発光層193G、発光層193B、バッファ層194R、バッファ層194G、バッファ層194B、及び共通電極115は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0053】
画素電極191は、絶縁層214上に位置する。画素電極191の端部は、隔壁216によって覆われている。各画素電極191は隔壁216によって互いに電気的に絶縁されている(電気的に分離されている、ともいう)。
【0054】
隔壁216としては、有機絶縁膜が好適である。有機絶縁膜に用いることができる材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。
【0055】
バッファ層192は、画素電極191上に位置する。発光層193は、バッファ層192を介して、画素電極191と重なる。バッファ層194は、発光層193上に位置する。発光層193は、バッファ層194を介して、共通電極115と重なる。バッファ層192は、正孔注入層及び正孔輸送層の一方または双方を有することができる。バッファ層194は、電子注入層及び電子輸送層の一方または双方を有することができる。
【0056】
共通電極115は、各色の発光デバイス190に共通で用いられる層である。
【0057】
表示装置10Aは、一対の基板(基板151及び基板152)間に、発光デバイス190及びトランジスタ42等を有する。
【0058】
発光デバイス190において、それぞれ画素電極191及び共通電極115の間に位置するバッファ層192、発光層193、及びバッファ層194は、EL層ということもできる。画素電極191は可視光を反射する機能を有することが好ましい。共通電極115は可視光を透過する機能を有する。
【0059】
本実施の形態の表示装置が有する発光デバイスには、マイクロキャビティ構造が適用されていることが好ましい。したがって、発光デバイスが有する一対の電極の一方は、可視光に対する透過性及び反射性を有する電極(半透過・半反射電極)を有することが好ましく、他方は、可視光に対する反射性を有する電極(反射電極)を有することが好ましい。発光デバイスがマイクロキャビティ構造を有することで、発光層から得られる発光を両電極間で共振させ、発光デバイスから射出される光を強めることができる。
【0060】
なお、半透過・半反射電極は、反射電極と可視光に対する透過性を有する電極(透明電極ともいう)との積層構造とすることができる。本明細書等では、それぞれ、半透過・半反射電極の一部として機能する、反射電極を画素電極または共通電極と記し、透明電極を光学調整層と記すことがあるが、透明電極(光学調整層)も、画素電極または共通電極としての機能を有するといえることがある。
【0061】
透明電極の光の透過率は、40%以上とする。例えば、発光デバイスには、可視光(波長400nm以上750nm未満の光)及び近赤外光(波長750nm以上1300nm以下の光)のそれぞれの透過率が40%以上である電極を用いることが好ましい。また、半透過・半反射電極の可視光及び近赤外光それぞれの反射率は、10%以上95%以下、好ましくは30%以上80%以下とする。反射電極の可視光及び近赤外光の反射率は、40%以上100%以下、好ましくは70%以上100%以下とする。また、これらの電極の抵抗率は、1×10-2Ωcm以下が好ましい。
【0062】
本実施の形態では、画素電極191上に光学調整層199を設ける例を示すが、光学調整層199を設けなくてもよい。例えば、バッファ層192またはバッファ層194が、光学調整層としての機能を有していてもよい。バッファ層192またはバッファ層194の膜厚を異ならせることで、各発光デバイスにおいて、特定の色の光を強めて取り出すことができる。なお、半透過・半反射電極が、反射電極と透明電極との積層構造の場合、一対の電極間の光学距離とは、一対の反射電極間の光学距離を示す。
【0063】
発光デバイス190は、可視光を発する機能を有する。具体的には、発光デバイス190は、画素電極191と共通電極115との間に電圧を印加することで、基板152側に光を射出する電界発光デバイスである。
【0064】
画素電極191は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ42が有するソースまたはドレインと電気的に接続される。トランジスタ42は、発光デバイス190の駆動を制御する機能を有する。
【0065】
発光デバイス190は、それぞれ、保護層195に覆われていることが好ましい。図1Aでは、保護層195が、共通電極115上に接して設けられている。保護層195を設けることで、発光デバイス190に水などの不純物が入り込むことを抑制し、発光デバイス190の信頼性を高めることができる。また、接着層142によって、保護層195と基板152とが貼り合わされている。
【0066】
遮光層BMとしては、発光デバイスからの発光を遮る材料を用いることができる。遮光層BMは、可視光を吸収することが好ましい。遮光層BMとして、例えば、金属材料、又は、顔料(カーボンブラックなど)もしくは染料を含む樹脂材料等を用いてブラックマトリクスを形成することができる。遮光層BMは、赤色のカラーフィルタ、緑色のカラーフィルタ、及び青色のカラーフィルタの積層構造であってもよい。
【0067】
[表示装置10B]
図1Bに表示装置10Bの断面図を示す。なお、以降の表示装置の説明において、先に説明した表示装置と同様の構成については、説明を省略することがある。
【0068】
表示装置10Bは、赤色の発光デバイス190R及び緑色の発光デバイス190Gが、共通層182及び共通層184を有する点で、表示装置10Aと異なる。
【0069】
赤色の発光デバイス190R、緑色の発光デバイス190G、及び青色の発光デバイス190Bのうち少なくとも2色の発光デバイスは、共通で用いられる層(共通層)を1層以上有することが好ましい。これにより、少ない作製工程で表示装置を作製できる。
【0070】
図1Bでは、発光デバイス190R及び発光デバイス190Gが共通層182及び共通層184を有する例を示すが、本発明の一態様の表示装置は、発光デバイス190R及び発光デバイス190Gが共通層182のみ、または、共通層184のみを有する構成であってもよい。
【0071】
共通層182は、画素電極191と発光層193Rとの間、及び画素電極191と発光層193Gとの間に位置する。
【0072】
共通層184は、発光層193Rと共通電極115との間、及び発光層193Gと共通電極115との間に位置する。
【0073】
共通層182及び共通層184は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0074】
共通層182としては、例えば、正孔注入層及び正孔輸送層の一方または双方を形成することができる。
【0075】
共通層184としては、例えば、電子注入層及び電子輸送層の一方または双方を形成することができる。
【0076】
なお、発光デバイス190R及び発光デバイス190Gは、画素電極191と共通層182との間、共通層182と発光層との間、発光層と共通層184との間、及び、共通層184と共通電極115との間のうち少なくとも一か所にバッファ層を有していてもよい。バッファ層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層のうち少なくとも一つを形成することができる。
【0077】
例えば、発光デバイス190Bに、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されていることが好ましい。または、発光デバイス190R及び発光デバイス190Gの双方に、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されていてもよい。
【0078】
また、発光デバイス190Rまたは発光デバイス190Gの一方と、発光デバイス190Bと、の2つに、図4図7に例示する発光デバイスの構成を適用する場合、発光デバイス190Rまたは発光デバイス190Gの一方と、発光デバイス190Bと、が共通層182及び共通層184を有していることが好ましい。このとき、共通層182及び共通層184の構成は、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されていることが好ましい。
【0079】
[表示装置10C]
図2Aに表示装置10Cの断面図を示す。
【0080】
表示装置10Cは、赤色の発光デバイス190R、緑色の発光デバイス190G、及び青色の発光デバイス190Bが共通層112及び共通層114を有する点で、表示装置10Aと異なる。
【0081】
赤色の発光デバイス190R、緑色の発光デバイス190G、及び青色の発光デバイス190Bは、共通で用いられる層(共通層)を1層以上有することが好ましい。これにより、少ない作製工程で表示装置を作製できる。
【0082】
図2Aでは、各色の発光デバイスが共通層112及び共通層114を有する例を示すが、本発明の一態様の表示装置は、各色の発光デバイスが共通層112のみ、または、共通層114のみを有する構成であってもよい。
【0083】
共通層112は、画素電極191と各色の発光層との間に位置する。
【0084】
共通層114は、各色の発光層と共通電極115との間に位置する。
【0085】
共通層112及び共通層114は、それぞれ、単層構造であってもよく、積層構造であってもよい。
【0086】
共通層112としては、例えば、正孔注入層及び正孔輸送層の一方または双方を形成することができる。
【0087】
共通層114としては、例えば、電子注入層及び電子輸送層の一方または双方を形成することができる。
【0088】
なお、各発光デバイスは、画素電極191と共通層112との間、共通層112と発光層との間、発光層と共通層114との間、及び、共通層114と共通電極115との間のうち少なくとも一か所にバッファ層を有していてもよい。バッファ層としては、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、及び電子注入層のうち少なくとも一つを形成することができる。
【0089】
各発光デバイスには、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されていることが好ましい。このとき、共通層112及び共通層114の構成は、図4図7に例示する発光デバイスの構成が適用されていることが好ましい。特に、発光層193R、発光層193G、及び発光層193Bが有する発光物質が、それぞれ、蛍光発光物質であることが好ましい。これにより、発光デバイスの寿命をより長くすることができる。
【0090】
または、発光層193R及び発光層193Gが有する発光物質が、それぞれ燐光発光物質であり、かつ、発光層193Bが有する発光物質が、蛍光発光物質であることが好ましい。
【0091】
[表示装置10D]
図2Bに表示装置10Dの断面図を示す。
【0092】
表示装置10Dは、基板151及び基板152を有さず、基板153、基板154、接着層155、及び絶縁層212を有する点で、表示装置10Cと異なる。
【0093】
基板153と絶縁層212とは接着層155によって貼り合わされている。基板154と保護層195とは接着層142によって貼り合わされている。
【0094】
表示装置10Dは、作製基板上に形成された絶縁層212、トランジスタ42、及び各色の発光デバイス等を、基板153上に転置することで作製される構成である。基板153及び基板154は、それぞれ、可撓性を有することが好ましい。これにより、表示装置10Dの可撓性を高めることができる。例えば、基板153及び基板154には、それぞれ、樹脂を用いることが好ましい。
【0095】
基板153及び基板154としては、それぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂、ポリアミド樹脂(ナイロン、アラミド等)、ポリシロキサン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ABS樹脂、セルロースナノファイバー等を用いることができる。基板153及び基板154の一方または双方に、可撓性を有する程度の厚さのガラスを用いてもよい。
【0096】
本実施の形態の表示装置が有する基板には、光学等方性が高いフィルムを用いてもよい。光学等方性が高いフィルムとしては、トリアセチルセルロース(TAC、セルローストリアセテートともいう)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム、及びアクリルフィルム等が挙げられる。
【0097】
[表示装置10E]
図3に表示装置10Eの断面図を示す。
【0098】
表示装置10Eは、ボトムエミッション型である点で、表示装置10Cと異なる。
【0099】
画素電極191は、可視光を透過する機能を有する。共通電極115は可視光を反射する機能を有することが好ましい。
【0100】
トランジスタ42は、発光デバイスの発光領域と重ならない位置に設けられていることが好ましい。
【0101】
表示装置10Eでは、保護層195上に接着層142を介して基板152が設けられている例を示すが、接着層142及び基板152は設けなくてもよい。
【0102】
[発光デバイス]
図4A図4Cに、本実施の形態の表示装置に用いることができる発光デバイスの一例を示す。
【0103】
図4Aに示す発光デバイスは、陽極101、EL層103、及び陰極102を有する。EL層103は、陽極101側から、正孔注入層121、正孔輸送層122、発光層123、電子輸送層124、及び電子注入層125を有する。なお、図4A図4Cには示さないが、発光デバイスは光学調整層を有していてもよい。
【0104】
陽極101、陰極102、正孔注入層121、正孔輸送層122、発光層123、電子輸送層124、及び電子注入層125は、それぞれ、単層構造であっても、積層構造であってもよい。
【0105】
図4B及び図4Cに示す発光デバイスが有する正孔輸送層122は、正孔注入層121側の正孔輸送層122aと、発光層123側の正孔輸送層122bと、の、2層構造である。
【0106】
図4Cに示す発光デバイスが有する電子輸送層124は、発光層123側の電子輸送層124aと、電子注入層125側の電子輸送層124bと、の、2層構造である。
【0107】
以下では、発光デバイスに用いることができる材料について、説明する。
【0108】
<電極>
発光デバイスの一対の電極を形成する材料としては、金属、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物などを適宜用いることができる。具体的には、In-Sn酸化物(ITOともいう)、In-Si-Sn酸化物(ITSOともいう)、In-Zn酸化物、In-W-Zn酸化物が挙げられる。その他、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、イットリウム(Y)、ネオジム(Nd)などの金属、及びこれらを適宜組み合わせて含む合金を用いることもできる。その他、上記例示のない元素周期表の第1族または第2族に属する元素(例えば、リチウム(Li)、セシウム(Cs)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr))、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)などの希土類金属及びこれらを適宜組み合わせて含む合金、グラフェン等を用いることができる。
【0109】
なお、マイクロキャビティ構造を有する発光デバイスを作製する場合は、反射電極と半透過・半反射電極とを用いる。したがって、所望の導電性材料を単数または複数用い、単層または積層して形成することができる。電極の作製には、スパッタリング法や真空蒸着法を用いることができる。
【0110】
<正孔注入層>
正孔注入層121は、電子受容性材料と、正孔輸送性材料と、を有する。
【0111】
電子受容性材料は、当該正孔輸送性材料に対して電子受容性を示す。
【0112】
正孔輸送性材料の最高被占有軌道準位(HOMO準位)は比較的低い(深い)ことが好ましい。具体的には、正孔輸送性材料のHOMO準位は、-5.7eV以上-5.4eV以下であることが好ましい。正孔輸送性材料のHOMO準位が比較的低いことで、正孔輸送層122への正孔の注入が容易となり、好ましい。
【0113】
電子受容性材料としては、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する有機化合物を用いることができる。
【0114】
電子受容性材料としては、例えば、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基やシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましい。電子吸引基を有する[3]ラジアレン誘導体としては、例えば、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。
【0115】
正孔輸送性材料は、電子よりも正孔の輸送性が高い。正孔輸送性材料は、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格のうち少なくとも一つを有することが好ましい。正孔輸送性材料は、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであってもよい。
【0116】
正孔輸送性材料が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有すると、長寿命な発光デバイスを作製することができるため好ましい。
【0117】
正孔輸送性材料としては、例えば、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4-(2;1’-ビナフチル-6-イル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4-(6;2’-ビナフチル-2-イル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4-(2;2’-ビナフチル-7-イル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4-(1;2’-ビナフチル-4-イル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4-(1;2’-ビナフチル-5-イル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-(1-ナフチル)-4’-フェニルトリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(1,1’-ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス([1,1’-ビフェニル]-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(1,1’-ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)等が挙げられる。
【0118】
<正孔輸送層>
正孔輸送層122は、正孔注入層121によって注入された正孔を発光層123に輸送する層である。
【0119】
正孔輸送層122は、正孔輸送性材料を有する。正孔輸送層122には、正孔注入層121に用いることができる正孔輸送性材料を用いることができる。正孔輸送層122が積層構造である場合、発光層123側の正孔輸送層122bは、電子ブロック層としての機能を有することが好ましい。
【0120】
正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位は、正孔注入層121に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位以下の値であることが好ましい。正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位と、正孔注入層121に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位と、の差は、0.2eV以内であることが好ましい。正孔注入層121に用いる正孔輸送性材料と、正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料と、が同じであると、正孔の注入がスムーズとなるため、より好ましい。
【0121】
正孔輸送層122が積層構造を有する場合、発光層123側に形成される正孔輸送層122bに用いる正孔輸送性材料のHOMO準位は、正孔注入層121側に形成される正孔輸送層122aに用いる正孔輸送性材料のHOMO準位よりも低いことが好ましい。さらに、2つの正孔輸送性材料のHOMO準位の差は0.2eV以内であることが好ましい。正孔注入層121及び積層構造を有する正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料のHOMO準位が上記の関係を有することにより、各層への正孔注入がスムーズに行われ、駆動電圧の上昇や発光層123における正孔の過少状態を防ぐことができる。
【0122】
正孔注入層121及び積層構造を有する正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料は、それぞれ、正孔輸送性骨格を有することが好ましい。当該正孔輸送性骨格としては、正孔輸送性材料のHOMO準位が高く(浅く)なりすぎない、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格、及びアントラセン骨格が好ましい。
【0123】
正孔注入層121及び積層構造を有する正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料の正孔輸送性骨格が、隣り合う層同士で共通している(特に、ジベンゾフラン骨格である)と、正孔の注入がスムーズになるため好ましい。
【0124】
正孔注入層121及び積層構造を有する正孔輸送層122に用いる正孔輸送性材料が、隣り合う層で同一であると、陰極102方向に隣り合う層への正孔の注入がよりスムーズとなるため好ましい。
【0125】
<発光層>
発光層は、発光物質を含む層である。発光層は、1種または複数種の発光物質を有することができる。発光物質としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの発光色を呈する物質を適宜用いる。また、発光物質として、近赤外光を発する物質を用いることもできる。
【0126】
