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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133595
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】通報装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/08 20060101AFI20240925BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20240925BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240925BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
G08B25/08 A
G08B21/00 U
G08B21/02
G08G1/09 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107897
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2020051210の分割
【原出願日】2020-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 傑
(72)【発明者】
【氏名】松田 憲幸
(57)【要約】
【課題】無人で自動運転中の移動体の事故に対して、適切な緊急対応がなされることをサポートし得る通報装置を提供する。
【解決手段】通報装置10は、自動運転が可能な移動体1について、移動体1の搭乗者の有無を認識する搭乗者認識部23と、移動体1に生じた衝撃に関する衝撃発生情報を取得する衝撃発生情報取得部24と、所定の対応システム400との間の通信を制御する通信制御部21と、移動体1が自動運転を行っている場合に、搭乗者認識部23により移動体1に搭乗者がいないことが認識された状態で、衝撃発生情報から移動体1に衝撃が生じたことを認識したときに、移動体1に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報を含む第1緊急情報を、通信制御部21を介して対応システム400に送信する緊急通報部25と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転が可能な移動体において使用される通報装置であって、
前記移動体の搭乗者の有無を認識する搭乗者認識部と、
前記移動体に生じた衝撃に関する衝撃発生情報を取得する衝撃発生情報取得部と、
所定の対応システムとの間の通信を制御する通信制御部と、
前記移動体が自動運転を行っている場合に、前記搭乗者認識部により前記移動体に搭乗者がいないことが認識された状態で、前記衝撃発生情報から前記移動体に衝撃が生じたことを認識したときに、前記移動体に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報を含む第1緊急情報を、前記通信制御部を介して前記対応システムに送信する緊急通報部と、
を備える通報装置。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記対応システムとの間で音声通話の通信制御を行い、
前記緊急通報部は、前記第1緊急情報を前記対応システムに送信した後、前記通信制御部により前記対応システムとの間で音声通話通信が確立している状態で、応答を促す所定音声を前記移動体の室内に出力する
請求項1に記載の通報装置。
【請求項3】
前記緊急通報部は、前記第1緊急情報に基づく第1連絡情報を、前記移動体の利用者により使用される利用者端末に送信する
請求項1又は請求項2に記載の通報装置。
【請求項4】
前記対応システムは、緊急応答機関により運営されるシステムである
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の通報装置。
【請求項5】
前記緊急応答機関は、PSAP(Public Safety Answering Point))である
請求項4に記載の通報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サイドブレーキのかけ忘れ等により、人が乗車していない状態で車両が動いていることが認識された場合に、予め定められた外部受信機に対して、警報、注意喚起等の情報を送信するようにした車両内人感知システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-149105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車両内人感知システムのように、車両から外部に通報を行うシステムとして、従来、車両の衝突を検知した際に、自動的にPSAP(Public Safety Answering Point)、コールセンター、警察、救急センター等の事故対応機関に対して、緊急通報を行う緊急通報(eCall)システムが開発されている。また、昨今の自動運転技術の進化により、リモートドライブシステム、オートバレーパーキングシステム等によって、車両を無人で走行させる運用も実現化されている。
