(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133769
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/16 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
E04B1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043732
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大川 悠奈
(72)【発明者】
【氏名】古賀 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】辻 芳人
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 浩也
(72)【発明者】
【氏名】渕田 安浩
(57)【要約】
【課題】鉄筋の納まりの検討やセメント組成物の養生後における型枠の解体・撤去が不要な構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】構造物の構築方法は、繊維系材料を含む型枠ピース15を製作する型枠ピース製作ステップと、型枠ピース15を施工現場で接合して柱や梁などの構造材用型枠16を形成する構造材用型枠形成ステップと、構造材用型枠16の内側にセメント組成物17を打設するセメント組成物打設ステップと、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維系材料を含む型枠ピースを製作する型枠ピース製作ステップと、
前記型枠ピースを接合して構造材用型枠を形成する構造材用型枠形成ステップと、
前記構造材用型枠の内側にセメント組成物を打設するセメント組成物打設ステップと、を有する
構造物の構築方法。
【請求項2】
前記構造材用型枠は、筒状型枠である
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項3】
前記構造材用型枠は、上部が開放された凹型型枠、又は、一対の側型枠である
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項4】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの接合側小口に形成された小口凹凸部を嵌合させる小口嵌合接合である
請求項1~3のいずれか一項に記載の構造物の構築方法。
【請求項5】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの接合側対向面を重ね合わせて嵌合させる重合式嵌合接合である
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項6】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの内側における内側接合である
請求項1または3に記載の構造物の構築方法。
【請求項7】
前記内側接合は、前記型枠ピースの小口面を当接させるとともに、前記小口面を跨ぐように前記型枠ピースの内側面に一体成形された内側突き出し嵌合部を嵌合させる内側嵌合接合である
請求項6に記載の構造物の構築方法。
【請求項8】
前記内側接合は、前記型枠ピースの小口面を跨ぐように前記型枠ピースの内側に設置される鎹材で接合される内側かすがい接合である
請求項6に記載の構造物の構築方法。
【請求項9】
前記内側接合は、前記型枠ピースの小口面を跨ぐように前記型枠ピースの内側にボルト接合された板材で接合される内側ボルト接合である
請求項6に記載の構造物の構築方法。
【請求項10】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの接合側端部に一体成形された鉤型嵌合部を嵌合させる鉤型嵌合接合である
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項11】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースの内側面に、前記構造物に働く力に対抗する応力材を一体成形する
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項12】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースの内側面に、前記セメント組成物に付着係合する付着係合材を一体成形する
