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特開2024-133770耐火ダクト、当該耐火ダクトの使用方法、及び、当該耐火ダクトを使用した耐火構造
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  • 特開-耐火ダクト、当該耐火ダクトの使用方法、及び、当該耐火ダクトを使用した耐火構造 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133770
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】耐火ダクト、当該耐火ダクトの使用方法、及び、当該耐火ダクトを使用した耐火構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 5/04 20060101AFI20240926BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240926BHJP
   F16L 5/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F16L5/04
E04B1/94 F
F16L5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043733
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】金森 誠治
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
(72)【発明者】
【氏名】初田(本田) あかり
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA34
2E001GA65
2E001HA03
(57)【要約】
【課題】木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる耐火ダクト等を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る耐火ダクト1は、金属製のダクト2と、金属製のダクトの外周面2aを覆うように当該外周面2aに設けられた石こうボードとを備え、金属製のダクトは、円管状ダクトであり、石こうボードは、一方の板面3aに等間隔で配置された複数の平行な直線状溝4,4…が形成された溝付き石こうボード3であり、溝付き石こうボード3の複数の平行な直線状溝が4,4…円管状ダクト2の中心線2Cと平行に位置されるように、当該溝付き石こうボード3が円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられて構成されたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のダクトと、金属製のダクトの外周面を覆うように当該外周面に設けられた石こうボードとを備え、
金属製のダクトは、円管状ダクトであり、
石こうボードは、一方の板面に等間隔で配置された複数の平行な直線状溝が形成された溝付き石こうボードであり、
溝付き石こうボードの複数の平行な直線状溝が円管状ダクトの中心線と平行に位置されるように、当該溝付き石こうボードが円管状ダクトの外周面に巻き付けられて構成されたことを特徴とする耐火ダクト。
【請求項2】
請求項1に記載の耐火ダクトの使用方法であって、
木製部材に形成された貫通孔を貫通するように当該貫通孔に設置するようにしたことを特徴とする耐火ダクトの使用方法。
【請求項3】
請求項1に記載の耐火ダクトを使用した耐火構造であって、
貫通孔が形成された木製部材と、
貫通孔を貫通するように設けられて溝付き石こうボードの外周面と貫通孔の内周面とが対向するように設置された請求項1に記載の耐火ダクトと、
を備えたことを特徴とする耐火構造。
【請求項4】
溝付き石こうボードの外周面と貫通孔の内周面との間に空気層が設けられたことを特徴とする請求項3に記載の耐火構造。
【請求項5】
木製部材における貫通孔の一端開口縁の周囲の表面、及び、木製部材における貫通孔の他端開口縁の周囲の表面が、それぞれ、耐火ボードで覆われ、
耐火ダクトの溝付き石こうボードの外周面と耐火ボードとの間には耐火材が設けられ、かつ、耐火材と溝付き石こうボードの溝の内面との間には、耐火充填材が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の耐火構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のダクトと、金属製のダクトの外周面を覆うように当該外周面に設けられた石こうボードとを備えた耐火ダクト等に関する。
【背景技術】
【0002】
木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減することができる構造部材が知られている。
当該構造部材は、木製部材と、木製部材を貫通する貫通孔と、当該貫通孔の周囲に設けられた燃え止まり部と、を有した構造部材である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-113060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、木製部材を貫通する貫通孔の内周面の周囲に燃え止まり部を形成する必要があり、当該燃え止まり部を形成する作業が容易ではなく、構成も複雑となる。
つまり、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法としては、施工面、コスト面等での課題があった。
