(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013366
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】杭芯位置の墨出方法及び墨出位置検査方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/00 20060101AFI20240125BHJP
G01C 15/06 20060101ALI20240125BHJP
B25H 7/04 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G01C15/00 102C
G01C15/06 T
B25H7/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022115408
(22)【出願日】2022-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】喜田 浩行
(72)【発明者】
【氏名】中谷 洋志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂郎
(72)【発明者】
【氏名】川越 貴子
(72)【発明者】
【氏名】片山 厚子
(72)【発明者】
【氏名】裏橋 信夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊二
(72)【発明者】
【氏名】服部 里代
(57)【要約】
【課題】容易かつ高精度に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる杭芯位置の墨出方法等を提供すること。
【解決手段】墨出方法が、複数の杭の設計上の打設位置の情報を情報端末50に読み込ませるステップ、ポール21、アンテナ22、及び受信機23を含む移動局20におけるアンテナ22が受信した信号に基づく情報を受信機23から情報端末50を介して補正情報生成装置40に送信するステップ、補正情報生成装置40が生成したRTK技術に基づくポール21の位置情報を情報端末50に送信するステップ、情報端末50の表示部51に特定の打設位置とポール21の位置の相対的な位置関係を表示するステップ、及び表示部51におけるポール21の位置と上記特定の打設位置が一致するときの現場における移動局20のポール21の位置を墨出位置として特定するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の杭が打設される現場において、杭芯の墨出位置を検査する方法であって、
前記複数の杭の設計上の打設位置の情報が情報端末に入力されるステップと、
地上に設置された固定局が人工衛星から受信した第1信号に基づく固定局情報を補正情報生成装置に送信すると共に、棒、アンテナ、及び受信機を含む移動局における前記アンテナが受信した第2信号に基づく前記棒の位置情報を前記受信機から前記情報端末を介して前記補正情報生成装置に送信するステップと、
前記補正情報生成装置が生成したリアルタイムキネマティック技術に基づく前記位置情報を前記情報端末に送信するステップと、
前記情報端末を操作することで特定の打設位置を選択するステップと、
前記情報端末の表示部に前記特定の打設位置と前記棒の位置の相対的な位置関係を表示するステップと、
前記表示部における前記棒の位置と前記表示部における前記特定の打設位置が一致する打設特定位置に前記棒が鉛直方向に延びた状態で位置するステップと、
前記特定の打設位置に対応する特定の墨出位置が前記打設特定位置の所定範囲内に存在するか否かに基づいて前記特定の墨出位置を検査するステップと、
を含む、墨出位置検査方法。
【請求項2】
複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、
前記複数の杭の設計上の打設位置の情報が情報端末に入力されるステップと、
地上に設置された固定局が人工衛星から受信した第1信号に基づく固定局情報を補正情報生成装置に送信すると共に、棒、アンテナ、及び受信機を含む移動局における前記アンテナが受信した第2信号に基づく前記棒の位置情報を前記受信機から前記情報端末を介して前記補正情報生成装置に送信するステップと、
前記補正情報生成装置が生成したリアルタイムキネマティック技術に基づく前記位置情報を前記情報端末に送信するステップと、
前記情報端末を操作することで特定の打設位置を選択するステップと、
前記情報端末の表示部に前記特定の打設位置と前記棒の位置の相対的な位置関係を表示するステップと、
前記表示部における前記棒の位置と前記表示部における前記特定の打設位置が一致するときの前記現場における鉛直方向に延びた前記棒の位置を、前記特定の打設位置に対応する墨出位置として特定するステップと、
を含む、杭の杭芯位置の墨出方法。
【請求項3】
複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、
前記複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて前記打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローンが飛行するステップと、
前記ドローンから前記打設特定位置にレーザ光を照射するステップと、
前記レーザ光が照射された位置に墨出を行うステップと、
を含む、杭の杭芯位置の墨出方法。
【請求項4】
複数の杭が打設される現場において、杭芯の墨出位置を検査する方法であって、
前記複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて前記打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローンが飛行するステップと、
前記ドローンから前記打設特定位置にレーザ光を照射するステップと、
前記打設特定位置に対応する前記墨出位置が、前記レーザ光が照射された位置の所定範囲内に存在するか否かに基づいて前記墨出位置を検査するステップと、
を含む、墨出位置検査方法。
【請求項5】
複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、
前記複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて前記打設位置であると特定した打設特定位置まで移動体が走行するステップと、
