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特開2024-133679リチウム前駆体の再生方法及びリチウム前駆体の再生システム
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  • 特開-リチウム前駆体の再生方法及びリチウム前駆体の再生システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133679
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】リチウム前駆体の再生方法及びリチウム前駆体の再生システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024111045
(22)【出願日】2024-07-10
(62)【分割の表示】P 2021524140の分割
【原出願日】2019-09-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0136087
(32)【優先日】2018-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】308007044
【氏名又は名称】エスケー イノベーション カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK INNOVATION CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】26, Jong-ro, Jongno-gu, Seoul 110-728 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】ク ミン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム ホン シク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乾式回転加熱反応器を用いて、リチウム前駆体の回収率および選択比を向上させることができる、高効率及び高純度でリチウム二次電池の活性金属を回収する方法及びシステムを提供する。
【解決手段】リチウム二次電池の活性金属の回収方法は、リチウム二次電池から取得S10した電極活物質混合物50を準備し、電極活物質混合物50を乾式回転加熱反応器00内で反応させて予備前駆体混合物60を形成しS20、前駆体回収部230にて予備前駆体混合物60から選択的にリチウム前駆体粒子70を回収するS40。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池から収集された電極活物質混合物を準備するステップと、
前記電極活物質混合物を乾式回転加熱反応器内で還元させ、予備前駆体混合物を形成するステップと、
前記予備前駆体混合物から選択的にリチウム前駆体を回収するステップとを含む、リチウム前駆体の再生方法。
【請求項2】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記電極活物質混合物を前記乾式回転加熱反応器の長さ方向に移動させながら、前記長さ方向の軸に前記乾式回転加熱反応器を回転させることを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項3】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記長さ方向の軸に前記乾式回転加熱反応器を5~200rpmで回転させることを含む、請求項2に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項4】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、その反応温度が250~600℃である、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項5】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記電極活物質混合物を還元性反応ガスと接触させることを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項6】
前記還元性反応ガスは、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への後端部から供給され、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への前端部に供給される電極活物質混合物に対してカウンターフローを形成する、請求項5に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項7】
