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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133788
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】半導体製造装置、及び剥離部材
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/463 20060101AFI20240926BHJP
【FI】
H01L21/463
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043753
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川田原 奨
【テーマコード(参考)】
5F057
【Fターム(参考)】
5F057AA43
5F057BA19
5F057BB02
5F057CA40
5F057FA30
(57)【要約】
【課題】基板へのダメージを抑制しつつ貼合基板を剥離すること。
【解決手段】実施形態の半導体製造装置は、2つの基板が貼り合わされた貼合基板を支持可能な基板支持部と、基板支持部の外側に配置され、基板支持部に支持される貼合基板の貼合部に対して進退可能なアーム部と、アーム部の先端に設けられ、アーム部の貼合部への進入により2つの基板の間に介在可能であり、2つの基板のそれぞれと対向する面の端部には貼合部への進入方向に向かって下る傾斜面が形成された剥離部材と、を備え、傾斜面は進入方向に向かって流体を吐出可能な開口部を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの基板が貼り合わされた貼合基板を支持可能な基板支持部と、
前記基板支持部の外側に配置され、前記基板支持部に支持される前記貼合基板の貼合部に対して進退可能なアーム部と、
前記アーム部の先端に設けられ、前記アーム部の前記貼合部への進入により前記2つの基板の間に介在可能であり、前記2つの基板のそれぞれと対向する面の端部には前記貼合部への進入方向に向かって下る傾斜面が形成された剥離部材と、を備え、
前記傾斜面は前記進入方向に向かって流体を吐出可能な開口部を有する、
半導体製造装置。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記2つの基板のうち一方の前記基板と対向可能な第1の面に形成された第1の傾斜面と、前記2つの基板のうち他方の前記基板と対向可能な第2の面に形成された第2の傾斜面と、を有し、
前記第1の傾斜面と、前記第2の傾斜面と、は、前記剥離部材の先端部において連続する、
請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項3】
前記アーム部は、前記貼合部に対する前記アーム部の進入における圧力変化を検知するセンシング部を有し、
前記センシング部における検知結果に基づいて、前記流体の吐出量を調整可能な制御部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項4】
前記貼合部を撮像することにより前記貼合部の撮像画像を取得可能な撮像部と、
前記撮像画像に基づいて算出された前記2つの基板の間の距離に基づいて、前記流体の吐出量を調整可能な制御部と、
をさらに備える、
請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項5】
前記剥離部材の前記傾斜面は樹脂素材である、
請求項1に記載の半導体製造装置。
【請求項6】
2つの基板が貼り合わされた貼合基板を剥離する半導体製造装置に用いられる剥離部材であって、
前記貼合基板を支持可能な基板支持部の外側に配置され、かつ前記基板支持部に支持される前記貼合基板の貼合部に対して進退可能なアーム部の先端部に設けられ、前記アーム部を前記貼合部に進入させることにより前記2つの基板の間に介在可能であり、前記2つの基板のそれぞれと対向する面の端部には前記貼合部への進入方向に向かって下る傾斜面が形成され、
前記傾斜面は前記進入方向に向かって流体を吐出可能な開口部を有する、
剥離部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体製造装置、及び剥離部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程等において、メモリセルアレイが形成されるメモリセルチップと、メモリセルアレイを制御する制御回路が形成された基板同士が貼合されることがある。2つの基板が互いにずれて貼合されてしまった場合には、2つの基板の間にブレードを挿入し、基板を剥離することがある。