前記移動体から前記打設特定位置に塗料を吐出するステップと、
を含む、杭の杭芯位置の墨出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭芯位置の墨出方法及び墨出位置検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤が柔らかい箇所に高層ビルなどの大型建築物を建築する場合、地中深くの硬い地盤面まで多数の杭を打設し、その杭の上に建築物を建築することがある。地面に杭を打設する際には、先ず、設計図に沿って地面の杭芯位置に目印を付ける墨出を行う。墨出は、高精度で行わなくてはならない。したがって、墨出を行う際には、通常、光学式測量機を用いて杭芯位置を精度よく測量し、そこに目印を付ける。その目印の位置が墨出位置であり、例えば、目印として仮杭が立てられる。この墨出では、例えば、特許文献1に記載されているように、対象反射物体に向けて照射光束を照射し、対象反射物体により反射された反射光束に基づき対象反射物体を検出すると共に対象反射物体までの距離を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
墨出は、光学式測量機を用いて杭芯位置を精度よく測量しなければならないので、労力や熟練が必要になる。特に、打設する杭の数が数百にも及ぶ場合、その問題が顕著になる。また、墨出が行われた後においても、建設現場では重機が往来するため、墨出位置(仮杭位置)がずれる虞がある。また、上記のように、墨出は、高精度で行われなくてはならないので、実際に杭を打設する前に墨出位置が正確であるか検査をする作業が必要となる。しかしながら、墨出と同様に、光学式測量機を用いた墨出位置の検査に大きな労力及び時間が必要になり、特に、打設する杭の数が数百にも及ぶ場合、その問題が顕著になる。更には、光学式測量機を用いて隅出位置の検査をしようとしても、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合、それらが障害となって、光測定の基準点から墨出位置まで一直線に視通を確保することが困難な場合もある。そして、そのような場合には、光測定において視通を確保できる点を経由して墨出位置を計測しなければならず、墨出位置を検査することに更に労力が必要になる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、容易かつ高精度に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる杭芯位置の墨出方法、及び容易かつ高精度に墨出位置の検査を行うことができる墨出位置検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様の墨出位置検査方法は、複数の杭が打設される現場において、杭芯の墨出位置を検査する方法であって、前記複数の杭の設計上の打設位置の情報が情報端末に入力されるステップと、地上に設置された固定局が人工衛星から受信した第1信号に基づく固定局情報を補正情報生成装置に送信すると共に、棒、アンテナ、及び受信機を含む移動局における前記アンテナが受信した第2信号に基づく前記棒の位置情報を前記受信機から前記情報端末を介して前記補正情報生成装置に送信するステップと、前記補正情報生成装置が生成したリアルタイムキネマティック技術に基づく前記位置情報を前記情報端末に送信するステップと、前記情報端末を操作することで特定の打設位置を選択するステップと、前記情報端末の表示部に前記特定の打設位置と前記棒の位置の相対的な位置関係を表示するステップと、前記表示部における前記棒の位置と前記表示部における前記特定の打設位置が一致する打設特定位置に前記棒が鉛直方向に延びた状態で位置するステップと、前記特定の打設位置に対応する特定の墨出位置が前記打設特定位置の所定範囲内に存在するか否かに基づいて前記特定の墨出位置を検査するステップと、を含む。
【0007】
本発明によれば、情報端末の表示部に表示される上記相対的な位置関係の情報に基づいて移動局の棒を移動させるだけでリアルタイムキネマティック技術の誤差の範囲内の高精度の墨出位置検査を行うことができる。また、熟練が必要で測量に時間を要する光学式測量機を用いる墨出位置検査との比較において、少人数で容易に墨出位置検査ができる。更には、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出位置検査を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出位置検査を容易に行うことができる。
【0008】
また、本発明の第1の態様の杭の杭芯位置の墨出方法は、複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、前記複数の杭の設計上の打設位置の情報が情報端末に入力されるステップと、地上に設置された固定局が人工衛星から受信した第1信号に基づく固定局情報を補正情報生成装置に送信すると共に、棒、アンテナ、及び受信機を含む移動局における前記アンテナが受信した第2信号に基づく前記棒の位置情報を前記受信機から前記情報端末を介して前記補正情報生成装置に送信するステップと、前記補正情報生成装置が生成したリアルタイムキネマティック技術に基づく前記位置情報を前記情報端末に送信するステップと、前記情報端末を操作することで特定の打設位置を選択するステップと、前記情報端末の表示部に前記特定の打設位置と前記棒の位置の相対的な位置関係を表示するステップと、前記表示部における前記棒の位置と前記表示部における前記特定の打設位置が一致するときの前記現場における鉛直方向に延びた前記棒の位置を、前記特定の打設位置に対応する墨出位置として特定するステップと、を含む、
【0009】
本発明によれば、情報端末の表示部に表示される上記相対的な位置関係の情報に基づいて移動局の棒を移動させるだけでリアルタイムキネマティック技術の誤差の範囲内の高精度の墨出を行うことができる。また、熟練が必要で測量に時間を要する光学式測量機を用いる墨出との比較において、少人数で容易に墨出ができる。更には、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出を容易に行うことができる。
【0010】