発光層は、発光物質(ゲスト材料)に加えて、1種または複数種の有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)を有していてもよい。1種または複数種の有機化合物としては、本実施の形態で説明する正孔輸送性材料及び電子輸送性材料の一方または双方を用いることができる。また、1種または複数種の有機化合物として、バイポーラ性材料を用いてもよい。
【0127】
発光層に用いることができる発光物質として、特に限定は無く、一重項励起エネルギーを可視光領域もしくは近赤外光領域の発光に変える発光物質、または三重項励起エネルギーを可視光領域もしくは近赤外光領域の発光に変える発光物質を用いることができる。
【0128】
一重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、蛍光発光物質が挙げられ、例えば、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。特にピレン誘導体は発光量子収率が高いので好ましい。ピレン誘導体の具体例としては、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FrAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6ThAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-6-アミン](略称:1,6BnfAPrn)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(N-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-02)、N,N’-(ピレン-1,6-ジイル)ビス[(6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)などが挙げられる。
【0129】
その他にも、5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPBA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン(略称:TBP)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス[N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン](略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)等を用いることができる。
【0130】
三重項励起エネルギーを発光に変える発光物質としては、例えば、燐光発光物質や熱活性化遅延蛍光を示す熱活性化遅延蛍光(Thermally activated delayed fluorescence:TADF)材料が挙げられる。
【0131】
燐光発光物質としては、例えば、4H-トリアゾール骨格、1H-トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、ピリミジン骨格、ピラジン骨格、またはピリジン骨格を有する有機金属錯体(特にイリジウム錯体)、電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体(特にイリジウム錯体)、白金錯体、希土類金属錯体等が挙げられる。
【0132】
青色または緑色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が450nm以上570nm以下である燐光発光物質としては、以下のような物質が挙げられる。
【0133】
例えば、トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)])、トリス[4-(3-ビフェニル)-5-イソプロピル-3-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrptz-3b)])、トリス[3-(5-ビフェニル)-5-イソプロピル-4-フェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:Ir(iPr5btz)])、のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpmi)])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)])のようなイミダゾール骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CFppy)(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIr(acac))のように電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属錯体等が挙げられる。
【0134】
緑色または黄色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が495nm以上590nm以下である燐光発光物質としては、以下のような物質が挙げられる。
【0135】
例えば、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス{4,6-ジメチル-2-[6-(2,6-ジメチルフェニル)-4-ピリミジニル-κN3]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(dmppm-dmp)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)(acac)])、[2-(4-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)(4dppy)])、ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC][2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、ビス(2,4-ジフェニル-1,3-オキサゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(dpo)(acac)])、ビス{2-[4’-(パーフルオロフェニル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(p-PF-ph)(acac)])、ビス(2-フェニルベンゾチアゾラト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bt)(acac)])などの有機金属錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0136】
黄色または赤色を呈し、発光スペクトルのピーク波長が570nm以上750nm以下である燐光発光物質としては、以下のような物質が挙げられる。
【0137】
例えば、(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)(dpm)])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)(dpm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[3-(3,5-ジメチルフェニル)-5-フェニル-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,6-ジメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-P)(dibm)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(4-シアノ-2,6-ジメチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-dmCP)(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2-メチル-3-フェニルキノキサリナト-N,C2’]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(2,3-ジフェニルキノキサリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dpq)(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)(acac)])、ビス{4,6-ジメチル-2-[5-(5-シアノ-2-メチルフェニル)-3-(3,5-ジメチルフェニル)-2-ピラジニル-κN]フェニル-κC}(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)(略称:[Ir(dmdppr-m5CP)(dpm)])のようなピラジン骨格を有する有機金属錯体や、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)(acac)])、ビス[4,6-ジメチル-2-(2-キノリニル-κN)フェニル-κC](2,4-ペンタンジオナト-κO,O’)イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属錯体、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:[PtOEP])のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。
【0138】
発光層に用いる有機化合物(ホスト材料、アシスト材料等)としては、発光物質のエネルギーギャップより大きなエネルギーギャップを有する物質を、一種もしくは複数種選択して用いることができる。
【0139】
蛍光発光物質と組み合わせて用いる有機化合物としては、一重項励起状態のエネルギー準位が大きく、三重項励起状態のエネルギー準位が小さい有機化合物を用いるのが好ましい。
【0140】
一部上記の具体例と重複するが、発光物質(蛍光発光物質、燐光発光物質)との好ましい組み合わせという観点から、以下に有機化合物の具体例を示す。
【0141】
蛍光発光物質と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、アントラセン誘導体、テトラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ジベンゾ[g,p]クリセン誘導体等の縮合多環芳香族化合物が挙げられる。
【0142】
蛍光発光物質と組み合わせて用いる有機化合物(ホスト材料)の具体例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3,6-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:DPCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、N,N-ジフェニル-9-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:CzA1PA)、4-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、YGAPA、PCAPA、N,9-ジフェニル-N-{4-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]フェニル}-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPBA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、6,12-ジメトキシ-5,11-ジフェニルクリセン、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)-ビフェニル-4’-イル}アントラセン(略称:FLPPA)、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、9,9’-ビアントリル(略称:BANT)、9,9’-(スチルベン-3,3’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’-(スチルベン-4,4’-ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、1,3,5-トリ(1-ピレニル)ベンゼン(略称:TPB3)、5,12-ジフェニルテトラセン、5,12-ビス(ビフェニル-2-イル)テトラセンなどが挙げられる。
【0143】
燐光発光物質と組み合わせて用いる有機化合物としては、発光物質の三重項励起エネルギー(基底状態と三重項励起状態とのエネルギー差)よりも三重項励起エネルギーの大きい有機化合物を選択すればよい。
【0144】
励起錯体を形成させるべく複数の有機化合物(例えば、第1のホスト材料、及び第2のホスト材料(またはアシスト材料)等)を発光物質と組み合わせて用いる場合は、これらの複数の有機化合物を燐光発光物質(特に有機金属錯体)と混合して用いることが好ましい。
【0145】
このような構成とすることにより、励起錯体から発光物質へのエネルギー移動であるExTET(Exciplex-Triplet Energy Transfer)を用いた発光を効率よく得ることができる。なお、複数の有機化合物の組み合わせとしては、励起錯体が形成しやすいものがよく、正孔を受け取りやすい化合物(正孔輸送性材料)と、電子を受け取りやすい化合物(電子輸送性材料)とを組み合わせることが特に好ましい。発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光を得ることができる。なお、正孔輸送性材料及び電子輸送性材料の具体例については、本実施の形態で示す材料を用いることができる。この構成により、発光デバイスの高効率、低電圧、長寿命を同時に実現できる。
【0146】
励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性材料のHOMO準位が電子輸送性材料のHOMO準位以上の値であると好ましい。正孔輸送性材料のLUMO準位(最低空軌道準位)が電子輸送性材料のLUMO準位以上の値であると好ましい。材料のLUMO準位及びHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位及び酸化電位)から導出することができる。
【0147】
励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性材料の発光スペクトル、電子輸送性材料の発光スペクトル、及びこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長側にシフトする(または長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。または、正孔輸送性材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、または遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL、及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0148】
燐光発光物質と組み合わせて用いることができる有機化合物としては、芳香族アミン(芳香族アミン骨格を有する化合物)、カルバゾール誘導体(カルバゾール骨格を有する化合物)、ジベンゾチオフェン誘導体(チオフェン誘導体)、ジベンゾフラン誘導体(フラン誘導体)、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体等が挙げられる。
【0149】
正孔輸送性の高い有機化合物である芳香族アミン、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体の具体例としては、以下の物質が挙げられる。
【0150】
カルバゾール誘導体としては、ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)、カルバゾリル基を有する芳香族アミン等が挙げられる。
【0151】
ビカルバゾール誘導体(例えば、3,3’-ビカルバゾール誘導体)としては、具体的には、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール、9-(1,1’-ビフェニル-3-イル)-9’-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)などが挙げられる。
【0152】
カルバゾリル基を有する芳香族アミンとしては、具体的には、PCBA1BP、N-(4-ビフェニル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCBiF)、PCBBiF、PCBBi1BP、PCBANB、PCBNBB、4-フェニルジフェニル-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)アミン(略称:PCA1BP)、N,N’-ビス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N,N’-ジフェニルベンゼン-1,3-ジアミン(略称:PCA2B)、N,N’,N’’-トリフェニル-N,N’,N’’-トリス(9-フェニルカルバゾール-3-イル)ベンゼン-1,3,5-トリアミン(略称:PCA3B)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、PCBASF、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、3-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA1)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzDPA2)、3,6-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-(1-ナフチル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzTPN2)、2-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:PCASF)、N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-(4-フェニル)フェニルアニリン(略称:YGA1BP)、N,N’-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニル-9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジアミン(略称:YGA2F)、4,4’,4’’-トリス(カルバゾール-9-イル)トリフェニルアミン(略称:TCTA)などが挙げられる。
【0153】
カルバゾール誘導体としては、上記に加えて、3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPPn)、PCPN、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、CzPA等が挙げられる。
【0154】
チオフェン誘導体(チオフェン骨格を有する化合物)及びフラン誘導体(フラン骨格を有する化合物)としては、具体的には、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)等が挙げられる。
【0155】
芳香族アミンとしては、具体的には、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPBまたはα-NPD)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(略称:TPD)、4,4’-ビス[N-(スピロ-9,9’-ビフルオレン-2-イル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)、BPAFLP、mBPAFLP、N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-N-{9,9-ジメチル-2-[N’-フェニル-N’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミノ]-9H-フルオレン-7-イル}フェニルアミン(略称:DFLADFL)、N-(9,9-ジメチル-2-ジフェニルアミノ-9H-フルオレン-7-イル)ジフェニルアミン(略称:DPNF)、2-[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPASF)、2,7-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]スピロ-9,9’-ビフルオレン(略称:DPA2SF)、4,4’,4’’-トリス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:1’-TNATA)、TDATA、m-MTDATA、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’-ビス(N-{4-[N’-(3-メチルフェニル)-N’-フェニルアミノ]フェニル}-N-フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等が挙げられる。
【0156】
正孔輸送性の高い有機化合物としては、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)などの高分子化合物を用いることもできる。
【0157】
電子輸送性の高い有機化合物である、亜鉛やアルミニウム系の金属錯体の具体例としては、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Alq)、トリス(4-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)など、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等が挙げられる。
【0158】
この他、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。
【0159】
