(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024133789
(43)【公開日】2024-10-03
(54)【発明の名称】インプリント方法およびインプリント用テンプレート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240926BHJP
B29C 59/02 20060101ALI20240926BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023043754
(22)【出願日】2023-03-20
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紙田 祐吉
(72)【発明者】
【氏名】小松 大佑
(72)【発明者】
【氏名】安藤 彰彦
【テーマコード(参考)】
4F209
5F146
【Fターム(参考)】
4F209AA44
4F209AF01
4F209AG05
4F209AH33
4F209AR07
4F209PA02
4F209PB01
4F209PN09
4F209PN13
5F146AA31
5F146AA32
(57)【要約】
【課題】レジスト層によるパターン埋まりなどの欠陥を低減するインプリント方法およびテンプレートを提供することである。
【解決手段】実施形態のインプリント方法は、基板上に設けた光硬化性のインプリント材の押印領域に対し、凹凸部を有するパターン面を備えたテンプレートを押し付けてパターンを形成する。光透過制限膜をパターン面に対し隣接して備えたテンプレートを用意する工程と、インプリント材を備えた基板を用意する工程と、パターン面をインプリント材に押圧し、インプリント材に光を照射する工程を有する。光を照射する工程において、押印領域のインプリント材と、押印領域に隣接してパターン面の隣接位置に盛り上がったインプリント材に露光し、押印領域のインプリント材を硬化させ、隣接位置に盛り上がったインプリント材の高さと形状を保持したままインプリント材を硬化させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けた光硬化性のインプリント材の押印領域に対し、凹凸部を有するパターン面を備えた光透過性のテンプレートを押し付けてパターンを形成するインプリント方法であって、
光透過制限膜を前記パターン面に対し隣接して備えたテンプレートを用意し、
前記インプリント材を備えた前記基板を用意し、
前記パターン面を前記インプリント材に押圧した状態で、前記インプリント材に光を照射してインプリントを行う方法であって、
前記インプリント材に光を照射する際、
前記押印領域のインプリント材と、前記押印領域に隣接して前記パターン面の端縁に盛り上がったインプリント材に露光し、前記押印領域のインプリント材を硬化させるとともに、前記端縁に盛り上がったインプリント材の盛上部をその高さと形状を保持したまま硬化させる、
インプリント方法。
【請求項2】
前記パターン面に隣接する位置に、前記パターン面の端縁と離間させた光透過制限膜を有し、前記パターン面の端縁と前記光透過制限膜との間に、前記パターン面の前記端縁に対し前記凹凸部の高低差より大きな高低差を介して設けられる中位面を備えたテンプレートを用いる、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項3】
前記パターン面に隣接する位置に、前記パターン面の端縁と離間させて光透過制限膜を有し、前記パターン面の端縁と前記光透過制限膜との間に、前記パターン面の前記端縁に対し前記凹凸部の高低差より大きな高低差を生成する斜面を介して設けられる中位面を備えたテンプレートを用いる、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項4】
前記斜面が、凸曲面あるいは凹曲面もしくは凸曲面と凹曲面を組み合わせた曲面を有する、
請求項3に記載のインプリント方法。
【請求項5】
前記テンプレートの前記パターン面を前記インプリント材に押印した状態で、前記インプリント材に光を照射する際、
前記テンプレートの側方から、前記盛上部のインプリント材に光を照射する、
請求項1に記載のインプリント方法。
【請求項6】
インプリント材にパターンを転写するインプリントリソグラフィに用いる光透過性のテンプレートであって、
基材部と、
前記基材部の一の面に対し突出して設けられ、第1中位面を有する第1メサ部と、
前記第1メサ部の前記第1中位面に対し突出して設けられ、第2中位面を有する第2メサ部と、
前記第2メサ部の前記第2中位面に対し突出して設けられ、凹凸部を備えたパターン面を有する第3メサ部を備え、
前記第1中位面に、前記第2メサ部に隣接する光透過制限膜を有し、
前記第2メサ部の前記第2中位面と前記パターン面との段差が前記凹凸部の高低差より大きい、
テンプレート。
【請求項7】
前記第2中位面が、前記パターン面の前記インプリント材への押圧時に、前記第3メサ部の端縁に沿って盛り上がる前記インプリント材の盛上部に接して前記盛上部の高さを規制する面である、
請求項6に記載のテンプレート。
【請求項8】
前記第2メサ部が平面視前記第3メサ部の周囲を囲む位置に形成された、
請求項6に記載のテンプレート。
【請求項9】
前記第1メサ部が平面視前記第2メサ部の周囲を囲む位置に形成された、
請求項6に記載のテンプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント方法およびインプリント用テンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
