(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133718
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】カンナビジオールを含む経口医薬組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20240925BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240925BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240925BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240925BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20240925BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20240925BHJP
【FI】
A61K31/05
A61K38/06
A61P25/00
A61P43/00 121
A61K36/185
A61K127:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112898
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2022521638の分割
【原出願日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】1914719.8
(32)【優先日】2019-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】522142855
【氏名又は名称】ブラックホーク パートナーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BLACKHAWK PARTNERS LTD
【住所又は居所原語表記】Panteli Katelari 18A, 3012 ’Agios Ioannis, Limassol (CY)
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】ホイットン, ピーター
(57)【要約】 (修正有)
【課題】肝毒性がないカンナビノイドを含む医薬組成物、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】カンナビジオールからなる第1の医薬活性部分と、グルタチオンからなる第2の医薬活性部分と、必要に応じて1つ以上の賦形剤と、で構成され、前記第2の医薬活性部分の前記第1の医薬活性部分に対するモル比が少なくとも1:1である経口医薬組成物を提供する。また、極性溶媒を用いて、大麻植物材料から1つ以上のカンナビノイドを含有する第1の画分を抽出する工程と、水を用いて、同じ大麻植物材料からグルタチオンを含む第2の画分を抽出する工程と、第1の画分と第2の画分を乾燥させて組み合わせて、医薬組成物を形成する工程と、を含む、医薬組成物を製造する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオールからなる第1の医薬活性部分と、
グルタチオンからなる第2の医薬活性部分と、
必要に応じて1つ以上の賦形剤と、
で構成され、
前記第2の医薬活性部分の前記第1の医薬活性部分に対するモル比が少なくとも1:1である経口医薬組成物。
【請求項2】
大麻植物材料から請求項1に記載の経口医薬組成物を製造する方法であって、
i)極性溶媒を用いて、前記大麻植物材料からカンナビジオールを含有する第1の画分を抽出する工程と、
ii)水を用いて、同じ前記大麻植物材料からグルタチオンを含む第2の画分を抽出する工程と、
iii)前記第1の画分と前記第2の画分を乾燥させて組み合わせて、前記経口医薬組成物を形成する工程と、を含む、経口医薬組成物を製造する方法。
【請求項3】
前記極性溶媒がエタノールである請求項2に記載の経口医薬組成物を製造する方法。
【請求項4】
前記大麻植物材料が大麻植物細胞からなる請求項2または3に記載の経口医薬組成物を製造する方法。