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項13】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースにメッシュ部分を形成する
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項14】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースに中空部を形成する
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【請求項15】
前記型枠ピースが折り畳み可能に形成されている
請求項1に記載の構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の躯体となる構造物の構築方法として、コンクリートなどのセメント組成物を用いた方法が知られている。こうした構造物の構築方法として、例えば特許文献1には、構造物の形状に応じて型枠を設置するとともに型枠の内側に鉄筋などの配設したのち、型枠の内側にセメント組成物を打設する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、鉄筋の納まりを検討する必要やセメント組成物の養生後に型枠を解体・撤去する必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する構造物の構築方法は、繊維系材料を含む型枠ピースを製作する型枠ピース製作ステップと、前記型枠ピースを接合して構造材用型枠を形成する構造材用型枠形成ステップと、前記構造材用型枠の内側にセメント組成物を打設するセメント組成物打設ステップと、を有する。これにより、型枠を解体・撤去する必要がなくなる。また、構造材に働く力に型枠ピースが対抗できるため、鉄筋の納まりを検討する必要がなくなる。
【0006】
上記構成においては、型枠ピースを接合することにより、構造材用型枠として、筒状型枠を形成することができる。
上記構成においては、型枠ピースを接合することにより、構造材用型枠として、上部が開放された凹型型枠、又は、一対の側型枠を形成することができる。
【0007】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの接合側小口に形成された小口凹凸部を嵌合させる小口嵌合接合であってもよい。これにより、一方の型枠ピースに対して他方の型枠ピースをスライドさせて小口凹凸部を嵌合させることにより構造材用型枠を形成することができる。
【0008】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの接合側対向面を重ね合わせて嵌合させる重合式嵌合接合であってもよい。これにより、接合側対向面が重なり合う部分において構造材用型枠の強度を高めることができる。
【0009】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの内側における内側接合であることが好ましい。これにより、型枠ピースの内側に接合部が配設されるため、構造物の見栄えをよくすることができる。また、セメント組成物による接合部の拘束効果も得られる。
【0010】
前記内側接合は、前記型枠ピースの小口面を当接させるとともに、前記小口面を跨ぐように前記型枠ピースの内側面に一体成形された内側突き出し嵌合部を嵌合させる内側嵌合接合であってもよい。小口面を跨ぐようにして内側突き出し嵌合部が嵌合することにより、型枠ピースの境界部分における強度を高めることができる。
【0011】
前記内側接合は、前記型枠ピースの小口面を跨ぐように前記型枠ピースの内側に設置される鎹材で接合される内側かすがい接合であってもよい。小口面を跨ぐように鎹材が配設されることにより、型枠ピースの境界部分における強度を高めることができる。
【0012】
前記内側接合は、前記型枠ピースの小口面を跨ぐように前記型枠ピースの内側にボルト接合された板材で接合される内側ボルト接合であってもよい。小口面を跨ぐように板材が配設されることにより、型枠ピースの境界部分における強度を高めることができる。また、設置位置までの型枠ピースの移動経路についての自由度を高くすることができる。
【0013】
前記構造材用型枠形成ステップにおける前記型枠ピースの接合は、前記型枠ピースの接合側端部に一体成形された鉤型嵌合部を嵌合させる鉤型嵌合接合であってもよい。これにより、接合された型枠ピースが外れにくくなる。
【0014】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースの内側面に、前記構造物に働く力に対抗する応力材を一体成形してもよい。これにより、型枠ピースの強度、ひいては構造材用型枠の強度を高めることができる。