レジスト層にテンプレートを押し当てることにより、エッチングマスクを形成するインプリントリソグラフィが知られている。インプリントリソグラフィでは、エッチング対象膜上の全面にスピンコート法によりレジスト層が形成される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-044299号公報
【特許文献2】特開2020-181878号公報
【特許文献3】特開2021-090020号公報
【特許文献4】特許第6965557号公報
【特許文献5】特許第6441181号公報
【特許文献6】特許第6403017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの実施形態が解決しようとする課題は、レジスト層によるパターン埋まりなどの欠陥を低減するインプリント方法およびインプリント用テンプレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のインプリント方法は、基板上に設けた光硬化性のインプリント材の押印領域に対し、凹凸部を有するパターン面を備えた光透過性のテンプレートを押し付けてパターンを形成するインプリント方法である。光透過制限膜を前記パターン面に対し隣接して備えたテンプレートを用意し、前記インプリント材を備えた前記基板を用意する。前記パターン面を前記インプリント材に押圧した状態で、前記インプリント材に光を照射してインプリントを行う方法である。前記インプリント材に光を照射する際、前記押印領域のインプリント材と、前記押印領域に隣接して前記パターン面の端縁に盛り上がったインプリント材に露光し、前記押印領域のインプリント材を硬化させる。また、前記端縁に盛り上がったインプリント材の盛上部をその高さと形状を保持したまま硬化させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係るテンプレートを用いてレジスト層に押印する状態を模式的に示す図。
【
図2】同テンプレートの部分断面を模式的に示す図。
【
図3】同テンプレートによりレジスト層に押印する領域の例を示す平面図。
【
図4】第1実施形態に係るテンプレートを用いてレジスト層に押印する状態を段階的に示す模式図。
【
図5】比較例のテンプレートによりレジスト層に押印する状態を段階的に示す模式図。
【
図6】比較例のテンプレートによるインプリント後のレジスト層の状態を段階的に示す模式図。
【
図7】第1実施例に係るテンプレートの製造方法について段階的に示す模式図。
【
図8】インプリント法に用いる第1変形例のテンプレートと押印状態を示す模式図。
【
図9】第1変形例のテンプレートを用いてインプリント法を実施する状態について段階的に示す模式図。
【
図10】インプリント法に用いる第2変形例のテンプレートと押印状態を示す模式図。
【
図11】インプリント法に用いる第3変形例のテンプレートと押印状態を示す模式図。
【
図12】インプリント法に用いる第4変形例のテンプレートと押印状態を段階的に示す模式図。
【
図13】インプリント法に用いる第5変形例のテンプレートと押印状態を示す模式図。
【
図14】同テンプレートによりレジスト層に押印する領域の例を示す平面図。
【
図15】インプリント法に用いる第6変形例のテンプレートと押印状態を示す模式図。
【
図16】インプリント法に用いる第7~第9変形例のテンプレートと押印状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を参照しながら、限定的でない例示の実施形態について説明する。
添付の全図面中、同一または対応する部材または部品については、同一または対応する参照符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面は、部材もしくは部品間、または、種々の層の厚さの相対比を示すことを目的としない。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の限定的でない実施形態に照らし、当業者により決定されて良い。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るテンプレート10と、テンプレート10により押印される対象のレジスト層1と、レジスト層1を備えた対象膜2および対象膜2を備えた基板(ウエハ)3を模式的に示す断面図である。
図2はテンプレート10の部分断面を模式的に示す図、
図3(A)はテンプレート10の下面を模式的に示す図である。基板は、例えば、シリコンウエハ等の半導体基板を含む。
本実施形態の説明において、下面とは、レジスト層1にテンプレート10を押し当てるときに、テンプレート10においてレジスト層1と対向する側の面を言う。
なお、レジスト層1は対象膜2の上にスピンコート法などの塗布法により塗布された液体の層であり、レジスト層1はインプリント材に相当するレジストからなる層の一例に該当する。
【0009】
テンプレート10は、光(例えば、紫外線)を透過可能な材料、例えば石英ガラスや樹脂により形成され、図示のとおり、第1メサ部10A、第2メサ部10B、第3メサ部10C、および、基材部10Dを有している。基材部10Dは、ほぼ四角形の平面視形状を有している。基材部10Dの上面には窪み部10Eが形成されている。
【0010】