このように、車両が無人で走行している際に、車両が何らかの障害物と衝突して緊急通報が行われた場合、緊急通報を受けた事故対応機関から車両に対して、状況を確認するための通話コールがなされるが、車両は無人であるため応答がない。そのため、事故対応機関側では、運転者が通話コールに応答することができないほどのダメージを負っていると判断して、救急車両を手配することになり、この場合は、無駄な緊急対応がなされてしまうという不都合がある。
また、無人で走行中の車両については緊急通報を行わないとする運用を採用した場合には、無人で走行中の車両が車外の人と接触する事故が発生したときにも緊急通報がなされないこととなり、車外の負傷者に対する緊急対応が遅れてしまうという不都合がある。
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、無人で自動運転中の移動体の事故に対して、適切な緊急対応がなされることをサポートし得る通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための態様として、自動運転が可能な移動体において使用される通報装置であって、前記移動体の搭乗者の有無を認識する搭乗者認識部と、前記移動体に生じた衝撃に関する衝撃発生情報を取得する衝撃発生情報取得部と、所定の対応システムとの間の通信を制御する通信制御部と、前記移動体が自動運転を行っている場合に、前記搭乗者認識部により前記移動体に搭乗者がいないことが認識された状態で、前記衝撃発生情報から前記移動体に衝撃が生じたことを認識したときに、前記移動体に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報を含む第1緊急情報を、前記通信制御部を介して前記対応システムに送信する緊急通報部と、を備える通報装置が挙げられる。
【0006】
上記通報装置において、前記通信制御部は、前記対応システムとの間で音声通話の通信制御を行い、前記緊急通報部は、前記第1緊急情報を前記対応システムに送信した後、前記通信制御部により前記対応システムとの間で音声通話通信が確立している状態で、応答を促す所定音声を前記移動体の室内に出力する構成としてもよい。
【0007】
上記通報装置において、前記緊急通報部は、前記第1緊急情報に基づく第1連絡情報を、前記移動体の利用者により使用される利用者端末に送信する構成としてもよい。
【0008】
上記通報装置において、前記対応システムは、緊急応答機関により運営されるシステムである構成としてもよい。
【0009】
上記通報装置において、前記緊急応答機関は、PSAP(Public Safety Answering Point)である構成としてもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記通報装置によれば、搭乗者無して自動運転を行っている移動体が障害物に接触等して、移動体に衝撃が生じた場合に、移動体に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報を含む第1緊急情報が、対応システムに送信される。
これにより、対応システム側では、移動体に搭乗者がいないことを認識できるため、対応システムによって、搭乗者救護のための無駄な緊急対応がなされることを防止することができる。また、対応システムは、移動体の搭乗者との通話によっては事故の状況を確認できないことを認識できるため、車両から送信される事故発生時の車両の走行状況や車両のカメラによる車両周囲の撮影画像等の情報により、車外の負傷者の有無を認識して、車外の負傷者を救護するための緊急対応の要否を判断することができる。よって、上記通報装置によれば、無人で自動運転中の移動体の事故に対して、適切な緊急対応がなされることをサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、オートバレーパーキングにより自動運転中の車両に、事故が発生した場合の緊急対応の説明図である。
図2図2は、通報装置、及び通報装置が搭載された車両の構成図である。
図3図3は、緊急通報処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[1.車両の構成]
