(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013361
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/005 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A41D13/005 108
A41D13/005 101
A41D13/005 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115397
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】507213101
【氏名又は名称】株式会社ザックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110003085
【氏名又は名称】弁理士法人森特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 淳一
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA05
3B011AB01
3B011AC01
3B011AC17
3B011AC21
3B011AC22
3B211AA01
3B211AA05
3B211AB01
3B211AC01
3B211AC17
3B211AC21
3B211AC22
(57)【要約】
【課題】熱媒体シートが飛び出ることを防止する手段を備えた保持ポケットに、温熱又は冷熱の熱媒体シートを出し入れさせる衣服を提供する。
【解決手段】ポケット生地111a,111bが服内面12に接合されて構成される保持ポケット11a,11bに、熱媒体シート4a,4bを開口112a,112bから出し入れさせるズボン1において、熱媒体シート4a,4bは、可撓性のある長方形のシート材であり、保持ポケット11a,11bは、長方形の1辺の一部と3辺とでポケット生地111a,111bを服内面12に接合し、一部が服内面12に接合された1辺の残り部分を開口112a,112bとして構成され、縦の長さPlが熱媒体シート4a,4bの縦の長さSlに一致され、収納させた状態の熱媒体シート4a,4bにおける開口112a,112bと平行な横の長さSsより開口112a,112bが狭くされたことを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポケット生地が服内面又は服外面に接合されて構成される保持ポケットに、温熱又は冷熱の熱媒体シートを開口から出し入れさせる衣服において、
熱媒体シートは、可撓性のある長方形のシート材であり、
保持ポケットは、長方形の1辺の一部と3辺とでポケット生地を服内面又は服外面に接合し、一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分を開口として構成され、対向する辺の距離の少なくとも一方が熱媒体シートの縦又は横の長さに一致され、収納させた状態の熱媒体シートにおける開口と平行な縦又は横の長さより開口が狭くされたことを特徴とする衣服。
【請求項2】
保持ポケットは、少なくとも開口を形成する部分のポケット生地が伸縮性を有する請求項1記載の衣服。
【請求項3】
保持ポケットは、一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分である開口が、対向する2辺それぞれに設けられた請求項1又は2いずれか記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温熱又は冷熱の熱媒体シートを開口から保持ポケットに出し入れさせる衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
温熱又は冷熱の熱媒体シートを開口から保持ポケットに出し入れさせる衣服として、例えば保持ポケット(発熱体用ポケット部)が着丈方向の斜め上方向又は裾口幅方向に開口を向けた衣服がある(特許文献1・[請求項1])。熱媒体シートは、接続コードが接続された電気式の発熱シート(電気的発熱体)である。接続コードは、服本体の内側に設けられた接続コード固定手段で固定される(特許文献1・[請求項3])。接続コード固定手段は例えばゴム製のベルト部材で、ベルト部材が形成する貫通孔に接続コードが挿通される。ベルト部材は、他端を服本体と着脱自在にしてもよい(特許文献1・[0020])。