そこで、本発明は、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる耐火ダクト等を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る耐火ダクトは、金属製のダクトと、金属製のダクトの外周面を覆うように当該外周面に設けられた石こうボードとを備え、金属製のダクトは、円管状ダクトであり、石こうボードは、一方の板面に等間隔で配置された複数の平行な直線状溝が形成された溝付き石こうボードであり、溝付き石こうボードの複数の平行な直線状溝が円管状ダクトの中心線と平行に位置されるように、当該溝付き石こうボードが円管状ダクトの外周面に巻き付けられて構成されたことを特徴とする。
本発明に係る耐火ダクトによれば、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できるようになった。
また、本発明に係る耐火ダクトの使用方法は、耐火ダクトを、木製部材に形成された貫通孔を貫通するように当該貫通孔に設置するようにしたので、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減できる耐火構造を、簡単かつ安価に提供できるようになる。
また、上述した耐火ダクトを使用した耐火構造は、貫通孔が形成された木製部材と、貫通孔を貫通するように設けられて溝付き石こうボードの外周面と貫通孔の内周面とが対向するように設置された上述の耐火ダクトと、を備えたことを特徴とする。
本発明に係る耐火ダクトを使用した耐火構造によれば、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減できる耐火構造を、簡単かつ安価に提供できる。
また、当該耐火構造は、溝付き石こうボードの外周面と貫通孔の内周面との間に空気層が設けられたことを特徴とした。当該耐火構造によれば、火災時において、空気層に熱気が入った場合に、石こうボードの構成材料である結晶水が水蒸気に変化して貫通孔の内面に拡散して木製部材の焦げを防止することができるようになり、耐火性能を向上できる。
さらに、当該耐火構造は、木製部材における貫通孔の一端開口縁の周囲の表面、及び、木製部材における貫通孔の他端開口縁の周囲の表面が、それぞれ、耐火ボードで覆われ、
耐火ダクトの溝付き石こうボードの外周面と耐火ボードとの間には耐火材が設けられ、かつ、耐火材と溝付き石こうボードの溝の内面との間には、耐火充填材が設けられたことを特徴とするので、外部から木製部材の貫通孔内への熱の侵入を防止でき、耐火性能をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態に係る耐火ダクトを示す斜視図。
図2】溝付き石こうボードを示す斜視図。
図3】実施形態に係る耐火ダクトを用いた耐火構造を示す断面図。
図4図3のA-A断面相当図。
図5図3のB-B断面相当図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1に示すように、実施形態1に係る耐火ダクト1は、金属製の円管状ダクト2と、当該金属製の円管状ダクト2の外周面(円周面)2aを覆うように当該外周面2aに設けられた石こうボードとを備える。
金属製の円管状ダクト2は、例えば、スパイラルダクトである。
金属製の円管状ダクト2の外周面2aを覆う石こうボードは、図2に示すように、一方の板面3aに所定の間隔を隔てて形成された複数の平行な直線状の溝4,4…を備えた溝付き石こうボード3である。
溝4は、四角形平板状の石こうボードの互いに対向する一辺と他辺とに亘って一直線状に連続するように形成された例えば断面四角形状の溝である。
即ち、耐火ダクト1は、溝付き石こうボード3の複数の平行な溝4,4…が円管状ダクト2の中心線2Cと平行に位置されるように、当該溝付き石こうボード3が円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられて構成される。
つまり、耐火ダクト1は、溝付き石こうボード3の複数の平行な直線状溝4,4…が円管状ダクト2の中心線2Cと平行に位置されて、溝付き石こうボード3が円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられた状態となるように、溝付き石こうボード3の他方の板面3bと円管状ダクト2の外周面2aとが例えば無機質接着剤等の接着剤で接着されて構成される。
溝付き石こうボード3が円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられた状態においては、一方の板面3aが外周面3aとなり、溝4は、図1図4図5に示すように、断面台形状の溝に変形する。
即ち、耐火ダクト1は、円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられた溝付き石こうボード3の外周囲に、円管状ダクト2の中心線2Cと平行に位置される複数の平行な溝4,4…を備え、これら各溝4,4…の断面形状が台形である。
実施形態1に係る耐火ダクト1は、空調用、換気用、排煙用、給排水配管用、電気配線用等の設備用ダクトとして使用される。
【0008】
実施形態1に係る耐火ダクト1は、例えば図3に示すような、木製部材10に形成された貫通孔11を貫通するように当該貫通孔11に設置することによって、後述するような、耐火性能に優れた耐火構造100を構築できる。
即ち、図3に示すように、貫通孔11が形成された木製部材10と、貫通孔11を貫通するように設けられて溝付き石こうボード3の外周面3aと貫通孔11の内周面11aとが対向するように設置された上述の耐火ダクト1と、を備えた耐火構造100を構築できる。
