(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133648
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】生体試料を処理するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C12N 5/076 20100101AFI20240925BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20240925BHJP
C12M 1/26 20060101ALI20240925BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C12N5/076
C12M1/00 A
C12M1/26
C12Q1/02
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109348
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2022197413の分割
【原出願日】2018-01-31
(31)【優先権主張番号】2017900270
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】517149128
【氏名又は名称】ジェネア アイピー ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,チェスター
(72)【発明者】
【氏名】ホッブス,ベン
(72)【発明者】
【氏名】マコーマック,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スチュアート-スティール,ベネディクト
(72)【発明者】
【氏名】ジェンキンス,アンドリュー・シー
(72)【発明者】
【氏名】ゲイソン,サム
(72)【発明者】
【氏名】ボム,エドゥアード
(72)【発明者】
【氏名】ブランディ,スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】ペウラ,テイジャ・ツーリッキー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】精液試料を処理するための方法およびシステムを提供する。
【解決手段】緩衝溶液を含む第2のボリュームに隣接して配置される第1のボリュームに試料を導入する工程であって、第1および第2のボリュームは、それらの間の流体連通になっている、工程と、可動閉鎖部材をボリュームどうしの間に配置して、前記第1のボリュームを前記第2のボリュームから選択的に分離する工程と、を含み、前記第1のボリュームを前記第2のボリュームから選択的に分離する前記工程が、流体連通開口部が、前記閉鎖部材または前記第1および前記第2のボリュームと組み合わせた前記閉鎖部材の1つまたは組合せによって形成されるように、前記閉鎖部材を動かし、これにより、運動性細胞が前記第1のボリュームの前記試料から前記第2のボリュームの前記緩衝溶液に移動するような、前記第1のボリュームと前記第2のボリュームとの間の流体連通が可能になることを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
精液試料を処理する方法であって、
緩衝溶液を含む第2のボリュームに隣接して配置される第1のボリュームに前記精液試料を導入する工程であって、前記第1および前記第2のボリュームは、それらの間の流体連通が可能である、工程と、
可動閉鎖部材を前記ボリュームどうしの間に配置して、前記第1のボリュームを前記第2のボリュームから選択的に分離する工程と、を含み、
前記第1のボリュームを前記第2のボリュームから選択的に分離する前記工程が、流体連通開口部が、前記閉鎖部材または前記第1および前記第2のボリュームと組み合わせた前記閉鎖部材の1つまたは組合せによって形成されるように、前記閉鎖部材を動かし、これにより、運動性精子が前記第1のボリュームの前記精液試料から前記第2のボリュームの前記緩衝溶液に移動するような、前記第1のボリュームと前記第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、方法。
【請求項2】
前記流体連通開口部の寸法が、前記閉鎖部材の変位に比例する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
緩衝溶液の前記第2のボリュームに入った前記精子の視覚分析を実施する工程
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記視覚分析を、前記精子が前記第2のボリュームに入ると同時に実施する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
精液試料を処理するための装置であって、
i)前記精液試料を収容するようになっているボリュームを含む第1のウェルと、
ii)緩衝溶液を収容するようになっているボリュームを含む第2のウェルと、
を含み、前記第1および前記第2のウェルがそれらの間の流体連通が可能であり、さらに、
iii)第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離するための、前記第1および前記第2のウェルの間に配置された可動閉鎖部材、を含み、
前記第1および前記第2のボリュームに対する前記閉鎖部材の動きは、流体連通開口部を形成し、これにより、運動性精子が前記第1のボリュームの前記精液試料から前記第2のボリュームの前記緩衝溶液に移動するような、前記第1のボリュームと前記第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、装置。
【請求項6】
前記流体連通開口部の寸法が、前記閉鎖部材の軸方向変位に比例する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前進精子を収容するための第3のボリュームを含む第3のウェルをさらに含む、請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置内に形成された光路であって、前記光路に直交して配置された2つの透明窓の間に形成された流体の薄膜のための流路を含む光路
をさらに含む、請求項5、6、または7に記載の装置。
【請求項9】
緩衝溶液の前記第2のボリュームに入った前記精子の視覚分析を実施するための、前記光路に配置されたカメラ
をさらに含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
生体試料から生体成分を分離する方法であって、
緩衝溶液を含む第2のボリュームに隣接して配置される第1のボリュームに前記生体試料を導入する工程と、
可動閉鎖部材を前記ボリュームどうしの間に配置して、前記第1のボリュームを前記第2のボリュームから選択的に分離する工程と、を含み、
前記第1のボリュームを前記第2のボリュームから選択的に分離する前記工程が、流体連通開口部が、前記閉鎖部材または前記第1および前記第2のボリュームと組み合わせた前記閉鎖部材の1つまたは組合せによって形成されるように、前記閉鎖部材を動かし、これにより、前記生体成分が前記第1のボリュームの前記生体試料から前記第2のボリュームの前記緩衝溶液に移動するような、前記第1のボリュームと前記第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、方法。
【請求項11】
前記流体連通開口部の寸法が、前記閉鎖部材の変位に比例する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
緩衝溶液の前記第2のボリュームに入った前記生体成分の視覚分析を実施する工程
をさらに含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
視覚分析を実施する前記工程を、前記生体成分が緩衝溶液の前記第2のボリュームに入ると同時に実施する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
生体試料から生体成分を分離する装置であって、
i)前記生体試料を収容するようになっているボリュームを含む第1のウェルと、
ii)緩衝溶液を収容するようになっているボリュームを含む第2のウェルと、を含み、前記第1および前記第2のウェルは互いに隣接して配置されており、さらに、
iii)第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離するための、前記第1および前記第2のウェルの間に配置された可動閉鎖部材、を含み、
前記第1および前記第2のボリュームに対する前記閉鎖部材の動きは、流体連通開口部を形成し、これにより、生体成分が前記第1のボリュームの前記生体試料から前記第2のボリュームの前記緩衝溶液に移動するような、前記第1のボリュームと前記第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、装置。
【請求項15】
前記閉鎖部材の動きが、互いに同軸に配置された前記第1および前記第2のボリュームに対する軸方向の動きである、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
精液試料を処理するようになっている装置であって、前記装置は、
所定の命令セットに従って動作するようになっているプロセッサ手段を含み、
前記装置は、前記命令セットと連携して、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法工程を実行するようになっている、装置。
【請求項17】
生体試料中の生体成分を処理するようになっている装置であって、前記装置は、
所定の命令セットに従って動作するようになっているプロセッサ手段を含み、
前記装置は、前記命令セットと連携して、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法工程を実行するようになっている、装置。
【請求項18】
コンピュータプログラム製品であって、
コンピュータ使用可能媒体であって、データ処理システム内での動作のために前記媒体上に具現化され、かつ精液試料を処理するようになっている、コンピュータ可読プログラムコードおよびコンピュータ可読システムコード、を有するコンピュータ使用可能媒体を含み、前記コンピュータプログラム製品は、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法工程を実行するための、前記コンピュータ使用可能媒体内のコンピュータ可読コード
を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項19】
コンピュータプログラム製品であって、
コンピュータ使用可能媒体であって、データ処理システム内での動作のために前記媒体上に具現化され、かつ生体試料中の生体成分を処理するようになっている、コンピュータ可読プログラムコードおよびコンピュータ可読システムコード、を有するコンピュータ使用可能媒体含み、前記コンピュータプログラム製品は、
請求項10から13のいずれか一項に記載の方法工程を実行するための、前記コンピュータ使用可能媒体内のコンピュータ可読コード
を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001]本出願は、「生体試料を処理するための方法およびシステム」と題された、Genea IP Holdings Pty Ltdの名前で2017年1月31日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2017900270号に対する優先権を主張し、その明細書は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、生殖補助技術(ART)の分野に関し、ヒト生殖能力、動物繁殖、生殖補助技術(ART)研究(ヒトおよび動物)、ならびに精子バンキングを含む多くの分野での使用に好適であり得る。一形態では、本発明は、ARTにおいて使用するために生体試料をその構成成分に処理するための方法、システム、および装置に関する。本発明は、運動性細胞または生物を含む任意の生体試料での使用に適用可能であり、以下、ヒト精液試料からの運動性精子の処理および分離に関して本発明を説明することが好都合であるが、本発明はその使用のみに限定され得ないことを理解すべきである。
【背景技術】
【0003】
[0003]本明細書全体にわたって、単数形での「発明者」という単語の使用は、本発明の1人の(単一の)発明者または2人以上の(複数の)発明者への言及とみなすことができる。
【0004】
[0004]本明細書における文書、デバイス、行為または知識についてのいかなる考察も、本発明の状況を説明するために含まれることを理解されたい。さらに、本明細書全体にわたる考察は、発明者の認識および/または発明者によるある関連技術の問題の特定のために生じる。本明細書における文書、デバイス、行為または知識などについてのいかなる考察も、発明者の知識および経験の観点から本発明との関係を説明するために含まれており、したがって、そのような考察は、いかなる資料も、本明細書の開示および特許請求の範囲の優先日に、または以前に、従来技術の基礎またはオーストラリアもしくは他の地域における関連技術の共通の一般知識の一部を形成することを認めるものとしてみなされるべきではない。
【0005】
[0005]例えば、体外受精(IVF)、細胞質内精子注入(ICSI)および子宮内授精(IUI)などの臨床プロセスを含む生殖補助技術(ART)において、対象の父親から提供された精液試料は、使用に好適なものにするために処理される必要がある。この処理の主な目的は、精子の生存率および機能に悪影響を与える精漿成分の除去である。生体内では、精漿は、精子が女性の生殖管を通過する間に通常除去される。精漿の分離に加えて、精液試料の処理は、元の精液試料から、その運動性によって現れる、最も生存能力が高く最も機能的な精子集団の濃縮および富化を目的とする。
【0006】
[0006]現在最も広く使用されている精子処理方法としては、密度勾配遠心分離(DGC)およびいわゆるスイムアップ法が含まれるが、最近いくつかの他の方法も市場に参入している。
【0007】
[0007]
図1を参照すると、DGC法では、遠心管中、緩衝液中のシリカ粒子のコロイド懸濁液の2つの層の上部に、未処理の精液試料を入れる。より低い粒子濃度、例えば、45%からなる上相または上部層。より高い粒子濃度、例えば、90%からなる下相または底部層。次いで、管を通常1,600rpmで20分間遠心分離し、精子がその特性に従って「上相」層と「下相」層とを移動できるようにし、これにより、生存能力が高い運動
性精子が管の底部に到達し、死細胞およびデブリがシリカ層内および/またはシリカ層の間にあり、精漿が管の上部に残存する。この目的のために、例えば、Gems(商標)Sperm Wash Gradient Set(Genea Biomedx)、SupraSperm(商標)(Origio)、SpermGrad(商標)(Vitrolife)、他多数を含む、いくつかの市販のシリカ化合物が利用可能である。この工程後、運動性精子は、少なくとももう一度遠心分離を介して、精子培地、精子緩衝液、またはさらに受精培地で洗浄して、シリカ化合物の残部を除去する必要がある。
【0008】
[0008]DGCは、運動性精子の分離、非運動性精子、デブリおよび精漿の除去を提供するという利点を有し、また、処理のために様々な試料ボリュームに対応することができる。しかし、DGCには、同様に形態学的に異常な精子の分離が限られる場合があるという欠点もある。他の欠点としては、取り扱いにおけるユーザエラーのリスク、結果のばらつき、シリカ試薬中の場合に潜在的に有害な物質への曝露、遠心力の不当な影響、長い処理時間、およびプロセスの異なる工程中に複数の容器間で試料を移動させる必要性が含まれる。それにもかかわらず、DGCは現在、最も一般的な業界慣行である。
【0009】
[0009]
図2を参照すると、スイムアップ法では、精子培地または緩衝液を含む遠心管の底部に、未処理の精液を含む液化精液試料を注意深く配置し、37℃の温度で約1時間、インキュベーター内に放置すると、その時間の間に運動性精子、つまり生存能力の高い精子が文字通り管をスイムアップする。次いで、精漿、死んだ精子、およびデブリを残して、運動性精子を含む培地の上部層を収集する。精子は通常、最終処理工程において高濃度で必要とされるため、この収集された部分を、多くの場合、もう一度遠心分離して調製物を濃縮する。
【0010】
[0010]精子処理のためのスイムアップ法は、複雑な消耗品または試薬を必要としないため、単純であるという利点を有する。さらに、様々な試料ボリュームが処理され得る。しかし、例えば、精漿への無制限の曝露、射精後にヒト精子の受精能力を低下させることが知られている精漿への長時間の曝露のために、試料を長時間管内に残すことができないという欠点がある。さらに、スイムアップ法は、ユーザエラーのリスクが生じやすく、処理時間が長く、プロセスの異なる工程中に複数の容器間で試料を移動させる必要があり、遠心分離工程が発生すると、精子は遠心力の不当な影響にさらされる。スイムアップ法はまた、労働集約型の手動プロセスである。それにもかかわらず、スイムアップ法もまた現在の業界慣行である。