また、本発明の第2の態様の墨出方法は、複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、前記複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて前記打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローンが飛行するステップと、前記ドローンから前記打設特定位置にレーザ光を照射するステップと、前記レーザ光が照射された位置に墨出を行うステップと、を含む。
【0011】
本発明によれば、複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術に基づいて、墨出位置を設計上の打設位置に対してリアルタイムキネマティック技術の誤差の範囲内で高精度に特定できる。更には、複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいてドローンを打設特定位置の上空に飛行させて、打設特定位置にレーザ光を照射するだけで、墨出位置を特定できる。したがって、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出を容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明の第2の態様の墨出位置検査方法は、複数の杭が打設される現場において、杭芯の墨出位置を検査する方法であって、前記複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて前記打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローンが飛行するステップと、前記ドローンから前記打設特定位置にレーザ光を照射するステップと、前記打設特定位置に対応する前記墨出位置が、前記レーザ光が照射された位置の所定範囲内に存在するか否かに基づいて前記墨出位置を検査するステップと、を含む、
【0013】
本発明によれば、複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術に基づいて、打設特定位置を設計上の打設位置に対してリアルタイムキネマティック技術の誤差の範囲内で高精度に特定できる。更には、複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいてドローンを打設特定位置の上空に飛行させて、打設特定位置にレーザ光を照射するだけで、墨出位置が打設特定位置の所定範囲内に存在するか否かを容易に特定できる。したがって、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出位置検査を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出位置検査を容易に行うことができる。
【0014】
また、本発明の第3の態様の杭の杭芯位置の墨出方法は、複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、前記複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて前記打設位置であると特定した打設特定位置まで移動体が走行するステップと、前記移動体から前記打設特定位置に塗料を吐出するステップと、を含む。
【0015】
本発明によれば、移動体の移動と塗料の吐出を自動制御するだけで、容易に杭の杭芯位置の墨出を行うことができ、また、リアルタイムキネマティック技術の誤差の範囲内で高精度に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の杭芯位置の墨出方法によれば、容易かつ高精度に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる。また、本発明の墨出位置検査方法によれば、容易かつ高精度に墨出位置を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る墨出及び墨出位置検査を行う打設位置特定システムの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の墨出の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】移動局を地上の斜め上方から見たときの斜視図である。
【
図5】情報端末の表示部上において移動局が表示されている位置が、選択した1の打設位置に一致しているときの移動局の状態を示す図である。
【
図6】(a)は、情報端末における打設位置と移動局の位置の相対的な位置関係の表示の他の例を説明する図であり、(b)は、(a)の表示に対応する現場における移動局と目標点(墨出位置)との相対的な位置関係を示す図である。
【
図7】現場における墨出の一例を説明する図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る墨出及び墨出検査を行う打設位置特定システムの概略構成図である。
【
図9】第2実施形態の墨出の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図9のステップS14からステップS20までのドローンの動作について説明する図である。
【
図11】移動体を側方から見たときの側方図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜、組み合わせて新たな実施形態を構築してもよい。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る墨出及び墨出検査を行う打設位置特定システム1の概略構成図である。先ず、
図1を用いて、打設位置特定システム1における信号の送受信について説明する。打設位置特定システム1は、GNSS(Global Navigation Satellite System ; 全球測位衛星システム)、例えば、GPS(Global Positioning System)、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System ; 準天頂衛星)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、Galileo等で用いられている4以上の人工衛星5からのGNSS信号を受信する固定局10、上記4以上の人工衛星からのGNSS信号を受信する移動局20、補正情報生成装置40、及び情報端末50を備える。補正情報生成装置40は、例えば、ネットワークのクラウド上に位置するサーバで構成される。また、情報端末50は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、又はワークステーション等で構成される。
