(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133741
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】走行体
(51)【国際特許分類】
B62D 11/04 20060101AFI20240926BHJP
B60G 1/02 20060101ALI20240926BHJP
B62D 61/10 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
B62D11/04 Z
B60G1/02
B62D61/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043676
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 和之
(72)【発明者】
【氏名】日吉 健太
(72)【発明者】
【氏名】牧野 洋三
(72)【発明者】
【氏名】興津 俊幸
【テーマコード(参考)】
3D052
3D301
【Fターム(参考)】
3D052AA02
3D052BB08
3D052DD01
3D052EE02
3D052FF03
3D052HH03
3D301BA05
3D301BA10
3D301CA37
3D301DA08
(57)【要約】
【課題】高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体を提供する。
【解決手段】走行体1Aは、少なくとも前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対ずつ設けられ、右側の前輪11Rと中輪12Rの各々を軸支し、これらを連結する右側結合腕20Rと、左側の前輪11Lと中輪12Lの各々を軸支し、これらを連結する左側結合腕20Lと、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの間に設けられ、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの各々の、前輪11R、11Lと中輪12R、12Lの間の中間部を軸支する筐体部31と、右側の後輪13Rと左側の後輪13Lを連結する後輪連結機構33と、筐体部31と後輪連結機構33とを前後方向に連結する車体軸32と、を備え、筐体部31は、車体軸32との接続部35を中心として、左右に回転可能に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前輪、中輪、及び後輪の各々が、左右に一対ずつ設けられた走行体であって、
右側の前記前輪と前記中輪の各々を軸支し、これらを連結する右側結合腕と、
左側の前記前輪と前記中輪の各々を軸支し、これらを連結する左側結合腕と、
前記右側結合腕と前記左側結合腕の間に設けられ、前記右側結合腕と前記左側結合腕の各々の、前記前輪と前記中輪の間の中間部を軸支する筐体部と、
右側の前記後輪と左側の前記後輪を連結する後輪連結機構と、
前記筐体部と前記後輪連結機構とを前後方向に連結する車体軸と、
を備え、
前記筐体部は、前記車体軸との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている、走行体。
【請求項2】
前記右側結合腕と前記筐体部とを連結する右前側軸と、
前記左側結合腕と前記筐体部とを連結する左前側軸と、
を備え、
前記後輪連結機構は、
前記車体軸の後側に設けられた後側筐体部と、
前記右側の後輪と前記後側筐体部とを連結する右後側軸と、
前記左側の後輪と前記後側筐体部とを連結する左後側軸と、
を備え、
前記右前側軸及び前記左前側軸は、前記筐体部との連結部を中心として上下に回転可能に設けられ、前記右後側軸及び前記左後側軸は、前記後側筐体部との連結部を中心として上下に回転可能に設けられ、
前記右前側軸及び前記左前側軸と、前記筐体部との間、及び、前記右後側軸及び前記左後側軸と、前記後側筐体部との間の、各々には、サスペンションが設けられている、請求項1に記載の走行体。
【請求項3】
前記車体軸は、前側に位置して前記筐体部が連結される前側車体軸と、後側に位置して前記後輪連結機構が連結される後側車体軸と、を備え、
前記後側車体軸は、前記前側車体軸に対し、前記車体軸の軸線方向を中心として前記軸線方向回りに回転可能に設けられている、請求項1に記載の走行体。
【請求項4】
前記後輪連結機構は、前記車体軸との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている、請求項1に記載の走行体。
【請求項5】
前記右側の前輪と前記左側の前輪、及び前記右側の後輪と前記左側の後輪は、各々の進行方向が任意に変更可能に設けられている、請求項1に記載の走行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場等の内部で資材を運搬する搬送車等の車両や、自動倉庫等で物品を荷捌きするためのロボット等の走行体においては、高速走行性能が求められるとともに、狭いスペースで任意に走行方向を変える必要があるため、高い旋回性能が、併せて求められることがある。
【0003】
これに関し、特許文献1には、複数の車軸を有する多軸車両において、各車軸内に、車両に搭載されたエンジンからの回転力を受けて回転自在とされた差動箱と、第1差動歯車、及び左右の第2差動歯車と、左右の第2差動歯車のいずれか一方に正逆自在に回転力を付与可能とする差動装置と、を有する構成が開示されている。
特許文献1の構成においては、例えば前輪側では、差動箱の内部から左右外方向に夫々貫通して左右駆動軸が導き出され、左駆動軸の先端部には左駆動輪が設けられ、右駆動軸の先端部には右駆動輪が設けられている。そして、左右駆動軸の基端の夫々は、差動箱に内蔵されて第1差動歯車に夫々噛み合わされた左右の第2差動歯車に接続されている。後輪側に関しても同様な構成となっている。
このように、特許文献1の構成においては左右の車輪が駆動軸で連結された構成となっているため、段差や急な傾斜等があるような悪路を走行する場合に、左右の車輪の一方が接地したとしても、他方が接地せず、路面から浮いた状態となり得る。車輪が路面から浮くと、車輪のトルクを路面に伝達できず、かつ車体全体が安定しない状態となるため、走行性能が十分に発揮されない。したがって、上記のような走行体に、特許文献1に記載された構造を適用することで、走行体の旋回性能を高めることができたとしても、走行体が悪路を走行する場合における踏破性能を、高く望むことは難しい。
【0004】
悪路の踏破性能が高い構造を有する車両として、ロッカーボギー車が挙げられる。ロッカーボギー車は、前輪、中輪、及び後輪の各々が、左右に一対設けられ、左右の各々において、ボギーリンクとロッカーリンクを備えた構造を有している。左右の各々において、ボギーリンクは、前輪と中輪の各々を軸支し、これらを連結する。また、左右の各々において、ロッカーリンクは、ボギーリンクの前輪と中輪の間の中間部と、後輪と、を軸支し、これらを連結する。ロッカーボギー車においては、ボギーリンクを、ロッカーリンクにより軸支される中間部を中心として、鉛直面内で回転させることで、左右の各々で独立して、前輪と中輪を自在に上下動させることができる構造となっている。これにより、ロッカーボギー車は、悪路を走行する際においても、各車輪を接地させることができるため、悪路における高い踏破性能を有している。
しかし、ロッカーボギー車においては、平面視したときに、左右の各々において、前輪、中輪、及び後輪が、ロッカーリンクとボギーリンクにより略直線状に接続された構成を有しているため、旋回は、例えば、左右の車輪のトルクに差をつけることで行われる。この場合においては、高い旋回性能は望めない。
このようなロッカーボギー車においては、各車輪をメカナムホイールやオムニホイールとすることで、旋回性能を高めることは可能ではある。しかし、メカナムホイールやオムニホイールは、車輪に対して複数の樽状のローラーが、車輪の進行方向とは異なる角度で取り付けられた構成を有している。このため、走行時に車体が上下に振動しやすく安定性能が高くはならない可能性がある。また、通常のゴムタイヤを用いた場合と比べると、車輪を進行方向に駆動するためのトルクが多く必要となるため、高速性能も高くはなりにくい。
【0005】
高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の走行体は、少なくとも前輪、中輪、及び後輪の各々が、左右に一対ずつ設けられた走行体であって、右側の前記前輪と前記中輪の各々を軸支し、これらを連結する右側結合腕と、左側の前記前輪と前記中輪の各々を軸支し、これらを連結する左側結合腕と、前記右側結合腕と前記左側結合腕の間に設けられ、前記右側結合腕と前記左側結合腕の各々の、前記前輪と前記中輪の間の中間部を軸支する筐体部と、右側の前記後輪と左側の前記後輪を連結する後輪連結機構と、前記筐体部と前記後輪連結機構とを前後方向に連結する車体軸と、を備え、前記筐体部は、前記車体軸との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている。
