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特開2024-133787筋肉量増加用組成物および筋芽細胞分化促進用組成物
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  • 特開-筋肉量増加用組成物および筋芽細胞分化促進用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133787
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】筋肉量増加用組成物および筋芽細胞分化促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240926BHJP
   A61P 21/06 20060101ALI20240926BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240926BHJP
   A61K 36/03 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
A23L33/105
A61P21/06
A61P43/00 107
A61K36/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043752
(22)【出願日】2023-03-20
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】今井 愛理沙
(72)【発明者】
【氏名】野口 真行
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018LE05
4B018MD67
4B018ME14
4B018MF01
4C088AA13
4C088AC01
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA94
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】新規な筋肉量増加用組成物と筋芽細胞分化促進用組成物を提供すること。
【解決手段】ツルアラメ抽出物を含有する筋肉量増加用組成物および筋芽細胞分化促進用組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツルアラメ抽出物を含有することを特徴とする筋肉量増加用組成物。
【請求項2】
ツルアラメ抽出物を含有することを特徴とする筋芽細胞分化促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉量増加用組成物および筋芽細胞分化促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
筋肉量や筋力の低下は、生活の質(QOL)の低下のみならず、日常生活動作(ADL)の低下、合併症の発生、介護負担の増加にも密接に関連している。筋肉量や筋力の低下を防ぐために、運動の励行、アミノ酸やタンパク質等の栄養摂取が推奨されている。また筋力を増強するための健康食品やサプリメント等が提案されている。
【0003】
天然物由来の筋力増強用組成物として多くの提案がある。特許文献1には、フトモモ科の植物であるクローブが筋肉増強に有用であることが記載されている。特許文献2には小麦胚芽を有効成分とする筋肉増強用組成物が記載されている。特許文献3には、小麦蛋白質の加水分解物を含有する、筋肉増加用組成物が記載されている。特許文献4には、ケールおよび/またはケール搾汁液を含有することを特徴とする筋力増強用組成物が記載されている。
【0004】
ツルアラメ(学名:Ecklonia cava ssp. stolonifera)は、コンブ目コンブ科に属する大型の褐藻である。ツルアラメは、他のコンブ目の海藻類と比較して、ポリフェノールを多く含み、その機能性が報告されている。例えば、ツルアラメ抽出物が、高血糖抑制効果(非特許文献1)、抗アレルギー効果(非特許文献2)を有することが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-197491号公報
【特許文献2】特開2012-077010号公報
【特許文献3】特開2012-062309号公報
【特許文献4】特開2019-182748号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】岩井 邦久、松江 一、「褐藻ツルアラメの糖尿病モデルマウスにおける抗酸化および高血糖抑制効果」、日本栄養・食糧学会総会講演要旨集、60、203、2006.
【非特許文献2】Yoshimasa SUGIURA,Takayoshi TORII,Ryusuke TANAKA,Teruo MATSUSHITA,“Inhibitory Effect of Extracts from the Brown Alga, Ecklonia stolonifera, on Enzymes Responsible for Allergic Reactions and Degranulation in RBL-2H3 Cells” Food Science and Technology Research,2012,18,3,467-471.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な筋肉量増加用組成物と筋芽細胞分化促進用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである、
1.ツルアラメ抽出物を含有することを特徴とする筋肉量増加用組成物。
2.ツルアラメ抽出物を含有することを特徴とする筋芽細胞分化促進用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、筋肉量増加用組成物および筋芽細胞分化促進用組成物を提供することができる。本発明の筋肉量増加用組成物と筋芽細胞分化促進用組成物は、食用でもあるツルアラメの抽出物を含有しており、安全性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ツルアラメ抽出物が、ミオシンの発現を促進することを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ツルアラメ抽出物を含有する筋肉量増加用組成物と筋芽細胞分化促進用組成物に関する。以下、本発明の筋肉量増加用組成物と筋芽細胞分化促進用組成物をまとめて、本発明の組成物ともいう。また、本明細書において「A~B」(A、Bは数値)との表記は、その両端を含む数値範囲を意味する。
【0012】
・ツルアラメ
