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特開2024-133657Β-サルコグリカンのアデノ随伴ウイルスベクター送達および筋ジストロフィーの治療
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133657
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】Β-サルコグリカンのアデノ随伴ウイルスベクター送達および筋ジストロフィーの治療
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/864 20060101AFI20240925BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240925BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N15/12
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109621
(22)【出願日】2024-07-08
(62)【分割の表示】P 2021549782の分割
【原出願日】2020-02-26
(31)【優先権主張番号】62/909,564
(32)【優先日】2019-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/834,012
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/881,901
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/910,779
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/858,644
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/810,917
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515289842
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート アット ネイションワイド チルドレンズ ホスピタル
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルイーズ ロディノ-カラパック
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー アール. メンデル
(57)【要約】
【課題】Β-サルコグリカンのアデノ随伴ウイルスベクター送達および筋ジストロフィーの治療の提供。
【解決手段】筋ジストロフィーを治療する方法であって、組換えAAV(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBベクターを投与することを含む方法、患者においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現する方法、rAAVを含む医薬組成物、およびrAAVを生成する方法が、本明細書に記載される。β-サルコグリカン遺伝子を発現する遺伝子用治療ベクター(例えば、AAV)、ならびにβ-サルコグリカンを筋肉に送達し、線維症を低減および/もしくは予防する方法、および/または筋力を増加させる方法、および/または筋ジストロフィーを罹患している哺乳動物対象を治療する方法が本明細書に記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号24のヌクレオチド配列と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
配列番号24のヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含む、プラスミド。
【請求項4】
組換えAAVを生成する方法であって、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを細胞に移入させることを含む、方法。
【請求項5】
パッケージングプラスミドおよび/またはヘルパーウイルスを前記細胞に移入させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞が、安定に組み込まれたAAV cap遺伝子を含む、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞が、安定に組み込まれたAAV rep遺伝子を含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記rAAVが、AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13およびAAV rh.74のカプシドタンパク質、またはその変異体の1つまたは複数を含む、請求項4~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載のポリヌクレオチドを含む、単離された細胞。
【請求項10】
請求項3に記載のプラスミドを含む、単離された細胞。
【請求項11】
前記細胞が、昆虫細胞、カイコ細胞、蚊細胞、細菌細胞または哺乳動物細胞である、請求項9または10に記載の単離された細胞。
【請求項12】
前記細胞が、S2細胞、Kc細胞、Bme21細胞、C6/36細胞、293細胞、COS細胞、HeLa細胞またはKB細胞である、請求項9または10に記載の単離された細胞。
【請求項13】
配列番号19の配列と同一であるヌクレオチド配列を含む、rAAV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2019年2月26日に出願された米国仮出願第62/810,917号、2019年4月15日に出願された米国仮出願第62/834,012号、2019年6月7日に出願された米国仮出願第62/858,644号、2019年8月1日に出願された米国仮出願第62/881,901号、2019年10月2日に出願された米国仮出願第62/909,564号、および2019年10月4日に出願された米国仮出願第62/910,779号に対する優先権を主張し、これらはすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
この出願は、本開示の別個の部分として、参照によりそれらの全体が組み込まれ、以下のように特定されるコンピュータ可読形態での配列表を含む。ファイル名:54016_Seqlisting.txt、サイズ:33,466バイト、作成日:2020年2月12日。
【0003】
β-サルコグリカンを発現するAAVベクターのような治療ベクター、ならびに筋ジストロフィーに罹患している対象における線維症を軽減し、予防するためにこれらのベクターを使用する方法が本明細書に記載される。
【背景技術】
【0004】
肢帯型筋ジストロフィー(LGMD)2E型(LGMD2E)は、β-サルコグリカン(SGCB)をコードする遺伝子中の変異から生じる常染色体劣性障害であり、機能性タンパク質の喪失を引き起こす。LGMD2Eは、米国におけるLGMDの比較的一般的かつ重篤な形態を表し、全世界で1/20万~1/35万の発生率が報告されている。(2)β-サルコグリカンが存在しないと、慢性的な筋線維の喪失、炎症、脂肪置換および線維症(これらはすべて筋肉の強度および機能の悪化を引き起こす)を伴う進行性ジストロフィーを引き起こす。(3、4)複合体として、35~50kDのサイズの範囲内であるサルコグリカン(α-、β、γ-、δ-)は、(5)すべて、筋活動中の機械的応力からの保護を提供する筋鞘に安定性をもたらす膜貫通タンパク質である。(3)LGMD2Eにおける3-サルコグリカンの喪失は、通常、筋線維の喪失に至る筋膜の脆性に寄与する様々な程度の他のサルコグリカンタンパク質の付随する喪失を引き起こす。1 LGMD2Eの臨床的表現型の範囲は様々であるが、診断は典型的には10歳までに行われ、10代半ばから後半までに歩行の喪失が起こる。患者は、血清クレアチンキナーゼ(CK)の上昇、近位筋力低下、床から生じる困難さ、および進行性の歩行喪失を示す。症例の50%において心臓障害が発生する。
【0005】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、複製欠損パルボウイルスであり、その一本鎖DNAゲノムは、2つの145ヌクレオチド逆位末端反復(ITR)を含む約4.7kb長である。AAVの複数の血清型が存在する。AAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列は既知である。例えば、AAV-1の完全ゲノムは、GenBank受理番号NC_002077に提示されており、AAV-2の完全ゲノムは、GenBank受理番号NC_001401およびSrivastava et al.,J.Virol.,45:555-564{1983)に提示されており、AAV-3の完全ゲノムは、GenBank受理番号NC_1829に提示されており、AAV-4の完全ゲノムは、GenBank受理番号NC_001829に提示されており、AAV-5ゲノムは、GenBank受理番号AF085716に提示されており、AAV-6の完全ゲノムは、GenBank受理番号NC_00 1862に提示されており、AAV-7およびAAV-8ゲノムの少なくとも一部は、それぞれGenBank受理番号AX753246およびAX753249に提示されており、AAV-9ゲノムは、Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)に提示されており、AAV-10ゲノムは、Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)に提示されており、AAV-11ゲノムは、Virology,330(2):375-383(2004)に提示されている。AAV rh.74ゲノムの配列は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,434,928号に提供されている。ウイルスDNA複製(rep)、カプシド形成/パッケージング、および宿主細胞染色体組込みを指示するCis作用配列は、AAV ITR内に含有される。3つのAAVプロモーター(それらの相対マップ位置に対してp5、p19、およびp40と名付けられる)は、repおよびcap遺伝子をコードする2つのAAV内部オープンリーディングフレームの発現を推進する。単一のAAVイントロンの差異的スプライシング(ヌクレオチド2107および2227における)と相まって、2つのrepプロモーター(p5およびp19)により、rep遺伝子から4つのrepタンパク質(rep78、rep68、rep52、およびrep40)が産生される。repタンパク質は、最終的にウイルスゲノムの複製に関与する複数の酵素特性を有する。cap遺伝子は、p40プロモーターから発現され、3つのカプシドタンパク質VP1、VP2、およびVP3をコードする。選択的スプライシングおよび非コンセンサス翻訳開始部位は、3つの関連カプシドタンパク質の産生に関与する。単一コンセンサスポリアデニル化部位は、AAVゲノムのマップ位置95に位置する。AAVの生活環および遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)においてレビューされる。
【0006】
AAVは、例えば、遺伝子療法において、外来DNAを細胞に送達するためのベクターとして魅力的にする固有の特徴を有する。培養中の細胞のAAV感染は、非細胞変性であり、ヒトおよび他の動物の自然感染は、サイレントかつ無症候性である。さらに、AAVは、多くの哺乳動物細胞を感染させ、インビボで多くの異なる組織を標的化する可能性を可能にする。さらに、AAVは、緩徐に分裂する細胞および非分裂細胞を形質導入し、転写的に活性な核エピソーム(染色体外要素)として本質的にそれらの細胞の寿命にわたって存続し得る。AAVプロウイルスゲノムは、組換えゲノムの構築を実現可能にするプラスミド内のクローニングされたDNAとして挿入される。さらに、AAV複製およびゲノムカプシド形成を指示するシグナルが、AAVゲノムのITR内に含有されるため、内部約4.3kbのゲノム(複製および構造カプシドタンパク質をコードする、rep-cap)の一部またはすべてが、外来DNAで置換されてもよい。AAVベクターを生成するために、repおよびcapタンパク質は、トランスで提供され得る。AAVの別の重要な特徴は、それが極めて安定した頑健なウイルスであることである。これは、アデノウイルスを不活性化するために使用される条件(56℃~65℃で数時間)に容易に耐え、AAVの低温保存の重要性を低くする。AAVは、凍結乾燥され得る。最後に、AAV感染細胞は、重複感染に耐性を示さない。
【0007】
複数の研究により、筋肉における長期(1.5年を超える)の組換えAAV媒介タンパク質発現が実証されている。Clark et al.,Hum Gene Ther,8:659-669(1997)、Kessler et al.,Proc Nat.Acad Sci USA,93:14082-14087(1996)、およびXiao et al.,J Virol,70:8098-8108(1996)を参照されたい。Chao et al.,Mol Ther,2:619-623(2000)およびChao et al.,Mol Ther,4:217-222(2001)もまた参照されたい。さらに、筋肉は高度に血管化されているため、Herzog et al.,Proc Natl Acad Sci USA,94:5804-5809(1997)、およびMurphy et al.,Proc Natl Acad Sci
USA,94:13921-13926(1997)に記載されているように、組換えAAV形質導入により、筋肉内注射後の体循環において導入遺伝子産物が出現する。さらに、Lewis et al.,J Virol,76:8769-8775(2002)は、骨格筋線維が、正しい抗体グリコシル化、折り畳み、および分泌に必要な細胞因子を有することを実証し、筋肉が分泌タンパク質治療薬を安定して発現することができることを示す。
LGMD2Eのための療法の新たに出現した形態は、罹患した筋肉への野生型タンパク質を回復するためのウイルス媒介遺伝子送達であり、筋機能の回復をもたらす。患者のサブセットが心筋症を発症する可能性があることを考慮すると(8、9、10、13)、これらの患者の長期ケアにおいて考慮する必要がある。以前の報告では、Sgcbヌルマウスは十分に特徴付けられていた。Araishi et al.3は、サルコスパンだけでなくサルコグリカンすべての喪失を伴い、メロシン、ジストログリカン、およびジストロフィンを少なくともわずかに保存し、LGMD2Eにおいて見られる臨床像を再現する、β-サルコグリカン欠損マウスを開発した。この動物モデルにおける組織学的変化は、顕性の骨格筋線維症を含む、臨床的対応のプロトタイプでもあった。(14)Dressman et al.(25)は、rAAV2.CMV.SGCBを用いて腹横筋を注射した。げtut発現は21ヶ月間持続し、筋線維は再発性壊死から保護された。導入遺伝子発現を増強するための自己相補的AAVの使用、16、骨格筋をより良好に標的化する筋特異的プロモーター(20、26)、およびヒトβ-サルコグリカン遺伝子(hSGCB)の最適化も記載されている。
LGMDおよび他の筋ジストロフィーに罹患している患者における機能改善には、遺伝子回復および線維症の軽減の両方が必要である。LGMDおよび他の筋ジストロフィーのより効果的な治療のための遺伝子回復法で修復され得る線維症を軽減する方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第9,434,928号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Srivastava et al.,J.Virol.,45:555-564{1983)
【非特許文献2】Gao et al.,J.Virol.,78:6381-6388(2004)
【非特許文献3】Mol.Ther.,13(1):67-76(2006)
【非特許文献4】Virology,330(2):375-383(2004)
【非特許文献5】Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97-129(1992)
【非特許文献6】Clark et al.,Hum Gene Ther,8:659-669(1997)
【非特許文献7】Kessler et al.,Proc Nat.Acad Sci USA,93:14082-14087(1996)
【非特許文献8】Xiao et al.,J Virol,70:8098-8108(1996)
【非特許文献9】Chao et al.,Mol Ther,2:619-623(2000)
【非特許文献10】Chao et al.,Mol Ther,4:217-222(2001)
【非特許文献11】Herzog et al.,Proc Natl Acad Sci USA,94:5804-5809(1997)
【非特許文献12】Murphy et al.,Proc Natl Acad Sci USA,94:13921-13926(1997)
【非特許文献13】Lewis et al.,J Virol,76:8769-8775(2002)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
β-サルコグリカン遺伝子を発現する遺伝子用治療ベクター(例えば、AAV)、ならびにβ-サルコグリカンを筋肉に送達し、線維症を低減および/もしくは予防する方法、および/または筋力を増加させる方法、および/または筋ジストロフィーを罹患している哺乳動物対象を治療する方法が本明細書に記載される。
【0011】
一態様では、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを、必要とする対象に投与するステップを含み、rAAVが、全身投与経路を使用して、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kgの用量で投与され、対象における血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルが、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に減少する、方法が本明細書に記載される。
【0012】
別の態様では、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含み、対象の細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルが、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルと比較して、rAAVの投与後に増加し、対象の筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数が、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン陽性線維の数と比較して、rAAVの投与後に増加するか、または運動機能が、rAAVの投与前のその対象の運動機能と比較して、その対象において改善されており、運動機能が、100メートルの時間歩行試験によって決定される、方法が提供される。
【0013】
別の態様では、本開示は、肢帯型筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgもしくは約2.0×1014vg/kg、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて約1.85×1013vg/kgもしくは約7.41×1013vg/kgの用量で、およそ1~2時間かけてrAAV静脈内注入を対象に投与することを含み、rAAVが、配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、方法を提供する。別の態様では、本開示は、対象の細胞においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現する方法であって、配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を対象に投与することを含む、方法を記載する。一態様では、本開示は、対象の筋肉組織においてベータ-サルコグリカン陽性線維を増加させ、および/またはCKレベルを減少させる方法であって、配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
一態様では、アルファ-サルコグリカンの発現の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を有するscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を含むrAAVを対象に投与することを含む、方法が本明細書に記載される。別の態様では、アルファ-サルコグリカンの細胞膜への局在化の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を対象に投与することを含む、方法が本明細書に記載される。別の態様では、対象の筋肉組織におけるサルコグリカン発現を増加させるか、または筋肉機能を改善する方法であって、配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むrAAVを対象に投与することを含む、方法が提供される。別の態様では、本開示は、対象の筋肉組織におけるサルコグリカン発現を増加させる方法であって、第1のサルコグリカンをコードするヌクレオチド配列を含む構築物を対象に投与することと、第1のサルコグリカンを発現する細胞の細胞膜において少なくとも第2のサルコグリカンの発現の増加を検出することと、を含む、方法を提供する。
【0015】
別の態様では、組成物であって、rAAV scAAVrh74.MHCK7.hSGCBベクターと、緩衝剤と、イオン強度剤と、界面活性剤と、を含む組成物が記載される。別の態様では、医薬組成物であって、組換えAAV(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを含み、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBが、配列番号19と少なくとも90%、95%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、医薬組成物が本明細書に記載される。
【0016】
別の態様では、組換えAAV scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを生成する方法であって、プラスミドを細胞に移入することを含み、プラスミドが、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、方法が提供される。特に、プラスミドは、配列番号24のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、プラスミドは、配列番号19のヌクレオチド配列を含む。
【0017】
別の態様では、β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列を含む組換えAAVベクターが本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、配列番号1に記載のヌクレオチド配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より典型的には90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一の配列を含み、β-サルコグリカン活性を保持するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列は、配列番号1に記載のヌクレオチド配列からなる。
【0018】
別の態様では、本明細書に記載の組換えAAVベクターは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%、より典型的には少なくとも90%、91%、92%、93%、または94%、さらにより典型的には少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性である、β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列を含み、そのタンパク質は、β-サルコグリカン活性を保持する。
【0019】
別の態様では、ストリンジェントな条件下で配列番号1の核酸配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む機能性β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列、またはその補体を含む、組換えAAVベクターが本明細書に記載される。
【0020】
