(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133721
(43)【公開日】2024-10-02
(54)【発明の名称】頭部用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/29 20060101AFI20240925BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240925BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K8/29
A61K8/19
A61Q5/06
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024113280
(22)【出願日】2024-07-16
(62)【分割の表示】P 2020045047の分割
【原出願日】2020-03-16
(31)【優先権主張番号】P 2019057455
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】門 隆之
(72)【発明者】
【氏名】中村 将行
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使用が容易で安全性に優れた頭部用組成物を提供すること。
【解決手段】チタン・酸化チタン焼結物を含有する頭部用組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン・酸化チタン焼結物と反磁性顔料を含有する頭部用組成物。
【請求項2】
チタン・酸化チタン焼結物と反磁性顔料を含有する疑似毛髪用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、精神的ストレス、食生活の乱れ、高齢化などにより、多くの人々が薄毛、抜け毛、脱毛に関する悩みを抱えている。また、高齢化に伴い白髪人口の割合が年々増加している。このような悩みに対し、例えば、薄毛を隠すためのかつらの着用や、白髪を隠すためのヘアカラーによる染毛が行われている(特許文献1)。しかしながら、染毛剤は多剤式であるため、染毛時の利便性が悪い、使用する薬剤により頭皮や毛髪が傷む等の課題があった。
【0003】
また、ヘアカラー等で白髪を黒く染めるための黒色顔料としては、主に黒酸化鉄(Fe3O4)が用いられてきた。しかしながら、黒酸化鉄は高い磁性を有するために粒子同士が再凝集して均一に分散しにくく、頭部への付着性や使用後の仕上がりが悪いなどの課題があり、さらに優れた頭部用組成物の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、利便性や安全性に優れるとともに、頭部への付着性や使用後の仕上がりが自然な頭部用組成物を提供することを課題として、種々の検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
その結果、本発明者らは、チタン・酸化チタン焼結物を使用することにより、利便性、安全性が高く、頭部への付着性に優れ、見た目にも自然な仕上がりとなる頭部用組成物の開発に成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
<1>チタン・酸化チタン焼結物を含有する頭部用組成物。
<2>さらに、反磁性顔料を含有する<1>に記載の頭部用組成物。
<3>粉末状である、<1>又は<2>のいずれかに記載の頭部用組成物。
<4>チタン・酸化チタン焼結物を含有する疑似毛髪用組成物。
<5>さらに、反磁性顔料を含有する<4>に記載の疑似毛髪用組成物。
<6>粉末状である、<4>又は<5>のいずれかに記載の疑似毛髪用組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の頭部用組成物は、頭部への付着性が優れることから、薄毛や白髪を均一に隠し、自然な仕上がりとすることができる。また、利便性に優れるとともに、頭皮や頭髪に対するダメージが軽減されるため安全性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の頭部用組成物について詳細を説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