【0003】
このとき、ブレードが基板に接触することにより、基板に傷を生じさせる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2015-534723号公報
【特許文献2】国際公開第2015/041165号
【特許文献3】特開2000-53316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの実施形態は、基板へのダメージを抑制しつつ貼合基板を剥離可能な半導体製造装置、及び剥離部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の半導体製造装置は、2つの基板が貼り合わされた貼合基板を支持可能な基板支持部と、前記基板支持部の外側に配置され、前記基板支持部に支持される前記貼合基板の貼合部に対して進退可能なアーム部と、前記アーム部の先端に設けられ、前記アーム部の前記貼合部への進入により前記2つの基板の間に介在可能であり、前記2つの基板のそれぞれと対向する面の端部には前記貼合部への進入方向に向かって下る傾斜面が形成された剥離部材と、を備え、前記傾斜面は前記進入方向に向かって流体を吐出可能な開口部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態にかかる半導体製造装置の全体構成の一例を模式的に示す透視上面図。
図2】実施形態にかかる半導体製造装置が備える処理室の詳細の構成の一例を示す側面図。
図3】実施形態にかかる半導体製造装置が備える剥離アームユニットの一部の構成例を示す斜視図。
図4】実施形態にかかる半導体製造装置が備える剥離アームユニットの一部の構成例を示す上面図。
図5】実施形態にかかる半導体製造装置が備えるブレードが貼合部に介在する様子について説明する図。
図6】実施形態にかかる半導体製造装置を用いた貼合基板の剥離処理の手順の一部を順に例示する図。
図7】実施形態にかかる半導体製造装置を用いた貼合基板の剥離処理の手順の一部を順に例示する図。
図8】実施形態にかかる半導体製造装置を用いた貼合基板の剥離処理の手順の一部を順に例示する図。
図9】実施形態にかかる半導体製造装置を用いた貼合基板の剥離処理の手順の一部を順に例示する図。
図10】実施形態にかかる半導体製造装置を用いた貼合基板の剥離処理の手順の一部を順に例示する図。
図11】変形例にかかる半導体製造装置が備える処理室の構成の一例を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0009】
(基板剥離装置の構成例)
図1は、実施形態にかかる半導体製造装置1の全体構成の一例を模式的に示す透視上面図である。
【0010】
実施形態の半導体製造装置1は、貼合基板Wを剥離してこれを構成する2つの基板に分離することが可能な基板剥離装置として構成されている。
【0011】
実施形態の半導体製造装置1の処理対象となる貼合基板Wは、回路素子がそれぞれ形成され、例えば1mm程度の厚さまで研磨された2つの基板を、例えば、対応する金属パッド同士が電気的に接続されるように貼り合せることにより形成されている。
【0012】
貼り合わせ後には、位置合わせ精度が基準内に収まっているかどうかの検査が行われる。不合格と判定された場合、貼合基板Wは、本実施形態による半導体製造装置1によって剥離処理がなされる。剥離処理により分離された2つの基板は、再度、位置合わせを経て、貼り合わされる。
【0013】
図1に示すように、実施形態の半導体製造装置1は、処理室10a、搬送室20、複数のポート30、及び制御部50を備える。
【0014】
処理室10aは、処理対象の貼合基板Wの剥離処理を行うための空間である。搬入口15から処理室10aに搬送された貼合基板Wは、チャックユニット11によって支持される。劈開位置調整用サイドカメラ13によって、貼合基板Wと、剥離アームユニット12aと、の高さ合わせがなされると、剥離アームユニット12aの一部がチャックユニット11の中心に向かって移動し、貼合基板Wの貼合面に進入する。これにより、貼合基板Wは、分離される。
【0015】
搬送室20は、貼合基板W、及び分離が完了した2つの基板を搬送するための空間である。搬送室20は、処理室10aに接続されている。搬送室20は、処理前の貼合基板Wの位置調整を行うプリアライメントユニット21と、貼合基板Wの搬送を行う搬送アーム22Aと、分離が完了した2つの基板の搬送を行う搬送アーム22Bと、を有する。