電子輸送性の高い有機化合物である、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体の具体例としては、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、3-(4-tert-ブチルフェニル)-4-(4-エチルフェニル)-5-(4-ビフェニリル)-1,2,4-トリアゾール(略称:p-EtTAZ)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ビス(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)などが挙げられる。
【0160】
電子輸送性の高い有機化合物である、ジアジン骨格を有する複素環化合物、トリアジン骨格を有する複素環化合物、ピリジン骨格を有する複素環化合物の具体例としては、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、2-{4-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などが挙げられる。
【0161】
電子輸送性の高い有機化合物としては、ポリ(2,5-ピリジンジイル)(略称:PPy)、ポリ[(9,9-ジヘキシルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(ピリジン-3,5-ジイル)](略称:PF-Py)、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレン-2,7-ジイル)-co-(2,2’-ビピリジン-6,6’-ジイル)](略称:PF-BPy)のような高分子化合物を用いることもできる。
【0162】
TADF材料とは、S準位とT準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。熱活性化遅延蛍光が効率良く得られる条件としては、S準位とT準位のエネルギー差が0eV以上0.2eV以下、好ましくは0eV以上0.1eV以下であることが挙げられる。また、TADF材料における遅延蛍光とは、通常の蛍光と同様のスペクトルを持ちながら、寿命が著しく長い発光をいう。その寿命は、10-6秒以上、好ましくは10-3秒以上である。
【0163】
2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体は、S準位とT準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0164】
T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測される燐光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS準位とし、燐光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT準位とした際に、そのSとTの差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0165】
TADF材料としては、例えば、フラーレンやその誘導体、プロフラビン等のアクリジン誘導体、エオシン等が挙げられる。また、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。金属含有ポルフィリンとしては、例えば、プロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(略称:SnF(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(略称:PtClOEP)等が挙げられる。
【0166】
その他にも、2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、PCCzPTzn、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm)、4-[4-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzPBfpm)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)等のπ電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有する複素環化合物を用いることができる。
【0167】
該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、及びトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格は電子受容性が高く、信頼性が良好なため好ましい。
【0168】
また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一つを有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。
【0169】
なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S準位(一重項励起状態のエネルギー準位)とT準位(三重項励起状態のエネルギー準位)のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いてもよい。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボランやボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環や複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。
【0170】
このように、π電子不足型複素芳香環及びπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格及びπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0171】
なお、TADF材料を用いる場合、他の有機化合物と組み合わせて用いることもできる。特に、上述したホスト材料、正孔輸送性材料、電子輸送性材料と組み合わせることができる。TADF材料を用いる場合、ホスト材料のS準位はTADF材料のS準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT準位はTADF材料のT準位より高いことが好ましい。
【0172】
また、TADF材料をホスト材料に用い、蛍光発光物質をゲスト材料に用いてもよい。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光物質へエネルギー移動することで、発光デバイスの発光効率を高めることができる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光物質がエネルギーアクセプターとして機能する。従って、ホスト材料としてTADF材料を用いることは、ゲスト材料として蛍光発光物質を用いる場合に非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS準位は、蛍光発光物質のS準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT準位は、蛍光発光物質のS準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT準位は、蛍光発光物質のT準位より高いことが好ましい。
【0173】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0174】
また、効率よく三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送やキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0175】
<電子輸送層>
電子輸送層124は、陰極102から注入された電子を発光層123に輸送する層である。
【0176】
電子輸送層124は、電子輸送性材料を含む。
【0177】
電子輸送性材料は、正孔よりも電子の輸送性が高い。電子輸送性材料のHOMO準位が-6.0eV以上であることが好ましい。電子輸送性材料は、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましく、1×10-7cm/Vs以上1×10-5cm/Vs以下であることがさらに好ましい。
【0178】
電子輸送層124に用いる、HOMO準位が-6.0eV以上の電子輸送性材料の電子移動度(電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度)は、発光層123に用いるホスト材料の電子移動度よりも小さいことが好ましい。電子輸送層124における電子の輸送性を落とすことにより発光層123への電子の注入量を制御することができ、発光層123が電子過多の状態になることを防ぐことができる。
【0179】
電子輸送性材料は、アントラセン骨格を有することが好ましく、アントラセン骨格と複素環骨格とを有することがさらに好ましい。当該複素環骨格としては、含窒素5員環骨格が好ましい。当該含窒素5員環骨格としては、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環のように2つの複素原子を環に含む含窒素5員環骨格を有することが特に好ましい。その他、上記ホスト材料に用いることが可能な電子輸送性材料の一部、及び、上記蛍光発光物質に組み合わせてホスト材料として用いることが可能な材料として挙げた物質を電子輸送層124に用いることができる。
【0180】
電子輸送層124は、さらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体を含むことが好ましい。
【0181】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体としては、リチウムの有機錯体が好ましく、特に、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)が好ましい。
【0182】
発光層123が電子過多の状態になると、図5Aに示すように発光領域123-1が一部に限定されることによりその部分の負担が大きくなり、劣化が促進されてしまう。また、再結合できずに発光層123を電子が通過してしまうことでも、寿命や発光効率が低下する。本発明の一態様では、電子輸送層124における電子の輸送性を落とすことにより、図5Bに示すように発光領域123-1を広げ、発光層123を構成する材料への負担を分散させることで、寿命が長く発光効率の高い発光デバイスを提供することができる。なお、図5A図5B図6A図6Bでは、電子をe、正孔(ホール)をhとして示す。
【0183】
ここで、図5Cを用いて、本実施の形態の発光デバイス及び比較用の発光デバイスにおける時間経過に伴う規格化輝度を説明する。図5Cにおいて、太い実線は本実施の形態の発光デバイスの規格化輝度の劣化曲線であり、太い破線は比較用の発光デバイスの規格化輝度の劣化曲線である。
【0184】
図5Cに示すように、本実施の形態の発光デバイスと、比較用の発光デバイスとは、規格化輝度の劣化曲線の傾きが互いに異なる。具体的には、本実施の形態の発光デバイスの劣化曲線の傾きθ2は、比較用の発光デバイスの劣化曲線の傾きθ1よりも小さい。
【0185】
図5Cに示すように、本実施の形態の発光デバイスは、電流密度一定の条件における駆動試験によって得られる輝度の劣化曲線において、極大値を有する形状を示す場合がある。すなわち、本発明の一態様の発光デバイスの劣化曲線は、時間の経過に従って輝度が上昇する部分を有する形状となる場合がある。このような劣化挙動を示す発光デバイスは、いわゆる初期劣化と呼ばれる駆動初期の急激な劣化を当該輝度上昇により相殺することが可能となり、初期劣化が小さく、且つ非常に長い駆動寿命を有する発光デバイスとすることが可能となる。
【0186】
なお、このような、極大値を有する劣化曲線の微分を取ると、その値が0である部分が存在する。劣化曲線の微分に0となる部分が存在する本発明の一態様の発光デバイスは、初期劣化が小さく、寿命が非常に長い。
【0187】
このような劣化曲線の挙動は、図6Aに示すように、電子輸送層124における電子移動度が小さいことによって、発光に寄与しない再結合が非発光再結合領域124-1で生じることが原因で現れる現象と考えられる。上述の構成を有する本発明の一態様の発光デバイスでは、駆動初期では正孔の注入障壁が小さいこと、及び電子輸送層124の電子輸送性が比較的低いことにより、発光領域123-1(すなわち再結合領域)が電子輸送層124側に寄った状態で形成される。また、電子輸送層124に含まれる電子輸送性材料のHOMO準位が-6.0eV以上と比較的高いことから、正孔の一部が電子輸送層124まで達しており、電子輸送層124でも再結合が起こり、非発光再結合領域124-1が形成される。なお、再結合領域が電子輸送層124内部にまで達することから、電子輸送層124が有する電子輸送性材料と有機金属錯体のHOMO準位の差が0.2eV以内であることが好ましい。
【0188】
駆動時間が経過し、キャリアバランスが変化するにしたがって、図6Bに示すように発光領域123-1(再結合領域)が正孔輸送層122側に移動する。非発光再結合領域124-1が減少することで、再結合したキャリアのエネルギーを有効に発光に寄与させることが可能となり、駆動初期と比較して輝度の上昇が起こる。この輝度上昇が発光デバイスの駆動初期に現れる急激な輝度低下、いわゆる初期劣化を相殺することで初期劣化が小さく、また駆動寿命の長い発光デバイスを提供できる。なお、本明細書等において、上記の発光デバイスをRecombination-Site Tailoring Injection構造(ReSTI構造)と呼称する場合がある。
【0189】
なお、初期劣化を抑えることが可能であることで、有機ELデバイスの大きな弱点の一つとして未だ論われる焼き付きの問題、その低減のためになされる出荷前のエイジングの手間を大きく低減することが可能となる。
【0190】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、長寿命であり、信頼性が高い。
【0191】
電子輸送層124は、その厚さ方向において、電子輸送性材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体と、の混合比が異なる部分が存在することが好ましい。電子輸送層124は、濃度勾配を持っていてもよく、電子輸送性材料と、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体と、の混合比が互いに異なる複数の層の積層構造であってもよい。
【0192】
当該混合比の大小に関しては、飛行時間型二次イオン質量分析(ToF-SIMS:Time-of-flight secondary ion mass spectrometry)で得られる原子や分子の検出量により推察できる。同じ二種類の材料で構成され、混合比が互いに異なる部分において、ToF-SIMS分析によってそれぞれ検出された値の大小は、注目する原子や分子の存在量の大小に相当する。そのため、電子輸送性材料及び有機金属錯体の検出量を比較することによって、混合比の大小の見当をつけることができる。
【0193】
電子輸送層124における有機金属錯体の含有量は、陽極101側に比べて、陰極102側の方が少ないことが好ましい。つまり、有機金属錯体の濃度が、陰極102側から陽極101側に向かって上昇するように、電子輸送層124が形成されることが好ましい。すなわち、電子輸送層124には、電子輸送性材料の存在量が多い部分よりも発光層123側に電子輸送性材料の存在量が少ない部分が存在することになり、また、換言すると、電子輸送層124には、有機金属錯体の存在量が少ない部分よりも発光層123側に有機金属錯体の存在量が多い部分が存在するということができる。
【0194】
電子輸送性材料の存在量が多い部分(有機金属錯体の存在量が少ない部分)における電子移動度は、電界強度[V/cm]の平方根が600において1×10-7cm/Vs以上5×10-5cm/Vs以下であることが好ましい。
【0195】
図4Cに示すように電子輸送層124が積層構造を有する場合、発光層123側に形成される電子輸送層124aと、電子注入層125側に形成される電子輸送層124bと、は、互いに、電子輸送性材料と有機金属錯体との混合比が異なることが好ましい。電子輸送層124aにおける有機金属錯体の存在量は、電子輸送層124bにおける有機金属錯体の存在量よりも多く、電子輸送層124aにおける電子輸送性材料の存在量は、電子輸送層124bにおける電子輸送性材料の存在量よりも少ないことが好ましい。なお、これら混合比は、上述のようにToF-SIMS分析で得られる原子や分子の検出量により推察することが可能である。
【0196】
電子輸送層124aは電子輸送層124bよりも発光層123側に設けられていればよく、電子輸送層124aと電子輸送層124bとの間に他の層が存在していてもよい。
【0197】
電子輸送層124に明確な層としての境界が無い場合、電子輸送性材料と有機金属錯体との存在比は、図7A及び図7Bのように連続的に変化していてもよい。電子輸送層124が積層構造を有する場合、当該存在比は、図7C及び図7Dのように階段状に変化していてもよい。いずれにせよ、電子輸送層124において、電子移動度の律速となる有機金属錯体の濃度の低い領域よりも発光層123側に有機金属錯体の濃度の高い領域が設けられていることが肝要である。なお、本明細書中では、便宜的にToF-SIMSによる存在量や濃度、混合比の推定方法を示したが、その他の検出方法により、これらが証明できるようであればどのような方法を用いても構わない。
【0198】
本発明の一態様の発光デバイスにおけるキャリアバランスの変化は、電子輸送層124の電子移動度の変化によってもたらされると考えられる。本発明の一態様の発光デバイスは、電子輸送層124内部に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体の濃度差が存在する。電子輸送層124は、当該有機金属錯体の濃度が低い領域と発光層123との間に、当該有機金属錯体の濃度が高い領域を有する。すなわち、有機金属錯体の濃度が低い領域が高い領域よりも陰極102側に位置する構成を有する。当該有機金属錯体の濃度が高いほど電子輸送層124の電子移動度は高くなるため、当該電子輸送層124の電子移動度は、その濃度が低い領域に律速されていることになる。
【0199】
ここで、本発明者らは当該発光デバイスに電圧をかけて駆動すると、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の有機金属錯体が、電圧によって陽極101側から陰極102側(濃度の濃い領域から薄い領域)へと拡散してゆくことを見出した。当該有機金属錯体の濃度が高い領域が低い領域よりも陽極101側に存在することによって、駆動に伴って電子輸送層124の電子移動度を向上しているのである。これにより、発光デバイス内部でキャリアバランスの変化が起こり、再結合領域が移動し、上述のような劣化曲線の形状をした寿命の長い発光デバイスを得ることができる。
【0200】
以上のような構成を有する本発明の一態様の発光デバイスは、寿命が非常に長い。特に、LT95(輝度が初期輝度の95%まで低下する時間)程度までの劣化が極めて小さい領域における寿命を大幅に伸ばすことが可能である。
【0201】
<電子注入層>
電子注入層125は、陰極102からの電子の注入効率を高める層である。陰極102の材料の仕事関数の値と、電子注入層125に用いる材料のLUMO準位の値と、の差は、小さい(0.5eV以内)ことが好ましい。
【0202】
電子注入層125には、リチウム、セシウム、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF)、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)、2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPP)、2-(2-ピリジル)-3-ピリジノラトリチウム(略称:LiPPy)、4-フェニル-2-(2-ピリジル)フェノラトリチウム(略称:LiPPP)、リチウム酸化物(LiO)、炭酸セシウム等のようなアルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらの化合物を用いることができる。また、フッ化エルビウム(ErF)のような希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層にエレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。なお、上述した電子輸送層を構成する物質を用いることもできる。
【0203】
また、電子注入層に、電子輸送性材料とドナー性材料(電子供与性材料)とを含む複合材料を用いてもよい。このような複合材料は、電子供与体によって有機化合物に電子が発生するため、電子注入性及び電子輸送性に優れている。この場合、有機化合物としては、発生した電子の輸送に優れた材料であることが好ましく、具体的には、例えば上述した電子輸送性材料(金属錯体や複素芳香族化合物等)を用いることができる。電子供与体としては、有機化合物に対し電子供与性を示す物質であればよい。具体的には、アルカリ金属やアルカリ土類金属や希土類金属が好ましく、リチウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、エルビウム、イッテルビウム等が挙げられる。また、アルカリ金属酸化物やアルカリ土類金属酸化物が好ましく、リチウム酸化物、カルシウム酸化物、バリウム酸化物等が挙げられる。また、酸化マグネシウムのようなルイス塩基を用いることもできる。また、テトラチアフルバレン(略称:TTF)等の有機化合物を用いることもできる。
【0204】
なお、本発明の一態様の発光デバイスの作製には、蒸着法などの真空プロセスや、スピンコート法やインクジェット法などの溶液プロセスを用いることができる。蒸着法を用いる場合には、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、分子線蒸着法、真空蒸着法などの物理蒸着法(PVD法)や、化学蒸着法(CVD法)等を用いることができる。特にEL層に含まれる機能層(正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層)については、蒸着法(真空蒸着法等)、塗布法(ディップコート法、ダイコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法等)、印刷法(インクジェット法、スクリーン(孔版印刷)法、オフセット(平版印刷)法、フレキソ(凸版印刷)法、グラビア法、マイクロコンタクト法等)などの方法により形成することができる。