<チタン・酸化チタン焼結物>
本発明の頭部用組成物は、チタン・酸化チタン焼結物を含有することを特徴とする。チタン・酸化チタン焼結物は、チタン末と酸化チタンの混合物を減圧下で3~5時間、900~1000℃で焼結することによって得られる黒色の粉末である。本発明においては、頭部への付着性や付与後の仕上がりの点から、平均粒径0.001~200μmが好ましく0.01~100μmがより好ましく、0.02~70μmが特に好ましい。チタン・酸化チタン焼結物は、1種又は2種以上用いることができる。
【0011】
本発明で使用するチタン・酸化チタン焼結物は、表面処理したものを使用してもよい。表面処理方法としては特に限定はないが、例えば、シリコーン系処理、アミノ酸系処理、エステル系処理、フッ素処理、疑似セラミド処理、金属石鹸処理、レシチン処理が挙げられる。具体的には、シリコーン系処理としては、ジメチコン処理(SA処理)、ハイドロゲンジメチコン処理(SI処理)、ジメチコン/ハイドロゲンジメチコン処理(SAS処理)、アルキルシラン処理(ALT処理)、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー処理(ACS処理)、トリエトキシカプリリルシラン処理(OTS処理)が挙げられ、アミノ酸系処理としてはアミノ酸処理(NAI処理)、リポアミノ酸処理(LP処理)が挙げられ、エステル系処理としてはセバシン酸・アミノ酸処理(NHS処理)が挙げられ、フッ素処理としてはパーフルオロオクチルトリエトキシシラン処理(FHS処理)が挙げられ、疑似セラミド処理としてはヒドロキシプロピルビスパルミタドMEAが挙げられる。本発明においては、シリコーン系処理が好ましく、頭部への付着性、見た目(黒色)の自然な仕上がり、頭皮、頭髪への外界からのダメージ低減の観点から、ジメチコン処理(SA処理)、ハイドロゲンジメチコン処理(SI処理)、ジメチコン/ハイドロゲンジメチコン処理(SAS処理)が特に好ましい。
【0012】
本発明の頭部用組成物におけるチタン・酸化チタン焼結物の含有量は特に制限はなく、その形状に応じて配合量を適宜調整することができる。頭部用組成物中のチタン・酸化チタン焼結物の含有量は、頭部への付着性、見た目の仕上がりの観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が特に好ましい。頭部への付着性、見た目の仕上がりの観点から、95質量%以上が好ましく、90質量%以下がより好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0013】
<反磁性顔料>
本発明の頭部用組成物は、さらに、反磁性顔料を含有することが好ましい。ここで、反磁性とは、磁石を近づけてもその磁場を打ち消す性質を言う。反磁性顔料としては、例えば、黄酸化鉄、赤酸化鉄、竹炭、カーボンブラック、酸化チタン等が挙げられ、これらの中でも黄酸化鉄、赤酸化鉄、カーボンブラックが見た目の仕上がりに優れることから特に好ましい。黄酸化鉄は、化学式FeOOH又はFe2O3・H2Oで表され、例えばゲーサイトが挙げられる。赤酸化鉄は、化学式はFe2O3で表され、赤鉄鉱とも呼ばれる。赤酸化鉄としては、例えばベンガラ、ヘマタイトが挙げられる。酸化チタンとしては、微粒子酸化チタン、顔料級酸化チタン又は黒酸化チタンが挙げられる。微粒子酸化チタンとしては、紫外線散乱剤として化粧料に用いられる平均粒径約0.1μm未満の二酸化チタンが挙げられる。顔料級酸化チタンとしては、白色顔料として化粧料に用いられる平均粒径約0.1μm以上の二酸化チタンが挙げられる。黒酸化チタンとしては、酸化チタンと、酸化チタン・窒化チタン固溶体との混合物が挙げられる。本発明に反磁性顔料を使用する場合、1種でも特に問題はないが、目的に応じて2種以上を使用することもできる。
【0014】
