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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133641
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】撮影システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/695 20230101AFI20240925BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20240925BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240925BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240925BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
H04N23/695
H04N5/222 100
G03B5/00 J
G03B17/56 B
G03B15/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024109187
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2020038311の分割
【原出願日】2020-03-06
(71)【出願人】
【識別番号】321001056
【氏名又は名称】OMデジタルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】土屋 仁司
(57)【要約】
【課題】経緯台と手ぶれ補正機構を連携することで、設置が簡単で且つ比較的に安価な構成で、赤道儀と同等の撮影が可能になる技術を提供する。
【解決手段】撮影視野を回転させるために、撮影光学系の光軸の周りに撮像素子102を回転させる機構を有する撮像装置1と、撮像装置の撮影方向を変更するために、撮像装置の撮影方位および仰角を調整する機構を有する経緯台装置2と、ユーザによる目標天体の指示に応答して、現在位置情報および現在時刻情報に基づいて目標天体の地平座標情報を算出し、該地平座標情報と現在位置情報とに基づいて撮像装置のロール方向の自転角速度情報を算出する操作端末装置4とを備え、撮像装置は、操作端末装置が算出した自転角速度情報に基づいて撮像装置の撮影視野を回転させ、経緯台装置は、操作端末装置が算出した地平座標情報に基づいて、撮像装置の撮影方向を変更する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影視野を回転させるために、撮影光学系の光軸の周りに撮像素子を回転させる機構を有する撮像装置と、
前記撮像装置の撮影方向を変更するために、前記撮像装置の撮影方位および仰角を調整する機構を有する経緯台装置と、
ユーザによる目標天体の指示に応答して、現在位置情報および現在時刻情報に基づいて前記目標天体の地平座標情報を算出し、該地平座標情報と現在位置情報とに基づいて前記撮像装置のロール方向の自転角速度情報を算出する操作端末装置と、
を備え、
前記撮像装置は、前記操作端末装置が算出した自転角速度情報に基づいて前記撮像装置の撮影視野を回転させ、
前記経緯台装置は、前記操作端末装置が算出した地平座標情報に基づいて、前記撮像装置の撮影方向を変更する、
ことを特徴とする撮影システム。
【請求項2】
前記操作端末装置は、前記撮像装置、及び、前記経緯台のそれぞれと無線通信可能であり、前記撮像装置に前記自転角速度情報を送信し、前記経緯台装置に前記地平座標情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の撮影システム。
【請求項3】
前記操作端末装置は、前記撮像装置の撮影動作と、前記撮像装置の撮影視野回転動作と、前記経緯台装置による前記撮影方向の調整動作について、その開始と停止を制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の撮影システム。
【請求項4】
前記操作端末装置は、前記撮影動作と前記視野回転動作が同期するように制御することを特徴とする請求項3に記載の撮影システム。
【請求項5】
前記操作端末装置は、GPSセンサと、時計と、赤道座標指定部と、地平座標算出部と、自転角度算出部と、通信部とを備えており、
前記赤道座標指定部は、ユーザが指定した目標天体の赤経及び赤緯情報を出力し、
前記地平座標算出部は、前記GPSセンサによって検出された現在位置の緯度及び経度情報と、前記時計によって出力された現在日時情報とに基づいて、前記赤道座標指定部によって出力された赤経及び赤緯に対応する方位及び仰角情報を算出し、
前記自転角速度算出部は、前記地平座標算出部によって算出された方位及び仰角情報と、前記GPS センサによって算出された現在位置の緯度情報に基づいて、前記撮像装置のロール方向の自転角速度情報を算出し、
前記通信部は、前記撮像装置に前記自転角速度情報を送信し、前記経緯台装置に前記地平座標情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
天体を撮影する場合、日周運動に依り天体が移動するため、露光時間に応じて像(撮影像)が流れる。
【0003】
暗い天体を撮影する場合、撮像素子の感度を上げて撮影すると、ノイズに依る画質劣化が大きくなる。そこで、感度を上げずに十分な光量(露出量)を確保しつつ露光時間を長くしても像が流れない様に、天体の動きを追尾して撮影視野を移動させる方法(撮影視野移動方法)がある。
【0004】
撮影視野移動方法の一つとして、天体の動きを追尾する架台上にカメラを設置する方法がある。架台には、赤道儀と経緯台という2種類がある。
【0005】
赤道儀では、回転軸を地球の自転軸に合わせて設置し、露光中に地球の自転を打ち消す様に回転させることで日周運動を除去することができる。しかし、赤道儀は、重量が重く可搬性が悪いことや、設置に多くの手間が掛かり、価格も高価である。
【0006】
一方、経緯台は、方位と仰角の2軸で天体を追尾する。しかし、追尾中のカメラの姿勢が一定に固定されるため、撮影視野が回転する。このため、撮影視野周辺部ほど像が流れてしまい、天体の像を止める撮影には適さない。
【0007】