【0016】
プリアライメントユニット21は、貼合基板Wの中心位置のずれを補正する。プリアライメントユニット21は、例えば貼合基板Wのエッジ付近の上下方向に配置された図示せぬ発光部及び受光部を備える。貼合基板Wのエッジが発光部及び受光部間の光を遮ることで、受光部における検出光の光量が変化して貼合基板Wのエッジが検出される。プリアライメントユニット21はエッジの検出結果に基づいて貼合基板Wの中心位置のずれを補正した状態で、貼合基板Wを搬送アーム22Aに受け渡す。
【0017】
搬送アーム22Aは、半導体製造装置1の各部へ貼合基板Wを搬送する。搬送アーム22Aは、ポート30から、搬送室20へ、また、搬送室20からプリアライメントユニット21へ、そして、プリアライメントユニット21から、処理室10aへと、未処理の貼合基板Wを搬送する。
【0018】
搬送アーム22Bは、半導体製造装置1の各部へ、分離された2つの基板を搬送する。搬送アーム22Bは、処理室10aから搬送室20へ、そして、搬送室20からポート30へと、分離された2つの基板を搬送する。
【0019】
ポート30は、貼合基板W、分離が完了した基板を格納する。ポート30は、搬送室20に接続されている。ポート30は、複数の基板を収容可能に構成される。
【0020】
制御部50は、半導体製造装置1の各部を制御する。制御部50は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備えるコンピュータとして構成され、半導体製造装置1の全体を制御する。
【0021】
次に図2を用いて、半導体製造装置1が備える処理室10aの詳細の構成例について説明する。
【0022】
図2は、実施形態にかかる半導体製造装置1が備える処理室10aの詳細の構成の一例を示す側面図である。
【0023】
図2に示すように、処理室10aは、チャックユニット11と、剥離アームユニット12aと、劈開位置調整用サイドカメラ13と、流体回収パン14と、搬入口15と、を有している。なお説明の便宜上、搬入口15の図示は省略する。
【0024】
なお、本明細書において、チャックユニット11によって支持される貼合基板Wと直交する方向を上下方向とする。このとき、貼合基板Wから見て、流体回収パン14が配置される方向を下方向、反対方向を上方向とする。
【0025】
基板支持部としてのチャックユニット11は、貼合部Tにおいて2つの基板が貼り合わされた貼合基板Wを支持するものである。貼合部Tは、貼合基板Wを構成する基板WU、と、基板WNと、が貼り合わされた部分である。チャックユニット11は、上下方向に離間して配置される上チャック11Aと、下チャック11Bと、を有する。
【0026】
上チャック11Aは、上方向からの視点で、円盤状に構成されている。上チャック11Aは、支持部11SAと、吸着ピン保持部材11HAと、を有する。
【0027】
吸着ピン保持部材11HAは、支持部11SAによってその中央部を上方から支持されている。吸着ピン保持部材11HAは、下方を向く吸着ピン保持面11MAを有する。吸着ピン保持面11MAには、複数の吸着ピン11PAが設けられている。複数の吸着ピン11PAは、貼合基板Wのうち、上側の基板WUと当接可能である。
【0028】
下チャック11Bは、下方向からの視点で、円盤状に構成されている。下チャック11Bは、支持部11SBと、吸着ピン保持部材11HBと、を有する。
【0029】
吸着ピン保持部材11HBは、支持部11SBによってその中央部を下方から支持されている。吸着ピン保持部材11HBは、上方向を向くとともに吸着ピン保持面11MAと対向する吸着ピン保持面11MBを有する。吸着ピン保持面11MBには、複数の吸着ピン11PBが設けられている。複数の吸着ピン11PBは、貼合基板Wのうち、下側の基板WNと当接可能である。
【0030】
吸着ピン11PA、11PBは、吸着ピン保持面11MA、11MBのそれぞれにおいて、例えば幾つかの仮想的な同心円に沿って配列されるように設けられている。吸着ピン11PA、11PBのそれぞれは、例えば円柱形状を有し、その円柱の中心軸に沿って内管(不図示)が形成されている。内管は、吸着ピン保持部材11HA、11HBの内部に形成される導管(不図示)と連通し、導管は、所定の配管(不図示)を通して吸引機構150に連通されている。吸着ピン11PAの下端が基板WUに接触し、また、吸着ピン11PBの上端が基板WNに接触すると、基板WU、及び基板WNは、導管と内管とを通して吸引機構150により吸引される。これにより、基板WU、及び基板WNは、吸着ピン11PA、11PBのそれぞれに吸着される。吸着ピン11PA、11PBは、個々に上下方向に移動可能に構成されている。
