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特開2024-133636皮膚エリテマトーデス及び扁平苔癬(LP)の治療のためのJAK1阻害剤の使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133636
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】皮膚エリテマトーデス及び扁平苔癬(LP)の治療のためのJAK1阻害剤の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/519 20060101AFI20240925BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALI20240925BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20240925BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K31/4155
A61K45/00
A61P43/00 111
A61P17/04
A61P1/02
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108863
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2022523053の分割
【原出願日】2019-10-16
(71)【出願人】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】スミス,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル,イェルク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】扁平苔癬の治療のための医薬を提供する。
【解決手段】扁平苔癬を治療するための医薬であって、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、および4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドから選択されるJAK1選択的阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む、前記医薬である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚エリテマトーデス(CLE)及び扁平苔癬(LP)から選択される疾患を治療することを必要とする患者においてそれを行う方法であって、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、
[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、
3-[1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピロリジン-3-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
3-(1-[1,3]オキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イルピロリジン-3-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[3-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
[trans-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-(4-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペラジン-1-イル)シクロブチル]アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-[(3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2R)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
4-(4-{3-[(ジメチルアミノ)メチル]-5-フルオロフェノキシ}ピペリジン-1-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]ブタンニトリル、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
{1-(cis-4-{[6-(2-ヒドロキシエチル)-2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-[(エチルアミノ)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(1S)-2-ヒドロキシ-1-メチルエチル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(2R)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル{trans-3-(4-{[4-({[(2S)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、及び
{trans-3-(4-{[4-(2-ヒドロキシエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
から選択されるJAK1選択的阻害剤、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩を、治療的有効量にて前記患者に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記JAK1選択的阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、JAK2、JAK3、及びTYK2よりも、JAK1に対して選択的である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記JAK1選択的阻害剤が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記薬学的に許容される塩が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記JAK1選択的阻害剤が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記薬学的に許容される塩が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記JAK1選択的阻害剤が、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記JAK1選択的阻害剤が、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記患者に追加の治療薬を投与することをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK2阻害剤、JAK1/JAK3阻害剤、TYK2阻害剤、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK2阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記JAK1/JAK2阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、JAK3及びTYK2よりも、JAK1及びJAK2に対して選択的である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記JAK1/JAK2阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記患者への前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩の局所投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記患者への前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩の経口投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記薬学的に許容される塩が、ルキソリチニブリン酸塩である、請求項13または15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記JAK1/JAK2阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩であり、1つ以上の水素原子が重水素原子によって置き換えられている、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記JAK1/JAK3阻害剤が、トファシチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10または18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が、前記患者への前記JAK1選択的阻害剤の局所投与を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、前記患者への前記JAK1選択的阻害剤の経口投与を含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患が皮膚エリテマトーデス(CLE)である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記皮膚エリテマトーデス(CLE)が、亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)及び慢性円板状エリテマトーデス(CDLE)から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患が、扁平苔癬(LP)である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ヤヌスキナーゼ(JAK)1の活性を調節する化合物を使用する、皮膚エリテマトーデス及び/または扁平苔癬(LP)の治療のための方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
皮膚エリテマトーデス(CLE)は、罹患患者において限局性の円板状局面から重度の広範な紅色鱗状(erythrosquamous)病変まで様々である異型遺伝子性の亜型のある炎症性自己免疫皮膚疾患である(例えば、Kuhn & Landmann,J.Autoimmun.2014,48-49:14-19を参照のこと)。この疾患は、IFN調節炎症性サイトカインによって組織化される、コロイド体及び表皮真皮接合部での抗上皮細胞傷害性リンパ球浸潤からなる「界面皮膚炎」(ID)と呼ばれる典型的な組織学的パターンを特徴とする(例えば、Wenzel & Tuting,J.Invest.Dermatol.2008,128:2392-2402、及びWenzel et al,Br.J.Dermatol.2007,157:752-757を参照のこと)。
【0003】
CLEは起源が多因子性であり、遺伝的危険因子及び環境危険因子の両方が含まれる(例えば、Kunz et al,Exp.Dermatol.2015,24:510-515、Sinha & Dey-Rao,J.Investig.Dermatol.Symp.Proc.,2017,18:S75-S80、及びSzczech et al,Lupus,2017,26:791-807を参照のこと)。特に紫外線は、細胞の損傷、アポトーシス及びDNA含有小疱の放出を促進する。細胞残屑の排除が障害され、二次性の壊死を伴うと考えられている(例えば、Kuhn et al,Arthritis Rheum.2006,54:939-950、Caricchio et al,The Journal of Immunology 2003,171:5778-5786、及びMahajan et al,Front Immunol.2016,7を参照のこと)。家族性凍瘡状ループス等の一部の症例では、TREX1遺伝子変異が基礎原因となって、TREX1エキソヌクレアーゼ機能不全及び細胞質内DNAの高蓄積をもたらし得る(例えば、Gunther et al,J.Am.Acad.Dermatol.2013,69:e179-81、Grieves et al,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.2015,112:5117-5122、Gunther et al,Dermatology(Basel),2009,219:162-166、及びPeschke et al,J.Invest.Dermatol.2014,134:1456-1459を参照のこと)。
【0004】
細胞損傷のために内因性核酸モチーフ等の核成分が核外に放出されると、それらが、損傷関連分子パターン(DAMP)として認識され得る(例えば、Scholtissek et al,J.Invest.Dermatol.2017,137:1484-1492を参照のこと)。CLEでは、角化細胞、特に形質細胞様樹状細胞(pDC)がDAMPに対して不適切に反応し、TLR依存性またはTLR非依存性の経路を介した膨大なI型IFN産生を伴うという証拠がある(例えば、Mustelin et al,Front.Immunol.2019,10:238、Wollenberg et al,J.Invest.Dermatol.2002,119:1096-1102、Wenzel et al,Arch.Dermatol.Res.2009,301:83-86、Yu et al,J.Autoimmun.2013,41:34-45、及びKatayama et al,J.Invest.Dermatol.DOI:10.1016/j.jid.2019.02.035を参照のこと)。自己分泌ループが起こると、IFNは、角化細胞上のIFN-α/β受容体に結合し、これにより、JAK/STAT経路及びCXCL10等の炎症性メディエーターの発現が活性化される。CXCL10は、CXCR3+エフェクター細胞及びpDCを皮膚病変に動員することが知られている(例えば、Wenzel et al,Arch.Dermatol.Res.2009,301:83-86、及びWenzel et al,J.Pathol.2005,205:435-442を参照のこと)。それらのエフェクター細胞は、角化細胞性ネクロトーシス(例えば、Lauffer et al,J.Invest.Dermatol.2018,138:1785-1794を参照のこと)、サイトカイン放出及び慢性炎症の特徴としての持続的な「自己動員」(例えば、Meller et al,Arthritis Rheum.2005,52:1504-1516を参照のこと)を誘導する。
【0005】
この環は、生活の質に強い負荷をもたらし得る(例えば、Samotij et al,Postepy Dermatol.Alergol.2018,35:192-198、及びOgunsanya et al,Int.J.Womens Dermatol.2018,4:152-158を参照のこと)。現行のガイドラインに従って、コルチコステロイド及び抗マラリア薬が、CLEの一次治療として確立されている。しかしながら、コルチコステロイドは副作用によって制限されており、特に抗マラリア薬抵抗性の患者では、長期治療が困難となり得る。さらに、CLEを対象に特別に承認されている薬物は存在せず、特に臨床的不均一性及びそれによる試験デザインの難しさのため、少数の臨床試験しか実施されていない(例えば、Chen et al,F1000Res.2019,8を参照のこと)。
【0006】
American College of Rheumatology(ACR)は、全身性エリテマトーデス(SLE)を他の自己免疫疾患と区別することを目的として、11の臨床基準及び臨床検査基準のスキームを確立した。ACRガイドラインでは、SLEの診断のためには11の基準のうち4つを満たす必要があるが、実際に皮膚に関するのはその基準のうち4つのみ(頬部発疹、円板状病変、粘膜潰瘍、及び光過敏性症)であり、そのため、皮膚病理の併発は、SLEの診断に不可欠というわけではない。逆に、皮膚エリテマトーデス(CLE)亜型は全身性疾患(SLE)がなくても起こり得、CLEは、SLEよりも頻度が2~3倍高い(例えば、Tebbe & Orfanos,Lupus,1997,6(2):96-104を参照のこと)。
【0007】
これらの制約を考慮すると、新たな治療選択肢が医学的に必要とされている。本出願は、この必要性及び他の必要性を対象とする。
【発明の概要】
【0008】
本出願は、皮膚エリテマトーデス(CLE)及び扁平苔癬(LP)から選択される疾患を治療することを必要とする患者においてそれを行う方法を提供し、患者に、本明細書で提供されるJAK1選択的阻害剤を治療的有効量にて投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】CLEの皮膚病変におけるJAK1発現の機能的役割を示す。異なる炎症性皮膚障害の患者(亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE、n=5)、慢性円板状エリテマトーデス(CDLE、n=5)、扁平苔癬(LP、n=6)及び健常対照者(HC、n=5))の皮膚試料からの代表的な免疫組織化学的切片(抗ホスホJAK1染色)を示す(元の拡大率:200倍)。
図1B】CLEの皮膚病変におけるJAK1発現の機能的役割を示す。
【数1】
無発現から
【数2】
強発現までのスコアリングによって半定量的に記録したpJAK1の発現を示す(例えば、Wenzel et al.J.Pathol.2005,205:435-442を参照のこと)。全ての棒は、平均±SEM、
【数3】
