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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133701
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】警報ベル
(51)【国際特許分類】
   G10K 1/064 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
G10K1/064 E
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111878
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2020058200の分割
【原出願日】2020-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】池端 利之
(72)【発明者】
【氏名】川島 高広
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴングが発生する鐘音の音圧を上げることができる警報ベルを提供する。
【解決手段】打撃されると鐘音を発生するゴングと、ゴングを打撃する打棒3と、を備えた警報ベル1であって、ゴングは、その口縁部2dにスリット2eが形成されるものであると共に、そのスリット2eから周方向に35~55度の角度間隔の範囲内の位置に振動の腹となる部分を有するものであり、打棒3は、その角度間隔の範囲内の位置を打撃する。また、打棒3は、ゴング2の振動の腹となる部分がある、スリット2eから周方向に略45度の角度間隔θの位置を打撃する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、を備えた警報ベルであって、
前記ゴングは、その口縁部にスリットが形成されるものであると共に、そのスリットから周方向に35~55度の角度間隔の範囲内の位置に振動の腹となる部分を有するものであり、
前記打棒は、その角度間隔の範囲内の位置を打撃することを特徴とする警報ベル。
【請求項2】
前記打棒は、前記ゴングの振動の腹となる部分がある、前記スリットから周方向に略45度の角度間隔の位置を打撃することを特徴とする請求項1に記載の警報ベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、モータによって駆動される打棒がゴングを打撃して鐘音を発生する警報ベルに関する。
【背景技術】
【0002】
警報ベルは、打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジング等を備え、火災等の非常事態の発生時に鳴動して鐘音を発生し、警報を発するものとして用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-235394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の警報ベルの主な用例としては、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル(以下、単に「非常ベル」という)等である。非常ベルの場合、消防法に基づいて基準が定められている。その基準の1つとして、音圧がある。非常ベルとして用いられる警報ベルは、その音圧の基準を満たしている必要がある。
【0005】
警報ベルのゴングの大きさを小さくすることができれば、製造コストを安価にすることができる。しかしながら、ゴングの大きさを小さくしただけでは、音圧が下がってしまい、非常ベルとして用いるのに必要な音圧を得ることが困難になる。
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、ゴングが発生する鐘音の音圧を上げることができる、警報ベルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、打撃されると鐘音を発生するゴングと、前記ゴングを打撃する打棒と、を備えた警報ベルであって、前記ゴングは、その口縁部にスリットが形成されるものであると共に、そのスリットから周方向に35~55度の角度間隔の範囲内の位置に振動の腹となる部分を有するものであり、前記打棒は、その角度間隔の範囲内の位置を打撃することを特徴とする警報ベルである。
【0008】
前記打棒は、前記ゴングの振動の腹となる部分がある、前記スリットから周方向に略45度の角度間隔の位置を打撃するものとすることができる。