【0020】
打設位置特定システム1は、4以上の人工衛星5、固定局10、移動局20、補正情報生成装置40、及び情報端末50を用いて、RTK(Real Time Kinematic ; リアルタイムキネマティック)技術によって移動局20の存在位置を特定する。RTKを用いれば、移動局20の存在位置を数センチメートルの誤差の範囲内で高精度に特定できる。固定局10は、地上に設置される。固定局10は、4以上の人工衛星5から4以上のGNSS信号を受信し、4以上のGNSS信号を補正情報生成装置40に送信する。また、移動局20も、4以上の人工衛星5からGNSS信号を受信し、情報端末50を介して受信した4以上のGNSS信号を補正情報生成装置40に送信する。
【0021】
詳しくは、移動局20は、直線状に延在するポール21、ポール21の頂部に設置されたアンテナ22、及びポール21の外周面に固定された受信機23を有し、人がポール21を持ち運ぶことで移動可能になっている。ポール21は、棒の一例である。なお、本開示の技術で用いられる棒は、ポール21でなくてもよくて直線状に延在する部材であれば如何なる部材でもよく、
図1に示すポール21のように断面円形でなくてもよく、例えば、断面正方形等でもよい。また、棒の材質は、如何なる材質でもよく、例えば、金属、木、又は樹脂等でもよい。また、アンテナ及び受信機は、棒の如何なる場所に設置されてもよく、又は、棒の位置が特定できるのであれば、棒に設置される必要もない。アンテナ及び受信機は、例えば、棒に固定された固定部材に設置されてもよい。アンテナ22と受信機23は、ケーブル25(
図4,
図5参照)で電気的に接続されている。アンテナ22は、4以上の人工衛星5からGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号は、受信機23に送られる。受信機23は、無線又は有線で情報端末50と通信する。このことから、アンテナ22が受信したGNSS信号に基づくポール21の位置情報を受信機23から情報端末50を介して補正情報生成装置40に送信できる。
【0022】
補正情報生成装置40は、受信した8以上のGNSS信号に基づいてポール21の位置情報の補正情報(位置情報)を算出し、算出した補正情報を情報端末50に送信する。この送信によって、情報端末50は、ポール21の存在位置をRTK技術の誤差の範囲内で高精度に特定できる。ポール21の位置情報は、情報端末50の記憶部(図示せず)に記憶される。
【0023】
情報端末50は、制御装置(図示せず)を内蔵する。制御装置は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部と、上記記憶部を含む。制御部、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、eMMC(embedded Multi Media Card)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を含む。CPUは、記憶部に予め記憶されたプログラム等を読み出して実行する。ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリは、制御プログラムや所定の閾値等を予め記憶する。RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリは、読み出したプログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0024】
情報端末50の記憶部には、次に説明するように、現場に打設される複数の杭の設計上の打設位置の情報(世界座標情報)が予め記憶されている。第1実施形態の墨出は、選択した特定の打設位置と鉛直方向に延びた状態のポール21の位置の相対的な位置関係を情報端末50の表示部51に表示することで行う。
【0025】
図2は、第1実施形態の墨出の手順の一例を示すフローチャートである。
図2におけるステップS1では、複数の杭の設計上の打設位置の世界座標情報が情報端末50に入力される。複数の世界座標情報は、複数の杭における設計上の打設位置の情報であり、基準点を0地点としたときの平面直角座標系の情報である。基準点は、例えば、建設現場が中部地方に位置している場合には、中部地方の所定位置に設定することができる。
【0026】
図3は、複数の杭の一部の世界座標を示す図である。
図3に示す例では、800の杭の打設位置のうちの42個の杭の打設位置の世界座標が示されている。
図3において、X軸は平面直角座標を規定する第1軸であり、Y軸は平面直角座標を規定する第2軸である。X軸と、Y軸は、互いに直交する。また、
図3において、各点に付されている番号は、杭の番号である。設計図では、各杭の打設位置の世界座標におけるX座標位置とY座標位置が特定されている。よって、X座標の方向とY座標の方向が既知であり、世界座標における基準点位置も既知であるので、各杭の打設位置を一意に特定できる。
【0027】
ステップS1では、複数の杭の打設位置の世界座標のデータを情報端末50に読み込ませる。世界座標のデータは、複数の杭の打設位置を平面直角座標系で示している文書ファイルのデータ(例えば、キャドデータ、テキストデータ、ワードデータ、エクセルデータ等)でもよい。そして、情報端末50における世界座標のデータの読み込みは、世界座標のデータを通信で情報端末50に送信することで実現してもよい。又は、世界座標のデータは、複数の杭の打設位置を平面直角座標系で示している設計図等の紙データでもよい。そして、情報端末50における世界座標のデータの読み込みは、世界座標のデータをスキャナで読み込んで生成したファイルに基づく情報を、情報端末50の制御部が認識できる形式で情報端末50に送信することで実現してもよい。
【0028】