【0011】
[0011]DGCおよびスイムアップの両方の方法で直面する問題は、プロセスの複雑さと長さに関連している。両方の方法とも、IVF/ICSIディッシュまたはIUIカテーテルに到達する前に、最初の試料容器からいくつかの異なる容器(およびサブ試料用のサブ容器)を介して、精液試料を移動させる必要がある。このようなそれぞれの移動は、試料の損傷、トレーサビリティの損失、汚染のリスクを増大させ、プロセス全体にわたって正しいIDトレーサビリティを確保するために、手動取り扱い工程ならびに関連する二重監視/自動監視工程が必要である。必要な手順の所要時間は40分から1時間超まで異なるため、実験室のワークフローが複雑になるだけでなく、実験室の設備およびスペースが制限される。手動操作と待機期間を交互に繰り返すプロセスの性質により、ワークフローはさらに複雑になる。
【0012】
[0012]ほとんどの実験室は、混同のリスクを低減するために、一度に1つの精子試料のみを取り扱うという厳しい要件を遵守し、このため、より大きな実験室は、それぞれ層流フード、ピペットセット、および時には、また、遠心分離機などの専用の設備を備えたいくつかの精子処理ステーションを維持しなければならない。試料の安全性とトレーサビリティを確保するために、オペレータの時間的リソースだけでなく、多くの場合、2人目の
目撃者の時間的リソースも必要とする多くの連続工程により、手作業の必要性も高くなる。このことは、目撃者がタスクを中断することを要求することにより、他のART操作へのフローオン効果をもたらし、したがって、オペレータエラーの全体的なリスクが増大する。
【0013】
[0013]手動取り扱いの大きな構成要素によっても、プロセスがヒューマンエラーおよびオペレータの異なるスキルレベルに起因する変動の影響を受けやすくなる。プロセスの複雑さによりまた、プロセスに使用される多数の試薬および消耗品が必要となり、これは、さらに固有の在庫管理、消耗品および媒体のリスク、ならびにコストへの影響をさらに含む。
【0014】
[0014]さらに、DGC法は精子のDNA損傷をもたらす場合があることが示されており、これは、精子DNAが胚のゲノムの50%を占めることを考えると、精子の生存率と機能だけでなく、胚の発生および生じる可能性がある妊娠にも影響を与える場合がある。
【0015】
[0015]最近の精子処理システムには、特別に設計された消耗品および加温ステーションを備えたスイムアップベースのシステムSeaforia(商標)、または同様にスイムアップベースのRl MSC(商標)精子分離管など、以前の方法のいくつかの態様の標準化によるものもある。Seaforia(商標)システム(以下のインターネットリソースリンクhttp://www.lotusbio.com/index.html?page=37で記載されている)には、制御された環境、使いやすさ、および標準化されたボリュームの利用という利点があるが、不利なことに、長時間かかり、複数の容器間で試料を移動させる必要があり、DGCおよびスイムアップ法と同様に、個別の最終放出物の収集および分析が必要である。新規市場参入者として、臨床結果に関する情報は限られている。Rl MSCは、スイムアップのような簡単な手順であるが、作動ゲーティング(active gating)がないという欠点があり、ユーザエラーが発生しやすく、処理時間が長く、複数の容器間で試料を移動させる必要があり、また個別の最終放出物の収集および分析が必要である。Rl MSCは数年前から市場に出回っている。
【0016】
[0016]システムの中には、運動性精子がマイクロチャネルおよび多孔膜を通って移動することが可能であるマイクロ流体設計、例えば、http://koekbiotech.com/fertile/で記載されているFERTILE(登録商標)、http://koekbiotech.com/fertile-plus/で記載されているFERTILE PLUS(登録商標)、を使用するものもある。http://koekbiotech.com/fertile-ultimate/で記載されているFERTILE Ultimate(登録商標)システムもある。これらは全て、マイクロ流体チャネルを通って付着場所から収集場所まで精子が移動することに基づいている。FERTILE(登録商標)の技術は単純であり、精子をDGC試薬またはDNA損傷の原因となる遠心力に曝露しないが、長時間かかり、温度などの外部条件の影響を受け、コストがかかるという欠点がある。さらに、FERTILE(登録商標)システムは特に極めて少量の処理を行うため、全てのシステムで個別の最終放出物の収集と分析が必要である。FERTILE(登録商標)システムは市場への新規参入者であるため、臨床結果に関する情報は限られている。
【0017】
[0017]既知のシステムの中には、米国特許出願公開第2013/0164838号に記載されているZech Selector(商標)計装などのフィラメントを使用しているものもある。同様に、Zech Selector(商標)は単純で、DNA損傷を促進する要因に精子を曝露しないが、また、長時間かかり、固定液量が必要であり、また、個別の最終放出物の収集と分析が必要であるという欠点がある。新規市場参入者とであるので、臨床結果に関する情報も限られている。
【0018】
[0018]他の既知のシステムは、未だなお市販に至っていないQSpermシステムなど、多数のマイクロ流体チャネルを使用している。QSpermシステムは、http://marsinnovation.koazoa.com/wp/tag/qsperm/で記載されている。
【0019】
[0019]さらなる既知のシステムは、膜電位に基づく電子電流における精子選択に依存する電気泳動ベースの技術を含む。これらの方法の期待される利点としては、精子がDNA損傷を促進する既知の要因に曝露されないこと、および、この技術が短時間の実施に適し得ることが含まれる。しかし、精子に対する電気泳動試薬およびプロセスの影響は不明であり、これらには複雑な機器、消耗品、および試薬が必要である。また、これらのシステムはいずれも未だ市販に至っておらず、実験のみであり、臨床結果に関する情報は入手できないか、または極めて限定されている。
【0020】
[0020]いくつかの他の特定の従来技術のシステムが以下に記載される。
[0021]「運動性細胞の分析および選別」と題されたThe Brigham And Women’s Hospital, Inc.の名におけるPCT国際公開第WO2012/162181号は、運動性細胞の初期集団であって、第1の平均運動性を有する運動性細胞の初期集団をマイクロ流体チャネルの入口ポートに導入する工程と、マイクロ流体チャネル内で運動性細胞の集団をインキュベートする工程と、マイクロ流体チャネルの出口ポートで選別された運動性細胞の集団を収集する工程と、を含む運動性細胞の選別方法を開示している。選別された運動性細胞集団は、第1の平均運動性よりも高い第2の平均運動性を有する。
【0021】
[0022]「運動性精子の単離のための方法および装置」と題された、Auckland Uniservices Limitedの名におけるPCT国際公開第WO2013/129947号は、「エッジトレインされた(edge-trained)」運動性精子の使用を開示し、運動性精子と非運動性精子とを分離するための方法およびシステムに関し、この方法およびシステムは、精子を含む流体を、壁終端または壁終端であると認められているマイクロボリュームから外れた角度の変化を含む壁によって少なくとも部分的に画定されたマイクロボリュームに送達すること、および、少なくともいくつかの運動性精子が、前記壁に沿って移動し、壁終端でまたはその近くでマイクロボリュームから外れて、運動性精子の収集へ、または収集へ向かって方向を変えることによりマイクロボリュームから出ることができること、を含む。別の態様における広義の用語において、本発明は、壁終端を含む壁を含むマイクロチャネルに精子を含む流体を送達し、運動性精子が壁に沿ってマイクロチャネル内で実質的に流されない状態で移動し、壁終端でまたはその近くでマイクロボリュームから外れて、収集リザーバーへ、または収集リザーバーへ向かって方向を変えることによりマイクロチャネルを出て、収集リザーバーから選別された精子を含む流体を回収することができることを含む、運動性精子と非運動性精子とを分離する方法および装置を含む。
【0022】
[0023]「精液分析方法」と題されたAlice Deutschの名における米国特許第5,028,526号は、膜によって精液から精漿を分離する方法を開示している。本発明はまた、アクロシンなどの酵素および精液の他の成分などの決定方法を含む。
【0023】
[0024]「統合マイクロ流体精子単離および授精装置」と題されたShuichi Takayamaらによる米国特許出願公開第2006/0270021号は、統合マイクロ流体精子分離および卵母細胞授精装置を開示しており、これは、運動性が強化された精子試料を用いて、脆弱な卵母細胞の最小限の操作で、インビトロでの授精を行う機会を提供する。精子選別は共通の選別チャネルで実施し、そこではより動きのある精子が精液と培
地液との同一層流の間のインターフェースを泳ぐ。
【0024】
[0025]「高運動性精子を選別するためのマイクロ流体チップの使用方法」と題されたDa-Jeng Yaoらによる米国特許出願公開第2010/0291535号は、高運動性精子を選別するためのマイクロ流体チップの使用方法を開示している。精子および培地は、いくつかの入口を介してマイクロ流体チップのマイクロチャネルにそれぞれ注入する。マイクロ流体の特性により、精子および培地は、マイクロチャネル内で精子層流および培地層流を形成し、精子層流および培地層流は互いに平行である。運動性のより高い精子は、限られた時間内に少なくとも1つの層流を通過することがあり、それにより、運動性レベルの異なる精子を異なる出口からそれぞれ収集することができる。
【0025】
[0026]「細胞および他の生体微粒子を選別するための方法およびデバイス」と題されたThe Regents of The University of Californiaによる米国特許出願公開第2012/01 18740号は、光学パターン駆動光誘導誘電泳動(DEP)装置を開示しており、DEP応答と相関する特性に基づく粒子または細胞の操作、および選択を提供する分離方法が記載されている。装置の実施形態では、DEP電場パターンをマイクロ流体層流と組み合わせて使用し、応答を測定し、生細胞を損傷することなく、1つまたは複数のDEP場に対する粒子の相対応答に従って、不均一混合物から粒子を分離し、隔離し、抽出する。この方法は、既存の人工生殖操作で使用する適合性に基づいて最良の精子および胚の候補を選択および抽出し、欠陥または生存不能の配偶子を除外するのに特に適している。
【0026】
[0027]「運動性のより低い粒子から運動性粒子を選別するプロセス」と題されたThe
Regents of The University of Michiganによる米国特許出願公開第2008/0187991号は、マイクロ流体選別デバイスにおいて、運動性粒子が非運動性粒子から選別される技術を開示しており、ここで、運動性粒子および非運動性粒子を含む選別流体のストリームが、選別チャネルを介して非乱流で培地ストリームに隣接するように流れ、その間に、流動運動性粒子が隣接する流動ストリーム間のインターフェースを通過し、培地ストリームに入り、運動性粒子が枯渇した選別ストリームを形成する。選別デバイスは簡単かつ安価に製造され、多くの用途、特に非運動性精子から運動性精子を選別する用途がある。
【0027】
[0028]「DNA鎖切断のない精子の富化方法および異常および/または異数性のリスク低減方法」と題されたJosef ZechによるPCT国際公開第WO2012/032165号は、質の悪い精液から、富化されたDNA鎖切断のない精子試料を生成する方法を開示しており、2つのチャンバとブリッジ要素とを含む選択デバイスを使用し、この方法は、精液中の精子の総量に基づいて、少なくとも15%の精液過少症、少なくとも32%の精子無力症、および/または少なくとも4%の奇形精子症を含む精液を、選択デバイスの第1チャンバ内に配置し、選択デバイスの第2チャンバに、DNA鎖切断のない精子を受けるための培地を充填し、ブリッジ要素で両方のチャンバを接続して、こうして第1チャンバと第2チャンバとの間に流体ブリッジが生じ、これによりDNA鎖切断のない精子が第1チャンバから第2チャンバへ移動することができるようにすることを含む。
【0028】
[0029]「電気泳動による精子細胞分離」と題されたThe University of Newcastle Research Associates Limitedに元々譲渡された米国特許出願公開第2009/101507号は、電気泳動のための実験室の電気回路を改変して、電気泳動によってある精子タイプを精子集団から分離するプロセスを開示しており、このプロセスは、ある種類の精子が、イオン透過性バリアを通過して、精子集団から分離されるような電位に精子集団をさらすことを含む。
【0029】
[0030]「精液から精子細胞を除去するためのデバイス」と題されたJosef ZechによるPCT国際公開第WO1994/017742号は、卵子の容器と精子細胞の容器とを備え、毛細管が容器の間に液体のブリッジを設ける、体外受精のためのデバイスを開示している。好ましくは、液体ブリッジは、卵子の容器と、U字形に上縁の周りを通る部分との間に延びる。
【0030】
[0031]「運動性生物種、特に精子細胞を選択するためのデバイスおよび方法」と題されたJosef ZechによるPCT国際公開第WO2003/031564号は、選択される種を含む培地を収容するために設けられた第1のチャンバと、第1のものから分離しており、選択された種を別の培地に収容するために設けられた第2のチャンバと、を含む、運動性精子細胞を選択するためのデバイスを開示している。ブリッジ要素は、チャンバ上に配置することができ、少なくとも1つの平らなチャネルを備えている。前記チャネルは、境界壁によって形成され、ブリッジ要素がその上に配置されると、第1のチャンバから第2のチャンバまで延び、第1のチャンバの領域および第2のチャンバの領域に開口部を有する。さらに、チャネルには、運動性生物種が移動することができる培地を充填することができ、それにより、第1のチャンバ内の培地が第2のチャンバ内の培地と接触する。
【0031】
[0032]「精子選択のためのデバイス」と題されたJosef ZechによるPCT国際公開第WO2014/006043号は、第1の精液を受け入れるように構成された第1のチャンバと、第2の流体を受け入れるように構成された第2のチャンバであって、第1のチャンバへの第1の開口部および第2のチャンバへの第2の開口部を有する少なくとも1つのダクトによって第1のチャンバと流体連通する第2のチャンバと、第1の精液の少なくとも一部を第1の開口部に向かって変位させるようになっている変位手段と、を開示している。
【0032】
[0033]「精子の分離および検出」と題されたGenosis Limitedによる米国特許第6,391,654号は、容器、ベースユニット、液体および2つのフィルターを含む液体供給物を含む、男性生殖能力を検査するためのキットを開示している。第1のフィルターは、精子の透過を妨げる試料分離フィルターである。キットの第2のフィルターは、精子を識別するための試薬を含む精子検出フィルターである。液体などの輸送媒体がギャップを埋めて精子が検出ゾーンに透過することができるまで、キットの活性化は防止されている。キットは一体構造のものであってもよく、フィルター材料の薄い部分を利用して、非運動性精子から運動性精子を分離する。
【0033】
[0034]「運動性精子分離のためのデバイス」と題されたDavid Brickwoodによる米国特許出願公開第2006/0110821号は、入口ポートと、最初は閉じている出口ポートと、試料中の運動性精子が入口を介して容器へ移動することができる培地と、作動装置であって、この作動装置の作動により出口が開かれ、それにより培地が出口を通って容器から流出することができる作動装置と、を有する容器を開示している。容器内の培地は、最初は出口から流れないようになっているため、培地が容器を出る前に運動性精子が試料から培地に移動するのに十分な時間を与えることができるインキュベーション期間が可能となる。このデバイスは、好ましくは、出口と連通する精子検出器を含む。精子を分離するためのデバイスでは、毛細管の流れは、密接に並置された材料のシート間のスペースなど、非繊維性材料を介して発生する。
【0034】
[0035]「精子分離システム」と題されたLotus Bio (Nymphaea) Ltd.による米国特許出願公開第2012/0052485号は、元の精液試料内で、精子細胞集団(SCP)の少なくとも一部を分離して、富化されたSCP試料が得られるようにした、天然に基づく精子分離システム(SSS)であって、前記元の精液試料の少
なくとも一部を含むようになっている第1のチャンバであって、前記第1のチャンバは、所定の3D形状およびボリュームによって特徴付けられ、前記第1のチャンバは、前記元の試料が縁の下に保持されるように前記縁によって境界付けられる、第1のチャンバと、前記第1のチャンバおよび前記縁と物理的に連通する第2のチャンバであって、前記第2のチャンバは、所定の3D形状およびボリュームによって特徴付けられ、前記第2のチャンバは、前記富化されたSCP試料を収容するようになっている、第2のチャンバと、細胞分離装置の少なくとも1つをソケットに入れ、その中の温度を均一に温度調節するようになっているインキュベーション手段と、を含む、前記精液分離装置を含む、精子分離システム(SSS)を開示する。