ツルアラメ(学名:Ecklonia cava ssp. stolonifera)は、コンブ目コンブ科に属する大型の褐藻である。ツルアラメは、日本海に広く生息しており、東北から北陸の日本海沿岸地域では、冬から初夏までに収穫される若芽が食用とされている。
ツルアラメの抽出部位は、特に制限されず、例えば、葉部、茎部、仮根部のいずれでもよく、好ましくは、葉部である。
【0013】
抽出物を得るための抽出溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフランやジエチルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタンやクロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチルや蟻酸エチルなどのエステル類、ヘキサン、水等を使用することができ、相溶する2種以上の混合溶媒を使用することもできる。これらの中で安全性の点から水、エタノール、水とエタノールの混合溶媒が好ましく、水がより好ましい。抽出方法は、特に制限されないが、二相溶媒分配法や分配高速クロマトグラフィー法を用いる方法が好ましい。
抽出温度は、通常、0~100℃の範囲内である。水で抽出する場合は、抽出温度は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。抽出溶媒量は、被抽出物に対して1~100倍、好ましくは5~10倍である。
【0014】
抽出物は、公知の方法により、精製することができる。例えば、不溶物を濾過、遠心分離、デカンテ-ション等により除去した後、必要に応じて脱色、脱臭の目的で活性炭、活性白土、シリカゲル、活性アルミナ合成樹脂等の吸着剤や、溶剤分画、逆浸透膜、イオン交換体等によって分画、精製、濃縮することができる。
得られた抽出物は、抽出液そのまま、あるいは、減圧濃縮、スプレ-ドライまたは凍結乾燥等の方法で粉末化したものを使用することができる。
【0015】
本発明の組成物は、ツルアラメ抽出物を含有すればよく、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の化合物と混合することができる。本発明の組成物は、食品、飲料、サプリメント等の健康食品、医薬品等として使用することができる。
食品としては、通常の食品の他、栄養補助食品、機能性食品、健康食品、特定保健用食品等とすることができる。飲料としては、例えば、清涼飲料、果実飲料、乳清飲料、アルコール飲料等に配合することができる。
【0016】
サプリメントや医薬品とする場合、形態としては、例えば、粉末、散剤、顆粒、錠剤、カプセル等の固形剤、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等が挙げられる。この際、担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチレンデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アミノ酸、ゼラチン、アルブミン、水、生理食塩水等を用いることができる。また、必要に応じて、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤、等張化剤等の添加剤を適宜添加することもできる。
【実施例0017】
1.細胞培養
マウス骨格筋由来筋芽細胞株C2C12細胞を10%FBS(Thermo)、1%Penicillin/Streptomycin含有DMEM(high glucose:Thermo)培地にて、細胞密度3×10cells/wellで96well plate(greiner)に播種し、24時間培養した。
その後、培養上清を除去し、2%Horse serum(Thermo)、1%Penicillin/Streptomycin含有DMEM(high glucose:Thermo)およびツルアラメエキス(15.0μg/ml、30μg/ml、熱水抽出物)を添加した。陽性対照として、筋芽細胞の筋管への分化を促すall-trans-レチノイン酸(ATRA)(sigma)を最終濃度1μMになるように添加し、コントロールとして、ツルアラメエキスを添加しない以外は同様にした。
分化培地へ交換した日を分化0日目とし、分化3日目で細胞を4%paraformaldehyde phosphate buffer solution固定にて回収した。
【0018】
2.CELL ELISA(ミオシン発現の測定)
0.1%Tween20含有PBS(PBS-T)を作成した。
各wellをPBSで洗浄した。洗浄後、0.1%Triton-X100含有PBS-Tを添加し、室温で15分静置した。上清を除去し、PBS-Tで洗浄した。洗浄後、25%Blocking one(nakalai tesque)含有PBS-T(blocking buffer)を添加し、室温で1時間静置した。上清を除去し、blocking bufferにて2000倍希釈したmyosin4 monoclonal antibody,MF20(Thermo)を100μL/wellで添加し、室温で1時間静置した。上清を除去し、PBS-Tで洗浄した。洗浄後、blocking bufferにて2000倍希釈したGoat anti-mouse IgG2b cross-absorbed secondary antibody,HRP(Thermo)を100μL/wellで添加し、室温で1時間静置した。上清を除去し、PBS-Tで洗浄した。洗浄後、TMB(funakoshi)を100μL/wellで添加し、室温で15分静置した。その後、1Nの塩酸を100μL/wellで添加し、450nmの波長で吸光度(Ab450)を測定した。
【0019】
さらに、上清を除去し、PBS-T、PBSで各々洗浄した。洗浄後、Crystal violet solution(sigma)を100μL/wellで添加し、室温で30分静置した。上清を除去し、脱イオン水で洗浄した。洗浄後、1%SDS含有bufferを100μL/wellで添加し、室温で1時間振とうした。その後、595nmの波長で吸光度(Ab595)を測定した。
ミオシンの発現は、上記で求めた吸光度の比(Ab450/Ab595)より評価した。コントロールの吸光度の比(Ab450/Ab595)の値を1とした結果を図1に示す。
【0020】
・結果
ミオシンは、筋芽細胞が筋管細胞への分化後に発現するタンパク質である。
ツルアラメ抽出物により、ミオシンの発現が増加していることが確かめられた。このことから、ツルアラメ抽出物が、筋芽細胞の分化を促進し、筋肉量を増加させることが期待できる。また、陽性対照のATRA添加によってもミオシンの発現量が増加することが確認できた。このことから、当該実施例に用いた試験系が筋肉量増強効果と筋芽細胞分化促進効果の評価系として成立していることが確かめられた。
図1