続くステップS2では、情報端末50の操作部が操作されることで、複数の杭の打設位置のうちで墨出が終わっていない1以上の杭の打設位置から特定の打設位置が選択される。この選択は、例えば、次のように行うことができる。情報端末50の操作部で、墨出を行うためのアプリケーションを選択して呼び出す。この呼び出しは、例えば、入力部及び表示部を構成すると共に、タッチセンサとディスプレイとが一体化されたタッチパネル上に表示されている墨出のアプリケーションのアイコンに指でタッチすることで行ってもよい。そして、次に、操作部を用いて打設位置に対応する杭の番号を入力すると、特定の打設位置を選択できるようになっていてもよい。又は、情報端末50の操作部で、墨出を行うためのアプリケーションを選択して呼び出すと、墨出が終わっていない1以上の杭の打設位置がタッチパネルに表示されるようになっていてもよい。そして、表示された複数の杭の打設位置から特定の打設位置がタッチされると、特定の打設位置を選択できるようになっていてもよい。情報端末50の制御部における墨出が終わっていない1以上の杭の打設位置の特定方法については、後で説明する。
【0029】
続くステップS3では、
図4、すなわち、移動局20を地上の斜め上方から見たときの斜視図に示すように、墨出のアプリケーションを立て上げている状態で、移動局20のポール21が現場の任意の位置に鉛直方向に平行な状態で立てられる。すると、
図4に示すように、設計上の複数の杭の打設位置61と、ポール21の位置62と、その位置62から選択した特定の打設位置61までの方角と距離とが、表示部(例えば、タッチパネルで構成)51に表示される。ポール21の位置62は、補正情報生成装置40からの移動局20の位置情報に基づく位置であり、RTK技術によって特定されたポール21の位置である。移動局20のポール21が鉛直方向に平行な状態になっていると、ポール21の位置をRTK技術の精度の範囲内で表示部51に高精度に表示させることができる。
図4に示す例では、ポール21を西に18m移動させると共に北に32m移動させるとポール21が選択した特定の打設位置61に一致することが表示部51に表示される。西に18mかつ北に32mの情報は、ポール21と選択した特定の打設位置61の相対的な位置関係の情報である。
【0030】
続くステップS4では、表示部51が表示されている上記相対的な位置関係の情報に基づいて、表示部51上において、ポール21の表示位置が選択した特定の打設位置61の表示位置に一致するまで、移動局20を移動させる。
【0031】
図5は、表示部51上において移動局20が表示されている位置が、選択した特定の打設位置61に一致しているときの移動局20の状態を示す図である。
図5に示すように、移動局20のポール21は鉛直方向に平行な状態になっている。ポール21の地上側の先端21aが指し示している位置が墨出位置Rになる。この墨出位置Rの決定により、設計上の打設位置に対する現場での墨出位置の誤差をRTK技術の誤差の範囲内に収めることができる。
【0032】
なお、
図6(a)に示すように、上述の方法で特定の打設位置を選択すると、複数の打設位置のうちで選択した特定の打設位置61aと、ポール21の位置62と、ポール21と選択した特定の打設位置61aの相対的な位置関係の情報が表示部51に表示されるようにしてもよく、選択しなかった打設位置が表示部51に表示されない構成でもよい。
図6(a)に示す例では、
図6(b)に示すように、ポール21を南に2m移動させると共に西に6m移動させると、ポール21を目標点(墨出位置)に到達させることができる。この変形例では、選択しなかった打設位置が表示部51に表示されないので、表示部51上の選択した特定の打設位置61aを確認することで、ポール21と選択した特定の打設位置の相対的な位置関係が明確になり、ポール21を容易に墨出位置まで移動させることができる。
【0033】
ステップS4の後のステップS5では、人が墨出位置に、墨出、例えば、仮杭を立てる等の作業を行う。
図7は、仮杭70を示す図である。
図7に示すように、仮杭70は、例えば、リボン71が固定された丸棒部材72で構成され、地面に立てられる。丸棒部材72の中心が墨出位置Rになる。続く、ステップS6では、情報端末50の制御部が、全ての打設位置の墨出が終了したか否かを判定する。ある打設位置の墨出が終了すると、その打設位置の墨出が終わったことを意味する情報が情報端末50の操作部を介して情報端末50に入力される。この入力により、情報端末50の制御部がその打設位置の墨出の終了を認識し、墨出されていない打設位置を認識できる。ステップS6で否定判定されると、ステップS2以下が繰り返される。他方、ステップS6で肯定判定されると、手順がエンドになる。
【0034】
第1実施形態では、複数の杭の打設位置の墨出をこのように行うことができる。なお、第1実施形態の複数の墨出位置の検査方法は、基本的に複数の杭の打設位置の墨出方法と同様に行うことができる。第1実施形態の複数の墨出位置の検査方法の場合、現場に墨出された墨出位置が存在している。例えば、
図7に示すように、墨出は、現場の墨出位置に仮杭70、例えば、リボン71が固定された丸棒部材72を地面に立てることで行われ、丸棒部材72の中心が墨出位置Rである。
【0035】
ここで、今まで説明した方法と同一の方法で設計上の打設位置に対してRTK技術の誤差の範囲内で打設位置を特定できる。墨出の検査方法では、特定した打設特定位置と、現場に存在している墨出位置Rとの差が、RTK技術の誤差の範囲内になっているか否かを判定する。打設特定位置と現場に存在している墨出位置Rとの差が、RTK技術の誤差の範囲内である場合に、墨出位置が正しいと判定してもよい。この場合、RTK技術の誤差の範囲は、所定範囲に一致する。他方、打設特定位置と現場に存在している墨出位置Rとの差が、RTK技術の誤差の範囲外である場合には、墨出位置Rが誤っていると判断し、墨出位置を打設特定位置に訂正する。なお、所定範囲は、RTK技術の誤差の範囲に一致しなくてもよく、許容される誤差の範囲に設定されればよい。第1実施形態における複数の墨出位置検査は、このようにして行うことができる。
【0036】
以上、第1実施形態の墨出方法は、複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、複数の杭の設計上の打設位置の情報を情報端末50に読み込ませるステップを含む。また、その墨出方法は、地上に設置された固定局10が人工衛星5から受信した第1信号に基づく固定局情報を補正情報生成装置40に送信すると共に、ポール21、アンテナ22、及び受信機23を含む移動局20におけるアンテナ22が受信した第2信号に基づくポール21の位置情報を受信機23から情報端末50を介して補正情報生成装置40に送信するステップを含む。また、その墨出方法は、補正情報生成装置40が生成したRTK技術に基づく上記位置情報を情報端末50に送信するステップと、情報端末50を操作することで特定の打設位置を選択するステップを含む。また、その墨出方法は、情報端末50の表示部51に上記特定の打設位置とポール21の位置の相対的な位置関係を表示するステップと、表示部51におけるポール21の位置と表示部51における上記特定の打設位置が一致するときの現場における鉛直方向に延びたポール21の位置を、上記特定の打設位置に対応する墨出位置Rとして特定するステップを含む。
