(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133773
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】耐火ダクト、当該耐火ダクトの使用方法、当該耐火ダクトを使用した耐火構造、並びに、当該耐火ダクトの製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 9/02 20060101AFI20240926BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240926BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20240926BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
F16L9/02
E04B1/94 F
F16L5/04
F16L5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043736
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】初田(本田) あかり
(72)【発明者】
【氏名】松岡 直人
(72)【発明者】
【氏名】金森 誠治
(72)【発明者】
【氏名】三宅 朗彦
【テーマコード(参考)】
2E001
3H111
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001GA65
2E001HA01
2E001HA03
2E001HB01
3H111BA01
3H111BA07
3H111CA03
3H111CB05
3H111CB23
3H111DA11
3H111DB11
(57)【要約】
【課題】従来、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法としては、施工面、コスト面等での課題があった。そこで、本発明は、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる耐火ダクト等を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る耐火ダクト1は、金属製の内側ダクト2と、金属製の外側ダクト3と、内側ダクト2の外周面2bと外側ダクト3の内周面3aとの間に設けられた耐火材4とを備えたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の内側ダクトと、金属製の外側ダクトと、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に設けられた耐火材とを備えたことを特徴とする耐火ダクト。
【請求項2】
耐火材は、石こう又はモルタルであることを特徴とする請求項1に記載の耐火ダクト。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の耐火ダクトの使用方法であって、
木製部材に形成された貫通孔を貫通するように当該貫通孔に設置するようにしたことを特徴とする耐火ダクトの使用方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の耐火ダクトを使用した耐火構造であって、
貫通孔が形成された木製部材と、
貫通孔を貫通するように設けられて外側ダクトの外周面と貫通孔の内周面とが対向するように設置された請求項1又は請求項2に記載の耐火ダクトと、
を備えたことを特徴とする耐火構造。
【請求項5】
外側ダクトの外周面と貫通孔の内周面との間に空気層が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の耐火構造。
【請求項6】
木製部材における貫通孔の一端開口縁の周囲の表面、及び、木製部材における貫通孔の他端開口縁の周囲の表面が、それぞれ、耐火ボードで覆われ、
外側ダクトの外周面と耐火ボードとの間には耐火材が設けられたことを特徴とする請求項4に記載の耐火構造。
【請求項7】
請求項2に記載の耐火ダクトの製造方法であって、
内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に、流動性を有した石こう又は流動性を有したモルタルを流し込んで充填するステップと、
充填された石こう又はモルタルを硬化させるステップと、
を備えたことを特徴とする耐火ダクトの製造方法。
【請求項8】
内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間の間隔を一定に保つためのスペーサを設置した後に、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に、流動性を有した石こう又は流動性を有したモルタルを流し込んで充填するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の耐火ダクトの製造方法。
【請求項9】