【0003】
特許文献1が開示する衣服は、保持ポケットの開口を特定方向に向けることにより、接続コードの膨らみを小さくし、着用者が接続コードを気にならないようにして、着用時の違和感を回避させる(特許文献1・[0010])。特許文献1が例示する衣服は上着のみである。しかし、熱媒体シート(カイロ)を収納する保持ポケット(収納部)を形成する帯体を膝位置に設けたズボン(特許文献2・[請求項1][請求項3])が別途開示されている。これから、特許文献2が開示するように、特許文献1が開示する保持ポケット及び熱媒体シートの構成を下衣(ズボン、スカート)に適用することも可能と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実登3212963号公報
【特許文献2】実登3131054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が開示する衣服は、保持ポケットに熱媒体シートを差し込んだだけで、熱媒体シートが保持ポケットから飛び出ることを防止する手段が施されていない。保持ポケットは、熱媒体シートと同幅又は若干大きく設計されている(特許文献1・[0017])ことから、保持ポケットを構成するポケット生地及び服内面との摩擦により熱媒体シートの動きが抑制され、熱媒体シートが保持ポケットから飛び出ないとされていると思われる。
【0006】
特許文献2が開示する衣服は、熱媒体シートを収納する保持ポケットを形成する帯体が熱媒体シートの移動を許容するほど大きい(特許文献2・[0009])が、帯体が伸縮性を有していることから、帯体中を移動させた発熱シートが服外面に押しつけられ、熱媒体シートが保持ポケットから飛び出ないとされていると思われる。熱媒体シートは、使い捨てカイロが想定されており、帯体及び服外面との摩擦により熱媒体シートの動きが抑制されることも期待されているのかも知れない。
【0007】
このように、熱媒体シートを開口から保持ポケットに出し入れさせる従来の衣服は、もっぱら保持ポケットとの摩擦により、熱媒体シートを保持ポケットに留めている。しかし、特許文献1が開示する衣服のように、熱媒体シートが電気式の発熱シートで給電コードが延びている場合、衣服の動きによって給電コードが引っ張られ、熱媒体シートが保持ポケットから飛び出さないとも限らない。特許文献2が開示する衣服も、何らかの事情で熱媒体シートが保持ポケットから飛び出さないとも限らない。
【0008】
熱媒体シートが保持ポケットから飛び出ることを防止する手段として、ポケット口を閉じるファスナーやスナップボタンがある。しかし、熱媒体シートの出し入れに際して、ファスナーの開閉やスナップボタンの着脱に手間が掛かる問題がある。熱媒体シートの出し入れに手間が掛かると、熱媒体シートを保持ポケットから取り出されずに衣服が洗濯され、衣服や洗濯機を破損させてしまう。そこで、熱媒体シートが飛び出ることを防止する手段を備えた保持ポケットに、温熱又は冷熱の熱媒体シートを出し入れさせる衣服を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果開発したものが、ポケット生地が服内面又は服外面に接合されて構成される保持ポケットに、温熱又は冷熱の熱媒体シートを開口から出し入れさせる衣服において、熱媒体シートは、可撓性のある長方形のシート材であり、保持ポケットは、長方形の1辺の一部と3辺とでポケット生地を服内面又は服外面に接合し、一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分を開口として構成され、対向する辺の距離の少なくとも一方が熱媒体シートの縦又は横の長さに一致され、収納させた状態の熱媒体シートにおける開口と平行な縦又は横の長さより開口が狭くされたことを特徴とする衣服である。
【0010】
本発明の衣服は、上衣(ジャンパー、ジャケット、ベスト等)及び下衣(ズボン、スカート等)を含む。例えば上衣であるジャンパーは、後見頃の背中から腰にかけた服内面に、開口が上下方向又は左右方向いずれかを向いた保持ポケットを設ける。例えば下衣であるズボンは、前見頃の大腿の服内面に、開口が上方向に向いた保持ポケットを設ける。服内面は、衣服の内側の面=裏生地の表面又は表生地の内面である。服外面は、衣服の外側の面=表生地の表面である。四角形である熱媒体シート及び保持ポケットは、長手方向を縦、短手方向を横とする。長方形は、縦及び横の長さが等しい正方形を含む。
