(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133698
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】電気モーターを備えたモーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法と対応するモーターシステム
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20240925BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111744
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2021501304の分割
【原出願日】2019-05-29
(31)【優先権主張番号】102018211882.5
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510334790
【氏名又は名称】ジール・アベッグ エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カンメラー、 マティアス カルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンガー、 ビヨルン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気モーターを備えているモーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法を提供する。
【解決手段】動作パラメータの状態が、前記モーターシステムの動作中に記録され、前記動作パラメータが、基本パラメータと少なくとも1つの追加パラメータとを含み、前記基本パラメータの状態の記録を基に、前記基本パラメータの状態変化イベントが判断され、前記基本パラメータの状態変化イベントが検出されると、前記追加パラメータの状態が記録され、前記追加パラメータの前記記録された状態が、前記検出された状態変化イベントにリンクして保存される、方法。対応するモーターシステムおよびファンも特定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気モーターを備えているモーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法であって、
前記モーターシステムの動作パラメータの状態が、前記モーターシステムの動作中に記録され、
前記動作パラメータが、基本パラメータと少なくとも1つの追加パラメータとを含み、
前記基本パラメータの状態変化イベントが検出されると、前記追加パラメータの状態が記録され、
前記追加パラメータの前記記録された状態が、前記検出された状態変化イベントに関連する前記基本パラメータの変化量を示す情報を含んで保存される、方法。
【請求項2】
前記動作パラメータの記録された状態が、前記動作パラメータの測定値の範囲ごとに分割したクラスに割り当てられる、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
前記基本パラメータの前記状態変化イベントが検出されると、1つ以上のさらなる追加パラメータの状態が記録され、
前記さらなる追加パラメータの前記記録された状態が、前記検出された状態変化イベントにリンクされて保存される、請求項1または請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記検出された状態変化イベントと、前記追加パラメータの前記記録された状態とが、状態の組み合わせとして保存される、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記状態の組み合わせが、前記基本パラメータにおける前記状態変化の関数として保存される、請求項4に記載された方法。
【請求項6】
前記基本パラメータにおける前記検出された状態変化イベントの、前記状態変化の開始状態と移行状態とが、前記状態の組み合わせで保存されるよう、前記検出された状態変化イベントが、前記状態の組み合わせを用いて保存される、請求項4または請求項5に記載された方法。
【請求項7】
検出された状態変化イベントの結果として生成される状態の組み合わせが、行列要素を備えている、請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載された方法。
【請求項8】
前記基本パラメータにおける前記検出された状態変化イベントの分布を取得することができるように、前記状態の組み合わせが、前記行列に保存される、請求項7に記載された方法。