【0035】
[0036]「区画化Zavos精子スイムアップカラム」と題されたZavosらによる米国特許第5,908,380号は、閉じた下端と開いた上端とを有する中空の垂直に支持されたカラムを含むデバイスを開示している。最下部または第1の円錐部材は、カラムの最下端に配置され、最下部の円錐部材は、カラムの底部とシール係合する最下部の周辺部を有する。第1の円錐部材は、傾斜した側壁と、カラム内に開いている周縁部を画定する先端が切り取られた最上部とを有する。最下部の周辺部を有する第2の円錐部材も、カラムの側壁に、それらの間にシールされるように取り付けられている。第2の円錐部材はまた、先細の壁と、カラムの内側に開いている周縁部を画定する先端が切り取られた最上部とを有する。各円錐部材の傾斜壁とカラムの内壁との間の領域は、精子を捕獲する前に精子を収集するための区画を含む円錐周辺領域を画定する。
【0036】
[0037]President and Fellows of Harvard CollegeによるPCT国際公開第WO2014/043635号は、マイクロ流体チャネルを含むマイクロ流体システムを開示している。マイクロ流体チャネルは、軟質ポリマー内に実質的に封入された制御層、細胞被覆要素、および軟質ポリマー内に封入された細胞被覆要素と制御層との間の流路を含む。制御層は、細胞被覆要素に向かって移動し、細胞被覆要素に圧力をかけるように動作可能である。WO2014043635の装置では、細胞は1つの共有細胞環境で開始され、次いで、分離される。圧力をかけることによりシリコーン制御層が強制されて流路内の細胞の通過を妨げることにより、細胞の移動を実際に止めることができる。記載された技術は、細胞の運動性に基づいているのではなく、懸濁液中の細胞が蛍光と染色とに焦点を合わせた流路に沿って流体力学的に駆動するフローサイトメトリーにより関連する。
【0037】
[0038]Ecole Polytechnique Federale De LausanneによるPCT国際公開第WO2016/063199号は、線虫などの試料生物の培養、選択および/または分析、ならびに、例えば、動物胚などの他の生物学的実体のためのマイクロ流体デバイスを開示している。このデバイスは、試料生物の特定の集団/標本の選択を可能にするリザーバー、培養チャンバ、およびフィルターシステムを特徴とするため、その長期培養ならびに表現型分析/行動分析が可能である。このデバイスはまた、圧力を使用して、チャンバ内の生物に作用してフィルター手段を介して、それらを培養チャンバへ通過させる必要がある。
【0038】
[0039]CraigによるPCT国際公開第WO2010/056755号は、薄い透明な側壁を有し、側壁に胚/卵母細胞/培養細胞が間近に接していることによって、中~高出力用の適切な焦点の長さを備えるサイドビュー顕微鏡が接近することができるロボットマイクロ流体インキュベーターシステムを開示している。(直線状またはカルーセルの円周に沿って)列に並べると、この構成により、複数の培養ウェルの顕微鏡検査が可能になる。直線状ウェル列の手動または自動側方移動、またはカルーセルの回転により、各ウェルの内容物を迅速に検査することができる。ビデオ機能を備えた自動システムによって、ビデオ接続またはインターネット接続によるウェルの遠隔検査も可能になり、自動ビデオ
システムにより、培養における短い間隔で行う検査または発達の時間経過(すなわち、胚細胞分裂の進行、またはニューロン細胞培養物の軸索成長)を記録することができる。上記のWO2014/043635およびWO2016/063199と同様に、Craigによって開示されたデバイスは、移動する流体媒体を必要とする。
【0039】
[0040]Spenceらによる米国特許出願公開第2002/005354号は、所望の特性に基づいて細胞を選別するためのマイクロ加工デバイスを開示しており、例えば、細胞上のレポーターの存在またはレベルによってレポーター標識細胞を選別することができる。このデバイスは、少なくとも1つの分析ユニットがマイクロ加工されている基板を有するチップを含む。各分析ユニットは、典型的には一端に試料入口チャネルを有する主チャネルと、その長さの一部に沿った検出領域と、を含む。検出領域に隣接し、下流にある主チャネルには、少なくとも2つの分岐チャネルにつながる識別領域または分岐点がある。分析ユニットは、所望により、追加の入口チャネル、検出ポイント、分岐ポイント、および分岐チャネルをさらに含んでもよい。細胞を含むストリームが検出領域を通過し、このようにして、所与の時間に平均して1つの細胞が検出領域を占有する。細胞は、蛍光を促進するための光への曝露などの刺激の有無にかかわらず、光信号などの検出可能な信号の存在または量に基づいて、適切な分岐チャネルに選別されることができる。Spenceの装置は、チャネルを使用して、流動する流体がマイクロ加工基板と相互作用し、細胞自身の動きではなく細胞のレポーターに依存している。
【0040】
[0041]Inguran, LLCによるカナダ特許出願公開CA2752218は、粒子の1つまたは複数の特性に従って、流体ストリーム中の染色粒子を選別する装置を開示している。流体ストリームは、(A)粒子を含む流体ストリームを第1の場所に送達するための流体送達システム;(B)流体ストリーム中の粒子を励起して蛍光放射を生成するために、電磁放射のビームを第1の位置に送達するための電磁放射線源;(C)集光レンズを含む落射照明光学系であって、この光学系は、電磁放射のビームが、集光レンズを通って、前記第1の位置で流体ストリーム中の粒子と交差するビーム軸に沿って順方向に向かい、そうして前記粒子がビームを通過し、その結果、粒子からの蛍光放射が、前記ビーム軸に沿って逆方向に向かうように、動作可能である、落射照明光学系;(D)励起粒子からの蛍光放射を検出するための光検出器;および(E)光検出器と連通して、粒子の蛍光放射に基づく1つまたは複数の特性に従って粒子を分類し、粒子の分類に従って粒子を選別するための、プロセッサ、を含む。このシステムは、精子細胞の染色およびその後のフローサイトメトリーでの選択に適用し得る。このシステムはまた、移動する流体を必要とする。精子に関する限り、システムは精子染色体含有量の特性に関する。
【0041】
[0042]AMS s.r.l.による欧州特許EP0958862は、分析のための、特にあらゆる種類の粒子または断片を含む全血または体液の直接分析のための多目的反応性プレートを開示している。多目的反応性プレートは、単一の検体の測定を実施することができる。開示されたシステムでは、流体は力によって動かされ、流路内のバルブを含む。
【0042】
[0043]Nexgenics Bioscience Corp.によるPCT国際公開第WO2002/033047号は、胚支持アセンブリ、胚支持システム、成長中の胚の生存率を維持する方法、および代謝的に活性な胚を輸送する方法を開示している。流体流にバルブを使用するこの装置では、精子は、受精のためにそのまま卵子に添加されることに関してのみ言及される。
【0043】
[0044]Gilbertらによる米国特許出願公開第2003196714A1号は、マイクロチャネルを通る流体流を調節するための気泡バルブを含むマイクロ流体システムを開示している。気泡バルブは、マイクロチャネル内部に接合する流体メニスカスと、膜をマイクロチャネル内部に偏向させて流体流を調節するための作動装置と、を含む。膜上に
十分な圧力が発生すると、作動装置はマイクロチャネル内の液体中に気泡を生成する。
【0044】
[0045]Inguran, LLC.による米国特許出願公開第2014/273179号は、マイクロ流体チップ形態のデバイスを開示している。特に、流路内の精子を整列させ、方向付けするとともに、選択された精子の亜集団を分離させるための種々の機能が、マイクロ流体チップに組み込まれている。ここでもまた、このデバイスは、細胞を移動させるために強制的な流れが必要である。このデバイスはまた、精子染色体含有量の決定に関する。
【0045】
[0046]Xiaらによる米国特許出願公開第2011/177547A1号は、は、目的の粒子を含む試料を処理チャンバに導入するためのチャネルの構成を含む流体デバイスを開示している。チャンバは、低流量接続チャネルを介して収集チャネルと流体連通している。試料中の粒子は、光学的トラップなどの原動力を加えることにより、処理チャンバから収集チャネルへ迂回するのが観察される場合がある。いったん収集チャネルに入ると、多孔質マトリックスにおけるトラップによるものを含めて、粒子を収集することができる。
【0046】
[0047]Auckland UniServices LimitedによるPCT国際公開第WO2013/129947号は、運動性精子を選別する方法および装置を開示している。記載されたこのシステムは、「エッジトレインされた」運動性精子の現象を利用し、この現象では、壁などの構造に遭遇する前進運動を伴う運動性精子は、精子の最初の接近角度に応じて方向を変えて、壁に沿って移動する傾向がある。この現象を使用して、システムは、精子を含む流体を(チャネルに精子を送り込むことによって)、壁終端または壁終端であると認められているマイクロボリュームから外れた角度の変化を含む壁によって少なくとも部分的に画定されたマイクロボリュームに送達すること、および、少なくともいくつかの運動性精子が、前記壁に沿って移動し、壁終端でまたはその近くでマイクロボリュームから外れて、運動性精子の収集へ、または収集へ向かって方向を変えることによりマイクロボリュームから出ることができること、を含む。別の態様では、記載されたシステムは、壁終端を含む壁を含むマイクロチャネルに精子を含む流体を送達する方法であって、これにより運動性精子が壁に沿ってマイクロチャネル内を実質的に流れない状態で移動し、壁終端でまたはその近くでマイクロボリュームから外れて、収集リザーバーへ、または収集リザーバーへ向かって方向を変えることによりマイクロチャネルを出て、収集リザーバーから選別された精子を含む流体を回収することができる方法を含む。具体的には、記載されたシステムは、精子をチャネルに送り込み、停止させ、空のサイドチャンバに入れ、次いで、過剰な精子をフラッシュし、これにより運動性精子がチャンバを形成する中間チャネルに戻ることができることに基づく(または、逆に、精子をサイドチャンバに送り込み、中間チャネルをフラッシュし、これにより運動性精子が中間チャネルに来て、再度フラッシュして収集できる)。
【0047】
[0048]Hvichiaらによる、PCT国際公開第WO2003/008931号は、細胞のサイズ、細胞と装置の表面との相互作用、またはその両方に基づいて細胞を分離することができるマイクロスケール細胞分離装置を開示している。この装置は、流体で充填することができる空隙の入口領域と出口領域との間に挿入されたステップ状または傾斜した分離要素を含む。空隙はカバー内に封入することができ、空隙を通る流体の流れにより細胞が分離要素に関与する。ステップとカバーまたはボディとの間の距離以下の特性寸法を有する細胞(または特性寸法を変形して有することができる細胞)のみが、ステップ上またはステップを通過することができる。装置内の表面の改変は、ステップ上またはステップを通過する細胞の通過を阻害することもある。精子への適用またはそれがどのように達成されるかについて、この開示には教示がない。
【0048】
[0049]Takayamaらによる米国特許出願公開第2003/0165812号は、マイクロ流体選別デバイスにおいて運動性粒子が非運動性粒子から選別されるプロセスおよび装置を開示しており、ここで、運動性粒子および非運動性粒子を含む選別流体のストリームが、選別チャネルを介して非乱流で培地ストリームに隣接するように流され、その間に、流動運動性粒子が隣接する流動ストリーム間のインターフェースを通過し、培地ストリームに入り、運動性粒子が枯渇した選別ストリームを形成する。選別装置には、特に非運動性精子から運動性精子を選別する用途がある。記載されたシステムは、シース流体内を移動し、開口部または閉鎖部なしで流体間を横断する精子に依存している。
【0049】
[0050]以下の従来技術は、精子の「視覚追跡」を伴う方法に関する。
[0051]The Regents of The University of Californiaによる米国特許第8,842,901号は、「レンズフリーオンチップ顕微鏡を使用したコンパクトな自動精液分析プラットフォーム」と題して、自動精液分析を実施するためのコンパクトで軽量なレンズフリープラットフォームを開示している。このデバイスは、ホログラフィックオンチップイメージングを使用しており、レンズ、レーザー、または他のかさばる光学部品を何ら必要とせず、有効開口数が約0.2の比較的大きな視野で、精子の位相と振幅のイメージングを実現する。試料から一連のデジタル画像フレームが取得される。連続したレンズフリーフレームのデジタル減算とそれに続く再構成された位相画像の処理により、運動性精子の計数、速度、および動的軌跡の自動定量化が可能になり、同じフレームの合計により非運動性精子の計数が可能になる。
【0050】
[0052]「運動性スキャナーおよび方法」と題されたHamilton-Thorn Researchの米国特許第4,896,967号は、精子、バクテリア、流動する流体に懸濁した粒子などの動きを特徴付ける改良された運動性スキャナーを開示している。運動性スキャナーは、改良された光学系、系の照明源、および系に結合された電子画像反転手段を含む放射線検知手段を含む。使い捨て標本ホルダーにより、その外部装填および加熱標本支持体上でのその位置決めができる。照明源は、発散する照明の全てを標本に向けるコリメータとして機能する。直接透過した光と標本によって散乱した光との両方がイメージングレンズによって受けられ、それによって両方が感光デバイスのピクセルに集光される。減速部材を備えた可動プレートは、小さな光源開口部の平面と共役な平面に位置するように設計されている。直接透過した光は、減速部材および/または減衰部材を透過する。しかし、試料によって散乱した光は、ほとんどの場合、減速部材および/または減衰部材で覆われていない領域のプレートを通過する。
【0051】
[0053]「精子分析システム」と題されたProgeny Systems, LLCの米国特許第6,426,213号は、精子試料キャリアおよび「リーダー」モジュールを有する精子分析システムを開示している。精子試料キャリアは、精子試料の出入りのための開口部を備えたチャンバを画定するシャンクと、精子試料をチャンバに吸引するための手動操作ポンプと、チャンバを交差して通過する複数の異なる光子経路と、を含む。モジュールは、オペレータからの作動信号に応答するプロセッサと、光子源、例えば、各光子経路を通って光子のそれぞれのビームを送信するための、作動信号に応答してプロセッサによって励起される光源と、それぞれ、発生を示す信号を生成するために、各光子経路に1つずつの、複数の光センサーと、前記各光子経路を通過し、プロセッサに信号を伝達する光子ビームの摂動の周波数と、複数の光センサー信号を処理して、チャンバ内の精子の運動性を示す定量化された性能指数を生成するためにプロセッサによって実行されるアルゴリズムと、を含む。
【0052】
[0054]「精子分析」と題されたM.E.S. Medical Electronic
Systems Ltd.による米国特許出願公開第2011/0149287号は、同期パルス光源と光検出器との間の透明な容器に試料を配置する工程と、800~100
0nmの範囲で試料の吸光度を測定する工程であって、試料のTSCは吸光度に比例する工程と、を含む、試料中の総精子濃度(TSC)を測定する方法を開示している。さらに、生体液の光学的分析に使用するためのサンプリング装置、精液試料中の運動性精子濃度(MSC)を測定する方法、精子細胞の平均速度(AV)を決定する方法、およびTSCを測定する手段、MSCを測定する手段を含む、精液の品質を分析するシステム、およびビデオ視覚化システム、が提供される。
【0053】
[0055]しかし、精子処理方法の結果は、洗浄された、運動性により選択された精子の一部を含み、これは、任意の所与の個々の診療所の慣行に応じて、IVF、IUIおよび/またはICSIのニーズに好適なさらなる処理を必要とする。これは、遠心分離による精子のさらなる濃縮、精子濃度の計数、および時には、また、最終調製物の運動性の決定を含む場合がある。運動性精子の既知の濃度における既知の数の精子を卵母細胞に添加することは、最良の臨床慣行とみなされている。これらの追加の工程により、プロセスに手動の手順がさらに追加され、処理済み精子のより多くのサブ試料が取り扱われ、トレースされる。これらの濃度計数-および多くの場合、また、最終的な運動性の評価-は、血球計もしくはMaklerチャンバ、および顕微鏡下での評価を使用して手動で実施するか、または別個の精子分析機器(コンピュータ支援精子分析、CASA)を保証するのに十分な大きさの実験室で、例えば、Medical Electronic Systems
GlobalのSQA-V GoldなどのCASA機器を使用して、実施する。
【0054】
[0056]いくつかの既知の従来技術の他の欠点は、以下を含む:
・精子は、処理後に処理ビヒクルから除去して、精漿中の成分が緩衝溶液へ拡散するのを停止させなければならないこと、