【0011】
ポケット生地を服内面又は服外面に「接合」するとは、縫着、接着又は融着等、既存の接合手段によりポケット生地を服内面又は服外面の裏生地又は表生地に固着することである。熱媒体シートは、発熱又は冷却作用を有し、略一定厚でありながら可撓性を有するシート材で、自己発熱するカイロ(使い捨てを含む)、自己冷却する保冷シート、電気式の発熱シート又は冷却シートである。電気式の発熱シート又は冷却シートは、開口から給電コードを引き出す。
【0012】
本発明は、(1)長方形である保持ポケットの対向する辺の距離の少なくとも一方を、長方形である熱媒体シートの縦又は横の長さと一致させて、保持ポケットに収納させた熱媒体シートを保持ポケットの対向する辺で挟み、拘束する。保持ポケットの対向する辺の距離の両方を、熱媒体シートの縦及び横の長さそれぞれに一致させてもよい。保持ポケットの対向する辺の距離と熱媒体シートの縦又は横の長さとを一致させるとは、対向する辺が熱媒体シートの外縁に接触又は近接する寸法関係を意味し、対向する辺の距離と熱媒体シートの縦又は横の長さが数値的に一致するものではなく、実際には対向する辺の距離が熱媒体シートの縦又は横の長さより若干大きくなる。
【0013】
そして、(2)一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分を開口とし、収納させた状態の熱媒体シートにおける開口と平行な縦又は横の長さより開口が狭くされることにより、熱媒体シートの角部を開口の一端又は両端にある接合部分に掛合させる。一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分が複数ある場合、一部又は全部が開口になる。可撓性を有する熱媒体シートは、開口と平行な方向に丸めて筒状にすれば、保持ポケットに収納させた状態の熱媒体シートにおける開口と平行な縦又は横の長さより狭い開口からでも出し入れできる。丸めて筒状にした熱媒体シートは、保持ポケットの中で広げて元のシート材に戻す。
【0014】
一部が服内面又は服外面に接合された1辺の接合部分は、3辺を服内面又は服外面に接合する接合部分を延長する形で連続して設けてもよいし、3辺を服内面又は服外面に接合する接合部分から離れて独立して設けてもよい。一部が服内面又は服外面に接合された1辺の接合部分は、開口を狭くして、保持ポケットに収納させた熱媒体シートの角部に掛合できればよいので、例えば線状の接合部分が開口に沿って延びていたり、開口の延在方向に対して傾斜していたり、開口の延在方向に対して湾曲していたりしてもよい。
【0015】
保持ポケットは、少なくとも開口を形成する部分のポケット生地が伸縮性を有すると、熱媒体シートを出し入れする際、開口を一時的に広げることができる。ポケット生地における「開口を形成する部分」は、開口を一時的に広げることのできる範囲を指し、通常、開口の延在方向に延びる帯状の部分となる。開口を一時的に広げることのできる伸縮性があれば、ポケット生地の伸縮方向は問わない。また、ポケット生地は、全体が伸縮性を有していてもよい。この場合、保持ポケットは、収納した熱媒体シートに押し広げられ、熱媒体シートを服内面又は服外面に押し付ける復元力を発揮する。
【0016】
また、保持ポケットは、一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分である開口が、対向する2辺それぞれに設けてもよい。対向する2辺それぞれに開口が設けられる保持ポケットは、2方向いずれからでも熱媒体シートを出し入れできるほか、2つの開口のうち1方から熱媒体シートを出し入れする際、残る他方の開口から差し込んだ指で熱媒体シートを掴み、熱媒体シートの出し入れを補助できる。電気式の発熱シート又は冷却シートは給電コードを開口から引き出すことから、対向する2辺それぞれに開口が設けられる保持ポケットは、給電コードを引き出す開口が選択できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衣服は、(1)熱媒体シートを保持ポケットの対向する辺で挟んで拘束しつつ、(2)熱媒体シートの縦又は横の長さより保持ポケットの開口を狭くして、熱媒体シートが飛び出させない。これにより、保持ポケットの開口を常時開いておけるので、ファスナーやスナップボタンを開閉する手間が必要なくなり、熱媒体シートの出し入れが容易になる。このように、本発明の衣服は、熱媒体シートの保持ポケットに対する出し入れの容易さと、保持ポケットに入れた熱媒体シートの飛び出し防止とを両立させる。