図1を参照して、オートバレーパーキングのサービスと、オートバレーパーキングにより自動運転中の車両に事故が生じた場合の緊急通報の態様について説明する。図1は、宿泊施設300において、車両の預け入れスペースAr1及び受け取りスペースAr3と、車両保管スペースAr2との間で、車両1の回送を自動運転によって行うオートバレーパーキングのサービス態様を示している。預け入れスペースAr1には、オートバレーパーキングの依頼を受ける受付端末310が設置されている。
【0013】
車両1は、車両1の作動を制御する車両制御装置50と、車両1に衝撃が生じた際に緊急通報を行う通報装置10とを備えている。車両制御装置50は、利用者Uの運転操作に応じて車両1の走行を制御する手動運転モードと、利用者Uの操作によらずに車両1の走行を制御する自動運転モードとの何れかによって、車両1の走行制御を行う。
【0014】
車両1は、通信ネットワーク500を介して、オペレータやオペレーティングシステムを配置するコールセンターシステム400、駐車管理システム410、受付端末310、利用者Uにより使用される利用者端末200等との間で通信を行う。コールセンターシステム400は、PSAP(Public Safety Answering Point)、保険事業会社、警備会社、車両の管理者・保有者等のシステムであってもよく、それぞれ本発明の対応システムに相当する。PSAPは、緊急応答機関である。
【0015】
駐車管理システム410は、オートバレーパーキングの運営を管理し、C1に示したように、預け入れスペースAr1に到着した車両1から送信される預け入れ依頼情報Bpinを受信することによって、オートバレーパーキングによる車両1の預け入れを受け付ける。なお、利用者Uは、利用者端末200の操作によって、預け入れ情報Bpinを送信することもでき、或いは受付端末310を操作して、預け入れ依頼情報Bpinを送信することもできる。また、利用者Uは、バレーパーキングの担当者Sに、車両1の預け入れを依頼することもできる。この場合は、担当者Sにより使用される担当者端末210から駐車管理システム410に、バレーパーキング依頼情報Bpinが送信される。
【0016】
駐車管理システム410は、預け入れ依頼情報Bpinを受信すると、車両保管スペースAr2の空きスペースを抽出して、車両1に割り当てる。そして、駐車管理スペース410は、割り当てた駐車スペースの情報(位置、識別番号等)、割り当てた駐車スペースまでの経路情報等を含む移動案内情報Mginを、車両1に送信する。
【0017】
移動案内情報Mginを受信した車両1において、車両制御装置50は、車両1を自動運転モードに設定し、移動案内情報Mginに基づいて、車両1を車両保管スペースAr2まで自動走行させて、C3に示したように、割り当てられた駐車スペースに駐車する。
【0018】
利用者Uは、車両を受け取る際には、利用者端末200を操作して、駐車管理システム410に、受け取り依頼情報Bpoutを送信する。駐車管理システム410は、受け取り依頼情報Bpoutを受信すると、受け取りスペースAr3までの経路情報等を含む移動案内情報Mgoutを、車両1に送信する。
【0019】
移動案内情報Mgoutを受信した車両1の車両制御装置50は、車両1を自動運転モードに設定し、出車指示情報に基づいて、車両1を受け取りスペースAr3まで自動走行させる。これにより、利用者Uは、車両1を受け取ることができる。
【0020】
車両1に搭載された通報装置10は、C2に示したように、自動運転モードにより走行中の車両1が障害物600と接触する等の事故が発生して、車両1に生じた衝撃を認識したときに、第1緊急情報Imi1をコールセンターシステム400に送信する。第1緊急情報Imi1には、事故の発生地点(緯度、経度)、車両1の向き、車両1の形式等のMSD(Minimum set of Data)の他に、車両1に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報と、車両1が自動運転モードに設定されていること示す自動運転モード設定情報とのうちの少なくともいずれか一方が含まれる。
【0021】
第1緊急情報Imi1を受信したコールセンターシステム400は、車両1に搭乗者がいないことを認識できるため、コールセンターシステム400により、事故対応において優先すべき事項を判定できる。例えば、搭乗者救護のための不必要な対応がなされることが回避される。また、コールセンターシステム400は、車両1の車外カメラ60への接続を要求して、車外カメラ60による車両1の周囲の撮影画像を取得することにより、車両1と接触した車外の負傷者がいる等の緊急対応が必要な状況が起こっているか否かを確認できる。また、通報装置10は、利用者端末200に対して、第1緊急情報Imi1に基づく連絡情報Imrを送信して、利用者Uに、車両1の事故が生じたことを連絡する。
【0022】
[2.通報装置、及び通報装置の構成]