尚、木製部材10は、例えば、木製の梁、木製の壁、木製の床、木製の桁等である。
【0009】
木製部材10は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された構造材等の部材である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0010】
例えば図3に示すように、実施形態1に係る耐火ダクト1を使用した耐火構造100は、貫通孔11が形成された木製部材10と、木製部材10における貫通孔11の一端開口縁11xの周囲の表面10aを覆うように設けられた耐火ボードとしての石こうボード12と、木製部材10における貫通孔11の他端開口縁11yの周囲の表面10bを覆うように設けられた耐火ボードとしての石こうボード12と、貫通孔11を貫通するように設けられた耐火ダクト1とを備えて構成される。
【0011】
当該耐火構造100は、以下のような構成を備える。
まず、図3図4に示すように、耐火ダクト1の溝付き石こうボード3の外周面3a及び溝4,4…の内面(溝4の溝壁面及び溝底面)と貫通孔11の内周面11aとの間に空気層13を備える。即ち、耐火ダクト1の溝付き石こうボード3の外周面3aと貫通孔11の内周面11aとの間に、空気層13となる例えば数cm程度の所定の間隔を設けた構成とした。
さらに、図3図5に示すように、耐火ダクト1の溝付き石こうボード3の外周面3aと耐火ダクト1を貫通させるために石こうボード12に形成された貫通孔12aとの間には耐火材14が設けられている。
また、耐火材14と溝付きボード3の溝4,4…の内面との間には、耐火充填材15が充填されている。
【0012】
石こうボード12は、一般的な平板状の石こうボードである。
耐火材14は、例えば、繊維系ロックウール等である。
耐火充填材15は、例えば、無機質系充填材等である(例、吉野石膏株式会社製「ジプシール(登録商標)」)。
【0013】
即ち、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと当該内周面11aと対向する溝付き石こうボード3の外周面3aとの間は所定の間隔が設けられて空気層13となるように形成されている。
【0014】
また、木製部材10における貫通孔11の一端開口縁11xの周囲の表面10aを覆うように設けられた石こうボード12の貫通孔12aと対向する耐火ダクト1の各溝4,4…内、及び、木製部材10における貫通孔11の他端開口縁11yの周囲の表面10bを覆うように設けられた石こうボード12の貫通孔12aと対向する耐火ダクト1の各溝4,4…内には、耐火充填材15が充填される。
【0015】
また、互いに対向する石こうボード12の貫通孔12aと耐火ダクト1の溝付き石こうボート3の外周面3a及び耐火充填材15との間の隙間には、耐火材14が設けられて、当該隙間が塞がれる。
【0016】
即ち、当該耐火構造100を構成する際の耐火ダクトとしては、例えば、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと対向させる部位については、溝付き石こうボード3の外周面3a及び溝4の内面に何も備えない構成とするとともに、木製部材10に形成された貫通孔11の両端側に位置される石こうボード12の貫通孔12aと対向させる部位については、溝付き石こうボード3の外周面3aの各溝4,4…内に耐火充填材15が充填されたとともに、溝付き石こうボード3の外周面3a及び各溝4,4…内に充填された耐火充填材15の外面を覆うように、耐火材14が設けられた構成の耐火ダクトを使用するようにした。
即ち、例えば、無機質接着剤等の接着剤を用いて、溝付き石こうボード3の外周面3a及び各溝4,4…内に充填された耐火充填材15の外面に予め耐火材14が接着された構成の耐火ダクトを用いるようにした。
当該構成の耐火ダクトを用いるようにすれば、木製部材10の表面10a,10bにそれぞれ石こうボード12を取付けた後、貫通孔12a,11,12aに当該耐火ダクトを設置するだけの簡単な作業で図3に示す耐火構造100を構築できる。
即ち、木製部材10に貫通孔11を形成することによる耐火性の低下を低減できる耐火構造100を、簡単かつ安価に構築できる。
【0017】
以上のように、実施形態1に係る耐火ダクト1は、溝付き石こうボード3が円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられて構成されたので、当該耐火ダクトを、木製部材10に形成された貫通孔11を貫通するように当該貫通孔11に設置することによって、木製部材10に貫通孔11を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる。
【0018】
また、実施形態1に係る耐火ダクト1は、一方の板面3aに所定の間隔を隔てて形成された複数の平行な直線状の溝4,4…を備えた溝付き石こうボード3を用いて、溝付き石こうボード3の複数の平行な直線状溝4,4…が金属製の円管状ダクト2の中心線2Cと平行に位置されて、溝付き石こうボード3が円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けられた状態となるように構成される。
即ち、円筒状に変形しやすい溝付き石こうボード3を用いているので、例えば工場や現場において、当該耐火ダクト1を形成する際に、円管状ダクト2の円周の外周面2aに溝付き石こうボード3を容易かつ綺麗に巻き付けることができ、一様な品質精度の耐火ダクト1を容易に作製できるようになる。
【0019】