【0205】
発光デバイスを構成する機能層の材料は、それぞれ、上述の材料に限定されない。例えば、機能層の材料として、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)、中分子化合物(低分子と高分子の中間領域の化合物:分子量400乃至4000)、無機化合物(量子ドット材料等)等を用いてもよい。なお、量子ドット材料としては、コロイド状量子ドット材料、合金型量子ドット材料、コア・シェル型量子ドット材料、コア型量子ドット材料などを用いることができる。
【0206】
以下では、図8図10及び図22を用いて、本発明の一態様の表示装置の、より詳細な構成について説明する。
【0207】
[表示装置の画素のレイアウト]
図22A図22Dに、表示装置の画素のレイアウトの一例を示す。なお、画素のレイアウト、サイズ、形状などはこれらに限定されない。
【0208】
図22A図22Cでは、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の副画素で1つの色を表現する表示装置を例に挙げて説明する。本発明の一態様の表示装置において、色要素の種類及び数に限定はなく、RGB以外の色(例えば、ホワイト、イエロー、シアン、またはマゼンタ等)を用いてもよい。また、図22A図22Cでは、各副画素の発光領域を点線で示す。
【0209】
図22Aに示す画素51、図22Bに示す画素52、及び図22Cに示す画素53は、いずれも、緑色の副画素の発光領域の面積が、赤色の副画素の発光領域の面積よりも大きい。
【0210】
画素51は、青色の副画素の発光領域の面積が、緑色の副画素の発光領域の面積よりも小さく、かつ、赤色の副画素の発光領域の面積よりも大きい例である。
【0211】
画素52は、青色の副画素の発光領域の面積が、緑色の副画素の発光領域の面積と同じであり、かつ、赤色の副画素の発光領域の面積よりも大きい例である。
【0212】
画素53は、青色の副画素の発光領域の面積が、緑色の副画素の発光領域の面積よりも小さく、かつ、赤色の副画素の発光領域の面積と同じである例である。
【0213】
例えば、緑色の副画素と赤色の副画素には、燐光を発する発光デバイスを用い、青色の副画素には、蛍光を発する発光デバイスを用いることが好ましい。
【0214】
ここで、燐光を発する発光デバイスでは、短波長の光を発する発光デバイスほど、発光物質及びホスト材料の三重項励起エネルギーが高く、吸収端が短波長になる。そのため、例えば、緑色の光を呈する発光デバイスと赤色の光を呈する発光デバイスが燐光を発する場合、緑色の光を呈する発光デバイスの方が、赤色の光を呈する発光デバイスよりも信頼性が低くなる傾向がある。したがって、上面視において、緑色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積は、赤色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積よりも大きいことが好ましい。なお、同じ色の副画素が、1つの画素に複数設けられていてもよい。この場合、赤色の副画素の発光領域の面積の和に比べて、緑色の副画素の発光領域の面積の和が大きいことが好ましい。つまり、1つの画素において、緑色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積の和が、赤色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積の和よりも大きいことが好ましい。なお、発光領域の面積は、開口率と読み替えてもよい。
【0215】
青色の光を呈する発光デバイスは、蛍光を発し、かつ、上述のReSTI構造が適用されていることが好ましい。これにより、青色の光を呈する発光デバイスの初期劣化を抑制し、駆動寿命を非常に長くすることができる。このとき、上面視において、青色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積は、赤色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積以上、かつ、緑色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積以下であることが好ましい。また、青色の副画素の発光領域の面積の和は、赤色の副画素の発光領域の面積の和以上、かつ、緑色の副画素の発光領域の面積の和以下が好ましい。例えば、1つの画素において、青色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積の和が、赤色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積の和以上であり、緑色の光を呈する発光デバイスの発光領域の面積の和以下であることが好ましい。
【0216】
本実施の形態の表示装置が有する発光デバイスは、受光デバイスとしての機能を有していてもよい。または、本実施の形態の表示装置は、さらに、受光デバイスを有する副画素を有していてもよい。
【0217】
図22Dに示す画素54は、受光デバイスを有する副画素PDを有する。
【0218】
発光デバイスとして有機ELデバイスを用い、受光デバイスとして有機フォトダイオードを用いることが好ましい。有機ELデバイス及び有機フォトダイオードは、同一基板上に形成することができる。したがって、有機ELデバイスを用いた表示装置に有機フォトダイオードを内蔵することができる。
【0219】
有機フォトダイオードは、有機ELデバイスと共通の構成にできる層(例えば、正孔輸送層、電子輸送層など)が多いため、共通の構成にできる層は一括で成膜することで、成膜工程の増加を抑制することができる。また、成膜回数が同じであっても、一部のデバイスにのみ成膜される層を減らすことで、成膜パターンのズレの影響を低減すること、成膜マスク(メタルマスクなど)に付着したゴミ(パーティクルと呼ばれる小さな異物を含む)の影響を低減すること、などが可能となる。これにより、表示装置の作製の歩留まりを高めることができる。なお、受光デバイスと発光デバイスが共通で有する層は、発光デバイスにおける機能と受光デバイスにおける機能とが異なる場合がある。
【0220】
受光デバイスをイメージセンサに用いる場合、本実施の形態の表示装置は、受光デバイスを用いて、画像を撮像することができる。
【0221】
例えば、表示部全体に受光デバイスを設けることで、表示部全体を用いた撮像を行い、表示装置をスキャナ(カラースキャナ)として用いることができる。
【0222】
例えば、イメージセンサを用いて、指紋、掌紋、または虹彩などのデータを取得することができる。つまり、本実施の形態の表示装置に、生体認証用センサを内蔵させることができる。表示装置が生体認証用センサを内蔵することで、表示装置とは別に生体認証用センサを設ける場合に比べて、電子機器の部品点数を少なくでき、電子機器の小型化及び軽量化が可能である。例えば、表示部全体に受光デバイスを設けることで、認証に用いる領域を広くでき、複数の指のデータを一度に取得するなど、セキュリティレベルの強化、利便性の向上等を図ることができる。
【0223】
また、イメージセンサを用いて、ユーザーの表情、目の動き、または瞳孔径の変化などのデータを取得することができる。当該データを解析することで、ユーザーの心身の情報を取得することができる。当該情報をもとに表示及び音声の一方又は双方の出力内容を変化させることで、例えば、VR(Virtual Reality)向け機器、AR(Augmented Reality)向け機器、またはMR(Mixed Reality)向け機器において、ユーザーが機器を安全に使用できるよう図ることができる。
【0224】
また、受光デバイスをタッチセンサに用いる場合、本実施の形態の表示装置は、受光デバイスを用いて、対象物の近接または接触を検出することができる。
【0225】
[表示装置100A]
図8に、表示装置100Aの斜視図を示し、図9Aに、表示装置100Aの断面図を示す。
【0226】
表示装置100Aは、基板152と基板151とが貼り合わされた構成を有する。図8では、基板152を破線で明示している。
【0227】
表示装置100Aは、表示部162、回路164、配線165等を有する。図8では表示装置100AにIC(集積回路)173及びFPC172が実装されている例を示している。そのため、図8に示す構成は、表示装置100A、IC、及びFPCを有する表示モジュールということもできる。
【0228】
回路164としては、例えば走査線駆動回路を用いることができる。
【0229】
配線165は、表示部162及び回路164に信号及び電力を供給する機能を有する。当該信号及び電力は、FPC172を介して外部から、またはIC173から配線165に入力される。
【0230】
図8では、COG(Chip On Glass)方式またはCOF(Chip on Film)方式等により、基板151にIC173が設けられている例を示す。IC173は、例えば走査線駆動回路または信号線駆動回路などを有するICを適用できる。なお、表示装置100A及び表示モジュールは、ICを設けない構成としてもよい。また、ICを、COF方式等により、FPCに実装してもよい。
【0231】
図9Aに、表示装置100Aの、FPC172を含む領域の一部、回路164の一部、表示部162の一部、及び、端部を含む領域の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。
【0232】
図9Aに示す表示装置100Aは、基板151と基板152の間に、トランジスタ201、トランジスタ205、発光デバイス190R、発光デバイス190G、及び発光デバイス190B等を有する。
【0233】
保護層195と基板152は接着層142を介して接着されている。発光デバイス190の封止には、固体封止構造または中空封止構造などが適用できる。図9Aでは、基板152、接着層142、及び基板151に囲まれた空間143が、不活性ガス(窒素やアルゴンなど)で充填されており、中空封止構造が適用されている。接着層142は、発光デバイス190と重ねて設けられていてもよい。また、基板152、接着層142、及び基板151に囲まれた空間143を、接着層142とは異なる樹脂で充填してもよい。
【0234】
発光デバイス190Rは、絶縁層214側から画素電極191、光学調整層199R、共通層112、発光層193R、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。同様に、発光デバイス190Gは、絶縁層214側から画素電極191、光学調整層199G、共通層112、発光層193G、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。そして、発光デバイス190Bは、絶縁層214側から画素電極191、光学調整層199B、共通層112、発光層193B、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。
【0235】
画素電極191は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ205が有する導電層222bと接続されている。
【0236】
画素電極191の端部は、隔壁216によって覆われている。画素電極191は可視光を反射する材料を含み、共通電極115は可視光を透過する材料を含む。
【0237】
発光デバイス190が発する光は、基板152側に射出される。基板152には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。
【0238】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、いずれも基板151上に形成されている。これらのトランジスタは、同一の材料及び同一の工程により作製することができる。
【0239】
基板151上には、絶縁層211、絶縁層213、絶縁層215、及び絶縁層214がこの順で設けられている。絶縁層211は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層213は、その一部が各トランジスタのゲート絶縁層として機能する。絶縁層215は、トランジスタを覆って設けられる。絶縁層214は、トランジスタを覆って設けられ、平坦化層としての機能を有する。なお、ゲート絶縁層の数及びトランジスタを覆う絶縁層の数は限定されず、それぞれ単層であっても2層以上であってもよい。
【0240】
トランジスタを覆う絶縁層の少なくとも一層に、水や水素などの不純物が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。これにより、絶縁層をバリア層として機能させることができる。このような構成とすることで、トランジスタに外部から不純物が拡散することを効果的に抑制でき、表示装置の信頼性を高めることができる。
【0241】
絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215としては、それぞれ、無機絶縁膜を用いることが好ましい。無機絶縁膜としては、例えば、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、窒化アルミニウム膜などの無機絶縁膜を用いることができる。また、酸化ハフニウム膜、酸化イットリウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ガリウム膜、酸化タンタル膜、酸化マグネシウム膜、酸化ランタン膜、酸化セリウム膜、及び酸化ネオジム膜等を用いてもよい。また、上述の絶縁膜を2以上積層して用いてもよい。
【0242】
ここで、有機絶縁膜は、無機絶縁膜に比べてバリア性が低いことが多い。そのため、有機絶縁膜は、表示装置100Aの端部近傍に開口を有することが好ましい。これにより、表示装置100Aの端部から有機絶縁膜を介して不純物が入り込むことを抑制することができる。または、有機絶縁膜の端部が表示装置100Aの端部よりも内側にくるように有機絶縁膜を形成し、表示装置100Aの端部に有機絶縁膜が露出しないようにしてもよい。
【0243】
平坦化層として機能する絶縁層214には、有機絶縁膜が好適である。有機絶縁膜に用いることができる材料としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等が挙げられる。
【0244】
図9Aに示す領域228では、絶縁層214に開口が形成されている。これにより、絶縁層214に有機絶縁膜を用いる場合であっても、絶縁層214を介して外部から表示部162に不純物が入り込むことを抑制できる。したがって、表示装置100Aの信頼性を高めることができる。
【0245】
トランジスタ201及びトランジスタ205は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、ソース及びドレインとして機能する導電層222a及び導電層222b、半導体層231、ゲート絶縁層として機能する絶縁層213、並びに、ゲートとして機能する導電層223を有する。ここでは、同一の導電膜を加工して得られる複数の層に、同じハッチングパターンを付している。絶縁層211は、導電層221と半導体層231との間に位置する。絶縁層213は、導電層223と半導体層231との間に位置する。
【0246】
本実施の形態の発光装置が有するトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、プレーナ型のトランジスタ、スタガ型のトランジスタ、逆スタガ型のトランジスタ等を用いることができる。また、トップゲート型またはボトムゲート型のいずれのトランジスタ構造としてもよい。または、チャネルが形成される半導体層の上下にゲートが設けられていてもよい。
【0247】
トランジスタ201及びトランジスタ205には、チャネルが形成される半導体層を2つのゲートで挟持する構成が適用されている。2つのゲートを接続し、これらに同一の信号を供給することによりトランジスタを駆動してもよい。または、2つのゲートのうち、一方に閾値電圧を制御するための電位を与え、他方に駆動のための電位を与えることで、トランジスタの閾値電圧を制御してもよい。
【0248】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、または一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0249】
トランジスタの半導体層は、金属酸化物(酸化物半導体ともいう)を有することが好ましい。または、トランジスタの半導体層は、シリコンを有していてもよい。シリコンとしては、アモルファスシリコン、結晶性のシリコン(低温ポリシリコン、単結晶シリコンなど)などが挙げられる。
【0250】
半導体層は、例えば、インジウムと、M(Mは、ガリウム、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、スズ、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、及びマグネシウムから選ばれた一種または複数種)と、亜鉛と、を有することが好ましい。特に、Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、及びスズから選ばれた一種または複数種であることが好ましい。
【0251】
特に、半導体層として、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物(IGZOとも記す)を用いることが好ましい。
【0252】
半導体層がIn-M-Zn酸化物の場合、当該In-M-Zn酸化物におけるInの原子数比はMの原子数比以上であることが好ましい。このようなIn-M-Zn酸化物の金属元素の原子数比として、In:M:Zn=1:1:1またはその近傍の組成、In:M:Zn=1:1:1.2またはその近傍の組成、In:M:Zn=2:1:3またはその近傍の組成、In:M:Zn=3:1:2またはその近傍の組成、In:M:Zn=4:2:3またはその近傍の組成、In:M:Zn=4:2:4.1またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:3またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:6またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:7またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:1:8またはその近傍の組成、In:M:Zn=6:1:6またはその近傍の組成、In:M:Zn=5:2:5またはその近傍の組成、等が挙げられる。なお、近傍の組成とは、所望の原子数比の±30%の範囲を含む。
【0253】
例えば、原子数比がIn:Ga:Zn=4:2:3またはその近傍の組成と記載する場合、Inの原子数比を4としたとき、Gaの原子数比が1以上3以下であり、Znの原子数比が2以上4以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=5:1:6またはその近傍の組成と記載する場合、Inの原子数比を5としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が5以上7以下である場合を含む。また、原子数比がIn:Ga:Zn=1:1:1またはその近傍の組成と記載する場合、Inの原子数比を1としたときに、Gaの原子数比が0.1より大きく2以下であり、Znの原子数比が0.1より大きく2以下である場合を含む。
【0254】
回路164が有するトランジスタと、表示部162が有するトランジスタは、同じ構造であってもよく、異なる構造であってもよい。回路164が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。同様に、表示部162が有する複数のトランジスタの構造は、全て同じであってもよく、2種類以上あってもよい。
【0255】
基板151の、基板152が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、配線165が導電層166及び接続層242を介してFPC172と電気的に接続されている。導電層166は、画素電極191と同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、光学調整層と同一の導電膜を加工して得られた導電膜と、の積層構造である例を示す。接続部204の上面では、導電層166が露出している。これにより、接続部204とFPC172とを接続層242を介して電気的に接続することができる。
【0256】
基板152の基板151側の面には、遮光層BMを設けることが好ましい。また、基板152の外側には各種光学部材を配置することができる。光学部材としては、偏光板、位相差板、光拡散層(拡散フィルムなど)、反射防止層、及び集光フィルム等が挙げられる。また、基板152の外側には、ゴミの付着を抑制する帯電防止膜、汚れを付着しにくくする撥水性の膜、使用に伴う傷の発生を抑制するハードコート膜、衝撃吸収層等を配置してもよい。
【0257】
発光デバイス190を覆う保護層195を設けることで、発光デバイス190に水などの不純物が入り込むことを抑制し、発光デバイス190の信頼性を高めることができる。
【0258】
表示装置100Aの端部近傍の領域228において、絶縁層214の開口を介して、絶縁層215と保護層195とが互いに接することが好ましい。特に、絶縁層215が有する無機絶縁膜と保護層195が有する無機絶縁膜とが互いに接することが好ましい。これにより、有機絶縁膜を介して外部から表示部162に不純物が入り込むことを抑制することができる。したがって、表示装置100Aの信頼性を高めることができる。
【0259】
図9Bに、保護層195が3層構造である例を示す。図9Bにおいて、保護層195は、共通電極115上の無機絶縁層195aと、無機絶縁層195a上の有機絶縁層195bと、有機絶縁層195b上の無機絶縁層195cと、を有する。
【0260】
無機絶縁層195aの端部と無機絶縁層195cの端部は、有機絶縁層195bの端部よりも外側に延在し、互いに接している。そして、無機絶縁層195aは、絶縁層214(有機絶縁層)の開口を介して、絶縁層215(無機絶縁層)と接する。これにより、絶縁層215と保護層195とで、発光デバイス190を囲うことができるため、発光デバイス190の信頼性を高めることができる。