(クラスカル・ワリス検定)を示す。
図1C】CLEの皮膚病変におけるJAK1発現の機能的役割を示す。健常対照者(HC)と比較した、CLE病変皮膚におけるIFN関連遺伝子の発現上方制御を示す(2倍、p<0,01;ウェルチのt検定)。
図1D】CLEの皮膚病変におけるJAK1発現の機能的役割を示す。CLEで上方制御されているKEGGパスウェイを示す。KEGGパスウェイの分類は、Database for Annotation,Visualization and Integrated Discovery(DAVID ver.6.8)を使用して行った。EASE ScoreでP値を生成した。カウント:KEGGパスウェイそれぞれの内部でCLEにおいて2倍を超えて上方制御されている遺伝子の数。
図2A】培養角化細胞における、炎症性サイトカイン発現及びIFN関連遺伝子調節に対する薬理学的JAK1阻害の効果を示す。刺激されたHaCaT(eNA)、刺激され、かつ阻害剤処理されたHaCaT(eNA+JAK1阻害剤{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル(すなわち、INCB039110);eNA+JAK1/2、阻害剤:ルキソリチニブ)、及び未刺激HaCaT(C-培地)における、抗pJAK1抗体染色の面積強度平均をピクセル値で示す。Fijiソフトウェアを使用して測定を実施した。細胞群(entity)ごとの測定値(n=5)。散布図はいずれも、
【数4】
を示す(マン-ホイットニーのU検定)。
図2B】培養角化細胞における、炎症性サイトカイン発現及びIFN関連遺伝子調節に対する薬理学的JAK1阻害の効果を示す。eNAで刺激され、未処理か(eNA)または阻害剤処理(eNA+JAK1、阻害剤:INCB039110;eNA+JAK1/2、阻害剤:ルキソリチニブ)されたHaCaT細胞、及び未刺激HaCaT細胞(培地対照)の代表的な免疫蛍光顕微鏡写真を示す。抗pJAK1抗体染色は赤、核のDAPI染色は青、元の拡大率:400倍。
図2C】培養角化細胞における、炎症性サイトカイン発現及びIFN関連遺伝子調節に対する薬理学的JAK1阻害の効果を示す。eNAで刺激されたNHEK(+、4試料)内でのCLEに典型的な遺伝子の発現、及びJAK1選択的INCB039110による刺激NHEKの処理(JAK1;4試料)後に2倍を超えて下方制御された発現(p<0,05;ウェルチのt検定)を示す。
図2D】培養角化細胞における、炎症性サイトカイン発現及びIFN関連遺伝子調節に対する薬理学的JAK1阻害の効果を示す。24時間のインキュベーション後の、刺激されたHaCaTでのCXCL10発現に対する異なるJAK阻害剤の効果を示す。細胞を、JAK1選択的INCB039110(JAK1)、JAK1/2選択的ルキソリチニブ(JAK1/2)及びJAK3選択的FM-381(JAK3)で処理した。ELISAにより測定した。全ての棒は、
【数5】
(マン-ホイットニーのU検定)を示す。
図2E】培養角化細胞における、炎症性サイトカイン発現及びIFN関連遺伝子調節に対する薬理学的JAK1阻害の効果を示す。刺激された細胞(eNA、n=3)及び刺激後にJAK1阻害剤(INCB039110)で処理された細胞(eNA+JAK1、n=3)におけるCXCL10の発現を表す顕微鏡写真(元の拡大率:400倍)、及び対応するCXCL10発現スコアを示す。全ての棒は、平均±SEM、
【数6】
(マン-ホイットニーのU検定)を示す。
図3A】ループス易発性のTREX1-/-マウスモデルにおけるインビボでの薬理学的JAK1阻害を示す。UV刺激(-3日目に開始;3x450mJ/cmで115秒間)を受けたTREX1-/-マウス(n=8)の、ベースライン時(0日目、処置の開始)ならびにJAK1選択的INCB039110またはプラセボによる処置から4日後及び7日後の臨床所見を示す。
図3B】ループス易発性のTREX1-/-マウスモデルにおけるインビボでの薬理学的JAK1阻害を示す。マウスに適応させて修正したCLE疾患の面積・重症度指数(マウスRCLASI)の平均スコア±SEM(群あたりn=4のマウス)を示す。
図3C】ループス易発性のTREX1-/-マウスモデルにおけるインビボでの薬理学的JAK1阻害を示す。病変皮膚の組織学的(H&E)及び免疫組織学的(CD45)顕微鏡写真(元の拡大率:400倍)を示す。プラセボ処置マウス及びJAK1阻害剤処置マウスの病変皮膚における対応するCD45発現の炎症スコア。全ての棒は、平均±SEM、
【数7】
(マン-ホイットニーのU検定)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本出願は、特に、皮膚エリテマトーデス(CLE)及び扁平苔癬(LP)から選択される疾患を治療することを必要とする患者においてそれを行う方法を提供し、JAK1選択的阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を、治療的有効量にて投与することを含む。いくつかの実施形態では、疾患は、皮膚エリテマトーデス(CLE)である。いくつかの実施形態では、皮膚エリテマトーデス(CLE)は、急性皮膚エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、及び慢性皮膚エリテマトーデスから選択される。いくつかの実施形態では、皮膚エリテマトーデス(CLE)は、急性皮膚エリテマトーデスである。いくつかの実施形態では、皮膚エリテマトーデスは、亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)及び慢性円板状エリテマトーデス(CDLE)から選択される。いくつかの実施形態では、皮膚エリテマトーデスは、亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)である。いくつかの実施形態では、皮膚エリテマトーデスは、慢性円板状エリテマトーデス(CDLE)である。いくつかの実施形態では、疾患は、扁平苔癬(LP)である。
【0011】
本明細書で使用される場合、「皮膚ループス」とは、症状が皮膚を侵すものに限られている疾患の形態を指す。例えば、患者は、皮膚ループスと診断される場合があるが、それは、その患者が、体の複数部位を侵すSLEであることを意味するわけではない。同様に、患者がSLEである場合、その患者が必ずしも皮膚ループスに罹患することを意味しない。そのために、疾患の活動性及び損傷を定量的に測定する皮膚ループス面積・重症度指数(CLASI)スコアリングシステムが考案された(例えば、Albrecht et al.,.J.Invest.Dermatol.2005,Nov;125(5):889-94を参照のこと)。この指数は、病変の形態及び解剖学的位置を考慮したものであり、その後、皮膚科医及びリウマチ専門医の両方にとっての信頼性試験により検証されている。
【0012】
皮膚ループスはいくつかの亜型に分けられ、これには急性皮膚エリテマトーデス、亜急性皮膚エリテマトーデス、及び慢性皮膚エリテマトーデスが含まれる。急性皮膚LEは典型的に、20歳代で発症し、活動性SLEと高頻度で関連する。急性皮膚ループスの最も典型的な形態は頬部発疹であり、顔の平坦な部分の皮膚が赤色で日焼けに似ている(例えば、Fabbri et al.,Am.J.Clin.Dermatol.2003,4(7):449-65を参照のこと)。これらの病変は典型的に、一過性で、日光に誘導され、瘢痕化しない。頬部発疹は、診断時、SLE患者の約50%に存在し、発疹の臨床的活動性は全身性疾患の活動性と対応していることが報告されている(例えば、Rothfield et al.,Clin.Dermatol.;2006,Sep-Oct;24(5):348-62を参照のこと)。
【0013】
慢性皮膚ループスには、円板状LE(DLE)、深在性LE(LEP)、凍瘡状LE(CHLE)、及び腫瘍性LE(LET)が含まれる。いくつかの実施形態では、慢性皮膚ループスは、円板状エリテマトーデス(DLE)、深在性エリテマトーデス(LEP)、凍瘡状エリテマトーデス(CHLE)、及び腫瘍性エリテマトーデス(LET)から選択される。
【0014】
円板状LE病変は、慢性皮膚エリテマトーデス(CCLE)の最もよく見られる病変であり、円板状の丸い病変として現れる。DLEは、30歳代及び40歳代の女性に高頻度で起こる。DLE患者は一般に、他のCLE亜型の患者と比較して疾患経過がより良性であり、大部分の患者(約90~95%)のみが他の器官系のループス(SLE)症状を発症することはない(例えば、Crowson & Magro,J.Cutan.Pathol.2001,28(1):1-23、Chong et al.,Br.J.Dermatol.2012,166(1):29-35を参照のこと)。びらんは通常頭皮及び顔に現れるが、体の他の部位にも出現する場合がある。円板状エリテマトーデスの病変は、多くの場合、赤く、鱗状で及び肥厚している。通常、病変は痛みはなく、そう痒もない。活動性DLE病変の組織学的検査により、角質増殖、ケラチンの詰まった拡張型の緻密な濾胞、基底角化細胞の空砲変性、及び強い炎症性の皮膚浸潤が明らかになる。
【0015】
深在性LE(LEP)、または脂肪織炎は、上腕及び下肢、顔、及び胸等の脂肪沈着が増加している部位に出現する有痛性の硬い皮下結節を特徴とする。LEPは、寛解及び再燃を特徴とする慢性の経過をたどる傾向があり、最終的に萎縮性瘢痕を残す(例えば、Fabbri et al.,Am.J.Clin.Dermatol.2003,4(7):449-65を参照のこと)。組織像は、密なリンパ球浸潤を伴う小葉性脂肪織炎を示す。
【0016】
凍瘡状ループス(CHLE)は、凍傷に似たCCLEのまれな型である。病変は、寒冷に曝露される部位での有痛性の紫色調をした局面及び結節として現れる。指、足趾、踵、鼻、及び耳等の肢端表面に中心部のびらんまたは潰瘍形成が起こる場合がある。凍瘡状ループスは、温度低下がある場合に起こり、凍傷との区別が困難であり得る。病理は、表皮萎縮、界面空胞形成、及び血管周囲単核球浸潤を示す。CHLE患者の約80%はSLEを発症しない(例えば、Hedrich et al.,Clin.Rheumatol.2008,27(8):949-54を参照のこと)。
【0017】
腫瘍性ループスは、主に女性に起こるSLEとは異なり、男性に選択的に起こる、極度の光過敏及び良好な経過を特徴とするCCLEの亜型である。臨床上、これらの病変は、境界が明瞭で隆起し、表面が滑らかな、紅斑性、浮腫性、蕁麻疹様の多環状局面として顔に現れる。
【0018】
主に若年から中年の女性において、亜急性皮膚ループス(SCLE)病変は、中心治癒を伴う鱗状の赤い環状(「輪状」)の発赤があると言われている。病変はまた、多環状である、すなわち、複数の環が一緒に集まった外観をしている場合がある。SCLEには2つの形態的亜型、すなわち、環状及び丘疹鱗屑性がある。環状の異型は、融合して多環状の列を生じる傾向のある、鱗状の環状紅斑性局面を特徴とする(例えば、Walling & Sontheimer,Am.J.Clin.Dermatol.2009,10(6):365-81を参照のこと)。丘疹鱗屑性の異型は湿疹に似ていることがあり、場合によっては粃糠疹に似ていることがある(例えば、Caproni et al.Int.J.Dermatol.2001,40(1):59-62を参照のこと)。SCLE病変は、胸部上部(「V字」分布)、上背部、ならびに腕及び前腕の伸側面等の露光部位で生じる。SLE患者の約10%にSCLE病変が現れ、全身性疾患の患者では、他の器官区画に軽度の症状しかない傾向がある。SCLE病変の病理学的検査では、基底角化細胞の空胞変性、真皮浮腫、角質増殖、角栓、及び表面のまばらな炎症性浸潤を示す(例えば、Fabbri et al.,Am.J.Clin.Dermatol.2003,4(7):449-65を参照のこと)。
【0019】
エリテマトーデス(すなわち、LE)におけるI型IFNの機能的役割についての最初の証拠は、組換えIFNαで治療され、この治療法が原因でSLEを発症した、カルチノイド腫瘍を患う患者の臨床観察から得られた(例えば、Ronnblom et al,Acta Oncol.1991,30:537-540を参照のこと)。このことは、組換えIFNβの注射部位側に皮下適用後にCLE様病変を発症した多発性硬化症患者の所見により支持された(例えば、Arrue et al,J.Cutan.Pathol.2007,34,Suppl 1:18-21を参照のこと)。SLE及びCLEの両方における遺伝子発現解析から、疾患の活動性と関連した、血液及び皮膚でのI型IFN関連炎症性サイトカインの強発現が明らかになった(例えば、Kuhn et al,Semin.Immunopathol.2016,38:97-112、及びMikita et al,J.Dermatol.2011,38:839-849を参照のこと)。これらの所見は、CLE皮膚病変内のIFN調節遺伝子強発現及び免疫経路を実証する本明細書に記載のデータにより支持される(例えば、図1A~1Dを参照のこと)。
【0020】
強いIFN-シグネチャーを記載している先行報告により、LE患者の抗IFNを対象とする治療戦略の開発が促された。抗IFNα剤(例えば、シファリムマブ(Sifalimumab)、ロンタリズマブ(rontalizumab))は、臨床試験で試験された最初の薬物であった。これらの薬剤は、血中のIFNシグネチャーを減少させたが、疾患活動性に対しては効果が限られていた。理論に拘束されるわけではないが、これは、IFNαだけではなく、同じ受容体に結合するIFNβ及びIFNκも含まれる、異なるI型IFNの多様性が高いことによる可能性があった(例えば、Kalunian et al,Ann.Rheum.Dis.2016,75:196-202、Merrill et al,Ann.Rheum.Dis.2011、70:1905-1913、及びSarkar et al,Ann.Rheum.Dis.2018,77:1653-1664を参照のこと)。したがって、共通の受容体を標的とすることがより有効であり、抗IFNαβ受容体抗体であるアニフロルマブは、最近の臨床試験においてSLE患者でのCLASI皮膚スコアを顕著に低下させた(例えば、Furie et al,Arthritis & Rheumatology,2017,69:376-386を参照のこと)。代替的戦略では、(i)IFN産生細胞を標的とすること、または(ii)細胞内IFN経路を標的とすること、によるIFNシステムの「間接的」阻害に焦点が当てられた。皮膚及び血液では、形質細胞様DCは、主要IFN産生細胞と考えられており(例えば、Saadeh et al,Exp.Dermatol.2016,25:415-421を参照のこと)、pDC特異的抗体のBIIB059及びVIB7734が現在臨床試験中であり、最初の結果はCLASI活動性スコアの低下を示している(例えば、Furie et al,Ann.Rheum.Dis.2017,76(Suppl 2):857を参照のこと)。
【0021】
JAKファミリーは、増殖因子及びI/III型IFN等のサイトカインからのシグナルを伝達する4つの非受容体型チロシンキナーゼ(JAK1~3、TYK2)からなる。JAK阻害剤は当初、明確なJAK変異のある血液疾患の治療用に開発されたものであり、抗クローン活性を示す(例えば、Morgan et al,Annu.Rev.Med.2008,59:213-222、及びPardanani et al,Leukemia 2008,22:23-30を参照のこと)が、それらは顕著な免疫抑制効果ももたらす(例えば、Santos & Verstovsek,Expert Opin.Pharmacother.2014,15:1465-1473、Schwartz et al,Nat.Rev.Drug Discov.2017,16:843-862、Schwartz et al,Nat.Rev.Rheumatol.2016,12:25-36、及びHowell et al,Ann.Allergy Asthma Immunol.2018,120:367-375を参照のこと)。
【0022】
以前の研究では、CLE及び関連皮膚障害におけるJAK/STAT経路の活性化及びJAKタンパク質の発現が明らかになった(例えば、Scholtissek et al,J.Invest.Dermatol.2017,137:1484-1492、Alves de Medeiros et al,PLoS ONE 2016,11:e0164080、及びWenzel et al,J.Am.Acad.Dermatol.2008,58:437-442)を参照のこと)。JAK阻害剤は、例えば、移植片対宿主病(例えば、Spoerl et al,Blood,2014,123:3832-3842を参照のこと)、皮膚筋炎(例えば、Hornung et al,N.Engl.J.Med.2014,371:2537-2538、及びHornung et al,N.Engl.J.Med.2015,372:1274を参照のこと)及びLE(例えば、Wenzel et al,J.Invest.Dermatol.2016,136:1281-1283、及びBriand et al,Ann.Rheum.Dis.2019,78:431-433を参照のこと)が、他の炎症性皮膚疾患(例えば、Banerjee et al,Drugs,2017,77:521-546、Welsch et al,Eur.J.Immunol.2017,47:1096-1107、及びShreberk-Hassidim et al,J.Am.Acad.Dermatol.2017,76:745-753.e19を参照のこと)に加えて含まれる、界面皮膚炎に有益な効果をもたらす。CLEにおいて、JAK1/2阻害剤ルキソリチニブ(例えば、Wenzel et al,J.Invest.Dermatol.2016,136:1281-1283、Briand et al,Ann.Rheum.Dis.2019,78:431-433、及びKlaeschen et al,Exp.Dermatol.2017,26:728-730を参照のこと)及びバリシチニブ(例えば、Zimmerman et al,JAMA Dermatol.DOI:10.1001/jamadermatol.2018.5077を参照のこと)ならびにJAK1/3阻害剤トファシチニブ(例えば、Konig et al,Ann.Rheum.Dis.2017,76:468-472を参照のこと)は、患者の治療で成功したことが報告されており、これらの薬物は、CLEに典型的なケモカインの発現をインビトロで顕著に低下させた(例えば、Klaeschen et al,Exp.Dermatol.2017,26:728-730、及びSrivastava et al,Acta.Derm.Venereol.2018,98:772-775を参照のこと)。これらの薬物の潜在的な欠点の1つは、貧血及び血小板減少を含めた副作用であり、一部の患者で起こる場合がある。副作用は、JAK2及びJAK3の阻害と関連している。