【0037】
この墨出方法によれば、情報端末50の表示部51に表示される上記相対的な位置関係の情報に基づいて移動局20のポール21を移動させるだけでRTK技術の誤差の範囲内の高精度の墨出を行うことができる。また、熟練が必要で測量に時間を要する光学式測量機を用いる墨出との比較において、少人数で容易に墨出ができる。更には、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出を容易に行うことができる。
【0038】
また、第1実施形態の墨出検査方法は、複数の杭が打設される現場において、杭芯の墨出位置を検査する方法であって、複数の杭の設計上の打設位置の情報を情報端末50に読み込ませるステップを含む。また、その墨出検査方法は、地上に設置された固定局10が人工衛星5から受信した第1信号に基づく固定局情報を補正情報生成装置40に送信すると共に、ポール21、アンテナ22、及び受信機23を含む移動局20におけるアンテナ22が受信した第2信号に基づくポール21の位置情報を受信機23から情報端末50を介して補正情報生成装置40に送信するステップを含む。また、その墨出検査方法は、補正情報生成装置40が生成したRTK技術に基づく上記位置情報を情報端末50に送信するステップと、情報端末50を操作することで特定の打設位置を選択するステップを含む。また、その墨出検査方法は、情報端末50の表示部51に上記特定の打設位置とポール21の位置の相対的な位置関係を表示するステップと、表示部51におけるポール21の位置と表示部51における上記特定の打設位置が一致する打設特定位置にポール21が鉛直方向に延びた状態で位置するステップと、上記特定の打設位置に対応する特定の墨出位置が打設特定位置の所定範囲内に存在するか否かに基づいて上記特定の墨出位置を検査するステップを含む。
【0039】
この墨出検査方法によれば、報端末50の表示部51に表示される上記相対的な位置関係の情報に基づいて移動局20のポール21を移動させるだけでRTK技術の誤差の範囲内の高精度の墨出検査を行うことができる。また、熟練が必要で測量に時間を要する光学式測量機を用いる墨出検査との比較において、少人数で容易に墨出検査ができる。更には、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出検査を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出検査を容易に行うことができる。
【0040】
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態に係る墨出及び墨出検査を行う打設位置特定システム101の概略構成図である。先ず、
図8を用いて、打設位置特定システム101における信号の送受信について説明する。打設位置特定システム101は、GNSSで用いられている4以上の人工衛星5からのGNSS信号を受信する固定局10、上記4以上の人工衛星からのGNSS信号を受信する移動局としてのドローン120、補正情報生成装置40、及び情報端末150を備える。補正情報生成装置40は、例えば、ネットワークのクラウド上に位置するサーバで構成される。また、情報端末150は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、又はワークステーション等で構成される。
【0041】
打設位置特定システム101は、4以上の人工衛星5、固定局10、ドローン120、補正情報生成装置40、及び情報端末150を用いて、RTK技術によってドローン120の存在位置を特定する。RTK技術を用いれば、ドローン120の存在位置を数センチメートルの誤差の範囲内で高精度に特定できる。固定局10は、地上に設置される。固定局10は、4以上の人工衛星5から4以上のGNSS信号を受信し、4以上のGNSS信号を補正情報生成装置40に送信する。また、ドローン120は、図示しないアンテナを有し、ドローン120も、4以上の人工衛星5からGNSS信号を受信し、受信した4以上のGNSS信号を情報端末150を介して補正情報生成装置40に送信する。
【0042】
補正情報生成装置140は、受信した8以上のGNSS信号に基づいてドローン120の存在位置の補正情報(ドローン120の位置情報)を算出し、算出した補正情報を情報端末150に送信する。情報端末150は、受信したRTK技術による補正情報をドローン120の飛行を制御する制御装置130に送信する。情報端末150及び制御装置130のハードウェア構成は、第1実施形態の情報端末50のハードウェア構成と同様である。
【0043】
制御装置130の記憶部には、ドローン120の飛行先情報及びレーザ光の照射制御のプログラムが格納されている。飛行先情報については後で詳述する。制御装置130は、飛行先情報のデータと、ドローン120の飛行位置をRTK技術の誤差の範囲内で特定できる補正情報とに基づいてドローン120を飛行先まで飛行させた後、飛行先で静止させる。ドローン120が静止している状態でドローン120に搭載しているレーザ光出射装置から後で説明する打設特定位置にレーザ光を照射する。照射するレーザ光としては、公知のレーザ墨出器で使用している波長及び強度のレーザ光を採用することができる。レーザ光の照射位置である打設特定位置は、墨出位置に一致する。
【0044】
次に、第2実施形態の墨出方法について詳細に説明する。
図9は、第2実施形態の墨出の手順の一例を示すフローチャートである。
図9を参照して、墨出は、最初にステップS11で、複数の杭の打設位置の世界座標情報がドローン120の制御装置130に入力される。制御装置130への世界座標情報の入力は、第1実施形態における情報端末50への世界座標情報の入力と同様に行うことができるので入力方法の説明は、省略する。
【0045】
続くステップS12では、複数の打設位置の順位情報がドローン120の制御装置130に入力される。これは、後で説明する複数の墨出位置に対するレーザ光の照射順序の情報である。打設位置の順位は、打設される杭の番号順でもよい。又は、複数の打設位置が