【0261】
このように、保護層195は、有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層構造であってもよい。このとき、有機絶縁膜の端部よりも無機絶縁膜の端部を外側に延在させることが好ましい。
【0262】
基板151及び基板152には、それぞれ、ガラス、石英、セラミック、サファイア、樹脂などを用いることができる。基板151及び基板152に可撓性を有する材料を用いると、表示装置の可撓性を高めることができる。
【0263】
接着層としては、紫外線硬化型等の光硬化型接着剤、反応硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、嫌気型接着剤などの各種硬化型接着剤を用いることができる。これら接着剤としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、イミド樹脂、PVC(ポリビニルクロライド)樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)樹脂、EVA(エチレンビニルアセテート)樹脂等が挙げられる。特に、エポキシ樹脂等の透湿性が低い材料が好ましい。また、二液混合型の樹脂を用いてもよい。また、接着シート等を用いてもよい。
【0264】
接続層242としては、異方性導電フィルム(ACF:Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP:Anisotropic Conductive Paste)などを用いることができる。
【0265】
発光デバイス190は、トップエミッション型、ボトムエミッション型、デュアルエミッション型などがある。光を取り出す側の電極には、可視光を透過する導電膜を用いる。また、光を取り出さない側の電極には、可視光を反射する導電膜を用いることが好ましい。
【0266】
発光デバイス190は少なくとも発光層193を有する。発光デバイス190は、発光層193以外の層として、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性及び正孔輸送性が高い物質)等を含む層をさらに有していてもよい。例えば、共通層112は、正孔注入層及び正孔輸送層の一方又は双方を有することが好ましい。例えば、共通層114は、電子輸送層及び電子注入層の一方または双方を有することが好ましい。
【0267】
発光デバイス190の好ましい構成は、上述の通りである(図4図7)。
【0268】
共通層112、発光層193、及び共通層114には低分子系化合物及び高分子系化合物のいずれを用いることもでき、無機化合物を含んでいてもよい。共通層112、発光層193、及び共通層114を構成する層は、それぞれ、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法等の方法で形成することができる。
【0269】
発光層193は、発光物質を含む層である。発光層193は、1種または複数種の発光物質を有することができる。発光物質としては、青色、紫色、青紫色、緑色、黄緑色、黄色、橙色、赤色などの発光色を呈する物質を適宜用いる。
【0270】
トランジスタのゲート、ソース及びドレインのほか、表示装置を構成する各種配線及び電極などの導電層に用いることのできる材料としては、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、及びタングステンなどの金属、並びに、当該金属を主成分とする合金などが挙げられる。これらの材料を含む膜を単層で、または積層構造として用いることができる。
【0271】
また、透光性を有する導電材料としては、酸化インジウム、インジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化亜鉛、ガリウムを含む酸化亜鉛などの導電性酸化物またはグラフェンを用いることができる。または、金、銀、白金、マグネシウム、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、及びチタンなどの金属材料や、該金属材料を含む合金材料を用いることができる。または、該金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などを用いてもよい。なお、金属材料、合金材料(またはそれらの窒化物)を用いる場合には、透光性を有する程度に薄くすることが好ましい。また、上記材料の積層膜を導電層として用いることができる。例えば、銀とマグネシウムの合金とインジウムスズ酸化物の積層膜などを用いると、導電性を高めることができるため好ましい。これらは、表示装置を構成する各種配線及び電極などの導電層や、発光デバイスが有する導電層(画素電極や共通電極として機能する導電層)にも用いることができる。
【0272】
各絶縁層に用いることのできる絶縁材料としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁材料が挙げられる。
【0273】
[表示装置100B]
図10Aに、表示装置100Bの断面図を示す。表示装置100Bの斜視図は表示装置100A(図8)と同様である。図10Aには、表示装置100Bの、FPC172を含む領域の一部、回路164の一部、及び、表示部162の一部をそれぞれ切断したときの断面の一例を示す。図10Aでは、表示部162のうち、特に、緑色の光を発する発光デバイス190Gと青色の光を発する発光デバイス190Bを含む領域を切断したときの断面の一例を示す。
【0274】
図10Aに示す表示装置100Bは、基板153と基板154の間に、トランジスタ202、トランジスタ210、発光デバイス190G、及び発光デバイス190B等を有する。
【0275】
基板154と保護層195とは接着層142を介して接着されている。接着層142は、発光デバイス190G及び発光デバイス190Bそれぞれと重ねて設けられており、表示装置100Bには、固体封止構造が適用されている。
【0276】
基板153と絶縁層212とは接着層155によって貼り合わされている。
【0277】
表示装置100Bの作製方法としては、まず、絶縁層212、各トランジスタ、各発光デバイス等が設けられた作製基板と、遮光層BMが設けられた基板154と、を接着層142によって貼り合わせる。そして、作製基板を剥離し露出した面に基板153を貼ることで、作製基板上に形成した各構成要素を、基板153に転置する。基板153及び基板154は、それぞれ、可撓性を有することが好ましい。これにより、表示装置100Bの可撓性を高めることができる。
【0278】
絶縁層212には、それぞれ、絶縁層211、絶縁層213、及び絶縁層215に用いることができる無機絶縁膜を用いることができる。
【0279】
発光デバイス190Gは、絶縁層214側から画素電極191、共通層112、発光層193G、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。同様に、発光デバイス190Bは、絶縁層214側から画素電極191、共通層112、発光層193B、共通層114、及び共通電極115の順に積層された積層構造を有する。
【0280】
画素電極191は、絶縁層214に設けられた開口を介して、トランジスタ210が有する導電層222bと接続されている。導電層222bは、絶縁層215及び絶縁層225に設けられた開口を介して、低抵抗領域231nと接続される。トランジスタ210は、発光デバイス190の駆動を制御する機能を有する。
【0281】
画素電極191の端部は、隔壁216によって覆われている。画素電極191は可視光を反射する材料を含み、共通電極115は可視光を透過する材料を含む。
【0282】
発光デバイス190G及び発光デバイス190Bが発する光は、基板154側に射出される。基板154には、可視光に対する透過性が高い材料を用いることが好ましい。
【0283】
各発光デバイスが有する画素電極191は同一の材料及び同一の工程で作製することができる。共通層112、共通層114、及び共通電極115は、発光デバイス190Gと発光デバイス190Bとに共通して用いられる。各色の発光デバイスは、発光層193の構成が異なる以外は全て共通の構成とすることができる。
【0284】
基板153の、基板154が重ならない領域には、接続部204が設けられている。接続部204では、配線165が導電層166及び接続層242を介してFPC172と電気的に接続されている。導電層166は、画素電極191と同一の導電膜を加工して得ることができる。これにより、接続部204とFPC172とを接続層242を介して電気的に接続することができる。
【0285】
トランジスタ202及びトランジスタ210は、ゲートとして機能する導電層221、ゲート絶縁層として機能する絶縁層211、チャネル形成領域231i及び一対の低抵抗領域231nを有する半導体層、一対の低抵抗領域231nの一方と接続する導電層222a、一対の低抵抗領域231nの他方と接続する導電層222b、ゲート絶縁層として機能する絶縁層225、ゲートとして機能する導電層223、並びに、導電層223を覆う絶縁層215を有する。絶縁層211は、導電層221とチャネル形成領域231iとの間に位置する。絶縁層225は、導電層223とチャネル形成領域231iとの間に位置する。
【0286】
導電層222a及び導電層222bは、それぞれ、絶縁層215に設けられた開口を介して低抵抗領域231nと接続される。導電層222a及び導電層222bのうち、一方はソースとして機能し、他方はドレインとして機能する。
【0287】
図10Aでは、絶縁層225が半導体層の上面及び側面を覆う例を示す。導電層222a及び導電層222bは、それぞれ、絶縁層225及び絶縁層215に設けられた開口を介して低抵抗領域231nと接続される。
【0288】
一方、図10Bでは、絶縁層225は、半導体層231のチャネル形成領域231iと重なり、低抵抗領域231nとは重ならない。例えば、導電層223をマスクに絶縁層225を加工することで、図10Bに示す構造を作製できる。図10Bでは、絶縁層225及び導電層223を覆って絶縁層215が設けられ、絶縁層215の開口を介して、導電層222a及び導電層222bがそれぞれ低抵抗領域231nと接続されている。さらに、トランジスタを覆う絶縁層218を設けてもよい。
【0289】
[金属酸化物]
以下では、半導体層に適用可能な金属酸化物について説明する。
【0290】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。例えば、亜鉛酸窒化物(ZnON)などの窒素を有する金属酸化物を、半導体層に用いてもよい。
【0291】
なお、本明細書等において、CAAC(c-axis aligned crystal)、及びCAC(Cloud-Aligned Composite)と記載する場合がある。CAACは結晶構造の一例を表し、CACは機能または材料の構成の一例を表す。
【0292】
例えば、半導体層にはCAC(Cloud-Aligned Composite)-OS(Oxide Semiconductor)を用いることができる。
【0293】
CAC-OSまたはCAC-metal oxideとは、材料の一部では導電性の機能と、材料の一部では絶縁性の機能とを有し、材料の全体では半導体としての機能を有する。なお、CAC-OSまたはCAC-metal oxideを、トランジスタの半導体層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(On/Offさせる機能)をCAC-OSまたはCAC-metal oxideに付与することができる。CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0294】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0295】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。
【0296】
また、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC-OSまたはCAC-metal oxideをトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0297】
すなわち、CAC-OSまたはCAC-metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0298】
酸化物半導体(金属酸化物)は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、及び非晶質酸化物半導体などがある。
【0299】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0300】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形及び七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0301】
また、CAAC-OSは、インジウム、及び酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、及び酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0302】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損(V:oxygen vacancyともいう。)など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0303】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0304】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、インジウム-ガリウム-亜鉛酸化物(以下、IGZO)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0305】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OS及びCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0306】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0307】
半導体層として機能する金属酸化物膜は、不活性ガス及び酸素ガスのいずれか一方または双方を用いて成膜することができる。なお、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)に、特に限定はない。ただし、電界効果移動度が高いトランジスタを得る場合においては、金属酸化物膜の成膜時における酸素の流量比(酸素分圧)は、0%以上30%以下が好ましく、5%以上30%以下がより好ましく、7%以上15%以下がさらに好ましい。
【0308】
金属酸化物は、エネルギーギャップが2eV以上であることが好ましく、2.5eV以上であることがより好ましく、3eV以上であることがさらに好ましい。このように、エネルギーギャップの広い金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0309】
金属酸化物膜の成膜時の基板温度は、350℃以下が好ましく、室温以上200℃以下がより好ましく、室温以上130℃以下がさらに好ましい。金属酸化物膜の成膜時の基板温度が室温であると、生産性を高めることができ、好ましい。
【0310】
金属酸化物膜は、スパッタリング法により形成することができる。そのほか、例えばPLD法、PECVD法、熱CVD法、ALD法、真空蒸着法などを用いてもよい。
【0311】
以上のように、初期劣化が抑制され、駆動寿命が非常に長い発光デバイスを用いるため、発光装置の信頼性を高めることができる。
【0312】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。また、本明細書において、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0313】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示装置について図11を用いて説明する。
【0314】
図11Aに画素のブロック図を示す。図11Aに示す画素は、スイッチングトランジスタ(Switching Tr)、駆動トランジスタ(Driving Tr)、発光デバイス(OLED)に加えて、メモリ(Memory)を有する。
【0315】
メモリには、データData_Wが供給される。表示データDataに加えて、データData_Wが画素に供給されることで、発光デバイスに流れる電流が大きくなり、表示装置は高い輝度を表現することができる。
【0316】
本発明の一態様の表示装置が有する発光デバイスを、表示データData及びデータData_Wに基づいて駆動させることで、高い輝度で発光デバイスを発光させることができる。
【0317】
図11Bに、画素回路の具体的な回路図を示す。
【0318】
図11Bに示す画素は、トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3、トランジスタM4、容量Cs、容量Cw、及び発光デバイスELを有する。
【0319】
トランジスタM1のソースまたはドレインの一方は、容量Cwの一方の電極と電気的に接続される。容量Cwの他方の電極は、トランジスタM4のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタM4のソースまたはドレインの一方は、トランジスタM2のゲートと電気的に接続される。トランジスタM2のゲートは、容量Csの一方の電極と電気的に接続される。容量Csの他方の電極は、トランジスタM2のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタM2のソースまたはドレインの一方は、トランジスタM3のソースまたはドレインの一方と電気的に接続される。トランジスタM3のソースまたはドレインの一方は、発光デバイスELの一方の電極と電気的に接続される。図11Bに示す各トランジスタは、ゲートと電気的に接続されたバックゲートを有するが、バックゲートの接続はこれに限定されない。また、トランジスタにバックゲートを設けなくてもよい。
【0320】
ここで、容量Cwの他方の電極、トランジスタM4のソースまたはドレインの一方、トランジスタM2のゲート、及び容量Csの一方の電極が接続されるノードをノードNMとする。また、容量Csの他方の電極、トランジスタM2のソースまたはドレインの一方、トランジスタM3のソースまたはドレインの一方、及び発光デバイスELの一方の電極が接続されるノードをノードNAとする。
【0321】
トランジスタM1のゲートは、配線G1と電気的に接続される。トランジスタM3のゲートは、配線G1と電気的に接続される。トランジスタM4のゲートは、配線G2に電気的に接続される。トランジスタM1のソースまたはドレインの他方は、配線DATAと電気的に接続される。トランジスタM3のソースまたはドレインの他方は、配線V0と電気的に接続される。トランジスタM4のソースまたはドレインの他方は、配線DATA_Wと電気的に接続される。
【0322】
トランジスタM2のソースまたはドレインの他方は、配線ANODE(高電位側)と電気的に接続される。発光デバイスELの他方の電極は、配線CATHODE(低電位側)と電気的に接続される。
【0323】
配線G1及び配線G2は、トランジスタの動作を制御するための信号線としての機能を有することができる。配線DATAは、画素に画像信号を供給する信号線としての機能を有することができる。配線DATA_Wは、記憶回路MEMにデータを書き込むための信号線としての機能を有することができる。配線DATA_Wは、画素に補正信号を供給する信号線としての機能を有することができる。配線V0は、トランジスタM4の電気特性を取得するためのモニタ線としての機能を有する。また、配線V0からトランジスタM3を介して容量Csの他方の電極に特定の電位を供給することにより、画像信号の書き込みを安定化させることもできる。
【0324】
トランジスタM2、トランジスタM4、及び容量Cwは、記憶回路MEMを構成する。ノードNMは記憶ノードであり、トランジスタM4を導通させることで、配線DATA_Wに供給された信号をノードNMに書き込むことができる。トランジスタM4に極めてオフ電流が低いトランジスタを用いることで、ノードNMの電位を長時間保持することができる。
【0325】
トランジスタM4には、例えば、金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタ)を用いることができる。これにより、トランジスタM4のオフ電流を極めて低くすることができ、ノードNMの電位を長時間保持することができる。このとき、画素を構成するその他のトランジスタにも、OSトランジスタを用いることが好ましい。金属酸化物の具体例は、実施の形態1を参照できる。
【0326】
OSトランジスタはエネルギーギャップが大きいため、極めて低いオフ電流特性を示す。また、OSトランジスタは、インパクトイオン化、アバランシェ降伏、及び短チャネル効果などが生じないなどSiをチャネル形成領域に有するトランジスタ(以下、Siトランジスタ)とは異なる特徴を有し、信頼性の高い回路を形成することができる。
【0327】
また、トランジスタM4に、Siトランジスタを適用してもよい。このとき、画素を構成するその他のトランジスタにも、Siトランジスタを用いることが好ましい。
【0328】
Siトランジスタとしては、アモルファスシリコンを有するトランジスタ、結晶性のシリコン(代表的には、低温ポリシリコン)を有するトランジスタ、単結晶シリコンを有するトランジスタなどが挙げられる。
【0329】
また、1つの画素は、OSトランジスタとSiトランジスタとの両方を有していてもよい。
【0330】
画素において、ノードNMに書き込まれた信号は、配線DATAから供給される画像信号と容量結合され、ノードNAに出力することができる。なお、トランジスタM1は、画素を選択する機能を有することができる。
【0331】
すなわち、ノードNMに所望の補正信号を格納しておけば、供給した画像信号に当該補正信号を付加することができる。なお、補正信号は伝送経路上の要素によって減衰することがあるため、当該減衰を考慮して生成することが好ましい。
【0332】
画像信号と補正信号を用いて発光デバイスを発光させることで、発光デバイスに流れる電流を大きくすることができ、高い輝度を表現できる。ソースドライバの出力電圧以上の電圧を駆動トランジスタのゲート電圧として印加できるため、ソースドライバの消費電力を削減することができる。
