(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133633
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】肺に関連する状態を有する患者における活動レベルを改善するための一酸化窒素吸入療法(iNO)の使用
(51)【国際特許分類】
A61M 16/10 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
A61M16/10 Z
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108759
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2021538735の分割
【原出願日】2020-01-03
(31)【優先権主張番号】62/789,020
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/850,214
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/788,502
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520448289
【氏名又は名称】ベレロフォン・セラピューティクス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【弁理士】
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】シャー,パラグ
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス,ピーター・ポール
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボバエ
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,マーティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】活動レベルを維持および/または増加させるための肺関連状態を有する患者への一酸化窒素のパルス送達を提供する。
【解決手段】一酸化窒素は、定期的に、1日当たり最低5分から1日当たり24時間送達される。一酸化窒素は、患者の都合に合わせて、例えば、睡眠中のある時間にわたって送達されてもよい。一酸化窒素のパルス投与は、ある時間にわたって均等または不均等に間隔をあけてもよい(例えば、10分間、1時間、または24時間)。治療上有効な用量の一酸化窒素の投与は、一定時間連続的であってもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項2】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、
a)合計吸息時間を含む、前記患者における呼吸パターンを検出するステップと、
b)前記呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと、
c)前記患者に一酸化窒素の用量を、前記合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で送達するステップと
によって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項3】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を治療するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項4】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルの低下を予防するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項5】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを維持するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項6】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項7】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、
d)合計吸息時間を含む、前記患者における呼吸パターンを検出するステップと、
e)前記呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと、
f)前記患者に一酸化窒素の用量を、前記合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で送達するステップと
によって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項8】
肺状態を有する患者における活動レベルの低下を予防するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項9】
肺状態を有する患者における活動レベルを維持するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法。
【請求項10】
間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、前記患者に血管拡張剤を投与することを含む方法。
【請求項11】
前記血管拡張剤が全身性血管拡張剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記血管拡張剤が局所作用血管拡張剤である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記血管拡張剤が吸入用一酸化窒素である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記吸入用一酸化窒素が、約25mcg/kg IBW/時間~約50mcg/kg IBW/時間の範囲の用量で投与される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記吸入用一酸化窒素が、約30mcg/kg IBW/時間~約45mcg/kg IBW/時間の範囲の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記吸入用一酸化窒素が、約30mcg/kg IBW/時間の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記吸入用一酸化窒素が、約45mcg/kg IBW/時間の用量で投与される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、概して、一酸化窒素を投与するための装置および方法、特に、治療的
処置を必要としている患者への一酸化窒素のパルス送達に関し、また、概して、一酸化窒素の投与方法、特に、活動レベルを維持および/または増加させるための肺関連状態を有する患者への一酸化窒素のパルス送達に関する。
【背景技術】
【0002】
[002]一酸化窒素(NO)は、吸入すると、肺の血管を拡張させる作用を示すガスであ
り、血液の酸素化を改善し、肺高血圧症を軽減する。このため、一酸化窒素は、病態、例えば、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気腫合併肺線維症(CPFE)、嚢胞性線維症(CF)、特発性肺線維症(IPF)、肺気腫、間質性肺疾患(ILD)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患による息切れ(呼吸困難)を発症している患者の吸息呼吸相における治療用ガスとして提供される。
【0003】
[003]適切な条件下で投与される場合、NOは治療上有効である可能性があるが、正し
く投与されなかった場合には有毒にもなり得る。NOは、酸素と反応して二酸化窒素(NO2)を形成するが、NO送出管内に酸素または空気が存在する場合、NO2が形成される可能性がある。NO2は、多くの副作用を招く可能性のある有毒ガスであり、Occupational Safety&Health Administration(OSHA)は、一般産業におけるその許容曝露限界をわずか5ppmと規定している。このため、NO療法の間、NO2への曝露を制限することは望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[004]本発明のある実施形態において、ある用量の一酸化窒素を投与する方法が記載さ
れている。本発明のある実施形態において、少なくとも単回のパルス用量は、肺疾患の症状を治療するか、または軽減するために患者に投与され、治療上有効である。本発明のある実施形態において、2回以上のパルス用量の総量は、肺疾患の症状を治療するか、または軽減するために、治療上有効である。
【0005】
[005]本発明のある実施形態において、一酸化窒素は、定期的に、1日当たり最低5分
から1日当たり24時間送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素は、患者の都合に合わせて、例えば、睡眠中のある時間にわたって送達されてもよい。本発明のある実施形態において、一酸化窒素のパルス投与は、ある時間にわたって均等または不均等に間隔をあけてもよい(例えば、10分間、1時間、または24時間)。別の実施形態において、治療上有効な用量の一酸化窒素の投与は、一定時間連続的であってもよい。
【0006】
[006]一実施形態において、方法には、患者の呼吸パターンを検出することが含まれる
。本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、合計吸息時間(例えば、患者の単回呼息の持続時間)が含まれる。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、呼吸感度制御を含むデバイスを使用して検出される。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素の投与タイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。本発明のある実施形態において、パルス毎の一酸化窒素の量を投与するために必要な、一酸化窒素含有ガスの体積が算出される。ある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で患者に送達される。
【0007】
[007]本発明のある実施形態において、一酸化窒素用量は、治療用量の一酸化窒素を患
者に送達するために十分な時間にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、デバイスは、治療用量の一酸化窒素を患者に送達するために十分な合計時間を算出する。本発明のある実施形態において、治療用量の一酸化窒素を患者に送達するために必要とされる合計時間は、少なくとも部分的に、前記患者の呼吸パターンに左右される。
【0008】
[008]本発明のある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の最初の3分の1
の間に送達される。ある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の最初の2分の1の間に送達される。ある実施形態において、一酸化窒素は、合計吸息時間の最初の3分の2の間に送達される。
【0009】
[009]本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも50パーセント
(50%)は、合計吸息時間の最初の3分の1の間に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも70パーセント(70%)は、合計吸息時間の最初の2分の1の間に患者に送達される。ある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の2の間に患者に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の1の間に患者に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の全用量は、合計吸息時間の最初の2分の1の間に患者に送達される。
【0010】
[0010]本発明のある実施形態において、デバイスの呼吸感度制御は、調整可能である。本発明のある実施形態において、呼吸感度制御は、固定されている。本発明のある実施形態において、呼吸感度制御は、最低感度から最高感度までの範囲で調整可能であり、それにより、最高感度設定は、最低感度設定よりも呼吸を検出する感度が高い。
【0011】
[0011]本発明のある実施形態において、心肺疾患の症状を治療するか、または軽減する方法が記載されている。本発明のある実施形態において、この方法は、患者の呼吸パターンを、呼吸感度制御を含むデバイスを使用して検出することを含む。本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、合計吸息時間の測定値が含まれる。本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素の投与タイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも50パーセント(50%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも70パーセント(70%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素の用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。