第1メサ部10Aは、本実施形態ではほぼ四角形の平面視形状を有しており、基材部10Dの下面のほぼ中央から下方に突き出ている。第2メサ部10Bは、本実施形態ではほぼ四角形の平面視形状を有しており、第1メサ部10Aの下面のほぼ中央から下方に突き出ている。
図2に例示するように基材部10Dの下面10rと第1メサ部10Aの下面10sとの高低差(段差)t1は、例えば数十μmであって良い。第1メサ部10Aの下面10sと第2メサ部10Bの下面10tとの高低差(段差)t2は、例えば数十μmであって良い。第1メサ部10Aと第2メサ部10Bの平面視形状の一例を
図3(A)に示す。
【0011】
第3メサ部10Cは、本実施形態ではほぼ四角形の平面視形状を有しており、第2メサ部10Bの下面10tから下方に突き出ている。第3メサ部10Cの下面10uは、フォトレジストによって形成するべきパターンに対応する凹凸部10aを含んでいる。第3メサ部10Cの下面10uは、パターン面と称することができる。
第3メサ部10Cの下面(パターン面)10uと第2メサ部10Bの下面10tとの高低差(段差)t3(
図2参照)は、例えば200nm~500nm程度、あるいは、パターンの深さの2倍~5倍程度であって良い。この高低差は、凹凸部10aの高低差より大きい。また、第3メサ部10Cの平面視における各辺は、例えば数mm~数cmまでの範囲の長さを有することができる。
なお、本明細書において数値範囲に関し、「~」を用いて上限と下限による範囲を規定する場合、特に説明しない限り、下限値以上かつ上限値以下の範囲を意味する。よって、例えば200nm~500nmは、200nm以上500nm以下の範囲を意味する。
【0012】
図1に示し、前述したように、本実施形態によるテンプレート10では、第3メサ部10Cの下面10uは凹凸部10aを形成したパターン面とされている。
第3メサ部10Cの下面全体(パターン面全体)が、レジスト層1における押印領域e(ショット領域とも言う) に対応する。
【0013】
本実施形態において、第3メサ部10Cは、平面視で第2メサ部10Bよりも小さく、
図3(A)に示すように第2メサ部10Bと同心状に配置されている。すなわち、平面視で、第3メサ部10Cの中心と第2メサ部10Bの中心とが一致しても良く、第3メサ部10Cの各辺が、第2メサ部10Bの対応する辺と平行になっていても良い。第3メサ部10Cの平面視周囲には、第2メサ部10Bの下面10tが第2中位面EFとして存在し、この第2中位面EFはその各辺で一定の幅を有していても良い。以下、この第2中位面EFの幅t4(
図2参照)は、数μm、例えば1~2μmであって良い。
【0014】
本実施形態において、第2メサ部10Bは、平面視で第1メサ部10Aよりも小さく、
図3(A)に示すように第1メサ部10Aと同心状に配置されている。すなわち、平面視で、第2メサ部10Bの中心と第1メサ部10Aの中心とが一致しても良く、第2メサ部10Bの各辺が、第1メサ部10Aの対応する辺と平行になっていても良い。第2メサ部10Bの周囲には、第1メサ部10Aの下面10sが配置され、この下面10sはその各辺で一定の幅を有していても良い。この一定幅の下面10sの幅WT(
図2参照)は、例えば数μmであって良い。
【0015】
第1メサ部10Aの下面10sには、第1メサ部10Aの4つの辺に沿って光透過制限膜として機能する遮光部Sが形成されている。遮光部Sは、例えば金属等でコートすることにより形成され得る。遮光部Sを構成する材料として、例えば、金属材料及びその酸化物、窒化物、酸窒化物等を1種以上含むものであってもよい。上記の金属材料の具体例としては、例えば、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)等を挙げることができる。
これらの材料から形成されることで、遮光部Sは光の透過を遮ることができる。遮光部Sは、例えば、波長365nmの紫外線を照射した場合の透過率を10%以下とすることが好ましい。
【0016】
図1、
図2に示す例では、遮光部Sの平面視形状が、
図3(A)に示すように、平面視で四角枠状の第2中位面EFの周囲を均等幅で囲む四角枠状である。しかし、遮光部Sの平面視形状は
図3(A)に示す形状に限らない。
例えば、
図3(B)に示すように、平面視した四角枠状の遮光部Sにおいて、右辺部分より+X方向側に遮光部Sを部分的に設けず、第1中位面Tを部分的に露出させた第1中位面露出部10Fを設けても良い。以下の説明において、
図3(B)に示す平面視した四角枠状の遮光部Sに対して、短辺の延在する方向をX方向と仮定し、長辺の延在する方向をY方向と仮定して説明する。
Y方向は、X方向とは交差する(例えば直交する)方向である。+X方向と-X方向は180°異なる方向、+Y方向と-Y方向は180°異なる方向とする。
【0017】
第1中位面露出部10Fは、平面視した場合、Y方向に延在する縦長長方形状である。第1中位面露出部10FのY方向長さは、例えば、遮光部Sの右辺側のY方向長さの数分の一程度である。第1中位面露出部10FのX方向幅は、例えば、遮光部Sの長辺側のX方向幅より若干小さい。平面視した場合、第1中位面露出部10Fの-X方向端は、第2中位面EFのX方向端に達している。第1中位面露出部10Fの平面視右側には、X方向幅の小さい遮光部Sがそのまま残されている。
また、
図3(B)に示すように平面視した遮光部Sにおいて、第1中位面露出部10Fの近傍にY方向に延在する縦長長方形状の第2中位面露出部10Gを設けても良い。第2中位面露出部10Gは、平面視第1中位面露出部10FよりX方向幅が小さく、Y方向長さも小さい。