撮影視野移動方法の他の一つとして、カメラの手ぶれ補正機構を用いて天体の動きを追尾する方法がある。例えば、特許文献1に開示されている様に、撮影地点の緯度情報と、撮影方位角情報と、撮影仰角情報と、撮影装置の姿勢情報と、撮影光学系の焦点距離情報とを入力し、当該入力した全情報を用いて、天体像を撮像素子の所定の撮像領域に対して固定するための撮影装置に対する相対移動量を算出する。そして、算出した相対移動量に基づき、所定の撮像領域と天体像の少なくとも一方を移動させて撮影することで、天体の動きに追従した撮影を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5590121号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示の撮影視野移動方法では、設置が簡単であることや、比較的に安価に実現することができる、といった利点がある。しかし、手ぶれ補正機構に依り像を移動可能な範囲は限られており、その限られた範囲内でしか天体を追尾することができない。そこで、天体を追尾する撮影を複数回連続的に行って、それぞれの撮影画像の位置合わせ合成を行うことで天体画像を生成する場合がある。しかし、この場合は、撮影画像内の天体の位置が撮影画像毎に異なるため、位置合わせ合成する撮影画像の枚数が多くなるほど、生成される天体画像の画角が狭くなる(撮影画像の重なり部分が小さくなる)、という問題が生じる。
【0010】
本発明は上記の問題に着眼したものであり、経緯台と手ぶれ補正機構を連携することで、設置が簡単で且つ比較的に安価な構成で、赤道儀と同等の撮影が可能になる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様の撮影システムは、撮影視野を回転させるために、撮影光学系の光軸の周りに撮像素子を回転させる機構を有する撮像装置と、前記撮像装置の撮影方向を変更するために、前記撮像装置の撮影方位および仰角を調整する機構を有する経緯台装置と、ユーザによる目標天体の指示に応答して、現在位置情報および現在時刻情報に基づいて前記目標天体の地平座標情報を算出し、該地平座標情報と現在位置情報とに基づいて前記撮像装置のロール方向の自転角速度情報を算出する操作端末装置と、を備え、前記撮像装置は、前記操作端末装置が算出した自転角速度情報に基づいて前記撮像装置の撮影視野を回転させ、前記経緯台装置は、前記操作端末装置が算出した地平座標情報に基づいて、前記撮像装置の撮影方向を変更する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に依れば、経緯台と手ぶれ補正機構を連携することで、設置が簡単で且つ比較的に安価な構成で、赤道儀と同等の撮影が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係る撮影システムの構成を例示する図である。
図2】第1の実施形態に係るカメラの構成を例示する図である。
図3】駆動部の駆動機構を例示する図である。
図4】ぶれ補正マイコンの構成を例示する図である。
図5】システムコントローラの構成を例示する図である。
図6】経緯台が備える制御部の構成を例示する図である。
図7】ハンドコントローラの構成を例示する図である。
図8】システムコントローラが行う撮影処理の流れを例示するフローチャートである。
図9】ハンドコントローラが行う経緯台制御処理の流れを例示するフローチャートである。
図10】第1の実施形態に係る撮影システムにおいて、撮像素子、駆動部、及び経緯台の動作を時系列に並べて例示したタイミングチャートである。
図11】第2の実施形態に係る撮影システムの構成を例示する図である。
図12】第2の実施形態に係るカメラの構成を例示する図である。
図13】操作端末の構成を例示する図である。
図14】操作端末が行うカメラ制御処理の流れを例示するフローチャートである。
図15】第2の実施形態に係る撮影システムにおいて、撮像素子、駆動部、及び経緯台の動作を時系列に並べて例示したタイミングチャートである。
図16】操作端末が定期的に行う経緯台制御処理の流れを例示するフローチャートである。
図17】第3の実施形態の撮影システムにおいて、撮像素子、駆動部、及び経緯台の動作を時系列に並べて例示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る撮影システムの構成を例示する図である。
図1に例示した撮影システムは、カメラ1(撮像装置又は揺れ補正装置の一例)と、当該カメラ1が設置された経緯台2(ステージ装置の一例)と、経緯台2の動作を制御するハンドコントローラ3とを備える。
【0016】
カメラ1は、手ぶれ補正機構を備えたカメラであり、レンズ一体型又はレンズ交換型のカメラである。
【0017】
経緯台2は、回転ステージ21、固定金具22、台座23、及び仰角回転軸24(第2回転軸の一例)を備える。固定金具22は、経緯台2とカメラ1を結合するためのL字状の金具であり、カメラ1の三脚穴にねじ止めに依り固定される。台座23は、経緯台2を水平に保つためのものであり、例えば三脚の様な構成でも構わない。回転ステージ21は、内部の方位回転軸(第1回転軸の一例)の回転に依り台座23に対して回転する機構であり、当該回転に依り、カメラ1の撮影方向(撮影光軸)の方位を変更する。方位回転軸は、第1回転軸の一例である。仰角回転軸24は、当該仰角回転軸24の回転に依り、当該仰角回転軸24に連結されている固定金具22が回転してカメラ1の撮影方向の仰角を変更する。仰角回転軸24は、第2回転軸の一例である。
【0018】
ハンドコントローラ3は、経緯台2を制御する。例えば、ハンドコントローラ3は、経緯台2の回転ステージ21及び仰角回転軸24を制御する。これに依り、ハンドコントローラ3は、カメラ1の撮影方向の方位及び仰角を制御することができ、カメラ1の撮影方向を目標天体に向けることができる。また、カメラ1の撮影方向の方位及び仰角を日周運動に追従させる様に変更して、目標天体がカメラ1の画角の中心に位置する様に制御することもできる。
【0019】
図2は、第1の実施形態に係るカメラ1の構成を例示する図である。
図2に例示したカメラ1は、光学系101、撮像素子102(対象物の一例)、駆動部103(補正機構の一例)、システムコントローラ104(画像処理プロセッサの一例)、ぶれ補正マイコン105(制御回路の一例)、角速度センサ106、加速度センサ107、方位センサ108(方位情報取得回路の一例)、GPS(Global Positioning System)センサ109(現在位置情報取得回路の一例)、メモリカード110、EVF(Electronic View Finder)111、及びSW(Switch)112を備える。
【0020】
光学系101は、被写体からの光束を撮像素子102の撮像面に結像させる。光学系101は、例えば、フォーカスレンズを含む複数のレンズから構成される。
【0021】
撮像素子102は、撮像面に結像された被写体像を電気信号に変換する。撮像素子102は、例えば、CCD(charge coupled device)又はCMOS(complementary metal oxide semiconductor)等のイメージセンサである。
【0022】
駆動部103は、ぶれ補正マイコン105からの駆動指示(駆動量指示)に基づいて、撮像素子102の撮像面を含む平面上で撮像素子102を上下左右方向(カメラの垂直水平方向)に自在に移動させると共に自在に光学系101の光軸回りに回転させる機構である。
【0023】