【0012】
[0012]本発明のある実施形態において、デバイスは、治療上有効な量の一酸化窒素を患者に送達するために必要な合計時間を算出する。本発明のある実施形態において、治療上有効な量の一酸化窒素を送達するために必要な合計時間は、呼吸パターン、患者に送達されるガス中の一酸化窒素濃度、パルス用量の体積、および一パルスの持続時間のうちの1つまたは複数に左右される。
【0013】
[0013]本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、特発性肺線維症(IPF)、肺線維症(PF)、間質性肺疾患(ILD)、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、気腫合併肺線維症(CPFE)、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)、慢性高山病、または他の肺疾患から選択される。本発明のある実施形態において、肺疾患は、I~V群の肺高血
圧症(PH)のような他の肺疾患と関連する肺高血圧症である。別の実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、間質性肺疾患と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、特発性肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明の別の実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明の別の実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。
【0014】
[0014]本発明のある実施形態において、ある用量の一酸化窒素を送達するためのプログラム可能なデバイスが記載されている。本発明のある実施形態において、デバイスは、経鼻送達部分、一酸化窒素を含む薬剤カートリッジ、酸素供給源、患者の呼吸パターンを検出するための呼吸感知部分、患者に送達される一酸化窒素の用量を決定するための呼吸検出アルゴリズム、および該用量の一酸化窒素を呼吸パターンの吸息部分と相関する一連のパルスを介して患者に投与するための部分を含む。本発明のある実施形態において、デバイスの呼吸感知部分は、調整可能な、または固定された呼吸感度設定を含む。本発明のある実施形態において、経鼻送達部分は、鼻腔カニューレ、フェイスマスク、噴霧器、または鼻吸入器である。本発明のある実施形態において、呼吸検出アルゴリズムは、閾値感度および傾斜アルゴリズムを使用する。本発明のある実施形態において、傾斜アルゴリズムは、圧力降下速度が閾値レベルに達する際に検出される呼吸を計数する。
【0015】
[0015]本発明のある実施形態において、肺高血圧症を有する患者における活動レベルを維持または増加させるための方法が記載されている。一実施形態において、患者の肺高血圧症は、間質性肺疾患に関連している。本発明のある実施形態において、この方法は、吸入用一酸化窒素(iNO)を投与することを含む。別の実施形態において、iNOは、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間の期間、パルス方式で連続的に投与される。別の実施形態において、iNOは、30mcg/kg IBW/時間で投与される。別の実施形態において、iNOは、45mcg/kg IBW/時間で投与される。別の実施形態において、iNOは、75mcg/kg IBW/時間で投与される。本発明のある実施形態において、iNOは、酸素補給と組み合わせて投与される。
【0016】
[0016]別の実施形態において、この方法は、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを最初に検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップと、によってiNOを投与することを含む。
【0017】
[0017]本発明の別の実施形態において、間質性肺疾患に関連する肺高血圧症を治療する
ための方法が記載されている。ある実施形態において、この方法は、患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む。
【0018】
[0018]さらに別の実施形態において、間質性肺疾患に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルの低下を予防するための方法が記載されている。一実施形態において、この方法は、患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む。
【0019】
[0019]本発明のある実施形態において、アクチグラフィを使用して、活動パラメーターを測定する。
[0020]本発明のある実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。ある実施形態において、吸入用一酸化窒素は、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップとによって投与される。
【0020】
[0021]本発明のある実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を治療するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。ある実施形態において、吸入用一酸化窒素は、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップとによって投与される。
【0021】
[0022]本発明のある実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルの低下を予防するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。ある実施形態において、吸入用一酸化窒素は、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップとによって投与される。
【0022】
[0023]本発明のある実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを維持するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。ある実施形態において、吸入用一酸化窒素は、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップとによって投与される。
【0023】
[0024]本発明のある実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。ある実施形態において、吸入用一酸化窒素は、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量
を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップとによって投与される。
【0024】
[0025]本発明のある実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、合計吸息時間を含む前記患者における呼吸パターンを検出するステップと;呼吸パターンを、一酸化窒素の用量を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと関連付けるステップと;前記患者に一酸化窒素の用量を、合計吸息時間の一部の時間にわたってパルス方式で投与するステップとによって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。
【0025】
[0026]本発明のある実施形態において、肺状態を有する患者における活動レベルの低下を予防するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。別の実施形態において、肺状態を有する患者における活動レベルを維持するための方法であって、前記患者に吸入用一酸化窒素を投与することを含む方法が記載されている。さらに別の実施形態において、間質性肺疾患、特発性肺線維症、および肺線維症からなる群から選択される肺状態に関連する肺高血圧症を有する患者における活動レベルを改善するための方法であって、前記患者に血管拡張剤を投与することを含む方法が記載されている。一実施形態において、血管拡張剤は、全身性血管拡張剤である。別の実施形態において、血管拡張剤は、局所作用血管拡張剤である。別の実施形態において、血管拡張剤は、吸入用一酸化窒素である。
【0026】
[0027]本発明のある実施形態において、吸入用一酸化窒素は、約25mcg/kg IBW/時間~約50mcg/kg IBW/時間の範囲で投与される。別の実施形態において、吸入用一酸化窒素は、約30mcg/kg IBW/時間~約45mcg/kg IBW/時間の範囲の用量で投与される。別の実施形態において、吸入用一酸化窒素は、約30mcg/kg IBW/時間の用量で投与される。別の実施形態において、吸入用一酸化窒素は、約45mcg/kg IBW/時間の用量で投与される。
【0027】
[0028]種々の実施形態は上記されており、以下でより詳細に説明されるであろう。記載されている実施形態を、以下に記載される通りのみではなく、本発明の範囲に従った他の適当な組合せで組み合わせることがあると理解されるであろう。
【0028】
[0029]前述では、本発明の特定の特徴および技術的な利点を幾分大まかに概説した。開示された特定の実施形態が、本発明の範囲内で、他の構造もしくは工程を修正するか、または設計するための基礎として容易に利用され得ることは、当業者によって評価されるべきである。このような同等の構成が、添付の特許請求の範囲に明記された本発明の趣旨および範囲から逸脱しないことも、当業者によって認識されるべきである。
【0029】
[0030]前述の課題を解決するための手段に加えて、以下の発明を実施するための形態は、添付の図面と共に読まれることで、より良く理解されるであろう。
[0031]上記で列挙された本発明の特徴が詳細に理解され得るように、上記で簡潔に要約された本発明のより詳細な説明は、そのいくつかが添付の図面に例示されている実施形態を参照することによって得られることがある。しかし、添付の図面は、本発明の典型的な実施形態のみを例示するものであり、このため、本発明が他の等しく有効な実施形態を含み得ることから、本発明の範囲を限定すると判断されるものではないことは留意するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】[0032]単回の呼吸の測定を示すグラフである。
【
図2】[0033]本発明に従って患者に送達された一酸化窒素のパルスの測定を示すグラフである。
【
図3】[0034]合計吸息時間に対する一酸化窒素の送達の割合として呼吸の検出を示すグラフである。オレンジ色の線は、実施形態1における呼吸感度設定の10のうちの8(例えば、最大感度の80%)を表し、青色の線は、実施形態1における呼吸感度設定の10のうちの10(例えば、最大感度)を表し、緑色の線は、実施形態2における10に固定された呼吸感度設定を表す。緑色の線は、一酸化窒素の用量の約93%が、合計吸息時間の最初の33%(すなわち最初の3分の1)の間に送達されること、および一酸化窒素の用量の100%が、合計吸息時間の最初の50%(すなわち最初の2分の1)の間に送達されることを示す。青色の線は、一酸化窒素の用量の約62%が、合計吸息時間の最初の33%(すなわち最初の3分の1)の間に送達されること、約98%が、合計吸息時間の最初の50%(すなわち最初の2分の1)の間に送達されること、および100%が、合計吸息時間の最初の67%(すなわち最初の3分の2)の間に送達されることを示す。オレンジ色の線は、一酸化窒素の用量の約17%が、合計吸息時間の最初の33%(すなわち最初の3分の1)の間に送達されること、約72%が、合計吸息時間の最初の50%(すなわち最初の2分の1)の間に送達されること、および約95%が、合計吸息時間の最初の67%(すなわち最初の3分の2)の間に送達されることを示す。
【
図4】[0035]
図3に記載された結果の組合せを表現する図である。
【
図5A】[0036]
図5Aおよび
図5Bは、呼吸検出と一酸化窒素の送達のアルゴリズムを表現する図である。
図5Aは閾値アルゴリズムを示す。
図5Bは傾斜アルゴリズムを示す。
【
図5B】[0036]
図5Aおよび
図5Bは、呼吸検出と一酸化窒素の送達のアルゴリズムを表現する図である。
図5Aは閾値アルゴリズムを示す。
図5Bは傾斜アルゴリズムを示す。
【
図6A】[0037]
図6A~
図6Cは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図6Aは、中強度活動における変化パーセントを示し、
図6Bは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図6Cは、活動全体における変化パーセントを示す。
【
図6B】[0037]
図6A~
図6Cは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図6Aは、中強度活動における変化パーセントを示し、
図6Bは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図6Cは、活動全体における変化パーセントを示す。
【
図6C】[0037]
図6A~
図6Cは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図6Aは、中強度活動における変化パーセントを示し、