【0018】
図3(B)に示す例では、平面視第1中位面露出部10Fより+X方向側かつ-Y方向側に第2中位面露出部10Gが設けられている。
第2中位面露出部10Gの-X方向端かつ+Y方向端は、平面視第1中位面露出部10Fの+X方向端かつ-Y方向端と一致されている。第2中位面露出部10Gの+X方向端は、平面視遮光部Sの右辺側の+X方向端に達している。
【0019】
また、
図3(B)に示すように、平面視した四角枠状の遮光部Sにおいて、左辺部分より-X方向側に遮光部Sを部分的に設けずに第1中位面Tを露出させた第3中位面露出部10Hを設けても良い。
第3中位面露出部10Hは、Y方向幅の若干大きい平面視縦長長方形状の幅広部10hとX方向幅が小さくY方向に細長い幅狭部10iを設けても良い。幅広部10hは、平面視した四角枠状の遮光部Sにおいて左辺側であり、遮光部Sの左辺側のY方向中央部に平面視連続する位置に形成されている。幅広部10hのX方向幅は、遮光部Sの左辺部分のX方向幅の半分より若干大きい。よって、幅広部10hの-X方向側には幅の狭い遮光部Sが残されている。幅狭部10iは、平面視+X方向端縁を第2中位面EFの左辺部分の-X方向端位置と一致させて、Y方向に延在されている。幅狭部10iの-Y方向端は、第2中位面EFの-Y方向端の位置まで形成されている。
【0020】
図3(B)に例示した第1~第3中位面露出部10F~10Hを有するテンプレートを用いても良い。
【0021】
「インプリント方法」
次に、第1実施形態に係るテンプレート10を用いたインプリント方法について
図1と
図4を参照しつつ説明する。インプリント方法は、例えば、半導体装置の製造方法の一環としておこなわれ得る。
図1を用いて先に説明したレジスト層1と対象膜2を備えた基板3を用意する。対象膜2は、たとえば酸化シリコン等の絶縁層、金属元素を含む導電層又は/及びそれらの積層膜が考えられるが、特に限定されない。レジスト層1は基板3の上に形成された所定のエッチング対象膜2の上面全面に、例えばスピンコート法により一定厚さに塗布されている。レジスト層1は例えば紫外線硬化性(光硬化性)であり、紫外線(光)を照射した場合に硬化する層であるが、塗布した状態では液体のままである。
【0022】
レジスト層1に対し、レジスト層1の上方から凹凸部10aを下向きとしたテンプレート10を下降させ、
図1、
図4(A)に示す通り、テンプレート10の下面(パターン面)10uの凹凸部10aをレジスト層1に押し当てる。
具体的には、まず、第3メサ部10Cの下面10uをレジスト層1の押印領域eに対し押し当てて押印する。押印時に、液体のレジスト層1に対し、
図1に示すように凹凸部10aの全てをレジスト層1に沈めるように押し当てる。
【0023】
この際、第3メサ部10Cの端縁10C1より外側に存在するレジスト層1は、表面張力により端縁10C1に沿って第3メサ部10Cの周縁側で盛り上がる。この結果、第2メサ部10Bの第2中位面EFまで到達するレジスト層の盛上部1Aがパターン面10uの周縁側に形成される。また、盛上部1Aの周囲に存在するレジスト層1は液体であり、その一部が盛上部1Aの生成に使用されるため、盛上部1Aの周囲ではレジスト層1の液面が一時的に低下し、レジスト層1に凹部1Bが形成される。
【0024】
テンプレート10をレジスト層1に押し当てたまま、テンプレート10を通して
図1の矢印に示すように上方から光(例えば、紫外線)をレジスト層1に照射する。紫外線を照射する範囲は、四角枠状の遮光部Sとその内側の範囲とする。紫外線の照射により、フォトレジストが硬化し、第3メサ部10Cの凹凸部10aの形状がレジスト層1にパターンPAとして転写される。
テンプレート10が平面視四角枠状の遮光部Sにより紫外線を遮るため、遮光部Sの内側下方に位置するレジスト層1のみを硬化できる。テンプレート10において、第3メサ部10Cの下面10uの下方領域が、ショット領域と対応した領域である。
【0025】
テンプレート10では、遮光部Sの内側に第2メサ部10Bの第2中位面EFを有している。このため、ショット領域に加え、その周囲に存在するレジスト層1の盛上部1Aの部分も硬化できる。第2中位面EFは平面視四角枠状であるため、盛上部1AはパターンPAの周囲を平面視四角枠状に囲むように生成する。
盛上部1Aは、第2中位面EFによって高さを規制されたレジスト層1を硬化して構成されるので、最大でも
図2に示す高低差t3と同じ高さを有する。即ち、盛上部1Aの最大高さを200nm~500nm程度に制御することができる。
【0026】
図4(B)に示すように硬化したパターンPAの周囲に盛上部1Aが形成されるが、盛上部1Aの周囲では遮光部Sの影響により液体のレジスト層1が硬化されていない状態を維持する。即ち、凹部1Bとその周囲のレジスト層1は液体のままであるため、ある程度時間が経過すると、
図4(C)に示すように周囲から液体のレジスト層1が流れて来て、凹部1Bを埋め、当初のレジスト層1の厚さまでレジスト層1の厚さが回復する。
【0027】
周囲の未硬化レジストが凹部1Bに流れ込む場合、盛上部1Aが存在しないと、流れ込む液体のレジストがパターンPAの領域まで流れ込み、パターンPAの周辺部を埋めてしまうおそれがある。このため、盛上部1Aの高さは、パターンPAの凹凸よりある程度高い必要がある。必要な高さの盛上部1Aを設けることでパターン埋まりなどの欠陥を生じていないパターンPAを得ることができる。
【0028】