【0333】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0334】
(実施の形態3)
本実施の形態では、液滴吐出法を用いてEL層を形成する方法について、図12を用いて説明する。図12A図12Dは、EL層786の作製方法を説明する断面図である。
【0335】
まず、平坦化絶縁膜770上に導電膜772が形成され、導電膜772の一部を覆うように絶縁膜730が形成される(図12A)。
【0336】
次に、絶縁膜730の開口である導電膜772の露出部に、液滴吐出装置783より液滴784を吐出し、組成物を含む層785を形成する。液滴784は、溶媒を含む組成物であり、導電膜772上に付着する(図12B)。
【0337】
なお、液滴784を吐出する工程を減圧下で行ってもよい。
【0338】
次に、組成物を含む層785より溶媒を除去し、固化することによってEL層786を形成する(図12C)。
【0339】
なお、溶媒は、乾燥工程または加熱工程を行うことで除去することができる。
【0340】
次に、EL層786上に導電膜788を形成し、発光デバイス782を形成する(図12D)。
【0341】
このように液滴吐出法を用いてEL層786を形成すると、選択的に組成物を吐出することができるため、材料のロスを削減することができる。また、形状を加工するためのリソグラフィ工程などが必要ないために工程を簡略化することができ、低コスト化が達成できる。
【0342】
なお、上記説明した液滴吐出法とは、組成物の吐出口を有するノズル、あるいは1つまたは複数のノズルを有するヘッド等の液滴を吐出する手段を用いるものの総称とする。
【0343】
次に、液滴吐出法に用いる液滴吐出装置について、図13を用いて説明する。図13は、液滴吐出装置1400を説明する概念図である。
【0344】
液滴吐出装置1400は、液滴吐出手段1403を有する。また、液滴吐出手段1403は、ヘッド1405と、ヘッド1412とを有する。
【0345】
ヘッド1405及びヘッド1412は制御手段1407に接続され、それがコンピュータ1410で制御されることにより予めプログラミングされたパターンを描画することができる。
【0346】
また、描画するタイミングとしては、例えば、基板1402上に形成されたマーカー1411を基準に行えばよい。あるいは、基板1402の外縁を基準にして基準点を確定させてもよい。ここでは、マーカー1411を撮像手段1404で検出し、画像処理手段1409にてデジタル信号に変換したものをコンピュータ1410で認識して制御信号を発生させて制御手段1407に送る。
【0347】
撮像手段1404としては、電荷結合デバイス(CCD)や相補型金属-酸化物-半導体(CMOS)を利用したイメージセンサなどを用いることができる。なお、基板1402上に形成されるべきパターンの情報は記憶媒体1408に格納されたものであり、この情報を基にして制御手段1407に制御信号を送り、液滴吐出手段1403の個々のヘッド1405、ヘッド1412を個別に制御することができる。吐出する材料は、材料供給源1413、材料供給源1414より配管を通してヘッド1405、ヘッド1412にそれぞれ供給される。
【0348】
ヘッド1405の内部は、点線1406が示すように液状の材料を充填する空間と、吐出口であるノズルを有する構造となっている。図示しないが、ヘッド1412もヘッド1405と同様な内部構造を有する。ヘッド1405とヘッド1412のノズルを異なるサイズで設けると、異なる材料を異なる幅で同時に描画することができる。一つのヘッドで、複数種の発光材料などをそれぞれ吐出し、描画することができる。また、広領域に描画する場合は、スループットを向上させるため複数のノズルより同材料を同時に吐出し、描画することができる。大型基板を用いる場合、ヘッド1405、ヘッド1412は基板上を、図13中に示すX、Y、Zの矢印の方向に自在に走査し、描画する領域を自由に設定することができ、同じパターンを一枚の基板に複数描画することができる。
【0349】
また、組成物を吐出する工程は、減圧下で行ってもよい。吐出時に基板を加熱しておいてもよい。組成物を吐出後、乾燥と焼成の一方または両方の工程を行う。乾燥と焼成の工程は、両工程とも加熱処理の工程であるが、その目的、温度と時間が異なるものである。乾燥の工程、焼成の工程は、常圧下または減圧下で、レーザ光の照射や瞬間熱アニール、加熱炉などにより行う。なお、この加熱処理を行うタイミング、加熱処理の回数は特に限定されない。乾燥と焼成の工程を良好に行うためには、そのときの温度は、基板の材質及び組成物の性質に依存する。
【0350】
以上のように、液滴吐出装置を用いてEL層786を作製することができる。
【0351】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0352】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の電子機器について、図14及び図15を用いて説明する。
【0353】
本実施の形態の電子機器は、表示部に本発明の一態様の表示装置を有するため、寿命が長く、信頼性が高い。また、表示部に本発明の一態様の表示装置を用いることで、電子機器を、長寿命かつ大画面とすることができる。
【0354】
本実施の形態の電子機器の表示部には、例えばフルハイビジョン、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。また、表示部の画面サイズとしては、対角20インチ以上、対角30インチ以上、対角50インチ以上、対角60インチ以上、または対角70インチ以上とすることができる。
【0355】
電子機器としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。
【0356】
本実施の形態の電子機器は、家屋もしくはビルの内壁もしくは外壁、または、自動車の内装もしくは外装の曲面に沿って組み込むことができる。
【0357】
本実施の形態の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0358】
本実施の形態の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0359】
本実施の形態の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。
【0360】
図14Aにテレビジョン装置の一例を示す。テレビジョン装置7100は、筐体7101に表示部7000が組み込まれている。ここでは、スタンド7103により筐体7101を支持した構成を示している。
【0361】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0362】
図14Aに示すテレビジョン装置7100の操作は、筐体7101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機7111により行うことができる。または、表示部7000にタッチセンサを備えていてもよく、指等で表示部7000に触れることでテレビジョン装置7100を操作してもよい。リモコン操作機7111は、当該リモコン操作機7111から出力する情報を表示する表示部を有していてもよい。リモコン操作機7111が備える操作キーまたはタッチパネルにより、チャンネル及び音量の操作を行うことができ、表示部7000に表示される映像を操作することができる。
【0363】
なお、テレビジョン装置7100は、受信機及びモデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができる。また、モデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0364】
図14Bに、ノート型パーソナルコンピュータの一例を示す。ノート型パーソナルコンピュータ7200は、筐体7211、キーボード7212、ポインティングデバイス7213、外部接続ポート7214等を有する。筐体7211に、表示部7000が組み込まれている。
【0365】
表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0366】
図14C図14Dに、デジタルサイネージの一例を示す。
【0367】
図14Cに示すデジタルサイネージ7300は、筐体7301、表示部7000、及びスピーカ7303等を有する。さらに、LEDランプ、操作キー(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子、各種センサ、マイクロフォン等を有することができる。
【0368】
図14Dは円柱状の柱7401に取り付けられたデジタルサイネージ7400である。デジタルサイネージ7400は、柱7401の曲面に沿って設けられた表示部7000を有する。
【0369】
図14C図14Dにおいて、表示部7000に、本発明の一態様の表示装置を適用することができる。
【0370】
表示部7000が広いほど、一度に提供できる情報量を増やすことができる。また、表示部7000が広いほど、人の目につきやすく、例えば、広告の宣伝効果を高めることができる。
【0371】
表示部7000にタッチパネルを適用することで、表示部7000に画像または動画を表示するだけでなく、ユーザーが直感的に操作することができ、好ましい。また、路線情報もしくは交通情報などの情報を提供するための用途に用いる場合には、直感的な操作によりユーザビリティを高めることができる。
【0372】
また、図14C図14Dに示すように、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400は、ユーザーが所持するスマートフォン等の情報端末機7311または情報端末機7411と無線通信により連携可能であることが好ましい。例えば、表示部7000に表示される広告の情報を、情報端末機7311または情報端末機7411の画面に表示させることができる。また、情報端末機7311または情報端末機7411を操作することで、表示部7000の表示を切り替えることができる。
【0373】
また、デジタルサイネージ7300またはデジタルサイネージ7400に、情報端末機7311または情報端末機7411の画面を操作手段(コントローラ)としたゲームを実行させることもできる。これにより、不特定多数のユーザーが同時にゲームに参加し、楽しむことができる。
【0374】
図15A乃至図15Fに示す電子機器は、筐体9000、表示部9001、スピーカ9003、操作キー9005(電源スイッチ、または操作スイッチを含む)、接続端子9006、センサ9007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン9008、等を有する。
【0375】
図15A乃至図15Fに示す電子機器は、様々な機能を有する。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出して処理する機能、等を有することができる。なお、電子機器の機能はこれらに限られず、様々な機能を有することができる。電子機器は、複数の表示部を有していてもよい。また、電子機器にカメラ等を設け、静止画や動画を撮影し、記録媒体(外部またはカメラに内蔵)に保存する機能、撮影した画像を表示部に表示する機能、等を有していてもよい。
【0376】
図15A乃至図15Fに示す電子機器の詳細について、以下説明を行う。
【0377】
図15Aは、携帯情報端末9101を示す斜視図である。携帯情報端末9101は、例えばスマートフォンとして用いることができる。なお、携帯情報端末9101は、スピーカ9003、接続端子9006、センサ9007等を設けてもよい。また、携帯情報端末9101は、文字や画像情報をその複数の面に表示することができる。図15Aでは3つのアイコン9050を表示した例を示している。また、破線の矩形で示す情報9051を表示部9001の他の面に表示することもできる。情報9051の一例としては、電子メール、SNS、電話などの着信の通知、電子メールやSNSなどの題名、送信者名、日時、時刻、バッテリの残量、アンテナ受信の強度などがある。または、情報9051が表示されている位置にはアイコン9050などを表示してもよい。
【0378】
図15Bは、携帯情報端末9102を示す斜視図である。携帯情報端末9102は、表示部9001の3面以上に情報を表示する機能を有する。ここでは、情報9052、情報9053、情報9054がそれぞれ異なる面に表示されている例を示す。例えばユーザーは、洋服の胸ポケットに携帯情報端末9102を収納した状態で、携帯情報端末9102の上方から観察できる位置に表示された情報9053を確認することもできる。ユーザーは、携帯情報端末9102をポケットから取り出すことなく表示を確認し、例えば電話を受けるか否かを判断できる。
【0379】
図15Cは、腕時計型の携帯情報端末9200を示す斜視図である。携帯情報端末9200は、例えばスマートウォッチとして用いることができる。また、表示部9001はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行うことができる。また、携帯情報端末9200は、例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。また、携帯情報端末9200は、接続端子9006により、他の情報端末と相互にデータ伝送を行うことや、充電を行うこともできる。なお、充電動作は無線給電により行ってもよい。
【0380】
図15D乃至図15Fは、折り畳み可能な携帯情報端末9201を示す斜視図である。また、図15Dは携帯情報端末9201を展開した状態、図15Fは折り畳んだ状態、図15E図15D図15Fの一方から他方に変化する途中の状態の斜視図である。携帯情報端末9201は、折り畳んだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。携帯情報端末9201が有する表示部9001は、ヒンジ9055によって連結された3つの筐体9000に支持されている。例えば、表示部9001は、曲率半径0.1mm以上150mm以下で曲げることができる。
【0381】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0382】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様のテレビジョン装置について、図16を用いて説明する。
【0383】
図16に、テレビジョン装置600のブロック図を示す。
【0384】
なお、本明細書に添付した図面では、構成要素を機能ごとに分類し、互いに独立したブロックとしてブロック図を示しているが、実際の構成要素は機能ごとに完全に切り分けることが難しく、一つの構成要素が複数の機能に係わることもあり得る。
【0385】
テレビジョン装置600は、制御部601、記憶部602、通信制御部603、画像処理回路604、デコーダ回路605、映像信号受信部606、タイミングコントローラ607、ソースドライバ608、ゲートドライバ609、表示パネル620等を有する。
【0386】
実施の形態1で例示した表示装置は、図16における表示パネル620に適用することができる。これにより、大型かつ長寿命であって、高い表示品位を有するテレビジョン装置600を実現できる。
【0387】
制御部601は、例えば中央演算装置(CPU:Central Processing Unit)として機能することができる。例えば制御部601は、システムバス630を介して記憶部602、通信制御部603、画像処理回路604、デコーダ回路605、及び映像信号受信部606等のコンポーネントを制御する機能を有する。
【0388】
制御部601と各コンポーネントとは、システムバス630を介して信号の伝達が行われる。また制御部601は、システムバス630を介して接続された各コンポーネントから入力される信号を処理する機能、各コンポーネントへ出力する信号を生成する機能等を有し、これによりシステムバス630に接続された各コンポーネントを統括的に制御することができる。
【0389】
記憶部602は、制御部601及び画像処理回路604がアクセス可能なレジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリ、二次メモリなどとして機能する。
【0390】
二次メモリとして用いることのできる記憶装置としては、例えば書き換え可能な不揮発性メモリが適用された記憶装置を用いることができる。例えば、フラッシュメモリ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PRAM(Phase change RAM)、ReRAM(Resistive RAM)、FeRAM(Ferroelectric RAM)などを用いることができる。
【0391】
また、レジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリなどの一時メモリとして用いることのできる記憶装置としては、DRAM(Dynamic RAM)や、SRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリを用いてもよい。
【0392】
例えば、メインメモリに設けられるRAMとしては、例えばDRAMが用いられ、制御部601の作業空間として仮想的にメモリ空間が割り当てられ利用される。記憶部602に格納されたオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム、プログラムモジュール、プログラムデータ等は、実行のためにRAMにロードされる。RAMにロードされたこれらのデータやプログラム、プログラムモジュールは、制御部601に直接アクセスされ、操作される。
【0393】
一方、ROMには書き換えを必要としないBIOS(Basic Input/Output System)やファームウェア等を格納することができる。ROMとしては、マスクROMや、OTPROM(One Time Programmable Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)等を用いることができる。EPROMとしては、紫外線照射により記憶データの消去を可能とするUV-EPROM(Ultra-Violet Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリなどが挙げられる。
【0394】
また、記憶部602の他に、取り外し可能な記憶装置を接続可能な構成としてもよい。例えばストレージデバイスとして機能するハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)やソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)などの記録メディアドライブ、フラッシュメモリ、ブルーレイディスク、DVDなどの記録媒体と接続する端子を有することが好ましい。これにより、映像を記録することができる。
【0395】
通信制御部603は、コンピュータネットワークを介して行われる通信を制御する機能を有する。つまり、テレビジョン装置600には、IoT(Internet of Things)の技術が適用されている。
【0396】
通信制御部603は、例えば、制御部601からの命令に応じてコンピュータネットワークに接続するための制御信号を制御し、当該信号をコンピュータネットワークに発信する。これによって、World Wide Web(WWW)の基盤であるインターネット、イントラネット、エクストラネット、PAN(Personal Area Network)、LAN(Local Area Network)、CAN(Campus Area Network)、MAN(Metropolitan Area Network)、WAN(Wide Area Network)、GAN(Global Area Network)等のコンピュータネットワークに接続し、通信を行うことができる。
【0397】
また、通信制御部603は、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の通信規格を用いてコンピュータネットワークまたは他の電子機器と通信する機能を有していてもよい。
【0398】
通信制御部603は、無線により通信する機能を有していてもよい。例えばアンテナと高周波回路(RF回路)を設け、RF信号の送受信を行えばよい。高周波回路は、各国法制により定められた周波数帯域の電磁信号と電気信号とを相互に変換し、当該電磁信号を用いて無線で他の通信機器との間で通信を行うための回路である。実用的な周波数帯域として数10kHz~数10GHzが一般に用いられている。アンテナと接続される高周波回路には、複数の周波数帯域に対応した高周波回路部を有し、高周波回路部は、増幅器(アンプ)、ミキサ、フィルタ、DSP、RFトランシーバ等を有する構成とすることができる。
【0399】
映像信号受信部606は、例えばアンテナ、復調回路、及びA-D変換回路(アナログ-デジタル変換回路)等を有する。復調回路は、アンテナから入力した信号を復調する機能を有する。またA-D変換回路は、復調されたアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。映像信号受信部606で処理された信号は、デコーダ回路605に送られる。
【0400】
デコーダ回路605は、映像信号受信部606から入力されるデジタル信号に含まれる映像データを、送信される放送規格の仕様に従ってデコードし、画像処理回路に送信する信号を生成する機能を有する。例えば8K放送における放送規格としては、H.265 | MPEG-H High Efficiency Video Coding(略称:HEVC)などがある。
【0401】
映像信号受信部606が有するアンテナにより受信できる放送電波としては、地上波、または衛星から送信される電波などが挙げられる。またアンテナにより受信できる放送電波として、アナログ放送、デジタル放送などがあり、また映像及び音声、または音声のみの放送などがある。例えばUHF帯(約300MHz~3GHz)またはVHF帯(30MHz~300MHz)のうちの特定の周波数帯域で送信される放送電波を受信することができる。また例えば、複数の周波数帯域で受信した複数のデータを用いることで、転送レートを高くすることができ、より多くの情報を得ることができる。これによりフルハイビジョンを超える解像度を有する映像を、表示パネル620に表示させることができる。例えば、4K2K、8K4K、16K8K、またはそれ以上の解像度を有する映像を表示させることができる。
【0402】