本発明で使用するチタン・酸化チタン焼結物は、表面処理したものを使用してもよい。表面処理方法としては特に限定はないが、例えば、シリコーン系処理、アミノ酸系処理、エステル系処理、フッ素処理、疑似セラミド処理、金属石鹸処理、レシチン処理が挙げられる。具体的には、シリコーン系処理としては、ジメチコン処理(SA処理)、ハイドロゲンジメチコン処理(SI処理)、ジメチコン/ハイドロゲンジメチコン処理(SAS処理)、アルキルシラン処理(ALT処理)、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)コポリマー処理(ACS処理)、トリエトキシカプリリルシラン処理(OTS処理)が挙げられ、アミノ酸系処理としてはアミノ酸処理(NAI処理)、リポアミノ酸処理(LP処理)が挙げられ、エステル系処理としてはセバシン酸・アミノ酸処理(NHS処理)が挙げられ、フッ素処理としてはパーフルオロオクチルトリエトキシシラン処理(FHS処理)が挙げられ、疑似セラミド処理としてはヒドロキシプロピルビスパルミタドMEAが挙げられる。本発明においては、シリコーン系処理が好ましく、頭部への付着性、見た目(黒色)の自然な仕上がり、頭皮、頭髪への外界からのダメージ低減の観点から、ジメチコン処理(SA処理)、ハイドロゲンジメチコン処理(SI処理)、ジメチコン/ハイドロゲンジメチコン処理(SAS処理)が特に好ましい。
【0015】
本発明の頭部用組成物における反磁性顔料の含有量は特に制限はなく、その形状に応じて配合量を適宜調整することができる。本発明の頭部用組成物が粉末状である場合、頭部用組成物中の反磁性顔料の含有量は1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは5質量%以上である。また、本発明の頭部用組成物が液状又はクリーム状である場合、頭部用組成物中の反磁性顔料の含有量は0.1質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上であり、頭部への付着性、見た目の仕上がりの観点から、特に好ましくは1質量%以上である。
【0016】
本発明の頭部用組成物において、チタン・酸化チタン焼結物と反磁性顔料とを併用する場合、その配合比はチタン・酸化チタン焼結物:反磁性顔料=1:0.01~20が好ましく、チタン・酸化チタン焼結物:反磁性顔料=1:0.05~10がより好ましく、頭部への付着性、見た目の仕上がりの観点から、チタン・酸化チタン焼結物:反磁性顔料=1:0.1~5が特に好ましい。
【0017】
<その他成分>
本発明の頭部用組成物には、上記成分以外に、必要に応じてその他の成分を配合することができる。その他の成分としては、無機粒子、天然繊維、合成繊維、付着樹脂、噴射剤、分散剤、可塑剤、展着剤、防腐剤、香料、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などの界面活性剤、水、油剤、増粘剤、ゲル化剤、保湿剤、皮膜形成剤、pH調整剤、消臭剤、キレート剤、酸化防止剤、抗菌剤、防菌防かび剤、抗炎症剤等の有効成分等、通常皮膚外用剤に使用される成分の一種以上が挙げられる。無機粒子としては、例えばカオリン、タルク、炭酸カルシウム、亜鉛華、珪素酸化物、硫化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化錫、シリカ、マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ等が挙げられる。天然繊維としては、例えば人毛、羊毛、木綿、絹等が挙げられる。合成繊維としては、例えば上記天然繊維の再生繊維、ナイロン、セルロース、ビニロン、ポリエステル等が挙げられる。タルクとは、ケイ酸塩系粘土鉱物を意味する。マイカとは、金雲母、白雲母、黒雲母等のことを意味し、これらを薄く剥離したものが挙げられる。セルロースとしては、繊維状セルロースが好ましく、ナノファイバー状のセルロースを用いることが特に好ましい。セルロースナノファイバーとは、ナノメートルオーダーの繊維径を有する繊維状セルロースを意味する。
【0018】
<頭部用組成物>
本発明の頭部用組成物は、頭部に使用する組成物であって、固体状、液状又はクリーム状であることが好ましく、粉末状、液状又はクリーム状であることがより好ましく、使用の容易性から粉末状であることが特に好ましい。本発明の頭部用組成物が粉末状である場合、平均粒径0.01~1500μmが好ましく、0.01~1000μmがより好ましく、頭部への付着性や付与後の仕上がりの点から、0.05~600μmが特に好ましい。本発明の頭部用組成物が液状又はクリーム状である場合、チタン・酸化チタン焼結物が親水性であることから、親水性の剤型とすることが特に好ましい。この場合、頭部への付着性の点から100,000mPa・s以下の粘度であることが好ましく、50,000mPa・s以下がより好ましい。また、本発明の頭部用組成物を疎水性の剤型として使用する場合は、チタン・酸化チタン焼結物の表面をシリコーンやフッ素などで表面処理し疎水化することが好ましい。さらに、本発明の頭部用組成物は、空気中の微量金属の吸着による頭皮、頭髪へのダメージ低減、MRIなどの診断時に障害とならないことから、反磁性の組成物であることが好ましい。