一例として、絶縁層にデュアルダマシン技術により形成する配線部などのライン高さは60~75nm程度であり、配線部の下に形成されるコンタクト部の深さが一例として数10nm程度、例えば40nm程度である。これらのサイズを勘案し、100nmを超える配線部の高さや厚さを考慮し、盛上部1Aの高さを200nm~500nm程度としておく。従って、インプリント方法の実施対象物の大きさにより凹凸部の大きさが多少変動したとして、パターン埋まりを確実に防止できる盛上部1Aを形成できる。
【0029】
押印が終了すると、テンプレート10は、所定の駆動装置および支持具により、基板3において先に押印した領域のレジスト層1から離型され、基板3において隣接する他の領域上に移動され、該当領域に対し前述の押印動作と同様に押印される。
図4(D)は、先の押印によりパターンPAを転写後、隣接する左側の領域にテンプレート10を移動させ、未硬化のレジスト層1に対し押印を行った状態を示す。
テンプレート10により隣接する領域の未硬化のレジスト層1に対し押印を行うと、第3メサ部10Cの端縁10C
1より外側に存在するレジスト層1は、表面張力により端縁10C
1に沿って第3メサ部10Cの外側に盛り上がる。この結果、第2メサ部10Bの第2中位面EFまで到達するレジスト層の盛上部1Aが形成される。
【0030】
この状態から前述の場合と同じように光(紫外線)を照射すると、隣接する領域においてパターンPAを形成できるとともに、硬化した盛上部1Aを形成できる。このため、隣接した領域においてもパターン埋まりなどの欠陥を有していない目的のパターンPAを得ることができる。
先の転写で形成したパターンPAの端縁に存在する盛上部1Aと、
図4(D)に示す押印で形成したパターンPの端縁に存在する盛上部1Aの間に、ショット間ギャップGが生成する。このギャップGは、基板3をダイシングなどにより分断する場合の切断幅として利用することができる。
【0031】
以上説明した押印動作を基板3の、例えば、全てのショット領域のレジスト層1に対し、繰り返し実施することにより、レジスト層1の全面にパターンPAを形成できる。
レジスト層1に対し欠陥のないパターンPAを形成し、このレジスト層1のパターンPAを利用してエッチング処理を行うことで対象膜2にパターンPAに対応した加工を施す。例えば、レジスト層1に形成されたパターンPAの底部を除去し、対象膜2を露出させる処理をおこなう。次いで、レジスト層1をマスクにして、対象膜2をエッチングする。対象膜2をエッチングする際には、後述のようにレジスト層1に形成された盛上部1Aは残存していてよい。
これにより、対象膜2には、パターンPAに対応したパターンが形成される。例えば、
図4(E)に示す如く、基板3の上の対象膜2にパターンPAが形成される。
残存したレジスト層1は、例えばアッシング処理により除去される。この後、例えば、対象膜2が絶縁層の場合には、銅(Cu)等の金属が対象膜2に形成されたパターンに埋め込まれ、例えばデュアルダマシン配線の一部となる。
【0032】
図4(D)に示すように隣接する他の領域のレジスト層1に対しテンプレート10によりインプリント法を実施すると、押印した領域毎に盛上部1Aを有することとなるが、盛上部1Aの最大高さは予め分かっていて形成位置もわかっているため、次工程の加工などでは問題を生じるおそれが少ない。仮に、盛上部の高さが
図2に示す高低差t3を超えて大きくなり過ぎると、次工程で盛上部が倒れるか、盛上部の先端が折損するなどの現象を生じるおそれがある。この場合、次工程のエッチング処理などにおいてエッチング不良部を発生するなどの問題を生じるおそれがある。
【0033】
「比較例」
図5は、第2メサ部10Bと第2中位面EFを有していない比較例のテンプレート20を示す。この例のテンプレート20は、基材部10Dと第1メサ部10Aと第3メサ部10Cを有する。第1メサ部10Aに遮光部Sが形成されている点、第3メサ部10Cに凹凸部10aを有するパターン面10uが形成されている点も先のテンプレート10と同等構成である。テンプレート20においては、第3メサ部10Cの平面視周囲側に第1メサ部10Aが形成され、第1メサ部10Aの下面10S(第1中位面T)に遮光部Sが形成されている。
【0034】
テンプレート20を用いてレジスト層1に対しインプリント法を実施すると、
図5(B)に示すように第3メサ部10Cの端縁10C
1の外側にレジスト層1の盛上部1Dを生じる。この盛上部1Dには、硬化時に光(紫外線)が照射されないので、液体のレジスト層1のまま盛上部1Dが残留する。
この後、テンプレート20を他の領域に移動するために
図5(C)に示すようにレジスト層1から離型すると、液体の盛上部1Dは
図5(D)に示すように崩れて液体のレジスト1Eとして周囲に流れる。このため、レジスト1Eが周囲のインプリント後のパターンPA側に流れ込み、パターンPAの一部を液体のレジスト1Eが埋めることとなる。これにより、パターン埋まりなどの欠陥を有する不良のパターンPAを形成してしまう問題がある。
【0035】
図6は
図5に示すパターン埋まりを生じた後のレジスト層1を示すが、液体のレジスト1EがパターンPA側に
図6(A)に示すように流れることとなる。また、その反対側にはレジスト層1の凹部1Bが生成されているが、周囲の液体のままのレジスト層1から、いずれ液体レジストが流れてくるので、液体レジストにより凹部1Bは
図6(B)、(C)に示すように埋められる。しかし、先に説明のようにパターンPA側にパターン埋まりを生じる。
これに対し、先に
図4を用いて説明したように、テンプレート10により盛上部1Aのレジストに対し、第2中位面EFを介し紫外線を照射して硬化させるならば、パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成できることがわかる。