「ストリンジェントな」という用語は、ストリンジェントとして当該技術分野において一般に理解される条件を指すために使用される。ハイブリダイゼーションストリンジェシーは、主に、温度、イオン強度、およびホルムアミドなどの変性剤の濃度によって決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄のためのストリンジェントな条件の例は、0.015Mの塩化ナトリウム、65~68℃の0.0015Mのクエン酸ナトリウムまたは0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および42℃の50%ホルムアミドである。Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,(Cold Spring Harbor,N.Y.1989)を参照されたい。よりストリンジェントな条件(より高い温度、より低いイオン強度、より高いホルムアミド、または他の変性剤など)も使用できるが、ハイブリダイゼーションの速度が影響を受ける。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが関係する場合、追加のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の例には、37℃(14塩基オリゴの場合)、48℃(17塩基オリゴの場合)、55℃(20塩基オリゴの場合)、および60℃(23塩基オリゴの場合)での6×SSC、0.05%ピロリン酸ナトリウムでの洗浄が含まれる。
【0021】
分子量、濃度、または投薬量等の物理的特性について本明細書で範囲が使用される場合、範囲およびその中の特定の実施形態の全ての組み合わせおよび部分的な組み合わせが含まれることが意図される。数値または数値範囲を指す場合の「約」という用語は、参照される数値または数値範囲が実験的変動内(または統計的実験誤差内)の近似値であることを意味し、したがって、数値または数値範囲は、例えば、記載された数値または数値範囲の1%~15%の間で変動し得る。
【0022】
非特異的および/またはバックグラウンドハイブリダイゼーションを低減する目的で、ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液に他の薬剤を含めることができる。例としては、0.1%ウシ血清アルブミン、0.1%ポリビニル-ピロリドン、0.1%ピロリン酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO、(SDS)、フィコール、デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(または他の非相補的DNA)、および硫酸デキストランがあるが、他の適切な薬剤も使用できる。これらの添加物の濃度および種類は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更できる。ハイブリダイゼーション実験は通常、pH6.8~7.4で行われるが、典型的なイオン強度条件では、ハイブリダイゼーションの速度はpHにほとんど依存しない。Anderson et al.,Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach,Ch.4,IRL Press Limited(Oxford,England)を参照されたい。ハイブリダイゼーション条件は、これらの変数を考慮して、異なる配列類似性のDNAがハイブリッドを形成することを可能にするために、当業者によって調整され得る。
【0023】
別の態様では、本明細書に記載の組換えAAVベクターは、筋特異的制御要素に作動可能に連結され得る。例えば、筋特異的制御要素は、ヒト骨格アクチン遺伝子要素、心臓アクチン遺伝子要素、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、tMCK(短縮MCK)、ミオシン重鎖(MHC)、MHCK7(MHCおよびMCKのハイブリッドバージョン)、C5-12(合成プロモーター)、マウスクレアチンキナーゼエンハンサー要素、骨格速筋トロポニンC遺伝子要素、遅筋心臓トロポニンC遺伝子要素、遅筋トロポニンI遺伝子要素、低酸素誘発性核因子、ステロイド誘発性要素、またはグルココルチコイド応答要素(GRE)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、筋特異的プロモーターは、MHCK7(配列番号4)である。本明細書に記載の例示的なrAAVは、配列番号3のヌクレオチド配列を含むpAAV.MHCK7.hSCGBである。配列番号3のヌクレオチド配列内で、MCHK7プロモーターは、ヌクレオチド130~921に広がっており、SV40キメライントロン(配列番号20)は、ヌクレオチド931~1078に広がっており、β-サルコグリカン配列(配列番号1)は、ヌクレオチド1091~2047に広がっており、ポリA(配列番号21)は、ヌクレオチド2054~2106に広がっている。いくつかの実施形態では、rAAV pAAV.MHCK7.hSCGBは、配列番号19のヌクレオチド配列を含む。配列番号19のヌクレオチド配列内で、MCHK7プロモーターは、ヌクレオチド128~919に広がっており、SV40キメライントロンは、ヌクレオチド929~1076に広がっており、β-サルコグリカン配列は、ヌクレオチド1086~2042に広がっており、ポリAは、ヌクレオチド2049~2101に広がっている。
【0025】
いくつかの実施形態では、rAAV pAAV.MHCK7.hSCGBは、配列番号3または配列番号19に記載のヌクレオチド配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、または約89%、より典型的には、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であるヌクレオチド配列、または配列番号2と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、または約89%、より典型的には、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0026】
一実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、ベータ-および/またはアルファ-サルコグリカン活性を含むサルコグリカン活性を保持するタンパク質をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチド配列は、ベータ-サルコグリカン活性を保持するタンパク質をコードする。
【0027】
いくつかの実施形態では、筋特異的プロモーターは、tMCK(配列番号6)である。本明細書に記載の例示的なrAAVは、配列番号5のヌクレオチド配列を含むpAAV.tMCK.hSCGBである。配列番号5のヌクレオチド配列内で、tMCKプロモーターは、ヌクレオチド141~854に広がっており、SV40キメライントロンは、ヌクレオチド886~1018に広がっており、β-サルコグリカン配列は、ヌクレオチド1058~2014に広がっており、ポリAは、ヌクレオチド2021~2073に広がっている。いくつかの実施形態では、pAAV.tMCK.hSCGBをコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、配列番号5に記載のヌクレオチド配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、または約89%、より典型的には、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%、またはそれ以上同一の配列を含み、ポリヌクレオチド配列は、限定されないがベータ-および/またはアルファ-サルコグリカン活性を含むサルコグリカン活性を保持するタンパク質をコードする。
【0028】
AAVは、例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13およびAAVrh.74等の任意の血清型であり得る。偽型rAAVの産生は、例えばWO01/83692に開示されている。他のタイプのrAAV変異体、例えば、カプシド変異を有するrAAVも企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。
【0029】
本明細書に記載のrAAVベクターのいずれかを含む組成物もまた企図される。
【0030】
いくつかの実施形態では、本開示は、配列番号3または配列番号19に記載のヌクレオチド配列と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、または約89%、より典型的には、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であるヌクレオチド配列を含むか、または配列番号2と少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、または約89%、より典型的には、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%同一であるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、scAAVrh74.MHCK7.hSCGB rAAVベクターを含む組成物または医薬組成物を提供する。加えて、本開示は、配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むか、または配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、scAAVrh74.MHCK7.hSCGB rAAVベクターを含む組成物または医薬組成物を提供する提供する。
【0031】
筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含み、rAAVが、全身投与経路を使用して、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で投与される、方法が提供される。
【0032】
筋ジストロフィーを治療するための組成物であって、組成物が、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCを含み、組成物が、全身投与のために製剤化される、組成物も提供される。
【0033】
加えて、筋ジストロフィーを治療するための医薬の調製のための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCの使用であって、医薬が、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量でscAAVrh74.MHCK7.hSGCを含み、医薬が、全身投与のために製剤化される、使用が提供される。
【0034】
提供される方法、組成物および使用のうちのいずれかにおいて、対象の細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルが、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルと比較して、rAAVの投与後に増加し、対象における血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルが、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に減少し、および/または対象の筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数が、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン陽性線維の数と比較して、rAAVの投与後に増加する。
【0035】
別の実施形態では、提供される方法、組成物および使用のうちのいずれかにおいて、運動機能が、rAAVの投与前のその対象の運動機能と比較して、その対象において改善されており、運動機能が、100メートルの時間歩行試験によって決定される。例えば、運動機能は、遺伝子移入後1ヶ月または30日で少なくとも5%、遺伝子移入後2ヶ月または60日で少なくとも10%、または遺伝子移入後3ヶ月または90日で少なくとも15%改善する。いくつかの実施形態では、運動機能は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、または50%改善する。
【0036】
例えば、提供される方法、組成物および使用のうちのいずれかにおいて、全身投与経路は、静脈内経路である。例えば、rAAVは、静脈内経路を使用して投与され、投与されるrAAVの用量は、定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgまたは約7.41×1013vg/kgであるか、または投与されるrAAVの用量は、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5×1013vg/kgまたは約2×1014vg/kgである。
【0037】
いくつかの実施形態では、静脈内経路を使用して投与されるrAAVの用量、用量は、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約約1.0×1013vg/kg~約5×1014、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて約1.0×1013vg/kg~約1.0×1014vg/kgである。
【0038】
加えて、投与されるrAAVの用量は、約1.5×1013vg~約2×1016vg、または1.5×1013vg~1×1016vg、または約1.5×1013vg~約2×1015vg、または約1.5×1013vg~約1×1015vgである。加えて、方法、提供される方法、組成物および使用のうちのいずれかにおいて、rAAVの用量は、約10mL/kgの濃度で投与される。提供される方法、提供される方法、組成物および使用のうちのいずれかにおいて、筋ジストロフィーは、肢帯型筋ジストロフィーである。
【0039】
加えて、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含み、rAAVが、全身投与経路を使用して、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で投与され、対象の細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルが、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルと比較して、rAAVの投与後に増加し、対象における血清CKレベルが、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に減少するか、または対象の筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数が、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン陽性線維の数と比較して、rAAVの投与後に増加する、方法が提供される。例えば、提供される方法のうちのいずれかにおいて、全身投与経路は、静脈内経路であり、投与されるrAAVの用量は、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgである。別の実施形態では、投与されるrAAVの用量は、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約2.0×1014vg/kgである。別の実施形態では、投与されるrAAVの用量は、定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約7.41x1013vg/kgである。別の実施形態では、投与されるrAAVの用量は、定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgである。加えて、投与されるrAAVの用量は、約1.5×1013vg~約2×1016vg、または1.5×1013vg~1×1016vg、または約1.5×1013vg~約2×1015vg、または約1.5×1013vg~約1×1015vgである。加えて、方法のうちのいずれかにおいて、rAAVの用量は、約10mL/kgの濃度で投与される。提供される方法のうちのいずれかにおいて、筋ジストロフィーは、肢帯型筋ジストロフィーである。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示は、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含み、運動機能が、rAAVの投与前のその対象の運動機能と比較して、その対象において明らかに改善されており、運動機能が、100メートルの時間歩行試験によって決定される、方法を含む。いくつかの態様では、運動機能は、遺伝子移入後1ヶ月または30日で少なくとも5%、遺伝子移入後2ヶ月または60日で少なくとも10%、または遺伝子移入後3ヶ月または90日で少なくとも15%改善する。いくつかの態様では、運動機能は、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約40%、約45%、または約50%改善する。
【0041】
アルファ-サルコグリカンのレベルの増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を対象に投与することを含む、方法が提供される。加えて、必要な対象においてアルファ-サルコグリカンのレベルを増加させるための組成物であって、組成物が、配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を含む、組成物が提供される。また、アルファ-サルコグリカンのレベルの増加を必要とする対象においてそれを行うための医薬の調製のための配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物の使用も提供される。いくつかの態様では、アルファ-サルコグリカンは、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBによってコードされるベータ-サルコグリカンを発現する細胞の膜に共局在化する。
【0042】
いくつかの実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、イントロン配列を含む。一実施形態では、イントロン配列は、配列番号20のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、ポリA配列を含む。一実施形態では、ポリA配列は、配列番号21のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、5’逆位末端反復(ITR)配列を含む。一実施形態では、5’ITR配列は、配列番号22のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、3’逆位末端反復(ITR)配列を含む。一実施形態では、3’ITR配列は、配列番号23のヌクレオチド配列を含む。
【0043】
対象の筋肉組織におけるサルコグリカン発現を増加させる方法であって、第1のサルコグリカンをコードするヌクレオチド配列を含む構築物を対象に投与することと、上述の第1のサルコグリカンを発現する細胞の細胞膜において少なくとも第2のサルコグリカンの発現の増加を検出することと、を含む、方法も提供される。いくつかの態様では、第1のサルコグリカンは、β-サルコグリカン(SGCB)であり、上述の第2のサルコグリカンは、α-サルコグリカン(SGCA)、γ-サルコグリカン(SGCG)、またはδ-サルコグリカン(SGCD)である。
【0044】
提供される筋ジストロフィーを治療する方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、対象は、4~15歳であり、両方の対立遺伝子においてベータ-サルコグリカン(SGCB)変異が確認されており、AAVrh74抗体に対して陰性であり、および/または100メートル歩行試験が40%を超えるか、または正常であった。提供される筋ジストロフィーを治療する方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、対象は、小児対象である。いくつかの実施形態では、対象は、小児対象であり、例えば、1~10歳の範囲の対象である。いくつかの実施形態では、対象は、4~15歳である。対象は、一実施形態では、青年期対象であり、例えば、10~19歳の範囲の対象である。加えて、対象は、一実施形態では、若年成人対象、例えば、10代後半または20代前半の範囲の対象であり、例えば、対象は、15~29歳の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、対象は、中年の成人または高齢の対象であり、その結果、中年の成人は、25~55歳の範囲であってもよく、高齢の対象は、50歳を超える範囲であってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、rAAVは、注射、注入、または移植によって投与される。例えば、rAAVは、およそ1~2時間にわたる注入によって投与される。加えて、rAAVは、末梢四肢静脈を介した静脈内経路によって投与される。
【0046】
組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含む、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法において、rAAVは、全身投与経路を使用して、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で投与され、rAAVは、配列番号1のヒトβ-サルコグリカンヌクレオチド配列を含む。加えて、rAAVは、配列番号4のMHCK7プロモーター配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVは、血清型AAVrh.74のrAAVである。加えて、rAAVは、配列番号3または配列番号19のscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む。
【0047】
別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、イントロン配列を含む。一実施形態では、イントロン配列は、配列番号20のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、ポリA配列を含む。一実施形態では、ポリA配列は、配列番号21のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、5’逆位末端反復(ITR)配列を含む。一実施形態では、5’ITR配列は、配列番号22のヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物は、3’逆位末端反復(ITR)配列を含む。一実施形態では、3’ITR配列は、配列番号23のヌクレオチド配列を含む。
【0048】
例示的な実施形態では、筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法は、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含み、rAAVは、全身投与経路を使用して、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で投与され、対象は、肢帯型筋ジストロフィーに罹患しており、rAAVは、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgもしくは約2.0×1014vg/kg、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgもしくは7.41×1013vg/kgの用量で、およそ1~2時間かけて静脈内注入によって投与され、rAAVは、配列番号3または配列番号19のscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む。
【0049】
加えて、本開示は、肢帯型筋ジストロフィーを治療するための組成物であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBの用量を含み、rAAVが、配列番号3または配列番号19のscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含み、組成物が、およそ1~2時間かけた静脈内注入によって、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgもしくは約2.0×1014vg/kg、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgもしくは7.41×1013vg/kgの用量を送達するように製剤化される、組成物を提供する。
【0050】
本開示はまた、肢帯型筋ジストロフィーを治療するための医薬の調製のための組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBの用量の使用であって、rAAVの用量定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgもしくは約2.0×1014vg/kg、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgもしくは7.41×1013vg/kg、医薬が、およそ1~2時間かけた静脈内注入によって用量を送達するように製剤化される、使用を提供する。
【0051】
本開示はさらに、対象の運動機能を改善する方法であって、配列番号1、3、5、または19と少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む構築物を対象に投与することを含む、方法を提供する。加えて、対象の運動機能を改善するための組成物であって、組成物が、配列番号1、3、5、または19と少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む構築物を含む、組成物が提供される。対象の運動機能を改善するための医薬の調製のための配列番号1、3、5、または19と少なくとも90%の同一性、少なくとも95%の同一性、少なくとも99%の同一性、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む構築物の使用も提供される。