【請求項9】
前記状態変化イベントの開始状態と移行状態とが、前記行列の指数を介して表されるように、前記状態の組み合わせが、前記行列に保存され、
状態イベントの数に関する情報が、前記行列の前記行列要素に保存可能である、請求項7または請求項8に記載された方法。
【請求項10】
追加パラメータの記録された状態に関する情報が、前記行列の前記行列要素に保存される、請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載された方法。
【請求項11】
前記基本パラメータの状態変化イベントを検出するために、前記基本パラメータの前記状態の記録によって判断される前記基本パラメータの前記状態が、事前定義可能な評価間隔で評価される、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
事前定義可能な変化閾値を超過すると、前記基本パラメータの状態変化イベントが発生したと判断されるように、前記評価が実施される、請求項11に記載された方法。
【請求項13】
前記動作パラメータが、回転速度パラメータ、温度パラメータ、電流パラメータ、電圧パラメータを少なくとも1つ含む、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載された方法。
【請求項14】
回転速度パラメータが、前記基本パラメータとして用いられる、請求項1乃至請求項13のいずれか一項に記載された方法。
【請求項15】
電圧パラメータが、前記基本パラメータとして用いられる、請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載された方法。
【請求項16】
動作パラメータデータを取得する請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載された方法を実行するためのモーターシステムであって、
前記モーターシステムが、固定子と前記固定子に対して回転可能な回転子とを有している電気モーターと、プロセッサおよびメモリを有している制御ユニットと、を備え、
前記モーターシステムの動作中に動作パラメータの状態が記録されるよう、前記制御ユニットが構成され、
前記動作パラメータが、基本パラメータと少なくとも1つの追加パラメータとを含み、
前記基本パラメータの状態の記録を基に前記基本パラメータの状態変化イベントが判断されるように、かつ、前記基本パラメータの状態変化イベントが検出されると前記追加パラメータの状態が記録されるように、かつ、前記追加パラメータの記録された状態が検出された状態変化イベントに関連する前記基本パラメータの変化量を示す情報を含んで前記メモリに保存されるように、前記制御ユニットがさらに構成されている、モーターシステム。
【請求項17】
請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載された方法を実施する請求項16に記載されたモーターシステムを備えている、ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モーターを備えたモーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法に関する。
モーターシステムは、好ましくは、ファンの構成要素として提供されていてもよい。
【0002】
また、本発明は、動作パラメータデータを取得するモーターシステムに関する。
【0003】
最後に、本発明は、対応するモーターシステムを備えているファンに関する。
【0004】
ここで、「モーターシステム」という用語は、最も広い意味で理解される。
本発明は、例えば、電気モーター、いくつかの電気モーターの配置、電気モーターグループ、または、いくつかの電気モーターシステムに適用可能である。
また、モーターシステムは、プロセッサおよびメモリを有する制御ユニットを含んでいてもよい。
【背景技術】
【0005】
実用上、モーターシステムおよび/または電気モーターの構成要素またはアセンブリの、残存耐用年数を推定したり判断することは、常に重要である。
例として、電気モーターの組み立てにおける回転子疲労の判断に関連する特許文献1を参照されたい。
【0006】
構成要素またはアセンブリの残存耐用年数を判断することは、たとえば、熱的用途のような、故障が損害につながる場合は、特に重要である。
たとえば、サーバールームで冷却システムまたはその一部に故障が発生した場合は、過熱や動作故障、さらには、サーバーやその他のハードウェアの破損につながる可能性がある。