【0015】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースの内側面に、前記セメント組成物に付着係合する付着係合材を一体成形してもよい、これにより、構造材用型枠とセメント組成物との付着力を高めることができる。
【0016】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースにメッシュ部分を形成してもよい。これにより、型枠ピースの軽量化を図りつつ、構造材用型枠とセメント組成物との付着力を高めることができる。
【0017】
前記型枠ピース製作ステップにおいて、前記型枠ピースに中空部を形成してもよい。これにより、型枠ピース、ひいては構造材用型枠の強度を高めることができる。
前記型枠ピースが折り畳み可能に形成されていてもよい。これにより、運搬時などに型枠ピースをコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】構造物の構築方法の一実施形態によって構築された構造物の一部を模式的に示す斜視図である。
【
図5】型枠ピースの内側面の拡大図であって、(a)矩形突起で構成された付着係合材を示す図であり、(b)突条で構成された付着係合材を示す図であり、(c)円形突起で構成された付着係合材を示す図である。
【
図6】折り畳み可能な型枠ピースの一例を模式的に示す図である。
【
図7】中空部を有する型枠ピースの一例を模式的に示す図である。
【
図8】メッシュ部分を有する型枠ピースの一例を模式的に示す図である。
【
図9】熱プレス接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図10】小口嵌合接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図11】重合式嵌合接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図12】突き出し嵌合接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図13】かすがい接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図14】ボルト接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図15】鉤型嵌合接合の一例の概要を模式的に示す図である。
【
図16】第1柱用型枠ピースに上方から第2柱用型枠ピースを接合する様子を模式的に示す図である。
【
図17】凹型の第1梁用型枠ピースに上方から凹型の第2梁用型枠ピースを接合する様子を模式的に示す図である。
【
図18】凹型の第1梁用型枠ピースに側方から凹型の第2梁用型枠ピースを接合する様子を模式的に示す図である。
【
図19】上面部が開口した凹側の型枠ピースに対して、開口部を閉塞する板状の型枠ピースを接合する様子を模式的に示す図である。
【
図20】型枠ピースの製作方法の一例を説明するための図である。
【
図21】型枠ピースの製作方法の一例を説明するための図である。
【
図22】型枠ピースの製作方法の一例を説明するための図である。
【
図23】型枠ピースの製作方法の一例を説明するための図である。
【
図24】型枠ピースの製作方法の一例を説明するための図である。
【
図25】変形例において、折り畳み可能な型枠ピースの展開後に補強材が配設される様子を模式的に示す図である。
【
図27】(a)鎹材の変形例を模式的に示す図であり、(b)鎹材の変形例を模式的に示す図である。
【
図28】変形例において、構造材用型枠である一対の側型枠を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1~
図19を参照して、構造物の構築方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、構造物10は、柱として機能する構造材11や柱を接続する梁として機能する構造材12のほか、図示されない壁や床などの構造材によって形成される。
【0020】
図2に示すように、構造材は、型枠ピース15を互いに接合した構造材用型枠16と、構造材用型枠16に対して打設されたセメント組成物17と、によって形成される。型枠ピース15は、引張力や圧縮力、剪断力、モーメントなど、構造材に働く力に対抗する。
【0021】
構造物10は、型枠ピース製作ステップS1、構造材用型枠形成ステップS2、および、セメント組成物打設ステップS3を行うことにより構築される。