【0031】
上チャック11A、及び下チャック11Bのそれぞれは、チャックユニット駆動機構140を備える。上チャック11A、及び下チャック11Bのそれぞれは、チャックユニット駆動機構140により、上下方向に移動可能である。また、吸着ピン11PA、11PBのそれぞれもまた、チャックユニット駆動機構140により、上下方向に移動可能である。
【0032】
チャックユニット駆動機構140は、図示せぬモータ等を備えるアクチュエータである。チャックユニット駆動機構140は、制御部50からの指示にしたがって、チャックユニット11、及び吸着ピン11PA、11PBの上下方向の動作を制御する。これにより、基板WU、及び基板WNのそれぞれは、吸着ピン11PA、11PBのそれぞれに吸着された状態で、各々上下方向に移動可能となる。
【0033】
剥離アームユニット12aは、貼合基板Wの貼合部Tにブレード12Hを進入させるものである。剥離アームユニット12aは、チャックニット11の外側に配置されている。例えば、チャックユニット11を挟んで対向するように2つ配置されている。剥離アームユニット12aは、ブレード移動用台座12Dと、アーム部12Saと、ブレード12Hと、を有する。
【0034】
ブレード移動用台座12Dの上面12DMには、チャックユニット11の中心に向かって延びる図示せぬレールが設けられている。当該レールには、台座部分12DDが接続されている。また、台座部分12DDには、チャックユニット11の中心に向かって延びるアーム部12Saが接続されている。
【0035】
ブレード移動用台座12Dは、剥離アームユニット駆動機構160を備える。台座部分12DDは、剥離アームユニット駆動機構160により、チャックユニット11の中心に対して進退可能である。また、このような台座部分12DDの移動に伴い、アーム部12Saもまた、チャックユニット11の中心に対して進退可能である。
【0036】
ブレード移動用台座12Dは、剥離アームユニット駆動機構160により、上下方向に移動可能である。ブレード移動用台座12Dの上下方向の移動に伴い、アーム部12Saも、上下方向に移動可能である。
【0037】
剥離アームユニット駆動機構160は、図示せぬモータ等を備えるアクチュエータである。剥離アームユニット駆動機構160は、制御部50からの指示にしたがって、ブレード移動用台座12Dの、チャックユニット11の中心に向かう移動、及び上下方向の移動を制御する。
【0038】
アーム部12Saの端部には、チャックユニット11の中心に向かって延びるブレード12Hが接続されている。アーム部12Sa、及びブレード12Hの詳細の構成については、後述する。
【0039】
劈開位置調整用サイドカメラ13は、例えば画像センサである。劈開位置調整用サイドカメラ13は、チャックユニット11の外周に設けられている。劈開位置調整用サイドカメラ13は、貼合基板Wの貼合部Tを撮像し、撮像画像を制御部50へ送信する。
【0040】
剥離アームユニット駆動機構160は、制御部50からの指示にしたがって、撮像画像に基づいて検出された貼合部Tの位置と、ブレード12Hと、の高低差がゼロとなるように、ブレード移動用台座12Dの上下方向の位置を調整する。これにより、ブレード12H、及びアーム部12Saは、貼合基板Wの貼合部Tに向かって進入することが可能となる。
【0041】
流体回収パン14は、ブレード12Hから吐出された流体Fを回収する。流体回収パン14は、チャックユニット11、及び剥離アームユニット12aの下方に設けられ、図示せぬ排液ラインに接続されている。流体Fの詳細については、後述する。
【0042】
図3図5を用いて、アーム部12Sa、及びブレード12Hの詳細について説明する。
【0043】
図3は、実施形態にかかる半導体製造装置1が備える剥離アームユニット12aの一部の構成例を示す斜視図である。図4は、実施形態にかかる半導体製造装置1が備える剥離アームユニット12aの一部の構成例を示す上面図である。なお、説明の便宜上、剥離アームユニット12aのうち、ブレード移動用台座12D等の一部の構成の図示は省略する場合がある。
【0044】
図3、及び図4に示すように、剥離部材としてのブレード12Hは、アーム部12Saの先端に設けられる板状部材である。ブレード12Hは、アーム部12Saが貼合部Tへ向かって進入することにより、基板WUと、基板WNと、の間に介在可能となる。これにより、貼合基板Wは、貼合部Tが劈開され、基板WUと、基板WNとに分離される。ブレード12Hは、本体部12HBと、先端チップ部12HCと、を有する。
【0045】