前記還元性反応ガスは、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への前端部に前記電極活物質混合物と共に導入される、請求項5に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項8】
前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子および遷移金属含有粒子を含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項9】
前記予備リチウム前駆体粒子は、リチウム水酸化物、リチウム酸化物およびリチウム炭酸化物を含む、請求項8に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項10】
前記リチウム前駆体を回収するステップは、前記予備リチウム前駆体粒子を水和させてリチウム前駆体を生成するステップをさらに含む、請求項8に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項11】
前記予備リチウム前駆体を水和させるステップは、前記リチウム前駆体粒子を前記遷移金属含有粒子よりも先に収集することを含む、請求項10に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項12】
前記遷移金属含有粒子を酸溶液処理して遷移金属前駆体を回収するステップをさらに含む、請求項8に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項13】
前記乾式回転加熱反応器は、間接加熱回転炉である、請求項1に記載のリチウム二次電池の活性金属の回収方法。
【請求項14】
電極活物質混合物供給部と、
前記電極活物質混合物供給部から供給された電極活物質混合物を還元性ガスと反応させる乾式回転加熱反応器と、
前記乾式回転加熱反応器内で生成された前記電極活物質混合物の反応物からリチウム前駆体を収集するリチウム前駆体回収部とを含む、リチウム前駆体の再生システム。
【請求項15】
前記乾式回転加熱反応器の長さ方向への前端部または後端部のうちの少なくとも一つに接続されて前記還元性ガスを供給する供給流路をさらに含む、請求項14に記載のリチウム前駆体の再生システム。
【請求項16】
前記電極活物質混合物の反応物から遷移金属前駆体を収集する遷移金属前駆体回収部をさらに含む、請求項14に記載のリチウム前駆体の再生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム前駆体の再生方法及びリチウム前駆体の再生システムに関する。より詳細には、リチウム二次電池からリチウム前駆体を再生する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充電と放電の繰り返しが可能な電池であり、情報通信及びディスプレイ産業の発展につれてカムコーダー、携帯電話、ノートパソコンなどの携帯用電子通信機器に広く適用されてきた。二次電池としては、例えば、リチウム二次電池、ニッケル-カドミウム電池、ニッケル-水素電池などが挙げられる。中でもリチウム二次電池は、動作電圧および単位重量当たりのエネルギー密度が高く、充電速度および軽量化に有利な点で積極的に開発及び適用されてきた。
【0003】
リチウム二次電池は、正極、負極及び分離膜(セパレーター)を含む電極組立体と、前記電極組立体を含浸させる電解質とを含むことができる。前記リチウム二次電池は、前記電極組立体および電解質を収容する、例えば、パウチ状の外装材をさらに含むことができる。
【0004】
前記リチウム二次電池の正極用活物質としては、リチウム金属酸化物を用いることができる。前記リチウム金属酸化物は、さらに、ニッケル、コバルト、マンガンなどの遷移金属を共に含有することができる。
【0005】
前記正極用活物質に前述した高コストの有価金属が用いられることにより、正極材の製造に製造コストの20%以上がかかっている。また、近年、環境保護への関心が高まることによって、正極用活物質のリサイクル方法の研究が進められている。
【0006】
例えば、硫酸のような強酸に廃正極活物質を浸出させて有価金属を順次回収する方法が研究されている。しかし、前記湿式工程の場合は、水洗工程が必要となり、再生選択性、再生時間などの面で不利になることがある。
【0007】
例えば、韓国特許第10-0709268号公報では、廃マンガン電池及びアルカリ電池のリサイクル装置及び方法が開示されているが、高選択性、低コストで有価金属を再生する十分な方法は提示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、高効率及び高純度でリチウム二次電池の活性金属を回収する方法を提供することである。
【0009】
本発明の課題は、高効率及び高純度でリチウム二次電池の活性金属を回収するシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係るリチウム前駆体の再生方法では、リチウム二次電池から取得された電極活物質混合物を準備する。前記電極活物質混合物を乾式回転加熱反応器内で反応させ、予備前駆体混合物を形成する。前記予備前駆体混合物から選択的にリチウム前駆体を回収する。