また、映像信号受信部606及びデコーダ回路605は、コンピュータネットワークを介したデータ伝送技術により送信された放送のデータを用いて、画像処理回路604に送信する信号を生成する構成としてもよい。このとき、受信する信号がデジタル信号の場合には、映像信号受信部606は復調回路及びA-D変換回路等を有していなくてもよい。
【0403】
画像処理回路604は、デコーダ回路605から入力される映像信号に基づいて、タイミングコントローラ607に出力する映像信号を生成する機能を有する。
【0404】
タイミングコントローラ607は、画像処理回路604が処理を施した映像信号等に含まれる同期信号を基に、ゲートドライバ609及びソースドライバ608に出力する信号(クロック信号、スタートパルス信号などの信号)を生成する機能を有する。また、タイミングコントローラ607は、上記信号に加え、ソースドライバ608に出力するビデオ信号を生成する機能を有する。
【0405】
表示パネル620は、複数の画素621を有する。各画素621は、ゲートドライバ609及びソースドライバ608から供給される信号により駆動される。ここでは、画素数が7680×4320である、8K4K規格に応じた解像度を有する表示パネルの例を示している。なお、表示パネル620の解像度はこれに限られず、フルハイビジョン(画素数1920×1080)または4K2K(画素数3840×2160)等の規格に応じた解像度であってもよい。
【0406】
図16に示す制御部601や画像処理回路604としては、例えばプロセッサを有する構成とすることができる。例えば、制御部601は、CPUとして機能するプロセッサを用いることができる。また、画像処理回路604として、例えばDSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)等の他のプロセッサを用いることができる。また制御部601や画像処理回路604に、上記プロセッサをFPGA(Field Programmable Gate Array)やFPAA(Field Programmable Analog Array)といったPLD(Programmable Logic Device)によって実現した構成としてもよい。
【0407】
プロセッサは、種々のプログラムからの命令を解釈し実行することで、各種のデータ処理やプログラム制御を行う。プロセッサにより実行しうるプログラムは、プロセッサが有するメモリ領域に格納されていてもよいし、別途設けられる記憶装置に格納されていてもよい。
【0408】
また、制御部601、記憶部602、通信制御部603、画像処理回路604、デコーダ回路605、及び映像信号受信部606、及びタイミングコントローラ607のそれぞれが有する機能のうち、2つ以上の機能を1つのICチップに集約させ、システムLSIを構成してもよい。例えば、プロセッサ、デコーダ回路、チューナ回路、A-D変換回路、DRAM、及びSRAM等を有するシステムLSIとしてもよい。
【0409】
なお、制御部601や、他のコンポーネントが有するIC等に、チャネル形成領域に酸化物半導体を用い、極めて低いオフ電流が実現されたトランジスタを利用することもできる。当該トランジスタは、オフ電流が極めて低いため、当該トランジスタをメモリとして機能する容量に流入した電荷(データ)を保持するためのスイッチとして用いることで、データの保持期間を長期にわたり確保することができる。この特性を制御部601等のレジスタやキャッシュメモリに用いることで、必要なときだけ制御部601を動作させ、他の場合には直前の処理の情報を当該メモリに待避させることにより、ノーマリーオフコンピューティングが可能となる。これにより、テレビジョン装置600の低消費電力化を図ることができる。
【0410】
なお、図16のテレビジョン装置600の構成は一例であり、全ての構成要素を含む必要はない。テレビジョン装置600は、図16に示す構成要素のうち必要な構成要素を有していればよい。また、テレビジョン装置600は、図16に示す構成要素以外の構成要素を有していてもよい。
【0411】
例えば、テレビジョン装置600は、図16に示す構成のほか、外部インターフェース、音声出力部、タッチパネルユニット、センサユニット、カメラユニットなどを有していてもよい。例えば外部インターフェースとしては、例えばUSB(Universal Serial Bus)端子、LAN(Local Area Network)接続用端子、電源受給用端子、音声出力用端子、音声入力用端子、映像出力用端子、映像入力用端子などの外部接続端子、赤外線、可視光、紫外線などを用いた光通信用の送受信機、筐体に設けられた物理ボタンなどがある。また、例えば音声入出力部としては、サウンドコントローラ、マイクロフォン、スピーカなどがある。
【0412】
以下では、画像処理回路604についてより詳細な説明を行う。
【0413】
画像処理回路604は、デコーダ回路605から入力される映像信号に基づいて、画像処理を実行する機能を有することが好ましい。
【0414】
画像処理としては、例えばノイズ除去処理、階調変換処理、色調補正処理、輝度補正処理などが挙げられる。色調補正処理や輝度補正処理としては、例えばガンマ補正などがある。
【0415】
また、画像処理回路604は、解像度のアップコンバートに伴う画素間補間処理や、フレーム周波数のアップコンバートに伴うフレーム間補間処理などの処理を実行する機能を有していることが好ましい。
【0416】
例えば、ノイズ除去処理としては、文字などの輪郭の周辺に生じるモスキートノイズ、高速の動画で生じるブロックノイズ、ちらつきを生じるランダムノイズ、解像度のアップコンバートにより生じるドットノイズなどのさまざまなノイズを除去する。
【0417】
階調変換処理は、画像の階調を表示パネル620の出力特性に対応した階調へ変換する処理である。例えば階調数を大きくする場合、小さい階調数で入力された画像に対して、各画素に対応する階調値を補間して割り当てることで、ヒストグラムを平滑化する処理を行うことができる。また、ダイナミックレンジを広げる、ハイダイナミックレンジ(HDR)処理も、階調変換処理に含まれる。
【0418】
また、画素間補間処理は、解像度をアップコンバートした際に、本来存在しないデータを補間する。例えば、目的の画素の周囲の画素を参照し、それらの中間色を表示するようにデータを補間する。
【0419】
また、色調補正処理は、画像の色調を補正する処理である。また輝度補正処理は、画像の明るさ(輝度コントラスト)を補正する処理である。例えば、テレビジョン装置600が設けられる空間の照明の種類や輝度、または色純度などを検知し、それに応じて表示パネル620に表示する画像の輝度や色調が最適となるように補正する。または、表示する画像と、あらかじめ保存してある画像リスト内の様々な場面の画像と、を照合し、最も近い場面の画像に適した輝度や色調に表示する画像を補正する機能を有していてもよい。
【0420】
フレーム間補間は、表示する映像のフレーム周波数を増大させる場合に、本来存在しないフレーム(補間フレーム)の画像を生成する。例えば、ある2枚の画像の差分から2枚の画像の間に挿入する補間フレームの画像を生成する。または2枚の画像の間に複数枚の補間フレームの画像を生成することもできる。例えばデコーダ回路605から入力される映像信号のフレーム周波数が60Hzであったとき、複数枚の補間フレームを生成することで、タイミングコントローラ607に出力する映像信号のフレーム周波数を、2倍の120Hz、または4倍の240Hz、または8倍の480Hzなどに増大させることができる。
【0421】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0422】
<参考例1>
本参考例では、本発明の一態様の表示装置における、有機化合物のHOMO準位、LUMO準位、及び電子移動度の算出方法について説明する。
【0423】
HOMO準位及びLUMO準位はサイクリックボルタンメトリ(CV)測定を元に算出することができる。
【0424】
本参考例では、測定装置として、電気化学アナライザー(ビー・エー・エス(株)製、型番:ALSモデル600Aまたは600C)を用いた。CV測定における溶液は、溶媒として脱水ジメチルホルムアミド(DMF)((株)アルドリッチ製、99.8%、カタログ番号;22705-6)を用い、支持電解質である過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウム(n-BuNClO)((株)東京化成製、カタログ番号;T0836)を100mmol/Lの濃度となるように溶解させ、さらに測定対象を2mmol/Lの濃度となるように溶解させて調製した。作用電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、PTE白金電極)を、補助電極としては白金電極(ビー・エー・エス(株)製、VC-3用Ptカウンター電極(5cm))を、参照電極としてはAg/Ag+電極(ビー・エー・エス(株)製、RE7非水溶媒系参照電極)をそれぞれ用いた。測定は、室温(20~25℃)で行った。CV測定時のスキャン速度は、0.1V/secに統一し、参照電極に対する酸化電位Ea[V]及び還元電位Ec[V]を測定した。Eaは酸化-還元波の中間電位とし、Ecは還元-酸化波の中間電位とした。ここで、本参考例で用いる参照電極の真空準位に対するポテンシャルエネルギーは、-4.94eVであることが分かっているため、HOMO準位[eV]=-4.94-Ea、LUMO準位[eV]=-4.94-Ecという式から、HOMO準位及びLUMO準位をそれぞれ求めることができる。
【0425】
電子移動度はインピーダンス分光法(Impedance Spectroscopy:IS法)により測定することが可能である。
【0426】
EL材料のキャリア移動度の測定は、過渡光電流法(Time-of-flight:TOF法)や空間電荷制限電流(Space-charge-limited current:SCLC)のI-V特性から求める方法(SCLC法)などが古くから知られている。TOF法は実際の有機ELデバイスと比較してかなり厚い膜厚の試料が必要となる。SCLC法ではキャリア移動度の電界強度依存性が得られないなどの欠点がある。IS法では、測定に必要とする有機膜の膜厚が数百nm程度と薄いため、比較的少量のEL材料でも成膜することが可能であり、実際の有機ELデバイスに近い膜厚で移動度を測定できることが特徴であり、キャリア移動度の電界強度依存性も得ることができる。
【0427】
IS法では、ELデバイスに微小正弦波電圧信号(V=V[exp(jωt)])を与え、その応答電流信号(I=Iexp[j(ωt+φ)])の電流振幅と入力信号との位相差より、ELデバイスのインピーダンス(Z=V/I)を求める。高周波電圧から低周波電圧まで変化させてELデバイスに印加させれば、インピーダンスに寄与する様々な緩和時間を有する成分を分離、測定することができる。
【0428】
ここで、インピーダンスの逆数であるアドミタンスY(=1/Z)は、下記式(1)のようにコンダクタンスGとサセプタンスBで表すことができる。
【0429】
【数1】
【0430】
さらに、単一電荷注入(single injection)モデルにより、それぞれ下記式(2)及び(3)を算出することができる。ここで、g(式(4))は微分コンダクタンスである。なお、式中Cは静電容量(キャパシタンス)、θはωTであり走行角、ωは角周波数を表す。Tは走行時間である。解析には電流の式、ポアソンの式、電流連続の式を用い、拡散電流及びトラップ準位の存在を無視している。
【0431】
【数2】
【0432】
静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法が-ΔB法である。また、コンダクタンスの周波数特性から移動度を算出する方法がωΔG法である。
【0433】
実際には、まず、電子移動度を求めたい材料の電子オンリーデバイスを作製する。電子オンリーデバイスとは、キャリアとして電子のみが流れるように設計されたデバイスである。本明細書では、静電容量の周波数特性から移動度を算出する方法(-ΔB法)を説明する。
【0434】
測定用に作製した電子オンリーデバイスの構造を図17Aに示し、具体的な構成を表1に示す。本参考例で作製した電子オンリーデバイスは、第1の電極901(陽極)と第2の電極902(陰極)との間に、第1の層910、第2の層911、及び第3の層912を有する。電子移動度を求めたい材料は第2の層911の材料として用いればよい。本参考例では、2-{4-[9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)と8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)の1:1(重量比)の共蒸着膜について、その電子移動度を測定した。また、本参考例では、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、及び、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)についても電子移動度を測定した。
【0435】
【表1】
【0436】
ZADNとLiqの共蒸着膜を第2の層911として作製した電子オンリーデバイスの電流密度-電圧特性を図18に示す。
【0437】
インピーダンス測定は、5.0V~9.0Vの範囲で直流電圧を印加しながら、交流電圧が70mV、周波数が1Hz~3MHzの条件で測定を行った。ここで得られたインピーダンスの逆数であるアドミタンス(前述の(1)式)からキャパシタンスを算出する。印加電圧7.0Vにおける算出されたキャパシタンスCの周波数特性を図19に示す。
【0438】
キャパシタンスCの周波数特性は、微小電圧信号により注入されたキャリアによる空間電荷が微小交流電圧に完全には追従できず、電流に位相差が生じることにより得られる。ここで、膜中のキャリアの走行時間は、注入されたキャリアが対向電極に到達する時間Tで定義され、以下の式(5)で表される。
【0439】
【数3】
【0440】
負サセプタンス変化(-ΔB)は、静電容量変化-ΔCに角周波数ωを乗じた値(-ωΔC)に対応する。その最も低周波側のピーク周波数f’max(=ωmax/2π)と走行時間Tとの間には、式(3)より、以下の式(6)の関係があることが導出される。
【0441】
【数4】
【0442】
上記測定から算出した(すなわち直流電圧が7.0Vの時の)-ΔBの周波数特性を図20に示す。図20より求まる最も低周波側のピーク周波数f’maxは、図中の矢印で示した。
【0443】
以上の測定及び解析から得られるf’maxから、走行時間Tが求まるため(式(6))、上記式(5)より、今回で言えば電圧7.0Vにおける電子移動度を求めることができる。同様の測定を、直流電圧5.0V~9.0Vの範囲で行うことで、各電圧(電界強度)での電子移動度が算出できるため、移動度の電界強度依存性も測定できる。
【0444】
以上のような算出法により最終的に得られた、各有機化合物の電子移動度の電界強度依存性を図21に示し、図から読み取った、電界強度[V/cm]の平方根が600[V/cm]1/2の時の電子移動度の値を表2に示す。図21において、正方形はcgDBCzPAの結果、三角は2mDBTBPDBq-IIの結果、菱形はZADNとLiqの共蒸着膜の結果を示す。
【0445】
【表2】
【0446】
以上のように電子移動度を算出することが可能である。なお、詳しい測定方法に関しては、Takayuki Okachi 他 ”Japanese Journal of Applied Physics” Vol. 47, No. 12, 2008, pp. 8965-8972を参照することができる。
【実施例0447】
本実施例では、本発明の一態様の表示装置に用いることができる発光デバイスを作製し、評価した結果について説明する。
【0448】
本実施例では、発光デバイスとして、赤色の光を呈するデバイスR1、緑色の光を呈するデバイスG1、及び、青色の光を呈するデバイスB1を作製し、評価した結果について説明する。本実施例で用いるデバイスの構造を図17Bに示し、具体的な構成について表3に示す。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。
【0449】
【表3】
【0450】
【化1】
【0451】
【化2】
【0452】
≪発光デバイスの作製≫
本実施例で作製したデバイスR1、デバイスG1、及びデバイスB1は、図17Bに示すように、基板(図示しない)上に第1の電極130が形成され、第1の電極130上に正孔注入層131、正孔輸送層132a、正孔輸送層132b、発光層133、電子輸送層134、及び、電子注入層135が順次積層され、電子注入層135上に第2の電極140が形成された構造を有する。各デバイスは、さらに、第2の電極140上に、バッファ層136を有する。バッファ層136は、第2の電極140(半透過・半反射電極)における表面プラズモンによる光エネルギーの損失を低減する機能を有する。バッファ層136としては、発光デバイスに用いることができる各種有機膜を採用することができる。
【0453】
まず、基板上に第1の電極130を形成した。電極面積は、4mm(2mm×2mm)とした。基板には、ガラス基板を用いた。第1の電極130は、銀(Ag)とパラジウム(Pd)と銅(Cu)の合金(Ag-Pd-Cu(APC))をスパッタリング法により成膜し、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により成膜することで、形成した。デバイスR1では、APCを膜厚100nmとなるように成膜し、ITSOを膜厚110nmとなるように成膜した。デバイスG1及びデバイスB1では、APCを膜厚100nmとなるように成膜し、ITSOを膜厚85nmとなるように成膜した。なお、本実施例において、第1の電極130は、陽極として機能する。
【0454】
ここで、前処理として、基板の表面を水で洗浄し、200℃で1時間焼成した後、UVオゾン処理を370秒行った。その後、10-4Pa程度まで内部が減圧された真空蒸着装置に基板を導入し、真空蒸着装置内の加熱室において、170℃で30分間の真空焼成を行った後、基板を30分程度放冷した。
【0455】
次に、第1の電極130上に正孔注入層131を形成した。正孔注入層131は、真空蒸着装置内を10-4Paに減圧した後、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)とALD-MP001Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20180314)とを、重量比が1:0.05(=BBABnf:ALD-MP001Q)、膜厚が10nmとなるように共蒸着して形成した。ALD-MP001Qは、BBABnfに対して電子受容性を有する。
【0456】
次に、正孔注入層131上に正孔輸送層132aを形成した。正孔輸送層132aは、BBABnfを蒸着して形成した。正孔輸送層132aは、デバイスR1では膜厚30nmとなるように形成し、デバイスG1では膜厚10nmとなるように形成し、デバイスB1では膜厚25nmとなるように形成した。
【0457】
次に、正孔輸送層132a上に正孔輸送層132bを形成した。
【0458】
デバイスR1の正孔輸送層132bは、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)を用い、膜厚が50nmになるように蒸着して形成した。
【0459】
デバイスG1の正孔輸送層132bは、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)を用い、膜厚が60nmになるように蒸着して形成した。
【0460】
デバイスB1の正孔輸送層132bは、3,3’-(ナフタレン-1,4-ジイル)ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCzN2)を用い、膜厚が10nmになるように蒸着して形成した。
【0461】
次に、正孔輸送層132b上に発光層133を形成した。
【0462】
デバイスR1の発光層133は、9-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(略称:PCBFF)、及び、ALD-MG018Q(分析工房株式会社、材料シリアル番号:1S20161025)を用い、重量比が0.7:0.3:0.05(=9mDBtBPNfpr:PCBFF:ALD-MG018Q)、膜厚が60nmとなるように共蒸着して形成した。ALD-MG018Qは赤色の発光物質である。
【0463】
デバイスG1の発光層133は、8-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、及び、[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)(mbfpypy-d)])を用い、重量比が0.6:0.4:0.1(=8BP-4mDBtPBfpm:βNCCP:[Ir(ppy)(mbfpypy-d)])、膜厚が50nmとなるように共蒸着して形成した。[Ir(ppy)(mbfpypy-d)]は緑色の発光物質である。
【0464】
デバイスB1の発光層133は、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)、及び、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)を用い、重量比が1:0.015(=αN-βNPAnth:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、膜厚が25nmとなるように共蒸着して形成した。3,10PCA2Nbf(IV)-02は青色の発光物質である。
【0465】
次に、発光層133上に電子輸送層134を形成した。デバイスR1及びデバイスG1における電子輸送層134は、2-{4-[9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)-2-アントリル]フェニル}-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:ZADN)と8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)とを、重量比が1:1(=ZADN:Liq)、膜厚が25nmとなるように共蒸着して形成した。デバイスB1における電子輸送層134は、ZADNとLiqとを、重量比が1:0.8(=ZADN:Liq)、膜厚が25nmとなるように共蒸着して形成した。
【0466】
次に、電子輸送層134上に電子注入層135を形成した。電子注入層135は、Liqを用い、膜厚が1nmになるように蒸着して形成した。
【0467】
次に、電子注入層135上に第2の電極140を形成した。第2の電極140は、銀(Ag)とマグネシウム(Mg)とを、体積比が1:0.1(=Ag:Mg)、膜厚が15nmとなるように共蒸着して形成した。なお、本実施例において、第2の電極140は、陰極として機能する。