【0023】
注目すべきことに、SLEの治療のための二重盲検プラセボ対照試験の最近の報告では、バリシチニブがプラセボと比較して有効ではなかったことを示唆している(例えば、Wallace et al,Lancet,2018,392(10143):222-231、及びWerth & Merrill,Br.J.Dermatol.2019,180(5):964-965を参照のこと)。バリシチニブ(2mgまたは4mg)は、1日1回、24週間投与された。適格患者は18歳以上であり、全身性エリテマトーデス(SLE)の診断を受け、皮膚または関節を侵す活動性疾患を患っていた。主要評価項目は、全身性エリテマトーデス疾患活動性指標-2000(SLEDAI-2K)により定義されるように、24週目に関節炎または発疹の消失が達成されている患者の割合であった。
【0024】
探索的評価項目では、皮膚エリテマトーデス疾患面積・重症度指数(CLASI)を評価し、バリシチニブによるCLASI活動性スコアの改善は見られなかった。SLEDAIとは異なり、CLASIスコアリングシステムは、SLEの皮膚特有の評価項目として十分に検証されており、SLE及びCLEのいくつかの第II相臨床試験に首尾よく使用されている。最近の報告はまた、CLASIスコアリングシステムは、皮膚での反応性を調べるループス試験の皮膚転帰として使用されるべきである、ということで意見が一致している(例えば、Albrecht J,et al.,J.Invest.Dermatol.2005;125:889-94、Klein et al.,Arch.Dermatol.2011,147:203-8、Furie et al.,Arthritis Rheumatol.2017,69:376-86、van Vollenhoven et al.,The Lancet 2018,392:1330-9、Khamashta et al.,Ann.Rheumat.Dis.2016,75:1909-16、及びConcha et al.,J.Invest.Dermatol.2018,https://doi.org/10.1016/j.jid.2018.08.017を参照のこと)。
【0025】
本明細書で提供される方法では、JAK1阻害剤(例えば、JAK1選択的阻害剤)である化合物または塩を利用する。いくつかの実施形態では、化合物は、以下から選択される:
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、
[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、
3-[1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピロリジン-3-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
3-(1-[1,3]オキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イルピロリジン-3-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[3-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
[trans-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-(4-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペラジン-1-イル)シクロブチル]アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-[(3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2R)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
4-(4-{3-[(ジメチルアミノ)メチル]-5-フルオロフェノキシ}ピペリジン-1-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]ブタンニトリル、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
{1-(cis-4-{[6-(2-ヒドロキシエチル)-2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-[(エチルアミノ)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(1S)-2-ヒドロキシ-1-メチルエチル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(2R)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(2S)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、及び
{trans-3-(4-{[4-(2-ヒドロキシエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
または前述のいずれかの薬学的に許容される塩。
【0026】
いくつかの実施形態では、化合物または塩は、JAK2、JAK3及びTYK2よりも、JAK1に対して選択的である。例えば、本明細書に記載の化合物のいくつか、またはその薬学的に許容される塩は、JAK2、JAK3、及びTYK2のうちの1つ以上よりも、JAK1を選択的に阻害する。JAK1は、調節が不全であると疾患状態をもたらすかまたはそれに寄与し得る、多くのサイトカイン及び増殖因子のシグナル伝達経路において中心的な役割を果たす。例えば、IL-6が有害な影響を与えることが示唆されている疾患である関節リウマチでは、IL-6レベルが上昇している(例えば、Fonesca,et al.,Autoimmunity Reviews,8:538-42,2009を参照のこと)。IL-6は、少なくとも部分的に、JAK1を介してシグナルを伝達するため、IL-6が、間接的にJAK1を介して阻害となり、潜在的な臨床的利益をもたらし得る、(例えば、Guschin,et al.Embo J 14:1421,1995、及びSmolen,et al.Lancet 371:987,2008を参照のこと)。他の自己免疫疾患及びがんでは、JAK1を活性化する炎症性サイトカインの全身レベル上昇は、その疾患及び/または関連症状にも寄与する場合がある。したがって、そのような疾患を有する患者は、JAK1の阻害により恩恵を受け得る。JAK1の選択的阻害剤は、本明細書に記載されるように、他のJAKキナーゼを阻害するという、不必要かつ望ましくない効果を回避しながら有効であり得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、化合物または塩は、JAK2よりもJAK1を選択的に阻害する、(例えば、JAK2/JAK1のIC50の比が1超)。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物または塩は、JAK2よりもJAK1に対して約10倍選択的である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物または塩は、1mMのATPでのIC50を測定して計算した場合に、JAK2よりもJAK1に対して約3倍、約5倍、約10倍、約15倍、または約20倍選択的である(実施例1を参照のこと)。
【0028】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、表1の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。表1の化合物は、JAK1選択的阻害剤である(例えば、JAK2、JAK3、及びTYK2に対するよりも選択的)。1mMのATPにて実施例1の方法により得られたIC50値を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
+は、10nM未満を意味する(アッセイ条件については実施例1を参照のこと)
++は、100nM以下を意味する(アッセイ条件については実施例1を参照のこと)
+++は、300nM以下を意味する(アッセイ条件については実施例1を参照のこと)
エナンチオマー1のデータ
エナンチオマー2のデータ
【0029】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0030】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である。
【0031】
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル及びそのアジピン酸塩の合成及び調製は、例えば、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2012年9月6日に出願された米国特許公開第2013/0060026号、及び2014年3月5日に出願された米国特許公開第2014/0256941号に見出すことができ、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0032】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0033】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である。
【0034】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド塩酸塩である。
【0035】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド臭化水素酸塩である。
【0036】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド硫酸塩である。
【0037】
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド及びそのリン酸塩の合成及び調製は、例えば、2014年5月16日に出願された米国特許公開第US2014/0343030号に見出すことができ、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0039】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である。
【0040】
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリルの合成ならびにその無水物及び一水和物の形態の特性評価は、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号及び2015年4月29日に出願された米国特許公開第2015/0344497号に記載されており、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
いくつかの実施形態では、表1の化合物は、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、2010年5月21日に出願された米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日に出願された米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日に出願された米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日に出願された米国特許公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に出願された米国特許公開第2014/0005166号に記載の合成法によって調製される。
【0042】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2011年3月9日に出願された米国特許公開第2011/0224190号、2014年5月16日に出願された米国特許公開第2014/0343030号、2013年10月31日に出願された米国特許公開第2014/0121198号、2010年5月21日に出願された米国特許公開第2010/0298334号、2010年8月31日に出願された米国特許公開第2011/0059951号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149681号、2011年11月18日に出願された米国特許公開第2012/0149682号、2012年6月19日に出願された米国特許公開第2013/0018034号、2012年8月17日に出願された米国特許公開第2013/0045963号、及び2013年5月17日に出願された米国特許公開第2014/0005166号の、化合物またはその薬学的に許容される塩から選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、式Iの化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
XはNまたはCHであり、
LはC(=O)またはC(=O)NHであり、
Aは、フェニル、ピリジニル、またはピリミジニルであり、その各々は、1つまたは2つの独立して選択されたR基で任意選択で置換されており、
各Rは、独立して、フルオロ、またはトリフルオロメチルである。
【0044】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0045】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0046】
いくつかの実施形態では、式Iの化合物は、[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、式IIの化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
は、C1-6アルキル、C1-6ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、またはC3-6シクロアルキル-C1-3アルキルであり、前記C1-6アルキル、C3-6シクロアルキル、及びC3-6シクロアルキル-C1-3アルキルはそれぞれ、フルオロ、-CF、及びメチルから独立して選択される1つ、2つ、または3つの置換基で任意選択で置換されており、
はHまたはメチルであり、
はH、F、またはClであり、
はHまたはFであり、
はHまたはFであり、
はHまたはFであり、
はHまたはメチルであり、
はHまたはメチルであり、
10はHまたはメチルであり、
11はHまたはメチルである。
【0048】
いくつかの実施形態では、式IIの化合物は、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である。
【0049】
いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤は、式IIIの化合物
【化3】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
Cyは、テトラヒドロ-2H-ピラン環であり、CN、OH、F、Cl、C1-3アルキル、C1-3ハロアルキル、CN-C1-3アルキル、HO-C1-3アルキル、アミノ、C1-3アルキルアミノ、及びジ(C1-3アルキル)アミノから独立して選択される1つまたは2つの基で任意選択で置換されており、ここで、前記C1-3アルキル及びジ(C1-3アルキル)アミノは、F、Cl、C1-3アルキルアミノスルホニル、及びC1-3アルキルスルホニルから独立して選択される1つ、2つ、または3つの置換基で任意選択で置換されており、
12は、-CH-OH、-CH(CH)-OH、または-CH-NHSOCHである。
【0050】
いくつかの実施形態では、式IIIの化合物は、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。
【0051】
本明細書に記載の化合物の1つ以上の構成原子は、天然存在比または非天然存在比の原子の同位体で置き換えるかまたは置換することができる。いくつかの実施形態では、化合物には、少なくとも1つの重水素原子が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物には、2つ以上の重水素原子が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物には、1~2つ、1~3つ、1~4つ、1~5つ、または1~6つの重水素原子が含まれる。いくつかの実施形態では、化合物中の全水素原子を、重水素原子により置き換えるかまたは置換することができる。
【0052】
有機化合物中に同位体を含める合成方法は、当該技術分野で既知である(Alan F.ThomasによるDeuterium Labeling in Organic Chemistry(New York,N.Y.,Appleton-Century-Crofts,1971、Jens Atzrodt,Volker Derdau,Thorsten Fey and Jochen ZimmermannによるThe Renaissance of H/D Exchange,Angew.Chem.Int.Ed.2007,7744-7765、James R.HansonによるThe Organic Chemistry of Isotopic Labelling,Royal Society of Chemistry,2011)。同位体で標識した化合物は、NMR分光法、代謝実験、及び/またはアッセイ等の様々な研究で使用することができる。