システムコントローラ104は、カメラ1の全体動作を制御する。例えば、システムコントローラ104は、撮像素子102の露光制御を行う。また、例えば、撮像素子102に依り変換された電気信号を映像データとして読み出し、読み出した映像データに対して、ライブビュー用の画像処理を行ってライブビュー映像としてEVF111に表示させたり、記録用の画像処理(記録形式に応じた画像処理)を行ってメモリカード110に記録したりする。また、例えば、撮影に係る各部の制御や天体追尾に係るパラメータの算出を行う。また、例えば、システムコントローラ104は、加速度センサ107に依り検出された複数方向の加速度から重力成分を抽出し、重力方向に対する傾斜を算出して、カメラ1の姿勢を検出すること等も行う。
【0024】
角速度センサ106は、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の角速度を検出する。ここで、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の角速度は、カメラ1のY軸回り、X軸回り、及びZ軸回りの角速度でもある。カメラ1のY軸回り、X軸回り、及びZ軸回りは、カメラ1の上下方向の軸回り、左右方向の軸回り、及び光学系101の光軸回りでもある。カメラ1のY軸及びX軸を含む平面は、撮像素子102の撮像面を含む平面でもある。
【0025】
加速度センサ107は、カメラ1の複数方向の加速度を検出する。
ぶれ補正マイコン105は、角速度センサ106に依り検出された角速度を読み出し、当該角速度に基づいて撮像素子102の撮像面における像移動量を算出し、当該像移動量を打ち消す方向に撮像素子102を動かす様に駆動部103を制御する。また、ぶれ補正マイコン105は、詳細は後述する様に、カメラ1の少なくともロール方向の自転角速度に基づいて駆動部103を制御することも行う。
【0026】
方位センサ108は、地磁気を検出し、検出した地磁気に基づいて、カメラ1の撮影方向の方位を検出する。
GPSセンサ109は、カメラ1の現在位置の少なくとも緯度を検出する。
【0027】
メモリカード110は、カメラ1に対して着脱可能な不揮発性メモリであり、例えばSDメモリカードである。
【0028】
EVF111は、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)等の表示装置である。
【0029】
SW112は、ユーザ操作を検出してシステムコントローラ104に通知するスイッチであり、ユーザが撮影開始指示や動作モード選択指示等を行う際に使用される。
【0030】
図3は、駆動部103の駆動機構を例示する図である。
図3に例示した駆動部103の駆動機構は、撮像素子102が固定される駆動ステージ131と、その駆動ステージ131の位置を制御するための3つのアクチュエータ132(X1アクチュエータ132a、Y1アクチュエータ132b、及びY2アクチュエータ132c)を備える。各アクチュエータ132は、リニア駆動を行うアクチュエータであって、例えばVCM(Voice Coil Motor)である。
【0031】
この様な駆動機構では、X1アクチュエータ132aに依って駆動ステージ131の横方向(X軸方向、図3の左右方向)の移動が制御され、Y1アクチュエータ132b及びY2アクチュエータ132cに依って駆動ステージ131の縦方向(Y軸方向、図3の上下方向)の移動及び回転が制御される。ここで、駆動ステージ131の縦方向の移動は、Y1アクチュエータ132b及びY2アクチュエータ132cに対して、同じ方向に同じ移動量が指示されることに依って行われる。駆動ステージ131の回転は、Y1アクチュエータ132b及びY2アクチュエータ132cに対して、反対方向に同じ移動量が指示されることに依って行われる。
【0032】
なお、駆動部103の駆動機構は、図3に例示したものに限らず、例えば、駆動ステージ131の横方向の移動制御を2つのアクチュエータに依り行うと共に、その2つのアクチュエータに依り駆動ステージ131の回転制御を行ってもよい。この場合は、駆動ステージ131の縦方向の移動制御を1つのアクチュエータに依り行ってもよい。また、駆動ステージ131の回転制御を、例えばステッピングモータ等の、VCM以外のアクチュエータに依り行ってもよい。
【0033】
図4は、ぶれ補正マイコン105の構成を例示する図である。
ぶれ補正マイコン105は、角速度に基づいて処理を行う構成として、ヨー方向の角速度に基づいて処理を行う構成と、ピッチ方向の角速度に基づいて処理を行う構成と、ロール方向の角速度に基づいて処理を行う構成とを有するが、その3つの構成は同一又は略同一である。詳しくは、ヨー方向の角速度に基づいて処理を行う構成と、ピッチ方向の角速度に基づいて処理を行う構成は同一である。また、ロール方向の角速度に基づいて処理を行う構成は、ヨー方向(又はピッチ方向)の角速度に基づいて処理を行う構成に対して、後述の乗算部154が除かれただけの構成である。そこで、ここでは、角速度に基づいて処理を行う構成として、ヨー方向(又はピッチ方向)の角速度に基づいて処理を行う構成のみを、図4に示すと共に説明することにする。
【0034】
図4に例示したぶれ補正マイコン105は、基準値算出部151、減算部152、モード切替スイッチ153、乗算部154、積算部155、補正量算出部156、通信部157、及び自転角速度保持部158を備える。ここで、ヨー方向(又はピッチ方向)の角速度に基づいて処理を行う構成は、通信部157を除く各部(基準値算出部151、減算部152、モード切替スイッチ153、乗算部154、積算部155、補正量算出部156、及び自転角速度保持部158)である。
【0035】
基準値算出部151は、カメラ1が静止状態であるときの角速度センサ106に依り検出された角速度に基づいて基準値を算出し、保持する。例えば、基準値算出部151は、カメラ1が静止した状態のままの所定時間の間に検出された角速度の平均値(時間平均値)を基準値として算出し、保持する。基準値の算出方法は、これに限定されるものではなく、誤差の少ない基準値が算出されるものであれば何れの算出方法でもよい。
【0036】
減算部152は、角速度センサ106に依り検出された角速度から基準値算出部151に保持されている基準値を減算する。減算結果である値の符号は、角速度の回転方向を表すものとして扱われる。
【0037】
通信部157は、システムコントローラ104と通信を行う通信インタフェースであり、例えば、システムコントローラ104から、パラメータ(自転角速度や光学系101の焦点距離等)を取得したり、指示(モード指示、補正開始指示、補正終了指示等)を受け付けたりする。
【0038】
自転角速度保持部158は、通信部157を経由してシステムコントローラ104から取得された自転角速度(制御角速度の一例)を保持する。この自転角速度は、地球の自転に依りカメラ1に生じる角速度(ここではカメラ1のヨー方向(又はピッチ方向)の自転角速度)である。
【0039】
モード切替スイッチ153は、システムコントローラ104からのモード指示に応じて、出力する角速度を、減算部152に依り減算された角速度、又は、自転角速度保持部158に保持されている自転角速度に切り替える。例えば、モード指示が通常モード(第1モードの一例)を指示するものである場合は、出力する角速度を、減算部152に依り減算された角速度に切り替え、モード指示が天体撮影モード(第2モードの一例)を指示するものである場合は、出力する角速度を、自転角速度保持部158に保持されている自転角速度に切り替える。図4では、モード指示が通常モードを指示するものであった場合の切り替え状態を示している。