図3に示すように等間隔又は非等間隔のマトリックス状に設定されている場合、打設位置の順位は、次のように決定してもよい。すなわち、何れかの角に位置する打設位置の順序を1番目として設定し、1番目の打設位置に列の延在方向に隣り合う打設位置を2番目として設定する。このように1番目の打設位置と同じ列の打設位置の順序を、1番目の打設位置と同じ列の他端に位置する打設位置まで順序付けする。その後、他端の打設位置に行の延在方向に隣り合う2列目の他端に位置する打設位置を次の順序に決定する。その後、2列目の他端に位置する打設位置と同じ列の打設位置の順序を、2列目の一端に位置する打設位置まで順序付けする。その後、この手法を繰り返すことで、最後の打設位置まで順位付けを行う。
【0046】
打設位置の順位は、このような蛇行経路による順序付けで決定してもよい。なお、このような蛇行経路による順位付けにおいて、1番目の打設位置と同じ行に位置すると共に1番目の打設位置に行の延在方向に隣り合う打設位置を2番目の打設位置としてもよい。又は、打設位置の順位は、他の方法で行ってもよい。例えば、打設位置が、N(Nは、いずれかの自然数)個存在する場合、N個の打設位置を順に通過する場合の数は、N!個(Nの階乗個)存在し、その夫々に対してN個の打設位置を通過する最短距離が求まる。したがって、N個の打設位置を通過する際の距離が最も短い1の順位付けが存在する。打設位置の順位は、その手法により決定されてもよく、この場合、後で説明するドローン120の飛行距離及び飛行時間を短くできる。
【0047】
続くステップS13では、制御装置130に入力した複数の打設位置の世界座標情報を緯度経度情報へ変換する。制御装置130の記憶部には、世界座標情報を緯度経度情報に変換するプログラムが予め格納されている。世界座標位置と、緯度経路位置は、一対一に対応するので、この変換が可能になる。ステップS13の後のステップS14では、制御装置130が複数の打設位置の緯度経度情報から対応打設特定位置にレーザ光が照射されていない最も低い順位の打設位置の緯度経度情報を選定する。最初は、先ほど説明した順位付けにおける1番順位の打設位置を選定する。
【0048】
続くステップS15では、ステップS14で選定した打設位置の緯度経度情報と、上述の方法で取得したRTK技術の誤差の範囲内のドローン120の位置情報とに基づいて、制御装置130が、打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローン120を飛行制御する。詳しくは、制御装置130が、ドローン120に搭載されたレーザ光出射装置の出射面が鉛直方向下方に向けられて鉛直方向に直交する状態になると共に、当該出射面の中心の水平方向位置が打設特定位置の水平方向位置に一致するようにドローン120を飛行制御する。
【0049】
続くステップS16では、出射面が水平面に平行な状態になると共に、当該出射面の中心の水平方向位置が打設特定位置の水平方向位置に一致している状態で、制御装置130が、ドローン120をフォバーリング制御し、ドローン120をその位置で所定時間静止させる。続くステップS17では、ドローン120が静止している状態で出射面から打設特定位置にレーザ光を照射する。レーザ光の照射時間としては、例えば、15秒から2分の間の時間を採用できる。ドローン120の静止時間やレーザ光の照射時間は、制御装置130の記憶部に予め記憶されている。なお、ドローンの静止時間は、レーザ光の照射時間以上である。また、ドローン120の飛行制御にドローン120の移動速度やドローン120が静止している状態での地面からの高さが含まれてもよい。続くステップS18では、レーザ光が照射されている打設特定位置に墨出を行う。この墨出は、例えば、打設特定位置に塗料で目印を付けることで行われてもよく、又は
図7に示す仮杭70を打設特定位置に立てることで行われてもよい。
【0050】
続く、ステップS19では、レーザ光の出射が行われていない緯度経度情報が存在するか否かを判定する。ステップS19で肯定判定されると、ステップS14以下が繰り返される。他方、ステップS19で否定判定されると、ステップS20に移行して、制御装置130がドローン120の飛行停止制御を行って、ドローン120が地上に着陸して、手順がエンドになる。
【0051】
図10は、ステップS14からステップS20までのドローン120の動作について説明する図である。なお、
図10では、打設する杭の数が4の場合について説明する。
図10を参照して、ドローン120は、スタート位置Sから離陸し、先ず、順位付けが1番の杭1に対応する打設特定位置の上空でフォバーリングして静止し、その状態で、杭1に対応する打設特定位置(墨出位置に一致)にレーザ光を照射する。その後、ドローン120は、杭1に対応する打設特定位置の上空から順位付けが2番の杭2に対応する打設特定位置の上空に移動してフォバーリングして静止し、その状態で、杭2に対応する打設特定位置にレーザ光を照射する。続いて、ドローン120は、順位付けが3番の杭3に対応する打設特定位置の上空に移動してフォバーリングして静止し、その状態で、杭3に対応する打設特定位置にレーザ光を照射する。その後、ドローン120は、順位付けが4番の杭4に対応する打設特定位置の上空に移動してフォバーリングして静止し、その状態で、杭4に対応する打設特定位置にレーザ光を照射する。杭4は、最後の杭であるため、杭4に対応する打設特定位置へのレーザ光の照射が終わると、ドローン120は、終了地点Eに着陸して飛行を終了する。
【0052】
なお、出射面が鉛直方向下方に向けられて鉛直方向に直交する状態になると共に、当該出射面の中心の水平方向位置が打設特定位置の水平方向位置に一致している状態において、レーザ光を鉛直方向に平行な状態で打設特定位置に照射する場合について説明した。しかし、ドローンから出射された光が打設特定位置に照射されるようになっていれば、レーザ光は出射面から鉛直方向に傾斜する方向に出射されてもよい。また、ドローンから出射された光が打設特定位置に照射されるようになっていれば、ドローンは、如何なる位置で静止してもよく、又は、ドローンは、静止しなくてもよい。要は、ドローンから出射されたレーザ光が打設特定位置に照射されるようになっていればよい。
【0053】
第2実施形態では、複数の杭の打設位置の墨出をこのように行うことができる。第2実施形態の複数の墨出位置の検査方法は、基本的に複数の杭の打設位置の墨出方法と同様に行うことができる。第2実施形態の複数の墨出位置の検査方法の場合、現場に墨出された墨出位置が存在している。例えば、