内側ダクトの外周面に内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間の間隔を一定に保つためのスペーサを備えたスペーサ付き内側ダクト、
又は、
外側ダクトの内周面に内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間の間隔を一定に保つためのスペーサを備えたスペーサ付き外側ダクトを用いたことを特徴とする請求項7に記載の耐火ダクトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備用ダクトとして使用される耐火ダクト等に関する。
【背景技術】
【0002】
木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減することができる構造部材が知られている。
当該構造部材は、木製部材と、木製部材を貫通する貫通孔と、当該貫通孔の周囲に設けられた燃え止まり部と、を有した構造部材である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、木製部材を貫通する貫通孔の内周面の周囲に燃え止まり部を形成する必要があり、当該燃え止まり部を形成する作業が容易ではなく、構成も複雑となる。
つまり、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法としては、施工面、コスト面等での課題があった。
そこで、本発明は、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる耐火ダクト等を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る耐火ダクトは、金属製の内側ダクトと、金属製の外側ダクトと、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に設けられた耐火材とを備えたことを特徴とする。
また、耐火材は、石こう又はモルタルであることを特徴とする。
本発明に係る耐火ダクトによれば、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できる耐火ダクトを得ることができるようになった。
本発明に係る上記記載の耐火ダクトの使用方法は、木製部材に形成された貫通孔を貫通するように当該貫通孔に設置するようにしたことを特徴とするので、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できるようになる。
本発明に係る上記記載の耐火ダクトを使用した耐火構造は、貫通孔が形成された木製部材と、貫通孔を貫通するように設けられて外側ダクトの外周面と貫通孔の内周面とが対向するように設置された上記記載の耐火ダクトと、を備えたことを特徴とするので、木製部材に貫通孔を形成することによる耐火性の低下を低減する耐火構造を、簡単かつ安価に提供できるようになる。
また、耐火構造は、外側ダクトの外周面と貫通孔の内周面との間に空気層が設けられたことを特徴とするので、木製部材への遮熱性が向上し、耐火性能を向上できる。
また、耐火構造は、木製部材における貫通孔の一端開口縁の周囲の表面、及び、木製部材における貫通孔の他端開口縁の周囲の表面が、それぞれ、耐火ボードで覆われ、外側ダクトの外周面と耐火ボードとの間には耐火材が設けられたことを特徴とするので、木製部材への遮熱性が向上し、耐火性能をより向上できる。
上述した本願発明の耐火ダクトの製造方法は、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に、流動性を有した石こう又は流動性を有したモルタルを流し込んで充填するステップと、充填された石こう又はモルタルを硬化させるステップと、を備えたことを特徴とするので、耐火ダクトを容易に製造できる。
また、耐火ダクトの製造方法は、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間の間隔を一定に保つためのスペーサを設置した後に、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に、流動性を有した石こう又は流動性を有したモルタルを流し込んで充填するようにしたことを特徴とする。
また、耐火ダクトの製造方法は、内側ダクトの外周面に内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間の間隔を一定に保つためのスペーサを備えたスペーサ付き内側ダクト、又は、外側ダクトの内周面に内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間の間隔を一定に保つためのスペーサを備えたスペーサ付き外側ダクトを用いたことを特徴とする。
このように、スペーサを用いた耐火ダクトの製造方法によれば、内側ダクトの外周面と外側ダクトの内周面との間に均等な肉厚の耐火筒を形成できるようになるため、耐火性能の高い高品質の耐火ダクトを容易に作製できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図5】スペーサ付き内側ダクトを用いた耐火ダクトの製造方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