型枠ピース製作ステップS1は、例えば工場など、施工現場とは別の場所において型枠ピース15が製作されるステップである。型枠ピース15は、繊維系材料を用いて製作される。繊維系材料は、無機繊維であってもよいし、有機繊維であってもよい。型枠ピース15は、例えば3次元(3D)プリンタ装置を用いて製作される。3次元プリンタ装置は、ノズルからの材料の吐出とノズルの移動とを同時期に行うことで形成される層を積み重ねることにより型枠ピース15を造形する。型枠ピース15は、各々の配置のほか、隣接する型枠ピース15との接合方法や接合順序などを考慮した形状に形成される。3次元プリンタ装置を用いることにより、型枠ピース15の形状についての自由度を高めることができる。型枠ピース15は、筒型ピースであってもよいし、凹型ピースであってもよいし、板型ピースであってもよい。また、型枠ピース15には、スリーブが形成されていてもよい。
【0022】
構造材用型枠形成ステップS2は、施工現場において型枠ピース15を接合することで構造材用型枠16を形成するステップである。構造材用型枠16は、施工現場において型枠ピース15が各種の接合法を用いて接合されることにより形成される。構造材用型枠16は、例えば柱や壁といった上下方向に延びる構造材を形成する際には筒状型枠であってもよい。構造材用型枠16は、例えば梁や床といった水平方向に延びる構造材を形成する際には凹型型枠であってもよい。
【0023】
セメント組成物打設ステップS3は、構造材用型枠16の内側にセメント組成物17を打設するステップである。セメント組成物17は、例えば、モルタルやコンクリートである。また、セメント組成物17は、スリムクリート(登録商標)等、繊維を混合したセメント系材料(繊維補強コンクリート材料)である。打設されたセメント組成物17が硬化することにより、各種構造材が形成される。
【0024】
(型枠ピース)
型枠ピース15は、一体成形される応力材によって補強されていてもよい。応力材は、セメント組成物17が打設される内側に配設される。応力材は、例えば構造材に働く力に基づく構造最適化法を用いて設計される。なお、型枠ピース15において、打設されたセメント組成物17が付着する面(打設面)を内側面15a、内側面の反対側の面(外観面)を外側面15bという(
図2参照)。
【0025】
図3に示すように、応力材の一例は、対向する内側面15aを接続する直線状の応力材20である。応力材20は、長さ方向に所定間隔で配設されてもよい。
図4に示すように、応力材の一例は、対向する内側面15aを接続するとともに斜め方向成分を有する応力材21である。応力材の一例は、2つの内側面がなす隅部に配設されて、それら2つの内側面を接続するリブ状の応力材である。
【0026】
型枠ピース15の内側面15aには、付着係合材が一体成形されていてもよい。付着係合材は、複数の小さな突起によって形成される。付着係合材は、内側面15aに凹凸を形成することにより、型枠ピース15とセメント組成物17との付着力を高める。
【0027】
図5(a)に示すように、付着係合材の一例は、マトリクス状に配置された矩形突起22によって形成される付着係合材23である。
図5(b)に示すように、付着係合材の一例は、突条24が所定間隔で並設されることにより形成される付着係合材25である。
図5(c)に示すように、付着係合材の一例は、所定間隔で配置された円形突起26によって形成される付着係合材27である。
【0028】
図6に示すように、型枠ピース15は、例えば矩形状の筒型ピースや凹型ピースなどについては、展開・折り畳み可能に形成されていてもよい。こうした構成によれば、運搬時などに型枠ピース15をコンパクトにすることができる。
【0029】
図7に示すように、型枠ピース15は、側面部に中空部30が形成されることにより二重構造に形成されてもよい。こうした構成において、型枠ピース15は、内側側面部31、外側側面部32、および、内側側面部31と外側側面部32とを接続する接続部33によって形成される。
【0030】
図8に示すように、型枠ピース15は、複数の貫通孔35によってメッシュ部分が形成されていてもよい。こうした構成によれば、型枠ピース15の軽量化を図ることができる。また、打設されたセメント組成物17の一部が貫通孔35へと入り込んで硬化することで、構造材用型枠16とセメント組成物17との付着力を高めることができる。
【0031】
また、
図8に二点鎖線で示すように、メッシュ部分は、例えば接着剤などを用いて外側面15bに接合される被覆板36によって覆われていてもよい。被覆板36は、セメント組成物17の打設時に、セメント組成物17の側圧を受けるとともに貫通孔35からのセメント組成物17の漏れを防止する。また、被覆板36は、基礎梁など、型枠ピース15が地盤に埋設される構造材の構造材用型枠16に使用される場合には、土中において分解される生分解性プラスチックによって形成されてもよい。
【0032】
(型枠ピースの接合方法)
