(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133616
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】亜鉛剤を使用した腫瘍学処置
(51)【国際特許分類】
A61K 33/30 20060101AFI20240925BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240925BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240925BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240925BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K33/30
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K47/34
A61K47/54
A61K47/69
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108300
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2020571709の分割
【原出願日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】10201805412T
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10201811577T
(32)【優先日】2018-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(71)【出願人】
【識別番号】523356134
【氏名又は名称】ジロニックス・ピーティーイー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ジニョク・フレッド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】癌患者を処置する方法を提供する。
【解決手段】Zn(II)剤又はZn(II)剤/免疫腫瘍剤の組合せを投与して、該癌患者に治療上の利益を提供するステップを含む方法に関する。該方法は、固形腫瘍及び血液系の癌性細胞を含む広範囲のヒト癌を処置する際に有用である。特定の実施形態において、該処置方法は、遺伝的不安定性突然変異を特徴とする癌タイプを対象とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を、免疫腫瘍剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【請求項3】
前記免疫腫瘍剤が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体若しくはCTLA-4に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害するその抗原結合部分、又はプログラム細胞死-1(PD-1)抗体若しくはPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害するその抗原結合部分である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍は、遺伝的不安定性突然変異及び/又は遺伝子過剰発現に起因した遺伝的不安定性を有する腫瘍細胞を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝的不安定性突然変異が、ATM、ATR、PAXIP1、BRCA1、BRCA2、WRN、RFC1、RPA1、ERCC1、ERCC4、ERCC6、MGMT、PARP1、PARP2、NEIL3、XRCC1、MLH1、PMS2、TP53、CREBBP、JAK1、NFKB1、MSH2、MSH3、MSH6、及びMLH3から選択される1つ又は複数の遺伝子における機能障害性突然変異である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
患者における腫瘍においてCD4+T細胞及びCD8+T細胞の腫瘍浸潤性白血球集団を増加させる方法であって、前記腫瘍を有する前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を投与するステップを含む方法。
【請求項8】
患者における腫瘍においてCD4+T細胞及びCD8+T細胞の腫瘍浸潤性白血球集団を増加させる方法であって、前記腫瘍を有する前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を、免疫腫瘍剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【請求項9】
前記免疫腫瘍剤が、免疫チェックポイント阻害剤である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体若しくはCTLA-4に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害するその抗原結合部分、又はプログラム細胞死-1(PD-1)抗体若しくはPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害するその抗原結合部分である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記Zn(II)剤が、Zn(II)/γ-ポリグルタミン酸及び/又はZn(II)/α-ポリグルタミン酸を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
患者において腫瘍を処置する方法であって、治療上有効な量の(i)Zn(II)/ポリグルタミン酸剤を、(ii)Tリンパ球マーカー、マクロファージマーカー、又はナチュラルキラー細胞マーカーを標的とする免疫腫瘍剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【請求項13】
Tリンパ球マーカーが、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Tリンパ球マーカーが、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有分子3(TIM-3)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
Tリンパ球マーカーが、T細胞免疫グロブリン及びITIMドメイン(TIGIT)である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
Tリンパ球マーカーが、B7-H3(CD276)である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
Tリンパ球マーカーが、T細胞活性化のVドメイン含有Ig抑制因子(VISTA)である、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
Tリンパ球マーカーが、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)である、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
Tリンパ球マーカーが、CD27である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
Tリンパ球マーカーが、グルココルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)である、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
マクロファージマーカーが、CD47である、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
マクロファージマーカーが、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
ナチュラルキラー細胞マーカーが、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)である、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
ナチュラルキラー細胞マーカーが、CD94/NKG2Aである、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
前記Zn(II)/ポリグルタミン酸剤が、腫瘍標的化部分及び/又は電荷運搬部分にコンジュゲートされているポリグルタミン酸を含む、請求項12~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
腫瘍標的化部分及び/又は電荷運搬部分にコンジュゲートされている前記ポリグルタミン酸が、γ-ポリグルタミン酸である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリグルタミン酸の分子量が、約2.5kDa~約60kDaの範囲内である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記過剰発現に起因した遺伝的不安定性が、APOBEC3Bの過剰発現によって引き起こされる、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年6月22日に出願されたシンガポール特許出願第10201805412T号、及び2018年12月24日に出願されたシンガポール特許出願第10201811577T号の利益及び優先権を主張し、これらの出願は、本明細書において、それらの全体が参照により援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、対象において癌を処置する方法であって、対象に、有効な量のZn(II)剤を含むか、又は有効な量のZn(II)剤及び免疫腫瘍剤(immune-oncology agent)を含む医薬組成物を投与するステップを含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌は、複雑な疾患であり、ここで、その臨床所見、症状、及びその疫学は、性別、人種、民族性、年齢層等の各患者の遺伝的要因に従って、並びに収入レベル、教育レベル、生活様式、食事等の環境要因によって多種多様である。癌の複雑性及び不均一性は、長い間認識されているが、疾患の定義は、医学界の理解の歴史的発展を反映しており、ここで、疾患は、その生理学的な位置、組織学的な外見、及び系譜に従って分類される。
【0004】
多くのハイスループットDNA/RNA/プロテオミクス特徴付け技法、バイオインフォマティクスの導入、及び免疫腫瘍(I/O)薬の出現以来、癌の薬学的定義は、遺伝的プロファイル及び/又はエピジェネティック的プロファイルによって、より良好に定義され得る。癌細胞の特定のシグナル伝達経路又は生化学的経路を標的とし、更に部位非依存的な様式で作用する、高精度の癌細胞の癌免疫療法薬、例えばイマチニブ、スニチニブ及びペムブロリズマブの臨床的成果は、癌の病理学的定義におけるこの変化を反映する例示的な進歩である。かかる一例では、アメリカ食品医薬品局は、病理学の部位とは無関係に、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)又はミスマッチ修復欠損(dMMR)として既知の遺伝的欠陥を特徴とする癌タイプに対するペムブロリズマブ及びニボルマブの適応を認可した。
【0005】
これは、臨床腫瘍学の新時代の合図となり、それにより、癌の生理組織学的特色ではなく、癌の分子生物学によって癌を定義することで、疾患を、治療剤の治療上の利益を送達する能力と併せて並べられる。しかしながら、認可されたI/O薬は、全ての癌タイプに対して首尾よいとは分かっていない。例えば、頭頸部扁平上皮癌に関するペムブロリズマブ単剤療法の治験(KEYNOTE-040)は、1つ又は複数の白金含有全身処置に応答しなかった500名の患者の研究において、標準的なケアと比較して、全生存期間を大幅には改善しなかった。ニボルマブは、非小細胞肺癌を有する患者に対する第一選択処置としては失敗した。アテゾリブマブは迅速認可を受けたにもかかわらず、尿路上皮癌に関する第3相臨床試験で失敗した。同様に、他の免疫活性剤とのI/O薬の併用療法に関する多くの治験が失敗に終わっている。
【0006】
第1の認可されたI/O薬治療は、おそらく適応免疫系を活性化させることによって、患者における永続的な応答をもたらし、長期の生存期間につながる一方で、患者の大部分が、耐性を示すと同時に、患者によっては、最初に応答した後に再発している。I/O治療に関与するメカニズムの十分な理解が未だ限られているため、この応答プロファイルに関する基礎は理解されていない。それにもかかわらず、免疫学的相互作用に関与する多数
の受容体及びリガンドが存在すること、また腫瘍の微小環境が、動的であり、且つ進化的であることが認識されている。動的且つ進化的環境の結末の1つは、患者の免疫系状態が、経時的に変化して、I/O薬に対する耐性を発現し得ることである。
【0007】
上記で言及する認可されたI/O薬の他に、Tリンパ球、マクロファージ、及びナチュラルキラー細胞において見出されるマーカーが、新たな免疫療法剤の開発の標的として定義されている。目標は、固形癌及び造血癌に対する患者の免疫応答を活性化して、免疫療法に対する耐性を回避又は克服する新たな作用物質を見出すことである。
【0008】
したがって、既知のI/O薬処置方法を上回って、癌の処置の結末にとって補完的であり、及び/又は癌の処置の結末を更に改善させる組成物及び/又は処置方法を見出す必要性は依然として満たされていない。
【0009】
先の出願は、2016年11月1日に出願されたシンガポール特許出願第10201609131Y号、及び2017年10月30日に出願されたシンガポール特許出願第10201708886R号において、消化可能なポリマー-亜鉛キレート複合体(それぞれ、亜鉛γ-ポリグルタメート[Zn-γPGA]及び亜鉛α-ポリグルタメート[Zn-αPGA])の抗癌有効性を開示した。出願はともに、本明細書において、それらの全体が参照により援用される。
【0010】
これらのZn(II)剤は、殺腫瘍剤としてそれら自身が活性であってもよく、また癌細胞に対するI/O剤の活性にとって補完的であり得ることを認識して、本発明者らは、本分野において体系的な研究を実施して、単剤療法として、また癌免疫療法剤(免疫腫瘍剤、又はI/O剤)と組み合わせて、Zn(II)複合体の配合物を、固形腫瘍癌及び血液癌を含む広範囲の癌タイプに対して試験して、かかる配合物が、強力な殺腫瘍効果及び免疫療法効果を有することを見出し、したがって、本明細書中に記載するような本発明者らの発明を完成させた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書中に開示する本発明は、亜鉛及びα-ポリグルタミン酸(α-PGA)の複合体が、様々なヒト及びマウス癌細胞株において壊死様細胞死を誘導し得るという驚くべき観察に基づく。理論によって拘束されないが、詳細な検討により、細胞死は、ネクロプトーシス的メカニズムの特徴を有し、Zn(II)特異的なPARP-1過剰活性化の誘発に起因するようであることが示唆される。
【0012】
一態様において、本発明は、ヒト患者において、例えば固形腫瘍を含む固形癌細胞又は造血癌細胞に対して治療上の利益を提供するZn(II)とポリグルタミン酸との複合体(本明細書中では一般に使用する場合、(「Zn(II)剤」))を提供する。Zn(II)剤は、シスプラチンよりも一貫し、且つより広範の細胞傷害性を実証すると同時に、従来の薬物耐性突然変異に対して感受性が劣ることも示す。Zn(II)剤はまた、汎免疫刺激性効果を誘発する。
【0013】
別の態様において、Zn(II)剤で使用されるポリグルタミン酸は、腫瘍標的化リガンドとコンジュゲートされて、治療上の有効性を更に増強する。コンジュゲートされようと、されまいと、幾つかの実施形態において、ポリグルタミン酸は、ポリマーのガンマ(γ)形態であるのに対して、他の実施形態では、ポリグルタミン酸は、アルファ(α)形態である。
【0014】
別の態様において、本発明は、固形癌又は造血癌を有する患者を処置する方法を提供す
る。別の態様において、本発明は、癌を有する患者を、免疫腫瘍学処置と組み合わせてZn(II)剤で処置することによって、かかる患者の免疫腫瘍学処置を増強する方法を提供する。
【0015】