【0009】
また、この発明は、前記打棒を駆動するモータと、前記モータを収納するハウジングと、をさらに備えるものとすることができ、前記ハウジングは、その周壁の一部をなすものとして、平面視V字状に折曲する曲壁部を周方向に複数有するものとすることができる。
【0010】
前記複数の曲壁部は、略同じ形状で、かつ周方向に略均等の配置で設けられるものとすることができる。また、前記ハウジングは、平面視Y字状又は十字状をなすものとすることができる。また、前記ハウジングは、その内部に複数の分岐空間部が形成されるものとすることができ、それら分岐空間部に前記モータとその動力を前記打棒に伝達する動力伝達部が配置されて収納されるものとすることができる。
【0011】
さらに、この発明は、前記警報ベルを設置位置に取付けるための取付板をさらに備えるものとすることができ、前記ゴングは、取り付け状態において、前記取付板の端部に設けられる固定部材用の挿通孔が外部に露出する外径を有するものとすることができる。また、前記ハウジングは、裏面側に開口を有すると共に、その開口を閉じる蓋部を有するものであり、前記開口と前記蓋部の間には、前記開口をシールする絶縁シートが設けられるものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ゴングの振動の腹となる部分がある、スリットから周方向に35~55度の角度間隔の範囲内の位置を打棒が打撃するものであることにより、打撃によるゴングの振動効率を向上させることができ、ゴングが発生させる鐘音の音圧を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の警報ベルの実施形態の一例を示したものであり、警報ベルの内面側(裏面側)を示した裏面図(ハウジングの裏蓋を開けた状態のもの)である。
図2図1のA-A線矢視断面図である。
図3】同上の警報ベルの分解斜視図である。
図4】同上の警報ベルを防雨型として取り付ける場合の設置態様の一例を示したものであり、警報ベル、取付板及び設置対象の壁面の表面を示した表面図である。
図5】同上の警報ベル、取付板及び設置対象の壁面側の部分(壁面やスイッチボックス等)を断面として示したものであり、図5のE-E線部矢視断面図である。
図6】同上の警報ベル、取付板及び設置対象の壁面側の部分(壁面やスイッチボックス等)の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
この発明の警報ベルの実施形態の一例について、図面を参照しつつ説明する。なお、この発明の警報ベルは、例えば、自動火災報知設備の地区音響装置や非常警報設備の音響装置の非常ベル等として用いることができるものである。
【0015】
<基本構成>
警報ベル1は、打撃されると鐘音を発生するゴング2と、ゴング2を打撃する打棒3と、打棒3を駆動するモータ4と、モータ4の駆動軸4aに固定されて、駆動軸4aと共に回転するカム5と、打棒3とカム5に接続されて、モータ4の動力を打棒3に伝達する動力伝達部6と、モータ4等を収納するハウジング7を有する(図1乃至3参照)。
【0016】
<ゴング>
ゴング2は、底部2bと周側部2cを有し、深さの浅い平面視円形の椀状の形状をなす。内面側には、周囲が周側部2cによって囲まれる空間部2aが形成される。ハウジング7は、その空間部2a内に打棒3が周側部2cの内面を内側から打撃する配置で設けられる。具体的には、底部2bの内面上にハウジング固定用の固定部2baが設けられており(図2及び3参照)、その固定部2baにハウジング7が固定されて前記の配置で設けられる。なお、周側部2cには、その口縁部2dにスリット2eが形成されている。図示の例の場合、そのスリット2eが周側部2cの周方向に180度の対称位置に1つずつの2つ形成されるものとしている。
【0017】
<打棒>
打棒3は、長さ方向前方(ゴング2側)に移動した際に、先端側に設けられる打撃部3aがゴング2の周側部2cの内面を打撃する配置で設けられる。
【0018】
<モータ>
モータ4は、駆動軸4aが打棒3の長さ方向に対して略直角になる向きの配置で設けられる。なお、駆動軸4aの回りには、駆動軸4aと共に回転するカム5が設けられている。
【0019】
<動力伝達部>
動力伝達部6は、先端側が接続部6aで打棒3に接続されると共に後端側が接続部6bでカム5に接続される線状の部材からなり、モータ4の回転運動の動力をカム5を介して往復運動の動力に変換して打棒3に伝達し、打棒3を長さ方向前後に移動させる配置で設けられる。
【0020】
<ハウジング>
・形状、配置