【0052】
提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、対象は、サルコグリカンまたは筋ジストロフィーをコードする遺伝子中の遺伝子変異を有している。いくつかの態様では、サルコグリカンは、β-サルコグリカン(SGCB)、α-サルコグリカン(SGCA)、γ-サルコグリカン(SGCG)、またはδ-サルコグリカン(SGCD)である。いくつかの態様では、サルコグリカンは、β-サルコグリカンまたはα-サルコグリカンである。
【0053】
提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、対象の細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルは、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルと比較して、rAAVの投与後に増加する。
【0054】
加えて、提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子の発現は、rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットまたは免疫組織化学でベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される。
【0055】
提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、ベータ-サルコグリカンタンパク質のレベルは、rAAV投与後に少なくとも25%、または少なくとも26%、または少なくとも27%、または少なくとも28%、または少なくとも29%、または少なくとも30%、または少なくとも31%、または少なくとも32%、または少なくとも33%、または少なくとも34%、または少なくともまたは35%、または少なくとも36%、または少なくとも37%、または少なくとも38%、または少なくとも39%、または少なくとも40%、または少なくとも41%、または少なくとも42%、または少なくとも43%、または少なくとも44%、または少なくとも45%または少なくとも46%、または少なくとも47%、または少なくとも48%、または少なくとも49%、または少なくとも50%、または少なくとも51%、または少なくとも52%、または少なくとも53%、または少なくとも54%、または少なくとも55%または少なくとも56%、または少なくとも57%、または少なくとも58%、または少なくとも59%、または少なくとも60%、または少なくとも63%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%、または少なくとも98%増加する。例えば、ベータ-サルコグリカンタンパク質のレベルは、rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットでベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される場合、少なくとも33%増加し、またはベータ-サルコグリカンタンパク質のレベルは、rAAV投与の前および後の筋生検における免疫組織化学でベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される場合、少なくとも38%または少なくとも39%増加する。
【0056】
本明細書で提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、対象における血清CKレベルが、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後に減少する。例えば、対象における血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日~90日、60日、または90日に少なくとも50%、または少なくとも51%、または少なくとも52%、または少なくとも53%、または少なくとも54%、または少なくとも55%または少なくとも56%、または少なくとも57%、または少なくとも58%、または少なくとも59%、または少なくとも60%、または少なくとも63%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも81%、または少なくとも82%、または少なくとも83%、または少なくとも84%、または少なくとも85%、または少なくとも86%または少なくとも87%、または少なくとも88%、または少なくとも89%、または少なくとも90%または少なくとも95%、または少なくとも98%減少する。
【0057】
本明細書で提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、対象の筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数は、rAAVの投与前のベータ-サルコグリカン陽性線維の数と比較して、rAAVの投与後に増加する。例えば、ベータ-サルコグリカン陽性線維の数は、rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットまたは免疫組織化学でベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される。例えば、対象の筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数は、rAAV投与後に少なくとも25%、または少なくとも26%、または少なくとも27%、または少なくとも28%、または少なくとも29%、または少なくとも30%、または少なくとも31%、または少なくとも32%、または少なくとも33%、または少なくとも34%、または少なくとも35%または少なくとも36%、または少なくとも37%、または少なくとも38%、または少なくとも39%、または少なくとも40%、または少なくとも41%、または少なくとも42%、または少なくとも43%、または少なくとも44%、または少なくとも45%または少なくとも46%、または少なくとも47%、または少なくとも48%、または少なくとも49%、または少なくとも50%、または少なくとも51%、または少なくとも52%、または少なくとも53%、または少なくとも54%、または少なくとも55%または少なくとも56%、または少なくとも57%、または少なくとも58%、または少なくとも59%、または少なくとも60%、または少なくとも63%、または少なくとも65%、または少なくとも70%、または少なくとも75%、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%または少なくとも95%、または少なくとも98%増加する。
【0058】
本明細書で提供される方法、組成物および使用のうちのいずれかにおいて、対象におけるアルファ-サルコグリカンのレベルは、rAAVの投与前のアルファ-サルコグリカンのレベルと比較して、rAAVの投与後に増加する。アルファ-サルコグリカンのレベルは、rAAV投与の前および後の筋生検における免疫組織化学またはウエスタンブロットによってアルファ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される。
【0059】
別の実施形態は、細胞においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現する方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0060】
細胞においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現するための組成物であって、組成物が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物も提供される。
【0061】
本開示はまた、細胞においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現するための医薬の調製のためのscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列の使用であって、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、使用も提供する。
【0062】
細胞においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現するための提供される方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子の発現は、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物の投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットまたは免疫組織化学でベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される。例えば、細胞は、1より多いAAVウイルスコピー数を有する。加えて、ベータ-サルコグリカン遺伝子は、核あたり1より多いrAAVベクターゲノムコピーを検出することによって、対象において測定される。
【0063】
血清CKレベルの減少を必要とする対象においてそれを行うための組成物であって、組成物が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物も提供される。
【0064】
本開示はまた、血清CKレベルの減少を必要とする対象においてそれを行うための医薬の調製のためのscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列の使用であって、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、使用も提供する。
【0065】
これらの方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、対象における血清CKレベルは、rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、rAAVの投与後60日に少なくとも82%減少する。
【0066】
対象の筋肉組織においてベータ-サルコグリカン陽性線維を増加させる方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0067】
対象の筋肉組織においてベータ-サルコグリカン陽性線維を増加させるための組成物であって、組成物が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物も提供される。
【0068】
本開示はまた、対象の筋肉組織においてベータ-サルコグリカン陽性線維を増加させるための医薬の調製のためのscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列の使用であって、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、使用も提供する。
【0069】
これらの方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、ベータ-サルコグリカン陽性線維の数は、rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットまたは免疫組織化学でベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される。加えて、方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、ベータ-サルコグリカン陽性繊維の数は、核あたり1より多いrAAVベクターゲノムコピーを検出することによって測定される。
【0070】
別の実施形態は、アルファ-サルコグリカンの発現の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0071】
アルファ-サルコグリカンの発現の増加を必要とする対象においてそれを行うための組成物であって、組成物が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物も提供される。
【0072】
本開示はまた、対象においてアルファ-サルコグリカンの発現を増加させるための医薬の調製のためのscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列の使用であって、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、使用も提供する。
【0073】
アルファ-サルコグリカンの細胞膜への局在化の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を対象に投与することを含む、方法も提供される。
【0074】
アルファ-サルコグリカンの細胞膜への局在化の増加を必要とする対象においてそれを行うための組成物であって、組成物が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物も提供される。
【0075】
本開示はまた、アルファ-サルコグリカンの細胞膜への局在化の増加を必要とする対象においてそれを行うための医薬の調製のためのscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列の使用であって、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列が、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、使用も提供する。
【0076】
これらの方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、アルファ-サルコグリカンのレベルは、rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットまたは免疫組織化学でアルファ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される。加えて、提供される方法、使用および組成物のいずれかにおいて、アルファ-サルコグリカンは、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBによってコードされるベータ-サルコグリカンを発現する細胞の膜に共局在化する。
【0077】
別の実施形態は、サルコグリカン発現の増加を必要とする対象の筋肉組織においてそれを行う方法であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むか、または配列番号1、配列番号3、配列番号5または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を対象に投与することを含む、方法を提供する。
【0078】
サルコグリカン発現の増加を必要とする対象の筋肉組織においてそれを行うための組成物であって、組成物が、配列番号1、配列番号3、配列番号5または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号1、配列番号3、配列番号5または配列番号19のヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を含む、組成物も提供される。
【0079】
本開示はまた、サルコグリカン発現の増加を必要とする対象の筋肉組織においてそれを行うための医薬の調製のためのscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列の使用であって、scAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号3、配列番号5または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるか、または配列番号1、配列番号3、配列番号5または配列番号19のヌクレオチド配列を含む、使用も提供する。
【0080】
筋肉組織においてサルコグリカン発現を増加させるためのこれらの方法、使用および組成物のうちのいずれかにおいて、対象は、サルコグリカンまたは筋ジストロフィーをコードする遺伝子中の遺伝子変異を有している。例えば、これらの方法、使用または組成物のうちのいずれかにおいて、サルコグリカンは、β-サルコグリカン(SGCB)、α-サルコグリカン(SGCA)、γ-サルコグリカン(SGCG)、またはδ-サルコグリカン(SGCD)である。
【0081】
組換えAAVベクター粒子を産生する方法であって、本明細書に記載のプラスミドでトランスフェクトされる細胞を培養することと、トランスフェクトされた細胞の上清から組換えAAV粒子を回収することと、を含む、方法も提供される。本明細書に記載の組換えAAVベクターのいずれかを含むウイルス粒子もまた企図される。一実施形態では、AAVベクタープラスミドを宿主細胞に移すことを含む、rAAVを生成する方法。別の実施形態では、プラスミドは、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む。別の態様では、本開示は、配列番号24のヌクレオチド配列を含むAAVベクタープラスミドを含む細胞を提供する。本明細書に記載の細胞は、昆虫細胞、例えば、Drosophila細胞(例えば、S2細胞またはKc細胞)、カイコ細胞(例えば、Bme21細胞)、または蚊細胞(例えば、C6/36細胞)、または哺乳動物細胞(好ましくはヒト細胞、例えば、ヒト初代細胞または確立された細胞株)を含む。一実施形態では、哺乳動物細胞は、293細胞、COS細胞、HeLa細胞、またはKB細胞を含む。
【0082】
別の実施形態では、プラスミドは、配列番号1、3、5、または19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、ベクタープラスミドは、配列番号1、3、5、または19のうちのいずれか1つのヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、AAVベクタープラスミドは、宿主細胞において安定して発現される。AAVベクタープラスミドを安定して保有する宿主細胞を使用して、rAAVを生成することができる。一実施形態では、AAVベクタープラスミドは、pAAV.MHCK7.hSGCB.KANプラスミドである。
【0083】
本明細書で提供される組換えAAVベクター粒子を産生する方法は、パッケージングプラスミドおよび/またはヘルパーウイルスを宿主細胞に移入するステップをさらに含み得る。例えば、この方法は、パッケージング細胞が、安定に組み込まれたAAVcap遺伝子を含むステップ、および/またはパッケージング細胞が、安定に組み込まれたAAVrep遺伝子を含むステップをさらに含む。本発明はまた、細胞であって、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むプラスミド、または配列番号24のヌクレオチド配列を含むプラスミドを含む、細胞を提供する。配列番号1、3、5、または19のヌクレオチド配列を含む細胞も提供される。
【0084】
それを必要とする哺乳動物の対象における線維症を軽減する方法も提供される。この点について、本方法は、治療有効量の本明細書に記載のAAVベクター(または本明細書に記載のAAVベクターを含む組成物)を、哺乳動物の対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、哺乳動物の対象は、筋ジストロフィーに罹患している。いくつかの実施形態では、本明細書に記載のAAVベクター(または本明細書に記載のAAVベクターを含む組成物)の投与は、対象の骨格筋または心筋における線維症を軽減する。
【0085】
本明細書で使用される「筋ジストロフィー」という用語は、強度および筋肉量が徐々に低下する障害を指す。筋ジストロフィー疾患の非限定的な例としては、ベッカー型筋ジストロフィー、脛骨筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、サルコグリカン異常症、部分的LAMA2欠損による先天性筋ジストロフィーのような先天性筋ジストロフィー、メロシン欠損型先天性筋ジストロフィー、1D型先天性筋ジストロフィー、福山型先天性筋ジストロフィー、肢帯型1A型筋ジストロフィー、肢帯型2A型筋ジストロフィー、肢帯型2B型筋ジストロフィー、肢帯型2C型筋ジストロフィー、肢帯型2D型筋ジストロフィー、肢帯型2E型筋ジストロフィー、肢帯型2F型筋ジストロフィー、肢帯型2G型筋ジストロフィー、肢帯型2H型筋ジストロフィー、肢帯型2I型筋ジストロフィー、肢帯型2I型筋ジストロフィー、肢帯型2J型筋ジストロフィー、肢帯型2K型筋ジストロフィー、肢帯型IC型筋ジストロフィー、単純型表皮水疱症を伴う強直性脊椎型筋ジストロフィー、眼咽頭型筋ジストロフィー、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィー、およびウルリッヒ型スクレロアトニック筋ジストロフィーを挙げることができる。いくつかの実施形態では、対象は、肢帯型筋ジストロフィーに罹患している。いくつかの実施形態では、対象は、肢帯型筋ジストロフィー2E型(LGMD2E)に罹患している。
【0086】
本明細書で使用される「線維症」という用語は、細胞外マトリックス(ECM)成分の過剰または未制御の沈着ならびに骨格筋、心筋、肝臓、肺、腎臓、および膵臓を含む損傷後の組織における異常な修復プロセスを指す。沈着するECM成分には、コラーゲン(例えばコラーゲン1、コラーゲン2、またはコラーゲン3)およびフィブロネクチンが含まれる。
【0087】
別の態様では、治療有効量の本明細書に記載のAAVベクター(または本明細書に記載のAAVベクターを含む組成物)を哺乳動物の対象に投与することを含む、哺乳動物の対象における筋力および/または筋肉量を増加する方法が本明細書に記載される。一実施形態では、対象はヒトである。
【0088】
本発明の方法のいずれかにおいて、対象は、肢帯型筋ジストロフィーまたは任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィーのような筋ジストロフィーに罹患している可能性がある。
【0089】
治療有効量の本明細書に記載のAAVベクター(または本明細書に記載のAAVベクターを含む組成物)を哺乳動物の対象に投与することを含む、哺乳動物の対象における筋ジストロフィーを治療する方法も提供される。いくつかの実施形態では、筋ジストロフィーは、肢帯型筋ジストロフィーである。
【0090】
本発明の方法のうちのいずれかにおいて、rAAVは、筋肉内注射または静脈内注射により投与される。加えて、本発明の方法のうちのいずれかにおいて、rAAVは、注射、注入、または移植による非経口投与など、全身投与される。
【0091】
本発明の組成物は、筋肉内注射または静脈内注射用に製剤化される。加えて、本発明の組成物は、注射、注入、または移植による非経口投与など、全身投与用に製剤化される。
【0092】
加えて、組成物のうちのいずれかは、筋ジストロフィー(例えば、肢帯型筋ジストロフィーまたは任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィー)に罹患している対象への投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、組成物は、配列番号9または配列番号8に記載のポリヌクレオチド配列を含む第2の組換えAAVベクターをさらに含み得る。
【0093】
本発明の使用のうちのいずれかにおいて、医薬は、筋肉内注射または静脈内注射用に製剤化される。加えて、本発明の使用のうちのいずれかにおいて、医薬は、注射、注入、または移植による非経口投与など、全身投与用に製剤化される。加えて、医薬のいずれかは、筋ジストロフィー(例えば、肢帯型筋ジストロフィーまたは任意の他のジストロフィン関連筋ジストロフィー)に罹患している対象への投与のために調製され得る。いくつかの実施形態では、医薬は、配列番号9または配列番号8に記載のポリヌクレオチド配列を含む第2の組換えAAVベクターをさらに含み得る。
【0094】
本発明はまた、AAVrh74由来のカプシドと、緩衝剤と、イオン強度剤と、界面活性剤と、を含むrAAVビリオンを含む、製剤または組成物を提供する。提供される製剤または組成物では、rAAVは、約1.0×1012vg/ml~約5.0x1014vg/mlの濃度、または約5.0x1012vg/ml~約1.0x1014vg/mlの濃度である。加えて、rAAVは、約2.0x1013vg/ml、4x1013vg/ml、または5x1013vg/mlの濃度である。提供される製剤または組成物では、rAAVは、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBウイルス粒子またはscAAVrh74.MHCK7.hSGCBベクターであってもよい。例えば、提供される製剤または組成物のいずれかでは、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBは、配列番号19のヌクレオチド配列を含む。
【0095】
提供される製剤または組成物では、緩衝剤は、トリス、トリシン、ビス-トリシン、HEPES、MOPS、TES、TAPS、PIPES、およびCAPSのうちの1つ以上を含む。例えば、緩衝剤は、約5mM~約40mMの濃度でpH8.0のトリスを含むか、または緩衝剤は、約20mMでpH8.0のトリスを含む。
【0096】