別の態様において、本発明は、遺伝的不安定性突然変異及び/又は遺伝子過剰発現に起因した遺伝的不安定性を有する腫瘍細胞を含む腫瘍を有する患者を処置する方法を提供する。幾つかの実施形態において、本明細書中に記載する腫瘍細胞の遺伝的不安定性突然変異は、ATM、ATR、PAXIP1、BRCA1、BRCA2、WRN、RFC1、RPA1、ERCC1、ERCC4、ERCC6、MGMT、PARP1、PARP2、NEIL3、XRCC1、MLH1、PMS2、TP53、CREBBP、JAK1、NFKB1、MSH2、MSH3、MSH6、及びMLH3から選択される1つ又は複数の遺伝子における機能障害性突然変異である。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ATM遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ATR遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PAXIP1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、BRCA1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、BRCA2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、WRN遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、RFC1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、RPA1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ERCC1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ERCC4遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ERCC6遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MGMT遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PARP1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PARP2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、NEIL3遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、XRCC1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MLH1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PMS2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、TP53遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、CREBBP遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、JAK1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、NFKB1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MSH2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MSH3遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MSH6遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MLH3遺伝子中に存在する。
【0016】
したがって、幾つかの実施形態において、治療上有効な量のZn(II)剤は、単剤療法の処置方法で投与される。
幾つかの実施形態において、治療上有効な量の本明細書中に記載するZn(II)剤のいずれかは、併用処置方法で治療上有効な量の免疫腫瘍剤と組み合わせて投与される。患者において腫瘍を処置する方法の一実施形態は、治療上有効な量の(i)Zn(II)/γ-ポリグルタミン酸組成物及び/又はZn(II)/α-グルタミン酸組成物を、(ii)Tリンパ球マーカー、マクロファージマーカー、又はナチュラルキラー細胞マーカーを標的とする免疫腫瘍剤と組み合わせて投与することを含む。
【0017】
様々な実施形態において、免疫腫瘍剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイント阻害剤の非限定的な例として、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤が挙げられる。免疫調節性阻害剤の更なる非限定的な例として、LAG-
3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3阻害剤、VISTA阻害剤、ICOS阻害剤、CD27阻害剤、GITR阻害剤、CD47阻害剤、IDO阻害剤、KIR阻害剤、及びCD94/NKG2A阻害剤が挙げられる。
【0018】
本発明の更なる実施形態は、本明細書中に開示するZn(II)剤のいずれかと、2つの免疫療法剤とを含む併用療法を提供する。幾つかの実施形態において、第1の免疫療法剤及び第2の免疫療法剤はそれぞれ独立して、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3阻害剤、VISTA阻害剤、ICOS阻害剤、CD27阻害剤、及びGITR阻害剤から選択される。多くの実施形態において、上記の第1の免疫療法剤及び第2の免疫療法剤は、異なる種類の阻害剤に由来し、即ち、これらは異なるマーカーを標的とする。
【0019】
2つ免疫療法剤を使用する他の実施形態において、第1の作用物質は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3阻害剤、VISTA阻害剤、ICOS阻害剤、CD27阻害剤、及びGITR阻害剤から選択され、第2の作用物質は、CD47阻害剤及びIDO阻害剤から選択される。2つ免疫療法剤を使用する他の実施形態において、第1の作用物質は、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、CTLA-4阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、TIGIT阻害剤、B7-H3阻害剤、VISTA阻害剤、ICOS阻害剤、CD27阻害剤、及びGITR阻害剤から選択され、第2の作用物質は、KIR阻害剤及びCD94/NKG2A阻害剤から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明によるZn(II)剤の或る特定の実施形態を示す図である。
【
図2】
図2Aは、Zn(II)剤の或る特定の実施形態によるHeLa細胞の処置時の細胞生存度アッセイの結果を示す図である。
図2Bは、Zn(II)剤の或る特定の実施形態によるHeLa細胞の処置時の細胞生存度アッセイの結果を示す図である。
【
図3】
図3Aは、Zn(II)剤の或る特定の実施形態に関してIC50値を決定するアッセイの結果を示す図である。
図3Bは、Zn(II)剤の或る特定の実施形態に関してIC50値を決定するアッセイの結果を示す図である。
【
図4】
図4Aは、Zn(II)剤の或る実施形態による細胞の処置時に観察される細胞死メカニズムを示す実験の結果を示す図である。
図4Bは、Zn(II)剤の或る実施形態による細胞の処置時に観察される細胞死メカニズムを示す実験の結果を示す図である。
図4Cは、Zn(II)剤の或る実施形態による細胞の処置時に観察される細胞死メカニズムを示す実験の結果を示す図である。
図4Dは、Zn(II)剤の或る実施形態による細胞の処置時に観察される細胞死メカニズムを示す実験の結果を示す図である。
図4Eは、Zn(II)剤の或る実施形態による細胞の処置時に観察される細胞死メカニズムを示す実験の結果を示す図である。
【
図5A】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5B】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5C】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5D】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5E】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5F】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5G】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5H】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図5I】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する用量応答曲線を示す図である。
【
図6】実施例6に記載する50個の細胞株研究に関する各細胞型に関するIC50スクリーニングデータ及び定義された突然変異遺伝子の表を示す図である。
【
図7】
図7Aは、実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
図7Bは、実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図8】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する単一遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図9A】実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図9B】実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図9C】実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図9D】実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図9E】実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図9F】実施例6に記載する50個の細胞株研究における処置に対する応答の分析を示す図である。
【
図10-1】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する同義遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図10-2】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する同義遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図10M】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する同義遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図10N】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する同義遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図10O】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する同義遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図10P】実施例6に記載する50個の細胞株研究における薬物感受性に対する同義遺伝子突然変異の効果を示す図である。
【
図11】
図11Aは、C004及びシスプラチンに関するAPOBEC3B遺伝子突然変異及びIC50値分布に対するその過剰発現の効果を示す図である。
図11Bは、C004及びシスプラチンに関するAPOBEC3B遺伝子突然変異及びIC50値分布に対するその過剰発現の効果を示す図である。
図11Cは、C004及びシスプラチンに関するAPOBEC3B遺伝子突然変異及びIC50値分布に対するその過剰発現の効果を示す図である。
図11Dは、C004及びシスプラチンに関するAPOBEC3B遺伝子突然変異及びIC50値分布に対するその過剰発現の効果を示す図である。
【
図13】C004の反復毒性試験の結果を示す図である。
【
図14】
図14Aは、C005Dの投与の結果を示す図である。
図14Bは、C005Dの投与の結果を示す図である。
【
図15】C005D単剤療法及びC005D/抗PD-1 mAbの併用療法の処置の結果を示す図である。
【
図16】実施例10に記載する処置研究に関するin vivo免疫特徴付けに関するゲーティング戦略を示す図である。
【
図17A】実施例10に記載する処置の免疫学的効果の分析を示す図である。
【
図17B】実施例10に記載する処置の免疫学的効果の分析を示す図である。
【
図17C】実施例11に記載するHCC PDX-HuMiceモデル試験及びTIL分析の結果を示す図である。
【
図17D】実施例11に記載するHCC PDX-HuMiceモデル試験及びTIL分析の結果を示す図である。
【
図17E】実施例11に記載するHCC PDX-HuMiceモデル試験及びTIL分析の結果を示す図である。
【
図17F】実施例11に記載するHCC PDX-HuMiceモデル試験及びTIL分析の結果を示す図である。
【
図17G】実施例11に記載するHCC PDX-HuMiceモデル試験及びTIL分析の結果を示す図である。
【
図18】本発明の実施形態によるZn(II)剤のPARP-1オーバードライブ媒介性の壊死性細胞傷害性のメカニズムを示す図である。
【
図19】本発明の実施形態によるZn(II)剤の推測される殺腫瘍性(tumorical)メカニズムの模式図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的な実施形態
本発明の実施形態として、下記が挙げられるが、これらに限定されない:
1.腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を投与するステップを含む方法。
【0022】
2.腫瘍を有する患者を処置する方法であって、前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を、免疫腫瘍剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
3.前記免疫腫瘍剤が、免疫チェックポイント阻害剤である、実施形態2に記載の方法。
【0023】
4.前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体若しくはCTLA-4に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害するその抗原結合部分、又はプログラム細胞死-1(PD-1)抗体若しくはPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害するその抗原結合部分である、実施形態3に記載の方法。
【0024】
5.前記腫瘍は、遺伝的不安定性突然変異及び/又は遺伝子過剰発現に起因した遺伝的不安定性を有する腫瘍細胞を含む、実施形態1~4のいずれか一つに記載の方法。
6.前記遺伝的不安定性突然変異が、ATM、ATR、PAXIP1、BRCA1、BRCA2、WRN、RFC1、RPA1、ERCC1、ERCC4、ERCC6、MGMT、PARP1、PARP2、NEIL3、XRCC1、MLH1、PMS2、TP53、CREBBP、JAK1、NFKB1、MSH2、MSH3、MSH6、及びMLH3から選択される1つ又は複数の遺伝子における機能障害性突然変異である、実施形態5に記載の方法。
【0025】
7.患者における腫瘍においてCD4+T細胞及びCD8+T細胞の腫瘍浸潤性白血球集団を増加させる方法であって、前記腫瘍を有する前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を投与するステップを含む方法。
【0026】
8.患者における腫瘍においてCD4+T細胞及びCD8+T細胞の腫瘍浸潤性白血球集団を増加させる方法であって、前記腫瘍を有する前記患者に、治療上有効な量のZn(II)剤を、免疫腫瘍剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【0027】
9.前記免疫腫瘍剤が、免疫チェックポイント阻害剤である、実施形態8に記載の方法。
10.前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体若しくはCTLA-4に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害するその抗原結合部分、又はプログラム細胞死-1(PD-1)抗体若しくはPD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害するその抗原結合部分である、実施形態8に記載の方法。
【0028】
11.前記Zn(II)剤が、Zn(II)/γ-ポリグルタミン酸及び/又はZn(II)/α-ポリグルタミン酸を含む、実施形態1~10のいずれか一つに記載の方法。
12.患者において腫瘍を処置する方法であって、治療上有効な量の(i)Zn(II)/ポリグルタミン酸剤を、(ii)Tリンパ球マーカー、マクロファージマーカー、又はナチュラルキラー細胞マーカーを標的とする免疫腫瘍剤と組み合わせて投与するステップを含む方法。
【0029】
13.Tリンパ球マーカーが、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)である、実施形態12に記載の方法。
14.Tリンパ球マーカーが、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有分子3(TIM-3)である、実施形態12に記載の方法。
【0030】
15.Tリンパ球マーカーが、T細胞免疫グロブリン及びITIMドメイン(TIGIT)である、実施形態12に記載の方法。
16.Tリンパ球マーカーが、B7-H3(CD276)である、実施形態12に記載の方法。
【0031】
17.Tリンパ球マーカーが、T細胞活性化のVドメイン含有Ig抑制因子(VISTA)である、実施形態12に記載の方法。
18.Tリンパ球マーカーが、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)である、実施形態12に記載の方法。
【0032】
19.Tリンパ球マーカーが、CD27である、実施形態12に記載の方法。
20.Tリンパ球マーカーが、グルココルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)である、実施形態12に記載の方法。
【0033】
21.マクロファージマーカーが、CD47である、実施形態12に記載の方法。
22.マクロファージマーカーが、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)である、実施形態12に記載の方法。
【0034】