・処理中の試料と人の複数の相互作用による処理のばらつき、
・現在の精子処理プラットフォームでは、精子の同時または連携した視覚的評価(濃度、運動性、形態)はないこと、
・分析のために処理済み精子の別個のアリコートが必要であること、
・精漿成分に不必要に長く精子をさらす長い処理時間、
・複数の試薬を必要とすること、
・複数の消耗品を必要とすること、
・多くの処理システムが(ベンチでまたはインキュベーターボックス内で)温度および周囲雰囲気を含む実験室の環境条件にさらされること。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0055】
[0057]本明細書に記載の実施形態の目的は、関連技術システムの上記欠点の少なくとも1つを克服もしくは軽減すること、または関連技術システムの有用な代替物を少なくとも提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0056】
[0058]本明細書に記載の実施形態の第1の態様では、精液試料を処理する方法であって、緩衝溶液を含む第2のボリューム部に隣接して配置される第1のボリュームに精液試料を導入する工程であって、第1および第2のボリュームは、それらの間の流体連通になっている、工程と、可動閉鎖部材を間に配置して、第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離する工程と、を含み、第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離する工程が、流体連通開口部が、閉鎖部材または第1および第2のボリュームと組み合わせた閉鎖部材の1つまたは組合せによって形成されるように、閉鎖部材を動かし、これにより、運動性精子が第1のボリュームの精液試料から第2のボリュームの緩衝溶液に移動するような、第1のボリュームと第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、方法が提供される。
【0057】
[0059]好ましくは、流体連通開口部の寸法は、閉鎖部材の変位に比例する。
[0060]この方法は、緩衝溶液の第2のボリュームに入った精子の視覚分析を実施する工程をさらに含んでもよい。好ましくは、視覚分析は、精子が第2のボリュームに入ると同時に実施する。
【0058】
[0061]本明細書に記載の実施形態の別の態様では、精液試料を処理するための装置であって、i)精液試料を収容するようになっているボリュームを含む第1のウェルと、ii)緩衝溶液を収容するようになっているボリュームを含む第2のウェルと、を含み、第1および第2のウェルはそれらの間の流体連通になっていおり、さらに、iii)第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離するための、第1および第2のウェルの間に配置された可動閉鎖部材、を含み、第1および第2のボリュームに対する閉鎖部材の動きは、流体連通開口部を形成し、これにより、運動性精子が第1のボリューム中の精液試料から第2のボリューム中の緩衝溶液に移動するような、第1のボリュームと第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、装置が提供される。
【0059】
[0062]上記装置において、好ましくは、流体連通開口部の寸法は、閉鎖部材の軸方向変位に比例する。
[0063]装置はさらに、前進精子を収容するための第3のボリュームを含む第3のウェルを含んでもよい。
【0060】
[0064]さらに、装置は、光路内に直交して配置された2つの透明窓の間に形成された流体の薄膜のための流路を含む装置に形成された光路を、さらに含み得る。緩衝溶液の第2のボリュームに入った精子の視覚分析を実施するために、カメラを光路に配置してもよい。
【0061】
[0065]本明細書に記載の実施形態のさらなる別の態様では、生体試料から生体成分を分離する方法であって、緩衝溶液を含む第2のボリュームに隣接して配置される第1のボリュームに生体試料を導入する工程と、可動閉鎖部材を間に配置して、第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離する工程と、を含み、第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離する工程が、流体連通開口部が、閉鎖部材または第1および第2のボリュームと組み合わせた閉鎖部材の1つまたは組合せによって形成されるように、閉鎖部材を動かし、これにより、生体成分が第1のボリュームの生体試料から第2のボリュームの緩衝溶液に移動するような、第1のボリュームと第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、方法が提供される。
【0062】
[0066]上記で開示された方法では、流体連通開口部の寸法は、閉鎖部材の変位に比例してもよく、この方法は、緩衝溶液の第2のボリュームに入った生体成分の視覚分析を実施する工程をさらに含んでもよい。好ましくは、視覚分析を実施する工程は、生体成分が緩衝溶液の第2のボリュームに入ると同時に実施する。
【0063】
[0067]本明細書に記載の実施形態のさらに別の態様では、生体試料から生体成分を分離するための装置であって、i)生体試料を収容するようになっているボリュームを含む第1のウェルと、ii)緩衝溶液を収容するようになっているボリュームを含む第2のウェルと、を含み、第1および第2のウェルは互いに隣接して配置されており、さらに、iii)第1のボリュームを第2のボリュームから選択的に分離するための、第1および第2のウェルの間に配置された可動閉鎖部材、を含み、第1および第2のボリュームに対する閉鎖部材の動きが、流体連通開口部を形成し、これにより、生体成分が第1のボリュームの生体試料から第2のボリュームの緩衝溶液に移動するような、第1のボリュームと第2のボリュームとの間の流体連通が可能になる、装置が提供される。
【0064】
[0068]上記で開示された装置では、閉鎖部材の動きは、互いに同軸に配置された第1および第2のボリュームに対する軸方向の動きであり得る。
[0069]本発明の好ましい実施形態は、精液試料を処理するようになっている装置を含み、前記装置は、所定の命令セットに従って動作するようになっているプロセッサ手段を含み、前記装置が、前記命令セットと連携して、本明細書に開示される方法工程を実行するようになっている。
【0065】
[0070]本発明の好ましい実施形態は、生体試料中の生体成分を処理するようになっている装置を含み、前記装置は、所定の命令セットに従って動作するようになっているプロセッサ手段を含み、前記装置が、前記命令セットと連携して、本明細書に開示される方法工程を実行するようになっている。
【0066】
[0071]本発明の好ましい実施形態は、コンピュータプログラム製品を含み、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータ使用可能媒体であって、データ処理システム内での動作のために前記媒体上に具現化され、かつ精液試料を処理するようになっている、コンピュータ可読プログラムコードおよびコンピュータ可読システムコード、を有するコンピュータ使用可能媒体を含み、前記コンピュータプログラム製品は、本明細書に開示される方法工程を実行するための、前記コンピュータ使用可能媒体内のコンピュータ可読コードを含む。
【0067】
[0072]本発明の好ましい実施形態は、コンピュータプログラム製品を含み、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータ使用可能媒体上であって、データ処理システム内での動作のために前記媒体上に具現化され、かつ生体試料中の生体成分試料を処理するようになっている、コンピュータ可読プログラムコードおよびコンピュータ可読システムコード、を有するコンピュータ使用可能媒体を含み、前記コンピュータプログラム製品は、本明細書に開示される方法工程を実行するための、前記コンピュータ使用可能媒体内のコンピュータ可読コードを含む。
【0068】
[0073]他の態様および好ましい形態は、本明細書に開示され、および/または添付の特許請求の範囲に定義され、本発明の明細書の一部を形成する。
[0074]本質的に、本発明の実施形態は、臨床的に有用な試料ボリューム中の全ての運動性精子が、緩衝液ボリュームに分離される前に泳ぐための距離を極めて短くすることにより、処理時間が短縮されるという認識から生じる。さらに、固体バリアを用いて処理を開始および停止するゲートを組み込むことにより、複雑な閉じたマイクロチャネルネットワークおよび付随する流体制御システムを必要とせずに、インターフェース形成を制御する独自の方法が得られる。加えて、分離段階で運動性精子を濃縮する能力の向上は、少ない緩衝液ボリュームと比較して大きな精液ボリュームが可能になることにより、または換言すれば、例えば、同心円または他の同等の模様を使用して、精液試料に有利に大きな精液/緩衝液ボリューム比率を提供することにより実現できるという認識がある。以前は、これらの濃縮因子は、工程の追加および遠心分離に関連した可能性のある結果により、遠心分離濃縮によって解決可能として見過ごされていたか、または却下されていた。上記とは対照的に、現在の解決策は、精子の臨床処理のための体積スループット要件のいずれにも対処しておらず、運動性精子の実現可能な寿命に比べて依然として長い処理時間がかかる。
【0069】
[0075]本発明により提供される利点は以下を含む:
・必要な作業手順の削減、
・ある容器から別の容器への試料の移動の削減、
・試料の処理中に、複数の二重監視工程が不要になること、
・処理済み精子とは別の残存精液試料を維持しながら、処理後に放出精子を消耗品中に保存できること、
・プロセス所要時間の短縮、
・プロセスを開始する前に必要な事前準備を削減すること、
・柔軟なプロセスが可能となる、例えば、必要な精子の数および必要な目的に基づいたプロセス所要時間の調整、
・開始(充填)時および終了(選別された精子の除去)時にのみ必要な手動介入、
・オペレータは、実際の処理中に安心して他のタスクを実行すること、
・オペレータが、時間に制約がある方法でプロセスの終わりに立ち会う必要性を削減すること、
・手動工程および手動による取り扱いが少なくなり、プロセス所要時間が短縮されるため、異なる試料用の別個の専用ワークステーションは必要とされないこと、
・実験室でのスペース必要性の削減、
・別個の遠心分離機または層流フードが必要とされないため、実験室での計装の必要性が削減されること、
・自動処理により、プロセスに対するオペレータの影響が低減すること、
・自動処理により、オペレータに必要なスキルレベルが低下すること、
・在庫管理の簡略化、
・DGC試薬および/または遠心分離などのプロセスによってもたらされる精子DNA損傷の減少、
・精子が精漿からより早く分離され、有害な精漿成分への精子の曝露が減少すること、
・試料濃度計数の自動化により、追加の手動工程が削除されるため、放出精子が、より迅速な時間枠で、実際の受精のためにより好適なものになること。
【0070】
[0076]本発明の実施形態の適用性のさらなる範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、本明細書の開示の精神および範囲内の種々の変更および改変は、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、例示のみとして与えられることが理解されるべきである。
【0071】
[0077]本発明の好ましい実施形態および他の実施形態のさらなる開示、目的、利点、および他の態様は、添付の図面と併せて以下の実施形態の説明を参照することにより、当業者によりよく理解され得、これらは説明のみを目的としており、したがって、本明細書の開示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【
図1】密度勾配遠心分離(DGC)の従来技術の精子処理方法を示す図である。
【
図2】従来技術の「スイムアップ」精子処理方法を示す図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態による流体連通インターフェースの形成を示す図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態による、閉鎖部材の垂直並進または移動と流体連通インターフェースの開口幅との間の関係を示す図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態による可変開口部の形成を示す図である。
【
図6】本発明の別の好ましい実施形態による、イメージング光学系および流体の薄膜の形成を表す図である。
【
図7】
図7aは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスへの生体試料の充填を示す図である。
図7bは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスへの生体試料の充填を示す図である。
【
図8】
図8aは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスへの生体緩衝溶液の充填を示す図である。
図8bは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスへの生体緩衝溶液の充填を示す図である。
【
図9】
図9aは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスの開放作動を示す図である。
図9bは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスの開放作動を示す図である。
【
図10】
図10aは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスの断面図である。
図10bは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスの断面図を示す図である。
【
図11】
図11aは、本発明の好ましい実施形態による装置の閉鎖作動を示す図である。
図11bは、本発明の好ましい実施形態による装置の閉鎖作動を示す図である。
【
図12】
図12aは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスの格納機能性を示す図である。
図12bは、本発明の好ましい実施形態によるデバイスの格納機能性を示す図である。
【
図13】本発明の好ましい実施形態による生体試料を含む緩衝溶液の吸引を示す図である。
【
図14】
図14aは、本発明の別の実施形態によるデバイスへの生体試料の充填を示す図である。
図14bは、本発明の別の実施形態によるデバイスへの生体試料の充填を示す図である。
【
図15】
図15aは、本発明の別の実施形態によるデバイスへの生体緩衝溶液の充填を示す図である。
図15bは、本発明の別の実施形態によるデバイスへの生体緩衝溶液の充填を示す図である。
【
図16】
図16aは、本発明の別の実施形態によるデバイスの開放作動を示す図である。
図16bは、本発明の別の実施形態によるデバイスの開放作動を示す図である。
【
図17】
図17aは、本発明の別の実施形態によるデバイスの開放作動を示す図である。
図17bは、本発明の別の実施形態によるデバイスの開放作動を示す図である。
【
図18】
図18aは、本発明の別の実施形態によるデバイスの閉鎖作動を示す図である。
図18bは、本発明の別の実施形態によるデバイスの閉鎖作動を示す図である。
【
図19】
図19aは、本発明の別の実施形態によるデバイスの格納機能性を示す図である。
図19bは、本発明の別の実施形態によるデバイスの格納機能性を示す図である。
【
図20】本発明の別の実施形態による生体試料を含む緩衝溶液の吸引を示す図である。
【
図21】本発明のさらなる実施形態による、変形可能なばねスタイル要素を含むデバイスの別の実施形態の図である。
【
図22】本発明のさらなる実施形態による、積み重ねられた要素を含むデバイスの別の実施形態の図である。
【
図23】本発明のさらなる実施形態による、変形可能なコレットスタイル要素を含むデバイスの別の実施形態の図である。
【
図24】本発明のさらなる実施形態による、スロット付き壁要素を含むデバイスの別の実施形態の図である。
【
図25】本発明のさらなる実施形態による、可撓性管形態の変形可能な要素を含むデバイスの別の実施形態の図である。
【
図26】従来技術のDGC手順と「パラ」とラベル付けされた手順における本発明の例示的な実施形態との間の視覚的比較の図である。
【
図27】本発明による装置の2つのさらなる実施形態のそれぞれの等角図を示す図である。
【
図28】
図27の実施形態の1つの分解図であり、その構成要素を示す図である。
【
図29】本発明の実施形態による試料デバイスを組み込むようになっている実験機器の図であり、機器の閉じたカバーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