【0036】
「テンプレートの製造方法」
次に、
図7(A)~(F)を参照しながら、第1実施形態に係るテンプレート10の製造方法について説明する。
まず、出発材料として
図7(A)に示す光透過性の基板30を用意し、前述の第1メサ部10Aに相当する領域を覆うレジストパターンを形成し、エッチングにより前述の第1メサ部10A、第2メサ部10B、第3メサ部10Cの形成領域に対応する隆起部30Aを形成する。
図7(A)に基板30に対し隆起部30Aを形成した状態を示す。基板30は、例えば、紫外線(紫外光)を透過可能な材料、例えば石英ガラスや樹脂により形成される。
【0037】
図7(A)に示す隆起部30Aの上面に第2メサ部10Bと第3メサ部10Cに相当する領域を覆う第1レジスト層31を形成し、第1レジスト層31を介し隆起部30Aの周縁側を蝕刻するリアクティブイオンエッチングを施す。このエッチングにより
図7(B)に示すように第1段部30aを有する第1突部30Bを形成する。
次に、第1レジスト層31を除去した後、
図7(C)に示すように第1突部30Bの最上面に前述の第3メサ部10Cに相当する領域を覆う第2レジスト層32を形成する。第2レジスト層32の形成後、第2レジスト層32を介し第1突部30Bの周縁側を蝕刻するリアクティブイオンエッチング(RIE)を施す。
【0038】
このエッチングにより
図7(D)に示すように、基板30上に第1メサ部10Aと第2メサ部10Bを有し、第2メサ部10B上に第3メサ部相当の第3突部30Cを有する構造を形成できる。
この後、
図7(E)に示すように第3突部30Cの上面に微細パターンである凹凸部10aを形成することで第3メサ部10Cを形成する。この後、
図7(F)に示すように第2メサ部10Bの上面に遮光部Sを形成すると、
図1に示したテンプレート10と同等構造のテンプレート33を得ることができる。
【0039】
図1、
図2、
図3(A)を基に先に説明した第1実施形態のテンプレート10では、
図4に示すようにパターンPAを形成した領域に隣接する位置に、硬化させたレジストからなる盛上部1Aを形成した。そして、この盛上部1Aは、遮光部Sを有していない第2メサ部10Bに設けた第2中位面EFを透過して紫外線を照射することにより形成できた。
盛上部1Aを形成するためには、第1実施形態のテンプレート10に限らず、
図8を基に以下に示す第1変形例のテンプレートを用いても良い。
【0040】
「第1変形例のテンプレート」
第1変形例のテンプレート40は、テンプレート10と同様の光(紫外線)を透過可能な材料からなる。テンプレート40は、基材部10Dの下面側に第1メサ部10Aと第3メサ部10Cを有する。第1メサ部10Aの下面10s(第1中位面T)に遮光部Sが設けられている構成はテンプレート10と同等である。第3メサ部10Cの下面に凹凸部10aを設けたパターン面10uが形成されている構成はテンプレート10と同等である。
テンプレート40においては、第1メサ部10Aの下面10s(第1中位面T)の内周から第3メサ部10Cの外周に至る部分に斜面40Eが形成されている構成に特徴を有する。
【0041】
斜面40Eは、
図8に示す断面において、第1メサ部10Aの内周から第3メサ部10Cの外周に至るに従い第3メサ部10Cの幅を徐々に小さくする向きに傾斜されている。
テンプレート40において、第1メサ部10Aと第3メサ部10Cが形成する平面視形状は
図3(A)に示す平面視形状と同等である。
図3(A)では第2中位面EFが第3メサ部10Cのパターン面10uと段差を構成する面であった。これに対し、テンプレート40では、
図3(A)に示す第2メサ部10Bの位置に斜面40Eを配置した構成と同等になる。
斜面40の高さは、先の高低差(段差)t3(
図2参照)と同程度、例えば200nm~500nm程度であって良い。
【0042】
斜面40Eを有するテンプレート40を用いてレジスト層1に凹凸部10aを転写するインプリント方法について、
図9を基に以下に説明する。
レジスト層1と対象膜2を備えた基板3を用意する点は先に説明した実施形態と同様である。
レジスト層1に対し、レジスト層1の上方から凹凸部10aを下向きとしたテンプレート40を下降させ、
図9(A)に示す通り、テンプレート40の凹凸部10aをレジスト層1に押し当てる。
【0043】
この際、第3メサ部10Cの端縁10C1より外側に存在するレジスト層1は、表面張力により斜面40Eに沿って第3メサ部10Cの周縁側で盛り上がる。この結果、レジスト層の盛上部1Gが形成される。また、盛上部1Gの周囲に存在するレジスト層1は液体であり、その一部が盛上部1Gの生成に使用されるため、盛上部1Gの周囲ではレジスト層1の液面が一時的に低下し、レジスト層1に凹部1Bが形成される。
【0044】
テンプレート40をレジスト層1に押し当てたまま、テンプレート40を通して
図9(A)の矢印に示すように上方から光(紫外線)をレジスト層1に照射する。紫外線を照射する範囲は、四角枠状の遮光部Sとその内側の範囲とする。紫外線の照射により、フォトレジストが硬化し、第3メサ部10Cの凹凸部10aの形状がレジスト層1に必要なパターンPAとして転写される。
テンプレート40が平面視四角枠状の遮光部Sにより紫外線を遮るため、遮光部Sの内側下方に位置するレジスト層1のみを硬化できる。テンプレート40において、第3メサ部10Cの下面40uの下方領域が、本来インプリントのために必要な領域である。