図6Bは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図6Cは、活動全体における変化パーセントを示す。
【
図7A】[0038]
図7A~
図7Dは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図7Aは、中高強度身体活動(MVPA)活動における変化パーセントを示し、
図7Bは、活動全体における変化パーセントを示し、
図7Cは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図7Dは、1日のカロリー摂取量の変化パーセントを示す。
【
図7B】[0038]
図7A~
図7Dは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図7Aは、中高強度身体活動(MVPA)活動における変化パーセントを示し、
図7Bは、活動全体における変化パーセントを示し、
図7Cは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図7Dは、1日のカロリー摂取量の変化パーセントを示す。
【
図7C】[0038]
図7A~
図7Dは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図7Aは、中高強度身体活動(MVPA)活動における変化パーセントを示し、
図7Bは、活動全体における変化パーセントを示し、
図7Cは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図7Dは、1日のカロリー摂取量の変化パーセントを示す。
【
図7D】[0038]
図7A~
図7Dは、iNO治療を受けた患者およびプラセボ患者における活動パラメーターの経時的変化パーセントを示す。
図7Aは、中高強度身体活動(MVPA)活動における変化パーセントを示し、
図7Bは、活動全体における変化パーセントを示し、
図7Cは、非座位活動における変化パーセントを示し、
図7Dは、1日のカロリー摂取量の変化パーセントを示す。
【
図8A】[0039]
図8Aおよび
図8Bは、研究の非盲検継続(OLE)部分と比較した、研究の盲検部分からのMVPA(
図8A)および全般的活動(
図8B)における平均週変化の比較データを示す。
【
図8B】[0039]
図8Aおよび
図8Bは、研究の非盲検継続(OLE)部分と比較した、研究の盲検部分からのMVPA(
図8A)および全般的活動(
図8B)における平均週変化の比較データを示す。
【
図9A】[0040]
図9Aおよび
図9Bは、1~4か月にわたるベースラインからの正規化されたMVPAの変化(
図9A)および1~4か月にわたるベースラインからの全般的活動の変化(
図9B)についてのコホート2(iNO45)比較データを示す。
図9Aでは、ベースラインのMVPAは74分/日であり、14分/日の改善が4か月目に見られた。
図9Bでは、ベースラインの全般的活動は1分当たり1476カウントであり、1分当たり100カウントの改善が4か月目に見られた。
【
図9B】[0040]
図9Aおよび
図9Bは、1~4か月にわたるベースラインからの正規化されたMVPAの変化(
図9A)および1~4か月にわたるベースラインからの全般的活動の変化(
図9B)についてのコホート2(iNO45)比較データを示す。
図9Aでは、ベースラインのMVPAは74分/日であり、14分/日の改善が4か月目に見られた。
図9Bでは、ベースラインの全般的活動は1分当たり1476カウントであり、1分当たり100カウントの改善が4か月目に見られた。
【
図10AB】[0041]
図10A~
図10Cは、4か月目のセントジョージ呼吸器質問票(St. George’s Respiratory Questionnaire)(SGRQ)に関するコホート2(iNO45)の比較データを示す。SGRQは逆転項目であるため、合計ポイントが高いほど病態が悪化していることを示す。
図10Aは、SGRQ合計における3ポイントの改善を示しており、ここでは健康状態および生活の質を測定する。
図10Bは、SGRQ活動における5ポイントの改善を示しており、ここでは、患者の身体活動に対する障害を測定する。
図10Cは、SGRQ影響における6ポイントの改善を示しており、ここでは、疾患/状態の心理的および社会的影響を測定する。
【
図10C】[0041]
図10A~10Cは、4か月目のセントジョージ呼吸器質問票(SGRQ)に関するコホート2(iNO45)の比較データを示す。SGRQは逆転項目であるため、合計ポイントが高いほど病態が悪化していることを示す。
図10Aは、SGRQ合計における3ポイントの改善を示しており、ここでは健康状態および生活の質を測定する。
図10Bは、SGRQ活動における5ポイントの改善を示しており、ここでは、患者の身体活動に対する障害を測定する。
図10Cは、SGRQ影響における6ポイントの改善を示しており、ここでは、疾患/状態の心理的および社会的影響を測定する。
【
図11】[0042]呼吸困難における利益を示す、University of California、San Diego(UCSD)息切れ質問票(Shortness of Breath Questionnaire)(SOBQ)に関するコホート2(iNO45)の比較データを示す。ここでも、スコアの増加は疾患の悪化を示す。5ポイントの改善を示しており、ここでは、患者が1日の身体活動を行っている間の息切れを測定する。
【
図12A】[0043]2か月目(iNO30およびiNO45、コホート1および2)および4か月目(iNO45、コホート2)におけるMVPA(
図12A)および活動全体(
図12B)の対数変換された推定変化を示す。
【
図12B】[0043]2か月目(iNO30およびiNO45、コホート1および2)および4か月目(iNO45、コホート2)におけるMVPA(
図12A)および活動全体(
図12B)の対数変換された推定変化を示す。
【
図13】[0044]コホート2の月(
図13A)および週(
図13B)ベースでの対数変換されたMVPA予測限界効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[0045]別段の定めがない限り、本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての特許および公報は、その全体が参照によって組み込まれる。
【0032】
[0046]いくつかの例示的な実施形態を説明する前に、本発明が、以下の説明に明記された構成または工程段階の詳細に限定されるものではないことは理解されるべきである。本発明は、他の実施形態が可能であるとともに、様々な方法で実践するか、または実行することができる。
【0033】
[0047]本明細書全体を通した「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、材料、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。このため、本明細書全体を通して様々な箇所における「1つまたは複数の実施形態において」、「特定の実施形態において」、「一実施形態において」、または「ある実施形態において」などの語句の出現は、必ずしも本発明の同じ実施形態を意味していない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性は、1つまたは複数の実施形態において、任意の適当な方法で組み合わされる場合がある。
【0034】
[0048]本発明は、特定の実施形態を参照して本明細書で説明されているが、これらの実施形態が、本発明の原理および用途を単に例示するものであることは理解されるべきである。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および装置に対する様々な修正および変形を行うことが可能であることは、当業者にとって明白であろう。このため、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内である修正および変形を含むことが意図される。
定義
[0049]「有効量」または「治療上有効な量」という用語は、本明細書に記載される化合物または化合物の組合せの量であって、以下に限定されないが、疾患の治療を含む、意図された用途に効果を示すために十分な量を指す。治療上有効な量は、意図された用途(in vitroまたはin vivo)、治療する対象および病状(例えば、対象の体重、年齢、および性別)、病状の重症度、投与の方法などによって変更されることがあり、当業者によって容易に決定され得る。この用語は、標的細胞における特定の反応(例えば、血小板粘着能の低下および/または細胞遊走の減少)を引き起こすであろう用量にも適用される。具体的な用量は、選ばれた特定の化合物、準拠される投与レジメン、化合物が他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与タイミング、投与される組織、および化合物が運ばれる物理的送達システムによって変更されるであろう。
【0035】
[0050]本明細書で使用する場合、「治療効果」という用語は、治療的利益および/または予防的利益を包含する。予防効果には、疾患もしくは状態の出現を遅延させることもしくは排除すること、疾患もしくは状態の症状の発症を遅延させることもしくは排除すること、疾患もしくは状態の進行を緩やかにすること、止めること、もしくは後退させること、またはその任意の組合せが含まれる。
【0036】
[0051]「間質性肺疾患」または「ILD」の病態には、以下に限定されないが、特発性間質性肺炎(IIP)、慢性過敏性肺炎、職業性または環境性肺疾患、特発性肺線維症(IPF)、非IPFのIIP、肉芽腫性(例えば、サルコイドーシス)、ILDに関連す
る結合組織疾患、およびILDの他の形態を含むILDの全てのサブタイプが含まれる。
【0037】
[0052]本発明の態様を説明するために、例えば、投与範囲、製剤の構成成分の量などの範囲を本明細書で使用する場合、範囲の全ての組合せおよび下位の組合せならびにその場合の特定の実施形態を含むことが意図されている。数または数値範囲に言及する場合における「約」という用語の使用は、言及された数または数値範囲が、実験のばらつき内(すなわち、統計的実験誤差内)の概数であり、このため、この数または数値範囲は変動することがある。この変動は、前述の数または数値範囲の通常0%~15%、好ましくは0%~10%、より好ましくは0%~5%である。「含んでいる(comprising)」という用語(および「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「有している」または「含んでいる(including)」などの関連用語)は、例えば、記載される特徴「からなる」もしくは「から本質的になる」物質の任意の組成物、任意の方法、または任意の工程の実施形態のような実施形態を含む。
【0038】
[0053]誤解を避けるために、本発明の特定の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特定の特徴(例えば、整数、特性、値、使用、疾病、式、化合物、または群)は、それと矛盾しない限り、本明細書に記載される他のいかなる態様、実施形態、または実施例にも適用できると理解されるべきであることは、本明細書で意図されている。したがって、このような特徴は、本明細書で定義される定義、請求項、または実施形態のいずれかに関連して適切であれば、使用されることがある。本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図を含む)で開示される特徴の全て、および/または同様に開示される任意の方法または工程の段階の全ては、特徴および/または階段の少なくともいくつかが互いに相容れない組合せを除く、任意の組合せで組み合わせてもよい。本発明は、開示されるいかなる実施形態のいかなる詳細にも限定されるものではない。本発明は、本明細書(任意の添付の請求項、要約、および図を含む)で開示される特徴のうちの任意の新規のものもしくは任意の新規の組合せ、または同様に開示される任意の方法または工程の段階のうちの任意の新規のものもしくは任意の新規の組合せに及ぶ。
【0039】
[0054]NOの有効な投与は、薬物の量および送達のタイミングを含む、多くの異なる可変要因に基づく。米国特許第7,523,752号、第8,757,148号、第8,770,199号、および第8,803,717号、ならびにNO送達デバイスの設計に対する意匠特許第D701,963号を含む、NO送達に関連する複数の特許が付与されており、その全ては参照により本明細書に組み込まれている。さらに、US2013/0239963およびUS2016/0106949を含む、NO送達に関連する係属中の出願があり、その両方とも参照により本明細書に組み込まれている。これらの特許および係属中の公報をふまえても、治療用量による利益を最大限に高め、潜在的に有害な副作用を最小限に抑えるため、精密に制御された方式で、NOを送達する方法および装置はいまだに必要とされている。
【0040】
[0055]本発明に関して、特定の実施形態において、ある用量のガス(例えば、NO)は、患者による吸息の間にパルスで患者に投与される。驚くべきことに、一酸化窒素の送達は、合計呼吸吸息時間の最初の3分の2以内に、精密で正確に行われることが可能であり、患者は、このような送達による利益を得ることが見出されている。医薬品の損失および有害な副作用のリスクを最小限に抑えるこのような送達は、パルス投与の有効性を高め、ひいては、有効であるために、患者に投与する必要のあるNOの全体的な量をよい少なくする結果となる。このような送達は、種々の疾患、例えば、以下に限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、I~V群の肺高血圧症(PH)を含む肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、および肺気腫の治療のために有用であり、例えば、肺炎の治療における抗菌としても有用である。