[0078]概して、本発明は、精子試料から運動性精子を分離する問題に対処する。本発明の好ましい実施形態では、精液は、第1の流体ウェルにより提供される第1のボリュームに充填される。精子緩衝溶液が、第2の流体ウェルによって形成された第2のボリュームに充填され、ウェル間の開口部の形態で流体連通インターフェースが開かれ、運動性精子が開口部を通って第2のウェルに泳動することができる。別の好ましい実施形態では、本発明は、運動性精子の緩衝溶液への能動移動のために、精子試料と緩衝溶液との間の開口部の開口を提供し、同時に、または分離プロセス中、分離プロセス前もしくは分離プロセス後の任意の所与の時点で、光路を通って緩衝液チャンバに入る精子の視覚分析を行う。
【0074】
[0079]本発明の実施形態と従来技術のDGC手順との間の全般的な比較を
図26に示し、本発明の有利な効率を示している。
インターフェース形成
[0080]開口部を開くことは、第1のボリュームと第2のボリュームとの間に流体インターフェースを形成して、精液(S)と精液緩衝溶液(B)との間の流体連通を提供する1つの手段であり、この流体連通により、精子から精子緩衝溶液へ運動性精子が移動できる。このようなインターフェースを
図3に示す。開口部Aは、大気に対して開放された2つのそれぞれの流体ウェル3および4を分離するシール/閉鎖状態(
図3の左側に示す)と、流体間に流体インターフェースIを生成する開放状態(
図3の右側に示す)との間の少なくとも2つのインターロック構成要素1および2の作動により形成される。
図4を参照すると、上部構成要素1および下部構成要素2のシール面1aおよび2aは、実質的に平行で角度θであり、したがって、面1aおよび面2a間の距離Y2は、垂直分離Y1に比例し、その角度Θの関数として決定される。
開放システム
[0081]好ましい実施形態では、第1のウェル3および第2のウェル4の両方の流体ボリュームはそれぞれ大気に対して開放され、開口部Aが開かれるとき圧力ヘッドが存在せず、したがって、流体ボリューム間に正味の流体輸送が起こらないレベルまで充填される。インターフェースIの寸法または開口部Awの幅により、2つの流体の拡散ベースの混合のみで流体ボリュームを接続することができる。
可変開口部
[0082]
図5を参照すると、開口幅A
wは、所与の期間にわたって、流体インターフェースI領域を制御して精子の通過速度、および精漿中の分子の拡散速度に影響を与えるように、変えることができる。これにより、精子を、その運動性に基づいて分離することができる。運動性精子は、前進的に、開口部Aの方向を含む全ての方向に泳ぐ。この点で、精子の分離は既知のエッジトレイリング効果(edge-trailing effects)に必ずしも依存しないことに注意すべきである。最も重要な要因は、精子の運動性、およびそれ自体の力で1つの液体から別の液体に移動する能力であるが、著しく異常な形態(例えば、明確に拡大した精子頭部または複数の頭部、欠落した尾または複数の尾部)を有する精子、および凝集した精子(相互に、または非特異的または特異的に粘液鎖、非精子細胞、もしくはデブリに付着した精子)が緩衝液Bに入るのを防ぐことができる。これにより、最初の試料タイプに依存する、サイズに影響を与える形態学的特性に基づいて精子を分離すること、および後続のART処理に必要な放出が可能になる。
【0075】
[0083]可変流体連通インターフェースIの制御は、2つの流体ボリュームを分離するシ
ール状態と、流体間に静的で薄い流体インターフェースを提供する開口部Aを形成する開放状態との間の構成要素1、2の可逆作動に部分的に依存する。
【0076】
[0084]実施形態の第1の態様は、流体S、Bの2つの静的ボリュームを接続する可変開口部A(あるいは、堰、ゲート、または開口)の制御された開放を可能にすることにより、流体インターフェースIを提供する。開口部A
wの幅により、2つの流体S、Bを著しく混合することなく、流体ボリュームを接続することができる。開口部Aは、開口部Aの一方の半分/側面を形成する特徴を有する上部構成要素1を、開口部Aの他方の半分/側面を形成する特徴を有する下部構成要素2に対して持ち上げることによって形成される。可変試料ボリューム
[0085]本発明の好ましい実施形態により、精子緩衝液または培地と一致するボリュームが2つの流体ボリュームに添加される場合、精液の可変ボリュームを可能にする。
デバイス内の格納
[0086]可変開口部Aは、いったん十分な量が分離されると、ボリュームS、Bのいずれにも影響なしに容易に閉鎖されることができ、これにより、次のART手順で試料を使用する前に一時的な格納が可能となり、精子のさらなる通過および精漿成分の拡散を停止させる。
試料の光学的検出
[0087]
図6を参照すると、分離された流体ボリュームの断面は、細胞イメージング技術に好適な流体の薄膜として存在する。光路内のカメラCは、例えば、濃度、運動性、および形態を含む分離された精子の特性を取得し、直接画像解析することができる。分析は、運動性精子分離中の任意の時点で、または分離プロトコルの最後に実施することができる。薄膜は、2つの平らな表面F
1とF
2との平面の間に形成される。これらの平面間のギャップは調整可能であり、2つの流体間のインターフェースI(ゲート)と連動して、または独立して作動させることができる。あるいは、他の分析ソリューションが提供されてもよい。例えば、試料処理装置の分離可能な部分(例えば、第2のウェルの一部または装置の蓋部分)は、処理された試料を含む取り外し可能な部分であってもよく、取り外して画像取得用の機器光路内に配置してもよい。
【0077】
[0088]実施形態の第2の態様は、デバイスの緩衝液を含むボリューム内の光学観察窓を通して精子の視覚的評価を提供する。精液試料Sから開口部Aを泳ぐ運動性精子は、ビデオ顕微鏡で画像取得された精子の動きを画像解析することによって、視覚的に評価することができる。当業者によって理解されるように、利用可能なソフトウェアアルゴリズムを利用する画像解析技術を使用して、処理済み試料の適切な視覚的評価を実施できることを理解されたい。この点で、好ましい一実施形態では、
図7~25に示すデバイス10の変形のいずれか、および
図6に概略的に例示する光学機器を含む典型的な実験機器は、試料容器を選別して同時に光学モジュールを介して画像化することができるように構成されるであろう。別の実施形態は、試料容器の選別位置から光学検出システムへの自動移送ができるようにして、試料のイメージングができるように構成される。
【0078】
[0089]機器の光学系は、電気機械制御装置を介してカメラの焦点を自動的に調整することができる。この特徴の別の実施形態は、検出および分析のために最も焦点の合った画像を検出するアルゴリズムを用いて、デバイスの光学薄膜チャンバ全体にわたって高さの増分を変えていくつかの画像を撮影することである。
【0079】
[0090]付随する実験機器はまた、選別装置10内で、また、あるいは、様々な標準顕微鏡スライド上で、生のまたは処理された精液試料の光学的検出および分析が可能になるように構成されてもよい。これにより、初期の精液分析時または既存の実験室用インキュベーターでの長時間のインキュベーション後に、標準スライド上で精子計数を完了することができることによって、様々な実験室ワークフローが実現する。
試料結果の視覚化および識別
[0091]付随する実験機器はまた、オペレータの時間管理を支援するために、各試験の結果または進行状況を表示するように適合される。選別の進行の視覚化は、結果までの残りの精子選別時間、もしくは精子計数完了の割合、もしくはこれまでに収集された精子の運動性のいずれか、または何らかの他の指標的方法を表示すること、によるものであり得る。この表示はまた、ワークフローの特定の断片、例えば、処理前の生試料やこれまでに収集された試料のビデオまたは画像フィードを特徴とする。これらの画像、ビデオ、または表示された結果のロギングは、ネットワークアクセス機器を介して可能であってもよい。さらに、機器はバーコードスキャナーを含んでもよく、患者のID、オペレータID、および試料IDを、画像および結果とともにロギングし、追跡することができる。
運動性に基づいた等級付けのための複数の分離ボリューム
[0092]第2の閉鎖部材の形態のこの、または別の流体連通インターフェースによって、第2のボリュームから第3の流体ボリュームを分離して、第2のボリュームに存在する運動性精子をさらに分離できるようにしてもよい。形成された開口部を介して閉鎖構造が開かれると、低速と高速の前進精子の混合物から高速の前進精子が、この第3ボリュームに移動することができる。最高の運動性を有する精子は、両方の開口部を通って第3の流体ボリュームに移動することができ。そのため、第3のボリューム中の高速の前進精子対低速の前進精子の比率は、第2のボリューム中の比率よりも大きい。さらなる流体のボリュームにより、精液と緩衝液との間に中間のボリュームが必要になり、これにより流体の動きをより良好に制御することもできる。代替実施形態として、試料処理装置の改変は、処理された試料の分離をさらにより速くするために、精液が中央にあり、両側に緩衝液がある3つのボリュームを含んでもよいことが想定される。
【0080】
[0093]機器は、自動化された試料分離を含んでもよく、そこでは、あるボリュームの流体がチャンバから除去され、さらなる処理のために別個の容器に入れられる。試料は、ピペットシステム、チャンバに取り付けられた流体配管システム、チャンバ内の試料に押し込まれた「ディップスティック」などの手段で取り除いてもよい。
【0081】
[0094]機器は、複数の試料を並行して同時に処理するための複数の処理およびイメージングモジュールを含んでもよい。機器は、チャンバが保存領域から取り出され、作動および分析モジュールに配置され、次いでさらなる処理のために取り外されるチャンバ移動システムを備えていてもよい。
【0082】
[0095]実施形態の第3の態様により、前記開口部を閉鎖して、精液試料を、精液試料ボリュームに元々存在する運動性精子の一部を現在含んでいる緩衝溶液から分離することができる。
【0083】
[0096]好ましい実施形態には、以下の追加の改良点が含まれてもよい:
[0097]-ベースポリマーへの精子の結合を減少させるように表面を処理する;
[0098]-精子が泳ぐ方向を開口部の方向に修正する表面のテクスチャまたは構造が提供される。
【0084】
[0099]精液などの生体試料を処理して精漿を除去し、運動性精子成分を抽出する複雑さは、単一の消耗品で実施し、自動化することができ、1回の試料投入と1回の試料除去のみを必要とする。これにより、必要な作業工程が削減される。
【0085】
[00100]精子を損傷、事故および汚染にさらしながら、精子がいくつかの容器を通って
移動することは、単一の消耗品を利用してそこに精子がプロセスの開始から終了までとどまる本発明の実施形態において回避され得る。これにより、精子の移動が減少する。精子が選別プロセスの開始から終了までとどまる好ましい実施形態の単一の消耗品を使用する
ことにより、ある容器から別の容器に移動する毎に精子の動きを二重に監視する必要がない。
【0086】
[00101]好ましい実施形態の消耗品の設計により、運動性精子を迅速に回収することが
でき、収集された精子の数は、プロセスの所要時間および/または試料の開始ボリュームを制御することによって調整することができる。プロセスの所要時間は短く、必要な精子の数に基づいて調整することができる。
【0087】
[00102]図面の
図7~13を参照して、第1の例示的な実施形態について記載する。
[00103]歯付きゲートの形態の流体連通インターフェースを提供するデバイス10は、
試料ボリュームSと緩衝液ボリュームBとの間の閉鎖部材として提供される(
図10aおよび10bにより垂直断面で最も良好に示される)。開口部A’は、この動作で閉鎖部材を持ち上げるカムリング6の回転時に開く。開口部A’は、開いて流体インターフェースを形成し、これにより、垂直移動と開口幅A
w’の比率で歯7間の流体連通が可能になる。好ましい実施形態では、垂直開口部A’は、上部8の垂直移動の1:10の比率で、歯7間で開くことができる。この実施形態では、精子は複数の軌道に沿って開口部A’を通って緩衝液Bに泳ぐことができる。
【0088】
[00104]
図7aおよび7bに示されるように、外側リングとして位置することができる
デバイスの第1の流体ボリューム4に、ピペットPSを使用することにより、例えば、約1mLの量の精液が充填される。充填の工程で、装置10は閉鎖状態にあり、上部8と下部9の歯7の間にシールが形成されている。
【0089】
[00105]閉鎖状態にある間、精子緩衝液Bは、再度ピペットPBを使用することにより
、デバイス10の内側リングボリュームに充填される。
[00106]充填レベルは、未処理の精液が内側選別ボリューム3に流れ込むのを避けるた
めに、緩衝液レベルと同じか、わずかに高くなければならない。
【0090】
[00107]
図9aおよび9bに示されるように、カムリング6が回転すると、2つの流体
ボリューム間に分裂が生じる。カムリング6がこのように回転すると、上部8は、カムリング6に配置された傾斜面11によって上方に押されるか変位する。同様に、
図11aおよび11bの図は、カムリング6の逆回転による装置10の閉鎖機構を示す。
【0091】
[00108]
図10aの上部断面図は、外側リングボリューム4中の精子を示し、カムリン
グ6の作動により2つ流体の間の垂直開口部A’を開いた後に、内側ボリューム3内に泳ぐ精子が、
図10bに示される。
【0092】
[00109]必要に応じて、歯7を閉じて、選別された精子Sを吸引する前に、精漿および
さらなる精子が精子緩衝液ボリューム3に拡散するのを防ぐことができる。運動性精子は、内側ボリュームからピペットで吸引することができる。
図12bの断面図は、吸引前の内側ボリューム3中に精子を有するこの閉鎖状態を示す。
【0093】
[00110]
図13は、ピペットPaを使用して内側ボリューム3から運動性精子が吸引さ
れる工程を示す。
[00111]
図14~20を参照して、
図7~13に示された第1の実施形態に対する機械
的変形である第2の例示的な実施形態が説明される。
【0094】
[00112]デバイス10は、ベース構成要素9と、ベース構成要素9に嵌合するシリンダ
の底部にシール面を有し、流体ボリュームを分離するシリンダ壁を含む閉鎖部材8、6とを含む。閉鎖状態では、ベース構成要素9と閉鎖部材8との間にシールが形成されている
。精液試料Sは、デバイスの第1の流体ボリューム4に充填されてもよい。精子緩衝液Bはまた、デバイスの第2の流体ボリューム3に装填されてもよい。充填レベルは、閉鎖部材を開いて、緩衝液選別ボリュームへ未処理の精液が活発に流れないことを保証するために、緩衝液ボリュームと同じか、わずかに高くなければならない。
【0095】
[00113]
図14aおよび14bに示されるように、ピペットPSを使用する前述の実施
形態とほぼ同じ方法で、精液がデバイス10の外側ボリューム4に充填される。装置10は、ベース構成要素9と円筒形上部部品8との間をシールした閉鎖状態にある。
【0096】
[00114]
図15aおよび15bに示されるように、精子緩衝液Bは、ピペットPBを使
用してデバイス10の内側リングボリューム3に充填される。装置10は、上部8と下部9の歯7の間をシールした、閉鎖状態のままである。充填レベルは、未処理の精液が内側選別ボリューム3に流れ込むのを避けるために、緩衝液レベルと同じか、わずかに高くなければならない。
【0097】
[00115]ここでも、
図16aおよび16bに示されるように、カムリング6の回転によ
り、内側ボリューム3と外側ボリューム4との間の開口部A’を開くことができる。
[00116]
図17aの側面断面図は、外側リングボリューム4中に位置する精子を示し、
図17bには、カムリングの作動により2つ流体の間の環状開口A’を開いた後に、内側ボリューム3へと泳ぐ精子が示される。
【0098】
[00117]閉鎖部材8を作動させてシール状態に戻し、インターフェースを介して運動性
精子が移動することと、精漿が精子緩衝液ボリューム3へ拡散することの両方を止めることができる。選別された運動性精子は、デバイス10から吸引されるまで、第2の流体ボリューム3に保持され得る。
【0099】
[00118]あるいは、必要に応じて、歯7を閉じて、選別された精子を吸引する前に、精
漿が精子緩衝液ボリュームに拡散するのを防ぐことができる。
図18aおよび18bに示されるカムリング6の逆回転はこれを示す。
図19aおよび19bは、デバイスが吸引前に閉鎖状態で精子を保持しているのを示す。運動性精子は、
図20に示されるように、内側ボリューム3からピペットPaで吸引することができる。
代替実施形態
[00119]上述のように、
図3~20を参照すると、本発明の実施形態は、2つの流体ボ
リュームを分離するシール状態と、流体間に静的で薄い流体インターフェースを形成する開放状態との間の構成要素の可逆作動に部分的に依存する。これに基づいて、以下のさらなる実施形態が検討されている。
インターフェースの形成
[00120]本発明の実施形態は、流体連通インターフェースを形成するための構成要素の
可逆作動に依存し、そのインターフェースにおいて、好ましい実施形態によれば、開口部は、2つの流体ボリュームを分離するシール状態と、流体間に流体インターフェースを形成する開放状態との間に形成されることに留意されたい。以下に説明する種々の実施形態が考慮されており、これらの実施形態においてその機能が提供されている。
【0100】
[00121]第1および第2の流体ボリュームを分離する閉鎖部材は、変形可能な要素を含
