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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133785
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】プロテクタおよびワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20240926BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240926BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 062
B60R16/02 620C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043749
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸次
(72)【発明者】
【氏名】土田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】柴田 友容
(72)【発明者】
【氏名】井口 杉之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓将
【テーマコード(参考)】
5G357
5G371
【Fターム(参考)】
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD02
5G357DG04
5G371AA01
5G371BA01
5G371CA01
(57)【要約】
【課題】異物の侵入を抑制することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】プロテクタ1において、回転部3は、延在方向Xの一端が開放される筒部30と、筒部30の延在方向Xの他端を閉じると共に上下方向Zから見た場合に円弧状に形成される端壁部33と、筒部30から下方に突出した軸部34と、を有し、ベース部2は、軸部34を回転中心Ax1回りに回転可能に支持すると共に、延在方向Xに沿ってスライドドア110の全閉状態に対応する第1位置P1とスライドドア110の全開状態に対応する第2位置P2との間でスライド可能に支持する長穴24aが形成された第1軸受部24を有し、端壁部33は、軸部34が第1位置P1に位置された状態において、円弧状に形成された当該端壁部33の円弧中心Ax2が軸部34の回転中心Ax1に対して第2位置P2側に位置するように偏心して設けられる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のスライドドアに固定されるベース部と、
前記ベース部に対して前記車両の上下方向に沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持され、かつ前記車両のボディから前記スライドドアに渡って配索される配索材が挿通される回転部と、
を備え、
前記回転部は、前記上下方向と交差する延在方向に沿って延在すると共に当該延在方向の一端が開放され前記配索材が挿通される筒部と、前記筒部の前記延在方向の他端を閉じると共に前記上下方向から見た場合に円弧状に形成される端壁部と、前記筒部から前記上下方向に沿って下方に突出した軸部と、を有し、
前記ベース部は、前記軸部を前記回転中心回りに回転可能に支持すると共に、前記延在方向に沿って前記スライドドアの全閉状態に対応する第1位置と前記スライドドアの全開状態に対応する第2位置との間でスライド可能に支持する長穴が形成された第1軸受部を有し、
前記端壁部は、前記軸部が前記第1位置に位置された状態において、前記円弧状に形成された当該端壁部の円弧中心が前記軸部の前記回転中心に対して前記第2位置側に位置するように偏心して設けられる、
プロテクタ。
【請求項2】
前記軸部が前記第1位置に位置された状態において、前記端壁部が前記第1軸受部の前記長穴を閉塞している、
請求項1に記載のプロテクタ。
【請求項3】
前記筒部は、前記上下方向において互いに嵌合する半筒状の第1部品および半筒状の第2部品を有し、
前記第1部品には、前記端壁部の一部を構成する第1端壁部が設けられ、
前記第2部品には、前記端壁部の一部を構成し前記第1端壁部と前記上下方向に並んで位置される第2端壁部が設けられる、
請求項1または2に記載のプロテクタ。
【請求項4】
前記回転部は、前記筒部から前記上下方向に沿って上方に突出すると共に、前記筒部の内部空間と連通して前記配索材が挿通される円筒部を有し、
前記ベース部は、前記円筒部を前記回転中心回りに回転可能に支持すると共に、前記延在方向に沿ってスライド可能に支持する長穴が形成された第2軸受部を有する、
請求項1または2に記載のプロテクタ。