23.ナチュラルキラー細胞マーカーが、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)である、実施形態12に記載の方法。
24.ナチュラルキラー細胞マーカーが、CD94/NKG2Aである、実施形態12に記載の方法。
【0035】
25.前記Zn(II)/ポリグルタミン酸剤が、腫瘍標的化部分及び/又は電荷運搬部分にコンジュゲートされているポリグルタミン酸を含む、実施形態12~24のいずれ
か一つに記載の方法。
【0036】
26.前記腫瘍標的化部分及び/又は電荷運搬部分にコンジュゲートされているポリグルタミン酸が、γ-ポリグルタミン酸である、実施形態25に記載の方法。
27.前記ポリグルタミン酸の分子量が、約2.5kDa~約60kDaの範囲内である、実施形態25に記載の方法。
【0037】
28.前記過剰発現に起因した遺伝的不安定性が、APOBEC3Bの過剰発現によって引き起こされる、実施形態5に記載の方法。
29.前記遺伝子がATMである、実施形態6に記載の方法。
【0038】
30.前記遺伝子がATRである、実施形態6に記載の方法。
31.前記遺伝子がPAXIP1である、実施形態6に記載の方法。
32.前記遺伝子がBRCA1である、実施形態6に記載の方法。
【0039】
33.前記遺伝子がBRCA2である、実施形態6に記載の方法。
34.前記遺伝子がWRNである、実施形態6に記載の方法。
35.前記遺伝子がRFC1である、実施形態6に記載の方法。
【0040】
36.前記遺伝子がRPA1である、実施形態6に記載の方法。
37.前記遺伝子がERCC1である、実施形態6に記載の方法。
38.前記遺伝子がERCC4である、実施形態6に記載の方法。
【0041】
39.前記遺伝子がERCC6である、実施形態6に記載の方法。
40.前記遺伝子がMGMTである、実施形態6に記載の方法。
41.前記遺伝子がPARP1である、実施形態6に記載の方法。
【0042】
42.前記遺伝子がPARP2である、実施形態6に記載の方法。
43.前記遺伝子がNEIL3である、実施形態6に記載の方法。
44.前記遺伝子がXRCC1である、実施形態6に記載の方法。
【0043】
45.前記遺伝子がMLH1である、実施形態6に記載の方法。
46.前記遺伝子がPMS2である、実施形態6に記載の方法。
47.前記遺伝子がTP53である、実施形態6に記載の方法。
【0044】
48.前記遺伝子がCREBBPである、実施形態6に記載の方法。
49.前記遺伝子がJAK1である、実施形態6に記載の方法。
50.前記遺伝子がNFKB1である、実施形態6に記載の方法。
【0045】
51.前記遺伝子がMSH2である、実施形態6に記載の方法。
52.前記遺伝子がMSH3である、実施形態6に記載の方法。
53.前記遺伝子がMSH6である、実施形態6に記載の方法。
【0046】
54.前記遺伝子がMLH3である、実施形態6に記載の方法。
発明の詳細な説明
本明細書中で使用する略号の意味は、下記の通りである:「kDa」は、キロダルトンを意味し、「wt%」は、重量パーセントを意味する。
Zn(II)剤
Zn(II)剤は、ポリグルタミン酸と複合体形成されたZn(II)(即ち、Zn
2+)からなる。Zn(II)剤の実施形態の一般的構造を
図1に示す。ポリグルタミン酸
(「PGA」)は、グルタミン酸の縮合ポリマーであり、グルタミン酸は、2つのカルボン酸を含有するため、2つの立体配置で生じ得る。α-カルボキシレート部分を介した縮合により、α-ポリグルタミン酸が得られ、γ-カルボキシレート部分を介した縮合により、γ-ポリグルタミン酸が得られる。Zn(II)剤は、α-PGA、γ-PGA、又はα-PGA及びγ-PGAの両方を用いて調製されてもよく、任意のかかる組成物はまた、「ZnPGA」とも称され得る。形態(α-又はγ-)が指定されない場合、別記しない限り、いずれかの形態が別々に、又は両方の形態が任意の比のブレンドとして、推測され得ることが理解されるべきである。遊離Zn(II)イオン並びにZn陽イオンに対する本来の対イオンがプロセスにおいて除去されるように、ZnPGA組成物は、一般的に精製される。
【0047】
Zn(II)剤を調製するのに使用される亜鉛塩は、Zn(II)塩(即ち、Zn2+塩)であり、ここで、対イオン(陰イオン)は、医薬製品の製造における使用に適した任意の無機又は有機陰イオンであり得る。適切な陰イオンは、無毒性であるものを含む、ヒト身体によって許容されるものである。概して、亜鉛塩は、式Zn2+X2-又はZn2+(X-)2又は更にはZn2+(X-)(Y-)(式中、X及びYは、適切な陰イオンである)によって表され得る。陰イオンは、FDAにより認可された医薬製品の構成成分である陰イオンの群から選択され得る。幾つかの実施形態において、亜鉛(II)塩は、薬学的に許容可能な亜鉛塩である。亜鉛塩の例として、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、グリシン酸亜鉛又は当該技術分野において既知の使用される他のアミノ酸等のアミノ酸-亜鉛キレートが挙げられる。
【0048】
アルファ-ポリグルタミン酸(或いは、α-ポリグルタミン酸又はα-PGA)は、アミノ酸であるグルタミン酸のポリマーであり、ここで、ポリマー骨格は、アミノ酸側鎖におけるカルボキシル基ではなく、α-炭素でアミノ基及びカルボキシル基を結合するペプチド結合(タンパク質において形成される典型的なペプチド結合)によって形成される。α-PGAは、グルタミン酸のL異性体、D異性体、又はDLラセミ体から形成され得る。これらの形態のいずれかが使用されてもよく、2つ又はそれ以上の異なる形態が、任意の比率で一緒に使用されてもよい。α-PGAの様々な異性体形態は、合成的であってもよく、又は天然供給源に由来してもよい。生物は通常、L異性体のみからポリ(アミノ酸)を産生する一方で、α-PGAを産生する或る特定の細菌酵素は、一方の異性体又は両方の異性体からポリマーを産生することができる。
【0049】
ガンマ-ポリグルタミン酸(或いは、γ-ポリグルタミン酸又はγ-PGA)は、アミノ酸であるグルタミン酸のポリマーであり、ここで、ポリマー骨格は、アミノ酸側鎖において(γ-炭素で)アミノ基及びカルボキシル基を結合するペプチド結合によって形成される。γ-PGAは、グルタミン酸のL異性体、D異性体、又はDLラセミ体から形成され得る。これらの形態のいずれかが使用されてもよく、2つ又はそれ以上の異なる形態が、任意の比率で一緒に使用されてもよい。γ-PGAの様々な異性体形態は、合成的であってもよく、又は天然供給源に由来してもよい。γ-PGAは、例えば、日本の納豆及び海藻中に見出される。生物は通常、L異性体のみからポリ(アミノ酸)を産生する一方で、γ-PGAを産生する或る特定の細菌酵素は、一方の異性体又は両方の異性体からポリマーを産生することができる。
【0050】
様々な大きさ及び様々なポリマー分散度のα-PGA及びγ-PGAが使用されてもよく、同じ考察がそれぞれに当てはまる。PGAのポリマー分子量は、一般的に少なくとも約1kDa、多くても約100kDaである。幾つかの実施形態において、PGAのポリマー分子量は、少なくとも約1kDa、又は少なくとも約2.5kDa、又は少なくとも約5kDa、又は少なくとも約10kDa、又は少なくとも約20kDa、又は少なくとも約30kDa、又は少なくとも約35kDa、又は少なくとも約40kDa、又は少な
くとも約50kDaである。幾つかの実施形態において、PGAのポリマー分子量は、多くても約100kDa、又は多くても約90kDa、又は多くても約80kDa、又は多くても約70kDa、又は多くても約60kDaである。許容可能なポリマー分子量範囲は、上記で示したポリマー分子量値のいずれかから選択され得る。或る実施形態において、ポリマー分子量は、約2.5kDa~約50kDaの範囲内である。或る実施形態において、ポリマー分子量は、約50kDa~約100kDaの範囲内である。一実施形態において、ポリマー分子量は、約50kDaである。ポリマー分子量は通常、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による測定に基づく数平均分子量(Mn)として付与される。上記ポリマー質量は、Mnとして言及され、他の測定技法を使用して、例えば質量(重量)平均分子量(Mw)を決定することができ、任意の所与のポリマーの規格は、各種ポリマー質量表示間で変換され得る。
【0051】
PGAは、腫瘍標的化部分を含み得る。かかる部分は、葉酸、N5,N10-ジメチルジテトラヒドロフォレート(DMTHF)、及びRGDペプチドから選択され得る。前記部分はそれぞれ、任意の組合せ及び比でポリグルタミン酸に共有結合されて、例えば、PGAのフォレートコンジュゲート及び/又はDMTHFコンジュゲート及び/又はRGDペプチドコンジュゲートを形成し得る。
【0052】
フォレート受容体タンパク質は、多くのヒト腫瘍で発現される場合が多い。フォレートは必然的に、フォレート受容体に対して高い親和性を有し、更に結合時に、フォレート及び結合されたコンジュゲートは、エンドサイトーシスによって細胞へ輸送され得る。このようにして、葉酸で修飾されたZnPGAは、腫瘍細胞を標的として、腫瘍細胞で蓄積し、亜鉛(II)を、腫瘍細胞の近傍へ、及び/又は腫瘍細胞の内側に送達し得る。
【0053】
DMTHFもまた、フォレート受容体に対して高い親和性を有することが知られている。DMTHFの調製は、Leamon,C.P. et al.,Bioconjugate Chemistry 13,1200-1210に記載されている。更に、フォレート受容体(FR)の2つの主なアイソフォームであるFR-α及びFR-βが存在し、DMTHFは、FR-βを上回ってFR-αに対してより高い親和性を有することがわかっている(Vaitilingam,B., et al.,The Journal of Nuclear Medicine 53, 1127-1134.)。これは、FR-αが多くの悪性細胞型において過剰発現される一方で、FR-βは、炎症性疾患と関連付けられるマクロファージで過剰発現されるため、腫瘍細胞を標的化するのに有益である。したがって、DMTHFをPGAにコンジュゲートすることにより、腫瘍細胞によって発現されるフォレート受容体に選択的に結合し得るコンジュゲートが提供される。
【0054】
同様に、RGDペプチドは、腫瘍性内皮細胞上で、並びに幾つかの腫瘍細胞上で発現されるα(V)β(3)インテグリンに強力に結合することが知られている。したがって、RGDコンジュゲートは、抗腫瘍剤を腫瘍部位へと標的化及び送達するのに使用され得る。
【0055】
本発明で企図されるように、PGAは、これらの腫瘍標的化剤のいずれか1つ若しくは2つ、又は全てとコンジュゲート(即ち、共有結合)されてもよく、2つ又はそれ以上が存在する場合、これらの作用物質の相対比は、特に限定されない。例えば、PGA担体は、PGAと、(a)葉酸、(b)DMTHF、(c)RGD、(d)葉酸及びDMTHF、(e)葉酸及びRGD、(f)DMTHF及びRGD、又は(g)葉酸、DMTHF、及びRGDとのコンジュゲートを含み得る。当業者に既知の他の類似した腫瘍標的化部分もまた、本発明の範囲内である。
【0056】
α-PGAは、各グルタミン酸単位のγ-炭素で遊離カルボン酸基を有し、γ-PGA
は、葉酸及びRGDペプチドとコンジュゲートを形成するのに使用され得る各グルタミン酸単位のα-炭素で遊離カルボン酸基を有する。葉酸は、グルタミン酸の遊離カルボン酸基とカップリングされ得る環外アミン基を有して、2つを結合するアミド結合を形成する。葉酸中と同じ環外アミン基は、DMTHFにおいてアミド結合形成に利用可能である。RGDコンジュゲートもまた、当該技術分野で周知であり、同様に、例えば、RGDにおける遊離α-アミノ基を介して遊離カルボン酸基に共有結合され得る。或いは、いずれかの部分が、例えばポリエチレングリコールアミン等のスペーサー基を介して、PGAにコンジュゲートされ得る。α-PGAのγ-炭素カルボキシレート基と、アミノ基との間のコンジュゲーション反応の例は、Baiらの米国特許第9,636,411号に見出すことができ、アミノ基及び水酸基とのコンジュゲーション反応は、Vanらの米国特許付与前出願公開第2008/0279778号に見出すことができる。葉酸及びクエン酸のコンジュゲーション反応を含む、γ-PGAへのコンジュゲーション反応の例は、国際公開第2014/155142号(2014年10月2日に公開)に見出すことができる。
【0057】
PGAは、電荷修飾部分を含み得る。かかる部分は、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N”,N”’-四酢酸(DOTA)、及びジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)から選択され得る。前記部分の任意の組合せは、上記で論述するように、更に遊離カルボン酸で、ポリグルタミン酸に共有結合され得る。クエン酸は、エステル結合を形成することによって、PGAの遊離カルボン酸基にコンジュゲートされ得る。(例えば、γ-PGAのα-炭素に関与する反応に関しては、国際公開第2014/155142号を参照)。EDTA、DOTA、及びDTPAは、例えば、スペーサー基を使用してPGAに結合させて、これらの部分のアミンをPGAの遊離カルボン酸基に結合し得る。多数の選択肢が、当業者に利用可能である。電荷修飾部分は、Zn(II)イオンをキレート化するための部位として使用することができ、電荷修飾はまた、ZnPGA複合体の輸送及び溶解度に影響を及ぼし、したがって、担体及びZnPGA複合体の薬学的効果を調整するのに使用することができる。
【0058】
PGAは、腫瘍標的化部分及び電荷修飾部分の両方を含んでもよく、その結果、両タイプの部分の利益及び機能性が、PGA担体、及びZn(II)剤に付与され得る。腫瘍標的化部分及び電荷修飾部分の任意の組合せを、PGAにコンジュゲートしてもよく、部分の相対比は、特に限定されない。
【0059】
本発明によるZn(II)剤における亜鉛イオンの量は、亜鉛対グルタミン酸単位(「GAU」)の比として表され得る。グルタミン酸単位当たりで提供されるキレート部位の平均数の関係性により、キレート剤がPGAにコンジュゲートされる場合、同じ概念が使用され得る。比は、Zn:GAU 1:1と高い可能性があり得るが、これは名目上、コンジュゲートされた腫瘍標的化部分又は電荷修飾部分を排除する。1:2、1:5、1:10、1:20のより低い比が企図され、更に低い比が可能であるが、亜鉛(II)の適切な用量を送達するのに必要とされる投与量に含まれるPGAの量は増加する。投与量と、非亜鉛構成成分の量との間の適切なバランスは、当業者によって決定され得る。一実施形態において、比は、Zn:GAU 約1:2~約1:10の任意の値である。別の実施形態において、比は、約1:3~約1:6の任意の値である。別の実施形態において、比は、約1:4.5である。
【0060】
Zn(II)剤における腫瘍標的化部分及び電荷修飾部分の数は通常、PGAポリマー1つ当たりのコンジュゲートされた部分の平均数として表す。ポリマー鎖1本当たりの結合された部分の平均数を決定するための分析技法は、当業者に既知である。ポリマー鎖1本当たりの部分の所望の数は、平均ポリマーサイズ、したがって、利用可能なモノマー単位の数、Zn:GAUの所望の比、種々のタイプの部分の所望の数等の間のバランスを反
映する。ポリマー鎖1本当たりの任意の単一部分の約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、又は約8:1の比が企図される。より高い比もまた企図されるが、より多くの部分が添加される場合に、獲得される利益はより少ない場合が多いことが、当業者に認識される。
【0061】
ZnPGA組成物は概して、まず、所望の平均分子量、多分散性、コンジュゲートされた部分等を有するPGAポリマーを得ること、又は調製することによって調製される。また、例えば、より広範囲のポリマーサイズを提供するため、種々の標的化能力を提供するため、などの互いの特徴が異なるPGAポリマーの混合物を使用してもよい。続いて、PGAポリマーは、緩衝水溶液中で亜鉛塩と組み合わせられ、本明細書中に開示する処置方法で使用され得るZn(II)剤である薬学的に許容可能な配合組成物を調製するために適切に処理される。ZnPGA組成物及びZn(II)剤(配合物)を調製する例示的な方法は、本明細書中の実施例において提供される。
【0062】
液体投薬形態の組成物又は配合物中に提供される亜鉛の濃度は、一般的に約1μg/mL~約100mg/mLの亜鉛(亜鉛(II)イオン)の範囲内に存在する。これは、約0.0001wt%~約10wt%の亜鉛の範囲に相当する。Zn(II)の濃度は、少なくとも約10μg/mL、又は少なくとも約0.1mg/mL、又は少なくとも約1mg/mL、又は少なくとも約10mg/mL、又は少なくとも約50mg/mLであり得るか、或いはZn(II)の濃度に関する範囲は、これらの例示的な濃度のいずれか2つ内に収まり得る。一実施形態において、濃度は、約100μg/mL~約5mg/mLの範囲内に存在し得る。別の実施形態において、濃度は、約200μg/mL~約2mg/mLの範囲内に存在し得る。
【0063】
投薬形態で提供される液体の量が、総投薬量を決定する。例えば、100mL量の液体は、上記第1の例示的な範囲に関して約10mg~約500mgのZn(II)を、第2の範囲に関して約20mg~約200mgのZn(II)を提供する。液体配合物の、使用するのに適した濃度及び量は概して、患者の体重に依存する。適切な投薬レジメンは概して、1日につき患者の体重当たり(例えば、1kg当たり)の亜鉛の量として提供され、したがって、Zn mg/kg/日の数として表される。
【0064】
適切な液体配合物として、液体溶液、液体懸濁液、シロップ、及び経口スプレーが挙げられる。液体溶液は、経口投与され得るか、或いは注射によって、例えば、静脈内に、皮内に、筋内に、クモ膜下腔内に、若しくは皮下的に、又は腫瘍に、若しくは腫瘍の近傍に直接投与され得るのに対して、液体懸濁液、シロップ及びスプレーは、一般的に経口投与に適している。
【0065】
液体投薬形態を調製する方法は、所望の量の(i)亜鉛塩(複数可)及びPGA担体及び/又は(ii)ZnPGA複合体を、適切な賦形剤と共に一緒に混合することを含む。幾つかの実施形態は、配合物中に胃耐性結合剤及び/又はコーティングを更に含む。
【0066】
液体溶液配合物は、適切な担体、希釈剤、緩衝液、防腐剤、又は投与の形態に関して適切に選択される他の賦形剤を用いて調製され得る。例えば、静脈内配合物は、適切なpHで、また等張剤を用いて緩衝されて調製され得る。