んでもよい。圧縮状態では、変形可能な要素の開口部が中へ押し込まれて、流体ボリューム間にシールを形成してもよい。変形可能な要素を引き伸ばすと、変形可能な要素の開口部を制御されたサイズに開くことができ、流体ボリューム3と4との間の流体連通が可能になる。変形可能要素は、ばね、管の1つまたは組合せを含んでいてもよい。ある実施形態では、要素は弾性構造を含み得ることが想定される。
【0101】
[00122]
図21は、コイル12の内側に1つのボリューム3、外側に1つのボリューム
4の、2つの別個の流体ボリューム3、4が画定されている流体保持皿に配置された螺旋コイル12(またはばね)を示す。圧縮状態では、コイル12の各ターンの合わせ面間に、シールが形成される。コイル12を引き伸ばすことにより、コイル12のターン間に制御されたギャップまたは開口部A”が開き、流体ボリューム3と4との間の流体接触が可能になる。
【0102】
[00123]
図22は、コイル、リング、ディスクおよびワッシャーの1つまたは組合せを
含む積重ね構造13を示し、これらは、積重ね構造13の内側および外側に流体ボリューム3および4が再度画定される壁を形成している。例としてコイルを使用すると、圧縮状態では、コイル13の各ターンの合わせ面間に、シールが形成される。形成物13は、互いに対して垂直に持ち上げられ、リング間のギャップまたは開口部A”が開いて、流体ボリューム3と4との間の流体接触が可能になる。
【0103】
[00124]示されていない一般的な形態では、シリンダは、流体ボリュームがシリンダの
内側および外側に画定される壁を形成する。シリンダは、2つの構成要素の合わせ面で放射状または面のシールを形成する。シリンダを垂直に持ち上げると、合わせ面の間にギャップが開き、流体ボリューム間の流体接触が可能になる。
【0104】
[00125]
図23は、コレット構造100を示し、それにより、スロット付き先細シリン
ダのボディ14は、流体ボリューム3および4がそれぞれコレットの内側および外側に画定される壁16を形成している。合わせ先細スリーブ17および閉鎖構造18はコレットに作用して、各スロット19の表面間にシールを形成し、閉鎖構造18との交差部に放射状シールが形成される。
【0105】
[00126]
図24の実施形態は、一方の壁が他方に対して移動することができる2つの流
体ボリュームを分離する二重スロット付き壁を示す。第1の壁はベース構成要素上に存在する。第2の壁は第2の閉鎖部材上に存在する。
図24は、2つの流体ボリューム3および4が、一方の壁が他方に対して移動することができるスロット付き壁21および22によって分離されているのを示す。壁21、22は隣接しており、各壁21、22のスロット21a、22aが重なり合わない閉鎖状態と、スロット21a、22aが重なり合って流体ボリューム3と4との間の接触を可能にする開放状態との間を移動することができる。スロット間の重なり合いの程度により、開口部のサイズまたは幅を決定する。この実施形態は、
図24に示されるように、2つの隣接するスロット付きプレートまたは2つのスロット付きシリンダとして構成され得る。
【0106】
[00127]
図25では、それぞれ2つの流体ボリューム3と4との間に壁Wが形成されて
いる開口部形成A“が示されている。壁はスリット24を含む可撓性シリンダ23を含み、シリンダ23の変形時に、スリット24が様々な程度に開き、2つの流体、ボリューム4のSとボリューム3のBそれぞれとの間に開口部A”を形成する。
作動
[00128]流体連通インターフェースの開口部の作動は、当業者によって理解されるよう
に、自動化された計装により生じさせることができる。例えば、開口部が開く動きは、機器の電気機械作動装置(例えば、ステッピングモーターまたは圧電モーター)のデバイスの閉鎖部材への作用によって実行され得る。開口部は、カムの作動により開閉するように動作することができ、それにより、カム従動子が装置に組み込まれる。作動装置は、デバイス10と相互接続する実験室の計装の構成要素である。作動装置は、デバイス10の消耗品アセンブリの構成要素であってもよい。
【0107】
[00129]あるいは、光学窓内の流体深さの自動化された作動は、機器の電気機械作動装
置(例えば、ステッピングモーターまたは圧電モーター)のデバイスの閉鎖部材への作用により、光学窓格納表面が開くことによってもたらされ得る。光学窓格納表面は、カムの作動により開閉するように動作することができ、それにより、カム従動子が装置に組み込まれる。作動装置は、デバイス10と相互接続する実験室の計装の構成要素である。作動装置は、デバイス10の消耗品アセンブリの構成要素であってもよい。
温度制御およびロギング
[00130]付随する実験機器は、周囲温度から40℃までのインキュベーター温度の設定
および制御が可能であるインキュベーションチャンバを含んでもよい。インキュベーションチャンバの温度および湿度は、結果出力の一部として記録されロギングされ得るか、または付随するユーザインターフェースに表示され得る。
【0108】
[00131]別の実施形態では、予熱または後インキュベーションの処理の前または後のい
ずれかの期間、デバイスをインキュベーションチャンバに格納することが可能になり得る。
試料解凍
[00132]付随する実験機器のインキュベーターモジュールによって、一般に使用される
精液格納ストローの位置を特定する機能を提供することにより、試料を解凍することが可能になり得る。機器は、試料の解凍を支援するために、必要に応じて撹拌を導入してもよい。撹拌は、電気機械振動を制御することによって解凍プロトコル中に制御される。
機器の構成
[00133]付随機器は、単一の選別/インキュベーション/分析チャンバ、または実験室
のスケジューリングおよびワークフローを支援する前述の複数のモジュールのいずれかからなってもよい。これらの機器は、既存の機器に接続できるようにモジュール式にするか、またはより小規模な臨床環境に対応するためにスタンドアロンにすることができる。
【0109】
[00134]機器は、存在する選別またはインキュベーションモジュールの数に関係なく、
単一の光学検出モジュールまたは複数の検出モジュールのいずれかからなってもよい。構成は、市場の分析結果、および業界で使用されている既存のスケジューリングおよびワークフローに応じて適合され得る。
スマートCASA
[00135]付随する実験機器は、収集された試料の運動性および濃度を、処理されている
間にリアルタイムで読み取ることができるスマートCASA(コンピュータ支援精子分析)アルゴリズムを可能にすることにより、運動性精子の選別にかかる時間を短縮できる場合があり、したがって、十分に運動性精子が収集されたときに、ユーザは選別を終了させることができる。これにより、特定の精子選別ニーズおよび臨床状況に対応するために、試験の所要時間を調整することができる。
改変および強化
[00136]上述の実施形態のいずれも、以下の改変または強化のうちの1つまたは複数を
含めることによって強化することができる、すなわち、
・ベースポリマーへの精子の非特異的結合を減少させるブロック剤(例えば、ヒト血清アルブミン)を含むなどの表面処理;
・非前進性の、異常な精子または生存不能の精子の特異的結合を促進するために処理された流体ボリュームの表面;
・例えば、特定の精子に結合する免疫ビーズを含む特定の培地;
あるいは、ビーズは、充填時に精液または生体試料に添加してもよいこと。これらの改変の1つまたは組合せが使用され、連携して作用することができること;
・運動性精子の大部分が開口部の方向に移動するか、または緩衝液ボリュームから試料ボリュームに戻る動きを阻害するように、精子の泳ぐ方向を修正するか、または精子の動きの自由度を制限する表面のテクスチャ、構造、または突出部;
・精子が緩衝液ボリュームに向かって泳ぐように誘導される、(すなわち、走化性)緩衝
液ボリュームと試料ボリュームとの間の化学的濃度勾配;
・精子の一時的な結合および放出のための固相または表面
である。
【0110】
[00137]
図27~31に関して、本発明のプロトタイプ実施形態が記載される。消耗品
デバイス10は、上記と同じ構成要素には同じ参照符号を用いて、
図27に2つのプロトタイプの形態で示されている。
図28には、
図27の装置10の1つの分解垂直図が示されており、最初に、ばねの組み立てを容易にすることができるクリップオンキャップ31を示している。ベース部分を備えた蓋32は、使用中に制限されたスペースを形成して、イメージング用の流体の薄膜を形成する。蓋はまた、試料の投入/放出用のポートを含む。ゲート33は、フランジ付きの機能を備えて含まれており、デバイスの上半分8を形成する。最後に、ベース34は、機器内に消耗品を保持するための底部ゲート/チャンバ機能とクリップとを備えて含まれている。
【0111】
[00138]
図29および30は、とりわけ、消耗品デバイス10および光学検出ユニット
を収容しかつ動作制御するためのプロトタイプ機器200の部分切り取り斜視図を示す。
図29は、カバーを閉じた配置での機器を示し、
図30は、カバーを開いた配置での機器を示す。
【0112】
[00139]
図31は、機器200の側断面図を示し、その動作要素および構成要素のいく
つかを示している。試料用の機器へのアクセスは再利用可能なラッチ37によって提供される。暗視野照明ユニット36が機器の上部に位置している。レーザー距離センサー38によって、消耗ゲート開口部測定が可能になる。消耗品デバイス10は、図示のように機器に組み込まれている。ヒンジ式インキュベーター39は、可変設定温度で設計されている。作動装置41は、ゲートセットサイズ変更が可能である自動化された消耗作動を提供する。光学系回転システム42を備えた画像センサーも、機器200に組み込まれている。
【実施例0113】
実験結果
1.導入および目的
[00140]上述の実施形態を含む好ましい実施形態の消耗品設計の開発中に、および設計
反復を増やした後、それらの性能を試験するために、多数の試験が実施された。ここに示す結果は、2つの好ましい設計改訂で実施されたこれらの試験のサブセットを表す。
【0114】
[00141]試験の主な目的は、生の精液試料から(前進)運動性精子を選別する能力に関
する消耗品プロトタイプの性能を試験することであった。試験は、最終の洗浄試料(放出)における総精子濃度、精子の前進運動率、および前進運動性精子の濃度などの主要パラメーターに集中した。さらに、長期間にわたってサンプリングを繰り返すことにより、選別のタイミングを評価した。
【0115】
[00142]試験の第2の目的は、最も有望な消耗品の反復の選択を支援するために、2つ
の特定の設計プロトタイプ間の比較データを捕捉することであった。
[00143]試験の第3の目的は、選別中および選別操作の終了時に、区画またはボリュー
ム間の緩衝液および/または精液の漏れに関するデバイスの流体工学を評価することであった。
2.定義
総精子運動率:前進性または非前進性にかかわらず、運動性を示す全ての精子の割合。
前進運動性:速度に関係なく、直線的にまたは大きな円を描いて活発に動いている精子。非前進運動性:前進のない運動性の他の全てのパターン、例えば、小さな円の中で泳いで
いる、ほとんど頭を動かすことのない鞭毛力である、または鞭毛の拍動しか観察できない場合。
非運動性精子:動きを示さない精子
生試料:その天然の、そのままの状態の精液
3.試験概要
[00144]新たなヒト精液試料(収集から60分以内に処理を開始することを目的とする
)を消耗品のプロトタイプに充填し、試料ゲートを開き、精子緩衝液区画から5分毎に放出試料を取り出して(=放出)運動性精子の、デバイス形状にわたって泳ぐ能力を評価した。インキュベーション期間が短いと濃度が低くなるが、前進運動性精子はますます増加すると予想され、一方、長期間では精子の濃度が高くなるが、以前に収集したコホートと比較して、前進運動性は全体的に低下すると予想された。
4.試験材料
[00145]ボランティアドナーの同意により精液試料が提供された。ドナーは、不妊歴が
不明であり、すなわち、検査のために受精能状態を確認する試みが行われなかった、20~40歳の間の男性であった。この試験は、申請企業の人間倫理委員会によって承認された。
【0116】
[00146]全ての実験用消耗品(ピペットチップ、試験管、スライドガラスなど)は、I
VFクリニックおよび/またはアンドロロジー研究所で使用されたものと同じであった。試験パラメーターの分析は、コンピュータ支援精子分析(CASA)システム、すなわちIVOSバージョン12(Hamilton Thorne)およびLeja分析スライド(Leja)を使用して実施した。
【0117】
[00147]精子分離デバイスのプロトタイプを3Dプリンターにより現場で製造し、使用
前に徹底的に洗浄した。
5.試験方法
・試験に使用するデバイスおよびソリューションが摂氏37度であることを確認する。
・精液試料の初期特性(濃度、前進運動率、前進運動性精子の濃度)を評価する。
・精液試料に1%青色の食用色素を添加して染色する(色素は安全で無毒であることが試験されている、目的は漏れの検出を支援することである)。
・各デバイスに試料区画中50μLの精液を充填し、続いて緩衝液区画中250μLの精子緩衝液を充填する。注意:充填する前に、デバイスゲートが閉鎖設定になっていることを確認する。
・選別前の読み取りの場合、読み取り用の試料(約4μL)を試料区画から収集し、CASAにより評価する。
・デバイスゲートを開き、タイマーを開始させる(注意:精液の読み取りのためにデバイスの開放を開始するのを遅らせないこと)。
・読み取り用に(約4μL)緩衝液区画から試料を収集し(=時間0’)、CASAにより評価する。
・デバイスを摂氏37度に維持しながら、25分が経過するまで5分毎に緩衝液区画から試料収集を繰り返す。
・その時点で、デバイスゲートを閉じて、緩衝液区画から緩衝液の合計残量を抽出する(=フルボリューム放出)。
・抽出されたボリュームを測定する。
・試験全体にわたって、緩衝液区画の色の変化に注意して記録すること。漏れが発生した場合、精子緩衝液は様々な濃淡の青を取得する(より暗いほど、漏れがより大きい)。
・結果を分析する。
6.試験結果
[00148]以下の表1は、2つの異なるデバイスプロトタイプ(上記の、「ストーンヘン
ジ」および「ツイスター」とそれぞれラベル付けされた第1および第2の実施形態に基づ
く)を利用して、3人の異なるドナーからの試料を用いて別々の2日に取得した12の試験の結果を示す。精子濃度(1mLあたり100万精子)、前進運動率(前進運動を示す精子の%)および前進運動精子の濃度(1mLあたり100万前進運動精子)の平均値および標準偏差が表される。
【0118】
[00149]最後の値は、処理済み精子試料がIVFに使用するのに好適であるか否かを評
価するときの定義因子であるが、目標値は診療所間で異なり、診療所で使用される受精手順のタイプに依存する。例えば、卵母細胞の受精がマイクロドロップ(10~50μL)で行われる場合、マイクロウェル(300~700μL)内での受精とは対照的に、通常、より高い濃度が必要である。
【0119】
【0120】
[00150]経時的な精子パラメーターの変化をより良く説明するために、以下のプロット
A、BおよびCは、グラフ形式で結果を示す。
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
7.考察
[00151]予想されるように、精子の総濃度は、選別後より選別前の試料で高かった。選
別前のこれらの試験で提供された全ての試料は、WHOによって定義された精液特性の下限基準値(WHO 2015第5版)、すなわち、「正常」とみなすことができる値を超える総精子濃度を有していた(試料範囲59~101M/mL、WHO下限基準値15M/mL)。
【0125】
[00152]精子の放出濃度は、処理の所要時間にわたって増加し、25分の時点ではっき
りわかるほどほど一段と高い(表1およびプロットA)。興味深いことに、「フルボリューム」放出は、その同じ時点での初期試料ボリュームよりもさらに高い濃度を示し、試料ボリュームが小さいためにサンプリングの不正確さを反映している可能性が最も高く、処理中の緩衝液区画における精子の不均一な分布もまたおそらく反映している。
【0126】
[00153]他の全ての時点の結果は、4μLの試料のみに基づいていたが、最終的なフル
ボリューム試料は、総放出からなり、50~100μLの間の範囲であった。以前の時点はその特定の時点での精子の実際の濃度を正確に反映していない場合があり、したがって、緩衝液区画の放出ボリューム全体を測定した場合、濃度が幾分異なり、おそらくより高い可能性がある。しかし、観察されたパターンはなおこれらの試験に関連している。
【0127】
[00154]選別前の精液試料の前進運動性は10~55%の間で異なっており、これはW
HOで定義された32%の下限基準値未満および下限基準値超の両方の値を表す。しかし、これらの数値は、元の試料の初期品質(収集直後で範囲11~66%)ではないが、むしろ,処理の開始時の試料の品質を反映しており、この時点で、試料の経過時間は35~177分の間で異なっている。精子の前進運動性は時間の経過とともに低下することが知られており、推奨される臨床慣行は、収集後60分以内に精液試料を処理することである。
【0128】
[00155]処理中、この値は最初の24%~28%から、71%(ストーンヘンジ)およ
び89%(ツイスター)のピークに増加し、そこから両方のデバイス設計において再び低下した(表1およびプロットB)。理想的には、前進運動率は、80~90%でなければ