【0018】
ポケット生地の少なくとも開口を形成する部分が伸縮性を有する保持ポケットは、熱媒体シートの縦又は横の長さより狭くなる開口を一時的に広げて、熱媒体シートの出し入れをより容易にする。ポケット生地の全体が伸縮性を有する保持ポケットは、収納した熱媒体シートを服内面又は服外面に押し付けて、保持ポケットや服内面又は服外面と熱媒体シートとの摩擦力を強くし、熱媒体シートが保持ポケット内で動くことをよりよく抑制できる。また、熱媒体シートが服内面又は服外面に押し付けられる結果、熱媒体シートの発熱又は冷却による加温又は冷房の働きをよりよく発揮させることもできる。
【0019】
一部が服内面又は服外面に接合された1辺の残り部分の開口が、対向する2辺それぞれに設けられた保持ポケットは、熱媒体シートを入れる開口を選択できる自由度を有するほか、熱媒体シートを入れる開口に対向する開口から指を入れて熱媒体シートを掴み、熱媒体シートの出し入れを補助できる利点がある。また、対向する2辺それぞれに開口が設けられた保持ポケットは、電気式の発熱シートである熱媒体シートから引き出した給電コードを通す開口が選択できるため、給電コードが繋がる操作スイッチやバッテリの取付場所を着用者によって変更できる利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用したズボンの一例における主要部(腰部~膝付近)を表す正面図である。
【
図2】本例のズボンを裏返した状態の主要部を表す正面図である。
【
図3】本例のズボンに用いる熱媒体シートを表す正面図である。
【
図4】本例のズボンを裏返し、熱媒体シートを保持ポケットに入れ始めた状態の主要部を表す正面図である。
【
図5】本例のズボンを裏返し、熱媒体シートを保持ポケットに入れ終わった状態の主要部を表す正面図である。
【
図10】別例5のズボンの主要部を表す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について図を参照しながら説明する。本発明は、例えば
図1及び
図2に見られるように、熱媒体シート4a,4bで着用者の太腿前面側を温めるズボン1に適用される。本例のズボン1は、外観デザインの観点から、大腿前面側の服外面14に長方形の切り返し141a,141bが設けてあり、前記切り返し141a,141bに対応した服内面12に同じ長方形の保持ポケット11a,11bを構成している。これにより、保持ポケット11a,11bを囲む縫着線113a,114a,113b,114bが切り返し141a,141bを設ける縫着線を兼ねることができ、縫着線113a,114a,113b,114bが服外面14に露出して外観デザインを損ねる事態を回避している。
【0022】
本例の熱媒体シート4a,4bは、暖房に供するため、電熱線を内蔵した長方形である電気式の発熱シートで、曲げたり、丸めたりできる可撓性を有する。熱媒体シートを冷房に供する場合、例えば通電により冷却作用を発揮するペルチェ素子を用いた電気式の冷却シートが利用される。熱媒体シート4a,4bは、左右の保持ポケット11a,11bに対応した2枚一組で構成され(
図3参照)、それぞれの上辺から延びる第3給電コード43により接続されている。熱媒体シート4aは、上辺から延びる第2給電コード42にスイッチ部材44が接続されている。スイッチ部材44は、給電及び遮断を切り替える三角形のトグルスイッチを設けた長方形片で、バッテリ45を接続分離自在な第1給電コード41が接続される。熱媒体シート4a,4bに左右の別はないが、本例は熱媒体シート4aを左の保持ポケット11aに、熱媒体シート4bを右の保持ポケット11bに入れる。
【0023】
左のサイドポケット13aは二重構造で、前側にバッテリ45を収納させ、後側にスイッチ部材44を装着させる。スイッチ部材44は、熱媒体シート4aから延びる第2給電コード42と共にサイドポケット13aの貫通口131aから外に引っ張り出し、スイッチ部材用スナップボタン132aによりサイドポケット13aの後側に装着させる。バッテリ45は、サイドポケット13aの前側に収納した状態で、スイッチ部材44から延びる第1給電コード41を、サイドポケット13a内の挿通孔(図示略)から前側に取り回して接続する。スイッチ部材44及びバッテリ45の配置や第1給電コード41及び第2給電コード42の取り回しは、本例に限定されず、ズボン1の仕様により自由に設定される。