【請求項5】
前記大麻植物材料が乾燥した大麻植物からなる請求項2または3に記載の経口医薬組成物を製造する方法。
【請求項6】
前記第1の画分および前記第2の画分を1つ以上の賦形剤と組み合わせて、前記経口医薬組成物を形成する請求項2~5のいずれか一項に記載の経口医薬組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麻植物および大麻植物細胞から抽出されたカンナビノイドの医薬用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歴史上、カンナビス・サティバ(大麻)は、娯楽目的で消費される違法薬物であった。これは主に、大麻に存在するカンナビノイドである精神活性化合物テトラヒドロカンナビノール(THC)の効果によるものである。しかし、大麻はまた、カンナビジオール、およびカンナビノールを含むがこれらに限定されない他の多数のカンナビノイドも含有している。
【0003】
大麻は喫煙されてきたが、植物の形あるいは樹脂として摂取されることもあった。最近では、大麻は様々な症状を治療するために摂取されており、その成功の程度は様々である。大麻は、違法性ゆえに、そのような治療用途であっても、一般的に、依然として喫煙、あるいは植物全体または樹脂を摂取することが含まれ、そのような治療用途の有効性に関する研究はほとんど行われていない。さらに、大麻は違法であるため、大麻の喫煙または摂取による潜在的な毒性または有益な効果に関する研究はほとんど、または全く行われていなかった。
【0004】
最近では、大麻は多くの法域で非犯罪化または合法化されてきており、その結果、植物全体および/または化学成分の潜在的な治療上のメリットが研究され始めている。さらに、様々なカンナビノイドを抽出し、単離し、単離されたカンナビノイドを利用して医薬組成物を製造する努力がなされてきた。そうすれば、適切なカンナビノイドが、他のカンナビノイドから独立して、特に、THCの精神活性作用を伴うことなく、容易に摂取可能な形態で提供され得るという利点がある。しかしながら、単離されたカンナビノイドが医薬組成物に使用され始めるにつれて、それらが肝毒性作用を有し得ることが分かってきた。
【0005】
主要なカンナビノイドの分子式を調べると、それらが肝臓のシトクロムp450酵素経路を介して代謝される可能性が最も高いことが分かる。この経路では、肝臓の酵素がカンナビノイドを肝臓内のグルタチオンと反応させ、カンナビノイドの環構造を開いて水溶性にする。こうしてできた水溶性化合物は、血流に吸収され、血液脳関門を通過することができる。
【0006】
肝臓のグルタチオン貯蔵量が欠乏している人、または追加の投薬を受けている人の場合、肝臓内のグルタチオンが不足し、カンナビノイドを効果的に代謝することができない可能性がある。これは、肝臓内のグルタチオン貯蔵量の完全な枯渇につながる可能性があり、酵素的解毒経路が、肝毒性の副作用につながる飽和状態となるおそれがある。一定期間、治療せずに放置すると、場合によっては、致命的な肝不全を引き起こす。このような肝毒性は、グルタチオンまたはグルタチオン分子の活性部分であるシステイン(アセチルシステインとして投与されることがある)の追加投与によって治療することができる。しかし、このような治療は時間との勝負であり、肝臓への影響が取り返しのつかないことになる前に治療を行う必要がある。これは、肝臓に取り返しのつかないダメージを受けるまで、患者が有害な副作用を経験しない可能性があるため、問題となる。
【0007】
グルタチオンは、体内のほとんどの細胞に十分な量存在するが、中には欠乏している人もいる。そのような人は、カンナビノイドをベースとした薬を服用すると、肝毒性作用に苦しむ可能性が高くなる。
【0008】
これに対する現在の解決策の一つは、単離されたカンナビノイドではなく、大麻植物の無傷の部分または完全なカンナビス・サティバ(大麻)細胞を使用することである。例えば、細胞培養環境において生産された大麻細胞は、単離されたカンナビノイドの代わりに使用することができる。完全な植物細胞は、植物源からであろうと細胞培養環境からであろうと、大麻植物の全ての成分を有する。特に、大麻植物およびその細胞は、本来、高レベルのグルタチオンを含む。したがって、完全な植物細胞を摂取することは、カンナビノイドと共にグルタチオンの供給源を提供し、これによってカンナビノイドの肝毒性作用が打ち消される。このようにして、以前は、一般的に無意識のうちにではあるが、完全な大麻細胞の使用により、肝毒性が回避されていた。大麻がグルタチオンを含有しているからこそ、カンナビノイドの潜在的な肝毒性作用が最近まで発見されなかった、あるいは研究されなかったことに注目すべきである。カンナビノイドの肝毒性作用は、カンナビノイドが大麻植物から分離され、医薬組成物に使用されて初めて明らかになってきたのである。