つまり、一般的な平板状の石こうボードを用いた場合は、円管状ダクト2の外周面2aに巻き付けることができないが、実施形態に係る耐火ダクト1では、円管状ダクト2の外周面2aに設ける石こうボードとして、一方の板面3aに所定の間隔を隔てて形成された複数の平行な直線状の溝4,4…を備えた溝付き石こうボード3を用いたことにより、円管状ダクト2の外周面2aに石こうボードが巻き付けられた構成の耐火ダクト1を実現できるようになり、後述するように、石こうボード3の構成材料である結晶水の水蒸気拡散効果を利用した耐火構造100を実現できるようになった。
【0020】
実施形態1に係る耐火ダクト1を用いて構成された耐火構造は、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと対向する溝付き石こうボード3の外周面3a及び溝4の内面との間は、間隔が設けられて、空気層13に形成されている。
従って、火災時において、空気層13に熱気が入った場合に、溝付き石こうボード3の構成材料である結晶水が水蒸気に変化して貫通孔11内に拡散して木製部材10の焦げを防止するように作用するので、耐火性能を向上できる。
【0021】
また、石こうボード12の貫通孔12aと耐火ダクト1の溝付き石こうボード3の外周面3bとの間の隙間には、耐火材14が設けられ、かつ、耐火材14と対向する溝4,4…内には、耐火充填材15が設けられているので、外部から木製部材10の貫通孔11への熱の侵入を防止できるようになり、耐火性能をより向上できる。
【0022】
実施形態2
実施形態2に係る耐火ダクトは、実施形態1の耐火ダクト1における溝付き石こうボード3の外周面3aに図外のガラスメッシュシートを貼り付けた構成とした。
【0023】
また、実施形態2に係る耐火ダクトを耐火構造に使用する際には、例えば、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと対向させる部位については、溝付き石こうボード3の外周面3aにガラスメッシュシートを備え、木製部材10に形成された貫通孔11の両端側に位置される石こうボード12の貫通孔12aと対向させる部位については、溝付き石こうボード3の外周面3a及び各溝4,4…内に充填された耐火充填材15の外面を覆うように、ガラスメッシュシートを備え、かつ、当該ガラスメッシュシート及び当該ガラスメッシュシートの網目を通した溝付き石こうボード3の外周面3a並びに耐火充填材15の外面に接着剤を介して耐火材14が設けられた耐火ダクトを作製して、当該耐火ダクトを用いるようにした。
【0024】
実施形態2に係る耐火ダクトによれば、ガラスメッシュを備えたことにより、耐熱性が向上するとともに、耐火ダクトの溝付き石こうボード3の外周面3aを保護できるので、耐火性能が向上する。
また、実施形態2に係る耐火ダクトを耐火構造に使用する際においては、耐火ダクトの外周面(溝付き石こうボード3の外周面3a及び耐火充填材15の外面)と耐火材14との接着性向上が図れる。
【0025】
また、実施形態2によれば、耐火ダクトのガラスメッシュシートと木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aとを空気層13を介して対向させるとともに、耐火材14の外周面と石こうボード12の貫通孔12aとが接触するように、当該構成の耐火ダクトを木製部材10に形成された貫通孔11に設置することによって、耐火性能に優れた耐火構造を構築できる。
【0026】
実施形態2に係る耐火ダクトによれば、実施形態1に係る耐火ダクトと同様に、木製部材10に貫通孔11を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる。
また、実施形態2に係る耐火ダクトを用いた耐火構造によれば、ガラスメッシュの網目を通して、石こうの水蒸気が空間に拡散しやすいため、実施形態1で述べた水蒸気拡散効果が得られ、さらに、実施形態1と同様に、外部から木製部材10の貫通孔11への熱の侵入を防止できるようになるため、耐火性能に優れた耐火構造を実現できる。
また、耐火ダクトの溝付き石こうボード3の外周面3aにさらに溝付き石こうボード3を巻く構成とする場合、即ち、円管状ダクト2の外周面2aに溝付き石こうボード3を二重に巻き付けた耐火ダクトを構成する場合、ガラスメッシュシートにより、溝付き石こうボード3同士の接着性が向上する。
また、実施形態1と同様に、木製部材10の表面10a,10bにそれぞれ石こうボード12を取付けた後、貫通孔12a,11,12aに当該耐火ダクトを設置するだけの簡単な作業で耐火構造を構築できるので、木製部材10に貫通孔11を形成することによる耐火性の低下を低減できる耐火構造を、簡単かつ安価に構築できる。
【0027】
尚、上記では、予め、溝付き石こうボード3の溝4,4…内に耐火充填材15を設け、かつ、当該耐火充填材15の外面及び溝付き石こうボード3の外周面3aに耐火材14を設けた耐火ダクトを使用して構成された耐火構造を例示したが、木製部材10に形成された貫通孔11に耐火ダクトを設置した後に、溝4,4…内に耐火充填材15を設けるとともに、互いに対向する石こうボード12の貫通孔12aと耐火ダクト1の溝付き石こうボート3の外周面3a及び耐火充填材15の外面との間の隙間に耐火材14を設けるようにして、耐火構造を構築するようにしても良い。
【符号の説明】
【0028】
1 耐火ダクト、2 金属製の円管状ダクト、2C 円管状ダクトの中心線、
3 溝付き石こうボード、4 溝、 10 木製部材、11 貫通孔、
12 石膏ボード(耐火ボード)、13 空気層、14 耐火材、15 耐火充填材、
100 耐火構造。

図1
図2
図3
図4
図5