【0053】
重水素等のより重い同位体での置換により、より大きな代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加または必要投与量の減少に起因する特定の治療上の利点が得られる場合があり、そのため、状況によっては好ましい場合がある。(例えば、A.Kerekes et.al.J.Med.Chem.2011,54,201-210、R.Xu et.al.J.Label Compd.Radiopharm.2015,58,308-312を参照のこと)。特に、1つ以上の代謝部位での置換により、治療上の利点のうちの1つ以上が得られる場合がある。
【0054】
したがって、いくつかの実施形態では、JAK1阻害剤(例えば、JAK1選択的阻害剤)は、1つ以上の水素原子が重水素原子により置き換えられている化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0055】
本明細書で使用される場合、「任意選択で置換されている」という語句は、非置換または置換されていることを意味する。本明細書で使用される場合、「置換される」という用語は、水素原子が除去され、置換基によって置き換えられることを意味する。所与の原子での置換は、原子価によって制限されることが理解されるべきである。
【0056】
本明細書で使用される場合、単独で、または他の用語と組み合わせて使用される「Cn-mアルキル」という用語は、n~m個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖であり得る飽和炭化水素基を指す。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個、または1~3個の炭素原子を有する。アルキル部分の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチル-1-ブチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、1,2,2-トリメチルプロピル等の化学基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
本明細書で使用される場合、単独で、または他の用語と組み合わせて使用される「アルキレン」という用語は、2つの置換基がアルキレン連結基の任意の位置に結合されてよい分岐鎖または直鎖であり得る二価アルキル連結基を指す。アルキレン基の例としては、エタン-1,2-ジイル、プロパン-1,3-ジイル、プロパン-1,2-ジイル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「HO-C1-3-アルキル」という用語は、式-アルキレン-OHの基を指し、前記アルキレン基は、1~3個の炭素原子を有する。
【0059】
本明細書で使用される場合、「CN-C1-3アルキル」という用語は、シアノ基により置換されているC1-3アルキルを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「アミノ」という用語は、式-NHの基を指す。
【0061】
本明細書で使用される場合、「ジ(C1-3-アルキル)アミノ」という用語は、2つのアルキル基がそれぞれ独立して1~3個の炭素原子を有する式-N(アルキル)の基を指す。
【0062】
本明細書で使用される場合、「C1-3アルキルアミノ」という用語は、式-NH(アルキル)の基を指し、アルキル基は1~3個の炭素原子を有する。
【0063】
本明細書で使用される場合、「ジ(C1-3アルキル)アミノスルホニル」という用語は、式-S(O)N(アルキル)の基を指し、各アルキル基は独立して1~3個の炭素原子を有する。
【0064】
本明細書で使用される場合、「C1-3アルキルスルホニル」という用語は、式-S(O)-アルキルの基を指し、アルキル基は1~3個の炭素原子を有する。
【0065】
本明細書で使用される場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、単独で、または他の用語と組み合わせて使用され、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードを含む。いくつかの実施形態では、ハロ基は、フルオロまたはクロロである。
【0066】
本明細書で使用される場合、単独で、または他の用語と組み合わせて使用される「Cn-mハロアルキル」という用語は、{2(n~m)+1}個までの同じでも異なっていてもよいハロゲン原子を有するCn-mアルキル基を指す。いくつかの実施形態では、ハロゲン原子は、フルオロ原子である。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1~6個または1~3個の炭素原子を有する。ハロアルキル基の例としては、CF、C、CHF、CCl、CHCl、CCl等が挙げられる。いくつかの実施形態では、ハロアルキル基は、フルオロアルキル基である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「C1~3フルオロアルキル」という用語は、部分的または完全にフルオロ原子により置換されていてよいC1-3アルキル基を指す。
【0068】
本明細書で使用される場合、単独で、または他の用語と組み合わせて使用される「C3-6シクロアルキル」という用語は、環構造の一部として1つ以上のアルケニレン基を任意選択で含有し得る、3~6個の炭素原子を有する非芳香族単環式炭化水素部分を指す。シクロアルキル基の1つ以上の環形成炭素原子を酸化させてカルボニル結合を形成させることができる。例示的なC3-6シクロアルキル基には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル等が含まれる。いくつかの実施形態では、シクロプロピル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、またはシクロヘキシルである。
【0069】
本明細書で使用される場合、「C3-6シクロアルキル-C1-3アルキル」という用語は、式-C1-3アルキレン-C3-6シクロアルキルの基を指す。
【0070】
本明細書に記載される化合物は、不斉(例えば、1つ以上の立体中心を有する)であり得る。他に示さない限り、エナンチオマー及びジアステレオマー等の全ての立体異性体が意図される。非対称に置換された炭素原子を含有する化合物は、光学活性形態、またはラセミ形態で単離され得る。光学的に不活性な出発物質から光学活性形態を調製する方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、ラセミ混合物の分割または立体選択的合成による。本明細書に記載の化合物中には、オレフィン、C=N二重結合等の多くの幾何異性体も存在することができ、全てのそのような安定した異性体が本出願において企図される。本出願の化合物におけるcis及びtransの幾何異性体が記載されており、異性体の混合物として、または分離された異性体形態として単離されてよい。いくつかの実施形態では、化合物は、(R)配置を有する。いくつかの実施形態では、化合物は、(S)配置を有する。
【0071】
化合物のラセミ混合物の分割は、当該技術分野で既知の多数の方法のいずれかによって行うことができる。例示的方法としては、光学活性な塩形成有機酸であるキラル分割酸を使用する分別再結晶が挙げられる。分別再結晶法に好適な分割剤は、例えば、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸のD体及びL体等の光学活性酸、またはβ-カンファースルホン酸等の様々な光学活性カンファースルホン酸である。分別結晶法に好適な他の分割剤としては、立体異性的に純粋な形のα-メチル-ベンジル-アミン(例えば、S型及びR型、またはジアステレオマー的に純粋な形)、2-フェニルグリシノール、ノルエフェドリン、エフェドリン、N-メチルエフェドリン、シクロヘキシルエチルアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等が挙げられる。
【0072】
ラセミ混合物の分割は、光学活性分割剤(例えば、ジニトロベンゾイルフェニルグリシン)が充填されたカラムでの溶出によって実施することもできる。適切な溶出溶媒組成物は、当業者によって決定され得る。
【0073】
本明細書に記載の化合物には、互変異性形態も含まれる。互変異性形態は、単結合と隣接二重結合の入れ替えと併せて、プロトンの同時転位によって生じる。互変異性形態には、同じ実験式及び総電荷を有する異性体のプロトン化状態であるプロトトロピック互変異性体が含まれる。プロトトロピック互変異性体の例としては、ケトン-エノール対、アミド-イミド酸対、ラクタム-ラクチム対、エナミン-イミン対、ならびにプロトンが複素環式系の2つ以上の位置を占めることができる環状形態、例えば、1H-及び3H-イミダゾール、1H-、2H-及び4H-1,2,4-トリアゾール、1H-及び2H-イソインドール、ならびに1H-及び2H-ピラゾールが挙げられる。互変異性形態は、平衡状態にあり得るか、または適切な置換によって1つの形態に立体的に固定され得る。例えば、以下のピラゾール環では2つの互変異性体が形成され得ることが認識されよう。
【化4】
特許請求の範囲は両方の互変異性体を網羅することが意図されている。
【0074】
全ての化合物、及びその薬学的に許容される塩は、水及び溶媒等の他の物質(例えば、水和物及び溶媒和物)と一緒に見い出されるか、または、単離され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の化合物またはその塩は、実質的に単離されている。「実質的に単離されている」とは、化合物が、それが形成または検出された環境から少なくとも部分的にまたは実質的に分離されていることを意味する。部分的分離には、例えば、本明細書に記載の化合物に富む組成物が含まれ得る。実質的分離には、本明細書に記載の化合物、またはその塩が少なくとも約50%重量%、少なくとも約60%重量%、少なくとも約70%重量%、少なくとも約80%重量%、少なくとも約90%重量%、少なくとも約95%重量%、少なくとも約97%重量%、または少なくとも約99重量%含有されている組成物が含まれ得る。化合物及びその塩を単離する方法は、当該技術分野では日常的である。
【0076】
「薬学的に許容される」という語句は、本明細書では、正当な医学的判断の範囲内で、過渡の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなくヒト及び動物の組織と接触する使用に好適であり、妥当なベネフィット/リスク比に見合う化合物、材料、組成物、及び/または剤形を指すために使用される。
【0077】
本明細書で使用される場合の「雰囲気温度」及び「室温」または「rt」という表現は当該技術分野で理解されており、一般に、温度、例えば、反応温度を指し、反応が行われる部屋の温度、例えば、約20℃~約30℃の温度に近い。
【0078】
本出願には、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容される塩も含まれる。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、開示される化合物の誘導体を指し、既存の酸または塩基部分をその塩形態に変換することによって親化合物が修飾されている。薬学的に許容される塩の例としては、アミン等の塩基性残基の無機または有機酸塩、カルボン酸等の酸性残基のアルカリまたは有機塩等が挙げられるが、これらに限定されない。本出願の薬学的に許容される塩には、例えば、非毒性の無機酸または有機酸から形成される、親化合物の従来の非毒性の塩が含まれる。本出願の薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。一般に、そのような塩は、遊離の酸または塩基形態のこれらの化合物を、化学量論的な量の適切な塩基または酸と、水中もしくは有機溶媒中か、または両者の混合物中で反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、またはブタノール)またはアセトニトリル(ACN)のような非水性媒体が好ましい。好適な塩の一覧は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.,Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1985,p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science,66,2(1977)に見出され、その各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0079】
本明細書で使用される場合、「接触させること」という用語は、示されている部分を、インビトロ系またはインビボ系において一緒に併せることを指す。例えば、JAKを本発明の化合物と「接触させること」には、JAKを有するヒト等の個体または患者への本出願の化合物の投与、ならびに、例えば、本発明の化合物を、JAKを含有する細胞調製物または精製調製物を含有する試料に導入することが含まれる。
【0080】
本明細書で使用される場合、「対象」、「個体」、または「患者」という用語は、互換可能に用いられ、哺乳類、好ましくはマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、及び最も好ましくはヒトを含む任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、「対象」、「個体」、または「患者」は、前記治療を必要としている。
【0081】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、治療的有効量で投与される。本明細書で使用される場合、「治療的有効量」という語句は、研究者、獣医、医師もしくは他の臨床医が組織、系、動物、個体もしくはヒトにおいて探究している生物学的応答または医薬品反応を誘発する活性化合物または医薬剤の量を指す。
【0082】
本明細書で使用される場合、「治療すること」または「治療」という用語は、(1)疾患を阻害すること、例えば、疾患、状態もしくは障害の病理または総体症状を経験しているかもしくは示している個体における疾患、状態もしくは障害を阻害すること(すなわち、病理及び/または総体症状のさらなる発現を抑止すること)、(2)疾患を寛解させること、例えば、疾患、状態もしくは障害の病理または総体症状を経験しているかもしくは示している個体における疾患、状態もしくは障害を寛解させること(すなわち、病理及び/または総体症状を回復させること)、例えば、疾患の重症度を低下させること、あるいは(3)疾患、状態もしくは障害の素因がある可能性があるが、疾患の病理または総体症状をまだ経験もしくは示していない個体において疾患、状態もしくは障害を予防すること、のうちの1つ以上を指す。いくつかの実施形態では、治療することは、疾患を阻害または寛解させることを指す。いくつかの実施形態では、治療することは、疾患を予防することである。
【0083】
併用療法
本明細書に記載の方法は、1つ以上の追加の治療薬を投与することをさらに含み得る。1つ以上の追加の治療薬は、同時にまたは逐次的に患者に投与することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は抗生物質である。いくつかの実施形態では、抗生物質は、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、エリスロマイシン、メトロニダゾール、リファンピシン、モキシフロキサシン、ダプソン、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、メトロニダゾールと組み合わせた、クリンダマイシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、トリメトプリム・スルファメトキサゾール、またはエリスロマイシンである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、リファンピン、モキシフロキサシン、及びメトロニダゾールの組み合わせである。いくつかの実施形態では、抗生物質は、モキシフロキサシンとリファンピンの組み合わせである。
【0085】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬はレチノイドである。いくつかの実施形態では、レチノイドは、エトレチナート、アシトレチン、またはイソトレチノインである。
【0086】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬はステロイドである。いくつかの実施形態では、追加の治療薬はコルチコステロイドである。いくつかの実施形態では、ステロイドは、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、またはフルメトロン等である。
【0087】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は抗TNF-アルファ剤である。いくつかの実施形態では、抗TNF-アルファ剤は抗TNF-アルファ抗体である。いくつかの実施形態では、抗TNF-アルファ剤は、インフリキシマブもしくはエタネルセプト、またはアダリムマブである。
【0088】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は免疫抑制剤である。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、メトトレキサートまたはシクロスポリンAである。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、ミコフェノール酸モフェチルまたはミコフェノール酸ナトリウムである。
【0089】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、フィナステリド、メトホルミン、アダパレン、またはアゼライン酸である。