【0024】
保持ポケット11a,11bは、切り返し141a,141bに等しい長方形のポケット生地111a,111bを服内面12に縫着して構成される。ポケット生地111a,111bの上辺は、両端から左右中心に向かって延びる左右一対の縫着線113a,113bにより服内面12に縫着され、縫着されずに残る中央部分を開口112a,112bとする。ポケット生地111a,111bの左右両辺及び下辺は、切り返し141a,141bの縫着を兼ねた縫着線114a,114bにより服内面12に縫着される。ポケット生地111a,111bは、伸縮性を有し、開口112a,112bは大きく広げることができる。
【0025】
本例の保持ポケット11a,11bは、服内面12に着脱できる開口用スナップボタン115a,115bを、わずかの間隔を開けた位置関係で左右に並べて開口112a,112bに設けている。開口用スナップボタン115a,115bは、熱媒体シート4a,4bを保持ポケット11a,11bに収納する前は外され、熱媒体シート4a,4bが保持ポケット11a,11bに収納されると、開口112a,112bから取り出される第2給電コード42や第3給電コード43を挟んだ状態で留められる。これにより、第2給電コード42や第3給電コード43がズボン1の着用者の動きによりずれる事態を防止し、結果として熱媒体シート4a,4bが保持ポケット11a,11b内で大きく動かないようにしている。
【0026】
本例のズボン1は、服内面12の股間部分、左右の保持ポケット11a,11bの股間部分を挟む縫着線113a,113bの部分、左右のサイドポケット13a,13bの内面の部分それぞれに、第2給電コード42や第3給電コード43を通した状態で保持するコード用ループ116a,116b,133a,133b,121を設けている。本例のコード用ループ116a,116b,133a,133b,121は、スナップボタンで開閉自在な可撓性のある帯体である。熱媒体シート4a,4bが電気式の発熱シートである場合、給電コードが自由に動くと着用者に不快感を与えることから、給電コードが邪魔にならないように保持するコード用ループを設けることが好ましい。
【0027】
このほか、本例のズボン1は、熱媒体シート4aから延びる第2給電コード42に接続されたスイッチ部材44を内側から外側に引き出すため、左のサイドポケット13aに貫通口131aを設けるほか、スイッチ部材44を装着するためのスイッチ部材用スナップボタン132aを、左のサイドポケット13aの服外面14側に設けている。このように、スイッチ部材44が左のサイドポケット13aに装着される仕様であることから、本例のズボン1は、第2給電コード42の取り回しを鑑み、第2給電コード42によりスイッチ部材44に繋がる熱媒体シート4aを、左のサイドポケット13aの直下に位置する左の保持ポケット11aに入れている。
【0028】
本例のズボン1の保持ポケット11a,11bに熱媒体シート4a,4bを入れる手順を説明する。熱媒体シート4a,4bが入っていないズボン1は、まず
図2に見られるように、裏返す。本例のズボン1は、服内面12に保持ポケット11a,11bを設けていることから、裏返した方が熱媒体シート4a,4bを保持ポケット11a,11bに入れる作業がしやすい。服内面に保持ポケットを設けていても入れやすい場合、衣服を裏返す必要はない。
【0029】
熱媒体シート4a,4bは、第1給電コード41から分離できるバッテリ45を外した状態で作業を進める。例えば熱媒体シート4aは、
図4に見られるように、2つ折りに近い状態に丸めて、開口112aから保持ポケット11aに入れる。ここで、本例の保持ポケット11aを構成するポケット生地111aが伸縮性を有するため、開口112aは広げることができ、丸めた熱媒体シート4aを開口112aから保持ポケット11aに比較的容易に入れることができる。右の保持ポケット11bに入れ終えた熱媒体シート4bは、保持ポケット11bに対して横方向にゆとりを残しながら縦方向が一致して動きが拘束され、開口111bから第3給電コード43のみを突出させている。
【0030】
こうして左右の保持ポケット11a,11bに熱媒体シート4a,4bをそれぞれ入れ終えれば、