【0011】
例示的な実施形態において、前記予備前駆体混合物は、前記電極活物質混合物を前記乾式回転加熱反応器の長さ方向に移動させながら、前記長さ方向の軸に前記乾式回転加熱反応器を回転させて形成することができる。
【0012】
例示的な実施形態において、前記乾式回転加熱反応器は、前記乾式回転加熱反応器の長さ方向の軸に5~200rpmで回転することができる。
【0013】
例示的な実施形態において、前記予備前駆体混合物は、前記電極活物質混合物が250~600℃で反応して形成され得る。
【0014】
例示的な実施形態において、前記予備前駆体混合物は、前記電極活物質混合物と還元性反応ガスが接触して形成され得る。
【0015】
例示的な実施形態において、前記還元性反応ガスは、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への後端部から供給され、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への前端部から供給される前記電極活物質混合物に対してカウンターフローを形成することができる。
【0016】
例示的な実施形態において、前記還元性反応ガスは、前記乾式回転加熱反応器の長さ方向への前端部に前記電極活物質混合物と共に導入され得る。
【0017】
例示的な実施形態において、前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子および遷移金属含有粒子を含むことができる。
【0018】
例示的な実施形態において、前記リチウム前駆体は、前記予備リチウム前駆体粒子を前記遷移金属含有粒子よりも先に収集して回収することができる。
【0019】
例示的な実施形態において、前記予備リチウム前駆体粒子は、リチウム水酸化物、リチウム酸化物およびリチウム炭酸化物を含むことができる。
【0020】
例示的な実施形態において、前記リチウム前駆体は、前記予備リチウム前駆体粒子を水和させてリチウム酸化物に変化させて回収することができる。
【0021】
例示的な実施形態において、前記予備リチウム前駆体を水和させ、前記リチウム前駆体を前記遷移金属含有粒子よりも先に収集することができる。
【0022】
例示的な実施形態において、前記遷移金属前駆体は、前記遷移金属含有粒子を酸溶液処理して回収することができる。
【0023】
例示的な実施形態において、前記乾式回転加熱反応器は、間接加熱回転炉であってもよい。
【0024】
例示的な実施形態において、リチウム前駆体の再生システムは、電極活物質混合物供給部と、前記電極活物質混合物供給部から供給された電極活物質混合物を還元性ガスと反応させる乾式回転加熱反応器と、前記乾式回転加熱反応器内で生成された前記電極活物質混合物の反応物からリチウム前駆体を収集するリチウム前駆体回収部とを含むことができる。
【0025】
例示的な実施形態において、リチウム前駆体の再生システムは、前記乾式回転加熱反応器の長さ方向への前端部または後端部のうちの少なくとも一つに接続されて前記還元性ガスを供給する供給流路をさらに含むことができる。
【0026】
例示的な実施形態において、リチウム前駆体の再生システムは、前記電極活物質混合物の反応物から遷移金属前駆体を収集する遷移金属前駆体回収部をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0027】
前述した例示的な実施形態によると、電極活物質混合物から、乾式回転加熱反応器を活用した乾式ベースの工程によってリチウム前駆体を回収することができる。これにより、湿式ベースの工程から引き起こされる付加工程なしに、高純度でリチウム前駆体を得ることができる。
【0028】
また、乾式回転加熱反応器の回転速度、反応温度および反応物の長さ方向への移動距離を調整することにより、電極活物質混合物と還元性反応ガスの反応時間、滞留時間及び反応程度を容易に調節することができ、リチウム前駆体の再生工程の選択性および効率性をより向上させることができる。
【0029】
また、乾式回転間接加熱反応器を用いて、反応器本体を間接加熱反応器内のジャケットまたは電気炉などにより燃焼物の発生なしに間接的に加熱することができる。これにより、燃焼物による予備前駆体混合物の汚染を防止し、付加工程なしに高純度のリチウム前駆体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、例示的な実施形態に係るリチウム前駆体の再生方法を説明するための工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態は、リチウム二次電池から、乾式回転加熱反応器(Rotary Kiln)を活用した乾式ベースの工程によって高純度、高収率で活性金属を回収する方法を提供する。