【0090】
いくつかの実施形態では、方法は、IMiD、抗IL-6剤、低メチル化剤、及び生体応答修飾剤(BRM)から選択される追加の治療薬を投与することをさらに含む。
【0091】
一般に、BRMは、疾患を治療するために生体から作られた物質であり、体内で自然に生じても、または実験室で作られてもよい。BRMの例としては、IL-2、インターフェロン、様々なタイプのコロニー刺激因子(CSF、GM-CSF、G-CSF)、アブシキシマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ等のモノクローナル抗体、高用量アスコルビン酸塩が挙げられる。
【0092】
いくつかの実施形態では、低メチル化剤は、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤である。いくつかの実施形態では、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤は、5アザシチジン及びデシタビンから選択される。
【0093】
一般に、IMiDは免疫調節剤である。いくつかの実施形態では、IMiDは、サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイド、CC-11006、及びCC-10015から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、抗胸腺細胞グロブリン、組換えヒト顆粒球コロニー刺激因子(G CSF)、顆粒球単球CSF(GM-CSF)、赤血球造血刺激因子(ESA)、及びシクロスポリンから選択される追加の治療薬を投与することを含む。
【0095】
いくつかの実施形態では、方法はさらに、追加のJAK阻害剤を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態では、追加のJAK阻害剤は、JAK2阻害剤(例えば、選択的JAK2阻害剤)、JAK1/JAK2阻害剤、JAK3阻害剤(例えば、選択的JAK3阻害剤)、及びJAK1/JAK3阻害剤、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される。
【0096】
いくつかの実施形態では、追加のJAK阻害剤は、JAK1/JAK2阻害剤である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、JAK3及びTYK2よりも、JAK1及びJAK2に対して選択的である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、(3R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル(ルキソリチニブ)、またはその薬学的に許容される塩である。ルキソリチニブは、JAK1及びJAK2において1mMのATPでのIC50が10nM未満である。3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル及びルキソリチニブは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2006年12月12日に出願されたUS7,598,257に記載の手順(実施例67)によって作製することができる。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、(3R)-3-シクロペンチル-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリルリン酸塩である。リン酸塩は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,722,693号に記載されているように作製することができる。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、バルシチニブ(barcitinib)、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、バルシチニブ(barcitinib)である。
【0097】
いくつかの実施形態では、追加のJAK1阻害剤は、JAK1/JAK3阻害剤である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK3阻害剤は、トファシチニブ、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK3阻害剤は、トファシチニブである。
【0098】
いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、同位体で標識された化合物、またはその薬学的に許容される塩であり得る。「同位体で」または「放射性で標識された」化合物は、1個以上の原子が、天然に典型的に見出される(すなわち、天然に存在する)原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられているかまたは置換されている化合物である。本開示の化合物に組み込まれ得る好適な放射性核種としては、H(重水素としてDとも記される)、H(トリチウムとしてTとも記される)、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、35S、36Cl、82Br、75Br、76Br、77Br、123I、124I、125I、及び131Iが含まれるがこれらに限定されない。例えば、本開示の化合物中の1つ以上の水素原子は、例えば、-CHが-CDに置換される等、重水素原子によって置き換えられ得る)。
【0099】
したがって、いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、1つ以上の水素原子が重水素原子により置き換えられている化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0100】
いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は1つ以上の水素原子が重水素原子によって置き換えられているルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第9,249,149号に記載されている化合物のいずれか、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2の阻害剤は、CTP-543、またはその薬学的に許容される塩である。
【0101】
いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、式IVの化合物
【化5】
またはその薬学的に許容される塩であり、式中、
はH及びDから選択され、
各RはH及びDから独立して選択されるが、但し、共通の炭素に結合している各Rが同じであることを条件とし、
各RはH及びDから独立して選択されるが、但し、共通の炭素に結合している各Rが同じであることを条件とし、
はH及びDから選択され、
各Rは同じであり、H及びDから選択され、
、R、及びRは、それぞれ独立してH及びDから選択され、但し、RがHであり、各R及び各RがHであり、RがHであり、R、R、及びRが各々Hである場合には、各RはDであることを条件とする。
【0102】
いくつかの実施形態では、JAK1及び/またはJAK2の阻害剤は、下表の化合物100~130から選択される式IVの化合物(式中、R、R、及びRはそれぞれHである)、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、下表の化合物200~231から選択される式IVの化合物(式中、R、R、及びRはそれぞれDである)、またはその薬学的に許容される塩である。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0103】
いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、1つ以上の水素原子が重水素原子によって置き換えられているバリシチニブ、またはその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、JAK1/JAK2阻害剤は、米国特許第9,540,367号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている化合物のいずれか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0104】
いくつかの実施形態では、追加のJAK阻害剤は、バリシチニブ、トファシチニブ、オクラシチニブ、フィルゴチニブ、ガンドチニブ、レストールチニブ、モメロチニブ、バクリチニブ(bacritinib)、PF-04965842、ウパダシチニブ、ペフィシチニブ、フェドラチニブ、ククルビタシンI、ATI-501(Aclaris)、ATI-502(Aclaris)、JTE-052(すなわち、デルゴシチニブ;Leo Pharma and Japan Tobacco)、及びCHZ868から選択される。
【0105】
皮膚エリテマトーデス(CLE)の治療のために、抗炎症剤、免疫抑制剤、PI3Kδ阻害剤、mTor阻害剤、Bcr-Abl阻害剤、Flt-3阻害剤、RAF阻害剤、及びFAKキナーゼ阻害剤(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2006/056399に記載のもの)、または他の薬剤等のこれらに限定されない追加の薬剤を、本明細書に記載されるJAK1阻害剤と併用することができる。1つ以上の追加の薬剤は、同時にまたは逐次的に患者に投与することができる。
【0106】
Bcr-Abl阻害剤の例としては、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,521,184号、WO04/005281、及び米国特許第60/578,491号に開示されている属及び種の化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0107】
好適なFlt-3阻害剤の例としては、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO03/037347、WO03/099771、及びWO04/046120に開示されているような化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0108】
好適なRAF阻害剤の例には、その両方が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、WO00/09495、及びWO05/028444に開示されているような化合物及びそれらの薬学的に許容される塩が含まれる。
【0109】
好適なFAK阻害剤の例としては、いずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO04/080980、WO04/056786、WO03/024967、WO01/064655、WO00/053595、及びWO01/014402に開示されているような化合物、ならびにそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施形態では、特に、イマチニブまたは他のキナーゼ阻害薬に耐性を示す患者を治療するために、本明細書に記載されるJAK1阻害剤のうちの1つ以上を、1つ以上の他のキナーゼ阻害薬、例えば、イマチニブと併用することができる。
【0111】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、フルオシノロンアセトニド(Retisert(登録商標))またはリメキソロン(AL-2178、Vexol,Alcon)である。
【0112】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、シクロスポリン(Restasis(登録商標))である。
【0113】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、Dehydrex(商標)(Holles Labs)、Civamide(Opko)、ヒアルロン酸ナトリウム(Vismed,Lantibio/TRB Chemedia)、シクロスポリン(ST-603、Sirion Therapeutics)、ARG101(T)(テストステロン、Argentis)、AGR1012(P)(Argentis)、エカベトナトリウム(Senju-Ista)、ゲファルナート(Santen)、15-(s)-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15(S)-HETE)、セビレミン(cevilemine)、ドキシサイクリン(ALTY-0501、Alacrity)、ミノサイクリン、iDestrin(商標)(NP50301、Nascent Pharmaceuticals)、シクロスポリンA(Nova22007、Novagali)、オキシテトラサイクリン(デュラマイシン、MOLI1901、Lantibio)、CF101(2S,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[6-[(3-ヨードフェニル)メチルアミノ]プリン-9-イル]-N-メチル-オキソラン-2-カルバミル、Can-Fite Biopharma)、ボクロスポリン(LX212またはLX214、Lux Biosciences)、ARG103(Agentis)、RX-10045(合成レゾルビン類似体、Resolvyx)、DYN15(Dyanmis Therapeutics)、リボグリタゾン(DE011、Daiichi Sanko)、TB4(RegeneRx)、OPH-01(Ophtalmis Monaco)、PCS101(Pericor Science)、REV1-31(Evolutec)、ラクリチン(Senju)、レバミピド(Otsuka-Novartis)、OT-551(Othera)、PAI-2(University of Pennsylvania及びTemple University)、ピロカルピン、タクロリムス、ピメクロリムス(AMS981、Novartis)、エタボン酸ロテプレドノール、リツキシマブ、ジクアホソルテトラナトリウム(INS365、Inspire)、KLS-0611(Kissei Pharmaceuticals)、デヒドロエピアンドロステロン、アナキンラ、エファリズマブ、ミコフェノール酸ナトリウム、エタネルセプト(Embrel(登録商標))、ヒドロキシクロロキン、NGX267(TorreyPines Therapeutics)、アクテムラ、ゲムシタビン、オキサリプラチン、L-アスパラギナーゼ、またはサリドマイドから選択される。
【0114】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、抗血管新生薬、コリン作動薬、TRP-1受容体モジュレーター、カルシウムチャネル遮断薬、ムチン分泌促進物質、MUC1刺激薬、カルシニューリン阻害薬、コルチコステロイド、P2Y2受容体作動薬、ムスカリン様受容体作動薬、またはmTOR阻害剤である。いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、テトラサイクリン誘導体(例えば、ミノサイクリンまたはドキシクリン(doxycline))である。いくつかの実施形態では、追加の治療薬はFKBP12に結合する。
【0115】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、アルキル化剤またはDNA架橋剤;代謝拮抗剤/脱メチル化剤(例えば、5-フルオロウラシル、カペシタビンまたはアザシチジン);抗ホルモン療法(例えば、ホルモン受容体拮抗薬、SERM、またはアロモターゼ(aromotase)阻害剤);有糸分裂阻害剤(例えば、ビンクリスチンまたはパクリタキセル);トポイソメラーゼ(IまたはII)阻害剤(例えば、ミトキサントロン及びイリノテカン);アポトーシス誘導剤(例えば、ABT-737);核酸療法(例えば、アンチセンスまたはRNAi);核内受容体リガンド(例えば、アゴニスト及び/またはアンタゴニスト:オールトランスレチノイン酸またはベキサロテン);エピジェネティックな標的指向性剤、例えば、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、ボリノスタット)、低メチル化剤(例えば、デシタビン);タンパク質安定性の調節物質、例えば、Hsp90阻害剤、ユビキチン及び/またはユビキチン様の結合もしくは脱離分子;あるいはEGFR阻害剤(エルロチニブ)である。
【0116】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、麻酔剤、抗炎症剤(例えば、ステロイド性及び非ステロイド性の抗炎症剤)、及び抗アレルギー剤から選択される。好適な薬剤の例としては、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、及びカナマイシン等のアミノグリコシド系;シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、ロメフロキサシン、レボフロキサシン、及びエノキサシン等のフルオロキノロン系;ナフチリジン;スルホンアミド系;ポリミキシン;クロラムフェニコール;ネオマイシン;パラモマイシン(paramomycin);コリスチメタート;バシトラシン;バンコマイシン;テトラサイクリン系;リファンピシン及びその誘導体(「リファンピン」);シクロセリン;ベータ-ラクタム系;セファロスポリン系;アムホテリシン;フルコナゾール;フルシトシン;ナタマイシン;ミコナゾール;ケトコナゾール;コルチコステロイド;ジクロフェナク;フルルビプロフェン;ケトロラク;スプロフェン;クロモリン;ロドキサミド;レボカバスチン;ナファゾリン;アンタゾリン;フェニラミン;またはアザライド系抗生物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
医薬製剤及び剤形