【0040】
乗算部154は、モード切替スイッチ153から出力された角速度に光学系101の焦点距離を乗算する。光学系101の焦点距離は、例えば、システムコントローラ104から通信部157を経由して通知される。
【0041】
積算部155は、乗算部154の乗算結果を時間積分して像移動量(撮像素子102の撮像面上での像移動量)を算出する。
【0042】
補正量算出部156は、積算部155に依り算出された像移動量を打ち消す方向に撮像素子102を移動させるための駆動部103の駆動量(補正量でもある)を算出し、駆動部103へ出力する。
【0043】
なお、図示しないロール方向の角速度に基づいて処理を行う構成では、乗算部154が除かれていることから、積算部155では、モード切替スイッチ153から出力された角速度を時間積分して像移動量の算出が行われる。また、補正量算出部156では、その像移動量を打ち消す方向に撮像素子102を回転させるための駆動部103の駆動量が算出され、駆動部103へ出力される。
【0044】
この様な構成を有するぶれ補正マイコン105に依れば、システムコントローラ104からのモード指示が通常モードを指示するものである場合は、角速度センサ106に依り検出された角速度に基づいて像ぶれ補正が行われるので、手ぶれ補正が行われる。一方、システムコントローラ104からのモード指示が天体撮影モードを指示するものである場合は、自転角速度に基づいて像ぶれ補正が行われるので、撮像素子102が天体の動きを追尾する動作となり、日周運動に依り生じる像ぶれが補正される。ここで、像の回転のみを補正する場合は、システムコントローラ104が、ヨー方向及びピッチ方向の自転角速度を0として対応する自転角速度保持部158に保持させればよい。
【0045】
図5は、システムコントローラ104の構成を例示する図である。
図5に例示したシステムコントローラ104は、映像読出部141、画像処理部142、映像出力部143、記録処理部144、姿勢検出部145(姿勢情報取得回路の一例)、自転角速度算出部146、及び通信部147を備える。
【0046】
映像読出部141は、撮像素子102に水平同期信号及び垂直同期信号を出力して、撮像素子102にて光電変換に依り蓄積された電荷を映像データ(画像データ)として読み出す。
【0047】
画像処理部142は、映像読出部141に依り読み出された映像データに対して、様々な画像処理を行う。例えば、画像処理部142は、表示用の画像処理(ライブビュー用の画像処理等)や、記録用の画像処理(記録形式に応じた画像処理等)や、コンポジット撮影用の画像処理を行う。コンポジット撮影用の画像処理では、複数フレームの画像データが画像回転等の位置合わせが行われてから合成される。また、画像処理部142は、例えば、複数フレームの画像データに対して累積加算合成又は加算平均化合成を行う。
【0048】
映像出力部143は、画像処理部142に依る画像処理後(例えば表示用の画像処理後)の映像データをEVF111に出力し、その映像をEVF111に表示させる。
【0049】
記録処理部144は、画像処理部142に依る画像処理後(例えば記録用の画像処理後)の映像データをメモリカード110に記録する。
【0050】
姿勢検出部145は、加速度センサ107に依り検出された複数方向の加速度から重力ベクトルを検出し、当該重力ベクトルとカメラ1の座標とのずれから、カメラ1の撮影方向の仰角等といったカメラ1の姿勢を検出する。
【0051】
自転角速度算出部146は、姿勢検出部145に依り検出された仰角と、方位センサ108に依り検出された方位(方位角)と、GPSセンサ109に依り検出された緯度とに基づいて、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度を算出する。この算出には、例えば、出願人の先の出願である国際出願PCT/JP2019/035004に開示の算出方法を利用することができる。
【0052】
通信部147は、ぶれ補正マイコン105と通信を行う通信インタフェースである。例えば、通信部147は、自転角速度算出部146に依り算出された自転角速度をぶれ補正マイコン105に送信する。また、例えば、通信部147は、ユーザに依るSW112の操作に依り天体撮影モードが選択(設定)された場合は、ぶれ補正マイコン105に対して、天体撮影モードを指示するモード指示を行い、ユーザに依るSW112の操作に依り通常モードが選択(設定)された場合は、ぶれ補正マイコン105に対して、通常モードを指示するモード指示を行う。
【0053】
図6は、経緯台2が備える制御部の構成を例示する図である。
図6に例示した経緯台2の制御部25は、通信部251、駆動制御部252(駆動装置の一例)、Aモータ253、及びBモータ254を備える。
【0054】
通信部251は、ハンドコントローラ3と無線又は有線に依り通信を行う通信インタフェースであり、例えば、ハンドコントローラ3から方位及び仰角を取得する。
【0055】
駆動制御部252は、通信部251を経由してハンドコントローラ3から取得された方位及び仰角に基づいて、Aモータ253及びBモータ254の駆動を制御する。詳しくは、取得された方位に基づいてAモータ253を駆動制御して、回転ステージ21(方位回転軸)を回転させると共に、取得された仰角に基づいてBモータ254を駆動制御して、仰角回転軸24を回転させる。
【0056】
Aモータ253は、回転ステージ21を回転させるアクチュエータであり、Bモータ254は、仰角回転軸24を回転させるアクチュエータである。Aモータ253及びBモータ254は、例えば、ステッピングモータである。
【0057】
図7は、ハンドコントローラ3の構成を例示する図である。
図7に例示したハンドコントローラ3は、GPSセンサ31、時計32、赤道座標指定部33、SW34、地平座標算出部35、及び通信部36を備える。
【0058】
GPSセンサ31は、ハンドコントローラ3の現在位置の緯度と経度を検出する。
時計32は、現在日時を出力する時計回路である。
【0059】
赤道座標指定部33は、ユーザが指定した赤経及び赤緯を出力する。例えば、赤道座標指定部33は、ハンドコントローラ3が備える図示しない表示部に星図を表示して、その星図上でユーザが指示したポイントの赤経及び赤緯を出力する。或いは、例えば、赤道座標指定部33は、ユーザが指定した天体名称の天体の赤経及び赤緯を、図示しないデータベースから取得して出力する。データベースは、ハンドコントローラ3に内部にあってもよいし、外部にあってもよい。外部にある場合は、赤経及び赤緯が通信部36を経由してデータベースから取得されてもよい。この様に、赤道座標指定部33は、ユーザの指定に基づいて赤経及び赤緯が出力されるものであれば、いずれのものでも構わない。
【0060】