【0041】
[0056]このような精度は、換気が不十分な肺領域の部分のみをNOに曝露するという点で、さらに有利である。低酸素症およびヘモグロビンの障害も、このようなパルス送達を用いることで減少する可能性があるが、NO2への曝露もより限定的なものとなる。
本発明のデバイス
[0057]特定の実施形態において、本発明は、デバイス、例えば、ある用量のガス(例えば、一酸化窒素)を必要としている患者に送達するためのプログラム可能なデバイスを含む。デバイスは、送達部分、患者に送達するための圧縮ガスを含む薬剤カートリッジ、呼吸感度設定を含む患者の呼吸パターンを検出するための呼吸感知部分、圧縮ガスをいつ患者に投与するかを決定するための少なくとも1つの呼吸検出アルゴリズム、および該用量の一酸化窒素を1回または複数回の一連のパルスを介して患者に投与するための部分を含むことができる。
【0042】
[0058]特定の実施形態において、薬剤カートリッジは交換可能である。
[0059]特定の実施形態において、送達部分は、経鼻カニューレ、フェイスマスク、噴霧器、および鼻吸入器のうちの1つまたは複数を含む。特定の実施形態において、この送達部分は、1種または複数の他のガス(例えば、酸素)を患者に同時に投与することを可能にする第2の送達部分をさらに含むことができる。
【0043】
[0060]特定の実施形態において、また本明細書の別の箇所で詳述されるように、デバイスは、閾値感度および傾斜アルゴリズムのうちの1つまたは両方を用いるアルゴリズムであって、傾斜アルゴリズムが、圧力降下速度が既定の閾値に達した際に呼吸を検出するアルゴリズムを含む。
【0044】
[0061]本発明のある実施形態において、機械的に、パルス用量のガスは、排出されない場合、他のガスセンサーにおいて通常問題を引き起こすベンチュリー効果を低下させることができる。例えば、本発明のパルス用量を用いない場合、O2を、NOのような別のガスと同時に投与する際に、O2背圧センサーが、O2の送達を無効にすることがある。
呼吸パターン、検出、およびトリガー
[0062]呼吸パターンは、個人、時間帯、活動のレベル、および他の可変要因に基づいて変動する。このため、個人の呼吸パターンを予め決定することは困難である。そのため、呼吸パターンに基づいて患者に治療法を届ける送達システムは、有効であるために、可能性のある呼吸パターンの範囲に対処可能であるべきである。
【0045】
[0063]特定の実施形態において、患者または個人は任意の年齢であり得るが、より特定の実施形態において、患者の年齢は16歳以上である。
[0064]本発明のある実施形態において、呼吸パターンには、本明細書で使用される通り、単回の呼吸に対して決定される合計吸息時間の測定値が含まれる。しかし、文脈によって、「合計吸息時間」は、療法の間に検出された全ての呼吸における全ての吸息時間の総和を指すこともある。合計吸息時間は、観察されるか、または算出される場合がある。別の実施形態において、合計吸息時間は、シミュレートした呼吸パターンに基づいて検証された時間である。
【0046】
[0065]本発明のある実施形態において、呼吸検出には、少なくとも1つのトリガーが含まれ、いくつかの実施形態では、一緒に機能する少なくとも2つの個別のトリガー、すなわち、呼吸レベルトリガー(breath level trigger)および/または呼吸傾斜トリガー(breath slope trigger)が含まれる。
【0047】
[0066]本発明のある実施形態において、呼吸レベルトリガーアルゴリズムは、呼吸検出のために使用される。呼吸レベルトリガーは、圧力の閾値レベル(例えば、閾値陰圧)が吸息に達した際に呼吸を検出する。
【0048】
[0067]本発明のある実施形態において、呼吸傾斜トリガーは、圧力波形の傾斜が吸息を示す際に呼吸を検出する。呼吸傾斜トリガーは、場合によっては、特に短くて浅い呼吸の検出に使用する場合に、閾値トリガーよりも正確である。
【0049】
[0068]本発明のある実施形態において、これら2つのトリガーの組合せによって、特に複数の治療用ガスが患者に同時に投与されている場合に、概してより正確な呼吸検出システムが提供される。
【0050】
[0069]本発明のある実施形態において、呼吸レベルおよび/または呼吸傾斜を検出するための呼吸感度制御は固定されている。本発明のある実施形態において、呼吸レベルまたは呼吸傾斜のいずれかを検出するための呼吸感度制御は、調整可能であるか、またはプログラム可能である。本発明のある実施形態において、呼吸レベルおよび/または呼吸傾斜を検出するための呼吸感度制御は、最低感度から最高感度までの範囲で調整可能であり、ここで、最高感度設定は、最低感度設定よりも呼吸を検出する感度が高い。
【0051】
[0070]少なくとも2つのトリガーが使用される特定の実施形態において、各トリガーの感度は、異なる相対的レベルで設定される。少なくとも2つのトリガーが使用される一実施形態において、1つのトリガーは、最大感度に設定され、もう1つのトリガーは、最大感度より低く設定される。少なくとも2つのトリガーが使用され、また1つのトリガーが呼吸レベルトリガーである一実施形態において、この呼吸レベルトリガーは、最大感度に設定される。
【0052】
[0071]しばしば、患者の吸入/吸息の全てが検出され、ガス(例えば、NO)のパルス投与に対する吸入/吸息イベントとして分類されるわけではない。検出の過誤は、特に複数のガスが患者に同時に投与されている場合、例えば、NOと酸素の組合せ療法で生じる可能性がある。
【0053】
[0072]本発明の実施形態および特に、呼吸傾斜トリガーを単独でまたは別のトリガーと組み合させて組み入れている実施形態は、吸息イベントの正しい検出を最大限に高めることが可能であり、それによって、タイミングにおける誤認または過誤による無駄を最小限に抑えつつ、療法の有効性および効率を最大限に高める。
【0054】
[0073]特定の実施形態において、患者へのガス送達のための時間枠にわたる患者の合計吸息回数の50%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の75%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の90%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の95%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の98%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の99%を上回る吸息が検出される。特定の実施形態において、患者の合計吸息回数の75%~100%が検出される。
投与量および投与レジメン
[0074]本発明のある実施形態において、患者に送達する一酸化窒素は、1リットル当たりNO約3~約18mg、1リットル当たりNO約6~約10mg、1リットル当たりNO約3mg、1リットル当たりNO約6mg、または1リットル当たりNO約18mgの濃度で製剤化される。NOは、単独でまたは代替のガス療法と組み合わせて投与されることがある。特定の実施形態において、酸素(例えば、濃縮された酸素)は、NOと組み合わせて患者に投与され得る。
【0055】
[0075]本発明のある実施形態において、ある体積の一酸化窒素は、呼吸当たり約0.3
50mL~約7.5mLの量で投与される(例えば、単回のパルスで)。いくつかの実施形態において、単回のセッション過程の間、各パルス用量における一酸化窒素の体積は同じであってよい。いくつかの実施形態において、ガスを患者に送達するための単回の時間枠の間、いくつかのパルス用量における一酸化窒素の体積は異なってもよい。いくつかの実施形態において、ガスを患者に送達するための単回の時間枠の過程の間、呼吸パターンをモニターしつつ、各パルス用量における一酸化窒素の体積を調整してもよい。本発明のある実施形態において、肺疾患の症状を治療するか、または軽減する目的のために、パルス単位(「パルス用量」)で患者に送達される一酸化窒素(ng)の量は、以下の通りに算出され、ナノグラムの値に四捨五入される:
用量mcg/kg-IBW/時間×理想体重kg(kg-IBW)×((1時間/60分)/(1分/呼吸数(bpm))×(1,000ng/ug)。
【0056】
[0076]例として、100mcg/kg IBW/時間の用量における患者Aは、理想体重が75kgであり、呼吸数が1分間当たり20呼吸(または、1時間当たり1200呼吸)である:
100mcg/kg-IBW/時間×75kg×(1時間/1200呼吸)×(1,000ng/ug)=1パルス当たり6250ng
[0077]特定の実施形態において、60/呼吸数(分)の変数は、投与イベント時間といわれることもある。本発明の別の実施形態において、投与イベント時間は、1秒、2秒、3秒、4秒、5秒、6秒、7秒、8秒、9秒、または10秒である。
【0057】
[0078]本発明のある実施形態において、単回のパルス用量によって、患者に治療効果(例えば、治療上有効な量のNO)がもたらされる。本発明の別の実施形態において、2回以上のパルス用量の総量によって、患者に治療効果(例えば、治療上有効な量のNO)がもたらされる。
【0058】
[0079]本発明のある実施形態において、一酸化窒素の少なくとも約300、約310、約320、約330、約340、約350、約360、約370、約380、約390、約400、約410、約420、約430、約440、約450、約460、約470、約480、約490、約500、約510、約520、約530、約540、約550、約560、約570、約580、約590、約600、約625、約650、約675、約700、約750、約800、約850、約900、約950、または約1000パルスが、1時間毎に患者に投与される。
【0059】
[0080]本発明のある実施形態において、一酸化窒素療法セッションは、時間枠にわたって生じる。一実施形態において、時間枠は、1日当たり少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。
【0060】
[0081]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療は、最短の治療過程の時間枠の間に実施される。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約10分、約15分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、または約90分である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、もしくは約7日間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、もしくは約8週間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、も
しくは約24ヵ月である。
【0061】
[0082]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療セッションは、1日当たり1回または複数回実施される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療セッションは、1日当たり1回、2回、3回、4回、5回、6回、または6回を超えてもよい。本発明のある実施形態において、治療セッションは、月1回、2週に1回、週1回、1日置きに1回、1日1回、または1日に複数回実施されてもよい。
NOパルスのタイミング
[0083]本発明のある実施形態において、呼吸パターンは、ある用量の一酸化窒素を投与するタイミングを算出するためのアルゴリズムと相関している。
【0062】
[0084]吸入/吸息イベントを検出する精度は、さらに、単回の検出された呼吸の合計吸息時間における特定の時間枠にガスを投与することで、ガス(例えば、NO)パルスのタイミングによって、その有効性を最大限に高める。
【0063】
[0085]本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも50パーセント(50%)は、各呼吸の合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも60パーセント(60%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は、各呼吸の合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも85パーセント(85%)は、各呼吸の合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも92パーセント(92%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の少なくとも99パーセント(99%)は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の90%~100%は、合計吸息時間の最初の3分の1にわたって送達される。
【0064】
[0086]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも70パーセント(70%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。さらに別の実施形態において、パルス用量の少なくとも75パーセント(75%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも80パーセント(80%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって患者に送達される。本発明のある実施形態において、ガスのパルス用量の95%~100%は、合計吸息時間の最初の2分の1にわたって送達される。