本明細書で提供されるJAK1阻害剤は、医薬品として使用する場合、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、医薬分野で周知の様式で調製することができ、所望されるのが局所処置なのか全身処置なのかに応じて、また処置対象の領域に応じて、様々な経路によって投与することができる。投与は、局所的(皮内、経皮、表皮、点眼、ならびに鼻腔内、経膣及び直腸送達を含む粘膜への送達を含む)、経肺(例えば、ネブライザーによる等の粉末もしくはエアロゾルの吸入もしくは吹送によるもの;気管内または鼻腔内)、経口または非経口のいずれであってもよい。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内筋肉内または注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば、髄腔内もしくは脳室内の投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス用量の形態であり得るか、または、例えば、連続灌流ポンプによるものであり得る。局所投与用の医薬組成物及び製剤としては、経皮吸収パッチ、皮膚パッチ、溶液、懸濁液、フォーム、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、液滴、坐剤、スプレー、液剤、及び粉末が挙げられる。従来の医薬担体、水性基剤、粉末基剤、または油性基剤、増粘剤等が必要または望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、組成物は、経皮吸収パッチ、皮膚パッチ、溶液、懸濁液、ゲル、クリーム、軟膏、化粧水、噴霧、フォーム、液体、液滴、坐剤、及び粉末による局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、経皮吸収パッチによる局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、皮膚パッチによる局所投与用に製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、フォームとして(例えば、局所投与用に)製剤化される。
【0118】
皮膚エリテマトーデス(CLE)等の皮膚障害の治療には、皮膚のバリアを通過でき、全身的な影響が制限できる外用薬が特に重要である。
【0119】
局所(皮膚/皮内)製剤は典型的に、溶液、懸濁液、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、スプレー及びフォームである。好ましい局所製剤は、物理的及び化学的に安定であるべきであり、皮膚の炎症が生じてはならず、かつ、活性薬剤(例えば、本明細書に記載されるような、選択的JAK1阻害剤、またはその薬学的に許容される塩)を、全身曝露が限られた、治療奏効をもたらすような濃度で皮膚の適切な層に送達するべきである。
【0120】
いくつかの実施形態では、投与は局所的であり、1つ以上の薬学的に(例えば、皮膚科学的に)許容される添加剤を有する製剤で構成される。皮膚科学的に許容される添加剤の例としては、pH調整剤、キレート剤、保存剤、共溶媒、膜透過性促進剤、保潤剤、濃稠化剤、ゲル化剤、増粘剤、界面活性剤、噴霧剤、着香剤、着色剤、またはその任意の組み合わせもしくは混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、局所製剤は、患者に局所的に投与される(例えば、病変部位に投与される)。
【0121】
いくつかの実施形態では、pH調整剤は、酸、酸性塩、塩基、塩基性塩、及び緩衝剤、またはその任意の混合物から選択される。例示的酸としては、乳酸、酢酸、クエン酸、及び安息香酸、及びその塩が挙げられるが、これらに限定されない。例示的塩基としては、トロラミン、トロメタミン、及びその塩が挙げられるが、これらに限定されない。例示的緩衝剤としては、クエン酸塩/クエン酸、酢酸塩/酢酸、エデト酸塩/エデト酸、乳酸塩/乳酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
いくつかの実施形態では、キレート剤は、単一の添加剤である。いくつかの実施形態では、キレート剤は、2つ以上のキレート剤の混合物である。例示的キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、またはその塩が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、キレート剤は、キレート剤及び抗酸化剤の混合物を含み、キレート剤及び抗酸化剤は、組成物での酸化分解反応を防止するか、最小限に抑えるか、または低減させる。例示的抗酸化剤としては、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、トコフェロール、及び没食子酸プロピルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の保存剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、2つ以上の保存剤の混合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1~5つの保存剤を含む。例示的保存剤としては、ベンジルアルコール、フェノニエキサノール(phenonyexthanol)、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、及びイミダゾリジニル尿素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の共溶媒を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、2つ以上の共溶媒の混合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1~5つの共溶媒を含む。例示的溶媒としては、水、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジメチルイソソルビド、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、プロパンジオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400等)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、溶媒は、非水溶性薬剤である。例示的非水溶性薬剤としては、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、及び中鎖トリグリセリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の膜透過性促進剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、2つ以上の膜透過性促進剤の混合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1~5つの膜透過性促進剤を含む。膜透過性促進剤は、溶媒及び膜透過性促進剤の両方として作用することができる。例示的膜透過性促進剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、ピロリドン、スルホキシド、アルコール、ジオール及びポリオール、またはその任意の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される共溶媒は、膜透過性促進剤である。
【0126】
いくつかの実施形態では、組成物は、1つ以上の濃稠化剤、ゲル化剤、または増粘剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、2つ以上の濃稠化剤、ゲル化剤、または増粘剤の混合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1~5つの濃稠化剤、ゲル化剤、または増粘剤を含む。例示的濃稠化剤、ゲル化剤、または増粘剤としては、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及びポルビニルピロリドン(PVP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
界面活性剤は、2種の液体間または液体と固体の間の表面張力を下げる化合物である。界面活性剤は、2つ以上の界面活性剤の混合物であってよい。例示的界面活性剤としては、エトキシル化脂肪アルコールエーテル(例えば、ステアレス-2、ステアレス-10、ステアレス-20、セテアレス-2、セテアレス-10等)、PEGエステル(例えば、ジラウリン酸PEG-4、ステアリン酸PEG-20等)、グリセリルエステルまたはその誘導体(例えば、ジオレイン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル等)、高分子エーテル(例えば、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー182等)、ソルビタン誘導体(例えば、ポリソルベート80、ソルビタンモノステアラート等)、脂肪アルコール(例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セテアリルアルコール等)、及び乳化ワックス(例えば、乳化ワックスNF、セテアリルアルコールとポリソルベート60の混合物の混合物等)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
いくつかの実施形態では、投与は、皮膚への局所投与である。
【0129】
いくつかの実施形態では、投与は経口である。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される選択的JAK1阻害剤を含む外用組成物の患者への投与では、定常状態での全身曝露(Cmax)は、適用用量の約5%未満、例えば、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満等もたらされる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される選択的JAK1阻害剤を含む外用組成物の患者への投与では、定常状態での全身曝露(Cmax)は適用用量の約1%未満もたらされる。
【0131】
本発明には、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加剤)と組み合わせて、本明細書で提供されるJAK1阻害剤またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含有する医薬組成物も含まれる。いくつかの実施形態では、組成物は、局所投与に好適である。本発明の組成物を作製する際に、活性成分は典型的には添加剤と混合され、添加剤によって希釈されるか、または例えば、カプセル、サシェ、紙もしくは他の容器の形態のような担体に封入される。添加剤は、希釈剤として使用される場合は、活性成分のビヒクル、担体、または媒質として作用する、固体、半固体、もしくは液体の物質であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、粉末、薬用ドロップ、小袋、カシェ、エリキシル剤、懸濁液、エマルジョン、溶液、シロップ、エアロゾル(固体媒体としてかまたは液体媒体にして)、軟膏で、例えば、10重量%までの活性化合物を含有するもの、軟ゼラチンカプセル及び硬ゼラチンカプセル、坐剤、無菌注射液、ならびに無菌包装粉末の形態であり得る。
【0132】
製剤を調製する際は、活性化合物は、他の成分と合わせる前に、適切な粒径を提供するために粉砕することができる。活性化合物が実質的に不溶性である場合、200メッシュ未満の粒径まで粉砕され得る。活性化合物が実質的に水溶性である場合、粒径は、製剤中で実質的に均一な分布、例えば、約40メッシュが得られるよう、粉砕によって調整することができる。
【0133】
本明細書で提供されるJAK1阻害剤は、錠剤形成及び他の製剤型に適切な粒径が得られるよう、湿式粉砕等の既知の粉砕手順を使用して粉砕してよい。JAK1阻害剤の細粒化(ナノ粒子)調製物は、当該技術分野で既知の方法(例えば、国際出願第WO2002/000196号を参照のこと)によって調製することができる。
【0134】
好適な添加剤のいくつかの例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポルビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースが挙げられる。製剤には、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油等の滑沢剤;湿潤剤;乳化剤及び懸濁剤;安息香酸メチル及びヒドロキシ安息香酸プロピル等の保存剤;甘味剤;ならびに香味剤を追加で含めることができる。本発明の組成物は、当該技術分野において既知の方法を用いることにより、患者への投与後に活性成分の即時、持続的、または遅延性の放出が提供されるように製剤化することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、ケイ酸化微結晶性セルロース(SMCC)、及び少なくとも1つの本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含む。いくつかの実施形態では、ケイ酸化微結晶性セルロースは、約98%(w/w)の微結晶性セルロース及び約2%(w/w)の二酸化ケイ素を含む。
【0136】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む、徐放性組成物である。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、及び微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリエチレンオキシドから選択される少なくとも1つの成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、ならびに微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、ならびに微結晶性セルロース、ラクトース一水和物、及びポリエチレンオキシドを含む。いくつかの実施形態では、組成物はさらに、ステアリン酸マグネシウムまたは二酸化ケイ素を含む。いくつかの実施形態では、微結晶性セルロースは、Avicel PH102(商標)である。いくつかの実施形態では、ラクトース一水和物は、Fast-flo 316(商標)である。いくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208 K4M(例えば、Methocel K4 M Premier(商標))及び/またはヒドロキシプロピルメチルセルロース2208 K100LV(例えば、Methocel K00LV(商標))。いくつかの実施形態では、ポリエチレンオキシドは、ポリエチレンオキシドWSR 1105(例えば、Polyox WSR 1105(商標))である。
【0137】
いくつかの実施形態では、組成物を製造するために湿式造粒プロセスが使用される。いくつかの実施形態では、組成物を製造するために乾式造粒プロセスが使用される。
【0138】
組成物は、単位剤形で製剤化することができ、各投与量には、約1~約1,000mg、約1mg~約100mg、約1mg~約50mg、及び約1mg~約10mgの活性成分が含有される。好ましくは、投与量は、約1mg~約50mgまたは約1mg~約10mgの活性成分である。いくつかの実施形態では、各投与量には、約10mgの活性成分が含有される。いくつかの実施形態では、各投与量には、約50mgの活性成分が含有される。いくつかの実施形態では、各投与量には、約25mgの活性成分が含有される。「単位剤形」という用語は、ヒト対象及び他の哺乳類のための単位投与量として好適な物理的個別単位を指し、各単位は、好適な医薬品添加剤と併せて、所望の治療効果を生じるよう計算された所定の量の活性物質を含有する。
【0139】
いくつかの実施形態では、組成物は、約1~約1,000mg、約1mg~約100mg、約1mg~約50mg、及び約1mg~約10mgの活性成分を含む。好ましくは、組成物は、約1mg~約50mgまたは約1mg~約10mgの活性成分を含む。当業者は、これにより、約1mg~約10mg、約1mg~約20mg、約1mg~約25mg、約1mg~約50mgの活性成分を含む化合物または組成物が具体化されることを理解するであろう。
【0140】
活性化合物は、広範な投与量範囲にわたって有効であり得、一般的には、薬学的有効量で投与される。しかしながら、実際に投与される化合物の量は、通常、関連する状況、例えば、治療されるべき状態、選択投与経路、実際に投与される化合物、個々の患者の年齢、体重、及び反応、患者の症状の重症度等に従って医師により決定されることが理解されるであろう。
【0141】
錠剤等の固体組成物を調製するために、主要な活性成分を医薬添加剤と混合して、本出願の化合物の均一な混合物を含有する固体予備処方組成物を形成する。これらの予備処方組成物が均一であると言及される場合、活性成分は典型的に、組成物を、錠剤、丸剤及びカプセル等の等しく有効な単位剤形に容易に細分することができるよう、組成物全体に均一に分散されている。この固体予備処方はその後、例えば、約0.1~約1000mgの本出願活性成分(例えば、本明細書で提供されるJAK1阻害剤)を含有する、上記の種類の単位剤形に細分化される。
【0142】
本出願の錠剤または丸剤は、長期作用の利点を可能にする剤形が提供されるようにコーティングするかまたは他の方法で配合することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内側用量及び外側用量成分を含み得、後者は前者を包むエンベロープの形態にある。2つの成分は、胃における崩壊に抵抗し、その内側成分が、無傷で十二指腸内まで通過するかまたは遅延放出されることを可能にするために役立つ腸溶性の層によって分離され得る。そのような腸溶性層またはコーティングには様々な物質を使用することができ、そのような物資としは、多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸の、シェラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロース等の物質と混合物が含まれる。