【請求項5】
導電性を有する配索材と、
前記配索材を保護するプロテクタと、を備え、
前記プロテクタは、
車両のスライドドアに固定されるベース部と、
前記ベース部に対して前記車両の上下方向に沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持され、かつ前記車両のボディから前記スライドドアに渡って配索される前記配索材が挿通される回転部と、
を備え、
前記回転部は、前記上下方向と交差する延在方向に沿って延在すると共に当該延在方向の一端が開放され前記配索材が挿通される筒部と、前記筒部の前記延在方向の他端を閉じると共に前記上下方向から見た場合に円弧状に形成される端壁部と、前記筒部から前記上下方向に沿って下方に突出した軸部と、を有し、
前記ベース部は、前記軸部を前記回転中心回りに回転可能に支持すると共に、前記延在方向に沿って前記スライドドアの全閉状態に対応する第1位置と前記スライドドアの全開状態に対応する第2位置との間でスライド可能に支持する長穴が形成された第1軸受部を有し、
前記端壁部は、前記軸部が前記第1位置に位置された状態において、前記円弧状に形成された当該端壁部の円弧中心が前記軸部の前記回転中心に対して前記第2位置側に位置するように偏心して設けられる、
ワイヤハーネス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテクタおよびワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワイヤハーネスのプロテクタに関する技術として、例えば、特許文献1には、車両のスライドドアに固定されるベース部と、ベース部に対して車両の上下方向に沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持され、かつ車両のボディからスライドドアに渡って配索される配索材が挿通される回転部と、を備えたプロテクタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-102950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のプロテクタでは、例えば、ベース部には、回転部を車両の上下方向に沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持すると共に、上下方向と交差する延在方向に沿ってスライド可能に支持する長穴が形成された軸受部が設けられる場合がある。この場合、例えば、軸受部の長穴が回転部によって覆われずに露出してしまい、当該軸受部の長穴内に異物等が侵入してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、異物の侵入を抑制することができるプロテクタおよびワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るプロテクタは、車両のスライドドアに固定されるベース部と、前記ベース部に対して前記車両の上下方向に沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持され、かつ前記車両のボディから前記スライドドアに渡って配索される配索材が挿通される回転部と、を備え、前記回転部は、前記上下方向と交差する延在方向に沿って延在すると共に当該延在方向の一端が開放され前記配索材が挿通される筒部と、前記筒部の前記延在方向の他端を閉じると共に前記上下方向から見た場合に円弧状に形成される端壁部と、前記筒部から前記上下方向に沿って下方に突出した軸部と、を有し、前記ベース部は、前記軸部を前記回転中心回りに回転可能に支持すると共に、前記延在方向に沿って前記スライドドアの全閉状態に対応する第1位置と前記スライドドアの全開状態に対応する第2位置との間でスライド可能に支持する長穴が形成された第1軸受部を有し、前記端壁部は、前記軸部が前記第1位置に位置された状態において、前記円弧状に形成された当該端壁部の円弧中心が前記軸部の前記回転中心に対して前記第2位置側に位置するように偏心して設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るプロテクタおよびワイヤハーネスは、端壁部は、軸部が第1位置に位置された状態において、円弧状に形成された当該端壁部の円弧中心が軸部の回転中心に対して第2位置側に位置するように偏心して設けられる。この構成により、プロテクタおよびワイヤハーネスは、例えば、軸部の回転中心に対して偏心して設けられた端壁部および当該端壁部と接続される筒部の下壁によって第1軸受部の長穴を覆うことができ、ひいては軸部が第1位置に位置された状態で第1軸受部の長穴が回転部に対して露出してしまうことを抑制できる。この結果、プロテクタおよびワイヤハーネスは、第1軸受部の長穴内への異物の侵入を抑制することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な正面図である。
