(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133747
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】建築部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
E04C 2/04 20060101AFI20240926BHJP
E04C 2/28 20060101ALI20240926BHJP
E04C 2/288 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
E04C2/04 E
E04C2/28
E04C2/288
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043692
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 太嘉志
(72)【発明者】
【氏名】青木 透
【テーマコード(参考)】
2E162
【Fターム(参考)】
2E162BA02
2E162BA04
2E162BB08
2E162CA01
2E162DA01
2E162FA01
2E162FB00
2E162FB01
(57)【要約】
【課題】電気設備等を設置する際の作業をより容易かつ確実に行わせることができる建築部材を得る。
【解決手段】
図2(a)に示されるように、表面に導線部収容用凹部11Aが形成された基部111が、先端からモルタルを射出するノズル100Aを用いてモルタルの造形を行う3Dプリンタを用いて造形される(基部造形工程)。その後、
図2(b)に示されるように、前記のモルタルの代わりに金属で造形を行う3Dプリンタにおけるノズル100Bを用い、導線部収容用凹部11Aのある箇所に導線部(配線部)12が形成される(配線部配置工程)。次に、
図2(c)に示されるように、
図2(b)の構造の上にモルタル用のノズル100Aを用いてカバー部112を造形することによって、建築部材10が得られる(カバー部造形工程)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の一部において一方の側から他方の側に向けた電気的接続を行う配線部が設けられた部分となる建築部材の製造方法であって、
前記建築部材は、絶縁性の材料である主材料で構成された基部と、前記配線部とが組み合わされて構成され、
前記配線部が収容される凹部を具備する前記基部を3Dプリンタを用いて造形する基部造形工程と、
前記凹部に前記配線部を配置する配線部配置工程と、
を具備することを特徴とする建築部材の製造方法。
【請求項2】
前記配線部は金属で構成された線状の導体部であり、
前記配線部配置工程において、前記導体部は、前記凹部において3Dプリンタを用いて造形されて形成され、
前記導体部が形成された前記基部の上に、前記主材料で構成されたカバー部を3Dプリンタを用いて造形するカバー部造形工程を具備することを特徴とする請求項1に記載の建築部材の製造方法。
【請求項3】
前記配線部は、導体である芯線が絶縁性の被覆層で覆われた電線ケーブルであり、
前記配線部配置工程において、前記凹部に前記電線ケーブルが載置され、
前記電線ケーブルが配置された前記基部の上に、前記主材料で構成されたカバー部を3Dプリンタを用いて造形するカバー部造形工程を具備することを特徴とする請求項1に記載の建築部材の製造方法。
【請求項4】
前記配線部は、導体である芯線が絶縁性の被覆層で覆われた電線ケーブルが箱状の筐体の内部に複数設けられた配線ケースであり、
前記配線部配置工程において、前記凹部に前記配線ケースが嵌合されて設置されることを特徴とする請求項1に記載の建築部材の製造方法。
【請求項5】
前記配線ケースの内部において、前記電線ケーブルは、複数の前記電線ケーブルが束ねられた構成が前記電線ケーブルの延伸方向からみた外側で外側被覆層によって覆われたケーブルアッシーの形態とされて設けられたことを特徴とする請求項4に記載の建築部材の製造方法。
【請求項6】
建築物の一部において一方の側と他方の側を接続する配管が設けられた部分となる建築部材の製造方法であって、
前記建築部材は、主材料で構成された基部と、前記配管とが組み合わされて構成され、
前記配管が収容される凹部を具備する前記基部を3Dプリンタを用いて造形する基部造形工程と、
前記基部の上に前記配管を配置する配管配置工程と、
を具備することを特徴とする建築部材の製造方法。
【請求項7】