地平座標算出部35は、GPSセンサ31に依り検出された現在位置の緯度及び経度と、時計32に依り出力された現在日時とに基づいて、赤道座標指定部33に依り出力された赤経及び赤緯に対応する方位及び仰角を算出する。この算出は、公知であるので詳細は述べないが、例えば、次の様にして行われる。まず、現在日時からユリウス日が求められ、グリニッジ恒星時が算出される。次に、現在位置の経度に基づいて地方恒星時が算出され、時角が求められる。そして、時角と赤経及び赤緯と現在位置の緯度とから方位及び仰角が求められる。
【0061】
SW34は、経緯台2に対する駆動開始指示及び駆動終了指示や、ハンドコントローラ3に対する各種設定指示等をユーザが行う際に使用されるスイッチである。
【0062】
通信部36は、経緯台2と無線又は有線に依り通信を行う通信インタフェースであり、例えば、地平座標算出部35に依り算出された方位及び仰角を経緯台2に送信する。
【0063】
これまでに説明した第1の実施形態に係る撮影システムの構成において、カメラ1の一部の構成(システムコントローラ104やぶれ補正マイコン105等)や、経緯台2の制御部25の一部の構成(駆動制御部252等)や、ハンドコントローラ3の一部の構成(赤道座標指定部33や地平座標算出部35等)は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリを含むハードウェアを用いて実現され、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することに依り、その機能が実現されてもよい。或いは、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の専用回路を用いて実現されてもよい。
【0064】
図8は、システムコントローラ104が行う撮影処理の流れを例示するフローチャートである。この撮影処理は、ユーザがカメラ1で天体撮影モードを選択して撮影開始指示を行うと開始する処理である。
【0065】
図8に例示した撮影処理が開始すると、システムコントローラ104は、まず、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度を算出する(S11)。詳しくは、自転角速度算出部146が、姿勢検出部145に依り検出された姿勢(仰角)と、方位センサ108に依り検出された方位と、GPSセンサ109に依り検出された現在位置の緯度とに基づいて、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度を算出する。例えば、カメラ1の姿勢が水平である場合(カメラ1のX軸が水平である場合)は、次式(1)~(3)を用いて、カメラ1のピッチ方向、ヨー方向、及びロール方向の自転角速度(ωpitch、ωyaw、ωroll)を算出することができる。
【0066】
ωpitch=ωrot×(COSθlat×SINθdirection) 式(1)
ωyaw=ωrot×(SINθlat×COSθele-COSθlat×COSθdirection×SINθele) 式(2)
ωroll=ωrot×(COSθlat×COSθdirection×COSθele+SINθlat×SINθele) 式(3)
【0067】
ここで、ωrot:自転角速度、θlat:緯度、θdirection:方位、θele:高度(仰角)
である。なお、式(1)~(3)の詳細については、上述の国際出願PCT/JP2019/035004に開示されている。
【0068】
次に、システムコントローラ104は、S11で算出したカメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度をぶれ補正マイコン105に設定する(S12)。詳しくは、通信部147が、自転角速度算出部146に依り算出されたカメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度をぶれ補正マイコン105に送信し、それぞれを対応する自転角速度保持部158に保持させる。
【0069】
ここでは、カメラ1が経緯台2に設置されて撮影が行われることが前提なので、S12では、カメラ1のヨー方向及びピッチ方向の自転角速度として0を設定し、カメラ1のロール方向の自転角速度としてS11で算出したロール方向の自転角速度(ωroll)が設定されるものとする。
【0070】
次に、システムコントローラ104は、ぶれ補正マイコン105に補正開始(像ぶれ補正の開始)を指示する(S13)。これに依り、日周運動に依り生じる像移動を打ち消す様に撮像素子102を移動(この場合は回転)させる動作が開始する。
【0071】
次に、システムコントローラ104は、露光を開始する(S14)。
その後、システムコントローラ104は、ユーザに依り露光終了が指示されるか、又は、予め決められた露光時間(ユーザが予め指定した露光時間等)が経過すると、ぶれ補正マイコン105に補正終了(像ぶれ補正の終了)を指示し(S15)、図8に例示した撮影処理が終了する。
【0072】
この様な撮影処理に依れば、経緯台2を用いて天体の動きにカメラ1の撮影光軸を追尾させながら撮影を行う場合に、少なくとも露光中は、撮影視野の回転が生じることはない。従って、少なくとも露光中は、撮影視野の回転に伴う像ぶれが生じることはない。
【0073】
図9は、ハンドコントローラ3が行う経緯台制御処理の流れを例示するフローチャートである。
【0074】
図9に例示した経緯台制御処理が開始すると、ハンドコントローラ3は、まず、ユーザの指定に基づく赤経及び赤緯に対応する地平座標(方位及び仰角)を算出する(S21)。詳しくは、地平座標算出部35が、GPSセンサ31に依り検出された現在位置の緯度及び経度と、時計32に依り出力された現在日時とに基づいて、赤道座標指定部33に依り出力された赤経及び赤緯に対応する方位及び仰角を算出する。
【0075】
次に、ハンドコントローラ3は、S21で算出した地平座標に基づいて経緯台2を駆動させる(S22)。詳しくは、通信部36が、地平座標算出部35に依り算出された方位及び仰角を経緯台2に送信し、経緯台2が、その方位及び仰角に基づいて、回転ステージ21及び仰角回転軸24を回転させる。これに依り、カメラ1の撮影光軸をユーザの指定に基づく地平座標に向けることができる。
【0076】
なお、S21及びS22の処理に係る動作は、所謂、天体の自動導入と呼ばれ、天体を指定すれば、当該天体が現在見えている位置へカメラ1の撮影視野が向けられ、容易に被写体(指定した天体、目標天体)をとらえることができる。
【0077】
次に、ハンドコントローラ3は、地平座標の更新を行う(S23)。詳しくは、前回の地平座標算出時から時間経過した現在日時における、S21でのユーザの指定に基づく赤経及び赤緯に対応する地平座標(方位及び仰角)を算出する。ここでの算出は、S21での算出と同様にして行われる。但し、現在日時以外の、現在位置の緯度及び経度とユーザの指定に基づく赤経及び赤緯は、S21での算出に使用されたものと同じになるので、S23で新たに取得される必要はない。
【0078】
次に、ハンドコントローラ3は、S23で更新(算出)した地平座標に基づいて経緯台2を駆動する(S24)。この駆動は、S22での駆動と同様にして行われる。
【0079】