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態をより具体的に説明する。但し、これらの実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0033】
本明細書で使用される用語「前駆体」は、電極活物質に含まれる特定の金属を提供するために、前記特定の金属を含む化合物を包括的に指すものとして使用される。
【0034】
図1は、例示的な実施形態に係るリチウム二次電池の活性金属の回収方法を説明するための概略的なフローチャートである。図1では、説明の都合上、工程の流れと乾式回転加熱反応器の模式図を併せて示している。
【0035】
図1を参照すると、電極活物質混合物50をリチウム二次電池から準備することができる(例えば、ステップS10)。例示的な実施形態によると、電極活物質混合物50は、リチウム二次電池から得られた電極から準備することができる。例えば、電極活物質混合物50は、リチウム二次電池から得られたリチウム含有化合物から準備することができる。
【0036】
本出願で使用される用語「電極活物質混合物」とは、リチウム二次電池から回収された電極から正極および負極集電体が実質的に除去された後、後述する乾式回転加熱反応器の内部に投入される原料物質を指すことができる。
【0037】
電極活物質混合物50は、リチウム二次電池から得られた正極活物質混合物を含むリチウム二次電池から得られた物質の混合物であってもよい。好ましくは、電極活物質混合物50は、正極活物質混合物であってもよい。以下、電極活物質混合物50が正極活物質混合物である場合を詳細に説明する。しかし、これは例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0038】
前記リチウム二次電池は、正極および負極を含む電極、並びに前記正極と負極との間に介在する分離膜を含む電極組立体を含むことができる。前記正極及び負極は、それぞれ正極集全体及び負極集電体上にコートされた正極活物質層及び負極活物質層を含むことができる。
【0039】
例えば、前記正極活物質層に含まれる正極活物質は、リチウム及び遷移金属を含有する酸化物を含むことができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、下記化学式1で表される化合物を含むことができる。
【0041】
【化1】
【0042】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される遷移金属であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質は、ニッケル、コバルト及びマンガンを含むNCM系リチウム酸化物であってもよい。前記正極活物質としてのNCM系リチウム酸化物は、リチウム前駆体及びNCM前駆体(例えば、NCM酸化物)を、例えば共沈反応により相互に反応させて製造することができる。
【0044】
しかし、本発明の実施形態は、前記NCM系リチウム酸化物を含む電極材だけではなく、リチウム含有電極材に共通して適用することができる。
【0045】
前記リチウム前駆体は、リチウム水酸化物(LiOH)、リチウム酸化物(LiO)またはリチウム炭酸化物(LiCO)を含むことができる。リチウム二次電池の充放電特性、寿命特性、高温安定性などの観点から、リチウム水酸化物がリチウム前駆体として有利であり得る。例えば、リチウム炭酸化物の場合は、分離膜上に沈積反応を引き起こして寿命安定性を低下させることがある。
【0046】
これにより、本発明の実施形態によると、リチウム前駆体としてリチウム水酸化物を高選択比で再生する方法を提供することができる。
【0047】
例えば、前記リチウム二次電池から正極を分離して回収することができる。前記正極は、正極集電体(例えば、アルミニウム(Al))及び正極活物質層を含み、前記正極活物質層は、前述した正極活物質に加えて、導電材及び結合剤を共に含むことができる。
【0048】
前記導電材は、例えば、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブなどの炭素系物質を含むことができる。前記結合剤は、例えば、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidenefluoride,PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)などの樹脂物質を含むことができる。
【0049】
回収された前記正極から正極活物質混合物を準備することができる。いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物は、粉砕処理などの物理的方法により粉末状に製造することができる。前記正極活物質混合物は、リチウム-遷移金属酸化物の粉末を含み、例えばNCM系リチウム酸化物粉末(例えば、Li(NCM)O)を含むことができる。
【0050】