上記のような構成によれば、右側の前輪と中輪は、右側結合腕により軸支され、左側の前輪と中輪は、左側結合腕により軸支され、右側結合腕と左側結合腕は、これらの間に設けられた筐体部に軸支されている。このため、右側結合腕と左側結合腕をそれぞれ、前輪を上昇させて中輪を下降させるように回転させたり、前輪を下降させて中輪を上昇させるように回転させたりすることが可能である。これにより、左右の前輪と中輪を路面の形状にあわせて任意に上下動させて位置づけ、接地させることができるため、悪路における踏破性能を高めることができる。
また、右側の後輪と左側の後輪とは、後輪連結機構により連結されている。筐体部は、後輪連結機構と筐体部とを前後方向に連結する車体軸に対し、車体軸との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている。このように、車体軸に対する筐体部の方向を、左右の任意の方向に変更して、筐体部に右側結合腕及び左側結合腕を介して連結された前輪と中輪の進行方向を変更することができるため、変更した筐体部の方向や角度の大きさに応じて、走行体は任意の方向に進路を変更して旋回することができる。これにより、旋回性能を高めることができる。
更に、走行体は、上記のように、任意の方向に進路を変更して旋回することができる構造を有しているため、旋回性能を高めるために、メカナムホイールやオムニホイール等の特殊な車輪機構等を、特段に備える必要がなく、例えば車輪として、路面との間に大きな摩擦力を生じることで車輪のトルクを路面に効率的に伝達できる、ゴムホイールを用いることができる。このため、高速走行性能が損なわれずに済む。
このようにして、高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体を提供することが可能となる。
【0009】
本発明の一態様においては、本発明の走行体は、前記右側結合腕と前記筐体部とを連結する右前側軸と、前記左側結合腕と前記筐体部とを連結する左前側軸と、を備え、前記後輪連結機構は、前記車体軸の後側に設けられた後側筐体部と、前記右側の後輪と前記後側筐体部とを連結する右後側軸と、前記左側の後輪と前記後側筐体部とを連結する左後側軸と、を備え、前記右前側軸及び前記左前側軸は、前記筐体部との連結部を中心として上下に回転可能に設けられ、前記右後側軸及び前記左後側軸は、前記後側筐体部との連結部を中心として上下に回転可能に設けられ、前記右前側軸及び前記左前側軸と、前記筐体部との間、及び、前記右後側軸及び前記左後側軸と、前記後側筐体部との間の、各々には、サスペンションが設けられている。
上記のような構成によれば、右側結合腕と筐体部とを連結する右前側軸、及び左側結合腕と筐体部とを連結する左前側軸は、筐体部との連結部を中心として上下に回転可能に設けられている。このため、右側結合腕と左側結合腕の中間部を中心としてこれらを回転させるのに加え、右側結合腕と左側結合腕それ自体を上下させることによっても、左右の前輪と中輪を上下動させることができる。したがって、左右の前輪と中輪を上下動させるに際して、その可動範囲をより大きくすることができる。その結果、左右の前輪と中輪の接地性能が高まる。
また、右側の後輪と左側の後輪は、それぞれ、後側筐体部との連結部を中心として上下に回転可能に設けられた、右後側軸及び左後側軸に連結されている。このため、左右の後輪を路面の形状にあわせて任意に上下動させて位置づけて、接地させることができる。その結果、後輪の接地性能が高まる。
更に、右前側軸及び左前側軸と筐体部との間と、右後側軸及び左後側軸と後側筐体部との間に、サスペンションが設けられることで、路面の凹凸により生じる衝撃の、走行体への影響が低減されるとともに、左右の前輪、中輪、及び後輪が下方に向けて付勢されるため、左右の前輪、中輪、及び後輪の接地性能が、より向上する。
このようにして、車輪全体の接地性能が向上するため、悪路における踏破性能を、より高めることができる。
【0010】
本発明の一態様においては、前記車体軸は、前側に位置して前記筐体部が連結される前側車体軸と、後側に位置して前記後輪連結機構が連結される後側車体軸と、を備え、前記後側車体軸は、前記前側車体軸に対し、前記車体軸の軸線方向を中心として前記軸線方向回りに回転可能に設けられている。
上記のような構成によれば、車体軸は、前側に位置して筐体部が連結される前側車体軸と、後側に位置して後輪連結機構が連結される後側車体軸と、を備え、後側車体軸は、前側車体軸に対し、車体軸の軸線方向を中心として軸線方向回りに回転可能に設けられている。このため、後輪連結機構を、前側車体軸に連結された筐体部に対して、車体軸の軸線方向を中心としてねじるように、軸線方向回りに回転させて、右側の後輪と、左側の後輪を、筐体部に対して上下動させることができる。これにより、後輪の接地性能が向上するため、悪路における踏破性能を、より高めることができる。
【0011】
本発明の一態様においては、前記後輪連結機構は、前記車体軸との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている。
上記のような構成によれば、後輪連結機構は、車体軸との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている。このため、例えば、筐体部を左右に回転するに伴い、後輪連結機構を筐体部とは逆方向に回転させることで、走行体が左右に進路を変更するように旋回する際の旋回半径を小さくすることができる。あるいは、筐体部と後輪連結機構を筐体部と同じ方向、例えば左方向に回転させて、右側の前輪と左側の後輪の距離を大きくした状態で、右側の前輪を前進方向に、及び左側の後輪を後進方向に、それぞれ回転させることで、信地回転、超信地回転を行うことも可能である。
このようにして、旋回性能を、更に向上させることができる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記右側の前輪と前記左側の前輪、及び前記右側の後輪と前記左側の後輪は、各々の進行方向が任意に変更可能に設けられている。
上記のような構成によれば、左右の前輪と左右の後輪が、それぞれ、進行方向を任意に変更することができるため、走行体を旋回、信地回転、超信地回転させるに際し、各車輪が進む軌跡に沿った方向に向くように、各車輪の進行方向を変更することが可能である。したがって、旋回性能を、更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る走行体を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る走行体において、筐体部を車体軸との接続部を中心として回転させた状態を示す平面図である。
【
図4】上記実施形態の第1変形例に係る走行体の平面図である。
【
図5】上記実施形態の第1変形例に係る走行体の側面図である。
【
図6】上記実施形態の第1変形例に係る走行体を前方から見た図である。
【
図7】上記実施形態の第1変形例に係る走行体を後方から見た図である。
【
図8】上記実施形態の第2変形例に係る走行体の平面図である。
【
図9】上記実施形態の第3変形例に係る走行体の平面図である。
【
図10】上記実施形態の第3変形例に係る走行体の側面図である。
【
図11】上記実施形態の第3変形例に係る走行体で超信地回転を行っている状態を示す平面図である。
【
図12】上記実施形態の第3変形例に係る走行体で信地回転を行っている状態を示す平面図である。
【
図13】上記実施形態の第4変形例に係る走行体の側面図である。
【
図14】上記実施形態の第4変形例に係る走行体で超信地回転を行っている状態を示す平面図である。
【
図15】上記実施形態の第4変形例に係る走行体で超信地回転を行っている他の状態を示す平面図である。
【
図16】上記実施形態の第5変形例に係る走行体の平面図である。
【
図17】上記実施形態の第6変形例に係る走行体の平面図である。
【
図18】上記実施形態の第7変形例に係る走行体の平面図である。
【
図19】上記実施形態の第7変形例に係る走行体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明による走行体を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
本発明の実施形態に係る走行体を示す平面図を
図1に示す。
図2は、実施形態に係る走行体の側面図である。
図3は、実施形態に係る走行体において、筐体部を車体軸との接続部を中心として回転させた状態を示す平面図である。
本実施形態における走行体1Aは、例えば工場等の内部で資材を運搬する搬送車等の車両として使用され得る。あるいは、走行体1Aは、自動倉庫等で物品を荷捌きするためのロボット等としても使用され得る。このような走行体1Aには、高速走行性能や、高い旋回性能が求められる。また、走行体1Aが、段差や急な傾斜等があるような悪路を走行することを、求められることもある。この場合には、走行体1Aには、更に、悪路を走行する場合における踏破性能が望まれる。本実施形態の走行体1Aは、このような高速走行性能、高い旋回性能、悪路における踏破性能を実現するために、以下に説明するような構成を備えている。
図1、