ハウジング7は、その周壁7aの一部をなすものとして、周方向に平面視V字状(ゴング2の周側部2c側に拡開する向き)で折曲する曲壁部7aaを複数有する。図示の例の場合、曲壁部7aaの数を3つとしており、ハウジング7が平面視面視Y字状の形状をなすものとしている。また、複数の曲壁部7aaは、略同じ形状で、かつ周方向に略均等な配置で設けられるものとしている。そして、そのような形状のハウジング7が、ゴング2内面側の空間部2a内に平面視略中央に位置する配置で設けられるものとしている。ここで、複数の曲壁部7aaがカーブ状ではなく角度をもって折曲していることにより、ゴング2内面側の空間部2aを大きくできること、さらに、鐘音の反射方向を広げることができる。
【0021】
さらに、ハウジング7は、周壁7aの一部をなすものとして、各曲壁部7aaの間を連結する端壁7abを複数有する。図示の例の場合、端壁7abの数は、曲壁部7aaの数に対応して3つとしている。これら複数の端壁7abも、略同じ形状で、かつ周方向に略均等な配置で設けられるものとしている。また、ハウジング7は、底壁7bをさらに有する。底壁7bには、その外面にゴング2側の固定部2baに固定される凸部(内面側には凹部)7baが設けられている。ハウジング7は、その凸部7baがゴング2側の固定部2baにネジ7bbでネジ止めされて固定されることにより、ゴング2内面側の空間部2a内に前記の配置で設けられる。
【0022】
なお、ハウジング7は、裏面側の開口7fを閉じる裏蓋7gをさらに有するが、図示の例の場合、開口7fと裏蓋7gの間に絶縁シート7hが設けられるものとしている(図3参照)。絶縁シート7hは、開口7fをシールしてハウジング7の内部7cに腐食性ガス等が流入するのを防ぐ機能を有する。それにより、ハウジング7に収納されるモータ4等を保護することができるものとしている。なお、裏蓋7gの外面に設けられる符号を付した部分は、警報ベル1を取り付け対象への掛け止め用に用いるフック7iである。
【0023】
・周囲空間の均等化
ここで、ハウジング7の周壁7aを、平面視V字状の曲壁部7aaを複数有するものとしつつ、それら曲壁部7aaを略同じ形状で、かつ周方向に略均等な配置で設けられるものとしていることにより、ゴング2内面側の空間部2dにおける、それら曲壁部7aaとゴング2の周側部2cとの間に形成される空間も、略同じ形状で、かつ周方向に略均等な配置で形成されるものとすることができる。
【0024】
・音圧の向上(ハウジングの形状、周囲空間等によるもの)
この発明の警報ベル1においては、ハウジング7が平面視V字状に折曲する曲壁部7aaを複数、周壁7aの一部をなすものとして有していることにより、複数の曲壁部7aaを音響壁として機能させることができ、ゴング2内面側の空間部2a内における共鳴効果を向上させることができる。さらに、複数の曲壁部7aaを略同じ形状で、かつ周方向に略均等な配置で設けられるものとすることにより、前記の通り、ゴング2内面側の空間部2dにおける、それら曲壁部7aaとゴング2の周側部2cとの間に形成される空間も、略同じ形状で、かつ周方向に略均等な配置で形成されるものとすることができる。これによっても、ゴング2内面側の空間部2a内における共鳴効果を向上させることができる。そして、例えば、そのようなハウジング7として図示の例のような平面視Y字状の形状をなすものを用いることにより、後記の音圧の測定実験の結果が示す通り、ゴング2が発生する鐘音の音圧を上げることができる。
【0025】
・音圧の測定実験(平面視L字状のハウジングを用いたものとの比較)
発明者等は、モータや動力伝達部を収納するハウジングとして、この発明のような平面視Y字状のハウジングを用いた警報ベルと、平面視L字状のハウジングを用いた警報ベルとで鐘音の音圧の測定実験を行った。その実験の結果によれば、平面視Y字状のハウジングを用いたものの方が平面視L字状のハウジングを用いたものよりも音圧が高かった。この結果は、この発明のように平面視Y字状のハウジングを用いたもの場合、前記の通り、複数の曲壁部が音響壁として機能するものであることや、複数の曲壁部が略同じ形状で、かつ略均等な配置で設けられ、ゴングの周側部との間に形成される空間も、略同じ形状で、かつ周方向に略均等に形成されるものであることにより、ゴング内面側の空間部内における共鳴効果が向上することによるものと解される。
【0026】