前記主材料はモルタルであることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の建築部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の一部となる建築部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CADデータに基づいて樹脂材料等で構成された所望の形状の構造物を製造する3Dプリンタが普及しつつある。この場合にはこの構造物を製造するための切削加工等が不要となるため、3Dプリンタは様々な分野の構造物を製造するために用いられている。例えば、特許文献1には、建築物の一部(建築部材)を3Dプリンタを用いて製造することが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の建築部材は、電気設備を収容する電気室建屋の一部である。ここでは、特に電気設備を収容する部分が設けられたポーラスコンクリート製の建築部材が、3Dプリンタで製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術における建築部材においては、各種の電気設備(電気設備に接続される電線ケーブル、配管等を含む)が設置される空間が設けられた。しかしながら、実際には、この空間内における電線ケーブル等の設置は、電気設備を設置する際の工事作業者の実作業によって行われ、例えば、電線ケーブル等の長さやレイアウトはこの工事作業者の裁量に委ねられるため、適切とはならない場合もあった。あるいは、このために工事作業者の負担が大きくなった。
【0006】
このため、電気設備等を設置する際の作業をより容易かつ確実に行わせることができる建築部材が求められた。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みなされたもので、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、建築物の一部において一方の側から他方の側に向けた電気的接続を行う配線部が設けられた部分となる建築部材の製造方法であって、前記建築部材は、絶縁性の材料である主材料で構成された基部と、前記配線部とが組み合わされて構成され、前記配線部が収容される凹部を具備する前記基部を3Dプリンタを用いて造形する基部造形工程と、前記凹部に前記配線部を配置する配線部配置工程と、を具備する。
前記配線部は金属で構成された線状の導体部であり、前記配線部配置工程において、前記導体部は、前記凹部において3Dプリンタを用いて造形されて形成され、前記導体部が形成された前記基部の上に、前記主材料で構成されたカバー部を3Dプリンタを用いて造形するカバー部造形工程を具備してもよい。
前記配線部は、導体である芯線が絶縁性の被覆層で覆われた電線ケーブルであり、前記配線部配置工程において、前記凹部に前記電線ケーブルが載置され、前記電線ケーブルが配置された前記基部の上に、前記主材料で構成されたカバー部を3Dプリンタを用いて造形するカバー部造形工程を具備してもよい。
前記配線部は、導体である芯線が絶縁性の被覆層で覆われた電線ケーブルが箱状の筐体の内部に複数設けられた配線ケースであり、前記配線部配置工程において、前記凹部に前記配線ケースが嵌合されて設置されてもよい。
前記配線ケースの内部において、前記電線ケーブルは、複数の前記電線ケーブルが束ねられた構成が前記電線ケーブルの延伸方向からみた外側で外側被覆層によって覆われたケーブルアッシーの形態とされて設けられてもよい。
本発明は、建築物の一部において一方の側と他方の側を接続する配管が設けられた部分となる建築部材の製造方法であって、前記建築部材は、主材料で構成された基部と、前記配管とが組み合わされて構成され、前記配管が収容される凹部を具備する前記基部を3Dプリンタを用いて造形する基部造形工程と、前記基部の上に前記配管を配置する配管配置工程と、を具備する。
前記主材料はモルタルであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のように構成されているので、電気設備等を設置する際の作業をより容易かつ確実に行わせることができる建築部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係る建築部材の斜視図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る建築部材の製造工程を示す斜視図である。
【
図3】第1の実施の形態に係る建築部材の製造工程を示す断面図である。
【
図4】第2の実施の形態に係る建築部材の構造を示す斜視図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る建築部材の製造工程を示す断面図である。
【
図6】第3の実施の形態に係る建築部材の斜視図である。
【
図7】第3の実施の形態に係る建築部材における各部品の構造を示す図である。
【