【0067】
注射又は経口送達に適した液体配合物の実施形態は、亜鉛(II)塩、PGA担体(上述するような未修飾PGA及び/又は任意の形態の修飾PGA)、及び水を含む。更なる実施形態において、液体配合物は、緩衝液及び/又は塩、例えば、塩化ナトリウムを更に含み得る。緩衝剤が含まれる場合、好ましい緩衝pHは、約pH4~約pH9の範囲内である。注射される場合、好ましくは溶液は、それが注射されるべき溶液と等張性であり、
適切なpHを有する。一実施形態において、硫酸亜鉛七水和物、α-PGA、及び塩化ナトリウムは、水中で組み合わせられ、ここで、亜鉛(II)の濃度は、1mg/mLであり、γ-PGAは、10mg/mLである。γ-PGAのポリマー分子量は、上述の範囲のいずれかから選択され得る。一実施形態において、γ-PGAのポリマー分子量は、約1kDa~約100kDaの範囲内であり、他の実施形態において、γ-PGAのポリマー分子量は、約2.5kDa~約50kDaの範囲内である。任意の実施形態において、γ-PGAの1つ又は複数のポリマー分子量形態が含まれ得る。
【0068】
幾つかの実施形態において、亜鉛塩及びPGA担体は、ZnPGA複合体として調製され得る。概して、ZnPGA複合体を形成するために、亜鉛塩(複数可)及びPGA担体は、例えば実施例1、実施例2及び実施例12~実施例23に記載するように、組み合わせられて、精製される。得られたZnPGA複合体の溶液は、希釈されてもよく、又は実質的に乾燥されて、液体投薬形態を調製する手順における使用のためのより濃縮された形態で再構成されてもよい。ZnPGA複合体は、注射可能な溶液として、又は液体懸濁液、シロップ、若しくはスプレーとして配合され得る。
【0069】
実施例9で開示されるように、マウスは、注射によって、C004Zn(II)剤の溶液で処置されて、0.5mg/体重kg/日、1.0mg/体重kg/日、又は2.5mg/体重kg/日の生理学的に重要な用量のZn(II)を受容し、又は、注射によって、C005DZn(II)剤の溶液で処置されて、0.5mg/体重kg/日、1.0mg/体重kg/日、又は2.0mg/体重kg/日の生理学的に重要な用量のZn(II)を受容した。
【0070】
実施例10で開示されるように、マウスは、静脈内に、単独で又は併用療法の処置で抗ヒトPD-1抗体と併用して、2mg/体重kg/日のC005D溶液で処置された。
幾つかの実施形態において、Zn(II)剤は、固体投薬形態として配合される。単一固体投薬形態に含まれる亜鉛の量は、一般的に約1mg~約100mgの亜鉛(亜鉛(II)イオン)の範囲内である。したがって、塩の量が対イオンの重量に相当しなくてはならないので、配合組成物において使用される亜鉛塩(複数可)の特定の量はより高い。亜鉛(II)のみを考慮すると、投薬形態で提供される量は、最大約100mg、最大約75mg、最大約50mg、最大約25mg、最大約10mgの亜鉛、又は最大約5mgであり得る。固体投薬形態で提供される亜鉛(II)の量は、一般的に少なくとも約1mgである。比較の目的で、一般的に入手可能なサプリメントは、例えば、20mg、25mg、30mg、50mg、75mg、及び更には100mgの亜鉛を提供する。提供される量が、生理学的に過剰なレベルの亜鉛を吸収させない限りは、この範囲の、又は更にはより高い任意の量の亜鉛が許容可能である。しかしながら、過剰なレベル及びそれに由来するリスクとみなされ得るものは、腫瘍を処置することによって獲得される治療上の利益とバランスが保たれるべきである。ほとんどの成体における亜鉛の許容可能な上限摂取レベルは、約40mg/日(子供に関しては、許容可能な上限摂取レベルは、より低い)であるが、経口的に取り込まれる固体投薬形態における亜鉛全てが、吸収される可能性は低く、亜鉛全ての幾らかが、吸収されずに身体を通り抜けることが認識されるべきである。吸収される亜鉛の量もまた、配合物によって変化するので、特定の配合物中の亜鉛含有量に関する上限は、当業者に既知の方法によって試験されて、配合物によって提供される取込みのレベルを決定することができ、続いて、配合物を投与することによって得られる処置における任意の治療上の利益を考慮して、それに応じて所与の投薬形態又は配合物に関して投与される量を調節し得る。
【0071】
他の実施形態において、亜鉛(II)はまた、液体中に懸濁される固体から提供され得る。亜鉛(II)の量及び提供される懸濁液の容量は、固体及び液体投薬形態に関する上述のガイダンスに従う。
【0072】
液体投薬形態中に含まれるPGAの量は、一般的に約0.01wt%~約10wt%の範囲内である。幾つかの実施形態において、量は、約0.1wt%又は約1wt%である。
【0073】
使用される量は概して、亜鉛と、ポリグルタミン酸モノマー単位との間での所望のモル比、担体PGAの性質(即ち、未修飾であるか、或いは腫瘍標的化部分及び/又は電荷修飾部分で修飾されるかどうか)、及び担体PGAとのZn(II)複合体の形成の度合いに基づく。例えば、実施例12及び実施例13で説明するように、ZnPGA複合体は、およそ1wt% PGAと、およそ400μg/mLの複合体形成された亜鉛とを含む溶液として得られた。
【0074】
固体投薬形態中に含まれるPGAの量は、一般的に約10wt%~約40wt%の範囲内である。幾つかの実施形態において、量は、約20wt%又は約30wt%である。使用される量は概して、亜鉛と、ポリグルタミン酸モノマー単位との間での所望のモル比、亜鉛塩の質量(対イオンの重量に相当する)、及び許容可能な配合投薬形態を提供するのに必要とされる賦形剤の量に基づく。例えば、使用するPGA及び亜鉛塩の量が多いほど、所与の全体的な投薬形態サイズに関して添加され得る賦形剤の量は少ない。当業者は、安定な投薬形態を得るのに必要とされる賦形剤の量及びタイプに対して、有効成分の量のバランスを容易に保つことができる。亜鉛とPGAとの間の所望の比はまた、亜鉛のミリグラム対投薬形態1つ当たりのPGAのwt%の比として表すことができる。例示的な比として、5mg:10wt%、5mg:20wt%、5mg:40wt%、30mg:10wt%、30mg:20wt%、30mg:40wt%、又は更には100mg:10wt%、100mg:20wt%、100mg:40wt%、或いは各成分に関して引用される値から明らかな値の任意の他の組が挙げられる。
【0075】
有効な量のZn(II)塩及びポリグルタミン酸担体を有する適切な固体又は液体組成物及び薬学的に許容可能な配合物に達するために、PGA及び亜鉛の相対量並びに各々の濃度を、本開示に従って当業者によって容易に調節することができる。
【0076】
本明細書中に記載する投薬形態は、治療上有効な量の亜鉛(II)を提供するように投与されて、対象において所望の生物学的応答を達成し得る。治療上有効な量は、Zn(II)、PGA、及びPGAに対する任意の修飾の複合効果、任意のZnPGA複合体の形態、及び/又は投薬形態の送達効率等により治療を必要とする患者に送達される亜鉛の量が、所望の生物学的応答を達成することを意味する。治療上有効な量はまた、患者が免疫腫瘍剤も受容している併用療法の処置方法でも異なり得る。相乗効果が得られる場合、亜鉛(II)剤の治療上有効な量は、単剤療法の処置方法よりも低い可能性がある。
【0077】
所望の生物学的応答として、対象、例えば哺乳動物における、例えばヒト(患者とも称され得る)における腫瘍若しくは癌の発症又は発達の防止、腫瘍若しくは癌の進行の部分的若しくは総合的な防止、遅延又は阻害、或いは腫瘍若しくは癌の再発の防止、遅延又は阻害が挙げられる。処置方法の臨床上の利益は、他覚的奏効率、腫瘍サイズ、応答の持続期間、処置の失敗に至る時間、無増悪生存、並びに臨床用途で評価される他の一次及び二次エンドポイントによって評価され得る。
【0078】
本明細書中に開示する処置方法は、固形若しくは造血癌又は腫瘍等の広範囲のヒト癌の処置に使用され得る。例えば、本明細書中に開示する方法及び処置は、遺伝的不安定性突然変異及び/又は遺伝子過剰発現に起因した遺伝的不安定性を有する腫瘍細胞を含む腫瘍を有する患者を処置するのに使用され得る。幾つかの実施形態において、本明細書中に記載する腫瘍細胞の遺伝的不安定性突然変異は、ATM、ATR、PAXIP1、BRCA
1、BRCA2、WRN、RFC1、RPA1、ERCC1、ERCC4、ERCC6、MGMT、PARP1、PARP2、NEIL3、XRCC1、MLH1、PMS2、TP53、CREBBP、JAK1、NFKB1、MSH2、MSH3、MSH6、及びMLH3から選択される1つ又は複数の遺伝子における機能障害性突然変異である。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ATM遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ATR遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PAXIP1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、BRCA1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、BRCA2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、WRN遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、RFC1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、RPA1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ERCC1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ERCC4遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、ERCC6遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MGMT遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PARP1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PARP2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、NEIL3遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、XRCC1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MLH1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、PMS2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、TP53遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、CREBBP遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、JAK1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、NFKB1遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MSH2遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MSH3遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MSH6遺伝子中に存在する。幾つかの実施形態において、機能障害性突然変異は、MLH3遺伝子中に存在する。
【0079】
更に、PARP1媒介性壊死に対して感受性のある腫瘍タイプ全てが、本明細書中に開示する処置方法に従って処置され得る適応症であることが企図される。様々な例により、開示する組成物及び医薬配合物の実施形態を使用して、開示する方法の実施形態に従って、処置の有効性が実証される。結果により、ヒト化免疫性マウスを含むマウスモデルにおける、in vivoでのマウス癌細胞及びヒト癌細胞の有効な処置が実証される。
【0080】
治療上有効な量の達成は、配合物の特徴に依存し、いずれも、各個体の性別、年齢、状態、及び遺伝子の構成によって異なる。例えば、遺伝的原因又は吸収不良若しくは厳しい食事制限の他の原因に起因して不十分な亜鉛を有する個体は、一般的に十分なレベルの亜鉛を有する個体と比較して、治療効果に対して異なる量を要し得る。
【0081】
対象は概して、約0.1mg/kg/日~最大約5mg/kg/日の量の亜鉛が投与される。幾つかの実施形態において、投与される亜鉛の量は、約1.0mg/kg/日~約3mg/kg/日である。多重投薬形態は、その日に一緒に又は別々に取り込まれ得る。経口投薬形態は一般的に、食事時間に関係なく投与され得る。処置は概して、所望の治療効果が達成されるまで継続する。本明細書中に記載する組成物及び配合物の低い投薬レベルもまた、腫瘍が、その再発を防止するか、遅延させるか、若しくは阻害する目的で、退縮するか、又は阻害している場合に、本発明の実施形態による処置として継続され得るか、又は予防的処置として使用され得る。
免疫腫瘍剤
上述のZn(II)剤との併用療法における使用に関して企図される免疫腫瘍剤は、任意の癌免疫療法剤であり得る。「免疫腫瘍剤」、「癌免疫療法用剤」、及び「I/O剤」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される。理論によって拘束されず、これらの作用物質は、腫瘍に対する免疫応答に関与し、それにより免疫調節に関与する天然のメカニズムを妨害する、患者の免疫系における、若しくは腫瘍によって提示される受容体又はリガンドを標的とする。かかる受容体又はリガンドに対して結合する作用物質によって一般的に引き起こされる妨害は、他の場合では患者において起きるであろう天然免疫応答を活性化し得るか、刺激し得るか、抑制し得るか、又は阻害し得る。免疫腫瘍剤は、小分子薬、又は近年より一般的であるように、抗体のいずれかであり得る。
【0082】
免疫腫瘍剤は、T細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、若しくは他の抗原提示細胞、又は腫瘍細胞上に出現する受容体又はリガンドを標的とし得る。幾つかの受容体又はリガンドは、1つよりも多い細胞型で出現してもよく、したがって、特定の細胞型上に出現するような受容体又はリガンドに対する任意の言及は、利便性のためであり、本開示又は本発明の範囲を限定すると意図されない。
【0083】
腫瘍(例えば、癌)を処置するための併用療法におけるZn(II)剤を用いた使用に適した免疫腫瘍剤として、標的とされている免疫構成成分に関して便宜上以下で記載する下記作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。I/O剤の開発の現況に関する更なる情報は、Burugu,S.et al.,Emerging Targets in Cancer Immunotherapy,SEMINARS IN CANCER BIOLOGY 2018,52,39-52において提供される。
【0084】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)阻害剤である。例えばニボルマブ、ペムブロリズマブ、MEDI0680(以前は、AMP-514)、AMP-224、又はBGB-A317のような薬物に関する情報を含む、PD-1阻害剤の組成物、調製方法、配合物、投薬及び投与を含むPD-1阻害剤に関する情報は、記載される通りであり、公表されている。
【0085】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、プログラム細胞死タンパク質リガンド1(PD-L1)阻害剤である。例えばアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、BMS-936559、CK-301、ZKAB001、及びfaz053のような薬物に関する情報を含む、PD-L1阻害剤の組成物、調製方法、配合物、投薬及び投与を含むPD-L1阻害剤に関する情報は、記載される通りであり、公表されている。
【0086】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)阻害剤である。例えばイピリムマブのような薬物に関する情報を含む、CTLA-4阻害剤の組成物、調製方法、配合物、投薬及び投与を含むCTLA-4阻害剤に関する情報は、記載される通りであり、公表されている。
【0087】
免疫チェックポイント阻害剤の第1の組としてのPD-1、PD-L1、及びCTLA-4阻害剤は多くの場合、それ自体に対して言及されるが、この表示は、群を限定又は定義するものとみなされるべきである。多くの他の免疫チェックポイントが、以下で記載するように阻害剤又は刺激剤に対する標的として開発中である。それにもかかわらず、認可された製品の第1の群は、当業者の理解にとって重要である。これらのI/O剤の状況に関する更なるバックグラウンドは、Chae,Y. K. et al.,Current landscape and future of dual anti-CTLA-4 and PD-1/PD-L1 blockage immunotherapy
in cancer,JOURNAL FOR IMMUNOTHERAPY OF CANCER 2018,6,39に提供される。
【0088】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)阻害剤である。LAG-3(CD223)は、活性化T細胞、B細胞、及び樹状細胞で発現される阻害性受容体である。アップレギュレーションは、顕性活性化を制御して、自己免疫を防止するのに必要とされるが、腫瘍微小環境における持続性抗原曝露は、能力が低減された表現型の消耗をもたらすことが報告されている。目下開発中のI/O剤として、REGN3767、IMP321、BMS-986016、LAG525、及びMK-4280-001が挙げられる。受容体及び臨床試験の論述は、Andrews,L.P.