【0065】
[0087]本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも90パーセント(90%)は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の少なくとも95パーセント(95%)は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。本発明のある実施形態において、パルス用量の95%~100%は、合計吸息時間の最初の3分の2にわたって送達される。
【0066】
[0088]集計した場合、療法セッション/時間枠にわたる複数回のパルス用量の投与も、上記の範囲に該当し得る。例えば、集計した場合、療法セッションの間に投与された全パルス用量のうちの95%を超える用量は、検出された全呼吸のうちの全吸息時間の最初の3分の2にわたって投与された。より高い精度の実施形態において、集計した場合、療法セッションの間に投与された全パルス用量のうちの95%を超える用量は、検出された全呼吸のうちの全吸息時間の最初の3分の1にわたって投与された。
【0067】
[0089]本発明の検出方法の精度の高さをふまえると、パルス用量を、吸息のうちの任意の特定の時間窓の間に投与することが可能である。例えば、パルス用量を、患者の吸息の最初の3分の1、中間の3分の1、または最後の3分の1に定めて投与することが可能である。あるいは、吸息の最初の2分の1または2番目の2分の1を、パルス用量を投与するための標的に定めることが可能である。さらに、投与するための標的を変更してもよい。一実施形態において、吸息時間の最初の3分の1を、1回または一連の吸息に対する標的とすることが可能であり、ここで、2番目の3分の1または2番目の2分の1を、同じまたは異なる療法セッションの間の続く1回または一連の吸息に対する標的としてもよい。あるいは、吸息時間の最初の4分の1が経過した後に、パルス投与を開始し、中間の2分の1(次の2つの4分の1)の間継続して、パルス投与が、吸息時間の最後の4分の1の開始時に終了するように定めることが可能である。いくつかの実施形態において、パルスは、50、100、もしくは200ミリ秒(ms)遅延する場合があるか、または約50~約200ミリ秒の範囲で遅延する場合がある。
【0068】
[0090]吸入の間にパルス投与を利用することは、パルス投与されたガス、例えば、NOへの曝露から、換気が不十分な肺領域および肺胞の曝露を低減する。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の5%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の10%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の15%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の20%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の25%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の30%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の50%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の60%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の70%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の80%未満がNOに曝露される。一実施形態において、換気が不十分な(a)肺領域または(b)肺胞の90%未満がNOに曝露される。
治療方法
[0091]本発明のある実施形態において、肺関連状態を有する患者の活動レベルを増加させるための方法が記載されている。この方法は、iNOの投与を含み、任意選択で、iNO投与を酸素で補う。本発明のある実施形態において、iNOは、本明細書で論じられるパルス方式に従って投与される。本発明のある実施形態において、iNOは、INOpulse(登録商標)デバイス(Bellerofon Therapeutics)を使用して患者に送達される。一実施形態において、患者は、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、または20週間の期間、1日当たり少なくとも12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、または24時間の期間、iNOを投与される。一実施形態において、患者は、iNOを8週間投与される。別の実施形態において、患者は、iNOを16週間投与される。本発明のある実施形態において、一酸化窒素療法セッションは、時間枠にわたって生じる。一実施
形態において、時間枠は、1日当たり少なくとも約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。
【0069】
[0092]本発明のある実施形態において、一酸化窒素治療は、最短の治療過程の時間枠の間に投与される。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約10分、約15分、約20分、約30分、約40分、約50分、約60分、約70分、約80分、または約90分である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約5時間、約6時間、約7時間、約8時間、約9時間、約10時間、約11時間、約12時間、約13時間、約14時間、約14時間、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、または約24時間である。本発明のある実施形態において、最短の治療過程は、約1、約2、約3、約4、約5、約6、もしくは約7日間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、もしくは約8週間、または約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約18、もしくは約24か月である。
【0070】
[0093]本発明のある実施形態において、iNOは、10mcg/kg理想体重(IBW)/時間~200mcg/kg IBW/時間以上のいずれかで投与される。一実施形態において、iNOは、約20mcg/kg IBW/時間~約150mcg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約25mcg/kg IBW/時間~約100mcg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約30mcg/kg IBW/時間~約75mcg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約25mcg/kg IBW/時間~約50mcg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、約30mcg/kg IBW/時間~約45mcg/kg IBW/時間で投与される。一実施形態において、iNOは、25mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、30mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、35mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、40mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、45mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、50mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、55mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、60mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、65mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、70mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、75mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、80mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、85mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、90mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、95mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、100mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、105mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、110mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、115mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、120mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、125mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、130mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、135mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、140mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、145mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、150mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、155mcg
/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、160mcg/kg
IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、165mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、170mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、175mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、180mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、185mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、190mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、190mcg/kg IBW/時で投与される。一実施形態において、iNOは、200mcg/kg IBW/時で投与される。
【0071】
[0094]本発明のある実施形態において、患者はまた、iNOと共に酸素を投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、最大20L/分で投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、最大1L/分、2L/分、3L/分、4L/分、5L/分、6L/分、7L分、8L/分、9L/分、10L/分、11L/分、12L/分、13L/分、14L/分、15L/分、16L/分、17L/分、18L/分、19L/分、または20L/分で投与される。本発明のある実施形態において、酸素は医師が処方するように投与される。
【0072】
[0095]本発明のある実施形態において、本発明において有用な肺関連状態は、特発性肺線維症(IPF)、肺線維症(PF)、間質性肺疾患(ILD)、肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、および肺気腫から選択される。本発明のある実施形態において、肺疾患は、I~V群の肺高血圧症(PH)のような他の肺疾患と関連する肺高血圧症である。別の実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、間質性肺疾患と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、特発性肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明の別の実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明の別の実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。
【0073】