本体部12HBは、例えば、金属等である。本体部12HBは、アーム部12Saの先端に接続されている。また、本体部12HBの、アーム部12Saとは逆側の端部には、先端チップ部12HCが設けられている。
【0046】
先端チップ部12HCは、貼合部Tに接触可能な部材である。先端チップ部12HCは、例えば、テフロン(登録商標)等の樹脂である。これにより、先端チップ部12HCは、貼合部Tに対して比較的柔軟に接触可能となる。
【0047】
なお、先端チップ部12HCの素材として、テフロン(登録商標)等の樹脂に替えて、例えば、柔軟な性質を有する金属等を用いてもよい。
【0048】
先端チップ部12HCは、基板WUと対向可能な第1の面としての上面121Uと、基板WNと対向可能な第2の面としての下面121Nを有する。上面121Uには、上面121Uから貼合部Tへの進入方向に向かって下る第1の傾斜面としての傾斜面121Sが形成されている。また、下面121Nには、下面121Nから貼合部Tへの進入方向に向かって下る第2の傾斜面としての傾斜面122Sが形成されている。傾斜面121Sと、傾斜面122Sと、は、先端部123において連続する。言い換えれば、傾斜面121Sと、傾斜面122Sと、は、先端部123において隣り合っている。先端部123において隣り合う傾斜面121Sと、傾斜面122Sと、のなす角度は、例えば90°以下である。これにより、ブレード12Hは、基板WUと、基板WNと、の間に容易に介在可能となる。
【0049】
先端チップ部12HCの傾斜面121S、及び122Sには、流体Fを吐出可能な開口部としての噴出孔211、及び221がそれぞれ形成されている。噴出孔211は、傾斜面121Sの上面に、貼合部Tへの進入方向と交差する方向に並んで複数形成されている。また、噴出孔221は、傾斜面122Sの上面に、貼合部Tへの進入方向と交差する方向に並んで複数形成されている。
【0050】
流体Fは、例えば圧縮空気等の不活性ガス、または、純水等の液体である。流体Fは、アーム部12Saが貼合部Tへ進入する際に、噴出孔211及び221のそれぞれから貼合部Tへ向かって吐出される。これにより、貼合部Tと、先端チップ部12HCと、の間に流体Fが介在することとなるため、貼合部Tと、先端チップ部12HCと、の直接的な接触が低減する。
【0051】
アーム部12Saは、ブレード12Hを支持し、貼合部Tへ向かって進入する。アーム部12Saは、ブレード用シャフト12Tと、劈開負荷検知モニタ12Zaと、を有する。
【0052】
ブレード用シャフト12Tは、例えば金属等の棒状部材である。ブレード用シャフト12Tには、長手方向に延びる配管12Pが内蔵されている。配管12Pは、一端部において、先端チップ部12HCの噴出孔211、及び221と連通する。また、配管12Pの他端部には、ブレード用シャフト12Tの側面に配置された開口部12Jを介して、配管12Lの一端部が接続されている。図2でも示したように、配管12Lの他端部は、流体制御機構180に接続されている。
【0053】
流体制御機構180は、例えば、圧力制御可能な図示せぬ供給部を備える。制御部50は、流体制御機構180を制御することにより、流体Fの供給を制御する。
【0054】
図5は、実施形態にかかる半導体製造装置1が備えるブレード12Hが貼合部Tに介在する様子について説明する図である。図5は、図4のA-A断面図である。また図5の矢印は、流体Fの吐出方向の一例を模式的に示したものである。
【0055】
図5に示すように、ブレード12Hが、基板WUと、基板WNと、の間に介在するときには、ブレード12Hの傾斜面121Sが、基板WUの基板面WUSと対向し、ブレード12Hの傾斜面122Sが、基板WNの基板面WNSと対向する。流体制御機構180より所定の流量で流体Fが供給されると、配管12L、及び配管12Pを介して、噴出孔211、及び221のそれぞれから例えば矢印で示す向きに流体Fが吐出する。
【0056】
これにより、基板WUの基板面WUSは、噴出孔211から噴出する流体Fによって、基板WNから引き離される方向に向かう力を受ける。また、基板WNの基板面WNSは、噴出孔221から噴出する流体Fによって、基板WUから引き離される方向へ向かう力を受ける。このような流体Fの噴出により、貼合部Tは、傷等のダメージなく、より効率的に劈開される。
【0057】
また、貼合基板Wの貼合部Tは、流体Fによって、ブレード用シャフト12Tの進入方向に向かう力を受ける。このような流体Fの噴出により、貼合部Tは、傷等のダメージなく、より効果的に劈開される。
【0058】