図2を参照して、通報装置10、及び通報装置10が搭載された車両1の構成について説明する。車両1には、CAN(Controller Area Network)5により通信可能に接続された、通報装置10、車両制御装置50、車外カメラ60、レーダー61、車内カメラ70、マイク71、スピーカー72、操作スイッチ73、タッチパネル74、衝撃センサ80、速度センサ81、加速度センサ82、角速度センサ83、駆動部90、制動部91、操舵部92、ナビゲーション装置100、及び通信ユニット110を備えている。
【0023】
車外カメラ60は、例えば車両1の前後左右に設けられて、車両1の周囲を撮影する。レーダー61は、車両1の前方に存在する対象物の位置を検出する。車内カメラ70は、車両1の車室内を撮影する。マイク71は、車両1の車室内の音を集音する。スピーカー72は、車室内に向けて音を出力する。操作スイッチ73は、利用者Uにより操作されて、車両1の各種機能の設定等を受け付ける。タッチパネル74は、車両1の搭乗者に対する情報を表示すると共に、搭乗者のタッチ操作を受け付ける。
【0024】
衝撃センサ80は、車両1に生じる衝撃を検出する。衝撃センサ80はエアバッグ(図示しない)に組み込まれていてもよい。速度センサ81は、車両1の走行速度を検出する。加速度センサ82は、車両1の加速度を検出する。角速度センサ83は、車両1の角速度を検出する。駆動部90、制動部91、操舵部92は、それぞれ、車両1の走行駆動、減速、操舵を行う。
【0025】
ナビゲーション装置100は、車両1の現在位置を検出するGPS(Global Positioning System)センサ101と、地図データ102を備えて、目的地までのルート走行の案内等を実行する。通信ユニット110は、図1に示した利用者端末200、担当者端末210、受付端末310、コールセンターシステム400、駐車管理システム410等との間で通信を行う。
【0026】
車両制御装置50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ等により構成された制御ユニットである。車両制御装置50は、例えば、利用者Uによる運転モードの設定操作に応じて、手動運転モードと自動運転モードとを切り替える。車両制御装置50は、手動運転モードにおいては、利用者Uによる運転操作に応じて車両1の走行を制御し、自動運転モードにおいては、利用者Uの操作によらずに車両1の走行を制御する。
【0027】
車両制御装置50は、自動運転モードにおいては、車外カメラ60及びレーダー61により認識される車両1の周囲の状況、速度センサ81、加速度センサ82、及び角速度センサ83により検出される車両1の走行状況、ナビゲーション装置100により検出される車両1が走行中の道路状況、通信ユニット110により受信される交通状況等に基づいて、駆動部90、制動部91、及び操舵部92の作動を制御することにより、車両1を自動走行させる。
【0028】
なお、車両制御装置50の一部又は全部の機能は車両1の外部にあってもよく、通信ユニット110を介して、外部の管理装置の操作に基づいて車両1を操作するいわゆるリモートドライブシステムの構成であってもよい。リモートドライブによって、外部の操作者により車両1の運転が実行される態様も、本発明の自動運転モードに相当する。
【0029】
通報装置10は、CPU20、メモリ30等により構成された制御ユニットである。CPU20は、メモリ30に保存された通報装置10の制御用プログラム31を読み込んで実行することにより、通信制御部21、運転モード認識部22、搭乗者認識部23、衝撃発生情報取得部24、緊急通報部25、及び自動運転中報知部26として機能する。
【0030】
通信制御部21は、通信ユニット110を介した利用者端末200、担当者端末210、受付端末310、コールセンターシステム400、駐車管理システム410等との間の通信制御を行う。運転モード認識部22は、車両制御装置50との間で通信を行って、車両1が手動運転モードに設定されているか、自動運転モードに設定されているかを認識する。搭乗者認識部23は、車内カメラ70による車両1の車室内の撮影画像から、車両1の搭乗者の有無を認識する。なお、図示しないシートベルトスイッチにより検出されるシートベルトの装着の有無、図示しない着座センサにより検出される着座者の有無等により、車両1の搭乗者の有無を認識してもよい。
【0031】
衝撃発生情報取得部24は、衝撃センサ80により検出された衝撃のレベルを示す衝撃発生情報を、衝撃センサ80から直接、或いは車両制御装置50を経由して取得する。緊急通報部25は、車両1が自動運転モードに設定されているときに、衝撃センサ80により第1所定レベル以上の衝撃が検出された場合に、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、第1衝突情報をコールセンターシステム400に送信する。
【0032】