他の複雑なおよび/または高価な電子システムの冷却も、同様に重要である。
このような用途で使用する場合、直近で発生しそうな故障が早い段階で示され、故障発生の可能性がある構成要素を故障発生前にオプションで交換可能であると、便利である。
さらに、誤動作が発生した場合、または、損傷が発生した直後に、原因を特定するために、少なくとも動作パラメータデータを評価および分析可能であるかどうかも、特に重要である。
【0007】
特に、電気モーターを作動させるために使用されるコンバーター、たとえば、EC(Electronically Commutated、電子整流式)モーターの場合、いくつかの構成要素とアセンブリによって、耐用年数が制限されている。
ほとんどの場合、(主に、末期の、またはオプトカプラー内の)半導体および(主に、中間回路の電解コンデンサまたはスイッチモード電源内の)コンデンサが、故障のリスクが最も高い。
特に、コンデンサは、温度と負荷電流とが経年劣化に大きく影響するため、コンデンサの耐用年数には大きな幅がある。
【0008】
実際には、電気モーターは、ミニチュアドライブやサーボモーターから高性能ドライブに至るまで、ファンにおいて広く使用されている。
機械的に動く多くの装置と同様に、電気モーターも、機械的に摩耗する。
スリップリング付きの電気モーターの場合、スリップリングとすべり接点とが、特に、影響を受ける。
ただし、スリップリングのない電気モーターでも、摩耗により動作しなくなる場合がある。
機械部品の中では、モーターシャフトのベアリングが、特に影響を受ける。
【0009】
摩耗の程度は、電気モーターの動作条件に依存する。
たとえば、電気モーターが過度の高温または過度の低温で動作している場合、ベアリンググリースが最適な潤滑ができなくなり、ベアリングは、早期に故障する。
ベアリングは、振動によって力が付加されるため、強い振動によって、ベアリングの耐用年数が短くなる可能性もある。
このため、電気モーターの動作パラメータに影響を与える物理変数を知る必要がある。
そのような物理変数の知識があれば、摩耗しやすい電気モーターの動作を認識可能である。
すでに故障が発生している場合、故障の原因だと予想される動作パラメータに適したモーターに、交換することができる。
【0010】
電気モーターの動作パラメータについての情報を取得可能なセンサーを、電気モーターのハウジングに取り付けることが、実用上知られている。
この場合は、温度と振動とを測定する。
さらに、モーターの動作は、電気モーターの給電信号のさまざまなパラメータ(たとえば、電圧波形や電流強度)から推測可能である。
【0011】
したがって、最適化やトラブルシューティングの目的でこれらの収集した動作データを分析および評価するために、判断材料になり得る動作パラメータデータを保存することは、特に重要である。
【0012】
しかし、継続的なデータ収集には、膨大な量のメモリを必要であるため、通常、ファンのハードウェアでは、実行できない。
ここで、モーターシステム内のゲートウェイを用いると、動作パラメータデータの記録を、中央評価ユニットに直接送ることができる。
ただし、これは、面倒であり、膨大な量のデータを受信処理可能である高レベルの中央計算ユニットへ、ゲートウェイを永続的に接続する必要がある。
さらに、膨大な量のデータの送信が必要であり、非効率かつ不利である。
【0013】
したがって、実用上のファンでは、標準的な装置の動作パラメータデータの記録は、意義のある記録とはなっていない。
特に、客先での使用に関して、動作データを用いて動作を最適化することはできず、かつ/または、動作データを用いてモーターシステムの故障原因を判断/特定することもできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国特許出願公開第102016122404号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、動作パラメータデータの取得および保存を改善および/または効率化するように、電気モーターを含む前述のタイプのモーターシステムの動作パラメータデータを(好ましくは、モーターシステム内で直接)取得する方法を提供することである。
さらに、対応するモーターシステムと対応するファンとが、特定される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述の目的は、請求項1の特徴を用いて、本発明によって達成される。