さらに、発明者等は、前記の測定実験を行った警報ベルについて、シミュレーションプログラムによる鐘音の音圧分布の解析も行っている。その解析の結果によれば、ゴング内面側の空間部内においては、平面視L字状のハウジングを用いたものの場合、音圧の高い部分が偏在して不均等に分布するのに対し、平面視Y字状のハウジングを用いたものの場合、音圧の高い部分が放射状に略均等に分布することが分かった。また、ゴング外側においては、平面視L字状のハウジングを用いたものの場合、ゴング側方には音圧の高い部分が周囲に分散して分布し、ゴング前方にも音圧の高い部分が分散して正面方向から外れて分布するのに対し、平面視Y字状のハウジングを用いたものの場合、ゴング側方には音圧の高い部分が周囲に連続する環状をなすように分布し、ゴング前方には音圧の高い部分が正面方向に集中するように分布することが分かった。この結果からも、この発明のように平面視Y字状のハウジングを用いることにより、ゴング内面側の空間部内における共鳴効果を向上させることができ、ゴングが発生する鐘音の音圧を上げることが理解できる。
【0027】
・分岐空間部
ハウジング7の内部7cには、そのケース形状に対応して複数の分岐空間部7cb~7cdが形成される。図示の例の場合、平面視Y字状のケース形状に対応して、中央空間部7caから分岐する、3つの分岐空間部7cb~7cdが形成される。なお、各分岐空間部7cb~7cdの先端側(ゴング2の周側部2cに向かう側)に向けての形状は、平面視略方形をなすものとしている。
【0028】
分岐空間部7cb~7cdのうち、分岐空間部7cbの端壁7abを貫通して打棒3が、後端側の動力伝達部6との接続部3bが分岐空間部7cbの内部に位置し、先端側の打撃部3aが分岐空間部7cbの外部に位置する配置で設けられている。そして、打棒3が設けられる分岐空間部7cbは、隣接する分岐空間部7ccと中央空間部7caを介して連続しており、それら空間部と共に平面視V字状に連続する空間部を形成している。そのV字状に連続する空間部内に、モータ4と動力伝達部6が収納されている。具体的には、モータ4は、本体側が分岐空間部7cc内に位置すると共に、駆動軸4a側が中央空間部7ca内に位置する配置で収納されており、動力伝達部6は、カム5との接続部6b側が中央空間部7ca内に位置すると共に、駆動軸4aに対して略直角の方向に延びつつ、打棒3との接続部6a側が分岐空間部7cb内に位置する配置で収納されている。なお、分岐空間部7cbの端壁7abの打棒3が貫通する部分には、打棒3を長さ方向前後に移動可能に支持するカラー7d等の支持部材が設けられている。
【0029】
尚、ハウジング7内の分岐空間部の数や形状については、平面視V字状の曲壁部7aaの折曲の角度、数、配置を変更し、ハウジング7の形状を変更することにより変更することができる。
【0030】
・平面視V字状の曲壁部の折曲の角度
曲壁部7aaの折曲の角度は、図示の例の場合、略120度としている。この折曲の角度を略120度としているのは、分岐空間部7cb~7cdの先端側に向けての形状を平面視略方形とすることができるからである。なお、この折曲の角度は、曲壁部7aaの数の変更やハウジング7の形状の変更と共に変更することができる。
【0031】
・打棒が貫通する部分の形状
複数の曲壁部7aaと端壁7abは、略同じ形状のものとして説明したが、図示の例の場合、一部に形状が僅かに異なる部分のあるものとしている。すなわち、打棒3が貫通する端壁7abと、その端壁7abに連続する曲壁部7aaだけ、他のものと僅かに形状が異なる部分のあるものとしている。具体的には、打棒3が貫通する端壁7abにおいて、その打棒3が貫通する部分だけ、打棒3の長さ方向(打棒3の移動方向)に対して略直交する向きになるように僅かに折曲したものとしている。また、その端壁7abに連続する曲壁部7aaにおいて、その端壁7abが内側に折曲している分、その端壁7abに連続する部分だけ、僅かに長さが短いものとしている。なお、端壁7abの打棒3が貫通する部分を打棒3の長さ方向に対して略直交する向きになるようにしているのは、ゴング2の振動の振幅方向が打撃位置に対して垂直であるため、打撃力が振動として伝播しやすくなるからである。
【0032】
<ゴングの打撃位置>
・振動の腹、スリットからの角度間隔
ゴング2としては、周側部2cのスリット2eから周方向に35~55度の角度間隔(スリットの周方向中間位置からの角度間隔。以下同じ)の範囲内の位置に振動の腹となる部分があるものを用いることができる。打棒3は、その角度間隔の範囲内の位置を打撃する配置で設けられるものとすることができる。図示の例の場合、ゴング2として、周側部2cのスリット2eから周方向に略45度の角度間隔θの位置に振動の腹となる部分のあるものが用いられており、打棒3は、その略45度の角度間隔θの位置を打撃する配置で設けられるものとしている。
【0033】
・音圧の向上(ゴングの打撃位置によるもの)