実施形態1に係る耐火ダクト1は、
図1,
図2に示すように、金属製の円管状ダクトにより構成された内側ダクト2と、金属製の円管状ダクトにより構成された外側ダクト3と、内側ダクト2の外周面2bと外側ダクト3の内周面3aとの間に設けられた耐火材4とを備えた構成である。
実施形態1に係る耐火ダクト1は、例えば、
図3に示すように、木製部材10に形成された貫通孔11を貫通するように設置されるダクトである。
【0008】
内側ダクト2は、例えばスパイラルダクトである。
外側ダクト3は、内径寸法が、内側ダクトの外形寸法よりも大きい例えばスパイラルダクトである。
耐火材4は、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間に、流動性を有した石こうを流し込んで硬化させた耐火筒としての石こう筒により構成される。
即ち、当該耐火ダクト1は、中心線が一致するように設けられた、内側ダクト2と、当該内側ダクト2の外側に設けられた耐火材4としての石こう筒と、当該石こう筒の外側に設けられた外側ダクト3と備えて構成される。
つまり、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間は、好ましくは、均等な間隔の円筒状空間に形成され、当該円筒状空間に耐火材4としての例えば流動性を有した石こうを流し込んで当該石こうを硬化させた石こう筒が形成された構成の耐火ダクト1とした。
【0009】
実施形態1に係る耐火ダクト1は、空調用、換気用、排煙用、給排水配管用、電気配線用等の設備用ダクトとして使用される。
【0010】
耐火ダクト1の形態は、例えば、
図1に示す形態1と
図2に示す形態2とがある。
【0011】
図1に示す形態1の耐火ダクト1は、内側ダクト2の中心線2Cに沿った方向の長さ、及び、外側ダクト3の中心線3Cに沿った方向の長さが、同じ長さに形成されて、内側ダクト2の中心線2Cに沿った方向の端部と外側ダクト3の中心線3Cに沿った方向の端部とが一致するように形成されている。換言すれば、内側ダクト2の中心線2Cに沿った方向の端面と外側ダクト3の中心線3Cに沿った方向の端面とが同一平面上に位置されるように構成されている。
そして、外側ダクト3の中心線3Cと内側ダクト2の中心線2Cとが一致して外側ダクト3の内周円と内側ダクト2の外周円とが同心円となるよう配置され、互いに対向する外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aとの間に耐火材4により形成された耐火筒としての石こう筒を備えた構成である。
【0012】
図2に示す形態2の耐火ダクト1は、外側ダクト3の中心線3Cに沿った方向の長さが、木製部材10に形成された貫通孔11の中心線に沿った方向の長さに対応する長さに形成され、内側ダクト2の中心線2Cに沿った方向の長さが、外側ダクト3の中心線3Cに沿った方向の長さよりも長くなるように構成される。
即ち、内側ダクト2が外側ダクト3の内部空間を貫通するように設けられて、かつ、内側ダクト2の中心線2Cに沿った方向の両端部が、外側ダクト3の中心線3Cに沿った方向の両端の位置よりも外方に突出するとともに、外側ダクト3の中心線3Cと内側ダクト2の中心線2Cとが一致して外側ダクト3の内周円と内側ダクト2の外周円とが同心円となるよう配置され、互いに対向する外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aとの間に耐火材4により形成された耐火筒としての石こう筒が形成された構成である。
【0013】
実施形態1に係る耐火ダクト1の製造方法は、例えば、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間に、流動性を有した耐火材と4としての石こうを流し込んで充填する充填ステップと、充填された石こうを硬化させる硬化ステップと、を備える。
【0014】
図1に示す形態1の耐火ダクト1を製造する場合は、内側ダクト2の一端開口が塞がれるように、内側ダクト2の一端開口の端面を例えば作業台等の図外の平板面上に載置し、さらに、外側ダクト3の一端開口が塞がれるように、外側ダクト3の一端開口の端面を上述の平板面上に載置することによって、外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aと平板面とで囲まれた円筒状空間を形成する。そして、当該円筒状空間に流動性を有した石こうを流し込んで石こう筒を形成することで、耐火ダクト1が製造される。
図2に示す形態2の耐火ダクト1を製造する場合は、内側ダクト2及び外側ダクト3を所定の状態に位置決めする位置決め装置を用いる。例えば、内側ダクト2の一端側が貫通する図外の中央貫通孔が形成された平板を有した台を位置決め装置として用いて、この位置決め装置を床や作業台等の設置面に設置する。そして、外側ダクト3の一端開口の端面を上述の台の平板面上に載置し、かつ、内側ダクト2を一端側から外側ダクト3の内側及び上述の中央貫通孔に通して内側ダクト2の一端開口の端面を上述の設置面に載置した状態に設定して、外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aと平板面とで囲まれた円筒状空間を形成する。そして、当該円筒状空間に流動性を有した石こうを流し込んで石こう筒を形成することで、耐火ダクト1が製造される。