[0096]特に、間質性肺疾患に関連する肺高血圧症を有する患者は、アクチグラフィ(ウェアラブル、医療グレードの活動モニター)によって測定されるように、活動レベルにおける統計的に有意な改善を示した。アクチグラフィは現在、肺高血圧症およびその他の心肺疾患の複数の後期臨床プログラムの主要評価項目として使用されている。iNOを受けている患者は、中強度活動において、プラセボを受けている患者における低下に対して増加を示した。iNO療法を受けている患者はまた、全般的活動において、プラセボを受けている患者における低下に対して低下を示さなかった。患者はまた、他の分野でも臨床的に意味のある改善を経験した。右心室不全のペプチドマーカーであるNT-ProBNPが測定され、iNO療法を受けている患者は、NT-ProBNPにおいて、プラセボを受けている患者の大きな増加に対して、わずかな増加しか示さなかった。NT-ProB
NPのレベルが高いほど、病態が悪化していることを示しており、これらの結果は活動結果と適合している(つまり、プラセボ患者でより深刻な悪化を示す)。また、iNOを受けている患者は、酸素飽和度の改善を示した。SpO2底値は、iNO療法を受けている患者では改善したが、SpO2底値は、プラセボを受けている患者では悪化した。さらに、本発明のある実施形態において、酸素飽和度低下は、プラセボを受けている患者では悪化したのに対して、iNO療法を受けている患者では改善した。別の方法で測定すると、本発明のある実施形態において、酸素飽和度低下は、プラセボを受けている患者では悪化するのに対して、iNO療法を受けている患者では改善した。肺動脈性肺高血圧症の治療に承認されているものなど、他の全身性血管拡張剤とは異なり、INOpulseの肺への標的化送達によって、運動中の酸素飽和度が改善される。
【0074】
[0097]本発明のある実施形態において、iNOの効果を評価するのに有用な他のパラメーターには、臨床的改善までの時間および臨床的悪化までの時間が含まれる。iNOの治療を受けた患者では、臨床的改善が見られるまでにかかる時間が短くなり、臨床的悪化が見られるまでにかかる時間が長くなることが予想される。患者関連アウトカム(Patient related outcome)測定(PRO)もまた、iNOの効果を評価するのに有用である。PROは質問票の形で測定され、生活の質全般に関する対象の視点を提供する。本発明のある実施形態において、これらのPROは、セントジョージ呼吸器質問票(SGRQ)およびUniversity of California、San
Diego息切れ質問票(UCSD SOBQ)を含む。これらの質問票は両方とも、当技術分野で使用される標準的質問票であり、周知であり、臨床的に受け入れられている。これらのPROの両スコアの改善が、iNO療法を受けている患者に対して予想される。
アクチグラフィ
[0098]本発明は、心肺状態もしくは肺関連状態を有する患者において、活動レベルを改善もしくは維持する方法、または活動レベルの低下を予防する方法に関する。この方法は、アクチグラフィを使用して活動レベルの変化を監視および測定することを含む。
【0075】
[0099]アクチグラフィは、歩数計もしくは加速度計に類似したウェアラブル活動モニター、または三軸加速度計、Actigraph GT9X、またはFITBIT(登録商標)の使用を伴い、これによって活動パラメーターを測定する。このような活動モニターによって、活動を評価し、ユーザーの活動パラメーターを測定する。測定される活動パラメーターには、全般的活動、非座位活動、中強度活動、中高強度身体活動(MVPA)、歩数、カロリー、代謝当量単位(MET)、睡眠、心拍数、酸素飽和度、消費カロリー、および他の種類の活動パラメーターが含まれる。
【0076】
[00100]本発明のある実施形態において、活動レベルは、一定期間にわたって絶えず監
視および測定される。本発明のある実施形態において、活動レベルは、一定期間にわたって断続的に監視および測定される。一実施形態において、活動レベルは、少なくとも約1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間、15週間、16週間、17週間、18週間、19週間、20週間、21週間、22週間、23週間、24週間、25週間、または26週間の期間、1日当たり少なくとも約8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、または24時間の期間にわたって監視および測定される。別の実施形態において、活動レベルは、少なくとも約1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、または6か月の期間、少なくとも1日当たり約8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、または24時間の期間にわたって監視および測定される。別の実施形態において、活動レベルは、患者が覚醒している時間中
にのみ監視される。一実施形態において、活動レベルは、覚醒期間全体にわたって連続的な方法で測定される。別の実施形態において、患者は、ある特定の活動のためにデバイスを取り外すことができ、したがって、活動レベルは、覚醒期間にわたって非連続的な方法で測定される。別の実施形態において、覚醒期間は少なくとも10時間である。別の実施形態において、覚醒期間は少なくとも8時間である。別の実施形態において、覚醒期間は少なくとも12時間である。別の実施形態において、覚醒期間は少なくとも14時間である。
【0077】
[00101]本発明のある実施形態において、活動レベルは、ベースライン活動レベルと比
較して改善されている。ある実施形態において、ベースライン活動レベルは、血管拡張剤の投与前に少なくとも1週間監視および測定される。別の実施形態において、ベースライン活動レベルは、約1日~約14日間、約1日~約10日間、約1日~約7日間、または約1日~約5日間監視または測定される。別の実施形態において、ベースライン活動レベルは、約1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、または14日間、監視または測定される。本発明のある実施形態において、ベースライン活動は、約7日間監視または測定される。本発明のある実施形態において、ベースライン活動レベルは、1日当たり約6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間15時間、16時間17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、または24時間の期間にわたって監視または測定される。本発明のある実施形態において、ベースライン活動は、対象が覚醒している間、監視または測定される。本発明のある実施形態において、ベースライン活動は、対象が眠っている間、監視または測定される。本発明のある実施形態において、ベースライン活動は、対象が覚醒し、眠っている時間中に、監視または測定される。
【0078】
[00102]一実施形態において、活動レベルは、ベースライン活動レベルと比較して改善
されている。一実施形態において、活動レベルは、約1%~約50%改善される。別の実施形態において、活動レベルは、約1%~約25%改善される。別の実施形態において、活動レベルは、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%改善される。別の実施形態において、活動レベルは、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、または50%改善される。
【0079】
[00103]本発明の別の実施形態において、活動レベルは、ベースライン活動レベルと比
較して維持されている。別の実施形態において、活動レベルは、ベースライン活動レベルと比較して低下しない。別の実施形態において、活動レベルは、未治療患者またはプラセボ患者よりも治療患者において経時的に低下することが少ない。一実施形態において、活動レベルは、治療患者において約5%低下し、一方、活動レベルは、プラセボ患者または未治療患者において約20%以上低下する。
【0080】
[00104]本発明の一実施形態において、対象は、非利き腕にアクチグラフィモニターを
装着する。手首の加速度は、モニターによって継続的に測定される。モニターは30Hzで3軸加速度を記録する。アルゴリズムは、加速度の測定値を分単位の活動数に変換する。各分は、確立され検証されたカットポイントに基づいた活動レベルで分類される。アルゴリズムはまた、装着時間、カロリー、およびその他のパラメーターを決定することができる。1日の活動データは、データの比較ができるように、週の活動レベルに変換される。所定のフィルターを利用して、順守データのみが分析されるようにする。このようなフィルターには、順守を確保するための最小数の「装着覚醒」分(例えば、少なくとも600分)を含めることができ、および順守(complaint)週に少なくとも3日の順守日を含めることができる。フィルターは、アクチグラフィ分析に使用される業界標準に
基づいていてもよい。
【0081】
[00105]カウントは、複数の方法で活動レベルに変換することができる。例えば、カウ
ントの平均は、身体活動の直接的な測定値を提供する。表1に示すように、1日の各分を活動強度に変換して、座位、軽強度、中強度、および高強度活動の時間量を決定することができる。
【0082】
【0083】
心肺および肺関連状態
[00106]本発明の方法は、以下に限定されないが、特発性肺線維症(IPF)、肺高血
圧症、I~V群の肺高血圧症(PH)を含む肺動脈性肺高血圧症(PAH)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、肺気腫、喘息、間質性肺疾患、および肺線維症を含む、心肺状態および/または肺関連状態を有する患者において有用である。
【0084】
[00107]本発明のある実施形態において、肺疾患は、I~V群の肺高血圧症(PH)の
ような他の肺疾患と関連する肺高血圧症である。別の実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、間質性肺疾患と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、肺疾患および/または肺関連状態は、特発性肺線維症と関連する肺高血圧症である。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明の別の実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症する
リスクが中程度である。本発明の別の実施形態において、IPFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。本発明のある実施形態において、ILDに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが高い。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが中程度である。本発明のある実施形態において、PFに罹患している患者は、肺高血圧症を発症するリスクが低い。
その他の血管拡張剤および酸素の投与
[00108]本発明は、心肺状態もしくは肺関連状態を有する患者において、活動レベルを
改善もしくは維持する方法、または活動レベルの低下を予防する方法に関する。この方法は、患者に血管拡張剤を投与し、次にアクチグラフィを使用して活動レベルの変化を監視および測定することを含む。
【0085】
[00109]本発明のある実施形態において、血管拡張剤は、治療する医師からの指示に従
って患者に投与される。
[00110]本発明のある実施形態において、本発明で有用な血管拡張剤には、以下に限定
されないが、全身性血管拡張剤および局所血管拡張剤が含まれる。一実施形態において、全身性血管拡張剤には、以下に限定されないが、硝酸塩が含まれる。別の実施形態において、局所血管拡張剤には、以下に限定されないが、酸素、一酸化窒素、iNO、シルデナフィル、タダラフィル、およびニトロプルシドが含まれる。
【0086】
[00111]本発明の一実施形態において、患者はまた、本発明に従う血管拡張剤と共に酸
素を投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、最大20L/分で投与される。本発明のある実施形態において、酸素は、最大1L/分、2L/分、3L/分、4L/分、5L/分、6L/分、7L分、8L/分、9L/分、10L/分、11L/分、12L/分、13L/分、14L/分、15L/分、16L/分、17L/分、18L/分、19L/分、または20L/分で投与される。本発明のある実施形態において、酸素は医師が処方するように投与される。別の実施形態において、患者は、長期酸素療法(LTOT)を受けている。別の実施形態において、患者は、1日当たり24時間酸素を投与される。別の実施形態において、患者は、1日当たり少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24時間酸素を投与される。別の実施形態において、患者は、1日当たり少なくとも12時間酸素を投与される。
【実施例0087】
[00112]本明細書に包含される実施形態は、以下の実施例を参照しつつ、ここで説明さ
れる。これらの実施例は、例示のみの目的で提供され、本明細書に包含される開示は、決してこれらの実施例に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、本明細書で提示される教示の結果として明らかとなるありとあらゆる変形を包含すると解釈されるべきである。
【0088】
[00113]
実施例1
適切なトリガー/アーミング閾値(Arming Thresholds)のための精密な呼吸感度の測定
[00114]呼吸を検出するために閾値アルゴリズムを用いるデバイスを、この実施例(実