この方法は、(ファン用の)電気モーターを備えているモーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法であって、動作パラメータの状態が、前記モーターシステムの動作中に記録され、前記動作パラメータが、基本パラメータと少なくとも1つの追加パラメータとを含み、前記基本パラメータの検出された状態を基に、前記基本パラメータの状態変化イベントが判断され、前記基本パラメータの状態変化イベントが検出されると、前記追加パラメータの状態が記録され、前記追加パラメータの前記記録された状態が、前記検出された状態変化イベントにリンクして保存される、方法である。
【0017】
上述の目的は、また、請求項16に記載された特徴によっても達成される。
つまり、動作パラメータデータを取得するための、モーターシステムであって、前記モーターシステムが、固定子と前記固定子に対して回転可能な回転子とを有している電気モーターと、プロセッサおよびメモリを有している制御ユニットと、を備え、前記モーターシステムの動作中に動作パラメータの状態が記録されるように前記制御ユニットが構成され、前記動作パラメータが、基本パラメータと追加パラメータとを含み、前記基本パラメータの状態検出を基に、前記基本パラメータの状態変化イベントが判断されるように、かつ、前記基本パラメータの状態変化イベントが検出されると、前記追加パラメータの状態が記録されるように、かつ、前記追加パラメータの前記記録された状態が、前記検出された状態変化イベントにリンクされている前記メモリに保存されるように、前記制御ユニットがさらに構成されている、モーターシステムによっても達成される。
【0018】
上述の目的は、請求項17に記載の特徴を備えているファンによって達成される。
つまり、ファンは、請求項16に記載のモーターシステムを備えている。
【0019】
本発明による方法では、後の分析および評価に必要なモーターシステムの動作パラメータデータが、そのデータ取得中に可能な範囲で削減されると、非常に有利である。
さらに、本発明による方法では、現在の動作ポイントを評価や保存すべきかどうかの判断を基に、保存データ量を選択的に削減することができる。
モーターシステムの動作パラメータデータを取得するために、動作パラメータの状態が動作中に記録される。
この場合の動作パラメータには、基本パラメータと追加パラメータとが含まれる。
本発明によれば、基本パラメータの状態の記録を基に、事前定義可能な基本パラメータの状態変化イベントが、判断される。
本発明によれば、事前定義可能な基本パラメータの状態変化イベントが検出されると、(好ましくは、状態変化イベントの検出時の)追加パラメータの状態が記録される。
追加パラメータの記録された状態は、検出された状態変化イベントにリンクして保存される。
【0020】
したがって、モーターシステムの動作パラメータデータを取得するための本発明による方法、本発明によるモーターシステム、および、本発明によるファンを使用すると、モーターシステムでの動作パラメータデータの取得および保存が改善され、かつ/またはより効率的になる。
したがって、本発明は、(特に、モーターシステムの構成要素に関して、)モーターシステムの動作ポイントをメモリ効率の良い方法で記録するという考えに基づいており、その結果、記録した動作データを、損害発生時に原因発見の分析に使用したり、モーターシステムおよび/またはその構成要素を体系的に開発および最適化するために、動作パラメータデータを長期データベースとして使用したりすることができる。
有利な方法では、メモリ機能を備えた制御装置または制御ユニットが、使用されるモーターシステムまたは電気モーター内に提供される。
【0021】
判断される「事前定義可能な状態変化イベント」とは、動作パラメータの状態が大幅に変化する、特定のまたは定義された状態変化イベントとして理解することができる。
モーターの動作よりも前に、事前定義可能な状態変化イベントが(厳密であるか否かを問わず)決められている、と考えられる。
さらに、客先でのモーターシステムの学習中および/またはモーターシステムの動作中に、モーターシステムが独立して状態変化イベントを作成および/または適応可能であり、事前定義可能な状態変化イベントとは、そのような状態変化イベントも意味すると考えることもできる。
したがって、実施形態の範囲内では、事前定義可能な状態変化イベントは、厳密に事前定義や指定がなされておらず、むしろ、モーターシステムの学習中に適応可能であると考えることもできる。
【0022】
動作パラメータの状態の「記録」または「取得」は、最も広い意味での状態の記録として理解されるべきである。
このようにして、測定に基づいて状態を取得可能である。
動作パラメータの状態は、例えば、動作に固有のシミュレーションに基づいて計算される。
シミュレーションデータと実際の測定データを組み合わせて使用することも可能である。
したがって、動作パラメータ(基本パラメータおよび/または追加パラメータ)の「記録された状態」という表現は、状態が測定および/または計算によって記録されることを意味する。