本出願で使用される用語「正極活物質混合物」とは、回収された前記正極から正極集電体が実質的に除去された後、後述する乾式回転加熱反応器の内部に投入される原料物質を指すことができる。
【0051】
一実施形態では、前記正極活物質混合物は、前記NCM系リチウム酸化物のような正極活物質粒子を含むことができる。一実施形態では、前記正極活物質混合物は、前記結合剤又は前記導電材に由来する成分の一部を含むこともできる。一実施形態では、前記正極活物質混合物は、前記正極活物質粒子で実質的に構成されていてもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物の平均粒径(D50)は、5~100μmであってもよい。前記範囲内では、前記正極活物質混合物に含まれる正極集電体、導電材及び結合剤から、回収対象としてのLi(NCM)Oのようなリチウム-遷移金属酸化物を容易に分離することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物を、後述する乾式回転加熱反応器に投入する前に熱処理することができる。前記熱処理により、前記正極活物質混合物に含まれている前記導電材及び結合剤のような不純物を除去又は低減して、前記リチウム-遷移金属酸化物を高純度で前記乾式回転加熱反応器内に投入することができる。
【0054】
前記熱処理の温度は、例えば約100~500℃、好ましくは約350~450℃であってもよい。前記範囲内では、実質的に前記不純物が除去され、リチウム-遷移金属酸化物の分解、損傷を防止することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、前記正極活物質混合物は、回収された前記正極を有機溶媒に浸漬させた後、得ることができる。例えば、回収された前記正極を有機溶媒に浸漬させて前記正極集電体を分離除去し、遠心分離によって前記正極活物質を選択的に抽出することができる。
【0056】
前述の工程により、実質的にアルミニウムなどの正極集全体の成分が実質的に完全に分離除去され、前記導電材及び結合剤に由来する炭素系成分の含有量が除去または低減された正極活物質混合物を得ることができる。
【0057】
以上、正極活物質混合物を取得する過程を詳細に説明した。前述のように、電極活物質混合物50は、前述した正極活物質混合物を含むものであり、前述した正極活物質混合物のほか、負極活物質混合物などをさらに含んでいてもよい。
【0058】
例えば、S20工程では、電極活物質混合物50を乾式回転加熱反応器100内で反応させ、予備前駆体混合物60を形成することができる。
【0059】
図1に示すように、乾式回転加熱反応器100は、反応器本体150と、反応器前端部130と、反応器後端部170とに区分できる。反応器本体150は、ヒーターまたは電気炉などの加熱部104を含むことができる。
【0060】
電極活物質混合物50は、電極活物質混合物供給部110を介して反応器前端部130に供給することができる。電極活物質混合物50は、反応器前端部110を介して反応器本体150に移動することができる。
【0061】
反応器前端部130に接続された第1の供給流路102aまたは反応器後端部170に接続された第2の供給流路102bを介して反応器本体150内に、電極活物質混合物50を予備前駆体に変換するための反応ガスを供給することができる。例示的な実施形態によると、前記反応ガスは、還元性ガスを含み、例えば水素(H)を供給することができる。前記反応ガスは、電極活物質混合物50と接触して、電極活物質混合物50を予備前駆体混合物60に還元させることができる。
【0062】
前記反応ガスが乾式回転加熱反応器100の後端部170に接続された第2の供給流路102bを介して反応器本体150に供給されると、乾式回転加熱反応器100の前端部130に接続された電極活物質混合物供給部110に注入される電極活物質混合物50と接触して、電極活物質混合物50と前記反応ガスのカウンターフロー(Counter flow)が形成され得る。前記カウンターフローによって未反応の電極活物質混合物50と前記高純度の反応ガスが接触することにより、反応転換率を向上させることができる。
【0063】
前記反応ガスが乾式回転加熱反応器100の前端部130に接続された第1の供給流路102aを介して反応器本体150に供給されると、乾式回転加熱反応器100の前端部130に接続された電極活物質混合物供給部110に注入される電極活物質混合物50と接触して、電極活物質混合物50と前記反応ガスのコフロー(co-flow)が形成され得る。前記コフローによって電極活物質混合物50と前記反応ガスとの接触時間が上昇し、電極活物質混合物50と反応ガスの還元反応の選択性および効率性が向上できる。また、高濃度の電極活物質混合物50と前記反応ガスが接触するので、初期の還元反応速度が上昇し、電極活物質混合物50と反応ガスが迅速に乾式回転加熱反応器100を通過して、全体工程時間を短縮させることができる。
【0064】