図2に示されるように、走行体1Aは、前輪11、中輪12、及び後輪13と、本体部30と、結合腕20と、を備えている。
【0016】
図1に示すように、前輪11は、走行体1Aの前端部において、左右に一対設けられている。一対の前輪11は、右側に設けられた右前輪11Rと、左側に設けられた左前輪11Lと、を有している。中輪12は、走行体1Aの前後方向の中間部において、左右に一対設けられている。一対の中輪12は、右側に設けられた右中輪12Rと、左側に設けられた左中輪12Lと、を有している。後輪13は、走行体1Aの後端部において、左右に一対設けられている。一対の後輪13は、右側に設けられた右後輪13Rと、左側に設けられた左後輪13Lと、を有している。
以下の説明において、右前輪11Rと左前輪11Lとを区別する必要がある場合を除き、右前輪11Rと左前輪11Lの各々を、単に前輪11と称する。同様に、右中輪12Rと左中輪12Lとを区別する必要がある場合を除き、右中輪12Rと左中輪12Lの各々を、単に中輪12と称する。更に、右後輪13Rと左後輪13Lとを区別する必要がある場合を除き、右後輪13Rと左後輪13Lの各々を、単に後輪13と称する。
【0017】
本体部30は、走行体1Aの左右方向(幅方向)の中央部に設けられている。本体部30は、左右に一対ずつ設けられた、前輪11、中輪12、及び後輪13の間に設けられている。本体部30は、筐体部31と、車体軸32と、後輪連結機構33と、を備えている。
筐体部31は、本体部30の前側に設けられている。筐体部31は、例えば平面視矩形状をなしている。筐体部31は、後に詳述するように、左右方向の両側で、それぞれ、結合腕20を介して、前輪11及び中輪12を支持している。
車体軸32は、筐体部31に対して後方に設けられている。車体軸32は、走行体1Aの左右方向の中央部に設けられている。車体軸32は、筐体部31と後輪連結機構33とを前後方向に連結する。車体軸32は、前後方向に延びている。
車体軸32は、走行体1Aの軸として要求される強度を十分に有するものであれば、車体軸32の、軸線方向に直交する平面により断面視した場合の断面形状は、矩形、円形、多角形等、どのような形状であってもよい。これは、本実施形態の後に説明する、変形例の各々についても同様である。
車体軸32の前端部は、筐体部31に、上下方向に延びる連結軸35を介して、連結されている。連結軸35は、平面視した際に、筐体部31の中央部に配置されている。車体軸32の前端部は、筐体部31に、連結軸35の中心を回転軸Cvとして、回転軸Cv回りに回動自在となるように連結されている。これにより、
図3に示すように、筐体部31は、車体軸32との接続部として設けられた連結軸35を中心として、上下方向に延びる回転軸Cv回りに、左右に回転可能に設けられている。すなわち、
図1に示されるような、全ての車輪11、12、13の進行方向が同じ前方となっている初期状態から、例えば
図3に示されるように、平面視したときに筐体部31の前側が左側に向いて、右前輪11R、右中輪12R、左前輪11L、及び左中輪12Lの進行方向が前方から左側へと傾くように、筐体部31を回転させることができる。あるいは、上記の初期状態から、
図3とは反対側に、すなわち平面視したときに筐体部31の前側が右側に向いて、右前輪11R、右中輪12R、左前輪11L、及び左中輪12Lの進行方向が前方から右側へと傾くように、筐体部31を回転させることもできる。
【0018】
車体軸32は、
図2においては、筐体部31の下面に連結されているように図示されているが、実際には、車体軸32は、筐体部31のどの部分に連結されていてもよい。
例えば、筐体部31の後側の表面に、前方へと窪むように凹部が形成され、当該凹部の内側に車体軸32の前端部が収容されて、凹部の内側において車体軸32と筐体部31とが連結軸35により連結されることにより、側面視したときに、筐体部31と車体軸32が同一の高さに位置して、筐体部31の後端から車体軸32が突出するように、走行体1Aを構築しても構わない。このとき、この凹部は、下側が筐体部31を形成する底板等により塞がれ、上側が筐体部31を形成する上板等により塞がれることで、凹部内に位置する車体軸32の前端部が、筐体部31を構成する部材によって、上下双方から挟まれるようにしても良い。
または、車体軸32は、筐体部31の上面に、連結されるように構成されていてもよい。
このように、既に説明したような、筐体部31が、車体軸32との接続部として設けられた連結軸35を中心として、上下方向に延びる回転軸Cv回りに、左右に回転可能に設けられる構造が実現できるのであれば、車体軸32と筐体部31とは、どのような態様で連結されていても構わない。
【0019】
後輪連結機構33は、本体部30の後側に設けられている。後輪連結機構33は、車体軸32の後端部に連結されている。後輪連結機構33は、車体軸32の後端部から、左右方向の両側に延びている。後輪連結機構33は、後に詳述するように、左右方向の両側で、それぞれ後輪13を支持している。
【0020】
図1に示すように、結合腕20は、筐体部31の左右方向の両側に一対設けられている。一対の結合腕20は、右側に設けられた右側結合腕20Rと、左側に設けられた左側結合腕20Lと、を有している。つまり、筐体部31は、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの間に設けられている。
右側結合腕20Rと左側結合腕20Lとは左右対称な構成を有している。以下の説明において、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lとを区別する必要がある場合を除き、右側結合腕20R、左側結合腕20Lの各々を、単に結合腕20と称する。
結合腕20は、前輪11と中輪12の各々を、左右方向に延びる軸周りに回転自在に軸支している。
図2に示すように、結合腕20は、本体部30の前後方向に延びる腕部21と、腕部21の前後両端部の各々から下方に延びる前脚部23、及び中脚部24と、を一体に有している。前輪11は、結合腕20の前端部に配置された前脚部23の下端に、回転自在に連結されている。中輪12は、結合腕20の後端部に配置された中脚部24の下端に、回転自在に連結されている。このようにして、結合腕20は、前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結している。右側結合腕20Rは、右側の前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結している。左側結合腕20Lは、左側の前輪11と中輪12の各々を軸支し、これらを連結している。
【0021】
腕部21の前後方向の中間部21cは、左右方向に延びる駆動軸25を介して、筐体部31に対し、駆動軸25の中心軸Cd回りに回転自在に連結されている。このようにして、筐体部31は、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの各々の、前輪11と中輪12の間の中間部21cを軸支している。
【0022】
駆動軸25は、コントローラ(図示なし)によって動作が制御されるモータ26により、駆動軸25の中心軸Cd回りに回転駆動される。つまり、結合腕20は筐体部31に対し、モータ26により、動的に回転可能とされている。結合腕20と筐体部31とは、駆動軸25回りの相対角度を、任意の角度に制御可能となっている。
例えば、モータ26を制御することで、後に変形例として
図10で説明するように、結合腕20の後側に位置する中脚部24を前側に位置する前脚部23に対して上昇させ、中輪12が前輪11よりも上に位置して路面Fから持ち上がるように、結合腕20を回転させることができる。あるいは、例えば、モータ26を制御することで、
図10とは反対側に、すなわち結合腕20の前脚部23を中脚部24に対して上昇させ、前輪11が中輪12よりも上に位置して路面Fから持ち上がるように、結合腕20を回転させることができる。
このような構成を有することで、走行体1Aは、例えば段差を昇降することができる。
段差を上る際には、例えば走行体1Aは、モータ26を制御することで前輪11を中輪12よりも上に位置するように路面Fから持ち上げた状態で前進し、前輪11を段差の上に乗せる。その後、走行体1Aの前方の荷重を前輪11で支持しつつ、モータ26を逆方向に制御して、中輪12を前輪11と同等の高さまで持ち上げ、その状態で走行体1Aを前進させて、中輪12を段差の上に乗せる。更にその後、走行体1Aを前進させて後輪13を段差の垂直面に当接させ、後輪13を回転させて、後輪13と垂直面との間の摩擦力により、後輪13を上昇させて、段差の上に乗せる。
同様にして、モータ26を制御して前輪11と中輪12の位置を調整することで、段差を下ることも可能である。
右側結合腕20Rと左側結合腕20Lは、筐体部31に、それぞれ独立して、軸支されている。また、モータ26は、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの各々に対して、個別に設けられている。このため、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lを、独立して回転させることができる。
【0023】