また、緊急通報部25は、車両1が手動モードに設定されているときに、衝撃センサ80により第2所定レベル以上の衝撃が検出された場合に、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、第2衝突情報をコールセンターシステム400に送信する。第2所定レベルは第1所定レベルと同一でもよく、異なっていてもよい。第2所定レベルは適宜変更してよい。例えば、車両センサや車両外の管理装置によって車両1の車内及び車外に人がいないと推定される場合や無人空間において、車両1が無人走行する状況で、車両1とコールセンターシステム400が通信する場合は、第2所定レベルが第1所定レベルよりも大きい衝撃レベルに設定されていてもよく、車両1が有人空間を無人走行していると推定される状況では、第2所定レベルを第1所定レベルよりも小さい衝撃レベルに設定してもよい。
【0033】
自動運転中報知部26は、車両1が、自動運転モードに設定されて自動運転により走行しているときに、車両1が自動運転モードに設定されていることを、所定のタイミングで車室内に報知する。所定のタイミングとしては、例えば、車両1が自動運転を開始した時、車両1が自動運転を開始してから所定時間が経過した時、自動運転中にマイク71に音声が入力された時、等が設定される。自動運転中報知部26は、タッチパネル74への報知画面の表示、スピーカーからの音声ガイダンスの出力等によって、自動運転モードに設定されていることを車室内に報知する。
【0034】
[3.緊急通報処理]
図3に示したフローチャートに従って、通報装置10により実行される緊急通報処理について説明する。図3のステップ1で、衝撃発生情報取得部24は、衝撃センサ80により検出された、車両1に生じた衝撃レベルの情報を含む衝撃発生情報を取得する。
【0035】
続くステップS2で、緊急通報部25は、車両制御装置50との通信により、車両1が自動運転モードに設定されているか否かを認識する。そして、緊急通報部25は、車両1が自動運転モードに設定されているときはステップS3に処理を進め、車両1が自動運転モードに設定されていないとき(手動運転モードに設定されているとき)にはステップS20に処理を進める。
【0036】
ステップS3で、自動運転中報知部26は、上述したように、車両1が自動運転モードに設定されていることを、所定のタイミングで車両1の車室に報知する。これにより、車両1が自動運転モードにより自動走行中であって、運転者以外の搭乗者が、車両1が自動運中であることを認識していない場合に、搭乗者に対して、車両1が自動運転中であることを認識させて、搭乗者が不安感を抱くことを防止することができる。
【0037】
続くステップS4~S10は、自動運転モード設定中に発生した事故に対応するための処理である。ステップS4で、緊急通報部25は、衝撃発生情報から第1所定レベル以上の衝撃を認識したか否かを判断する。そして、緊急通報部25は、第1所定レベル以上の衝撃を認識したときはステップS5に処理を進め、第1所定レベル以上の衝撃を認識しなかったときにはステップS1に処理をすすめる。
【0038】
ステップS5で、搭乗者認識部23は、車両1の搭乗者の有無を認識する。次のステップS6で、搭乗者認識部23は、車両1の搭乗者無しと認識したときはステップS21に処理を進め、車両1の搭乗者有りと認識したときにはステップS7に処理を進める。
【0039】
ステップS7で、緊急通報部25は、第1緊急情報を、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、コールセンターシステム400に送信する。第1緊急情報には、上述したように、MSDに加えて、車両1に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報と、車両1が自動運転モードに設定されていること示す自動運転モード設定情報とのうちの少なくともいずれか一方が含まれている。
【0040】
次のステップS8で、緊急通報部25は、第1緊急情報に基づく連絡情報を、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、利用者端末200(図1参照)に送信する。利用者Uは、利用者端末200により連絡情報を確認することによって、車両1の事故が生じたことを認識することができる。
【0041】
続くステップS9で、緊急通報部25は、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、コールセンターシステム400との間で音声通話通信を確立する。そして、次のステップS10で、緊急通報部25は、スピーカー72から、「どなたかいらっしゃいますか」等の応答を促す音声を出力する。
【0042】