提供される製剤または組成物のうちのいずれかにおいて、イオン強度剤は、塩化カリウム(KCl)、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム(NHCl)、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム(MgCl)、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン(MnCl)、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化ナトリウム(NaCl)、酢酸ナトリウム、塩化リチウム(LiCl)、および酢酸リチウムのうちの1つ以上を含む。例えば、イオン強度剤は、約0.2mM~約4mMの濃度でMgClを含むか、またはイオン強度剤は、約50mM~約500mMの濃度でNaClを含むか、またはイオン強度剤は、約0.2mM~約4mMの濃度でMgClを含み、約50mM~約500mMの濃度でNaClを含むか、またはイオン強度剤は、約1mMの濃度でMgClを含み、約200mMの濃度でNaClを含む。
【0097】
提供される製剤または組成物のうちのいずれかにおいて、界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、ポロキサマー、およびカチオン性界面活性剤のうちの1つ以上を含む。例えば、ポロキサマーは、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー184、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー331、ポロキサマー338、およびポロキサマー407のうちの1つ以上を含む。ポロキサマーは、約0.00001%~約1%の濃度であってもよい。例示的な界面活性剤は、約0.001%の濃度のポロキサマー188である。
【0098】
前述の段落は、本発明の全ての態様を定義することを意図するものではなく、追加の態様は、詳細な説明のような他のセクションに記載される。文書全体は、統一された開示として関連することが意図されており、特徴の組み合わせがこの文書と同じ文章、または段落、またはセクションで一緒に見られない場合でも、本明細書に記載される特徴のすべての組み合わせが考慮されることを理解されたい。本発明は、追加の態様として、上記の特定の段落で定義される変形よりもいくらか範囲が狭い本発明のすべての実施形態を含む。例えば、本発明の特定の態様が属として記載される場合、属の各メンバーが個々に本発明の態様であると理解されるべきである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを前記対象に投与するステップを含み、
前記rAAVが、全身投与経路を使用して、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約1.0×1012vg/kg~約5.0×1014vg/kgの用量で投与され、前記対象における血清クレアチンキナーゼ(CK)レベルが、前記rAAVの投与前の血清CKレベルと比較して、前記rAAVの投与後に減少する、方法。
(項目2)
筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与するステップを含み、
前記対象の細胞におけるベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルが、前記rAAVの投与前の前記ベータ-サルコグリカン遺伝子発現のレベルと比較して、前記rAAVの投与後に増加し、
前記対象の筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数が、前記rAAVの投与前の前記ベータ-サルコグリカン陽性線維の数と比較して、前記rAAVの投与後に増加するか、または
運動機能が、前記rAAVの投与前の前記対象の前記運動機能と比較して、前記対象において改善されており、前記運動機能が、100メートルの時間歩行試験によって決定される、方法。
(項目3)
前記運動機能が、遺伝子移入後1ヶ月または30日で少なくとも5%、遺伝子移入後2ヶ月または60日で少なくとも10%、または遺伝子移入後3ヶ月または90日で少なくとも15%改善する、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記運動機能が、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、45%、または50%改善される、項目2または3に記載の方法。
(項目5)
前記rAAVが、静脈内経路を使用して投与される、項目1~4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記rAAVが、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgもしくは約2.0×1014vg/kgで投与されるか、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgもしくは7.41×1013vg/kgで投与される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記rAAVが、約10mL/kgの濃度で投与される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記rAAVが、注射、注入または移植によって投与される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記rAAVが、約1~2時間にわたって注入によって投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
前記rAAVが、末梢四肢静脈を介する静脈内経路によって投与される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記rAAVが、配列番号1のヒトβ-サルコグリカンヌクレオチド配列を含む、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記rAAVが、配列番号4のMHCK7プロモーター配列を含む、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記rAAVが、血清型AAVrh.74のrAAVである、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記rAAVが、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、項目1~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記rAAVが、配列番号20のイントロン配列を含む、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記rAAVが、配列番号21のポリA配列を含む、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記rAAVが、配列番号22の5’逆位末端反復(ITR)配列を含む、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記rAAVが、配列番号23の3’逆位末端反復(ITR)配列を含む、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記筋ジストロフィーが、肢帯型筋ジストロフィーである、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記筋ジストロフィーが、肢帯型筋ジストロフィー2E型である、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
肢帯型筋ジストロフィーの治療を必要とする対象においてそれを治療する方法であって、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0×1013vg/kgもしくは約2.0×1014vg/kg、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて、約1.85×1013vg/kgもしくは7.41×1013vg/kgの用量で、およそ1~2時間かけてrAAV静脈内注入を前記対象に投与することを含み、前記rAAVが、配列番号3または配列番号19のヌクレオチド配列を含む含む、方法。
(項目22)
対象の細胞においてベータ-サルコグリカン遺伝子を発現する方法であって、配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目23)
対象の筋肉組織においてベータ-サルコグリカン陽性線維を増加させ、および/またはCKレベルを減少させる方法であって、配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目24)
前記ベータ-サルコグリカン遺伝子の発現または陽性ベータ-サルコグリカン陽性線維の数が、前記rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットでベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される、項目22または23に記載の方法。
(項目25)
前記ベータ-サルコグリカンタンパク質の発現が、rAAV投与後に少なくとも30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40%増加する、項目22に記載の方法。
(項目26)
ベータ-サルコグリカン遺伝子の発現またはベータ-サルコグリカン陽性筋肉線維の数が、前記rAAV投与の前および後の筋生検における免疫組織化学によって前記ベータ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される、項目22~25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記ベータ-サルコグリカンタンパク質の発現が、rAAV投与後に少なくとも39%増加する、項目22に記載の方法。
(項目28)
前記対象の前記筋肉組織におけるベータ-サルコグリカン陽性線維の数が、前記rAAVの投与前の前記ベータ-サルコグリカン陽性線維の数と比較して、前記rAAVの投与後少なくとも40、41、または42%増加する、項目23に記載の方法。
(項目29)
前記細胞が、1より多いAAVウイルスコピー数を有する、項目22に記載の方法。
(項目30)
前記対象における前記血清CKレベルが、前記rAAVのこの投与前の血清CKレベルと比較して、前記rAAVの投与後に減少する、項目22~29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記対象における前記血清CKレベルが、前記rAAVの投与前の前記血清CKレベルと比較して、前記rAAVの投与後60日~90日、60日、または90日に少なくとも82、83、84、85、86、87、88、89、または90%減少する、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記対象におけるアルファ-サルコグリカンのレベルが、前記rAAVの投与前の前記アルファ-サルコグリカンのレベルと比較して、前記rAAVの投与後に増加する、項目1~31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
アルファ-サルコグリカンの発現の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を有するscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物を含むrAAVを前記対象に投与することを含む、方法。
(項目34)
アルファ-サルコグリカンの細胞膜への局在化の増加を必要とする対象においてそれを行う方法であって、配列番号3または配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるscAAVrh74.MHCK7.hSGCB構築物ヌクレオチド配列を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目35)
前記アルファ-サルコグリカンが、前記rAAV投与の前および後の筋生検における免疫組織化学によってアルファ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される、項目33または34に記載の方法。
(項目36)
前記アルファ-サルコグリカンが、前記rAAV投与の前および後の筋生検におけるウエスタンブロットによってアルファ-サルコグリカンタンパク質レベルを測定することによって検出される、項目33または34に記載の方法。
(項目37)
前記アルファ-サルコグリカンが、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBによってコードされるベータ-サルコグリカンを発現する細胞の膜に共局在化する、項目34~36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
対象の筋肉組織におけるサルコグリカン発現を増加させるか、または筋肉機能を改善する方法であって、配列番号19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むrAAVを前記対象に投与することを含む、方法。
(項目39)
前記対象が、サルコグリカンをコードする遺伝子中に遺伝子変異を有するか、または筋ジストロフィーに罹患している、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記サルコグリカンが、β-サルコグリカン(SGCB)、α-サルコグリカン(SGCA)、γ-サルコグリカン(SGCG)、またはδ-サルコグリカン(SGCD)である、項目38に記載の方法。
(項目41)
前記ヌクレオチド配列が、配列番号19のポリヌクレオチド配列を含む、項目38に記載の方法。
(項目42)
対象の筋肉組織におけるサルコグリカン発現を増加させる方法であって、第1のサルコグリカンをコードするヌクレオチド配列を含む構築物を前記対象に投与することと、前記第1のサルコグリカンを発現する細胞の細胞膜において少なくとも第2のサルコグリカンの発現の増加を検出することと、を含む、方法。
(項目43)
前記第1のサルコグリカンが、β-サルコグリカン(SGCB)であり、前記第2のサルコグリカンが、α-サルコグリカン(SGCA)、γ-サルコグリカン(SGCG)、および/またはδ-サルコグリカン(SGCD)である、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記対象が、4~15歳のヒト対象である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記対象が、小児対象、青年期対象または若年成人対象である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記対象が、4~15歳のヒト対象であり、両方の対立遺伝子においてベータ-サルコグリカン(SGCB)変異が確認されており、AAVrh74抗体に対して陰性であり、および/または100メートル歩行試験が40%を超えるか、または正常であった、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記対象が、中年成人または高齢対象である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記対象が、25~55歳のヒト対象である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記対象が、50歳を超えるヒト対象である、項目1~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
組成物であって、
rAAV scAAVrh74.MHCK7.hSGCBベクターと、
緩衝剤と、
イオン強度剤と、
界面活性剤と、を含む、組成物。
(項目51)
前記rAAVが、約1.0×1012vg/ml~約5.0x1014vg/ml、または約5.0x1012vg/ml~約1.0x1014vg/mlの濃度である、項目50に記載の組成物。
(項目52)
前記rAAVが、約2.0×1013vg/ml、4×1013vg/ml、5×1013vg/mlの濃度である、項目50に記載の組成物。
(項目53)
前記緩衝剤が、トリス、トリシン、ビス-トリシン、HEPES、MOPS、TES、TAPS、PIPES、およびCAPSのうちの1つ以上を含む、項目50に記載の組成物。
(項目54)
前記緩衝剤が、約5mM~約40mMの濃度でpH8.0の前記トリスを含む、項目53に記載の組成物。
(項目55)
前記緩衝剤が、約20mMでpH8.0の前記トリスを含む、項目53に記載の組成物。
(項目56)
前記イオン強度剤が、塩化カリウム(KCl)、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム(NHCl)、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム(MgCl)、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン(MnCl)、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化ナトリウム(NaCl)、酢酸ナトリウム、塩化リチウム(LiCl)、および酢酸リチウムのうちの1つ以上を含む、項目50に記載の組成物。
(項目57)
前記イオン強度剤が、約0.2mM~約4mMの濃度でMgClを含む、項目50に記載の組成物。
(項目58)
前記イオン強度剤が、約50mM~約500mMの濃度でNaClを含む、項目50に記載の組成物。
(項目59)
前記イオン強度剤が、約0.2mM~約4mMの濃度でMgClを含み、約50mM~約500mMの濃度でNaClを含む、項目50に記載の組成物。
(項目60)
前記イオン強度剤が、約1mMの濃度でMgClを含み、約200mMの濃度でNaClを含む、項目50に記載の組成物。
(項目61)
前記界面活性剤が、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、ポロキサマー、およびカチオン性界面活性剤のうちの1つ以上を含む、項目50に記載の組成物。
(項目62)
前記ポロキサマーが、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー184、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー331、ポロキサマー338、およびポロキサマー407のうちの1つ以上を含む、項目61に記載の組成物。
(項目63)
前記界面活性剤が、約0.00001%~約1%の濃度で前記ポロキサマーを含む、項目61に記載の組成物。
(項目64)
前記界面活性剤が、約0.001%の濃度でポロキサマー188を含む、項目61に記載の組成物。
(項目65)
組換えAAV(rAAV)scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを含み、前記scAAVrh74.MHCK7.hSGCBが、配列番号19と少なくとも95%または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、医薬組成物。
(項目66)
前記scAAVrh74.MHCK7.hSGCBが、配列番号19のヌクレオチド配列を含む、項目65に記載の医薬組成物。
(項目67)
組換えAAV scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを生成する方法であって、プラスミドを細胞に移入することを含み、前記プラスミドが、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、方法。
(項目68)
前記プラスミドが、配列番号24のヌクレオチド配列を含む、項目83に記載の方法。
(項目69)
前記プラスミドが、配列番号1、3、または19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む、項目67に記載の方法。
(項目70)
前記プラスミドが、配列番号19のヌクレオチド配列を含む、項目67~69のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
パッケージングプラスミドおよび/またはヘルパーウイルスを前記細胞に移入することをさらに含む、項目67~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目72)
前記細胞が、安定に組み込まれたAAVcap遺伝子を含む、項目67~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目73)
前記細胞が、安定に組み込まれたAAVrep遺伝子を含む、項目67~70のいずれか一項に記載の方法。
(項目74)
細胞であって、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むプラスミドを含む、細胞。
(項目75)
前記プラスミドが、配列番号24のヌクレオチド配列を含む、項目74に記載の細胞。
(項目76)
配列番号19のヌクレオチド配列を含む、項目74または75に記載の細胞。
(項目77)
前記細胞が、昆虫細胞、蚊細胞、または哺乳動物細胞である、項目74~76のいずれか一項に記載の細胞。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】治療用β-サルコグリカン導入遺伝子カセットの概略図を提供する。コドン最適化ヒトβ-サルコグリカン遺伝子(hSGCB)を含む自己相補的AAVベクター。筋特異的MHCK7プロモーターが発現を駆動する。カセットはまた、安定性のためにプロセシングおよびポリアデニル化シグナルを増強するキメライントロンを含む。
図2A】骨格筋におけるヒトβ-サルコグリカン発現を示す。A)3e12vg全用量のscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBを静脈内注射したSGCB-/-マウス由来の骨格筋、横隔膜、および心臓の免疫蛍光イメージング。すべての筋肉が98%以上の形質導入を示す、代表的な画像。20倍画像を示す。B)臨床用量(716番)および高用量(785、786番)で治療された筋肉におけるhSGCB導入遺伝子(43kDA)の発現を示すウエスタンブロッティング。治療群についてN=6、100kDaは、α-アクチニンローディング対照に対応する。
図2B】同上。
図3-1】高用量scAAVrh74.MHCK7.hSGCBによる全身治療が筋肉病変に及ぼす効果を示す。(A)C57BL/6 WT、SGCB-/-、およびscAAVrh.74.MHCK7.hSGCB治療されたマウス由来の大腿四頭筋および横隔膜筋のH&E染色、(B)中心核を有する線維における減少の定量化、(C)線維分布の正常化、および(D)平均線維サイズの増加。各群についてN=6、=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001。
図3-2】同上。
図3-3】同上。
図4】SGCB-/-マウスの横隔膜における力欠損の矯正を示す。24週間の治療後、横隔膜筋片をマウスから採取して、刺激後の力の生成を測定した。治療により、力がWTレベルまで回復し、以前に研究された用量(1e12vg総用量)と比較して、より大きな回復を提供した(WT:n=5;KO:n=4;低用量:n=6;高用量:n=6)。**=p<0.01。
図5】x平面およびy平面における全体的な歩行が、KOマウスにおいて有意に減少し、MHCK7治療マウスにおいてわずかに改善したことを示す。後肢での垂直活動立ち上がりは、MCHK7治療マウス(n=6)においてわずかに改善した。
図6】2種類の高用量(2.0×1014vg/kg)scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBを全身注射したSGCB-/-マウス由来の筋肉および臓器に対する生体内分布ウエスタンを提供する。43kDaは、β-サルコグリカンタンパク質に対応する。125kDaは、ビンクリンローディング対照に対応する。
図7】免疫組織化学によって検出され、定量化される場合の、5.0×1013vg/kgのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの全身投与後のヒト対象の筋生検におけるβ-サルコグリカンタンパク質発現を提供する。
図8】ウエスタンブロットによって検出され、定量化される場合の、5.0×1013vg/kgのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの全身投与後90日目のヒト対象の筋生検におけるβ-サルコグリカンタンパク質発現を提供する。
図9】免疫組織化学によるアルファ-サルコグリカンの検出および定量化によって示される場合に、β-サルコグリカンタンパク質発現がサルコグリカン複合体の発現を上方制御したことを示す。
図10】試験中の患者3番の膜でのβ-サルコグリカン、α-サルコグリカンの発現の回復、ならびにβ-サルコグリカンおよびα-サルコグリカンの療法の共局在化を示す。
図11】scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBによる遺伝子移入後の最初の3ヶ月間にわたる3例の対象におけるベースラインからの平均変化パーセントおよび100メートル時間試験の改善を示す。