図8】第3の実施の形態に係る建築部材において用いられるケーブルアッシーの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態に係る製造方法によって製造される建築部材は、建築物の一部を構成する部材であり、電気設備等が設けられた領域に隣接して設けられる。この場合、この電気設備等と接続される電線ケーブルや配管等がこの建築部材を経由し、このための構造がこの建築部材に設けられる。
【0012】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る建築部材10の構造を示す斜視図であり、
図2(a)~(c)は、その製造工程を示す斜視図、
図3(a)~(c)はその断面図である。この建築部材10は、この建築部材10の主材料となる絶縁性のモルタルで構成された部材主体11中に複数の金属製の導線部12が埋め込まれて構成される。部材主体11は、基部111とカバー部112が組み合わせて構成される。基部111、カバー部112、導線部12は、いずれも所望の形状で3Dプリンタを用いて形成される。ここでは、この建築部材10は平板形状とされるが、実際には、建物の形状に応じた任意の形状(例えば曲面形状等)とすることができる。
【0013】
この製造方法においては、まず、
図2(a)、
図3(a)に示されるように、表面に導線部収容用凹部(凹部)11Aが形成された基部111が、先端からモルタルを射出するノズル100Aを用いてモルタルの造形を行う3Dプリンタを用いて造形される(基部造形工程)。
【0014】
その後、
図2(b)、
図3(b)に示されるように、前記のモルタルの代わりに金属で造形を行う3Dプリンタにおけるノズル100Bを用い、導線部収容用凹部11Aのある箇所に導線部(配線部)12が形成される(配線部配置工程)。なお、前記のノズル100Aはモルタルを射出するのに対して、ノズル100Bとして、金属を射出するのではなく金属粉末を溶融させることによって導線部12を形成する形式のものを用いることができる。
【0015】
次に、
図2(c)、
図3(c)に示されるように、
図2(a)、
図3(a)において基部11Aを形成したのと同様に、
図2(b)、
図3(b)の構造の上にモルタル用のノズル100Aを用いてカバー部112を造形することによって、
図1の建築部材10が得られる(カバー部造形工程)。
図1の構造においては、導線部12の末端は建築部材10の端面と一致しているが、導線部12をこの端面から突出するように形成することもできる。
【0016】
ここでは、部材主体11を構成する主材料が、建築物を構成する材料として好ましくかつ絶縁性であるモルタルで構成されるものとしたが、例えば(https://news.sharelab.jp/cases/construction/taiseikennsetsu-decarbonization-concrete-230117/)、(https://gaihekitosou-hotline.com/mortar-concrete/)等に記載されるように、この主材料を、これが用いられる建築物の構成に応じて、同様の機械的強度があり絶縁性である他の材料、例えばコンクリート、樹脂材料等とすることもできる。この場合には、この材料に応じた3Dプリンタを用いて同様の製造方法が適用できる。
【0017】
また、
図1~3の構成では、水平方向において導線部12が一列に配列され、この配列の上下にモルタル層である基部111、カバー部112がそれぞれ形成された。しかしながら、このような導線部12の配列を上下方向で複数段設け、これらの配列の間に同様のモルタル層を同様に形成することもできる。この場合、
図1の構造を更に多層構造とした建築部材を、
図2、
図3に記載の製造工程を繰り返すことによって、同様に製造することができる。これによって、より多くの導線部12を内部に設けた建築部材を得ることができる。
【0018】
このような建築部材10は、建築物における、例えば屋内配線と屋外配線とを接続する部分として用いることができる。このため、
図1に示されるように、この建築部材10における導線部12の一方の端部側に屋外側の配線C1を、他方の端部側に屋内側の配線C2をそれぞれ接続すれば、建物の内外での電気的接続を容易にとることができる。この電気的接続をこの建築部材10のみでとることができるため、配線の工事、特に屋内側における配線の工事が容易となり、この電気的接続の際における屋内の気密性も得ることができる。
【0019】
また、一般的な配線(電線ケーブル)は、銅等で構成された導線が塩化ビニール等で構成された被覆層(絶縁層)で被覆されて構成されているが、この建築部材10においては、導線部12が絶縁性のモルタルで被覆されるため、このような被覆層は不要であり、建築部材10における全てを前記のように3Dプリンタを用いて製造することができる。この場合、後でこの建築物を処分する際の廃棄の際の塩化ビニール等の処理も不要となる。