ここで、基本的には、ステップS6で搭乗者無しと認識されているために、搭乗者による応答はない。しかしながら、夜間等であって、搭乗者の有無の認識が困難である場合には、実際には搭乗者がいるにも拘わらず、認識部23により搭乗者無しと誤認識されることがあり得る。そこで、スピーカー72から応答を促す音声を出力することでコールセンターシステム400に無人車両であると推定されていることを搭乗者に察知させる。例えば、マイク71により集音されるこのスピーカー72から出力される応答を促す音声と、搭乗者の「一人乗車しています。負傷しています。」等の意思表示を表す応答音声との両方を、コールセンターシステム400に送信することによって、コールセンターシステム400に車両1に搭乗者がいることを伝えることができる。
【0043】
次に、ステップS20~S21は、手動運転モード中に生じた事故に対応するための処理である。ステップS20で、緊急通報部25は、衝撃発生情報から第2所定レベル以上の衝撃を認識したか否かを判断する。そして、緊急通報部25は、第2所定レベル以上の衝撃を認識したときはステップS21に処理を進め、第2所定レベル以上の衝撃を認識しなかったときにはステップS1に処理を進める。
【0044】
ステップS21で、緊急通報部25は、第2緊急情報を、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、コールセンターシステム400に送信する。第2緊急情報にはMSDが含まれる。続くステップS22で、緊急通報部25は、通信制御部21及び通信ユニット110を介して、コールセンターシステム400との間で音声通話通信を確立する。
【0045】
コールセンターシステム400のオペレータは、車両1の搭乗者との間で音声通話を行って、搭乗者の負傷状況等を認識して、救急車両の手配等の緊急対応を行う。
【0046】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、本発明の移動体として、四輪車両1を例示したが、本発明は、二輪車両、飛行体、船体等、種々の乗用の移動体に対して適用可能である。
【0047】
上記実施形態では、図3のステップS2、S4、S20の処理により、自動運転モードにおける衝撃の判定レベル(第1所定レベル)と、手動運転モードにおける衝撃の判断レベル(第2所定レベル)とを異なるレベルに設定したが、同じレベルに設定してもよい。
【0048】
上記実施形態において、緊急通報部25は、自動運転モード設定中に第1所定レベル以上の衝撃が認識されたときに、図3のステップS10で、応答を促す音声を車室内に出力したが、この処理を省略してもよい。
【0049】
上記実施形態において、緊急通報部25は、図3のステップS8で、利用者端末200に連絡情報を送信したが、この処理を省略してもよい。
【0050】
上記実施形態では、自動運転中報知部26を備えて、自動運転モードに設定されているときに、図3のステップS3で、自動運転モードであることを車室内に報知したが、この処理を省略してもよい。また、車両1に衝撃が生じた場合の処理とは独立して、自動運転中報知部26による処理を別個に行うようにしてもよい。
【0051】
上記実施形態では、本発明の対応システムとして、コールセンターシステム400を例示した。コールセンターシステム400は緊急応答機関であるPSAP、警察、救急センター等の事故対応機関や、保険事業会社、車両の管理者、警備会社、車両が存在する領域の管理者等のシステムであってもよい。
【0052】
なお、図2は、本願発明の理解を容易にするために、車両1及び通報装置10の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、車両1及び通報装置10の構成を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図3に示したフローチャートによる各構成要素の処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0053】
[5.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0054】
(第1項)自動運転モードと手動運転モードの切替が可能な移動体において使用される通報装置であって、前記移動体が自動運転モードに設定されているか手動運転モードに設定されているかを認識する運転モード認識部と、前記移動体の搭乗者の有無を認識する搭乗者認識部と、前記移動体に生じた衝撃に関する衝撃発生情報を取得する衝撃発生情報取得部と、所定の対応システムとの間の通信を制御する通信制御部と、前記運転モード認識部により前記移動体が自動運転モードに設定されていることが認識され、且つ、前記搭乗者認識部により前記移動体に搭乗者がいないことが認識された状態で、前記衝撃発生情報から前記移動体に衝撃が生じたことを認識したときに、前記移動体に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報と、前記移動体が自動運転モードに設定されていること示す自動運転モード設定情報とのうちの少なくともいずれか一方を含む第1緊急情報を、前記通信制御部を介して前記対応システムに送信する緊急通報部と、を備える通報装置。