図12A】自然な成長経過の対照群(図12A)および5.0×1013vg/kgのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCB投与後の試験対象(図12B)についての肢帯型筋ジストロフィー(NSAD)のノーススター評価におけるベースラインからの変化を提供する。6例の個々の自然な成長経過の対照患者についてのNSADデータを図12Cに示す。
図12B】同上。
図12C】同上。
図13】pAAV.MHCK7.hSGCB.KAN AAVベクタープラスミドの概略マップを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本開示は、β-サルコグリカンを発現するポリヌクレオチドを含むAAVベクターの投与が、肢帯型筋ジストロフィー動物モデルにおける筋線維症の軽減または完全な回復をもたらすという発見に基づいている。実施例に示されているように、本明細書に記載のAAVベクターの投与は、変性線維の減少、炎症の軽減、および増大した力発生による伸張性収縮に対する保護による機能回復の改善を含む、ジストロフィー特徴の回復をもたらした。
【0101】
本明細書で使用される場合、「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの一般的な略語である。アデノ随伴ウイルスは、ある特定の機能が同時感染ヘルパーウイルスによって提供される細胞内でのみ成長する一本鎖DNAパルボウイルスである。現在、特性評価されているAAVの血清型は13個存在する。AAVの一般的な情報および概説は、例えば、Carter,1989,Handbook of Parvoviruses,Vol.1,pp.169-228、およびBerns,1990,Virology,pp.1743-1764,Raven Press,(New York)で見つけることができる。しかしながら、様々な血清型が遺伝子レベルでさえも構造的および機能的の両方で非常に密接に関連していることがよく知られているため、これらの同じ原理が追加のAAV血清型に適用可能であることが十分に予想される。(例えば、Blacklowe,1988,pp.165-174 of Parvoviruses and Human Disease,J.R.Pattison,ed.、およびRose,Comprehensive Virology 3:1-61(1974)を参照されたい)。例えば、全てのAAV血清型は、相同rep遺伝子によって媒介される非常に類似した複製特性を明らかに呈し、これらは全て、AAV2で発現されたもの等の3つの関連カプシドタンパク質を有する。関連性の程度は、ゲノムの長さに沿った血清型間の広範な交差ハイブリダイゼーション、および「末端逆位配列」(ITR)に対応する末端における類似の自己アニーリングセグメントの存在を明らかにするヘテロ二本鎖分析によってさらに示唆される。類似の感染性パターンは、各血清型における複製機能が類似の調節制御下にあることも示唆する。
【0102】
本明細書で使用される「AAVベクター」とは、AAV末端反復配列(ITR)に隣接している1つ以上の目的とするポリヌクレオチド(または導入遺伝子)を指す。かかるAAVベクターは、repおよびcap遺伝子産物をコードおよび発現するベクターでトランスフェクトされた宿主細胞中に存在する場合に、感染ウイルス粒子に複製およびパッケージングされ得る。
【0103】
「AAVビリオン」または「AAVウイルス粒子」または「AAVベクター粒子」とは、少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質およびカプシド形成されたポリヌクレオチドAAVベクターで構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される導入遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、それは、典型的には、「AAVベクター粒子」または単に「AAVベクター」と称される。したがって、かかるベクターがAAVベクター粒子内に含有されるため、AAVベクター粒子の産生には、必然的にAAVベクターの産生が含まれる。
【0104】
AAV
本発明の組換えAAVゲノムは、本発明の核酸分子および核酸分子に隣接する1つ以上のAAV ITRを含む。rAAVゲノム内のAAV DNAは、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型からであり得、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、およびAAV rh.74が挙げられるが、これらに限定されない。偽型rAAVの生成は、例えば、WO01/83692に開示される。他のタイプのrAAV変異体、例えば、カプシド変異を有するrAAVも企図される。例えば、Marsic et al.,Molecular Therapy,22(11):1900-1909(2014)を参照されたい。上記の背景技術の部分に記載されたように、様々なAAV血清型のゲノムのヌクレオチド配列が、当該技術分野において既知である。骨格筋特異的発現を促進するために、AAV1、AAV5、AAV6、AAV8、またはAAV9を使用することができる。
【0105】
本発明のDNAプラスミドは、rAAVゲノムを含む。DNAプラスミドは、rAAVゲノムの感染性ウイルス粒子への組込みのために、AAVのヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、E1欠失アデノウイルス、またはヘルペスウイルス)の感染に許容される細胞に導入される。パッケージングされるAAVゲノム、repおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が細胞に提供される、rAAV粒子を産生する技術は、当該技術分野において標準的である。rAAVの産生は、以下の成分、rAAVゲノム、rAAVゲノムから分離した(すなわち、その中に存在しない)AAVrepおよびcap遺伝子、ならびにヘルパーウイルス機能が、単一細胞(本明細書でパッケージング細胞と表される)内に存在することを必要とする。AAVrepおよびcap遺伝子は、組換えウイルスが由来し得る任意のAAV血清型であり得、rAAVゲノムITRとは異なるAAV血清型からであり得、AAV血清型AAV-1、AAV-2、AAV-3、AAV-4、AAV-5、AAV-6、AAV-7、AAV-8、AAV-9、AAV-10、AAV-11、AAV-12、AAV-13、およびAAV rh.74が挙げられるが、これらに限定されない。偽型rAAVの生成は、例えば、WO01/83692に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0106】
パッケージング細胞を生成する方法は、AAV粒子の産生に必要な全ての成分を安定して発現する細胞株を作成することである。例えば、AAVrepおよびcap遺伝子を欠くrAAVゲノム、rAAVゲノムから分離したAAVrepおよびcap遺伝子、およびネオマイシン耐性遺伝子などの選択可能なマーカーを含むプラスミド(または複数のプラスミド)が、細胞のゲノムに組み込まれる。AAVゲノムは、GCテーリング(Samulski et al.,1982,Proc.Natl.Acad.S6.USA,79:2077-2081)、制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含有する合成リンカーの付加(Laughlin et al.,1983,Gene,23:65-73)、または直接平滑末端ライゲーション(Senapathy & Carter,1984,J.Biol.Chem.,259:4661-4666)などの手順により細菌プラスミドに導入されている。次いで、パッケージング細胞株を、アデノウイルスなどのヘルパーウイルスに感染させる。この方法の利点は、細胞が選択可能であり、rAAVの大規模産生に好適であることである。適切な方法の他の例は、rAAVゲノムおよび/またはrep遺伝子およびcap遺伝子をパッケージング細胞に導入するためのプラスミドではなく、アデノウイルスまたはバキュロウイルスを使用する。
【0107】
rAAV生産の一般原則は、例えば、Carter,1992,Current Opinions in Biotechnology,1533-539、およびMuzyczka,1992,Curr.Topics in Microbial.and Immunol.,158:97-129)に概説されている。様々なアプローチは、Ratschin et al.,Mol.Cell.Biol.4:2072(1984)、Hermonat et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6466(1984)、Tratschin et al.,Mo1.Cell.Biol.5:3251(1985)、McLaughlin et al.,J.Virol.,62:1963(1988)、およびLebkowski et al.,1988 Mol.Cell.Biol.,7:349(1988)、Samulski et al.(1989,J.Virol.,63:3822-3828)、米国特許第5,173,414号、WO95/13365および対応する米国特許第5,658,776号、WO95/13392、WO96/17947、PCT/US98/18600、WO97/09441(PCT/US96/14423)、WO97/08298(PCT/US96/13872)、WO97/21825(PCT/US96/20777)、WO97/06243(PCT/FR96/01064)、WO99/11764、Perrin et al.(1995)Vaccine 13:1244-1250、Paul et al.(1993)Human Gene Therapy 4:609-615、Clark et al.(1996)Gene Therapy 3:1124-1132、米国特許第5,786,211号、米国特許第5,871,982号、および米国特許第6,258,595号に記載されている。前述の文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、rAAV産生に関する文書の部分を特に強調する。
【0108】
したがって、本発明は、感染性rAAVを産生するパッケージング細胞を提供する。一実施形態では、パッケージング細胞は、HeLa細胞、293細胞、およびPerC.6細胞(同種293株)などの安定して形質転換された癌細胞であり得る。別の実施形態では、パッケージング細胞は、形質転換された癌細胞ではない細胞、例えば、低継代293細胞(アデノウイルスのE1で形質転換されたヒト胎児腎細胞)、MRC-5細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、WI-38細胞(ヒト胎児線維芽細胞)、Vero細胞(サル腎細胞)、およびFRhL-2細胞(アカゲザル胎児肺細胞)である。
【0109】
本発明の組換えAAV(すなわち、感染性カプシド化rAAV粒子)は、rAAVゲノムを含む。実施形態としては、これらに限定されないが、配列番号3または配列番号19に記載のポリヌクレオチド配列を含むpAAV.MHCK7.hSCGB、ならびに配列番号5に記載のポリヌクレオチド配列を含むpAAV.tMCK.hSCGBと呼ばれるrAAVが挙げられる。
【0110】
rAAVは、当該技術分野で標準的な方法によって、例えば、カラムクロマトグラフィーまたは塩化セシウム勾配によって精製され得る。ヘルパーウイルスからrAAVベクターを精製するための方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、Clark et al.,Hum.Gene Ther.,10(6):1031-1039(1999)、Schenpp and Clark,Methods Mol.Med.,69 427-443(2002)、米国特許第6,566,118号、およびWO98/09657に開示される方法を含む。
【0111】
別の実施形態では、本発明は、本発明のrAAVを含む組成物を企図する。本明細書に記載の組成物は、薬学的に許容される担体中にrAAVを含む。本組成物は、希釈剤およびアジュバント等の他の成分も含み得る。許容される担体、希釈剤、およびアジュバントは、レシピエントに非毒性であり、好ましくは、用いられる投薬量および濃度で不活性であり、リン酸、クエン酸、もしくは他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸等の抗酸化剤;低分子量ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、もしくはリシン等のアミノ酸;グルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む、単糖、二糖、および他の炭水化物;EDTA等のキレート剤;マンニトールもしくはソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成対イオン;ならびに/またはTween、プルロニクス、もしくはポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0112】
本発明の方法で投与されるrAAVの力価は、例えば、特定のrAAV、投与方法、処置目標、個体、および標的とされる細胞型に応じて変化し、当該技術分野における標準の方法によって決定され得る。rAAVの力価は、mlあたり、約1×10、約1×10、約1×10、約1×10、約1×1010、約1×1011、約1×1012、約1×1013、約1×1014から、またはそれ以上のDNase耐性粒子(DRP)の範囲であってもよい。投薬量は、ウイルスゲノム(vg)の単位で表されてもよい。rAAVの力価は、スーパーコイルプラスミド定量標準または線状化プラスミド定量標準によって決定されてもよい。
【0113】
インビボまたはインビトロで、標的細胞にrAAVを形質導入する方法が、本発明によって企図される。インビボ方法は、本発明のrAAVを含む組成物の有効用量または有効な複数用量を、それを必要とする動物(ヒトを含む)に投与するステップを含む。用量が、障害/疾患の発症前に投与される場合、投与は予防的である。用量が、障害/疾患の発症後に投与される場合、投与は治療的である。本発明の実施形態では、有効用量は、治療すべき障害/疾患の状態に関連する少なくとも1つの症状を緩和(排除もしくは軽減)する用量であり、障害/疾患の状態への進行を緩徐化もしくは予防する用量であり、疾患の範囲を縮小する用量であり、疾患の寛解(部分的もしくは完全な)をもたらす用量であり、ならびに/または生存を延長させる用量である。本発明の方法による予防または治療のために企図される疾患の例は、筋ジストロフィー、例えば肢帯型筋ジストロフィーである。したがって、提供されるのは、配列番号3または19のヌクレオチド配列を含む、rAAV scAAVrh74.MHCK7.hSGCBで標的細胞を形質導入する方法である。
【0114】
併用療法も本発明により企図される。本明細書で使用される併用療法は、同時治療または連続治療を含む。本発明の方法と標準的な医学的治療(例えば、ステロイド、コルチコステロイド、および/または限定されないがプレドニゾン、プレドニゾロン、およびデフラザコートのうちの1つ以上を含むグルココルチコイド)との組み合わせは、新規療法との組み合わせと同様に、具体的に企図される。この観点で、この組み合わせは、本発明の方法のrAAVを対象に投与する前に、rAAVを対象に投与すると同時に、またはrAAVを対象に投与した後に、1つ以上のステロイド、コルチコステロイド、および/または限定されないがプレドニゾン、プレドニゾロン、およびデフラザコートのうちの1つ以上を含むグルココルチコイドを対象に投与することを含む。
【0115】
本発明によって企図される併用療法の関連する実施形態では、グルココルチコイドとしては、限定されないが、ベクロメタゾン、ベタメタゾン、ブデソニド、コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、またはトリアムシノロンが挙げられる。
【0116】
抗原特異的T細胞応答は、rAAVベクターを投与された対象で起こり得ることが認識されている。これは、遺伝子移入後2~4週間で予想される応答である。このような抗原特異的T細胞応答に対する1つの考えられる結果は、形質導入された細胞のクリアランスおよび導入遺伝子発現の喪失である。rAAVベースの治療に対する宿主の免疫応答を弱めるために、治療前、例えば治療手順の24時間前に、対象は、およそ1mg/kg/日の経口による予防的プレゾニゾンまたは同等のグルココルチコイドから始め、最大用量60mg/日で投与することができる。必要に応じて、同等のグルココルチコイドをおよそ1mg/kg/日の用量で静脈内投与することも可能である。治療は、およそ1ヶ月続く。プレゾニゾンまたは同等のグルココルチコイドの量を漸減させるプロトコルを、個々の対象の遺伝子移入に対する免疫応答に基づいて実施し、ELISpotアッセイによって、またGGTによる肝機能モニタリングによって評価することができる。
【0117】
rAAVベクターの治療有効量は、約1e13vg/kg~約5e14vg/kg、または約1e13vg/kg~約2e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約3e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約4e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約5e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約6e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約7e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約8e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約9e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約1e14vg/kg、または約1e13vg/kg~約2e14vg/kg、または1e13vg/kg~約3e14vg/kg、または約1e13~約4e14vg/kg、または約3e13vg/kg~約4e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約5e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約6e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約7e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約8e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約9e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約1e14vg/kg、または約3e13vg/kg~約2e14vg/kg、または3e13vg/kg~約3e14vg/kg、または約3e13~約4e14vg/kg、または約3e13vg/kg~約5e14vg/kg、または約5e13vg/kg~約6e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約7e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約8e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約9e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約1e14vg/kg、または約5e13vg/kg~約2e14vg/kg、または5e13vg/kg~約3e14vg/kg、または約5e13~約4e14vg/kg、または約5e13vg/kg~約5e14vg/kg、または約1e14vg/kg~約2e14vg/kg、または1e14vg/kg~約3e14vg/kg、または約1e14~約4e14vg/kg、または約1e14vg/kg~約5e14vg/kg、6e14vg/kg、7e14vg/kg、8e14vg/kg、または9e14vg/kgの範囲のrAAVの用量である。本発明はまた、これらの範囲のrAAVベクターを含む組成物も含む。
【0118】
例えば、rAAVベクターの治療有効量は、1e13vg/kg、約2e13vg/kg、約3e13vg/kg、約4e13vg/kg、約5e13vg/kg、約6e13vg/kg、約7e13vg/kg、約7.4e13vg/kg、約8e13vg/kg、約9e13vg/kg、約1e14vg/kg、約2e14vg/kg、約3e14vg/kg、約4e14vg/kgおよび5e14vg/kgの用量である。AAVベクターの力価または投薬量は、定量標準としてのプラスミドDNAの物理的形態に基づいて変化する可能性がある。例えば、力価または投薬量の値は、スーパーコイル標準qPCR力価測定法または線状標準qPCR力価測定法に基づいて変化し得る。一実施形態では、治療有効量のrAAVは、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて5e13vg/kgの用量、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて1.85e13vg/kgの用量である。別の実施形態では、治療有効量のrAAVは、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて2e14vg/kgの用量、または定量標準としての線状化プラスミドに基づいて7.41e13vg/kgの用量である。別の実施形態では、治療有効量のscAAVrh74.MHCK7.hSGCBは、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて約1e13vg/kg~約5e14vg/kg、または約1e13vg/kg~約2e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約3e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約4e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約5e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約6e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約7e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約8e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約9e13vg/kg、または約1e13vg/kg~約1e14vg/kg、または約1e13vg/kg~約2e14vg/kg、または1e13vg/kg~約3e14vg/kg、または約1e13~約4e14vg/kg、または約3e13vg/kg~約4e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約5e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約6e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約7e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約8e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約9e13vg/kg、または約3e13vg/kg~約1e14vg/kg、または約3e13vg/kg~約2e14vg/kg、または3e13vg/kg~約3e14vg/kg、または約3e13~約4e14vg/kg、または約3e13vg/kg~約5e14vg/kg、または約5e13vg/kg~約6e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約7e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約8e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約9e13vg/kg、または約5e13vg/kg~約1e14vg/kg、または約5e13vg/kg~約2e14vg/kg、または5e13vg/kg~約3e14vg/kg、または約5e13~約4e14vg/kg、または約5e13vg/kg~約5e14vg/kg、または約1e14vg/kg~約2e14vg/kg、または1e14vg/kg~約3e14vg/kg、または約1e14~約4e14vg/kg、または約1e14vg/kg~約5e14vg/kg、6e14vg/kg、7e14vg/kg、8e14vg/kg、または9e14vg/kgの範囲の用量である。本発明はまた、これらの用量のrAAVベクターを含む組成物も含む。
【0119】
組成物の有効用量の投与は、筋肉内、非経口、静脈内、経口、頬側、鼻、肺、頭蓋内、骨内、眼内、直腸、または膣を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で標準的な経路によるものであり得る。本発明のrAAVのAAV成分(具体的には、AAV ITRおよびカプシドタンパク質)の投与経路および血清型は、治療される感染症および/または疾患状態、ならびにβ-サルコグリカンを発現する標的細胞/組織を考慮して、当業者によって選択および/または適合され得る。
【0120】