【0143】
経口または注射による投与用に本出願の化合物及び組成物を組み込むことができる液体形態としては、水溶液、好適に香味付けされたシロップ、水性もしくは油性懸濁液、ならびに綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナツ油等の食用油で香味付けされたエマルジョン、ならびにエリキシル剤及び同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0144】
吸入または吹送用の組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒、またはそれらの混合物の溶液及び懸濁液、ならびに粉末が含まれる。液体または固体の組成物は、上掲のような好適な薬学的に許容される添加剤を含有してよい。いくつかの実施形態では、組成物は、局所または全身効果のために、経口または経鼻呼吸経路によって投与される。組成物は、不活性ガスの使用により噴霧され得る。噴霧された溶液は、噴霧装置から直接呼吸されてよく、または噴霧装置を、フェイスマスクテントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けることもできる。溶液、懸濁液、または粉末の組成物は、適切な様式で製剤を送達する装置から経口または経鼻で投与され得る。
【0145】
局所(例えば、皮内)投与では、皮膚障害を局所的に治療し、全身曝露と関連する潜在的有害事象を最小限に抑え、必要に応じて、治療を容易に中止することを可能にするという利点が提供される。さらに、クリーム、軟膏、及びゲル等の一部の局所適用製剤には、皮膚軟化剤または閉鎖剤として作用し得る添加剤の利点があり、治療期間中の患者の幸福感及びコンプライアンスを高めることができる。経口、非経口、及び吸入等の他の投与経路では、治療効果を大幅に超える全身薬物濃度、有害事象の可能性の増加、薬物間相互作用、及び活性/毒性代謝物の生成を招く場合があり、治療中止及び不十分な患者コンプライアンスをもたらし得る。
【0146】
皮膚送達を意図した局所製剤は典型的に、溶液、懸濁液、ゲル、クリーム、軟膏、ローション、スプレー、及びフォームであり、本明細書に記載されるような1つ以上の従来担体を含有することができる。製剤組成物は、活性成分を皮膚の適切な層(複数可)に送達すること、全身曝露を最小限に抑えること、及び皮膚炎症を防ぐことを目的として調製されるべきである。さらに、医薬組成物は、物理的及び化学的に安定であるべきである。選択剤形に応じて、本明細書に記載されるような1つ以上の追加の添加剤、例えば、pH調整剤、キレート剤、保存剤、共溶媒、膜透過性促進剤、保潤剤、濃稠化剤、ゲル化剤、増粘剤、界面活性剤、噴霧剤、着香剤、着色剤、またはその任意の組み合わせもしくは混合物が必要な場合がある。
【0147】
いくつかの実施形態では、局所製剤は、本明細書に記載される1つ以上の従来担体を含有することができる。いくつかの実施形態では、軟膏は、水、及び例えば、流動パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、白色ワセリン等から選択される、1つ以上の疎水性担体を含有することができる。クリームの担体組成は、水、それと組み合わせるグリセロール及び1つ以上の他の成分、例えば、グリセリンモノステアラート、PEG-グリセリンモノステアラート及びセチルステアリルアルコールに基づくことができる。ゲルは、イソプロピルアルコール及び水を、好適には、例えばグリセロール、ヒドロキシエチルセルロース等の他の成分と組み合わせて使用して製剤化することができる。いくつかの実施形態では、局所製剤は、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.25重量%、少なくとも約0.5重量%、少なくとも約1重量%、少なくとも約2重量%、または少なくとも約5重量%の本発明の化合物を含有する。局所製剤は、チューブ、例えば、100gチューブに好適に包装することができ、任意選択で、皮膚エリテマトーデス(CLE)の治療のための指示書が付随する。
【0148】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防または治療等の投与目的、患者の状態、投与方法等に応じて異なる。治療用途では、組成物は、すでに皮膚エリテマトーデス(CLE)を患っている患者に対して、疾患の症状及びその合併症を治癒させるかまたは少なくとも部分的に抑止するのに十分な量で投与され得る。有効用量は、治療される疾患状態に応じて、また疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び全身状態等の因子に応じた担当医師の判断により異なる。
【0149】
患者に投与される組成物は、上記の医薬組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技法によって滅菌され得、または濾過滅菌されてもよい。水溶液は、そのままで使用するよう包装するか、または凍結乾燥することができ、凍結乾燥調製物を投与前に無菌水性担体と合わせる。化合物調製物のpHは、典型的には3~11、より好ましくは5~9、及び最も好ましく7~8である。前述の特定の添加剤、担体、または安定化剤の使用により、薬学的塩の形成がもたらされることが理解されるであろう。
【0150】
本出願の化合物の治療用量は、例えば、治療が行われる特定の用途、化合物の投与方法、患者の健康及び状態、ならびに処方する医師の判断に従って異なり得る。医薬組成物中の本発明の化合物の割合または濃度は、投与量、化学的特性(例えば、疎水性)、及び投与経路を含む多くの因子に応じて異なり得る。例えば、本発明の化合物は、非経口投与の場合、約0.1~約10w/v%の化合物を含有する生理緩衝水溶液にして提供することができる。いくつかの典型的な用量範囲は、1日あたり約1μg/kg体重~約1g/kg体重である。いくつかの実施形態では、用量範囲は、1日当たり約0.01mg/kg体重~約100mg/kg体重である。投与量は、疾患または障害の種類及び進行の程度、特定の患者全般的な健康状態、選択された化合物の相対的な生物学的有効性、添加剤の配合、及びその投与経路等の可変要素に応じて異なる可能性がある。有効用量は、インビトロまたは動物モデル試験系から得られた用量反応曲線から推定することができる。
【0151】
本発明の組成物にはさらに、本明細書でこれまでに例が列挙されている、1つ以上の追加の医薬剤を含めることができる。
【0152】
キット
本出願には、例えば、皮膚エリテマトーデス(CLE)の治療及び/または予防において有用な医薬キットも含まれ、それには、本明細書に記載されるJAK1阻害剤を治療的有効量にて含む医薬組成物が含有されている、1つ以上の容器が含まれる。そのようなキットにはさらに、当業者には容易に明らかとなるように、必要に応じて、様々な従来の医薬キット構成要素のうちの1つ以上、例えば、1つ以上の薬学的に許容される担体の入った容器、追加の容器等が含まれ得る。投与されるべき成分の量、投与のためのガイドライン、及び/または成分を混合するためのガイドラインを示す指示書も、インサートまたはラベルとして、キットに含めることができる。
【実施例0153】
本発明を、具体例によってさらに詳細に記載する。以下の例は例示を目的として提供されるものであり、本発明をいかなる形においても限定することは意図されない。当業者らは、本質的に同じ結果を得るために変更または修正が可能な、重要ではない様々なパラメータを容易に認識するであろう。
【0154】
インビトロ実験の全ての統計解析は、クラスカル・ワリス検定及びマン-ホイットニーのU検定を使用して、GraphPad prismソフトウェア(バージョン7)で実施された。遺伝子発現を、ウェルチのt検定を使用してPartek Flowゲノム解析ソフトウェア及びSubio Platformソフトウェアv1.22.5266で解析した。信頼区間を95%で決定した。P<0.05を「有意」()、p<0.01を「極めて有意」(**)と見なした。DAVID v6.8(Database for Annotation,Visualization and Integrated Discovery)を使用してKEGGパスウェイを差次的に発現する遺伝子にマッピングした。
【0155】
実施例1.インビトロでのJAKキナーゼアッセイ
サイトカイン関連疾患または障害の治療に使用することができるJAK1阻害剤をJAK標的の阻害活性について、Park et al.,Analytical Biochemistry 1999,269,94-104に記載の以下のインビトロアッセイに従って試験する。N末端Hisタグを有するヒトJAK1(アミノ酸837~1142)、JAK2(アミノ酸828~1132)、及びJAK3(アミノ酸781~1124)の触媒ドメインを、昆虫細胞中でバキュロウイルスを用いて発現させ、精製する。JAK1、JAK2、またはJAK3の触媒活性を、ビオチン化ペプチドのリン酸化を測定することによってアッセイした。リン酸化ペプチドをホモジニアス時間分解蛍光(HTRF)によって検出した。100mMのNaCl、5mMのDTT、及び0.1mg/mL(0.01%)のBSAを含む50mMのトリス(pH7.8)緩衝液中の、酵素、ATP、及び500nMのペプチドを含む40マイクロLの反応物において、各々のキナーゼについて化合物のIC50を測定する。1mMのIC50測定の場合、反応中のATP濃度は1mMである。反応を室温で1時間行い、次いで、20μLの45mM EDTA、300nMのSA-APC、6nMのEu-Py20のアッセイバッファー(Perkin Elmer,Boston,MA)で停止させる。ユウロピウム標識抗体への結合を40分間行い、Fusionプレートリーダー(Perkin Elmer,Boston,MA)でHTRFシグナルを測定した。表1の化合物をこのアッセイで試験し、表1のIC50値であることが示された。
【0156】
実施例2.ヒトCLE皮膚病変では活性化JAK1が強発現している
CLEにおけるJAK1媒介性シグナル伝達の特定の役割を検討するため、病変皮膚(SCLE及びCDLEサブセット)におけるリン酸化JAK1(pJAK1)の発現を、扁平苔癬(LP)及び健常対照者と比較した。異なる炎症性皮膚障害(N=34)のパンチ生検は全て、診断目的で活動性皮膚病変から取得された。健常対照者(N=9)では、形成手術で取得した非罹患皮膚から取得した。皮膚試料を、4%ホルマリンで一晩固定するかまたは凍結窒素で固定し、免疫組織染色またはRNA単離に進んだ。RNAは、LexogenによるQuantSeq 3’-mRNA Library Prep Kitを使用して、Next Generation Sequencing (NGS) Core Facility of the Medical Faculty of the University of Bonnによって処理された。RNAシーケンシングにはIllumina HiSeq 2500を使用した(50サイクルの標準3’RNAシーケンス)
【0157】
CLE皮膚病変では、pJAK1の発現は、基底層から顆粒層までの角化細胞において、また真皮浸潤免疫細胞において顕著に増加していた。また、CLEと共通の組織学的特徴を共有する自己免疫疾患である扁平苔癬において、pJAK1が顕著に増強していることも観察された。
【0158】
実施例2.ヒトCLE皮膚ではJAK/STAT関連自然炎症経路が顕著に活性化されている
経験を積んだ皮膚病理医により各症例での臨床診断を確認するため、CLE患者からの病変皮膚の試料にH&E染色を行った。免疫組織染色は、色素体にFast Red(Agilent,Santa Clara,USA)を用いて、pJAK(ABIN196869、antibodies-online)、CXCL10(ab9807、Cambridge,UK)、MxA(M143、Haller,Freiburg,Germany)及びCD45(550539、BD,New Jersey)に対する特異的抗体でREAL(商標)Detection Systemsを使用して実施された。発現を、
【数8】
(Wenzel et al.J.Pathol.2005,205:435-442)まで半定量的に記録した。抗ウサギRhodamine Red-X(711-295-152;Jackson ImmunoResearch,Baltimore,MD,USA)及びDAPI(D9542、Sigma-Aldrich)によって検出されたJAK1リン酸化の免疫蛍光分析を、高解像度顕微鏡(Axio Observer Z1,Zeiss,Germany)を使用して実施した。
【0159】
CLE病変皮膚内の発現解析により、健常対照者と比較して、自然免疫経路及び適応免疫経路の両方と関連する遺伝子の顕著な活性化が明らかになった。特に、LE関連炎症誘発性ケモカイン(CXCL10、9、11)及び他のIFN調節タンパク質(OASL、OAS2、Mx1)ならびに細胞死及びB細胞活性化における主要ドライバー(CXCR3、CASP10、AIM2、TRAIL、BLyS)の遺伝子が高発現された。JAK/STATシグナル伝達は、炎症性遺伝子転写の重要な調節因子であるため、図1Cに示されるように、LE病変でのSTAT1の遺伝子発現もまた顕著に増加していた。個々の遺伝子に対応して上方制御された自然免疫経路には、図1Dに示されるように、JAK/STAT経路及び関連サイトカイン-/ケモカインシグナル伝達経路ならびに上流のTLR依存性及びTLR非依存性のDAMP認識経路が含まれた。
【0160】
実施例3.INCB039110は培養不死化ヒト角化細胞でのJAK1リン酸化を顕著に阻害する
JAK阻害の機能的原理及び効果を分析するため、以下の確立されたCLEインビトロモデルを使用した。不死化角化細胞(HaCaT)をCLS Cell Lines Service GmbH,Eppelheim,Germany)から入手し、正常ヒト表皮角化細胞(NHEK、FC-0025)及びヒト表皮同等物(epiCS、CS-1001)をCellSystems,Troisdorf,Germanyから入手した。これらの細胞株を、製造者のプロトコルに従って培養した。培養した角化細胞を、「Genomic DNA from tissue」キット(Machery-Nagel,Dueren,Germany)を使用して未刺激角化細胞から分離された内在性核酸(eNA、1,25μg/mL)を用いて刺激した。Lipofectamine 2000(Invitrogen,Carlsbad,USA)はトランスフェクション試薬(2.5μL/mL)として機能した。INCB039110、及びルキソリチニブ(Selleckchem,Eching,Germany)を1μMの最終濃度で加え、JAK3選択的FM-381を、推奨されているように(100nm)使用した(例えば、Forster et al,Cell Chem.Biol.2016,23:1335-1340を参照のこと)。全ての実験は生物学的3連で行われた。DuoSet Ancillary Reagent Kit 2(DY008 R&D systems)を、提供されたプロトコルに従って使用してヒトCXCL10(DY266-05 R&D systems)の酵素結合免疫吸着測定法を実施し、Synergy HT Multi-Detection Multiplate Reader(BioTek,Winooski,VT,USA)により測定し、Gen5ソフトウェア(バージョン1.11.5)で読み取った。
【0161】
JAK1リン酸化は、eNAでの刺激後、不死化角化細胞(HaCaT)内で強く増強しており、上記のCLE皮膚病変での所見と一致していた(実施例2、3を参照のこと)。図2A及び図2Bに示すように、JAK1特異的INCB039110及びJAK1/2特異的ルキソリチニブは、刺激細胞内のJAK1の活性化を顕著に低下させた。
【0162】
実施例4.薬理学的JAK1阻害は、インビトロでのCLEに典型的な炎症性サイトカイン及び経路の分子の発現を阻止する
薬理学的JAK1阻害の有効性を検討するため、(i)NHEK細胞、(ii)HaCaT細胞及び(iii)3D表皮同等物の、3つの異なるCLEモデルでのインビトロ分析を実施した。図2Cに示されるように、薬理学的JAK1阻害により、初代角化細胞(NHEK)内で、未処理のeNA炎症細胞と比較してIFN調節ケモカイン(CXCL10、CXCL11)、細胞死(TRAIL、AIM2、TREX1)及び適応免疫細胞(BlyS)へのクロストーク等の自然炎症経路の主要ドライバーをコードする遺伝子の顕著な下方制御が誘導された。関連する下方制御されたKEGGパスウェイを表Aに示す。これらの結果は、HaCaT細胞において確認され、JAK1阻害剤及びJAK1/2阻害剤の両方ともCXCL10のタンパク質発現を顕著に低下させた。
【表3】
KEGGパスウェイは、Database for Annotation,Visualization and Integrated Discovery(DAVID ver.6.8)を使用して分類された。EASE ScoreでP値を生成した。カウント:KEGGパスウェイそれぞれの内部でNHEKにおいてINCB039110により2倍を超えて下方制御されている遺伝子の数。
【0163】
本明細書に開示されるインビトロでのデータは、図2Dに示されるように、JAK1選択的阻害剤が、CLEの典型的サイトカインの抑制においてJAK1/2阻害剤と同程度に強力であり、炎症誘発性ケモカイン(CXCL10、11)、リンパ球活性化因子(BLyS)(例えば、Wenzel et al,Exp.Dermatol.2018,27:95-97を参照のこと)及び細胞死プロモーター(TRAIL(例えば、Zahn et al,Br.J.Dermatol.2011,165:1118-1123を参照のこと)、AIM2、カスパーゼ10、TREX1)をコードする遺伝子発現を妨げることを実証している。興味深いことに、図2Dに示されるように、JAK3の阻害では、CLEに典型的な「界面皮膚炎」の中心的メディエーターであるCXCL10発現の低下は得られなかった。理論に拘束されるわけではないが、このことで、CLE臨床試験におけるJAK3/SYK遮断薬R333の早い段階での失敗が説明される可能性がある(例えば、Presto et al,Br.J.Dermatol.2018,178:1308-1314を参照のこと)。3D表皮同等物では、図2Eに示されるように、刺激epiCSへのJAK1選択的阻害剤の曝露により、顕著なCXCL10タンパク質の発現低下が明らかになり、上記の所見と一致した。