【0019】
<頭部用組成物の使用方法>
本発明の頭部用組成物は、直接頭部に塗布して使用されるものであり、塗布する方法は、特に制限されるものではなく、形状により適宜選択できる。例えば、本発明の頭部用組成物が粉末状である場合、本発明の頭部用組成物をスプレー塗布する、毛髪や頭皮に振りかける、スポンジ状のパフ等に付着させ、毛髪や頭皮に塗布する方法などが挙げられる。このような使用方法により、適用したい部分に対して所望の量の組成物を塗布することができ、さらに、適用したい部分に対してより局所的に塗布することもできる。また、本発明の頭部用組成物が液状又はクリーム状である場合、直接頭部に塗布するか、又は塗布した後に洗い流して使用することもできる。洗い流して使用する場合、塗布後一定時間放置した後に洗い流すことで、白髪に対してムラがなく、自然な仕上がりを期待することができる。
【0020】
さらに、本発明の頭部用組成物が粉末状である場合、付着性を向上・維持するために固着剤を併用することもできる。固着剤としては、特に制限されるものではなく、適宜変更することが可能であるが、例えば、皮膜形成剤を含む固着用スプレーを用いることができる。皮膜形成剤として、例えば、(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)コポリマーAMP等を使用することができる。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。
【0022】
<1.使用感の評価>
表1に記載の成分を混合し、粉末状の頭皮用組成物を調製した。得られた頭皮用組成物について、薄毛、抜け毛、白髪を気にしている専用パネル5名(男性:3名、女性:2名)による使用性モニターを実施した。それぞれの頭皮用組成物は専用のパフ容器に充填したものを用いた。頭皮用組成物を使用する量は限定することなく、それぞれのパネルに任せた。それぞれのパネルは、頭部への付着性、見た目(黒色)の自然な仕上がりについて確認し以下の評価基準をもって、各頭皮用組成物の評価を行った。結果を表1に示す。
評価基準
◎:十分に満足した
〇:満足した
△:多少不満である
×:不満である
【0023】
【0024】
表1より実施例で得られた頭皮用組成物は、比較例で得られた頭皮用組成物と比較し、頭部への付着性、見た目(黒色)の自然な仕上がりについて高い満足が得られることが分かった。
【0025】
<2.頭皮、頭髪に対するダメージの評価>
実施例4の頭皮用組成物について、SIGNATM Architect 3.0T-MRI装置を用い、吸引(磁性の有無)の試験を行った。
【0026】
化粧品にはアンチポリューション(外界からの刺激を防ぐ)機能も求められるようになってきており、消費者が使用する製品に磁性があると空気中の微量金属の吸着などをおこし、頭皮、頭髪にダメージを与えることも考えられる。実施例4の頭皮用組成物では磁化率アーチファクトが認められず、頭皮用組成物として磁性を有していないことが示された。以上の結果より、チタン・酸化チタン焼結物及び反磁性顔料を含有する本発明の頭皮用組成物は、使用性モニターで頭部への付着性、見た目(黒色)の自然な仕上がりに満足が得られ、さらに磁性を有しておらず、頭皮、頭髪への外界からのダメージが少ないことが示された。
【0027】
[実施例10]
下記を混合し、粉末状の頭部用組成物を製造した。得られた頭部用組成物は頭皮や毛髪への付着性に優れ、薄毛や白髪を均一にカバーし、自然な仕上がりとなる。
【0028】
【0029】
[実施例11]
下記を混合し、クリーム状の頭部用組成物を製造した(pH:6.0)。得られたクリーム状の頭部用組成物を頭皮や毛髪に塗布することで、白髪を均一にカバーし、自然な仕上がりとなる。
【0030】
本発明の頭部用組成物は、頭部への付着性に優れ、見た目にも自然な仕上がりとなることから、薄毛や白髪などの悩みを解決することができる。また、本発明の頭部用組成物は、利便性や安全性に優れるため、様々な用途に使用することができる。