【0020】
前記のように、建築部材10の形状は、建物の形状やこの建築部材10が建物において用いられる場所等に応じて、任意とすることができる。このため、この建築部材10が用いられる態様として、同一の形状のものを多数生産して用いる場合よりも、場合に応じて様々な形状のものを用いる場合に、特に適している。このような場合には、特にその製造に3Dプリンタを用いることによって、これを短い工期で製造することができる。
【0021】
更に、
図1の例では、屋内と屋外とを電気的に接続する導線部(配線部)12が用いられたが、電気的接続ではなく液体や気体が通過する流路となる配管を導線部12の代わりに形成することもできる。導線部12を形成するためには
図2(b)、
図3(b)に示されたようにノズル100Bを用いて一つの工程で行うことができるが、例えば中空の配管を形成する場合には、この工程を複数回に分けて行うことによって、配管を形成することもできる。すなわち、この場合には、前記の配線部配置工程の代わりに、この配管を設置する配管配置工程を設けることによって、この建築部材を同様に製造することができる。この場合、配管の種類に応じ、部材主体11を構成する主材料が絶縁性である必要はない。
【0022】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態に係る建築部材20の構造を示す斜視図であり、
図5(a)~(c)は、その製造工程を示す断面図である。この建築部材20においても、モルタルで構成された部材主体21が設けられ、部材主体21は基部211とカバー部212が組み合わせて構成される。ただし、ここでは導線部12は用いられず、代わりに電線ケーブル(配線部)80が設けられる。
図4においては、カバー部212が形成された状態(a)、カバー部212が形成される前の状態(b)における斜視図が示されている。
図4(b)に示されるように、電線ケーブル80は、例えば銅線の撚線で構成された芯線81と、これを被覆する塩化ビニール等で構成された被覆層82で構成され、可撓性とされる。電線ケーブル80としては、広く流通しているものを用いることができる。
【0023】
この製造方法においては、まず、
図5(a)に示されるように、表面に電線ケーブル収容用凹部21Aが形成された基部211が、先端からモルタルを射出するノズル100A(モルタル用の3Dプリンタ)を用いて造形される(基部造形工程)。この工程は前記の
図2(a)、
図3(a)と同様であり、電線ケーブル収容用凹部(凹部)21Aが基部211の表面に形成される。
【0024】
その後、
図5(b)に示されるように、電線ケーブル収容用凹部21Aに電線ケーブル80が載置される(配線部配置工程)。
図4(b)の形態はこの状態の斜視図に対応する。その後に、
図5(c)に示されるように、
図2(c)、
図3(c)と同様にノズル100Aを用いてカバー部212を形成する(カバー部造形工程)ことによって、
図4(a)の建築部材20が得られる。この場合、電線ケーブル80における芯線81の末端は建築部材20の端面から突出し、この部分での被覆層82は除去される。電線ケーブル80(芯線81)がこのように突出した部分を前記の導線部12と同様に用いて、この建築部材20を同様に電気的接続に用いることができる。
【0025】
この場合においては、ノズル100B(金属用の3Dプリンタ)は用いられず、代わりに、一般的に用いられる電線ケーブル80が用いられる。このため、この建築部材20の製造自身は前記の建築部材10よりも容易となり、建築部材20をより安価に製造することができる。また、前記の建築部材10内においては、建築部材10内で隣接する導線部12間の絶縁はモルタルによって確保されるのに対し、この建築部材20内においては、隣接する電線ケーブル20間の絶縁は電線ケーブル80自身の被覆層82によって確保される。このため、この建築部材20における電線ケーブル80間(あるいは芯線81間)の間隔は、前記の建築部材10における導線部12間の間隔よりも狭くすることができる。このため、単一の建築部材20内において多くの配線部を設けることができる。なお、前記の建築部材10の場合と同様に、電線ケーブル80の配列を上下方向で複数設けることもできる。
【0026】
また、前記の建築部材10の場合と同様に、電線ケーブル80の代わりに各種の配管を用いた建築部材を同様に製造することもできる。また、特にこの構造においては、3Dプリンタで造形を行うことが困難である配管を用いることができ、光を伝搬する光ファイバを用いることもできる。この場合、部材主体21を構成する主材料が絶縁性である必要はない。
【0027】
(第3の実施の形態)
図6は、第3の実施の形態に係る建築部材30の構造を示す透視斜視図であり、