【0023】
「モーターシステムの電気モーターの動作パラメータ」は、電気モーターまたはモーターシステムの動作条件を特徴付ける様々な情報を含んでいてもよい。
このような動作パラメータは、例えば、動作温度、ベアリングの温度、振動応力、電気モーターの向き、回転速度、または湿度であってもよい。
上述の列挙は、最終的なものではなく、電気モーターの動作パラメータになり得るものを示している。
原則として、電気モーターまたはモーターシステムの耐用年数に直接的または間接的に影響を与えるものはすべて、そのような動作パラメータになる可能性がある。
それぞれの動作パラメータを表す、センサーで記録された物理変数も、動作パラメータに応じて様々なものがある。
したがって、動作パラメータまたはその状態の記録は、1つ以上の(好ましくは、物理的な)測定変数を基に、判断可能である。
さらに、このような動作パラメータまたはその状態の記録は、内部処理やシミュレーションを経た取得データ、および/または場合によっては、計算を経た記録データに基づいて行われる。
【0024】
取得した動作パラメータデータをモーターシステムに保存するために、モーターシステムの電子機器は、動作パラメータの記録された状態を保存するように設計されたメモリを有することが好ましい。
電源故障が発生した場合のデータ損失を回避するために、メモリを、不揮発性メモリとして設計することが好ましい。
そのような不揮発性メモリは、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM(電子的に消去可能にプログラム可能な読み取り専用メモリ)、NVRAM(不揮発性ランダムアクセスメモリ)、または、別の半導体メモリであってもよい。
【0025】
事前定義可能な分類は、動作パラメータの状態の記録の根拠として使用可能であり、動作パラメータの記録された状態は、事前定義された分類のクラスに割り当てられる。
したがって、動作パラメータの状態を監視して、効率的に記録および保存可能にする適切な処理を実行可能である。
クラスは、たとえば、動作パラメータの事前定義された範囲に対応させることができる。
したがって、定義された動作パラメータ範囲内における、動作パラメータの範囲ごとの分割を、クラスと呼ぶことができる。
状態変化イベントの処理に向けて、動作パラメータを測定値によって分類している複数のクラスを、同じ大きさのクラスとすることができ、その結果、分類は、等間隔で定義される。
さらに、動作パラメータによって、分類が非線形に定義されることも考えられる。
【0026】
この点において、事前定義可能な分類(つまり、分類によって定義されるクラス)は、モーター動作の前に定義可能であり、この結果、事前定義された分類が提供されることに注意されたい。
さらに、分類(したがって、分類によって指定されたクラス)は、モーターシステムの動作中および/またはモーターシステムの学習段階で、場合によっては個別に、動作パラメータに対して作成および/または適応する。
【0027】
さらに、基本パラメータの状態変化イベントが検出されると、状態変化イベントの検出時の1つ以上のさらなる追加パラメータの状態が、状態が検出された状態変化イベントとリンクして、記録可能である。
結果として、さらなる動作パラメータデータを、検出された状態変化イベントのそれぞれに関連して効率的に保存可能である。
【0028】
実施形態では、基本パラメータの検出された状態変化イベントと、追加パラメータの記録された状態とが、状態の組み合わせとして保存されてもよい。
複数の追加パラメータを考慮する場合、複数の追加パラメータの記録された状態と検出された状態変化イベントとが、状態の組み合わせとして保存される。
これは、検出された状態変化イベントと、追加パラメータの記録された状態と、場合によっては、さらなる追加パラメータの記録された状態とが、状態の組み合わせとして保存可能であることを意味する。
その結果、メモリ効率の高い動作パラメータデータの取得が可能になり、複数の動作パラメータをリンクして検討を行うことができる。
2つ以上の動作パラメータを考慮する場合、追加パラメータとして検出および保存される少なくとも1つのさらなる動作パラメータの状態が、モーターシステムの動作中の追加パラメータとして検出および保存されると共に、動作パラメータの動作状態が、基本パラメータとしての第1動作パラメータの状態変化の関数として判断され保存される。
したがって、モーターシステムでの動作データのデータの取得および保存を、洗練された方法で実行可能である。
すなわち、特定のデータ量を選択して、知的に圧縮して実行可能である。
【0029】
したがって、状態の組み合わせが、基本パラメータにおける状態変化の関数として保存可能である。