【0164】
実施例5.INCB039110のインビボでの局所適用でループス易発性TREX1-/-マウスでのCLE様病変が寛解する
TREX1-/-マウス(C57BL/6Jバックグラウンドで樹立;Cancer Research Institute,London,UK)は、UKB Bonnの動物コアファシリティ(HET,Bonn,Germany)にて特定病原体除去条件下で育種及び飼育された。TREX1-/-マウス(n=8)の背中の毛を剃り、0,2%のDNFB(1-フルオロ-2,4-ジニトロベンゾール、Sigma Aldrich)により処置した。4日後、UV801KL(Waldmann,Villingen-Schwenningen,Germany)を使用して、UV照射を1日あたり450mJ/cm UVBで115秒間から開始して連続3日間行った。7日間、DMSO及びオリブ油(50μL/マウス)に溶解した1%のINCB039110またはビヒクルを局所塗布した。連日、マウスの写真を撮り、2日ごとにマウスの体重を測定した。
【0165】
TREX1-/-マウスはCLE様紅色鱗状(erythrosquamous)の部分的に潰瘍化した皮膚病変をある齢で自然発症し、UVBによる誘発後に増強した。図3A及び図3Bに示すように、JAK1特異的INCB039110による7日間の局所処置により、プラセボ処置マウスと比較して、病変皮膚が紅斑、硬結、鱗屑及びサイズに関して継続的に改善し、ループス-皮膚-活動性-スコア(適応させたCLASIスコア)の大幅な低下をもたらした。さらに、図3Cに示されるように、表皮の厚さ及び浸潤性真皮免疫細胞等の明確な組織学的特徴が、JAK1阻害により大幅に改善していた。
【0166】
実施例2~5に開示のデータは、JAK1特異的な阻害は、インビトロで及びインビボにおいて、CLEに典型的な炎症性サイトカインの発現を顕著に低下させることを実証している。JAK1選択的阻害剤の局所適用は、ループス易発性マウスのCLE様病変の処置において極めて有効であったことから、ヒトCLEでのそれらの使用の可能性が支持された。
【0167】
本明細書に記載の変更に加えて、本発明の様々な変更が、前述の説明から当業者には明らかとなろう。そのような変更もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。特許、特許出願、及び刊行物の全てを含め、本開示内で引用されている各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
【手続補正書】
【提出日】2024-07-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平苔癬(LP)を治療するための医薬であって、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、および
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミ
ら選択されるJAK1選択的阻害剤、またはその薬学的に許容される塩を含む、前記医薬
【請求項2】
前記JAK1選択的阻害剤またはその薬学的に許容される塩が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬
【請求項3】
前記JAK1選択的阻害剤の薬学的に許容される塩が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、請求項に記載の医薬
【請求項4】
前記JAK1選択的阻害剤またはその薬学的に許容される塩が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の医薬
【請求項5】
前記JAK1選択的阻害剤の薬学的に許容される塩が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である、請求項に記載の医薬
【請求項6】
加の治療薬とともに投与される、請求項1~のいずれか1項に記載の医薬
【請求項7】
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK2阻害剤、JAK1/JAK3阻害剤、TYK2阻害剤、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、請求項に記載の医薬
【請求項8】
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK2阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、請求項10に記載の医薬
【請求項9】
前記JAK1/JAK2阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、JAK3及びTYK2よりも、JAK1及びJAK2に対して選択的である、請求項またはに記載の医薬
【請求項10】
前記JAK1/JAK2阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬
【請求項11】
記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩局所投与される、請求項10に記載の医薬
【請求項12】
記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩経口投与される、請求項10に記載の医薬
【請求項13】
前記ルキソリチニブの薬学的に許容される塩が、ルキソリチニブリン酸塩である、請求項10または12のいずれか1項に記載の医薬
【請求項14】
前記JAK1/JAK2阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩であり、1つ以上の水素原子が重水素原子によって置き換えられている、請求項7~9のいずれか1項に記載の医薬
【請求項15】
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、請求項に記載の医薬
【請求項16】
前記JAK1/JAK3阻害剤が、トファシチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、請求項または15に記載の医薬
【請求項17】
所投与用である、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬
【請求項18】
口投与用である、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0167
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0167】
本明細書に記載の変更に加えて、本発明の様々な変更が、前述の説明から当業者には明らかとなろう。そのような変更もまた、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。特許、特許出願、及び刊行物の全てを含め、本開示内で引用されている各参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本願は、下記の態様も包含する。
[態様1]
皮膚エリテマトーデス(CLE)及び扁平苔癬(LP)から選択される疾患を治療することを必要とする患者においてそれを行う方法であって、
{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-[4-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-1-カルボキサミド、
[3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-1-(1-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペリジン-4-イル)アゼチジン-3-イル]アセトニトリル、
4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、
3-[1-(6-クロロピリジン-2-イル)ピロリジン-3-イル]-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
3-(1-[1,3]オキサゾロ[5,4-b]ピリジン-2-イルピロリジン-3-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロパンニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
4-[(4-{3-シアノ-2-[3-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピロール-1-イル]プロピル}ピペラジン-1-イル)カルボニル]-3-フルオロベンゾニトリル、
[trans-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]-3-(4-{[2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]カルボニル}ピペラジン-1-イル)シクロブチル]アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-[(3-ヒドロキシアゼチジン-1-イル)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2S)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-{[(2R)-2-(ヒドロキシメチル)ピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
4-(4-{3-[(ジメチルアミノ)メチル]-5-フルオロフェノキシ}ピペリジン-1-イル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]ブタンニトリル、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
4-{3-(シアノメチル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、
5-{3-(シアノメチル)-3-[4-(1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-1-イル}-N-イソプロピルピラジン-2-カルボキサミド、
{1-(cis-4-{[6-(2-ヒドロキシエチル)-2-(トリフルオロメチル)ピリミジン-4-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-[(エチルアミノ)メチル]-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3R)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{1-(cis-4-{[4-{[(3S)-3-ヒドロキシピロリジン-1-イル]メチル}-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}シクロヘキシル)-3-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(1S)-2-ヒドロキシ-1-メチルエチル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
{trans-3-(4-{[4-({[(2R)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル{trans-3-(4-{[4-({[(2S)-2-ヒドロキシプロピル]アミノ}メチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、及び
{trans-3-(4-{[4-(2-ヒドロキシエチル)-6-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル]オキシ}ピペリジン-1-イル)-1-[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]シクロブチル}アセトニトリル、
から選択されるJAK1選択的阻害剤、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩を、治療的有効量にて前記患者に投与することを含む、前記方法。
[態様2]
前記JAK1選択的阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、JAK2、JAK3、及びTYK2よりも、JAK1に対して選択的である、態様1に記載の方法。
[態様3]
前記JAK1選択的阻害剤が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である、態様1または2に記載の方法。
[態様4]
前記薬学的に許容される塩が、{1-{1-[3-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)イソニコチノイル]ピペリジン-4-イル}-3[4-(7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イル)-1H-ピラゾール-1-イル]アゼチジン-3-イル}アセトニトリルアジピン酸塩である、態様3に記載の方法。
[態様5]
前記JAK1選択的阻害剤が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミド、またはその薬学的に許容される塩である、態様1または2に記載の方法。
[態様6]
前記薬学的に許容される塩が、4-[3-(シアノメチル)-3-(3’,5’-ジメチル-1H,1’H-4,4’-ビピラゾール-1-イル)アゼチジン-1-イル]-2,5-ジフルオロ-N-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエチル]ベンズアミドリン酸塩である、態様5に記載の方法。
[態様7]
前記JAK1選択的阻害剤が、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル、またはその薬学的に許容される塩である、態様1または2に記載の方法。
[態様8]
前記JAK1選択的阻害剤が、((2R,5S)-5-{2-[(1R)-1-ヒドロキシエチル]-1H-イミダゾ[4,5-d]チエノ[3,2-b]ピリジン-1-イル}テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)アセトニトリル一水和物である、態様1または2に記載の方法。
[態様9]
前記患者に追加の治療薬を投与することをさらに含む、態様1~8のいずれか1つに記載の方法。
[態様10]
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK2阻害剤、JAK1/JAK3阻害剤、TYK2阻害剤、または前述のいずれかの薬学的に許容される塩から選択される、態様9に記載の方法。
[態様11]
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK2阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、態様10に記載の方法。
[態様12]
前記JAK1/JAK2阻害剤、またはその薬学的に許容される塩が、JAK3及びTYK2よりも、JAK1及びJAK2に対して選択的である、態様10または11に記載の方法。
[態様13]
前記JAK1/JAK2阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、態様10~12のいずれか1つに記載の方法。
[態様14]
前記方法が、前記患者への前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩の局所投与を含む、態様13に記載の方法。
[態様15]
前記方法が、前記患者への前記ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩の経口投与を含む、態様13に記載の方法。
[態様16]
前記薬学的に許容される塩が、ルキソリチニブリン酸塩である、態様13または15のいずれか1つに記載の方法。
[態様17]
前記JAK1/JAK2阻害剤が、ルキソリチニブ、またはその薬学的に許容される塩であり、1つ以上の水素原子が重水素原子によって置き換えられている、態様10~12のいずれか1つに記載の方法。
[態様18]
前記追加の治療薬が、JAK1/JAK3阻害剤、またはその薬学的に許容される塩である、態様10に記載の方法。
[態様19]
前記JAK1/JAK3阻害剤が、トファシチニブ、またはその薬学的に許容される塩である、態様10または18に記載の方法。
[態様20]
前記方法が、前記患者への前記JAK1選択的阻害剤の局所投与を含む、態様1~19のいずれか1つに記載の方法。
[態様21]
前記方法が、前記患者への前記JAK1選択的阻害剤の経口投与を含む、態様1~19のいずれか1つに記載の方法。
[態様22]
前記疾患が皮膚エリテマトーデス(CLE)である、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
[態様23]
前記皮膚エリテマトーデス(CLE)が、亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)及び慢性円板状エリテマトーデス(CDLE)から選択される、態様22に記載の方法。
[態様24]
前記疾患が、扁平苔癬(LP)である、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
【外国語明細書】