【0009】
しかしながら、完全な植物細胞は様々な状況において有用であるが、場合によっては、完全な植物細胞から医薬組成物を形成することが好ましくないこともある。例えば、適切なカンナビノイドの正確な投与を提供するために、1つ以上のカンナビノイドを含む医薬組成物を植物細胞から分離して提供させることが望ましい場合がある。これに照らして、肝毒性がない、1つ以上のカンナビノイドを含む改良された医薬組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、
1つ以上のカンナビノイドからなる第1の医薬活性部分と、
グルタチオン、システイン、アセチルシステイン、アリイン、ブシラミン、カルボシステイン、ジェンコル酸、フェリニン、ランチオニン、メシステイン塩酸塩、ペニシラミンシステインジスルフィド、またはそれらの任意の機能的等価物のうちの1つ以上からなる第2の医薬活性部分と、
必要に応じて1つ以上の賦形剤と、
で構成され、
前記第2の医薬活性部分の前記第1の医薬活性部分に対するモル比が少なくとも0.5:1である経口医薬組成物を提供する。
【0011】
本明細書に記載するように、「カンナビノイド」とは、カンナビス・サティバに存在し、通常、1,1’-ジメンチル-ピラン環、多様に誘導体化された芳香環、多様に不飽和とされたシクロヘキシル環、およびそれらの直接化学前駆体を含有する天然物のファミリーを言う。主なカンナビノイドを以下に示す。
【0012】
本発明の経口医薬組成物を提供することにより、単離されたカンナビノイドを提供することによる肝毒性作用を緩和可能であることが見出された。特に、適切な緩和化合物を、少なくとも0.5:1のモル比で、単離されたカンナビノイドと共に提供することによって、肝毒性を防止することができる。適切な緩和化合物には、グルタチオン、システイン、アセチルシステイン、アリイン、ブシラミン、カルボシステイン、ジェンコル酸、フェリニン、ランチオニン、メシステイン塩酸塩、ペニシラミンシステインジスルフィド、またはそれらの任意の機能的等価物が含まれる。具体的には、列挙した化合物と機能的に等価な化合物とは、カンナビノイドの芳香環構造上の二重結合と反応してカンナビノイドの環構造を開き、水溶性にすることができる、利用可能なS-H結合を有するものである。つまり、緩和化合物が存在することで、カンナビノイドの環構造と反応してそれらを水溶性にし、代謝可能とするのである。
【0013】
カンナビノイドの毒性を緩和するグルタチオンの効果は、真核生物のアメーバ種であるカステラーニアメーバ(A.castellanii)の細胞に対するCBD抽出物の毒性を調べることによって実証されている。この細胞培養は、調査が簡単であることから選択され、毒性を調査するのに都合のよい細胞培養を提供した。CBD単独、およびCBDとグルタチオンの混合物の効果を、マイクロタイタープレート内でアメーバ細胞と共に34℃で7日間培養した。
【0014】
CBD抽出物は、カンナビス・サティバの花を80%エタノール:20%水で1時間の還流パーコレーションによって抽出することによって調製したものである。溶解した物質の割合は、英国薬局方(1999年)の方法によって確認し、CBD含有量はHPLCによって分析した。マンニトールが、70%(w/v)マンニトール対30%(w/v)CBDの比率で抽出物に加えられ、全ての溶媒が真空中での回転蒸発によって除去された。マイクロタイタープレート内で、アメーバ細胞の試料に対し、2倍希釈したグルタチオン(25%ジメチルスルホキシドと75%蒸留水に溶解)が有る状態と無い状態で、等濃度のCBDを添加した。グルタチオンを含む試料については、CBD1グラムに対してグルタチオン1グラムの比率でグルタチオンを添加した。各プレートウェル内の細胞数を記録し、生存細胞の割合を算出した。
【0015】