図7に示すように、仮杭70が、現場の墨出位置に立てられ、仮杭の丸棒部材72の中心が墨出位置Rとなっている。
【0054】
ここで、今まで説明した方法と同一の方法でドローン120及びレーザ光出射装置を用いて設計上の打設位置に対してRTK技術の誤差の範囲内で打設位置を特定できる。墨出の検査方法では、特定した打設特定位置と、現場に存在している墨出位置Rとの差が、RTK技術の誤差の範囲内になっているか否かを判定する。この場合、RTK技術の誤差の範囲は、所定範囲に一致する。打設特定位置と現場に存在している墨出位置Rとの差が、RTK技術の誤差の範囲内である場合には、墨出位置Rが正しいと判定する。他方、特定した打設特定位置と現場に存在している墨出位置Rとの差が、RTK技術の誤差の範囲外である場合には、墨出位置Rが誤っていると判断し、墨出位置Rを特定した打設特定位置に訂正する。なお、所定範囲は、RTK技術の誤差の範囲に一致しなくてもよく、許容される誤差の範囲に設定されればよい。第2実施形態の複数の墨出位置の検査方法は、このようにして行うことができる。
【0055】
以上、第2実施形態の墨出方法は、複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローン120が飛行するステップを含む。また、その墨出方法は、ドローン120から打設特定位置にレーザ光を照射するステップと、レーザ光が照射された位置に墨出を行うステップと、を含む。
【0056】
この墨出方法によれば、複数の杭の設計上の打設位置の情報とRTK技術に基づいて、墨出位置Rを設計上の打設位置に対してRTK技術の誤差の範囲内で高精度に特定できる。更には、複数の杭の打設位置の情報とRTK技術とに基づいてドローン120を打設特定位置の上空を飛行させて、打設特定位置に対応する墨出位置にレーザ光を照射するだけで、墨出位置を特定できる。したがって、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出を容易に行うことができる。
【0057】
また、第2実施形態の墨出の検査方法は、複数の杭が打設される現場において、杭芯の墨出位置を検査する方法であって、複数の杭の設計上の打設位置の情報とリアルタイムキネマティック技術とに基づいて、打設位置であると特定した打設特定位置の上空までドローン120が飛行するステップを含む。また、その墨出の検査方法は、ドローン120から打設特定位置にレーザ光を照射するステップと、打設特定位置に対応する墨出位置Rが、レーザ光が照射された位置の所定範囲内に存在するか否かに基づいて墨出位置を検査するステップと、を含む。
【0058】
本墨出の検査方法によれば、複数の杭の設計上の打設位置の情報とRTK技術に基づいて、打設特定位置を設計上の打設位置に対してRTK技術の誤差の範囲内で高精度に特定できる。更には、複数の杭の設計上の打設位置の情報とRTK技術とに基づいてドローン120を打設特定位置の上空に飛行させて、打設特定位置にレーザ光を照射するだけで、墨出位置Rが打設特定位置の所定範囲内に存在するか否かを容易に特定できる。したがって、作業現場に多数の機械や大型部品等が投入されている場合でも、それらに影響を受けずに墨出位置検査を容易に行うことができ、打設する杭の数が多くても、墨出位置検査を容易に行うことができる。
【0059】
(変形例)
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0060】
例えば、上記第2実施形態では、移動局が、制御装置130によって飛行制御されることで空中を飛行するドローン120である場合について説明した。しかし、移動局は、
図11に示すように、制御装置によって走行制御されることで地上を走行する移動体220でもよく、移動体220は、例えば、ラジコンカーの形態でもよい。移動体220は、地面を走行する複数の車輪(例えば、4以上の車輪)225と、人工衛星5からの信号を受信するアンテナ228を有する。また、移動体220は、塗料が充填されたタンク(図示せず)と、タンクに連通するノズル221を有する。
【0061】
ノズル221は、移動体220の高さ方向に平行に延在する。ノズル221の吐出口221aは開閉制御され、塗料が吐出口221aから地面に高さ方向に吐出可能になっている。移動体220の制御装置は、読み込んだ設計上の複数の打設位置の情報と、RTK技術によって、吐出口221aが打設位置と特定した打設特定位置に高さ方向に対向する位置で移動体220を所定時間停止させる。そして、移動体220が所定時間停止している間に吐出口221aから塗料を打設特定位置に吐出することで墨出を行う。移動体220は、全ての打設特定位置に塗料を噴射するまで、この動作を繰り返し、全ての打設特定位置に塗料が噴射されると、墨出が終了する。
【0062】
なお、塗料が移動体220から打設特定位置に吐出されるようになっていれば、塗料は、高さ方向に傾斜する方向に吐出されてもよい。また、塗料が移動体から打設特定位置に吐出されるようになっていれば、移動体は、如何なる位置で静止してもよい。要は、塗料が移動体から打設特定位置に吐出されるようになっていればよい。
【0063】
以上、変形例の墨出方法は、複数の杭が打設される現場における杭の杭芯位置の墨出方法であって、複数の杭の設計上の打設位置の情報とRTK技術とに基づいて打設位置であると特定した打設特定位置まで移動体220が走行するステップと、移動体220から打設特定位置に塗料を吐出するステップと、を含む。本墨出方法によれば、移動体220の移動と吐出口221aの開閉を自動制御するだけで、容易に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる。また、本墨出方法においても、RTK技術の誤差の範囲内で高精度に杭の杭芯位置の墨出を行うことができる。
【符号の説明】
【0064】
1,101 打設位置特定システム、 5 人工衛星、 10 固定局、 20 移動局、 21 ポール、 21a 先端、 22,228 アンテナ、 23 受信機、 25 ケーブル、 40 補正情報生成装置、 50,150 情報端末、 51 表示部、 61,61a 表示部上の打設位置、 62 表示部上の移動局の位置、 70 仮杭、 71 リボン、 72 丸棒部材、 120 ドローン、 130 制御装置、 140 補正情報生成装置、 220 移動体、 221 ノズル、 221a 吐出口、 R 墨出位置。