施形態1)で使用した。閾値アルゴリズムは、圧力を用いて呼吸を検出し、これは、呼吸を検出し、計数するためには、特定の閾値を下回る圧力降下が吸息に認められなければならないということである。圧力閾値は、実施形態1のデバイスの検出感度を変更する結果として、修正され得る。いくつかの呼吸感度設定を、本実施例で試験した。1を最低感度
、10を最高感度とした1~10の設定を試験した。cmH2Oに示されるトリガー閾値は、一酸化窒素が送達される閾値レベルである。同じくcmH2Oに示されるアーミング閾値は、デバイスを一酸化窒素の次の送達に備える閾値レベルである。このデータを以下の表1に示す。
【0089】
[00115]以下の表1は、本実施例で収集されたデータセットを示す。呼吸感度設定の変
動は、最低感度設定(1)で-1.0から最高感度設定(10)で-0.1までのトリガー閾値(cm H2Oで測定)の上昇をもたらした。さらに、アーミング閾値(cm H2Oで測定)は、感度設定1から設定6まで0.1の値を維持し、その後10までの各感度設定において0.02ずつ低下した。これは、最高感度の呼吸感度設定によって、呼吸をより正確に検出でき、それによって、より短い時間窓、すなわち、呼吸の吸息部分におけるより早期に、一酸化窒素のより正確なパルス送達がもたらされることを示唆する。これらのデータに基づいて、感度設定8および10における追加の試験を行った。
【0090】
【0091】
[00116]結論として、より高い呼吸感度設定は、より低いトリガー閾値およびより高い
アーミング閾値と相関し、一酸化窒素の短くて精密なパルスを、療法の治療過程にわたって送達するためにデバイスを調整する。
【0092】
[00117]
実施例2
種々の呼吸パターンに対するデバイスの試験
[00118]上記の通り、一酸化窒素の正確で適時な送達は、本発明にとって重要である。
デバイスが、ガスの精密な用量を、精密な時間窓以内に送達するかを確認するため、人工肺および鼻モデルを使用して、10通りの異なる呼吸パターンを試験した。シミュレートした10通りの異なる呼吸パターンを分析し、呼吸パターンに、呼吸数(8~36bpm)、換気量(316~912mL)、および吸息:呼息(I/E)比(1:1~1:4)の変動がみられた。これらの変動的な呼吸パターンは、16歳以上という対象の年齢から予想されるパターンであり、表2に要約される。実際条件を可能な限り模倣した。
【0093】
【0094】
[00119]2つのデバイス実施形態が試験された-実施形態1を、感度レベル8および感
度レベル10で試験し、他のデバイス実施形態(実施形態2、さらに傾斜アルゴリズムを含む)を、感度レベル10で試験した。この調査は、2つのパートから構成された。パート1では、シミュレートした10通りの異なる呼吸パターンを用いて、吸息呼吸開始から一酸化窒素の送達開始の間の遅延時間を測定した。この遅延時間は、2つのデータポイントを使用して測定される-吸息開始(
図1、ポイントA)から同時に送達バルブが開く呼吸検出(
図1、ポイントB)の間の時間。パート2では、表2における同じ呼吸パターンに及ぶ送達されたパルスの持続時間および体積を測定した。ガスパルスの持続時間を、呼吸検出およびガス送達の開始に相当する送達バルブの同時開弁(
図2、ポイントA)からガス送達の完了(
図2、ポイントB)まで測定する。送達されたパルスの体積は、パルスの持続時間にわたるガス流量の積算によって測定される。さらに、遅延時間を測定したパート1からのデータとパルスの持続時間を測定したパート2からのデータを、時に「送達されたパルス幅」といわれる、用量送達時間を算出するために加算する。
【0095】
[00120]パート1:吸息開始からNO送達開始の間の遅延時間の測定。試験のこの部分
は、6mg/L(4880ppm)と入力された薬物濃度を用いて、75mcg/kg-IBW/時間の用量で実施された。この試験は、窒素のみを使用して行われた。パート1の主要出力は、吸息開始からバルブの開弁/呼吸検出の指標の間の持続時間である。
図1のポイントAは、肺の空気流量が休止線(resting line)のすぐ上に上昇したポイントである。バルブの開弁時点は、
図1のポイントBとして示され、検出器における急激な電圧降下として表示される。ポイントAからポイントBの間の時間間隔は、バルブの遅延時間、すなわちトリガー遅延であり、各呼吸パターンに対して算出される。合計吸息時間は、ポイントAからポイントC(吸息の終了時点である)までの間隔に相当する。
【0096】
[00121]パート2:送達されたパルスの持続時間および体積の測定。調査のこのパート
では、同じ呼吸パターンを使用した。10、15、30、および75mcg/kg-IBW/時間の用量を試験した。デバイスを、各用量、患者IBW、および呼吸数(1分間当たりの呼吸)に対してプログラムした。得られたパルスガス流量を、流量計によって特定した。パルスの持続時間は、バルブの開弁が示唆され、検出器における急激な電圧降下として表示され、
図2のポイントAに相当するポイントから、
図2のポイントBでガス流量がベースラインに戻る時点の間の時間である。送達されたパルスの体積は、パルスの持続時間の間の積算されたガス流量である。パルスの持続時間を、パート1からのパルスの遅
延時間に加算して、用量送達時間、すなわち「送達されたパルス幅」を得た。
図1は、パート1の結果を示す。
図1には、4つのパネルが示されている。2番目および4番目のパネルは、それぞれ流量制御バルブの作動に相当する呼吸検出および呼吸パターンの描写を示す。ポイントAは吸息の開始を示し、ポイントBは流量バルブの開弁に相当する呼吸検出を示し、ポイントCは吸息の終了を示す。このデータから、ポイントAからBの間の遅延時間を算出することができる。
【0097】
[00122]
図2は、パート2の結果を示す。
図2には、4つのパネルが示されている。2
番目および3番目のパネルは、それぞれ流量制御バルブの作動に相当する呼吸検出およびパルスガス流量の描写を示す。ポイントAは流量バルブの開弁に相当する呼吸検出を示し、ポイントBはパルス流動の終了を示す。このデータから、ポイントAからBの間のパルスの持続時間を算出することができる。
【0098】
【0099】
[00123]
図3は、表3に記載される各デバイスにおける呼吸検出数の結果を描写する。
実施形態2、すなわち
図3の緑色のデータは、一酸化窒素の少なくとも93%が呼吸の吸息部分の最初の3分の1以内で送達されることを示す。一酸化窒素の100%は、呼吸の吸息部分の最初の2分の1以内で送達される。それに比べて、感度設定8の実施形態1では、一酸化窒素の少なくとも17%が呼吸の吸息部分の最初の3分の1以内で送達され、少なくとも77%が呼吸の吸息部分の最初の2分の1以内、少なくとも95%が呼吸の吸息部分の最初の3分の2以内に送達される。感度設定10の実施形態1は、一酸化窒素の少なくとも62%が呼吸の吸息部分の最初の3分の1以内で送達され、少なくとも98%が呼吸の吸息部分の最初の2分の1以内、100%が呼吸の吸息部分の最初の3分の2以内に送達される結果を示した。
図4は、3つ全ての試験を組み合わせたデータ曲線を描写する。
【0100】
[00124]このデータから、より多くの一酸化窒素は、治療の過程の間、より短い時間に
わたってパルス毎により精密に送達されているため、単回の治療の過程にわたって、一酸化窒素のより少ない用量が必要とされていると結論付けられる。一酸化窒素のより少ない用量は、全体的により少ない薬物の使用に繋がり、有害な副作用のリスクの低下にも繋がる。
【0101】
[00125]実施例3:間質性肺疾患に関連する肺高血圧症を有する患者における活動パラ
メーターの評価(コホート1)-肺線維症。
[00126]患者を2つのコホートに分け、治療:プラセボについて1:1(コホート1)
または2:1(コホート2)にランダム化した。患者には、8週間(コホート1)または16週間(コホート2)の期間、1日当たり最長24時間、30mcg/kg IBW/時間(iNO30、コホート1)または45mcg/kg IBW/時間(iNO45、コホート2)のいずれかを投与した。コホート1は41人の患者で構成され、非盲検フェ
ーズに延長され、これは現在進行中である。非盲検フェーズには、iNO30またはiNO45を投与されたiNO患者が含まれる。以下のデータは、コホート1のトップライン結果を表す。コホート3は、iNO45投与を使用する極めて重要なフェーズ3群になる。
【0102】
[00127]研究の期間中、すべての患者は、治療する医師が処方したあるレベルのバック
グラウンド酸素を投与された。バイタルサインおよびベースライン6MWD試験が0日目に測定され、活動モニターが提供された。患者の活動は、ウェアラブル医療グレードの活動モニター(Actigraph GT9X)を使用して、治療期間全体にわたって測定された。バイタルおよび別の6MWD試験は、コホート1では4週目および8週目、コホート2では12週目および16週目に測定された。
【0103】
[00128]Actigraph GT9Xは、対象の動きおよび加速度を30Hzで継続
的に監視する3軸加速度計である。加速度の測定値は、分単位の活動「カウント」に変換される。これらのカウントは、確立され検証された各日のカットポイントに基づいて活動強度に変換することができる。各1分のレコードは、睡眠/覚醒タグ、装着/非装着タグ、X、Y、およびZ軸カウント、および座位、軽強度、中強度、または高強度などの分類を含む。分データは、座位、軽強度、中強度、または高強度の活動の分数;累積カウント(X、Y、およびZ軸);非座位活動における分数(軽強度、中強度、または高強度の合計)、VMPAにおける分数(中強度および高強度の合計);ならびに全般的活動、を含む1日のレコードのために要約され、これは、
【0104】
【0105】
のように算出される。
[00129]月および週データは、期間内のすべての「順守日」について出力された1日次
データを平均することによって計算される。順守日は、≧600分の装着-覚醒時間を含み;順守月は、期間内に≧14日の順守日を含み;順守週は、期間内に≧3日の順守日を含む。非順守の日、週、または月は、分析に使用されなかった。
【0106】
[00130]肺線維症集団にとって意味があり、この特定の研究に関連する活動は、IPF
Voice of Patient-FDA Meeting and Report、2015によって識別され、報告された。これらの活動は、以下の表5Aに要約されているように、推定代謝当量レベルに基づく活動強度によってグループ化することができる。
【0107】
[00131]ここで、コホート1の結果が提供される。6分間歩行距離(6MWD)試験サ
ポートアクチグラフィの結果。コホート1には、プラセボに対し治療群に3倍の6MWD改善者が存在していた。6MWDにおける改善は、患者のベースラインレベルを超える6MWDにおける15%以上の改善として定義される。プラセボを受けている場合では約11%であるのに対し、治療を受けている患者の31%が、6MWDにおいて改善ししており、より重度の肺高血圧症を有する患者は、ベースラインレベルよりも大幅な改善を示した(INOpulse患者では+6メートルの変化、プラセボでは-7メートルの変化)。さらに、コホート1では、6MWDにおいて、プラセボを受けている場合は-6メートルの変化に対して、INOpulseを少なくとも12時間装着した患者では+10メートルの全般的変化が生じた。距離-飽和度の積(DSP)および積分DSP(IDSP)
の複合評価項目は、6MWDと比較して増加しており、これは換気/血流(V/Q)の利益を検証する。さらに、iNOは忍容性が良好であり、安全性の懸念はなかった。
【0108】
[00132]ある特定のアクチグラフィパラメーター(MVPAおよび全般的活動)に加え
て、NT-proBNP変化の追加の有効性パラメーターも分析された。NT-proBNPは、心室が負荷および伸展の増加(肺高血圧症によって引き起こされる)の下に置かれた場合に心筋細胞によって放出されるナトリウム利尿ペプチドである。したがって、肺高血圧症は、NT-proBNPのレベルの上昇をもたらす。肺血管系を標的とする治療は、NT-proBNPのレベルの上昇を維持または低下させることが予測される。一般に、ベースラインレベルが高いほど、低下の可能性が高くなる。
【0109】
[00133]6MWT中のSpO2底値(または最低酸素飽和点)も測定された。
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
表4および表5は、コホート1からの治療患者およびプラセボ患者の主要な出力および活動パラメーターの変化を示している。表4は、治療患者および未治療患者の活動レベルの改善に関する統計的に有意なデータを示す。表5は、治療患者およびプラセボ患者のデータを、プラセボ補正変化とともに示す。
【0114】
[00134]表6は、対象個体群統計および疾患の特徴を示す。
【0115】
【0116】
[00135]結果は、ウェアラブル活動モニター(Actigraph GT9X)で測定
した場合、iNOが臨床的および統計的に有意な活動の改善を提供することを示す。NT-ProBNPにおける変化は活動結果と適合しており、プラセボ患者の悪化がより大きいことを示している。他の承認されたPAH全身血管拡張剤とは異なり、INOpulseの標的化送達によって、運動中の酸素飽和度が改善される。複数のアクチグラフィパラメーターを使用して、プラセボを受けた対象に対し、iNO30を受けた対象に対する一貫した利益を示した。統計的に有意な利益は、中強度および全般的活動およびカロリーに見られる。以下の表7~10の結果の概要を参照のこと。
【0117】
【0118】
[00136]表7は、iNO-PFコホート1からのアクチグラフィ結果を示す。iNO群
における改善は、すべてのパラメーターについてプラセボと比較して統計的に有意であった:MVPA(p=0.04)、MVPAにおける覚醒時間の割合(p=0.04)、全般的活動(p=0.05)、およびカロリー(p=0.05)。MVPAは、この試験の極めて重要なフェーズ3コホートに対する主要評価項目である。
【0119】
[00137]
図7A~7Dは、iNOが、MVPA、全般的活動、非座位活動、および1日