図5に見られるように、熱媒体シート4aから延びる第2給電コード42を左のサイドポケット13aのコード用ループ133aに通して貫通口131aから引っ張り出し、熱媒体シート4a,4bを繋ぐ第3給電コード43を左の保持ポケット11aのコード用ループ116a、股間のコード用ループ121、右の保持ポケット11bのコード用ループ116bに通して保持させる。本例は、第3給電コード43の余りを束ねて、右のサイドポケット13bのコード用ループ133bに保持させている。
【0031】
本例のズボン1は、保持ポケット11b及び熱媒体シート4bの寸法関係を例に取れば、保持ポケット11bの横の長さPsが熱媒体シート4bの横の長さSsより大きいが、保持ポケット11bの縦の長さPlが熱媒体シート4bの縦の長さSlに一致(厳密にはSlがPlより若干短い)し、保持ポケット11bに収納させた状態の熱媒体シート4bの動きを抑制する。そして、保持ポケット11bに収納させた状態の熱媒体シート4bにおける開口111bと平行な横の長さSsより開口111bの長さAWが狭くされているので、保持ポケット11bから熱媒体シート4bを飛び出させない。
【0032】
保持ポケット11a及び熱媒体シート4bの寸法関係は、保持ポケット11b及び熱媒体シート4bの寸法関係に同じである。これは、保持ポケット11a及び保持ポケット11b、そして熱媒体シート4a及び熱媒体シート4bのいずれも同じ大きさ及び形状であることを意味し、仮に熱媒体シート4aを保持ポケット11bに入れても、熱媒体シート4aが飛び出さない寸法関係が実現される。これにより、本例のズボン1は、第2給電コード2や第3給電コード43の取り回しに問題がなければ、保持ポケット11a,11bのどちらにを入れるかを気にすることなく、熱媒体シート4a,4bを保持ポケット11a,11bに入れることができ、左右の確認作業を不要にする利点を得ている。
【0033】
本発明は、ズボン1等の下衣のほか、上衣にも利用できる。別例1のダウンベスト2は、
図6に見られるように、後見頃の服内面22で背中及び腰の左右中心位置に2つの保持ポケット21a,21bを設けている。保持ポケット21a,21bは、同じ長方形及び大きさである伸縮性を備えたポケット生地211a,211bから形成される同じ長方形及び大きさで、いずれも上下方向に縦方向を向け、左右方向の位置を揃えて配置される。保持ポケット21a,21bの形及び大きさや配置位置は自由である(後掲
図7~
図9参照)。
【0034】
保持ポケット21a,21bは、上辺及び下辺(短辺)の左右方向に三等分する位置の2箇所を縫着線213a,213bにより服内面22に縫着し、3つの開口212a,212bを形成している。このうち、別例1では、縫着線213a,213bに挟まれた中央部分を、熱交換シート4a,4bを出し入れする開口212a,212bとして扱う。このように、開口212a,212bは、上辺及び下辺双方に設けられ、上下方向に対向させている。また、保持ポケット21a,21bは、左辺及び右辺(長辺)のすべてを縫着線214a,214bにより服内面22に縫着している。
【0035】
保持ポケット21a,21bに収納される熱媒体シート4a,4bは、本例と同仕様で、それぞれ一方の短辺の中央から第2給電コード42及び第3給電コード43が延びている。熱媒体シート4aは、第2給電コード42及び第3給電コード43が延びる短辺を下にして、上の保持ポケット21aの下の開口212aから出し入れし、前記開口212aから第2給電コード42及び第3給電コード43を引き出す。
【0036】
熱媒体シート4bは、第3給電コード43が延びる短辺を上にして、下の保持ポケット21bの上の開口212bから出し入れし、前記開口212bから第3給電コード43を引き出す。第3給電コード43は、弛みが生じないように、服内面22に設けたコード用ループ221に挿通される。スイッチ部材やバッテリの説明及び図示は省略するが、配置は自由に決定される。
【0037】
別例1の保持ポケット21b及び熱媒体シート4bの寸法関係を例に取れば、保持ポケット21bの縦の長さPlが熱媒体シート4bの縦の長さSlより大きいが、保持ポケット21bの横の長さPsが熱媒体シート4bの横の長さSsに一致(厳密にはSsがPsより若干短い)し、保持ポケット21bに収納させた状態の熱媒体シート4bの動きを抑制する。そして、保持ポケット21bに収納させた状態の熱媒体シート4bにおける開口212bと平行な横の長さSsより開口212bの長さAWが狭くされているので、保持ポケット21bから熱媒体シート4bを飛び出させない。保持ポケット21a及び熱媒体シート4aの寸法関係も同じである。