即ち、この場合、石こう筒を成形するための円筒状空間を形成する成形型が、内側ダクト2と外側ダクト3と平板とで構成され、当該成形型内に石こうを流し込んで石こう筒を形成することで、耐火ダクト1が製造される。
【0015】
即ち、充填ステップでは、上述した外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aと平板面とで囲まれた円筒状空間に、流動性を有した石こうを流し込む。
さらに、硬化ステップでは、円筒状空間に充填された石こうを硬化させる。
以上のように、
図1に示す形態1の耐火ダクト1や、
図2に示す形態2の耐火ダクト1を製造することができる。
つまり、内側ダクト2、外側ダクト3、耐火材4により形成される耐火筒としての石こう筒の、中心線に沿った長さが一致して、内側ダクト2の端面と外側ダクト3の端面と石こう筒の端面とが同一平面上に位置するように形成された
図1に示す形態1の耐火ダクト1や、内側ダクト2の中心線2Cに沿った方向の長さが外側ダクト3及び石こう筒の中心線に沿った方向の長さよりも長くなるように構成された
図2に示す形態2の耐火ダクト1を製造できる。
【0016】
実施形態1に係る耐火ダクト1は、金属製の円管状ダクトにより構成された内側ダクト2と、金属製の円管状ダクトにより構成された外側ダクト3と、内側ダクト2の外周面2bと外側ダクト3の内周面3aとの間に設けられた耐火材4で形成された耐火筒としての石こう筒とを備えた構成としたので、例えば当該耐火ダクト1を、木製部材10に形成された貫通孔11を貫通するように当該貫通孔11に設置することによって、木製部材10に貫通孔11を形成することによる耐火性の低下を低減する構成及び方法を、簡単かつ安価に提供できるようになった。
特に、実施形態1に係る耐火ダクト1は、金属製の内側ダクト2及び外側ダクト3と耐火材4としての石こうとを組み合わせて構成されているため、肉厚を薄くできるとともに、遮炎性能及び遮熱性能を向上できる耐火ダクト1となる。
また、実施形態1に係る耐火ダクト1は、耐火材4で形成された耐火筒としての石こう筒の内周面及び外周面が、金属製の内側ダクト2及び外側ダクト3で覆われて保護された構成となるため、設置作業等の施工中における石こう筒の割れや損傷を抑制できるとともに、火災時の乾燥収縮による石こう筒のひび割れを抑制できる耐火ダクト1となる。
【0017】
また、実施形態1に係る耐火ダクト1は、例えば
図3に示すような、木製部材10に形成された貫通孔11を貫通するように当該貫通孔11に設置することによって、後述するような、耐火性能に優れた耐火構造100を構築できる。
即ち、
図3に示すように、貫通孔11が形成された木製部材10と、貫通孔11を貫通するように設けられて外側ダクト3の外周面3aと貫通孔11の内周面11aとが対向するように設置された上述の耐火ダクト1と、を備えた耐火構造100を構築できる。
尚、木製部材10は、例えば、木製の梁、木製の壁、木製の床、木製の桁等である。
【0018】
木製部材10は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber(直交集成板))又は集成材又はLVL(Laminated Veneer Lumber(単層積層材))又は無垢材等の木により形成された構造材等の部材である。
即ち、CLTは、一般に、張り合わせる板の繊維方向が直交するように複数の板を張り合わせて構成された木材であり、直交集成板と呼ばれている。
また、集成材は、一般に、張り合わせる板の繊維方向が並行方向となるように複数の板を張り合わせて構成された木材である。
また、LVLは、一般に、複数の単板(ベニヤ)を、単板の繊維方向に平行に積層して接着した木材である。
【0019】
図3に示すように、実施形態1に係る耐火ダクト1を使用した耐火構造100は、耐火ダクト1を貫通させるための貫通孔11が形成された木製部材10と、木製部材10における貫通孔11の一端開口縁11xの周囲の表面10aを覆うように設けられた耐火ボードとしての石こうボード12と、木製部材10における貫通孔11の他端開口縁11yの周囲の表面10bを覆うように設けられた耐火ボードとしての石こうボード12と、木製部材10に形成された貫通孔11及び石こうボード12,12に形成された貫通孔12a,12aを貫通するように設けられた耐火ダクト1とを備えて構成される。
【0020】
当該耐火構造100は、耐火ダクト1の外側ダクト3の外周面3aと木製部材10の貫通孔11の内周面11aとの間において、外側ダクト3の周囲に空気層13を備えた構成とした。
さらに、耐火ダクト1の外側ダクト3の外周面3aと耐火ダクト1を貫通させるために石こうボード12に形成された貫通孔12aの内周面との間の隙間には耐火材14が設けられた構成とした。
【0021】
石こうボード12は、一般的な平板状の石こうボードである。
耐火材14は、例えば、繊維系ロックウール等である。
【0022】