図2図2は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な側面図である。
図3図3は、実施形態に係るプロテクタが適用されるワイヤハーネスの例示的な斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るプロテクタの例示的な分解斜視図であって、回転部がベース部に対してスライドドアの全閉状態に対応する第1位置に位置された状態の図である。
図5図5は、図4のプロテクタにおける回転部の例示的な断面図である。
図6図6は、実施形態に係るプロテクタの例示的な分解斜視図であって、回転部がベース部に対してスライドドアの全開状態に対応する第2位置に位置された状態の図である。
図7図7は、実施形態に係るプロテクタのスライドドアの開閉に伴う動作を説明する例示的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、下記実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。なお、本明細書では、序数は、部品や、部材、部位、位置、方向等を区別するためだけに用いられており、順番や優先度を示すものではない。
【0010】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るプロテクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの正面図であり、図2は、ワイヤハーネスWHの側面図である。図1、2に示される本実施形態のプロテクタ1は、車両100に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両100に搭載される各機器間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる配索材Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。本実施形態のワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wを保護するプロテクタ1と、を備えている。なお、ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブや、グロメット、電気接続箱、固定具、コネクタなど種々の構成部品を含んで構成されてもよい。
【0011】
なお、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「延在方向X」といい、第2方向を「奥行方向Y」といい、第3方向を「上下方向Z」という。ここでは、延在方向Xと奥行方向Yと上下方向Zとは、相互に略直交する。延在方向Xは、典型的には、プロテクタ1の延在方向、後述するプロテクタ1の回転部3がベース部2に対して第1位置P1(図3参照)に位置された状態での回転部3(筒部30)の延在方向、車両前後方向等に相当する。奥行方向Yは、典型的には、プロテクタ1の奥行方向(厚さ方向)、プロテクタ1の回転部3がベース部2に対して第1位置P1(図3参照)に位置された状態での回転部3(筒部30)の奥行方向、車両幅方向等に相当する。上下方向Zは、典型的には、プロテクタ1の上下方向(高さ方向)、車両上下方向等に相当する。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、プロテクタ1が車両に組み付けられた状態での方向として説明する。
【0012】
図1、2に示されるように、本実施形態のプロテクタ1は、車両100のスライドドア110に配置されるスライドドア用プロテクタである。車両100は、奥行方向Y(車両幅方向)の両側に配置された一対のスライドドア110A,110B(図2参照)を有している。スライドドア110は、車両100のボディ120に対して延在方向X(車両前後方向)に沿ってスライドする。車両100は、スライドドア110を延在方向Xに沿って移動させるモータ等の駆動機構を有している。プロテクタ1には、ボディ120からスライドドア110に渡って配索される配索材Wが挿通される。
【0013】
配索材Wは、例えば、複数の電線が束ねられた電線束と、当該電線束を覆う筒状の外装材と、を含んで構成される。外装材は、例えば、コルゲートチューブ等である。配索材Wは、電線束に外装材が装着された装着状態において、相対的に高い柔軟性、良好な屈曲性を有する。本実施形態の配索材Wは、電線束に外装材が装着された装着状態において、外力を加えていない自然の状態(略直線状態)から、外力を加えて屈曲させた屈曲状態にすると、屈曲された部分が弾性変形し屈曲部分に弾性反力が生じて元の状態に戻ろうとするものである。
【0014】