【0468】
そして、第2の電極140上にバッファ層136を形成した。バッファ層136は、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)を用い、膜厚が80nmになるように蒸着して形成した。
【0469】
以上の工程により、基板上に一対の電極間にEL層を挟んでなる発光デバイスを形成した。なお、上述した作製方法における蒸着工程では、全て抵抗加熱法による蒸着法を用いた。
【0470】
また、上記に示すように作製した発光デバイスは、別の基板(図示せず)により封止される。なお、別の基板(図示せず)を用いた封止の際は、窒素雰囲気のグローブボックス内において、紫外光により固化する接着剤を塗布した別の基板(図示せず)を基板上に固定し、当該基板上に形成された発光デバイスの周囲に接着剤が付着するよう基板同士を接着させた。封止時には365nmの紫外光を6J/cm照射し接着剤を固化し、80℃にて1時間熱処理することにより接着剤を安定化させた。
【0471】
≪発光デバイスの動作特性≫
デバイスR1、デバイスG1、及びデバイスB1の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0472】
図23図27に、デバイスR1の特性を示す。図23は、デバイスR1の輝度-電流密度特性を示す図である。図24は、デバイスR1の輝度-電圧特性を示す図である。図25は、デバイスR1の電流効率-輝度特性を示す図である。図26は、デバイスR1の電流密度-電圧特性を示す図である。図27は、デバイスR1に5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを示す図である。
【0473】
図28図32に、デバイスG1の特性を示す。図28は、デバイスG1の輝度-電流密度特性を示す図である。図29は、デバイスG1の輝度-電圧特性を示す図である。図30は、デバイスG1の電流効率-輝度特性を示す図である。図31は、デバイスG1の電流密度-電圧特性を示す図である。図32は、デバイスG1に5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを示す図である。
【0474】
図33図37に、デバイスB1の特性を示す。図33は、デバイスB1の輝度-電流密度特性を示す図である。図34は、デバイスB1の輝度-電圧特性を示す図である。図35は、デバイスB1の電流効率-輝度特性を示す図である。図36は、デバイスB1の電流密度-電圧特性を示す図である。図37は、デバイスB1に25mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを示す図である。
【0475】
表4に1000cd/m付近における各発光デバイスの主な初期特性値を示す。
【0476】
【表4】
【0477】
表4に示すように、デバイスR1、G1、B1は、それぞれ、色純度が高い発光を示し、高効率であることがわかった。
【0478】
図27に示すように、デバイスR1は、609nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。また、図32に示すように、デバイスG1は、523nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。また、図37に示すように、デバイスB1は、457nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。
【0479】
≪発光デバイスの信頼性特性≫
次に、各発光デバイスに対する信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図38図40に示す。図38図40において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、デバイスR1においては電流密度を75mA/cmに設定し、デバイスG1、B1においては電流密度を50mA/cmに設定し、各発光デバイスを駆動させた。
【0480】
図38より、デバイスR1の1100時間後の規格化輝度は83%であることがわかった。図39より、デバイスG1の500時間後の規格化輝度は57%であることがわかった。図40より、デバイスB1の460時間後の規格化輝度は95%であることがわかった。
【0481】
以上のように、本実施例では、ReSTI構造を適用することで、赤色、緑色、及び青色のいずれの光を呈する発光デバイスにおいても、駆動寿命の長い発光デバイスを作製することができた。また、本実施例では、ReSTI構造を適用することで、蛍光発光及び燐光発光のどちらにおいても、駆動寿命の長い発光デバイスを作製することができた。
【0482】
本実施例で作製した3つの発光デバイスは、互いに異なる材料を含む発光層を有する。一方で、3つの発光デバイスには、同じ材料を用いた層、さらには、同じ材料を用い、かつ、同じ膜厚の層がある。したがって、本発明の一態様の表示装置の作製においては、3色の発光デバイスに共通層を設け、少ない作製工程で、駆動寿命の長い発光デバイスを作製できることが示唆された。
【実施例0483】
本実施例では、本発明の一態様の表示装置に用いることができる発光デバイスを作製し、評価した結果について説明する。
【0484】
本実施例では、発光デバイスとして、赤色の光を呈するデバイスR2、緑色の光を呈するデバイスG2、及び、青色の光を呈するデバイスB2を作製し、評価した結果について説明する。本実施例で用いるデバイスの構造を図17Bに示し、具体的な構成について表5に示す。
【0485】
なお、本実施例で用いる材料の化学式、及び、発光デバイスの作製方法については実施例1を参照できる。
【0486】
【表5】
【0487】
表5に示すように、本実施例の発光デバイスは、電子輸送層134が、ZADNとLiqとの混合比が互いに異なる2層の積層構造である点で、実施例1の発光デバイスと主に異なる。具体的には、本実施例の発光デバイスにおける電子輸送層134は、陽極(第1の電極130)側に比べて、陰極(第2の電極140)側のほうが、Liqの含有量が少ない。
【0488】
≪発光デバイスの動作特性≫
デバイスR2、デバイスG2、及びデバイスB2の動作特性について測定した。なお、測定は室温(25℃に保たれた雰囲気)で行った。
【0489】
図41図45に、デバイスR2の特性を示す。図41は、デバイスR2の輝度-電流密度特性を示す図である。図42は、デバイスR2の輝度-電圧特性を示す図である。図43は、デバイスR2の電流効率-輝度特性を示す図である。図44は、デバイスR2の電流密度-電圧特性を示す図である。図45は、デバイスR2に5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを示す図である。
【0490】
図46図50に、デバイスG2の特性を示す。図46は、デバイスG2の輝度-電流密度特性を示す図である。図47は、デバイスG2の輝度-電圧特性を示す図である。図48は、デバイスG2の電流効率-輝度特性を示す図である。図49は、デバイスG2の電流密度-電圧特性を示す図である。図50は、デバイスG2に5mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを示す図である。
【0491】
図51図55に、デバイスB2の特性を示す。図51は、デバイスB2の輝度-電流密度特性を示す図である。図52は、デバイスB2の輝度-電圧特性を示す図である。図53は、デバイスB2の電流効率-輝度特性を示す図である。図54は、デバイスB2の電流密度-電圧特性を示す図である。図55は、デバイスB2に14.7mA/cmの電流密度で電流を流した際の発光スペクトルを示す図である。
【0492】
表6に1000cd/m付近における各発光デバイスの主な初期特性値を示す。
【0493】
【表6】
【0494】
表6に示すように、デバイスR2、G2、B2は、それぞれ、色純度が高い発光を示し、高効率であることがわかった。
【0495】
図45に示すように、デバイスR2は、610nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。また、図50に示すように、デバイスG2は、521nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。また、図55に示すように、デバイスB2は、459nm付近に最大ピークを有する発光スペクトルを示した。
【0496】
≪発光デバイスの信頼性特性≫
次に、各発光デバイスに対する信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図56図58に示す。図56図58において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は駆動時間(h)を示す。なお、信頼性試験は、デバイスR2においては電流密度を75mA/cmに設定し、デバイスG2、B2においては電流密度を50mA/cmに設定し、各発光デバイスを駆動させた。
【0497】
図56より、デバイスR2の1080時間後の規格化輝度は84%であることがわかった。図57より、デバイスG2の23時間後の規格化輝度は96%であることがわかった。図58より、デバイスB2の530時間後の規格化輝度は95%であることがわかった。
【0498】
デバイスR2、G2、B2は、それぞれ、初期劣化の小さい挙動を示していることがわかった。
【0499】
以上のように、本実施例では、ReSTI構造を適用することで、赤色、緑色、及び青色のいずれの光を呈する発光デバイスにおいても、駆動寿命の長い発光デバイスを作製することができた。また、本実施例では、ReSTI構造を適用することで、蛍光発光及び燐光発光のどちらにおいても、駆動寿命の長い発光デバイスを作製することができた。
【0500】
本実施例で作製した3つの発光デバイスは、互いに異なる材料を含む発光層を有する。一方で、3つの発光デバイスには、同じ材料を用いた層、さらには、同じ材料を用い、かつ、同じ膜厚の層がある。したがって、本発明の一態様の表示装置の作製においては、3色の発光デバイスに共通層を設け、少ない作製工程で、駆動寿命の長い発光デバイスを作製できることが示唆された。
【実施例0501】
本実施例では、本発明の一態様の表示装置に用いることができる発光デバイスを作製し、評価した結果について説明する。
【0502】
本実施例では、発光デバイスとして、赤色の光を呈するデバイスR3、緑色の光を呈するデバイスG3、及び、青色の光を呈するデバイスB3を作製し、評価した結果について説明する。本実施例で用いるデバイスの構造を図17Bに示し、具体的な構成について表7に示す。
【0503】
なお、本実施例の発光デバイスの作製方法については実施例1を参照できる。また、本実施例で用いる材料の化学式を以下に示す。なお、既に示した材料の化学式は省略する。
【0504】
【表7】
【0505】
【化3】
【0506】
表7に示すように、本実施例の発光デバイスは、電子輸送層134が、ZADNとLiqとの混合比が互いに異なる2層の積層構造である点で、実施例1の発光デバイスと主に異なる。具体的には、本実施例の発光デバイスにおける電子輸送層134は、陽極(第1の電極130)側に比べて、陰極(第2の電極140)側のほうが、Liqの含有量が少ない。
【0507】
また、デバイスG3の発光層133は、8BP-4mDBtPBfpm、βNCCP、及び、[2-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)(mbfpypy)])を用い、重量比が0.6:0.4:0.1(=8BP-4mDBtPBfpm:βNCCP:[Ir(ppy)(mbfpypy)])、膜厚が50nmとなるように共蒸着して形成した。
【0508】
本実施例における赤色の光を呈するデバイスR3、緑色の光を呈するデバイスG3、及び、青色の光を呈するデバイスB3の発光色は、それぞれ有機ELデバイスを用いた市販の表示装置(スマートフォン)の副画素と同様の色度になるよう作製した。
【0509】
≪発光デバイスの信頼性特性≫
各発光デバイスに対する信頼性試験を行った。信頼性試験の結果を図59に示す。図59において、縦軸は初期輝度を100%とした時の規格化輝度(%)を示し、横軸は駆動時間(h)を示す。
【0510】
なお、本実施例では、赤色の光を呈するデバイスR3、緑色の光を呈するデバイスG3、及び、青色の光を呈するデバイスB3を、上記市販の表示装置(スマートフォン)の副画素における発光デバイス(有機ELデバイス)と同様の輝度と色度で発光させて信頼性試験を行った。当該市販の表示装置において、各色を単色で、明るさを階調255/255(明るさ100%)の設定で発光させたときの輝度は、赤(R)が108cd/m、緑(G)が354cd/m、青(B)が32.9cd/mであった。また、当該市販の表示装置の副画素の開口率は、赤が4.5%、緑が4.3%、青が6.8%であった。この開口率の値と、上記表示装置におけるRGBの各輝度から、副画素(RGB)内の各輝度が求まる。最後に、円偏光板を含めた透過率を40%と仮定する(副画素(RGB)内の各輝度を0.4で割る)ことで、デバイスR3、G3、及びB3を駆動する際の輝度を決定することができる。なお、当該市販の表示装置では、各副画素にカラーフィルタ及び円偏光板が設けられており、これらを介して、各有機ELデバイスの色度及び輝度を測定した。本実施例の発光デバイスにおいても、各発光デバイス上に各色を透過するカラーフィルタを載せ、当該カラーフィルタを介して、各発光デバイスの色度と輝度を測定した。
【0511】
表8に各発光デバイスの信頼性試験における駆動条件を示す。すなわち、デバイスR3、G3、及びB3は、それぞれ、初期輝度が6580cd/m、20000cd/m、及び1450cd/mとなる条件で定電流駆動した。
【0512】
【表8】
【0513】
図59に示すように、デバイスR3のLT95(輝度が初期輝度の95%まで低下する時間)は3000時間以上であり、デバイスG3のLT95は、480時間であり、デバイスB3のLT95は、1640時間であった。
【0514】
一般に、赤色、緑色、青色の発光デバイスのうち、青色の発光デバイスが最も駆動寿命が短くなる傾向があるところ、本実施例の発光デバイスでは、赤色の発光デバイスに次いで、青色の発光デバイスの駆動寿命が長かった。本実施例では、青色の光を呈する発光デバイスに、蛍光を発する発光層、及び、ReSTI構造を適用している。これにより、青色の光を呈する発光デバイスの初期劣化を抑制し、駆動寿命を非常に長くすることができたと考えられる。
【0515】
なお、発光寿命をRGBで同等としたい場合、各色の副画素の開口率を変えることで必要輝度を変えることができるため、発光寿命の調整が可能である。その際にも初期劣化が抑えられる効果は期待できるため、各色において、長寿命な発光デバイスを作製することが可能といえる。ReSTI構造が採用された青色蛍光デバイスの寿命は非常に長いため、当該青色蛍光デバイスを用いたOLEDディスプレイの場合、従来のOLEDディスプレイよりも青色の副画素の開口率を小さくすることができる。また、ReSTI構造とExTETを用いた赤色燐光デバイスも、非常に寿命が長いため、RGBのうち、赤色の副画素の開口率を最も小さくすることができる。そして、RGBのうち、緑色の副画素の開口率を最も大きくすることで、白色表示のバランスを保ったまま、全体的な寿命を延ばすことができる。青色と赤色の副画素の開口率を小さくできる点は、ペンタイル方式の表示装置の高精細化にも有利である。
【0516】
以上のように、本実施例では、ReSTI構造を適用することで、赤色、緑色、及び青色のいずれの光を呈する発光デバイスにおいても、駆動寿命の長い発光デバイスを作製することができた。また、本実施例では、ReSTI構造を適用することで、蛍光発光及び燐光発光のどちらにおいても、駆動寿命の長い発光デバイスを作製することができた。
【0517】
本実施例で作製した3つの発光デバイスは、互いに異なる材料を含む発光層を有する。一方で、3つの発光デバイスには、同じ材料を用いた層、さらには、同じ材料を用い、かつ、同じ膜厚の層がある。したがって、本発明の一態様の表示装置の作製においては、3色の発光デバイスに共通層を設け、少ない作製工程で、駆動寿命の長い発光デバイスを作製できることが示唆された。
【0518】
<参考例2>
本参考例では、実施例1~実施例3で用いた8-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)の合成方法について説明する。
【0519】
【化4】
【0520】
8-クロロ-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン1.37g、4-ビフェニルボロン酸0.657g、リン酸三カリウム1.91g、ジエチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)30mL、t-ブタノール0.662gを三口フラスコに入れ、フラスコ内を減圧下攪拌することで脱気し、窒素置換した。
【0521】
この混合物を60℃に加熱し、酢酸パラジウム(II)23.3mg、ジ(1-アダマンチル)-n-ブチルホスフィン66.4mgを加え、120℃で27時間攪拌した。この反応液に水を加えて吸引ろ過し、得られたろ物を水、エタノール、及びトルエンで洗浄した。このろ物を熱したトルエンで溶解し、セライト、アルミナ、セライトの順に充填したろ過補助剤に通した。得られた溶液を濃縮、乾固し、トルエンにて再結晶することにより、目的物である白色固体を収量1.28g、収率74%で得た。
【0522】
この白色固体1.26gを、トレインサブリメーション法により昇華精製した。昇華精製では、圧力2.56Pa、アルゴンガスを流量10mL/minで流しながら、310℃で固体を加熱した。昇華精製後、目的物の淡黄色固体を1.01g、回収率80%で得た。この合成スキームを式(a-1)に示す。
【0523】
【化5】
【0524】
なお、上記反応で得られた淡黄色固体の核磁気共鳴分光法(H-NMR)による分析結果を下記に示す。この結果から、8BP-4mDBtPBfpmが得られたことがわかった。
【0525】
H-NMR.δ(CDCl):7.39(t,1H)、7.47-7.53(m,4H)、7.63-7.67(m,2H)、7.68(d,2H)、7.75(d,2H)、7.79-7.83(m,4H)、7.87(d,1H)、7.98(d,1H)、8.02(d,1H)、8.23-8.26(m,2H)、8.57(s,1H)、8.73(d,1H)、9.05(s,1H)、9.34(s,1H)。
【符号の説明】
【0526】
G1:配線、G2:配線、M1:トランジスタ、M2:トランジスタ、M3:トランジスタ、M4:トランジスタ、V0:配線、10A:表示装置、10B:表示装置、10C:表示装置、10D:表示装置、10E:表示装置、21B:光、21G:光、21R:光、42:トランジスタ、51:画素、52:画素、53:画素、54:画素、100A:表示装置、100B:表示装置、101:陽極、102:陰極、103:EL層、112:共通層、114:共通層、115:共通電極、121:正孔注入層、122:正孔輸送層、122a:正孔輸送層、122b:正孔輸送層、123:発光層、123-1:発光領域、124:電子輸送層、124-1:非発光再結合領域、124a:電子輸送層、124b:電子輸送層、125:電子注入層、130:第1の電極、131:正孔注入層、132a:正孔輸送層、132b:正孔輸送層、133:発光層、134:電子輸送層、135:電子注入層、136:バッファ層、140:第2の電極、142:接着層、143:空間、151:基板、152:基板、153:基板、154:基板、155:接着層、162:表示部、164:回路、165:配線、166:導電層、172:FPC、173:IC、182:共通層、184:共通層、190:発光デバイス、190B:発光デバイス、190G:発光デバイス、190R:発光デバイス、191:画素電極、192:バッファ層、192B:バッファ層、192G:バッファ層、192R:バッファ層、193:発光層、193B:発光層、193G:発光層、193R:発光層、194:バッファ層、194B:バッファ層、194G:バッファ層、194R:バッファ層、195:保護層、195a:無機絶縁層、195b:有機絶縁層、195c:無機絶縁層、199:光学調整層、199B:光学調整層、199G:光学調整層、199R:光学調整層、201:トランジスタ、202:トランジスタ、204:接続部、205:トランジスタ、210:トランジスタ、211:絶縁層、212:絶縁層、213:絶縁層、214:絶縁層、215:絶縁層、216:隔壁、218:絶縁層、221:導電層、222a:導電層、222b:導電層、223:導電層、225:絶縁層、228:領域、231:半導体層、231i:チャネル形成領域、231n:低抵抗領域、242:接続層、600:テレビジョン装置、601:制御部、602:記憶部、603:通信制御部、604:画像処理回路、605:デコーダ回路、606:映像信号受信部、607:タイミングコントローラ、608:ソースドライバ、609:ゲートドライバ、620:表示パネル、621:画素、630:システムバス、730:絶縁膜、770:平坦化絶縁膜、772:導電膜、782:発光デバイス、783:液滴吐出装置、784:液滴、785:組成物を含む層、786:EL層、788:導電膜、901:第1の電極、902:第2の電極、910:第1の層、911:第2の層、912:第3の層、1400:液滴吐出装置、1402:基板、1403:液滴吐出手段、1404:撮像手段、1405:ヘッド、1406:点線、1407:制御手段、1408:記憶媒体、1409:画像処理手段、1410:コンピュータ、1411:マーカー、1412:ヘッド、1413:材料供給源、1414:材料供給源、7000:表示部、7100:テレビジョン装置、7101:筐体、7103:スタンド、7111:リモコン操作機、7200:ノート型パーソナルコンピュータ、7211:筐体、7212:キーボード、7213:ポインティングデバイス、7214:外部接続ポート、7300:デジタルサイネージ、7301:筐体、7303:スピーカ、7311:情報端末機、7400:デジタルサイネージ、7401:柱、7411:情報端末機、9000:筐体、9001:表示部、9003:スピーカ、9005:操作キー、9006:接続端子、9007:センサ、9008:マイクロフォン、9050:アイコン、9051:情報、9052:情報、9053:情報、9054:情報、9055:ヒンジ、9101:携帯情報端末、9102:携帯情報端末、9200:携帯情報端末、9201:携帯情報端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
図57
図58
図59