以下の表1から明らかなように、CBD調製物による細胞死は、CBDとグルタチオンとの混合物による細胞死よりも多かった(下記参照)。濃度100mg/mlにおいて、CBD抽出物による細胞死は100%であったが、同じ濃度であっても、グルタチオンの存在下では、細胞死は32.8%だけであった。全ての濃度において、グルタチオンの存在は、細胞死を著しく減少させ、細胞生存率を増加させた。この細胞毒性の低下は、カンナビノイドがグルタチオンと反応してカンナビノイドの環構造が開き、水溶性になるシトクロムP450経路を介して達成されると考えられる。
【0016】
このデータは、CBDの細胞に対する毒性の性質と、本発明に従ってグルタチオンによって提供される保護を強調する。
【0017】
【0018】
グルタチオン、システイン、アセチルシステイン、アリイン、ブシラミン、カルボシステイン、ジェンコル酸、フェリニン、ランチオニン、メシステイン塩酸塩、ペニシラミンシステインジスルフィド、またはそれらの任意の機能的等価物とカンナビノイドの環構造との反応による水溶性化合物の形成は、本発明に従う組成物の経口摂取後に人の体内で行われることになる。
【0019】
静脈内に投与されたグルタチオン、およびその機能的等価物(上記で定義した通り)は、腎臓において、血漿中の半減期が2分未満という迅速さで分解されることが、Hepatology, Vol. 51, 2010, Saito et al., “Novel Mechanisms of Protection Against Acetaminophen Hepatotoxicity in Mice by Glutathione and N-Acetylcysteine”から公知である。したがって、静脈内に投与されたグルタチオンは、カンナビノイドの肝毒性からの保護に、ほとんど役に立たない。本発明では、グルタチオンは、カンナビノイドと共に経口組成物に含まれ、したがって、肝毒性からの保護に、より効果的である。特に、グルタチオンおよび/またはその機能的等価物が、迅速に分解されず、代わりに、分解または他の代謝が起こる前にカンナビノイドと反応するように作用することができる。経口摂取されたグルタチオンは、消化管を通って、少なくとも回腸まで著しく分解されることなく移動することが理解される。
【0020】
経口投与されたカンナビノイドが血流で検出されるまでには40分以上かかることが実証されている。これにより、カンナビノイドが摂取されると、消化器系を通って、少なくとも回腸まで移動することが分かる。すなわち、本発明の医薬組成物を経口摂取すると、回腸にグルタチオンとカンナビノイドが存在することになる。
【0021】
カンナビノイドとグルタチオン、システイン、またはその機能的等価物との反応は、pH7.0以上で最も起こり易い。胃の中のような酸性のpHでは、反応が阻害される。回腸のpHは7.5~8.0の範囲であり、疎水性のカンナビノイドと硫黄を含有するグルタチオン、システイン、または機能的等価物との反応が起こるには理想的な場所である。したがって、カンナビノイドと、カンナビノイドと共に本発明の組成物に含まれるグルタチオン、システイン、またはその機能的等価物との反応は、回腸で行われると考えられる。得られた水溶性カンナビノイド誘導体は、肝毒性ではない。回腸でグルタチオン、システイン、またはその機能的等価物と反応しなかったカンナビノイドは、シトクロムp450酵素経路および患者自身が供給するグルタチオンを介して肝臓で通常の方法で代謝され得る。
【0022】
一般に、組成物が摂取されたとき、医薬組成物中のカンナビノイドの各分子を代謝するために、少なくとも1分子の緩和化合物が必要である。すなわち、使用者の肝毒性を回避するためには、緩和化合物のカンナビノイドに対するモル比が少なくとも1:1である必要がある。しかしながら、健康な患者では、肝臓が(緩和化合物である)グルタチオンを既に供給しており、本発明の医薬組成物において、第2の医薬活性部分の第1の医薬活性部分に対するモル比が少なくとも1:1であることは必ずしも必須ではない。むしろ、特定の患者およびそのグルタチオン貯蔵量、医薬組成物中の第1の医薬活性部分の量、および投与頻度に応じて、0.5:1、0.6:1、0.7:1、0.8:1、または0.9:1のモル比が十分であり得る。しかしながら、完全に安全であるためには、第2の医薬活性部分が少なくとも1:1のモル比で第1の医薬活性部分と共に提供されることが一般的に好ましい場合がある。