et al.,LAG3(CD223) as a Cancer Immunotherapy Target, IMMUNOL.REV.2017,276(1),80-96に提供される。
【0089】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有分子3(TIM-3)阻害剤である。TIM-3は、共阻害性免疫受容体である。その発現は、T細胞活性化後に増加すると報告されており、一般的に、腫瘍微小環境においてT細胞の最も機能障害性の集団を指し示す。目下開発中のI/O剤として、TSR-022、LY3321367、Sym023、及びMBG453が挙げられる。
【0090】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、T細胞免疫グロブリン及びITIMドメイン(TIGIT)阻害剤である。TIGITは、Treg、活性化CD4+及びCD8+T細胞、及びNK細胞で発現される。TIGITを遮断することにより、抗PD1療法を受けたマウスにおいて、CD8+T細胞の活性が改善されることが報告されている。目下開発中のI/O剤として、OMP-313M32、BMS-986207、MTIG7192A/RG6058が挙げられる。
【0091】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、B7-H3(CD276)阻害剤である。目下開発中のI/O剤として、MGA271、MGD009(二重親和性再標的化タンパク質)が挙げられる。
【0092】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、T細胞活性化のV-ドメイン含有Ig抑制因子(VISTA)阻害剤である。目下開発中のI/O剤として、JNJ-61610588及びCA-170(小分子薬)が挙げられる。VISTAの免疫チェックポイント阻害は、T細胞増殖及びサイトカイン産生の活性化をもたらすと報告されている。
【0093】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、誘導性T細胞共刺激因子(ICOS)阻害剤である。ICOSは、B7-結合タンパク質のCD28ファミリーにおける受容体であり、主に活性化されたT細胞によって発現される。T細胞活性化及びエフェクター機能を維持すると同時にTreg抑制性活性にも関与することのその二重の役割により、ICOS/ICOS-Lは、免疫腫瘍療法にとって適切な標的となる。目下開発中のI/O剤として、アゴニスト及びアンタゴニスト抗体の両方を含むJTX-2011、BMS-986226、MEDI-570及びGSK3359609が挙げられる。
【0094】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、CD27阻害剤である。CD27は、そのリガンドであるCD70への結合により細胞活性化、増殖、エフェクター機能、及び細胞生存を媒介する細胞内シグナルを誘導するT細胞上の共刺激性分子である。刺激が、T細胞活性化及び抗腫瘍活性をもたらすと報告されている。目下開発中のI/O剤として、CD27のアゴニストであるCDX-1127(バルリルマブ(Varlilumab))が挙げられる。そのリガンドであるCD70を標的とするI/O剤として、ARGX-110、BMS-936561、及びボルセツズマブマホドチンが挙げられる。
【0095】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、グルココルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)阻害剤である。GITRは、Tregで構成的に発現されて、活性化されたCD8+及びCD4+T細胞で誘導される。そのリガンド(GITR-L)への結合が、エフェクターT細胞を刺激する。目下開発中のI/O剤として、TRX518、MEDI1873、GWN323、及びINCAGN01876が挙げられる。更なるバックグラウンドは、Knee,D.A. et al.,Rationale for anti-GITR cancer immunotherapy,EURO.J.CANCER
2016,67,1-10に提供される。
【0096】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、CD47阻害剤である。CD47の過剰発現は、ほとんどの癌で観察されており、悪性細胞による免疫監視からの回避の理由であると考えられる。目下開発中のI/O剤として、Hu5F9-G4、CC-90002、及びTTI-621が挙げられる。更なるバックグラウンドは、Huang,Y. et
al.,Targeting CD47:the achievements and
concerns of current studies on cancer immunotherapy,J.THORAC.DISEASE 2017,9(2),E168-E174に提供される。
【0097】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤である。IDOは、免疫抑制性腫瘍微小環境を創出するトリプトファンを代謝する免疫調節性酵素である。IDOの阻害は、免疫細胞の増殖及び活性化を支持して、トリプトファン代謝産物の免疫抑制効果を相殺する。目下開発中のI/O剤として、BMS-986205及びエパカドスタット、Pf-06840003、GDC-0919、及びNLG802(小分子)が挙げられる。
【0098】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)阻害剤である。この受容体を遮断することにより、NK細胞の活性化、最終的には腫瘍細胞破壊が引き起こされる。目下開発中のI/O剤として、IPH2101、IPH4102、及びリリルマブが挙げられる。
【0099】
或る特定の実施形態において、免疫腫瘍剤は、CD94/NKG2A阻害剤である。CD94/NKG2Aは、HLA-Eを結合する阻害性受容体である。このリガンドは通常、腫瘍細胞上でアップレギュレート及び発現されて、活性化、したがって、腫瘍微小環境においてこの結合を遮断する阻害性I/O剤により、NK及び細胞傷害性T細胞応答が起きることが可能となる。目下開発中のI/O剤として、モナリズマブ(IPH2201)が挙げられる。
キット
本発明は更に、Zn(II)剤、及び幾つかの実施形態において、免疫チェックポイント阻害剤、抗PD-1抗体、又は開示する処置方法を実施するための本明細書中に開示する任意の他の免疫腫瘍剤等のI/O剤を含むキットを企図する。
【0100】
キットは通常、キットの内容物の使用目的を示すラベル及び使用説明書を含む。ラベルは、キット上に、若しくはキットとともに供給されるか、又はそうでなければキットに添付した任意の書面又は記録材料を含む。したがって、本開示は、癌を患う対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)有効用量のZn(II)剤及び(b)Zn(II)剤を使用するための説明書を含む。
【0101】
他の実施形態において、本開示は、併用療法を用いて、癌を患う対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)有効用量のZn(II)剤及び有効用量の免疫腫瘍剤、並びに(b)本明細書中に開示する方法に従って免疫腫瘍剤と組み合わせてZn(I
I)剤を使用するための説明書を含む。
【0102】
他の実施形態において、本開示は、併用療法を用いて、癌を患う対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)有効用量のZn(II)剤及び有効用量の2つの免疫腫瘍剤、並びに(b)本明細書中に開示する方法に従って免疫腫瘍剤と組み合わせてZn(II)剤を使用するための説明書を含む。
【0103】
他の実施形態において、本開示は、癌を患う対象を処置するためのキットを提供し、該キットは、(a)有効用量のZn(II)剤及び有効用量の抗PD-1抗体又はその抗原結合部分、並びに(b)本明細書中に開示する方法のいずれかにおいて抗PD-1抗体と組み合わせてZn(II)剤を使用するための説明書を含む。
【0104】
幾つかの実施形態において、Zn(II)剤及びI/O剤は、単位投薬形態で同時包装され得る。ヒト患者を処置する或る特定の実施形態において、キットは、本明細書中に開示する抗ヒトPD-1抗体、例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、MEDI0680(以前は、AMP-514)、AMP-224、又はBGB-A317を含む。或る特定の実施形態において、キットは、各組合せが別々に本明細書中に含まれるかのように、上述のI/O剤のいずれかの1つ又は複数を含む。
【0105】
本発明の主題は、下記の実施例によって更に説明される。
【実施例0106】
実施例1:Zn(II)剤C004の調製
Zn(II)剤C004(構造に関しては
図1Aを参照、45kDaのγ-PGAの亜鉛塩(コンジュゲートされていない))を、下記の通りに調製及び配合した。塩化ナトリウム、及び水。硫酸亜鉛七水和物及び45kDaのγ-PGA(多分散)を、塩化ナトリウムを含有する水溶液中で組み合わせて、トロメタモール(tromethamol)及び水をその容量に添加して、必要に応じてpHを7.0に調節し、ここで、各構成成分の濃度は、Zn/グルタメートモノマーのモル比1:4.5で、1mg/mLの亜鉛(II)、10mg/mLのγ-PGA、及び1mMトロメタモール、1mM塩化ナトリウムである。
【0107】
実施例2:Zn(II)剤C005Dの調製
Zn(II)剤C005D(構造に関しては
図1Aを参照、フォレート-PEG4-NH2及びcRGDfK-PEG4-NH2にコンジュゲートされた45kDaのγ-PGAの亜鉛塩)を、下記の通りに調製及び配合した。まず、Boc-NH2-PEG4-NH2を、葉酸の尾部カルボキシル基に、EDCカップリング反応を介してカップリングすること、続くTFA脱保護によって、フォレート-PEG4-NH2を調製した。同様に、2HN-PEG4-COOHを、cRGDfKのリジンアミンに、EDCカップリングによってカップリングすることによって、cRGDfK-PEG4-NH2を調製した。次に、完全にプロトン化した45kDaのγ-PGA(多分散)を、フォレート-PEG4-NH2及びcRGDfK-PEG4-NH2に、ワンポットEDCカップリング反応で1:3:3の比でコンジュゲートして、ここで、フォレート及びcRGDfK部分の100%が、γ-PGAに首尾よく結合された。続いて、得られたγ-PGAコンジュゲートを、溶媒交換によって精製し、生理食塩水中で、亜鉛:グルタメートモノマー=1:4.5のモル比で、硫酸亜鉛とともに添加して、pHをおよそ6に調節して、Zn(II)剤C005Dを得た。
【0108】
実施例3:HeLa細胞に対するZn(II)剤の細胞傷害性
HeLaに対する、C004(実施例1を参照)及び種々の分子量のコンジュゲートさ
れていないPGAポリマーを含む類似したZn(II)剤の細胞傷害性を、亜鉛(II)濃度の関数として試験した。具体的な試験条件及び結果を、
図2A~
図2Bに示す。
図2Aでは、Zn(II)イオンの供給源は、硫酸亜鉛又は塩化亜鉛であった。
図2Bでは、Zn:AUTの比は、1:4.5又は1:1であった。
【0109】
HeLa細胞の細胞培養物調製。ATCCのガイドラインに従って、Freshney
R.,CULTURE OF ANIMAL CELLS (6th ed.)vol.346(2010)によって記載されるように、細胞培養物を調製した。簡潔に述べると、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したイーグル最小必須培地(EMEM)を、完全成長培地(CGM)として使用した。37℃及び5%CO2で成長させた新鮮な接着細胞を、0.25%(w/v)トリプシン-EDTA(0.53mM)溶液で完全にすすいで、全ての微量のトリプシン阻害剤を除去した。細胞層分散のために、トリプシン-EDTA溶液3.0mLを、すすいだフラスコに、15分間添加することによって、細胞を剥離及び脱凝集させて、その後、更なる細胞解離のために、CGM 7.0mLを、穏やかにピペッティングして添加した。継代培養用に、又は細胞株実験の調製用に、解離させた細胞懸濁液を、1:4の比で新たな培養容器へ分取して、続いて、37℃でインキュベートした。
【0110】
細胞生存度試験。製造業者の説明書に従って、CCK-8試験を実施した。簡潔に述べると、対象の培養細胞を、96ウェルプレートにおいて、特定の時間、特定の処置剤とともにインキュベートした。目的の条件で、WST-8溶液10μLを、37℃で1時間のインキュベーションのために添加した。次に、細胞生存度定量化のために、460nmで吸光度について、プレートを測定した。
【0111】
図2A~
図2Bに報告する研究は、Zn(II)剤が、試験したポリマー分子量の中間で最大細胞傷害性を示し、また下端と比較して上端ではあまり傷害性を示さないことを示した。また、Zn:GAU比1:4.5の比は、100kDa未満の全てのγ-PGAに関して、一貫して1:1の比の作用物質よりも細胞傷害性が高かった。
【0112】
実施例4:HeLa細胞におけるC004及びC005DのIC50決定。
HeLa細胞におけるC004(実施例1を参照)及びC005D(実施例2を参照)に関するIC50値を決定した。実施例3に記載する試験方法を使用して、結果を
図3A~
図3Bに示す。
【0113】
図3Aに示すように、HeLaに対するC004に関するIC50は、24時間及び48時間で、それぞれ、Zn 15.18μg/mL及びZn 15.30μg/mLであった。
図3Bに示すように、C005Dに関するIC50は、24時間で、Zn 4μg/mLであった。
【0114】
実施例5:細胞死メカニズムの分析
HeLa細胞をin vitroでC004に曝露することにより、6時間後にポリ(ADP-リボース)ポリマー(PARポリマー)の時間及び用量依存的蓄積が誘導され、これは、凝縮した核を示す壊死性細胞の外観と合致した(
図4A及び
図4B)。ヨウ化プロピジウム(PI)及びアネキシン-V-D-634(AnxV)を使用した死のモードのフローサイトメトリー的な特徴付けは、壊死性細胞死の裏付けとなるパターンを示し、それにより、瀕死の細胞は、Zn 22μg/mLのC004での6時間のインキュベーション後に、PI及びAnxVの両方の同時取込みを示し、漏出性の核及び細胞膜を示した(
図4C)。他方で、時間分解乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイは、同じ条件下で24時間後のみ、壊死性漏出を示した(
図4Eを参照)。
【0115】
パータナトスに特徴的であると報告されている事象(Andrabi, S.A. et al.PNAS,vol.111,p.10209-10214(2014)を参照)と合致して、この細胞死は、2時間の処置後に細胞性NAD+及びATPの用量依存的欠乏が先行した(
図4D)。特異的なPARP-1阻害剤PJ34とともにC004を24時間共インキュベートすることが、LDH放出アッセイによって評価した場合に、壊死性死の抑制をもたらした(
図4E)。同様に、
図4Eにも示すように、シクロスポリンA(MPTP形成)、ネクロスタチン-1(RIP1)、3-MA(p62/SQSTM1)、及びピフィスリン-μ(p53及びp62/SQSTM1の二重阻害)を含むパータナトスにおける重要な下流酵素の幾つかの阻害剤はまた、HeLa細胞における壊死性細胞傷害性の抑制をもたらした。それとは反対に、PDTCによるJNK活性化からのp62/SQSTM1のアゴニズムは、IC50壊死性細胞傷害性における変化を引き起こさなかった。最後に、特異的なPARG阻害剤PDD 00017273もまた、壊死性細胞傷害性を抑制し、これは、パータナトス中に細胞傷害性決定因子としてPARP1-PARG NAD+異化サイクルを示唆した。これらの見解により、C004誘発性パータナトスの主要な下流細胞傷害性メカニズムとして、これまで提唱されたRIP1及びp62/SQSTM1同調ネクロプトーシスが集約的に示唆された(
図18)。Goodall,M. L. et al.,Developmental Cell,vol.37,337-349(2016)を参照のこと。
【0116】
実施例6:50個の癌細胞株における細胞生存度に対するZn/γ-PGA剤C004の効果