【0038】
別例2のダウンベスト2は、
図7に見られるように、別例1のダウンベスト2同様、後見頃の服内面22で背中及び腰の左右中心位置に2つの保持ポケット21a,21bを設けている。保持ポケット21a,21bは、同じ長方形及び大きさである伸縮性を備えたポケット生地211a,211bから形成される同じ長方形及び大きさで、いずれも左右方向に縦方向を向け、左右方向の位置を揃えて配置される。別例2の保持ポケット21a,21bの形及び大きさは、上記別例1と同じであるが、縦方向の向きが異なる。
【0039】
保持ポケット21a,21bは、左辺及び右辺(短辺)の上下方向に三等分する位置の2箇所を縫着線213a,213bにより服内面22に縫着し、3つの開口212a,212bを形成している。このうち、別例2では、縫着線213a,213bに挟まれた中央部分を、熱交換シート4a,4bを出し入れする開口212a,212bとして扱う。このように、開口212a,212bは、左辺及び右辺の双方に設けられ、左右方向に対向させている。また、保持ポケット21a,21bは、上辺及び下辺(長辺)のすべてを縫着線214a,214bにより服内面22に縫着している。
【0040】
保持ポケット21a,21bに収納される熱媒体シート4a,4bは、本例と同仕様で、それぞれ短辺の中央から第2給電コード42及び第3給電コード43が延びている。熱媒体シート4aは、第2給電コード42及び第3給電コード43が延びる短辺を右(図示されたダウンベスト2は左右が逆。以下、同じ)にして、上の保持ポケット21aの右の開口212aから出し入れし、前記開口212aから第2給電コード42及び第3給電コード43を引き出す。
【0041】
熱媒体シート4bは、第3給電コード43が延びる短辺を右にして、下の保持ポケット21bの右の開口212bから出し入れし、前記開口212bから第3給電コード43を引き出す。第3給電コード43は、弛みが生じないように、服内面22に設けたコード用ループ221に挿通される。スイッチ部材やバッテリの説明及び図示は省略するが、配置は自由に決定される。
【0042】
別例2の保持ポケット21b及び熱媒体シート4bの寸法関係を例に取れば、保持ポケット21bの縦の長さPlが熱媒体シート4bの縦の長さSlより大きいが、保持ポケット21bの横の長さPsが熱媒体シート4bの横の長さSsに一致(厳密にはSsがPsより若干短い)し、保持ポケット21bに収納させた状態の熱媒体シート4bの動きを抑制する。そして、保持ポケット21bに収納させた状態の熱媒体シート4bにおける開口212bと平行な横の長さSsより開口212bの長さAWが狭くされているので、保持ポケット21bから熱媒体シート4bを飛び出させない。保持ポケット21a及び熱媒体シート4aの寸法関係も同じである。
【0043】
別例3のダウンベスト2は、
図8に見られるように、後見頃の服内面22で背中から腰にかけた左右中心に縦長の保持ポケット23を設けている。保持ポケット23は、縦に長尺な長方形である伸縮性を備えたポケット生地231から形成される長尺な長方形で、上下方向に縦方向を向けている。保持ポケット23は、右辺(長辺)の上端及び下端から一定長さの縫着線233,233により服内面22に縫着し、上下方向中間位置に右方向に向いた開口232を形成している。また、保持ポケット23は、残る左辺(長辺)、上辺及び下辺(短辺)のすべてを縫着線234により服内面22に縫着している。
【0044】
保持ポケット23に収納される熱媒体シート5aは、保持ポケット23に合わせた縦長の仕様である。熱媒体シート5aは、保持ポケット23の右の開口232から出し入れし、右辺の中央から延びる第2給電コード52を前記開口232から引き出す。スイッチ部材やバッテリは説明及び図示を省略する。別例3は、保持ポケット23の縦の長さPlを熱媒体シート5aの縦の長さSlより大きくしながら、保持ポケット23の横の長さPsを熱媒体シート5aの横の長さSsに一致させ、保持ポケット23に収納させた状態の熱媒体シート5aの動きを抑制する。そして、熱媒体シート5aの縦の長さSlより開口232の長さAWを狭くし、保持ポケット23から熱媒体シート5aを飛び出させない。