図1に示されるように、配索材Wにおける一方の端部は、スライドドア110の装置130に接続される。装置130は、スライドドア110を開閉させるためのスイッチ等を含む。配索材Wにおける他方の端部は、ボディ120(図2参照)に配置された電源や制御装置等に接続される。ボディ120には、配索材Wを保持する保持部材140が設けられている。配索材Wは、保持部材140からスライドドア110のプロテクタ1へと奥行方向Y(車両幅方向)に沿って延在する。保持部材140、およびプロテクタ1は、スライドドア110の動作に伴って配索材Wが追従するように当該配索材Wの一部を保持している。
【0015】
プロテクタ1は、例えば、スライドドア110に固定されるベース部2と、ベース部2によって上下方向Zに沿って延びる回転中心回りに回転可能に支持される回転部3と、を備えている。配索材Wは、回転部3およびベース部2に挿通される。図2に示されるように、ベース部2は、スライドドア110のパネル111に対して固定される。パネル111は、例えば、インナパネルである。スライドドア110は、パネル111を覆う内装材112を有している。回転部3は、例えば、内装材112によって覆われておらず、内装材112と干渉することなく回転可能である。ベース部2は、例えば、車両100の室内空間に向けて露出している。
【0016】
図3は、プロテクタ1が適用されるワイヤハーネスWHの斜視図であり、図4は、プロテクタ1の分解斜視図であって、回転部3がベース部2に対してスライドドア110の全閉状態に対応する第1位置P1に位置された状態の図である。図3、4に示されるように、ベース部2は、例えば、第1軸受部24と、第2軸受部23と、通路部25と、取付部26と、接続部27と、を含んで構成される。第1軸受部24および第2軸受部23は、回転部3を上下方向Zに沿って延びる回転中心Ax1回りに回転可能に支持する部分である。第1軸受部24および第2軸受部23は、ベース部2において、上下方向Zに互いに間隔をあけて設けられている。
【0017】
ここでまず、第1軸受部24の説明の前に第2軸受部23について先に説明する。第2軸受部23は、上下方向Zにおいて、回転部3の上方に設けられている。第2軸受部23には、回転部3の後述する円筒部35(図4参照)を、回転中心Ax1回りに回転可能に支持すると共に、延在方向Xに沿ってスライド可能に支持する長穴23aが設けられている。具体的には、長穴23aは、第1溝部23a1と、第1溝部23a1と連通すると共に当該第1溝部23a1に対して延在方向Xにずれて位置される第2溝部23a2と、を含んで構成される。
【0018】
第1溝部23a1は、回転部3がスライドドア110の全閉状態に対応する第1位置P1に位置された状態で、円筒部35と係合する部分である。第1溝部23a1は、円筒部35の外周面に沿った円弧状(半円状)に形成される。第2溝部23a2は、回転部3がスライドドア110の全開状態に対応する第2位置P2(図6参照)に位置された状態で、円筒部35と係合する部分である。第2溝部23a2は、円筒部35の外周面に沿った円弧状(半円状)に形成される。長穴23aは、上述した第1溝部23a1および第2溝部23a2によって、全体として延在方向Xに沿って横長な略楕円状に構成される。
【0019】
また、ベース部2は、例えば、ケース21と、カバー22(図3参照)と、を含む複数の部品が組み合わせて構成されており、第2軸受部23は、ケース21およびカバー22のそれぞれに設けられた半筒状の部分を組み合わせて構成される。ケース21およびカバー22は、例えば、樹脂材料等によって形成される。カバー22は、ケース21に対して奥行方向Yの一方側に積層された状態で組付けられる。ケース21とカバー22とは、互いに別体に形成され、例えば、爪嵌合によるスナップフィットによって互いに一体化される。
【0020】
第1軸受部24は、上下方向Zにおいて、回転部3の下方に設けられている。第1軸受部24には、回転部3の後述する軸部34(図5参照)を、回転中心Ax1回りに回転可能に支持すると共に、延在方向Xに沿ってスライド可能に支持する長穴24aが設けられている。長穴24aは、上述した長穴23aと同様に、第1溝部24a1と、第1溝部24a1と連通すると共に当該第1溝部24a1に対して延在方向Xにずれて位置される第2溝部24a2と、を含んで構成される。
【0021】
第1溝部24a1は、回転部3がスライドドア110の全閉状態に対応する第1位置P1に位置された状態で、軸部34と係合する部分である。第1溝部24a1は、軸部34の外周面に沿った円弧状(半円状)に形成される。第2溝部24a2は、回転部3がスライドドア110の全開状態に対応する第2位置P2に位置された状態で、軸部34と係合する部分である。第2溝部24a2は、軸部34の外周面に沿った円弧状(半円状)に形成される。長穴24aは、上述した第1溝部24a1および第2溝部24a2によって、全体として延在方向Xに沿って横長な略楕円状に構成される。また、長穴24aは、第2軸受部23の長穴23aと上下方向Zに重なって位置される。