即ち、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと当該内周面11aと対向する外側ダクト3の外周面3aとの間、即ち、外側ダクト3の外周囲と貫通孔11の内周面11aとの間には、好ましくは、均等な間隔(層厚)の円筒状の空気層13が形成されている。
また、木製部材10における貫通孔11の一端開口縁11xの周囲の表面10aを覆うように設けられた石こうボード12の貫通孔12aと、当該貫通孔12aと対向する外側ダクト3の外周面3aとの間の隙間、及び、木製部材10における貫通孔11の他端開口縁11yの周囲の表面10bを覆うように設けられた石こうボード12の貫通孔12aと、当該貫通孔12aと対向する外側ダクト3の外周面3aとの間の隙間には、耐火材14が設けられて、当該隙間が塞がれている。
【0023】
当該耐火構造100を構成する際の耐火ダクト1としては、例えば、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと対向させる部位については、外側ダクト3の外周面3aに何も備えない構成とするとともに、木製部材10に形成された貫通孔11の両端側に位置される石こうボード12の貫通孔12aと対向させる部位については、外側ダクト3の外周面3aに耐火材14が設けられた構成の耐火ダクトを使用するようにした。
例えば、無機質接着剤等の接着剤を用いて、外側ダクト3の外周面3aに予め繊維系ロックウール等の耐火材14が接着された構成の耐火ダクト1を用いるようにした。
当該構成の耐火ダクト1を用いるようにすれば、木製部材10の表面10a,10bにそれぞれ石こうボード12を取付けた後、貫通孔12a,11,12aに当該耐火ダクトを設置するだけの簡単な作業で
図3に示す耐火構造100を構築できる。
即ち、木製部材10に貫通孔11を形成することによる耐火性の低下を低減できる耐火構造100を、簡単かつ安価に構築できる。
【0024】
また、当該耐火ダクト1を用いた耐火構造100では、木製部材10に形成された貫通孔11の内周面11aと外側ダクト3の外周面3aとの間に空気層13が設けられて、木製部材10と外側ダクト3との縁が切られた構成の耐火構造100を実現できるので、木製部材10への遮熱性が向上し、耐火性能を向上できる。
【0025】
また、当該耐火ダクト1を用いた耐火構造100では、石こうボード12と外側ダクト3の外周面3aとの間の隙間に、耐火材14が設けられているので、外部から木製部材10の貫通孔11への熱の侵入を防止できるようになり、木製部材10への遮熱性が向上し、耐火性能をより向上できる。
【0026】
また、
図2に示す形態2の耐火ダクト1を用いた場合、
図3に示すように、当該耐火ダクト1は、少なくとも内側ダクト2の中心線に沿った方向の両方の端面の位置が、木製部材10における貫通孔11の一端開口縁11xの周囲の表面を覆う一方の石こうボード12の外側板面の位置、及び、木製部材10における貫通孔11の他端開口縁11yの周囲の表面を覆う他方の石こうボードの外側板面の位置よりも外側に突出するように、貫通孔11に設置された構成の耐火構造とした。
即ち、外側ダクト3は、中心線に沿った方向の端面の位置が、木製部材11における貫通孔11の一端開口縁11xの周囲の表面を覆う一方の石こうボード12の外側板面の位置と木製部材10における貫通孔11の他端開口縁11yの周囲の表面を覆う他方の石こうボード12の外側板面の位置とに対応するように貫通孔11内に設置され、かつ、内側ダクト2は、中心線に沿った方向の両端部が、外側ダクト3の中心線に沿った方向の両端の位置よりも外方に突出するように構成された耐火構造100とした。
【0027】
図2に示す形態2の耐火ダクト1を用いた
図3に示す耐火構造100によれば、耐火ダクト1の軽量化が図れるとともに、内側ダクト2の両端側のダクトジョイント部1j,1jにダクト101を接続する作業を容易に行えるようになる。
つまり、耐火ダクト1の内側ダクトの両端側のダクトジョイント部1j,1jに別途ダクト101を接続する際の作業の施工性を向上できるようになる。
【0028】
尚、
図1に示す形態1の耐火ダクト1を用いて
図3に示す耐火構造100と同様の耐火構造を構築することもできる。
【0029】
また、上記では、予め、外側ダクト3の外周面3aに耐火材14を取付けた耐火ダクト1を使用した耐火構造を例示したが、木製部材10に形成された貫通孔11に耐火ダクト1を設置した後に、外側ダクト3の外周面3aと石こうボード12の貫通孔12aの内周面との間の隙間に耐火材14を充填するように設けることによって、耐火構造100を構築するようにしても良い。
【0030】
また、内側ダクト2及び外側ダクト3として、例えば、スパイラルダクトの既製品を使用して耐火ダクト1を製作できるので、製造コストを低減できる。
また、内側ダクト2の外形寸法と外側ダクト3の内径寸法との組み合わせを選択することで、石こう筒の厚さ(肉厚)寸法を決めることができ、例えば薄厚の石こう筒を備えた軽量かつスリムで取り扱いの容易な耐火ダクト1を製作することも可能となる。
【0031】
実施形態2
空気層13の内側に位置される外側ダクト3に、外側ダクト3の外周面3aと内周面3bとに貫通する図外の貫通孔を1つ以上設けた構成の耐火ダクトを使用して、上述した耐火構造100を構築するようにしてもよい。