本発明は、本発明のrAAVおよび組成物の有効用量の局所投与および全身投与を提供する。例えば、全身投与とは、全身が影響を受けるように循環系に投与することである。全身投与には、胃腸管を通した吸収のような経腸投与および注射、注入、または移植による非経口投与が含まれる。
【0121】
特に、本発明のrAAVの実際の投与は、rAAV組換えベクターを動物の標的組織に輸送する任意の物理的方法を使用することにより達成され得る。本発明による投与としては、筋肉内への注入、血流への注入、および/または肝臓への直接注入が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸緩衝生理食塩水中にrAAVを単に再懸濁させることが、筋組織発現に有用なビヒクルを提供するのに十分であることが実証されており、rAAVと同時投与され得る担体または他の成分に対する既知の制限はない(が、DNAを分解する組成物がrAAVとの通常の方法で避けられるべきである)。rAAVのカプシドタンパク質は、rAAVが筋肉などの目的の特定の標的組織に標的化されるように修飾されてもよい。例えば、本開示が参照により本明細書に組み込まれるWO02/053703を参照されたい。
【0122】
医薬組成物は、注射可能な製剤として、または経皮輸送により筋肉に送達される局所製剤として調製することができる。筋肉内注射と経皮輸送の両方のための多数の製剤がこれまでに開発されており、本発明の実施において使用することができる。rAAVは、投与および取り扱いを容易にするために、任意の薬学的に許容される担体と共に使用することができる。したがって、別の態様では、本出願は、AAVrh74由来のカプシドを含むrAAVと、緩衝剤と、イオン強度剤と、界面活性剤と、を含む製剤に関する。一実施形態では、rAAVは、約1.0x1012vg/ml~約5.0×1014vg/mlの濃度である。別の実施形態では、rAAVは、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約5.0x1012vg/ml~約1.0×1014vg/mlの濃度である。別の実施形態では、rAAVは、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、約2.0×1013vg/mlの濃度である。一実施形態では、rAAVは、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBベクターである。一実施形態では、組成物または製剤中のrAAVの濃度は、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、1×1013vg/ml~2×1014vg/mlである。別の実施形態では、濃度は、定量標準としてのスーパーコイルプラスミドに基づいて、2×1013vg/ml、4×1013vg/ml、または5×1013vg/mlである。一実施形態では、緩衝剤は、トリス、トリシン、ビス-トリシン、HEPES、MOPS、TES、TAPS、PIPES、およびCAPSのうちの1つ以上を含む。別の実施形態では、緩衝剤は、約5mM~約40mMの濃度でpH8.0のトリスを含む。一実施形態では、緩衝剤は、約20mMでpH8.0のトリスを含む。一実施形態では、イオン強度剤は、塩化カリウム(KCl)、酢酸カリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム(NHCl)、酢酸アンモニウム、塩化マグネシウム(MgCl)、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン(MnCl)、酢酸マンガン、硫酸マンガン、塩化ナトリウム(NaCl)、酢酸ナトリウム、塩化リチウム(LiCl)、および酢酸リチウムのうちの1つ以上を含む。一実施形態では、イオン強度剤は、約0.2mM~約4mMの濃度でMgClを含む。別の実施形態では、イオン強度剤は、約50mM~約500mMの濃度でNaClを含む。別の実施形態では、イオン強度剤は、約0.2mM~約4mMの濃度でMgClを含み、約50mM~約500mMの濃度でNaClを含む。別の実施形態では、イオン強度剤は、約1mMの濃度でMgClを含み、約200mMの濃度でNaClを含む。一実施形態では、界面活性剤は、スルホネート、サルフェート、ホスホネート、ホスフェート、ポロキサマー、およびカチオン性界面活性剤のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、ポロキサマーは、ポロキサマー124、ポロキサマー181、ポロキサマー184、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー331、ポロキサマー338、およびポロキサマー407のうちの1つ以上を含む。一実施形態では、界面活性剤は、約0.00001%~約1%の濃度でポロキサマーを含む。別の実施形態では、界面活性剤は、約0.001%の濃度でポロキサマー188を含む。筋肉内注射を目的として、ゴマ油や落花生油などのアジュバント溶液、または水性プロピレングリコール溶液、および滅菌水溶液を使用することができる。そのような水溶液は、必要に応じて緩衝化することができ、液体希釈剤は最初に生理食塩水またはグルコースで等張にされる。遊離酸(DNAは酸性リン酸基を含む)または薬理学的に許容される塩としてのrAAVの溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合した水で調製することができる。rAAVの分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物中で、ならびに油中で調製することができる。通常の保存状態および使用下においては、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。これに関連して、用いられる滅菌水性媒体は全て、当業者に周知の標準的な技術により容易に入手可能である。
【0123】
注射用途に適した薬学的形態には、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉末が含まれる。あらゆる場合において、この形態は、滅菌でなければならず、容易なシリンジ注射可能性(syringability)が存在する程度に流動性でなければならない。製造および保管の条件下で安定していなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散剤の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長時間の吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらされ得る。
【0124】
滅菌されている注射可能な溶液は、必要な量のrAAVを適切な溶媒に、必要に応じて上に列挙した他の様々な成分と共に組み込み、その後濾過滅菌することによって調製される。一般的に、分散液は滅菌した活性成分を、基礎的な分散媒および上に列挙されるものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルへと混合することによって調製される。滅菌されている注射可能な溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、それは、活性成分プラス予め滅菌濾過したそれらの溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末をもたらす。
【0125】
rAAVによる形質導入は、インビトロで行うこともできる。一実施形態では、所望の標的筋肉細胞を対象から取り出し、rAAVで形質導入し、対象に再導入する。代替的に、同系または異種の筋肉細胞は、それらの細胞が対象において不適切な免疫応答を生成しない場合に使用され得る。
【0126】
対象への形質導入および形質導入細胞の再導入のための好適な方法は、当該技術分野で既知である。一実施形態では、細胞は、例えば適切な培地でrAAVを筋肉細胞と組み合わせ、サザンブロットおよび/またはPCRなどの従来の技術を使用して、または選択可能なマーカーを使用して目的のDNAを持つ細胞をスクリーニングすることにより、インビトロで形質導入することができる。次に、形質導入された細胞を医薬組成物に製剤化し、組成物を、筋肉内、静脈内、皮下、および腹腔内注射による、または例えばカテーテルを使用して平滑筋および心筋への注射によるなど、様々な技術により対象に導入することができる。
【0127】
本発明のrAAVでの細胞の形質導入は、β-サルコグリカンの持続発現をもたらす。したがって、本発明は、β-サルコグリカンを発現するrAAVを哺乳動物の対象、好ましくはヒトに投与/送達する方法を提供する。これらの方法は、本発明の1つ以上のrAAVでの形質導入組織(筋肉等の組織、肝臓および脳等の臓器、ならびに唾液腺等の腺を含むが、これらに限定されない)を含む。形質導入は、組織特異的制御要素を含む遺伝子カセットで行われ得る。例えば、本発明の一実施形態は、これらに限定されないが、アクチンおよびミオシン遺伝子ファミリー、例えばmyoD遺伝子ファミリーに由来するもの[Weintraub et al.,Science,251:761-766(1991)を参照されたい]、筋細胞特異的エンハンサー結合因子MEF-2[Cserjesi and Olson,Mol.Cell.Biol.,11:4854-4862(1991)]、ヒト骨格筋アクチン遺伝子[Muscat et al.,Mol.Cell.Biol.,7:4089-4099(1987)]、心筋アクチン遺伝子、筋クレアチンキナーゼ配列要素[Johnson et al.,Mol.Cell.Biol.,9:3393-3399(1989)を参照されたい]、およびマウスクレアチンキナーゼエンハンサー(mCK)要素に由来する制御要素、骨格速筋トロポニンC遺伝子、遅筋心臓トロポニンC遺伝子、および遅筋トロポニンI遺伝子に由来する制御要素:低酸素誘発性核内因子(Semenza et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,88:5680-5684(1991))、ステロイド誘発性要素、およびグルココルチコイド応答要素(GRE)を含むプロモーター(Mader and
White,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5603-5607(1993)を参照されたい)、ならびに他の制御要素を含む、筋特異的制御要素によって誘導される筋細胞および筋組織を形質導入する方法を提供する。
【0128】
筋肉組織は生命維持に必須な臓器ではなく、アクセスしやすいため、インビボDNA送達の魅力的な標的である。本発明は、形質導入筋原線維由来のmiRNAの持続発現を企図する。
【0129】
「筋肉細胞」または「筋肉組織」とは、あらゆる種類の筋肉(例えば、消化管、膀胱、血管、または心臓組織に由来する骨格筋および平滑筋)に由来する細胞または細胞群を意味する。そのような筋肉細胞は、筋芽細胞、筋細胞、筋管、心筋細胞、および心筋芽細胞など、分化または未分化であり得る。
【0130】
「形質導入」という用語は、レシピエント細胞によるβ-サルコグリカンの発現をもたらす、記載の複製欠損rAAVを介するインビボまたはインビトロのいずれかでのレシピエント細胞への目的のポリヌクレオチド(例えば、β-サルコグリカンをコードするポリヌクレオチド配列)の投与/送達を指すために使用される。
【0131】
したがって、本明細書では、有効用量(または本質的に同時に投与される用量もしくはある間隔で与えられる用量)の、β-サルコグリカンをコードするrAAVを、それを必要とする哺乳動物の対象に投与する方法も記載される。
【0132】
本明細書で言及される全ての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が参照により組み込まれるように具体的かつ個別に示されているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾する場合には、本出願が、本明細書中のいかなる定義も含み、優先される。
【0133】
本発明は、以下の実施例においてさらに説明され、これは特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない。
【0134】
別の実施形態では、本開示は、rAAV pAAV.MHCK7.hSCGBを生成する方法であって、AAVベクタープラスミドを宿主細胞に移入することを含む、方法を提供する。DNAを宿主細胞に移入する方法は当該技術分野で知られており、これには、トランスフェクション、感染、形質転換、エレクトロポレーション、および形質導入が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、ベクタープラスミドは、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む。別の実施形態では、ベクタープラスミドは、配列番号24のヌクレオチド配列を含む。別の態様では、本開示は、配列番号24のヌクレオチド配列を含むAAVベクタープラスミドを含む宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、AAVベクタープラスミドは、宿主細胞において安定して発現される。AAVベクタープラスミドを安定して保有する宿主細胞を使用して、rAAVを生成することができる。一実施形態では、AAVベクタープラスミドは、pAAV.MHCK7.hSGCB.KANプラスミドである。pAAV.MHCK7.hSGCB.KANプラスミドを図11に示す。
【0135】
一実施形態では、ベクタープラスミドは、配列番号1、3、5、または19と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、ベクタープラスミドは、配列番号1、3、5、または19のヌクレオチド配列を含む。rAAVを生成する方法は、一実施形態では、パッケージングプラスミドおよび/またはヘルパーウイルスを宿主細胞に移入することをさらに含む。パッケージングプラスミドは、いくつかの実施形態では、プロモーターに作動可能に連結されるAAVrepおよび/またはcap遺伝子を含む。一実施形態では、プロモーターは、AAV転写プロモーターである。一実施形態では、宿主細胞は、パッケージング細胞である。一実施形態では、パッケージング細胞は、安定に組み込まれたAAVcap遺伝子を含む。別の実施形態では、パッケージング細胞は、安定に組み込まれたAAVrep遺伝子を含む。
【0136】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、外因性DNA配列を発現するために使用され得る細胞を指す。宿主細胞の非限定的な例は、微生物、酵母細胞、昆虫細胞、および/または哺乳動物細胞を含む。宿主細胞は、AAVヘルパー構築物、パッケージングプラスミド、AAVベクタープラスミド、アクセサリー機能ベクター、または他のDNAのレシピエントとして使用することができる。ここで使用される用語は、元の宿主細胞で外因性DNA配列を発現した後の元の細胞の子孫を包含する。AAV産生のための宿主細胞の非限定的な例には、Sf9昆虫細胞およびHEK293T細胞が含まれる。一実施形態では、本明細書に記載の細胞は、昆虫細胞、例えば、Drosophila細胞(例えば、S2細胞またはKc細胞)、カイコ細胞(例えば、Bme21細胞)、または蚊細胞(例えば、C6/36細胞)、または哺乳動物細胞(好ましくはヒト細胞、例えば、ヒト初代細胞または確立された細胞株)を含む。一実施形態では、哺乳動物細胞は、293細胞、COS細胞、HeLa細胞、またはKB細胞を含む。AAVベクタープラスミドは、感染(ウイルスまたはバキュロウイルス)、試薬(例えば、リポソーム、リン酸カルシウム)を使用した一時的なトランスフェクション、または物理的手段(例えば、エレクトロポレーション)、または当該技術分野で知られている他の手段によって、宿主細胞(例えば、Sf9または293T)に導入することができる。別の実施形態では、宿主細胞株は、それらのゲノムにrAAVプラスミドと共に安定に組み込まれる。このような安定した細胞株は、選択マーカーをベクタープラスミドに組み込むことによって確立することができる。
【0137】
一実施形態では、宿主細胞は、AAVウイルス粒子を産生するためのパッケージング細胞である。したがって、別の態様では、本開示は、配列番号24と少なくとも90%、95%、または99%同一であるヌクレオチド配列を含むAAVベクタープラスミドを含む宿主細胞を提供する。一実施形態では、配列番号24のヌクレオチド配列を含むAAVベクタープラスミド。別の実施形態では、宿主細胞は、配列番号1、3、5、または19のヌクレオチド配列を含む。
【実施例0138】
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを使用した前臨床試験は、WO2017/180976に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0139】
実施例1
材料および方法
動物モデル-すべての手順は、Research Institute at Nationwide Children’s Hospital Institutional Animal Care and Use Committee(プロトコルAR12-00040)によって承認された。B6.129-Sgcb tm1Kcam/1Jヘテロ接合マウスをJackson Laboratory(Bar Harbor,ME,USA、株#006832)から購入した。Sgcb-/-マウスは、ヘテロ接合マウスを繁殖させることにより作製した。KOマウスを繁殖させ、Research Institute at Nationwide Children’s HospitalのAnimal Resources Coreにおいて標準条件下でホモ接合型動物として維持した。マウスを、12:12時間の暗所:明所サイクルで、Teklad Global Rodent Diet(3.8z5食物繊維、18.8%タンパク質、5%脂肪飼料)で維持した。SGCB-/-マウスの同定は、PCRを用いた遺伝子型判定により行った。すべての動物を、標準的なマウスケージに入れ、自由に摂食摂水させた。
【0140】
ベータ-サルコグリカン遺伝子構築。全長ヒトベータ-サルコグリカンcDNA(GenBank受理番号NM_0034994.3)をコドン最適化し、GenScript
Inc,Piscataway,NJ,USAにより合成した。GenScriptによるコドンの最適化は、転写、mRNAプロセシングおよび安定性、翻訳、ならびにタンパク質フォールディングを含むパラメータを考慮するアルゴリズムを使用し、筋組織で最大の発現をもたらすcDNA配列を設計する(www.genscript.com)。
【0141】
pAAV.tMCK.hSGCB構築物について、次いで、cDNAを、AAV2 ITRを含有するプラスミドにクローニングし、カセットは、コンセンサスKozak配列(CCACC)と、SV40キメライントロンと、合成ポリアデニル化部位(53bp)とを含んでいた。組換えtMCKプロモーターは、Dr Xiao Xiao(University of North Carolina)からの寄贈であった。これは以前に記載されたCK6プロモーター27の改変であり、転写因子結合部位を含むプロモーター領域のエンハンサー上流における改変を含む。エンハンサーは2つのEボックス(右および左)で構成される。tMCKプロモーター改変は、左のEボックスを右のEボックスへ変換(2R改変)し、6bpを挿入(S5改変)する変異を含む。pAAV.tMCK.hSGCBベクターは、pUC57-BSG(Genscript Inc.)からの1040bpのKpnI/XbaI断片のpAAV.tMCK.hSGCA.26のKpnI/XbaI部位へのライゲーションによって構築した。
【0142】
pAAV.MHCK7.hSGCBベクターは、NotI/KpnI部位を有するtMCKプロモーターおよびSV40キメライントロンを除去し、MHCK7プロモーターおよびNotI/KpnI部位を有する同一のSV40キメライントロンを含むPCR増幅断片を挿入することにより構築した。MHCK7は、近位プロモーターを有する内因性筋クレアチンキナーゼ遺伝子(enh358MCK、584bp)内の転写開始部位の約1.2kbの5’から採取した206bpエンハンサーを利用するMCKベースのプロモーターである3、12。MHCK7プロモーター自体は、心筋発現を増強するために、CK部分の188bpのα-MyHC(α-ミオシン重鎖)エンハンサー5’に連結した遺伝子のMCKファミリーからのこの改変CK7カセットを含む12。プロモーター(CK)のクレアチンキナーゼ部分は、tMCKとMHCK7との間で96%同一である。最後に、pAAV.MHCK7.hSGCBベクターは、pAAV.MHCK7.DYSF5’DV44からの960bpのNotI/KpnI MHCK7+イントロン断片を、pAAV.tMCK.hSGCBのNotI/KpnI部位に連結することによって構築された(Pozgai et al.,Gene Ther.23:57-66,2016)。
【0143】
rAAV産生。以前にRodino-Klapac et al.(J.Trans.Med.5:45,2007)によって報告された、改変クロスパッケージングアプローチを使用して、rAAVベクターを産生した。ここで、HEK293細胞におけるCaPO沈殿を伴うトリプルトランスフェクション法は、AAV2 ITRを異なるAAVカプシド血清型にパッケージングすることを可能にする。(28、29)産生プラスミドは、(i)pAAV.tMCK.hSGCBまたはpAAV.MHCK7.hSGCB、(ii)cap血清型8様単離rh.74をコードするrep2-caprh.74改変AAVヘルパープラスミド、ならびに(iii)アデノウイルスE2A、E4 ORF6、およびVA I/II RNA遺伝子を発現するアデノウイルス5型ヘルパープラスミド(pAdhelper)であった。ベクターを精製し、カプシド化vg力価を、(Prism 7500 Taqman検出器システム、PE Applied Biosystems,Carlsbad,CA,USAを使用して)以前に記載されたように決定した。30 プライマーおよび蛍光プローブは、tMCKプロモーターを標的としており、以下の通りであった。tMCK順方向プライマー、5’-ACC CGA GAT GCC
TGG TTA TAA TT-3’(配列番号10)、tMCK逆方向プライマー、5’-TCC ATG GTG TAC AGA GCC TAA GAC-3’(配列番号11)、およびtMCKプローブ、5’-FAM-CTG CTG CCT GAG
CCT GAG CGG TTA C-TAMRA-3’(配列番号12)。プライマーおよび蛍光プローブは、MHCK7プロモーターを標的としており、以下の通りであった。MHCK7順方向プライマー、5’-CCA ACA CCT GCT GCC TCT AAA-3’(配列番号16)、MHCK7逆方向プライマー、5’-GTC CCC CAC AGC CTT GTT C-3’(配列番号17)、およびMHCK7プローブ、5’-FAM-TGG ATC CCC-Zen-TGC ATG CGA AGA TC-3IABKFQ-3’(配列番号18)。
【0144】
全身遺伝子送達:全身送達は、sgcb-/-マウスの尾静脈へのベクターの注射によって達成した。30ゲージの超微細インスリン注射器を使用して、生理食塩水で希釈した3×1012vgのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCB(2.0×1014vg/kg)をマウスに注射した。マウスを保持チューブ内に拘束し、尾を尾部スロットに入れ、注射を容易にするために温めて血管を拡張させた。動脈を尾の中心線の下方に配置した後、尾動脈に沿って走る紫/青色の側静脈の1つに注射を行った。被治療マウスはすべて4~5週齢で注射し、注射の6ヶ月後に安楽死させた。
【0145】
免疫蛍光。クリオスタット切片(12μm)を、モノクローナルヒトベータ-サルコグリカン一次抗体(Leica Biosystems,New Castle,UK、カタログ番号NCL-L-b-SARC)で、ブロック緩衝液(1×TBS、10%ヤギ血清、0.1%Tween)中での1:50の希釈で、1時間、室温で、湿潤チャンバにおいてインキュベートした。次いで切片をTBSで3回、それぞれ20分間洗浄し、30分間再ブロック化した。AlexaFluor 594複合ヤギ抗マウス二次IgG1抗体(Life Technologies,Grand Island,NY,USA、カタログ番号A21125)を、1:250の希釈で45分間適用した。切片をTBSで20分間3回洗浄し、Vectashieldマウンティング培地(Vector Laboratories,Burlingame,CA,USA)でマウントした。Zeiss AxioCam MRC5カメラを使用して、筋肉切片の4つの異なる象限をカバーする4つのランダムな20倍画像を撮影した。ベータ-サルコグリカン染色(450%の筋膜染色強度)の陽性線維の割合を各画像について決定し、各筋肉について平均した。
【0146】