この研究では、細胞生存度に対するZn(II)剤の潜在的効果を、50個の癌細胞株において検討した。種々の濃度の活性剤とのインキュベーション後に、CellTiter-Glo発光細胞生存度アッセイを使用して、癌細胞株において50%阻害濃度(IC50)を決定した。各細胞株を、活性Zn(II)剤、参照対照としての標準的な化学療法薬、及びビヒクル対照としての培養培地で処置した。
【0117】
この実施例で使用する略号:CTG:CellTiter-Glo、DMSO:ジメチルスルホキシド、FBS:ウシ胎児血清、IC50:50%阻害濃度、ID:アイデンティティ、Lum:発光、PBS:リン酸緩衝生理食塩水、RT:室温。
【0118】
細胞株。細胞株は全て、10%~15%FBSを補充した培地中で、温度37℃で、5%CO2、及び湿度95%で培養した。全ての細胞株に関する参照対照薬物はシスプラチンであり、ゲノム分析に使用した。試験した細胞株、起源の組織を以下で表1に示す:
【0119】
【0120】
材料及び試薬。
一般的な細胞培試薬及びプラスチック。
FBS、(Cat#FND500、ExCell Bio.-20℃で保管)
FBS、(Cat#10091148、Gibco.-20℃で保管)
96-ウェルフラットクリアボトム黒ポリスチレンTC処置マイクロプレート(Cat#3340、Corning)。
【0121】
CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存度アッセイ(Cat#G7572、Promega.-20℃で保管)
基質は、96ウェルプレートにおいて、アッセイ1回につき100μLで1,000回のアッセイにとって十分である。
【0122】
1×100mL CellTiter-Glo(登録商標)緩衝液
1×バイアル CellTiter-Glo(登録商標)基質(凍結乾燥)
試薬調製
a.CellTiter-Glo緩衝液を解凍して、使用前に室温に平衡化する。便宜上、CellTiter-Glo緩衝液を解凍して、使用前に最大48時間室温で保管してもよい。
【0123】
b.凍結乾燥したCellTiter-Glo基質を、使用前に室温に平衡化する。
c.適切な容量(100mL)のCellTiter-Glo緩衝液を、CellTiter-Glo基質を含有するコハクの瓶に移して、凍結乾燥した酵素/基質混合物を再構成する。これにより、CellTiter-Glo試薬が形成される。
【0124】
注釈:CellTiter-Glo緩衝液の瓶の液体容量全体を、CellTiter-Glo基質バイアルに添加し得る。
d.内容物を穏やかにボルテックスすること、内容物を旋回させることによって、又は内容物を反転させることによって混合して、均質な溶液を得る。CellTiter-Glo基質は、1分以内に容易に溶液になるはずである。
【0125】
Zn(II)剤及び参照対照薬物。
Zn(II)剤被験物質は、下記であった:
【0126】
【0127】
化合物のストック溶液を、分取量に分割して、これらは、4℃の冷凍庫で保管した。亜鉛(II)剤C004組成物は、下記であった:
【0128】
【0129】
参照対照薬物は、下記であった:
【0130】
【0131】
機器:EnVision Multi Label Reader 2104-001
0A、Perkin Elmer(USA)、Equip ID:TAREA0020;Countstar、Inno-Alliance Biotech(USA)、Equip ID:BEANA0020;Forma Series II Water Jacket CO2 Incubator、Thermo Scientific(USA)、Equip ID:BEINC0190/BEINC0200/BEINC0220/BEINC0260;Biological safety Cabinet、Thermo Scientific(USA)、Equip ID:BEBSC0170/BEBSC0180/BEBSC0250/BEBSC0270;クリーンベンチ、HDL
Apparatus(中国)、Equip ID:BACLB0390;Biomek
FXP Laboratory Automation Workstation、BECKMAN COULTER(USA)、Equip ID:BESTA0010;倒立顕微鏡、Olympus CKX41SF(日本)、Equip ID:BEMIC0190;Multidrop combi、Thermo Scientific(USA)、Equip ID: BEPFL0010。
【0132】
最大半量阻害濃度IC50決定に関する手順
1.対数増殖期中に細胞を収集し、Count-starを使用して細胞数を計数した。
【0133】
2.各々の培養培地を用いて、細胞濃度を4.44×104個の細胞/mLに調節した。
3.細胞懸濁液90μLを、最終細胞密度4×103個の細胞/ウェルで2つの96ウェルプレート(プレートA及びプレートB)に添加した。(細胞濃度は、データベース又は密度最適化アッセイに従って調節した。)
4a.翌日:T0読取りのプレートに関して:
1)T0読取りのため、培養培地10μLを、プレートAの各ウェルに添加した。
【0134】
2)室温でおよそ30分間、プレート及びその内容物を平衡化した。
3)CellTiter-Glo試薬50μLを各ウェルに添加した。
4)内容物を5分間、オービタルシェーカーで混合して、細胞溶解を誘導した。
【0135】
5)プレートを室温で20分間インキュベートさせて、発光シグナルを安定化した。
6)EnVision Multi Label Readerを使用して、発光(T0)を記録した。
【0136】
4b.試験読取りのプレートに関して。
1)Zn(II)剤被験物質の10倍溶液を調製した。最高作業濃度:2/2.5倍段階希釈で50μg/mL濃度、25μg/mL濃度、10μg/mL濃度、5μg/mL濃度、2.5μg/mL濃度、1μg/mL濃度、0.5μg/mL濃度、0.25μg/mL濃度、及び0μg/mL濃度の9個の用量レベルのZn(II)剤を達成するように培地中50μg/mLの被験物質。
【0137】
2)10倍参照対照溶液シスプラチンを調製した。最高作業濃度:3.16倍段階希釈で100μM濃度、31.6μM濃度、10μM濃度、3.16μM濃度、1μM濃度、316nM濃度、100nM濃度、31.6nM濃度、及び10nM濃度の9個の用量レベルのシスプラチンを達成するように培地中100μM。
【0138】
3)プレートBの各ウェル中に被験物質及び参照対照の両方の10μL(10倍)薬物溶液を分注した(各薬物濃度に関して三重反復)。
4)5%CO2を有する37℃の加湿インキュベーター中で、試験プレートBを96時
間インキュベートした後、CTGアッセイを用いて測定した。
【0139】
5)プレート及びその内容物を室温でおよそ30分間平衡化した。
6)CellTiter-Glo試薬50μLを各ウェルに添加した。
7)内容物をオービタルシェーカーで5分間混合して、細胞溶解を誘導した。
【0140】
8)プレートを室温で20分間インキュベートさせて、発光シグナルを安定化させた。
9)発光を記録した。
データ分析
10)データを、GraphPad Prism 5.0を使用してグラフで表示した。
【0141】
11)絶対IC50(EC50)を算出するために、非線形回帰モデルを使用して用量-応答曲線をシグモイド用量応答とフィットさせた。生存率を算出するための式を以下に示し、GraphPad Prism 5.0によって作成した用量-応答曲線に従って、絶対IC50(EC50)を算出した。
【0142】
12)生存率(%)=(被験物質の発光-培地対照の発光)/(未処置の発光-培地対照の発光)×100%。
結果。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
各細胞株に関する用量応答曲線を、
図5A~
図5Iに示す。
実施例7:遺伝的不安定性突然変異(GIM)分析
C004のパータナトスメカニズムを考慮すると、遺伝的不安定性突然変異は、より高いPAR化能を付与することによって、C004に対する癌感受性を高めるはずである。したがって、スクリーニング結果を使用して、相同組換え修復、ヌクレオチド除去修復、直接的な反転、塩基除去修復、ミスマッチ修復、DNA損傷シグナル、及び他の関連機能を取り囲む単一突然変異効果の分析を試験した。細胞株に集積されたゲノム情報の品質を保証すること、及びそれらの生物学的意義の有意義な解釈のために、シスプラチンデータを、陽性対照として使用し、シスプラチンデータは、MSH2mtに対するシスプラチン耐性、BRCA1mtに対する感受性(
図8を参照)、PARGmtによって付与されるアポトーシス耐性、ATM及びBRCA1等のほとんどのDNA修復遺伝子の組合せ間での多くの合成致死性の例(
図10F)、及びBRCA1WTを伴うCREBBmt+KR
ASmtに対する耐性(
図10D)の関連を含んでいた。C004のIC50分布に対する同じゲノム情報の適用により、PARP1、PARP2、TP53、MGMT、XRCC1、ERCC1、ERCC4、ERCC6、RFC1、MLH1、PMS2、ATM、ATR、BRCA1、BRCA2、PAXIP1及びWRNを含む試験したほとんどのDNA修復遺伝子の突然変異に対する薬物感受性の関連が実証された。JAK1mt、CREBBPmt、NEIL3mt、及びNFKB1mtもまた、感受性の増加と関連付けられた(
図8及び
図10F~
図10L)。突然変異誘発の最も普及しているドライバーの1つであるAPOBEC3B過剰発現の効果を研究することによる、突然変異的負荷に対する増強されたC004の有効性の仮説に対する更なる実験もまた、そのssRNAコピー数と、C004のIC50値分布との間の逆相関を示すことによって一貫した結果を示した(
図11A~
図11D)。まとめると、これらの観察は全て、C004の細胞傷害性が、パータナトスメカニズムに関与するという決定を支持する。
【0147】
更に、このメカニズムの裏付けとして、PARG(PAPR1-PARG NAD+異化サイクル)、NEIL1又はNEIL2(塩基除去修復の開始)等のNAD+欠乏に対する効率的なPARP1の活性に関する必須パートナーにおける突然変異は、弱いが、一貫した許容度で観察された(
図8)のに対して、それらの組合せは、C004有効性の著しい減弱に至った(
図10B~
図10C及び
図10J~
図10K)。シスプラチンに対して強力な耐性を示すCREBBPmt-KRASmt-BRCA1WTの組合せもまた、より劣るが、C004に対する著しい耐性と関連付けられ、潜在的な耐性メカニズムとしての突然変異コンボを認めた。最後に、PD-L1チェックポイント阻害剤(JAK1 24)、アポトーシス(TP53、BAK1)、並びに各種抗腫瘍薬に対する耐性及び多剤耐性(TP53 25、26、MLH1、MSH2、PMS2 27及びNFKB1)の発現に関する既知の突然変異的ドライバーの検査により、C004細胞傷害性が、重要ではなく(BAK1、MSH2)、これらの薬物耐性ドライバー突然変異に対してせいぜい活性がある(JAK1、TP53、MLH1、PMS2、NFKB1)ことが示された(
図8、
図10)。
【0148】
実施例6に記載する50個の細胞株スクリーニング試験(OmniScreen(商標))後に、OncoExpress(商標)データベース(Crown Biosciences Inc.、サンタクララ、データ受入日2018年5月18日~2018年5月30日)を参考にすることで、各細胞株を、下記の遺伝子における突然変異の存在に関して分類した(有り又は無し)。
【0149】
・MLH1(欠乏性ミスマッチ修復-dMMR-突然変異群の一部)
・MSH2(欠乏性ミスマッチ修復-dMMR-突然変異群の一部)
・PMS2(欠乏性ミスマッチ修復-dMMR-突然変異群の一部)
・PARP1
・BRCA1(BRCA1/BRCA2突然変異群の一部)
・BRCA2(BRCA1/BRCA2突然変異群の一部)
・TP53
これらの遺伝子はそれぞれ、重要なDNA修復酵素の幾つかをコードし、したがって、これらの遺伝子のいずれか1つ又は組合せにおいて突然変異を保有する細胞株が、遺伝的不安定性を有すると予想され得る。
【0150】
Zn/γ-PGA及びシスプラチンIC50値、並びに選択した50個の細胞株にわたる細胞株遺伝子突然変異データの総合データ表を
図6に示す。続いて、Excel(登録商標)ソフトウェア(Microsoft、シアトル)を使用して、総合データを分析した。簡潔に述べると、或る特定の突然変異を保有する細胞株の分類に際して、また各群におけるIC50分布の更なる分析において、Excel(登録商標)ソフトウェアのソー
トアルゴリズムを使用した。
【0151】
次に、或る特定の遺伝子突然変異を共有する細胞株群間のIC50分布を、統計学的有意性に関して分析した。
統計分析は、JMP 13(SAS Institute Inc.、ケーリー、NC、USA)又はOrigin 9(Origin Lab Corp.、ノーザンプトン、MA、USA)を使用して実施した。データは全て、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表し、マン・ホイットニーU検定又は分散分析(ANOVA)を使用して、統計学的有意性に関して試験した。0.05未満のp値を、統計学的に有意であると解釈した。
【0152】
結果及び分析。
細胞株パネル構造を層別化して、50個の細胞株には、30個の血液癌(白血病細胞株17個及びリンパ腫細胞株13個)及び乳癌細胞株(3個)、子宮頸癌細胞株(1個)、結腸直腸癌細胞株(1個)、肝臓癌細胞株(4個)、肺癌細胞株(4個)、卵巣癌細胞株(2個)、膵臓癌細胞株(2個)、前立腺癌細胞株(2個)、及び子宮癌細胞株(1個)を含む固形腫瘍癌20個が含まれた。
【0153】
広域スペクトル化学療法であるシスプラチンに関する現在の処置の至適基準(gold
standard)に対して、Zn(II)剤に関して得られる結果を比較して、シスプラチンに関する39個のみの(50個のうちの)細胞株における99%を超える根絶、及び45個の細胞株における97%を超える根絶に対して、Zn(II)剤は、48個の(50個のうちの)細胞株における99%を超える根絶、及び50個の細胞株における97%を超える根絶を示した。逆に、シスプラチンは、2個の細胞株において90%未満の根絶という乏しい応答を示した一方で、Zn(II)剤を用いた場合、細胞株はいずれも、乏しい応答を示さなかった。
【0154】
Zn(II)剤を用いた処置に関する奏効率100%及び低いZ値の広がり(
図6を参照)は、様々な癌タイプ全てにわたってZn(II)剤に関する広範囲の適用性を実証する。特に、データにより、Zn(II)剤が、下記DNA修復遺伝子:dMMR(MLH1/MSH2/PMS2)、PARP1、BRCA1/BRCA2、及びTP53の1つ又は複数における突然変異を宿主する(host)癌細胞型に対して、現在認可されている処置の至適基準よりも有効であることが実証される。相当部分の癌細胞が、これらの遺伝子の1つ又は複数において突然変異を保有し(推定は、癌全てのおよそ90%~95%である)、したがって、本明細書中に開示する方法が、癌に対する広範囲の治療法であることを示す。
【0155】
血液癌対固形癌に関する細胞株の全組に関するデータ分析、及び突然変異によって層別化した場合の細胞株に関するデータ分析を、
図9A~
図9F及び
図10M~
図10Pに示す。
【0156】
実施例8:50個の細胞株スクリーンに基づくバイオマーカーの発見
発現及び突然変異は、RNAseqデータに由来した。50個の細胞株のRNAseq生データは、CCLEデータベース及びSRAデータベース(HeLa細胞株に関してはSRR6799773)からダウンロードした。遺伝子コピー数の結果は、CCLEウェブサイトからダウンロードした。ドライバー突然変異は、the Cancer Genome Interpreterデータベース(www.cancergenomeinterpreter.org/home)で予測され、ここでは、ドライバー突然変異のみを、突然変異分析に使用した。欠失/増幅/突然変異した遺伝子と、野生型細胞株との間で平均log2(IC50)を比較するのに、また重要な遺伝子を定義する際にウェル
チのt検定を使用した。スピアマン相関検定を使用して、遺伝子発現レベルと、log2(IC50)との間の相関を確認した。Rのボルタパッケージを使用して、重要な遺伝子からシグネチャー遺伝子を選択した。形式LPS(X)=ΣajXjの各細胞株に関する線形予測因子スコア(LPS)を算出した。式中、Xjは、遺伝子jの遺伝子発現を表し、ajは、感受性細胞株と、非感受性細胞株との間のt-検定によって作成されるt統計学である。感受性群及び非感受性群におけるLPS分布の平均値及び分散を推定し、
【0157】
【0158】
となるようにベイズの定理を適用することによって、どちらかの群(感受性又は非感受性)における細胞株の尤度が推定された。
式中、Φ(x;μ、σ2)は、平均値μ及び分散σ2での正規の密度関数を表し、μ1、σ1