【0045】
別例4のダウンベスト2は、
図9に見られるように、別例3同様、後見頃の服内面22で背中から腰にかけた左右中心に縦長の保持ポケット24を設けている。保持ポケット24は、縦に長尺な長方形である伸縮性を備えたポケット生地241から形成される長尺な長方形で、上下方向に縦方向を向けている。保持ポケット24は、上辺(短辺)の左端及び右端から一定長さの縫着線243,243により服内面22に縫着し、左右方向中間位置に上下向に向いた開口242を形成している。また、保持ポケット24は、残る下辺(短辺)、左辺及び右辺(長辺)のすべてを縫着線244により服内面22に縫着している。
【0046】
保持ポケット24に収納される熱媒体シート5bは、保持ポケット24に合わせた縦長の仕様である。熱媒体シート5bは、保持ポケット23の上の開口232から出し入れし、上辺の中央から延びる第2給電コード52を前記開口232から引き出す。スイッチ部材やバッテリは説明及び図示を省略する。別例4は、保持ポケット24の縦の長さPlを熱媒体シート5bの縦の長さSlより大きくしながら、保持ポケット24の横の長さPsを熱媒体シート5bの横の長さSsに一致させ、保持ポケット24に収納させた状態の熱媒体シート5bの動きを抑制する。そして、熱媒体シート5bの横の長さSsより開口242の長さAWを狭くし、保持ポケット24から熱媒体シート5bを飛び出させない。
【0047】
本例のズボン1や別例2~別例4のダウンベスト2は、いずれも服内面12,22に保持ポケット11a,11b,21a,21b23,24が設けられた例であるが、保持ポケットは服外面に設けられてもよい。熱媒体シートは、電気式の発熱シートや冷却シートだけでなく、自己発熱する使い捨てカイロや自己冷却する保冷シートも利用できる。別例5のズボン3は、
図10に見られるように、腰部の服外面32に設けられた切り返し33に沿って横長の保持ポケット31を設けている。保持ポケット31は、切り返し32に倣った長方形及び大きさであるポケット生地311から形成される。
【0048】
保持ポケット31は、左辺及び右辺(短辺)の上端及び下端から一定長さの縫着線313により切り返し32に縫着し、左右方向に対向する2つの開口312を形成している。また、保持ポケット31は、上辺及び下辺(長辺)のすべてを縫着線314により切り返し32に縫着している。保持ポケット31に収納される熱媒体シート6は、自己発熱式の使い捨てカイロで、別例5は保持ポケット31に2個収納する。2個の熱媒体シート6は、保持ポケット31の左右の開口312からそれぞれ出し入れする。
【0049】
別例5の保持ポケット31及び熱媒体シート6の寸法関係は、保持ポケット31の縦の長さPlが熱媒体シート6の縦の長さ(
図10中左右方向の長さ)Slの約2倍であるが、保持ポケット31の横の長さ(
図10中上下方向の長さ)Psが熱媒体シート6の横の長さSsに一致(厳密にはSsがPsより若干短い)し、保持ポケット31に収納させた状態の熱媒体シート6の動きを抑制する。そして、保持ポケット31に収納させた状態の熱媒体シート6における開口312と平行な横の長さSsより開口312の長さAWが狭くされているので、保持ポケット31から熱媒体シート6を飛び出させない。
【符号の説明】
【0050】
1 ズボン
11a 第1の保持ポケット
111a ポケット生地
112a 開口
113a 縫着線
114a 縫着線
11b 第2の保持ポケット
111b ポケット生地
112b 開口
113b 縫着線
114b 縫着線
12 服内面
13a サイドポケット
13b サイドポケット
14 服外面
2 ダウンベスト
21a 保持ポケット
211a ポケット生地
212a 開口
213a 縫着線
214a 縫着線
21b 保持ポケット
211b ポケット生地
212b 開口
213b 縫着線
214b 縫着線
22 服内面
23 保持ポケット
231 ポケット生地
232 開口
233 縫着線
234 縫着線
24 保持ポケット
241 ポケット生地
242 開口
243 縫着線
244 縫着線
3 ズボン
31 保持ポケット
311 ポケット生地
312 開口
313 縫着線
314 縫着線
32 服外面
4a 熱媒体シート
4b 熱媒体シート
5 熱媒体シート
6 熱媒体シート
Pl 保持ポケットの縦
Ps 保持ポケットの横
AW 開口幅
Sl 熱媒体シートの縦
Ss 熱媒体シートの横