また、結合腕20と筐体部31とは、モータ26による駆動をオフにすることで、駆動軸25回りに自由回転可能な状態とすることもできる。例えば路面Fに凹凸があるような場合に、結合腕20を筐体部31に対して自由回転可能な状態とすることで、路面Fの形状に追従させて前輪11や中輪12を上下に自在に移動させることができる。特に、上記のように、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lは、筐体部31に、それぞれ独立して、軸支されているため、路面F上に左右で異なる凹凸がある場合においても、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lは、それぞれ独立して、路面Fの形状に追従して回転動作する。
このようなモータ26は、回転駆動力を自在に制御できるアクチュエータ、例えば、トルクモータまたはハーモニックドライブ(登録商標)等により実現可能である。
本実施形態においては、駆動軸25は、連結軸35と、平面視したときに前後方向で同一となる位置に設けられている。
【0024】
図2に示すように、前輪11(右前輪11R、左前輪11L)、中輪12(右中輪12R、左中輪12L)、及び後輪13(右後輪13R、左後輪13L)の各々は、ホイール10Wと、ホイール10Wの外周に設けられたゴムタイヤ10Tと、を有したゴムホイールである。
図1に示すように、右前輪11Rは、モータ14Rによって回転駆動される。左前輪11Lは、モータ14Lによって回転駆動される。右中輪12Rは、モータ15Rによって回転駆動される。左中輪12Lは、モータ15Lによって回転駆動される。右後輪13Rは、モータ16Rによって回転駆動される。左後輪13Lは、モータ16Lによって駆動される。コントローラ(図示なし)は、前輪11(右前輪11R、左前輪11L)、中輪12(右中輪12R、左中輪12L)、後輪13(右後輪13R、右後輪13R)の各々を、前進方向または後進方向にそれぞれ回転するよう、これらのモータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを制御する。
モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lは、コントローラ(図示なし)により、各々独立に制御可能である。つまり、右前輪11R、左前輪11L、右中輪12R、左中輪12L、右後輪13R、左後輪13Lは、コントローラがモータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを独立に制御することによって、それぞれが異なるトルクや回転方向で回転するように、独立に駆動制御可能である。
【0025】
走行体1Aのコントローラ(図示なし)は、モータ14R、14L、15R、15L、16R、16Lを制御することで、前輪11、中輪12、後輪13を回転駆動させ、本体部30を自走させる。コントローラ(図示なし)は、路面Fの形状に応じて、モータ26を制御して、結合腕20を駆動軸25回りに揺動させることで、前輪11、中輪12のいずれか一方を持ち上げる。あるいは、モータ26による駆動をオフにして、結合腕20を駆動軸25回りに自由回転可能な状態とすることで、路面Fの形状に追従して、前輪11、中輪12が自由に上下するような状態とすることもできる。
【0026】
このような走行体1Aでは、車体軸32に対し、筐体部31を、連結軸35回りに左右に回動させることで、前輪11、及び中輪12を操舵することができる。これにより、走行体1Aの進行方向に応じて、筐体部31の向きを連結軸35回りに変えることで、走行体1Aの進路変更(旋回)をスムーズに安定して行うことができる。更に、筐体部31の進路を変更する際には、右前輪11R、右中輪12R、及び右後輪13Rと、左前輪11L、左中輪12L、及び右後輪13Rとの間で、回転数に差をつけて、各々を駆動することで、各輪の滑りを抑えつつ、効率のよい、安定した旋回動作を実現できる。
【0027】
上述したような走行体1Aは、少なくとも前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対ずつ設けられた走行体1Aであって、右側の前輪(右前輪)11Rと中輪(右中輪)12Rの各々を軸支し、これらを連結する右側結合腕20Rと、左側の前輪(左前輪)11Lと中輪(左中輪)12Lの各々を軸支し、これらを連結する左側結合腕20Lと、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの間に設けられ、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの各々の、前輪11と中輪12の間の中間部21cを軸支する筐体部31と、右側の後輪(右後輪)13Rと左側の後輪(左後輪)13Lを連結する後輪連結機構33と、筐体部31と後輪連結機構33とを前後方向に連結する車体軸32と、を備え、筐体部31は、車体軸32との接続部(連結軸)35を中心として、左右に回転可能に設けられている。
上記のような構成によれば、右側の前輪11Rと中輪12Rは、右側結合腕20Rにより軸支され、左側の前輪11Lと中輪12Lは、左側結合腕20Lにより軸支され、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lは、これらの間に設けられた筐体部31に軸支されている。このため、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lをそれぞれ、前輪11を上昇させて中輪12を下降させるように回転させたり、前輪11を下降させて中輪12を上昇させるように回転させたりすることが可能である。これにより、左右の前輪11と中輪12を路面Fの形状にあわせて任意に上下動させて位置づけ、接地させることができるため、悪路における踏破性能を高めることができる。
また、右側の後輪13Rと左側の後輪13Lとは、後輪連結機構33により連結されている。筐体部31は、後輪連結機構33と筐体部31とを前後方向に連結する車体軸32に対し、車体軸32との接続部を中心として、左右に回転可能に設けられている。このように、車体軸32に対する筐体部31の方向を、左右の任意の方向に変更して、筐体部31に右側結合腕20R及び左側結合腕20Lを介して連結された前輪11と中輪12の進行方向を変更することができるため、変更した筐体部31の方向や角度の大きさに応じて、走行体1Aは任意の方向に進路を変更して旋回することができる。これにより、旋回性能を高めることができる。
更に、走行体1Aは、上記のように、任意の方向に進路を変更して旋回することができる構造を有しているため、旋回性能を高めるために、メカナムホイールやオムニホイール等の特殊な車輪機構等を、特段に備える必要がなく、例えば車輪として、路面Fとの間に大きな摩擦力を生じることで車輪のトルクを路面Fに効率的に伝達できる、ゴムホイールを用いることにより、走行体1Aを実現することができる。このため、高速走行性能が損なわれずに済む。
このようにして、高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体1Aを提供することが可能となる。
【0028】
また、前輪11、中輪12、及び後輪13の各々は、ゴムホイールである。
上記のような構成によれば、ゴムは伸縮性を有するため、路面Fの凹凸によって生じる衝撃が吸収される。このため、例えば車輪としてメカナムホイールやオムニホイールを用いた場合に比べると、走行体1Aそのものや、走行体1Aが搬送する物品等に対する振動や衝撃を、低減することができる。
また、車輪としてゴムホイールを用いると、メカナムホイールやオムニホイールを用いた場合よりも、路面Fとの間に生じる摩擦力が大きくなり、走行体1Aのスリップを抑制することができる。
【0029】
(実施形態の第1変形例)
なお、本発明の走行体は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。以下に示す各変形例の説明では、上記実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、上記実施形態と共通する構成については、同符号を付してその説明を省略することがある。
図4は、上記実施形態の第1変形例に係る走行体の平面図である。
図5は、上記実施形態の第1変形例に係る走行体の側面図である。
図6は、上記実施形態の第1変形例に係る走行体を前方から見た図である。
図7は、上記実施形態の第1変形例に係る走行体を後方から見た図である。
本変形例に係る走行体1Bの本体部30Bは、筐体部31Bと、車体軸32Bと、後輪連結機構33Bと、を備えている。
【0030】
筐体部31Bは、本体部30Bの前側に設けられている。筐体部31Bは、例えば平面視矩形状をなしている。
図5、
図6に示すように、本変形例の筐体部31Bは、左右方向の中央部の下方に、上下方向に延びる前部軸支持部31sを備えている。
前部軸支持部31sは、筐体部31Bと車体軸32Bとの接続部として設けられる連結軸35を介して、筐体部31Bと接合されている。
図4、