ならないが、60%を超える値を使用するか、臨床IVFを使用することができる。
【0129】
[00156]25’での前進運動性の低下は、緩衝液区画が飽和し始めたときの精子の数(
および濃度)の増加に関連している可能性が高い。これらの条件では、ほとんどの運動性精子集団に加えて、運動性の低い精子にも十分な時間をかけて試料区画から緩衝液区画に移動することが可能であり、したがって全体的な前進運動率が低下した。
【0130】
[00157]処理済み試料の臨床的有用性の最終決定因子は、前の2つの値の組合せである
前進運動性精子の濃度である。この値が選別前の平均値である約11M/mLから6(ストーンヘンジ)または11(ツイスター)M/mLに時間の経過とともに徐々に増加していることを、再確認することができる。全体の値は、これらの特定の試験において選別前と選別後で劇的に異なってはいなかったが、これはなお、精漿から除去された洗浄された精子の部分を表し、そのようなものとして臨床使用するのに直ちに好適である。
【0131】
[00158]結果からわかるように、標準偏差は高く、試験間の結果における大きなばらつ
きを表している。これが試料自体の特性によるものなのか、それとも時点間またはデバイス設計間の違いによるものなのかは、現時点で述べるのは難しい。しかし、この一連の試験では、ツイスター設計はストーンヘンジ設計よりも有望であるように見えるが、全体的な結論は、両方の設計が好適な精子処理の結果につながることを示唆している。
【0132】
[00159]プロセスの最適な所要時間に関して、少なくともサンプリングされた少ないボ
リュームの結果のみを考慮する場合、精子の総濃度および前進運動性の両方とも、約10~15分後にプラトーに達しているように見える。この時間は、従来の密度勾配遠心分離で達成され得る時間よりもかなり速い。
【0133】
[00160]以下のセクションI~VIIは、本明細書を解釈するための指針を提供する。
I.用語
[00161]「製品」という用語は、特に明記しない限り、任意の機械、製造、および/ま
たは物質の組成物を意味する。
【0134】
[00162]「プロセス」という用語は、任意のプロセス、アルゴリズム、方法などを意味
する。
[00163]それぞれのプロセスは(方法、アルゴリズム他の呼称であっても)、1つまた
は複数の工程を本質的に含み、このため、プロセスの「工程」または「工程(複数)」への全ての言及は、「プロセス」または同様の用語の単なる列挙において、本質的に先行する記載を有する。したがって、請求項における、プロセスの「工程」または「工程(複数)」へのいかなる言及も、十分に先行する記載を有する。
【0135】
[00164]「発明」などの用語は、特に明記しない限り、「本明細書において開示される
1つまたは複数の発明」を意味する。
[00165]「1つの実施形態」、「実施形態」、「実施形態(複数)」、「この実施形態
」、「これらの実施形態」、「1つまたは複数の実施形態」、「いくつかの実施形態」、「ある実施形態」、「一実施形態」、「別の実施形態」などの用語は、特に明記しない限り、「開示された本発明の1つまたは複数の(しかし全てとは限らない)実施形態」を意味する。
【0136】
[00166]本発明の「変形」という用語は、特に明記しない限り、本発明の実施形態を意
味する。
[00167]実施形態の記載における「別の実施形態」への言及は、特に明記しない限り、
参照される実施形態が別の実施形態(例えば、参照される実施形態よりも前に記載された
実施形態)と相互に排他的であるという意味を含まない。
【0137】
[00168]「含む(including)」、「含む(comprising)」および
これらの変形は、特に明記しない限り、「含むが限定しない」ことを意味する。
[00169]「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」という用語
は、特に明記しない限り、「1つまたは複数の」を意味する。
【0138】
[00170]「複数」という用語は、特に明記しない限り、「2つ以上の」を意味する。
[00171]「本明細書に(herein)」という用語は、特に明記しない限り、「本明
細書において、参照により組み込まれ得る全てを含み」を意味する。
【0139】
[00172]「少なくとも1つの」という語句は、特に明記しない限り、この語句が複数の
もの(列挙されたもののリストなど)を修飾するときには、これらのものの1つまたは複数の任意の組合せを意味する。例えば、「小型器具、車および車輪のうちの少なくとも1つ」という語句は、(i)小型器具、(ii)車、(iii)車輪、(iv)小型器具および車、(v)小型器具および車輪、(vi)車および車輪、または(vii)小型器具、車および車輪のいずれかを意味する。「少なくとも1つの」という語句は、このような語句が複数のもの修飾するときには、その複数のものの「それぞれの1つ」は意味しない。
【0140】
[00173]「1つの」、「2つの」などの数字の用語は、あるものの量を示すための基数
として用いられるとき(例えば、1つの小型器具、2つの小型器具)は、その数字の用語により示される量を意味するが、少なくともその数字の用語により示される量は意味しない。例えば、「1つの小型器具」という用語は、「少なくとも1つの小型器具」を意味しないため、「1つの小型器具」という用語は、例えば「2つの小型器具」を含まない。
【0141】
[00174]「基づいて」という語句は、特に明記しない限り、「のみに基づいて」は意味
しない。換言すれば、「基づいて」という語句は、「のみに基づいて」および「少なくとも基づいて」の両方を記載する。「少なくとも基づいて」という語句は、「少なくとも部分的に基づいて」という語句と等価である。
【0142】
[00175]「表す」という用語および同様の用語は、特に明記しない限り、排他的ではな
い。例えば、「表す」という用語は、特に明記しない限り、「のみを表す」という意味ではない。換言すれば、「そのデータはクレジットカード番号を表す」という語句は、「そのデータはクレジットカード番号のみを表す」と「そのデータはクレジットカード番号を表し、かつそのデータは他のあるものも表す」との両方を記載する。
【0143】
[00176]「それにより(whereby)」という用語は、本明細書において、意図さ
れた結果、目的または以前に明示的に列挙されたものの帰結のみを表現する、節または他の単語の組に先行するためのみに用いられる。「それにより」という用語が、ある請求項において使用されるとき、「それにより」という用語が修飾する節または他の単語が、この請求項の特定のさらなる限定も、あるいはこの請求項の意味または範囲を制約することも確立しない。
【0144】
[00177]「例えば(e.g.)」および同様の用語は、「例えば」を意味するため、こ
れが説明する用語または語句を限定しない。例えば、「コンピュータは、インターネットを介してデータ(例えば、命令、データ構造)を送信する」という文において、「例えば」という用語は、「命令」は、コンピュータがインターネットを介して送信してもよい「データ」の例であることを説明しており、「データ構造」はコンピュータがインターネットを介して送信してもよい「データ」の例であることも説明している。
しかし、「命令」および「データ構造」の両方は単に「データ」の例であり、「命令」および「データ構造」以外の他のものが「データ」であり得る。
【0145】
[00178]「すなわち(i.e.)」および同様の用語は、「すなわち(that is
)」を意味し、したがってそれが説明する用語または語句を限定する。例えば、「コンピュータはインターネットを介してデータ(すなわち、命令)を送信する」という文において、「すなわち」という用語は、「命令」はコンピュータがインターネットを介して送信する「データ」であることを説明する。
【0146】
[00179]任意の所与の数値範囲は、この範囲内の数の全体または部分を含むものとする
。例えば、「1から10」という範囲は、1から10の間の整数(例えば、1、2、3、4、...9)および非整数(例えば、1.1、1.2、...1.9)を特定して含むと解釈するものとする。
II.決定
[00180]「決定する」という用語およびこの文法上の変形(例えば、価格を決定する、
値を決定する、ある規範に見合う目的を決定する)は、極めて広義に用いられる。「決定する」という用語は多種多様な行動を包含するため、「決定する」は、計算する、計算機で計算する、処理する、導き出す、調査する、調べる(例えば、表、データベースまたは別のデータ構造を調べる)、確認するなどを含むことができる。同様に、「決定する」は、受信する(例えば、情報を受信する)、アクセスする(例えば、メモリ内のデータにアクセスする)などを含むことができる。同様に、「決定する」は、解決する、選択する、選ぶ、確立するなどを含むことができる。
【0147】
[00181]「決定する」という用語は、確実性または絶対的な正確さを意味していないた
め、「決定する」は、試算する、推定する、予測する、推測するなどの意味を含むことができる。
【0148】
[00182]「決定する」という用語は、数学的処理が実施されなければならないことを意
味しておらず、数値的方法が用いられなければならないことを意味しておらず、アルゴリズムまたは処理が用いられるということを意味していない。
【0149】
[00183]「決定する」という用語は、任意の特定のデバイスが用いられなければならな
いということ意味していない。例えば、コンピュータは、必ずしも決定を実行する必要はない。
【0150】
[00184]「緩衝液」という用語は、緩衝剤または媒体を指す場合があり、本明細書では
無差別に使用される。例えば、「緩衝液」のさらなる定義は、塩、タンパク質、糖、または他の化合物などの物質の組成物の水溶液の説明を含んでもよい。
III.表示
[00185]「表示」という用語は、極めて広い意味で使用される。「表示」という用語は
、とりわけ、徴候、兆し、または他の何かのしるしを含む場合がある。
【0151】
[00186]「表示」という用語は、対象、項目、実体、および/または他の目的および/
または考えを示すかまたはそれらに関連する任意の標識および/または任意の他の情報を指すために使用され得る。
【0152】
[00187]本明細書で使用される場合、「を示す情報」および「標識」という語句は、関
連する実体、対象、または目的を表す、説明する、および/またはその他の方法で関連する任意の情報を指すために使用され得る。
【0153】
[00188]情報の標識は、例えば、記号、コード、参照、リンク、信号、識別子、および
/またはそれらの組合せ、および/または情報に関連する他の情報表現を含んでもよい。
[00189]いくつかの実施形態では、情報の(または情報を示す)標識は、情報自体およ
び/または情報の任意の部分または構成要素であってもよく、またはそれらを含んでもよい。いくつかの実施形態では、表示は、要求、勧誘、放送、および/または情報収集の任意の他の形態および/または宣伝を含んでもよい。
IV.文体
[00190]第1の請求項の限定が1つの特徴ならびに2つ以上の特徴を含む(例えば、「
少なくとも1つの小型器具」などの限定は、1つの小型器具ならびに2つ以上の小型器具に及ぶ)場合、および第1の請求項に従属する第2の請求項において、第2の請求項がこの限定を参照するために定冠詞「前記(the)」(例えば、「前記小型器具」)を用いる場合、これは、第1の請求項がその特徴1つのみを含むことを意味しておらず、かつ、これは、第2の請求項がその特徴1つのみを含むということを意味していない(例えば、「前記小型器具」は1つの小型器具および2つ以上の小型器具を含むことができる)。
【0154】
[00191]序数(例えば、「第1の」、「第2の」、「第3の」など)は、用語の前に形
容詞として用いられ、この序数は(特に明記しない限り)、特定の特徴を示すためのみに、例えば、その特定の特徴を、同一の用語または同様の用語により記載される別の特徴と区別するために、使用される。例えば、「第1の小型器具」は、例えば「第2の小型器具」との区別のみのために、名付けられてもよい。したがって、「小型器具」という用語の前に「第1の」および「第2の」という序数を単に使用することは、2つの小型器具の間に、何らの他の関係も示さず、同様に小型器具のいずれかまたは両方のいかなる他の特徴も示さない。例えば、「小型器具」という用語の前に「第1の」および「第2の」という序数を単に使用することは、(1)順序または場所において、いずれかの小型器具がいかなる他のものの前にも後にも来ることを示さず、(2)時間において、いずれかの小型器具がいかなる他のものの前にも後にも現れるかまたは作動することを示さず、かつ、(3)重要性または品質において、いずれかの小型器具がいかなる他のものの上にも下にも順位付けられることを示さない。さらに、序数を単に使用することは、序数を用いて識別される特徴に対する数値的限定を定義するものではない。例えば、「小型器具」という用語の前に「第1の」および「第2の」という序数を単に使用することは、2つより多くの小型器具があってはならないことを示していない。
【0155】
[00192]本明細書において単一のデバイスまたは物品が記載されるときに、2つ以上の
デバイス/物品は(それらが協動するかどうかにはかかわらず)、記載されている単一のデバイス/物品の代わりに代替的に使用されてもよい。したがって、デバイスによって所有されると記載されている機能性は、2つ以上の装置/物品により(それらが協動するかどうかにはかかわらず)代替的に所有されていてもよい。
【0156】
[00193]本明細書において2つ以上のデバイスまたは物品が(それらが協動するかどう
かにはかかわらず)記載される場合、単一のデバイス/物品は、記載されている2つ以上のデバイス/物品の代わりに代替的に使用されてもよい。例えば、複数のコンピュータ系デバイスを、単一のコンピュータ系デバイスと置き換えてもよい。したがって、2つ以上のデバイスまたは物品によって所有されていると記載されている種々の機能性は、単一のデバイス/物品により代替的に所有されていてもよい。
【0157】
[00194]記載されている単一のデバイスの機能性および/または特徴は、記載されてい
るが、このような機能性および/または特徴を有するとは明示的に記載されていない、1つまたは複数の他のデバイスによって、代替的に具体化されてもよい。したがって、他の実施形態は、記載されたデバイス自体を含む必要はないが、むしろ、それらの他の実施形態においてはそのような機能性/特徴を有するであろう、1つまたは複数の他のデバイス
を含むことができる。
V.開示された実施例および専門用語は限定的ではない
[00195]本明細書における発明の名称も要約書も、いずれも、本開示の発明の範囲とし
て、いかなる意味においても限定するものと解釈されることは意図されていない。本明細書に設けられる発明の名称および章見出しは、利便のみのためであって、いかなる意味においても本開示を限定するものと解釈されるべきではない。
【0158】
[00196]多数の実施形態が本出願に記載され、説明目的のみのために提示されている。
記載された実施形態は、いかなる意味においても限定すると意図されるものではない。前記本明細書にて開示される発明は、開示から直ちに明らかなように、多数の実施形態に広範に適用される。当業者であれば、構造、論理、ソフトウェアおよび電気的な改変など、様々な改変および変更とともに本開示の発明が実施され得ることを認識する。本開示の発明の特定の特徴は、1つまたは複数の特定の実施形態および/または図面を参照して記載されることがあるが、このような特徴は、特に明記しない限り、記載されたものに関する1つまたは複数の特定の実施形態または図面における使用に限定されないことが理解されるべきである。
【0159】
[00197]本開示は、本発明の全ての実施形態の逐語的な説明ではない。また、本開示は
、全ての実施形態に存在しなければならない本発明の特徴を列挙するものではない。
[00198]相互に通信することが記載されているデバイスは、特に明記しない限り、継続
的に相互に通信する必要はない。反対に、このようなデバイスは、必要なまたは所望の場合の、相互の送信のみが必要であり、実際にはほとんどの時間はデータ交換をやめていてもよい。例えば、インターネットを介して別の機械と通信する機械は、長時間(例えば、一回に数週間)その他の機械にデータを送信しなくてもよい。さらに、相互に通信するデバイスは、1つまたは複数の中間手段を通じて、直接的または間接的に通信してもよい。同様の意味は、相互に流体または液体の連通があると記載されているデバイスまたは構成要素用に準用して適用する。
【0160】
[00199]複数の構成要素または特徴を有する実施形態の記載は、このような構成要素ま
たは特徴の全て、あるいはいずれかが必要であるということを意味していない。反対に、本発明の多種多様な可能な実施形態を説明するため、種々の任意の構成要素が記載される。特に明記しない限り、いかなる構成要素/特徴も不可欠ではなく必要でもない。
【0161】
[00200]プロセスの工程、操作、アルゴリズムなどは、特定の順序の順番に記載される