この発明の警報ベル1においては、ゴング2の振動の腹となる部分のある、周側部2cのスリット2eから周方向に35~55度の角度間隔の範囲内の位置を打撃することにより、打撃によるゴング2の振動効率を向上させることができる。そして、例えば、そのような角度間隔の範囲内の位置として図示の例のように略45度の角度間間隔の位置を打撃するものとすることにより、後記の鐘音の測定実験の結果が示す通り、ゴング2が発生する鐘音の音圧を上げることができる。
【0034】
・音圧の測定実験(略90度の角度間隔の位置を打撃するものとの比較)
発明者等は、打棒によるゴングの打撃位置として、この発明のようにゴングの振動の腹となる部分の位置であって、ゴング周側部のスリットから周方向に略45度の角度間隔の位置を打撃する警報ベルと、同方向に略90度の角度間隔の位置を打撃する警報ベルとで鐘音の音圧の測定実験を行った。その実験の結果によれば、スリットから略45度の角度間隔の位置を打撃するものの方がスリットから略90度の位置を打撃するものよりも鐘音の音圧が高かった。この結果は、ゴングの振動の腹となる部分のある位置であって、スリットにより近い位置を打撃することにより、前記の通り、打撃によるゴングの振動効率が向上することによるものと解される。
【0035】
なお、発明者等は、スリットから略45度の角度間隔の位置(振動の腹となる部分の位置)から周方向に略8度離れた位置(スリットから略53度の角度間隔の位置)を打撃するものについても、音圧の測定実験を行っているが、略45度の角度間隔の位置を打撃する場合と、同程度の音圧が得られている。このことから、打棒3によるゴング2の打撃位置としては、ゴング2の振動の腹となる部分の位置とするのが最も好ましいが、その位置からズレた位置を打撃位置としたとしても、そのズレが周方向に±10度程度の角度範囲内であれば、同程度の音圧の向上が期待できると解される。もちろん、そのズレが周方向に±5度程度の角度範囲内であれば、同程度の音圧の向上が期待できると解される。すなわち、例えば、図示の例のようにゴング2の振動の腹となる部分の位置がスリット2eから周方向に略45度の位置である場合、その位置からズレた位置を打撃位置としたとしても、その打撃位置がスリット2eから周方向に35~55度の角度範囲内にあれば、同程度の音圧の向上が期待できると解される。もちろん、その打撃位置がスリット2eから周方向に40~50度の角度範囲内であれば、同程度の音圧の向上が期待できると解される。
【0036】
<ハウジングの形状の変更例>
ハウジング7の形状は、前記の複数の平面視V字状の曲壁部7aaに相当する部分を有するものであれば、適宜変更することができる。例えば、平面視V字状の曲壁部7aaの折曲の角度を略直角として、その数を4つとし、ハウジング7が平面視十字状の形状をなすものとしてもよい。
【0037】
<その他、音圧の向上に寄与する部分>
・ゴングの底面部中央位置近傍の薄肉化
ゴング2には、図示の例の場合、底部2bの内面上、平面視略中央位置に設けられる固定部2baの周囲に環状に連続する凹溝2bbが設けられるものとしている。すなわち、ゴング2は、その凹溝2bbが設けられていることにより、底部2bの平面視略中央位置近傍の部分の肉厚が薄く形成されるものとしている。その部分の肉厚を薄くする場合と薄くしない場合とで、それぞれの鐘音の音圧を測定してみたところ、肉厚を薄くする場合の方が薄くしない場合よりも音圧が高かった。このことから、図示の例のように凹溝2bbを設けて、ゴング2の底部2bの平面視略中央位置近傍の肉厚を薄くすることによっても、鐘音の音圧を上げることができると解される。
【0038】
<音圧の向上による利点>
・ゴングの小型化
この発明の警報ベル1においては、前記の通り、鐘音の音圧を上げることができる。それにより、ゴング2を小型化したとしても、非常ベルとして用いる場合に消防法上、必要な音圧の基準を満たすものとすることができる。
【0039】
・音圧の測定実験(ゴングを小型化した場合の音圧)
従来の非常ベルにおけるゴングの外径は、通常、150mmである。発明者等は、この発明の警報ベル1のように構成しつつ、ゴングについては外径を130mmとして小型化した警報ベルの試作品を用意し、鐘音の音圧の測定実験を行った。実験の結果、その試作品によれば、消防法上、基準とされている90db以上の音圧が得られることが分かった。このような結果が得られたのは、試作品において、特に、そのハウジングを、図示の例のハウジング7のように平面視Y字状の形状をなすものとしたことや、その打棒による打撃位置を、図示の例の打棒3による打撃位置のように、ゴングの振動の腹となる部分の位置であって、ゴング周側部のスリットから周方向に略45度の角度間隔の位置としたことによるものと解される。
【0040】