いくつかの実施形態では、前記電極活物質混合物50が、前記水素ガスを含む反応ガスによって還元され、予備前駆体混合物60が形成され得る。例えば、予備前駆体混合物60は、リチウム酸化物(例えば、LiO)を含む予備リチウム前駆体粒子70、および遷移金属または遷移金属酸化物を含む遷移金属含有粒子80を含むことができる。例えば、前記還元反応によって、前記リチウム酸化物と共にNi、Co、Mn、NiO、CoO及びMnOが生成され得る。
【0065】
反応器本体150は、加熱部104を含むことができる。加熱部104は、ヒーター、バーナー、ジャケットおよび電気炉からなる群より選択される少なくとも一つであってもよい。好ましくは、前記加熱部は、ジャケットまたは電気炉であってもよい。加熱部104は、反応器本体150内に位置し、別々の構成に存在しても、前記反応器本体150と一体化されていてもよい。
【0066】
加熱部104は、反応器本体150の温度を約250~600℃、好ましくは350~450℃に加熱することができる。前記温度の範囲内では、還元反応が行われ得る。前記反応温度の範囲内では、電極活物質混合物50と反応ガスの還元反応を促進することができる。反応器本体150の温度が350℃未満であると、還元反応が十分に進まない恐れがあり、450℃を超えると、還元反応の促進なしに、不要な熱量が過剰に供給され、還元工程の経済性が悪化する恐れがある。
【0067】
前記乾式回転加熱反応器は、間接加熱回転炉(indirect firing rotary kiln)であってもよい。前記間接加熱回転反応器は、反応器本体150の温度をジャケット(jacket)または電気炉などにより上昇させることができる。前記間接加熱回転炉は、反応器本体150をジャケットまたは電気炉等による熱伝導などによって間接的に加熱する。前記間接加熱回転炉は、反応器本体150の温度を間接的に加熱するので、反応器本体150の温度を上昇させる過程で燃焼物等の発生がないため、予備前駆体混合物が燃焼物によって汚染されることを防止することができる。前記間接加熱回転炉は、燃焼物の除去のための付加工程なしに、高純度のリチウム前駆体を容易に取得することができる。
【0068】
図1を参照すると、乾式回転加熱反応器100は、電極活物質混合物50が移動する方向である乾式回転加熱反応器100の長さ方向の軸(X)に回転することができる。例えば、乾式回転加熱反応器100は、反応器本体150が乾式回転加熱反応器100の長さ方向の軸(X)に回転することができる。乾式回転加熱反応器100が長さ方向の軸(X)に回転し、電極活物質混合物50と反応ガスとの接触を増大させて還元反応を促進することができる。また、電極活物質混合物50と反応ガスの還元反応によって形成された予備前駆体混合物60間の凝集を防止することができる。
【0069】
乾式回転加熱反応器100は、電極活物質混合物50が移動する長さ方向の軸(X)に5~200rpmで回転することができる。前記回転速度の範囲内では、電極活物質混合物50と反応ガスの還元反応によって形成された予備前駆体混合物60間の凝集を効果的に防止できるとともに、予備前駆体混合物60が乾式回転加熱反応器100の反応器本体150の内部表面に沈着されることを防止することができる。乾式回転加熱反応器100の回転速度が5rpm未満であると、電極活物質混合物50と反応ガスの接触率が減少して反応が十分に進まないことがある。乾式回転加熱反応器100の回転速度が200rpmを超えると、遠心力によって反応物が反応器本体150の内部表面に沈着することがあり、電極活物質混合物50の移動速度が増加して、還元反応が進んでいない未反応状態の電極活物質混合物50が排出されることがある。
【0070】
図1を参照すると、反応器本体150の長さを調節して、電極活物質混合物50が反応器本体150内で移動する距離を調節することができる。これにより、電極活物質混合物50と反応気体が反応器本体150の内部で滞留する時間及び全反応時間を調節することができる。
【0071】
反応器本体150の長さは1~60mであってもよい。反応器本体150の長さが1m未満であると、電極活物質混合物50と反応気体の還元反応が十分に進まないことがある。反応器本体150の長さが60mを超えると、既に反応が完了して、形成された予備前駆体混合物60が過度に反応器本体150内で滞在することがあり、工程効率が低下することがある。また、予備前駆体混合物60が反応器本体150内で移動する過程で予備前駆体混合物60間の凝集が発生することがある。
【0072】
反応器本体150内では、予備リチウム前駆体粒子70および遷移金属含有粒子80(例えば、前記遷移金属または遷移金属酸化物)を含む予備前駆体混合物60が形成され得る。予備リチウム前駆体粒子70は、例えば、リチウム水酸化物、リチウム酸化物、及び/又はリチウム炭酸化物を含むことができる。
【0073】
図1を参照すると、反応器後端部170に接続された排出口106を介して、予備リチウム前駆体粒子70および遷移金属含有粒子80を含む予備前駆体混合物60を収集することができる。
【0074】