ウエスタンブロット分析。組織切片または筋生検を微量遠心分離機に集め、100μlの均質化緩衝液(125mM Tris-HCl、4%SDS、4M尿素)を用い、1つのプロテアーゼ阻害剤カクテル錠剤(Roche,Indianapolis,IN,USA)存在下で均質化した。均質化後、試料を10,000rpmで10分間4℃で遠心分離した。タンパク質をNanoDrop(Thermo Scientific,Waltham,MA,USA)で定量化した。タンパク質試料(20μg)を、3~8%のポリアクリルアミドTris-アセテートゲル(NuPage,Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)上、150Vで1時間5分電気泳動し、次いで、35Vで1時間15分かけてPVDF膜(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ,USA)に移した。膜を、TBST中の5%無脂肪乾燥乳中で1時間ブロックし、次いで、ウサギポリクローナルヒトベータ-サルコグリカン抗体(Novus Biologicals,Littleton,CO,USA、カタログ番号NBP-1-90300 1:100または1:250希釈)および1:5000のモノクローナルマウスガンマ-チューブリン抗体(Sigma-Aldrich,St Louis,MO,USA、カタログ番号T6557)または1:5000希釈のマウスモノクローナルマウスα-アクチニン抗体(Sigma-Aldrich,St Louis,MO,USA、カタログ番号A7811)でインキュベートした。1:500希釈のウサギポリクローナルマウス心筋トロポニンI抗体(Abcam,Cambridge,MA、カタログ番号ab47003)および1:1000希釈のウサギモノクローナルマウスビンクリン抗体(Invitrogen,Frederick,MD、カタログ番号70062)を使用した。抗マウス(Millipore,Billerica,MA,USA、カタログ番号AP308P)および抗ウサギ(Life Technologies、カタログ番号656120)二次-HRP抗体をECL免疫検出に使用した。
【0147】
生体内分布qPCR分析。Taqman定量PCRを行って、以前に記載したような標的化筋肉および標的化されていない反対側筋肉内に存在するベクターゲノムコピーの数を定量化した。(18、30)ベクター特異的プライマープローブセットを使用して、固有であり、scAAVrh.74.tMCK.hSGCB導入遺伝子カセット内に位置するtMCKプロモーターからすぐ下流にあるイントロン領域の配列を増幅した。以下のプライマーおよびプローブをこの研究に使用した。tMCKおよびMHCK7イントロン順方向プライマー5’-GTG AGG CAC TGG GCA GGT AA-3’(配列番号13)、tMCKおよびMHCK7イントロン逆方向プライマー5’-ACC TGT GGA GAG AAA GGC AAA G-3’(配列番号14)、およびtMCKおよびMHCK7イントロンプローブ5’-6FAM-ATC AAG GTT ACA AGA CAG-GTT TAA GGA GAC CAA TAG AAA -tamra-3’(IDT)(配列番号15)。コピー数は、ゲノムDNAの1マイクログラム当たりのベクターゲノムとして報告される。免疫細胞染色のための免疫組織化学。免疫組織化学を用いて免疫細胞を同定した。Fisherbrand Superfrost帯電顕微鏡スライド上の凍結組織切片を、抗ラットIg HRP検出キット(BD
Pharmagen,San Jose,CA,USA、Cat:551013):CD3(Cat:555273)、CD4(Cat:550280)、CD8(Cat:550281)、およびマクロファージ用のMac-3(Cat:550292)を使用して、ラット抗マウスモノクローナル抗体でインキュベートした。すべての一次抗体をリン酸緩衝生理食塩水で1:20に希釈した。陽性免疫染色を、ストレプトアビジン-HRPペルオキシダーゼectastain ABCペルオキシダーゼを含むDAB緩衝液で希釈したDABクロモゲンを用いて可視化した。10個のランダム40倍画像を各筋肉および各対応する染色について撮影した。単核細胞の数を数え、1mm当たりの総数として表した。
【0148】
免疫蛍光:心臓と共に、前脛骨筋(TA)、腓腹筋(GAS)、大腿四頭筋(QUAD)、大腰筋(PSOAS)、腰筋(GLUT)、上腕三頭筋(TRI)、および横隔膜筋からのクリオスタット切片(12μm)を、Pozgai et al.,Gene Therap.23:57-66,2016に記載されるような本願発明者らの以前に使用されたプロトコルによって、hSGCB導入遺伝子についての免疫蛍光染色を行った。切片を、マウスモノクローナルヒトベータ-サルコグリカン一次抗体(Leica Biosystems,New Castle,UK、カタログ番号NCL-L-b-SARC)で、1:100の希釈でインキュベートした。Zeiss AxioCam MRC5カメラを使用して、筋肉切片の4つの異なる象限をカバーする4つのランダムな20倍画像を撮影した。ベータ-サルコグリカン染色(>50%の筋膜染色)の陽性線維の割合を各画像について決定し、各筋肉について平均した。
【0149】
形態計測分析:分析のために、7ヶ月齢のC57BL6 WTマウス(n=5)、sgcb-/-マウス(n=5)、およびrAAV.MHCK7.hSGCBで6ヶ月治療したsgcb-/-マウス(n=5)由来の筋肉の12μm厚の凍結切片に対して、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色を行った。TA、GAS、QUAD、PSOAS、GLUT、TRI、および横隔膜筋において、中心核を有する筋線維の割合を決定した。さらに、GAS、PSOAS、およびTRI筋において、筋線維直径を測定した。各動物の筋肉当たり4つのランダム20倍画像をZeiss AxioCam MRC5カメラで撮影した。NIH ImageJソフトウェアを用いて中心核形成線維を定量化し、Zeiss Axiovision LE4ソフトウェアを用いて線維直径を測定した。
【0150】
オープンフィールドケージ活動のXレーザーモニタリング:オープンフィールド活動チャンバを使用して、実験マウスの全体的な活動を決定した。C57BL6 WT(n=6)からの7ヶ月齢マウスおよび未治療sgcb-/-(n=6)対照群を、rAAV.MHCK7.hSGCBで6ヶ月治療したsgcb-/-マウス(n=6)と共に、いくつか改変しつつ、以前に記載したプロトコルに従って、分析した(Kobayashi et al.,Nature 456:511-5,2008、Beastrom et al.,Am.J.Pahol.179:2464-74,2011)。全てのマウスを、マウスが最も活動的である早朝からその夜の終わり間近のサイクルで、毎日同じ時間に試験した。全てのマウスを、毎回薄暗い光下で、かつ同じ飼育係により、隔離室で試験した。不安を軽減し、マウスの通常の活動、ひいてはアッセイの結果に影響を与える可能性があり得る可変的行動を最小限に抑えるために、試験されたマウスは、個々に収容しなかった(Voikar et al.,Genes Brain Behav.4:240-52,2005)。マウスの行動を、Photobeam Activity System(San Diego Instruments,San Diego,CA)を使用して監視した。このシステムは、動物チャンバの前後かつ左右を横断する不可視赤外光線のグリッドを使用して、X-Y-Z平面内のマウスの位置および動きを監視する。活動を、5分間間隔の1時間サイクルで記録した。マウスを、データ取得開始の数日前に1時間セッションで活動試験室に順応させた。マウスを、4匹1組で、個別のチャンバ内で試験した。試験機器を使用毎に掃除して、我々の結果を変化させ得るマウスの反動的な可変的行動を低減した。収集したデータをMicrosoft Excelワークシートに変換し、全ての計算をExcelプログラム内で行った。各マウスのX平面およびY平面における動きの個々の光線中断を加算して、合計歩行を表し、Z平面における光線中断を加算して、1時間間隔内での垂直活動を得た。
【0151】
実施例2
scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの構築
図1に示すコドン最適化された全長ヒトSCGB cDNAを含有する導入遺伝子カセットを構築した。カセットは、コンセンサスKozak配列(CCACC)、SV40キメライントロン、合成ポリアデニル化部位、およびカセットの発現を駆動するのに使用される筋特異的MHCK7を含む。これは、近位プロモーターを有する内因性筋クレアチンキナーゼ遺伝子(enh358MCK、584bp)内の転写開始部位の約1.2kbの5’から採取した206bpエンハンサーを利用するMCKベースのプロモーターである3、12。カセットを、AAV8に対して93%相同である自己相補的(sc)AAVrh.74ベクターにパッケージングした。AAVrh.74は、マウスおよび非ヒト霊長類において、特に、循環によって筋肉に送達される場合に血液関門を通過する際に、安全かつ効果的であることが示されている(17、18、21)。
【0152】
実施例3
高用量scAAVrh.74.MHCK7.hSGCB全身送達の長期有効性
1.0×1012vg総用量(5.0x1013vg/kg)の用量のscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBを用いた以前の研究の強い結果に従って、ベクターを、高用量の3.0×1012vg総用量(2.0x1014vg/kg)で6匹のSGCB-/-マウスに尾静脈注射によって送達し、24週間の長期間の時間点で全身送達する場合のベクターの導入遺伝子発現および有効性を評価した。マウスに4~5週齢で注射し、注射後24週間に6匹のマウスすべてに対する完全な剖検を実施した。以下の筋肉が分析のために抽出された:TA、腓腹筋、大腿四頭筋、臀筋、大PSOAS、上腕三頭筋、横隔膜、および心臓。毒物学および生体内分布の研究のために臓器も摘出された。要するに、hSGCB導入遺伝子の発現は、以前に研究した用量(すべての筋肉で98.10%)と比較して、この高用量で治療24週間後に同じくらい高く(すべての筋肉で98.77%)、治療したマウスのすべての筋肉が、再びほぼ完全に形質導入された。これは、改善された筋肉組織病理および改善された機能を伴っていた。
【0153】
β-サルコグリカン発現
ヒトβ-サルコグリカンの免疫蛍光(IF)染色を使用し、hSGCBベクターの全身注射を与えた6匹のKOマウスすべての横隔膜および心臓に加えて、6種類の骨格筋におけるhSGCB導入遺伝子発現を決定した。これらの筋肉は、TA、腓腹筋(GAS)、大腿四頭筋(QUAD)、臀筋(GLUT)、大腰筋(PSOAS)、および上腕三頭筋(TRI)を含んでいた。発現分析および形質導入効率の目的で、6匹の治療マウス由来の筋肉についての画像を定量化に利用した。各筋肉の4つの20倍画像を撮影し、各画像についてhSGCB陽性線維のパーセントを決定して、各マウス由来の各筋肉についての平均形質導入率を得て、これらのデータを付録Cに示す。以下の図2Aのパネルに示される結果は、治療マウスからの代表的な画像であり、横隔膜および心臓を含む分析されたすべての筋肉において、ここでも再び98%以上の形質導入を示す。最後に、図2Bにも示されているウエスタンブロットは、初期の臨床用量の送達後に達成されたものと同様である、TAおよびTRI筋肉におけるhSGCBの発現を示す。
【0154】
治療された筋肉の組織病理学
以前に議論されたように、SGCB-/-マウス由来の筋肉は、骨格筋および心筋の両方が、壊死の複数の病巣領域を伴う顕著な筋線維萎縮および肥大を含む、広範囲のミオパチーを示す。また、単核細胞の炎症(リンパ球およびマクロファージ、好中球が散在している)の数が増加し、ジストロフィー性石灰化、脂肪浸潤、中心核形成、および線維症も増加する。以下の図3のヘマトキシリン&エオシン染色は、正常な野生型マウスと比較した場合に、SGCB-/-マウスにおけるこのジストロフィー表現型と、治療後の筋肉病変の改善を示す。組織学的パラメーターの定量化は、β-サルコグリカン遺伝子移入の結果として、多数の異なる骨格筋における中枢核形成(CN)の減少を示す。筋肉の組織病理学のより詳細な分析により、検査した3つの筋肉(腓腹筋、腰筋、上腕三頭筋)すべてでベクターで治療した罹患マウスの平均線維径の増加を伴う線維サイズ分布の正常化が明らかになる(図3)。
【0155】
全身送達の機能評価
高用量のhSGCB遺伝子移入が、罹患した筋肉にさらに大きな機能的利益をもたらすかどうかを判断するために、高用量のscAAVrh.74.MHCK7.hSCGBで治療したSGCB-/-マウスの横隔膜筋の機能特性。組織病理学が示され、SGCB-/-マウスの横隔膜および心臓における機能的欠損が確立された。β-サルコグリカンKO横隔膜は、BL6 WTマウスと比較して、比力出力の50.9%減少を示した(116.24mN/mm対236.67mN/mm)。高用量scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの尾静脈送達により、横隔膜においてほぼ100%のhSGCB発現が生じ、横隔膜の比力出力が回復し、259.97mN/mm(n=6)に改善した(図4)。これらのデータは、高用量hSGCB遺伝子移入が、β-サルコグリカンが欠損した罹患筋肉に対し、より大きな機能的利益をもたらすことを示す。
【0156】
高用量のAAV.hSGCB療法が、本願発明者らの臨床用量の送達で発生したように、罹患したSGCB-/-マウスに対して全体的な機能的利益をもたらし、最終的にSGCB-/-マウスの表現型を改善するかどうかを判断するために、オープンフィールドケージ活動のレーザーモニタリングを、マウスのすべての群で実行した。以下の図5のグラフは、WTと比較して、KOマウスにおいて後肢の垂直立ち上がりが48.9%減少すると共に、x平面およびy平面における全体的な歩行が58.6%有意に減少することを示す。高用量scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBで治療したマウスは、定性的観察によりKOと比較して、全体的により活動的であり、このことは、MCHK7治療したマウス(群あたりn=6)において、全体的な歩行が36.2%増加し、後肢の垂直立ち上がりが39.0%増加したという活動の定量化を示している(図5)。
【0157】
より高用量の3.0×1012vgの総用量(2.0×1014vg/kg)でscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBを静脈内注射すると、四肢骨格筋、横隔膜、および重要な心筋においてほぼ完全な形質導入およびhSGCB発現の回復を生じた(98%以上)(図2)。高レベルの形質導入が、自己相補性AAVベクターおよびrh.74血清型に起因して比較的低い用量(5.0×1013vg/kgおよび2.0×1014vg/kg)を使用して、身体全体のすべての筋肉において達成されたという事実は、この療法をLGMD2E患者へと変更するのに大きな期待を与える。β-サルコグリカンの非存在下、すべての筋肉においてみられる重度のジストロフィー病変は、治療後に有意に改善された(図3)。これらの結果は、横隔膜での比力出力において観察された増加と、オープンフィールドケージ活動の増加につながった(図4、5)。
【0158】
実施例4
毒物学およびベクター生体内分布
この研究の目的は、試験物品scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの送達後24週間で、雄および雌のSGCB-/-マウスにおけるSGCB遺伝子療法の潜在的な毒性または安全性の懸念を評価することであった。試験物品は、所望な用量を達成するために、各々5時間離れた2回の260μLの注射に分けられた総体積520μLで、4~5週齢のSGCB-/-マウスに静脈内(IV)経路によって3.0×1012vg総用量(2.0×1014vg/kg)で与えられた。本願発明者らのベクターの安全性を評価するために、LRSを注射された2匹のWTおよび2匹のKO対象と共に、ベクターで治療された6匹のSGCB-/-マウスの群から採取した筋肉組織およびすべての隔離した臓器の凍結切片に対してヘマトキシリン&エオシン染色を行った(表1)。
【表1】
【0159】
次に、これらの切片は、獣医病理学者によって毒性について正式にレビューされ、2匹の治療されたマウス(789番および790番)の肝臓において、肝病変のいくつかの病巣領域を除き、任意のマウス由来のほとんどの試料において、有害作用は検出されなかった。タンパク質発現およびベクター生体内分布も、qPCRおよぶウエスタンブロッティングを使用して評価され、これらのデータは、785番および787番の肝臓を除き、任意の非筋肉組織においてhSGCB導入遺伝子の発現がないことを示している。
【0160】
ベクター形質導入した組織の病理組織学的調査
全身送達を使用して2.0×1014vg/kgのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの安全性および毒性プロファイルを決定するために、心臓および5つの他の臓器と共に、横隔膜を含む種々の骨格筋をベクターを投与したSGCB-/-マウスおよび対照の群から採取し、各組織のH&E切片は、独立した獣医病理学者によって正式にレビューされた。群の詳細および研究デザインを表1に示す。
【0161】
scAAVrh.74.MHCK7.hSGCB組織病理学研究のための投薬コホート。2匹のBL6 WTマウスおよび2匹のSGCB-/-マウスにLRSを注射して、年齢を一致させた適切な対照として機能させた。6匹のSGCB-/-は、静脈内によって3.0×1012vg総用量を投与された。注射から24週間後、エンドポイント年齢28週でマウスを安楽死させた。
【0162】
まとめると、高用量scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの静脈内注射は、検査された任意の骨格筋の筋線維において、なんら顕微鏡的変化を誘発しなかった。筋肉において注目されたいずれの変化も、治療マウスと対照マウスの両方で見られ、偶発的な所見とみなされた。加えて、組織学的に評価された非筋肉組織のほとんどにおいて、治療に関連する病変はみられず、789番および790番のマウスの肝臓にのみ、小さな病巣肝臓病変を示した。
【0163】
臨床的肝機能をさらに評価するために、これらの雲母の血清中の肝酵素のレベルを評価した。アラニンアミノ基転移酵素(ALT)およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)のレベルを分析して、正常レベルと比較して上昇しているかどうかを判断するための、6匹のscAAVrh.74.MHCK7.hSGCB治療したマウスと共に、2匹の未治療BL6 WTマウスおよび2匹の未治療SGCB-/-マウス。以下の表2は、未治療SGCB-/-マウスが、健康なマウスの正常範囲から外れた、それぞれ平均288U/Lおよび784.5U/Lで上昇したALTおよびASTレベルを示すことを示す。しかし、AAVを投与したSGCB-/-マウスは、それぞれALTおよびASTについて上昇しておらず、89.5U/Lおよび330.75U/Lの正常範囲にある平均ALTおよびASTレベルを示す。
【0164】
まとめると、これらのデータは、この試験試料が試験対象によって十分に許容されたことを示している。さらに、2匹の年齢を一致させた未治療SGCB-/-マウス由来の参照標本と比較して、独立した組織病理学のレビューは、scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの投与が、治療SGCB-/-マウスにおける筋線維萎縮および破壊を実質的に減少させたことを示しており、そのため、試験物品が、SGCBの顕著な欠乏に関連するミオパチーの程度を軽減し得ることを示している。
【表2】
【0165】
表2は、scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBで治療したSGCB-/-マウス(n=6)と共に、未治療BL6 WT(n=2)およびSGCB-/-(n=2)の血清中のアラニンアミノ基転移酵素およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素のレベルの分析を提供する。右端の2つの列に報告されている平均は、3つのコホート各々についてのものである。単位/Lで報告される。N/Aは、試料が溶血していて分析することができないことを示す。
【0166】
ベクターゲノム生体内分布
リアルタイムの定量的PCRアッセイ(qPCR)を使用して、試験物品特異的なDNA配列の存在を調べた。生体内分布分析は、4匹のベクターを投与したSGCB-/-動物から集めた組織試料について行われた。陽性シグナルは、検出されたゲノムDNA1μgあたり100以上の一本鎖DNAコピーのいずれかであった。剖検時に組織を採取し、MHCK7プロモーターの配列に特異的なベクター特異的プライマープローブセットを使用した。表3は、高用量(3.0×1012vg総用量)のscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBを注射したマウス(785番、786番、789番、790番)由来の各組織試料において検出されたベクターゲノムコピーを、本願発明者らが以前に研究した臨床用量(1.0×1012vg総用量)で治療したマウス(712番、713番)における同じ組織試料からのvgコピー数と共に示す。
【0167】
scAAVrh.74.MHCK7.hSGCB転写物は、すべての集めた組織において、様々なレベルで検出された。予想通り、最高レベルは骨格筋と心臓で見られた。最低レベルは生殖腺、肺、腎臓、および脾臓で検出された。注目すべきことに、元の臨床用量(5.0×1013vg/kg)をこの高用量(2.0x1014vg/kg)コホートと比較した場合、ベクターゲノムのコピー数は、各組織で類似していた。これらのデータは、試験試料がベクター投与マウスの調査された全ての組織に効率的に送達されたことを示している。
【表3】
【0168】
表3は、4匹の高用量治療されたSGCB-/-マウスの臓器および筋肉のベクターゲノムコピー数を提供する。値は、vg/μgゲノムDNAで示されている。
【0169】
上のqPCRの結果が示すように、高用量scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBを静脈内送達すると、ほとんどの組織においてベクター転写物が様々なレベルで分布するが、最高レベルは、筋肉で発生する。したがって、本研究のこの部分の目的は、これらの組織におけるヒトβ-サルコグリカン導入遺伝子のタンパク質発現を決定し、筋特異的MHCK7プロモーターの機能性を確実にすることであった。ウエスタンブロッティングを使用して、4匹の治療マウス(785番、787番、789番、および790番)由来の組織試料におけるβ-サルコグリカン発現を検出した。
【0170】
β-サルコグリカンタンパク質の発現は、すべての骨格筋試料および心臓試料において、さまざまな量で観察され、マウス785番および787番の肝臓で検出された。(表4、図6。)肝臓での発現をさらに調査するために、β-サルコグリカンタンパク質発現のウエスタンブロッティングを、6匹すべての治療マウス(785番、786番、787番、788番、789番、および790番)由来の肝臓組織で行った。図6に示すこのウエスタンの結果は、ベクター投与マウス(785番、786番、787番、および788番)の6つの肝臓のうち4つでβ-サルコグリカンタンパク質の発現がみられることを示す。以下の表5に、完全な生体内分布ウエスタンが実行された6匹すべてのマウス(785番、796番、787番、788番、789番、および790番)からの詳細なβ-サルコグリカンタンパク質発現の結果を列挙している。
【表4】
【0171】
表4は、2.0×1014vg/kgのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBで全身治療された6匹のSGCB-/-マウス由来の個々の組織におけるβ-サルコグリカンタンパク質の発現を提供する。Xは、対応する組織におけるタンパク質発現を示す。NA=アッセイは実行されていない。
【0172】
MHCK7プロモーターを使用したこの心臓での発現は、臨床的に適用可能な投薬レベルで非常に有望であり、LGMD2E患者のβ-サルコグリカン欠損における心臓疾患の高い発生率を考慮すると、全身送達は、これらの患者に臨床的に大きな利益をもたらす。この提案された高用量の3.0×1012vg総用量(2.0×1014vg/kg)でのscAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの静脈内尾静脈注射を受けたSGCB-/-マウスを、完全に剖検し、抽出されたすべての筋肉および臓器を、H&Eによって染色し、レビューのために独立した獣医病理学者に送った。4匹のベクター投与マウス(785番、786番、787番、および788番)由来の肝臓は、全身投薬で以前に示されたβ-サルコグリカントランスジェニックタンパク質の発現を示した(Salva et al.,Mol Ther,2007.15(2):p.320-9)。6匹の治療された動物のうちの2匹(789番および790番)は、最小限から軽度の病巣肝病変を有すると報告されたが、6匹の治療されたマウスからレビューされた他のすべての臓器および筋肉は、有害作用を示さなかった。マウス789番および790番由来の肝臓における軽度の肝病変の臨床症状を評価するために、6匹すべての治療マウスの血清中の肝酵素レベルであるアラニンアミノ基転移酵素およびアスパラギン酸アミノ基転移酵素を測定した。表4に示すこの実験の結果は、6匹の治療マウスからの平均ASTおよびALTレベルが正常範囲内にあることを示しており、このことは、臨床的な肝酵素異常がないことを示している。動物789番および790番由来の肝臓は、β-サルコグリカントランスジェニックタンパク質の発現がないことに加えて、より低いvgコピー数(表3)を示した。まとめると、このデータは、トランスジェニックβ-サルコグリカンタンパク質が、これら2匹の動物の肝臓から除去された可能性があることを示す。しかし、骨格筋の発現または肝機能への影響はなかった。
【0173】
高用量(2.0×1014vg/kg)では、肝臓における持続的なβ-サルコグリカン発現がみられるが、低用量(5.0×1013vg/kg)で治療した動物では観察されなかった。提供されたどの用量でも、明白な毒性は観察されていない。本試験は、NOAEL用量(5.0×1013vg/kg)で開始される。患者の肝毒性は綿密にモニタリングされ、肝酵素の上昇は、AAVを使用した脊髄性筋萎縮症の別の全身送達試験においてコルチコステロイドを使用して効率的に管理されている(Mendell et al.,N Engl J Med 2017;377:1713-1722)。
【0174】
実施例5
LGMD2E非盲検試験