【0022】
図3に示されるように、通路部25は、内部に配索材Wが挿通される部分である。通路部25は、上下方向Zにおいて、第2軸受部23の上方に設けられており、上下方向Zに沿って延在している。通路部25は、例えば、ケース21に設けられた樋部21aと、カバー22に設けられた平板状の板部22aと、を組み合わせることによって構成される。通路部25の内部空間は、回転部3の内部空間36、37と連通している。これにより、配索材Wは、回転部3とベース部2とに渡って挿通される。
【0023】
取付部26は、ベース部2をスライドドア110に固定するための部分である。取付部26は、延在方向Xにおいて、第2軸受部23の両側に設けられており、延在方向Xに沿って延在している。取付部26は、例えば、ケース21に設けられた張出部と、カバー22に設けられた張出部と、を組み合わせることによって構成される。取付部26には、ベース部2とスライドドア110とを締結するボルト等の締結部材が奥行方向Yに貫通する貫通孔2a、2bが設けられている。
【0024】
接続部27は、第1軸受部24と第2軸受部23とを接続するための部分である。接続部27は、例えば、底壁27aと、立壁27bと、を含んで構成される。接続部27は、底壁27aおよび立壁27bによって、全体として回転部3側に向けて開放された略L字状に形成される。底壁27aは、例えば、平板状に形成され、奥行方向Yに沿って延在している。底壁27aには、上述した長穴24aが形成された筒状の第1軸受部24が上方に突出して設けられている。立壁27bは、例えば、平板状に形成され、上下方向Zに沿って延在している。立壁27bは、底壁27aの奥行方向Yの他端部と第2軸受部23の奥行方向Yの他端部とを接続している。
【0025】
図5は、図4のプロテクタ1における回転部3の断面図である。図4、5に示されるように、回転部3は、例えば、筒部30と、端壁部33と、軸部34と、円筒部35と、を含んで構成される。筒部30は、内部に配索材Wが挿通されると共に、ベース部2に対して上下方向Zに沿って延びる回転中心Ax1回りに回転(回動、揺動)する部分である。筒部30は、上下方向Zと交差する方向としての図4、5では延在方向Xに沿って延在しており、上述したスライドドア110の開閉に応じて回転する。
【0026】
また、筒部30は、例えば、半筒状の第1部品31と、半筒状の第2部品32と、を含む複数の部品が組み合わせて構成される。第1部品31および第2部品32は、例えば、樹脂材料等によって形成される。第1部品31は、第2部品32に対して上下方向Zの上方側に積層された状態で組付けられる。第1部品31と第2部品32とは、互いに別体に形成され、例えば、爪嵌合によるスナップフィットによって互いに一体化される。筒部30は、第1部品31と第2部品32とが相互に組み付けられることで、全体として略矩形の筒状に形成される。
【0027】
第2部品32は、例えば、下壁32aと、当該下壁32aと交差した一対の側壁32bと、を有しており、延在方向Xと交差した断面が略U字状に形成される。下壁32aおよび一対の側壁32bは、筒部30の内部空間36を区画するための構造体である。内部空間36は、配索材Wが挿通および配索される空間部である。下壁32aは、例えば、平板状に形成され、延在方向Xに沿って延在している。一対の側壁32bは、下壁32aの奥行方向Yの両端部から上下方向Zの上方側に突出して形成され、延在方向Xに沿って延びている。
【0028】
第1部品31は、第2部品32に組み付けられ、当該第2部品32における内部空間36を上下方向Zの上方側から覆う(塞ぐ)ものである。第1部品31は、例えば、上壁31aと、当該上壁31aと交差した一対の側壁31bと、を有しており、延在方向Xと交差した断面が略U字状に形成される。上壁31aおよび一対の側壁31bは、筒部30の内部空間36を区画するための構造体である。上壁31aは、例えば、下壁32aに沿った平板状に形成され、下壁32aと上下方向Zに間隔をあけて設けられている。一対の側壁31bは、上壁31aの奥行方向Yの両端部から上下方向Zの下方側に突出して形成され、一対の側壁32bの内側に重ねられている。
【0029】
端壁部33は、第1部品31および第2部品32によって構成される筒部30の延在方向Xの他端(内部空間36の開放端とは反対側)を閉じるための部分である。図4に示されるように、端壁部33は、例えば、上下方向Zから見た場合に円弧状に形成され、上下方向Zに沿って延在している。端壁部33は、上壁31aの延在方向Xの他端部と下壁32aの延在方向Xの他端部とを接続している。これにより、筒部30には、上壁31a、下壁32a、一対の側壁31b、32b、および端壁部33によって囲まれ、延在方向Xの一方側に開放された内部空間36が設けられている。
【0030】