その結果、モーターシステムの動作状態が、状態の組み合わせの形態で、状態変化イベントの検出結果として記録されるため、効率の良い方法を提供可能である。
さらに、状態の組み合わせを保存するための方法が、検出された基本パラメータの特徴的な状態変化の関数として、開始又は実行される。
【0030】
記録または計算された動作パラメータデータの効率的な保存に関して、基本パラメータにおける検出された状態変化イベントの、状態変化の開始状態と移行状態とが、状態の組み合わせで保存されるように、検出された状態変化イベントが、状態の組み合わせで保存される。
したがって、特徴的な状態変化前の状態と特徴的な状態変化後の状態とが、基本パラメータの状態変化イベントの開始状態と移行状態として保存される。
【0031】
動作中に検出された状態変化イベントを基に生成される状態の組み合わせは、行列として、または行列を用いて保存可能である。
行列は、行列の列と行を介してアドレス指定可能な行列要素で構成される。
さらに、行列は、多次元行列または値入力可能な行列として実行可能であり、さらにサブ要素が行列要素に保存される。
サブ要素は、スカラー、ベクトル、および/または行列を含んでもよい。
【0032】
さらに、基本パラメータにおける検出された状態変化イベントの分布を取得することができるよう、状態の組み合わせが、行列に保存される。
したがって、基本パラメータの状態変化イベントのそれぞれの状態変化を、後の動作データ分析に使用可能である。
【0033】
記録または判断された動作状態の効率的な保存に関して、状態変化イベントの開始状態と移行状態とが、行列の指数を介して(好ましくは、行列の行指数および列指数を介して)マッピングされるよう、状態の組み合わせを、行列に保存することができる。
状態イベントの数に関する情報は、行列の行列要素に適切に保存できる。
したがって、記録された動作状態を、簡単で効率的に保存できる。
【0034】
有利な方法では、追加パラメータの記録された状態に関する情報を、行列の行列要素に保存可能である。
行列は、行列要素を有する値入力可能な行列であってもよく、行列要素は、ベクトルおよび/または1つ以上の行列を含んでもよい。
したがって、追加パラメータ関するさまざまな情報(特に、追加パラメータの記録された状態)を、効率的な方法で値入力可能な行列に保存することができる。
【0035】
動作パラメータデータの適切な収集に関して、基本パラメータの状態変化イベントを検出するために、基本パラメータの状態記録によって判断される基本パラメータの状態が、事前定義可能または事前定義された評価間隔で、評価/分析可能である。
したがって、状態変化イベントが、効率的に検出される。
状態変化イベントによって、基本パラメータの事前定義された状態変化を表現可能である。
【0036】
事前定義可能な変化閾値(特に、状態変化閾値)を超過すると、基本パラメータの状態変化イベントが発生したと判断されるよう、評価を有利に実施可能である。
したがって、適切な変化閾値を選択することにより、動作パラメータデータの取得および保存に関して、特徴的な状態変化としてどのような状態変化を考慮に入れるべきかを決定可能である。
【0037】
動作パラメータが、回転速度パラメータ、温度パラメータ、電流パラメータ、および/または電圧パラメータなどを含んでもよい。
モーターシステムおよび/または電気モーターの動作パラメータは、後の分析やモーターシステムの最適化に特に重要であるので、検討や保存がなされてもよい。
したがって、動作パラメータが、回転速度、温度、電流、電圧などに関する情報を含んでもよい。
さらに、勾配や、そこから導出される他の数学的な導関数も考えられる。
【0038】
有意な動作パラメータデータの取得と保存とに関して、回転速度パラメータを基本パラメータとして使用する。
温度パラメータおよび/または電流パラメータを考慮に入れて、追加パラメータとして適切な方法で記録可能である。
回転速度パラメータの関数として、動作パラメータデータを基本パラメータとして保存すると、例えば、次のような利点がある。
モーターシステムの動作モード変化に関する詳細な情報が得られる。
客先での動作パラメータの体系的な分析が可能になる。
動作モードと損傷パターンとの間の相関関係を判断するためのデータ分析が可能になる。
耐用年数を見積もる際にコールドスタートを考慮に入れることができる。
【0039】
さらに、動作パラメータデータの取得と保存とに関して、電圧パラメータが、基本パラメータとして用いられる。
【0040】
本発明を改良するための、様々なオプションが存在する。
この目的のために、請求項1に従属する請求項と図面を参照する実施形態の説明を参照されたい。