第1項の通報装置によれば、搭乗者無して自動運転を行っている移動体が障害物に接触等して、移動体に衝撃が生じた場合に、移動体に搭乗者がいないことを示す搭乗者無し情報と、移動体が自動運転モードに設定されていること示す自動運転モード設定情報とのうちの少なくともいずれか一方を含む第1緊急情報が、対応システムに送信される。これにより、対応システム側では、移動体に搭乗者がいないことを認識できるため、対応システムによって、優先度を適切に判断して対応をとることができる。
【0055】
(第2項)前記緊急通報部は、前記運転モード認識部により、前記移動体が自動運転モードに設定されていることが認識されているときは、前記衝撃発生情報から、前記移動体に第1所定レベル以上の衝撃が生じたことを認識した場合に、前記第1緊急情報を前記対応システムに送信し、前記運転モード認識部により、前記移動体が手動運転モードに設定されていることが認識されているときには、前記衝撃発生情報から、前記移動体に前記第1所定レベルよりも大きい第2所定レベル以上の衝撃が生じたことを認識したときに、第2緊急情報を前記対応システムに送信する第1項に記載の通報装置。
第2項の通報装置によれば、無人での自動運転中においては、小さな衝撃が発生した際にも対応システムに第1緊急情報を送信することにより、迅速な対応を可能とすることができる。
【0056】
(第3項)前記通信制御部は、前記対応システムとの間で音声通話の通信制御を行い、前記緊急通報部は、前記第1緊急情報を前記対応システムに送信した後、前記通信制御部により前記対応システムとの間で音声通話通信が確立している状態で、応答を促す所定音声を前記移動体の室内に出力する第1項又は請求項2に記載の通報装置。
第3項の通報装置によれば、搭乗者認識部による搭乗者の有無の認識が誤っている場合に、応答システム側は、所定音声を出力に対する応答音声を受信したか否かにより、移動体の搭乗者の有無を認識することができる。
【0057】
(第4項)前記緊急通報部は、前記第1緊急情報に基づく第1連絡情報を、前記移動体の利用者により使用される利用者端末に送信する第1項から第3項のうちいずれか1項に記載の通報装置。
第4項の通報装置によれば、移動体の利用者に対して、移動体の事故が生じたことを連絡することができる。
【0058】
(第5項)前記運転モード認識部により、前記移動体が自動運転モードに設定されていることが認識されている状態で、前記移動体が移動していることを認識した場合に、前記移動体が自動運転モードであることを前記移動体の室内に報知する自動運転中報知部を備える、第1項から第4項のうちいずれか1項に記載の通報装置。
第5項の通報装置によれば、自動運転中であることを意識せずに移動体に搭乗している搭乗者に対して、移動体が自動運転モードであることを報知することにより、搭乗者が不安感を抱くことを防止することができる。
【0059】
(第6項)前記対応システムは、緊急応答機関により運営されるシステムである第1項から第5項のうちいずれか1項に記載の通報装置。
第6項の通報装置によれば、緊急応答機関により、無人の移動体に対して、搭乗者救護のための無駄な緊急対応がなされることを防止することができる。
【0060】
(第7項)前記緊急応答機関は、PSAP(Public Safety Answering Point)である第6項に記載の通報装置。
第6項に記載の通報装置によれば、PSAPにより、無人の移動体に対して、搭乗者救護のための無駄な緊急対応がなされることを防止することができる。
【0061】
(第8項)自動運転モードと手動運転モードの切替が可能な移動体において使用される通報装置であって、前記移動体が自動運転モードに設定されているか手動運転モードに設定されているかを認識する運転モード認識部と、前記運転モード認識部により前記移動体が自動運転モードに設定されていることが認識されている状態で、前記移動体が移動していることを認識した場合に、前記移動体が自動運転中であることを前記移動体の室内に報知する自動運転中報知部と、を備える通報装置。
第8項の通報装置によれば、自動運転中であることを意識せずに移動体に搭乗している搭乗者に対して、移動体が自動運転中であることを報知することにより、搭乗者が不安感を抱くことを防止することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…車両、10…通報装置、20…CPU、21…通信制御部、22…運転モード認識部、23…搭乗者認識部、24…衝撃発生情報取得部、25…緊急通報部、26…自動運転中報知部、50…車両制御装置、80…衝撃センサ、110…通信ユニット、200…利用者端末、400…コールセンターシステム、U…利用者。
図1
図2
図3