2、μ2、σ2
2は、それぞれ、群1及び群2内のLPSの観察される平均値及び分散である。統計分析は全て、Rを用いて行った。
【0159】
RNA配列ベースのコンピューター処理バイオインフォマティクスアプローチによるスクリーニングデータを使用した初期バイオマーカー検索により、C004感受性に関する潜在的なバイオマーカーとしてADAM6
del、CREBBP
mt及びPIK3CA
WTを得た(
図12A~
図12C)。
【0160】
実施例9:Zn(II)剤のin vivo試験。
Zn(II)剤C004:Zn最大2.5mg/kg/日の用量でC004の毎日の静脈内注射を用いて、6日反復毒性試験を行った。BALB/cマウスを保有するCT26腫瘍における毒性は観察されなかったのに対して、有意な治療活性(p=0.072)は記録されなかった(
図13)。
【0161】
Zn(II)剤C005D:Zn 1mg/kg/日又はZn 2mg/kg/日の毎日の注射用量に関して、保有するNSGマウスの免疫不全in vivoモデルにおけるヒト患者駆動型肝細胞癌(HCC PDX-NSG)に対する有意な治療活性が観察された(
*p<0.05)(
図14A)。更に、Zn 2mg/kg/日のヒト化免疫マウス(HCC-PDX-HuMice)におけるHCC PDXに対してC005Dを投与することにより、20日の処置期間の終わりに、著しい腫瘍抑制効果が得られ、2匹の動物では完全な腫瘍の退縮が観察された(
図14B)。
【0162】
実施例10:単剤療法及び免疫腫瘍剤併用療法並びに免疫療法相互作用。
CT26マウス癌を保有する免疫担当BALB/cマウスを、14日の処置、続く10日の観察のプロトコルで、PD-1阻害剤、aPD1(5mg/kg、週に1回、静脈内)又はC005D(Zn 2mg/kg、毎日、静脈内)の単剤療法アーム、及びより少ない投与量のC005D(Zn 0.5mg/kgのC005D、毎日、静脈内+5mg/kgのaPD1、週に1回、静脈内)を使用する併用療法アームで処置した。プロトコルの概要、各アームに関する腫瘍成長動態及びエンドポイントの腫瘍サイズを
図15に提供する。
【0163】
aPD1(5mg/Kg、週に1回、静脈内)又はC005D(Zn 2mg/Kg、毎日、静脈内)の単剤療法アームはいずれも、統計学的に有意な腫瘍成長抑制効果を生じなかった。しかしながら、末梢血試料及び収集した腫瘍からの終点免疫特徴付けにより、
2つの単剤療法アーム間で免疫性の明白な差が明らかとなった。免疫特徴付けに関するゲーティング戦略を
図16に示す。具体的には、aPD1単剤療法の有意な(
*p<0.05)免疫刺激性効果は、腫瘍内空間に限定され、それにより、NK細胞、Ly6C+単球(MN)、樹状細胞、並びに全ての研究したCD4+T細胞サブセット及びCD8+T細胞サブセットが上昇した。(
図17A~
図17Bを参照)。他方で、C005D単剤療法は、末梢血区画、及び程度は劣るが、腫瘍内空間の両方において、免疫性の著しい上昇をもたらした。
【0164】
しかしながら、併用処置アームは、いずれかの単剤療法アームよりも、末梢区画及び腫瘍内区画の両方において、免疫性のより広汎性で有意な(*p<0.05、**p<0.01)増大をもたらした。併用アームに特異的に、メモリー細胞EM CD8+T細胞及びCM CD8+T細胞の腫瘍内レベルは、マウスの腫瘍負荷に対して逆相関を示したのに対して、完全な腫瘍退縮の2つの事例もまた、同じ群で認められた。
【0165】
試行の結果により、Zn(II)剤併用療法は、免疫刺激及びPD1遮断との相乗作用をもたらすことが示される。更に、これらの結果により、aPD1及びC005Dの併用が、腫瘍クリアランスに必要とされる特異的CD8+T細胞メモリーの形成を加速し得ることが示唆される。
【0166】
Zn(II)剤C005Dが投与される場合の腫瘍細胞で見られると考えられる事象の模式図を
図19に示す。Zn(II)剤から放出される亜鉛(II)イオンは、PARP-1を過剰に駆動する(overdrive)と同時にカスパーゼ-3からのPARP-1防御を付与することによって、PARポリマー蓄積を誘発する。続いて、PARポリマー産生及び蓄積により、AIF媒介性核壊死、MLKL媒介性ミトコンドリア壊死、及びMPTP媒介性ミトコンドリア壊死を含む多重壊死死滅モードに至ることが可能になる。図の右側に続いて、PARP-1オーバードライブ由来の壊死は、DAMP放出を介してCD8+T細胞殺腫瘍活性をプライミングすることによって、二次的な免疫療法効果を付与する。表示した事象は、本明細書中の開示と一致するが、本発明の組成物、配合物、及び処置方法は、図に取り入れた理論によって拘束又は限定されない。
【0167】
実施例11:ヒト化マウス実験及び腫瘍浸潤性リンパ球分析における肝細胞癌患者由来の異種移植片。
実験薬物。
【0168】
ペムブロリズマブ25mg/mL(Keytruda(登録商標)、Merck(登録商標)KGa)は、Merck(登録商標)から購入した。等張性硫酸亜鉛ガンマ-ポリグルタメート溶液を、1mg/mLの元素亜鉛濃度及び10mg/mLのガンマ-ポリグルタメート濃度で、Tris緩衝液(1mM)を使用してpH7.0で調製した。
【0169】
NSG及びHumice。
マウスを用いた操作及び手順は全て、Agency for Science,Technology and Research(A*STAR)Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によって認可された。提供する食餌は、照射済のTEKLAD GLOBAL 18% Protein Rodent Diet(2918)であった。マウスは、滅菌環境に収容して、BSL2フード下のみで接近した。マウスには、食物を与え、水を付与して、健康に関して毎日モニタリングし、ケージは、週に1回交換した。NSGマウスは、The Jackson Laboratoryから購入し、A*STAR、シンガポールのthe Biological Resource Centre(BRC)にある特定の病原体を含まない施設で繁殖させた。1日齢~3日齢のNSGの仔に、1.1Gyに等しい
55秒の曝露で照射して、肝内注射によって、1×105個のCD34+ヒト胎児肝臓細胞を移植した。マウスを、移植の8週後に出血させて、ヒト免疫細胞再構成の画分を決定した。再構成は、[%hCD45+/(%hCD45+%mCD45+)]によって算出した。20%~50%のヒトCD45+細胞で再構成させた8週齢~10週齢のヒト化マウスを生着に使用した。
【0170】
HCC-PDX腫瘍維持及び異種移植片。
in vivoでのHCC-PDX皮下ヒト化モデル樹立のために、患者HCC腫瘍を、HCC外科的検体から収集した。手術前に、患者全てに、患者のHCC試料が研究に使用されるのに書面によるインフォームドコンセントを提出した。適切な臨床組織を採取した後、HCCの残りは、PDXが樹立されるところまで、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトアビジンを含有するDMEMで構成される培地を用いて氷上に移す。4時間以内に、HCC断片を、滅菌手術器具を使用して約3mm×3mm×3mm片に切断した。マウスに麻酔をして、皮下配置のために剃毛して、鉗子を使用して皮膚を持ち上げて、腹膜侵害を確実になくしたら、ハサミで皮膚に小さな1cmの切開を作った。皮下を探って、ポケットを創出し、組織をポケット内部に置いて、皮膚を、接着剤、縫合又はクリップで閉じる。
【0171】
NSGマウスにおいてHCC-PDX腫瘍を維持するために、第一世代のマウス(P1)から得られたHCCを、次のコホートのマウス(P2及びP3)に順次移植した。樹立されたPDXから収集したHCCを、層流キャビネットにおいて滅菌手術器具を使用して約3mm3×3mm3×3mm3片に切断した。片を、95%FCS/5%DMSO1.5mLを含有する滅菌クライオチューブに移した。クライオチューブをCoolCell溶液(Biocision)に入れて、-80℃の冷凍庫に一晩置き、翌日、液体窒素保管に移した。解凍するために、融解するまでクライオチューブを水浴(37℃)で保持した。
【0172】
腫瘍サイズの決定
腫瘍体積は、ノギスを使用して二次元(長さ及び幅)で測定し、腫瘍体積は、式を使用して算出した。腫瘍サイズ=(長さ2×幅)×1/2。
【0173】
血液、脾臓、骨髄及びHCC-PDX腫瘍からの白血球の単離。
血液150μl~200μlを、頬の出血によりEDTAカリウムMiniCollect(登録商標)チューブ(Greiner bio-one、450475)中に収集した。処理及びデータ収集に先立って、CountBright(商標)Absolute Counting Beads(ThermoFisher)20μlと混合した血液30μlを、96ウェルV底プレートに室温で蒔いた。新鮮な脾臓をマウスから切除して、氷上でPBS中に入れた。結合組織のみが残されるまで、シリンジプランジャーを使用して、100μmの細胞濾過器(Falcon)に通して脾臓を粉砕する。骨髄細胞単離に関しては、脛骨、大腿骨、臀部及び脊椎をマウスから切断した。清潔な骨を、培地(PBS+2%FCS+2mM EDTA)中で乳鉢及び乳棒を用いて粉砕した。各マウスから得られた細胞混合物は、別々に保持され、100μmの細胞濾過器(Falcon)に通して濾過した。試料は全て、収集の1時間以内に処理した。HCCからTILを単離するために、脂肪及び結合組織を切り落とした後に、腫瘍を1mm2~2mm2断片に切り、gentleMACS(商標)Dissociator(Miltenyi Biotec)を使用して、ヒト腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)で脱凝集させた。細胞懸濁液を、100μmの細胞濾過器(Falcon)に通して濾過した。細胞懸濁液を、不連続な40%Percoll(登録商標)Density Gradient Media(GE Healthcare)、続く80%Percoll(登録商標)Density Gradient Media(GE Healthcare)上
に重ねた。白血球は、40%Percollと、80%Percollとの間の界面に位置する。続いて、濃縮されたTILをD-PBS、1%BSAで洗浄した後、記載するように処理した。
【0174】
フローサイトメトリー。
血液、脾臓、骨髄及び腫瘍からの細胞混合物を、塩化アンモニウム-カリウム(ACK)溶解緩衝液(Life Technologies)中に懸濁させて、穏やかに混合しながら室温で10分間インキュベートし、混入している赤血球(RBC)を溶解させた。表面染色に関して、白血球を蛍光活性化細胞分類(FACS)緩衝液[リン酸緩衝生理食塩水(PBS)+2%BSA+1mM EDTA+0.1%アジ化ナトリウム]中で二回洗浄して、Fcブロッキング試薬(Miltenyi Biotec)とともにインキュベートして、直接コンジュゲートされた抗体で染色した。細胞内染色に関して、血液白血球は、上述するように表面マーカーで標識した後、Transcription Factor Buffer Set(BD Pharmingen(商標))で固定及び維持した(perm)。5個の抗体パネルをこの研究に使用した。ヒトT細胞パネル(15色):hCD4-BUV395、hCD8-BUV373、hCD183-BV421、hCD197-BV510、hCD25-BV605、hCD196-BV650、hCD38-BV711、hCD45RO-BV785、hCD45RA-FITC、hCD127-PE、hCD194-PE-CF594、hCD3-PERCP5.5、hCD185-PE-CY7、hCCR10-APC及びhHLA-DRAPC-CY7。ヒト非T細胞パネル(15色):hCD45-BUV395、hCD19-BUV373、hCD56-BV421、hIgD-BV510、hCD11c-BV605、hCD27-BV650、hCD38-BV711、hCD16BV785、hCD123-FITC、hCD20-PE、hCD24-PE-CF594、hCD66b-PERCP5.5、hCD3-PE-CY7、hCD14-APC及びhHLA-DR-APC-CY7。ヒトTex細胞パネル(15色):hCD4-BUV395、hCD8-BUV373、hCD272-BV421、hCD197-BV510、hKLRG-1-BV605、hCD28-BV650、hCD279-BV711、hCD366-BV785、hCD45RA-FITC、hCD57-PE、hCD152-PE-CF594、hCD160-PERCP5.5、hTIGIT-PE-CY7、hCD223-APC及びhCD244-APC-CY7。ヒトTc細胞パネル(11色):hCD4-BUV395、hCD8-BUV373、Granzyme B-BV421、hCD197BV510、hIFN-γ-BV605、hTNF-α-BV650、hCD3-BV785、hCD45RA-FITC、グラニュリシン-PE、グランザイムA-PERCP5.5、パーフォリン-APC及びhIL-2-APC-CY7。TAM及びMDSCパネル(13色):hCD45-BUV395、hCD11b-BV421、hCD86-BV605、hCD15-BV650、hCD204-BV711、hCD16-BV785、hCD33-FITC、系譜(hCD3、hCD19及びhCD56)-PE、hCD68-PE-CF594、hCD163-PERCP5.5、hCD124-PE-CY7、hCD14-APC及びhHLA-DR-APC-CY7。DAPI(Life Technologies)の添加で、死滅細胞の排除を行った。
【0175】
ヒト多重サイトカイン分析。
BiolegendのLEGENDplex(商標)ヒトThサイトカインパネル(13重)アレイキット、ヒトサイトカインパネル2(13重)アレイキット及びヒトCD8/NKパネルアッセイキット(13重)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、血漿サイトカインを分析した。LSR IIフローサイトメーターでデータを収集して、LEGENDplex(商標)ソフトウェアバーション7.0(Biolegend)を使用して分析した。
【0176】
対照及び実験薬物処置。
HCC-PDX異種移植片が、ヒト化NSGマウスで適切な腫瘍体積100mm3で樹立されたら、対照及び実験薬物処置を開始した。腫瘍体積は、研究の終結(最初の処置の21日後[dpf])まで2日毎に測定した。処置スケジュールは、下記の通りであった。
【0177】
・生理食塩水処置(対照群):毎日、尾静脈により生理食塩水100μLを注射。
・ペムブロリズマブのみ(Keytruda群):0dpfのみに尾静脈により5mg/kgでボーラス注射。
【0178】
・XYLONIX Zn-γPGA処置(Xylonix群):尾静脈によりZn 2mg/Kg/日の用量で毎日注射。
・ペムブロリズマブ+Xylonix(コンボ群):上記2つの処置レジメンの組合せ。
【0179】
統計分析
統計分析は、JMP 13(SAS Institute Inc.、ケーリー、NC、USA)又はOrigin 9(Origin Lab Corp.、ノーザンプトン、MA、USA)を使用して実施した。データは全て、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表し、マン・ホイットニーU検定又は分散分析(ANOVA)を使用して、統計学的有意性に関して試験した。0.05未満のp値を、統計学的に有意であると解釈した。
【0180】
結果及び分析。
成長動態研究は、生理食塩水、ペムブロリズマブモノ(開始時にボーラス)、又はペムブロリズマブとのその組合せよりも、Zn-γPGAモノ(毎日静脈内)の優れた抗腫瘍有効性を明らかに示した。TIL分析の見解は、Zn-γPGA単剤療法が、CD4+T細胞及びCD8+T細胞の両方を刺激することを示すことによって成長動態を支持したのに対して、ペムブロリズマブモノ又はコンボの有効性は、専らCD8+T細胞に依存した。
【0181】
総腫瘍浸潤性白血球(TIL)分析を
図17C~
図17Gに示す。下記式を使用して算出した免疫細胞活性指数は、
図17F及び
図17Gにおける各種免疫細胞型に関して示される。
【0182】
【0183】
患者由来の異種移植片は、原発性腫瘍の遺伝子パターンを忠実に保存することが知られており、研究により、本明細書中に示すタイプのスクリーニング研究が、患者の結末と相関し、したがって、モデルにより、臨床上の利益を有する処置が実証されることが示された。
【0184】
下記の実施例は、Zn(II)塩及びガンマ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)又はアルファ-グルタミン酸(α-PGA)のいずれかから調製されるZn(II)剤を示す。