次に、ハンドコントローラ3は、ユーザに依り停止指示が行われたか否かを判定し(S25)、その判定結果がNOの場合は処理がS23に戻る。
【0080】
一方、S25の判定結果がYESの場合、ハンドコントローラ3は、経緯台2の駆動を停止し(S26)、図9に例示した経緯台制御処理が終了する。
【0081】
なお、S23~S25がNOの処理に係る動作は、所謂天体追尾動作であり、目標天体が常に画角の指定の位置に維持される様な動作となる。
【0082】
図10は、第1の実施形態に係る撮影システムにおいて、撮像素子102、駆動部103、及び経緯台2の動作を時系列に並べて例示したタイミングチャートである。
【0083】
図10に例示したタイミングチャートにおいて、ユーザが撮影開始指示を行う前は、撮像素子102がライブビュー露光(ライブビュー用の露光動作)を行い、EVF111はライブビュー表示を行っている。また、駆動部103は停止して、経緯台2は、天体追尾動作を行っている。
【0084】
ここで、ユーザが天体撮影モードを選択して撮影開始指示を行うと、EVF111はライブビュー表示を停止し、撮像素子102は、静止画露光(静止画用の露光)を開始する。静止画露光は、撮影期間中に1回行われてもよいし、図10に例示した様に複数回に分けて行われてもよい。
【0085】
また、駆動部103は、駆動ステージ131を初期位置に移動し、静止画露光開始前に、視野回転補正を開始する。視野回転補正は、撮影視野の回転を補正するために(カメラ1のロール方向の自転角速度に依り生じる像移動を補正するために)駆動ステージ131を回転する動作である。
【0086】
経緯台2は、撮影開始指示前と同様に引き続き天体追尾動作を行う。
そして、撮影が終了すると、撮像素子102、駆動部103、及び経緯台2は、撮影開始指示前の状態に戻る。詳しくは、撮像素子102はライブビュー露光を再開し、駆動部103は停止し、経緯台2は引き続き天体追尾動作を行う。
【0087】
なお、図10に例示した様に、静止画露光が複数回に分けて行われた場合は、複数の静止画(画像)が得られることから、後に、その複数の静止画が合成されてもよい。この場合は、例えば、累積加算合成又は加算平均化合成が行われる。なお、この場合の合成の際は、位置合わせ(画像回転)は不要である。
【0088】
以上に述べてきた様に、第1の実施形態に依れば、赤道儀よりも安価で設置が比較的容易な経緯台2を用いて天体を追尾しながらカメラ1で撮影を行う場合に、露光中は撮影視野の回転が補正されるため、露光時間を延ばすことができ、赤道儀と同等の撮影が可能になる。
【0089】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の説明では、第1の実施形態に対して異なる点を中心に説明する。また、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
図11は、第2の実施形態に係る撮影システムの構成を例示する図である。
図11に例示した撮影システムは、カメラ1、経緯台2、操作端末(外部装置の一例)4、及び望遠鏡5を備える。
【0091】
カメラ1と望遠鏡5は、所謂直焦点撮影を行う構成として接続されている。詳しくは、望遠鏡5の接眼レンズの代わりにマウントアダプター(レンズマウント機構)が接続され、そのマウントアダプターにカメラ1が接続されている。
【0092】
経緯台2には、カメラ1が接続された望遠鏡5が設置されている。経緯台2は、方位回転軸及び仰角回転軸の回転に依り、望遠鏡5に接続されたカメラ1の撮影方向の方位及び仰角を変更可能である。また、経緯台2は、操作端末4からの指示に基づいて、例えば、カメラ1の撮影対象の切り替えや天体追尾動作を行う。
【0093】
操作端末4は、スマートフォン(登録商標)やタブレット等の携帯型端末であって、経緯台2とカメラ1の両方の遠隔制御等も可能である。経緯台2とカメラ1の両方を遠隔制御する場合は、経緯台2の天体追尾動作とカメラ1の撮影動作とを時間的に同期させて制御する。
【0094】
図11に例示した撮影システムでは、ユーザが操作端末4で目標天体を指定すると、操作端末4は、現在位置及び現在時刻での指定の天体の方位及び仰角を求め、当該方位及び仰角に基づいて、指定の天体が望遠鏡5の視野に含まれる様に経緯台2を制御する。その後、経緯台2が天体追尾動作を開始する。そして、ユーザが操作端末4でカメラ1に天体撮影モードでの撮影開始を指示すると、経緯台2では天体追尾動作が行われながら、カメラ1は視野回転(撮影視野の回転)を補正して撮影を行う。
【0095】
図12は、第2の実施形態に係るカメラ1の構成を例示する図である。
図12に例示した第2の実施形態に係るカメラ1は、図2に例示した第1の実施形態に係るカメラ1に対して、通信部113が新たに追加され、代わりに加速度センサ107、方位センサ108、及びGPSセンサ109が除かれている。これは、第2の実施形態では、天体追尾や視野回転を補正するための主要な演算が、カメラ1ではなく操作端末4で行われるためである。
【0096】
新たに追加された通信部113は、WiFi(登録商標)等の無線通信インタフェースであり、例えば操作端末4と無線通信を行い、操作端末4から自転角速度を取得したり撮影指示を受け付けたりする。
【0097】
図13は、操作端末4の構成を例示する図である。
図13に例示した操作端末4は、GPSセンサ41、時計42、赤道座標指定部43、UI(User Interface)44、地平座標算出部45、自転角速度算出部46、及び通信部47を備える。GPSセンサ41、時計42、赤道座標指定部43、及び地平座標算出部45は、図7に例示したGPSセンサ31、時計32、赤道座標指定部33、及び地平座標算出部35と同等の機能を有するものであるため、ここでは、その説明を省略する。
【0098】
UI44は、例えばタッチパネル付きディスプレイであり、メニュー表示とユーザのタッチ操作に依り、操作端末4に対する各種設定や、経緯台2に対する駆動指示や、カメラ1に対する撮影指示等を行うことができる。
【0099】
自転角速度算出部46は、地平座標算出部45に依り求められた方位及び仰角と、GPSセンサ41に依り検出された現在位置の緯度に基づいて、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度を算出する。この算出は、例えば、上述の式(1)~(3)を用いて行うことができる。
【0100】
通信部47は、WiFi等の無線通信インタフェースであり、例えば経緯台2とカメラ1の両方と無線通信を行う。これに依り、操作端末4は、経緯台2とカメラ1の両方を遠隔制御することができる。
【0101】
なお、操作端末4の一部の構成(赤道座標指定部43、地平座標算出部45、自転角速度算出部46等)は、例えば、CPU等のプロセッサとメモリを含むハードウェアを用いて実現され、プロセッサがメモリに格納されたプログラムを実行することに依り、その機能が実現されてもよい。或いは、例えば、ASICやFPGA等の専用回路を用いて実現されてもよい。
【0102】