センシング部としての劈開負荷検知モニタ12Zaは、例えば、圧電素子を有する。劈開負荷検知モニタ12Zaは、ブレード用シャフト12Tの端部に接続されている。劈開負荷検知モニタ12Zaは、ブレード用シャフト12Tが貼合部Tへ進入する際のブレード12Hに加えられる圧力の変化による信号を検知する。劈開負荷検知モニタ12Zaは、検知の結果を制御部50へ送信する。
【0059】
貼合部Tは、貼り合わせの際の条件等により、部分的に強固に貼り付いている場合がある。このような場合、貼合部Tが、所定の力で劈開されないことがある。劈開負荷検知モニタ12Zaは、例えば、ブレード用シャフト12Tの抵抗が上昇したことを示す信号を検知する。劈開負荷検知モニタ12Zaは、検知結果を、制御部50へ送信する。制御部50は、検知結果に基づき流体制御機構180を制御して、流体Fの吐出量を増加させる。これにより、噴出孔211、及び221から流体Fがさらに高い圧力で吐出される。この結果、貼合部Tが、安定して劈開されるようになる。
【0060】
なお、制御部50は、劈開負荷検知モニタ12Zaから受信する検知結果に基づいて、チャックユニット駆動機構140を制御し、上チャック11A、及び下チャック11B、並びに、吸着ピン11PA、11PBの上下方向の移動を調整してもよい。これにより、例えば、基板WUには上方向の力が加わり、基板WNには下方向の力が加わる。即ち、基板WU、及び基板WNには、互いに引き離される方向の力が加わる。この結果、貼合部Tは、より効率的に劈開される。
【0061】
次に、図6~10を用いて、上述の半導体製造装置1を用いた貼合基板Wの剥離処理について説明する。図6~10は、実施形態にかかる半導体製造装置1を用いた貼合基板Wの剥離処理の手順の一部を順に例示する図である。
【0062】
図6は、処理室10aに貼合基板Wが搬送されるまでの流れを模式的に示す側面図である。図6(A)に示すように、初期状態の処理室10aにおいて、チャックユニット11の上チャック11Aは、チャックユニット駆動機構140によって剥離アームユニット12aの上方に配置されている。
【0063】
図6(B)に示すように、搬送アーム22Aによって、上チャック11Aと、剥離アームユニット12aの間の空間に貼合基板Wが搬送される。
【0064】
なお、上述の搬送に先立ち、貼合基板Wは、搬送アーム22Aによってポート30から搬送室20へ、また、搬送室20からプリアライメントユニット21へと搬送される。そして、プリアライメントユニット21において中心位置のずれが補正された後、搬送アーム22Aによって、処理室10aへと搬送される。
【0065】
図7は、貼合基板Wが処理室10aに搬送されてから、貼合基板Wとブレード用シャフト12Tとの位置合わせが行われるまでの流れを模式的に示す側面図である。図7(A)に示すように、下チャック11Bが、その上面に設けられた吸着ピン11PBと、貼合基板Wと、が接するまで持ち上げられる。下チャック11Bの吸着ピン11PBに貼合基板Wが接すると、吸引機構150により、貼合基板Wが吸着ピン11PBに吸着される。この後、搬送アーム22Aが、処理室10aから退去する。これにより、搬送アーム22Aから下チャック11Bへの、貼合基板Wの受け渡しが終了する。
【0066】
図7(B)に示すように、下チャック11Bが元の位置まで下降すると、ブレード用シャフト12Tの上下方向の位置合わせが行われる。この位置合わせは、劈開位置調整用サイドカメラ13により取得された撮像画像に基づいて行われ得る。例えば、剥離アームユニット駆動機構160は、撮像画像に基づいて検出された貼合部Tの位置と、ブレード12Hの先端部123と、の高低差がゼロとなるように、ブレード移動用台座12Dの位置を調整する。
【0067】
図8は、処理室10aのチャックユニット11に貼合基板Wが吸着されてから、貼合基板Wの剥離処理が開始されるまでの流れを模式的に示す側面図である。図8(A)に示すように、上チャック11Aが、その下面に設けられた吸着ピン11PAと、貼合基板Wの上面と、が接するまで下降する。上チャック11Aの吸着ピン11PAに貼合基板Wの上面が接すると、貼合基板Wは、吸引機構150により、吸着ピン11PAに吸着される。
【0068】
図8(B)に示すように、流体制御機構180は、ブレード12Hから流体Fの吐出を開始する。そして、図8(B)においてチャックユニット駆動機構140は、上チャック11Aの上向きの移動を開始させ、同時に、下チャック11Bの下向きの移動を開始させる。これにより、貼合基板Wの、上側の基板WUには、上方に引き上げられるような力が働き、下側の基板WNには、下方に引き下げられるような力が働くこととなる。また、剥離アームユニット駆動機構160は、各ブレード用シャフト12Tの、貼合部Tに向かう移動を開始させる。なお、吐出された流体Fは、流体回収パン14によって回収され、処理室10aから排出される。