排出口106を介して収集された予備前駆体混合物60は、水和反応部210に注入される。水和反応部210では、予備前駆体混合物60と水の水和反応が行われ得る(例えば、S30工程)。
【0075】
例示的な実施形態によると、水和反応部210では、予備リチウム前駆体粒子70を水と水和反応させてリチウム前駆体としてのリチウム水化物(例えば、LiOH)を回収することができる。前記水和反応によって、結晶化されたリチウム前駆体を得ることができる。
【0076】
水和反応部210で形成された前記リチウム前駆体をリチウム前駆体回収部230にて回収することができる(例えば、S40工程)。
【0077】
ニッケル、コバルトまたはマンガンを含む遷移金属含有粒子80は、相対的にリチウム前駆体粒子よりも重いので、前記リチウム前駆体粒子を先に収集することができる。前記リチウム前駆体粒子が先に収集されるので、別の分離工程なしにリチウム前駆体粒子を分離することができる。これにより、リチウム前駆体の再生工程の効率性、生産性、およびリチウム前駆体の選択性が向上できる。
【0078】
比較例では、リチウム二次電池からリチウムまたは遷移金属の回収のために、強酸による浸出工程などの湿式工程を用いることができる。しかし、前記湿式工程の場合は、リチウムの選択的分離に限界がある。また、溶液残留物を除去する水洗工程が必要となり、溶液の接触による水和物の生成などの副産物の生成が増加することがある。
【0079】
これに対して、本発明の実施形態によれば、溶液の使用が排除された乾式工程によって予備前駆体混合物60が収集され、強酸の使用が排除された水和反応によってリチウム前駆体を分離するので、副産物が減少して収率が増加し、廃水処理が不要となり、環境にやさしい工程の設計が可能となる。
【0080】
また、水和反応部210によってリチウム前駆体粒子を遷移金属含有粒子80よりも先に選択的に回収できるので、リチウム前駆体の選択比、収率および純度がより向上できる。
【0081】
また、乾式回転加熱反応器100は、反応器の回転速度、反応器本体150の長さ、および反応器本体内の温度などを調節することにより、電極活物質混合物50と反応ガスの反応速度を調節または促進することができ、リチウム前駆体の選択比、収率および純度がより向上できる。
【0082】
いくつかの実施形態では、水和反応部210からリチウム前駆体を回収した後、遷移金属含有粒子80を遷移金属前駆体回収部250に収集することができる。遷移金属前駆体回収部250から収集された遷移金属含有粒子80から遷移金属前駆体を得ることができる(例えば、S50工程)。
【0083】
例えば、予備リチウム前駆体粒子70を排出口106を介して収集した後、水和反応部210によって遷移金属含有粒子80を回収することができる。その後、遷移金属含有粒子80を酸溶液で処理して、各遷移金属の酸塩形態の前駆体を形成することができる。
【0084】
一実施形態では、前記酸溶液として硫酸を用いることができる。この場合には、前記遷移金属前駆体として、NiSO、MnSOおよびCoSOをそれぞれ回収することができる。
【0085】
前述のように、リチウム前駆体を乾式工程及び水和反応によって収集した後、遷移金属前駆体は、酸溶液を活用して選択的に抽出するので、各金属前駆体の純度および選択比が向上し、湿式工程の負荷が減少して廃水及び副産物の増加を低減することができる。
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-07-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池から収集された電極活物質混合物を準備するステップと、
前記電極活物質混合物を乾式回転加熱反応器内で還元性反応ガスとしての水素ガスとの接触によって還元させ、予備前駆体混合物を形成するステップと、
前記予備前駆体混合物から強酸の使用が排除された水和反応によって選択的にリチウム前駆体としてリチウム水酸化物を回収するステップと、を含む、リチウム前駆体の再生方法。
【請求項2】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記電極活物質混合物を前記乾式回転加熱反応器の長さ方向に移動させながら、前記長さ方向の軸に前記乾式回転加熱反応器を回転させることを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項3】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記長さ方向の軸に前記乾式回転加熱反応器を5~200rpmで回転させることを含む、請求項2に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項4】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、その反応温度が350450℃である、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項5】