上述したように、構造材用型枠16は、施工現場において型枠ピース15を接合することにより形成される。型枠ピース15の接合方法について、板状の型枠ピース15を用いて説明する。
【0033】
(熱プレス接合)
図9に示すように、型枠ピース15の接合方法の一例は、熱プレス接合である。熱プレス接合は、多数の金属圧着片40が挟まれる状態で2つの型枠ピース15の接合側端部を重ね合わせて熱プレスすることにより、2つの型枠ピース15を圧着する接合方法である。熱プレス接合においては、一方の型枠ピース15の接合側端部に金属圧着片40が撒布されてもよいし、両面に金属圧着片40が形成された金属板が型枠ピース15に挟み込まれてもよい。
【0034】
(小口嵌合接合)
図10に示すように、型枠ピース15の接合方法の一例は、小口嵌合接合である。小口嵌合接合は、各型枠ピース15の接合側小口に形成された小口凹凸部41を嵌合させて圧着する接合方法である。小口嵌合接合では、一方の型枠ピース15を他方の型枠ピース15に対してスライドさせることで小口凹凸部41を嵌合させる。なお、小口嵌合接合において、互いの小口凹凸部41が嵌合するように型枠ピース15をスライドさせればよく、
図10のように互いの小口面15cが向かい合う正面方向から型枠ピース15をスライドさせる構成に限られない。また、小口嵌合接合においては、小口凹凸部41に接着剤が塗布されていてもよい。
【0035】
(重合式嵌合接合)
図11に示すように、型枠ピース15の接合方法の一例は、重合式嵌合接合である。重合式嵌合接合は、一方の型枠ピース15の内側面15aの端部分を接合側対向面151a、および、他方の型枠ピース15の外側面15bの端部分を接合側対向面151bとして、これら接合側対向面151a,151bを重合した状態で接合される。重合式嵌合接合は、接合側対向面151aに一体成形された内側面凹凸部42と接合側対向面151bに一体成形された外側面凹凸部43とを嵌合させて圧着する接合方法である。重合式嵌合接合においては、内側面凹凸部42と外側面凹凸部43とに接着剤が塗布されていてもよい。
【0036】
(突き出し嵌合接合)
図12に示すように、型枠ピース15の接合方法の一例は、突き出し嵌合接合である。突き出し嵌合接合は、小口面15cを跨ぐように各型枠ピース15の内側面15aあるいは外側面15bに突き出し嵌合部45が一体成形されるとともに、小口面15cが当接するように型枠ピース15をスライドさせて互いの突き出し嵌合部45を嵌合・圧着する接合方法である。なお、突き出し嵌合接合においては、突き出し嵌合部45は嵌合していればよく、圧着されてなくてもよい。また、突き出し嵌合部45に接着剤が塗布されていてもよい。
【0037】
突き出し嵌合部45が型枠ピース15の内側面15aに形成されている場合の突き出し嵌合接合は、セメント組成物17が打設される内側において型枠ピース15が接合される内側接合の1つである内側嵌合接合である。
【0038】
突き出し嵌合部45が型枠ピース15の外側面15bに形成されている場合のスライド式嵌合接合は、セメント組成物17が打設される外側において型枠ピース15が接合される外側接合の1つである外側突き出し嵌合接合である。
【0039】
(かすがい接合)
図13に示すように、型枠ピース15を機械的に接合する機械的接合の一例は、かすがい接合である。かすがい接合は、各型枠ピース15に形成された嵌合孔46に鎹材47を嵌合させることにより、2つの型枠ピース15を接合する接合方法である。鎹材47は、各型枠ピース15の小口面15cを跨ぐように設置される。かすがい接合においては、型枠ピース15の嵌合孔46や鎹材47の嵌合孔46に接着剤が塗布されていてもよい。かすがい接合においては、小口面15cが当接していてもよいし、小口面15cが離間していてもよい。型枠ピース15の内側において鎹材47が嵌め込まれるかすがい接合は、内側接合の1つである内側かすがい接合である。型枠ピース15の外側において鎹材47が嵌め込まれるかすがい接合は、外側接合の1つである外側かすがい接合である。
【0040】
(ボルト接合)
機械的接合の一例は、ボルト接合である。ボルト接合は、ボルトと各型枠ピース15に形成された締結孔とを用いて2つの型枠ピース15を締結することにより接合する接合方法である。ボルト接合においては、小口面15cが当接していてもよいし、小口面15cが離間していてもよい。
【0041】
図14に示すように、ボルト接合においては、各型枠ピース15の側面に対して各型枠ピース15の小口面15cを跨ぐようにボルト51によって板材52が締結されることにより、板材52を突き合わせ継手として2つの型枠ピース15が接合される。型枠ピース15の内側面15aに対して板材52が締結されるボルト接合は、内側接合の1つである内側ボルト接合である。型枠ピース15の外側面15bに対して板材52が締結されるボルト接合は、外側接合の1つである外側ボルト接合である。また、板材52は、かど継手として機能させる場合にはL字状に屈曲した形状であってもよい。なお、ボルト接合においては、型枠ピース15を直接ボルトで締結してもよい。