実施例12:未結合の過剰な亜鉛を除去するためのリン酸沈殿方法を使用したpH7.0でのZn/γ-PGAの調製及び特徴付け。
【0185】
Zn/γ-PGAを調製するために、PGA(分子量50,000Da)55mgを、10mM ZnSO4を含有する10mM MES緩衝液、pH7.0 5mL中に室温で溶解し、続いて、氷上に置きながら10分間、超音波処理した。次に、200mMリン酸緩衝液、pH7.0 0.5mLをこの溶液に添加して、遊離亜鉛イオンを沈殿させて、混合物を、0.2μmのシリンジ滅菌フィルターに通して濾過した。ICP-MSを使用して、また4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノールアッセイによって、亜鉛含有量を測定した。最終的なストックZn/γ-PGAは、1%(wt/vol)PGA及び400μg/mLの結合亜鉛イオンを含有した。ストックZn/γ-PGA溶液は、投与当日に新鮮な状態で調製した。
【0186】
実施例13:未結合の過剰な亜鉛を除去するための透析方法を使用したpH7.0でのZn/γ-PGAの調製及び特徴付け。
ZnPGAを調製するために、PGA(分子量50,000Da)55mgを、10mM ZnSO4を含有する10mM MES緩衝液、pH7.0 5mL中に室温で溶解し、続いて、氷上に置きながら10分間、超音波処理した。次に、溶液を10mM MES、pH7.0 1Lに対して氷上で2時間、連続して3回、6時間にわたって総計3倍容量で透析した。回収した溶液を、0.2μmのシリンジ滅菌フィルターに通して濾過した。ICP-MSを使用して、また4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノールアッセイによって、亜鉛含有量を測定した。最終的なストックZn/γ-PGAは、0.9%(wt/vol)PGA及び380μg/mLの結合亜鉛イオンを含有した。ストックZn/γ-PGA溶液は、投与当日に新鮮な状態で調製した。
【0187】
実施例14:液体配合物。
例えば注射に適した液体配合物の例示的な実施形態の組成物は、亜鉛(II)塩、γ-PGA、塩化ナトリウム、及び水を含む。組成物は、硫酸亜鉛七水和物、γ-PGA(カリウム塩、100kDa以下)、塩化ナトリウムを組み合わせることと、その容量に水を添加することとによって調製され、ここで、各構成成分の濃度は、1mg/mLの亜鉛(II)、10mg/mLのγ-PGA、及び6.5mg/mLの塩化ナトリウムである。およそ276mOsm/kgの浸透圧及びpH5.68の得られた組成物は、ヒト患者における注射に適している。
【0188】
実施例15:γ-ポリグルタミン酸-亜鉛液体組成物。
或る実施形態による本発明を実施するのに有用な組成物を表3に示す。組成物は、ワックスでコーティングされた粒子を含む液体懸濁液配合物として100g当たりZn(Zn2+イオン)0.68mgを提供する。配合物を調製する方法は、表に従う。この組成物は、対象となる本発明に有用な多くの組成物の1つを単に示すに過ぎない。
【0189】
【0190】
A.コーティングされたZn/γ-PGAミクロスフェア(cZPM)の調製。スクロース(5%w/v)10g、γ-PGA 45mg、及び硫酸亜鉛七水和物19.79mg(元素Znとしては4.5mg)を含有する水200mLを調製して、凍結乾燥させた。次に、得られた粉末を、最大5%のコンスターチを含有する微細スクロースと1:4の比で研和(triturate)して、50番のU.S.標準ステンレススチールふるい(48メッシュ)に通して圧力をかけた。続いて、この粉末を、400mLのビーカー中で白色パラフィン油200mL中に懸濁させた。ハイトルクスターラーを装着した44mmのポリエチレンの3枚刃パドル(Type RXR1、Caframo、ワイアトン、オンタリオ州)を用いて260rpmで攪拌することによって、混合物を分散させた。懸濁液に、アセトン-95%エタノール(9:1)中の10%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース-フタレート(HPMC-P)20mLを添加した。攪拌を5分間続けて、それによりミクロスフェアが生じ、続いて、クロロホルム75mLを添加した。懸濁培地をデカントし、ミクロスフェアをクロロホルム75mL中に手短に再懸濁させて、外気温で風乾した。乾燥時に、ミクロスフェアをカルナウバワックスでコーティングした。具体的には、カルナウバワックス1gを、白色パラフィン油200mL中に70℃で溶解させて、45℃未満に冷却した。この冷却したワックス-パラフィン溶液に、調製したミクロスフェアを添加して、一定に攪拌しながら15分間懸濁させた。次に、ワックス溶液をデカントして、ミクロスフェアを濾紙上に収集して、過剰なワックス溶液を吸収させて、コーティングされたZn/γ-PGAミクロスフェア(cZPM)を得た。
【0191】
B.コーティングされたZn/γ-PGAミクロスフェア(cZPM)の液体懸濁液溶液の調製。下記構成成分:キサンタンガム(例えば、懸濁用ポリマーとして)0.3g、グアーガム(例えば、粘性剤として)0.3g、キシリトール(例えば、甘味料として)10g、クエン酸緩衝液(例えば、緩衝液として)0.5g、リモネン(例えば、香味料として)0.1g、ソルビン酸カリウム(例えば、防腐剤として)0.025gを水78.7mL中に溶解した。水溶液のpHをpH4.5に調節した後、cZPM 10gを水溶液中に懸濁させて、cZPM液体懸濁液を得た。
【0192】
実施例16;γ-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物。
或る実施形態による本発明を実施するのに有用な組成物を表4に示す。組成物は、錠剤1個当たりZn(Zn2+イオン)25mgを提供する。錠剤を調製する方法は、表に従う。この組成物は、対象となる本発明に有用な多くの組成物の1つを単に示すに過ぎない。
【0193】
【0194】
表2に示す組成物を有するコーティングされた錠剤は、湿式造粒技法を使用して調製され得る。まず、硫酸亜鉛及びγ-ポリグルタミン酸を乾燥状態で一緒に混合する。微結晶セルロース、デンプン、及び二酸化ケイ素を更に添加して、乾燥構成成分を全て、一緒に混合する。混合した構成成分を造粒機に移して、適切な量のエタノール水を添加して、造粒を実行する。得られた造粒混合物を50℃~70℃で乾燥させて、約5%未満の含水量を有する造粒組成物を得る。ステアリン酸マグネシウムを造粒組成物に添加して、造粒組成物と混合する。得られた混合物を錠剤へと圧縮する。最終的に、当業者に既知であるように、標準的な技法を使用して、錠剤を酢酸フタル酸セルロースでコーティングする。
【0195】
実施例17;γ-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物。
或る実施形態による本発明を実施するのに有用な組成物を表5に示す。組成物は、錠剤1個当たりZn(Zn2+イオン)30mgを提供する。錠剤を調製する方法は、表に従う。この組成物は、対象となる本発明に有用な多くの組成物の1つを単に示すに過ぎない。
【0196】
【0197】
表3に示す組成物を有するコーティングされた錠剤は、下記の通りに調製され得る。まず、硫酸亜鉛、γ-ポリグルタミン酸、微結晶セルロース,HPMC-P(ヒドロキシメチルセルロースフタレート)、マルトデキストリン、及びカルボキシメチルセルロース-カルシウムを乾燥状態で一緒に混合した。混合した構成成分を造粒機に移して、適切な量の70%エタノール水を添加して、湿式造粒を実行した。得られた造粒混合物を最大約60℃で乾燥させて、約3%未満のLOD(乾燥時の損失)を有する造粒組成物を得た。シリカ(例えば、Aerosil(登録商標))及びステアリン酸マグネシウムを造粒組成物に添加して、造粒組成物と混合した。得られた混合物を錠剤へと圧縮した。当業者に既知であるように、標準的な技法を使用して、錠剤を、まずHPMC-Pのイソプロピルアルコール溶液を使用してコーティングして、続いて、第2のステップで、HPMCの水溶液を使用してコーティングした。
【0198】
実施例18:未結合の過剰な亜鉛を除去するためのリン酸沈殿方法を使用したpH7.0でのZn/α-PGAの調製及び特徴付け。
Zn/α-PGAを調製するために、α-PGA、ナトリウム塩、平均分子量60kDa(単分散)(Alamanda Polymers、ハンツビル、AL)55mgを、10mM ZnSO4を含有する10mM MES緩衝液、pH7.0 5mL中に室温で溶解し、続いて、氷上に置きながら10分間、超音波処理する。次に、200mMリン酸緩衝液、pH7.0 0.5mLをこの溶液に添加して、遊離亜鉛イオンを沈殿させて、混合物を、0.2μmのシリンジ滅菌フィルターに通して濾過する。ICP-MSを使用して、また4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノールアッセイによって、亜鉛含有量を測定する。例えば1%(wt/vol)PGA及び400μg/mLの結合亜鉛イオンを含有するZn/α-PGAのストック溶液は、経口投与用に調製及び使用され得る。
【0199】
実施例19:未結合の過剰な亜鉛を除去するための透析方法を使用したpH7.0でのZn/α-PGAの調製及び特徴付け。
Zn/α-PGAを調製するために、α-PGA55mg、ナトリウム塩、平均分子量60kDa(単分散)(Alamanda Polymers、ハンツビル、AL)を、10mM ZnSO4を含有する10mM MES緩衝液、pH7.0 5mL中に室温で溶解し、続いて、氷上に置きながら10分間、超音波処理する。次に、溶液を10mM
MES、pH7.0 1Lに対して氷上で2時間、連続して3回、6時間にわたって総計3倍容量で透析する。回収した溶液は、0.2μmのシリンジ滅菌フィルターに通して濾過する。ICP-MSを使用して、また4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノールアッセイによって、亜鉛含有量を測定する。例えば1%(wt/vol)PGA及び400μg/mLの結合亜鉛イオンを含有するZn/α-PGAのストック溶液は、経口投与用に調製及び使用され得る。
【0200】
実施例20:液体配合物。
例えば注射に適した液体配合物の例示的な実施形態の組成物は、亜鉛(II)塩、α-PGA、塩化ナトリウム、及び水を含む。組成物は、硫酸亜鉛七水和物、α-PGAナトリウム塩、平均分子量60kDa(単分散)(Alamanda Polymers、ハンツビル、AL)、塩化ナトリウムを組み合わせることと、その容量に水を添加することとによって調製され、ここで、各構成成分の濃度は、1mg/mLの亜鉛(II)、10mg/mLのα-PGA、及び6.5mg/mLの塩化ナトリウムである。およそ276mOsm/kgの浸透圧及びpH5.68の得られた組成物は、ヒト患者における注射に適している。
【0201】
実施例21:α-ポリグルタミン酸-亜鉛液体組成物。
或る実施形態による本発明を実施するのに有用な組成物を表6に示す。組成物は、ワックスでコーティングされた粒子を含む液体懸濁液配合物として、100g当たりZn(Zn2+イオン)0.68mgを提供する。配合物を調製する方法は、表に従う。この組成物は、対象となる本発明に有用な多くの組成物の1つを単に示すに過ぎない。
【0202】
【0203】
A.コーティングされたZn/α-PGAミクロスフェア(cZPM)の調製。スクロース(5%w/v)10g、α-PGA 45mg、及び硫酸亜鉛七水和物19.79mg(元素Znとしては4.5mg)を含有する水200mLを調製して、凍結乾燥させる。得られた粉末を、最大5%のコンスターチを含有する微細スクロースと1:4の比で研和して、50番のU.S.標準ステンレススチールふるい(48メッシュ)に通して圧力をかける。この粉末を、400mLのビーカー中で白色パラフィン油200mL中に懸濁させる。ハイトルクスターラーを装着した44mmのポリエチレンの3枚刃パドル(Type RXR1、Caframo、ワイアトン、オンタリオ州)を用いて260rpmで攪拌することによって、混合物を分散させる。懸濁液に、アセトン-95%エタノール(9:1)中の10%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース-フタレート(HPMC-P)20mLを添加する。攪拌を5分間続けて、それによりミクロスフェアが生じ、続いて、クロロホルム75mLを添加する。懸濁培地をデカントし、ミクロスフェアをクロロホルム75mL中に手短に再懸濁させて、外気温で風乾する。乾燥時に、ミクロスフェアをカルナウバワックスでコーティングする。具体的には、カルナウバワックス1gを、白色パラフィン油200mL中に70℃で溶解させて、45℃未満に冷却する。この冷却したワックス-パラフィン溶液に、調製したミクロスフェアを添加して、一定に攪拌しながら15分間懸濁させる。ワックス溶液をデカントして、ミクロスフェアを濾紙上に収集して、過剰なワックス溶液を吸収させて、コーティングされたZn/α-PGAミクロスフェア(cZPM)を得る。
【0204】
B.コーティングされたZn/α-PGAミクロスフェア(cZPM)の液体懸濁液溶液の調製。下記構成成分:キサンタンガム(例えば、懸濁用ポリマーとして)0.3g、グアーガム(例えば、粘性剤として)0.3g、キシリトール(例えば、甘味料として)10g、クエン酸緩衝液(例えば、緩衝液として)0.5g、リモネン(例えば、香味料として)0.1g、ソルビン酸カリウム(例えば、防腐剤として)0.025gを水78.7mL中に溶解する。水溶液のpHをpH4.5に調節して、cZPM 10gを水溶液中に懸濁させて、cZPM液体懸濁液を得る。
【0205】
実施例22;α-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物。
或る実施形態による本発明を実施するのに有用な組成物を表7に示す。組成物は、錠剤1個当たりZn(Zn2+イオン)25mgを提供する。錠剤を調製する方法は、表に従う。この組成物は、対象となる本発明に有用な多くの組成物の1つを単に示すに過ぎない。
【0206】
【0207】
表2に示す組成物を有するコーティングされた錠剤は、湿式造粒技法を使用して調製され得る。まず、硫酸亜鉛及びα-ポリグルタミン酸を乾燥状態で一緒に混合する。微結晶セルロース、デンプン、及び二酸化ケイ素を更に添加して、乾燥構成成分を全て、更に一緒に混合する。混合した構成成分を造粒機に移して、適切な量のエタノール水を添加して、造粒を実行する。得られた造粒混合物を50℃~70℃で乾燥させて、約5%未満の含水量を有する造粒組成物を得る。ステアリン酸マグネシウムを造粒組成物に添加して、造粒組成物と混合する。得られた混合物を錠剤へと圧縮する。最終的に、当業者に既知であるように、標準的な技法を使用して、錠剤を酢酸フタル酸セルロースでコーティングする。
【0208】
実施例23;α-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物。
或る実施形態による本発明を実施するのに有用な組成物を表8に示す。組成物は、錠剤1個当たりZn(Zn2+イオン)30mgを提供する。錠剤を調製する方法は、表に従う。この組成物は、対象となる本発明に有用な多くの組成物の1つを単に示すに過ぎない。
【0209】
【0210】
表3に示す組成物を有するコーティングされた錠剤は、下記の通りに調製され得る。まず、硫酸亜鉛、α-ポリグルタミン酸、微結晶セルロース、HPMC-P(ヒドロキシメチルセルロースフタレート)、マルトデキストリン、及びカルボキシメチルセルロース-カルシウムを乾燥状態で一緒に混合する。混合した構成成分を造粒機に移して、適切な量の70%エタノール水を添加して、湿式造粒を実行した。得られた造粒混合物を最大約60℃で乾燥させて、約3%未満のLOD(乾燥時の損失)を有する造粒組成物を得る。シリカ(例えば、Aerosil(登録商標))及びステアリン酸マグネシウムを造粒組成物に添加して、造粒組成物と混合する。得られた混合物を錠剤へと圧縮する。当業者に既知であるように、標準的な技法を使用して、錠剤を、まずHPMC-Pのイソプロピルアルコール溶液を使用してコーティングして、続いて、第2のステップで、HPMCの水溶液を使用してコーティングする。
【0211】
本発明は、特定の実施形態に関して本明細書中で記載されているが、説明、実施例及び
図示は、本発明を限定すると解釈されるべきではない。様々な修正及び変更は、それでもなお本発明の範囲内であることが、当業者には理解されよう。
腫瘍を有する患者を処置することにおける使用のための組成物であって、治療上有効な量の(i)Zn(II)/ポリグルタミン酸剤を、(ii)Tリンパ球マーカー、マクロファージマーカー、又はナチュラルキラー細胞マーカーを標的とする免疫腫瘍剤と組み合わせて含む、前記組成物。