つまり、この発明の警報ベル1においては、図示の例のように、ハウジング7が平面視Y字状の形状をなすものであることや、打棒3によるゴング2の打撃位置が、ゴング2の振動の腹となる部分の位置であって、ゴング2の周側部2cのスリット2eから周方向に略45度の角度間隔の位置であることにより、ゴング2の外径を例えば130mmまで小さくして小型化したとしても、非常ベルとして用いる場合に消防法上、必要な音圧の基準を満たすものとすることができる。
【0041】
なお、図1~3においても、後記で警報ベル1を防雨型とする場合の説明で参照する図4~6においても、各部品の寸法比は、ゴング2の外径を130mmとする場合を想定して示している。
【0042】
<ゴングの小型化による利点>
・製造コストの低減
この発明の警報ベル1においては、前記の通り、ゴング2を小型化することができる。それにより、製造コストを低減することができる。
【0043】
・施工性の向上(防雨型とする場合)
図4~5は、警報ベル1を防雨型として、壁面W内に埋め込まれる埋込型のスイッチボックス50を設置位置として取り付ける態様等を示したものである。スイッチボックス50は、前面の塗代カバー40と共に壁面W内に埋め込まれ、防雨型の取付金具30(金具の前面及び背面に防水パッキンを有する3層構造)が壁面Wの表面側に露出して塗代カバー40にネジ止により取り付けられる。防雨型の警報ベル1は、ハウジング7の裏面側に防雨型の取付板7j(内部に空間があり、ケースやボックス等と称される場合もある)を前記の裏蓋7gに代えて有しており(裏蓋7g及び絶縁シート7hに加えて有するものとしてもよい)、壁面W内に埋め込まれるスイッチボックス50の位置に設置する場合、取付板7jを介してスイッチボックス50側の取付金具30にネジ7jb(固定部材の一例)により固定されて取り付けられる。
【0044】
ここで、スイッチボックス50側の取付金具30は汎用品であり、警報ベル1がネジ止めされるネジ孔30aは規格によって決まった位置に形成されている。警報ベル1側の取付板7jのネジ孔7ja(固定部材用の挿通孔の一例)は、スイッチボックス50側の取付金具30のネジ孔30aに対応する位置に形成される。図示の例の場合、そのネジ孔7jaを取付板7jの角隅(端部の一例)に1つずつ設けたものとしている。ゴング2が従来品のように外径150mmの大きいものであった場合、ネジ孔7jaは平面視でゴング2の裏側に隠れることになる。その場合、ゴング2にハウジング7と共に取付板7jが取り付けられている状態では、ネジ孔7jaにネジ7jbを挿通してスイッチボックス50側の取付金具30のネジ孔30aにネジ止めする作業をすることができない。そのため、組立済みのゴング2とハウジング7を一旦取り外し、取付板7jをスイッチボックス側の取付金具30にネジ止めしてから、再度、ゴング2とハウジング7の組み付けの作業をしなければならない。これに対し、ゴング2を本願発明のように例えば外径130mmの小さいものとしていれば、ゴング2にハウジング7が取り付けられている状態でも、取付板7jのネジ孔7jaはゴング2の外側に位置しており、外部に露出しているので、そのままスイッチボックス50側の取付金具30に対するネジ7jbによるネジ止めの作業をすることができる。
【0045】
つまり、この発明の警報ベル1においては、ゴング2を小型化することができることにより、防雨型として設置する際の施工性を向上させることもできる。
【0046】
<構成の変更例>
この発明の警報ベル1においては、例えば、以下のように構成を変更することができる。
【0047】
例えば、ゴング2の外径については、もちろん、130mmに限られるものではなく、それよりも大きくしてもよいし、小さくしてもよい。そのように外径を大きくしたり、小さくしたりしたとしても、ハウジング7の形状等や、打棒3による打撃位置等を前記のように構成することにより、鐘音の音圧を向上させることは可能である。
【符号の説明】
【0048】
1:警報ベル
2:ゴング 2a:空間部 2b:底部 2ba:固定部
2bb:凹溝 2c:周側部 2d:口縁部 2e:スリット
3:打棒 3a:打撃部 3b:接続部 4:モータ 4a:駆動軸
5:カム 6:動力伝達部 6a:接続部(打棒側)
6b: 接続部(カム側) 7:ハウジング 7a:周壁
7aa:曲壁部 7ab:端壁 7b:底壁 7ba:凸部
7bb:ネジ 7c:内部 7ca:中央空間部
7cb~7cd:分岐空間部 7d:カラー 7f:開口 7g:裏蓋
7h:絶縁シート 7i:フック 7j:取付板 7ja:ネジ孔
7jb:ネジ 30:取付金具 40:塗代カバー
50:スイッチボックス W:壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6