図6に示すように、筐体部31Bは、前部軸支持部31sの左右方向の両側で、それぞれ、右前側軸40R及び左前側軸40Lを介して、結合腕20、及び前輪11及び中輪12を支持している。右前側軸40Rは、右側結合腕20Rと筐体部31Bとを連結している。左前側軸40Lは、左側結合腕20Lと筐体部31Bとを連結している。右前側軸40R及び左前側軸40Lは、左右方向に延びている。右前側軸40R及び左前側軸40Lの、走行体1Bにおいて内側に位置する基端部は、それぞれ、前部軸支持部31sに、前後方向に延びる軸40sを介して、回動自在に連結されている。これにより、右前側軸40R及び左前側軸40Lは、筐体部31Bとの連結部(軸40s)を中心として、軸40s回りに上下に回転可能に設けられ、右前側軸40R及び左前側軸40Lの、基端部とは反対側の外側に位置している先端部は、上下方向に移動自在に設けられている。
右前側軸40R及び左前側軸40Lの先端部には、モータ26、及び駆動軸25を介して結合腕20(右側結合腕20R、左側結合腕20L)が設けられている。
右前側軸40R及び左前側軸40Lと、筐体部31Bの下面との間には、それぞれ、サスペンション45Fが設けられている。
【0031】
図4、
図5に示すように、車体軸32Bは、筐体部31Bと後輪連結機構33Bとを前後方向に連結する。車体軸32Bの前端部は、筐体部31Bに、上下方向に延びる連結軸35を介して、連結されている。車体軸32Bの前端部は、筐体部31に、連結軸35の中心を回転軸Cvとして、回転軸Cv回りに回動自在となるように連結されている。これにより、筐体部31Bは、車体軸32Bとの接続部として設けられた連結軸35を中心として、上下方向に延びる回転軸Cv回りに、左右に回転可能に設けられている。
【0032】
図4、
図5、
図7に示すように、後輪連結機構33Bは、本体部30Bの後側に設けられている。後輪連結機構33Bは、後側筐体部41と、右後側軸42Rと、左後側軸42Lと、を備えている。
後側筐体部41は、車体軸32Bの下側に、車体軸32Bと一体に設けられている。後側筐体部41は、車体軸32Bから下方に延びている。
【0033】
右後側軸42R、及び左後側軸42Lは、後側筐体部41に対して左右方向の両側に設けられている。右後側軸42Rは、右側の後輪13と後側筐体部41とを連結する。左後側軸42Lは、左側の後輪13と後側筐体部41とを連結する。
右後側軸42R、及び左後側軸42Lは、それぞれ、左右方向に延びている。右後側軸42R、及び左後側軸42Lの、走行体1Bにおいて内側に位置する基端部は、それぞれ、後側筐体部41に、前後方向に延びる軸42sを介して、回動自在に連結されている。これにより、右後側軸42R及び左後側軸42Lは、後側筐体部41との連結部(軸42s)を中心として、軸42s回りに上下に回転可能に設けられ、右後側軸42R及び左後側軸42Lの、基端部とは反対側の外側に位置している先端部は、上下方向に移動自在に設けられている。
右後側軸42Rの先端部には、モータ16Rを介して右後輪13Rが設けられている。左後側軸42Lの先端部には、モータ16Lを介して左後輪13Lが設けられている。
右後側軸42R及び左後側軸42Lと、後側筐体部41との間には、それぞれ、サスペンション45Bが設けられている。
【0034】
上述したような走行体1Bは、上記実施形態と同様、少なくとも前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対ずつ設けられた走行体1Bであって、右側の前輪(右前輪)11Rと中輪(右中輪)12Rの各々を軸支し、これらを連結する右側結合腕20Rと、左側の前輪(左前輪)11Lと中輪(左中輪)12Lの各々を軸支し、これらを連結する左側結合腕20Lと、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの間に設けられ、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの各々の、前輪11と中輪12の間の中間部21cを軸支する筐体部31Bと、右側の後輪(右後輪)13Rと左側の後輪(左後輪)13Lを連結する後輪連結機構33Bと、筐体部31Bと後輪連結機構33Bとを前後方向に連結する車体軸32Bと、を備え、筐体部31Bは、車体軸32Bとの接続部(連結軸)35を中心として、左右に回転可能に設けられている。
このような構成によれば、上記実施形態と同様、高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体1Bを提供することが可能となる。
【0035】
また、走行体1Bは、右側結合腕20Rと筐体部31Bとを連結する右前側軸40Rと、左側結合腕20Lと筐体部31Bとを連結する左前側軸40Lと、を備え、後輪連結機構33Bは、車体軸32の後側に設けられた後側筐体部41と、右側の後輪13と後側筐体部41とを連結する右後側軸42Rと、左側の後輪13と後側筐体部41とを連結する左後側軸42Lと、を備え、右前側軸40R及び左前側軸40Lは、筐体部31Bとの連結部(軸40s)を中心として上下に回転可能に設けられ、右後側軸42R及び左後側軸42Lは、後側筐体部41との連結部(軸42s)を中心として上下に回転可能に設けられ、右前側軸40R及び左前側軸40Lと、筐体部31Bとの間、及び、右後側軸42R及び左後側軸42Lと、後側筐体部41との間の、各々には、サスペンション45F、45Bが設けられている。
上記のような構成によれば、右側結合腕20Rと筐体部31Bとを連結する右前側軸40R、及び左側結合腕20Lと筐体部31Bとを連結する左前側軸40Lは、筐体部31Bとの連結部を中心として上下に回転可能に設けられている。このため、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの中間部21cを中心としてこれらを回転させるのに加え、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lそれ自体を上下させることによっても、左右の前輪11と中輪12を上下動させることができる。したがって、左右の前輪11と中輪12を上下動させるに際して、その可動範囲をより大きくすることができる。その結果、左右の前輪11と中輪12の接地性能が高まる。
また、右側の後輪13Rと左側の後輪13Lは、それぞれ、後側筐体部41との連結部を中心として上下に回転可能に設けられた、右後側軸42R及び左後側軸42Lに連結されている。このため、左右の後輪13を路面の形状にあわせて任意に上下動させて位置づけて、接地させることができる。その結果、後輪13の接地性能が高まる。
更に、右前側軸40R及び左前側軸40Lと筐体部31Bとの間と、右後側軸42R及び左後側軸42Lと後側筐体部41との間に、サスペンション45F、45Bが設けられることで、路面Fの凹凸により生じる衝撃の、走行体1Bへの影響が低減するとともに、左右の前輪11、中輪12、及び後輪13が下方に向けて付勢されるため、左右の前輪11、中輪12、及び後輪13の接地性能が、より向上する。
このようにして、車輪全体の接地性能が向上するため、悪路における踏破性能を、より高めることができる。
【0036】
なお、上記実施形態として説明したような、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lが上下しない形態を、
図1~
図3により示された構造に替えて、本変形例として説明したような、走行体が右前側軸40R及び左前側軸40Lを備えるような構造によっても、実現することが可能であるのは、言うまでもない。この場合においては、例えば、走行体に右前側軸40R及び左前側軸40Lを設けるに際し、本変形例のような、右前側軸40R及び左前側軸40Lを、筐体部31Bとの連結部(軸40s)を中心として、軸40s回りに上下に回転可能に設けられた構成とせず、右前側軸40R及び左前側軸40Lが回転しないように、右前側軸40R及び左前側軸40Lを、筐体部31B(の前部軸支持部31s)に、剛に接合するようにすればよい。
【0037】
(実施形態の第2変形例)
図8は、上記実施形態の第2変形例に係る走行体の平面図である。
図8に示すように、走行体1Cの本体部30Cは、筐体部31と、車体軸32Cと、後輪連結機構33と、を備えている。
【0038】
車体軸32Cは、筐体部31と後輪連結機構33とを前後方向に連結する。本変形例においては、車体軸32Cは、前側車体軸51と、後側車体軸52と、を備えている。
前側車体軸51は、車体軸32Cの前側に位置している。前側車体軸51の前端部は、筐体部31に、上下方向に延びる連結軸35を介して、連結されている。前側車体軸51の前端部は、筐体部31に、連結軸35の中心を回転軸Cvとして、回転軸Cv回りに回動自在となるように連結されている。これにより、筐体部31は、車体軸32Cとの接続部として設けられた連結軸35を中心として、上下方向に延びる回転軸Cv回りに、左右に回転可能に設けられている。
後側車体軸52は、車体軸32Cの後側に位置している。後側車体軸52の後端部は、後輪連結機構33に連結されている。後側車体軸52は、前側車体軸51に対し、回転継手53等を介して、車体軸32Cの前後方向に沿う軸線Ca方向を中心として軸線Ca方向回りに回転可能に連結されている。
例えば