【0023】
主なカンナビノイドは以下の通りである。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
本発明に従う医薬組成物は、第1の医薬活性部分として、これらのカンナビノイドおよび/または他の任意のカンナビノイドのうちの1つ以上を含んでいてもよい。
【0028】
第1の医薬活性部分のカンナビノイドは、カンナビス・サティバ植物から、または培養されたカンナビス・サティバ植物細胞から、または他の任意の適切な供給源から抽出されてもよい。追加で、あるいは代替的に、第1の医薬活性部分は、1つ以上の合成カンナビノイドを含んでいてもよい。
【0029】
カンナビノイドは、任意の適切な方法で大麻植物または大麻植物細胞から抽出されてもよい。例えば、カンナビノイドは、溶媒抽出および/または水蒸気蒸留を利用して抽出されてもよい。当業者であれば、大麻からカンナビノイドを抽出可能な方法を容易に認識しているであろう。例えば、カンナビノイドは、エタノールを溶媒として用いる簡単な溶媒抽出技術を利用して抽出することができる。
【0030】
一般に、カンナビノイドが従来の方法を用いて抽出される場合、グルタチオンは大麻植物または大麻植物細胞から抽出されない。これは、グルタチオンが水溶性であるのに対し、カンナビノイドは水溶性ではなく、エタノールやアセトンなどの極性溶媒に可溶性であるためである。グルタチオンは、50%を超える濃度のエタノールやアセトン溶液には不溶性であり、それより低い濃度の溶媒にはわずかに可溶性である。カンナビノイドは無極性分子であるため水溶性ではなく、一般に高濃度、すなわち水分をほとんど含まない、または全く含まないエタノールやアセトンを用いて溶媒抽出する必要がある。その結果、単一の供給源がグルタチオンとカンナビノイドの両方に使用される場合、一般に、その単一の供給源に対して2つの別々の抽出技術を順次利用することが必要である。大麻植物または大麻植物細胞からカンナビノイドを抽出しても、一般に、グルタチオンを抽出することにはならない。
【0031】
本発明の第2の医薬活性部分がグルタチオンからなる、またはグルタチオンを含む場合、グルタチオンは、第1の医薬活性部分のカンナビノイドと同じ供給源から抽出され得る。供給源からのグルタチオンの抽出は、任意の適切な方法で行われてよく、適切な方法を利用することにより、カンナビノイドの抽出の前、後、または同時に実施されてよい。抽出が同時に実施される場合、適切な抽出方法は、一般に、グルタチオンおよびカンナビノイドを抽出するための別々の工程を含むであろう。供給源は、大麻植物またはその一部(加工済または未加工)、培養された大麻植物細胞、または他の任意の適切な供給源であってよい。
【0032】
本発明に従う医薬組成物は、任意の適切な賦形剤を含んでいてもよい。賦形剤には、甘味料、香味料、保存料、およびpH調整剤が含まれるが、これらに限定されるものではない。好適な甘味料としては、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムkおよび等価物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。当業者であれば、本発明に従う任意の特定の組成物に適した賦形剤を決定することができると考えられる。
【0033】
本発明はまた、大麻植物材料から請求項5に記載の医薬組成物を製造する方法であって、
i)溶媒を用いて、前記大麻植物材料から1つ以上のカンナビノイドを含有する第1の画分を抽出する工程と、
ii)同じ前記大麻植物材料からグルタチオンを含む第2の画分を抽出する工程と、
iii)前記第1の画分と前記第2の画分を乾燥させて組み合わせて、前記医薬組成物を形成する工程と、を含む方法を提供する。
【0034】
上述したように、一般に、カンナビノイドが極性溶媒を用いて大麻植物材料から抽出される場合、植物材料に存在するグルタチオンは抽出されない。したがって、植物材料からグルタチオンも抽出することが望ましい場合、一般的に水を溶媒として用いる別の工程を利用して、グルタチオンを追加的に抽出することが必要である。グルタチオンの抽出は、任意の適切な方法で行うことができる。組み合わされる第1の画分および第2の画分の量は、グルタチオンおよびカンナビノイドが適切な比率で医薬組成物中に存在するように制御することができる。