【0042】
(鉤型嵌合接合)
図15に示すように、型枠ピース15の接合方法の一例は、鉤型嵌合接合である。鉤型嵌合接合は、接合側端部の小口面15cに一体成形された鉤型嵌合部55を嵌合させる接合方法である。鉤型嵌合接合では、鉤型嵌合部55の形状に応じて型枠ピース15をスライドさせることで互いの鉤型嵌合部55を嵌合させる。鉤型嵌合接合においては、鉤型嵌合部55に接着剤が塗布されていてもよい。
【0043】
(型枠ピースの接合例)
図16に示すように、第1柱用型枠ピース15Aに上方から第2柱用型枠ピース15Bを接合する場合、小口嵌合接合や突き出し嵌合接合のほか、かすがい接合やボルト接合を用いることができる。
【0044】
図17に示すように、凹型の第1梁用型枠ピース15Cに上方から凹型の第2梁用型枠ピース15Dを接合する場合、かすがい接合やボルト接合を用いることができる。また、下面部には、小口嵌合接合や鉤型嵌合接合、突き出し嵌合接合を用いることができる。
【0045】
図18に示すように、凹型の第1梁用型枠ピース15Cに側方から凹型の第2梁用型枠ピース15Dを接合する場合には、かすがい接合やボルト接合を用いることができる。また、側面部については小口嵌合接合や鉤型嵌合接合を用いることができる。
【0046】
図19に示すように、上面部が開口した凹側の型枠ピース15Eに対して、開口部を閉塞する板状の型枠ピース15Fを接合する場合には、屈曲形状の板材を用いたボルト接合のほか、熱プレス接合などを用いることができる。
【0047】
本実施形態の作用および効果について説明する。
(1)上記実施形態においては、各種構造材は、型枠ピース15を接合することにより形成される構造材用型枠16と、構造材用型枠16の内側に打設されたセメント組成物17と、によって形成される。これにより、型枠を解体・撤去する必要がなくなる。また、構造材に働く力に型枠ピース15が対抗できるため、鉄筋の納まりを検討する必要がなくなるだけでなく、鉄筋そのものを不要とすることができる。
【0048】
(2)型枠ピース15を接合することにより、柱や壁などの構造材用型枠として、筒状型枠を形成することができる。
(3)型枠ピース15を接合することにより、梁や床などの構造材用型枠として、上部が開放された凹型型枠を形成することができる。
【0049】
(4)各種の接合方法で型枠ピース15が接合可能である。これにより、型枠ピース15の配置や施工現場における周囲の状況などに応じて選択した接合方法で型枠ピース15を接合することができる。
【0050】
(5)小口嵌合接合によれば、型枠ピース15をスライドさせることにより、型枠ピース15を接合することができる。
(6)重合式嵌合接合によれば、接合側対向面151a,151bが重なる部分において構造材用型枠16の強度を高めることができる。
【0051】
(7)突き出し嵌合接合によれば、小口面15cを跨ぐように突き出し嵌合部45が嵌合することにより、型枠ピース15の境界部分における強度を高めることができる。
(8)かすがい接合によれば、小口面15cを跨ぐように鎹材47が配設されることにより、型枠ピース15の境界部分における強度を高めることができる。
【0052】
(9)ボルト接合によれば、小口面15cを跨ぐように板材52が配設されることにより、型枠ピース15の境界部分における強度を高めることができる。また、嵌合構造がないため、設置位置までの型枠ピース15の移動経路についての自由度も高い。
【0053】
(10)鉤型嵌合接合によれば、接合後の型枠ピース15を外れにくくすることができる。
(11)型枠ピース15を内側接合で接合することにより、型枠ピース15の内側に接合部が配設される。その結果、構造物10の見栄えをよくすることができる。
【0054】
(12)型枠ピース15を外側接合で接合することにより、型枠ピース15の外側に接合部が配設される。その結果、型枠ピース15の接合作業を容易に行うことができる。
(13)型枠ピース15に応力材20,21が一体成形されることにより、構造材用型枠16の強度を高めることができる。また、構造最適化法を用いて応力材20,21が設計されることにより、構造材用型枠16の強度を効果的に高めることができる。
【0055】
(14)型枠ピース15の内側面15aに付着係合材23,25,27が一体成形されることにより、構造材用型枠16とセメント組成物17との付着力を高めることができる。これにより、構造材に働く外力に対して、構造材用型枠16とセメント組成物17とが効果的に対抗することができる。