図8において、後側車体軸52を前側車体軸51に対して、右側が紙面奥行方向に向かい、左側が紙面手前方向に向かうように回転させることで、右後輪13Rを右前輪11Rと右中輪12Rに対して下降させるとともに、左後輪13Lを左前輪11Lと左中輪12Lに対して上昇させることができる。
逆に、
図8において、後側車体軸52を前側車体軸51に対して、右側が紙面手前方向に向かい、左側が紙面奥行方向に向かうように回転させることで、右後輪13Rを右前輪11Rと右中輪12Rに対して上昇させるとともに、左後輪13Lを左前輪11Lと左中輪12Lに対して下降させることができる。
【0039】
上述したような走行体1Cは、上記実施形態と同様、少なくとも前輪11、中輪12、及び後輪13の各々が、左右に一対ずつ設けられた走行体1Cであって、右側の前輪(右前輪)11Rと中輪(右中輪)12Rの各々を軸支し、これらを連結する右側結合腕20Rと、左側の前輪(左前輪)11Lと中輪(左中輪)12Lの各々を軸支し、これらを連結する左側結合腕20Lと、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの間に設けられ、右側結合腕20Rと左側結合腕20Lの各々の、前輪11と中輪12の間の中間部21cを軸支する筐体部31と、右側の後輪(右後輪)13Rと左側の後輪(左後輪)13Lを連結する後輪連結機構33と、筐体部31と後輪連結機構33とを前後方向に連結する車体軸32Cと、を備え、筐体部31は、車体軸32Cとの接続部(連結軸)35を中心として、左右に回転可能に設けられている。
このような構成によれば、上記実施形態と同様、高速走行性能と、高い旋回性能を有するとともに、悪路における踏破性能を併せ持つ、走行体1Cを提供することが可能となる。
【0040】
また、車体軸32Cは、前側に位置して筐体部31が連結される前側車体軸51と、後側に位置して後輪連結機構33が連結される後側車体軸52と、を備え、後側車体軸52は、前側車体軸51に対し、車体軸32Cの軸線Ca方向を中心として軸線Ca方向回りに回転可能に設けられている。
上記のような構成によれば、車体軸32Cは、前側に位置して筐体部31が連結される前側車体軸51と、後側に位置して後輪連結機構33が連結される後側車体軸52と、を備え、後側車体軸52は、前側車体軸51に対し、車体軸32Cの軸線Ca方向を中心として軸線Ca方向回りに回転可能に設けられている。このため、後輪連結機構33を、前側車体軸51に連結された筐体部31に対して、車体軸32Cの軸線Ca方向を中心としてねじるように、軸線Ca方向回りに回転させて、右側の後輪13と、左側の後輪13を、筐体部31に対して上下動させることができる。これにより、後輪13の接地性能が向上するため、悪路における踏破性能を、より高めることができる。
【0041】
なお、このような前側車体軸51と、後側車体軸52とを備える車体軸32Cは、上記実施形態の第1変形例にも適用可能である。このようにした場合においては、車輪全体の接地性能がより向上するため、悪路における踏破性能を、更に高めることができる。
【0042】
(実施形態の第3変形例)
図9は、上記実施形態の第3変形例に係る走行体の平面図である。
図9に示すように、走行体1Dの本体部30Dは、筐体部31と、車体軸32と、後輪連結機構33Dと、を備えている。
【0043】
本変形例において、後輪連結機構33Dは、車体軸32の後端部に、上下方向に延びる連結軸61を介して、連結されている。車体軸32の後端部は、後輪連結機構33Dに、連結軸61の中心を回転軸Cv2として、回転軸Cv2回りに回動自在となるように連結されている。これにより、後輪連結機構33Dは、車体軸32との接続部として設けられた連結軸61を中心として、上下方向に延びる回転軸Cv2回りに、左右に回転可能に設けられている。
例えば、
図9に示されるように、筐体部31を左に回転させて、右前輪11R、右中輪12R、左前輪11L、及び左中輪12Lの進行方向が前方から左側へと傾くようにするとともに、後輪連結機構33Dを右に回転させて、右後輪13Rと左後輪13Lの進行方向が前方から右側へと傾くようにした状態で、前輪11、中輪12、及び後輪13の全てを前進させることで、左に向けて進路を変更するように旋回させることができる。
あるいは、
図9とは反対に、すなわち筐体部31を右に回転させて、右前輪11R、右中輪12R、左前輪11L、及び左中輪12Lの進行方向が前方から右側へと傾くようにするとともに、後輪連結機構33Dを左に回転させて、右後輪13Rと左後輪13Lの進行方向が前方から左側へと傾くようにした状態で、前輪11、中輪12、及び後輪13の全てを前進させることで、右に向けて進路を変更するように旋回させることができる。
このようにした場合には、上記実施形態として説明したような、筐体部31のみを回転させて進路を変更するように旋回させる場合に比べると、旋回半径が小さくなる。
このとき、右前輪11R、右中輪12R、及び右後輪13Rと、左前輪11L、左中輪12L、及び右後輪13Rとの間で、回転数に差をつけて、各々を駆動することで、各輪の滑りを抑えつつ、効率のよい、安定した旋回動作を実現できる。
【0044】
図10は、上記実施形態の第3変形例に係る走行体の側面図である。
次に、本変形例において、走行体1Dを超信地回転(スピンターン)、信地回転(ピボットターン)させる場合の、各部位の挙動について説明する。
この場合には、
図10に示されるように、まず、コントローラ(図示なし)によって駆動軸25を中心軸Cd回りに回転駆動し、結合腕20を揺動させることによって、中輪12を路面Fから持ち上げるようにするのが望ましい。
このような状態で、右前輪11R、及び右後輪13Rと、左前輪11L、及び右後輪13Rとの間で、回転数に差をつけて各々を駆動することで、4つの車輪が接地した状態で、超信地回転や信地回転を行うようにすれば、右中輪12R、及び左中輪12Lを含んだ計6つの車輪が接地した状態で超信地回転や信地回転を行う場合に比較し、各車輪の回転制御が容易となる。また、左右の中輪12によって路面Fとの間に生じる摩擦力を減じた状態で、効率良く超信地回転や信地回転を行うことができる。
【0045】
図11は、上記実施形態の第3変形例に係る走行体で超信地回転を行っている状態を示す平面図である。
超信地回転を行う際には、車体軸32に対し、筐体部31を連結軸35回りの一方側に回動させるとともに、後輪連結機構33Dを連結軸61回りに、筐体部31と同じ方向に回動させる。例えば
図11に示すように、筐体部31と後輪連結機構33Dを共に、平面視したときに連結軸35、61回りの反時計方向(左回り)となるように回転させた場合、右前輪11Rと左後輪13Lとの距離が大きくなる。この状態で、右前輪11R、右後輪13Rと、左前輪11L、及び右後輪13Rの間で、回転数に差をつけるように、右前輪11R、右後輪13R、左前輪11L、及び右後輪13Rを回転させる。例えば、右前輪11Rに強い前進回転力を掛け、左後輪13Lに強い後進回転力を掛け、左前輪11Lには弱い後進回転力を掛け、右後輪13Rには弱い前進回転力を掛ける。これにより、走行体1Dを、その場で反時計方向回りに超信地回転させることができる。
図11とは逆に、筐体部31と後輪連結機構33Dを共に、連結軸35、61回りの時計方向(右回り)となるように回転させた場合には、左前輪11Lと右後輪13Rとの距離が大きくなる。この状態で、例えば、左前輪11Lに強い前進回転力を掛け、右後輪13Rに強い後進回転力を掛け、右前輪11Rには弱い後進回転力を掛け、左後輪13Lには弱い前進回転力を掛ける。これにより、走行体1Dを、その場で時計方向回りに超信地回転させることができる。
【0046】
図12は、上記実施形態の第3変形例に係る走行体で信地回転を行っている状態を示す平面図である。
信地回転を行う際にも、車体軸32に対し、筐体部31を連結軸35回りの一方側に回動させるとともに、後輪連結機構33Dを連結軸61回りに、筐体部31と同じ方向に回動させる。例えば
図12に示すように、筐体部31と後輪連結機構33Dを共に、平面視したときに連結軸35、61回りの反時計方向(左回り)となるように回転させた場合、右前輪11Rと左後輪13Lとの距離が大きくなる。この状態で、例えば、左前輪11Lと右後輪13Rとを停止させた状態で、右前輪11Rに強い前進回転力を掛け、左後輪13Lに強い後進回転力を掛けることで、左前輪11Lを中心として反時計方向回りに信地回転させることができる。
図12とは逆に、筐体部31と後輪連結機構33Dを共に、連結軸35、61回りの時計方向(右回り)となるように回転させた場合には、左前輪11Lと右後輪13Rとの距離が大きくなる。この状態で、例えば、右前輪11Rと左後輪13Lとを停止させた状態で、左前輪11Lに強い前進回転力を掛け、右後輪13Rに強い後進回転力を掛けることで、右前輪11Rを中心として時計方向回りに信地回転させることができる。
【0047】
上述したような走行体1Dによれば、後輪連結機構33Dは、車体軸32との接続部(連結軸)61を中心として、左右に回転可能に設けられている。