図面を参照する本発明である実施形態の説明に関連して、一般に好ましい改良も説明される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明の実施形態による、モーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法の概略ブロック図。
【
図2】本発明の実施形態による、モーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法のための、状態変化イベントを検出するためのアルゴリズムの概略図。
【
図3a】経時的に判断される、動作パラメータの状態の説明のための図。
【
図3b】経時的に判断される、さらなる動作パラメータの状態の説明のための図。
【
図4】本発明の実施形態による、動作パラメータの判断された状態を、値入力可能な行列で状態の組み合わせとして保存する、概略図。
【
図5】本発明の実施形態による方法のステップの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の実施形態による、モーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法の概略ブロック図を示す。
図1は、モーターシステムの外側回転子モーターおよび/またはファンに適用可能な実施形態による方法の原理を示している。
モーターシステムおよび/またはファンの動作中、すなわち、モーターの動作中に、事前定義された動作パラメータ1の状態変化イベントが、基本パラメータとしての動作パラメータ1の状態記録を基に、判断される。
これは、モーターの動作中に、動作パラメータ1の状態が経時的に記録され、事前定義可能な評価間隔Δtで動作パラメータ1の状態が評価され、動作パラメータ1の事前定義された状態変化および/または特徴的な状態変化が検出されることを意味する。
評価の過程で動作パラメータ1の特徴的な状態変化が見られない場合、モーターの動作は、そのまま継続する。
特徴的な状態変化が検出されると、メモリ機能が開始される。
したがって、ファンのモーターシステムの動作中に、動作パラメータを通じて特徴的な状態変化が検出され、必要に応じてメモリ機能が開始される。
そして、動作パラメータ1の状態変化が、(可能であれば、さらなる動作パラメータの)動作パラメータ2の状態と共に、組み合わせとして保存されるよう、保存機能が構成されている。
対応するメモリは、モーターシステムおよび/またはファンで、使用可能である。
モーターは、動作を継続している。
その結果、動作パラメータの状態を表す、関連する状態の組み合わせを、基本パラメータ(この場合は、動作パラメータ1)の状態変化の関数として、検出および保存可能である。
【0043】
図2は、本発明の実施形態による、モーターシステムの動作パラメータデータを取得する方法のための、状態変化イベントを検出するためのアルゴリズムを概略図で示している。
図2は、例として、基本パラメータの特徴的な状態変化の検出に使用可能な、上記方法の基となるアルゴリズムを示している。
モーターの動作中、モーターシステムの基本パラメータを、事前定義された評価間隔でサンプリングする。
サンプリング時刻tでの基本パラメータのサンプリング状態n(t)は、その前のサンプリング時刻t-1での基本パラメータの状態n(t-1)と継続的に比較され、特徴的な状態変化を基に状態変化イベントを検出する。
状態変化が検出されると、検出された特徴的な状態変化と、(検出時の状態の)少なくとも1つの追加パラメータとを保存し、検出された状態変化イベントを保存する方法が開始される。
【0044】
したがって、基本パラメータとして機能する動作パラメータの変化が、定義された評価間隔で、動作中に分析される。
状態変化イベントに関連するモーターシステムの動作状態が、基本パラメータの変化量(すなわち、基本パラメータの状態変化)と、状態変化イベント時の少なくとも1つの追加パラメータの状態とによって、特徴付けられる。
【0045】
図3aおよび
図3bは、経時的に判断される動作パラメータの状態を説明するための図を示している。
図3aおよび/または
図3bのx軸は、参照変数(例えば、動作パラメータ1および動作パラメータ2の状態に関連する時間)を表している。
時間の代わりに、電流、電力、温度などの変数、および/またはこれらの変数の組み合わせを参照変数として使用することもできる。
図3aおよび/または
図3bのy軸は、動作パラメータ1および/または動作パラメータ2のとり得る状態を表しており、動作パラメータ1および動作パラメータ2の値の範囲は、クラス1からクラス10に分割されている。
【0046】
動作パラメータ1は、基本パラメータとして機能し、