筋特異的MHCK7プロモーター(scAAVrh74.MHCK7.hSGCB)の制御下にあるヒトSGCB遺伝子を保有する組換えAAVrh74は、末梢静脈からの全身注入を介し、1回送達された。ベクターは、必要に応じて、およそ10ml/kgの乳酸Ringer中で送達され、およそ1~2時間かけて注入される。患者は、グルココルチコステロイドの副腎抑制があり、30日後にせいぜいごくわずかであったが、注意のために、各登録者の最大用量を1週間で50%減らし、停止する前に1週間で再び50%減らす。
【0175】
コホート1には、両方の対立遺伝子にSGCB変異が確認されており、AAVrh74抗体に対して陰性であり、正常な100メートル歩行試験の40%を超える、4~15歳の3人の治療対象が含まれていた。各対象は、5×1013vg/kgの用量を受けた。投薬から60日後、麻酔専門医(または麻酔医)の助言の下で、前脛骨筋および上腕二頭筋に適切な麻酔をかけて筋生検を行った。生検は、超音波ガイド下で行ってもよい。各対象は、遺伝子移入の1日前に1mg/kgのプレドニゾンを受け、30日間、用量を記録した。
【0176】
生検を読み取り、コホート1のすべての対象において、筋繊維の50%以上が、TAおよび上腕二頭筋においてSGCBを発現する場合、コホート2において、用量の増加はしない。これらの基準を満たさない場合、コホート2の対象は、2×1014vg/kgを受ける。コホート2の患者のうち3名は、プラセボ乳酸Ringerを受ける。これらのプラセボ対象は、およそ1年後に、それらのコホートで治療された対象と同じ用量で治療される。
【0177】
注射前のベースライン測定(-60日目から-2日目まで)
インフォームドコンセントを取得し、登録手順を完了した後、患者が服用しているすべての医薬およびサプリメントの記録を含む、ベースライン患者病歴を集めた。安定したベースラインを確立するためのベースライン機能試験を、ベースライン検査の一貫性について以前の自然な成長経過の検査において集められた機能試験結果と比較した。スクリーニング来院時に、100mの時間試験は、組み入れのために、年齢、身長および体重が一致する健康な対照について予想されるものの40%以上でなければならない。ある対象がスクリーニングに組み入れられない場合、その対象は、LGMDの自然な成長経過の試験に参加し続けてもよい。以下の評価は、この試験についての対象の適格性を確認するために実行される。治療投与前に完了しなければならないベースライン試験には、以下が含まれる。
ベースライン
遺伝子移入前の-60日目から-2日目まで
・インフォームドコンセント
・病歴
・身体検査/バイタル
・EKG
・心臓MRI(麻酔なしで行われるが、その手技の忍容性が低く、この疾患における心臓評価の重要性を考慮している場合は、Nationwide Children’s protocolで許容可能なプロトコルを使用した、麻酔を行うオプションについて説明する)
・麻酔なしの骨格筋MRI
・B型肝炎、C型肝炎、HIVの抗体(IgG、IgM)試験
・安全性実験室:
○差次的であり、血小板を含む全血球計算(CBC)
○血清総タンパク質
○血清ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)
■GGTを使用して、ALTまたはASTではなく肝酵素をモニタリングする。これらの酵素は損傷した筋肉から供給されるため、レベルは、9~10倍のULNに達する場合がある。ALTおよびASTは、日々30~40%変動する可能性があり、解釈を困難なものにする。GGTは、筋肉疾患の影響を受けない22、23
○血清総ビリルビン
○グルコース
○クレアチンキナーゼ(CK)(CKレベルは、好ましくは2日間の来院でのみ採取されるが、PIの裁量により1日の来院で試験される場合がある)
○クレアチニン/BUN
○シスタチンC
○アルカリホスファターゼ
○アミラーゼ
○AST
○ALT
○プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)
○電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、CO2
○尿検査
・rAAVrh74に対する血清結合抗体
・β-サルコグリカンに対する血清結合抗体
・AAVrh74カプシドタンパク質およびβ-サルコグリカンに対するELISpotアッセイ
・妊娠試験(出産の可能性があると調査員が判断した場合)
・膝と肘の屈筋と伸筋、股関節内転筋、および肩外転筋の強度試験(ハンドヘルドダイナモメーター測定)
・PROMISアンケート
・活動モニタリングのための装置を設定する
・肺活量測定を含む肺機能試験(PFT)
・時間機能試験[100メートル時間試験、4段の階段を上る、タイムアップアンドゴー]
・ワークスペース体積
・肢帯型筋ジストロフィー(NSAD)のノーススター評価
・上肢および下肢の筋肉のベースライン筋生検は、ガイド付き超音波を使用する場合がある。患者へのリスクが最も少ない分析に適した筋肉を標的とする臨床所見に応じて選択する。プラセボ遅延対象には、2回目のベースライン筋生検を実施しない。
・胸部X線
-1日目
・身体検査およびバイタルサイン
・プレドニゾンまたは類似のグルココルチコイドを開始する
・注射部位の可能性がある部位の写真
・安全性実験室:
○差次的であり、血小板を含む全血球計算(CBC)
○血清総タンパク質
○血清ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)
■GGTを使用して、ALTまたはASTではなく肝酵素をモニタリングする。これらの酵素は損傷した筋肉から供給されるため、レベルは、9~10倍のULNに達する場合がある。ALTおよびASTは、日々30~40%変動する可能性があり、解釈を困難なものにする。GGTは、筋肉疾患の影響を受けない22、23
○血清総ビリルビン
○グルコース
○クレアチンキナーゼ(CK)(CKレベルは、好ましくは2日間の来院でのみ採取されるが、PIの裁量により1日の来院で試験される場合がある)
○クレアチニン/BUN
○シスタチンC
○アルカリホスファターゼ
○アミラーゼ
○AST
○ALT
○プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)
○電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、CO2)
○尿検査
【0178】
プレドニゾンの予防的投与
AAVベクターに対する予想される抗原特異的T細胞応答は、遺伝子移入後2~4週間の間に予想された。このような抗原特異的T細胞応答に対する1つの考えられる結果は、形質導入された細胞のクリアランスおよび導入遺伝子発現の喪失であった。AAVベースの治療に対する宿主の免疫応答を弱めるために、手順の24時間前に、対象は、およそ1mg/kg/日の経口による予防的プレゾニゾンまたは同等のグルココルチコイドから始め、最大用量60mg/日で投与することができた。必要に応じて、同等のグルココルチコイドをおよそ1mg/kg/日の用量で静脈内投与することも可能である。治療は、およそ1ヶ月続いた。プレゾニゾンまたは同等のグルココルチコイドの量を漸減させるプロトコルを、個々の対象の遺伝子移入に対する免疫応答に基づいて実施し、ELISpotアッセイによって、またGGTによる肝機能モニタリングによって評価した。
【0179】
遺伝子移入のプロトコル
scAAVrh74.MHCK7.hSGCB遺伝子ベクターは、Manual of
Operating Procedures(MOOP)に従って、研究医師によって調製された。臨床現場に輸送される直前に、試験物品の適切な希釈は、薬局によって完了した。ベクターを、乳酸菌Ringerを使用して希釈し、滅菌60mlポリプロピレンシリンジで抜き取った。希釈の文書化は、標準的な薬局プロトコルに従って、薬局によって完了した。
【0180】
ベクターを含む注射器は、室温で運ばれ、調製から24時間以内に対象に投与された。scAAVrh74.MHCK7.hSGCBの取り扱いは、バイオセーフティーレベル1ベクターのコンプライアンス基準に従った。(NIH Guidelines for
Research Involving recombinant or Synthetic Acid Molecules[NIH Guidelines],April 2016,Department of Health and Human Services,National Institutes of Health Office of Science Policy,Office of Biotechnology Activities。
【0181】
対象は、遺伝子移入の前夜に、PICUまたは肺PICUのいずれかで遺伝子移入が認められ、PIまたはCo-Iのいずれかによって検査された(-1日目)。対象は、遺伝子移入手順の前夜の深夜以降に、NPOを維持した。手順は、病室で、無菌条件下で実施された。
【0182】
ベクターの送達のために、ヘパリンロックを備えた静脈内カテーテルを末梢静脈に配置した。最初の部位に合併症が発生した場合に使用するために、2番目の静脈内カテーテルを配置した。遺伝子移入の日に、これらの場所の写真を撮影した。患者が目覚めている間に、ベクターを静脈内送達した。治験担当医師が必要と判断した場合、患者は、プロトコルに従って意識下での鎮静を受けた。患者は、シリンジポンプを使用して、60mLポリプロピレンシリンジを介し、およそ約1~2時間にわたって投与されるscAAVrh74.MHCK7.hSGCBにより投薬された。患者のバイタルサインは、注入中、15分ごとに4時間、注入後の残りの24時間は1時間ごとにモニタリングされた。
【0183】
遺伝子移入後のモニタリング
患者のバイタルサインは、15分ごとに4時間、注入後の残りの24時間は1時間ごとにモニタリングされた。手順の翌日、安全性実験室および尿検査をチェックした。併用薬およびすべての有害事象/重篤な有害事象も、注射後にモニタリングされ、文書化された。対象は、遺伝子移入の1日後に退院した(安全性が懸念される副作用が観察されない場合には)。対象は、7、14、30、60、90、180日目および9、12、18、24、30および36ヶ月目にフォローアップ来院のために戻ってきた。これらの各々日付での毒性モニタリングには、以下が含まれていた。
・身体検査およびバイタルサイン
・安全性実験室:
○差次的であり、血小板を含む全血球計算(CBC)
○血清総タンパク質
○血清ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)
■GGTを使用して、ALTまたはASTではなく肝酵素をモニタリングする。これらの酵素は損傷した筋肉から供給されるため、レベルは、9~10倍のULNに達する場合がある。ALTおよびASTは、日々30~40%変動する可能性があり、解釈を困難なものにする。GGTは、筋肉疾患の影響を受けない22、23
○血清総ビリルビン
○グルコース
○クレアチンキナーゼ(CK)(CKレベルは、好ましくは2日間の来院でのみ採取されるが、PIの裁量により1日の来院で試験される場合がある)
○クレアチニン/BUN
○シスタチンC
○アルカリホスファターゼ
○アミラーゼ
○AST
○ALT
○プロトロンビン時間(PT)、部分トロンボプラスチン時間(PTT)
○電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物、CO2)
○尿検査
・免疫学検査
・30日目から始まる理学療法の評価(100メートル時間試験、強度試験、PROMISアンケート、肢帯型筋ジストロフィー(NSAD)のノーススター評価、4段の階段を上る、タイムアップアンドゴー、およびワークスペース体積)
・尿検査
・注射部位の写真(-1、0、1、7、14、30日目)
・有害事象(すべての試験来院で収集)
・EKG(180日目、12、24、36ヶ月目)
・心筋および骨格筋のMRI(12、24、36ヶ月目)、
・肺機能試験(60、180日目、12、24、36ヶ月目)
・コホート1および2の場合は60日目、すべての対象について治療から2年後の遺伝子移入後の筋生検。筋肉の選択は、治療前の生検部位と同じである。リスクによって生検を反対側の肢で行うことを指示しない限り、治療後の生検は、好ましくは同じ側であろう。
【0184】
長期モニタリング
遺伝子移入後の長期的な対象のフォローアップに関して、最近のFDAガイドラインに従う。議論した通り、rAAVまたは導入遺伝子に関する以前の経験に基づいて、遺伝子移入に関連する遅延有害事象の可能性は非常に低い。プロトコルのアクティブフェーズを組み込んだ、3年間にわたる短期間の安全性が評価される。新たに特定されたリスクが、製品に関連している場合、または対象が、この期間中に何らかの有害事象に苦しんでいる場合、FDAガイドラインに従って長期のフォローアップが開始される。
【0185】
フォローアップ期間を延長する必要がある兆候がある場合は、CBERに通知される。すべての対象には、治験治療または治験参加に関連すると考えられる重篤な有害事象を経験した場合に、治験責任医師または治験コーディネーターに連絡する方法についての書面による指示が提供される。この情報は、インフォームドコンセント文書に含まれている。すべての対象は、住所または連絡先情報の変更を治験責任医師に通知するように指示されている。
【0186】
試験後のフォローアップ
遺伝子移入後の長期的な対象のフォローアップに関して、最近のFDAガイダンスに従う。ガイドラインに示されているように、ベクターは、遺伝子移入に関連する遅延有害事象の可能性は非常に低い。プロトコルのアクティブフェーズを組み込んだ、投薬後3年間にわたる安全性が評価される。新たに特定されたリスクが、本願発明者らの製品に関連している場合、または対象が、この期間中に何らかの有害事象に苦しんでいる場合、FDAガイドラインに従って長期のフォローアップが開始される。
【0187】
臨床試験の主要アウトカム
これは、第I相臨床試験であり、安全性が主要アウトカムである。8週間目の筋生検での定量的免疫蛍光またはイムノブロット分析によって判断されるような(ベースラインの上20%以上)、β-SGタンパク質発現の実証。
探索的アウトカム
・遺伝子移入から3年後の各参加者について、ベースラインと比較して、100メートル時間が10%以上改善。
・遺伝子治療後のCKの減少は、探索的アウトカムとして役立つ。CKレベルは、好ましくは2日間の来院でのみ採取されるが、PIの裁量により1日の来院で試験される場合がある。
・ワークスペース体積
・膝と肘の屈筋と伸筋、股関節内転筋、および肩外転筋のハンドヘルドダイナモメーター測定
・cMRIで測定した駆出率の改善
・骨格MRI
・肺活量測定を含む肺機能試験(PFT)
・時間機能試験[4段の階段を上る、タイムアップアンドゴー]
・肢帯型筋ジストロフィー(NSAD)のノーススター評価
○Fitbitまたは同様の活動モニタリングデバイスによって決定された活動レベル
○PROMIS Upper Extremity and Mobilityアンケートを使用した身体機能の患者レポート
【0188】
コホート1の結果
コホート1のすべての対象は、試験の時点で良好であった(対象1および2、注射後の90日目に検査した、対象3、注射後の60日目に検査した)。すべての対象は、注射後9ヶ月目まで順調に推移した。この研究では、1例の重篤な有害事象があり、1名の対象が、ステロイドの中止後に、肝酵素およびビリルビンの上昇を示した。この事象は、ステロイドの増加で解決した。対象のうちの2名は、肝酵素が上昇し、ステロイドの増加で解決し、これらのレベルはベースラインに戻った。
【0189】
前脛骨筋および上腕二頭筋の筋針生検を使用して、コホート1における60日目までのベースラインと比較して、導入遺伝子の発現を定量化した。プライマリーエンドポイントは、SGCBタンパク質の20%以上の発現であった。SGCBの発現がすべての治療対象においてベースラインを50%以上上回っている場合、投薬量の増加はしない。SGCBの発現がすべての治療対象で50%未満の場合、コホート2およびプラセボ対象の用量を、2x1014vg/kgに増加する。可能であれば、治療から2年後の生検は、ベースライン生検と同じ筋肉で行われる。すべての生検試料は、コンピューターで生成されたコードを使用して、検査室長によって盲検化され、コード化された。発現の定量化は、筋生検の直接的な免疫蛍光およびウエスタンブロット検査を使用して行われた。Bioquant(登録商標)自動化ソフトウェアを使用して、SGCBを発現する筋線維の数を定量化する。ベースライン患者背景を表5に示す。
【表5】
【0190】
図7は、ベクター投与の8週間後の3名すべての対象の筋肉における強固なSGCB発現を示す代表的な画像を提供する。表6は、各対象におけるSGCB陽性線維の平均強度およびパーセンテージを提供する。コホート全体の免疫組織化学染色の平均強度は47%であり、SGCB陽性線維の平均パーセンテージは51%であった。図8は、ベクター投与の90日後の3名の対象におけるβ-サルコグリカン発現の検出を示すウエスタンブロットを提供する。ウエスタンブロットのデータは、遺伝子移入が、完全長のβ-サルコグリカンを送達することを示す。ウエスタンブロットによる定量化を表7に提供し、β-サルコグリカンタンパク質の平均発現が正常と比較して約36.1%増加していることを示している。
【表6】
【表7】
【0191】
集めた筋生検について、リアルタイムの定量的PCRアッセイ(qPCR)を使用して、試験物品特異的なDNA配列の存在を調べた。陽性シグナルは、検出されたゲノムDNA1μgあたり100以上の一本鎖DNAコピーのいずれかである。筋生検では、DNA1μgあたり平均8.4E+04ベクターコピー、および核あたり0.6コピーが検出された。
【0192】
各対象におけるサルコグリカン複合体の存在も調査された。ウエスタンブロットによって決定されたように、平均マイクロジストロフィン発現は、正常の36%であった(n=3)。加えて、アルファ-サルコグリカンの発現は、免疫組織化学によって定量化された。図9は、対象におけるベータ-サルコグリカンの発現が、アルファ-サルコグリカンの発現によって示されるように、サルコグリカン複合体を上方制御したことを示す。
【0193】
対象の血中のクレアチンキナーゼ(CK)レベルを試験した。表9に示すように、対象のCKレベルは平均で約82%減少した。
【表9】
【0194】
実施例6
β-サルコグリカン遺伝子移入は、膜に対するサルコグリカン複合体を回復させる。
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBにより治療すると、膜に対するサルコグリカン複合体が回復した(図10)。図10は、試験中の患者の膜でのβ-サルコグリカン、α-サルコグリカンの発現の回復、ならびにβ-サルコグリカンおよびα-サルコグリカンの療法の共局在化を示す。β-サルコグリカンとα-サルコグリカンの共局在化は、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBがサルコグリカン複合体を回復させたことを示す。
【0195】
実施例7
β-サルコグリカン遺伝子移入で治療されたLGMD2E患者は、投与後3ヶ月目の100メートル時間試験で改善した。
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBによる治療は、遺伝子移入からわずか3ヶ月間で、100メートル時間試験で明らかな改善を患者にもたらした(図11)。100メートル時間試験などの時間歩行試験を使用して、筋ジストロフィーを有する対象において機能を測定する。この研究の試験は、治療後の患者のパフォーマンスと比較した、患者のベースラインパフォーマンスを測定した。図11は、遺伝子移入後の最初の3ヶ月間にわたる3名の対象のベースラインからの平均変化率を示す。このデータは、3ヶ月後にベースラインを超えて15%を超える平均増加があったことを示しており、β-サルコグリカン遺伝子移入後の運動機能の改善を示している。
【0196】
実施例8
β-サルコグリカン遺伝子移入で治療されたLGMD2E患者は、投与後9ヶ月で改善された機能測定値を示した。
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBによる治療は、scAAVrh.74.MHCK7.hSGCBの全身投与の9ヶ月後に、明らかな改善を患者にもたらした。3名の患者が、機能試験に参加した。例えば、100m時間試験では、ベースライン(投与前)で、1名の患者は、100mを走ったときに臀部の伸びおよび屈曲に制限があった。しかし、投与後9ヶ月では、同じ患者が、走ったときに臀部の伸びおよび屈曲が改善され、速度が速くなったことが示された。加えて、トランクコントロール試験では、別の患者は、投与から9ヶ月後に、起き上がるまでの時間の試験で改善を示した。ベースライン時または投与前に、この対象は、トランクコントロールが不良であったが、これも投与から9ヶ月後に改善された。また、座位試験では、患者は、座位から立ち上がるように求められた。例えば、残りの患者は、投与前と比較して、投与から9ヶ月後に、起床時間が短縮された。これらのデータを表10にまとめている。
【表10】
【0197】
年齢を一致させた自然な成長経過の試験は、未治療対象(自然な成長経過の対象と示される、表11を参照)およびscAAVrh74.MHCK7.hSGCBを投与された対象について、NSADにおいてベースラインからの変化を比較し、本明細書では、「肢帯型筋ジストロフィーのノーススター評価」と示される。図12A~Cに示すように、自然な成長経過の対象は、200日間にわたってNSADの変化が安定して減少したが、一方、治療を受けた対象は、270日間にわたってNSADの変化の安定した改善を示し(図12Aおよび12C)、一方、治療を受けた対象は、270日間にわたってNSADの変化の安定した改善を示した(図12B)。
【表11】
【0198】
実施例9
製剤
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBは、20mM Tris(pH8.0)、1mM塩化マグネシウム(MgCl2)、200mM塩化ナトリウム(NaCl)、および0.001%ポロキサマー188を含有する緩衝液中で製剤化される。一実施形態では、製剤の情報は、表12にまとめられている。
【表12】
【0199】
医薬製品は、-60℃以下の温度で凍結液として保存される。凍結した医薬製品は、臨床投与の前に解凍されなければならない。
【0200】
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBは、-60℃以下の温度で保存され、この温度では、この物質は、長期保管条件で安定である。scAAVrh74.MHCK7.hSGCBバイアルは、室温(20℃~25℃)で解凍される。解凍したベクターバイアルをアルコールで拭き、バイオセーフティキャビネットに入れる。scAAVrh74.MHCK7.hSGCB製剤は、無菌条件下、クラスIIバイオセーフティキャビネット内で無菌的に調製される。
【0201】
静脈内(IV)注入用のscAAVrh74.MHCK7.hSGCBは、バイアル(バイアルあたり2mL)で供給される。総vg用量は、患者の体重に基づいて計算される。バイアルの適切な数は、5×1013vg/kgまたは2×1014vg/kgの相当量で、および2×1013vg/mL、5×1013vg/mL、または4×1013vg/mlのscAAVrh74.MHCK7.hSGCBロットについての製品力価で、体重に基づいて各患者について決定される。
【0202】
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBは、1回のIV注入として投与され、シリンジポンプを介し、末梢四肢静脈におよそ1~2時間かけて送達される。
【0203】
実施例10
高齢患者および持続性
scAAVrh74.MHCK7.hSGCBを介する遺伝子置換は、LGMD-2Eおよび他の関連疾患の治療において肯定的な結果を示している。この研究は、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBが、より重大な影響を受けた古い筋肉を治療する能力と、AAVウイルスベクターの長期間持続性を試験するためのものである。まず、長期間持続性試験のために、4週齢のsgcb-/-マウスを、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBで全身治療した。治療から24ヶ月より後で、形質導入されたすべての筋肉で、高レベルのベクターゲノムコピー数がPCRにより検出された。さらに、治療された筋肉の免疫蛍光染色は、以前の時間点と比較して、すべての筋肉においてタンパク質発現レベルの減少を示さず(95%を超える)、hSGCBタンパク質は、まくに正しく局在化したままであった。
【0204】
第2に、LGMD2E(β-サルコグリカン)のマウスモデルを、より高齢で(例えば、12ヶ月)、scAAVrh74.MHCK7.hSGCBベクターの全身送達により治療する。治療から6ヶ月後のエンドポイントで、これらのマウス由来の筋肉を、タンパク質発現、組織学的救済、および機能改善について評価する。特に、横隔膜および心臓を含め、下肢、上肢、および近位胴体の筋肉全体にわたり、筋肉における遺伝子発現が観察される。さらに、線維症のレベルを、未治療対照と比較する。さらに、機能研究には、前脛骨筋(TA)および横隔膜(DIA)の筋肉の力出力、およびTA筋肉の収縮により誘発される損傷に対する抵抗の評価が含まれる。
【0205】
本開示は特定の実施形態といった点で記載された一方、その変更および修正が生じることが当業者に理解されるだろう。したがって、特許請求の範囲内に見られるようなこのような制限のみが本開示に課せられるべきである。
【0206】
本出願で参照される全ての文書は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
参考文献:
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図1
図2A
図2B
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【配列表】
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