このような構成によれば、後輪連結機構33Dは、車体軸32との接続部(連結軸)61を中心として、左右に回転可能に設けられている。このため、例えば、筐体部31を左右に回転するに伴い、後輪連結機構33Dを筐体部31とは逆方向に回転させることで、走行体1Dが左右に進路を変更するように旋回する際の旋回半径を小さくすることができる。あるいは、筐体部31と後輪連結機構33Dを筐体部31と同じ方向、例えば左方向に回転させて、右側の前輪と左側の後輪の距離を大きくした状態で、右側の前輪を前進方向に、及び左側の後輪を後進方向に、それぞれ回転させることで、信地回転、超信地回転を行うことも可能である。
このようにして、旋回性能を、更に向上させることができる。
【0048】
なお、本変形例で示した構成は、上記実施形態の第1変形例、第2変形例と組み合わせることもできる。このようにした場合においては、悪路における踏破性能を、更に高めると同時に、旋回性能をも、更に向上させることができる。
【0049】
(実施形態の第4変形例)
図13は、上記実施形態の第4変形例に係る走行体の側面図である。
図14は、上記実施形態の第4変形例に係る走行体で超信地回転を行っている状態を示す平面図である。
図13、
図14に示すように、走行体1Eは、前輪11、中輪12、及び後輪13と、本体部30Dと、結合腕20と、を備えている。本体部30Dは、上記実施形態の第3変形例と同様、筐体部31と、車体軸32と、後輪連結機構33Dと、を備えている。
【0050】
本変形例において、前輪11(右前輪11R、左前輪11L)は、車輪操舵機構70Fを介して結合腕20(右側結合腕20R、左側結合腕20L)に、その回転軸74が上下方向に延在する軸Cv3回りに回動自在となるように接続されている。後輪13(右後輪13R、右後輪13R)は、車輪操舵機構70Bを介して後輪連結機構33Dに、その回転軸74が上下方向に延在する軸Cv4回りに回動自在となるように接続されている。
【0051】
図13に示すように、車輪操舵機構70Fは、結合腕20に接続された基部プレート71と、基部プレート71に軸Cv3回りに回動自在に設けられた支持軸72と、支持軸72を軸Cv3回りに回転駆動する操舵駆動部75と、支持軸72に接続された支持フォーク73と、支持フォーク73により支持され、前輪11を支持する回転軸74と、を備えている。前輪11(右前輪11R、左前輪11L)を回転駆動するモータ14R、14L(
図14参照)は、支持フォーク73に支持されている。回転軸74は、左右方向に延在するように設けられている。前輪11は、回転軸74回りに回転自在となるように、回転軸74によって支持され、モータ14R、14Lによって回転駆動される。
【0052】
車輪操舵機構70Bは、後輪連結機構33Dに接続された基部プレート71と、基部プレート71に軸Cv4回りに回動自在に設けられた支持軸72と、支持軸72を軸Cv4回りに回転駆動する操舵駆動部75と、支持軸72に接続された支持フォーク73と、支持フォーク73により支持され、後輪13を支持する回転軸74と、を備えている。後輪13(右後輪13R、右後輪13R)を回転駆動するモータ16R、16Lは、支持フォーク73に支持されている。回転軸74は、左右方向に延在するように設けられている。後輪13は、回転軸74回りに回転自在となるように、回転軸74によって支持され、モータ16R、16Lによって回転駆動される。
【0053】
このような車輪操舵機構70F、70Bでは、操舵駆動部75により、支持軸72を軸Cv3、Cv4回りに回転させることにより、右前輪11Rと左前輪11L、及び右後輪13Rと左後輪13Lの各々の進行方向を、個別に、かつ任意に、変更することが可能である。
また、車輪操舵機構70F、70Bは、操舵駆動部75により支持軸72を軸Cv3、Cv4回りに回転駆動する状態と、操舵駆動部75からの駆動力の伝達を解除し、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lが路面Fとの摩擦により、支持軸72とともに軸Cv3、Cv4回りに回転自在となる状態と、の間で切替可能とするクラッチ機構を備えている。
【0054】
このような走行体1Eにおいては、
図14に示されるような制御を行うことで、走行体1Eを超信地回転させることができる。
これにはまず、
図10を用いて第3変形例として説明したように、コントローラ(図示なし)によって駆動軸25を中心軸Cd回りに回転駆動し、結合腕20を揺動させることによって、中輪12を路面Fから持ち上げるようにする。
そして、車体軸32に対し、筐体部31を連結軸35回りの一方側に回動させるとともに、後輪連結機構33Dを連結軸61回りに、筐体部31と同じ方向に回動させる。例えば
図14に示すように、筐体部31と後輪連結機構33Dを共に、平面視したときに連結軸35、61回りの反時計方向(左回り)となるように回転させた状態で、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々の回転軸74が、超信地回転の中心Dに向けて延びるように、操舵駆動部75で各支持軸72を回転させる。そして、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々を、中心Dから見たときの進行方向が同一となるように回転させることで、走行体1Eを超信地回転させることができる。
【0055】
図15は、上記実施形態の第4変形例に係る走行体で超信地回転を行っている他の状態を示す平面図である。
あるいは、中輪12を路面Fから持ち上げた後、車体軸32に対し、筐体部31を連結軸35回りの一方側に回動させるとともに、後輪連結機構33Dを連結軸61回りに、筐体部31とは異なる方向に回動させる。例えば
図15に示すように、平面視したときに筐体部31を連結軸35回りの反時計方向(左回り)となるように回転させるとともに、後輪連結機構33Dを連結軸61回りの時計方向(右回り)となるように回転させた状態で、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々の回転軸74が、超信地回転の中心Dに向けて延びるように、操舵駆動部75で各支持軸72を回転させる。そして、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々を、中心Dから見たときの進行方向が同一となるように回転させることで、走行体1Eを超信地回転させることができる。
【0056】
ここで、走行体1Eを効率良く超信地回転させるには、中心Dを中心とした、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々におけるモーメントが等しくなるようにするのが好ましい。
これには、右前輪11Rと中心Dとの距離をL1、左前輪11Lと中心Dとの距離をL2、右後輪13Rと中心Dとの距離をL3、及び左後輪13Lと中心Dとの距離をL4とし、右前輪11Rで発生させる駆動力(トルク)をF1、左前輪11Lで発生させる駆動力をF2、右後輪13Rで発生させる駆動力をF3、及び左後輪13Lで発生させる駆動力をF4とした場合、各車輪で発生するモーメントが等しくなるよう、
F1×L1=F2×L2=F3×L3=F4×L4
という関係が成り立つように、各モータ14R、14L、16R、16Lのトルクを制御するのが好ましい。これにより、走行体1Eは、中心D回りに、回転ブレを抑えながら効率良く超信地回転を行うことができる。
【0057】
図14、
図15を用いた上記の説明においては、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々の進行方向を調整することで、走行体1Eを超信地回転させることに関して説明した。ここで、走行体1Eを右に向けて、あるいは左に向けて進路を変更するように旋回させる場合や、走行体1Eを信地回転させる場合においても、各車輪11R、11L、13R、13Lの進行方向が、当該車輪11R、11L、13R、13Lが進む軌跡に沿った方向に向くように、操舵駆動部75が支持軸72を調整することで、進路変更や信地回転を効率よく行えるようにできることは、言うまでもない。
【0058】
上述したような走行体1Eによれば、右側の前輪11(右前輪11R)と左側の前輪11(左前輪11L)、及び右側の後輪13(右後輪13R)と左側の後輪13(左後輪13L)は、各々の進行方向が任意に変更可能に設けられている。
上記のような構成によれば、左右の前輪11と左右の後輪13が、それぞれ、進行方向を任意に変更することができるため、走行体1Eを旋回、信地回転、超信地回転させるに際し、各車輪11R、11L、13R、13Lが進む軌跡に沿った方向に向くように、各車輪11R、11L、13R、13Lの進行方向を変更することが可能である。したがって、旋回性能を、更に向上させることができる。
【0059】
なお、本変形例で示した構成は、上記実施形態の第1変形例、第2変形例と組み合わせることもできる。このようにした場合においては、悪路における踏破性能を、更に高めると同時に、旋回性能をも、更に向上させることができる。
【0060】
なお、上記実施形態の第3変形例、及び第4変形例では、
図11、
図12、
図14、
図15に示すような、超信地回転、信地回転を行う場合、中輪12を路面Fから持ち上げるようにしたが、これに限られない。超信地回転、信地回転を行う場合、中輪12は、超信地回転、信地回転の旋回中心位置に近い。このような場合、超信地回転、信地回転の旋回力を高めるため、左右の中輪12を接地させ、中輪12にも回転力を付与するようにしてもよい。