【0035】
当業者であれば、溶媒を用いて大麻植物材料からカンナビノイドを抽出するための多くの適切な方法を認識しているであろうと考えられる。同様に、当業者であれば、水を用いて大麻植物材料からグルタチオンを抽出するための多くの適切な方法を認識しているであろうと考えられる。本発明の方法は、全てのそのような方法を包含することが意図されている。
【0036】
本発明の方法の大麻植物材料は、培養された植物細胞および/または、葉および茎を含むがこれらに限定されない植物部分を含んでもよい。植物材料は、第1の画分および第2の画分を抽出する前に、加工されてもよいし、加工されなくてもよい。適切な加工には、乾燥および粉末化が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
当業者であれば、第1の画分および第2の画分を乾燥させる前または後のいずれにおいても、第1の画分のカンナビノイド含有量および第2の画分のグルタチオン含有量を困難なく決定することができると考えられる。したがって、当業者であれば、第1の画分と第2の画分とを適切な比率で組み合わせて、本発明に従う医薬組成物に困難なく到達することができるであろう。
【0038】
本発明の医薬組成物を形成するために、第1の画分および第2の画分は、上述したような、1つ以上の賦形剤と組み合わせてもよい。
【実施例0039】
本発明に従う組成物の成分は、以下の方法で単一のカンナビス・サティバ源から抽出することができる。
【0040】
i)カンナビノイドの抽出
大麻植物からカンナビノイドを溶媒抽出し、特定のカンナビノイドを分離することは、従来から公知である。米国特許第6,403,126号はそのような方法の1つを開示しており、当該特許に開示された方法は、本発明と共に使用するのに適している。特に、米国特許第6,403,126号の方法は、カンナビス・サティバからカンナビノイドを抽出する際に使用するのに適している。
【0041】
この方法では、大麻粉末は、例えばエタノール等の溶媒で、2~4時間の間、抽出される。その後、溶媒を蒸発させ、残留物を残してもよい。次に、抽出された残留物は、少なくとも1つのカンナビノイドを分画するように配置されたクロマトグラフィー用カラム上を通過させてもよい。そして、分画されたカンナビノイドは、医薬組成物を形成するために使用され得る。
【0042】
ii)グルタチオンの抽出
・材料
乾燥したカンナビス・サティバの葉10g
脱イオン水100ml
250mlの三角フラスコ
磁気攪拌機および攪拌子
濾紙
フィルター漏斗
蒸発皿
乾燥オーブン
【0043】
カンナビス・サティバの粉末と脱イオン水を三角フラスコに加える。攪拌子をフラスコに入れ、混合物を30rpmの速度で2時間撹拌する。必要に応じて、水のpHを7.5に維持するために緩衝剤を使用してもよい。
【0044】
攪拌後、混合物を、濾紙を通して蒸発皿に注ぐ。蒸発皿は、完全に蒸発するまで106℃の温度で乾燥オーブン内に置かれる。得られた残留物は、粉末状のカンナビス・サティバからの水溶性植物化合物の混合物であり、高い割合のグルタチオンを含む。
【0045】
必要であれば、エタノールを溶媒として用いて他の溶解化合物を除去した後、非溶解の残留物を保持することにより、残留物をさらに精製することができる。残留物のグルタチオン含有量は、高速液体クロマトグラフィーにより分析してもよい。
【0046】
上述したグルタチオン抽出方法では、一般に、純粋なグルタチオンが得られないことに留意されたい。純粋なグルタチオンを得るためには、さらなる加工が必要である。しかしながら、本発明の目的のためには、大麻からの抽出物がカンナビノイドとの適切な比率を提供するために十分なグルタチオンを含有する限り、純粋なグルタチオンを利用することは必ずしも必須ではなく、抽出物が純粋なグルタチオンであることは必須ではない。抽出物の他の成分は、大麻植物の天然成分であり、したがって、消費者に有害である可能性は低い。純粋な成分が有利である、本発明に従う別の実施形態の組成物では、別の供給源からの薬学的に純粋なグルタチオンが利用されてもよいし、薬学的に純粋なグルタチオンを得るためにさらなる加工が利用されてもよい。
【0047】
抽出の後、カンナビノイドを、グルタチオンおよび任意の適切な賦形剤と組み合わせて、本発明に従う医薬組成物を形成することができる。