前記予備前駆体混合物を形成するステップは、前記電極活物質混合物を還元性反応ガスと接触させることを含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項6】
前記還元性反応ガスは、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への後端部から供給され、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への前端部に供給される電極活物質混合物に対してカウンターフローを形成する、請求項5に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項7】
前記還元性反応ガスは、前記乾式回転加熱反応器の前記長さ方向への前端部に前記電極活物質混合物と共に導入される、請求項5に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項8】
前記予備前駆体混合物は、予備リチウム前駆体粒子および遷移金属含有粒子を含む、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項9】
前記予備リチウム前駆体粒子は、リチウム酸化物およびリチウム炭酸化物を含む、請求項8に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項10】
前記予備リチウム前駆体粒子を水和させるステップは、前記リチウム前駆体を前記遷移金属含有粒子よりも先に収集することを含む、請求項8に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項11】
前記遷移金属含有粒子を酸溶液処理して遷移金属前駆体を回収するステップをさらに含む、請求項8に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項12】
前記乾式回転加熱反応器は、間接加熱回転炉である、請求項1に記載のリチウム前駆体の再生方法。
【請求項13】
電極活物質混合物供給部と、
前記電極活物質混合物供給部から供給された電極活物質混合物を還元性反応ガスとしての水素ガスとの接触によって反応させる乾式回転加熱反応器と、
前記乾式回転加熱反応器内で生成された前記電極活物質混合物の反応物から、強酸の使用が排除された水和反応によりリチウム前駆体としてリチウム水酸化物を収集するリチウム前駆体回収部と、を含む、リチウム前駆体の再生システム。
【請求項14】
前記乾式回転加熱反応器の長さ方向への前端部または後端部のうちの少なくとも一つに接続されて前記還元性ガスを供給する供給流路をさらに含む、請求項13に記載のリチウム前駆体の再生システム。
【請求項15】
前記電極活物質混合物の反応物から遷移金属前駆体を収集する遷移金属前駆体回収部をさらに含む、請求項13に記載のリチウム前駆体の再生システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
例示的な実施形態において、前記リチウム前駆体は、前記予備リチウム前駆体粒子を水和させて回収することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
図1は、例示的な実施形態に係るリチウム前駆体の再生方法を説明するための工程フローチャートである。図1では、説明の都合上、工程の流れと乾式回転加熱反応器の模式図を併せて示している。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0042
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0042】
化学式1中、M1、M2及びM3は、Ni、Co、Mn、Na、Mg、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Ge、Sr、Ag、Ba、Zr、Nb、Mo、Al、GaまたはBから選択される元素であってもよい。化学式1中、0<x≦1.1、2≦y≦2.02、0<a<1、0<b<1、0<c<1、0<a+b+c≦1であってもよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
電極活物質混合物50は、電極活物質混合物供給部110を介して反応器前端部130に供給することができる。電極活物質混合物50は、反応器前端部130を介して反応器本体150に移動することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
例示的な実施形態によると、水和反応部210では、予備リチウム前駆体粒子70を水と水和反応させてリチウム前駆体としてのリチウム水化物(例えば、LiOH)を回収することができる。前記水和反応によって、結晶化されたリチウム前駆体を得ることができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図1
【補正方法】変更
【補正の内容】
図1
【外国語明細書】