【0061】
(実施形態の第5変形例)
図16は、上記実施形態の第5変形例に係る走行体の平面図である。
図16に示すように、走行体1Fは、前輪11、中輪12、及び後輪13と、本体部30と、結合腕20と、を備えている。本体部30は、上記実施形態と同様、筐体部31と、車体軸32と、後輪連結機構33と、を備えている。
【0062】
本変形例において、前輪11(右前輪11R、左前輪11L)は、上記第4変形例と同様、車輪操舵機構70Fを介して結合腕20(右側結合腕20R、左側結合腕20L)に、その回転軸が上下方向に延在する軸Cv3回りに回動自在となるように接続されている。後輪13(右後輪13R、右後輪13R)は、車輪操舵機構70Bを介して後輪連結機構33に、その回転軸が上下方向に延在する軸Cv4回りに回動自在となるように接続されている。
【0063】
このような車輪操舵機構70F、70Bでは、操舵駆動部75により、支持軸72(
図13参照)を軸Cv3、Cv4回りに回転させることにより、右前輪11Rと左前輪11L、及び右後輪13Rと左後輪13Lの各々の進行方向を、個別に、かつ任意に、変更することが可能である。
【0064】
本変形例においては、後輪連結機構33が、第3変形例及び第4変形例として説明したような、車体軸32に対して回転可能として設けられた構造を、有していない場合であっても、走行体1Fを超信地回転させることができる。
これには、例えば右前輪11Rと左後輪13Lを、平面視したときに反時計回りに、操舵駆動部75(
図13参照)で各支持軸72を回転させ、かつ左前輪11Lと右後輪13Rを、平面視したときに時計回りに、操舵駆動部75(
図13参照)で各支持軸72を回転させて、
図16に示されるように、右前輪11R、左前輪11L、右後輪13R、及び左後輪13Lの各々の回転軸が延在する方向が、中心Dに向けて延びるようにする。
この状態で、走行体1Fを、例えば、平面視したときに中心D回りに反時計方向に旋回させる場合、右前輪11R、右中輪12R、右後輪13Rを前進回転させ、右前輪11R、左中輪12L、左後輪13Lを後進回転させる。このようにして、走行体1Fは、中心D回りに超信地回転を行うことができる。
この場合には、超信地回転の中心Dを、右中輪12Rと左中輪12Lの中間の位置となるようにすることにより、右中輪12Rと左中輪12Lの進行方向を変更できない構成であっても、右中輪12Rと左中輪12Lの駆動力を、超信地回転に有効に利用することが可能となる。
【0065】
なお、本変形例で示した構成は、上記実施形態の第1変形例、第2変形例と組み合わせることもできる。
【0066】
(実施形態の第6変形例)
図17は、上記実施形態の第6変形例に係る走行体の平面図である。
図17に示すように、走行体1Gは、前輪11、中輪12、及び後輪13と、本体部30と、結合腕20と、を備えている。本体部30は、上記実施形態と同様、筐体部31と、車体軸32と、後輪連結機構33と、を備えている。
本変形例において、上記第4変形例と同様、後輪13(右後輪13R、右後輪13R)は、車輪操舵機構70Bを介して後輪連結機構33に、その回転軸が上下方向に延在する軸Cv4回りとなるように回動自在に接続されている。
【0067】
本変形例においては、後輪連結機構33が、第3変形例及び第4変形例として説明したような、車体軸32に対して回転可能として設けられた構造を、有していない場合であっても、走行体1Gを超信地回転させることができる。
これにはまず、車輪操舵機構70Bが、操舵駆動部75(
図13参照)からの駆動力の伝達を解除して、右後輪13R、及び左後輪13Lが、路面Fとの摩擦により、軸Cv4回りに自由に回転可能な状態とする。
次に、コントローラ(図示なし)によって駆動軸25を中心軸Cd回りに回転駆動し、結合腕20を揺動させることによって、中輪12を接地させた状態で、前輪11を上昇させて路面Fから持ち上げる。
そして、右中輪12Rと左中輪12Lとを互いに異なる方向に回転駆動させる。すると、走行体1Gが、右中輪12Rと左中輪12Lとの中心位置を中心Dとして旋回しようとする。このとき、右後輪13R、及び左後輪13Lが、走行体1Gの後側を支持しつつ、路面Fとの摩擦により、走行体1Gの旋回に伴って、支持軸72とともに軸Cv4回りに回転する。このようにして、走行体1Gは、超信地回転を行うことができる。
【0068】
なお、本変形例で示した構成は、上記実施形態の第1変形例、第2変形例と組み合わせることもできる。
【0069】
(実施形態の第7変形例)
図18は、上記実施形態の第7変形例に係る走行体の平面図である。
図19は、上記実施形態の第7変形例に係る走行体の側面図である。
図18、
図19に示すように、走行体1Hは、前輪11、中輪12、及び後輪13と、本体部30と、結合腕20と、を備えている。本体部30は、筐体部31と、車体軸32と、後輪連結機構33と、後部補助輪80と、を備えている。
【0070】
後部補助輪80は、右後輪13Rと右後輪13Rとの間に設けられている。後部補助輪80の上端は、例えば、車体軸32の後端部に固定されている。後部補助輪80は、上下方向に伸縮駆動される直動式アクチュエータ81と、直動式アクチュエータ81の下端に回転自在に支持された補助輪82と、を備えている。補助輪82は、前後方向に延びる回転軸周りに回転自在に設けられている。これにより、補助輪82は、進行方向が横方向となるように設けられている。後部補助輪80は、通常時、直動式アクチュエータ81を縮めた状態としておき、補助輪82を路面Fから離間させて上方に持ち上げておく。
【0071】
本変形例においては、後輪連結機構33が、第3変形例及び第4変形例として説明したような、車体軸32に対して回転可能として設けられた構造を、有していない場合であっても、走行体1Hを超信地回転させることができる。
これにはまず、コントローラ(図示なし)によって駆動軸25を中心軸Cd回りに回転駆動し、結合腕20を揺動させることによって、中輪12を接地させた状態で、前輪11を上昇させて路面Fから持ち上げる。そして、後部補助輪80の直動式アクチュエータ81を伸ばし、補助輪82を路面Fに接地させ、後輪13(右後輪13R、及び左後輪13L)を上昇させて路面Fから離間させる。これにより、走行体1Hは、右中輪12Rと、左中輪12Lと、補助輪82とが、路面Fに接地した状態となる。
この状態で、右中輪12Rと、左中輪12Lとを互いに異なる方向に回転駆動させる。すると、走行体1Hが、右中輪12Rと左中輪12Lとの中心位置を中心Dとして旋回しようとする。このとき、補助輪82が、走行体1Hの後側を支持しつつ、路面Fとの摩擦により回転する。このようにして、走行体1Hは、超信地回転を行うことができる。
【0072】
なお、本変形例で示した構成は、上記実施形態の第1変形例、第2変形例と組み合わせることもできる。
【0073】
(実施形態の第8変形例)
図8を用いて説明した、上記の第2変形例においては、後側車体軸52が、前側車体軸51に対し、回転継手53等を介して、車体軸32Cの前後方向に沿う軸線Ca方向を中心として軸線Ca方向回りに回転可能に連結されている構成を説明した。これに替えて、前側車体軸51と後側車体軸52とが、自在継手(ユニバーサルジョイント)により連結される構成としてもよい。
この場合には、前側車体軸51が筐体部31に、互いに回転不能に、剛に接合されて、前側車体軸51を含めた全体が筐体部となり、車体軸としての後側車体軸52の先端に、前側車体軸51を含む筐体部が、車体軸(後側車体軸)との接続部である自在継手を中心として、左右を含む各方向に回転可能に設けられた構成となる。
このような構成においても、上記実施形態で説明したような効果の各々を奏することは、言うまでもない。
【0074】
(その他の変形例)
また、上記実施形態、及び各変形では、走行体の各部構成について説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、筐体部31は、平面視矩形に限らず、後方から前方に向かって左右方向の幅寸法が漸次縮小し、前端部に連結軸35が配置されるような、平面視台形状等、適宜その形状を変更可能である。
また、上記実施形態及び各変形例においては、走行体は、左右に一対の前輪、中輪、及び後輪を備えた構成を有していたが、走行体は、これに加えて他に車輪を備えていてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0075】
1A~1H 走行体 33、33B、33D 後輪連結機構
11 前輪 35 連結軸(筐体部と車体軸の接続部)
11L 左前輪(左側の前輪) 40L 左前側軸
11R 右前輪(右側の前輪) 40R 右前側軸
12 中輪 40s 軸(連結部)
12L 左中輪(左側の中輪) 41 後側筐体部
12R 右中輪(右側の中輪) 42L 左後側軸
13 後輪 42R 右後側軸
13L 左後輪(左側の後輪) 42s 軸(連結部)
13R 右後輪(右側の後輪) 45F、45B サスペンション
20 結合腕 51 前側車体軸
20L 左側結合腕 52 後側車体軸(車体軸)
20R 右側結合腕 61 連結軸(後輪連結機構と車体軸の接続部)
21c 中間部 74 回転軸
31、31B 筐体部 Ca 軸線
32、32B、32C 車体軸