また、端壁部33は、例えば、第1部品31に設けられた第1端壁部31dと、第2部品32に設けられた第2端壁部32cと、を含んで構成される。第1端壁部31dおよび第2端壁部32cは、それぞれ、延在方向Xの他方側(内部空間36の開放端とは反対側)に凸の状態で円弧状(半円状)に湾曲している。第1端壁部31dの外面には、第2端壁部32cが係合する凹部31e(図5参照)が設けられており、第1端壁部31dと第2端壁部32cとが上下方向Zに並んだ状態で組み付けられている。これにより、第1端壁部31dと第2端壁部32cとの間に延在方向Xの段差等が設けられることなく、第1端壁部31dの外面と第2端壁部32cの外面とが上下方向Zに一直線状に並んで配置されている。
【0031】
円筒部35は、ベース部2の第2軸受部23によって回転中心Ax1回りに回転可能に支持されると共に、延在方向Xに沿ってスライド可能に支持される部分である。円筒部35は、第1部品31の上壁31aから上下方向Zの上方側に突出している。円筒部35の断面形状は、円形である。円筒部35は、筒部30の延在方向Xの他端部に設けられている。円筒部35の内部空間37は、筒部30の内部空間36と連通している。これにより、配索材Wは、筒部30と円筒部35とに渡って挿通される。
【0032】
軸部34は、ベース部2の第1軸受部24によって回転中心Ax1回りに回転可能に支持されると共に、延在方向Xに沿ってスライド可能に支持される部分である。軸部34は、第2部品32の下壁32aから上下方向Zの下方側に突出している。軸部34の断面形状は、円形である。軸部34は、筒部30の延在方向Xの他端部に設けられている。軸部34は、円筒部35に対して同軸に構成されており、軸部34の回転中心Ax1と円筒部35の回転中心Ax1とは一致している。軸部34は、スライドドア110の全閉状態に対応する第1位置P1に位置された状態では、長穴24aの延在方向Xの一端部(第1溝部24a1)に位置され、スライドドア110の全開状態に対応する第2位置P2に位置された状態では、長穴24aの延在方向Xの他端部(第2溝部24a2)に位置される。
【0033】
ここで、本実施形態では、端壁部33は、軸部34が上述した第1位置P1に位置された状態において、円弧状に形成された当該端壁部33の円弧中心Ax2が軸部34の回転中心Ax1に対して第2位置P2側に位置するように偏心して設けられている。すなわち、端壁部33は、軸部34が第1位置P1に位置された状態、言い換えると軸部34(回転部3)が延在方向Xの一方側に寄せられた状態で、第1軸受部24の長穴24aを閉塞するように延在方向Xの他方側(第2位置P2側)に突出している。これにより、少なくとも軸部34が第1位置P1に位置された状態において、第1軸受部24の長穴24aが回転部3によって覆われずに露出してしまうことが抑制されている。
【0034】
図6は、プロテクタ1の分解斜視図であって、回転部3がベース部2に対してスライドドア110の全開状態に対応する第2位置P2に位置された状態の図であり、図7は、プロテクタ1のスライドドア110の開閉に伴う動作を説明する例示的な説明図である。図6、7に示されるように、本実施形態では、回転部3は、ベース部2に対して上下方向Zに沿って延びる回転中心Ax1回りに回転可能に支持されると共に、スライドドア110の全閉状態に対応する第1位置P1とスライドドア110の全開状態に対応する第2位置P2との間で延在方向Xに沿ってスライド可能に支持されている。
【0035】
具体的には、本実施形態では、例えば、スライドドア110の全閉状態から全開状態への移行時に、回転部3は、まずは第1位置P1から第2位置P2へと延在方向Xに沿ってスライド移動する。これにより、車両100のボディ120とスライドドア110とに渡って配索される配索材Wに角度をつけて当該配索材Wを奥行方向Yの一方側(車両幅方向内方側)に凸の状態で湾曲させ易くしている。そして、回転部3は、第2位置P2に位置された状態で上下方向Zに沿って延びる回転中心Ax1回りに回転しつつ、配索材Wをスライドドア110の全開状態に対応する位置まで移動させる。なお、スライドドア110の全開状態から全閉状態への移行時については、上述した動作と逆の動作を行うことによって、配索材Wをスライドドア110の全閉状態に対応する位置まで移動させることができる。
【0036】
ここで、スライドドア110の全閉状態においては、プロテクタ1は、車両100の室内空間に露出して設けられる。このため、上述した回転部3の端壁部33は、少なくとも軸部34が第1位置P1に位置された状態において、第1軸受部24の長穴24aを閉塞するように構成されている。また、本実施形態では、端壁部33は、上下方向Zから見た場合に円弧状に構成されている。これにより、回転部3のベース部2に対する回転中心Ax1回りの回転に伴って端壁部33と接続部27の立壁27bとが干渉してしまうことを抑制している。
【0037】