のカロリーの活動パラメーターにおいて一貫した持続的な利益を実証したことを示している。データは、研究の残りの期間にわたって(8週目まで)維持される約4週間の一貫した分割を示す。
【0120】
【0121】
[00138]表8は、支持パラメーターの改善を示している。iNO群の飽和度低下の減少
およびSpO2底値の増加は、その群の酸素飽和度の改善につながる。心不全の指標であるペプチドマーカーNT-ProBNPは、プラセボ群でより大きな増加を示し、病態の悪化を示している。
【0122】
【0123】
[00139]表9は、安全性データの概要を示す。コホート1の安全性研究は、iNO45
に対する用量漸増を支持している。重大な予想外の副作用(serious, unexpected suspected adverse reactions)の疑いはなく、予想外の有害事象もなかった。すべての重大な有害事象は、研究とは無関係であると報告された。AEおよびSAEの発生率は低く、治療群とプラセボ群の両方にわたって均衡していた。パルス吸入用一酸化窒素は安全であり、iNO30で忍容性が良好である。
【0124】
【0125】
[00140]表10は、プラセボ群における一貫した低下と比較して、iNO30治療がM
VPAを維持することを示している。15%以上のMVPAの変化は、有意な変化と考えられる。iNOを受けた患者の約23%がMVPAにおける有意な改善を示したのに対し、プラセボ患者の71%はMVPAにおける有意な低下を示した。
【0126】
[00141]最後に、
図8Aおよび
図8Bでは、非盲検治療における16人の対象について
一貫した改善を実証している。
図8Aは、MVPAの週平均変化を1日当たりの分単位で示し、
図8Bは、盲検研究(左パネル)と非盲検継続研究(右パネル)の両方における治療患者およびプラセボ患者の1分当たりのカウント単位における全般的活動の平均週変化を示す。盲検化iNO患者は、MVPAにも全般的活動のいずれにもほとんど変化を示さなかったが、盲検化プラセボ患者は、約3分のMVPAにおける低下と、1分当たり約20カウントの全般的活動の低下を示した。これに対して、非盲検継続投与(OLE)研究
では、OLE iNO群とOLEプラセボ群の両方がMVPAおよび全般的活動の両方において一貫した改善を示した。OLE iNO群およびOLEプラセボ群は、MVPAにおいて約1分の改善を示し、全般的活動については、それぞれ1分当たり約20カウントおよび1分当たり15カウントの改善を示した。
【0127】
[00142]要約すると、プラセボと比較して、iNO30を受けた対象に対する複数の活
動パラメーターおよび他の支持パラメーターにおいて一貫した利益が見られる。MVPAは最大の利益を示し、統計的に有意なプラセボ補正利益は約34%であった。全般的活動はまた、約12%の統計的に有意なプラセボ補正利益を示した。非座位活動およびカロリーなどの他のパラメーターは、iNOを受けた対象に対する全般的活動の利益を支持していた。酸素飽和度およびNT-ProBNPの改善は、INOpulseの二重作用機序(局所血管拡張およびV/Qマッチング)を支持している。DSPは、6MWD単独よりも大きな利益を示し、運動中に酸素飽和度を維持するINOpulseの能力と適合している。臨床研究は進行中である。
【0128】
[00143]上記のコホート1について示されたデータは、コホート1の臨床研究中に収集
された生データであり、縦断分析を示していない。コホート1と2の両方について実施例4に示されているデータには、反復測定混合効果モデル(Mixed Effect Model Repeated Measure)(MMRM)モデルを使用して分析されたデータが含まれ、プールされたプラセボデータも含まれている。
【0129】
[00144]実施例4:間質性肺疾患に関連する肺高血圧症を有する患者における活動パラ
メーターの評価(コホート2)-肺線維症。
[00145]実施例4は、実施例3のコホート2、すなわちiNO45(45mcg/kg
IBW/時間)を投与された患者について収集されたデータを示しており、コホート1および2に関連するMMRM分析も含む。コホート2には、4か月間(16週間)の盲検治療期間およびそれに続く非盲検継続のために、iNO45またはプラセボのいずれかに2:1でランダム化された44人の対象が含まれていた。コホート2からの患者は、プラセボに対して、歩行、階段を登る、庭、仕事、および同様の活動として定義される中高強度身体活動(MVPA)において統計的に有意な改善を示した。
図9Aは、iNO45による治療により、MVPAが1日当たり14分改善され、または全般的改善が20%(p=0.02)であることを示す。
図9Bは、全般的活動が1分当たり100カウント改善されることを示しており、これは、7%の改善を表す。
【0130】
[00146]アクチグラフィの改善は、全般的生活の質および呼吸困難または息切れに関す
る対象の視点を提供する、2つの臨床的に関連する患者報告アウトカム(patient
reported outcome)測定値(PRO)の改善によって一方向に支持された。これらのPROは、セントジョージ呼吸器質問票(SGRQ)およびUniversity of California、San Diego息切れ質問票(UCSD SOBQ)を含む。これらの質問票は両方とも、当技術分野で使用される標準的質問票であり、周知であり、臨床的に受け入れられている。
図10A~10Cは、SGRQでの患者のスコアを示す。これらのデータは、患者がプラセボよりもiNO45治療において全般的に気分が良くなったことを示している。
図11は、UCSD SOBQでの患者スコアを示しており、これは、プラセボよりもiNO45治療を受けている間、患者が息切れを感じることがより少なかったことを示している。
【0131】
[00147]表11は、コホート2(iNO45)に対する安全性データを示す。コホート
2では、パルスiNOの忍容性は良好であった。有害事象(AE)および重大な有害事象(SAE)の発生率は、治療群とプラセボ群の両方で低かった。AEは全体的に重大ではなく、観察可能な傾向はなかった。すべてのSAEは、研究薬とは無関係であると報告さ
れた。
【0132】
[00148]
【0133】
【0134】
[00149]表12は、コホート2の患者個体群統計の概要を示す。
【0135】
【0136】
[00150]表13は、コホート1および2のINOpulse投与に対する患者順守に関
連するデータを示す。患者順守はコホート1および2のそれぞれで類似しており、両群が平均して1日当たり目標の12時間を上回った。
【0137】
【0138】
[00151]表14は、その日中の活動レベルの正確な評価を確保するために、覚醒中に少
なくとも1日当たり10時間活動モニターを装着することに関する患者順守を示す。表に記載されているように、両コホートは1日当たり必要な10時間を超える平均順守を示したが、コホート2は順守日数のパーセントが79%から88%に増加し、コホート2でのトレーニングが改善されたことを示している。
【0139】
【0140】
[00152]
図12は、2か月目(iNO30およびiNO45)および4か月目(iNO
45)におけるMVPA(
図12A)および全般的活動(
図12B)における対数変換された推定変化を示す。2か月目のデータは、4~8週目のプールされたプラセボデータに基づいており、4か月目のデータは、2か月目~4か月目の間に収集されたデータに基づいている。
図12Aに記載されているように、ベースラインMVPAからの変化は、コホート1と比較してコホート2の方が小さい。さらに、
図12Bに示すように、コホート2の全般的活動におけるベースラインからの変化は、2か月目のコホート1および2と比較して4か月目の方が小さい。
【0141】
[00153]
図13は、コホート2の月(
図13A)および週(
図13B)ベースでの対数
変換されたMVPA予測限界効果を示す。両方の場合において、iNO45により治療を受けている患者は活動レベルを維持しているが、プラセボを受けている対象は、経時的に悪化している。重要なことに、治療効果は「遅く」、2つの群の差異は治療の2か月目に始まり、研究の後半に最も顕著に現れる。低下の形状は月分析と週分析の間で類似しているが、月分析はばらつきが低く、残差の標準偏差は、週次分析の0.20と比較して0.
14である。
【0142】
[00154]表15は、6MWD中のSpO2底値が、コホート1および2の両方について
、治療群とプラセボ群との間の最小の差異を示したことを示している。酸素飽和度を維持する能力は、パルスiNOが十分に換気された肺胞を標的とし、この患者集団においてV/Q(換気/血流均衡)を維持することができることを示した以前の結果と適合している。
【0143】
[00155]
【0144】
【0145】
[00156]NT-proBNPレベルの変化を、コホート1および2について分析した。
コホート1では、MMRMモデルを使用して分析した場合、iNO30群とプラセボ群との間でベースラインからの変化に差異はなかった。さらに、MMRMモデルを使用した、コホート1のiNO30群とプールされたプラセボとの間に、統計的に有意な差異は8週目まで観察されなかった。8週目まで、iNO45とプールされたプラセボとの間に統計的に有意な差異があった;しかし、16週間にわたってiNO45を比較すると、おそらくサンプル試料が小さいため、この差異は失われた。表16は、コホート1および2では8週間にわたる、コホート2では16週間にわたるNT-proBNP(pmol/L)の変化を示す。
【0146】
【0147】
[00157]臨床的改善までの時間は、6MWDにおける≧15%の改善、または≧4ポイ
ントの低下として定義されるSGRQにおける改善、またはDSP/IDSPにおける≧15%の改善で構成される複合評価項目であった。8週間にわたるコホート1とプールされたプラセボとの間には、最小限の差異があった。統計的に有意ではないが、コホート2は、より大きなプールされたプラセボ群に対して評価した場合に増加したiNO45の臨床的改善を達成する対象のパーセンテージが増加する傾向を示した。この効果は主にSGRQにおける改善によって促進され、SGRQの集団全体に見られる利益をさらに裏付けている。
【0148】
[00158]臨床的悪化までの時間はまた、死亡率、または心肺悪化による入院、または6
MWDにおけるベースラインからの≧15%の低下、または機能クラスの悪化からなる複合評価項目であった。複数のイベントがあった場合、最初の臨床的悪化イベントのみが計数された。コホート1またはコホート2の臨床的悪化までの時間の差異は最小限であったが、より大きなプールされたプラセボに対して評価されたiNO45は、iNO45の臨床的悪化が低下する傾向を示し、より大規模な試験でより明らかになる可能性のある潜在的なシグナルを裏付けている。
【0149】
[00159]要約すると、プラセボと比較して、iNO45を受けた対象に対する複数の活
動パラメーターおよび他の裏付けとなるパラメーターにおいて一貫した利益が見られる。MVPAは最大の利益を示し、統計的に有意なプラセボ補正利益は約20%であった。全般的活動はまた、約7%の統計的に有意なプラセボ補正利益を示した。
【0150】
[00160]トップラインの結果は、iNO45が、4か月の治療期間にわたるMVPA(
中高強度身体活動)および全般的活動において、プラセボよりも明らかな利益を提供することを示している。iNO45を受けている対象は活動レベルを維持したが、プラセボを受けている対象は、一貫した低下を示した。4か月以上にわたって、iNO45を受けている対象は、MVPAにおいて19%のプラセボ補正利益を示し、全般的活動において7%のプラセボ補正利益を示した。iNO30とiNO45の比較は、両方の投与により活動レベル全体が維持され、2か月間にわたってiNO30よりもiNO45に潜在的な利益があることを示した。iNO30は2か月間しか試験されていないため、4か月目の投与間の比較評価を利用できなかった。
【0151】
[00161]コホート2におけるiNO45を、プールされたプラセボ群と8週間にわたっ
て比較した場合、NT-proBNPに統計的に有意な改善があった;しかし、16週間にわたってコホート2におけるiNO45をプラセボと比較した場合、この効果は失われた。16週目での効果は、試料サイズがより小さく、ベースラインでNT-proBNP値が異常である対象の数が少ないことによる場合がある。酸素飽和度はiNO30とiNO45の両方で維持され、V/Qの不均衡を引き起こすことなく肺血管拡張を提供するというINOpulse全体の作用メカニズムと適合していた。
【0152】
[00162]PROでは、コホート2の対象は、彼らのSGRQスコアを全体的に維持した
が、プラセボを受けている対象では悪化した。比較すると、コホート1の対象は、SGRQ測定でプラセボと比較して最小限の利益を示した。
【0153】
[00163]パルスiNOは、盲検治療期間中、コホート1のiNO30投与およびコホー
ト2のiNO45投与で、忍容性が良好であった。AEは治療群間で均衡しており、SAEの発生率は、コホート1の治療群とプラセボ群の両方で低かった。コホート2の場合、SAEを報告した対象の数は、プラセボ群(21.4%)と比較して治療群(10%)で少なかった。さらに、盲検治療期間中にコホート1と2の両方で発生したすべてのSAEは、薬物とは無関係であると報告された。報告された予想外のAEまたは予想外の重大な副作用の疑い(SUSAR)はなく、利益/リスクプロファイルは依然として好ましい。iNO45投与により見られる利益の一貫性は、クリーンな安全性プロファイルとともに、iNO45をプラセボに対して4カ月(16週)の盲検治療期間、評価する極めて重要な検証的第3フェーズコホートに、この投与を進めることの裏付けとなる。
【0154】
[00164]本発明の好ましい実施形態は、本明細書で示され、説明されているが、このよ
うな実施形態は、例としてのみ提供されており、その他に本発明の範囲を限定することを意図するものではない。記載される本発明の実施形態に対する種々の代替は、本発明を実施する際に採用されることがある。