【0045】
テンプレート40では、遮光部Sの内側に第3メサ部10Cの斜面40Eを有する。このため、インプリントのために本来必要な領域に加え、その周囲に存在するレジスト層1の盛上部1Gの部分も硬化できる。第3メサ部10Cは先の実施形態と同様、平面視四角枠状であるため、盛上部1GはパターンPAの周囲を平面視四角枠状に囲むように生成する。
盛上部1Gは、斜面40Eによって高さを規制されたレジスト層1を硬化して構成されるので、斜面40Eに規定された高さを有する。即ち、盛上部1Gの最大高さを200nm~500nm程度に制御することができる。
テンプレート40においても、先のテンプレート10と同様に、
図9(B)、
図9(C)に示すようにパターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成できる。
先の領域において押印が終了したならば、
図9(D)に示すように隣接する他の領域のレジスト層1にテンプレート40による押印を行う。他の領域に対してもパターン埋まりを生じていない望ましいパターンPAを形成できる。
【0046】
「第2変形例のテンプレート」
パターン埋まりを有しない目的のパターンPAを形成するためには、第1実施形態のテンプレート10に限らず、
図10に示す第2変形例のテンプレートを用いても良い。
この第2変形例のテンプレート50は、テンプレート10と同様の光(紫外線)を透過可能な材料からなる。テンプレート50は、先のテンプレート40と略同一構成を有するが、斜面40Eの代わりに、
図10(A)、(B)に示す凸曲面50Eが設けられている。凸曲面50Eは、第3メサ部10Cの外側に突出する曲面である。
図10(A)はテンプレート50の断面を示し、
図10(B)はテンプレート50をレジスト層1に押し付けた状態を示す。
凸曲面50Eの高さは、先の高低差(段差)t3(
図2参照)と同程度、例えば200nm~500nm程度であって良い。
【0047】
テンプレート50は、遮光部Sの内側に第3メサ部10Cの凸曲面50Eを有する。このため、テンプレート10の上方から紫外線を照射すると、インプリントのために本来必要な領域に加え、
図10(B)に示すように周囲に存在するレジスト層1の盛上部1Hの部分も硬化できる。第3メサ部10Cは平面視四角枠状であるため、盛上部1HはパターンPAの周囲を平面視四角枠状に囲むように生成する。
盛上部1Hは、凸曲面50Eによって高さを規制されたレジスト層1を硬化して構成されるので、斜面に規定された高さを有する。即ち、盛上部1Hの最大高さを200nm~500nm程度に制御することができる。
テンプレート50においても、先のテンプレート40と同様に、パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成できる。
【0048】
「第3変形例のテンプレート」
パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成するためには、第1実施形態のテンプレート10に限らず、
図11に示す第3変形例のテンプレートを用いても良い。
この第3変形例のテンプレート60は、テンプレート10と同様の光(紫外線)を透過可能な材料からなる。テンプレート60は、先のテンプレート40と略同一構成を有するが、斜面40Eの代わりに、凹凸曲面60Eが設けられている。凹凸曲面60Eは、第3メサ部10Cの外側に突出する。凹凸曲面60Eは、第3メサ部10Cの外側に突出する凸曲面60eと第3メサ部40Cの内側に突出する凹曲面60fと第3メサ部10Cの外側に突出する凸曲面60gを組み合わせた形状を有する。
凹凸曲面60Eの高さは、先の高低差(段差)t3(
図2参照)と同程度、例えば200nm~500nm程度であって良い。
図11(A)はテンプレート60の断面を示し、
図11(B)はテンプレート60をレジスト層1に押し付けた状態を示す。
【0049】
テンプレート60は、遮光部Sの内側に第3メサ部10Cの凹凸曲面60Eを有する。このため、インプリントのために本来必要な領域に加え、その周囲に存在するレジスト層1の盛上部1Jの部分も硬化できる。第3メサ部10Cは平面視四角枠状であるため、盛上部1JはパターンPAの周囲を平面視四角枠状に囲むように生成する。
盛上部1Jは、凹凸曲面60Eによって高さを規制されたレジスト層1を硬化して構成されるので、斜面に規定された高さを有する。即ち、盛上部1Jの最大高さを200nm~500nm程度に制御することができる。
テンプレート60においても、先のテンプレート10と同様に、パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成できる。
【0050】
「第4変形例のテンプレート」
パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成するために、第1実施形態のテンプレート10に限らず、
図12(A)に示す第4変形例のテンプレートを用いても良い。
この第4変形例のテンプレート70は、テンプレート10と同様の光(紫外線)を透過可能な材料からなる。テンプレート70は、基材部10Dの下面側に第1メサ部10Aと第3メサ部10Cを有する。第1メサ部10Aの下面10s(第1中位面T)に遮光部Sが設けられている構成はテンプレート10と同等である。第3メサ部10Cの下面10sに凹凸部10aを設けたパターン面10uが形成されている構成はテンプレート10と同等である。
【0051】