以上のように、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、端壁部33は、軸部34が第1位置P1に位置された状態において、円弧状に形成された当該端壁部33の円弧中心Ax2が軸部34の回転中心Ax1に対して第2位置P2側に位置するように偏心して設けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、軸部34の回転中心Ax1に対して偏心して設けられた端壁部33および当該端壁部33と接続される筒部30の下壁32aによって第1軸受部24の長穴24aを覆うことができ、ひいては軸部34が第1位置P1に位置された状態で第1軸受部24の長穴24aが回転部3に対して露出してしまうことを抑制できる。この結果、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、第1軸受部24の長穴24a内への異物の侵入を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、軸部34が第1位置P1に位置された状態において、端壁部33が第1軸受部24の長穴24aを閉塞している。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、端壁部33および筒部30の下壁32aによって第1軸受部24の長穴24aを閉塞することができるため、軸部34が第1位置P1に位置された状態で第1軸受部24の長穴24aが回転部3に対して露出してしまうことをより確実に抑制できる。この結果、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、第1軸受部24の長穴24a内への異物の侵入をより確実に抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、筒部30は、上下方向Zにおいて互いに嵌合する半筒状の第1部品31および半筒状の第2部品32を有し、第1部品31には、端壁部33の一部を構成する第1端壁部31dが設けられ、第2部品32には、端壁部33の一部を構成し第1端壁部31dと上下方向Zに並んで位置される第2端壁部32cが設けられる。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、第1端壁部31dおよび第2端壁部32cによって端壁部33に上下方向Zと交差する延在方向Xの段差等が設けられることなく当該端壁部33をスムーズに繋げることができ、ひいては回転部3の意匠性を向上することができる。
【0040】
また、本実施形態のプロテクタ1およびワイヤハーネスWHでは、回転部3は、筒部30から上下方向Zに沿って上方に突出すると共に、筒部30の内部空間36と連通して配索材Wが挿通される円筒部35を有し、ベース部2は、円筒部35を回転中心Ax1回りに回転可能に支持すると共に、延在方向Xに沿ってスライド可能に支持する長穴23aが設けられた第2軸受部23を有する。この構成により、プロテクタ1およびワイヤハーネスWHは、例えば、第2軸受部23および第1軸受部24によって回転部3の上下方向Zの両側を支持することができるため、回転部3をより安定して回転中心Ax1回りに回転させたり、延在方向Xに沿ってスライドさせたりすることができる。
【0041】
なお、本実施形態では、端壁部33は、軸部34が第1位置P1に位置された状態において、第1軸受部24の長穴24aを閉塞するように構成されたが、この例には限定されず、例えば、軸部34が第2位置P2に位置された状態、あるいは軸部34が第1位置P1および第2位置P2の双方に位置された状態で、第1軸受部24の長穴24aを閉塞するように構成されてもよい。
【0042】
以上、本発明の実施形態が例示されたが、上記実施形態は一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、組み合わせ、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、等のスペック(構造や、種類、方向、形式、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数、配置、位置、材質等)は、適宜に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 プロテクタ
2 ベース部
3 回転部
23 第2軸受部
23a 長穴
24 第1軸受部
24a 長穴
30 筒部
31 第1部品
31d 第1端壁部
32 第2部品
32c 第2端壁部
33 端壁部
34 軸部
35 円筒部
36 内部空間
100 車両
110 スライドドア
120 ボディ
Ax1 回転中心
Ax2 円弧中心
P1 第1位置
P2 第2位置
W 配索材
X 延在方向
Z 上下方向

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7