ことがあるが、このようなプロセスは異なる順番で動作するよう構成されてもよい。換言すれば、明示的に記載され得る工程のいかなる順序または順番も、それらの工程がこの順番において実施されるという要件を必ずしも示していない。本明細書に記載されたプロセスの工程は、実用的な任意の順番で実施してもよい。さらに、いくつかの工程は、(例えば、一方の工程は他方の工程の後に記載されるため)非同時的に発生するものとして記載されるかまたは意味を含むにもかかわらず、同時に実施してもよい。その上、図面に描くことによってプロセスを図示することは、図示されたプロセスが、これに対する他の変形および改変に排他的であるということを意味しておらず、図示されたプロセスまたはその工程のいずれかが本発明に必要であるということを意味しておらず、図示の方法が好ましいということを意味していない。
【0162】
[00201]プロセスは、複数の工程を含むと記載されてもよいが、それらの工程の全てま
たはいずれかが好ましい、不可欠または必要であるということを意味していない。記載された発明の範囲内にある種々の他の実施形態は、記載された工程のいくつかまたは全てを除く他のプロセスを含む。特に明記しない限り、いかなる工程も不可欠ではなく必要でもない。
【0163】
[00202]プロセスは、単独でまたは他の製品または方法を参照せずに記載され得るが、
一実施形態では、プロセスは他の製品または方法と相互作用し得る。例えば、このような相互作用は、あるビジネスモデルを別のビジネスモデルにリンクすることを含んでもよい。このような相互作用は、プロセスの柔軟性または望ましさを強化するために設けられてもよい。
【0164】
[00203]製品は、複数の構成要素、態様、品質、特性、および/または機能を含むと記
載されてもよいが、このことは、この複数の全てまたはいずれかが好ましい、不可欠または必要であるということを示すものではない。記載された発明の範囲内にある種々の他の実施形態は、記載された複数のもののいくつかまたは全てを除く他の製品を含む。
【0165】
[00204]列挙された項目のリスト(番号付けられることもあり、ないこともある)は、
特に明記しない限り、それらの項目のいずれかまたは全てが相互に排他的であるということを意味していない。列挙された項目のリスト(番号付けられることもあり、ないこともある)は、特に明記しない限り、それらの項目のいずれかまたは全てが、いかなる分類も包括するということを意味していない。例えば、「コンピュータ、ラップトップ、PDA」という列挙したリストは、このリストの3項目のいずれかまたは全てが、相互に排他的であるということを意味しておらず、このリストの3項目のいずれかまたは全てが、いかなる分類も包括するということを意味していない。
【0166】
[00205]列挙された項目のリスト(番号付けられることもあり、ないこともある)は、
それらの項目のいずれかまたは全てが、互いに等価であるか、または互いに直ちに置き換えられるということを意味していない。
【0167】
[00206]全ての実施形態は説明であって、本発明またはいずれかの実施形態が、場合に
よっては、実行または実施されたということを意味していない。
VI.コンピューティング
[00207]本明細書に記載の種々のプロセスが、例えば、適切にプログラムされた汎用コ
ンピュータ、専用コンピュータ、およびコンピューティングデバイスによって実装され得ることは、当業者には直ちに明らかであろう。通常、プロセッサ(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のマイクロコントローラ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ)が、(例えば、メモリまたは同様のデバイスから)命令を受信し、それらの命令を実行し、これにより命令によって定義された1つまたは複数のプロセスを実施する。
【0168】
[00208]「プロセッサ」は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、中央処理装置(C
PU)、コンピューティングデバイス、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、または同様のデバイス、またはそれらの任意の組合せを意味する。
【0169】
[00209]したがって、プロセスの記載は、プロセスを実施するための装置の記載と同様
である。プロセスを実施する装置は、例えば、プロセッサおよびプロセスを実施するのに適切なそれらの入力デバイスおよび出力デバイスを含むことができる。
【0170】
[00210]さらに、そのような方法(ならびに他のタイプのデータ)を実装するプログラ
ムは、様々な媒体(例えば、コンピュータ可読媒体)を使用して、複数の方法で格納および送信され得る。いくつかの実施形態では、種々の実施形態のプロセスを実装することができるソフトウェア命令の一部または全ての代わりに、またはそれらと組み合わせて、ハードワイヤード回路またはカスタムハードウェアを使用することができる。したがって、ソフトウェアのみではなく、ハードウェアとソフトウェアとの種々の組合せが使用され得
る。
【0171】
[00211]「コンピュータ可読媒体」という用語は、コンピュータまたはプロセッサなど
のデバイスによって読み取られ得るデータ(例えば、命令、データ構造)の提供に関与する任意の媒体、複数の同じ媒体、または異なる媒体の組合せを指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むがこれらに限定されない多くの形態を取り得る。不揮発性媒体は、例えば、光ディスクまたは磁気ディスクおよびその他の永続メモリを含む。揮発性媒体は、ダイナミック・ランダムアクセス・メモリ(DRAM)を含み、これは通常は主記憶を構成する。伝送媒体は、同軸ケーブル、銅線および光ファイバを含み、プロセッサに接続されるシステムバスを含むワイヤを含む。伝送媒体は、高周波(RF)、赤外線(IR)データ通信中に生成されるものなど、音響波、光波および電磁放射を含むかまたは伝送してもよい。コンピュータ可読媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD、任意の他の光媒体、パンチカード、紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EEPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、以下に記載された搬送波、またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の媒体を含む。
【0172】
[00212]コンピュータ可読媒体の種々の形態は、プロセッサへのデータ(例えば、一連
の命令)の伝送に含まれてもよい。例えば、データは、(i)RAMからプロセッサへ伝送されてもよく、(ii)無線伝送媒体上を伝送されてもよく、(iii)イーサネット(商標)(またはIEEE 802.3)、SAP、ATP、ブルートゥース(商標)、およびTCP/IP、TDMA、CDMA、および3Gなどの多数のフォーマット、標準もしくはプロトコルに従ってフォーマットおよび/もしくは送信されてもよく、ならびに/または(iv)プライバシー保護もしくは不正防止のために当業に公知の様々な方法のいずれかで暗号化されてもよい。
【0173】
[00213]したがって、プロセスの記載は、プロセスを実施するためのプログラムを格納
するコンピュータ可読媒体の記載と同様である。本方法の実施に適切なプログラム要素を格納する(任意の適切なフォーマットで)ことができる。
【0174】
[00214]プロセスにおける種々の工程の記載が、記載された全ての工程が必要とされる
ということを示していないのと同様に、装置の実施形態は、記載されたプロセスのいくつかを(しかし、必ずしも全てとは限らずに)実施するように動作可能なコンピュータ/コンピューティングデバイスを含む。
【0175】
[00215]プロセスにおける種々の工程の記載が、記載された全ての工程が必要とされる
ということを示していないのと同様に、プログラムまたはデータ構造を格納するコンピュータ可読媒体の実施形態は、実行時に、記載されたプロセスのいくつか(しかし、必ずしも全てとは限らずに)をプロセッサに実施させることが可能なプログラムを格納する、コンピュータ可読媒体を含む。
【0176】
[00216]データベースが記載される場合、データベースが記載される場合、(i)記載
のものに対する代替データベースが直ちに用いられてもよく、(ii)データベース以外の他のメモリ構造が直ちに用いられてもよいことが、当業者によって理解される。本明細書に提示される任意の試料データベースの任意の図示または記載は、情報が格納されたことを表現するための、図示による構成である。例えば、図面にまたは他の箇所に示される表などにより提示されるものの他に、任意の数の他の構成を用いてもよい。同様に、データベースの任意の図示された入力は例示的情報のみを表し、当業者であれば、入力の数および内容は、本明細書に記載されたものとは異なってもよいことを理解する。さらに、テ
ーブルとしてのデータベースのいかなる表現にもかかわらず、他のフォーマット(リレーショナルデータベース、オブジェクトベースモデル、および/または分散データベースを含む)を使用して、本明細書に記載のデータタイプを格納し、操作することができる。同様に、データベースのオブジェクトメソッドまたは動作を使用して、本明細書に記載の種々のプロセスを実装することができる。さらに、データベースは、既知の方法で、そのようなデータベース内のデータにアクセスするデバイスからローカルまたはリモートに格納することができる。
【0177】
[00217]種々の実施形態は、1つまたは複数のデバイスと通信している(例えば、通信
ネットワークを介して)コンピュータを含むネットワーク環境で動作するように構成することができる。コンピュータは、任意の有線または無線媒体(例えば、インターネット、LAN、WANまたはイーサネット(商標)、トークンリング、電話回線、ケーブル回線、無線チャネル、光通信回線、商業オンラインサービスプロバイダ、掲示板システム、衛星通信リンク、上記のいずれかの組合せ)を介して、デバイスと直接または間接的に通信し得る。デバイスのそれぞれは、それ自体、コンピュータと通信するようになっているコンピュータまたは他のコンピューティングデバイスを含んでもよい。任意の数およびタイプのデバイスがコンピュータと通信し得る。
【0178】
[00218]一実施形態では、サーバコンピュータまたは集中権限は、必要または望ましく
ない場合がある。例えば、本発明は、一実施形態において、集中権限なしに1つまたは複数のデバイスで実行されてもよい。そのような実施形態では、サーバコンピュータによって実施されると本明細書に記載された機能、またはサーバコンピュータ上に格納されると記載されたデータは、代わりに1つまたは複数のそのようなデバイスによって実行または格納され得る。
【0179】
[00219]プロセスが記載される場合、一実施形態では、プロセスは、ユーザの介入なし
に動作し得る。プロセスが記載される場合、一実施形態では、プロセスは、ユーザの介入なしに動作し得る。別の実施形態では、プロセスは、何らかのヒトの介入を含む(例えば、工程は、ヒトによって、またはヒトの助けを借りて実施される)。
【0180】
[00220]本発明をその特定の実施形態に関連して記載してきたが、さらなる改変が可能
であることが理解されるであろう。本出願は、一般的に本発明の原理に従い、本発明が関連する技術分野内の既知または慣例の範囲内にあり、上記の重要な機能に適用され得る本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形使用または適応を包含することを意図している。
【0181】
[00221]本発明は、本発明の本質的な特性の精神から逸脱することなくいくつかの形態
で具現化し得るので、上記の実施形態は、特に明記しない限り、本発明を限定するものではないが、むしろ、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の精神および範囲内で広く解釈されるべきである。記載された実施形態は、あらゆる点で例示的なものにすぎず、限定的なものではないとみなされるべきである。
【0182】
[00222]種々の改変および同等の構成が、本発明および添付の特許請求の範囲の精神お
よび範囲内に含まれることが意図されている。したがって、特定の実施形態は、本発明の原理が実施され得る多くの方法の例示であると理解すべきであることが理解されるべきである。例えば、以下の実施形態も添付の特許請求の範囲内に入る。
【0183】
[00223]添付の図面に示される実施形態に基づき、試料ボリュームと緩衝液ボリューム
との間にある歯付きゲートによって流体連通インターフェースが提供されてもよく、そこでは、試料が外側に設けられ、緩衝液が内側ボリューム内に配置され得るボリュームの同
心円配置が提供されている。(同様に、代替形式では、緩衝液を外側ボリュームに配置して、2つのボリュームを逆に配置してもよい。)カムリングが回転すると開口部が開く。この動作で、上部構成要素が持ち上がる。垂直の開口部が、歯の間で約1:10の垂直移動の比率で開く。精子は複数の軌道に沿って開口部を通って緩衝液へと泳ぐことができる。精液がデバイスのボリュームの外側に充填される(約1mL)。デバイスは閉鎖状態にあり、上部と下部の歯の間がシールされている。
【0184】
[00224]精子緩衝液が内側リングデバイスに充填される。デバイスは閉鎖状態にあり、
上部と下部の歯の間がシールされている。充填レベルは、未処理の精液が内側選別ボリュームに流れ込むのを避けるために、緩衝液レベルと同じか、わずかに高くなければならない。
【0185】
[00225]カムリングが時計回りに回転すると、2つの流体ボリューム間に分裂が生じる
。上部構成要素はカムの傾斜面によって押し上げられる。
[00226]必要に応じて、歯を閉じて、選別された精子を吸引する前に、精漿が精子緩衝
液ボリュームに拡散するのを防ぐことができる。
【0186】
[00227]記載されている他の実施形態と同様に、運動性精子は、内側ボリュームからピ
ペットで吸引することができる。
[00228]代替的実施形態では、精液はデバイスのボリュームの外側に充填される。デバ
イスは、ベース構成要素と円筒形上部部品との間をシールした閉鎖状態にある。精子緩衝液が内側リングデバイスに充填される。デバイスは閉鎖状態にあり、上部と下部の歯の間がシールされている。充填レベルは、未処理の精液が内側選別ボリュームに流れ込むのを避けるために、緩衝液レベルと同じか、わずかに高くなければならない。ここでも、必要に応じて、歯を閉じて、選別された精子を吸引する前に、精漿が精子緩衝液ボリュームに拡散するのを防ぐことができ、運動性精子は、内側ボリュームからピペットで吸引することができる。
【0187】
[00229]以下の特許請求の範囲において、ミーンズプラスファンクション条項は、定義
された機能を実行するものとして構造を含み、かつ構造上の均等物だけでなく均等な構造も含むことを意図している。例えば、くぎおよびねじは、くぎが円筒形の表面を使用して木製部品を一緒に固定するのに対し、ねじは、木製部品を固定する環境では、らせん状の表面を使用して木製部品を一緒に固定する点において構造上の均等物ではないかもしれないが、くぎおよびねじは、均等な構造物である。
【0188】
[00230]「サーバ」、「セキュアサーバ」という用語、または同様の用語が本明細書で
使用される場合、文脈で特に必要とされない限り、通信システムで使用され得る通信デバイスが記載されることが留意されるべきであり、本発明を特定の通信デバイスタイプに限定するものと解釈されるべきではない。したがって、通信デバイスは、セキュアである場合とセキュアでない場合がある、ブリッジ、ルーター、ブリッジルーター(ルーター)、スイッチ、ノード、または他の通信デバイスを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0189】
[00231]本発明の種々の態様を実証するために本明細書でフローチャートが使用される
場合、本発明を特定の論理フローまたは論理実装に限定すると解釈されるべきではないこともまた、留意されるべきである。記載されたロジックは、全体の結果を変更し、あるいは本発明の真の範囲から逸脱することなく、異なるロジックブロック(例えば、プログラム、モジュール、機能、またはサブルーチン)に分割してもよい。多くの場合、全体的な結果を変更し、あるいは本発明の真の範囲から逸脱することなく、ロジック要素は、追加され、改変され、省略され、異なる順序で実行され、または異なるロジック構成(例えば、ロジックゲート、ループプリミティブ、条件付きロジック、および他のロジック構成)
を使用して実装され得る。
【0190】
[00232]本明細書で使用される場合、「含む(comprises)/含む(comp
rising)」および「含む(includes)/含む(including)」は、述べられた特徴、整数、工程または構成要素の存在を特定するものとみなされるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、構成要素またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。したがって、文脈がそうでないことを明確に要求しない限り、明細書および特許請求の範囲を全体にわたって、「含む(comprise)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」などの単語は、排他的または網羅的な意味においてではなく包括的な意味において、すなわち、「含むが、それに限定されない」という意味において解釈されるべきである。