図14は、操作端末4が行うカメラ制御処理の流れを例示するフローチャートである。このカメラ制御処理は、ユーザがカメラ1で天体撮影モードを選択して、操作端末4からカメラ1に撮影開始指示(例えばコンポジット撮影の開始指示)を行うと開始する処理である。また、この撮影開始指示の際には、赤経及び赤緯の指定やトータルの露光時間の指定等も行われる。
【0103】
図14に例示したカメラ制御処理が開始すると、操作端末4は、まず、ユーザの指定に基づく赤経及び赤緯に対応する地平座標(方位及び仰角)を算出する(S31)。詳しくは、地平座標算出部45が、GPSセンサ41に依り検出された現在位置の緯度及び経度と、時計42に依り出力された現在日時とに基づいて、ユーザの指定に基づいて赤道座標指定部43に依り出力された赤経及び赤緯に対応する方位及び仰角を算出する。
【0104】
次に、操作端末4は、S31で算出した地平座標に基づいて、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度を算出する(S32)。詳しくは、自転角速度算出部46が、地平座標算出部45に依り算出された方位及び仰角と、GPSセンサ41に依り検出された現在位置の緯度に基づいて、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度を算出する。この算出は、例えば、上述の式(1)~(3)を用いて行われる。
【0105】
次に、操作端末4は、カメラ1のヨー方向及びピッチ方向の自転角速度として0をカメラ1に設定し、S32で算出したカメラ1のロール方向の自転角速度をカメラ1に設定する(S33)。詳しくは、通信部47が、カメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度をカメラ1に通知し、ぶれ補正マイコン105の対応する自転角速度保持部158に保持させる。
【0106】
また、S33では、初回の処理に限り、操作端末4が、1回の撮影の静止画露光時間と静止画撮影枚数を決定する。この決定は、例えば、次の様にして行われる。
【0107】
まず、S32で算出したカメラ1のロール方向の自転角速度ωrollと、カメラ1の駆動
部103の駆動ステージ131の回転可能限界(回転可能な最大角度)θlimitとから、
次式(4)を用いて、1回の撮影の静止画露光時間の最大値Texpを求める。
【0108】
exp=θlimit/ωroll 式(4)
例えば、カメラ1の撮影光軸が北極星に向けられている場合、カメラ1のロール方向の自転角速度は、地球の自転(≒0.004167°/秒)と等しくなる。このときに、駆動部103の駆動ステージ131の回転可能限界が1°の場合は、1回の撮影の静止画露光時間の最大値Texpは、上記の式(4)から、約240秒となる。
【0109】
1回の撮影の静止画露光時間の最大値Texpを求めたら、その最大値Texp以下の値に、
1回の撮影の静止画露光時間を決定する。そして、決定した1回の撮影の静止画露光時間と、ユーザが指定したトータルの露光時間とから、静止画撮影枚数を決定する。
【0110】
S33の後、操作端末4は、カメラ1に対し撮影開始を指示し、その後、S33で決定した1回の撮影の静止画露光時間が経過したら、カメラ1に対し撮影終了を指示する(S34)。
【0111】
次に、操作端末4は、図14に例示したカメラ制御処理開始後のS34での撮影枚数が、S33で決定した静止画撮影枚数に達したか否か(指定枚数終了か否か)を判定する(S35)。
【0112】
S35の判定結果がNOの場合は、処理がS31に戻る。
一方、S35の判定結果がYESの場合は、図14に例示したカメラ制御処理が終了する。
【0113】
図15は、第2の実施形態に係る撮影システムにおいて、撮像素子102、駆動部103、及び経緯台2の動作を時系列に並べて例示したタイミングチャートである。
【0114】
図15に例示したタイミングチャートにおいて、ユーザが撮影開始指示を行う前は、撮像素子102がライブビュー露光を行い、EVF111がライブビュー表示を行っている。また、駆動部103は停止しており、駆動ステージ131は初期位置で停止した状態である。また、経緯台2は、天体追尾動作を行っている。
【0115】
なお、経緯台2の天体追尾動作は、例えば、第1の実施形態に係るハンドコントローラ3が行う経緯台制御処理(図9参照)と同様の処理を操作端末4が行うことに依って行われる。
【0116】
そして、ユーザが撮影開始指示を行うと、EVF111はライブビュー表示を停止し、撮像素子102は、1回の撮影の静止画露光を、静止画撮影枚数回(図15では4回)繰り返す。
【0117】
また、駆動部103は、静止画露光中においては視野回転補正を行い、非静止画露光中(例えば静止画露光と次の静止画露光との間)においては駆動ステージ131を初期位置に移動する。
【0118】
経緯台2は、撮影開始指示前と同様に引き続き天体追尾動作を行う。
そして、静止画撮影枚数分の撮影が終了すると、撮像素子102、駆動部103、及び経緯台2は、撮影開始指示前の状態に戻る。詳しくは、撮像素子102はライブビュー露光を再開し、駆動部103は停止し、経緯台2は引き続き天体追尾動作を行う。
【0119】
この様な動作に依り得られた複数の静止画は、例えば、カメラ1においてコンポジット撮影用の画像処理が行われる。詳しくは、1枚目の静止画に対して、2枚目以降の静止画は、1枚目の静止画露光の開始時点から、2枚目以降に対応するそれぞれの静止画露光の開始時点までに発生した視野回転分の画像回転が行われて位置合わせ合成される。これに依り、画角は狭くなるものの、コンポジット撮影が可能になる。
【0120】
以上に述べてきた様に、第2の実施形態では、経緯台2で天体追尾動作を行いながら、カメラ1で視野回転補正を行って撮影が行われる。1枚の静止画の撮影後は、駆動部103の駆動ステージ131を初期位置に戻してから次の1枚の静止画の撮影が行われる。この様に、静止画露光中は視野回転補正が行われるので、画角周辺部の像ぶれが抑制され、画角周辺部で像が流れてしまうことは無い。
【0121】
また、カメラ1の駆動部103では、非露光期間中に駆動ステージ131が初期位置に移動する。つまり、各静止画露光前に駆動ステージ131が初期位置に戻る。そのため、駆動ステージ131の回転可能範囲に依って静止画撮影枚数が制限されることはない。
【0122】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の説明では、第2の実施形態に対して異なる点を中心に説明する。また、第2の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0123】
図16は、操作端末4が定期的に行う経緯台制御処理の流れを例示するフローチャートである。
【0124】
図16に例示した経緯台制御処理は、経緯台2に天体の自動導入動作を行わせる処理である。詳しくは、操作端末4は、まず、図14のS31と同様に、ユーザの指定に基づく赤経及び赤緯に対応する地平座標(方位及び仰角)を算出する(S41)。
【0125】
次に、操作端末4は、S41で算出した地平座標に基づいて経緯台2を駆動させ(S42)、その駆動が終了したら経緯台2を停止させ(S43)、図16に例示した経緯台制御処理が終了する。