図7は、これを構成する各部品の構成を示す図である。ここでは、電気的接続のための配線部として、内部に前記と同様の電線ケーブル80が多数設けられた配線ケース33が用いられる。この際、電線ケーブル80は、ケーブルアッシー90の形態として用いられる。
図7(a)は、前記の基部111、211に対応する基部311の斜視図、
図7(b)は配線ケース33の斜視図、
図7(c)は、ケーブルアッシー90が内部に設けられた配線ケース33の透視斜視図、をそれぞれ示す。なお、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)の縮尺は異なる。
【0028】
図8は、このケーブルアッシー90の形態を示す斜視図(a)、その延伸方向に垂直な断面図(b)である。ここでは、前記の電線ケーブル80が8本束ねられ、その外側が、前記の被覆層82と同様の材料でより厚く構成された外側被覆層91で被覆される。この構造においては、個々の電線ケーブル80(芯線81)間の絶縁は被覆層82によって確保され、外側被覆層91は電線ケーブル80全体の機械的保護のために設けられる。
【0029】
この建築部材30においては、
図7(b)に示されたように紙面手前側と奥側の両側が開口した箱状の配線ケース33中に、
図7(c)に示されたようにこのケーブルアッシー90が配置される。ここで、配線ケース33は、下側でケーブルアッシー90を収容し上側が開口した箱状のケース本体331と、この上側の開口を塞ぐ蓋部332で構成される。このような配線ケース33も例えば金属用の3Dプリンタを用いて造形することができるが、板金加工によってこの配線ケース33を製造することもできる。蓋部332のケース本体331の開口への装着は、ビス等(固定具)を用いる、これらが嵌合するための嵌合用構造を適宜設ける、等の手法によって行わせることができる。
【0030】
図7(a)に示されるように、基部311中には、配線ケース33全体が嵌合する配線ケース用凹部(凹部)31Aが形成される。この基部311は、前記と同様に、モルタル用の3Dプリンタを用いて造形することができる(基部造形工程)。その後、
図7(c)の形態とされた配線ケース33をこの配線ケース用凹部31Aに嵌合させて固定する(配線部配置工程)ことによって、
図6の建築部材30が製造される。この際、略矩形形状の蓋部332の4つの頂点付近において外側に突出するケース固定部332Aを設け、ケース固定部332Aにビス穴を形成し、このビス穴にビス等(固定具)を設置して蓋部332(配線ケース)を基部31Aに固定することができる。
【0031】
この際、基部311の上面側における配線ケース用凹部31Aの周囲には、配線ケース33を装着する際に例えばケース固定部332Aが嵌合するような溝を適宜形成することができ、これによって、配線ケース33を固定した状態におけるこの建築部材30の上面側を平坦にすることができる。
【0032】
なお、配線ケース33が基部31Aに対して固定された後で、前記の建築部材10、20と同様に、蓋部332を含む基部311の上面側全体を覆うカバー部を同様に形成してもよい(カバー部造形工程)。
【0033】
この構造においては、配線ケース33内のケーブルアッシー90の形態は任意であり、特に、多くの電線ケーブル80を用いることができる。このため、この建築部材30を介した配線の本数を特に多くすることができる。
【0034】
また、この場合においても、例えば、
図8における電線ケーブル80、あるいは
図6におけるケーブルアッシー90の代わりに光ファイバや配管を用いることができる。このため、この建築部材30においては、使用される配線部の形態の自由度が高くなる。
【0035】
なお、前記の建築部材20(
図4、
図5)において、電線ケーブル80の代わりに
図8のケーブルアッシー90を用いてもよい。この場合には、配線ケースを用いずに、多くの電線ケーブル80を収容することができる。
【0036】
上記の第1~第3の実施の形態に係る建築部材は、この建築部材が用いられる態様やこれによって接続される配線や配管等に応じて適宜選択される。この際、これらの構造を適宜組み合わせることができ、この場合においても上記の製造方法を適用することができる。
【0037】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0038】
10、20、30 建築部材
11、21 部材主体
11A 導線部収容用凹部(凹部)
12 導線部(配線部)
21A 電線ケーブル収容用凹部(凹部)
31A 配線ケース用凹部(凹部)
33 配線ケース(配線部)
80 電線ケーブル(配線部)
81 芯線
82 被覆層
90 ケーブルアッシー
91 外側被覆層
100A、100B ノズル
111、211、311 基部
112、212 カバー部
331 ケース本体
332 蓋部
332A ケース固定部
C1、C2 配線