図3aに示されている基本パラメータの曲線は、回転速度パラメータの例示的な曲線を表している。
図3aに破線で示されている評価間隔Δtでは、クラス4からクラス2への回転速度の跳びが発生している状態変化イベントが見てとれる。
【0047】
動作パラメータ2は、追加パラメータとして機能し、
図3bに示す追加パラメータの曲線は、温度パラメータの例示的な曲線を表している。
基本パラメータの状態変化イベントの検出時刻は、
図3bに垂直破線で示されている。
したがって、状態変化イベントの検出時の追加パラメータの状態は、
図3bのクラス5が割り当てられている。
したがって、
図3は、状態変化イベントとして評価間隔Δtで発生する回転速度の跳び、すなわち、状態クラス4から状態クラス2に跳ぶ回転速度パラメータ、を示している。
状態変化イベントの発生時に、追加パラメータとして機能する温度パラメータは、状態クラス5であると記録される。
【0048】
図4は、本発明の実施形態による、動作パラメータの判断された状態を、値入力可能な行列で状態の組み合わせとして保存する例を、概略図で示す。
図4は、
図3による動作パラメータ1および動作パラメータ2の例示的な曲線を使用した動作パラメータデータの保存を示し、データの保存は、値入力可能な行列内で定義されたクラスの形態で、記録された動作状態を保存することによって行われる。
クラスは、動作パラメータを、定義された動作パラメータ値の範囲に分割したものである。
動作パラメータの分類は、等間隔または非線形に定義可能である。
動作パラメータ1の状態変化の後、開始クラスと移行クラス(つまり、基本パラメータとしての動作パラメータ1の状態変化前後の状態)とを検証できるように、検出された状態変化イベントが、メイン行列に保存される。
行列要素への入力数は、基本パラメータとしての動作パラメータ1の分類によって特徴付けられる、状態変化イベントの数を表している。
【0049】
(クラスからクラスへの)状態変化イベントの保存された状態変化(つまり、基本パラメータとしての動作パラメータ1の状態変化)に加えて、さらなる動作パラメータ(つまり追加パラメータ)に関する情報も実装プログラムコードに保存される。
このプログラムコードは、基本パラメータの状態変化イベントにリンクされている。
したがって、たとえば、基本パラメータ(動作パラメータ1)でクラス4からクラス2への回転速度の跳びが発生し、その回転速度の跳びが発生したときの追加パラメータ(動作パラメータ2)でクラス5の温度が存在したことを、動作パラメータデータとして保存できる。
【0050】
図5は、本発明の実施形態による方法の個々のステップを、全体図で示している。
モーターシステムの動作パラメータデータが取得され、動作パラメータ1および動作パラメータ2の状態が、モーターシステムの動作中に記録される。
動作パラメータ1は、基本パラメータを表し、動作パラメータ2は、追加パラメータを表している。
基本パラメータとして機能する動作パラメータ1の状態記録を基に、動作パラメータ1の事前定義された状態変化イベントが判断される。
動作パラメータ1の状態変化イベントが検出されると、追加パラメータとして機能する動作パラメータ2の状態(状態変化イベントの検出時の状態)が記録される。
記録された動作パラメータ2の状態は、検出された状態変化イベントにリンクされ、値入力可能な行列に保存される。
【0051】
検出された状態変化イベントと追加パラメータの記録された状態とが、状態の組み合わせとして行列に保存される。
検出された状態変化イベントの開始状態と移行状態とが、行列の列と行で示されるように、状態の組み合わせが行列に保存される。
検出された状態イベントの数に関する情報が、メイン行列の行列要素に保存される。
さらに、追加パラメータ(すなわち、動作パラメータ2)の記録された状態に関する情報が、行列要素に保存される。
図5によると、動作パラメータ1の開始クラス4から移行クラス2への特徴的な状態変化が、メイン行列に保存される。
状態変化イベントの検出時の追加パラメータの状態(つまり、追加パラメータとして機能する動作パラメータ2のクラス5)も、対応する行列要素に保存される。
【0052】
保存データの量を削減するために、現在の動作ポイントを評価または保存するかどうかを判断する選択がなされる。
そうすることで、動作パラメータデータをメモリ効率良く取得することができる。
【0053】
本発明による方法のさらに有利な実施形態に関して、説明の一般的な部分および添付の特許請求の範囲を参照されたい。
【0054】
最後に、本発明による方法および本発明によるモーターシステムならびに本発明によるファンの実施形態は、特許請求される教示を説明するためにのみ使用され、特許請求される教示を実施形態に限定しない。