【0126】
この様な図16に例示した経緯台制御処理が定期的に行われることに依り、経緯台2では、天体の自動導入動作が定期的に行われる。即ち、経緯台2が間欠駆動(断続駆動)する。
【0127】
図17は、第3の実施形態の撮影システムにおいて、撮像素子102、駆動部103、及び経緯台2の動作を時系列に並べて例示したタイミングチャートである。
【0128】
図17に例示したタイミングチャートにおいて、ユーザが撮影開始指示を行う前は、撮像素子102がライブビュー露光を行い、EVF111がライブビュー表示を行っている。また、駆動部103は停止しており、駆動ステージ131は初期位置で停止した状態である。また、経緯台2は、操作端末4の制御の下、天体導入動作(天体の自動導入動作)と停止とを繰り返し行っている。
【0129】
そして、ユーザがカメラ1で天体撮影モードを選択して操作端末4からカメラ1に撮影開始指示を行うと、EVF111はライブビュー表示を停止し、撮像素子102、駆動部103、及び経緯台2は、操作端末4の制御の下、次の様な動作を行う。
【0130】
撮像素子102は、1回の撮影の静止画露光を、静止画撮影枚数回(図17では4回)繰り返す。
【0131】
経緯台2は、静止画露光中においては停止し、非静止画露光中(例えば静止画露光と次の静止画露光との間)においては天体導入動作を行う。
【0132】
駆動部103は、静止画露光中においては天体追尾動作を行い、非静止画露光中においては駆動ステージ131を初期位置に移動する動作を行う。ここで、駆動部103の天体追尾動作は、経緯台2の天体導入動作が完了した時点の地平座標に基づいて操作端末4が算出したカメラ1のヨー方向、ピッチ方向、及びロール方向の自転角速度に基づいて行われる。即ち、第3の実施形態では、カメラ1のロール方向の自転角速度に基づく像ぶれ補正(視野回転補正)だけでなく、カメラ1のヨー方向及びピッチ方向の自転角速度に基づく像ぶれ補正も行われる。これに依り、静止画露光中は、駆動部103に依って、日周運動に依り生じる像ぶれを補正することができる。
【0133】
この様な動作に依り得られた複数の静止画は、例えば、カメラ1においてコンポジット撮影用の画像処理が行われる。
【0134】
以上に述べてきた様に、第3の実施形態では、経緯台2での天体導入動作とカメラ1での天体追尾動作とが交互に行われながら撮影が行われる。これに依り、経緯台2の天体追尾精度が低い場合でも、静止画露光中はカメラ1に依って高精度に天体を追尾することができる。そのため、像ぶれ等に依り劣化した画像の取得を防止することができる。
【0135】
なお、上述の第2及び第3の実施形態において、操作端末4が行うカメラ1と経緯台2の制御処理(例えば、図15図17に例示したカメラ1と経緯台2の動作を実現するための制御処理等)は、操作端末4が備える、プロセッサと当該プロセッサに依り実行されるプログラムを格納したメモリ等によって実現されてもよい。
【0136】
以上に述べてきた実施形態は、上述の第1、第2、及び第3の実施形態で説明した構成に限らず、様々な変形や組み合わせが可能である。
【0137】
例えば、第1の実施形態において、ハンドコントローラ3の経緯台制御機能をカメラ1が備えてもよいし、経緯台2自身が備えてもよい。この場合は、ハンドコントローラ3が不要になる。また、例えば、第2及び第3の実施形態において、操作端末4のカメラ制御機能及び経緯台制御機能をカメラ1が備えてもよいし、経緯台2が備えてもよい。この場合は、操作端末4が不要になる。
【0138】
また、例えば、GPSセンサや方位センサを不要にする代わりに、GPSセンサが検出する緯度及び経度や方位センサが検出する方位をユーザが直接入力する様にしてもよい。
【0139】
また、例えば、経緯台2の代わりに、水平軸回りと垂直軸回りの2軸の回転軸を有するステージ装置にカメラ1を接続して天体追尾動作を行わせてもよい。この様なステージ装置として、例えば、電子スタビライザや電子ジンバルがある。また、この場合に、例えば、カメラ1に対して撮像素子102を回転させる代わりに、ステージ装置に依りカメラ1自体を回転させる様にしてもよい。この場合、カメラ1は対象物の一例であり、ステージ装置は揺れ補正装置の一例である。
【0140】
この様なステージ装置を付記する。
(付記1)
ステージ装置であって、
撮像装置が接続される雲台と、
前記雲台を回動させるジンバル機構と、
前記ジンバル機構を制御する制御回路と、
前記ステージ装置の姿勢変化に伴う回転角速度を検出する角速度センサと、
を備え、
前記制御回路は、
手ぶれ補正モードが設定されている場合は、前記角速度センサが検出した回転角速度に基づいて前記ジンバル機構を制御して、前記雲台に接続された撮像装置の揺れを補正する様に前記雲台を回動させ、
天体撮影モードが設定されている場合は、天体追尾を行うための角速度情報に基づいて前記ジンバル機構を制御して、前記雲台に接続された撮像装置の日周運動に伴う被写体像の少なくとも回転を補正する様に前記雲台を回動させる、
ことを特徴とする。
(付記2)
付記1記載のステージ装置であって、
前記ステージ装置の現在位置情報を取得する現在位置情報取得回路と、
前記雲台の方位情報を取得する方位情報取得回路と、
前記雲台の姿勢情報を取得する姿勢情報取得回路と、
を更に備え、
前記天体追尾を行うための角速度情報は、前記現在位置情報と、前記方位情報と、前記姿勢情報と、自転角速度とに基づいて算出される、
ことを特徴とする。
(付記3)
付記1記載のステージ装置であって、
前記天体追尾を行うための角速度情報は、外部から取得される、
ことを特徴とする。
【符号の説明】
【0141】
1 カメラ
2 経緯台
3 ハンドコントローラ
4 操作端末
5 望遠鏡
21 回転ステージ
22 固定金具
23 台座
24 仰角回転軸
25 制御部
31 GPSセンサ
32 時計
33 赤道座標指定部
34 SW
35 地平座標算出部
36 通信部
41 GPSセンサ
42 時計
43 赤道座標指定部
44 UI
45 地平座標算出部
46 自転角速度算出部
47 通信部
101 光学系
102 撮像素子
103 駆動部
104 システムコントローラ
105 ぶれ補正マイコン
106 角速度センサ
107 加速度センサ
108 方位センサ
109 GPSセンサ
110 メモリカード
111 EVF
112 SW
113 通信部
131 駆動ステージ
132 アクチュエータ
141 映像読出部
142 画像処理部
143 映像出力部
144 記録処理部
145 姿勢検出部
146 自転角速度算出部
147 通信部
151 基準値算出部
152 減算部
153 モード切替スイッチ
154 乗算部
155 積算部
156 補正量算出部
157 通信部
158 自転角速度保持部
251 通信部
252 駆動制御部
253 Aモータ
254 Bモータ
図1
図2
図3
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図5
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