テンプレート70では、第1メサ部10Aの下面10s(第1中位面T)の内周側に遮光部Sを設けず透光部70Eを設けた構成に特徴を有する。透光部70Eは、平面視第3メサ部10Cの外側を囲むように矩形枠状に形成されている。
図12(B)はテンプレート70の凹凸部10aをレジスト層1に押し付けた状態を示し、第3メサ部10Cの周縁には盛上部1Kが形成される。
【0052】
テンプレート70では、インプリントのために本来必要な領域に加え、その周囲に存在するレジスト層1の盛上部1Kの部分も硬化できる。第3メサ部70Cは平面視四角枠状であるため、盛上部1KはパターンPAの周囲を平面視四角枠状に囲むように生成する。
テンプレート70では、第1メサ部10Aの下面10sと第3メサ部10Cのパターン面(下面)10uとの高低差が200nm~500nm程度に設定されていて良い。
盛上部1Kは、透光部70Eによって高さを規制されたレジスト層1を硬化して構成されるので、透光部に規定された高さを有する。即ち、盛上部1Kの最大高さを200nm~500nm程度に制御することができる。
【0053】
テンプレート70においては、
図12(A)に示すように、透光部70Eを透過した紫外線をレジスト層1に照射し、盛上部1Kを硬化できる。このため、
図12(B)あるいは
図12(C)に示す硬化させた盛上部1Kを設けることができ、先のテンプレート10を用いた押印の場合と同様に、パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成できる。
【0054】
「第5変形例のテンプレート」
パターン埋まりを有していない目的のパターンPAを形成するために、第1実施形態のテンプレート10に限らず、
図13に示す第5変形例のテンプレートを用い、以下に説明するインプリント方法を実施しても良い。
第5変形例のテンプレートは先に比較例として示したテンプレート20と同等の構成である。
【0055】
図13に示すようにテンプレート20の凹凸部10aをレジスト層1に押し付けるとともに、テンプレート20とレジスト層1の間に形成されている隙間空間に沿ってテンプレート20の周囲側からレジスト層1の面方向と平行(
図13の横方向)に光(紫外線)を照射する。テンプレート20の第3メサ部10Cの端縁10C
1の外側には押印時にレジスト層1の盛上部1Lを生じているので、横方向からの紫外線の照射により盛上部1Lを硬化させることができる。
図13に示すテンプレート20の上方からレジスト層1の押印領域に紫外線を照射することで目的のパターンPAを形成し、盛上部1Lを硬化させることができる。
本変形例では、テンプレート自体は比較例として示したテンプレート20と同等の構成であるが、インプリント方法(光の照射方法)が、比較例とは異なっている。
盛上部1Lを硬化させているので、第2変形例~第4変形例の場合と同様に、パターン埋まりを生じていない目的のパターンPAを得ることができる。
【0056】
図14は遮光部Sの平面視形状の変形例を示す。
図14に示すように遮光部Sの一部に延出部S
1、S
2、S
3を有し、延出部S
1、S
2、S
3を設けた部分ではパターン面1uを第1中位面10sと隣接させた構造とすることもできる。
【0057】
「第6変形例のテンプレート」
図15は第6変形例のテンプレート80を示す。
このテンプレート80では第2中位面10t(EF)に、この面から下方に突出する壁部81を設けている。この変形例では液体のレジストが第2中位面10tから這い上がることを防止できる構成を採用した。
テンプレート80において、壁部81の下端からパターン面までの高さt4、第2中位面10tからパターン面までの高さt5、パターンの凹凸の深さt6とすると、t5>t4>t6の関係を有することが好ましい。
【0058】
「第7~第9変形例のテンプレート」
図16(a)は第7変形例のテンプレート82を示す。
このテンプレート82では、第2中位面10t(EF)が平面ではなく断面視で矩形波形状の凹凸部83を有する面からなる。
図16(b)は第8変形例のテンプレート84を示す。
このテンプレート84では、第2中位面10t(EF)が平面ではなく断面視で三角波形状の凹凸部85を有する面からなる。
図16(c)は第9変形例のテンプレート86を示す。
このテンプレート86では、第2中位面10t(EF)が平面ではなく断面視で正弦波形状の凹凸部87を有する面からなる。
これらの例のように第2中位面10t(EF)は平面に限らず、種々の形状を有していても良い。この変形例では、液体のレジストが第2中位面10tを伝う速度を低下させることができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0060】
1…レジスト層(インプリント材の層)、
1A、1D、1G、1H、1J、1K、1L…盛上部、2…対象膜、
3…基板(ウエハ)、
10、20、40、50、60、70、80、82、84、86…テンプレート、
10A…第1メサ部、10a…凹凸部、10B…第2メサ部、10C…第3メサ部、
10C1…端縁、10D…基材部、10r…基材部の下面、
10s(T)…第1メサ部の下面(第1中位面)、
10t(EF)…第2メサ部の下面(第2中位面)、
10u…第3メサ部の下面(パターン面)、
40E…斜面、50E…凸曲面、60E…凹凸曲面、70E…透光部、
e…押印領域、s…遮光部(光透過制限膜)、PA…パターン、
t1…基材部の下面と第1メサ部の下面との高低差(段差)、
t2…第1メサ部の下面と第2メサ部の下面との高低差(段差)、
t3…第2メサ部の下面と第3メサ部の下面との高低差(段差)。