実施形態2の耐火ダクトを用いた耐火構造によれば、空気層13と耐火材4としての石こうとが図外の貫通孔を介して連通した構成となるので、火災時において、空気層13に熱気が入った場合に、石こうの構成材料である結晶水が水蒸気に変化して、当該貫通孔を介して空気層13内に拡散し、木製部材10の焦げを防止するように作用するので、耐火性能をより向上できるようになる。
【0032】
実施形態3
上述した耐火ダクト1の製造方法によれば、内側ダクト2の中心線2Cと外側ダクト3の中心線3Cとが一致しない状態に、内側ダクト2と外側ダクト3とが設置された場合、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間の距離が均等にならず、外側ダクト3の中心線3Cと内側ダクト2の中心線2Cとが偏心した状態の耐火ダクト1となってしまう可能性がある。
そこで、
図4,
図5に示すように、内側ダクト2の外周面2aに、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間の間隔を一定に保つためのスペーサ20を備えたスペーサ付き内側ダクト2Aを用いて耐火ダクト1を製造するようにした。
即ち、
図4に示したようなスペーサ付き内側ダクト2Aを用い、
図5(a)に示すようにスペーサ付き内側ダクト2Aを所定の状態に設置する。その後、
図5(b)に示すように、内側ダクト2Aのスペーサ20の外側に外側ダクト3が位置されるように位置決めした後、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間に形成された均等な間隔の円筒状空間に、耐火材4としての石こうを流し込んで硬化させる。
【0033】
実施形態3に係る耐火ダクト1の製造方法によれば、外側ダクト3の中心線3Cと内側ダクト2の中心線2Cとが一致して、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間に均等な間隔の円筒状空間に形成することができるようになり、均等な肉厚の石こう筒を形成できるようになる。
即ち、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間に均等な肉厚の石こう筒を形成できるようになるため、耐火性能の高い高品質の耐火ダクト1を容易に作製できるようになる。
【0034】
実施形態4
実施形態3では、スペーサ付き内側ダクト2Aを用いた耐火ダクト1の製造方法を例示したが、外側ダクト3の内周面3bに、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間の間隔を一定に保つための図外のスペーサを備えたスペーサ付き外側ダクトを用いて、耐火ダクト1を製造するようにしてもよい。
【0035】
実施形態5
実施形態3,4では、スペーサ付き内側ダクト2Aやスペーサ付き外側ダクトを用いた耐火ダクト1の製造方法を例示したが、内側ダクト2の外周面2aと外側ダクト3の内周面3bとの間に別途のスペーサを設けるようにして、耐火ダクト1を製造してもよい。
【0036】
実施形態6
また、各実施形態1~5では、耐火材4として石こうを用いた例を示したが、耐火材4としてモルタルを用いてもよい。
即ち、互いに対向する外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aとの間に耐火材4により形成される耐火筒としてのモルタル筒が設けられた構成の耐火ダクトであっても構わない。
実施形態6に係る耐火ダクトであっても、各実施形態1~5と同様な効果が得られる。
【0037】
尚、耐火材4として石こう又はモルタル以外の耐火材を用いるようにしてもよい。
例えば、耐火材4としては、ロックウール等の耐火充填材や、ロックウールを主材としてセメント等の無機質結合材をプレミックスした材料である湿式ロックウール不燃充填材や、液体状から硬化する性質を有した防火充填材等の充填材を用いることができる。
また、上述した石こう、モルタル、充填材などを、2種類以上併用してもよい。
例えば、外側ダクト3の中心線に沿った方向の端部側の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aとの間に、石こう又はモルタルが流れ出ないようにするために上述した充填材をあらかじめ詰めておいて、外側ダクト3の内周面3bと内側ダクト2の外周面2aとの間の円筒状空間に、石こう又はモルタルを流し込んで硬化させた耐火筒を備えた構成の耐火ダクトであってもよい。
【0038】
また、上述した耐火構造100では、耐火ダクト1の外側ダクト3の外周面3aと木製部材10の貫通孔11の内周面11aとの間において、外側ダクト3の周囲に空気層13を設けた構成を例示したが、例えば、外側ダクト3の外周面3aと木製部材10の貫通孔11の内周面11aとが一部接触しているような構成であっても構わない。
【0039】
また、内側ダクト2及び外側ダクト3は、金属製の角管状ダクトであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 耐火ダクト、2 内側ダクト、3 外側ダクト、4 耐火材、 10 木製部材、11 貫通孔、12 石こうボード(耐火ボード)、13 空気層、14 耐火材、
100 耐火構造。