【0056】
(15)型枠ピース15がメッシュ部分を有することにより、型枠ピース15の軽量化を図ることができる。また、構造材用型枠16とセメント組成物17との付着力を高めることができる。
【0057】
(16)型枠ピース15に中空部30が形成されることにより、型枠ピース15、ひいては構造材用型枠16の強度を高めることができる。
(17)型枠ピース15が折り畳み可能であることにより、運搬時などに型枠ピース15をコンパクトにすることができる。
【0058】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、3次元(3D)プリンタ装置を用いて型枠ピース15を製作した。これに限らず、型枠ピース15は、次のような製作方法で製作してもよい。
【0059】
図20に示すように、型枠ピース15の枠61を設置したのち、ロボット62を用いて繊維系材料63を巻き付けていくことにより製作することができる。
図21に示すように、例えばクロスや金型、発泡スチロールなどの型65に繊維系材料を付着させ、硬化後に型65から取り外すことにより製作することができる。
【0060】
図22に示すように、固定した枠67に対してロボットを用いて繊維系材料68をモールディングすることにより製作することができる。
図23に示すように、樹脂系材料を用いて製作した板状の母材70に対して型枠ピース15の展開形状に応じた切削加工を行ったのち、適宜接合することにより製作することができる。
【0061】
図24に示すように、型枠ピース15の形状に応じて配置されたロッド71に対して、帯状の繊維系材料72を編み込むように貼り付けることで製作することができる。
・折り畳み可能な型枠ピース15においては、展開後の形状が保持されるように補強材が配設されてもよい。
【0062】
例えば、
図25に示すように、折り畳み可能な凹型の型枠ピース15の展開後においては、各内側面15aを接続する補強材80が配設されてもよい。補強材80は、繊維系材料で形成されることが好ましい。また、各内側面15aに対し、嵌合構造や接着剤によって応力伝達可能に固定されることが好ましい。
【0063】
・応力材は、様々な形状とすることができる。
例えば、
図26に示すように、応力材は、隣接する内側面15aの隅部に一体成形された一対の基端部から型枠ピース15の中心部に向かって張り出す第1接続部81と、第1接続部81を互いに接続する第2接続部82と、で形成されてもよい。
【0064】
・
図27(a)に示すように、かすがい接合における鎹材47は、弾性を有する部材であるとともに、嵌合孔46に挿入されたのちに裏側から側面部に係合することで嵌合孔46からの鎹材47の抜けを防止する抜け防止部85を有していてもよい。
【0065】
また、
図27(b)に示すように、鎹材47は、小口面15cを跨ぐ部分が湾曲形状に形成されていてもよい。こうした構成によれば、鎹材47が弾性変形しやすくなるため、抜け防止部85を有する鎹材47でかすがい接合する際の作業性が向上する。
【0066】
・
図28に示すように、構造材用型枠16は、例えば、応力材としても機能する面間保持部87が一体成形された面状の第1側型枠ピース86に対し、面状の第2側型枠ピース88を接合することにより形成される一対の側型枠であってもよい。こうした構造材用型枠16は、例えば壁の形成に用いられる。
【0067】
・型枠ピース15は、セメント組成物17で製作されてもよい。
・構造材用型枠16には、型枠ピース15の接合部分に対応するように鉄筋などが配設されていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10…構造物、11,12…構造材、15…型枠ピース、15A…第1柱用型枠ピース、15B…第2柱用型枠ピース、15C…第1梁用型枠ピース、15D…第2梁用型枠ピース、15E,15F…型枠ピース、15a…内側面、151a…接合側対向面、15b…外側面、151b…接合側対向面、15c…小口面、16…構造材用型枠、17…セメント組成物、20,21…応力材、22…矩形突起、23…付着係合材、24…突条、25…付着係合材、26…円形突起、27…付着係合材、30…中空部、31…内側側面部、32…外側側面部、33…接続部、35…貫通孔、36…被覆板、40…金属圧着片、41…小口凹凸部、42…内側面凹凸部、43…外側面凹凸部、45…突き出し嵌合部、46…嵌合孔、47…鎹材、51…ボルト、52…板材、55…鉤型嵌合部、61…枠、62…ロボット、63…繊維系材料、65…型、67…枠、68…繊維系材料、70…母材、71…ロッド、72…繊維系材料、80…補強材、81…第1接続部、82…第2接続部、85…抜け防止部、86…第1側型枠ピース、87…面間保持部、88…第2側型枠ピース。