【0069】
図9は、処理室10aのブレード用シャフト12Tが貼合基板Wに向かって移動を開始してから剥離を終えて元の位置に戻るまでの流れを模式的に示す側面図である。図9(A)に示すように、ブレード12Hの先端部123が、貼合基板Wの貼合部Tに押し当てられると、貼合部Tに隙間が生じる。ブレード用シャフト12Tは、この隙間に差し込まれるようにして、貼合基板Wの中心に向かってさらに移動する。この結果、貼合基板Wの基板WUと、基板WNと、がその周縁部から分離されていく。
【0070】
ここで、劈開負荷検知モニタ12Zaは、ブレード用シャフト12Tが貼合部Tへ進入する際のブレード12Hに加えられる圧力の変化による信号を検知する。劈開負荷検知モニタ12Zaが、信号を検知すると、剥離アームユニット駆動機構160は、ブレード用シャフト12Tの移動を停止する。そして、流体制御機構180は、流体Fの吐出量を調整する。次いで、剥離アームユニット駆動機構160は、ブレード用シャフト12Tの移動を再開する。このようにして、基板WUと、基板WNと、は、安定して分離可能となる。
【0071】
貼合基板Wの中心に向かってブレード用シャフト12Tがさらに移動すると、貼合基板Wの中心に近い部分においても、基板WUと、基板WNと、が分離する。そして、基板WUと、基板WNと、をさらに移動させると、貼合基板Wは、中央部においても分離する。その結果、図9(B)に示すように、上側の基板WUは、上チャック11Aにより上方向へと持ち上げられる。また、下側の基板WNは、下チャック11Bにより方向へと引き下げられる。このようにして、貼合基板Wの剥離が完了する。続けて、ブレード用シャフト12Tが後退して元の位置へ戻る。
【0072】
図10は、処理室10aから貼合基板Wが搬出されるまでの流れを模式的に示す側面図である。図10(A)に示すように、搬送アーム22Bが、上チャック11Aと、剥離アームユニット12aの間の空間に進入する。搬送アーム22Bは、上下方向に2本のアーム22BU、及び22BNを有する。上方のアーム22BUは、上側に、図示せぬ基板吸着機構を備え、下方のアーム22BNは、下側に図示せぬ基板吸着機構を備えている。
【0073】
上チャック11Aが下降し、上チャック11Aにより吸着されている基板WUがアーム22BUに接すると、アーム22BUが基板WUを吸着する。次いで、上チャック11Aによる吸着が停止され、基板WUが、上チャック11Aからアーム22BUへ受け渡される。また、下チャック11Bが上昇して、下チャック11B上に残る基板WNがアーム22BNに接すると、アーム22BNが、基板WNを吸着する。次いで、下チャック11Bによる吸着が停止され、基板WNが、下チャック11Bからアーム22BNへ受け渡される。
【0074】
この後、図10(B)に示すように、搬送アーム22Bが基板WU、及び基板WNを搬出することにより、半導体製造装置1における貼合基板Wの剥離処理が終了する。
【0075】
(比較例)
ここで比較例の半導体製造装置について説明する。比較例の半導体製造装置においては、貼合基板の貼合面に鋭利なブレードを挿入することにより、貼合基板を剥離することがある。しかしながら、このような比較例の半導体製造装置においては、ブレードが貼合基板に直接的に接触するため、貼合基板に傷や割れ等のダメージを与えてしまう場合がある。また、貼合基板の上側の基板が、剥離されるととともに重力によって下降し、基板とブレードとの接触が加速されることもある。
【0076】
また、他の比較例の半導体製造装置においては、貼合基板の貼合面に流体を吐出させることにより、貼合基板を剥離することがある。しかしながら、このような比較例の半導体製造装置においては、貼合基板へのダメージは少ないものの、貼合基板を効率的に剥離できない場合がある。
【0077】
(概括)
実施形態の半導体製造装置1は、基板WUと基板WNとの間に介在可能なブレード12Hを備える。ブレード12Hの、基板WUと基板WNのそれぞれと対向する上面121U、及び下面121Nには、貼合部Tへの進入方向に向かって下る傾斜面121S、及び傾斜面122Sが形成されている。傾斜面121S、及び傾斜面122Sには、貼合部Tへの進入方向に向かって流体Fを吐出可能な噴出孔211、及び221が形成されている。これにより、貼合部Tと、ブレード12Hと、の間に流体Fが介在するため、貼合部Tと、ブレード12Hとの直接的な接触が低減する。また、流体Fの噴出により、基板WUと、基板WNと、のそれぞれは、互いに引き離される方向の力を受ける。その結果、基板WU、及び基板WNへのダメージは抑制されつつ、基板WUと、基板WNと、を効率的に分離可能となる。
【0078】
また、実施形態のブレード12Hの傾斜面121S、及び傾斜面122Sは、テフロン(登録商標)等の樹脂素材である。これにより、基板WU、及び基板WNへのダメージを抑制することができる。
【0079】
実施形態の半導体製造装置1によれば、アーム部12Saは、貼合部Tに対するブレード用シャフト12Tの進入の際のブレード12Hに加えられる圧力を検知可能な劈開負荷検知モニタ12Zaを有する。制御部50は、劈開負荷検知モニタ12Zaにおける検知結果に基づいて、流体Fの吐出量を調整する。これにより、貼合基板Wを安定して分離することができる。
【0080】
(変形例)
図11を用いて、実施形態の変形例の半導体製造装置について説明する。変形例の半導体製造装置においては、剥離アームユニット12bのアーム部12Sbが、劈開負荷検知モニタ12Zaを有していない点、及び剥離アームユニット12bの進行方向に沿ってチャックユニット11が移動可能である点が、上述の実施形態とは異なる。
【0081】
なお、以下において、上述の実施形態と同様の構成には同様の符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0082】
図11は、変形例にかかる半導体製造装置が備える処理室10bの構成の一例を示す上面図である。
【0083】
図11に示すように、処理室10bは、チャックユニット11と、剥離アームユニット12bと、劈開位置調整用サイドカメラ13と、流体回収パン14と、搬入口15と、劈開負荷検知モニタ16と、を有している。なお説明の便宜上、流体回収パン14の図示は省略する。
【0084】
撮像部としての劈開負荷検知モニタ16は、例えば、撮像素子を有する。劈開負荷検知モニタ16は、チャックユニット11の外周に配置される。劈開負荷検知モニタ16は、チャックユニット11の中心に向けて配置される2つの剥離アームユニット12bが向く方向と、交差する方向を向くように配置されている。
【0085】
チャックユニット11は、チャックユニット駆動機構140により、アーム部12Saの進行方向に沿って、所定速度で移動可能に構成されている。これにより、劈開負荷検知モニタ16は、貼合基板Wの周縁部から中心に向かって貼合部Tを撮像できる。劈開負荷検知モニタ16は、貼合部Tを撮像することにより、貼合部Tの撮像画像を取得する。
【0086】
劈開負荷検知モニタ16は、取得した撮像画像を制御部50へ送信する。制御部50は、撮像画像に基づいて画像解析を行うことにより、図示せぬ基板WUと、基板UNと、の間の距離を算出する。制御部50は、算出した距離に基づいて、流体制御機構180を制御し、流体Fの吐出量を調整する。例えば、制御部50は、基板WUと、基板UNと、の間の距離が想定する距離よりも近いことを認知する。すると、制御部50は、認知結果に基づき流体制御機構180を制御して、流体Fの吐出量を増加させる。これにより、噴出孔211、及び221から流体Fがさらに高い圧力で吐出される。この結果、貼合部Tが、安定して劈開されるようになる。これにより、貼合部Tが、安定して劈開されるようになる。
【0087】
なおこのとき、チャックユニット11に替えて、劈開負荷検知モニタ16が、アーム部12Saの進行方向に沿って移動してもよい。
【0088】
また、劈開負荷検知モニタ16は、撮像素子を有するものとしたがこれに限定されない。劈開負荷検知モニタ16は、例えばレーザ光を用いて、基板WUと、基板UNと、を検知してもよい。
【0089】
変形例の半導体製造装置によれば、その他、上述の実施形態の半導体製造装置1と同様の効果を奏する。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0091】
1…半導体製造装置、10a、10b…処理室、11…チャックユニット、12a、12b…剥離アームユニット、12D…ブレード移動用台座、12H…ブレード、12HB…本体部、12HC…先端チップ部、12L…配管、12Sa,12Sb…アーム部、12T…ブレード用シャフト、12Za、16…劈開負荷検知モニタ、13…劈開位置調整用サイドカメラ、14…流体回収パン、15…搬入口、20…搬送室、30…ポート、50…制御部、121S、122S…傾斜面、123…先端部、140…チャックユニット駆動機構、160…剥離アームユニット駆動機構、180…流体制御機構、211、221…噴出孔、T…貼合部、W…貼合基板、WU、WN…基板。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11